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特表2023-538826二酸化チタン含有ルテニウム化学機械研磨スラリー
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  • 特表-二酸化チタン含有ルテニウム化学機械研磨スラリー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】二酸化チタン含有ルテニウム化学機械研磨スラリー
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230905BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20230905BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230905BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230905BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622B
H01L21/304 622X
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
H01L21/304 621D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507437
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 US2021044179
(87)【国際公開番号】W WO2022031601
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/060,262
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】チン-ハオ チャン
(72)【発明者】
【氏名】チョン-ユアン コー
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA01
3C158CA04
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED08
3C158ED15
3C158ED24
3C158ED26
5F057AA14
5F057AA28
5F057BA15
5F057BB26
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA06
5F057EA15
5F057EA18
5F057EA22
5F057EA26
5F057EA29
5F057EA33
(57)【要約】
水系液体キャリアと、前記液体キャリア中に分散された酸化チタン粒子であって、前記酸化チタン粒子のX線回析パターンについてX:Y比が約0.05より大きくなるようにルチル及びアナターゼを含み、Xは約3.24Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示し、Yは約3.51Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示す、前記酸化チタン粒子と、約7~約10の範囲のpHと、を含む、からなる、又はから本質的になる化学機械研磨組成物。任意の実施形態において、約6~約9の範囲のpKを有するpHバッファーを更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系液体キャリアと、
前記液体キャリア中に分散された酸化チタン粒子であって、前記酸化チタン粒子のX線回析パターンについてX:Y比が約0.05~約0.5になるようにルチル及びアナターゼを含み、Xは約3.24Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示し、Yは約3.51Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示す、前記酸化チタン粒子と、
約7~約10の範囲のpHと、
を含む化学機械研磨組成物。
【請求項2】
前記pHが約7.5~約9.5の範囲にある請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約6~約9のpKを有するpHバッファーを更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
約0.05重量%~約1重量%の酸化チタン粒子を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
過酸化物化合物を更に含む請求項1に記載の組成物
【請求項6】
ルテニウム含有基板の研磨方法であって、
(a)基板を請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の研磨組成物に接触させることと、
(b)前記基板に対して前記研磨組成物を移動させることと、
(c)前記基板からルテニウム層の一部を除去するため前記基板を磨き、前記基板を研磨することと、
を含む方法。
【請求項7】
水系液体キャリアと、
前記液体キャリア中に分散された酸化チタン粒子であって、前記酸化チタン粒子のX線回析パターンについてX:Y比が約0.05より大きくなるようにルチル及びアナターゼを含み、Xは約3.24Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示し、Yは約3.51Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示す、前記酸化チタン粒子と、
約7~約10の範囲のpHと、
約6~約9の範囲のpKを有するpHバッファーと、
を含む化学機械研磨組成物。
【請求項8】
前記pHバッファーが、クエン酸、ビストリスメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリシン(トリスグリシン)、ジグリシン、リン酸水素二カリウム、トリエタノールアミン、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(3-プロパンスルホン酸)(HEPPS)、ジエタノールアミン、ビシン、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N-メチルジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記pHバッファーが約7.5~約9の範囲のpKを有する請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記pHバッファーが、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリシン(トリスグリシン)、ジグリシン、トリエタノールアミン、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(3-プロパンスルホン酸)(HEPPS)、ジエタノールアミン、ビシン、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N-メチルジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記pHバッファーが約8.0~約8.5の範囲のpKを有する請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記pHバッファーがトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
前記pHが約7.5~約9.5の範囲にある請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
約0.05重量%~約1重量%の酸化チタン粒子を含む請求項7に記載の組成物。
【請求項15】
前記pHバッファーの濃度が約0.3mM~約30mMの範囲にある請求項7に記載の組成物。
【請求項16】
前記pHが約7.5~約9.5の範囲にあり、前記pHバッファーが約7.5~約9の範囲のpKを有する請求項7に記載の組成物。
【請求項17】
前記酸化チタン粒子のX:Y比が約1より大きい請求項7に記載の組成物。
【請求項18】
前記酸化チタン粒子のX:Y比が約10より大きい請求項7に記載の組成物。
【請求項19】
前記酸化チタンが実質的に純粋なルチルである請求項7に記載の組成物。
【請求項20】
ルテニウム含有基板の研磨方法であって、
(a)基板を請求項7~請求項19のいずれか1項に記載の研磨組成物に接触させることと、
(b)前記基板に対して前記研磨組成物を移動させることと、
(c)前記基板からルテニウム層の一部を除去するため前記基板を磨き、前記基板を研磨することと、
を含む方法。
【請求項21】
(b)の前記移動が、前記基板及び研磨パッドに対して研磨組成物を移動させることを含み、
(c)における前記磨きが、前記研磨パッドを汚さない、
請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし。
【0002】
開示された実施形態は、金属層の化学機械研磨に関し、より詳細には、ルテニウム層を研磨するための二酸化チタン含有化学機械研磨組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスの前工程(FEOL)と後工程(BEOL)の両方において、種々の化学機械研磨(CMP)工程が使用されている。例えば、シャロートレンチアイソレーション(STI)は、トランジスタの形成前に用いられるFEOLプロセスで、シリコンウェハにオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)をインレイしたパターンを形成するものである。タングステンプラグ、配線、銅配線及びデュアルダマシンプロセスは、デバイスのトランジスタを接続する金属線のネットワークを形成するために使用されるBEOLプロセスである。これらのプロセスでは、誘電材料(TEOS等)に形成された開口部に金属層が堆積される。CMPは、誘電材料から余分な金属を取り除き、これにより導電性のプラグや配線を形成するために使用される。
【0004】
トランジスタの微細化が進むにつれて、従来の配線技術の利用はますます困難になってきている。近年、銅配線におけるタンタル/窒化タンタルバリアスタックの代替候補として、ルテニウム(Ru)が注目されている。また、ルテニウムは、次世代メモリーデバイスの最新のキャパシタにおける電極材料としても積極的に研究されている。半導体集積回路デバイスにルテニウムが使用される可能性があるため、ルテニウム含有基板を平坦化できるCMPスラリーのニーズが急速に高まっている。
【0005】
一般的に、タングステン、銅又は他の金属層を除去するために製造された市販のCMPスラリーは、特に最新のノードデバイスにおける、ルテニウムの研磨には不向きである。例えば、Ruは化学的活性が低く、硬い金属になる傾向がある。そのため、Ruの適切な除去速度を達成することは困難である。更に、不溶性のルテニウム酸化物が生成することでパッド汚れが生じ、欠陥が増加することが知られている。パッド汚れを生じさせずにルテニウム膜を高い除去速度で除去できるCMPスラリーが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
第1の化学機械研磨組成物は、水系液体キャリアと、前記液体キャリア中に分散された酸化チタン粒子であって、前記酸化チタン粒子のX線回析パターンについてX:Y比が約0.05~約0.5になるようにルチル及びアナターゼを含み、Xは約3.24Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示し、Yは約3.51Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示す、前記酸化チタン粒子と、約7~約10の範囲のpHとを含む、からなる、又はから本質的になる。
【0007】
第2の化学機械研磨組成物は、水系液体キャリアと、前記液体キャリア中に分散された酸化チタン粒子であって、前記酸化チタン粒子のX線回析パターンについてX:Y比が約0.05より大きくなるようにルチル及びアナターゼを含み、Xは約3.24Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示し、Yは約3.51Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示す、前記酸化チタン粒子と、約7~約10の範囲のpHと、約6~約9の範囲のpKを有するpHバッファーとを含む、からなる、又はから本質的になる。
【0008】
少なくとも1つのルテニウム層を含む基板の研磨方法が更に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】開示された主題及びその利点のより完全な理解のために、以下の説明を例示的な酸化チタン粒子のX線回折データを示す添付図面と組み合わせて参照する。
【0010】
[発明の詳細な説明]
第1の化学機械研磨組成物は、水系液体キャリアと、前記液体キャリア中に分散された酸化チタン粒子であって、前記酸化チタン粒子のX線回析パターンについてX:Y比が約0.05~約0.5になるようにルチル及びアナターゼを含み、Xは約3.24Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示し、Yは約3.51Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示す、前記酸化チタン粒子と、約7~約10の範囲のpHとを含む、からなる、又はから本質的になる。
【0011】
第2の化学機械研磨組成物は、水系液体キャリアと、前記液体キャリア中に分散された酸化チタン粒子であって、前記酸化チタン粒子のX線回析パターンについてX:Y比が約0.05より大きくなるようにルチル及びアナターゼを含み、Xは約3.24Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示し、Yは約3.51Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示す、前記酸化チタン粒子と、約7~約10の範囲のpHと、約6~約9の範囲のpKを有するpHバッファーとを含む、からなる、又はから本質的になる。
【0012】
開示された組成物及び方法は、先行技術に対する様々な技術的利点及び改良を提供し得る。例えば、開示された化学機械研磨組成物は、パッド汚れが最小限又は全くない、高いルテニウム研磨速度を提供する。
【0013】
研磨組成物は、液体キャリアに懸濁した酸化チタン砥粒を含む。液体キャリアは、研磨される(例えば、平坦化される)基板の表面への砥粒及び任意の化学添加物の適用を容易にするために使用される。液体キャリアは、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール等)、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、水及びこれらの混合物を含む、任意の適切なキャリア(例えば、溶媒)であってもよい。好ましくは、液体キャリアは、水、より好ましくは脱イオン水を含む、から本質的になる、又はからなる。
【0014】
開示された研磨組成物において、酸化チタン(チタニア)粒子は、ルチル構造を有する二酸化チタン又はルチル構造を有する酸化チタンと、アナターゼ構造を有する二酸化チタンを含む、から本質的になる、又はからなる。個々のチタニア粒子は、ルチル、アナターゼ、又はルチルとアナターゼの混合物を含んでも、から本質的になっても、又はからなってもよい。
【0015】
当業者に知られているように、二酸化チタンは少なくとも7つの多形で存在し、そのうちの4つは自然界に存在する。ルチル型、アナターゼ型及びブルッカイト型の3種類が一般的な型であり、ルチル型とアナターゼ型は一般的に合成によって得られる。いずれもTiOという同じ実験式を有するが、結晶構造はそれぞれ異なっている。ルチル型(以下、ルチル)は、二酸化チタンの中で熱力学的に最も安定な型である。ルチルの結晶構造は、Ti-O八面体が4つの陵を共有する正方晶である。アナターゼ型(以下、アナターゼ)は、Ti-O八面体が4つの陵ではなく4つの頂点を共有していることを除いて、ルチルに似た正方晶の結晶構造を持つ。アナターゼは、約915℃超の温度でより安定なルチルに自発的に転換する。ブルッカイト型は、一般的な3つの型の中で最も一般性が少なく、商業的にもほとんど使用されていないが、斜方晶系の結晶構造を持ち、750℃前後の温度で自発的にルチルに変換する。
【0016】
数多くの二酸化チタンの製造方法が、当該技術分野で知られている。合成方法には、気相合成と溶液相合成とが含まれている。二酸化チタンの気相合成では、気化したチタン(IV)化合物と水蒸気及び/又は酸素とを混合し、チタン(IV)化合物を加水分解して二酸化チタンを生成するために、気体流が加熱部に通される。このようにして生成された二酸化チタンは、気体流を冷却して粒子状の二酸化チタンを回収することにより単離される。例えば、米国特許第4,842,832号は、四塩化チタン又はチタンテトラアルコキシド化合物等の揮発性チタン(IV)化合物を気化し、その蒸気を水蒸気及び/又は酸素、及びキャリアガスと組み合わせ、得られたガス状混合物を気相で250~600℃の温度まで加熱する二酸化チタンの合成方法を教示している。そして、蒸気を冷却して、非晶質、ルチル、アナターゼ、又はそれらの混合物であり得る球状の二酸化チタン粒子が得られる。米国特許第4,241,042号は、四塩化チタン又はチタンテトラアルコキシド化合物のような加水分解性チタン(IV)化合物の液体エアロゾルを、任意に核剤存在下で、キャリアガス中の水蒸気に接触させて加熱し、二酸化チタンを合成する方法を記載している。その後、蒸気が冷却され、二酸化チタンの球状粒子が得られる。球状粒子は、回収工程の前又は後に、250~1100℃の熱処理工程を経ることができ、この熱処理工程は、ルチルである球状二酸化チタン粒子の割合を増加させる。
【0017】
二酸化チタンの溶液相合成もまた、当該技術分野において知られている。特定のルチル/アナターゼ比を有する二酸化チタン粒子の製造を可能にする方法は、文献でよく知られている。例えば、チタン(IV)塩の溶液からの沈殿による二酸化チタン粒子の製造は、ルチル及びアナターゼ型の粒子の混合物を生成し、ルチルとアナターゼの比率は、出発物質として使用される特定のチタン(IV)化合物及び特定の反応条件によって部分的に決まる(例えば、Wilska,Acta Chemica Scandinavica,8:1796-1801(1954)を参照)。
【0018】
二酸化チタンの相の含有量(すなわち、ルチルのアナターゼに対する重量比)は、多くの技術によって決定することができる。その適切な手法の一つとして、X線回折(XRD)がある。ルチルとアナターゼは、いずれも個々に純粋な結晶として、また特定の二酸化チタン試料中に共に存在する場合(個々の粒子、又はルチルとアナターゼの混合物を含む粒子として)、明確なピークを持つX線回折パターンを示す。ルチルとアナターゼの混合試料におけるピーク(すなわち、線)の強度比は、各結晶体の量が既知のルチルとアナターゼの混合物を調製し、それをX線回折することにより得られる検量線を用いることで、ルチルとアナターゼの濃度に相関させることができる。濃度の関数としての線強度は、ルチルとアナターゼで等しくないが、両方を含む試料中のルチルとアナターゼの線強度の比を決定することは、試料中のルチルとアナターゼの重量比の近似値として有用である。例えば、Wilska,supra.,及びそこに引用された文献を参照のこと。一般的に、ルチルの有用なX線回折線特性は約3.24Åのd間隔を有し、アナターゼの有用なX線回折線特性は約3.51Åのd間隔を有している。
【0019】
同一出願人による米国特許第7,803,711号は、酸化チタン粒子のX線回折パターンのX:Y比が0.5より大きい酸化チタン砥粒を有する研磨組成物を用いて基板を研磨する方法についての権利化を求めている(ここで、Xは約3.24Åのd間隔を有する前記X線回折パターンにおけるピークの強度を表し、Yは約3.51Åのd間隔を有する前記X線回折パターンにおけるピークの強度を表す)。‘711特許は更に、高いX:Y比(例えば、実施例1における比である3)を有する酸化チタン粒子を有する組成物が高い除去速度でルテニウムを研磨する一方、低いX:Y比(例えば、実施例1における比である0.33)を有する酸化チタン粒子を有する組成物が低い除去速度でルテニウムを研磨することを開示している。‘711特許では、ルチルがルテニウムと化学反応することで研磨速度を速めるという研磨メカニズムが提案されている。
【0020】
出願人は、従来考えられていたよりも著しく低いルチルのアナターゼに対する比を有する、特に0.5未満のX:Y比を有する酸化チタン粒子を有する研磨組成物を用いて、高いルテニウム除去速度を達成できることを予想外に発見した。例えば、X:Y比は、約0.05~約0.5(例えば、約0.05~約0.45)の範囲であってよい。液体キャリア中に分散された酸化チタン粒子を含む研磨組成物が開示される。前記酸化チタン粒子は、酸化チタン粒子のX線回折パターンが約0.05~約0.5(例えば、約0.05~約0.45)のX:Y比を有するように、ルチル及びアナターゼを含み、Xは約3.24Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示し、Yは約3.51Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示している。組成物のpHは、約7~約10である。
【0021】
他の及び/又は追加の実施形態において、開示される研磨組成物は、液体キャリア中に分散された酸化チタン粒子を含む。前記酸化チタン粒子は、酸化チタン粒子のX線回析パターンが、約0.05より大きい(例えば、約0.5より大きい、約1より大きい、約5より大きい、又は約10より大きい)X:Y比を有するようにルチル及びアナターゼを含み、Xは約3.24Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示し、Yは約3.51Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示す。組成物のpHは、約7~約11である。組成物は更に、約6~約9の範囲のpKを有するpHバッファーを含むと共に、任意で、過酸化水素などの過酸化物化合物を更に含む。ある好ましい実施形態では、酸化チタン粒子は、実質的に純粋なルチルであってもよい。
【0022】
酸化チタン砥粒は、望ましくは、実質的に純粋な酸化チタンである。しかしながら、研磨剤中に微量の不純物及びドーパントが存在してもよいことは理解されよう。例えば、シリコン(又は酸化シリコン)不純物(数重量パーセントまで)は、市販の酸化チタンにおいてよく知られている。更に、酸化チタンは、一般的に、ルチルのアナターゼに対する比に影響を与えるために、スズ化合物などのドーパントを用いて調製される。従って、酸化チタン粒子は、少量(例えば、約5重量%以下、又は約4重量%以下、又は約2重量%以下、又は約1重量%以下)の酸化チタン以外の物質(例えば、ケイ素化合物及び/又はスズ化合物を含む)を含んでもよい。
【0023】
酸化チタン粒子は、実質的に如何なる適切な粒子径を有していてもよい。液体キャリア中に懸濁させた粒子の粒径は、当業界において様々な手段を用いて定義することができる。例えば、粒子径は、粒子を包含する最小の球の直径と定義してもよく、例えば、CPS Disc CentrifugeのDC24000HRモデル(ルイジアナ州プレイリービルにあるCPS Instrumentsから入手可能)、又はMalvern Instruments(登録商標)のZetasizer(登録商標)等、多数の市販の装置を使用して測定することができる。酸化チタン粒子は、約10nm以上(例えば、約20nm以上、約30nm以上、約40nm以上、又は約50nm以上)の平均粒子径を有していてもよい。酸化チタン粒子は、約300nm以下(例えば、約250nm以下、約200nm以下、約150nm以下、又は約125nm以下)の平均粒子径を有していてもよい。従って、酸化チタン粒子は、上記両端値のいずれか2つの値に囲まれた範囲の平均粒子径を有していてもよい。例えば、酸化チタン粒子は、約10nm~約300nm(例えば、約20nm~約250nm、約40nm~約200nm、又は約50nm~約150nm)の範囲の平均粒子径を有してもよい。
【0024】
研磨組成物は、実質的に任意の適切な量の酸化チタン粒子を含んでもよい。研磨組成物は、使用時に約0.01重量%以上(例えば、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、又は約0.1重量%以上)の酸化チタン粒子を含んでもよい。研磨組成物はまた、使用時に約5重量%以下(例えば、約2重量%以下、約1重量%以下、又は約0.5重量%以下)の酸化チタン粒子を含んでもよい。従って、研磨組成物中の酸化チタン粒子の使用時濃度は、上記両端値のいずれか2つの値に囲まれた範囲であってもよい。例えば、研磨組成物中の酸化チタン粒子の量は、使用時で約0.01重量%~約5重量%の範囲(例えば、約0.02重量%~約2重量%、約0.05重量%~約1重量%、又は約0.1重量%~約0.5重量%)であってもよい。
【0025】
研磨組成物は一般的にアルカリ性であり、約7より大きいpHを有する。研磨組成物は、好ましくは、約7~約11の範囲(例えば、約7~約10、約7.5~約10、約7.5~約9.5、又は約8~約9)のpHを有する。研磨組成物のpHは、任意の適切な手段(もちろん所望のpHによる)により達成及び/又は維持され得ることが理解されよう。研磨組成物は、実質的にいかなる適切なpH調整剤又は緩衝系を含んでもよい。例えば、適切なpH調整剤には、硝酸、硫酸、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等が含まれ、適切な緩衝剤には、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム塩、プロピオン酸塩、それらの混合物等が含まれてもよい。
【0026】
ある好ましい実施形態では、研磨組成物は、約6~約9の範囲(例えば、約7.5~約9又は約8~約8.5)のpKを有するpHバッファーを更に含んでもよい。有利な一実施形態では、組成物は、pKが約7.5~約9pHの範囲(例えば、約8~約8.5)であるpHバッファーを含み、約7.5~約9.5(例えば、約8~約9)の範囲のpHを有している。
【0027】
pHバッファーが約6~約9の範囲のpKを有する例示的な実施形態では、pHバッファーは、例えば、クエン酸、ビストリスメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリシン(トリスグリシン)、ジグリシン、リン酸水素二カリウム、トリエタノールアミン、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(3-プロパンスルホン酸)(HEPPS)、ジエタノールアミン、ビシン、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N-メチルジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、又はこれらの混合物を含んでもよい。
【0028】
pHバッファーが約7.5~約9の範囲のpKを有する好ましい実施形態では、pHバッファーは、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリシン(トリスグリシン)、ジグリシン、トリエタノールアミン、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(3-プロパンスルホン酸)(HEPPS)、ジエタノールアミン、ビシン、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N-メチルジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、又はこれらの混合物を含んでもよい。
【0029】
pHバッファーが約8~約8.5の範囲のpKを有する最も好ましい実施形態では、pHバッファーは、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリシン(トリスグリシン)、又はこれらの混合物を含んでもよい。トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが最も好ましいpHバッファーである。
【0030】
pHバッファーを含む実施形態は、一般的に、ルテニウム除去を過度に阻害することなく所望の緩衝能力を達成するのに十分な量のpHバッファーを含む。例えば、研磨組成物中のpHバッファーの濃度は、使用時に約0.1mM以上(例えば、約0.2mM以上、約0.3mM以上、約0.5mM以上、又は約1mM以上)であってもよい。また、研磨組成物中のpHバッファーの濃度は、使用時に約100mM以下(例えば、約50mM以下、約30mM以下、約20mM以下、又は約10mM以下)であってもよい。従って、研磨組成物中のpHバッファーの使用時濃度は、上記両端値のいずれか2つの値に囲まれた範囲であってもよい。例えば、研磨組成物中のpHバッファーの使用点濃度は、約0.1mM~約100mM(例えば、約0.3mM~約30mM、又は約1mM~約10mM)であってもよい。適切なバッファーの濃度を選択するためには、ある種のトレードオフが必要になる場合がある。例えば、高濃度ではpHバッファーがルテニウム研磨速度を低下させる可能性がある一方で、低濃度では緩衝能力が不十分で、pHをパッド汚れを抑制するのに十分高い値に維持することができない可能性がある。
【0031】
研磨組成物は、特定のCMP操作に応じて、1つ以上の他の任意の化合物を含んでもよい。例えば、開示された研磨組成物は、任意に、酸化剤を更に含んでもよい。酸化剤は、スラリー製造工程中又はCMP操作の直前(例えば、半導体製造設備に設置されたタンク内)に研磨組成物に添加されてもよい。好ましい酸化剤には、過酸化物化合物が含まれる。過酸化物化合物は、一般的に、式R-O-O-Hを有することを特徴とし、ここでRは水素又はC1~C10アルキルである。好ましい過酸化物化合物には、tert-ブチルヒドロペルオキシドが含まれる。最も好ましい過酸化物化合物は、過酸化水素である。過酸化物化合物が存在する場合、研磨組成物は、典型的には、約0.1重量%以上(例えば、約0.2重量%以上、又は約0.5重量%以上)の過酸化物化合物を含む。研磨組成物は、一般的に、約10重量%以下(例えば、約5重量%以下、又は約2重量%以下)の過酸化物化合物を含む。従って、研磨組成物中の過酸化物の量は、上記両端値のいずれか2つの値に囲まれた範囲であってもよい。例えば、組成物中の過酸化物の量は、約0.1重量%~約10重量%(例えば、約0.2重量%~約5重量%、又は約0.5重量%~約2重量%)であってもよい。
【0032】
研磨組成物は、任意に、腐食/エッチング防止剤、消泡剤、カチオン性、アニオン性、両性、及び/又はノニオン性のポリマー及び/又は界面活性剤、安定剤、キレート剤、停止剤、界面活性剤等の他の任意成分を更に含む。開示された研磨組成物は、これらの点で明示的に限定されないことが理解されよう。
【0033】
研磨組成物は、任意に、殺生物剤を更に含んでもよい。殺生物剤は、任意の適切な殺生物剤、例えばイソチアゾリノン殺生物剤を含んでもよい。研磨組成物中の殺生物剤の量は、典型的には、使用時又は濃縮物中で、約1ppm~約50ppmの範囲にあり、好ましくは約1ppm~約20ppmの範囲にある。
【0034】
研磨組成物は、任意の適切な技術を使用して製造されてもよく、その多くは当業者に知られている。研磨組成物は、バッチ又は連続プロセスで製造されてもよい。一般的に、研磨組成物は、その成分を任意の順序で組み合わせることによって製造することができる。本明細書で使用される「成分」という用語は、個々の成分(例えば、酸化チタン粒子及びpHバッファー)を含む。
【0035】
例えば、酸化チタン粒子は、水性液体キャリア中に分散されていてもよい。そして、研磨組成物に成分を取り込むことが可能な任意の方法により、他の成分を添加、混合してもよい。過酸化物化合物を含む任意の組成物については、研磨組成物の製造中の任意の時点で過酸化物化合物を添加することができることが理解されよう。例えば、過酸化物化合物は、CMP操作の直前(例えば、CMP操作の約1分以内、又は約10分以内、又は約1時間以内、又は約1日以内、又は約1週間以内)に添加してもよい。また、研磨組成物は、CMP操作中に基板の表面(例えば、研磨パッド上)で成分を混合することによって製造されてもよい。
【0036】
また、本発明の研磨組成物は、使用前に妥当な量の水で希釈することを意図した濃縮液として提供してもよい。そのような実施形態では、研磨組成物濃縮物は、酸化チタン粒子及び他の任意の成分を、濃縮物を妥当な量の水(及び妥当な量で既に存在していない場合には任意の過酸化物化合物)で希釈すると、研磨組成物の各成分が、使用時点において各成分について上に挙げた妥当な範囲内の量で研磨組成物に存在するように含んでいてもよい。例えば、酸化チタン粒子は、濃縮物が等量の水(例えば、1等量の水、2等量の水、3等量の水、4等量の水、又は9等量の水のそれぞれ)で、適切な量の任意の酸化剤と共に希釈されたとき、各成分が、各成分について上記で定めた範囲内の量で研磨組成物中に存在するように、各成分が上述した使用時濃度の約2倍(例えば、約3倍、約4倍、約5倍、又は約10倍)の量で研磨組成物中に存在してもよい。更に、当業者には理解されるように、濃縮物は、他の成分が少なくとも部分的に又は完全に濃縮物に溶解することを確実にするために、最終研磨組成物に妥当な分量の水を含んでもよい。
【0037】
本発明の研磨組成物は、金属層及び/又は誘電体層を含む、実質的にいかなる基板を研磨するためにも使用することができる。ある実施形態では、研磨組成物は、ルテニウム金属層を含む基板を研磨するために特に有用であり得る。誘電体層は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)に由来する酸化ケイ素層等の金属酸化物、多孔質金属酸化物、多孔質若しくは非多孔質炭素ドープ酸化ケイ素、フッ素ドープ酸化ケイ素、ガラス、有機ポリマー、フッ化有機ポリマー、又は他の適切な高若しくは低k絶縁層であってもよい。
【0038】
本発明の研磨方法は、化学機械研磨(CMP)装置と組み合わせて使用するのに特に適している。典型的には、装置は、使用時に運動し、軌道運動、直線運動、又は円運動から生じる速度を有するプラテンと、プラテンに接触し、運動時にプラテンと共に移動する研磨パッドと、研磨パッドの表面に接触し相対移動することで研磨される基板を保持するキャリアを含む。基板の研磨は、基板を研磨パッド及び本発明の研磨組成物と接触させつつ載置し、その後、研磨パッドが基板に対して相対的に移動して、基板を研磨するために基板(本明細書に記載のルテニウム及び/又は誘電材料等)の少なくとも一部を磨くことにより行われる。
【0039】
基板は、任意の適切な研磨パッド(例えば、研磨面)と共に化学機械研磨組成物を用いることで平坦化又は研磨することができる。適切な研磨パッドには、例えば、織布研磨パッド及び不織布研磨パッドが含まれる。更に、適切な研磨パッドは、密度、硬度、厚さ、圧縮性、圧縮時に反発する能力、及び圧縮弾性率が変化する任意の適切なポリマーを含むことができる。適切なポリマーには、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、これらが一体的に形成されたもの、及びこれらの混合物等が含まれる。
【0040】
本開示は、多数の実施形態を含むことが理解されよう。これらの実施形態は、以下の実施形態を含むが、これらに限定されるものではない。
【0041】
第1の実施形態において、化学機械研磨組成物は、水系液体キャリアと、前記液体キャリア中に分散された酸化チタン粒子であって、前記酸化チタン粒子のX線回析パターンについてX:Y比が約0.05~約0.5になるようにルチル及びアナターゼを含み、Xは約3.24Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示し、Yは約3.51Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示す、前記酸化チタン粒子と、約7~約10の範囲のpHとを含んでも、からなっても、又はから本質的になってもよい。
【0042】
第2の実施形態は、第1の実施形態を含み、pHが約7.5~約9.5の範囲にある。
【0043】
第3の実施形態は、第1~第2の実施形態のいずれか1つを含み、約6~約9の範囲のpKを有するpHバッファーを更に含む。
【0044】
第4の実施形態は、第1~第3の実施形態のいずれか1つを含み、約0.05重量%~約1重量%の酸化チタン粒子を含む。
【0045】
第5の実施形態は、第1~第4の実施形態のいずれか1つを含み、更に過酸化物化合物を含む。
【0046】
第6の実施形態は、ルテニウム含有基板を研磨する方法を含む。この方法は、(a)基板を第1~第5の実施形態の研磨組成物のいずれか1つに接触させること、(b)研磨組成物を基板に対して移動させること、及び(c)基板を磨いて基板からルテニウム層の一部を除去し、それによって基板を研磨することを含む。
【0047】
第7の実施形態において、化学機械研磨組成物は、水系液体キャリアと、前記液体キャリア中に分散された酸化チタン粒子であって、前記酸化チタン粒子のX線回析パターンについてX:Y比が約0.05より大きくなるようにルチル及びアナターゼを含み、Xは約3.24Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示し、Yは約3.51Åのd間隔を有する前記X線回析パターンにおけるピークの強度を示す、前記酸化チタン粒子と、約7~約10の範囲のpHと、約6~約9の範囲のpKを有するpHバッファーとを含んでも、からなっても、又はから本質的になってもよい。
【0048】
第8の実施形態は、第7の実施形態を含み、pHバッファーは、クエン酸、ビストリスメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリシン(トリスグリシン)、ジグリシン、リン酸水素二カリウム、トリエタノールアミン、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(3-プロパンスルホン酸)(HEPPS)、ジエタノールアミン、ビシン、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N-メチルジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
第9の実施形態は、第7の実施形態を含み、pHバッファーは、約7.5~約9の範囲のpKを有する。
【0050】
第10の実施形態は、第9の実施形態を含み、pHバッファーは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリシン(トリスグリシン)、ジグリシン、トリエタノールアミン、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(3-プロパンスルホン酸)(HEPPS)、ジエタノールアミン、ビシン、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N-メチルジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
第11の実施形態は、第7の実施形態を含み、pHバッファーは、約8.0~約8.5の範囲のpKを有する。
【0052】
第12の実施形態は、第7~第11の実施形態のいずれか1つを含み、pHバッファーはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである。
【0053】
第13の実施形態は、第7~第12の実施形態のいずれか1つを含み、pHは約7.5~約9.5の範囲にある。
【0054】
第14の実施形態は、第7~第13の実施形態のいずれか1つを含み、約0.05重量%~約1重量%の酸化チタン粒子を含む。
【0055】
第15の実施形態は、第7~第14の実施形態のいずれか1つを含み、pHバッファーの濃度が約0.3mM~約30mMの範囲にある。
【0056】
第16の実施形態は、第7~第15の実施形態のいずれか1つを含み、pHは約7.5~約9.5の範囲にあり、pHバッファーは、約7.5~約9の範囲のpKを有する。
【0057】
第17の実施形態は、第7~第16の実施形態のいずれか1つを含み、酸化チタン粒子のX:Y比が約1より大きい。
【0058】
第18の実施形態は、第7~第16の実施形態のいずれか1つを含み、酸化チタン粒子のX:Y比が約10より大きい。
【0059】
第19の実施形態は、第7~第16の実施形態のいずれか1つを含み、酸化チタン粒子が実質的に純粋なルチルである。
【0060】
第20の実施形態は、ルテニウム含有基板を研磨する方法を含む。この方法は、(a)基板を第7~第19の実施形態の研磨組成物のいずれか1つに接触させること、(b)研磨組成物を基板に対して移動させること、及び(c)基板を磨くことにより基板からルテニウム層の一部を除去し、それによって基板を研磨することを含む。
【0061】
第21の実施形態は、第20の実施形態を含み、(b)における前記移動は、研磨組成物を基板と研磨パッドに対して移動すること、及び(c)における前記磨くことは研磨パッドを汚さない。
【実施例
【0062】
例1
5種類の酸化チタン含有組成物を調製し,X線回折で評価した。組成物1A中の酸化チタン粒子は、約100パーセントのルチルを含んでいた。組成物1Bの酸化チタン粒子は、約100%パーセントのアナターゼを含んでいた。組成物1A及び1Bは、1A及び1B粒子の混合物を含み、約25%のルチル及び75%のアナターゼ(1C)、約50%のルチル及び50%のアナターゼ(1D)及び約75%のルチル及び25%のアナターゼ(1E)を含む組成物1C、1D及び1Eを得るように混合された。
【0063】
組成1A~1Eの各サンプルを遠心分離して乾燥させ、酸化チタン粉末サンプルを得た。この粉末試料をX線回折により評価した。ルチルとアナターゼは、それぞれ異なるピークを持つX線回折パターンを示す。本例では、組成物1A~1Eから得られた酸化チタン粉末におけるピークの強度(すなわち、線)比を評価した。図には、X線回折曲線の例が描かれている。描かれているように、ルチルは約3.24Åのd間隔で特徴的なX線回折線を含み、アナターゼは約3.51Åのd間隔で特徴的なX線回折線を含む。表1は、組成物1A~1Eから得られた酸化チタン粉末のX/Y比を示し、ここでXは約3.24Åのd間隔有するX線回折パターンにおけるピークの強度を表し、Yは約3.51Åのd間隔を有するX線回折パターンにおけるピークの強度を表している。ピーク強度値は、ピーク最大値からバックグラウンドのX線カウントを差し引いたものである。
【0064】
【表1】
【0065】
表1及び図に記載されたデータから明らかなように、X:Y比は、ルチル含有量の増加とともに約0の値から約75%のルチルを有する組成物についての約1の値まで増加する。
【0066】
例2
18種類の研磨組成物を評価した。各組成物は0.2重量%の酸化チタンと1.0重量%の過酸化水素を含み、表2に示すようにpH値は3、5、8.5又は10であった。6つの異なる酸化チタンが評価された。組成物2A~2Dは、25のX:Y比を有する例1の組成物1Aと同じ酸化チタンを含んでいた。組成物2Eは、ルチル及びアナターゼが混合された酸化チタンを有するX:Y比が5.4の組成物を含んでいた。組成物2Fは、ルチル及びアナターゼが混合された酸化チタンを有するX:Y比が1.6の組成物を含んでいた。組成物2G~2Iは、ルチル及びアナターゼが混合された酸化チタンを有するX:Y比が約0.14の組成物を含んでいた。組成物2J~2Lは、ルチル及びアナターゼが混合された酸化チタンを有するX:Y比が約0.09の組成物を含んでいた。組成物2М~2Oは、ルチル及びアナターゼが混合された酸化チタンを有するX:Y比が約0.08の組成物を含んでいた。組成物2P~2Rは、アナターゼを含む酸化チタン砥粒を有するX:Y比が約0の組成物を含んでいた。
【0067】
組成物2A~2Rは、ルテニウムブランケットウェハ(Advantivから入手可能)を、POLI500研磨ツール(G&P Technologyから入手可能)を用いて研磨することによって評価した。ウェハは、直径200mm、ルテニウム膜厚3000Åであった。ウェハは、M2000研磨パッド(Cabot Microelectronicsから入手可能)を用いて、1.5psiのダウンフォース、93rpmのプラテン速度、87rpmのヘッド速度、及び70mL/minのスラリー流量で研磨された。パッドは、3M-A165コンディショナーを使用して、9lbsのダウンフォース、101rpmのコンディショニング速度で、ex-situ(ウェハ間)でコンディショニングされた。
【0068】
各組成物について得られた酸化チタンのX:Y比、組成物のpH、及びルテニウム除去速度を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示した結果から容易に明らかなように、ルテニウム除去速度は、pHが高くなるにつれて低下する。更に、X:Y比が0.08であり、pHが8.5である本発明の組成物2Nは、高いルテニウム除去速度を有することが確認された。
【0071】
例3
パッド汚れに対する種々のpHバッファーの効果を評価するために、15種類の研磨組成物を試験した。各組成物は、X:Y比が25の例1の組成物1Aと例2の組成物2Cとで用いられた酸化チタン0.2重量%、過酸化水素を1.0重量%含み、初期pH8.5であった。組成物は更に、3mM(0.003M)のpHバッファーを含んでいた。pHバッファーは表3に記載されている。
【0072】
ラボスケールの試験装置を用いて、直径2cmのM2000パッドサンプル(Cabot Microelectronicsから入手可能)を、30グラムの研磨組成物に浸したルテニウムディスクに対して回転させ、研磨組成物を評価した。パッドを3psiのダウンフォースで400rpmで120秒間回転させた。実験終了後、パッドを研磨組成物から取り出し、パッドの汚れを目視で評価した。残った研磨組成物の最終的なpHを測定した(パッド汚れ試験終了後)。パッド汚れ実験の結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
表3に記載のデータから容易に明らかなように、約6~約9の範囲のpKを有するpHバッファーを含む組成物(3D~3K)は、対照組成物(3A)と比較して、パッド汚れが著しく減少していた。更に、pKが約8~約8.5の範囲にあるpHバッファーを含む組成物3I及び3Jは、パッド汚れが無かった。
【0075】
例4
更に、3種類の研磨用組成物について、パッド汚れの評価を行った。組成物4Aは組成物2Aと同一であった。組成物4Bは、組成物2Cと同じであった。組成物4Cは、組成物4A及び4Bで使用したのと同じ酸化チタンを0.3重量%、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンpHバッファーを0.05重量%(500重量ppm)(4.1mM)、そして過酸化水素を1重量%含み、pH8.5(硝酸を用いて調整)であった。
【0076】
ルテニウムブランケットウェハ(例2において上述したのと同じウェハ)を、POLI500研磨ツール(G&P Technologyから入手可能)を使用して研磨した。全てのウェハを、プラテン速度93rpm、ヘッド速度87rpm、及びスラリー流量70mL/分で、M2000研磨パッド(Cabot Microelectronicsから入手可能)上で研磨した。各組成物には、新しいパッドが使用された。パッドは、ダウンフォース9lbs、コンディショニング速度101rpmで、3M-A165コンディショナーを使用して、ブレークインのために30分間、ウェハ1枚おきの間に3分間コンディショニングされた。組成物4A及び4Bは、1.5psiのダウンフォースで研磨された。組成物4Cは、2.3psiのダウンフォースで研磨された。
【0077】
研磨パッドは、パッドの汚れを目視で確認した。組成物4Aを用いて1枚のウェハのみを研磨した。濃いパッド汚れが観察された。
【0078】
12枚のウェハを組成物4Bを用いて研磨した。中程度のパッド汚れが観察された。平均ルテニウム除去速度は354Å/分であった。
【0079】
22枚のウェハを組成物4Cを用いて研磨した。パッド汚れは観察されなかった。平均ルテニウム除去速度は352Å/分であった。
【0080】
容易に明らかなように、パッド汚れは、pHを3から8.5に上げることによって著しく減少し(4Aと4Bとの比較)、適切なバッファーを用いて(より高いダウンフォースでも)完全に排除することができる(4Bと4Cとの比較)。
【0081】
例5
ルテニウム研磨速度に対するpHバッファーの効果を評価するために、8つの研磨組成物を試験した。各組成物は、組成物1A(例1)において上述した酸化チタンを0.2重量%、過酸化水素を1重量%含み、pH8.5(硝酸を用いて調整した)であった。組成物5Aは、pHバッファーを含まなかった。組成物5B~5Hは、0.005M(5mM)のpHバッファーを含んでいた。pHバッファーとそれに対応するpKの値を表5に示す。
【0082】
組成物5A~5Hを、例2において上述したように、POLI500研磨ツール(G&P Technologyから入手可能)を使用してルテニウムブランケットウェハ(Advantivから入手可能)を研磨することによって評価した。ウェハの直径は200mm、ルテニウム膜の厚さは3000Åであった。ウェハは、M2000研磨パッド(Cabot Microelectronicsから入手可能)を用いて、ダウンフォース1.5psi、プラテン速度93rpm、ヘッド速度87rpm、及びスラリー流量70mL/分で研磨された。パッドは、ダウンフォース9lbs、コンディショニング速度101rpmで3M-A165コンディショナーを使用して、ex-situ(ウェハ間)でコンディショニングされた。ルテニウム除去速度を表5に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
表5に記載のデータから容易に明らかなように、ルテニウム研磨速度は、pHバッファーの添加により減少する。組成物5Dは、バッファーされた組成物の中で最も高い研磨速度を有することが分かった。組成物3I(例3)及び4C(例4)は、同じpHバッファーを含み、パッド汚れを示さなかった。
【0085】
本発明を説明する文脈における(特に以下の請求項の文脈における)用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の参照語の使用は、本明細書において別途示されるか又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方をカバーするように解釈されるものとする。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」は、特に断りのない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「~を含むが、~に限定されない」という意味)として解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で特に指示されない限り、範囲内に入る各個別の値を個別に参照するための省略法として役立つことを意図しているだけであり、各個別の値は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれている。本明細書に記載されたすべての方法は、本明細書に特に示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾する場合を除き、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意の及びすべての例、又は例示的な言語(例えば、「等」)の使用は、単に本発明をより明確にすることを意図しており、特に請求しない限り、本発明の範囲に制限をもたらすものではない。本願明細書のいかなる文言も、請求項に記載されていない要素が発明の実施に不可欠であると解釈されるべきではない。
【0086】
この発明の好ましい実施形態は、この発明を実施するために本発明者らに知られているベストモードを含めて、本明細書に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がこのような変形を適宜採用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載された以外の方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載された主題の、適用される法律によって許されるすべての変更及び均等物を含むものである。更に、そのすべての可能な変形における上述した要素の任意の組み合わせは、本明細書に別途示されるか、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
図1
【国際調査報告】