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特表2023-538000金属表面のリン酸亜鉛処理のための省資源化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】金属表面のリン酸亜鉛処理のための省資源化方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/78 20060101AFI20230830BHJP
   C23C 22/13 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C23C22/78
C23C22/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509851
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2021067630
(87)【国際公開番号】W WO2022033759
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】20190493.5
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】ポスナー,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】アンゲネント,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】バルツァー,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ツィカ,フランツ-アドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ジンヴェル,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウウェル,ヤン-ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァプナー,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4K026
【Fターム(参考)】
4K026AA02
4K026AA07
4K026AA09
4K026AA12
4K026AA13
4K026AA22
4K026BA04
4K026BB08
4K026CA13
4K026CA18
4K026CA23
4K026CA28
4K026CA35
4K026CA37
4K026DA03
4K026EA09
4K026EA10
4K026EA13
4K026EA14
4K026EA15
(57)【要約】
本発明は、活性化段階として、コロイド水溶液を使用する層形成方法において金属表面をリン酸亜鉛処理するための方法であって、活性化に続く方法段階において、2.0g/m未満の層重量を有するリン酸亜鉛層が亜鉛の表面上に堆積される方法に関する。活性化段階は、分散粒子状成分を含むコロイド水溶液に基づき、前記分散粒子状成分は、多価金属カチオンのリン酸塩の分散された無機化合物に加えて、分散剤として、少なくとも部分的にスチレン及び/又は5個以下の炭素原子を有するα-オレフィンから構成され、マレイン酸、その無水物及び/又はそのイミドの単位を更に含み、ポリオキシアルキレン単位を更に含む高分子有機化合物を含む。腐食に対して十分に保護し、かつ、その後の電気コーティングに供することができる閉じたリン酸亜鉛コーティングの形成のために、コロイド水溶液の粒子状成分の含有量が、コロイド水溶液に基づいて少なくとも4g/kgであることが必要である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛又はそのような金属材料から少なくとも部分的に構成される部材の表面を少なくとも部分的に有する金属材料の防食前処理のための方法あって、前記金属材料又は前記部材は、連続する方法工程において、最初に活性化(i)、次いでリン酸亜鉛処理(ii)を受け、方法工程(i)における前記活性化は、前記金属材料又は前記部材をコロイド水溶液と接触させることによって行われ、前記コロイド水溶液は、該溶液の分散粒子状成分(a)中に、
(a1)ホープ石、フォスフォフィライト、ショルツ石及び/又はハーロライトから少なくとも部分的に選択される多価金属カチオンのリン酸塩から構成される少なくとも1つの粒子状無機化合物、及び
(a2)少なくとも部分的にスチレン及び/又は5個以下の炭素原子を有するα-オレフィンから構成され、マレイン酸、その無水物及び/又はそのイミドの単位を更に含み、且つ、ポリオキシアルキレン単位を更に含む、少なくとも1つの高分子有機化合物
を含み、
前記コロイド水溶液の粒子状成分の含有量が、前記コロイド水溶液に基づいて少なくとも4g/kgであり;且つ
方法工程(ii)において、2.0g/m未満の層重量を有するリン酸亜鉛層が亜鉛の表面上に堆積される、方法。
【請求項2】
前記コロイド水溶液中で、水に溶解した縮合リン酸塩の含有量は、いずれの場合も元素Pに基づく前記少なくとも1つの粒子状化合物のリン酸塩含有量に基づいて、0.25未満、好ましくは0.20未満、特に好ましくは0.15未満、より特に好ましくは0.10未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
活性化(i)における前記コロイド水溶液は、アルカリ性pH、好ましくは8.0超、特に好ましくは9.0超であるが、好ましくは11.0未満のpHを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの粒子状無機化合物(a1)に含有される、POとして算出されるリン酸塩の含有量は、前記コロイド水溶液の前記分散無機粒子状成分に基づいて、好ましくは少なくとも25重量%、特に好ましくは少なくとも35重量%、より特に好ましくは少なくとも40重量%、非常に特に好ましくは少なくとも45重量%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記コロイド水溶液の前記高分子有機化合物(a2)は、それらの側鎖にポリオキシアルキレン単位を含有し、前記高分子有機化合物(a2)全体におけるポリオキシアルキレン単位の含有量が、好ましくは少なくとも40重量%、特に好ましくは少なくとも50重量%であるが、特に好ましくは70重量%を超えないことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記コロイド水溶液の有機高分子化合物(a2)は、イミダゾール単位も有し、好ましくは、有機高分子化合物(a2)のポリオキシアルキレン単位が少なくとも部分的にイミダゾール基で末端キャップされるような方法でイミダゾール単位を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記コロイド水溶液が、尿素ウレタン樹脂、好ましくは8mg KOH/g未満、特に好ましくは5mg KOH/g未満、非常に好ましくは2mg KOH/g未満のアミン価を有する尿素ウレタン樹脂から好ましくは選択される少なくとも1つの増粘剤を更なる成分b)として含有することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記コロイド水溶液の粒子状成分において、前記粒子状成分に基づく全高分子有機化合物が、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも6重量%であるが、好ましくは15重量%を超えないことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記コロイド水溶液が、1μm未満、好ましくは0.4μm未満のD50値を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記コロイド水溶液の前記粒子状成分の含有量が、いずれの場合も前記コロイド水溶液に基づいて、少なくとも6g/kg、好ましくは少なくとも8g/kg、特に好ましくは少なくとも10g/kgであるが、好ましくは20g/kg以下、特に好ましくは15g/kg以下であることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記コロイド水溶液が、20~100,000倍に希釈された水分散液として得られ、
- 前記水分散液に基づいて、少なくとも5重量%の分散粒子状成分(A)であって、
(A1)ホープ石、フォスフォフィライト、ショルツ石及び/又はハーロライトから少なくとも部分的に選択される多価金属カチオンのリン酸塩から構成される少なくとも1つの粒子状無機化合物、
(A2)少なくとも部分的にスチレン及び/又は5個以下の炭素原子を有するα-オレフィンから構成され、マレイン酸、その無水物及び/又はそのイミドの単位を更に含み、且つ、ポリオキシアルキレン単位を更に含む、少なくとも1つの高分子有機化合物
を順に含む分散粒子状成分(A)、及び
- 任意に、尿素ウレタン樹脂、特に好ましくは8mg KOH/g未満、好ましくは5mg KOH/g未満、特に好ましくは2mg KOH/g未満のアミン価を有する尿素ウレタン樹脂から好ましくは選択される少なくとも1つの増粘剤
を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
方法工程(ii)において、1.8g/m未満、好ましくは1.6g/m未満、特に好ましくは1.5g/m未満の層重量を有するリン酸亜鉛層が、亜鉛の表面上に堆積されることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
方法工程(ii)におけるリン酸亜鉛処理が、POとして計算される、水に溶解した5~50g/kgのリン酸塩、0.3~3g/kgの亜鉛イオン、及び合計で0.1g/kg未満のニッケル元素及びコバルト元素のイオンを含有し得る量の遊離フッ化物を含有する酸性水性組成物との接触によって行われることを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
亜鉛の表面に加えて、鉄及び/又はアルミニウムの表面も有する部材が処理され、方法工程(ii)において、2.0g/m未満、特に好ましくは1.8g/m未満、より特に好ましくは1.6g/m未満、非常に特に好ましくは1.5g/mの層重量を有するリン酸亜鉛層が、亜鉛、鉄及びアルミニウムの全ての表面上に好ましくは堆積されることを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性化段階として、コロイド水溶液を使用する層形成方法において金属表面をリン酸亜鉛処理するための方法であって、活性化に続く方法段階において、2.0g/m未満の層重量を有するリン酸亜鉛層が亜鉛の表面上に堆積される方法に関する。活性化段階は、分散粒子状成分を含むコロイド水溶液に基づき、前記分散粒子状成分は、多価金属カチオンのリン酸塩の分散された無機化合物に加えて、分散剤として、少なくとも部分的にスチレン及び/又は5個以下の炭素原子を有するα-オレフィンから構成される高分子有機化合物を含み、前記高分子有機化合物はマレイン酸、その無水物及び/又はそのイミドの単位を更に含み、前記高分子有機化合物はポリオキシアルキレン単位を更に含む。腐食に対して十分に保護し、かつ、その後の電気コーティングに供することができる閉じたリン酸亜鉛コーティングの形成のために、コロイド水溶液の粒子状成分の含有量は、コロイド水溶液に基づいて少なくとも4g/kgであることが必要である。
【背景技術】
【0002】
層形成リン酸塩処理は、結晶性防食コーティングを金属表面、特に鉄、亜鉛及びアルミニウムの金属の材料に適用する方法であり、これは数十年にわたって使用され、詳細に研究されてきた。腐食保護のために特によく確立されているリン酸亜鉛処理は、数マイクロメートルの層厚において行われ、亜鉛イオン及びリン酸塩を含有する酸性水性組成物中での金属材料の腐食性酸洗浄に基づく。酸洗浄の過程で、アルカリ拡散層が金属表面上に形成され、この層は溶液の内部に延在し、その中で難溶性の結晶子が形成され、結晶子は金属材料との界面に直接沈殿し、そこで成長し続ける。金属アルミニウムの材料上の酸洗浄反応を支持し、溶解形態で金属の材料上の層形成を妨害する浴毒アルミニウムをマスクするために、フッ化物イオンの供給源である水溶性化合物がしばしば添加される。デフォルトでは、良好な腐食保護及びコーティング下地のために、リン酸亜鉛処理は、特に部材の亜鉛表面において、少なくとも2g/mの層重量で閉じた結晶性コーティングを実現するように設定される。上記酸洗浄及びリン酸亜鉛処理段階における活性成分の濃度は、金属鉄又は鋼、亜鉛及びアルミニウムの表面で相応に高い層重量を確保するために、リン酸化される金属表面に応じて、適宜調整される必要がある。リン酸亜鉛処理は、リン酸化される部材の金属表面の活性化によって常に開始される。湿式化学的活性化は、従来、リン酸塩のコロイド水溶液との接触によって行われ(「活性化段階」)、リン酸塩は、金属表面に固定化されている限り、その後のリン酸塩処理において、アルカリ拡散層内に結晶性コーティングを形成するための成長核として使用される。この場合の適切な分散液は、堆積されるリン酸亜鉛層のタイプからの結晶構造のわずかな結晶学的偏差しか有さない、リン酸塩結晶子に基づくコロイド状の、ほとんどが中性からアルカリ性の水性組成物である。これに関連して、国際公開第98/39498号は、特に金属Zn、Fe、Mn、Ni、Co、Ca及びAlの二価及び三価のリン酸塩を教示しており、金属亜鉛のリン酸塩がその後のリン酸亜鉛処理のための活性化に使用されることが技術的に好ましい。
【0003】
二価及び三価のリン酸塩の分散に基づく活性化段階は、特に一連の金属部材を処理する場合、活性化性能を常に最適なレベルに保つために高レベルのプロセス制御を必要とする。方法が十分に堅牢であることを確実にするために、先の処理浴又はコロイド水溶液の老化プロセスから持ち越された外来イオンは、活性化性能を低下させてはならない。劣化は、その後のリン酸塩処理における層重量の増加において最初に顕著になり、最終的に欠陥がある又は不均一なリン酸塩層の形成をもたらす。従って、全体として層形成するリン酸亜鉛処理は、制御が技術的に複雑であり、プロセス化学物質及び消費されるエネルギーの両方に関して、資源消費的な方法で従来実施されてきた多段階プロセスである。これは、特にリン酸亜鉛処理のプロセス段階に当てはまり、特に亜鉛表面を有する部材上での層形成に起因して、最初に高い材料所要量を必要とするが、また、必要とされる酸洗浄速度に関連した方法においてリン酸処理浴への大量の材料除去をもたらす。高い酸洗浄速度は、リン酸塩スラッジの防止又は、調製及び処分のための処置を講じなければならないという結果をもたらし、それにより、更なるプロセス化学物質の使用を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際出願公開第98/39498号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、特に亜鉛表面を有する部材の前処理において、全体の工程がより少ない資源消費的な方法で実施され得るように、活性化段階及びリン酸処理段階を含むリン酸亜鉛処理のための前処理ラインを最適化する必要がある。しかし、省資源化された全体的な工程は、リン酸亜鉛処理の特性を犠牲にしてはならず、それはその後の電気コーティングにおいて、腐食に対する良好な保護及びそれに対応する良好な被覆性を可能にするために、高い電荷移動抵抗を有する均質で閉じたコーティングとして提供されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この複雑な課題プロファイルは、驚くべきことに、比較的薄いリン酸塩コーティングの堆積によって達成でき、粒子状リン酸塩に基づく活性化段階のコロイド成分を安定化するための特定の高分子分散剤を用いた活性化は、活性化段階において最小量の粒子状成分が不足しないことが保証される限り必要である。活性化をもたらす粒子状成分の極めて効果的な安定化により、特定の分散剤は、リン酸亜鉛処理の準連続的プロセスにおいて高比率のコロイドを確実に設定することもでき、これは驚くべきことに、改善された金属表面の活性化及び高い電気浸透抵抗を有する特に薄いが均質で閉じたリン酸塩コーティングの形成をもたらす。
【0007】
従って、本発明は、亜鉛又はそのような金属材料から少なくとも部分的に構成される部材の表面を少なくとも部分的に有する金属材料の防食前処理のための方法に関し、この方法において、前記金属材料又は前記部材は、連続する方法工程において、最初に活性化(i)、次いでリン酸塩処理(ii)を受け、方法工程(i)における前記活性化は、前記金属材料又は前記部材をコロイド水溶液と接触させることによって行われ、前記コロイド水溶液は、該溶液の分散粒子状成分(a)中に、
(a1)ホープ石、フォスフォフィライト、ショルツ石及び/又はハーロライトから少なくとも部分的に選択される多価金属カチオンのリン酸塩から構成される少なくとも1つの粒子状無機化合物、及び
(a2)少なくとも部分的にスチレン及び/又は5個以下の炭素原子を有するα-オレフィンから構成され、マレイン酸、その無水物及び/又はそのイミドの単位を更に含み、ポリオキシアルキレン単位を更に含む少なくとも1つの高分子有機化合物
を含み、
前記コロイド水溶液の粒子状成分の含有量が、前記コロイド水溶液に基づいて少なくとも4g/kgであり;且つ
方法工程(ii)において、2.0g/m未満の層重量を有するリン酸亜鉛層が亜鉛の表面上に堆積される。
【0008】
本発明による方法の文脈において、金属材料は、少なくとも1マイクロメートルの材料浸透深さまで、この表面上の50原子%を超える金属構造が亜鉛で構成される場合、亜鉛からなる少なくとも1つの表面を有する。これは通常、均質な材料として金属材料の50原子%以上が亜鉛で構成される金属材料に適用されるが、鉄(ZF)、アルミニウム(ZA)及び/又はマグネシウム(ZM)と合金化され得る、電気亜鉛メッキ又は溶融亜鉛メッキ鋼板などの亜鉛の金属コーティングが提供される材料にも適用される。
【0009】
本発明に従い処理される部材は、製造工程に由来する任意の形状及びデザインの三次元構造であり得、特に、細片、シート、ロッド、パイプなどの半製品、及び前記半製品から組み立てられる複合構造も含み、前記半製品は、好ましくは接着、溶接及び/又はフランジングによって相互に結合されて複合構造を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による方法の活性化(i)におけるコロイド水溶液の分散粒子状成分(a)は、10kD(NMWC:公称分子量カットオフ)の公称カットオフ限界を有する水分散液の規定された部分体積の限外濾過の保持液を乾燥させた後に残存する固形分である。限外濾過は、濾液中で10μScm-1未満の導電率が測定されるまで脱イオン水(κ<1μScm-1)を添加することによって行われる。
【0011】
本発明の文脈において、有機化合物は、その重量平均モル質量が500g/molより大きい場合、ポリマーである。モル質量は、関連する基準値の試料のモル質量分布曲線を使用して決定され、この曲線は、濃度依存性屈折率検出器を使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって30℃で実験的に確立され、ポリエチレングリコール標準に対して較正される。平均モル質量は、3次較正曲線を有するストリップ法に従ってコンピュータを用いて評価される。カラム材料としては、ヒドロキシル化ポリメタクリレートが好適であり、溶離液としては、0.2mol/L塩化ナトリウム、0.02mol/L水酸化ナトリウム及び6.5mmol/L水酸化アンモニウムの水溶液が好適である。
【0012】
本発明による方法は、コロイド水溶液において粒子状成分の量が4g/kgを超えると、非常に低い層重量の場合、金属材料の表面上に均質で閉じたリン酸亜鉛コーティングが既に成長し、その表面はその後の電気コーティングのための先行技術のリン酸亜鉛コーティングと同等のコーティング下地を表し、同時に優れた被覆性を提供することを特徴とする。これにもかかわらず、本発明は、亜鉛表面上に均質で閉じたリン酸亜鉛コーティングを堆積することを目的とし、そのため本発明によれば、方法工程(ii)において、0.5g/mを超える、好ましくは1.0g/mを超える層重量を有するリン酸亜鉛コーティングが亜鉛表面上に提供されることが想定される。
【0013】
層重量の低減はまた、より短い湿式化学的暴露時間又はリン酸亜鉛の酸性水性組成物との接触時間を可能にし、これは次に、より低い酸洗浄除去及び全体的に短い前処理期間の両方に相関する。コロイド水溶液中の粒子状成分の含有量が更に増加すると、リン酸亜鉛処理における層重量又は接触時間の更なる低減が達成できるため、コロイド水溶液の粒子状成分の含有量が少なくとも6g/kg、特に好ましくは少なくとも8g/kg、より特に好ましくは少なくとも10g/kgである本発明の方法が好ましい。しかしながら、活性化段階におけるコロイド含有量の更なる増加に伴うリン酸亜鉛処理における達成可能な層重量の低減はわずかでしかなく、活性化段階での方法制御及びより低いコロイド安定性における欠点とますます競合する。従って、コロイド状水分散液の粒子状成分の含有量を、各場合においてコロイド水溶液に基づいて、20g/kgまでに、特に好ましくは15g/kgまでに制限することが好ましい。
【0014】
本発明による方法において、前処理ラインの省資源化操作のために、亜鉛表面上のリン酸亜鉛の層コーティングは2.0g/mまでに制限されることが望ましい。本発明によれば、活性化段階のコロイド状水分散液中の最小量の粒子状成分によって、その後の電気コーティングにおける優れた被覆性挙動を有する十分に均質で閉じたリン酸亜鉛コーティングが提供される。亜鉛表面の活性化は、本発明による方法の方法工程(i)において、層コーティングにおける更なる低減と、従って方法工程(ii)におけるリン酸亜鉛処理段階での材料消費量における更なる低減が可能であるような方法で、効果的である。従って、方法工程(ii)において、亜鉛表面上のリン酸亜鉛の層重量を1.8g/m未満、特に好ましくは1.6g/m未満、より特に好ましくは1.5g/m未満に制限することが好ましい。層重量の制限は、方法工程(ii)におけるリン酸亜鉛処理用の酸性水性組成物との接触時間を短縮する、及び/又は、方法工程(i)におけるコロイド状水分散液の粒子状成分の含有量を増加させることのいずれかによる方法制御で実施され得る。リン酸亜鉛の層重量は、リン酸亜鉛処理の直後に25℃で5分間、リン酸化された材料又は部材の所定領域に接触させる酸洗浄液として5重量%CrO水溶液を用いて、リン酸亜鉛層を除去すること、及び脱イオン水(κ<1μScm-1)で洗浄すること、及び、続いて同じ酸洗浄液中のリン含有量をICP-OESを用いて測定することによって、本発明の範囲内で決定される。リン酸亜鉛の層重量は、表面積に対するリンの量に6.23の係数を乗じることによって求められる。
【0015】
本発明による方法の特に更なる利点は、方法工程(i)において亜鉛の表面に加えて、鉄及びアルミニウムの表面も非常に効果的に活性化され、方法工程(ii)において同様に比較的低い層重量を有する、非常に均質で、閉じたリン酸亜鉛コーティングが前記表面上にアクセス可能であることである。従って、本発明によれば、亜鉛の表面に加えて、鉄及び/又はアルミニウムの表面も有する部材が好ましくは処理され、方法工程(ii)において鉄及びアルミニウムの表面上に、2.0g/m未満、特に好ましくは1.8g/m未満、より特に好ましくは1.6g/m未満、非常に特に好ましくは1.5g/m未満であるが、好ましくは少なくとも0.5g/m、特に好ましくは少なくとも1.0 g/mの層重量を有するリン酸亜鉛層が、好ましくは堆積される。同様に、金属材料は、少なくとも1マイクロメートルの材料浸透深さまで、この表面上の50原子%を超える金属構造が、鉄又はアルミニウムで構成される場合、鉄又はアルミニウムからなる少なくとも1つの表面を有する。
【0016】
さらに、本発明の文脈では、先行技術の方法における活性化段階において、水に溶解し、しばしばコロイド安定化のために添加される縮合リン酸塩は、本発明の文脈において一貫して良好なリン酸塩コーティングを維持するために二次的にしか重要ではないことがわかった。コロイド水溶液に基づいて少なくとも4g/kgの量で存在する粒子状成分(a)に基づく活性化段階に基づく本発明による方法において、縮合リン酸塩の添加を大部分省き得るか完全に省き得ることは、当業者にとって注目に値する、驚くべきことである。本発明による方法の好ましい実施形態において、活性化段階における水に溶解した縮合リン酸塩の含有量は、コロイド水溶液中の少なくとも1つの粒子状化合物のリン酸塩含有量に基づいて、いずれの場合も元素Pに基づいて、0.25未満、特に好ましくは0.20未満、より特に好ましくは0.15未満、非常に特に好ましくは0.10未満である。
【0017】
さらに、これに関して、Pとして計算される、本発明による方法のコロイド水溶液中の水に溶解した縮合リン酸塩の含有量は、コロイド水溶液に基づいて、100mg/kg未満、特に好ましくは20mg/kg未満、より特に好ましくは15mg/kg未満、非常に特に好ましくは10mg/kg未満であることが好ましい。全体として、本発明の文脈では、縮合リン酸塩の添加はこれにより完全に省略することができ、従って、活性化は、特に多数の部材を連続して処理する場合に、前処理すべき部材を含む先の洗浄段階から活性化段階に到達する少量の縮合リン酸塩のみを含む。
【0018】
本発明の文脈において、縮合リン酸塩は、メタリン酸塩及びポリリン酸塩、好ましくはポリリン酸塩、特に好ましくはピロリン酸塩である。縮合リン酸塩は、好ましくは一価カチオンの化合物の形態であり、好ましくはLi、Na及び/又はKから選択され、特に好ましくはNa及び/又はKである。
【0019】
縮合リン酸塩の含有量は、例えばペルオキソ二硫酸塩による酸化消化の有無にかかわらず、コロイド水溶液の非粒子状成分中の全リン酸塩含有量の差から分析的に決定することができ、溶解したオルトリン酸塩含有量は測光法によって定量化される。あるいは、ポリリン酸塩が縮合リン酸塩として使用される場合、酸化的消化の代わりにピロホスファターゼによる酵素的消化を行うことができる。コロイド水溶液の非粒子状成分は、105℃で一定質量まで乾燥された後の上述の限外濾過の透過液中のコロイド水溶液の固形分、すなわち、粒子状成分(a)が限外濾過によって分離された後の固形分である。
【0020】
持ち越された外来イオンに対する本発明による方法の高い耐性はまた、活性化段階の前に実施される洗浄段階及びすすぎ段階、並びに活性化段階自体が脱イオン水の代わりに水道水で実施されることを可能にする。このようにして、本発明による方法は、特に資源を節約する方法で実行される。従って、本発明によれば、活性化におけるコロイド水溶液が、水に溶解した少なくとも0.5mmol/L、特に好ましくは少なくとも1.0mmol/L、特により好ましくは少なくとも1.5mmol/Lであるが、好ましくは10mmol/L以下のアルカリ土類金属イオンを含有することが好ましい。
【0021】
本発明による方法の耐性が、いずれの場合も、非常に高いイオン強度、例えば高い永久水硬度、及び同時に前の洗浄段階から持ち越された高い含有量の外来イオンで系固有の限界に達した場合、長い浴寿命を維持するために、有機錯化剤を添加して外来イオンをマスクすることができる。この場合、活性化段階、及び必要に応じて先行する洗浄段階を実施し、上水ですすぐことが可能であるという経済的利点が、活性化段階のシステムタンクにおける有機錯化剤の添加及びそれらの技術的監視によって妨げられないかどうかを評価しなければならない。これに関連して好ましい適切な有機錯化剤は、α-ヒドロキシカルボン酸から選択され、これは次いで好ましくはグルコン酸、タルトロン酸、グリコール酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、非常に特に好ましくはグルコン酸、及び/又は有機ホスホン酸から選択され、これは次いで好ましくはエチドロン酸、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタン-1、2,4-トリカルボン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)及び/又はヒドロキシホスホノ酢酸から選択され、特に好ましくはエチドロン酸から選択される。
【0022】
安定した活性化性能を維持するために、有機錯化剤は、コロイド水溶液中のその量が、好ましくはアルカリ土類金属イオンの量の2倍以下、特に好ましくは1.5倍以下であり、非常に特に好ましくはアルカリ土類金属イオンの量と等モル以下である程度のみまで添加されるべきである。
【0023】
本発明による方法の活性化(i)におけるコロイド水溶液は、好ましくはアルカリ性pH、特に好ましくは8.0超、特により好ましくは9.0超であるが、好ましくは11.0未満のpHを有し、pHを調整するためにリン酸、水酸化ナトリウム溶液、水酸化アンモニウム又はアンモニア等のpHに影響を及ぼす化合物を使用することが可能である。本発明の文脈で使用される「pH」は、20℃でのヒドロニウムイオン活性の負の常用対数に対応し、pH感受性ガラス電極によって決定することができる。
【0024】
良好な活性化性能のため、それに応じて高い割合で活性化のために分散粒子状成分(a)中に含まれるべきリン酸塩の形態の多価金属カチオンを使用する必要がある。従って、少なくとも1つの粒子状無機化合物(a1)に含まれるリン酸塩の含有量は、コロイド水溶液の分散粒子状成分(a)に基づいて、好ましくは少なくとも25重量%、特に好ましくは少なくとも35重量%、特により好ましくは少なくとも40重量%、非常に特に好ましくは少なくとも45重量%である。次いで、コロイド水溶液の無機粒子状成分は、限外濾過の保持液の乾燥から得られた粒子状成分(a)を、赤外線センサが反応炉の出口でCOを含まないキャリアガス(ブランク値)と同一のシグナルを提供するまで、触媒又は他の添加剤の混合なしに900℃でCOを含まない酸素流を供給することによって反応炉内で熱分解するときに残る。無機粒子状成分に含まれるリン酸塩は、25℃で15分間、10重量%HNO水溶液で成分を酸消化した後、原子発光分析(ICP-OES)によってリン含有量として酸消化から直接決定される。
【0025】
金属表面上の閉じたリン酸塩コーティングの形成を効果的に促進し、この意味で金属表面を活性化するコロイド状水分散液の活性成分は、既に述べたように、主にリン酸塩から構成され、これは次いで微細結晶性コーティングの形成をもたらし、従って少なくとも部分的にホープ石、フォスフォフィライト、ショルツ石及び/又はハーロライトから選択され、好ましくは少なくとも部分的にホープ石、フォスフォフィライト及び/又はショルツ石から選択され、特に好ましくは少なくとも部分的にホープ石及び/又はフォスフォフィライトから選択され、非常に特に好ましくは少なくとも部分的にホープ石から選択される。従って、本発明の意味の範囲内の活性化は、活性化段階に含まれる粒子形態のリン酸塩に実質的に基づく。結晶水を考慮しないと、ホープ石は、化学量論的にZn(POと、ニッケル含有及びマンガン含有変異体ZnMn(PO、ZnNi(POとを含み、一方、フォスフォフィライトはZnFe(POからなり、ショルツ石はZnCa(POからなり、ハーロライトはMn(POからなる。本発明による水分散液中のホープ石、フォスフォフィライト、ショルツ石及び/又はハーロライトの結晶相の存在は、上述の公称カットオフ限界10kD(NMWC:公称分子量カットオフ)の限外濾過による粒子状成分(a)の分離及び105℃での保持液の一定質量への乾燥後のX線回折法(XRD)によって実証することができる。
【0026】
亜鉛イオンを含み、特定の結晶性を有するリン酸塩の存在が好ましいため、本発明による方法において、活性化の成功後に強固に接着する結晶性リン酸亜鉛コーティングを形成するには、コロイド状水分散液が、無機粒子状成分のリン酸塩含有量に基づいて、POとして計算される、コロイド水溶液の無機粒子状成分中に少なくとも20重量%、特に好ましくは少なくとも30重量%、特により好ましくは少なくとも40重量%の亜鉛を含有することが好ましい。
【0027】
しかしながら、本発明の意味の範囲内で活性化は、リン酸チタンのコロイド溶液によって達成されないことが好ましく、これは、そうでない場合には鉄、特に鋼上の層形成リン酸亜鉛処理が確実に達成されないためである。従って、本発明による方法の好ましい実施形態では、コロイド水溶液の無機粒子状成分中のチタンの含有量は、コロイド水溶液に基づいて、0.01重量%未満、特に好ましくは0.001重量%未満である。特に好ましい実施形態では、活性化段階(i)のコロイド水溶液は、合計10mg/kg未満、特に好ましくは1mg/kg未満のチタンを含有する。
【0028】
本発明による方法における活性化段階は、そのD50値を更に特徴とし、この値を超えると活性化性能が著しく低下する。コロイド水溶液のD50値は、好ましくは1μm未満、特に好ましくは0.4μm未満である。本発明の文脈において、D50値は、コロイド水溶液に含まれる粒子状成分の50体積%を超えない粒径を示す。ISO 13320:2009によれば、D50値は、Mie理論に従って、試料が活性化段階から採取された直後に、球状粒子及び散乱粒子の屈折率n=1.52-i・0.1を使用して、散乱光分析による体積加重累積粒度分布から20℃で決定することができる。
【0029】
本発明の意味において、分散剤として使用される高分子有機化合物(a2)は、部分的にスチレン及び/又は炭素原子数5以下のα-オレフィン、並びに、マレイン酸、その無水物及び/又はそのイミドから構成され、更にポリオキシアルキレン単位を含む。これらの高分子有機化合物(a2)は、本発明による方法の活性化段階において、コロイド水溶液の極めて高い安定性をもたらす。
【0030】
この場合のα-オレフィンは、好ましくはエテン、1-プロペン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、2-メチル-ブタ-1-エン及び/又は3-メチル-ブタ-1-エンから選択され、特に好ましくはイソブチレンから選択される。高分子有機化合物(a2)が、互いに又は他の構造単位に共有結合した不飽和形態の構造単位としてこれらのモノマーを含有することは、当業者には明らかである。適切な市販の代表物は、例えば、ポリプロピレングリコールで変性されたマレイン酸-イソブチレンコポリマーであるDispex(登録商標)CX 4320(BASF SE)、ポリエチレングリコールで変性されたマレイン酸-スチレンコポリマーであるTego(登録商標)Dispers 752 W(Evonik Industries AG)、又はEO/PO及びイミダゾール単位で変性されたマレイン酸-スチレンコポリマーであるEdaplan(登録商標)490(Munzing Chemie GmbH)である。本発明の文脈において、部分的にスチレンから構成される高分子有機化合物(a2)が好ましい。
【0031】
分散剤として使用される高分子有機化合物(a2)は、好ましくは1,2-エタンジオール及び/又は1,2-プロパンジオールから構成され、特に好ましくは1,2-エタンジオールと1,2-プロパンジオールの両方から構成されるポリオキシアルキレン単位を有し、ポリオキシアルキレン単位の全体における1,2-プロパンジオールの含有量は、ポリオキシアルキレン単位全体に対して、好ましくは少なくとも15重量%であるが、特に好ましくは40重量%以下である。また、高分子有機化合物(a2)の側鎖にポリオキシアルキレン単位が含まれていることが好ましい。少なくとも40重量%以上、特に好ましくは少なくとも50重量%であるが、好ましくは70重量%以下の高分子有機化合物(a2)全体におけるポリオキシアルキレン単位の含有量が、分散性に有利である。
【0032】
ホープ石、フォスフォフィライト、ショルツ石及び/又はハーライトから選択されるリン酸塩の形態の多価金属カチオンによって少なくとも部分的に形成されるコロイド水溶液の無機粒子状成分と分散剤を固定するために、高分子有機化合物(a2)はイミダゾール単位も有し、好ましくは、高分子有機化合物(a2)のポリオキシアルキレン単位が少なくとも部分的にイミダゾール基で末端キャップされているように有し、従って、好ましい実施形態では、末端イミダゾール基がポリオキシアルキレン側鎖に存在し、ポリオキシアルキレン単位とイミダゾール基との共有結合が好ましくは複素環の窒素原子を介して行われる。
【0033】
好ましい実施形態では、有機高分子化合物(a2)のアミン価は、少なくとも25mg KOH/g、特に好ましくは少なくとも40mg KOH/gであるが、好ましくは125mg KOH/g未満、特に好ましくは80mg KOH/g未満であり、従って、好ましい実施形態では、粒子状成分(a)中の高分子有機化合物の全体もこれらの好ましいアミン価を有する。アミン価は、いずれの場合も、およそ1gの関連する基準値-有機高分子化合物(a2)又は粒子状成分中の高分子有機化合物の全体-を100mLのエタノール中で秤量することによって決定され、滴定は、20℃のエタノール溶液の温度で色が黄色に変化するまで、指示薬ブロモフェノールブルーに対して0.1N HCl滴定溶液を使用して行われる。ミリリットル単位で使用されるHCl滴定剤溶液の量に係数5.61を掛けてグラム単位の重量の正確な質量で割ったものは、関連する基準値のグラム当たりのKOHのミリグラム単位のアミン値に対応する。
【0034】
無水又はイミドの形態ではなく、遊離酸としての有機高分子化合物(a2)の成分である限り、マレイン酸の存在は、特にアルカリ範囲において、分散剤の水溶性の増加を付与することができる。従って、十分な数のポリオキシアルキレン単位を確保するために、高分子有機化合物(a2)、好ましくは粒子状成分(a)中の高分子有機化合物全体が、DGF CV 2(06)(2018年4月現在)による酸価が少なくとも25mg KOH/gであるが、好ましくは100mg KOH/g未満、特に好ましくは70mg KOH/g未満であることが好ましい。高分子有機化合物(a2)、好ましくはまた粒子状成分(a)中の高分子有機化合物の全体が、いずれの場合も、欧州薬局方9.0の01/2008:20503の方法Aに従って決定される、15mg KOH/g未満、特に好ましくは12mg KOH/g未満、特により好ましくは10mg KOH/g未満のヒドロキシル価を有することも好ましい。
【0035】
無機粒子状成分をコロイド状水分散液中に十分に分散させるために、高分子有機化合物(a2)の含有量、好ましくは粒子状成分(a)に基づく粒子状成分(a)中の高分子有機化合物の全体は少なくとも3重量%、特に好ましくは少なくとも6重量%であることが十分であるが、好ましくは15重量%を超えない。
【0036】
好ましい実施形態では、本発明は、水分散液を含む防食前処理のための方法に関する。本発明によるこのような好ましい方法において、方法工程(i)におけるコロイド水溶液は、20~100,000倍に希釈された水分散液として得られ、該コロイド水溶液は、
- 前記水分散液に基づいて、少なくとも5重量%の分散粒子状成分(A)であって、
(A1)ホープ石、フォスフォフィライト、ショルツ石及び/又はハーロライトから少なくとも部分的に選択される多価金属カチオンのリン酸塩から構成される少なくとも1つの粒子状無機化合物、
(A2)少なくとも部分的にスチレン及び/又は5個以下の炭素原子を有するα-オレフィンから構成され、マレイン酸、その無水物及び/又はそのイミドの単位を更に含み、且つ、ポリオキシアルキレン単位を更に含む少なくとも1つの高分子有機化合物
を順に含む分散粒子状成分(A)、及び
- 任意に、尿素ウレタン樹脂、特に好ましくは8mg KOH/g未満、好ましくは5mg KOH/g未満、特に好ましくは2mg KOH/g未満のアミン価を有する尿素ウレタン樹脂から好ましくは選択される少なくとも1つの増粘剤(B)
を含む。
【0037】
分散された分散粒子状成分(A)、並びに少なくとも1つの粒子状無機化合物(A1)及び高分子有機化合物(A2)については、コロイド水溶液について上に与えられたものと同じ定義及び好ましい仕様が適用される。
【0038】
分散剤としての高分子有機化合物(A2)による粒子状成分(A)の優れたコロイド安定性のため、希釈は、本発明による方法を可能な限り省資源化するために、脱イオン水(κ<1μScm-1)、特に好ましくは水道水で行うことが好ましい。基礎となる技術的用途に照らして、水道水は少なくとも0.5mmol/Lのアルカリ土類金属イオンを含有する。
【0039】
成分(B)による増粘剤の存在は、その粒子状成分と組み合わせて、水分散液にチキソトロピー流動挙動を与え、それにより、一次粒子が脱離できない分散液の粒子状成分中の凝集物の不可逆的形成の防止に寄与する。増粘剤の添加は、好ましくは、水分散液が、25℃の温度で、毎秒0.001~0.25の剪断速度範囲で、少なくとも1000Pa・sであるが、好ましくは5000Pa・s未満の最大動粘度を有するように制御され、好ましくは、最大動粘度で存在する剪断速度を超える剪断速度で25℃でずり減粘挙動を示し、すなわち、剪断速度が増加するにつれて粘度が低下し、その結果、水分散液全体がチキソトロピー流動挙動を有する。この場合、指定された剪断速度範囲にわたる粘度は、コーン直径35mm及びギャップ幅0.047mmを有するコーンプレート型粘度計を使用して決定することができる。
【0040】
成分(B)による増粘剤は、高分子化合物又は25℃の温度の脱イオン水(κ<1μScm-1)中、0.5重量%の成分として、サイズ2のスピンドルを使用して、60rpm(=1分あたりの回転)の剪断速度で少なくとも100mPa・sのブルックフィールド粘度を有する化学化合物の規定された混合物である。この増粘剤特性を決定する場合、混合物は、対応する量の高分子化合物を、撹拌しながら25℃で水相に添加し、次いで、均質化された混合物を超音波浴中で気泡を除去し、24時間放置する方法で水と混合しなくてはならない。次いで、粘度の測定値を、番号2のスピンドルによって60rpmの剪断速度を加えた直後の5秒以内に読み取る。
【0041】
本発明による水分散液は、好ましくは合計で少なくとも0.5重量%であるが、好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下の成分(B)による1つ以上の増粘剤を含有し、水分散液の非粒子状成分中の高分子有機化合物の総含有量もまた、好ましくは4重量%を超えない(分散液に基づく)。非粒子状成分は、105℃で一定質量まで乾燥された後の上記の限外濾過の透過液中の水分散液の固形分、すなわち、粒子状成分が限外濾過によって分離された後の固形分である。
【0042】
特定のクラスの高分子化合物は、成分(B)による特に適切な増粘剤であり、容易に商業的に入手可能である。これに関連して、成分(B)による増粘剤は、とりわけ好ましくは高分子有機化合物から選択され、次いで高分子有機化合物は、好ましくは多糖類、セルロース誘導体、アミノプラスト、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン及び/又は尿素ウレタン樹脂から選択され、特に好ましくは尿素ウレタン樹脂から選択される。
【0043】
水分散液から出発するコロイド水溶液を提供するための本発明による好ましい方法の成分(B)による増粘剤としての尿素ウレタン樹脂は、多価イソシアネートとポリオール並びにモノ-及び/又はジアミンとの反応から生じる高分子化合物の混合物である。好ましい実施形態では、尿素ウレタン樹脂は、好ましくは1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2(4),4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート、1,4,-シクロヘキシレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート及びそれらの混合物、p-及びm-キシリレンジイソシアネート、並びに4-4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンから選択され、特に好ましくは2,4-トルエンジイソシアネート及び/又はm-キシリレンジイソシアネートから選択される多価イソシアネートから得られる。特に好ましい実施形態では、尿素ウレタン樹脂は、ポリオキシアルキレンジオール、特に好ましくはポリオキシエチレングリコールから選択されるポリオールから得られ、次いでポリオキシエチレングリコールは、好ましくは少なくとも6個、特に好ましくは少なくとも8個、特により好ましくは少なくとも10個であるが、好ましくは26個未満、特に好ましくは23個未満のオキシアルキレン単位からなる。
【0044】
本発明に従って特に適切であり、従って好ましい尿素ウレタン樹脂は、最初にジイソシアネート、例えばトルエン-2,4-ジイソシアネートをポリオール、例えばポリエチレングリコールと反応させてNCO末端ウレタンプレポリマーを形成し、続いて第一級モノアミン及び/又は第一級ジアミン、例えばm-キシリレンジアミンと更に反応させることによって得ることができる。遊離イソシアネート基もブロックされたイソシアネート基も有さない尿素ウレタン樹脂が特に好ましい。このような尿素ウレタン樹脂は、希釈によって本発明による方法のコロイド水溶液を得ることができる水分散液の成分として、一次粒子のゆるい凝集体の形成を促進するが、これは水相中で安定化され、水分散液中の粒子状成分の沈降が大幅に防止される程度まで更なる凝集から保護される。この特性プロファイルを更に促進するために、遊離又はブロック化イソシアネート基も末端アミン基も有さない尿素ウレタン樹脂が、好ましくは成分(B)として使用される。従って、好ましい実施形態では、尿素ウレタン樹脂である成分(B)による増粘剤は、いずれの場合も、有機高分子化合物(A2)について前述した方法に従って決定される、8mg KOH/g未満、特に好ましくは5mg KOH/g未満、特により好ましくは2mg KOH/g未満のアミン価を有する。増粘剤は水相に実質的に溶解しているため、水分散液の非粒子状成分に割り当てることができ、成分(A2)は粒子状成分(A)に実質的に結合しているが、非粒子状成分中の高分子有機化合物の全体が、好ましくは16mg KOH/g未満、特に好ましくは10mg KOH/g未満、特により好ましくは4mg KOH/g未満のアミン価を有する活性化のコロイド水溶液を提供するための水分散液が好ましい。尿素ウレタン樹脂は、欧州薬局方9.0の01/2008:20503の方法Aに従って決定される、10~100mg KOH/gの範囲、特に好ましくは20~60mg KOH/gの範囲のヒドロキシル価を有することが更に好ましい。分子量に関して、1000~10000g/molの範囲、好ましくは2000~6000g/molの範囲の尿素ウレタン樹脂の重量平均モル質量は、本発明によれば有利であり、従って、いずれの場合も、本発明による高分子化合物の定義に関連して前述したように、実験的に決定されることが好ましい。
【0045】
補助剤を添加しない場合、本発明による方法の活性化のコロイド水溶液を提供するための分散液のpHは、通常6.0~9.0の範囲であり、従って、そのようなpH範囲が本発明によれば好ましい。しかしながら、活性化段階における実際の通常のアルカリ性コロイド水溶液との適合性のためには、アルカリ性様式で反応する化合物を添加する結果として、水分散液のpHが必要に応じて7.2超、特に好ましくは8.0超であることが有利である。いくつかの多価金属カチオンは両性特性を有し、従ってより高いpH値で粒子状成分から脱離することができるため、本発明による水分散液のアルカリ度は理想的には制限され、その結果、水分散液のpHは好ましくは10未満、特に好ましくは9.0未満である。
【0046】
コロイド水溶液を提供するための上述の水分散液は、その一部として、好ましくは、
i)10質量部の無機粒子状化合物(A1)を0.5~2質量部の高分子有機化合物(A2)と共に4~7質量部の水の存在下で研和し、例えばZetasizer(登録商標)Nano ZS、Malvern Panalytical GmbHによって水で1000倍に希釈した後、動的光散乱によって決定した場合に1μm未満のD50値に達するまで粉砕することによって顔料ペーストを提供すること;
ii)該顔料ペーストを、少なくとも5重量%の分散粒子状成分(A)及び毎秒0.001~0.25の剪断速度範囲における25℃の温度で少なくとも1000Pa・sの最大動粘度になるような量の水、好ましくは脱イオン水(κ<1μScm-1)又は上水、及び増粘剤(B)で希釈すること;並びに
iii)アルカリ性で反応する化合物を用いて、pHを7.2~10.0の範囲に設定することによって取得可能であり、
分散液の好ましい実施形態は、コロイド水溶液に関連して記載されるように、いずれの場合も必要に応じて提供される又は必要とされる量の対応する成分(A1)、(A2)及び(A)を選択することによって同様に得られる。
【0047】
水分散液はまた、例えば、保存剤、湿潤剤及び消泡剤から選択される補助剤を含有することができ、これらは関連する機能に必要な量で含有される。増粘剤ではなく、アルカリ性様式で反応する化合物でもない非粒子状成分中の補助剤、特に好ましくは他の化合物の含有量は、好ましくは1重量%未満である。本発明の文脈において、アルカリ様式で反応する化合物は水溶性であり(水溶性:κ<1μScm-1の水1kg当たり少なくとも10g)、最初のプロトン化工程では8.0を超えるpK値を有する。
【0048】
本発明による省資源方法制御は、連続で部材のリン酸亜鉛処理をする場合、すなわち、リン酸亜鉛処理のための前処理ラインの操作中、特に効果的である。従って本発明による方法の好ましい実施形態では、少なくとも1つの亜鉛の表面を有する金属材料から少なくとも部分的に構成される多数の特定の部材の大部分が、連続して処理される。連続での前処理は、本発明に従って、一連の部材がそれぞれ最初に活性化され、次にリン酸亜鉛化される場合であり、この目的のために一連の部材はシステムタンク内に設けられた活性化及びリン酸亜鉛処理用の浴に接触させられ、個々の部材が次々に、従って異なる時間に接触させられる。この場合、システムタンクは、活性化の目的のためにコロイド水溶液を入れる、又はリン酸塩処理の目的のために酸性水性組成物を入れる容器である。
【0049】
リン酸亜鉛処理のための酸性水性組成物へのアルカリ成分の持ち越しを低減するために、活性化(i)とリン酸亜鉛処理(ii)との間にすすぎ工程があってもよいが、金属表面の活性化を完全に維持するために、すすぎ工程は好ましくは省略される。すすぎ工程は、すすぎ液自体に含まれ、単に部材の金属表面とすすぎ液とを接触させることによって既に消費される金属元素系又は半金属元素系の活性成分を含まずに、先の湿式化学処理工程からの部材に付着することによって、処理される部材から持ち越される可溶性残分、粒子及び活性成分を完全に又は部分的に除去するためにのみ使用される。例えば、すすぎ液は、単純に水道水又は脱イオン水であってもよく、又は必要に応じて、すすぎ液によって濡れ性を改善するために界面活性化合物を含有するすすぎ液であってもよい。
【0050】
金属材料の活性化の目的である層形成リン酸亜鉛処理及び半結晶性コーティングの形成のため、方法工程(ii)におけるリン酸塩処理は、5~50g/Lのリン酸イオン、0.3~3g/Lの亜鉛イオン及びいくらかの遊離フッ化物を含む酸性水性組成物と表面を接触させることが好ましい。本発明によれば、リン酸イオンの量は、POとして計算される、オルトリン酸と、水に溶解したオルトリン酸の塩のアニオンとを含む。
【0051】
例えば、少なくとも部分的にアルミニウムからも製造される自動車体のリン酸亜鉛処理に必要とされるように、亜鉛の表面だけでなく鉄又はアルミニウムの表面も含む部材を層形成方法においてリン酸亜鉛化する限り、いくらかの遊離フッ化物又は遊離フッ化物イオンの供給源が、層形成リン酸亜鉛処理の方法に必須である。これに関して、酸性水性組成物中の遊離フッ化物の量が、少なくとも0.5mmol/kg、特に好ましくは少なくとも2mmol/kgである場合が有利である。遊離フッ化物の濃度は、リン酸塩コーティングが容易に拭き取ることができる接着性を主に有する値を超えるべきではない、というのも、これらの接着は、活性化のコロイド水溶液中の粒子状成分の量の不釣り合いな増加によっても回避することができないからである。従って、活性化(i)に続くリン酸亜鉛処理(ii)に基づく本発明の方法において、リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物中の遊離フッ化物の濃度が15mmol/kg未満、特に好ましくは10mmol/kg未満、特により好ましくは8mmol/kg未満であることもまた経済的に有利であるため好ましい。
【0052】
遊離フッ化物の量は、pH緩衝なしでフッ化物含有緩衝液で較正した後、関連する酸性水性組成物中、20℃でフッ化物感受性測定電極によって電位差測定により決定することができる。適切な遊離フッ化物イオン源は、フッ化水素酸及びその水溶性塩、例えば二フッ化アンモニウム及びフッ化ナトリウム、並びに元素Zr、Ti及び/又はSiの複合フッ化物、特に元素Siの錯体フッ化物である。従って、本発明によるリン酸塩処理プロセスでは、遊離フッ化物の供給源は、好ましくはフッ化水素酸及びその水溶性塩並びに/又は元素Zr、Ti及び/若しくはSiの錯体フッ化物から選択される。フッ化水素酸の塩は、Fとして計算される、60℃の脱イオン水(κ<1μScm-1)への溶解度が少なくとも1g/Lである場合、本発明の意味の範囲内で水溶性である。
【0053】
亜鉛で作られた金属材料の表面上の「ピンホーリング(pin-holing)」として知られているものを抑制するために、工程(ii)でリン酸亜鉛処理が行われる本発明によるそのような方法では、遊離フッ化物源が、元素Siの錯体フッ化物、特にヘキサフルオロケイ酸及びその塩から少なくとも部分的に選択されることが好ましい。ピンホーリングという用語は、リン酸塩処理の当業者によって、処理された亜鉛表面又は処理された亜鉛めっき若しくは合金亜鉛めっきされた鋼表面上の他の結晶性リン酸塩層中の非晶質白色リン酸亜鉛の局所堆積の現象を意味すると理解される。
【0054】
本発明による方法工程(ii)において、酸性水性組成物の好ましいpHは、2.5超、特に好ましくは2.7超であるが、好ましくは3.5未満、特に好ましくは3.3未満である。方法工程(ii)におけるリン酸亜鉛処理の酸性水性組成物中の遊離酸量はポイントで、好ましくは少なくとも0.4であるが、好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.0以下である。ポイントによる遊離酸の割合は、酸性水性組成物の試料体積10mlを50mlに希釈し、0.1N水酸化ナトリウム溶液でpH3.6に滴定することによって決定される。水酸化ナトリウム溶液のmLの消費量は、遊離酸のポイント数を示す。
【0055】
リン酸亜鉛処理用の添加剤の典型的な添加は、本発明の文脈においても同様に行うことができ、そのため方法工程(ii)の酸性水性組成物が、過酸化水素、亜硝酸塩、ヒドロキシルアミン、ニトログアニジン及び/又はN-メチルモルホリン-N-オキシド等の従来の促進剤、並びに層形成に良い影響を及ぼす水溶性塩の形態の金属マンガン、カルシウム及び/又は鉄のカチオンを更に含有することができる。方法工程(ii)におけるリン酸亜鉛処理用の酸性水性組成物中に合計で10ppm未満のニッケル及び/又はコバルトイオンが含まれる実施形態が、環境の観点から特に好ましい。
【0056】
本発明による方法では、実質的に有機のカバー層が塗布される過程で、後続の浸漬コーティングのための良好なコーティングプライマーが製造される。従って、本発明による方法の好ましい実施形態では、中間すすぎ及び/又は乾燥工程の有無にかかわらず、あるいは好ましくはすすぎ工程はあるが乾燥工程のないリン酸亜鉛処理に続いて、浸漬コーティング、特に好ましくは電気コーティング、特により好ましくは陰極電気コーティングが行われ、これは、好ましくはアミン変性ポリエポキシドを含む分散樹脂に加えて、イットリウム及び/又はビスマスの水溶性又は水分散性の塩を含有することが好ましい。
【国際調査報告】