(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-08
(54)【発明の名称】反射光学素子、照明光学ユニット、投影露光装置、及び保護層を作成する方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20230901BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G02B5/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512235
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2021069248
(87)【国際公開番号】W WO2022037846
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】102020210553.7
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100229264
【氏名又は名称】清水 正一
(72)【発明者】
【氏名】サンドロ ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティン ヨナタン ボルジンガー
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ ハシュケ
【テーマコード(参考)】
2H042
2H197
【Fターム(参考)】
2H042DA02
2H042DA04
2H042DA05
2H042DA06
2H042DA07
2H042DA08
2H042DA10
2H042DA12
2H042DA18
2H042DB02
2H042DC02
2H042DC03
2H042DE04
2H197AA10
2H197BA02
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA06
2H197GA10
2H197GA12
2H197GA20
2H197GA30
(57)【要約】
本発明は、特に投影露光装置の照明光学ユニットの反射光学素子(17)であって、格子構造(29)を形成することが好ましい構造化面(25a)と、構造化面(25a)に適用された反射コーティング(36)とを備えた反射光学素子(17)に関する。反射コーティング(36)は構造化面(25a)を不連続に覆い、反射光学素子(17)は、構造化面(25a)を連続的に覆う少なくとも1つの保護層(37)を有する。本発明は、上記タイプの少なくとも1つの反射光学素子(17)を備えた投影露光装置(1)の照明光学ユニット(4)、当該タイプの照明光学ユニットを備えた投影露光装置、及び上記タイプの反射光学素子(17)に保護層(37)を作成する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に投影露光装置(1)の照明光学ユニット(4)の反射光学素子(17)であって、
格子構造(29)を形成することが好ましい構造化面(25a)と、
該構造化面(25a)に適用された反射コーティング(36)と
を備えた反射光学素子(17)において、
前記反射コーティング(36)は前記構造化面(25a)を不連続に覆い、且つ
反射光学素子(17)は、前記構造化面(25a)を連続的に覆う少なくとも1つの保護層(37)を有する
ことを特徴とする反射光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の反射光学素子において、前記構造化面(25a)、特に前記格子構造(29)は、60°よりも大きな、好ましくは80°よりも大きな、特に90°よりも大きな最大フランク急峻度(α)を有する反射光学素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の反射光学素子において、前記保護層(37)は、100nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下の厚さ(d)を有する反射光学素子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の反射光学素子において、前記反射コーティング(36)は、EUV放射線(16)の反射用の多層コーティングを形成する反射光学素子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の反射光学素子において、前記保護層(37)は、前記構造化面(25a)と前記反射コーティング(36)との間に形成される反射光学素子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の反射光学素子において、キャップ層(38)が前記反射コーティング(36)に適用される反射光学素子。
【請求項7】
請求項6に記載の反射光学素子において、前記保護層(37)は、前記構造化面(25a)を完全に覆う前記キャップ層を形成する反射光学素子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の反射光学素子において、前記構造化面(25a)は、基板(30)に適用された機能層(25)及び/又は前記基板(30)に形成される反射光学素子。
【請求項9】
請求項8に記載の反射光学素子において、前記機能層(25)及び/又は前記基板(30)は、アモルファスシリコン(aSi)、ケイ素(Si)、ニッケルリン(Ni:P)、特にチタン(Ti)、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及びそれらの合金の群からの金属、特に二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化アルミニウム(AlO
x)、酸化チタン(TiO
x)、酸化タンタル(TaO
x)、酸化ニオブ(NbO
x)、酸化ジルコニウム(ZrO
x)、及びそれらの組み合わせの群からの酸化物、特に混合酸化物、セラミックス、ガラス、ガラスセラミックス、複合材料を含む群から選択される少なくとも1つの材料を含む反射光学素子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の反射光学素子において、前記保護層(37)は、特に銅(Cu)、コバルト(Co)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、金(Au)、タングステン(W)、及びそれらの合金の群からの金属、特に酸化アルミニウム(AlO
x)、酸化ジルコニウム(ZrO
x)、酸化チタン(TiO
x)、酸化ニオブ(NbO
x)、酸化タンタル(TaO
x)、酸化ハフニウム(HfO
x)、酸化クロム(CrO
x)の群からの酸化物、炭化物、炭窒化物、ホウ化物、窒化物、ケイ化物、及びそれらの組み合わせ、特に混合酸化物、セラミックス、ガラス、ガラスセラミックス、複合材料を含む群から選択される少なくとも1つの材料を含む反射光学素子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の反射光学素子において、投影露光装置(1)の照明光学ユニット(4)のコレクタミラー(17)の形態である反射光学素子。
【請求項12】
投影露光装置(1)の照明光学ユニット(4)であって、請求項1~11のいずれか1項に記載の少なくとも1つの反射光学素子(17)を備えた照明光学ユニット。
【請求項13】
マイクロリソグラフィ用の投影露光装置(1)であって、放射源(3)からの照明放射線(16)を結像対象の構造を含むレチクル(7)に伝達するための請求項12に記載の照明光学ユニット(4)と、前記レチクル(7)の前記構造をウェハ(13)に結像するための投影光学ユニット(10)とを備えた投影露光装置。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の反射光学素子(17)に保護層(37)を形成する方法であって、
等方性コーティング法により前記構造化面(25a)又は前記反射コーティング(36)に前記保護層(37)を適用するステップ
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記等方性コーティング法は、化学蒸着、特に原子層堆積、又は物理蒸着を含む群から選択される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年8月20日の独国特許出願第102020210553.7号の優先権を主張し、その全開示内容を参照により本願に援用する。
【0002】
本発明は、特に投影露光装置の照明光学ユニットの反射光学素子であって、格子構造を形成することが好ましい構造化面と構造化面に適用された反射コーティングとを備えた反射光学素子に関する。本発明は、少なくとも1つの上記反射光学素子を含む投影露光装置の照明光学ユニット、当該照明光学ユニットを備えた投影露光装置、及び光学素子に保護層を形成する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
事実上全ての既知の材料が、EUV波長域の、すなわち約5nm~約30nmの波長の放射線に対して透過率が低いので、EUVリソグラフィ用の投影露光装置の照明光学ユニット及び投影光学ユニットは、特にミラーの形態の反射光学素子のみを通常は含む。ここで用いられるミラーは、EUV放射線を反射するために反射コーティングが適用される基板を有する。反射コーティングは、動作波長に対する干渉層系として働く多層コーティングとして構成され得る。動作波長が約13.5nmである場合、反射多層コーティングは、例えばモリブデン及びケイ素の交互層を有し得る。反射コーティングは、基板材料に直接適用することができるが、例えば研磨層として又は接着促進剤として基板を保護する働きをする1つ又は複数の機能層を反射コーティングと基板材料との間に配置することも可能である。
【0004】
反射光学素子の付近にある残留ガスは、EUV放射線を吸収するので、EUV放射線が投影露光装置を通過する際に透過率を低下させる。こうした理由で、EUVリソグラフィ用の投影露光装置は通常は真空条件下で作動される。真空環境中の残留ガスは、少量の水素及び/又は他の反応ガス、例えば酸素が混合されることがあるが、これらは特に反射光学素子に関して保護効果又は洗浄効果を発揮し、EUV放射線に対する吸収が僅かでしかない。
【0005】
投影露光装置の動作中、このような真空環境中ではEUV放射線の影響下で通常は水素プラズマが形成され、つまり、水素イオン又はフリー水素ラジカルの形態の活性化水素が形成される。水素イオン又はフリー水素ラジカルは、真空環境中に配置されたコンポーネントの露出面のエッチング浸食を引き起こす。
【0006】
露出面は、例えば、エッチング浸食を受ける表面に例えばケイ素を含有し得る反射光学素子の露出面領域であり得る。エッチング浸食により、表面に揮発性物質、例えばSiH3、SiH4(シラン)が形成され、これは、露出面の除去と同時に光学利用面上の揮発性物質の堆積を伴い得る。これは、そこで用いられる層材料の反射率低下又は劣化、ひいてはアンダーエッチング及び広域欠陥をもたらす。例えばミラー基板の(部分的な)露出面の材料に水素原子が浸透すると、応力がさらに生じ得ることで、層剥離につながり得る。水素原子はさらに、露出材料に浸透し、水素分子の形態で欠陥又は境界面に集まって逃げることができなくなり、これも同様に層剥離を招き得る。特にMo/Siの二重層の形態の反射コーティングは、反射コーティングが連続的であり例えば酸化により変化しない場合は、反射コーティングで覆われた表面領域での水素の浸透に対する保護層として働くことができる。
【0007】
例えば投影露光装置の照明光学ユニットのミラーの形態の反射光学素子は、格子構造の形態の構造化面を有し得る。格子構造は、不所望の例えば赤外線又は紫外線波長域にあり得る波長域内の放射線を除去するために分光フィルタとして働くことができる。反射コーティングがこのような構造化面に適用されている場合、そこに形成されるフランクのフランク急峻度が非常に大きいので、反射コーティングがコーティング時に構造化面を完全に覆わず、構造化面の露出面領域でエッチング浸食が起こり得るような隙間が反射コーティングに生じるという問題が起こる。
【0008】
特許文献1は、格子構造の形態の分光フィルタを有する投影露光装置の照明光学ユニット用のミラーを開示している。格子構造は、15°~60°の範囲の最大フランク急峻度を有する。格子構造は、複数の二重Si-Mo層を有し且つ反射コーティングを形成する連続的な保護層により完全に覆われ得る。格子構造のフランク急峻度が小さいことで、保護層での格子構造又は他の構造化面の被覆が改善され、このようにして反射光学素子の水素安定性が高まる。
【0009】
特許文献1に記載の解決手段において、問題は、構造化面又は格子構造の最大フランク角度が限られることにより光学素子の反射率の損失が生じることである。この反射率の損失は、例えば、このフランク領域の散乱光損失に起因して起こるものであり、その理由は、反射すべき放射線が光学ユニットにより定められる方向に反射されないからである。
【0010】
特許文献2は、EUV放射線を反射する複数の交互材料層を有する多層積層体が少なくとも片面に形成された基板を有する、EUV放射線を反射する反射光学素子を開示している。その面には、EUV放射線の波長よりもはるかに大きなスケールで3次元プロファイルの形態の分光フィルタが形成される。多層積層体は、3次元プロファイルの形成後に基板に形成された、表面に忠実な(従った)コーティングの積層体を有する。特許文献2には、多層積層体の適用に通常用いられるマグネトロンスパッタリングが、それぞれのケースで適用された層の高い表面粗さをもたらすと記載されている。したがって、多層積層体の適用のために提案されたコーティングプロセスは、原子層堆積の形態のコンフォーマル又は等方性コーティングのプロセスであり、これにより3次元プロファイルに沿って本質的に一定の層厚が得られる。しかしながら、50個を超える二重Mo-Si層を有し得る反射多層コーティングを原子層堆積により適用することは非常に複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2018 220 629号明細書
【特許文献2】国際公開第2013/113537号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、エッチング浸食からの構造化面の効率的な保護を可能にする、反射光学素子、照明光学ユニット、投影露光装置、及び保護層を形成する方法を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、反射コーティングが構造化面を不連続に覆い、且つ反射光学素子が構造化面を連続的に覆う少なくとも1つの(追加の)保護層を有する、前述のタイプの光学素子により達成される。
【0014】
本発明によれば、連続的な保護層として働くと共に構造化面の低フランク急峻度又は複雑且つ表面に忠実なコーティング方法を必要とする反射コーティングの形態の保護層の代わりに、構造化面を連続的に覆う追加の保護層を適用することが提案される。
【0015】
一実施形態において、構造化面、特に格子構造は、60°よりも大きな、好ましくは80°よりも大きな、特に90°よりも大きな最大フランク急峻度を有する。ここで、(最大)フランク急峻度は、反射光学素子の(局所的な)表面(例えば、基板の表面)の接線に対して、又は格子構造の場合は2つの格子ウェブ間の領域で測定される。
【0016】
特許文献1に示すように、反射コーティングは、概して、このような高フランク急峻度の場合には多層コーティングの形態で表面に忠実に適用することができない。それにもかかわらず、構造化面を連続的に覆う追加の保護層(単数又は複数)により、構造化面はエッチング浸食から効率的に保護され得る。例えばウェットケミカルエッチングで形成され得るような、90°よりも大きなフランク急峻度を有するフランク、すなわちアンダーエッチングされたフランクを覆うことも可能である。
【0017】
さらに別の実施形態において、保護層は、例えば100nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下の厚さを有する。上述のフランク急峻度で連続的な保護層を作成するために、比較的複雑な等方性コーティング法により保護層を適用することが通常は必要である。しかしながら、エッチング浸食からの構造化面の保護のために必要なのは、保護層の厚さを比較的小さくすることだけである。これに対して、概してはるかに大きな厚さを有する反射コーティングは、異方性コーティング法により適用され得る。このようなコーティング法は、さほど複雑ではないが、反射コーティングが構造化面を連続的に覆わなくなる。
【0018】
さらに別の実施形態において、コーティングは、EUV放射線の反射用の多層コーティングを形成する。このような多層コーティングは、動作波長の屈折率が高い材料及び動作波長の屈折率が低い材料の複数の交互層を通常は有する。材料は、例えばケイ素及びモリブデンであり得るが、動作波長に応じて他の材料の組み合わせが可能である。
【0019】
さらに別の実施形態において、保護層は、構造化面と反射コーティングとの間に形成される。反射コーティングの下に保護層を適用する場合、保護層は反射率の損失を引き起こさないので、これが好都合である。保護層の下の格子構造の下部格子構造又はさらなる構造化をもたらすために、保護層自体を構造化することも場合によっては可能である。
【0020】
さらに別の実施形態において、キャップ層が反射コーティングに適用される。キャップ層は、反射コーティングの下層をさらなる環境的影響から、例えば酸化から又はEUV放射源により発生するスズ汚染から保護する働きをする。特にスズ汚染の形態の汚染をキャップ層の表面から場合によっては除去できるような保護層の材料を選択することも可能である。キャップ層は、概して反射コーティングのように構造化面を連続的に覆わず、通常は異方性コーティング法により適用される。
【0021】
さらに別の実施形態において、キャップ層は、構造化面を完全に覆う保護層を形成する。この実施形態において、キャップ層は、通常は等方性コーティング法により適用され、構造化面又は格子構造の(急峻であり得る)フランクも連続的に覆うオーバーコートを形成する。キャップ層の形態の保護層は、場合によっては、上述のように反射コーティングと構造化面との間に配置されたさらに別の保護層と組み合わせることができる。キャップ層の場合に慣習的であるように、保護層又はキャップ層の材料は、EUV放射線の一部を吸収し、したがって反射光学素子の反射率を低下させる。キャップ層は単層であり得るが、キャップ層自体が異なる材料の2つ以上の層を有する多層コーティングを形成する可能性もある。
【0022】
さらに別の実施形態において、構造化面は、基板に適用された機能層及び/又は基板に形成される。機能層は、通常は加工が容易である(例えば、材料除去、研磨、エッチングによる構造化等による)。構造化面を形成するよう加工された機能層に加えて、他の機能層を基板に適用してもよいことが明らかであろう。例えば、これは、例えば材料除去、研磨等により反射光学素子の表面形状の形への加工を可能にする1つ又は複数の層を含み得る。機能層は、接着促進層又はそれに類するものでもあり得る。機能層(単数又は複数)よりもはるかに大きな厚さを有する反射光学素子の基板も、構造化面を有し得る。構造化面が機能層に部分的に且つ基板に部分的に形成される可能性もある。
【0023】
さらに別の実施形態において、基板及び/又は機能層は、アモルファスシリコン(aSi)、ケイ素(Si)、ニッケルリン(Ni:P)、特にチタン(Ti)、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及びそれらの合金の群からの金属、特に二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化チタン(TiOx)、酸化タンタル(TaOx)、酸化ニオブ(NbOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、及びそれらの組み合わせ(例えば、混合酸化物、セラミックス、ガラス、ガラスセラミックス、複合材料)の群からの酸化物を含む群から選択される少なくとも1つの材料を含む。前掲の特許文献1に記載のように、これらの材料は、特にEUV投影露光装置のコンポーネントに有用であることが分かった。
【0024】
さらに別の実施形態において、保護層は、金属、特に銅(Cu)、コバルト(Co)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、金(Au)、タングステン(W)等、及びそれらの合金、酸化物、特に酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化チタン(TiOx)、酸化ニオブ(NbOx)、酸化タンタル(TaOx)、酸化ハフニウム(HfOx)、酸化クロム(CrOx)、炭化物、ホウ化物、窒化物、ケイ化物、及びそれらの組み合わせ(例えば、混合酸化物、セラミックス、ガラス、ガラスセラミックス、複合材料)を含む群から選択される少なくとも1つの材料を含む。保護層は、単層から形成され得るが、保護層自体が異なる材料の2つ以上の層を有する多層コーティングを形成する可能性もある。
【0025】
保護層の材料(単数又は複数)は、いくつかの要求を満たさなければならない。第1に、保護層は、(薄い)保護層を通した水素分子(H2)、水素イオン(H+)、及びフリー水素ラジカル(H*)の拡散をほぼ防止するものとする。第2に、保護層又はその材料は、H2、H+、H*との化学反応及びスズとの化学反応を起こさないものとする。保護層は、特にシステムの動作の結果としての堆積物(例えば、スズ)の除去のために、高い熱安定性、高い還元・酸化安定性、高い耐EUV性、及び高い洗浄プロセス耐性も有するものとする。
【0026】
特に保護層が反射コーティングの下に適用される場合、保護層は、これが適用される基板又は機能層の粗さの悪化を引き起こすべきではない。保護層が、古いコーティングを除去して新たなコーティングと交換する改修プロセスと呼ばれるプロセスにおいて、比較的単純に除去されることができるか、又はこうしたプロセスにより浸食されない又は不都合に粗面化されないことも好都合である。上述の材料は、上述の要求のほとんどを満たす。
【0027】
さらに別の実施形態において、反射光学素子は、投影露光装置の照明光学ユニットのコレクタミラーの形態をとる。このようなコレクタミラーは、例えば、反射コーティングを有する表面に対応する1つ又は複数の楕円反射面及び/又は双曲反射面を有し得る。照明放射線は、斜入射(GI)で、すなわち45°よりも大きな入射角で、又は垂直入射(NI)で、すなわち45°よりも小さな入射角でコレクタミラーの反射面に入射し得る。
【0028】
コレクタミラーは、外来光、すなわちEUV波長域外の、例えば赤外又は紫外波長域の波長の放射線を抑制するために分光フィルタとして働く格子構造の形態の構造化面を通常は有する。反射光学素子がコレクタミラーの形態をとる必要は必ずしもなく、構造化面を有する任意の他の反射光学素子であってもよいことが明らかであろう。
【0029】
本発明の一態様は、上述の少なくとも1つの反射光学素子を備えた投影露光装置の照明光学ユニットに関する。反射光学素子は、例えば上述のコレクタミラーであり得る。
【0030】
本発明のさらに別の態様は、放射源からの照明放射線を結像対象の構造を含むレチクルに伝達するための上述のような照明光学ユニットと、レチクルの構造をウェハに結像するための投影光学ユニットとを備えた、マイクロリソグラフィ用の、特にEUVリソグラフィ用の投影露光装置に関する。
【0031】
さらに別の態様において、本発明は、等方性コーティング法により構造化面又は反射コーティングに保護層を適用するステップを含む、上述のような反射光学素子に保護層を形成する方法にも関する。
【0032】
上述のように、等方性コーティング法を用いて、高フランク急峻度のフランクを有する構造化面の場合でも連続的な保護層を適用することが可能である。これに対して、反射コーティングは、異方性コーティング法を用いて、例えばマグネトロンスパッタリング等のPVDコーティング法により適用することができる。反射コーティングの適用のための異方性コーティング法の使用は、反射コーティングが概して保護層よりも(はるかに)大きな厚さを有するので有利である。
【0033】
一変形形態において、等方性コーティング法は、化学蒸着(CVD)、特に原子層堆積(ALD)、又は物理蒸着(PVD)を含む群から選択される。コーティングがPVDにより適用される場合、これらの方法の実際の異方性を低減する特定の指向性幾何学的形状が通常は必要である。例えば傾斜配置であり得る複数の材料源を組み合わせることがここでは可能である。この場合、コーティングレートは、特定の入射角を抑制するシャドーイングにより制御することができる。さらに、コーティングされるミラーの傾斜又は枢動が可能である。
【0034】
保護層の適用に用いられる等方性コーティング法は、比較的低温で実行され得るので、基板の保護を可能にする。等方性コーティング法はさらに、上述のように構造化面のフランク急峻度が高くても、均一な被覆度の、すなわち本質的に一定の厚さの保護層の適用を可能にする。上記等方性コーティング法は、粗さが比較的小さな保護層の堆積も可能にする。これは、保護層が構造化面と反射コーティングとの間に形成される場合に特に好都合である。
【0035】
本発明のさらに他の特徴及び利点は、本発明に不可欠な詳細を示す図面の図を参照した以下の本発明の実施例の説明、及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。個々の特徴のそれぞれを、本発明の一変形形態において単独で又は任意の組み合わせで一緒に実施することができる。
【0036】
実施例を概略図に示し、以下の説明で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】EUVリソグラフィ用の投影露光装置の概略子午断面図である。
【
図2】格子構造を形成する構造化面の作成の処理手順の概略図である。
【
図3a】格子フランクのフランク急峻度が
図3bとは異なる
図2の構造化面の細部の概略図である。
【
図3b】格子フランクのフランク急峻度が
図3aとは異なる
図2の構造化面の細部の概略図である。
【
図4a】構造化面を不連続に覆う反射コーティングが構造化面に適用された、
図3aと同様の概略図である。
【
図4b】構造化面を不連続に覆う反射コーティングが構造化面に適用された、
図3bと同様の概略図である。
【
図5a】格子構造と反射コーティングとの間に形成されて格子構造を連続的に覆う保護層を有する、
図3aと同様の概略図である。
【
図5b】格子構造と反射コーティングとの間に形成されて格子構造を連続的に覆う保護層を有する、
図3bと同様の概略図である。
【
図6】保護層が反射コーティングに適用されて格子構造を連続的に覆う、
図5a、bと同様の概略図である。
【
図7】格子構造を不連続に覆うキャップ層が反射コーティングに適用された、
図5aと同様の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の図面の説明において、同じ又は同じ機能を有するコンポーネントには同一の参照符号を用いる。
【0039】
マイクロリソグラフィの投影露光装置1の必須構成要素について、
図1を参照して例として以下で説明する。投影露光装置1及びその構成要素の基本構成の説明は、ここでは限定的とみなすべきではない。
【0040】
投影露光装置1の照明系2と放射源3とは、物体面6の物体視野5の照明用の照明光学ユニット4を有する。ここで露光されるのは、物体視野5に配置されたレチクル7である。レチクル7は、レチクルホルダ8により保持される。レチクルホルダ8は、レチクル変位ドライブ9により特に走査方向に変位可能である。
【0041】
説明の目的で、直交xyz座標系を
図1に示す。x方向は図の平面に対して垂直に延びる。y方向は水平に延び、z方向は鉛直に延びる。走査方向は
図1においてy方向に延びる。z方向は物体面6に対して垂直に延びる。
【0042】
投影露光装置1は、投影光学ユニット10を備える。投影光学ユニット10は、物体視野5を像平面12の像視野11に結像する働きをする。レチクル7上の構造が、像平面12の像視野11の領域に配置されたウェハ13の感光層に結像される。ウェハ13は、ウェハホルダ14により保持される。ウェハホルダ14は、ウェハ変位ドライブ15により特にy方向に変位可能である。一方でのレチクル変位ドライブ9によるレチクル7の変位と、他方でのウェハ変位ドライブ15によるウェハ13の変位とは、相互に同期し得る。
【0043】
放射源3は、EUV放射源である。放射源3は、特に以下で使用放射線又は照明放射線とも称するEUV放射線16を出射する。特に、使用放射線は、5nm~30nmの範囲の波長を有する。放射源3は、プラズマ源、例えばLPP(「レーザ生成プラズマ」)源又はGDPP(「ガス放電生成プラズマ」)源であり得る。これは、シンクロトロンベースの放射源でもあり得る。放射源3は自由電子レーザ(FEL)であり得る。
【0044】
放射源3から発生する照明放射線16は、コレクタミラー17により集束される。コレクタミラー17は、1つ又は複数の楕円反射面及び/又は双曲反射面を有するコレクタミラーであり得る。照明放射線16は、斜入射(GI)で、すなわち45°よりも大きな入射角で、又は垂直入射(NI)で、すなわち45°よりも小さな入射角でコレクタミラー17の少なくとも1つの反射面に入射し得る。コレクタミラー17は、第1に使用放射線に対するその反射率を最適化するために、第2に外来光を抑制するために構造化且つ/又はコーティングされ得る。
【0045】
照明放射線16は、コレクタミラー17の下流の中間焦点面18の中間焦点を伝播する。中間焦点面18は、放射源3及びコレクタミラー17を有する放射源モジュールと照明光学ユニット4との間を分離し得る。
【0046】
照明光学ユニット4は、偏向ミラー19と、ビーム経路でその下流に配置された第1ファセットミラー20とを含む。第1ファセットミラー20は、以下で視野ファセットとも称する複数の個別第1ファセット21を含む。
図1は、例として上記ファセット21のいくつかのみを示す。照明光学ユニット4のビーム経路で、第1ファセットミラー20の下流に第2ファセットミラー22が配置される。第2ファセットミラー22は、複数の第2ファセット23を含む。
【0047】
照明光学ユニット4は、結果として二重ファセットシステムを形成する。この基本原理は、フライアイインテグレータとも称する。第2ファセットミラー22を用いて、個別第1ファセット21が物体視野5に結像される。第2ファセットミラー22は、物体視野5の上流のビーム経路で最後のビーム整形ミラー又は実際に照明放射線16に対する最終ミラーである。
【0048】
投影光学ユニット10は、複数のミラーMiを含み、これらには投影露光装置1のビーム経路におけるそれらの配置に従って連続番号を付す。
【0049】
図1に示す例において、投影光学ユニット10は、6個のミラーM1~M6を含む。4個、8個、10個、12個、又は任意の他の数のミラーMiでの代替も同様に可能である。最後から2番目のミラーM5及び最終ミラーM6はそれぞれ、照明放射線16のための通過開口を有する。投影光学ユニット10は、二重遮蔽光学ユニットである。投影光学ユニット10は、0.5よりも大きく、0.6よりも大きくてもよく、例えば0.7又は0.75であり得る像側開口数を有する。
【0050】
照明光学ユニット4のミラーと同様に、ミラーMiは、照明放射線16に対する高反射コーティングを有し得る。照明光学ユニット4のコレクタミラー17は、外来光を抑制するために、格子構造29を形成する構造化面25aを有する。格子構造29は、所定の波長域の、例えばIR波長域の外来光をフィルタリングするために分光フィルタとして働く。
【0051】
図2は、エッチングにより構造化することができるコレクタミラー17の機能層25に形成された構造化面25aの作成の処理手順の例の概略図を示す。構造化のために、フォトレジストの形態の構造化層26が最初に機能層25の領域に適用される。構造化層26は、後続のステップにおいてレーザ27を用いて選択的に露光される。さらなるステップにおいて、構造化層26の露光部分が除去される。構造化層26は、レーザ27による照射とは異なる方法で構造化することもできる。例えば、構造化層26は、リソグラフィプロセスで露光され得る。
【0052】
後続のエッチングステップにおいて、機能層25は、構造化層26をエッチングマスクとして用いて選択的にエッチングされ、機能層25に構造化面25aが形成される。構造化面25aは、格子構造29を形成し、その幾何学的形状は、分光フィルタとして働いてそれぞれ規定の波長域の波長の外来光を抑制するように選択される。
【0053】
機能層25は、ドライエッチング法又はウェットケミカルエッチング法を用いて構造化することができる。このエッチング法の詳細については、参照により全体を本願に援用する前述の特許文献1を参照されたい。
【0054】
図3aは、構造化層26の除去後の構造化面25aの、
図2に点線で表された細部を示す。構造化面25a又は格子構造29は、上面32及びフランク33をそれぞれが含む複数の格子ウェブ31を有する。底面35を有する溝34が、格子ウェブ31間にそれぞれ形成される。格子構造29を有する構造化された機能層25は、コレクタミラー17の基板30上に形成される。
【0055】
図2及び
図3aに示すものとは対照的に、構造化面25aが基板30に形成されてもよく、又は特許文献1に記載のように、構造化面25が機能層25に部分的に且つ基板30に部分的に形成されてもよい。
【0056】
機能層25又は基板30は、加工性又はエッチングによる構造形成性が高い少なくとも1つの材料を含む。機能層25又は基板30の材料は、例えば、アモルファスシリコン(aSi)、ケイ素(Si)、ニッケルリン、特にチタン(Ti)、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及びそれらの合金の群からの金属、特に二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化チタン(TiOx)、酸化タンタル(TaOx)、酸化ニオブ(NbOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、及びそれらの組み合わせの群からの酸化物(例えば、混合酸化物、セラミックス、ガラス、ガラスセラミックス、複合材料)であり得る。
【0057】
図3aに示す格子ウェブ31は、90°のフランク急峻度αを有するフランク33をそれぞれが有する。フランク急峻度αは、基板30の上面に対応する局所的な接平面に対して測定される。それと同等に、フランク33のフランク急峻度αは、フランク33に隣接する溝34の底面35に対応する接平面に対しても測定され得る。上述のように、基板30又はコレクタミラー17の表面が平面ではなく略楕円面及び/又は双曲面の幾何学的形状を有するので、フランク急峻度αは局所的な接平面に対して測定される。
【0058】
図3bは、フランク急峻度αが90°よりも大きく、すなわちフランク33にアンダーカットを形成する場合を示す。アンダーカットを有するこのようなフランク33は、例えば(指向性の)ウェットケミカルエッチングで作成され得る。
【0059】
図3a、bに示す急峻なフランク33の場合、又は通常は約60°よりも大きな(最大)フランク急峻度αの場合、従来のコーティング法により、例えばマグネトロンスパッタリングにより構造化面25aに反射コーティング36を適用する場合に構造化面25aの連続的な被覆を達成することは不可能であり、その代わりにフランク33の領域に反射コーティング36の結果として被覆の隙間ができる。したがって、構造化面25aの部分領域が露出し、上述のように、水素分子、フリー水素ラジカル、及び水素イオンによるエッチング浸食及び/又は上記劣化、例えば酸化を被る。機能層25の材料がケイ素を含む場合、このようなエッチング浸食はシラン(例えば、SiH
3、SiH
4)を形成し、これが光学利用面上に堆積することで、そこで用いられる層材料の、場合によってはアンダーエッチング及び広域欠陥をもたらす程度までの反射率低下又は劣化につながり得る。
【0060】
機能層25を反応性水素によるエッチング浸食から保護するために、
図5a、bに示す例では、保護層37が構造化面25aと反射コーティング36との間に形成される。反射コーティング36とは対照的に、保護層37は、構造化面25aを連続的に、すなわちフランク33の領域で全域にわたって隙間なく覆う。
【0061】
保護層37による構造化面25aの連続的な被覆を達成するために、保護層37は、等方性コーティング法により適用又は堆積される。図示の例の等方性コーティング法は原子層堆積だが、別の等方性CVDコーティング法又は適切に選択された指向性幾何学的形状で、これによりPVD法に通常存在する異方性が低減されるPVDコーティング法をこの目的で用いることも可能である。例えば、例えば傾斜配置であり得る複数の材料源を組み合わせることが可能である。この場合、コーティングレートは、特定の入射角を抑制するシャドーイングにより制御することができる。さらに、コーティングされる光学素子17の傾斜又は枢動が可能である。
【0062】
図示の例の保護層37の厚さdは、約5nmであり、概して厚さ100nmを超えない。保護層37の厚さが比較的小さいこと及び反射コーティング36に比べて層厚の制御に対する要求が若干少ないことにより、等方性コーティング法は、比較的扱いやすい複雑度で実行することができる。
【0063】
反射コーティング36は、モリブデン及びケイ素から形成された複数の二重層を有するEUV放射線16の反射用の多層コーティングである。二重層の数は、例えば30個~80個程度であり得るが、それよりも多くても少なくてもよい。対応して、反射多層コーティング36は、かなりの厚さを有する。したがって、等方性コーティングによる、例えば原子層堆積による反射多層コーティング35の適用は、非常に複雑となる。
【0064】
保護層37は単層を有し得るが、保護層37は、反射コーティング36のように異なる材料の複数の層を有する可能性もある。原理上、保護層37の材料(単数又は複数)は、保護層37を通した水素分子、水素イオン、及び水素ラジカルの拡散をできる限り防止するべきであると共に、これらの水素種との化学反応及び他の汚染物質、例えばスズとの化学反応を起こすべきではない。この目的で、保護層37は、特に銅(Cu)、コバルト(Co)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、金(Au)、タングステン(W)、及びそれらの合金の群からの金属、特に酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化チタン(TiOx)、酸化ニオブ(NbOx)、酸化タンタル(TaOx)、酸化ハフニウム(HfOx)、酸化クロム(CrOx)の群からの酸化物、炭化物、ホウ化物、窒化物、ケイ化物、及びそれらの組み合わせ(例えば、混合酸化物、セラミックス、ガラス、ガラスセラミックス、複合材料)を含む群から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0065】
特に、保護層37が構造化面25aと反射コーティング36との間に形成される場合、保護層37の粗さが小さい場合に好都合である。
【0066】
図6は、保護層37が等方性コーティング法を用いて反射多層コーティング36に適用されたキャップ層を形成する、コレクタミラー17を示す。保護層37は、この場合は反射コーティング36と反射コーティング36で覆われない構造化面25aの部分領域との両方を完全に連続的に覆う。
図6に示す例では、保護層37は同様に約10nm未満の厚さdを有し、EUV放射線16に対する吸収が比較的小さい材料又は材料の組み合わせから形成される。このように、保護層37がコレクタミラー17の反射率を過度に低下させないことを確実にすることが可能である。
【0067】
図7は、
図5a、bのように保護層37が構造化面25aと反射コーティング36との間に形成されたコレクタミラー17の例を示す。さらに、キャップ層38が反射コーティング36に適用される。
図6とは対照的に、
図7に示すキャップ層は、構造化面25aを連続的に覆うのではなく反射コーティング36の場合もそうであるように隙間を有するので、完全な保護層を形成しない。キャップ層38は、例えば、保護層37に関連して上述した材料の1つから形成され得る。原理上、
図5a、bに示す例でも、キャップ層38を反射コーティング36に適用することができる。キャップ層38は、
図6に示すように等方性コーティング法により、又は
図7に示すように異方性コーティング法により適用され得る。
【0068】
保護層37が、コレクタミラー17の場合だけでなく投影露光装置1の他の構造化された反射光学素子の場合にも、これらを水素プラズマのエッチング浸食から保護するために適用され得ることが明らかであろう。EUV波長域とは異なる波長の放射線を反射するよう設計された反射光学素子で、保護層を用いることも可能である。保護層37は、水素以外の化学元素によるエッチング浸食から構造化面25aを保護する働きもし得る。この場合、保護層37を形成する材料は、構造化面25aが保護されるべき化学元素に適合させるべきである。
【国際調査報告】