(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ガスクラスター補助プラズマ処理
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230906BHJP
H01L 21/302 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101C
H01L21/302 201B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513620
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 US2021046738
(87)【国際公開番号】W WO2022046519
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514028776
【氏名又は名称】トーキョー エレクトロン ユーエス ホールディングス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツェク,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ランジャン,アロック
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BA11
5F004BA20
5F004BB12
5F004BB13
5F004CA02
5F004CA06
5F004DA00
5F004DA01
5F004DA04
5F004DA05
5F004DA11
5F004DA13
5F004DA16
5F004DA17
5F004DA18
5F004DA24
5F004DA26
5F004DB03
5F004DB07
5F004DB12
5F004EA03
5F004EA28
(57)【要約】
基板を処理するための方法は、パターン付与された層を基板上に形成することを含み、この層は開口部を含み、開口部の表面は側壁及び底壁を含む。この方法は、第1の処理チャンバ内で、基板の上方でガスクラスターのフラックスを生成することにより異方性処理を用いてパターン付与された層を処理することであって、ガスクラスターはラジカル前駆体を含むことと、基板をガスクラスターのフラックスにさらすことと、を含む。この方法は、第2の処理チャンバ内でイオンを含むプラズマを維持することと、イオンを開口部の底壁に向けることにより基板をイオンにさらすことと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するための方法であって、
パターン付与された層を前記基板上に形成することであって、前記層は開口部を含み、前記開口部の表面は側壁及び底壁を含む、形成することと、
第1の処理チャンバ内で前記基板の上方でガスクラスターのフラックスを生成することであって、前記ガスクラスターはラジカル前駆体を含む、生成すること、
前記基板を前記ガスクラスターのフラックスにさらすこと、
第2の処理チャンバ内でイオンを含むプラズマを維持すること、及び
前記イオンを前記開口部の前記底壁に向けることにより前記基板を前記イオンにさらすことによって、
異方性処理を用いて前記パターン付与された層を処理することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の処理チャンバが、プレナム、ノズルアセンブリ、及びガスクラスター処理チャンバを更に含み、前記第2の処理チャンバが、プラズマ処理チャンバ、及び前記プラズマ処理チャンバ内でプラズマに給電するための電源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ガスクラスターのフラックスを前記生成すること、及び前記基板をガスクラスターの前記フラックスに前記さらすことが、
前記基板を前記ガスクラスター処理チャンバの中に装填することと、
圧力下にあるガスを、プレナムのガス入口を通して前記プレナムの中に導入することと、
前記プレナムに結合された吸気アパーチャ及び前記ガスクラスター処理チャンバに結合された排気アパーチャを有するノズルを通じて、前記プレナムから前記ガスクラスター処理チャンバまで前記ガスを流すことであって、前記ノズルは1以上のひろがり率を有し、前記ガスを前記流すことが、
前記プレナム内に760Torr以下のガス圧力を印加することを含む、流すことと、を含み、
前記ガスを前記流すことは、前記ガスを冷却させ、前記ガスクラスター処理チャンバ内にガスクラスター凝縮物を形成させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の処理チャンバ及び前記第2の処理チャンバは、単一処理チャンバの一部として一体化されている、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記基板を前記ガスクラスターのフラックスに前記さらすこと及び前記基板を前記イオンに前記さらすことが、複数のサイクルを含む循環的なエッチング処理の1サイクルの一部であり、前記複数のサイクルの各サイクルが、更に、
前記基板を前記ガスクラスターのフラックスに前記さらすことの後、前記プラズマを安定化させることであって、前記プラズマを前記安定化させることが、
圧力下にあるガスを、前記プレナムのガス入口を通して前記プレナムの中に導入すること、
前記単一処理チャンバ内の圧力を設定すること、
前記プレナム内の圧力を設定すること、及び
前記処理チャンバの電極を無線周波数(RF)電源に結合すること
を含む、安定化させることと、
前記基板を前記イオンに前記さらすことの後、前記ガスクラスターのフラックスを安定化させることであって、前記ガスクラスターのフラックスを前記安定化させることが、前記単一処理チャンバ内の圧力をリセットすること、前記プレナム内の圧力をリセットすること、及び前記処理チャンバの前記電極に結合された前記RF電源をリセットすること
を含むことと
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板を前記ガスクラスターのフラックスに前記さらすこと及び前記基板を前記イオンに前記さらすことを同時に実施することと、
前記単一処理チャンバ内の圧力を10mTorr以下で及び0.1mTorr以上に維持することと
を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記基板を前記ガスクラスターのフラックスに前記さらすこと及び前記基板を前記イオンに前記さらすことが、複数のサイクルを含む循環的なエッチング処理の1サイクルの一部であり、前記複数のサイクルの各サイクルが、更に、
前記基板を前記ガスクラスターのフラックスにさらすことの後、前記基板を前記第1の処理チャンバから前記第2の処理チャンバまで移送することと、
前記基板を前記イオンにさらすことの後、前記基板を前記第2の処理チャンバから前記第1の処理チャンバまで移送することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ガスクラスターが、酸素、一酸化炭素、水素、塩素、四塩化炭素、四塩化ケイ素、三塩化ホウ素、フッ素、四フッ化炭素、三フッ化窒素、六フッ化硫黄、トリフルオロメタン、ペルフルオロ炭素、ヒドロフルオロ炭素、又はそれらの任意の組み合わせ、又は不活性ガスとの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
基板を処理するためのシステムであって、
第1のサブシステムであって、
ガス入口を含むプレナム、
複数のノズルを含むノズルアセンブリであって、前記複数のノズルの各ノズルの吸気アパーチャが前記プレナムの内部に配置される、ノズルアセンブリ、及び
前記ノズルアセンブリの前記複数のノズルを介して前記プレナムに接続されたガスクラスター処理チャンバを含む、第1のサブシステムと、
前記ガス入口及び前記ガスクラスター処理チャンバのガス出口に接続されたガスフローシステムであって、前記ガスクラスター処理チャンバ内でガスクラスターのフラックスを生成するように構成された、ガスフローシステムと、
第2のサブシステムであって、
プラズマ処理チャンバ、及び
前記プラズマ処理チャンバ内でプラズマに給電するための電源を含む、第2のサブシステムと、を備える、システム。
【請求項10】
前記複数のノズルの各ノズルの排気アパーチャが、前記プレナムの外部に配置され、前記複数のノズルの各ノズルが、管、円錐台、前記プレナムに結合された茎部を有するじょうご、又は収束‐発散ラバールノズル(convergent-divergent de Laval nozzle)のような形状をしている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ノズルアセンブリの各ノズルが、
1cm以上及び10cm以下の長さ、
0.5mm以上及び1mm以下ののど部の幅、及び
1以上及び10以下のひろがり率
を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のサブシステムが、前記プレナムに結合された冷却システムを更に含み、前記冷却システムが、前記プレナム内のガスの温度を100K以上及び310K以下の目標値に制御するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
基板を処理するためのシステムであって、
プレナムと、
前記プレナムの外部に配置され、プラズマを維持するように構成された基板処理チャンバと、
前記プレナムに結合された吸気アパーチャ及び前記基板処理チャンバに結合された排気アパーチャを有するノズルと、を備える、システム。
【請求項14】
前記ノズルが1以上のひろがり率を有し、
前記ノズルが、管、円錐台、前記プレナムに結合した茎部を有するじょうご、又は収束‐発散ラバールノズル(convergent-divergent de Laval nozzle)のような形状をしている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記ノズルが分極ノズルであり、前記分極ノズルが更に、誘電性基材であって、前記誘電性基材によって電気的に絶縁された2つの導電層が埋め込まれた誘電性基材を含み、前記2つの導電層が、パルスDCバイアス源に電気的に結合されるように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記プレナムに結合された冷却システムを更に含み、前記冷却システムが、前記プレナム内のガスの温度を100K以上及び310K以下の目標値に制御するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記ノズルに隣接して配置された複数のノズルを更に含み、前記ノズル及び前記複数のノズルが、前記プレナムを前記基板処理チャンバに接続するノズルアセンブリを形成する、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記プレナムが第1のガス入口を含み、
前記基板処理チャンバが、
第2のガス入口と、
基板ホルダと、
ガス出口と
を含み、
前記システムが更に、前記第1のガス入口、前記第2のガス入口、及び前記ガス出口に接続されたガスフローシステムを含み、前記ガスフローシステムが、前記基板処理チャンバ内でガスクラスターのフラックスを生成する、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記基板ホルダが、パルスDCバイアス源又は無線周波数(RF)バイアス電源に結合されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
無線周波数(RF)電源に結合された電極を更に含み、前記電極が、前記基板処理チャンバの外部に配置されたコイルのような形状をしており、前記電極が、前記基板処理チャンバ内部で誘導結合プラズマ(ICP)を維持するように構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記基板処理チャンバに結合された電子ビームイオン化装置を更に含み、前記電子ビームイオン化装置が、前記基板処理チャンバ内で前記ガスクラスターのフラックスを途中で捕えるようにエネルギー電子のビームを向けるように構成される、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月31日に出願された米国非仮特許出願第17/008,314号に対する優先権及びその出願日の利益を主張するものであり、該米国非仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概してプラズマ処理に関し、特定の実施形態では、ガスクラスター補助プラズマ処理のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、集積回路(IC)などの半導体デバイスは、基板上に誘電性物質、導電性物質、及び半導体物質の層を順次堆積させ、パターニングして、モノリシック構造で一体化された電子部品及び相互接続素子(例えば、トランジスタ、抵抗器、コンデンサ、金属線、接点、及びビア)のネットワークを形成することによって製造される。半導体デバイスの構成構造を形成するために使用される堆積ステップ及びエッチングステップの多くが、プラズマ処理を使用して行われる。プラズマ処理技術には、ケミカルドライエッチング(CDE)(例えば、プラズマアッシング)、物理的エッチング又はスパッタエッチング、反応性イオンエッチング(RIE)、プラズマCVD(PECVD)、プラズマ原子層エッチング(PEALE)、及び原子層堆積(PEALD)が含まれる。
【0004】
連続的な各テクノロジー・ノードでは、最小フィーチャサイズを縮小させて、部品実装密度を概ね2倍にすることにより、コストを削減している。高機能で低コストの電子機器に対する需要により、フィーチャサイズが数ナノメートルまで縮小された。横方向の寸法が分子及び原子のスケールに近づくにつれて、プラズマ技術は、非常に高いアスペクト比の構造を、ICの製造に必要とされる厳密な精度、均一性、安定性、及び再現性も満足することができる処理を用いて製造しなければならないという課題に直面している。半導体デバイスの製造を成功させるために、その道のりにおける障害を克服するには、プラズマ処理システム及び方法の更なる革新が必要であり得る。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態によれば、基板を処理するための方法は、パターン付与された層を基板上に形成することを含み、この層は開口部を含み、開口部の表面は側壁及び底壁を含む。この方法は、第1の処理チャンバ内で基板の上方でガスクラスターのフラックスを生成することにより異方性処理を用いてパターン付与された層を処理することであって、ガスクラスターはラジカル前駆体を含むことと、基板をガスクラスターのフラックスにさらすことと、を含む。この方法は、第2の処理チャンバ内でイオンを含むプラズマを維持することと、イオンを開口部の底壁に向けることにより基板をイオンにさらすことと、を含む。
【0006】
一実施形態によれば、基板を処理するためのシステムは、第1のサブシステムであって、ガス入口を含むプレナムと、複数のノズルを含むノズルアセンブリであって、複数のノズルの各ノズルの吸気アパーチャはプレナムの内部に配置される、ノズルアセンブリと、ノズルアセンブリの複数のノズルを介してプレナムに接続されたガスクラスター処理チャンバと、ガス入口及びガスクラスター処理チャンバのガス出口に接続されたガスフローシステムであって、ガスクラスター処理チャンバ内でガスクラスターのフラックスを生成するように構成された、ガスフローシステムと、を含む第1のサブシステムを含む。このシステムは、プラズマ処理チャンバを含む第2のサブシステムと、プラズマ処理チャンバ内でプラズマに給電するための電源と、を含む。
【0007】
一実施形態によれば、基板を処理するためのシステムは、プレナムと、プレナムの外部に配置され、プラズマを維持するように構成された基板処理チャンバと、プレナムに結合された吸気アパーチャ及び基板処理チャンバに結合された排気アパーチャを有するノズルと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明及びその利点をより完全に理解するために、ここで、以下の説明が添付図面と併せて参照される。
【0009】
【
図1A】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するための方法のフロー図である。
【
図1B】2つの処理チャンバを利用する循環処理フローを使用する、
図1Aに示したガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いた、基板を処理するための方法のフロー図である。
【
図1C】1つの処理チャンバを利用する循環処理フローを使用する、
図1Aに示したガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いた、基板を処理するための方法のフロー図である。
【
図2A】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いた基板の処理の様々な中間段階における、基板の断面図を示す。
【
図2B】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いた基板の処理の様々な中間段階における、基板の断面図を示す。
【
図2C】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いた基板の処理の様々な中間段階における、基板の断面図を示す。
【
図2D】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いた基板の処理の様々な中間段階における、基板の断面図を示す。
【
図2E】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いた基板の処理の様々な中間段階における、基板の断面図を示す。
【
図2F】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いた基板の処理の様々な中間段階における、基板の断面図を示す。
【
図2G】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いた基板の処理の様々な中間段階における、基板の断面図を示す。
【
図2H】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いた基板の処理の様々な中間段階における、基板の断面図を示す。
【
図2I】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いた基板の処理の様々な中間段階における、基板の断面図を示す。
【
図3A】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムのプレナム及びガスクラスター処理チャンバを備えたサブシステムの断面図を示す。
【
図3B】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムのプラズマ処理チャンバを備えたサブシステムの断面図を示す。
【
図4】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムの断面図を示す。
【
図5A】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムの、様々なデザインタイプのノズルの断面図を示す。
【
図5B】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムの、様々なデザインタイプのノズルの断面図を示す。
【
図5C】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムの、様々なデザインタイプのノズルの断面図を示す。
【
図5D】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムの、様々なデザインタイプのノズルの断面図を示す。
【
図6】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムの断面図を示す。
【
図7A】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムの、埋め込み電極を備えたノズルシステムの上部平面図を示す。
【
図7B】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムの、埋め込み電極を備えたノズルシステムの底部平面図を示す。
【
図7C】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムの、埋め込み電極を備えたノズルシステムの断面図を示す。
【
図7D】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムの、埋め込み電極を備えたノズルシステムの断面図を示す。
【
図7E】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムの、埋め込み電極を備えたノズルシステムの分解図を示す。
【
図8】一実施形態による、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いて基板を処理するためのシステムの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示では、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理を用いた基板の処理について説明する。本明細書で様々な実施形態で説明されるガスクラスター補助異方性プラズマ処理技術は、ハイブリッドのガスクラスター及びプラズマ処理方法である。この方法の様々な実施形態では、ラジカルをガスクラスターのフラックスによってエッチング表面の付近に送達し、プラズマからの正に帯電したイオンを基板に向けて、エッチング表面から物質を取り除く。
【0011】
一般的に、異方性プラズマエッチング処理における中性のラジカルの速度は、広い角度分布になるが、正に帯電したイオンは、より容易に方向付けることができ、例えば、垂直電場によって基板に垂直に向けて、垂直の穴又はトレンチを形成することができる。従って、狭い開口部の空洞に進入するラジカルは、ほぼ垂直の速度で空洞に進入するイオンと比べると、側壁と衝突し、そこで吸着する可能性がより高くなる。この現象により、イオンに対するラジカルの比率が、空洞の深さと共に急速に低下することになり、更には、それぞれのエッチング処理によって達成可能な最大アスペクト比が制限されることにもなり得る。
【0012】
高い異方性のプラズマエッチング処理では、異方性を促進し、側壁のプロファイルを制御するために、垂直な側壁に沿って吸着した不動態化層を利用すると同時に、高度に方向付けられたイオンフラックスを底壁に衝突させることが多い。異方性化学プラズマエッチング処理は、吸着フラックスと脱着フラックスとの組み合わせを含み、揮発性の気体の反応副生成物として、基板物質の正味の除去を伴う。これらのフラックスは、混合層と呼ばれる、表面の幾つかの単層の反応体積内で同時に発生していると理解される。除去速度は、混合層の厚さが増すにつれ低下し、垂直側壁について上述したように、エネルギーイオンのフラックスがないと除去処理が止まることさえあり得る。基板に向けられたエネルギーイオンは、例えば、化学結合を断ち切ることにより、基板とエッチング反応物質との間の化学反応を促進するのに十分なエネルギーで、底壁にある混合層内に打ち込まれるものと解釈することができる。制御された異方性プラズマエッチング処理では、除去速度が入射イオンのフラックスに正比例する状態を実現することが望ましい。この状態は、Γr/Γi≫1である場合に概ね達成され、ここで、Γrはラジカルのフラックスを示し、Γiはイオンのフラックスを示す。Γr/Γiの比率が小さすぎる場合、例えば、Γr/Γiが10を下回る場合、フッ素系のエッチング化学反応を生み出すことができないことがある。ラジカルは捕捉剤種としても利用されて、真空システムによって排出されるのに十分な蒸気圧を有する揮発性の気体副生成物を形成する。例えば、四フッ化炭素(CF4)を使用してケイ素をエッチングするRIEステップでは、少量の酸素を加えることにより、CF4の解離からの炭素残留物を捕捉することができる。酸素ラジカルは炭素と反応して、炭素の揮発性の気体の酸化物(例えば、CO及びCO2)を形成する。上記で説明したように、狭く深い穴、例えば直径が30nmで深さが3ミクロンのビアなどの上部開口部を介して十分な供給量のラジカルを注入し、底部のエッチング表面の付近で大きな値のΓr/Γiを達成することは困難である。
【0013】
本開示で説明するシステム及び方法は、高いアスペクト比の空洞の奥深くでのラジカルの密度を増加させるという利点を提供する。従って、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理技術を効果的に使用することがある目標用途とは、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)セル用の接点、ビア、及びトレンチキャパシタなどの半導体デバイス構造内に高いアスペクト比の開口部をエッチングすることである。本開示では、CLAAPPと呼ばれるガスクラスター補助異方性プラズマ処理(CLAAPP)技術について、まず従来の異方性プラズマ技術(例えば、RIE)を使用して層をパターニングして中程度のアスペクト比(例えば、約30~約60のアスペクト比)の狭い開口部を形成し、次いでCLAAPP技術を使用してこの深さを拡張して、非常に高いアスペクト比のフィーチャを形成する、という文脈で説明する。例えば、本開示で説明するCLAAPPの実施形態を使用することにより、最大アスペクト比(AR)maxを、約60から約100まで、更には150まで増加させることができる。
【0014】
まず、
図1Aのフロー図を使用して、一般的なCLAAPP方法100の説明を行う。一般的な方法100の2つの実施形態を、
図1B及び
図1Cのフロー図に示す。
図1Bはチャンバが2つのCLAAPP方法130を示し、
図1Cはチャンバが1つのCLAAPP方法140を示す。次に、一般的なCLAAPP方法100の適用例について、
図2A~2Iの断面図を参照しながら説明する。これらの図は、層(例えば、酸化ケイ素などの誘電体層)内に高いアスペクト比の開口部(例えば、穴又はトレンチ)を形成する様子を示している。チャンバが2つのCLAAPP方法130の2つのチャンバについては、
図3A及び
図3Bに示す断面図及び概略図を用いて説明し、チャンバが1つのCLAAPP方法140の単一のチャンバについては、
図4を参照しながら説明する。ガスクラスター補助プラズマ処理システム(
図3A~
図3B及び
図4を参照して説明する)の設計の様々な態様について、
図5A~
図5D、
図6、
図7A~
図7E、及び
図8の図を使用して考察する。
【0015】
図1Aは、一般的なCLAAPP方法100のフロー図を示す。まず、基板上にパターン付与された層を形成することにより、到来する基板(例えば、半導体基板)が準備される。ブロック110に示すように、このパターン付与された層は、当業者には知られているような、適切なフォトリソグラフィ及びエッチング技術を使用して形成された狭い開口部を含む。
【0016】
次いで、パターン付与された層は、CLAAPPエッチング技術を使用して処理される。ブロック120によって示すように、CLAAPPエッチングは、幾つかの部分、即ち、基板の上方でガスクラスターのフラックスを生成すること(ボックス122)、基板をガスクラスターのフラックスにさらすこと(ボックス124)、無線周波数(RF)電力を使用してプラズマを維持すること(ボックス126)、及びプラズマから抽出されたイオンの垂直に向けられたフラックスに基板をさらすこと(ボックス128)を含む。
【0017】
ガスクラスターは、ラジカル前駆体と呼ばれる、ラジカル源である凝縮性ガスから形成される。ラジカル前駆体の例としては、酸素、一酸化炭素、水素、塩素、四塩化炭素、四塩化ケイ素、三塩化ホウ素、フッ素、四フッ化炭素、三フッ化窒素、六フッ化硫黄、トリフルオロメタン、フルオロ炭素、ヒドロフルオロ炭素等が挙げられる。ガスクラスターは、凝縮性ガスをノズルを通して真空チャンバに注入することによって形成することができる。音速の数倍の速度でノズルを通して処理チャンバに注入されたラジカル前駆体ガスは、断熱膨張により冷却され凝縮して、緩やかに結合したガスクラスターを形成することができる。平均クラスターサイズは、ラジカル前駆体ガスの温度、ノズルのデザイン、及びノズルの吸気口と排気口との間の圧力勾配などの、処理及び機器の様々なパラメータに応じて、1つのクラスター当たり約1,000~約10,000個の分子であり得る。処理チャンバにおいてこのように生成されたガスクラスターのフラックスは、下にある基板ホルダ上に配置された基板に向かって更に進むことができる。処理チャンバには、パターン付与された層内に開口部を備えた到来する基板が装填され、この処理チャンバは、真空システムを使用して低圧まで排気されることがある。クラスターは、基板に到達すると、マスキング層によってガスクラスターのフラックスにさらされている空洞に進入し、続いて、以下で更に詳細に説明するように、CLAAPPエッチング処理に関与することができる。
【0018】
図1Aのフロー図のブロック120に示すように、基板は、プラズマから抽出されたイオンにもさらされて、CLAAPPエッチングが行われる。イオンは、開口部の底壁に垂直に向けられ、底壁に当たって表面と相互作用するときに、物質を除去することがある。
【0019】
図1Bは、チャンバが2つの方法130のフロー図を示す。チャンバが2つの方法130では、CLAAPP処理は、2つの別個の処理チャンバで実施される循環処理として実施される。チャンバが2つの循環的な方法130のフロー図では、この方法に固有のステップは、実線の矩形によって示されている。
図1Bのボックス121に示すように、循環的なCLAAPP処理は、ガスクラスターのフラックスが形成されるガスクラスター処理チャンバに到来する基板が装填された状態で開始する。基板がガスクラスターのフラックスにさらされた後(ボックス124)、
図1Bのボックス131に示すように、基板は移送チャンバを介してプラズマ処理チャンバに移送される。移送チャンバは、それらの2つの処理チャンバ間での迅速な移送を容易にするために、小さな体積を有するように設計されることがある。プラズマチャンバでは、RF電源に結合された電極がプラズマを維持し、このプラズマからイオンが抽出される(ボックス126)。この循環的なCLAAPP処理の1つのサイクルは、基板をイオンフラックスにさらすことにより完了する(ボックス128)。基板をイオンにさらした(ボックス128)後、基板をガスクラスター処理チャンバに戻して(ボックス132)、次のサイクルを実施することがある。高いアスペクト比のフィーチャの形成を完了するためには、複数のサイクルを実施することがある。
【0020】
幾つかの実施形態では、CLAAPP処理は、基板をガスクラスターのフラックス及び垂直に向けられたイオンフラックスのフラックスに同時にさらす方法によって、単一のチャンバで行われることがある。同時処理用の処理パラメータ空間(例えば、チャンバ圧力、基板温度、ガス流量、RF電力等)は、循環的な処理と比べるとより制限される。用途によっては、これにより、それぞれのCLAAPP処理の能力が、非常に高いアスペクト比のフィーチャを形成するには制限されることがある。循環的なCLAAPP処理を使用することにより、単一チャンバ実装における処理の柔軟性がより高くなる。
【0021】
図1Cは、チャンバが1つの方法140のフロー図を示しており、この方法では、基板をガスクラスターのフラックスにさらすこと及び基板をイオンにさらすことは、循環的なCLAAPP処理の1サイクルの一部となっている。チャンバが1つの循環的な方法140に固有のステップは、実線の矩形によって示されている。
図1Cのボックス141に示すように、基板をガスクラスターのフラックスにさらした(ボックス124)後、
図1Cのボックス141に示すように、処理チャンバ内の圧力及び電極へのRF電力は、基板の上方で安定なプラズマを得るように設定されることがある。基板をイオンフラックスにさらすこと(ボックス128)により、循環的なCLAAPP処理の1サイクルが完了する。次いで、ボックス142に示すように、チャンバ圧力をリセットし、RF電力をリセットして、ガスクラスターの安定したフラックスを生成することにより、次のサイクルを実施するように処理チャンバを準備することがある。
【0022】
ここで、循環的なCLAAPP処理を適用して、基板のターゲット層210に非常に高いアスペクト比の開口部を形成することについて、
図2A~
図2Iに示す断面図を参照して説明する。
【0023】
図2Aは、ターゲット層210の上にパターン付与されたマスク層202を示す。様々な実施形態では、ターゲット層210は、酸化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、酸化ケイ素と窒化ケイ素の交互の層、ケイ素、ゲルマニウム、ケイ素-ゲルマニウム合金等を含むことがあり、一実施形態では、二酸化ケイ素を含むことがある。一実施形態では、マスク層202は、SOCの底部層、窒化ケイ素の中間層、及び金属酸化物フォトレジストの上部層を備えた、複数の層のスタックであり得る。別の実施形態では、マスク層202は、例えば、無機反射防止コーティング(ARC)及び/又はハードマスク層に隣接した、上部有機フォトレジスト層のスタックを含むことがある。
【0024】
フォトレジストは、感光性有機ポリマー、有機溶媒に溶解したポリマー前駆体、又は小さな分子の周りを基礎とした分子系、例えば、ハフニウム・コア・ナノ粒子、金属酸化物、及び分子ガラスなど、であり得る。
【0025】
ハードマスクは、シリコン含有反射防止コーティング(SiARC)、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル、ホウ化ケイ素、酸化ハフニウム、スピンオンカーボン(SOC)などの有機層、又はそれらの組み合わせ、などの物質を含むことがある。
【0026】
図2Aに示す1つの例示的な実施形態では、ターゲット層210は酸化ケイ素を含むことがあり、マスク層202は、SOCの底部層、窒化ケイ素の中間層、及び金属酸化物フォトレジストの上部層を備えたスタックであり得る。マスク層202内のターゲット層210の表面の一部を露出させる狭い開口部230(例えば、幅が約10nm~約30nmのビア)が示されている。開口部230は、EUVリソグラフィ及び異方性プラズマエッチング技術などの、適切なフォトリソグラフィ及びエッチング技術を使用して、形成されることがある。様々な実施形態では、プラズマエッチング化学反応は、例えば、メタン、テトラフルオロメタン、トリフルオロメタン、三フッ化窒素、酸素、又は二酸化硫黄等、又はそれらの組み合わせを使用していることがある。気体混合物は、不活性ガス(例えば、アルゴン及びヘリウム)を含むことがある。幾つかの実施形態では、プラズマは、上部のディスク状電極に結合された例えば40MHzの周波数で約300W~約1kWのRFソース電力、及び、プラズマ処理チャンバ内の基板ホルダに結合された、例えば13.56MHzの標準周波数で100Wを超えない低RFバイアス電力を使用して維持される、容量結合プラズマ(CCP)であり得る。別の実施形態では、RFソース電力は、誘導結合プラズマ(ICP)を維持するために螺旋共振器コイルに結合されることがある。
【0027】
図2Bは、例えば、フッ素化学反応を用いたRIEなどの異方性プラズマエッチングを使用してターゲット層210をエッチングすることにより形成された最初のパターン付与済層240を示す。様々な実施形態では、プラズマは、例えば、テトラフルオロメタン、ヘキサフルオロシクロブテン、オクタフルオロシクロブタン、又は三フッ化窒素等を含む気体混合物を使用していることがある。他の気体には、酸素、及びアルゴン又はヘリウムなどの不活性ガスが含まれることがある。プラズマは、例えば、13.56MHzの標準周波数で約10kW~約20kWのRFバイアス電力を使用して維持されることがある。もたらされるRFソース電力は、例えば40MHz又は60MHzの周波数で約1kW~約5kWであり得る。更に、約500V~約1000VのDCバイアスが存在することがある。幾つかの実施形態では、約10%~約50%のデューティサイクルを有するパルスDCバイアスが、1kHz~10kHzの範囲内、一実施形態では5kHzの低周波数で使用されることがある。チャンバ圧力は、様々な実施形態では10mTorr~100mTorr、一実施形態では25mTorrであることがあり、チャンバ温度は、80°C~100°Cの範囲内の温度に制御されることがある。
【0028】
図2Bでは、イオンの垂直フラックス220を使用して、ターゲット層210の露出した表面から二酸化ケイ素を異方的に除去して、開口部230の空洞を深さdまで増大させている。様々な例示的な実施形態では、
図2Bのパターン付与された層240内の開口部230のアスペクト比は、最小の幅のフィーチャについて約30~約60であることがあり、最小の幅は、約10nm~約30nmであり得る。最初のパターン付与済層240の形成は、エッチングステップの完了時に完了する。複数の開口部230であって、各開口部はマスク層202及びターゲット層210にエッチングされた深さdの空洞を有する複数の開口部230を備えたパターン付与済層240を有する基板が、循環CLAAPP処理のガスクラスターステップのための次の基板になる。
【0029】
図2C~
図2Hは、例示的な循環的CLAAPPエッチング処理の1つのサイクルを示す。即ち、
図2C~
図2Fはガスクラスターで表面を処理する様子を示し、
図2G~
図2Hは方向付けられたイオンを使用して空洞の深さを増大させる様子を示す。
図2Iの断面図は、次のサイクルの開始時点の基板を示す。
【0030】
図2Cでは、到来した基板は、
図1Aを参照して上述したように、ラジカル前駆体ガスの凝縮によって生成されたガスクラスター222のフラックスにさらされる。ラジカル前駆体ガスは、フルオロ炭素、例えばテトラフルオロメタンであることがあり、ガスクラスター222は、様々なサイズのクラスターを含むことがある。様々な実施形態では、平均クラスターサイズは、約1,000~約10.000分子である。
図2Cに示すように、開口部230(例えば、穴又はトレンチ)の空洞に進入するガスクラスターは、空洞壁と衝突し、車のフロントガラスに飛び散る泥のようなより小さな粒子に分解する可能性が高い。このようにガスクラスターから放出されたラジカル(例えば、フッ素ラジカル)は、穴の空洞内に送達される。
【0031】
図2Dに概略的に示すように、分解したクラスターが数千ものラジカルを放出することがあるので、ラジカルの数、従って、開口部230の空洞の奥でのガスの局所的なモル密度は大幅に増加する。理想気体方程式によって示されるように、モル密度の増加には、比率(P/T)の比例増加が伴い、ここで、Pは圧力を表し、Tは絶対温度を表す。開口部230の側壁又は底壁との衝突によるガスクラスターの分解のプロセスは、概ね等温である、というのも、比較的に大きな熱容量により、基板がヒートシンクと同等になるからである。従って、空洞内の局所圧力が数桁増加することがある。
【0032】
図2Eは、放出されたラジカルの多くが、空洞内の増加した圧力によって促進された物理吸着によって又は化学吸着によって、開口部230の壁に吸着する様子を示している。ガスクラスターのフラックスにさらされている間、クラスターの分解及び吸着プロセスは、例えば二酸化ケイ素を含む開口部230の壁の表面をラジカル(例えば、フッ素ラジカル)の層で覆い続ける。
【0033】
図2Fに示すように、ガスクラスターの露光ステップが完了するまでに、開口部230の壁はラジカルで飽和されていることがある。
【0034】
図2Gに示すように、開口部230がラジカルで覆われた後、基板は、例えば、ほぼ等しい割合の不活性ガス(アルゴンなど)とフルオロ炭素(テトラフルオロメタン(CF
4)など)とに少量の酸素を加えた混合物などのガス混合物を使用して、基板の上方に維持されたまっすぐなプラズマから抽出されたイオンの垂直フラックス233にさらされることがある。例示的な実施形態では、プラズマは、コイル状の電極に結合された約100W、様々な実施形態では50W~200WのRFソース電力によって維持されることがある。基板ホルダに結合されたRFバイアス電力は、例示的な実施形態では約5kW、他の様々な実施形態では1kW~10kWであり得る。RFソース電力及びRFバイアス電力は、例えば、標準周波数が13.56MHzであり得る。チャンバ圧力は、0.1mTorr~約10mTorrの範囲内であり得る。
【0035】
図2Gに示した例示的な実施形態では、イオン233は、アルゴン(Ar
+)及びトリフルオロメチルカチオン(CF3
+)を含むことがある。垂直方向に加速されたイオン233は、ターゲット層210の物質(例えば、二酸化ケイ素)と相互作用し、開口部230の底壁に当たったときに、例えばケイ素-酸素の結合を断ち切るのに十分なエネルギーを与える。このプロセスの間、表面付近の物質が除去されることがある。二酸化ケイ素から取り除かれたケイ素原子はフッ素ラジカルと反応してSiF
4ガスを形成し、断ち切られたSi-O結合から放出された酸素原子は、CF
3
+中に存在する炭素と反応してCO及びCO
2ガスを形成する。これらの揮発性ガスは、真空システムによって排出されることがある。イオンにさらすステップにより、
図1Bに示したチャンバが2つのCLAAPP方法130、又は
図1Cに示したチャンバが1つのCLAAPP方法140などの、循環的なCLAAPPエッチング処理フローの1サイクルが完了する。
【0036】
図2Hに示すように、サイクルの終了時には、基板を垂直方向に向けられたイオン233にさらすことにより、開口部230の底壁から物質(例えば、二酸化ケイ素)が異方的に除去され、量Δdだけ最初の深さdが拡張され、この除去に関連した化学反応により、開口部230内のラジカルの数がほとんどない状態になる。次いで、
図2Iに示すように、基板はガスクラスターに再びさらされ、それによって、2番目のサイクルが開始する。このプロセスは、ガスクラスターステップとプラズマステップとを交互に繰り返し、開口部230の非常に高い目標アスペクト比を達成できるまで、所定のサイクル回数に渡って空洞の深さを拡張する。
【0037】
図1Bを参照して説明したチャンバが2つのCLAAPP方法130を実施するために使用できるCLAAPPシステムの2つのサブシステムを、
図3A及び
図3Bに断面図で示す。
図3Aは、ガスクラスターサブシステム300を示し、
図3Bはプラズマサブシステム370を示す。
【0038】
図3Aのガスクラスターサブシステム300は、第1の処理チャンバ303及びガスフローシステム330を備える。第1の処理チャンバ303は、プレナム310、ノズルアセンブリ308、及びガスクラスター処理チャンバ320を備え、基板301を処理することができる。CLAAPPシステムのガス入口及び出口に接続されたガスフローシステム330は、プレナム310及びガスクラスター処理チャンバ320を通る様々なガスの流れを制御する。第1の処理チャンバ303は、プレナム310に結合されたオプションの冷却システム340も含むことがある。
【0039】
ラジカル前駆体ガスは、ガスクラスター処理中に、約100Torr~約760という比較的に高い圧力のガス流中に含まれて、ガス入口302を通ってプレナム310に導入されることがある。その他の時には、逆流を止めるための最小のプレナム圧力が印加され、このプレナム圧力は、ガスクラスター処理チャンバ320内の圧力に応じて、0.1Torrもの低い圧力であり得る。第1の処理チャンバ303内の様々なガス圧力は、ガスフローシステム330によって制御される。当業者には知られているように、ガスフローシステムは、高圧ガスキャニスター、バルブ(例えば、スロットルバルブ)、圧力センサ、ガス流量センサ、真空ポンプ、パイプ、及び電子的にプログラム可能なコントローラなどの様々な部品を備えることがある。
図3Aに示す例示的な実施形態では、ガス入口302は、プレナム310の上部カバー305に結合されている。別の実施形態では、ラジカル前駆体ガスは、プレナム310の側壁304に結合されたガス入口を通じて導入されることがある。
【0040】
プレナム310内の比較的に高い圧力により、ラジカル前駆体ガスがノズルアセンブリ308のノズル306のアレイの吸気アパーチャの中に流れ込み、ノズル306の排気アパーチャを通って流れ出る。
図3Aに示すように、ノズルアセンブリ308の吸気アパーチャはプレナム310内部の空洞に結合されている一方で、ノズルアセンブリ308の排気アパーチャは、反対側に配置された低圧のガスクラスター処理チャンバ320に結合されている。様々な実施形態では、ノズル306は、管、円錐台、プレナムに結合された茎部を有するじょうご、又は収束‐発散ラバールノズル(convergent-divergent de Laval nozzle)などの様々な形状のものであり得る。ノズルの幾何学的パラメータについては、
図5A~
図5Dを参照して以下で更に詳細に考察する。
【0041】
図3Aに示すように、ノズルアセンブリ308に隣接するガスクラスター処理チャンバ320は、基板ホルダ312及びガス出口318を備える。基板301は、基板ホルダ312に搭載されて示されている。ガスクラスター処理チャンバ320は、真空ポンプを使用するガスフローシステム330によって低圧に維持されることがある。上記で説明したように、ノズルアセンブリの端から端までの圧力の差は、断熱膨張によってラジカル前駆体ガスを急速に冷却してガスを凝縮させ、ファン・デル・ワールス力によって弱く結合したナノメートルスケールのガス分子のクラスターを形成するように設計される。様々な実施形態では、ガスクラスター処理チャンバ320内の目標圧力は、CLAAPP処理の目標ガス流量に応じて、約0.1mTorr~約10mTorとなるように選択されることがある。ガスクラスターの形成中、ノズルアセンブリ308の各ノズル306の出口における圧力に対する入口における圧力の非率は高くなければならず、例えば、10よりも大きくなければならず、典型的にはこの比率は1000を上回る。
【0042】
図3Bのプラズマサブシステム370は、第2の処理チャンバ371及びガスフローシステム330を備える。第2の処理チャンバ371は、プラズマ処理チャンバ350と、プラズマ処理チャンバ350内のプラズマに電力を供給するためのソースRF電源358及びRFバイアス電源364などの電源を含む電気システム372とを備える。電気システム372は、オプションのDCバイアス源368も含むことがある。
図2G及び
図2Hを参照して上述したように、プラズマサブシステム370は、方向付けられたイオンフラックスを使用して異方性エッチングを実施するように構成されることがある。プラズマ処理チャンバ350は、基板ホルダ362上に配置された基板301の真上でプラズマを維持することがある。プラズマエッチング用のイオンを生成するために使用される気体混合物は、ガス入口352を通してプラズマ処理チャンバ350内に導入されることがあり、気体の副生成物は、ガス出口359を通して排出されることがある。ガス流量及びチャンバ圧力は、ガス入口352及びガス出口359に結合されたガスフローシステム330によって制御される。RFバイアス電源364からのバイアス電力及びRF電源358からのRFソース電力は、プラズマ処理チャンバ350のそれぞれの電極に供給されることがある。
図3Bに示す例示的な実施形態では、RFバイアス電極は基板ホルダ362でもあり、RFソース電力は、誘電性の側壁354の周りに渦巻き状に巻かれた螺旋共振器356に供給される。RFバイアス電源364の代わりに、パルスDCバイアスも使用されることがある。オプションのDCバイアス源368も、基板ホルダ362に結合されて示されている。
図3Bでは、ガス入口352は、導電性の上部プレート355に結合されており、ガス出口は、導電性の底部プレート366に結合されている。導電性の上部プレート355及び底部プレート366は、系統グラウンド(基準電位)に電気的に接続されていることがある。
【0043】
図3Bを参照して上述したプラズマサブシステム370の構成は、単なる例に過ぎない。代替の実施形態では、プラズマサブシステム370の様々な代替構成を使用することがある。例えば、誘導結合プラズマ(ICP)は、上部誘電性カバー上の平面コイルに結合されたRFソース電力と共に、又は、プラズマ処理チャンバ350内のディスク状の上部電極を使用して生成された容量結合プラズマ(CCP)と共に使用されることがあり、ガス入口及び/又はガス出口は側壁に結合されていることがある、等である。幾つかの実施形態では、(連続波RF電源とは対照的に)パルスRF電源及びパルスDC電源も使用されることがある。様々な実施形態では、RF電力、チャンバ圧力、基板温度、ガス流量、及び他のプラズマ処理パラメータは、それぞれの処理レシピに従って選択されることがある。
【0044】
図4は、ガスクラスター補助異方性プラズマ処理システムを実装するための単一チャンバのCLAAPPシステム400を示す。単一チャンバCLAAPPシステム400は、
図1Cのフロー図を参照して説明したようなチャンバが1つの循環的なCLAAPP方法140を実行するために使用されることがある。チャンバが1つの循環的なCLAAPP方法140では、基板(例えば、半導体基板301)は、ガスクラスターのフラックス及び方向付けられたイオンのフラックスに交互にさらされる。更に、単一チャンバCLAAPPシステム400は、同時CLAAPP方法を可能にすることができ、ガスクラスター処理ステップとプラズマ処理ステップとの間で行われる時間のかかるチャンバリセットが省かれる。同時CLAAPP方法では、基板をガスクラスターのフラックスにさらすことと、基板をイオンにさらすこととは、単一チャンバCLAAPPシステム400を使用して同時に実施されることがある。
【0045】
図4に示すように、単一チャンバCLAAPPシステム400は、少しの調節により、(
図3A及び
図3Bを参照して上述した)2つのサブシステム300と370を統合している。単一チャンバCLAAPPシステム400は、プレナム310及び基板処理チャンバ450を備えており、基板301は、ガスクラスターによる処理及びプラズマによる処理を施されることがある。更に、単一チャンバCLAAPPシステム400は、ガスフローシステム330と、オプションの冷却システム340と、RFバイアス電源364、ソースRF電源358、及びオプションのDCバイアス源368などの1つ又は複数の電源を備えた電気システム372と、を含む。
【0046】
基板処理チャンバ450は、(
図3Aに示した)ガスクラスター処理チャンバ320と(
図3Bに示した)プラズマ処理チャンバ350とを組み合わせたものとして説明されることがあり、ここで、基板処理チャンバ450は、プラズマ処理チャンバ350から変更されている。この変更には、プレナム310をノズルアセンブリ308を介して基板処理チャンバ450に結合することと、プラズマを生成するために使用することができる気体混合物を導入するための追加のガス入口452が含まれることと、が含まれる。これらの変更により、単一チャンバCLAAPPシステム400は、(
図1Cを参照して上述した)チャンバが1つの循環的なCLAAPP方法140及び同時CLAAPP方法を実施することができる。
【0047】
チャンバが1つの循環的なCLAAPP方法140の実行において、プレナム310及び基板処理チャンバ450に対して選択される処理パラメータは、2組の値の間で交互になる。基板301をガスクラスターのフラックスにさらしている間、様々な実施形態では、プレナム310内のガス圧力は、100Torr~760Torrの範囲内になるように選択され、基板処理チャンバ450内では0.1mTorr~10mTorrの間になるように選択される。しかしながら、基板301をイオンのフラックスにさらしている間、プレナム310内のガス圧力は低下するものの逆流を止めるのに十分な高さに維持されることがある。例えば、プレナムの圧力は、様々な実施形態では約0.1Torr~約10Torrであり、一実施形態では約1Torrであり得る。様々な実施形態では、基板処理チャンバ450内の圧力は、プラズマエッチング処理の要件に応じて、0.1mTorr~10mTorrの間であり得る。
【0048】
同時処理の処理条件は、循環処理の処理条件よりも制約がある場合がある。例えば、ここでは基板処理チャンバ450と呼ばれる、組み合わされたガスクラスター及びプラズマ処理チャンバ内の圧力は、適度な平均クラスターサイズのガスクラスターを生成するための低圧制約に対応し、及び、プラズマ放電を通過し基板301に到達するガスクラスターの適度なフラックスを維持しなければならないことがある。同時に、この圧力は、それぞれのプラズマエッチング処理を実施するのに必要なウィンドウ内に制御されなければならない。様々な実施形態では、同時CLAAPP方法を実施する場合、基板処理チャンバ450内の圧力は、概ね10mTorr以下で及び0.1mTorr以上に維持されることがある。プレナム310の圧力は、様々な実施形態では100Torr~760Torrの範囲内、一実施形態では約380Torrに維持されることがある。ガスクラスター形成プロセスは、冷却システム340を使用してプレナム310を100K~310Kの範囲内の温度に予冷することにより、促進されることがある。比較的に低いプレナム圧力、例えば、380Torr以下の圧力を選択することが望ましい場合に、プレナム310内の温度を低くすると有利であることがある。
【0049】
ファン・デル・ワールス結合した分子ガスクラスターを形成するプロセスは、ノズルの吸気口でのガスの絶対温度T0に非常に敏感であることが知られている。クラスター内の平均分子数(Nc)は、ハジェナの式(Hagena’s formula)と呼ばれる半経験的なスケーリング法則から推定することができる。関心のもたれる圧力範囲内で、ハジェナの式は、Nc∝(Γ*)2.35であることを予測し、ここで、ハジェナのパラメータΓ*∝T0
-2.29であり、それによってNc∝T0
-5.38になる。ハジェナの式によると、室温から100°Cだけガスを予冷すると(T0=300KからT0=200Kへ)、クラスターサイズ(Nc)がほぼ1桁増加するか、又は、プレナム圧力の半分の圧力で同じ平均クラスターサイズがもたらされる。これらの推定値は概算であるが、幾つかの実施形態では、コスト及び複雑さが増すにも関わらす冷却システム340を含めることが有利であり得ることを示している。様々な実施形態では、プレナム内のガスの温度は、100K以上で及び310K以下の目標値に制御されるように選択されることがある。
【0050】
図5A~
図5Dは、上述したガスクラスター補助プラズマ処理システムの様々な実施形態においてガスクラスターを生成するために使用されることがある様々なデザインタイプのノズル、例えば、
図3A及び
図4に示したシステムのノズルアセンブリ308内のノズル306の断面図を示す。管500、円錐台530、茎部を有するじょうご560、及び収束‐発散ラバールノズル590のような形状をしたノズルを、それぞれ
図5a、
図5B、
図5C、及び
図5Dの断面図に示す。ノズルの構造は、基材540内に形成された穴であり、この穴は、吸気アパーチャ510及び排気アパーチャ520を有する。幾つかの実施形態では、基材540は誘電体(例えば、セラミック)を含むことがあり、他の幾つかの実施形態では、基材540は金属(例えば、アルミニウム又は銅)を含むことがある。ノズルの最も狭い領域は、のど部と呼ばれ、
図5A~
図5Dでは両方向の矢印によって示されている。管500は、複数の両方向矢印によって示されるように、幅が均一である。
図5A~
図5Dに示したノズルを表す幾何学的パラメータには、高さh、のど部の幅d、ひろがり率ε、及び円錐半角α(ラバールノズル590の場合は、2つの円錐半角)が含まれる。のど部の面積に対する排気アパーチャの面積の比率として定義されるひろがり率εは、ノズルデザインの重要な設計パラメータである、というのも、ガスが排気アパーチャを通ってノズルから出ていく前に、断熱膨張させ冷却することが有利であるからである。一般的に、
図5A~
図5Dに示したノズルデザインを含めて、ε≧1が使用される。しかしながら、αが大きい(排気アパーチャの幅が非常に広い)ノズルは望ましくないことがある、というのも、円錐状ノズルについてのハジェナの式によれば、Γ
*∝(0.74d/tan α)
0.85であり、従って、クラスターサイズN
cが、所与ののど部の幅dに対して小さすぎるようになることがあるからである。様々な実施形態では、円錐半角は、約30°以下であり、一実施形態では5°~30°の間であり得る。
【0051】
デザインの流量及びプレナム圧力を所望の範囲内に位置付けるために、ノズル設計においてノズルの高さh及びのど部の幅dを調節することがある。予想されるように、dを低減すると又はhを増加させると、プレナム内の所与の背圧P0に対して流量が低下する。平均クラスターサイズNcを1,000未満に低減させることなく、プレナム圧力が1標準気圧を上回る必要がない場合、システム設定にとって有利である。Nc∝P0
2.35であることが、ハジェナの式から推定される。様々な実施形態では、約0.5mm~約1mmののど部の幅d及び約1cm~約5cmのノズル高さhを有する約200個のノズルから約1000個のノズルのアレイを用いて、約50sccm~約1000sccmのガス流量が達成されることがある。
【0052】
様々なサイズのガスクラスターが、平行ビームと表現するには比較的に大きな立体角に渡って広がる噴霧となって、音速の数倍の出射速度で排気アパーチャから押し出される。上述したガスクラスター補助プラズマ処理システム及び方法の実施形態では、クラスターは、ガスクラスターイオンビーム(GCIB)システムで典型的に行われているように、イオン化され電磁場により加速されてはいない。しかしながら、同時処理方法では、クラスターの一部は、処理中に、組み合わされたガスクラスター及びプラズマ処理チャンバ450内で維持されるプラズマを通過する際に散乱され分解されることがあるので、単一チャンバCLAAPPシステム400は、クラスターを基板に向けて加速させるように変更されることがある。この変更については、
図6、
図7A~
図7E、及び
図8を参照して説明する。
【0053】
図6は、処理チャンバに結合された電子ビームイオン化装置601を備えた単一チャンバCLAAPPシステム600の実施形態を示しており、この電子ビームイオン化装置は、組み合わされたガスクラスター及びプラズマ処理チャンバ650内でガスクラスターのフラックスを途中で捕えるようにエネルギー電子のビームを向けるように構成される。単一チャンバCLAAPPシステム600の特徴は、(
図4を参照して上述した)単一チャンバCLAAPPシステム400の特徴と似ているが、電子ビームイオン化装置601が追加されている点が異なる。電子ビームイオン化装置601からのエネルギー電子は、ガスクラスターの一部をイオン化することができる。次いで、イオン化されたガスクラスターは、RFバイアス電源364(若しくはパルスDCバイアス源)、又は基板ホルダ362に結合されたオプションのDCバイアス源368を使用して生成されたバイアス電場によって加速されることがある。
【0054】
図7A~
図7Eは、分極ノズル700を示しており、導電性フィルム710及び720が、基材540に埋め込まれている。分極ノズル700の基材540は、導電性フィルム710を導電性フィルム720から絶縁するのに十分な絶縁耐力を有する誘電物質(例えば、セラミック)である。埋め込まれた導電性フィルム710及び720を電極に接続するための接点を設けて、導電性フィルム710及び720をパルスDCバイアス源に電気的に結合することがある。
図7A~
図7Eに示した実施形態では、分極ノズル700は、
図5Cに示した茎部を有するじょうご560と同じ形状をしている。他の実施形態では、他の形状が使用されることがある。
図7Aの上部平面図は、のど部の幅dと等しい幅を有する吸気アパーチャ510を示しており、
図7Bの底部平面図は、分極ノズル700の排気アパーチャ520を示している。これらのアパーチャは、セラミックなどの誘電体を含む基材540によって囲まれているのが分かる。破線7C及び7Dは、それぞれ
図7C及び
図7Dに示す断面図を得るために使用される切断面を示している。
【0055】
図7Cの断面図は、導電性フィルム710及び720がギャップを含むことを示している。誘電体の基材540によって横方向に囲まれているノズルの穴は、導電性フィルム710及び720内のこれらのギャップを通過する。
図7Dの断面図は、導電性フィルム710及び720が、隣接するノズル穴の間の連続的な導電性領域を通じて電気的連続性を維持することを示している。
図7C~
図7Dの断面図と併せて
図7A~
図7Bの平面図を参照して説明した分極ノズル700の構造は、
図7Eに示す分解図によって更に図示される。
図7Eでは、4つの平面図が、互いに垂直に整列して示されている。2つの垂直な両方向矢印が、2つの隣接するノズル700のノズル穴の中心を通過して示されている。
図7Eの分解図を示す4つの平面の間の物質は、分かりやすくするために取り除かれている。なお、導電性フィルム710及び720は、誘電性基材540によって互いから電気的に絶縁されている。
【0056】
図8は、単一チャンバCLAAPPシステム800の実施形態を示しており、分極ノズル700が、ノズルアセンブリ808内で使用されている。埋め込まれた導電性フィルム710及び720は、2本の実線によって模式的に示されている。導電性フィルム710及び720を電極として使用するために、導電性フィルム710及び720への電気的接触が形成されることがある。
図8では、導電性フィルム710及び720は、パルスDCバイアス源801に接続された電極として使用されているものとして模式的に示されている。
【0057】
分極可能な原子又は分子を含む中性ガスクラスターが、電磁理論の法則に従って、電場勾配によって加速されることがある。ノズルの穴が円錐形の幾何形状をしているので、埋め込まれた導電性フィルム710及び720に、ある電位差でバイアスをかけることによって、垂直方向の電場勾配が生じることがあることを理解されたい。従って、2つの埋め込まれた導電性フィルム710及び720にパルスDC源が電気的に結合されることがあり、それによって、分極されたクラスターを垂直下方に加速させることができる。
【0058】
本開示では、ガスクラスターを使用して高いアスペクト比の穴又はトレンチの奥深くにラジカルを供給する方法について説明してきた。本明細書で説明した実施形態は、単一のフォトリソグラフィ・パターニング・ステップとそれに続く1つ又は複数のパターン転写エッチングステップを使用してエッチングされる接点/ビアホールの最大アスペクト比(AR)maxの性能を、100<(AR)max<150まで拡張するという利点を提供する。ガスクラスター処理の助けがないと、高いアスペクト比(例えば、アスペクト比>100)の空洞の底壁において妥当なエッチング効率(例えば、>100nm/min)を得ることは困難であり得る。同様に、(垂直方向に向けられたイオンフラックスに比べて)深さと共にラジカルフラックスが急激に減少すると、高いイオンフラックス対ラジカル比率、例えば、Γr/Γi>10という所望の比率を維持する能力が大幅に制限される。複雑な処理構成にも関わらず、約5を超えるΓr/Γiを達成し、高いアスペクト比の狭いフィーチャ(例えば、幅が約20nmで深さが数ミクロンの穴又はトレンチ)の底部をエッチングするのに十分な運動エネルギー(例えば、>10keV)を有する十分なイオンを提供することは、非常に困難であることがある。
【0059】
対照的に、本開示で説明するガスクラスター補助プラズマ処理の実施形態を使用することにより、エッチング処理の能力を拡張して、約10nm~約30nmの幅及び約100~約150のアスペクト比を有する開口部を形成することが、単一のフォトリソグラフィ・パターニング・ステップ(例えば、EUVフォトリソグラフィ)と、それに続く比較的に単純なプラズマ処理条件を使用した異方性パターン転写エッチング処理を使用して可能になり、それによって処理コストが低減し、処理歩留まりが向上する。
【0060】
本出願の実施形態の様々な実施態様について、以下で考察する。
【0061】
例1.基板を処理するための方法は、パターン付与された層を基板上に形成することを含み、この層は開口部を含み、開口部の表面は側壁及び底壁を含む。この方法は、第1の処理チャンバ内で基板の上方でガスクラスターのフラックスを生成することにより異方性処理を用いてパターン付与された層を処理することであって、ガスクラスターはラジカル前駆体を含むことと、基板をガスクラスターのフラックスにさらすことと、を含む。この方法は、第2の処理チャンバ内でイオンを含むプラズマを維持することと、イオンを開口部の底壁に向けることにより基板をイオンにさらすことと、を含む。
【0062】
例2.第1の処理チャンバは、プレナム、ノズルアセンブリ、及びガスクラスター処理チャンバを更に含み、第2の処理チャンバは、プラズマ処理チャンバ、及びプラズマ処理チャンバ内でプラズマに給電するための電源を含む、例1に記載の方法。
【0063】
例3.ガスクラスターのフラックスを生成し、基板をガスクラスターのフラックスにさらすことは、基板をガスクラスター処理チャンバの中に装填することと、圧力下にあるガスを、プレナムのガス入口を通してプレナムの中に導入することと、プレナムに結合された吸気アパーチャ及びガスクラスター処理チャンバに結合された排気アパーチャを有するノズルを通じて、ガスをプレナムからガスクラスター処理チャンバまで流すことであって、ノズルは1以上のひろがり率を有し、ガスを流すことは、プレナム内に760Torr以下のガス圧力を印加することを含むことを含み、ガスを流すことにより、ガスが冷却されて、ガスクラスター処理チャンバ内でガスクラスター凝縮物が形成される、例1又は2の何れか1つに記載の方法。
【0064】
例4.第1の処理チャンバ及び第2の処理チャンバは、単一処理チャンバの一部として一体化されている、例1~3の何れか1つに記載の方法。
【0065】
例5.基板をガスクラスターのフラックスにさらすこと及び基板をイオンにさらすことは、複数のサイクルを含む循環的なエッチング処理の1サイクルの一部であり、複数のサイクルの各サイクルは、更に、基板をガスクラスターのフラックスにさらした後、プラズマを安定化させることであって、プラズマを安定化させることは、圧力下にあるガスをプレナムのガス入口を通してプレナムの中に導入すること、単一処理チャンバ内の圧力を設定すること、プレナム内の圧力を設定すること、及び処理チャンバの電極を無線周波数(RF)電源に結合することを含むことと、基板をイオンにさらした後、ガスクラスターのフラックスを安定化させることであって、ガスクラスターのフラックスを安定化させることは、単一処理チャンバ内の圧力をリセットすること、プレナム内の圧力をリセットすること、及び処理チャンバの電極に結合されたRF電力をリセットすること、を含むことと、を含む、例1~4の何れか1つに記載の方法。
【0066】
例6.基板をガスクラスターのフラックスにさらすこと及び基板をイオンにさらすことを同時に実施することと、単一処理チャンバ内の圧力を10mTorr以下で及び0.1mTorr以上に維持することと、を更に含む、例1~5の何れか1つに記載の方法。
【0067】
例7.基板をガスクラスターのフラックスにさらすこと及び基板をイオンにさらすことは、複数のサイクルを含む循環的なエッチング処理の1サイクルの一部であり、複数のサイクルの各サイクルは、更に、基板をガスクラスターのフラックスにさらした後、基板を第1の処理チャンバから第2の処理チャンバまで移送することと、基板をイオンにさらした後、基板を第2の処理チャンバから第1の処理チャンバまで移送することと、を含む、例1~6の何れか1つに記載の方法。
【0068】
例8.ガスクラスターは、酸素、一酸化炭素、水素、塩素、四塩化炭素、四塩化ケイ素、三塩化ホウ素、フッ素、四フッ化炭素、三フッ化窒素、六フッ化硫黄、トリフルオロメタン、ペルフルオロ炭素、ヒドロフルオロ炭素、又はそれらの任意の組み合わせ、又は不活性ガスとの組み合わせを含む、例1~7の何れか1つに記載の方法。
【0069】
例9.基板を処理するためのシステムは第1のサブシステムを含み、第1のサブシステムは、ガス入口を含むプレナムと、複数のノズルを含むノズルアセンブリであって、複数のノズルの各ノズルの吸気アパーチャはプレナムの内部に配置される、ノズルアセンブリと、ノズルアセンブリの複数のノズルを介してプレナムに接続されたガスクラスター処理チャンバと、ガス入口及びガスクラスター処理チャンバのガス出口に接続されたガスフローシステムであって、ガスクラスター処理チャンバ内でガスクラスターのフラックスを生成するように構成された、ガスフローシステムと、を含む。このシステムは、プラズマ処理チャンバを含む第2のサブシステムと、プラズマ処理チャンバ内でプラズマに給電するための電源と、を含む。
【0070】
例10.複数のノズルの各ノズルの排気アパーチャは、プレナムの外部に配置され、複数のノズルの各ノズルは、管、円錐台、プレナムに結合された茎部を有するじょうご、又は鼓形ラバールノズルのような形状をしている、例9に記載のシステム。
【0071】
例11.ノズルアセンブリの各ノズルは、1cm以上及び10cm以下の長さ、0.5mm以上及び1mm以下ののど部の幅、及び1以上及び10以下のひろがり率、を有する、例9又は10の何れか1つに記載のシステム。
【0072】
例12.第1のサブシステムは、プレナムに結合された冷却システムを更に含み、冷却システムは、プレナム内のガスの温度を100K以上及び310K以下の目標値に制御するように構成される、例9~11の何れか1つに記載のシステム。
【0073】
例13.基板を処理するためのシステムは、プレナムと、プレナムの外部に配置され、プラズマを維持するように構成された基板処理チャンバと、プレナムに結合された吸気アパーチャ及び基板処理チャンバに結合された排気アパーチャを有するノズルと、を含む。
【0074】
例14.ノズルは1以上のひろがり率を有し、ノズルは、管、円錐台、プレナムに結合した茎部を有するじょうご、又は収束‐発散ラバールノズルのような形状をしている、例13に記載のシステム。
【0075】
例15.ノズルは分極ノズルであり、この分極ノズルは更に、誘電性基材であって、この誘電性基材によって電気的に絶縁された2つの導電層が埋め込まれた誘電性基材を含み、この2つの導電層は、パルスDCバイアス源に電気的に結合されるように構成される、例13又は例14の何れか1つに記載のシステム。
【0076】
例16.プレナムに結合された冷却システムを更に含み、この冷却システムは、プレナム内のガスの温度を100K以上及び310K以下の目標値に制御するように構成される、例13~15の何れか1つに記載のシステム。
【0077】
例17.前述のノズルに隣接して配置された複数のノズルを更に含み、前述のノズル及び複数のノズルは、プレナムを基板処理チャンバに接続するノズルアセンブリを形成する、例13~16の何れか1つに記載のシステム。
【0078】
例18.プレナムは第1のガス入口を含み、基板処理チャンバは、第2のガス入口と、基板ホルダと、ガス出口と、を含み、このシステムは更に、第1のガス入口、第2のガス入口、及びガス出口に接続されたガスフローシステムを含み、ガスフローは、基板処理チャンバ内でガスクラスターのフラックスを生成する、例13~17の何れか1つに記載のシステム。
【0079】
例19.基板ホルダは、パルスDCバイアス源又は無線周波数(RF)バイアス電源に結合されている、例13~18の何れか1つに記載のシステム。
【0080】
例20.無線周波数(RF)電源に結合された電極を更に含み、電極は、基板処理チャンバの外部に配置されたコイルのような形状をしており、電極は、基板処理チャンバ内部で誘導結合プラズマ(ICP)を維持するように構成される、例13~19の何れか1つに記載のシステム。
【0081】
例21.処理チャンバに結合された電子ビームイオン化装置を更に含み、電子ビームイオン化装置は、処理チャンバ内でガスクラスターのフラックスを途中で捕えるようにエネルギー電子のビームを向けるように構成される、例13~20の何れか1つに記載のシステム。
【0082】
本発明は、例示的実施形態を参照して説明されているが、本明細書は、限定的な意味で解釈されることを意図するものではない。当業者であれば、本明細書を参照することにより、それらの例示的実施形態の様々な修正形態及び組み合わせ並びに本発明の別の実施形態が明らかになるであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、そのようなあらゆる修正形態又は実施形態を包含することが意図されている。
【国際調査報告】