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特表2023-538565凍結乾燥物保持体、その製造方法および基質を乾燥させる手順
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】凍結乾燥物保持体、その製造方法および基質を乾燥させる手順
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/19 20060101AFI20230901BHJP
   F26B 5/06 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
A61K9/19
F26B5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511917
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2021073167
(87)【国際公開番号】W WO2022038273
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】20191891.9
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カルマン, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】レマ マルティネス, カルメン
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァッハ, グレゴワール
(72)【発明者】
【氏名】ルーエムケマン, イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ズムスタイン, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ホーファー, パスカル マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ルツィオ, ヨナス
【テーマコード(参考)】
3L113
4C076
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB10
3L113AC24
3L113AC67
3L113BA36
3L113DA24
4C076AA29
4C076BB11
4C076FF70
4C076GG06
(57)【要約】
基質を凍結乾燥させるための凍結乾燥物保持体(10)は、細孔(1120)を有する三次元足場本体(110)を含む。足場本体(110)の細孔(1120)は、基質を受容および保持するように構成される。足場本体(110)は、足場本体(110)の細孔(1120)内に保持された基質への熱伝達を誘導するための、凍結乾燥における熱伝達特性を提供する足場材料から作製される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質を凍結乾燥させるための凍結乾燥物保持体(1;10;19)であって、
細孔(112;1120;1129)を有する三次元足場本体(11;110;119)を含み、
前記足場本体(11;110;119)の前記細孔(112;1120;1129)が、前記基質を受容および保持するように構成され、
前記足場本体(11;110;119)が、前記足場本体(11;110;119)の前記細孔(112;1120;1129)内に保持された前記基質への熱伝達を可能にするための凍結乾燥における熱伝達特性を提供する足場材料から作製される、凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項2】
前記足場材料が高熱伝導率を有する、請求項1に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項3】
前記足場材料の前記熱伝導率が5W/mK以上である、請求項2に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項4】
前記足場材料が不活性である、請求項1から3のいずれか一項に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項5】
前記足場材料が親水性であり、特に均一に親水性である、請求項1から4のいずれか一項に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項6】
前記足場本体(11;110;119)の前記細孔(112;1120;1129)が、前記基質の表面張力および粘度にしたがって前記細孔(112;1120;1129)の直径を寸法決めすることによって、前記基質を受容および保持するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項7】
前記足場本体(11;110;119)が端側面を有し、前記足場の前記細孔(112;1120;1129)のそれぞれが前記端側面の1つに開口部を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項8】
前記足場本体(11;110;119)の前記細孔(112;1120;1129)が、前記足場本体(11;110;119)の前記端側面の少なくとも2つの間に延在する通路である、請求項7に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項9】
前記足場本体(11;110;119)の前記細孔(112;1120;1129)が、約0.5mmから約5mm、約1mmから約5mm、約0.8mmから約1.2mm、約1.8mmから約2.2mm、または約3.5mmから約4.5mmの範囲内の直径を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項10】
前記足場本体(11;110;119)が円筒形状を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項11】
前記足場本体(11;110;119)の基部が、約15mmから約60mmの間の直径を有する、請求項10に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項12】
前記足場本体(11;110;119)がスポンジ状構造である、請求項1から11のいずれか一項に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項13】
前記足場本体(11;110;119)が、前記足場材料から作製されたフレーム構造(111;1110;1119)を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)。
【請求項14】
基質を凍結乾燥させるための凍結乾燥物保持体(1;10;19)の製造方法(2;20)であって、
前記凍結乾燥物保持体(1;10;19)に、凍結乾燥における前記基質への熱伝達を誘導するための熱伝達特性を有する足場材料から作製された三次元足場本体(11;110;119)を備えることを含み、
前記凍結乾燥物保持体(1;10;19)に前記足場本体(11;110;119)を備えることが、前記足場本体(11;110;119)に前記基質を受容および保持するように構成された細孔(112;1120;1129)を設けることを含む、方法(2;20)。
【請求項15】
前記足場本体(11;110;119)に細孔(112;1120;1129)を設けることが、前記基質の表面張力にしたがって前記足場本体(11;110;119)の前記細孔(112;1120;1129)を寸法決めすることを含む、請求項14に記載の方法(2;20)。
【請求項16】
前記足場本体(11;110;119)に細孔(112;1120;1129)を設けることが、前記基質の粘度にしたがって前記足場本体(11;110;119)の前記細孔(112;1120;1129)を寸法決めすることを含む、請求項14または15に記載の方法(2;20)。
【請求項17】
前記凍結乾燥物保持体(1;10;19)に前記足場本体(11;110;119)を備えることが、前記足場本体(11;110;119)を積層造形することを含む、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法(2;20)。
【請求項18】
前記足場本体(11;110;119)に細孔(112;1120;1129)を設けることが、前記細孔(112;1120;1129)を前記足場材料に穿孔することを含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法(2;20)。
【請求項19】
前記足場本体(11;110;119)の表面を処理して、その表面特性を適合させることを含む、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法(2;20)。
【請求項20】
前記表面特性が親水性を含む、請求項19に記載の方法(2;20)。
【請求項21】
基質を乾燥させる手順(3)であって、
請求項1から13のいずれか一項に記載の凍結乾燥物保持体(1;10;19)を取得することと、
前記凍結乾燥物保持体(1;10;19)の足場本体(11;110;119)を前記基質に浸漬することと、
前記凍結乾燥物保持体(1;10;19)の前記足場本体(11;110;119)の細孔(112;1120;1129)の内部で前記基質を凍結乾燥させることと
を含む、手順(3)。
【請求項22】
前記凍結乾燥物保持体(1;10;19)の前記足場本体(11;110;119)の前記細孔(112;1120;1129)の内部で前記基質を凍結乾燥させることが、前記凍結乾燥物保持体(1;10;19)の前記足場本体(11;110;119)が前記基質に浸漬されるときに、凍結乾燥機に前記凍結乾燥物保持体(1;10;19)を入れることを含む、請求項21に記載の手順(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、凍結乾燥物保持体に関し、より詳細には、そのような凍結乾燥物保持体の製造方法、ならびにそのような凍結乾燥物保持体を使用して基質を乾燥させる手順に関する。その種の保持体が使用されて、基質を効率的にフリーズドライさせ、それによって生成された凍結乾燥物を処理することができる。
【背景技術】
【0002】
背景技術
多くの化学、医薬、栄養および他の用途では、物質は乾燥形態で提供される。それにより、長い貯蔵寿命を達成するために、物質を可能な限り乾燥させることを目指すことが多い。これに関連して、物質を凍結乾燥またはフリーズドライすることが知られている。特に、例えば不適切な方法で加熱することなく、物質を穏やかに乾燥させることが必要または有益である場合、凍結乾燥が好ましいことが多い。
【0003】
例えば、多くの医療用途では、医薬品または製剤原料は、例えば、経口、静脈内、皮下、または髄腔内に液体形態で投与される。例として、静脈内投与のために、支持体上に懸架され、注入針を介して患者内に液体製剤原料または薬物希釈剤混合物を連続的に滴下することができる注入バッグを使用することが知られている。しかしながら、液体製剤原料に関連して、多くの医薬品、特に生物製剤は、液体形態では一般に不安定であるため、液体形態で適切な期間貯蔵および供給されることができない。より具体的には、多くの抗生物質および生物学的薬物は、液体形態では不安定であるため、それらの品質は、液体として維持されることができない。特に、振盪、微生物学的増殖、凝集などによって引き起こされるストレスは、薬物を損なう可能性がある。しかしながら、上述したように、薬物を粉末などの乾燥形態で供給することが知られており、それらは、液体形態と比較して本質的により安定で堅牢である。そして、乾燥薬物配合物は、投与直前に再構成または溶解される。さらに、同等またはより安定でないそのような薬物配合物のより多量の中間種は、薬物配合物へのさらなる加工の前に乾燥させることから利益を得ることができる。乾燥させることにより、初期貯蔵温度を、-40℃以下から周囲条件または2℃から8℃のみの冷蔵条件に上昇することができた。
【0004】
適切な衛生および品質基準を達成または維持するために、物質は、無菌環境などの特定の状態下で慎重に凍結乾燥されることが多い。それにより、物質は、通常、そこから貯蔵および供給のために他の容器またはパッケージに移送されることができるバイアルまたはバルクフリーズドライトレイなどの特定の容器で凍結乾燥される。次いで、適用または投与の直前に、物質が再構成される。典型的には、そのような手順は、むしろ精巧であり、間違いを起こしやすい。物質を移送する場合、損失または汚染のリスクがあり得る。例えば、凍結乾燥物質または凍結乾燥物は、典型的には、凍結乾燥物の輸送または移送などの機械的ストレスにさらされると破損しやすく、または脆くなる。これは、非常に効力がある製剤原料などの物質が比較的少量で提供される場合、および/または正確な量を取り扱う必要がある場合に特に重要であり得る。さらに、これは、製剤原料への曝露のリスクを増加させることによって高効力の製剤原料を調製する必要がある場合、介護者または臨床医を危険にさらす可能性がある。通常、例えば、層流空気流、アイソレータボックス、重ね手袋および保護スリーブの使用によって、患者のために製剤原料を調製する必要がある者を保護するために比較的大きな努力がなされる。
【0005】
さらにまた、特に工業レベルでは、凍結乾燥物の調製は、比較的非効率的であり得る。より具体的には、一般に、多くの場合の液体基質は、バイアルなどの容器内に提供され、バイアルは、その後に凍結乾燥機内に配置される。多くの場合、凍結乾燥機には、基質が装填された容器が配置される棚が設けられている。熱または熱エネルギーは、棚による容器を介したケーキへの伝導、および対流ならびに壁およびドアからの放射によるガスを介して凍結乾燥物に供給される。そのような手順は、典型的には、24時間を超えるなどの比較的長い時間を必要とする。さらにまた、バイアル内部の基質への熱伝達を正確に事前定義することができないため、均質な凍結乾燥物を達成することが困難な場合がある。
【0006】
さらに、医薬品または製剤原料が関与する場合、物質を取り扱う人は、比較的高い要求に直面する可能性がある。したがって、そのような用途は、特に比較的低熟練者または低教育者が関与する場合、間違いを起こしやすいことが多い。例えば、輸液バッグへの投与を目的とする場合、適切な処置を保証するためには、製剤原料の再構成および輸液バッグへの添加を含む製剤原料の調製が最も重要である。特に、非常に効力がある製剤原料が関与している場合、調製物が適切に行われることが保証されない場合、注入による治療は不適切である可能性があり、例えば、かなり低中所得国ではそうであることが多い。また、緊急事態などの調製速度が重要である用途では、非常に効力がある製剤原料の既知の調製は適切に効率的でないことが多い。
【0007】
したがって、その調製から開始してその投与で終了する消耗性凍結乾燥物の効率的なライフサイクルを可能にするシステムまたはプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
発明の開示
本発明によれば、この必要性は、独立請求項1の特徴によって定義される凍結乾燥物保持体によって、独立請求項14の特徴によって定義される凍結乾燥物保持体の製造方法によって、および独立請求項21の特徴によって定義される基質を乾燥させる手順によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
特に、一態様では、本発明は、細孔を有する三次元足場本体を含む、基質を凍結乾燥させるための凍結乾燥物保持体である。足場本体の細孔は、基質を受容および保持するように構成される。足場本体は、足場本体の細孔内に保持された基質、特に基質全体への熱伝達を可能にする、促進する、または誘導するために、凍結乾燥における熱伝達特性を提供する足場材料から作製される。
【0010】
本発明の文脈における凍結乾燥は、低温脱水プロセスであり、これは、基質を凍結し、圧力を下げ、次いで昇華および脱着によって氷を除去することを含む。凍結乾燥の結果は凍結乾燥物である。凍結乾燥(Lyophilisation)は、フリーズドライ(freeze drying)とも呼ばれる。凍結乾燥は、凍結乾燥ミクロスフェアを生成することができるバルクフリーズドライ、または噴霧乾燥をカバーすることができる。
【0011】
基質は、凍結乾燥を受けることを意図した任意の物質とすることができる。それは、特に液体または流体物質とすることができる。凍結乾燥物は、例えば、飲用、摂食などによって人によって消費されることを意図した栄養または食物物質とすることができる。また、分析用物質や化学プロセスに使用される物質であってもよい。しかしながら、好ましくは、凍結乾燥物は、モノクローナル抗体、抗体薬物コンジュゲート、抗体断片、ロックド核酸(LNA)、関連ウイルス粒子などの生物学的化合物を含むことができる凍結乾燥薬物配合物、特に非常に効力がある薬物配合物またはその中間体である。
【0012】
本明細書で使用される「薬物」という用語は、一般に医薬品有効成分(API)とも呼ばれる治療活性剤、ならびに複数のそのような治療活性物質の組み合わせに関する。この用語はまた、患者に液体または高粘性形態で投与される必要がある、例えば造影剤(例えば、MRI造影剤)、トレーサ(例えばPETトレーサ)およびホルモンなどの診断薬または造影剤も包含する。
【0013】
本明細書で使用される「薬物配合物」という用語は、上記定義された単一の薬物、または混合もしくは製剤化された複数のそのような薬物に関する。例えば、薬物に加えて、薬物配合物は、賦形剤および/または他の補助成分をさらに含むことができる。乾燥薬物配合物である場合、凍結乾燥物は、固体製剤、半固体または粉末状の製剤原料とすることができる。
【0014】
本明細書で使用される「製剤原料」という用語は、患者への投与に適した形態の上記定義された薬物配合物に関する。それにより、製剤原料は、純粋な薬物配合物または投与可能な形態で再構成、希釈または溶解された薬物配合物とすることができる。本発明の文脈における特に好ましい製剤原料は、経口または注射または注入である溶液、特に静脈内、皮下、髄腔内もしくは眼内投与などの非経口投与用の溶液である。
【0015】
本明細書で使用される「薬物製品」という用語は、製剤原料または複数の製剤原料を含む最終製品に関する。特に、薬物製品は、適切な投与量および/または投与のための適切な形態の製剤原料を有する、すぐに使用されることができる製品とすることができる。例えば、製剤は、可撓性容器などの取り扱いまたは貯蔵装置を含むことができる。
【0016】
薬物配合物に関連して使用される「効力」という用語は、所与の強度の効果を生じるのに必要な量に関して表される薬物活性の尺度とすることができる。したがって、「高効力」、「非常に効力がある」または同様の用語は、比較的少量または投与量で活性である配合物または物質に関することができる。換言すれば、非常に効力がある薬物配合物は、比較的低い濃度で所与の応答を誘発することができるが、より低効力の薬物配合物は、より高い濃度でのみ同じ応答を誘発することができる。効力は、薬物配合物の親和性および有効性の双方に依存することができる。そのような薬物配合物または物質の取り扱いは、投与の比較的小さな変動が有害であり得るため、比較的困難であり得る。
【0017】
数において、非常に効力がある薬物配合物は、ヒトにおいて体重1キログラム(kg)あたり約15マイクログラム(μg)以下の生物学的活性を有する薬物配合物として定義されることができる。これは、ヒトにおける約1ミリグラム(mg)以下の治療用量に相当する。したがって、非常に効力がある薬物配合物は、1.5μg/d以下の1日吸入許容曝露量(ADE)値を有し、0.15μg/mの指示的職業被爆限界(IOEL)値に換算される薬物として定義されることができる。特に、非常に効力がある薬物配合物は、クラス3B薬物などとすることができる。注入によって投与される非常に効力がある薬物配合物とともに使用される場合、本発明にかかる方法は特に有益であり得る。
【0018】
足場本体に関連して「三次元」という用語は、空間内の3つの方向全ての拡張に関することができる。それにより、本質的に空間内で一方向に延在しないシート状または板状の物体などの二次元物体と比較して、三次元物体は空間寸法を有する。
【0019】
細孔に関連する「基質を受容して保持する」という用語は、凍結乾燥物保持体の処理中に基質が細孔内に提供され、細孔内に留まるのに適した寸法の孔または空洞の構造に関することができる。それにより、細孔内への基質の提供は、足場本体を基質に浸漬すること、または足場本体内に基質を分配することによって達成されることができる。基質を細孔内に保持することは、基質の表面張力などによる保持を伴うことができる。それにより、基質の表面張力が高いほど、基質を保持することができる細孔の直径を大きくすることができる。
【0020】
足場本体の細孔は、足場本体の貫通孔または通路とすることができる。それらは、足場本体の周囲または境界の開口部を介してアクセス可能な、足場本体内のダクトのネットワークを形成することができる。
【0021】
細孔は、適切な形状および寸法にすることによって基質を受容および保持するように構成されることができる。それにより、例えば、細孔の直径は、関与する基質の種類に依存することができ、細孔の直径は、足場本体内で内側から外側に変化することができる。例えば、基質が比較的小さな粘度および/または比較的小さな表面張力を有する場合、細孔は、比較的小さな直径を有するように構成されることができ、または細孔の直径は、足場本体の内側から足場本体の外側に向かって減少して、粘性の低い材料を保持することができる。
【0022】
本発明にかかる凍結乾燥物保持体は、凍結乾燥中に基質全体への効率的な熱伝達を可能にする。特に、基質が足場本体によって受容されるときの足場材料と基質との間の比較的大きな接触面に起因して、熱が足場材料を介して基質に効率的に伝達されることができる。例えば、凍結乾燥機の棚に配置される場合、足場材料を介して棚から足場本体内に分配された基質全体に熱が伝達されることができる。この効率的な熱伝達のために、バイアルなどの容器内の一般的なフリーズドライと比較して、基質のかなり速い乾燥が可能である。例えば、図11に示すように、従来の20mm直径のガラスバイアルでは42時間を超える必要がある特定の基質の同じ投与量の凍結乾燥は、約4mm直径の細孔を有する合金足場本体を有する凍結乾燥物保持体では約16時間、約2mm直径の細孔を有する合金足場本体を有する凍結乾燥物保持体では11時間未満、および約1mm直径の細孔を有する合金足場本体を有する凍結乾燥物保持体では7時間未満かかることが実験で示されている。したがって、足場本体と基質との間の接触表面積の増加は、短縮された一次乾燥時間と相関することが示されることができた。凍結乾燥物保持体を使用することにより、凍結乾燥プロセスの効率が高められることができるため、凍結乾燥機の占有率も高められることができる。
【0023】
さらにまた、本発明にかかる凍結乾燥物保持体を使用することにより、熱伝達材料、すなわち足場材料と基質との間の最大距離が本質的に減少されることができる。これは、凍結乾燥物の比較的均一な乾燥が達成されるように、凍結乾燥中に基質内で比較的均一な熱分布を達成することを可能にする。
【0024】
さらに、本発明にかかる凍結乾燥物保持体は、凍結乾燥物の完全性の安定化を可能にする。特に、足場材料は、足場本体の細孔内部の凍結乾燥物を保護することができるように、比較的堅牢とすることができる。このように、凍結乾燥物、特にその正確な投与量が効率的に取り扱われることができる。凍結乾燥物の破砕または破壊は、凍結乾燥物の損失も防止されることができるように、足場本体によって防止されることができる。例えば、足場本体に保持された凍結乾燥物を希釈剤に移送することは、簡便かつ安全に行うことができる。このように、凍結乾燥物の投与量の精度および凍結乾燥物の操作上の安全性を高めることができる。それでも、希釈剤が提供される場合、凍結乾燥物は、足場本体から効率的に溶解または洗浄されることができる。したがって、製剤などの最終製品の調製は、簡単、正確かつ効率的とすることができる。
【0025】
足場材料は、医薬または医用物質の凍結乾燥に使用するのに適するように、有利には不活性であるか、または不活性状態で効率的に提供されることができる。いずれの場合でも、足場材料は、有利には、凍結乾燥される医薬または医用物質との化学的または他の反応を提供しないか、または同等に限定される。また、足場材料は、非浸出性とすることができる。それにより、特に、凍結乾燥される医薬または医用物質への粒子のいかなる通過も防止されるように十分に安定であるように構成されることができる。
【0026】
さらに、効率的な凍結乾燥を達成するために、足場材料は、足場本体の細孔内に基質を保持または維持することを可能にするように構成されなければならない。凍結乾燥される基質は、典型的には液体であるため、足場材料は、疎水性であるべきではなく、または基質との接触が意図される疎水性部分を含むべきではない。むしろ、足場材料は、特に基質に関して親水性または均一に親水性であることが好ましい。より具体的には、足場材料は、有利には、足場本体の表面において均一に親水性であり、足場本体の細孔内などで基質との接触が意図される。したがって、足場材料は、細孔を形成する足場本体の表面が親水性であるように構成されることができる。
【0027】
好ましくは、足場材料は、高熱伝導率を有する。有利な材料は、陽極酸化アルミニウムなどのアルミニウム、アルミニウム合金、海洋グレードのステンレス鋼、例えば自動化学会(SAE)316Lグレードのステンレス鋼などのステンレス鋼、チタン、または生体適合性フォトポリマー、ポリアミド、またはより具体的には、ポリカプロラクタム、ポリラウロラクタムもしくはポリ(ウンデカノ-11-ラクタム)(ナイロンのポリマー)などのポリマー材料とすることができる。それにより、「高熱伝導率」という用語は、材料に限定されず、基質全体へのより良好な熱分布を容易にする特性を設計する、基質への効率的な熱伝達を可能にする足場本体の特性に関することができる。特に、足場材料の熱伝導率は、5W/mK以上、または10W/mK以上、または100W/mK以上、または200W/mK以上、または300W/mK以上であることが好ましい。そのような足場本体は、凍結乾燥手順において特に効率的な熱伝達を可能にする。
【0028】
好ましくは、足場本体の細孔は、基質の表面張力および粘度にしたがって細孔の直径を寸法決めすることによって基質を受容および保持するように構成される。特に、細孔の直径は、基質の表面張力が細孔の内側に基質を保持するのに十分であるように成形されることができる。
【0029】
好ましくは、足場本体は、端側面を有し、足場の細孔のそれぞれは、端側面の1つに開口部を有することが好ましい。細孔に開口部を設けることにより、それらは、効率的に基質によって充填されることができる。
【0030】
それにより、足場本体の細孔は、好ましくは、足場本体の端側面の少なくとも2つの間に延在する通路である。関与する端側面は、特に、足場本体の反対側の端側面とすることができる。このように、基質は効率的に細孔、ひいては足場本体に対して供給され、および細孔、ひいては足場本体から溶出されることができる。
【0031】
好ましくは、足場本体の細孔は、約0.5mmから約5mm、特に約1mmから約5mm、約0.8mmから約1.2mm、約1.8mmから約2.2mm、または約3.5mmから約4.5mmの範囲内の直径を有する。そのような直径で寸法決めされた細孔は、多くの基質、特に薬物基質を受容および保持するのに適している。
【0032】
好ましくは、足場本体は、円筒形状または立方体形状を有する。円筒形状は、円形、楕円形もしくは多角形の基部または断面を有する円筒によって確立されることができる。それにより、足場本体の基部は、好ましくは、約15mmから約60mmの間の直径を有する。そのような円筒は、凍結乾燥物保持体の効率的な取り扱いを可能にする。特に、バイアルの取り扱い装置が使用されて凍結乾燥物保持体を取り扱うことができるように、円筒は、バイアルと同様に成形されることができる。より大量の中間基質の長期保存のために、円筒状足場本体は、長方形の基部または断面を有することができ、または立方体とすることができる。それにより、足場の基部は、約300mmから約800mmの間の長さおよび約200mmから約500mmの間の幅を有することができる。そのような長方形は、中間基質の効率的な取り扱いを可能にし、実験室または大規模凍結乾燥機においてバイアルおよびバルク凍結乾燥トレイを取り扱うために使用される長方形トレイと同様の形状である。
【0033】
好ましくは、足場本体は、スポンジ状構造である。そのようなスポンジ状構造は、足場材料に対して比較的高い割合の細孔を提供することを可能にする。
【0034】
好ましくは、足場本体は、足場材料からなるフレーム構造を有する。フレーム構造は、足場本体を確立し、効率的なリュフィリゼーションを達成するための特定の特性を提供することができる。
【0035】
別の態様では、本発明は、基質を凍結乾燥させるための凍結乾燥物保持体の製造方法である。本方法は、凍結乾燥物保持体に、凍結乾燥プロセス中に好ましくは基質全体への熱伝達を可能にし、誘導し、または促進するための熱伝達特性を有する、足場材料から作製された三次元足場本体を備えるステップを含む。それにより、凍結乾燥物保持体に足場本体を備えることは、足場本体に基質を受容および保持するように構成された細孔を設けることを含む。
【0036】
本発明にかかる製造方法および後述するその好ましい実施形態は、凍結乾燥物容器および上述したその好ましい実施形態のいずれかを効率的に製造することを可能にする。それにより、凍結乾燥物保持体およびその好ましい実施形態に関連して上述した効果および利益も同様に達成されることができる。
【0037】
有利な方法で足場本体の細孔を設計するために、基質の特性が関与し得る。それにより、本方法は、基質を分析するか、または基質の粘度もしくは他の特性などの基質の関連特性を取得するステップを含むことができる。
【0038】
特性が得られた場合、細孔の形状および寸法は、細孔内部への基質の特に効率的な浸漬および保持を可能にするように画定されることができる。特に、足場本体に細孔を設けることは、好ましくは、基質の表面張力にしたがって足場本体の細孔を寸法決めすることを含む。追加的または代替的に、足場本体に細孔を設けることは、好ましくは、基質の粘度にしたがって足場本体の細孔を寸法決めすることを含む。追加的または代替的に、基質の凝集に応じて、処理された滑らかなまたは粗い表面を足場本体に提供する。
【0039】
好ましくは、凍結乾燥物保持体に足場本体を備えることは、足場本体を積層造形することを含む。積層造形は、足場材料を押し出すプロセス、足場材料をバインダ分配するプロセス、足場材料をレーザ焼結するプロセス、足場材料をバインダ噴霧するプロセスなどとすることができる。
【0040】
有利には、積層造形は、3D印刷プロセスである。そのような積層造形は、足場本体の比較的複雑な形状を効率的に生成することを可能にする。このように、特定の基質に特に適した形状が効率的に作製され、足場本体に具現化されることができる。
【0041】
代替的または追加的に、足場本体に細孔を設けることは、好ましくは細孔を足場材料に穿孔することを含むサブトラクティブ製造ステップを含むことができる。そのような穿孔は、足場本体の積層造形の効率的な代替とすることができる。さらにまた、積層造形された足場本体は、そのような穿孔によって補完されることができる。
【0042】
それにより、足場本体の穿孔は、機械的穿孔、レーザ穿孔、ウォータージェット穿孔などの任意の適切な手段によって行うことができる。
【0043】
好ましくは、本方法は、足場本体の表面を処理してその表面特性を適合させるステップを含む。例えば、そのような処理は、表面を不動態化すること、表面を陽極酸化することなどを含むことができる。そのような処理によって、足場への基質の装填が改善されることができる。さらに、適切な処理によって表面特性を適合させることによって、細孔に対する基質の凝集または基質の希釈が改善されることができる。好ましくは、表面特性は、親水性および/または不活性を含む。
【0044】
さらなる他の態様では、本発明は、基質を乾燥させる手順であって、(i)上述した凍結乾燥物保持体を取得するステップと、(ii)凍結乾燥物保持体の足場本体を基質に浸漬するステップと、(iii)凍結乾燥物保持体の足場本体の細孔内部で基質を凍結乾燥させるステップと、を含む手順である。
【0045】
本発明にかかる手順は、堅牢で保護された形態で提供される凍結乾燥物を効率的に生成することを可能にする。それにより、凍結乾燥物保持体およびその好ましい実施形態に関連して上述した効果および利益は、以下に記載される本発明およびその好ましい実施形態にかかる手順によって達成されることができる。
【0046】
好ましくは、凍結乾燥物保持体の足場本体の細孔内部で基質を凍結乾燥させることは、凍結乾燥物保持体の足場本体が基質に浸漬されたときに凍結乾燥機に凍結乾燥物保持体を入れることを含む。このように、一般的な凍結乾燥機を使用した加速されたより効率的な凍結乾燥プロセスが達成されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本発明にかかる凍結乾燥物保持体、本発明にかかる凍結乾燥物保持体の製造方法、および本発明にかかる基質を乾燥させる手順は、例示的な実施形態により、添付の図面を参照して以下により詳細に記載される。
図1】本発明にかかる第1の実施形態の凍結乾燥物保持体を製造するための本発明にかかる方法の第1の実施形態を示している。
図2】本発明にかかる第2の実施形態の凍結乾燥物保持体を製造するための本発明にかかる第2の実施形態の方法を示している。
図3図2の凍結乾燥物保持体の平面図を示している。
図4図3の線A-Aに沿った図2の凍結乾燥物保持体の断面図を示している。
図5】本発明かかる第3の実施形態の凍結乾燥物保持体の斜視図を示している。
図6図5の凍結乾燥物保持体の平面図を示している。
図7図6の線B-Bに沿った図5の凍結乾燥物保持体の断面図を示している。
図8図5の凍結乾燥物保持体が構成されているセグメントのうちの1つの斜視図を示している。
図9】第1の実施形態の凍結乾燥物保持体を含む、本発明にかかる基質を乾燥させる手順の実施形態を示している。
図10図9の手順に関与した後の図2の凍結乾燥物保持体を示している。
図11】従来のガラスバイアル乾燥時間と比較した、本発明にかかる凍結乾燥物保持体の実験的に集められた乾燥時間の結果のチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
実施形態の説明
以下の説明では、特定の用語は便宜上使用され、本発明を限定することを意図しない。「右(right)」、「左(left)」、「上(up)」、「下(down)」、「下方(under)」、「上方(above)」という用語は、図における方向を指す。用語は、明示的に言及された用語と、それらの派生語および同様の意味を有する用語を含む。また、「下(beneath)」、「下方(below)」、「下方(lower)」、「上方(above)」、「上方(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」などの空間的に相対的な用語を使用して、図に示すように、別の要素または特徴に対する1つの要素または特徴の関係を説明することができる。これらの空間的に相対的な用語は、図に示されている位置と向きに加えて、使用中または動作中の装置の異なる位置と向きを包含することを意図している。例えば、図の装置が裏返されている場合、他の要素または特徴の「下」または「下方」として記述されている要素は、他の要素または特徴の「上」または「上方」になる。したがって、「下方」という例示的な用語は、上と下の位置と方向の双方を包含することができる。装置は、他の方法で方向付けられ(90度回転または他の方向に)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子がそれに応じて解釈され得る。同様に、様々な軸に沿う、および様々な軸の周りの動きの説明は、様々な空間装置の位置と方向を含む。
【0049】
様々な態様および例示的な実施形態の図および説明の繰り返しを回避するために、多くの特徴が多くの態様および実施形態に共通であることを理解されたい。説明または図からの態様の省略は、その態様がその態様を組み込んだ実施形態から欠落していることを意味するものではない。代わりに、明確にするため、および冗長な説明を回避するために、態様が省略されている場合がある。この文脈では、この説明の残りの部分に以下が適用される。図面を明確にするために、図に説明の直接関連部分で説明されていない参照符号を含む場合は、前または後の説明セクションを参照されたい。さらに、明確にするために、図面において部品の全ての特徴に参照符号が付されていない場合、同じ部品を示す他の図面を参照する。2つ以上の図の同様の数字は、同じまたは類似の要素を表す。
【0050】
図1は、本発明にかかる基質を凍結乾燥させるための凍結乾燥物保持体を製造する方法2の第1の実施形態を示している。第1の製造方法2は、基質としての流動性製剤原料の特性を取得するステップ21を含む。例えば、製剤原料の粘度、密度、表面張力などの特性が測定または評価されることができる。次に、ステップ22において、凍結乾燥物保持体の足場本体が設計される。それにより、足場本体の細孔の寸法および形状が、製剤原料の特性に応じて画定される。例えば、細孔の平均径や径の範囲は、製剤原料の表面張力を考慮して算出される。
【0051】
並行して、ステップ23において、AlSi10Mgなどの粉末などのアルミニウム合金粉末が得られる。それにより、堅牢な構造、基質に対する良好な適合性、基質に対する不活性、基質に対する適切な親水性および良好な熱伝達を提供することを可能にする合金が選択される。合金の熱伝導率は、例えば、10W/mK以上である。ステップ24において、粉末が3Dプリンタに充填され、足場本体の設計に関するデータが3Dプリンタにロードされる。次いで、3Dプリンタは、本発明にかかる第1の実施形態の凍結乾燥物保持体1の足場本体11を印刷する。
【0052】
凍結乾燥物保持体1は、一般にスポンジ状である。それは、フレーム構造111および細孔112を有する。上述したように、細孔は、製剤原料を受容および保持するような形状および寸法にされる。足場本体11は、上下端側面および周方向側端側面を有する円筒状である。足場の細孔112のそれぞれは、一方の端側面に開口部を有する。より具体的には、細孔は、端側面のうちの少なくとも2つの間に延在する足場本体11内の通路のネットワークを形成する。
【0053】
図2に、本発明にかかる基質を凍結乾燥させるための凍結乾燥物保持体10を製造する方法20の第2の実施形態を示している。第2の製造方法20は、基質としての流動性製剤原料の特性を取得するステップ210を含む。ここでも、製剤原料の粘度、密度および表面張力などの特性が測定または評価されることができる。次に、ステップ220において、凍結乾燥物保持体の足場本体が設計される。それにより、細孔の寸法および形状が製剤原料の特性に応じて画定される。
【0054】
ステップ230において、アルミニウム合金のブロックが得られ、円筒形に形成される。ステップ240において、足場本体の設計に応じた細孔が円筒形ブロック内に提供される。より具体的には、第2の実施形態の凍結乾燥物保持体10の足場本体110が結果として生じるように、貫通孔が機械的ドリルによって円筒形ブロックを貫通して穿孔される。
【0055】
足場本体110は、一般に円筒形であり、平行な垂直孔および水平孔1120がそれを通して穿孔される。図3の平面図に最もよく見られるように、垂直孔1120は直線状であり、足場本体110の上端側面から下端側面まで延在する。さらにまた、図4の断面図に最もよく見られるように、水平孔1120は直線状であり、一方の側端側面から反対側の側端側面まで延在する。図4から、第1の組の水平孔に対して、別の組の水平孔が一方の側端側面から反対側の側端側面まで第1の組と直交して延在していることも導き出されることができる。それにより、垂直孔および水平孔1120は、通路のネットワークが確立されるように相互接続される。穿孔によって除去されていない円筒形ブロックの部分は、足場本体110のフレーム構造1110を確立する。それにより、孔1120は、製剤原料を受容および保持するような形状および寸法の細孔を形成する。
【0056】
図5は、凍結乾燥物保持体19の第3の実施形態を示している。凍結乾燥物保持体は、上述した第1の方法2と同様の方法によって製造される。より具体的には、基質となる流動性製剤原料の特性が取得され、凍結乾燥物保持体19の足場本体が設計される。その後、ナイロン基材が取得され、3Dプリンタに充填される。さらに、足場本体の設計に関するデータが3Dプリンタにロードされる。次いで、3Dプリンタは、凍結乾燥物保持体19の足場本体119を印刷する。
【0057】
より具体的には、足場本体119は、図8に示すように、複数の三次元要素1139からなる。図6の平面図および図7の断面図に見られるように、要素1139によって形成された構造は、足場本体119を上下に延び、および横方向に貫通する水平および垂直通路を含む細孔1129を形成する。通路の特定のネットワークを提供することによって、足場本体119は、それが設計されている特定の基質または製剤原料を受容および保持するように具現化される。
【0058】
図9に、本発明にかかる基質としての流動性製剤原料を乾燥させる手順3の実施形態を示している。手順3は、第1の凍結乾燥物保持体1を取得するステップ31と、容器内の製剤原料を調製して取得するステップ32とを含む。ステップ33において、足場本体11を一定時間容器に入れることによって、または基質または製剤原料を凍結乾燥物保持体1に分配することによって、凍結乾燥物保持体1を製剤原料に浸漬する。温度を基質または製剤原料の凝固点未満に下げることによって、捕捉が確実にされることができる。それにより、足場本体11の細孔112に製剤原料が捕捉される。
【0059】
ステップ34において、凍結乾燥物保持体1は、容器から凍結乾燥機の棚に移送される。それにより、足場本体11の細孔112内に製剤原料が保持される。そこで、製剤原料は凍結乾燥され、熱が棚からフレーム構造111を介して細孔112内の製剤原料に伝達される。凍結乾燥機において処理された後、製剤原料の凍結乾燥物4は、足場本体11の細孔112内に埋め込まれる。それにより、足場本体11のフレーム構造111は、凍結乾燥物4に安定性および保護を提供する。
【0060】
図9は、図1の凍結乾燥物保持体1を含む手順3を示しているが、手順3は、図2の凍結乾燥物保持体10または図5の凍結乾燥物保持体19にも同様に適用されることができる。したがって、図9は、代替的に、凍結乾燥物保持体10または凍結乾燥物保持体19とともに示されることができる。例えば、図10は、製剤原料の凍結乾燥物4が足場本体110の細孔1120の内部に配置されるように手順3によって処理されている凍結乾燥物保持体10を示している。
【0061】
本発明の態様および実施形態を示すこの明細書および添付の図面は、保護される発明を定義する特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。換言すれば、本発明を図面および前述の明細書において詳細に例示および説明してきたが、そのような例示および説明は、実例的または例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。本明細書および特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な機械的、組成的、構造的、電気的、および動作的変更が行われることができる。いくつかの例では、本発明を不明瞭にしないために、周知の回路、構造、および技術は詳細に示されていない。したがって、以下の特許請求の範囲および趣旨の範囲内で当業者によって変更および修正が行われることができることが理解されよう。特に、本発明は、上記および下記の異なる実施形態からの特徴の任意の組み合わせを有するさらなる実施形態を包含する。
【0062】
本開示はまた、上記または以下の説明では説明されていない場合もあるが、個別に図に示される全てのさらなる特徴を網羅する。また、図面および説明に記載された実施形態の単一の代替形態およびその特徴の単一の代替形態は、本発明の主題または開示された主題から放棄されることができる。本開示は、特許請求の範囲または例示的な実施形態において定義された特徴からなる主題、ならびに前記特徴を含む主題を含む。
【0063】
さらにまた、特許請求の範囲において、「を備える」という語は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。単一のユニットまたはステップは、特許請求の範囲に記載のいくつかの特徴の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。属性または値に関連する「本質的に」、「約」、「およそ」などの用語はまた、特に、それぞれ属性または値を正確に定義する。所与の数値または範囲の文脈における「約」という用語は、例えば、所与の値または範囲の20%以内、10%以内、5%以内、または2%以内である値または範囲を指す。結合または接続されたと記載された構成要素は、電気的または機械的に直接結合されてもよく、または1つ以上の中間構成要素を介して間接的に結合されてもよい。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】