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特表2023-539027液体ハンドリングロボット用の把持検出システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】液体ハンドリングロボット用の把持検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
G01N35/10 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506214
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 US2020044547
(87)【国際公開番号】W WO2022025924
(87)【国際公開日】2022-02-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフ,アダム
(72)【発明者】
【氏名】マジネリ,ポール
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058ED02
2G058ED20
2G058ED35
2G058GB08
2G058GB10
2G058GE10
(57)【要約】
液体ハンドリングロボットは、1セットのピペットチップを保持するラックを支持する作業台を有する。また、液体ハンドリングロボットは、作業台の上に動作可能に懸架されるアームを有し、このアームは、1セットのピペットチップを係合するように構成されるチップレシーバを含む。この液体ハンドリングロボットのコントローラは、チップレシーバを持ち上げて作業台から離し、ラックから係合された1セットのピペットチップを取り出すように構成される。センサは、作業台に対して固定され、ビームを放出するように動作可能である。マイクロコントローラは、アームがチェック位置にある状態でセンサを監視し、ラックがビームを遮断して、ラックがピペットチップに貼着されていることを示すかどうかを判定するが、この貼着は、液体ハンドリングロボットが是正処置を実行することによって自律的に解決される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体容器を支持するように構成された作業台を有するステーション構造体と、
1セットのピペットチップを前記ステーション構造体に対してホームポジションに保持するように構成されたラックであって、ラックスタック内に配置された前記ラックと、
前記ステーション構造体に結合された液体ハンドリングロボットであって、前記液体ハンドリングロボットは前記作業台の上に懸架されたアーム、及び前記作業台に対する前記アームの運動を制御するように構成されたコントローラを備え、前記アームは1セットのピペットチップをラックから係合するように構成されるチップレシーバを備え、
前記コントローラは前記アームを前記ラックの上の位置に移動させ、前記チップレシーバを前記ラック内に保持された前記1セットのピペットチップと係合させ、前記チップレシーバを持ち上げて前記ホームポジションから離し、前記係合された1セットのピペットチップを前記ラックから取り出し、前記係合した1セットのピペットチップを前記液体容器に移動させて、液体を前記液体容器から引き出し、前記チップレシーバと係合した前記1セットのピペットチップのうちの少なくとも1つのチップ内に入れるように構成される、
前記液体ハンドリングロボットと、
ビームを放出し、前記ビームの遮断を感知するように構成されたセンサであって、前記センサは前記ステーション構造体、または前記液体ハンドリングロボットの前記アームに結合され、
前記チップレシーバが前記ラック内に保持された前記1セットのピペットチップを係合し、前記係合したチップが前記ホームポジションから持ち上げられた後、前記チップレシーバと係合した前記1セットのピペットチップと前記ラックが摩擦係合するジャム状態では、前記ビームは前記ラックに接触するように位置決めされる、
前記センサと、
前記センサと前記液体ハンドリングロボットの前記コントローラとに結合されたマイクロコントローラであって、
前記センサを監視して、前記ラックが、前記ジャム状態にあるか、前記ビームが前記ラックによって遮断されていないクリア状態にあるかを判定し、
前記ラックが前記ジャム状態にあると判定することに応答して、前記ラックを前記チップレシーバから係脱させる是正処置を実行する信号を、前記液体ハンドリングロボットに送る、
ように構成される、前記マイクロコントローラと、
を含む、液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項2】
前記センサは、前記ビームを放出するように構成されたエミッタと、前記ビームを受信するように構成された光電受信器とを有する赤外線ブレークビームセンサを含む、請求項1に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項3】
前記マイクロコントローラが前記センサから閾値を上回る信号を受信するときに、前記マイクロコントローラは、ビームが前記ラックによって遮断されていないと判定する、請求項1に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項4】
前記閾値は、前記ビームが(i)前記係合した1セットのピペットチップ間のオープンスペース、または(ii)前記係合した1セットのピペットチップの半透明部分を通過するように構成される、請求項3に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記チップレシーバを前記ビームに対するチェック位置に移動させて、前記マイクロコントローラが前記センサを監視し、前記ラックが前記ジャム状態にあるか、前記クリア状態にあるかを判定するように構成される、請求項1に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項6】
前記マイクロコントローラは、前記チップレシーバが前記チェック位置に保持された状態で、選択された反復回数の間、前記センサを監視する、請求項5に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項7】
前記作業台は、前記ラックスタックを保持する載荷エリアを画定する位置を含み、前記ラックは、前記ホームポジションでは、前記ラックスタックの最上部に配置された前記1セットのピペットチップを有する、請求項1に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項8】
前記作業台は、キャビティを露出する開口部を含み、前記センサは、前記ビームが前記クリア状態では前記開口部にわたるように位置決めされる、請求項7に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項9】
前記是正処置は、前記ラックを前記載荷エリアに戻すことを含む、請求項7に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項10】
前記是正処置は、前記1セットのピペットチップを前記チップレシーバから係脱させることと、前記1セットのピペットチップを前記チップレシーバと再係合させることと、前記チップレシーバを持ち上げて前記ホームポジションから離し、前記再係合した1セットのピペットチップを前記ラックから取り出すこととを含む、請求項1に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項11】
前記センサは、赤外線センサまたは超音波センサのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項12】
前記ラックは、前記ジャム状態では前記1セットのピペットチップのうちの少なくとも1つの側面と摩擦係合する、請求項1に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項13】
前記マイクロコントローラは前記センサからアナログ信号を受信する、請求項1に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項14】
前記マイクロコントローラは、前記液体ハンドリングロボットの前記コントローラを操作して前記コントローラと通信する実行可能なスクリプトとインタフェースするように構成される、請求項1に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項15】
作業台に配置されたフレームと、
第一構成要素及び前記第一構成要素と係合した第二構成要素を含む液体テストアセンブリであって、前記作業台でのホームロケーション内に配置された前記液体テストアセンブリと、
前記フレームに動作可能に結合され、コントローラと、前記コントローラからのコマンドに応答して前記作業台に対して移動するように動作可能なアームと、を備えた液体ハンドリングロボットであって、
前記アームは前記液体テストアセンブリの前記第一構成要素を係合するように構成される係合デバイスを含み、
前記コントローラは前記ホームロケーション内に前記第一構成要素を係合するように前記係合デバイスを制御し、前記係合した第一構成要素を移動させて前記ホームロケーションから離すように前記アームを制御するように構成される、
前記液体ハンドリングロボットと、
フィールドを発し、前記フィールドの遮断を感知するように構成されるセンサであって、前記センサは前記フレーム、前記作業台、または前記液体ハンドリングロボットの前記アームに結合され、前記アームが前記第一構成要素を移動させて前記ホームロケーションから離した後に、前記第二構成要素の存在を、前記第二構成要素が前記第一構成要素と係合したままであるときに感知するように位置決めされる、前記センサと、
前記センサと前記液体ハンドリングロボットの前記コントローラとに結合されたマイクロコントローラであって、前記センサを監視して、前記第一構成要素と係合している前記第二構成要素が感知される場合にエラー状態を、または前記第二構成要素が感知されていない場合にクリア状態を判定し、前記判定されたエラー状態に応答して、設定された反復回数の少ない方の間、または前記クリア状態が前記マイクロコントローラによって判定されるまで、前記第二構成要素を前記第一構成要素から係脱させる是正処置を反復して実行するように前記液体ハンドリングロボットに指示するように構成される、前記マイクロコントローラと、
を含む、液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項16】
前記是正処置は、前記第一構成要素を係脱させることと、前記第一構成要素を再係合させることと、エラー状態がまだ存在するかどうかをチェックするように前記マイクロコントローラに指示することとを含む、請求項15に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項17】
前記設定された反復回数は、10回を下回る、請求項16に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項18】
エラー状態を判定するために、前記マイクロコントローラは、前記アームが前記第一構成要素を前記センサに対して第一位置に保持している状態で設定された期間に第一測定シーケンスを実行し、かつ前記アームが前記第一構成要素を前記センサに対して第二位置に保持している状態で設定された期間に第二測定シーケンスを実行する、請求項15に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項19】
前記マイクロコントローラは、前記第一測定シーケンス及び前記第二測定シーケンス中に前記センサを監視し、前記第二構成要素が前記第一測定シーケンスまたは前記第二測定シーケンス中に感知される場合にエラー状態を判定する、請求項15に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項20】
前記マイクロコントローラが前記センサから閾値を下回る信号を受信する場合、前記信号は、前記第二構成要素が前記第一構成要素に誤って係合されていることを示す、請求項15に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項21】
前記マイクロコントローラが前記センサから閾値を上回る信号を受信する場合、前記信号は、前記第一構成要素が前記第二構成要素に係合されていないことを示す、請求項15に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項22】
前記センサは、赤外線センサ、超音波センサ、誘導式センサ、または静電容量式センサのうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項23】
前記フレームは、前記第一構成要素を係合するために前記アームによってアクセス可能な前記テスト構成要素アセンブリのための載荷エリアを含み、
前記液体ハンドリングロボットは、前記マイクロコントローラがエラー状態を判定する場合、前記第二構成要素を前記載荷エリアに戻す、請求項15に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項24】
前記センサは、光ビームを放出するように構成されたエミッタ、及び前記光ビームを受信するように構成された光電受信器を含み、
前記係合ヘッドを係合する場合に、前記光ビームが、前記第一構成要素に隣接するように、そして前記第一構成要素が前記第二構成要素と係合する場合に前記第二構成要素によって遮断されるように、位置決めされるように前記エミッタは構成される、請求項15に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項25】
前記センサは、前記フレームに対して固定され、
前記アームは、前記係合デバイスと係合した前記第一構成要素を、エラー状態で前記光ビームが前記第二構成要素に接触するように配置されているチェック位置に移動させるように構成される、請求項24に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項26】
前記第二構成要素が前記エラー状態にあるかどうかを判定する場合、前記マイクロコントローラは、前記係合ヘッドが前記チェック位置にある所定の時間に前記センサを監視するように構成される、請求項25に記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項27】
前記第一構成要素はフィルタチューブを含み、前記第二構成要素は遠心チューブを含む、請求項15~26のいずれかに記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項28】
前記第一構成要素はピペットチップを含み、前記第二構成要素はラックを含む、請求項15~26のいずれかに記載の液体ハンドリングロボットシステム。
【請求項29】
液体ハンドリングロボットであって、
1セットのピペットチップを保持するラックを支持するように構成された作業台、
前記作業台の上に動作可能に懸架されたアームであって、前記1セットのピペットチップを係合するように構成されるチップレシーバを有する前記アーム、及び
前記ラックの上の位置への前記作業台に対する前記アームの移動を制御し、前記チップレシーバを制御して、前記ラック内に保持された前記1セットのピペットチップを係合させ、前記チップレシーバを持ち上げて前記作業台から離し、前記係合した1セットのピペットチップを前記ラックから取り出すように構成されるコントローラ、
を含む、前記液体ハンドリングロボットと、
前記作業台に対して固定され、ビームを放出するように動作可能なセンサであって、前記ビームの遮断を感知するように構成される前記センサと、
前記センサと前記液体ハンドリングロボットの前記コントローラとに結合されたマイクロコントローラであって、
前記チップレシーバと係合した前記1セットのピペットチップの隣接する対の間のエリア内に前記ビームを位置合わせするチェック位置に前記アームが移動する時間を決定し、
前記アームが前記チェック位置にある状態で前記センサを監視し、前記ラックが前記ビームを遮断するかどうかを判定し、前記ラックのジャム状態を示し、
前記ラックが前記ジャム状態にあると判定することに応答して、前記ラックを前記1セットのピペットチップから係脱させる是正処置を実行するように前記液体ハンドリングロボットに指示する、
ように構成される、前記マイクロコントローラと、
を含む、システム。
【請求項30】
前記是正処置は、前記1セットのピペットチップを前記チップレシーバから前記ラック上に取り外すことと、前記ラックからの前記1セットのピペットチップを前記チップレシーバと再係合させることと、ジャム状態がまだ存在するかどうかをチェックすることとを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記是正処置は、設定された反復回数の少ない方の間、または前記ラックがジャム状態で感知されなくなるまで、反復して、前記1セットのピペットチップを取り外し、前記チップレシーバと再係合させることを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記マイクロコントローラが前記センサから閾値を下回る信号を受信する場合、前記信号は、前記ラックがジャム状態で係合していることを示す、請求項29に記載のシステム。
【請求項33】
前記センサは、赤外線センサまたは超音波センサを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項34】
前記センサは、前記ビームを放出するように構成されたエミッタと、前記ビームを受信するように構成された光電受信器とを有する赤外線ブレークビームセンサを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項35】
前記作業台は、キャビティを露出する開口部を含み、前記センサは、前記ビームが前記クリア状態では前記開口部にわたるように位置決めされる、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記マイクロコントローラは、選択された反復回数の間、前記アームが前記チェック位置にある状態で前記センサを監視する、請求項29に記載のシステム。
【請求項37】
前記作業台は、ラックスタックを保持する載荷エリアを含み、前記ラックは、前記ラックスタックの最上部に配置された前記1セットのピペットチップを有する、請求項29に記載のシステム。
【請求項38】
液体ハンドリングロボットのアームを、前記液体ハンドリングロボットのコントローラから送信されたコマンドを用いて、作業台に対して移動させることと、
前記作業台に配置されたラック内に保持された1セットのピペットチップを、前記コントローラからのコマンドに応答して、前記アームの下部にあるチップレシーバと係合させることと、
前記コントローラからのコマンドに応答して、前記チップレシーバを持ち上げて前記作業台から離し、前記ラックから前記1セットのピペットチップを取り出そうとすることと、
前記コントローラからのコマンドに応答して、前記アームを用いて前記チップレシーバをチェック位置に移動させることと、
前記チェック位置において、前記チップレシーバと係合した前記1セットのピペットチップの隣接する対の間のエリア内に赤外線センサを用いてビームを放出することと、
前記ビームが遮断されて前記ラックが前記1セットのピペットチップ上でジャム状態にあることを示すかどうかを判定するマイクロコントローラを用いて前記センサを監視することと、
前記ラックが前記ジャム状態にあると判定することに応答して、前記ラックを前記1セットのピペットチップから係脱させる是正処置を実行するように前記液体ハンドリングロボットに指令する信号を、前記マイクロコントローラから前記コントローラに返すことと、
を含む、方法。
【請求項39】
前記是正処置は、前記1セットのピペットチップを前記チップレシーバから前記ラック上に取り外すことと、前記ラックからの前記1セットのピペットチップを前記チップレシーバと再係合させることと、ジャム状態がまだ存在するかどうかをチェックすることとを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記是正処置は、設定された反復回数の少ない方の間、または前記ラックがジャム状態で感知されなくなるまで、反復して、前記1セットのピペットチップを取り外し、前記チップレシーバと再係合させることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記マイクロコントローラが前記センサから閾値を下回る信号を受信する場合、前記信号は、前記ラックが前記ジャム状態で係合していることを示す、請求項38に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、実験室内でピペットチップ及びチューブをピックアップするための把持デバイスを有する液体ハンドラなどの液体ハンドリングロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
液体ハンドリングロボットは、それらの主な機能のピペッティングに加えて、プレート及びチューブの操作だけでなく、使い捨てのピペットチップの自動交換を含む複雑なタスクを実行する。これらのタスクの実行中に、把持の失敗及びジャムなどの機械的エラーが起こる可能性がある。そのようなエラーによる機器の損傷を防ぐために、操作ステップが成功したかどうかを条件として、連続したステップのタスクをさらに実行することができる。例えば、液体ハンドラは、ユーザプロンプトを表示し、問題の多い、またはその他の失敗しやすい操作ステップの後に人間からの確認を待機するようにプログラムされることができる。それらのようなタスクの人間の介入及び観測は、液体ハンドリングロボットがこれらのタスクを作業時間中に実行することにおいて必要であり、このことは効率を低下させ、人間の作業時間外のロボット操作を防止し、結果、損傷にいたる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の一態様は、液体ハンドリングロボットシステムを提供し、この液体ハンドリングロボットシステムは、ウェルプレート、チューブなどの液体容器を支持するように構成される作業台を備えたステーション構造体を有する。1セットのピペットチップを保持するラックは、ステーション構造体内のホームポジションに配置される。液体ハンドリングロボットは、ステーション構造体に結合され、作業台の上に懸架されたアームを有し、アームは、ラックから1セットのピペットチップを係合するように構成されるチップレシーバを含む。液体ハンドリングロボットのコントローラは、作業台に対するアームの運動を制御するように構成されるので、コントローラは、アームをラックの上の位置に移動させるように構成される。この位置では、コントローラは液体ハンドリングロボットを制御して、チップレシーバをラック内に保持された1セットのピペットチップと係合させてから、チップレシーバを持ち上げてホームポジションから離し、係合した1セットのピペットチップをラックから取り出すことができる。次に、コントローラは、液体ハンドリングロボットを制御して、係合した1セットのピペットチップを液体容器に移動させ、液体容器から、チップレシーバと係合した1セットのピペットチップのうちの少なくとも1つのチップ内に液体を引き込むことができる。
【0004】
いくつかの例では、チップレシーバと係合した1セットのピペットチップは、取り出されるときにラックと摩擦係合することができると、ラックは、チップによってジャム状態で保持され得る。本開示の一態様での液体ハンドリングロボットシステムは、ビームを放出し、ビームの遮断を感知するように構成されるセンサを提供する。センサは、ステーション構造体、または液体ハンドリングロボットのアームに結合され得る。チップレシーバがラック内に保持された1セットのピペットチップを係合し、係合したチップがホームポジションから持ち上げられた後、ビームはジャム状態でラックに接触するように位置決めされる。マイクロコントローラは、センサ、及び液体ハンドリングロボットのコントローラと結合され、マイクロコントローラは、センサを監視して、ラックが、ジャム状態にあるか、ビームがラックによって遮断されていないクリア状態にあるかを判定するように構成される。ラックがジャム状態にあると判定することに応答して、マイクロコントローラは、チップレシーバからラックを係脱させる是正処置を実行するように液体ハンドリングロボットに指示するように、またはその是正処置を実行する信号を液体ハンドリングロボットに送るように構成される。
【0005】
本開示の実施態様は、以下の任意の特徴の1つまたは複数を含んでもよい。いくつかの実装では、センサは赤外線センサまたは超音波センサである。例えば、センサは赤外線ブレークビームセンサを含むことができ、この赤外線ブレークビームセンサは、ビームを放出するように構成されたエミッタと、ビームを受信するように構成された光電受信器とを有する。マイクロコントローラは、センサからアナログ信号またはデジタル信号を受信するように構成されることができる。また、マイクロコントローラは、液体ハンドリングロボットのコントローラを操作してそれと通信する実行可能なスクリプトとインタフェースすることができる。
【0006】
いくつかの実装では、コントローラは、マイクロコントローラがセンサを監視してラックがジャム状態にあるか、クリア状態にあるかを判定するためのビームに対するチェック位置に、チップレシーバを移動させるように構成される。マイクロコントローラは、チップレシーバがチェック位置に保持されている状態で、選択された反復回数の間、センサを監視することができる。いくつかの例では、作業台はキャビティを露出する開口部を有し、アームが複数のピペットチップを少なくとも部分的にキャビティ内に下げて、ラックがジャム状態にあるかどうかを判定することができるように、ビームが開口部にわたるようにセンサが位置決めされる。
【0007】
チップレシーバによって係合された1セットのピペットチップを保持するラックは、ラックスタック内に配置され得る。いくつかの例では、作業台は、ラックスタックを保持する載荷エリアを画定する位置を含み、1セットのピペットチップを有するラックは、ホームポジションではラックスタックの最上部の上に配置されることができる。是正処置は、ラックを載荷エリアに戻すことを含んでもよい。例えば、是正処置は、1セットのピペットチップをチップレシーバから係脱させることと、1セットのピペットチップをチップレシーバと再係合させることと、チップレシーバを再度持ち上げて、再係合した1セットのピペットチップをラックから取り出すこととを含んでもよい。
【0008】
本開示の別の態様は、作業台に配置されたフレームと、作業台でのホームロケーション内に配置された液体テストアセンブリとを含む液体ハンドリングロボットシステムを提供する。液体テストアセンブリは、第一構成要素と、この第一構成要素と係合する第二構成要素とを有し、液体テストアセンブリは作業台でのホームロケーション内に配置される。液体ハンドリングロボットは、フレームに動作可能に結合され、コントローラと、コントローラからのコマンドに応答して作業台に対して移動するように動作可能なアームとを有する。アームは、液体テストアセンブリの第一構成要素を係合するように構成される係合デバイスを含む。コントローラは、ホームロケーション内に第一構成要素を係合するように係合デバイスを制御し、係合した第一構成要素を移動させてホームロケーションから離すようにアームを制御するように構成される。センサは、フィールドを放出し、フィールドの遮断を感知するように構成される。センサは、フレーム、作業台、または液体ハンドリングロボットのアームに結合され、アームが第一構成要素を移動させてホームロケーションから離した後に、第二構成要素の存在を、それが第一構成要素と係合したままであるときに感知するように位置決めされる。マイクロコントローラは、センサと液体ハンドリングロボットのコントローラとに結合される。マイクロコントローラは、センサを監視して、第一構成要素と係合している第二構成要素が感知される場合にエラー状態、または第二構成要素が感知されていない場合にクリア状態を判定するように構成される。判定されたエラー状態に応答して、マイクロコントローラは、設定された反復回数の少ない方の間、またはクリア状態がマイクロコントローラによって判定されるまで、第一構成要素から第二構成要素を係脱させる是正処置を反復して実行するように液体ハンドリングロボットに指示するように構成される。いくつかの例では、第一構成要素はフィルタチューブであり、第二構成要素は遠心チューブである。他の例では、第一構成要素はピペットチップであり、第二構成要素はラックである。
【0009】
この態様は、以下の任意の特徴の1つまたは複数を含んでもよい。いくつかの実装では、是正処置は、第一構成要素を係脱させることと、第一構成要素を再係合させることと、エラー状態がまだ存在するかどうかをチェックするようにマイクロコントローラに指示することとを提供する。設定された反復回数は、5回など、10回を下回ってもよい。ジャム状態などのエラー状態が存在するかどうかを判定するために、マイクロコントローラは、アームがセンサに対して第一構成要素を第一位置に保持している状態で設定された期間に第一測定シーケンス、及びアームがセンサに対して第一構成要素を第二位置に保持している状態で設定された期間に第二測定シーケンスなど、いくつかのチェックを実行することができる。マイクロコントローラは、第一及び第二測定シーケンス中にセンサを監視し、第二構成要素が第一または第二測定シーケンス中に感知される場合にエラー状態を判定することができる。例えば、マイクロコントローラがセンサから閾値を下回る信号を受信する場合、その信号は、第二構成要素が第一構成要素に誤って係合されていることを示し、エラー状態を提供する。
【0010】
いくつかの実装では、センサは、赤外線センサ、超音波センサ、誘導式センサ、または静電容量式センサを含む。センサは、例えば、光ビームを放出するように構成されるエミッタと、光ビームを受信するように構成される光電受信器とを含むことができる。エミッタは、光ビームが、第一構成要素に、係合ヘッドを係合する場合に隣接するように、そして第一構成要素が第二構成要素と係合する場合に第二構成要素によって遮断されるように位置決めされるように構成される。いくつかの例では、センサはフレームに対して固定され、アームは、係合デバイスと係合した第一構成要素を、エラー状態で光ビームが第二構成要素に接触するように配置されているチェック位置に移動させる。第二構成要素がエラー状態にあるかどうかを判定する場合、マイクロコントローラは、係合ヘッドがチェック位置にある所定の時間にセンサを監視することができる。
【0011】
本開示のさらに別の態様は、1セットのピペットチップを保持するラックを支持するように構成される作業台を有する液体ハンドリングロボットを含むシステムを提供する。また、液体ハンドリングロボットは、作業台の上に動作可能に懸架されるアームを有し、このアームは、1セットのピペットチップを係合するように構成されるチップレシーバを含む。液体ハンドリングロボットはコントローラをさらに含み、このコントローラは、ラックの上の位置への作業台に対するアームの移動を制御し、チップレシーバを制御して、ラック内に保持された1セットのピペットチップを係合させ、チップレシーバを持ち上げて作業台から離し、係合した1セットのピペットチップをラックから取り出すように構成される。センサは、作業台に対して固定され、ビームを放出するように動作可能である。センサは、ビームの遮断を感知するように構成される。マイクロコントローラは、センサと液体ハンドリングロボットのコントローラとに結合されるので、マイクロコントローラは、(i)チップレシーバと係合した1セットのピペットチップの隣接した対の間のエリア内にビームを位置合わせするチェック位置にアームが移動する時間を決定し、(ii)アームがチェック位置にある状態でセンサを監視し、ラックがビームを遮断するかどうかを判定し、ラックのジャム状態を示し、(iii)ラックがジャム状態にあると判定することに応答して、1セットのピペットチップからラックを係脱させる是正処置を実行するように液体ハンドリングロボットに指示する、ように構成される。
【0012】
いくつかの実装では、是正処置は、1セットのピペットチップをチップレシーバからラック上に取り外すことと、ラックからの1セットのピペットチップをチップレシーバと再係合させることと、エラー状態がまだ存在するかどうかをチェックすることとを含む。是正処置は、設定された反復回数の少ない方の間、またはラックがジャム状態で感知されなくなるまで、反復して、1セットのピペットチップを取り外し、チップレシーバと再係合させることを含んでもよい。例えば、マイクロコントローラは、選択された反復回数の間、アームがチェック位置にある状態でセンサを監視する。マイクロコントローラがセンサから閾値を下回る信号を受信する場合、信号は、ラックがジャム状態であることを示すことができる。
【0013】
いくつかの実装では、センサは赤外線センサを含む。例えば、センサは赤外線ブレークビームセンサであり、この赤外線ブレークビームセンサは、ビームを放出するように構成されたエミッタと、ビームを受信するように構成された光電受信器とを有する。作業台は、キャビティを露出する開口部を含んでもよく、センサは、ビームがクリア状態では開口部にわたるように位置決めされてもよい。そのうえ、または代替に、作業台は、ラックスタックを保持する載荷エリアを含んでもよく、1セットのピペットチップを有するラックは、ラックスタックの最上部に配置される。
【0014】
本開示の1つまたは複数の実施態様の詳細は、添付の図面及び以下の説明において述べられる。他の態様、特徴、及び利点は、説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】例示的な液体ハンドリングロボットの側面図である。
図1B図1Aの液体ハンドリングロボットのエンドセクションの上部斜視図である。
図2図1Aの液体ハンドリングロボットの下部斜視図であり、ロボットアームと係合したピペットチップを示す。
図3A図1Aの液体ハンドリングロボットの下部斜視図であり、ロボットアームと係合したピペットチップに貼設されたラックを示す。
図3B】液体ハンドリングロボットの端部から取られている、ピペットチップに貼設されたラックの側面図である。
図4A図4A及び4Bは図1Aの液体ハンドリングロボットの作業台に配置されたセンサの上部斜視図である。
図4B図4A及び4Bは図1Aの液体ハンドリングロボットの作業台に配置されたセンサの上部斜視図である。
図5A】係合したピペットチップを、図4A~4Bに示されているセンサに対してチェック位置に保持するロボットアームの上部斜視図である。
図5B】センサの透過ビームとアライメントして取られている、図5Aに示されているチェック位置でのロボットアームの側面図である。
図5C図5Aに示されているチェック位置でのロボットアームの上部斜視図であり、ピペットチップを横切る透過ビームを示す。
図6A】チェック位置に保持されたロボットアームと係合したピペットチップに貼設されたラックの上部斜視図である。
図6B】センサの透過ビームとアライメントして取られている、図6Aに示されているチェック位置でのロボットアームの側面図である。
図6C図6Aに示されているチェック位置でのロボットアームの上部斜視図であり、ラックに接触する透過ビームを示す。
図7】追加のセンサ取り付け位置の斜視図である。
図8】赤外線センサに接続された例示的なマイクロコントローラの概略図である。
図9】例示的な通信層を示すチャートである。
図10】液体ハンドリングロボットのロボットアームにおけるラックのジャム状態をチェックする例示的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
種々の図面における同様の参照記号は、同様の要素を指す。
【0017】
図1A及び1Bを参照すると、液体ハンドリングロボット10は、いくつかの実装では、統合及び非統合デバイス(例えば、シェーカ、インキュベータ)だけでなく、マイクロプレート、ディープウェルプレート、チューブなどを含む液体容器16などの実験器具を支持するように構成される作業台14を備えたステーション構造体12を有する。他の例でのステーション構造体は、様々な種類の実験室のテスト、機能、及び需要に対応するために、様々なサイズ及び設計を有することができる。
【0018】
図1Aに示されるように、ステーション構造体12はフレーム18を含み、このフレームは、作業台14を包囲し、透明カバー20を支持し、この透明カバーは、作業台14と、作業台14上に存在するデバイス及び実験器具とに粉塵及び混入物が干渉するのを防止する。透明カバー20は、操作中の損傷を防止するための安全バリアとしても機能する。透明カバー20またはその前部が空気圧シリンダ22の支援などにより、上げ下げされることができると、システムの操作前に実験を準備するなどのために、ユーザが作業台14及びその内容物にアクセスすることが可能になる。また、フレーム18は、作業台14の上に懸架されたロボットアーム24を支持する。図1Aに示されるように、液体ハンドリングロボット10は、直交作動アセンブリ26を含み、この直交作動アセンブリは、アーム24を支持し、同様に作業台14の上に懸架される。アーム24は、直交作動アセンブリ26などを介して、作業台14の表面に概して平行な水平面(x-y方向)内の作業台14上に移動するように動作する。そうすることで、アーム24は、ステーション構造体12内の所望の位置で動作することができる。また、アーム24は、アーム24の係合ヘッド28を所望の位置に位置決めするために、作業台14に対して垂直方向(z方向)に移動するように動作する。追加の実装では、ロボットアームは、様々な異なる構造体及び機構で動作するように支持され得る。
【0019】
図2に示されるように、アーム24の係合ヘッド28は、1セットのピペットチップ32と係合するように構成されるチップレシーバ30を含む。チップレシーバ30は、いくつかの取り付けポート34を含むことができ、いくつかの取り付けポートのそれぞれは、ピペットチップを係合するように構成される。チップレシーバ30は、96個のピペットチップを保持するための96個の取り付けポート34を有するので、アーム24は、マルチチャネルアーム(MCA)と呼ばれ得る。ただし、アーム及びチップレシーバの追加の実装は、8、16、48、64、または386個のチップなど、対応する数のピペットチップを保持するために、より多くのまたは少数のポートを有する場合がある。図2に示されるように、取り付けポート34は、ピペットチップ32の近位端部32aに挿入され、取り付けポート34に係合される一部分を有する。ピペットチップと取り付けポートまたはその他の形態のチップレシーバとの係合は、取り外し可能な摩擦及び/または機械的係合であってもよい。また、チップレシーバはエゼクタを含み、このエゼクタは、液体がピペット内に移され、さらなる操作にはきれいなピペットチップが必要とされてからなど、ピペットチップを係合ヘッドから係脱させる。
【0020】
図1A及び1Bを再度参照すると、1セットのピペットチップ32を保持するラック36は、作業台14上の所望の位置など、ステーション構造体12内のホームポジションに配置される。ラック36は、図1Aに示されるように、ラックスタック38内に配置されてもよい。ロボットアーム24がアクセスするラック36は、スタック内のラックの最上部からピペットチップへのアクセスを容易にするなどのために、ラックスタック38の最上部に配置されることができる。ラックスタック38内の各ラックは、新しい1セットのピペットチップを保持することができる。最上部のラックからのピペットチップがアーム24と係合する場合、アームは、最上部のラック(現在空のもの)を取り除き、その次のラック(別の1セットのチップを保持する)を露出させる必要がある。空のラックもまた、ピペットチップを運搬するアームの動作中などに、二次アームまたはその他のデバイスを用いて取り除かれてもよい。他の例がアームによるアクセスのためにスタック内の最下部のラックを取り除くためのシャトルレトリバなどの機構を有し得ることも企図される。ラックスタックの位置は、ピペットチップをアーム上に載荷する、またはその他の方法で係合するための載荷エリアとして参照され得る。
【0021】
液体ハンドリングロボット10のコントローラ39(図9)は、データ処理ハードウェアと、このデータ処理ハードウェアと通信するメモリハードウェアとを利用してもよい。メモリハードウェアは、データ処理ハードウェア上で実行されると、データ処理ハードウェアにコントローラ39の動作を実行させる命令を格納する。いくつかの実装では、ロボットアームは、適切なファームウェアを実行するオンボード埋め込みコントローラ39に接続される。このユニットは、マシンコマンドを処理することができる。液体ハンドリングスクリプトは、クライアント(PC)アプリケーション41に書き込まれると、マシンコマンドに変換される。これにより、コントローラ39は、作業台14に対するアーム24の運動を制御するように構成されるので、コントローラは、アーム14をラック36の上の位置に移動させるように構成される。アームがこの上昇位置にある状態で、コントローラは液体ハンドリングロボット10を制御して、チップレシーバ30をラック内に保持された1セットのピペットチップ32と係合させることができてから、チップレシーバを持ち上げてホームポジションから離し、例えば、ラックスタックから上向きに離し、係合した1セットのピペットチップを(現在空の)ラックから取り出すことができる。次に、コントローラは、液体ハンドリングロボットを制御して、係合した1セットのピペットチップを、作業面上の液体容器またはその他のデバイスまたは実験器具などの動作位置に移動させ、液体容器から、チップレシーバと係合した1セットのピペットチップのうちの少なくとも1つのチップ内に液体を引き込むことができる。
【0022】
図3A及び3Bに示されるように、チップレシーバ30と係合した1セットのピペットチップ32は、取り出されるときにラック36に摩擦係合する、または貼着することができると、ラック36は、チップ32によってジャム状態で保持される、または動かなくなることがある。ジャム状態にあるラック36の平面範囲は、多くの場合、図3Bに示されるように、水平でない、またはその他の方法で作業台とアライメントされていない角度で傾いている。傾いた角度では、ピペットチップを保持するラック36内の開口部は、ピペットチップの側面と摩擦係合する。
【0023】
このシステムには、ラック36がジャム状態にあるときを検出するために、ステーション構造体またはロボットのアームなどにセンサ40が設けられている。図4A及び4Bに示されるように、センサ40はステーション構造体12に結合され、より具体的には、センサ40は作業台14に固定される。図4A及び4Bに示されるセンサ40は、光ビーム46を放出するように構成されたエミッタ44と、光ビームを受信するように構成された光電受信器48とを有する赤外線ブレークビームセンサである。追加の例では、センサが超音波センサ、誘導式センサ、静電容量式センサ、または受動型赤外線(PIR)センサなどの代替の赤外線センサを含むことができることが企図される。ただし、誘導式及び静電容量式の感知は、ポリマー製ピペットチップだけに対しては適切に行われない場合がある。
【0024】
チップレシーバ30がラック36内に保持された1セットのピペットチップ32を係合し、係合したチップ32がホームポジションから持ち上げられた後、センサ40のビーム46はジャム状態でラック36に接触するように位置決めされる。マイクロコントローラ49は、図8に示されるように、センサ40、及び液体ハンドリングロボットのコントローラと(コントローラと通信するPCとインタフェースすることなどによって)結合され、マイクロコントローラ49は、センサ40を監視して、ラック36が、ジャム状態(図6A~6C)にあるか、ビーム46がラック36によって遮断されていないクリア状態(図5A~5C)にあるかを判定するように構成される。いくつかの実装では、コントローラは、マイクロコントローラがセンサを監視してラックがジャム状態にあるか、クリア状態にあるかを判定するためのビームに対するチェック位置に、チップレシーバを移動させるように構成される。マイクロコントローラは、チップレシーバがチェック位置に保持されている状態で、選択された反復回数の間(設定された期間)、センサを監視することができる。マイクロコントローラは、センサからデジタル信号またはアナログ信号を受信するように接続されることができる。デジタル信号伝送の場合、信号の処理に閾値チェックが存在しないことがある。ただし、透明なラックを使用する場合など、一部の実装では、アナログセンサ信号が閾値に対してチェックされることができると、ラックの存在が判定されることができる。マイクロコントローラがPCに接続されることができる、またはその他の方法でPCとインタフェースすることができると、PCは、オンボードコントローラへのコマンドをマシンコマンドに変換する。
【0025】
また、図4A及び4Bに示されるように、作業台14はキャビティ50を露出させる開口部または切り欠き部を含み得、センサ40はビーム46がクリア状態で開口部にわたるように位置決めされ得る(図5A~5C)。アームは、複数のピペットチップを少なくとも部分的にキャビティ内に下げて、ラックがジャム状態にあるか、エラー状態にあるかを判定することができる(図6A~6C)。そうすることで、センサ40は、アームの運動または作業台上での動作と干渉しない比較的低い位置に設けられる。また、これにより、検出専用の位置が設けられ、その位置では、液体ハンドラの作業台の切り欠き部及びキャビティ50を使用し、通常、そこを通して遠心機にアクセスする。開口部または切り欠き部の各側に、エミッタ44及び受信器48は、作業台上に設置されたデバイスの間に受信器が取り付けられている状態で図7にも示されるように、互いに対向して配置された。
【0026】
ラック36がジャム状態にあると判定することに応答して、マイクロコントローラ49は、チップレシーバ30からラック36を係脱させる是正処置を実行する信号を液体ハンドリングロボットに送るように、またはその是正処置を実行するように液体ハンドリングロボットに指示するように構成される。この実装では、マイクロコントローラによる信号または指示は、コントローラからの要求に応答している。そのため、操作ロジックは液体ハンドラのコントローラに実装される。液体ハンドリングスクリプトでは、アームがチェック位置に移動し、マイクロコントローラと通信してインタフェースするPC上で実行可能なスクリプトを実行する、またはその他の方法で操作するようにコールされる。コントローラが実行可能なスクリプト(及び順にマイクロプロセッサ)からの応答を待機している間、マイクロコントローラは、ラックが貼着されているかどうか、是正処置が実行される必要があるかどうか、またはスクリプトを続行する必要があるかどうかを判定するように操作する。
【0027】
是正処置は、ラックを載荷エリアに戻すことを含んでもよい。例えば、是正処置は、ラック上で、かつその内のチップレシーバから(エゼクタなどを用いて)1セットのピペットチップを取り外すことまたは係脱させることと、1セットのピペットチップをチップレシーバと再係合させることと、チップレシーバを再度持ち上げて、再係合した1セットのピペットチップをラックから取り出すこととを含んでもよい。チップが再係合した後、是正処置は、ジャムまたはエラー状態がまだ存在するかどうかをチェックすることを含む。したがって、是正処置は、設定された反復回数の少ない方の間、またはラックがジャム状態で感知されなくなるまで、反復して、1セットのピペットチップを取り外し、チップレシーバと再係合させることを含んでもよい。設定された反復回数は、例えば、5回など、10回を下回ってもよい。
【0028】
図7に示されるように、検出専用の位置として、液体ハンドラの作業台の切り欠き部を使用し、この切り欠き部を通して、通常、遠心機にアクセスする。切り欠き部の各側に、エミッタ44及び受信器48が互いに対向して配置された。図7は、受信器48のマウントを示す。
【0029】
赤外線ブレークビームセンサには、次のパラメータを有するHD-DS25CM-3MMが選択された。
・感知距離:約25cm/10”
・電源電圧:3.3~5.5VDC
・エミッタ電流引き込み:10mA@3.3V、20mA@5V
・受信器の出力電流容量:100mAシンク
・送信器/受信器LED角度:10°
・応答時間:<2ms
・寸法:20mm×10mm×8mm/0.8”×0.4”×0.3”
・ケーブル長:234mm/9.2”
・重量(各半分):約3g
【0030】
センサとコンピュータとの間のインタフェースとして、次のパラメータを有するArduino UNO SMD REV3 MCU A000073というタイプのマイクロコントローラが使用された。
・ATmega328Pマイクロコントローラ14xデジタルI/Oピン(6本はPWM出力として使用可能)
・6xアナログ入力
・16MHz水晶振動子
・1xUSB
・1x電源ジャック(5.5mm/2.1mm、7~12V)
・1xICSPヘッダ
・1xリセットボタン
・動作電圧:5V フラッシュメモリ:32KB
・SRAM:2K
・EEPROM:1K
・サイズ:68.6x53.4mm
【0031】
図8で見えるように、LEDをデジタル出力に配線したことで、スイッチを常にオンにしておくのではなく、測定の持続時間だけオンにすることが可能になる。電流引き込みは、最大20mAで規定され、これは、Arduinoのデジタル出力での最大電流引き込みと全く同じであり、どちらも5Vで規定される。測定によると、LEDの実際の引き込みが約12mAであったため、短い持続時間でデジタル出力から直接電力を供給することが安全であると見なされることができることが示された。受信器は、オープンコレクタのフォトトランジスタであり、これは、エミッタからのIR光がセンサに当たると、データピンが接地に引き込まれることを意味する。センサの値を読み取るために、データピンをマイクロコントローラのアナログ入力に接続することができる。
【0032】
図9に示されるように、ソフトウェアの2層は、液体ハンドラソフトウェア(EVOware)とセンサとの間の通信を有効にする。デジタル信号入力またはアナログ信号入力をEVOで直接処理するには、ロボットのファームウェアを変更し、EVOware用のドライバを書き込む必要がある。代わりに、システムの変更を回避するために、EVOwareのビルトインコマンドを使用して、マイクロコントローラと通信するカスタムクライアントアプリケーションを実行した。マイクロコントローラは、センサをアクティブにして値を読み出す役割を果たす。プロセスはEVOwareスクリプトによって開始される。このEVOwareスクリプトでは、結果を格納するために数値変数が定義され、次に、アプリケーション実行コマンドを使用して、次のような適切なパラメータでクライアントアプリケーションをコールする。
・port_name:通信ポートの名称
・command:
0-1023:閾値
“view”:デバッグプロセス用に、タイムアウトに達するまで連続的に読み込みを開始する
・timeout:秒単位の値
【0033】
上記のコール例は、COMポート1を使用して測定を開始し、応答を20秒間待機することを意味する。255の閾値は、アナログセンサ値の8ビット読み出しと比較され、結果に応じて、次の応答がEVOwareに与えられる。
・0:測定値が閾値を上回る
・1:測定値が閾値を下回る
・2:受信した回答が無効であった
・3:引数の数が無効である
・4:タイムアウト
【0034】
クライアントアプリケーションは、図8に示されるように、シリアルポートを介してマイクロコントローラと通信する役割を果たす。統合開発環境(IDE)として、Microsoft Visual Studio 2019 Community Editionを使用し、アプリケーションをC++言語で記述した。通信を処理するために、デバイス制御ブロック(DCB)構造体を使用する、Arduino専用シリアル通信ライブラリが利用された。
【0035】
プログラムは、引数のチェック及びパースから開始し、次いで、タイムアウトに達するまで接続を待機し、この場合、エラーで終了する。接続が正常に確立されている場合、コマンドをマイクロコントローラに送信する。回答をバイト単位の方式で処理し、改行文字を受信すると終了する。メッセージが解釈され、プログラムは適切な値を返す。
【0036】
検出システムの最深レベルとして、マイクロコントローラプログラムは、シリアルポート上でバイトを待機し、改行文字を受信するまでそれらを読み出す。着信コマンドが有効な数値である場合、それは閾値として解釈され、通常の測定モードが開始される。このモードでは、2秒間に200回測定し、平均値が計算されることで、ノイズの影響が最小になる。その結果が閾値と比較され、適切な応答がシリアルポートに書き込まれる。一方、ビューモードは、様々な状況で測定された値を見ることで、適切な閾値を決定する可能性をユーザに提供する。特定の用途では、例えば、半透明の物体を検出する必要がある場合、完全に不透明の物体の場合とは異なる閾値が望ましい場合がある。
【0037】
図10に一例として示されるように、液体ハンドリングロボットシステムを操作する方法は、最初に、ステップ52に示されるように、液体ハンドリングロボットのコントローラから送信されたコマンド(マシンコマンドなど)により、作業台に対して液体ハンドリングロボットのアームを移動させることを提供する。ステップ54では、コントローラからのコマンドに応答して、作業台上に配置されたラック内に保持されている1セットのピペットチップを、アームの下部に配置されたチップレシーバと係合させる。コントローラからのさらなるコマンドに応答して、ステップ56では、チップレシーバを持ち上げて作業台から離し、1セットのピペットチップをラックから取り出そうとする。次いで、ステップ58では、アームを用いてチップレシーバをチェック位置に移動させる。その次のステップ60では、チップレシーバと(チップレシーバがまだチェック位置にある状態で)係合した1セットのピペットチップの隣接する対の間のエリア内に赤外線センサを用いてビームを放出する。次いで、ステップ62では、マイクロコントローラを用いてセンサを監視し、マイクロコントローラは、ビームが遮断されているかどうかを判定し、ラックが1セットのピペットチップ上でジャム状態にあることを示す。ラックがジャム状態にあると判定することに応答して、ステップ64では、ラックをジャム状態の1セットのピペットチップから係脱させる是正処置を実行するように液体ハンドリングロボットに指令する信号を、マイクロコントローラからコントローラに返す。
【0038】
液体ハンドリングロボットシステムの別の実装では、フィルタチューブと、フィルタチューブと係合する遠心チューブとを有する液体テストアセンブリが設けられる。フィルタチューブは、遠心チューブから取り除かれ、作業台のホームロケーション内に配置され得る。アームは係合デバイスを含み、この係合デバイスは、液体テストアセンブリのフィルタチューブを係合し、係合したフィルタチューブを移動させてホームロケーションから離すように構成される。センサは、フィールドを放出し、フィールドの遮断を感知するように構成される。センサは、アームがフィルタチューブを移動させてホームロケーションから離した後、フィルタチューブの存在を感知するように位置決めされる。マイクロコントローラは、センサを監視して、フィルタチューブが感知されない場合にエラー状態を判定するように構成される。判定されたエラー状態に応答して、液体ハンドリングロボットは、設定された反復回数の少ない方の間、またはマイクロコントローラによって所望の状態が判定されるまで、フィルタチューブを係合させる是正処置を反復して実行するようにプログラムされる。
【0039】
本開示の目的のために、用語「結合される」(そのすべての形態、結合、結合する、結合される、などにおいて)は、一般に、2つの構成要素を直接的または間接的に互いに接合することを意味する。そのような接合は、本質的に静止していても、本質的に可動であってもよく、2つの構成要素及び任意の追加の中間部材が、互いにまたは2つの構成要素と単一の単体として一体的に形成されることによって達成されてもよく、特に明記されていない限り、本質的に永続的であるか、または本質的に取り除き可能もしくは取り外し可能であってもよい。
【0040】
また、本開示の目的のために、用語「上」、「下」、「右」、「左」、「後」、「前」、「垂直」、「水平」、及びそれらの派生語は、図1に示された向きに関連するものとする。ただし、そうでないと明示的に指定されている場合を除き、様々な代替の向きが提供され得ることを理解されたい。添付の図面に示され、本明細書に記載されている特定のデバイス及びプロセスが添付の特許請求の範囲で定義された発明概念の単なる例示的な実施形態であることも理解されたい。したがって、本明細書に開示される実施形態に関連する特定の寸法及び他の物性は、特許請求の範囲が別段に明記しない限り、限定と見なされることはない。
【0041】
いくつかの実施態様が説明されてきた。それでも、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多様な修正が成され得ることが理解される。したがって、他の実施態様は、以下の特許請求の範囲内である。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】