(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】シリコン充填物を覆うためのカバー部材を有する結晶引上げシステム、及びシリコン溶融物をるつぼアセンブリ内で成長させるための方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20230906BHJP
C30B 15/12 20060101ALI20230906BHJP
C30B 15/14 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C30B29/06 502C
C30B15/12
C30B15/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514452
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2021073902
(87)【国際公開番号】W WO2022049034
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】トージ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】パンノッキア,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】スカラ,ロベルト
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF06
4G077CF10
4G077EG01
4G077EG11
4G077EG17
4G077EG19
4G077PD03
4G077PD08
4G077PE01
4G077PE27
(57)【要約】
ハウジングとるつぼアセンブリとを有する、結晶引上げシステムが開示される。システムは、インゴットの成長中にインゴットが通過する中央通路を画定する熱シールドを含む。カバー部材は、引上げ軸に沿って熱シールド内で移動可能である。カバー部材は、断熱層を含んでもよい。カバー部材は、融解中に充填物の少なくとも一部を覆う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン溶融物から単結晶インゴットを成長させるための結晶引上げシステムであって、引上げ軸を有する前記システムが、
成長チャンバを画定するハウジングと、
前記シリコン溶融物を収容するための、前記成長チャンバ内に配置された、るつぼアセンブリと、
インゴットの成長中に、インゴットが通過する中央通路を画定する熱シールドと、
前記引上げ軸に沿って前記熱シールド内で移動可能なカバー部材であって、1つ又は複数の断熱層を備える、カバー部材と
を備える、結晶引上げシステム。
【請求項2】
前記カバー部材が、
前記引上げ軸に平行な第1のプレート軸を有する第1のプレートと、
前記引上げ軸に平行な第2のプレート軸を有する第2のプレートと
を含み、前記第2のプレートが、前記第1のプレートの上方に配置され、前記断熱層が、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に配置される、請求項1に記載の結晶引上げシステム。
【請求項3】
前記第1のプレート及び前記第2のプレートが両方ともグラファイトで作られている、請求項2に記載の結晶引上げシステム。
【請求項4】
前記第1のプレート及び前記第2のプレートが炭化ケイ素でコーティングされている、請求項3に記載の結晶引上げシステム。
【請求項5】
前記断熱層がフェルトで作られている、請求項1から4のいずれか一項に記載の結晶引上げ装置。
【請求項6】
前記熱シールドが底部を有し、前記熱シールドの前記中央通路が前記熱シールドの前記底部において直径を有し、前記カバー部材が直径を有し、前記カバー部材の前記直径が、前記熱シールドの前記底部における、前記中央通路の前記直径の少なくとも0.75倍、少なくとも0.8倍、少なくとも0.9倍、少なくとも0.95倍、又は少なくとも0.99倍である、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶引上げシステム。
【請求項7】
前記結晶引上げシステムが、チャックを備える引上げ機構を備え、前記引上げ機構が、前記引上げ軸に沿って前記チャックを上げ下げさせることができ、前記カバー部材が、前記チャックに取り外し可能に連結可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載の結晶引上げシステム。
【請求項8】
前記チャックを、インゴットの成長を開始するための種結晶につなぐことが可能である、請求項7に記載の結晶引上げシステム。
【請求項9】
前記るつぼアセンブリが、底部と、外側側壁と、前記底部から上方に延びる内側堰とを備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の結晶引上げシステム。
【請求項10】
前記るつぼアセンブリが、前記外側側壁と前記内側堰との間に配置された中央堰を備える、請求項9に記載の結晶引上げシステム。
【請求項11】
前記るつぼアセンブリが、3つの入れ子式るつぼを備える、請求項10に記載の結晶引上げシステム。
【請求項12】
インゴットの成長中にインゴットが通過するジャケットチャンバを有する流体冷却円筒ジャケットをさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の結晶引上げシステム。
【請求項13】
結晶引上げシステムのるつぼ内でシリコンの溶融物を調製する方法であって、前記結晶引上げシステムが、成長チャンバを画定するハウジング、前記シリコン溶融物を収容するための、前記成長チャンバ内に配置された、るつぼアセンブリ、及びインゴットの成長中にインゴットが通過する中央通路を画定する熱シールドを備え、前記方法は、
固体多結晶シリコンの充填物を前記るつぼアセンブリに加えることと、
前記熱シールドによって画定された前記中央通路を通って、前記充填物の少なくとも一部を覆うようにカバー部材を下げることと、
前記カバー部材が前記充填物の一部を覆っている間に、前記シリコン充填物を加熱して前記るつぼアセンブリ内でシリコン溶融物を生成することと、
前記溶融物が形成された後に、前記カバー部材を上げることと
を含む、方法。
【請求項14】
前記るつぼアセンブリが、底部と、外側側壁と、前記底部から上方に延びる内側堰と、前記外側側壁と内側堰との間に配置された中央堰とを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記るつぼアセンブリが、3つの入れ子式るつぼを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記外側側壁と前記中央堰との間に配置されたるつぼ溶融ゾーンに多結晶シリコンを加えることを含む方法であって、前記シリコン溶融物が、中央堰開口部を通って前記中央堰と前記内側堰との間に配置された中間ゾーンに流れ、前記シリコン溶融物が、内側堰開口部を通って前記内側堰内に配置された成長ゾーンに流れ、前記カバー部材が、前記るつぼ溶融ゾーンに多結晶シリコンが加えられる間に、前記シリコン溶融物の少なくとも一部を覆う、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記熱シールドが底部を有し、前記熱シールドの前記中央通路が前記熱シールドの前記底部において直径を有し、前記カバー部材が直径を有し、前記カバー部材の前記直径が、前記熱シールドの前記底部における、前記中央通路の前記直径の少なくとも0.75倍、少なくとも0.8倍、少なくとも0.9倍、少なくとも0.95倍、又は少なくとも0.99倍である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項18】
前記カバー部材が、前記熱シールドの底部から30mm未満、あるいは前記熱シールドの底部から20mm未満、10mm未満、又は5mm未満まで下げられる、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記カバー部材が、前記熱シールドの底部まで下げられる、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記カバー部材が断熱層を含む、請求項13から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記カバー部材が炭化ケイ素被覆グラファイトプレートを含む、請求項13から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記炭化ケイ素被覆グラファイトプレートが第1の炭化ケイ素被覆グラファイトプレートであり、前記カバー部材が、
前記第1の炭化ケイ素被覆グラファイトプレートの上方に配置された第2の炭化ケイ素被覆グラファイトプレートと、
前記第1の炭化ケイ素被覆グラファイトプレートと前記第2の炭化ケイ素被覆グラファイトプレートとの間に配置された断熱層と
を備える、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
単結晶シリコンインゴットを形成するための方法であって、
請求項13から22のいずれか一項に記載の方法によって結晶引上げシステムのるつぼ内でシリコンの溶融物を調製することと、
前記カバー部材を上げた後に、前記溶融物に接触するように種結晶を下げることと
を含む、方法。
【請求項24】
前記るつぼアセンブリが、底部と、外側側壁と、前記底部から上方に延びる内側堰と、前記外側側壁と前記内側堰との間に配置された中央堰とを備え、前記方法が、前記外側側壁と前記中央堰との間に配置されたるつぼ溶融ゾーンに多結晶シリコンを加えることを含み、前記シリコン溶融物が、中央堰開口部を通って前記中央堰と前記内側堰との間に配置された中間ゾーンに流れ、前記シリコン溶融物が、内側堰開口部を通って前記内側堰内に配置された成長ゾーンに流れ、前記カバー部材が、前記るつぼ溶融ゾーンに多結晶シリコンが加えられる間に、前記シリコン溶融物の少なくとも一部を覆う、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記カバー部材及び前記種結晶が、チャックを備える引上げ機構によって上げ下げされ、前記方法が、
前記カバー部材が上げられた後に前記カバー部材を前記チャックから取り外すことと、
前記カバー部材を前記チャックから取り外した後に、前記種結晶を前記チャックにつなぐことと
を含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
シリコン溶融物から単結晶インゴットを成長させるための結晶引上げシステムであって、引上げ軸を有する前記システムが、
成長チャンバを画定するハウジングと、
前記シリコン溶融物を収容するための、前記成長チャンバ内に配置された、るつぼアセンブリと、
インゴットの成長中にインゴットが通過する中央通路を画定する熱シールドと、
前記引上げ軸に沿って前記熱シールド内で移動可能なカバー部材であって、
前記引上げ軸に平行な第1のプレート軸を有する第1のプレートと、
前記引上げ軸と平行な第2のプレート軸を有する第2のプレートであって、前記第1のプレートの上方に配置される、第2のプレートと
を備えるカバー部材と
を備える、結晶引上げシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年9月1日出願の米国仮特許出願第63/073,180号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の分野は、シリコン溶融物から単結晶インゴットを成長させるための結晶引上げシステムに関し、詳細には、連続的なチョクラルスキー法によるシリコンインゴットの成長に使用するためのカバー部材を含む結晶引上げシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
シリコン結晶のシリコンインゴットは、単結晶シリコンの種をるつぼ内に保持されたシリコン溶融物と接触させるチョクラルスキー法によって調製することができる。溶融物から単結晶シリコンの種を引き出して、単結晶シリコンインゴットを溶融物から引き上げる。多結晶シリコンの充填物が最初にるつぼ内で溶融され、るつぼ内の溶融シリコンが枯渇するまで溶融物からシリコンインゴットを引き出すバッチシステムで、インゴットを調製することができる。あるいは、インゴットの成長中に、シリコン溶融物を補充するために、ポリシリコンが溶融物に断続的又は連続的に加えられる連続チョクラルスキー法で、インゴットを引き出してもよい。
【0004】
連続チョクラルスキー法では、るつぼを別々の溶融ゾーンに分割することができる。たとえば、るつぼアセンブリは、シリコンインゴットの成長中に、シリコン溶融物を補充するために、多結晶シリコンが加えられ、溶融される、外側溶融ゾーンを含むことができる。シリコン溶融物は、外側溶融ゾーンから、溶融物が熱的に安定する外側溶融ゾーン内の中間ゾーンに流れる。シリコン溶融物は、次いで、中間ゾーンから成長ゾーンに流れ、成長ゾーンからシリコンインゴットが引き上げられる。
【0005】
結晶引上げシステムは、るつぼ及びシリコン溶融物の上方に配置された熱シールドを含むことができる。熱シールドは、シリコンインゴットがシリコン溶融物から垂直に引き上げられるときに通過する通路を含む。熱シールドは、引き上げられたインゴットを、溶融物からの放射熱から保護及び遮蔽する。
【0006】
溶融段階中に、結晶引上げシステム内に温度勾配が生成され得る。温度勾配は、るつぼに熱応力を生じさせ、るつぼを損傷したり、場合によっては破壊したりすることがある。
【0007】
融解中のるつぼの損傷を減らすために、融解中により均一な温度勾配を維持する結晶引上げシステムが必要とされている。
【0008】
このセクションは、以下に記載及び/又は特許請求される本開示の様々な態様に関連し得る様々な態様の技術を読者に紹介することを意図している。この議論は、本開示の様々な態様のより良い理解を容易にするために読者に背景情報を提供するのに役立つと考えられる。したがって、これらの記述は、この観点から読まれるべきであり、従来技術の承認として読まれるべきではないことを理解されたい。
【発明の概要】
【0009】
本開示の一態様は、シリコン溶融物から単結晶インゴットを成長させるための結晶引上げシステムに関する。本システムは、引上げ軸と、成長チャンバを画定するハウジングとを含む。るつぼアセンブリは、シリコン溶融物を収容するために成長チャンバ内に配置される。熱シールドは、インゴットの成長中にインゴットが通過する中央通路を画定する。本システムは、引上げ軸に沿って熱シールド内で移動可能なカバー部材を含む。カバー部材は、1つ又は複数の断熱層を含む。
【0010】
本開示の別の態様は、結晶引上げシステムのるつぼ内でシリコンの溶融物を調製する方法に関する。結晶引上げシステムは、成長チャンバを画定するハウジングと、シリコン溶融物を収容するために成長チャンバ内に配置されたるつぼアセンブリと、インゴットの成長中にインゴットが通過する中央通路を画定する熱シールドとを含む。固体多結晶シリコンの充填物が、るつぼアセンブリに加えられる。カバー部材が、充填物の少なくとも一部を覆うために、熱シールドによって画定された中央通路を通って下げられる。カバー部材が、充填物の一部を覆っている間に、シリコン充填物は、るつぼアセンブリ中でシリコン溶融物を生成するために加熱される。カバー部材は、溶融物が形成された後に持ち上げられる。
【0011】
本開示のさらに別の態様は、シリコン溶融物から単結晶インゴットを成長させるための結晶引上げシステムに関する。本システムは、引上げ軸を有し、成長チャンバを画定するハウジングを含む。るつぼアセンブリは、シリコン溶融物を収容するために成長チャンバ内に配置される。システムは、インゴットの成長中にインゴットが通過する中央通路を画定する熱シールドを含む。カバー部材は、引上げ軸に沿って熱シールド内で移動可能である。カバー部材は、引上げ軸に平行な第1のプレート軸を有する第1のプレートを含む。カバー部材は、引上げ軸に平行な第2のプレート軸を有する第2のプレートを含む。第2のプレートは、第1のプレートの上方に配置される。
【0012】
本開示の上述の態様に関連して述べた特徴の様々な改良が存在する。また、本開示の上述の態様にさらなる特徴を組み込むこともできる。これらの改良及び追加の特徴は、個別に又は任意の組み合わせで存在してもよい。たとえば、本開示の図示された実施形態のいずれかに関連して以下で説明される様々な特徴は、単独で又は任意の組み合わせで、本開示の上述の態様のいずれかに組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】シリコン溶融物から単結晶インゴットを成長させるための結晶引上げシステムの断面図である。
【
図2】熱シールドの中央通路内に配置されたカバー部材を含む、結晶引上げシステムの一部の断面図である。
【
図3】結晶引上げシステムのカバー部材の斜視図である。
【
図6】カバー部材の第1のプレートの斜視図である。
【
図9】カバー部材の第2のプレートの斜視図である。
【
図15】結晶引上げシステムのチャックの斜視図である。
【
図16】カバー部材のシャフトに係合したチャックの斜視図である。
【
図17】融解中に断熱ありとなしのカバー部材を使用したときの、入れ子式るつぼアセンブリの外側のるつぼの内部温度のグラフである。
【
図18】融解中に断熱ありとなしのカバー部材を使用したときの、入れ子式るつぼアセンブリの中央のるつぼの内部温度のグラフである。
【
図19】融解中に断熱ありとなしのカバー部材を使用したときの、入れ子式るつぼアセンブリの最も内側のるつぼの内部温度のグラフである。
【
図20】融解中に断熱ありとなしのカバー部材を用いた場合の電力プロファイルのグラフである。
【0014】
同じ参照符号は、図面全体を通して同じ部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の提供は、連続チョクラルスキー(CZ)法によってシリコン溶融物から、単結晶(monocrystalline)(すなわち、単結晶(single crystal))シリコンインゴット(たとえば、半導体グレード又はソーラーグレードの材料)を製造するための結晶引上げシステムに関する。本明細書に開示されるシステム及び方法はまた、バッチ又はリチャージCZ法によって単結晶インゴットを成長させるために使用されてもよい。
図1を参照すると、結晶引上げシステムがおおまかに示されており、概略的に10と示されている。結晶引上げシステム10は、引上げ軸Y
10と、成長チャンバ14を画定するハウジング12とを含む。るつぼアセンブリ16は、成長チャンバ14内に配置される。るつぼアセンブリ16は、シリコン溶融物18(たとえば、半導体グレード又はソーラーグレードの材料)を収容しており、以下でさらに説明するように、そこから単結晶インゴット20が引上げ機構22によって引き上げられる。
【0016】
結晶引上げシステム10は、インゴットの成長中にインゴット20が通過する中央通路26を画定する熱シールド24(「反射板」と呼ばれることもある)を含む。本開示の実施形態によれば、インゴット20が溶融物18から引き上げられる前に、初期溶融段階中に、カバー部材100(
図2)が下げられて多結晶シリコンの固体充填物を少なくとも部分的に覆って、融解中に中央通路26を通って放射する熱を低減する。カバー部材100は、引上げ軸Y
10に沿って熱シールド24内で移動可能である。
【0017】
図2は、インゴット20が引き上げられる前に、充填物が溶融される初期段階(すなわち、融解段階)中にカバー部材100が中央通路26内に配置された結晶引上げシステム10の一部を示す。るつぼアセンブリ16は、底部30と、底部30から上方に延びる外側側壁32とを含む。るつぼアセンブリ16は、中央堰34と、底部30から上方に延びる内側堰36とを含む。中央堰34は、外側側壁32と内側堰36との間に配置される。るつぼアセンブリ16は、外側側壁32と中央堰34との間に配置されたるつぼ溶融ゾーン38を含む。るつぼアセンブリ16はまた、中央堰34と内側堰36との間に配置された中間ゾーン40を含んでいる。るつぼアセンブリ16はまた、内側堰36内に配置された成長ゾーン42を含んでいる。るつぼアセンブリ16は、たとえば、結晶引上げシステム10が本明細書で説明されるように機能することを可能にする、石英又は任意の他の適切な材料で作ってもよい。さらに、るつぼアセンブリ16は、結晶引上げシステム10が本明細書で説明されるように機能することを可能にする、任意の適切なサイズであってもよい。るつぼアセンブリ16はまた、底部をともに形成する別個の底部を有し、るつぼの側壁が上述の堰34、36である、3つの「入れ子式」るつぼを含んでもよい。
【0018】
インゴットの成長中、多結晶シリコンがるつぼ溶融ゾーン38に加えられ、そこでシリコンが溶融し、シリコン溶融物を補充する。シリコン溶融物は、中央堰開口部44を通って中間ゾーン40に流入する。次いで、シリコン溶融物は、内側堰開口部41を通って、内側堰36内に配置された成長ゾーン42に流入する。様々なシリコン溶融ゾーン(たとえば、溶融ゾーン38、中間ゾーン40、成長ゾーン42)が、連続チョクラルスキー法に従ってインゴットを成長させることを可能にし、連続チョクラルスキー法では、多結晶シリコンが連続的又は半連続的に溶融物に加えられ、インゴット20が成長ゾーン42から連続的に引き上げられる。成長ゾーン42内のシリコン溶融物18は、単一の種結晶75(
図1)と接触する。種結晶75が溶融物18からゆっくりと持ち上げられると、溶融物18からの原子が種と整列し、種に付着してインゴット20を形成する。
【0019】
るつぼアセンブリ16は、サセプタ50(
図1)によって支持される。サセプタ50は、回転可能なシャフト51によって支持される。サイドヒータ52は、システム10に熱エネルギーを供給するためにサセプタ50及びるつぼアセンブリ16を取り囲む。1つ又は複数のボトムヒータ62が、るつぼアセンブリ16及びサセプタ50の下方に配置される。ヒータ52、62が稼働して、固体多結晶シリコン原料の初期充填物を溶融し、初期充填物の溶融後、溶融物18を液化状態に維持する。ヒータ52、62はまた、インゴットの成長中に供給管54(
図1)を通して加えられる固体多結晶シリコンを溶融するように作用する。ヒータ52、62は、システム10が本明細書で説明されるように機能することを可能にする、任意の適切なヒータ(たとえば、抵抗ヒータ)であってもよい。
【0020】
結晶引上げシステム10は、不活性ガスを成長チャンバ14内に導入するためのガス入口(図示せず)と、不活性ガス並びに他のガス状及び浮遊粒子を成長チャンバ14から排出するための1つ又は複数の排出出口(図示せず)とを含む。ガス入口は、アルゴンなどの適切な不活性ガスを供給する。
【0021】
システム10は、熱シールド24とともに配置された円筒形ジャケット57を含む。ジャケット57は流体冷却され、中央通路26と位置合わせされたジャケットチャンバ60を含む。インゴット20は、引上げ軸Y10に沿って中央通路26を通ってジャケットチャンバ60に引き上げられる。ジャケット57は、引き上げられたインゴット20を冷却する。
【0022】
熱シールド24は、略円錐台形状である。熱シールド24は、るつぼアセンブリ16及び溶融物18に面する、外側表面61を含む。熱シールド24は、溶融物の汚染を防止するようにコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、熱シールド24は、内部にモリブデンシートを含む2つのグラファイトシェルで作られる。表面61は、溶融物の汚染を低減するために(たとえば、SiC)コーティングされてもよい。
【0023】
熱シールド24は、底部58(
図2)を含む。熱シールド24の中央通路26は、熱シールド24の底部58に直径D
26を有する。熱シールド24は、るつぼアセンブリ16の上方に配置され、それにより、中央通路26は、溶融物18から引き上げられたインゴットが中央通路26を通って引き上げられることができるように、成長ゾーン42の真上に配置される。通路の直径D
26は、インゴット20の直径(たとえば、200mm又は300mm又は他の直径のインゴット)を収容するようなサイズである。
【0024】
外側表面61は、放射熱を溶融物18及びるつぼアセンブリ16に向かって反射する反射性コーティング剤でコーティングされてもよい。このように、熱シールド24は、るつぼアセンブリ16及び溶融物18内に熱を保持するのを助ける。さらに、熱シールド24は、引上げ軸Y10に沿ってほぼ均一な温度勾配を維持するのに役立つ。
【0025】
初期溶融段階中に、固体多結晶シリコンの初期量が、るつぼ溶融ゾーン38、中間ゾーン40、及び成長ゾーン42に供給される。他の実施形態では、固体多結晶シリコンは、るつぼ溶融ゾーン38、中間ゾーン40、及び成長ゾーン42から選択される1つ又は2つのゾーンにのみ加えられる。融解中、カバー部材100は、初期充填物が溶融される間に、シリコン充填物の少なくとも一部を覆う(すなわち、熱シールド24の中央通路26を塞ぐ)ように下げられる。引上げ機構22は、カバー部材100を上げ下げする。
【0026】
本開示の実施形態によれば、カバー部材100は、熱シールド24の底部58から(すなわち、底部58の下から又は上から)30mm未満、あるいは熱シールド24の底部58から20mm未満、10mm未満、又は5mm未満まで下げられる。いくつかの実施形態では、カバー部材100は、熱シールド24の底部58と位置合わせされるように下げられる。いくつかの実施形態では、カバー部材100は、融解中に充填物の表面の80~100mm以内まで下げられる。
【0027】
シリコン充填物の初期量が溶融された後、多結晶シリコンの第2の量をるつぼ溶融ゾーン38に加えてもよい(たとえば、第2の量全体が加えられるまで連続的に加える)。本開示のいくつかの実施形態によれば、この多結晶シリコンの第2の量が溶融ゾーン38に加えられ、溶融されている間に、カバー部材100は中央通路26を覆う。第2の充填物が溶融した後、引上げ機構22によってカバー部材100が持ち上げられる。他の実施形態では、多結晶シリコンの第2の量が加えられている間、カバー部材100は使用されない。
【0028】
カバー部材100の一実施形態を
図3に示す。カバー部材100は、(本明細書では、それぞれ、「下側のプレート102」及び「上側のプレート104」と呼ばれることもある)第1のプレート102と第2のプレート104とを有する。各プレート102、104は、引上げ軸Y
10(
図1)にほぼ平行な中心軸を有する。第1のプレート102と第2のプレート104とは、ほぼ平行である。第2のプレート104は、第1のプレート102の上方に配置される。
【0029】
第1のプレート102は、第1の環状壁106(
図5~
図6)を含み、第2のプレート104は、第2の環状壁108(
図9)を含む。ここで
図5を参照すると、第1の壁106は、第1の肩部110と第1のへり111とを含む。第2の壁108は、第2の肩部112と第2のへり113とを含む。組み立てられると、第2の肩部112は第1のへり111上に載り、第2のへり113は第1の肩部110上に載る。カバー部材チャンバ116(
図8及び
図11)は、第1のプレート102と第2のプレート104との間に配置される。
【0030】
断熱層130(
図4)は、第1のプレート102と第2のプレート104との間に形成されるチャンバ116内に配置される。断熱層130は、T
130の厚さ(たとえば、10mm~約50mm)を有する。断熱層130は、第1のプレート102と第2のプレート104との間で圧縮されてもよい。断熱層130は、断熱材のいくつかの積層を含んでもよく、又は単一層であってもよい。断熱層130は、その中に形成された開口部132を含んでもよい。
【0031】
断熱層130は、フェルトで作ってもよい。フェルトは、天然繊維又は合成繊維から構成されてもよい。フェルトは、純化フェルト(たとえば、最大灰分30ppm)であってもよい。断熱層130は、概して、適切な断熱特性を含む任意の材料から構成されてもよい。
【0032】
第1のプレート102は、シャフト150を連結するための、上方に突出するハブ145(
図4)を含む。第2のプレートは、第2のプレート開口部128(
図9)を含む。ハブ145は、第2のプレート104の開口部128及び断熱開口部132(
図12)を通って延びる。ハブ145は、レッジ149(
図6)を含み、第2のプレート104は、レッジ149に着座している。ハブ145は、シャフト150が通って延びるハブ開口部153(
図8)を含む。ハブ開口部153は、シャフト150の輪郭(たとえば、図示の実施形態のような正方形若しくは長方形、又は円形などの他の形状)と一致する輪郭を有する。ハブ145は、上壁157を有するハブチャンバ126を含む。
【0033】
カバー部材100は、中心Xと外周122とを含む円形部分120(
図7)を含み、直線状の縁部124を有する、概して、弓形の形状をしている。詳細には、第1及び第2のプレート102、104は、弦に沿ったセグメントが除去された円形部分の形状を有する。第1及び第2のプレート102、104は、長尺L
1と短尺L
2とを有する。長尺L
1は、円形部分120の直径であり、短尺L
2は、外周122から、中心Xを通って円形部分120の外周122まで延びる。第1及び第2のプレート102、104は、充填物/溶融物を見ることができるように弓形として成形される。他の実施形態では、カバー部材100は完全に円形である。
【0034】
いくつかの実施形態では、カバー部材100の直径は、熱シールド24の底部58の中央通路26の直径の少なくとも0.75倍であり、あるいは他の実施形態では、熱シールド24の底部58の中央通路26の直径の少なくとも0.8倍、少なくとも0.9倍、少なくとも0.95倍、又は少なくとも0.99倍である。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1のプレート102及び第2のプレート104はグラファイトで作られる。グラファイトは、炭化ケイ素(SiC)でコーティングされてもよい。第1及び第2のプレート102、104は、他の適切な材料で構成されてもよい。第1及び第2のプレート102、104は、第1及び第2のプレート102、104の亀裂又は損傷をもたらす熱応力を防止する任意の適切な厚さT
102、T
104(たとえば、3mm~50mmの間の厚さ)(
図8及び
図11)を有する。
【0036】
図13~
図14を参照すると、カバー部材100は、カバー部材100を支持するシャフト150を含む。シャフト150は、任意の適切な結合構成において、第1及び/又は第2のプレート102、104に連結されてもよい。図示の実施形態では、シャフト150は、細長い矩形部分154とカラー156とを含む。カラー156は、ハブチャンバ126(
図8)の直径よりも小さく、ハブ開口部153の幅よりも大きい、直径D
156を有する。第1のプレート102はカラー156上に載る。断熱層130及び第2のプレート104(
図4)は、第1のプレート102によって支持される。あるいは、シャフト150は、第1のプレート102及び/又は第2のプレート104のいずれか又は両方と一体的に形成されてもよい。
【0037】
図15~
図16を参照すると、引上げ機構22は、引上げ軸Y
10に沿って上げ下げされるチャック70を含む。チャック70は、駆動モータによって上げ下げされる、引上げワイヤ又はケーブル37に連結されてもよい(すなわち、引上げワイヤ又はケーブル及びモータは、引上げ機構22の一部である)。カバー部材100は、チャック70に対して取り外し可能に連結可能である。たとえば、シャフト150とチャック70とは、ピンロックを使用して連結されてもよい。シャフト150は、凹部158(
図13)を有する。シャフト150は、チャック70内の孔部72に挿入され、その結果、凹部158が孔部72内に収容される。チャック70は、孔部72に対してほぼ垂直に延び、チャック70を通過して孔部72内に開口する開口部74を含む。ピン76は、ピン76が、孔部72内に配置されたシャフト150の凹部158と係合するように、開口部74を通って孔部72内に挿入される。このようにして、シャフト150とチャック70とが結合される。シャフト150及びチャック70は、カバー部材100をチャック70に結合するための任意の代替及び/又は追加の特徴を含んでもよい。
【0038】
融解後、カバー部材100をチャック70から取り外し、種結晶75(
図1)をチャック70につなぐ。種結晶75は、種75がチャック70に結合及び/又は結合解除され得るように、図示されていない同様の凹部を含むことができる。インゴットの成長プロセス中、種75は、引上げ機構22によって溶融物18と接触するように下げられ、次いで、溶融物18からゆっくりと持ち上げられる。カバー部材100及び/又は種結晶は、チャック70に選択的に結合及び結合解除され、その結果、引上げ機構22を使用してカバー部材100及び/又は種結晶75のいずれかを上げ下げさせることができる。
【0039】
従来の結晶引上げシステムと比較して、本開示の実施形態の結晶引上げシステムは、いくつかの利点を有する。融解中に充填物を少なくとも部分的に覆うカバー部材を使用すると、垂直方向の放射熱損失を低減するように作用し、このことが、るつぼアセンブリの熱応力を低減する。カバー部材が内部に配置された断熱材を含む本開示の実施形態では、カバー部材を通した熱損失を低減することができる。カバー部材が断熱材を含む実施形態では、ヒータ電力を低減することができ、るつぼの寿命をさらに延ばすことができる。
【0040】
[実施例]
本開示のプロセスは、以下の実施例によってさらに説明される。これらの実施例は、限定的な意味で見るべきではない。
【0041】
[実施例1:融解中に断熱ありとなしのカバー部材を用いた場合のるつぼの温度の比較]
図4に示すものと同様のカバー部材が熱シールドの底部に配置された場合の、初期融解段階中のるつぼアセンブリの内部温度をモデル化した。
図4と同様の別のカバー部材を使用したが、カバー部材は断熱材(すなわち、フェルト)を含まなかった。3つのるつぼからなる、入れ子式るつぼアセンブリを使用した。外側のるつぼ/側壁(
図17)、中央堰/中央のるつぼ(
図18)、及び内側堰/最も内側のるつぼ(
図19)で温度を測定した場合、断熱ありのカバー部材は、断熱なしのカバー部材を使用した場合のるつぼアセンブリの温度プロファイルと比較して、より低い温度プロファイルをもたらした。温度の最大低下は、内側堰で生じた20℃であった(
図19)。この温度の低下は、るつぼアセンブリの損傷を低減する。
【0042】
[実施例2:融解中に断熱ありとなしのカバー部材を用いた場合の電力プロファイルの比較]
図4に示すカバー部材と同様のカバー部材が熱シールドの底部に配置された場合と、
図4のカバー部材と同様の別のカバー部材を使用するが、そのカバー部材が断熱を含まない場合との、初期溶融段階中の、るつぼアセンブリに供給される電力(すなわち、結晶引上げシステムのヒータに供給される電力)を測定した。断熱ありのカバー部材を用いて供給された電力は、断熱なしのカバー部材を用いて供給された電力よりも小さかった(
図20)。断熱なしのカバー部材のために供給される最大電力は、断熱ありのカバー部材を用いて供給される最大電力よりも5kW大きかった。
【0043】
本明細書で使用される場合、「約」、「実質的に」、「本質的に」及び「およそ」という用語は、寸法、濃度、温度又は他の物理的若しくは化学的な性質若しくは特性の範囲とともに使用される場合、たとえば、丸め、測定方法又は他の統計的変動から生じる変動を含む、性質あるいは特性の範囲の上限及び/又は下限に存在し得る変動を包含することを意味する。
【0044】
本開示又はその(1つ又は複数の)実施形態の要素を導入する場合、冠詞「a(ある)」、「an」、「the(上記、前記)」、及び「said」は、その要素が1つ又は複数あることを意味することを意図する。「備える」、「含む」、「有する」という用語は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在してもよいことを意味する。特定の向き(たとえば、「上部」、「下部」、「側部」など)を示す用語の使用は、説明の便宜上のものであり、説明される部材の特定の向きを必要とするものではない。
【0045】
本開示の範囲から逸脱することなく上記の構成及び方法に様々な変更を加えることができるので、上記の説明に含まれ、添付の図面に示されるすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されるべきであることが意図される。
【国際調査報告】