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特表2023-539508酸化セリウム粒子、これを含む化学的機械的研磨用スラリー組成物および半導体素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】酸化セリウム粒子、これを含む化学的機械的研磨用スラリー組成物および半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230907BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230907BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H01L21/304 622B
C09G1/02
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513884
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 KR2021011621
(87)【国際公開番号】W WO2022045856
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0110237
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0039098
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0080091
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0087353
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】321001986
【氏名又は名称】ソウルブレイン シーオー., エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソク ジュ
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA05
5F057AA14
5F057AA28
5F057BA15
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA09
5F057EA29
5F057EA31
(57)【要約】
化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子およびこれを含む化学的機械的研磨用スラリー組成物を提供する。前記酸化セリウム粒子の表面にはCe3+及びCe4+が含まれていることを特徴とし、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子を使用する場合、酸化セリウム表面のCe3+の比率を増加させることにより、微細な粒径にもかかわらず、低含有量範囲でも高い酸化膜除去速度及び酸化膜研磨選択比を示すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子であって、
前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において、波長500nmの光に対する光透過率が50%以上であることを特徴とする、化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子。
【請求項2】
前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において、波長450~800nmの光に対する平均光透過率が50%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子。
【請求項3】
動的光散乱(DLS)粒度分析器で測定した前記酸化セリウム粒子の2次粒子の粒径は、1~30nmであることを特徴とする、請求項1に記載の化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子。
【請求項4】
動的光散乱(DLS)粒度分析器で測定した前記酸化セリウム粒子の2次粒子の粒径は、1~20nmであることを特徴とする、請求項1に記載の化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子。
【請求項5】
X線回折(XRD)分析の際、前記酸化セリウム粒子の1次粒子の粒径は0.5~15nmであることを特徴とする、請求項1に記載の、化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子。
【請求項6】
前記酸化セリウム粒子に対する電子エネルギー損失分光(EELS)スペクトルは、876.5~886.5eVの第1ピーク及び894.5~904.5eVの第2ピークを含み、
前記第1ピークの最大強度が第2ピークの最大強度よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子。
【請求項7】
886.5~889.5eVの第3ピーク及び904.5~908.5eVの第4ピークをさらに含み、
前記スペクトルのピークの全面積の和(P)に対する前記第3ピーク区間の面積の和(P)及び前記第4ピーク区間の面積の和(P)の比率((P+P)/P)が、0.1以下であることを特徴とする、請求項6に記載の化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子。
【請求項8】
前記酸化セリウム粒子の表面では、X線光電子分光(XPS)分析の際、Ce3+を示すCe-O結合エネルギーについて示すXPSピークは、900.2~902.2eVの第1ピーク、896.4~898.4eVの第2ピーク、885.3~887.3eVの第3ピーク及び880.1~882.1eVの第4ピークに現れることを特徴とする、請求項1に記載の化学的研磨用機械的酸化セリウム粒子。
【請求項9】
X線光電子分光(XPS)分析の際、前記酸化セリウム粒子表面のCe-O結合エネルギーを示すXPSピーク面積の総和に対する、Ce3+を示すCe-O結合エネルギーについて示すXPSピーク面積の和の比は、0.29~0.70であることを特徴とする、請求項8に記載の化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子。
【請求項10】
酸化セリウム粒子;および
溶媒;を含み、
前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において、波長500nmの光に対する光透過率が50%以上であることを特徴とする、化学的機械的研磨用スラリー組成物。
【請求項11】
前記酸化セリウム粒子は、全スラリー組成物100重量部を基準として0.01~5重量部で含まれることを特徴とする、請求項10に記載の化学的機械的研磨用スラリー組成物。
【請求項12】
前記組成物のpHは2~10であることを特徴とする、請求項10に記載の化学的機械的研磨用スラリー組成物。
【請求項13】
前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸からなる群より選択された1種以上の無機酸;酢酸、クエン酸、グルタル酸、グルコール酸、ギ酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、フタル酸、コハク酸、酒石酸からなる群より選択される1種以上の有機酸;リシン、グリシン、アラニン、アルギニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、システイン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、セリン、トリシン、チロシン、アスパラギン酸、トリプトファン(Tryptophan)、アミノ酪酸からなる群より選択される1種以上のアミノ酸;イミダゾール;アルキルアミン類;アルコールアミン;第4級アミンヒドロキシド;アンモニア;またはこれらの組み合わせ;であることを特徴とする、請求項10に記載の化学的機械的研磨用スラリー組成物。
【請求項14】
前記溶媒は脱イオン水であることを特徴とする、請求項10に記載の化学的機械的研磨用スラリー組成物。
【請求項15】
前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、1,000~5,000Å/minのシリコン酸化膜の研磨速度を有することを特徴とする、請求項10に記載の化学的機械的研磨用スラリー組成物。
【請求項16】
請求項10に記載の化学的機械的研磨用スラリー組成物を用いて研磨するステップを含む、半導体素子の製造方法。
【請求項17】
原料前駆体を準備するステップ;および
前記原料前駆体を含む溶液中で酸化セリウム粒子を粉砕または沈殿させて化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子の分散液を得るステップ;を含み、
前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において、波長500nmの光に対する光透過率が50%以上であることを特徴とする、化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子及びこれを含む化学的機械的研磨用スラリー組成物及び半導体素子の製造方法に関し、より詳しくは、既存の酸化セリウム粒子と異なって、合成を通じて酸化セリウム表面のCe3+の比率を増加させることにより、小粒径にもかかわらず、低含有量で高い酸化膜除去速度を有する化学的機械的研磨用スラリー組成物及びこれを用いた半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子が多様化し、高集積化することにより、さらに微細なパターン形成技術が使用されており、それによって半導体素子の表面構造がさらに複雑になり、フォトリソグラフィ(photolithography)の精度向上のために各工程での層間平坦度が非常に重要な要素として作用している。半導体素子を製造するにおいて、このような平坦化技術として化学的機械的研磨(CMP:chemical mechanical polishing)工程が用いられる。例えば、層間絶縁のために過剰量で成膜された絶縁膜を除去するための工程として、層間絶縁膜(ID:interlayer dielectronic)と、チップ(chip)との間の絶縁を行うシャロートレンチアイソレーション(STI:shallow trench isolation)用の絶縁膜の平坦化のための工程及び配線、コンタクトプラグ、ビアコンタクトなどといった金属導電膜を形成するための工程としても多く使用されている。
【0003】
CMP工程において研磨速度、研磨表面の平坦化度、スクラッチの発生の程度が重要であり、CMP工程の条件、スラリーの種類、研磨パッドの種類等により決定される。酸化セリウムスラリーには、高純度の酸化セリウム粒子が使用される。近年、半導体素子の製造工程では、一層高い配線の微細化を達成することが求められており、研磨時に発生する研磨傷が問題となっている。
【0004】
従来の酸化セリウムスラリーには、30nmから200nmの大きさの粒子を使用しており、研磨を進めた際に、微細な研磨傷が発生しても従来の配線幅より小さいものであれば問題にならなかったが、持続的に高い配線の微細化を達成する現時点では問題となっている。この問題に対して、酸化セリウム粒子の平均粒子径を小さくする試みがなされているが、既存の粒子の場合、平均粒子径を小さくすると、機械的作用が低下するため、研磨速度が低下するという問題点が発生した。
【0005】
このように、酸化セリウム粒子の平均粒子径を制御することで、研磨速度及び研磨傷を制御しようとしても、研磨速度を維持しつつ研磨傷の目標水準を達成することは非常に難しい。
【0006】
また、従来の化学的機械的研磨用スラリー組成物は、酸化セリウム粒子について、Ce3+対Ce4+の比率を最適化すると同時に、最適化された水準である平均粒子径を提示できずにおり、したがって、酸化セリウム表面におけるCe3+の比率を増加させることで、小粒径にもかかわらず、高い酸化膜除去速度を示す酸化セリウム粒子を含む研磨用スラリーに対する研究が必要なのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するために案出されたものであり、本発明の一実施例は、化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子を提供する。
【0008】
また、本発明の他の一実施例は、化学的機械的研磨用スラリー組成物を提供する。
【0009】
さらに、本発明の他の一実施例は、前記化学的機械的研磨用スラリー組成物を用いて研磨するステップを含む半導体素子の製造方法を提供する。
【0010】
さらにまた、本発明の他の一実施例は、半導体素子を提供する。
【0011】
さらにまた、本発明の他の一実施例は、化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子の製造方法を提供する。
【0012】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は以上で言及した技術的課題に限定されず、言及されていない別の技術的課題は、以下の記載から、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に、明確に理解され得るであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した技術的課題を達成するための技術的手段として、本発明の一側面は、化学的機械的研磨用の酸化セリウム粒子であって、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において、波長500nmの光に対する光透過率が50%以上であることを特徴とする、化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子を提供する。
【0014】
前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において、波長450~800nmの光に対する平均光透過率が50%以上であることを特徴としてもよい。
【0015】
前記酸化セリウム粒子が化学的機械的研磨用スラリーに含まれるとき、前記化学的機械的研磨用スラリーは透明であることを特徴としてもよい。
【0016】
前記酸化セリウム粒子は、化学的機械的研磨用スラリーに含まれるとき、単分散されることを特徴としてもよい。
【0017】
動的光散乱(DLS)粒度分析器で測定した前記酸化セリウム粒子の2次粒子の粒径は、1~30nmであることを特徴とするのでありうる。
【0018】
動的光散乱(DLS)粒度分析器で測定した前記酸化セリウム粒子の2次粒子の粒径は、1~20nmであることを特徴とするのでありうる。
【0019】
X線回折(XRD)分析の際、前記酸化セリウム粒子の1次粒子の粒径は、0.5~15nmであることを特徴とするのでありうる。
【0020】
透過電子顕微鏡(TEM)分析の際、前記酸化セリウム粒子の粒径は、10nm以下であることを特徴とするのでありうる。
【0021】
小角X線散乱(SAXS)分析の際、前記酸化セリウム粒子の粒径は、0.5~15nmであることを特徴とするのでありうる。
【0022】
フーリエ変換赤外線(FT-IR)分光法により測定されたスペクトルにおいて、3000cm-1~3600cm-1の範囲で赤外線透過率は90%以上であり、720cm-1~770cm-1の範囲で赤外線透過率は96%以下であることを特徴とするのでありうる。
【0023】
前記酸化セリウム粒子の表面では、X線光電子分光(XPS)分析の際、Ce3+を示すCe-O結合エネルギーを示すXPSピークは、900.2~902.2eVの第1ピーク、896.4~898.4eVの第2ピーク、885.3~887.3eVの第3ピーク及び880.1~882.1eVの第4ピークに現れることを特徴とするのでありうる。
【0024】
X線光電子分光(XPS)分析の際、前記酸化セリウム粒子表面のCe-O結合エネルギーを示すXPSピーク面積の総和に対する、Ce3+を示すCe-O結合エネルギーを示すXPSピーク面積の和の比は、0.29~0.70であることを特徴とするのでありうる。
【0025】
455cm-1~460cm-1のバンド範囲に第1ラマンピークを有することを特徴とするのでありうる。
【0026】
586cm-1~627cm-1のバンド範囲に第2ラマンピークをさらに有することを特徴とするのでありうる。
【0027】
712cm-1~772cm-1のバンド範囲に第3ラマンピークをさらに有することを特徴とするのでありうる。
【0028】
前記第2ラマンピーク強度(B)に対する第1ラマンピーク強度(A)の比(A/B)は、25以下であることを特徴とするのでありうる。
【0029】
前記第3ラマンピーク強度(C)に対する第1ラマンピーク強度(A)の比(A/C)は、50以下であることを特徴とするのでありうる。
【0030】
電子エネルギー損失分光(EELS)スペクトルは、876.5~886.5eVの第1ピーク及び894.5~904.5eVの第2ピークを含み、前記第1ピークの最大強度が第2ピークの最大強度よりも大きいことを特徴とするのでありうる。
【0031】
886.5~889.5eVの第3ピーク及び904.5~908.5eVの第4ピークをさらに含み、前記スペクトルのピークの全面積の和(P)に対する、前記第3ピーク区間の面積の和(P)及び前記第4ピーク区間の面積の和(P)の比率((P+P)/P)が、0.1以下であることを特徴とするのでありうる。
【0032】
X線吸収微細構造(XAFS:X-ray absorption fine structure)スペクトルによるCe3+を示すピークの面積AおよびCe4+を示すピークの面積Aの和に対する、Ce3+を示すピークの面積Aの比(A/(A+A))は0.03以上であることを特徴とするのでありうる。
【0033】
XAFS(X-ray absorption fine structure)スペクトルによるCe3+を示すピークの面積AおよびCe4+を示すピークの面積Aの和に対して、Ce3+を示すピークの面積Aの比A/(A+A)は0.1以上であることを特徴とするのでありうる。
【0034】
XAFSスペクトルの測定時、5730eV以上5740eV未満の範囲で第1ピークの最大光吸収係数を有し、前記第1ピークの最大光吸収係数は0.1~0.4であることを特徴とするのでありうる。
【0035】
XAFSスペクトルの測定時、5740eV以上5760eV未満の範囲で第2ピークの最大光吸収係数を有し、前記第2ピークの最大光吸収係数は0.6未満であることを特徴とするのでありうる。
【0036】
前記酸化セリウム粒子は、紫外線光電子分光(UPS:ultraviolet photoelectron spectroscopy)分析の際、1秒当たりに放出される光電子数(Counts)の最大値が運動エネルギー10eV以下の範囲に存在することを特徴とするのでありうる。
【0037】
前記酸化セリウム粒子は、UPS分析時、1秒当たりに放出される光電子数(Counts)の最大値が運動エネルギー3~10eVの範囲に存在することを特徴とするのでありうる。
【0038】
前記酸化セリウム粒子は、UPS分析時、仕事関数(work function)値が3.0eV~10.0eVを示すことを特徴とするのでありうる。
【0039】
前記酸化セリウム粒子は、BET表面積値が50m/g以下であることを特徴とするのでありうる。
【0040】
前記酸化セリウム粒子は、静置法により測定した見かけ密度が2.00~5.00g/mlであることを特徴とするのでありうる。
【0041】
前記酸化セリウム粒子は、タップ法により測定した見かけ密度が2.90~5.00g/mlであることを特徴とするのでありうる。
【0042】
前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液に対して、325nmの波長で発光強度(PL:Photoluminescence)を測定するとき、435~465nmの波長の第1ピーク(λ)の最大強度が0.1~30の範囲で現れることを特徴とするのでありうる。
【0043】
510~540nmの波長の第2ピーク(λ)の最大強度が0.1~10の範囲で現れることを特徴とするのでありうる。
【0044】
510~540nm波長の第2ピーク(λ)に対する、前記第1ピーク(λ)の強度比(λ/λ)が5~15であることを特徴とするのでありうる。
【0045】
前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液の色をL*a*b*表色系で表すとき、L*の値が95以上であり、b*の値は10~25であることを特徴とするのでありうる。
【0046】
(L*は明度、a*は赤色度、b*は黄色度を示す)
【0047】
前記a*は-12~-3であることを特徴としてもよい。
【0048】
前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液を遠心力4250Gの条件で30分間遠心分離した時の酸化セリウム粒子の沈降率が25重量%以下であることを特徴とするのでありうる。
【0049】
また、本発明の他の一側面は、酸化セリウム粒子;および溶媒;を含み、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において波長500nmの光に対する光透過率が50%以上であることを特徴とする、化学的機械的研磨用スラリー組成物を提供する。
【0050】
前記酸化セリウム粒子は、全スラリー組成物100重量部を基準として0.01~5重量部で含まれることを特徴とするのでありうる。
【0051】
前記組成物のpHは2~10であることを特徴とするのでありうる。
【0052】
前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸からなる群より選択された1種以上の無機酸;酢酸、クエン酸、グルタル酸、グルコール酸、ギ酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、フタル酸、コハク酸、酒石酸からなる群より選択される1種以上の有機酸;リシン、グリシン、アラニン、アルギニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、システイン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、セリン、トリシン、チロシン、アスパラギン酸、トリプトファン(Tryptophan)、アミノ酪酸からなる群より選択される1種以上のアミノ酸;イミダゾール;アルキルアミン類;アルコールアミン;第4級アミンヒドロキシド;アンモニア;またはこれらの組み合わせ;であることを特徴とするのでありうる。
【0053】
前記溶媒は脱イオン水であることを特徴とするのでありうる。
【0054】
前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、1,000~5,000Å/minのシリコン酸化膜の研磨速度を有することを特徴とするのでありうる。
【0055】
本発明の他の一側面は、酸化セリウム粒子;および溶媒;を含む化学的機械的研磨用スラリー組成物であって、前記酸化セリウム粒子は湿式で製造されたものであり、前記スラリー組成物に含まれた前駆体物質の含有量は重量基準で300ppm以下であることを特徴とする、化学的機械的研磨用スラリー組成物を提供する。
【0056】
化学的機械的研磨用スラリー組成物の全重量に対して前記酸化セリウム粒子を0.001~5%以下で含むことを特徴とする。
【0057】
本発明の他の一側面は、酸化セリウム粒子;溶媒;および陽イオン性高分子;を含むことを特徴とする化学的機械的研磨用スラリー組成物を提供する。
【0058】
前記陽イオン性高分子の含有量によって酸化膜研磨速度が増加することを特徴とするのでありうる。
【0059】
前記陽イオン性高分子は、酸化膜/ポリシリコン膜の研磨選択比を増加させることを特徴とするのでありうる。
【0060】
前記陽イオン性高分子の含有量は、化学的機械的研磨用スラリー組成物の全重量に対して0.001~1重量%であることを特徴とするのでありうる。
【0061】
前記陽イオン性高分子は、アミン基またはアンモニウム基を含む重合体または共重合体であることを特徴とするのでありうる。
【0062】
前記陽イオン性高分子は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(polydiallyldimethyl ammonium chloride)、ポリアリルアミン(polyallylamine)、ポリエチレンイミン(polyehthyleneimine)、ポリジアリルアミン(polydiallylamine)、ポリプロピレンイミン(polypropyleneimine)、ポリアクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(polyacrylamide-co-diallydimethyl ammonium chloride)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、ポリ(トリメチルアンモニオエチルメタクリレート)(Poly(trimethylammonio ethyl methacrylate)、ジシアンジアミド-ジエチレントリアミン共重合体(dicyandiamide-diethylenetriamine copolymer)、ジアリルジメチルアミン/塩酸塩-アクリルアミド共重合体(diallyldimethylamine/hydrochloride-acrylamide copolymer)、ジシアンジアミド-ホルムアルデヒド共重合体(dicyandiamide-formaldehyde copolymer)、またはこれらの組み合わせであることを特徴とするのでありうる。
【0063】
前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、200~2,000の酸化膜/ポリシリコン膜の研磨選択比を有することを特徴とするのでありうる。
【0064】
また、本発明の他の一側面は、前記化学的機械的研磨用スラリー組成物を用いて研磨するステップを含む半導体素子の製造方法を提供する。
【0065】
また、本発明の他の一側面は、半導体素子であって、基板;及び前記基板上に絶縁物質が満たされているトレンチ;を含み、前記トレンチは、化学的機械的研磨用スラリー組成物を用いて、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜からなる群より選択される少なくとも1種の膜を研磨することにより生成され、前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、酸化セリウム粒子;及び溶媒;を含み、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液における、波長500nmの光に対する光透過率が、50%以上であることを特徴とする、半導体素子を提供する。
【0066】
また、本発明の他の一側面は、原料前駆体を準備するステップ;および
前記原料前駆体を含む溶液中で酸化セリウム粒子を粉砕または沈殿させて化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子の分散液を得るステップ;を含み、
【0067】
前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において、波長500nmの光に対する光透過率が50%以上であることを特徴とする、化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0068】
本発明の一実施例に係る酸化セリウムの粒子の場合、酸化セリウムの表面のCe3+の比率を増加させることにより、小粒径にもかかわらず、化学的機械的研磨用スラリーに含まれるとき、低含有量でも高い酸化膜除去速度を保有することができる。
【0069】
また、本発明の一実施例によれば、ウェハーの表面欠陥を最小化することができ、従来トレードオフ(Trade-off)関係と考えられていた、表面欠陥と酸化膜除去速度との相関関係とは異なり、表面欠陥を最小限に抑えながら酸化膜除去速度を最大化することができる、化学的機械的研磨用スラリー組成物用酸化セリウム粒子及びスラリー組成物を提供することができる。
【0070】
また、本発明の一実施例によれば、陽イオン性高分子の添加により、酸化膜研磨速度がさらに上昇し、同時に酸化膜/ポリシリコン膜の選択比が上昇することが確認できる。陽イオン性高分子の添加は、通常、研磨速度を犠牲にしてその他の特性を確保するという従来の技術常識を考えると、本発明の特有の効果といえる。
【0071】
本発明の効果は、上記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】本発明の一実施例に係る酸化膜除去メカニズムを示すものである。
図2】本願の一具現例に係る半導体素子の製造方法を示す断面図(1)である。
図3】本願の一具現例に係る半導体素子の製造方法を示す断面図(2)である。
図4】本願の一具現例に係る半導体素子の製造方法を示す断面図(3)である。
図5】本願の一具現例に係る半導体素子の製造方法を示す断面図(4)である。
図6】本願の一具現例に係る半導体素子の製造方法を示す断面図である。
図7】は、本願の他の一具現例に係る化学的機械的研磨の段階的工程及び化学的機械的研磨(CMP)設備の構造を示すもの(1)である。
図8】本願の他の一具現例に係る化学的機械的研磨の段階的工程及び化学的機械的研磨(CMP)設備の構造を示すもの(2)である。
図9】従来の酸化セリウム粒子を分散させた分散液を目視で観察したイメージである。
図10】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子を分散させた分散液を目視で観察したイメージである。
図11】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のTEMイメージ(1)である。
図12】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のTEMイメージ(2)である。
図13】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のTEMイメージ(3)である。
図14】比較例1に係る酸化セリウム粒子のSEMイメージである。
図15】比較例2に係る酸化セリウム粒子のSEMイメージである。
図16】比較例3に係る酸化セリウム粒子のSEM及びTEMイメージである。
図17】比較例4に係る酸化セリウム粒子のSEMイメージである。
図18】比較例1~3のTEMイメージである。
図19】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のX線回折(XRD:X-ray Diffraction)による粒子サイズ分析結果である。
図20】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の小角X線散乱法(SAXS)による分析結果である。
図21】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の動的光散乱(DLS)粒度分析結果である。
図22】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子および水酸化セリウム粒子のフーリエ変換赤外線(FT-IR)分光法によるスペクトル分析結果である。
図23】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子および比較例1~4の従来の酸化セリウム粒子を含むスラリーの光透過率を、紫外可視(UV-vis)分光法を用いて測定した結果である。
図24】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のXRD(X-ray Diffraction; X線回折)分析による強度比及びピーク面積結果である。
図25】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のX線光電子分光(XPS)分析結果である。
図26】比較例3に係る酸化セリウム粒子のX線光電子分光(XPS)分析結果である。
図27】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のラマンピーク分析結果である。
図28】比較例1に係る酸化セリウム粒子のラマンピーク分析結果である。
図29】比較例3に係る酸化セリウム粒子のラマンピーク分析結果である。
図30】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の電子エネルギー損失分光(EELS)分析結果である。
図31】比較例3に係る酸化セリウム粒子の電子エネルギー損失分光(EELS)分析結果である。
図32】比較例4に係る酸化セリウム粒子の電子エネルギー損失分光(EELS)分析結果である。
図33】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のX線吸収微細構造(XAFS:X-ray absorption fine structure)スペクトル分析結果である。
図34】比較例3に係る酸化セリウム粒子のX線吸収微細構造(XAFS)スペクトル分析結果である。
図35】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子を1質量%含む水分散液についての紫外線光電子分光(UPS:Ultraviolet photoelectron spectroscopy)分析結果を示すものである。
図36】比較例3に係る酸化セリウム粒子を1質量%含む水分散液の紫外線光電子分光(UPS)分析結果を示すものである。
図37】比較例4に係る酸化セリウム粒子を1質量%含む水分散液の紫外線光電子分光(UPS)分析結果を示すものである。
図38】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のBET表面積測定結果である。
図39】比較例1に係る酸化セリウム粒子のBET表面積測定結果である。
図40】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の発光強度(PL:Photoluminescence)を測定した結果である。
図41】比較例3に係る酸化セリウム粒子の発光強度(PL)を測定した結果である。
図42】比較例4に係る酸化セリウム粒子の発光強度(PL)を測定した結果である。
図43】表色系を測定するために準備した本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子を1質量%含む分散液である。
図44】表色系を測定するために準備した比較例3に係る酸化セリウム粒子を1質量%含む分散液である。
図45】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子を含むCMPスラリー組成物と60nm級の酸化セリウム粒子を含むCMPスラリー組成物とを用いた酸化物ウェハーのCMP前後をスキャンしたイメージ(1)である。
図46】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子を含むCMPスラリー組成物と60nm級の酸化セリウム粒子を含むCMPスラリー組成物とを用いた酸化物ウェハーのCMP前後をスキャンしたイメージ(2)である。
図47】本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子を含むCMPスラリー組成物の陽イオン性高分子添加による酸化膜研磨速度挙動を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態に具現されうるのであり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0074】
製造例1.酸化セリウム粒子の製造
本願発明の一実施例に係る前記酸化セリウム粒子は、ボトムアップ(bottom up)方式で化学的合成を通じて合成され得る。本願の実施例では、下記に提示する酸化セリウム粒子製造方法の中から選択されたいずれか一つの方法で酸化セリウム粒子を製造した。
【0075】
本願の一実施例に係る製造方法によって、まず十分な量の脱イオン水に硝酸セリウム約2~4kg添加して攪拌した。前記前駆体溶液に硝酸を添加してpHを1.0以下に調節した。製造された混合物に沈殿物が生じるまでアンモニア水を添加して攪拌した。攪拌された混合物のpHは強酸性を示し(2以下)、攪拌完了時に放置すると、生成物は速く沈殿することを確認した。沈殿物を除いた上清液(上澄液)を除去した後、一定量の脱イオン水を投入し、薄い黄色の酸化セリウム粒子分散液が生成された。製造された分散液をメンブレンフィルターにより循環ろ過して透明な黄色酸化セリウム分散液を得た。
【0076】
本願の他の一実施例に係る製造方法によって、まず酸化セリウムまたは水酸化セリウム150gを脱イオン水3kgに分散して粒子が沈殿しない程度に撹拌した。前記混合物に硝酸をpH1.0以下になるまで添加した。0.05mmジルコニアビーズを充填したミリング機に前記混合物を添加して、4,000rpmで循環させながら粉砕した。ミリングが進行するに伴い、白い不透明な酸化セリウム分散液が、だんだん黄色透明の酸化セリウム分散液に変わるのを観察した。ミリング終了後に製造された黄色透明の酸化セリウム分散液を、メンブレンフィルターにより循環濾過して純粋な黄色透明の酸化セリウム分散液を得た。
【0077】
本願のまた他の一実施例に係る製造方法によって、まず十分な量のエタノールにセリックアンモニウムナイトレートを約2~4kg添加して攪拌した。前記前駆体溶液に沈殿物が生じるまでイミダゾール溶液を添加し攪拌した。攪拌された混合物のpHは強酸性を示し(2以下)、攪拌完了時に放置すると、生成物は速く沈殿することを確認した。沈殿物を除いた上清液を除去した後、一定量の脱イオン水を投入し、酸化セリウム粒子分散液が生成された。製造された分散液をメンブレンフィルターにより循環ろ過して、透明な酸化セリウム分散液を得た。
【0078】
本願のまた他の一実施例に係る製造方法によって、まず反応容器に硝酸セリウム1.1kgと脱イオン水10kgを混合した。反応容器の撹拌速度は200rpmを維持し、常温を維持した。25%アンモニア水(Ammonia Solution)と脱イオン水の1:1混合液を準備した後、反応容器にpH7.0になるまで投入した。1時間の撹拌の進行後、70%硝酸と脱イオン水の1:1混合液をpH1.0になるまで添加した。反応器温度を100°Cまで昇温させた後、4時間の間、反応させた。反応が進行する間、薄紫色の巨大粒子が解離し、黄色透明の酸化セリウムナノ粒子が生成された。得られた粒子をメンブレンフィルターで循環させながら分純水を除去し、純粋な酸化セリウムナノ粒子分散液を得た。
【0079】
製造例2.酸化セリウム粒子を含むCMPスラリーの製造
前記製造例1で製造された酸化セリウム粒子を脱イオン水に添加して、研磨材濃度を0.05重量%にし、トリエタノールアミンを添加してpHを5.5にすることでCMPスラリーを製造した。
【0080】
図9及び図10によれば、従来のセリア粒子を含むスラリーの場合、目視(肉眼)でも濁度が高いことを観察することができるのに対し、本発明の酸化セリウム粒子を含むスラリーの場合、透明であることを観察することができ、単分散特性があることを推定することができる。
【0081】
比較例1~4.従来のセリア粒子を含むスラリー組成物の製造
平均粒径がそれぞれ10、30、60nmである市販の湿式酸化セリウム粒子、および、別途に、か焼法により製造された10~20nm級の酸化セリウム粒子を得て、それぞれ脱イオン水に添加して研磨材濃度を0.05重量%にし、pH調節剤としてアンモニアを添加して最終pHを5.5にすることでCMPスラリーを製造した。
【0082】
実験例1.酸化セリウム粒子のSEMおよびTEM分析
本発明の一実施例に係る製造例1の分散液を略80~90°Cで乾燥して粉体の形態の酸化セリウム粒子(一次粒子)を準備した(サンプルA)。一方、比較例1~4の分散液の製造時に使用した酸化セリウム粒子を、それぞれ準備した(順に、それぞれサンプルB1、B2、B3及びB4)。前記準備されたサンプルのそれぞれに対してTEM測定器を用いてイメージを撮影した。
【0083】
図11図13は、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のTEMイメージである。
【0084】
図11図13を参照すると、本発明の一実施例により製造された酸化セリウム粒子のTEM測定による平均粒子は約4nm以下(繰り返し測定で、それぞれ3.9nm、3.4nm、2.9nm)であることが確認できた。本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の平均1次粒子の粒径は4nm以下であることが確認された。また、前記酸化セリウム粒子は、平均的に球形粒子の形状を有することが確認できた。粒径(粒子の大きさ)が小さく、粒径分布が比較的均一な球形の酸化セリウム粒子は、広い比表面積を有しうるのであり、分散安定性及び保存安定性に優れるという特徴を有する。
【0085】
図14図17は、比較例に係る従来の酸化セリウム粒子のSEMイメージを示すものである。
【0086】
図14図17を参照すると、従来市販されている酸化セリウム粒子は、それぞれのサイズの等級に合う粒径を示しており、か焼法によって別途に製造された粒子の場合も、平均粒径が全て10nm超の1次粒子の粒径を示すことが分かり、これを、図11図13に示す本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のTEMにより測定された平均粒径が4nm以下であることと比較すると、従来技術の酸化セリウム粒子、および一般的な、か焼法により製造された酸化セリウム粒子が、著しく粗い粒径を有することが確認できる。これに対し、本願発明の酸化セリウム粒子は、粒径(1次粒子)自体が小さく形成されることを確認し、このように前記酸化セリウム粒径が小さいほど、研磨対象膜の表面に生じるスクラッチなどの欠陥を減らしうるということを予想できる。
【0087】
また、図18は、比較例である従来の酸化セリウム粒子のTEMイメージを示すものである。図18を参照すると、粒径10nm級の従来の酸化セリウム粒子は、エッジ(edge)を有する粒子と球形の粒子とを含み、粒径30nm級以上の従来の酸化セリウム粒子は、エッジ(edge)を有する角形の粒子からなることを確認できる。これに対し、上記で説明したように、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子は、概して球形の形状を有することからみると、本願発明の酸化セリウム粒子は、このように球形の粒子形状を有し、粒径が微細であるので、多くの粒子数を含むことができ、したがって、シリコン酸化膜を研磨する際に、表面の欠陥発生確率は減らし、広域平坦度は高めることができる。
【0088】
実験例2.酸化セリウム粒子のX線回折(X-ray Diffraction, XRD)分析
本願の一実施例に係る製造例1の分散液を約80~90°Cで乾燥して、粉体の形態の酸化セリウム粒子(1次粒子)を準備した(サンプルA)。前記準備されたサンプルAに対して、XRD装置(Rigaku、Ultima IV)を用いて分析を行った。この際、前記XRDは、Cu Kα(λ=1.5418Å)、40kV及び40mAの条件でセットされた。
【0089】
図19は、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のXRD(X-ray Diffraction)パターンである。XRDパターンを分析して導出した前記酸化セリウム粒子の粒径を下記表1に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
図19及び前記表1を参照すると、サンプルAに対するXRD分析の結果、図19のような形態のXRDスペクトラム(X軸:2-theta(degree散乱角), Y軸: intensity信号強度)が導き出された。上記スペクトラムから計算された結晶粒の粒径は3.25nmであった。これは、実験例1のTEM分析結果と類似の水準であって、このことを通じて、本発明の粒子が単結晶であることを確認することができた。
【0092】
実験例3.酸化セリウム粒子の小角X線散乱方式(SAXS)分析
本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子に対して、小角X線散乱方式(SAXS)を利用して粒径を分析して、これを図20に示した。
【0093】
図20を参照すると、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子の粒径は、平均粒子半径2.41nmで、10nm以下の範囲を有することが分かる。これにより、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子の粒径は、従来の酸化セリウム粒子の粒径を考慮すると、はるかに微細であることが確認でき、したがって、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子を用いてシリコン酸化膜を研磨する際に、表面の欠陥発生率をより抑制できることが分かる。
【0094】
実験例4.酸化セリウム粒子の動的光散乱(DLS:Dynamic Light Scattering)粒度分析器の分析
本願の一実施例に係る製造例2のスラリー組成物、比較例1、2、3及び4のスラリー組成物をサンプルとして準備した。前記準備されたサンプルのそれぞれに対して、DLS装置を用いて分析した。
【0095】
図21は、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の動的光散乱(DLS)分析(Malvern社Zetasizer Ultra)結果である。また、下記表2は、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子および比較例の酸化セリウム粒子についての、動的光散乱(DLS)分析によって得たD50値を示すものである。
【0096】
【表2】
【0097】
図21及び前記表2を参照すると、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子は、約5.78nmの二次粒子の粒径D50値を有することを示し、10nm以下であると測定された。実験例1にてTEMにより測定した1次粒子の粒径に比べ(図11図13参照)約148~199%の水準であって、スラリー中でほとんど凝集せず、単分散されて、粒径の変化がほとんどない水準であることが確認できた。
【0098】
これに対し、従来技術の酸化セリウム粒子の動的光散乱(DLS)測定によるD50粒子径は、30nmを超えることが確認でき、10nm級の酸化セリウム粒子の場合にも、TEMで測定した1次粒子の粒径に対して、動的光散乱(DLS)で測定した2次粒子の粒径D50値が約336%の水準であって、従来技術の酸化セリウム粒子がはるかに大きい2次粒子の粒径を有しすることから、凝集が多く生じたことを確認することができる。
【0099】
したがって、本願発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子が、一比較例による従来技術の酸化セリウム粒子よりもスラリー中での凝集性が低く、より単分散された形態でスラリーに分散できることが分かる。
【0100】
実験例5.フーリエ変換赤外線(FT-IR)分光分析による酸化セリウム粒子の形成確認
図22は、本発明の一具現例により製造された酸化セリウム粒子からなる粉末、および、通常の水酸化セリウム粒子からなる粉末のFT-IR分光分析結果である。
【0101】
図22のFT-IR分光スペクトルを分析した結果、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子からなる粉末についての、3000cm-1~3600cm-1の範囲での赤外線透過率は約92~93%であり、720cm-1~770cm-1の範囲での赤外線透過率は、約93~95%であることが確認できる。これについて、通常の水酸化セリウム粒子からなる粉末のFT-IRスペクトルにおいて3000cm-1~3600cm-1の範囲の赤外線透過率が75~90%であって、720cm-1~770cm-1の範囲の赤外線透過率が97~99%であることと比較すると、本発明の一実施例により製造された酸化セリウム粒子は、3000cm-1~3600cm-1の範囲での水酸化セリウム粒子のO-H基(O-H group)によるバンド(band)が、通常の水酸化セリウム粒子のそれより弱く現れること、および、720cm-1から770cm-1の範囲でCe-O伸縮(stretching)によるピークが形成されることにつき確認することができる。
【0102】
実験例6.酸化セリウム粒子を含むスラリーの光透過率測定
CMPスラリー中の酸化セリウム粒子の重量比率を1重量%としたことを除いては、製造例2と同様にして、スラリー組成物(サンプルA)を準備した。一方、CMPスラリー中の酸化セリウム粒子の重量比率を1重量%としたことを除いては、比較例1、2、3及び4と同様にして、スラリー組成物のそれぞれを準備した(順にサンプルB1、B2、B3及びB4)。サンプルのそれぞれに対してUV-Vis分光器(JASCO)を用いて200~1100nmの光に対する透過率を測定した。
【0103】
図23は、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子および比較例1~4の従来の酸化セリウム粒子を含むスラリーの光透過率を、紫外可視(UV-vis)分光法を用いて測定した結果である。
【0104】
本願発明の一実施例及び比較例による酸化セリウム粒子を脱イオン水に添加して研磨材濃度を1.0wt%にし、CMPスラリーを準備して光透過率を分析した。ここで、光学スペクトルは、200~1,100nmの範囲で、UV-vis分光器(Jasco UV-vis spectrophotometer)を使用して測定した。
【0105】
前記UV-Vis分析グラフを通じて、波長500nm、600nm及び700nmの、それぞれにおけるサンプルA及びサンプルB1~B4の透過率(%)を、まとめて下記表3に示した。
【0106】
【表3】
【0107】
図23及び前記表3によれば、本願発明の酸化セリウム粒子を含むスラリーの場合、波長が450~800nmの光に対する平均光透過率が50%以上であることを確認できる。また、約500nm波長の光に対する光透過率が90%以上、約600nm及び700nm波長の光に対する光透過率が95%以上であることを確認できた。
【0108】
これに対し、比較例1~4(10nm級、30nm級、60nm級の従来の酸化セリウム粒子、か焼法によるセリア粒子)による従来技術の酸化セリウム粒子を含むスラリーの光透過率を測定した。比較例4(か焼セリア粒子)は、光透過率がほぼ0%であり、10nm級の市販の従来の酸化セリウム粒子を含む、比較例1のスラリーの光透過率が平均80%未満であり、波長500nmでの光透過率は50%未満であることを示している。比較例2及び3の場合、1次粒子の粒径も、それぞれ30、60nmで粗大であり、2次粒子の粒径も、本発明の実施例に比べて粗大であるので(すなわち、スラリー中での凝集性が大きいので)、可視光線領域で20%未満の透過率のみを示すことが分かる。
【0109】
これに対し、本願発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子は、可視光線領域で90%以上の光透過率を示すことを確認できるのであり、これは、本願発明の酸化セリウム粒子の場合、1次粒子の粒径自体が微細であって、2次粒子への凝集が従来技術の酸化セリウム粒子に比べて少ないということを意味する。通常、2次粒子が20nmを超えると、目視でもスラリー組成物の不透明を観察することができ、可視光線領域の波長にて、光透過率が80%未満となることはよく知られている。
【0110】
本発明のスラリー組成物によれば、光透過率は、前記酸化セリウム粒子の1次粒子の粒径が小さく2次粒子への凝集性が小さければ、分散安定性が高くて粒子が均一に分布しうるのであり、前記粒子を含むスラリー組成物を使用して研磨対象膜を研磨する際に、表面にスクラッチなどの欠陥が発生する確率が少なくなることを容易に予測することができる。
【0111】
実験例7.XRD分析による酸化セリウム粒子のピーク面積比
図24は、発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子のXRD(X-ray Diffraction)分析による強度比及びピーク面積の結果である。
【0112】
図24のXRD分析の結果、本願発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の(111)面のピーク面積は約496.9であり、(200)面のピーク面積は約150.1であることが確認できる。ここで、(200)面のピーク面積に対する(111)面のピーク面積比は略3.3を示すことを確認できる。主ピークをライブラリにより調べたとき、本発明の実施例によって製造された粒子が酸化セリウム粒子であることを確認できた。
【0113】
実験例8.酸化セリウム粒子のXPS解析
図25及び図26は、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子及び比較例3に係る60nm級の従来の酸化セリウム粒子のXPS分析結果である。XPS(X-ray photoelectron spectroscopy)は、軟X線(soft X-ray)を照射したとき、Ce3+を示すCe-O結合エネルギーを示す900.2~902.2eV、896.4~898.4eV、885.3~887.3eV及び880.1~882.1eVで現れるピークを測定し、XPSフィッティング(XPS fitting)によりアトミック(atomic)%を分析することにより、酸化セリウム粒子におけるCe3+及びCe4+含有量を測定することができる。以下の表4は、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子のXPS結果データである。
【0114】
【表4】
【0115】
前記XPS分析結果から、前記で記述した化学式によってCe3+含有量を計算した結果、Ce3+含有量が30%以上であることが分かる。酸化セリウム粒子においてCe3+が反応位置(reactive sites)であるため、これによって研磨量を高めることができることが分かるであろう。前記のような方法で、従来の酸化セリウム粒子との比較データを下記表5のように示した。
【0116】
【表5】
【0117】
本願発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の場合、前記表5に示すようにCe3+含有量が約36.9アトミック%であり、表5にて、このことを、従来の60nm級の酸化セリウム粒子のCe3+含有量が14アトミック%未満であり、従来の文献によって知られているように10nm級の、超臨界または亜臨界条件下で水熱合成法により製造された酸化セリウム粒子が、約16.8%であるということと比較したとき、高いCe3+含有量を含むということを確認することができる。表面Ce3+含有量が、本発明の実施例のように高い水準である場合、シリカとセリウムとの間のSi-O-Ceを形成する化学的研磨メカニズムによって、ケイ素を含む基板への研磨率を高めることができる。
【0118】
実験例9.酸化セリウム粒子のラマン分光法(Raman spectroscopy)による分析
図27~29は、それぞれ本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子、10nm級の従来の酸化セリウム粒子および60nm級の従来の酸化セリウム粒子のラマン分光法による分析結果である。分析結果、前記実施例、比較例1及び比較例3のサンプルのそれぞれに対して、順に、図27図28及び図29のような形態のラマンスペクトル(X軸:Raman shift(cm-1)、Y軸:Counts)が導出された。前記導出されたラマンスペクトルに対する分析結果を、下記表6に示した。
【0119】
【表6】
【0120】
図27~29及び前記表6を参照すると、比較例1及び3による従来の酸化セリウム粒子が462cm-1付近で第1ラマンピークを有するのに対し、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子は、振動(vibration)によって457cm-1付近で第1ラマンピークを有することが確認できる。本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子の場合、Ce4+がCe3+に部分的に還元されて、酸化セリウム粒子が有している立方晶蛍石(Cubic fluorite)の格子構造に、欠陥が誘導されて酸素空孔(oxygen vacancies)が増加するに伴い、第1ラマンピークのシフト(shift)が発生すると思われる。また、このような粒子構造の違いにより、実施例サンプルの第2ラマンピークの強度が、比較例1及び比較例3のそれに比べて高いことも確認できる。
【0121】
また、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子では、457、607、742cm-1のピークをそれぞれ示したのに対し、比較例1及び比較例3の場合、約607cm-1の第2ピークがほとんど検出されない水準であるか、強度が非常に弱く現れることが確認でき、約742cm-1の第3ピークは、実施例と異なって検出されないことが確認された。
【0122】
一方、第2ラマンピーク強度(B)に対する第1ラマンピーク強度(A)の比(A/B)は、実施例、比較例1及び比較例3の各々の順に15.4、46.0及び66.4であることが確認された。このように実施例のサンプルに対するA/B値が比較例1及び比較例3のそれに比べてはるかに小さいことが確認できるのであり、本実施例の場合、前記第3ラマンピーク強度(C)に対する第1ラマンピーク強度(A)の比(A/C)は50以下であるが、比較例1及び3の場合、第3ラマンピークが検出されず、A/Cを計算することができなかったのであるが、これは、酸化セリウム粒子でのCe3+含有量の増加によって欠陥(oxygen vacancies:酸素空孔)の比率が高くなることによる結果であると解釈することができる。
【0123】
前記結果から、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子が比較例による従来の酸化セリウム粒子に比べて高含有量のCe3+を含んでいることを予想することができる。
【0124】
実験例10.酸化セリウム粒子の電子エネルギー損失分光(EELS)スペクトル分析
本願発明の一実施例に係る製造例2のスラリー組成物、比較例3及び比較例4のスラリー組成物それぞれをサンプルとして準備した。
【0125】
前記準備されたサンプルのそれぞれに対して、EELS測定機器を用いて分析した。前記EELS測定は、50eV以上のエネルギー損失区間であるコア損失領域(Core-loss region)に対して行われた。前記コア損失領域で見られるイオン化エッジ(ionization edge)を用いて、測定するサンプルの酸化状態によるピークを区分することができ、これにより、酸化セリウム粒子のCe4+含有量を定量的に分析した。
【0126】
EELS測定器によるサンプルの分析の結果、実施例、比較例3及び4のサンプルのそれぞれに対して、順に、図30図32のような形態のEELSスペクトル(X軸:バインディングエネルギー(binding energy;結合エネルギー)(eV)、Y軸:強度(intensity)(a.u.);任意単位の信号強度)が導出された。
【0127】
分析の結果、実施例のEELSスペクトルの場合、約876.5~886.5eVの第1ピーク、894.5~904.5の第2ピークを含み、前記第1ピークの最大強度が第2ピークの最大強度よりも大きいことを特徴とする、Ce3+のEELSスペクトル傾向に従うということが確認できる。これに対し、比較例3及び比較例4のEELSスペクトルは、第2ピークの最大ピーク強度が第1ピークの最大ピーク強度よりも大きい、Ce4+のEELSスペクトル傾向に従うということが確認できる。これは、実施例の酸化セリウム粒子がCe3+のEELSスペクトルの傾向に従うのに対し、比較例3及び4の酸化セリウム粒子はCe4+のEELSスペクトルの傾向に従うということを意味する。
【0128】
一方、前記酸化セリウム粒子のEELSスペクトルは、886.5~889.5eVの第3ピーク区間及び904.5~908.5eVの第4ピーク区間をさらに含みうるのであり、前記第3及び第4ピーク区間のピーク面積は、酸化セリウム粒子のCe4+を示す酸化状態を示すピークでりうる。図30図32のEELSスペクトルに基づいて、特定のバインディングエネルギー(binding energy)範囲に対するピーク面積比率を導出し、これを、表7~表9(順に、実施例、比較例3及び比較例4に関する結果データ)に示した。前記EELSスペクトル分析の結果、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子において、全体のEELSピーク面積の和(P)に対する第3ピーク区間の面積の和(P)の比率(P/P)は、1%、1%、0%及び0%と計算され、比較例3のそれは3%、3%、4%及び4%と計算され、比較例4のそれは3%、3%、3%及び4%と計算された。
【0129】
また、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の場合、全体のEELSピーク面積の和(P)に対する、第3ピーク区間の面積(P)及び第4ピークの面積(P)の面積比率((P+P)/P)が平均的に約5.8%以下であり、比較例3のそれは13%以上程度であり、比較例4のそれは約12%以上程度であり、このことから、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子が、比較例3及び4の酸化セリウム粒子に比べて少ない含有量のCe4+を有することが確認できる。
【0130】
【表7】
【0131】
【表8】
【0132】
【表9】
【0133】
実験例11.酸化セリウム粒子のXAFS(X-ray absorption fine structure)スペクトル分析
本願発明の一実施例に係る製造例2のスラリー組成物および比較例3のスラリー組成物のそれぞれをサンプルとして準備した。
【0134】
前記準備されたサンプルのそれぞれに対して、XAFS測定機器を用いて分析した。前記XAFSは、強度が強いX線をサンプルに照射して、吸収されたX線の強度を測定する分析方法であり、X線エネルギー(eV)による光吸収係数(xμ)を測定して導出されたX線吸収スペクトルに基づいて、粒子内でのCe3+及びCe4+などの重量比率(wt%)を確認することができる。この際、前記吸収スペクトルは、X線吸収が急激に増加する吸収エッジ(absorption edge)の近傍50eV内のXAFSスペクトルを分析するX線吸収端近傍構造(XANES:X-ray absorption near edge structure)法を用いて導出した。
【0135】
実施例および比較例3のサンプルのそれぞれに対するXAFS分析結果、それぞれ図33および図34のようなXAFSスペクトル(X軸:X線エネルギーX(eV)、Y軸:X線光吸収係数xμ(E))が導出された。図33及び図34に示すように、実施例及び比較例3のサンプルのそれぞれ全ては、吸収エッジ(absorption edge)が約5745~5755eVの範囲で形成された。一方、Ce3+によるX線吸収によって電子遷移が強く発生するピーク(P)は、約5735~5740eVの範囲で形成されたのであり、Ce4+によるX線吸収によって電子遷移が強く発生するピーク(P)は、約5745~5755eVの範囲で形成されることを確認できた。
【0136】
前記P及びPに対する光吸収係数を調べた結果、本発明に係る実施例の場合、それぞれ0.1~0.2及び0.5~0.6の程度の水準であるのに対し、比較例3の場合、それぞれ0.1未満及び0.6超の水準であることが分かる。
【0137】
前記分析結果に基づいて、実施例及び比較例3のサンプルについての、それぞれのCe3+及びCe4+のピーク面積及び面積比率は、下記表10の通りであることが確認できる。
【0138】
【表10】
【0139】
前記表10を参照すると、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の表面でのCe3+の面積比が、比較例3に係る酸化セリウム粒子表面でのCe3+の面積比よりも約4倍以上高いことを確認しうるのであり、これにより、本発明の実施例が比較例の従来の酸化セリウム粒子よりも高い研磨速度を有することができると予想することができる。
【0140】
実験例12.酸化セリウム粒子のUPS分析
本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子、比較例3及び4のサンプルを準備した。
【0141】
図35図37は、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子、および、60nm級の従来の酸化セリウム粒子、および、か焼法により製造された従来の酸化セリウム粒子のUPS分析結果である。
【0142】
表11は、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子と前記従来の酸化セリウム粒子との区分による仕事関数値をまとめたものである。
【0143】
一具現例において、本願の一実施例に係る酸化セリウム粒子は、秒当たりに放出される光電子数(Counts、Y軸)の最大値が運動エネルギー8~10eVの範囲に存在するのに対し、比較例3及び4の場合、運動エネルギー11~13eVの範囲に存在することを確認することができた。このような結果から、実施例の場合、3.16evの仕事関数を有し、比較例3及び4の場合、それぞれ2.37eV、2.37eVの仕事関数を有することを導出することができた。
【0144】
一具現例において、UPS分析は、測定された運動エネルギー(Ekin)値を通じて束縛エネルギー(E)を導出し、導出された束縛エネルギーグラフから、サンプルのフェルミ準位(E)及び真空準位(Ecutoff)を導出することができた。したがって、前記フェルミ準位(E)及び真空準位(Ecutoff)値を下記式1に適用して、仕事関数φ値を求めることができた。この際、hvは、紫外線を放出する際に使用するソースエネルギー(source energy)であって入射する光のエネルギーを示すが、ソースとしてはヘリウム(He)を使用した(He|UPS=21.22eV)。分析結果による仕事関数値は、以下の表11に示した。
【0145】
〔式1〕
φ=hv-|E-Ecutoff
【0146】
【表11】
【0147】
前記表11を参照したとき、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の仕事関数値が最も大きいことが分かった。粒径(粒子の大きさ)が小さくなるほど試料軌道間のエネルギー準位の差が次第に大きくなり、高い値のエネルギーバンドギャップを有するようになるが、このことから、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の粒径が従来の酸化セリウム粒子の粒径に比べて十分に小さいため、高いエネルギーバンドギャップを有するようになり、これがフェルミ準位及び真空準位に影響を及ぼし、仕事関数のエネルギー値に変化を与えるようになったことを予想することができた。したがって、UPS分析により導出した仕事関数値は、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の粒径が、従来の酸化セリウム粒子に比べて十分に小さく、凝集性が非常に小さいということを示す。このように凝集性が小さく、単分散される特徴を有するので、本願の一具現例に係る酸化セリウム粒子は、化学的機械的研磨用スラリーに含まれて使用されるとき、ウェハーと接触する粒子数を最大化することができ、酸化膜の研磨速度を高めることができるとともに、粒径自体が微細になっていてウェハー表面の欠陥を最小化することができる。
【0148】
実験例13.酸化セリウム粒子のBET表面積分析
BET表面積を測定するために、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子の粉末及び比較例1に係る酸化セリウム粒子の粉末の各1.0gを、1回ごとに200°Cで1時間残留圧力が所定の値以下になるまで脱気する前処理を行った後、BET(Tristar II plus、Micrometrics)を用いて77K条件で相対圧力の増加による窒素気体の吸着量を測定し、前記吸着量により算出したBET表面積値を、図38及び図39と下記表12に示した。
【0149】
【表12】
【0150】
前記表12を参照すると、一般的な前処理条件(200°C、1時間)を適用した場合、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子の粉末は、同じ条件で5回測定したとき、BET表面積値が50m/g以下であるのに対し、比較例1に係る酸化セリウム粒子の粉末は、同じ条件で5回測定したとき、BET表面積値が80m/gを超えることを確認することができる。このような比較例の数値は、通常の文献により知られている、10nm級の酸化セリウム粒子のBET表面積値と類似していることが分かる。
【0151】
前記結果から、粒径が小さいほどBET表面積値が大きくなる一般的な傾向とは異なり、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子の粉末は、より粗大な粒径を有する比較例1の酸化セリウム粒子の粉末よりも小さいBET表面積値を有することが確認でき、これは、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子が、従来の酸化セリウム粒子よりも微細な粒子サイズを有するので、粉末化された時、より高密度で充填できるということを意味することができ、また、ゾル-ゲル法、ボトム-アップ方式などの自己組織化合成法で合成された酸化セリウム粒子の場合、他の合成法で合成された酸化セリウム粒子よりも少ない-OH官能基を有するので、より小さい値のBET表面積及び気孔体積を有する現象と同じ脈絡でとらえられる。
【0152】
実験例14.酸化セリウム粒子の見かけ密度の分析
本願の一実施例に係る製造例1の分散液を約80~90°Cで乾燥して粉体形態の酸化セリウム粒子(サンプルA)及び同一条件で乾燥された比較例3、4に係る粉体形態の酸化セリウム粒子(それぞれサンプルB、C)を準備した。下記表13及び表14は、本発明の一実施例に係る前記準備されたサンプルA及び比較例3、4に対して、見かけ密度及びタップ密度を測定して示したものである。
【0153】
【表13】
【0154】
【表14】
【0155】
前記表13を参照すると、静置法により測定されたサンプルAの見かけ密度は2.22g/mlであるのに対し、比較例3の60nm級の酸化セリウム粒子の見かけ密度は1.90g/ml、比較例4の、か焼酸化セリウム粒子の見かけ密度は1.30g/mlと測定された。また、前記表14を参照すると、タップ法により測定されたサンプルAの見かけ密度は2.94g/mlであるのに対し、比較例3の60nm級の酸化セリウム粒子の見かけ密度は2.86g/ml、比較例4の、か焼酸化セリウム粒子の見かけ密度は1.60g/mlであるもので、2.90g/ml未満の値を有することを確認することができる。これにより、本願の一実施例に係る酸化セリウム粒子が、より微細な1次粒子の粒径を有するにもかかわらず、より粗大な粒径を有する比較例の酸化セリウム粒子よりも大きい見掛け密度値を有することを確認することができる。したがって、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子の場合、粒径が10nm以下で、従来の酸化セリウム粒子よりも微細な粒径を有しながらも、見かけ密度値は相対的に大きいという特性を有することが確認できる。
【0156】
実験例15.酸化セリウム粒子を含む分散液の発光強度(PL:Photoluminescence)測定分析
図40図42及び表15は、本願発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子、従来の60nm級の酸化セリウム粒子、及び、か焼法による10nm級の酸化セリウム粒子を、1質量%含む水分散液のそれぞれに対して発光強度を測定した結果を示したものである。発光強度測定は、以下の試験条件下で測定された。
【0157】
(1)試験機器:Perkin Elmer LS-55蛍光分光計(Fluorescence Spectrometer)
(2)励起波長(Excitation wavelength):325nm
(3)発光フィルター(Emission filter):350nm
(4)励起スリット幅(Excitation slit width):10.0nm
(5)発光スリット幅(Emission slit width):10.0nm
【0158】
【表15】
【0159】
図40図42及び表15を参照すると、励起波長(λexcitation)325nmで実施した蛍光分析計(Fluorescence spectrometer)を分析すると、3種の試料で共通して、約325nmの波長にて励起ピーク(λexc)、約450nmの波長にて第1発光ピーク(λems1)、約525nmの波長にて第2発光ピーク(λems2)を、示していることが分かる。
【0160】
本発明の酸化セリウム粒子の場合、第2発光ピークに対する第1発光ピークの比(λems1/λems2)が、約7.5で、5以上の値を示すことが分かった。これに対し、か焼法による従来の10nm級の酸化セリウム粒子および市販の60nm級の酸化セリウム粒子は、全て、励起ピークに対する第1発光ピークの比(λems1/λexc)が30超の値を示すことが確認でき、第2発光ピークに対する第1発光ピークの比(λems1/λems2)が5未満の値を示すことが確認できた。
【0161】
本発明の酸化セリウム粒子の場合、Ce3+を示す第1発光ピークの強度が、か焼法による従来の10nm級の酸化セリウム粒子および市販の60nm級の酸化セリウム粒子に比べて小さいことを見て取ることができるのであり、これは、本発明の酸化セリウム粒子の場合、分散液から2次粒子への凝集が非常に少ないので光透過が良好であり、このため、発光強度が比較的弱いと判断される。また、本発明の酸化セリウム粒子の場合、従来の60nm級粒子、または、か焼法による酸化セリウム粒子とは異なり、第2発光ピークに対する第1発光ピークの比(λems1/λems2)が5以上の値を示すのを見ると、本発明の酸化セリウム粒子が、表面に相対的に高いCe3+含有量を有することを示すと解釈できる。したがって、本実験例から、本発明の酸化セリウム粒子の場合、化学的機械的研磨用のスラリーに使用されたとき、粒子表面のCe3+含有量は高いながらも、粒子自体は微細で、スラリーでの凝集が非常に少ないという特性を有し、これにより、酸化セリウム粒子と酸化膜基板との間の、Si-O-Ce結合による化学的研磨率が高くなって酸化膜研磨率が向上することが分かる。
【0162】
実験例16.酸化セリウム粒子を含む分散液のL*a*b*表色系分析
図43及び図44は、本願発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子を1質量%含む水分散液、及び従来の60nm級の酸化セリウム粒子を1質量%含む水分散液である。
【0163】
表16及び表17は、本願発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子を1質量%含む分散液、及び従来の60nm級の酸化セリウム粒子を1質量%含む分散液についての色度を、L*a*b*表色系で示した値をまとめたものである。
【0164】
一具現例において、L*a*b*表色系の分析は、CM-5(KONICA MINOLTA、JAPAN)を用いてASTM E1164(Standard practice for obtaining spectrometric data for object color evaluation:物体色評価に関する分光データを得るための標準的な方法)により行われ、この際、光源にはXenon lamp D65を用い、波長範囲360~740nm、波長間隔10nmにて行った。前記分析結果を以下の表16及び表17に示した。
【0165】
【表16】
【0166】
【表17】
【0167】
図43及び図44を参照すると、目視でも本発明の酸化セリウム粒子を含む水分散液は、黄色系列の色を帯びることを見て取ることができるのであり、従来の60nm級の酸化セリウム粒子を含む水分散液の場合、不透明でありながらも、より白色に近いことが見られた。
【0168】
また、前記表16及び表17を参照すると、本願発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子を1質量%含む分散液の場合、L*の平均値が約99.7であり、a*の平均値が約-5.9であり、b*の平均値が約11.7であることを確認することができる。これに対し、従来の60nm級の酸化セリウム粒子を含む分散液の場合、L*の平均値が約94.7であり、a*の平均値が約-2.2であり、b*の平均値が約0.1であることを確認することができる。したがって、本願発明に係る酸化セリウム粒子分散液は、L*の値が95以上であり、b*の値は10~25であるという範囲を満足しており、従来の60nm級の酸化セリウム粒子分散液と比較すると、より大きいL*の値を有することから微細な粒子特性を有することが分かり、より大きいb*値を有するので、本発明の一具現例に係る酸化セリウム粒子分散液が、より高い黄色味を示すと解釈できる。本願の一具現例に係る酸化セリウム粒子が、これを含む水分散液に対してL*a*b*表色系で示す際の、それぞれの値が前記範囲にあり、特に黄色度が高いことを示すものは、酸化セリウム粒子が非常に微細で、単分散された特性を示すとともに、酸化セリウム粒子の表面のCe3+含有量が、相対的に非常に高いことを意味すると解釈できる。
【0169】
実験例17.遠心分離時の酸化セリウム粒子の沈降率
本願の一実施例に係る酸化セリウム粒子を1.0重量%含むスラリー組成物、および比較例1及び比較例3の酸化セリウム粒子を1.0重量%含むスラリー組成物のそれぞれをサンプルとして準備した。
【0170】
前記サンプルを用いて、高速遠心分離機または超高速遠心分離機(Supra R22(モデル名)、Hanil Science Industrial Co.Ltd製造、韓国)を活用して、スラリー組成物の温度25℃から進行する条件で、遠心力を2100G、3300G、4265G、26188G、398282Gに変えながら遠心分離を行い、この際の酸化セリウム粒子の沈降率を、下記の表18に示した。
【0171】
【表18】
【0172】
前記表18を参照すると、各酸化セリウム粒子を、1.0重量%含むスラリー組成物を遠心分離するとき、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の沈降率が、同じ条件下で比較例1及び比較例3に係る酸化セリウム粒子の沈降率よりも低い値を有することを確認することができる。例えば、4,265Gの遠心力で30分間遠心分離を行った場合、本発明の実施例は0重量%の沈降率を示すのに対し、比較例1は27.14重量%の沈降率を示し、比較例3はそれより小さい3,300Gの遠心力で10分間遠心分離を行ったとき、既に96.9重量%の沈降率を示すということが確認できる。したがって、これは、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子の1次粒子及び/又は2次粒子の粒径が、比較例1及び比較例3の酸化セリウム粒子の粒径よりも微細であるということを意味しうるのであり、また、単分散されていることを意味しうるのであって、したがって、単分散された粒子が、化学的機械的研磨工程でウェハーと接触するようになるので、接触粒子数が多くなって酸化膜研磨速度が改善されるということを知り得るのであり、さらに、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子を含むスラリー組成物を用いて研磨を行う場合に、研磨されるウェハー上でのスクラッチなどの研磨欠陥の発生率を低減することができるということを意味し得る。
【0173】
実験例18.酸化セリウム前駆体の残量分析
製造例2で製造された酸化セリウム粒子を含むCMPスラリーに対する前駆体残留量を測定するために評価を行った。前記製造例2のスラリーサンプルを、粉末を取得するまで高温で乾燥する過程を通じて粉末形態で製造した後、残留粉末を純粋な水で再び溶解させた。純粋な水で溶解させた溶液における前駆体含有量をICP-MSにより分析し、酸化セリウム粉末の重量比に換算した結果、塩基性物質、溶媒、アンモニアなどの物質がほとんど検出されておらず、300ppm以下であることを確認した。ほとんど検出されていないというのは、より具体的にPPM以下の単位より顕著に少ない量を含有するか、含有しない水準であることを意味する。したがって、酸化セリウム粒子が適切にスラリー内部に分布しており、湿式工程の特性上、発生し得るセリウム前駆体、塩基物質及びその他の不純物をほとんど含まないため、本願の一具現例に係る酸化セリウム粒子は、湿式工程により分散液の形態で生成された後、別途の分離または粉砕工程などによりスラリー溶媒に再分散される過程が、不要であると予想することができた。
【0174】
【表19】
【0175】
実験例19.酸化セリウム粒子の酸化膜研磨率の比較
本願の一実施例に係る製造例2のスラリー組成物、比較例1及び比較例3のスラリー組成物のそれぞれをサンプルとして準備した。
【0176】
前記サンプルを用いた酸化膜ウェハーの研磨は、研磨機(Reflexion(登録商標)LK CMP、Applied Materials)を用いて行った。具体的に、プラテン(Platen)上にPE-TEOSシリコン酸化膜ウェハー(300mm PE-TEOS Wafer)を載置し、このウェハーの表面と研磨機のパッド(IC1010、DOW)とを接触させた。次いで、サンプルのスラリー組成物を200mL/minの速度で供給し、前記プラテン(Platen)及び前記研磨機のパッドを回転させながら研磨工程を行った。この際、前記プラテンの回転速度及びヘッド(Head)の回転速度を67rpm/65rpmとし、研磨圧力を2psiとし、研磨時間を60秒とした。一方、前記ウェハーのシリコン酸化膜薄膜厚さは、ST5000(Spectra Thick 5000ST、K-MAC)を用いて測定した。その結果を下記表20に示した。
【0177】
【表20】
【0178】
前記表20に示すように実施例のスラリー組成物を用いる場合、比較例1及び比較例3のスラリー組成物に比べて、シリコン酸化膜除去速度が約6倍以上であることを確認することができた。これは、実施例のスラリー組成物に含まれた酸化セリウム粒子の場合、粒径が小さいので、含有量に比して研磨に有効に作用する粒子数が多く、表面のCe3+含有量(モル比および/または重量比)が高くて、酸化ケイ素膜表面との化学的反応性が増加するためであると推定される。
【0179】
実験例20.酸化セリウム粒子の欠陥評価
図45及び図46は、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子を含むCMPスラリー組成物と、60nmの酸化セリウム粒子を含むCMPスラリー組成物とを用いた、酸化物ウェハーのCMPの前後でスキャンしたイメージである。
【0180】
前記酸化物ウェハーの表面分析は、AIT-XP装置を用いたフルウェハースキャン(Full wafer scan)方式で実施した。
【0181】
図45及び図46を参照すると、前記本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子を含むCMPスラリー組成物を用いてCMPを行った酸化物ウェハーの表面を、CMP前後で分析した結果、CMP前の欠陥数は6であり、CMP後の欠陥数は1であると集計されることが分かり、このことから、前記酸化物ウェハー表面の欠陥が、本発明の実施例を用いてCMPを行った後に減少しており、さらにCMP工程中にスクラッチ(scratch)が発生しないことを確認することができる。これに対し、従来技術の酸化セリウム粒子を含むCMPスラリー組成物を用いてCMPを行った酸化物ウェハーの表面を、CMP前後で分析した結果、CMP前の欠陥数が34であるのに比べて、CMP後の欠陥数が64に増加したことが確認でき、このことから、従来技術の酸化セリウム粒子が前記ウェハーの表面にスクラッチを発生させたことを確認することができる。これは、本願発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子の粒径が、従来技術の酸化セリウム粒子の粒径よりも小さいため、研磨対象である酸化物ウェハーの表面に欠陥が生じる確率が著しく低くなることを示唆する。
【0182】
実験例21.陽イオン性高分子添加による酸化膜研磨速度の挙動および酸化膜/ポリシリコン膜の研磨選択比の分析
本願の一具現例により製造された酸化セリウム粒子および従来の市販の60nm級の酸化セリウム粒子を脱イオン水に添加し、pHを5.8に調節した後、陽イオン性高分子を下記表21に示すように添加して、実験例19と同様の研磨条件下で、酸化膜(Oxide)の研磨速度(Å/min)、およびポリシリコン膜の研磨速度(Å/min)を測定した。
【0183】
【表21】
【0184】
前記表21を参照すると、比較例2~8の市販60nm級の酸化セリウム粒子を使用したスラリーでは、陽イオン性高分子を0.01重量%添加した結果、シリコン酸化膜の研磨速度が著しく低下することを確認することができた。これに対し、本願発明の酸化セリウム粒子を含むスラリーでは、表21の実施例2~8の結果を見ると、陽イオン性高分子を含むことから酸化膜研磨速度が上昇することを確認することができた。これは、従来の酸化セリウム粒子を使用したCMPスラリーでは見られない特徴である。
【0185】
また、前記表21の実施例1と、陽イオン性高分子を含む実施例2~8とを対比すると、シリコン酸化膜の研磨速度は上昇するのに対し、ポリシリコン膜の研磨速度は、大幅に低下することを確認することができ、酸化膜/ポリシリコン膜の研磨選択比が約200~900の範囲で2000以下の範囲を満足することが確認できた。
【0186】
さらに、前記表21の実施例及び比較例のサンプルでの陽イオン性高分子の含有量を徐々に増加させ、酸化膜研磨速度(Å/min)の挙動を調べてみた。図47は、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子などを含むCMPスラリー組成物の、陽イオン性高分子添加による酸化膜研磨速度の挙動を測定した結果である。
【0187】
図47及び前記表21を参照すると、本発明のCMPスラリーの研磨速度は、陽イオン性高分子の含有量が増加するにつれて、研磨速度も共に増加するのに対し、従来のセリアスラリーの場合、0.001%以上に濃度を増加させ続ける場合、研磨速度が次第に低下することを観察することができた。これは、従来の湿式セリアスラリーの場合、陽イオン性高分子は、単にpHバッファーの役割を行い粒子の安定性のために添加するので、陽イオン性高分子の含有量を増加させると、研磨粒子が研磨工程を行うことを妨害する可能性があるが、これに対し、本発明のCMPスラリーの場合、陽イオン性高分子が粒子安定性だけでなく、研磨促進剤としての役割も一緒に果たしていることが分かった。
【0188】
[発明の実施のための形態]
【0189】
以下、本発明を更に詳しく説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されず、後述する特許請求の範囲により定義されるだけである。
【0190】
なお、本発明で用いた用語は、単に特定の実施例を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図がない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本願の明細書の全般に亘って、ある構成要素を「含む」としたとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含んでいてもよいということを意味する。
【0191】
本発明で使用する「単分散」とは、酸化セリウム粒子がスラリー中に分散されるとき、2次粒子への凝集が抑制されて比較的1次粒子の粒径を維持していることを意味するものであり、これは、動的光散乱(DLS)方式による2次粒子の粒径(D50)が、TEMによる1次粒子の粒径の、3.0倍以下、2.8倍以下、2.5倍以下、2.2倍以下、2.0倍以下、または有利には1.9倍以下の大きさを有することを意味し得る。また、粒度分布等を検討する際に、相対的に粗大な大きさの不可避な不純物等が含まれることを排除することはではない。
【0192】
本発明で使用する「透明」という用語の意味は、酸化セリウム粒子がスラリー中に分散される場合、目視で確認するとき、スラリー組成物が透明に観察されることを意味し、より具体的には、可視光線領域の光に対する平均光透過率が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の値を示すことを意味し、これはさらに、本発明の酸化セリウム粒子は、2次粒子への凝集が抑制されて、比較的、1次粒子の粒径を維持していることを意味する。
【0193】
研磨組成物は、その研磨速度(すなわち、除去速度)及びその平坦化効率に応じて特徴化され得る。研磨速度は、基板の表面から材料を除去する速度を指し、通常、単位時間当たりの長さ(厚さ)(例えば、オングストローム(Å)/分)の単位で表される。具体的には、研磨表面、例えば、研磨パッドは、まず、その表面の「高い地点」に接触し、平坦な表面を形成するために材料を除去しなければならない。より少ない材料の除去でもって平坦な表面を達成する工程は、平坦性を達成するためにより多くの材料を除去する必要がある工程よりも、より効率的であると考えられる。
【0194】
しばしば、シリコン酸化物パターンの除去速度は、STIプロセスにおける誘電体研磨ステップに対する速度を制限することができるのであり、したがって、シリコン酸化物パターンの高い除去速度が、デバイス処理量を増加させるのに好ましい。しかし、ブランケット除去速度が速すぎると、露出したトレンチで酸化物の過剰研磨によって、トレンチ腐食を招き、素子欠陥を増加させる。
【0195】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0196】
本発明の第1側面は、化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子であって、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において、波長500nmの光に対する光透過率が50%以上であることを特徴とする、化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子を提供する。
【0197】
以下、本願の一側面に係る化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子について詳しく説明する。
【0198】
図1は、本発明の一実施例に係る酸化膜除去メカニズムを示すものである。図1に示すように、酸化セリウム粒子の表面にCe3+イオンを活性化させないと、SiOと円滑に反応することができない。
【0199】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の粒径は、X線回折(XRD)分析により測定されてもよい(1次粒子)。本願の一具現例において、X線回折(XRD)分析で測定した前記酸化セリウム粒子の粒径は、11nm以下でありうる。他の具現例において、10.8nm以下、10.5nm以下、10.2nm以下、10nm以下、9.5nm以下、9.0nm以下、8.5nm以下、8.0nm以下、7.5nm以下、7.0nm以下、6.5nm以下、6.0nm以下、5.5nm以下、5.0nm以下、4.5nm以下、または4.0nm以下であってもよく、0.3nm以上、0.5nm以上、0.7nm以上、1.0nm以上、1.1nm以上、1.2nm以上、1.3nm以上、1.4nm以上、1.5nm以上、1.6nm以上、1.7nm以上、1.8nm以上、1.9nm以上、2.0nm以上、2.1nm以上、2.2nm以上、2.3nm以上、または2.4nm以上であってもよい。前記酸化セリウム粒子の粒径が0.3nm未満の場合、結晶性が低下し、対象膜に対する研磨速度が過度に阻害されて研磨効率が低下しうるのであり、逆に11nmを超える場合、スクラッチなどの表面欠陥が多量に生じる恐れがある。また、本願の一具現例において、前記X線回折(XRD)分析で測定した前記酸化セリウム粒子の平均粒径は、0.5~10nm、好ましくは1~10nm、より好ましくは2~9nmであることを特徴としうる。
【0200】
本願の他の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の粒径は、透過電子顕微鏡(TEM)により測定されてもよい(1次粒子)。本願の一具現例において、透過電子顕微鏡(TEM)で測定した前記酸化セリウム粒子の粒径は、11nm以下であってもよい。他の具現例において、10.8nm以下、10.5nm以下、10.2nm以下、10nm以下、9.5nm以下、9.0nm以下、8.5nm以下、8.0nm以下、7.5nm以下、7.0nm以下、6.5nm以下、6.0nm以下、5.5nm以下、5.0nm以下、4.5nm以下、または4.0nm以下であってもよく、0.3nm以上、0.5nm以上、0.7nm以上、1.0nm以上、1.1nm以上、1.2nm以上、1.3nm以上、1.4nm以上、1.5nm以上、1.6nm以上、1.7nm以上、1.8nm以上、1.9nm以上、2.0nm以上、2.1nm以上、2.2nm以上、2.3nm以上、または2.4nm以上であってもよい。前記酸化セリウム粒子の粒径が0.3nm未満の場合、結晶性が低下し、対象膜に対する研磨速度が過度に阻害されて研磨効率が低下しうるのであり、逆に11nmを超える場合、スクラッチなどの表面欠陥が多量に生じる恐れがある。また、本願の一具現例において、前記透過電子顕微鏡(TEM)で測定した前記酸化セリウム粒子の平均粒径は、0.5~10nm、好ましくは1~10nm、より好ましくは2~9nmであることを特徴としうる。
【0201】
本願の他の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の粒径は、小角X線散乱(SAXS)方式により測定されてもよい(1次粒子)。本願の一具現例において、小角X線散乱(SAXS)方式で測定した前記酸化セリウム粒子の粒径は、15nm以下であってもよい。他の具現例において、14nm以下、13nm以下、12nm以下、11nm以下、10nm以下、9.5nm以下、9.0nm以下、8.5nm以下、8.0nm以下、7.5nm以下、7.0nm以下、6.5nm以下、6.0nm以下、5.5nm以下、4.5nm以下、または4.0nm以下であってもよく、0.3nm以上、0.5nm以上、0.7nm以上、1.0nm以上、1.1nm以上、1.2nm以上、1.3nm以上、1.4nm以上、1.5nm以上、1.6nm以上、1.7nm以上、1.8nm以上、1.9nm以上、2.0nm以上、2.1nm以上、2.2nm以上、2.3nm以上、または2.4nm以上であってもよい。前記酸化セリウム粒子の粒径が0.3nm未満の場合、結晶性が低下し、対象膜に対する研磨速度が過度に阻害されて研磨効率が低下しうるのであり、逆に15nmを超える場合、スクラッチなどの表面欠陥が多量に生じる恐れがある。また、本願の一具現例において、前記小角X線散乱(SAXS)方式で測定した前記酸化セリウム粒子の平均粒径は、0.5~15nm、好ましくは1~12nm、より好ましくは1.5~10nmであることを特徴としてもよい。
【0202】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子のスラリー中での粒径は、動的光散乱(DLS)分析により測定されてもよい(2次粒子)。前記動的光散乱分析は、通常の技術者に周知の分析装備により行われてもよく、好ましくはAnton Parr社の粒度分析器又はMalvern Zetasizer Ultraを用いて行われてもよいが、これは、非限定的な例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
【0203】
本願の一具現例において、動的光散乱(DLS)粒度分析器で測定した前記酸化セリウム粒子の粒径は、1~30nmであってもよい。本願の他の一具現例において、29nm以下、27nm以下、25nm以下、23nm以下、22nm以下、20.8nm以下、20.5nm以下、20.2nm以下、20nm以下、19.8nm以下、19.5nm以下、19.2nm以下、18nm以下、17nm以下、または15nm以下であってもよく、1.2nm以上、1.4nm以上、1.5nm以上、1.8nm以上、2nm以上、3nm以上、または4nm以上であってもよい。前記2次粒子の粒径が前記範囲を超える場合、スラリー組成物で1次粒子の凝集が多く行われることを意味し、この場合、単分散されたスラリーであると判断されにくい。前記2次粒子の粒径が前記範囲未満の場合、対象膜に対する研磨速度が過度に阻害されて研磨効率が低下しうる。
【0204】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子は、動的光散乱(DLS)粒度分析器で測定した前記酸化セリウム粒子の粒径をaとし、透過電子顕微鏡(TEM)で測定した前記酸化セリウム粒子の粒径をbとするとき、下記の式2を満足することを特徴としうる。
【0205】
[式2]
a≦2.2b
【0206】
このような特性は、本発明の酸化セリウム粒子がスラリー中に分散される際に凝集性が低いことを示す指標になる。前記bの係数が2.2を超える場合、スラリー中で凝集が多く行われることを意味し、これは、粒径が粗大になるので、研磨時にウェハー表面の欠陥を抑制しにくくなることを意味し得る。
【0207】
本願の他の一具現例において、前記酸化セリウム粒子は、動的光散乱(DLS)粒度分析器で測定した前記酸化セリウム粒子の粒径をaとし、小角X線散乱(SAXS)方式で測定した前記酸化セリウム粒子の粒径をbとするとき、下記の式3を満足することを特徴とし得る。
【0208】
[式3]
a≦2.5b
【0209】
このような特性は、本発明の酸化セリウム粒子がスラリー中に分散される際に凝集性が低いことを示す指標になる。前記bの係数が2.5を超える場合、スラリー中で凝集が多く行われることを意味し、これは、粒径が粗大になるので、研磨時にウェハー表面の欠陥を抑制しにくくなることを意味し得る。
【0210】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の表面でのCe3+含有量は、XPSを使用して分析することができ、例えば、Thermo Fisher Scientific Co社製のtheta probe base systemを使用することができる。前記酸化セリウム研磨粒子の表面のCe3+含有量は、下記の化学式1で表され得る。
【0211】
[化学式1]
Ce3+含有量(%)=(Ce3+ピーク面積)/[(Ce3+ピーク面積)+(Ce4+ピーク面積)]
【0212】
一具現例において、前記酸化セリウム粒子表面にて、X線光電子分光(XPS)分析を行う際に、Ce3+を示すCe-O結合エネルギーを示すXPSピークが、900.2~902.2eV、896.4~898.4eV、885.3~887.3eV及び880.1~882.1eVで現われることを特徴とするものでありうる。具体的に、前記酸化セリウム粒子の表面で、X線光電子分光(XPS)分析時に、Ce3+を示すCe-O結合エネルギーを示すXPSピークが、900.2~902.2eVの第1ピーク、896.4~898.4eVの第2ピーク、885.3~887.3eVの第3ピーク及び880.1~882.1eVの第4ピークにて現れることを特徴とするのでありうる。
【0213】
本願の一具現例において、全体のXPSピーク面積に対する、前記第1ピークの面積は、3%以上、または4%以上であってもよく、前記第2ピークおよび第4ピークの面積は、それぞれ5%以上、7%以上、または10%以上であってもよく、前記第3ピークの面積は、4%以上、5%以上、または6%以上であってもよい。
【0214】
また、本願の一具現例において、X線光電子分光(XPS)分析の際、前記酸化セリウム粒子表面のCe-O結合エネルギーを示すXPSピーク面積の総和に対する、Ce3+を示すCe-O結合エネルギーを示すXPSピーク面積の和の比は、0.29~0.70であることを特徴とするのでありうる。本発明の他の一具現例において、前記酸化セリウム粒子表面のCe-O結合エネルギーを示すXPSピーク面積の総和に対する、Ce3+を示すCe-O結合エネルギーを示すXPSピーク面積の和の比は、0.18以上、0.19以上、0.192以上、0.195以上、0.198以上、0.20以上、0.202以上、0.205以上、0.208以上、0.21以上、0.22以上、0.24以上、0.25以上、0.27以上、0.28以上、0.30以上、0.32以上、または0.35以上であってもよく、0.90以下、0.88以下、0.85以下、0.83以下、0.80以下、0.77以下、0.75以下、0.72以下、0.71以下、0.705以下、0.70以下、0.695以下、0.69以下、0.68以下、0.67以下、0.66以下、0.65以下、0.64以下、0.63以下、0.62以下、0.61以下、または0.60以下でありうる。前記範囲未満の場合、前記酸化セリウム粒子の表面に十分な量のCe3+が存在できなくなり、十分な酸化膜の研磨速度の上昇を期待するのが難しくなるであろうし、前記範囲を超える場合、酸化数を考慮すると、酸化セリウム粒子として存在すると解釈するのが難しくなりうる。
【0215】
すなわち、本願の一具現例において、X線光電子分光(XPS)分析時に、前記化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子の表面に、Ce3+を18原子%以上、19原子%以上、20原子%以上、22原子%以上、24原子%以上、25原子%以上、27原子%以上、28原子%以上、30原子%以上、32原子%以上、または35原子%以上含んでいてもよく、90原子%以下、88原子%以下、85原子%以下、83原子%以下、80原子%以下、77原子%以下、75原子%以下、72原子%以下、または70原子%以下含んでいてもよい。
【0216】
本願の一具現例に係る酸化セリウム粒子の場合、粒子表面のCe3+含有量が高いという特徴を示すが、これは、湿式工程により液相中で粒子合成過程が酸性条件で行われることに起因するものと推定され、このように粒子表面のCe3+含有量が相対的に高い場合、酸化膜研磨率が向上しうる。
【0217】
本願の一具現例において、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子は、これを従来技術の研磨粒子と区分する、粒子表面のCe3+成分が多量に含まれていることを暗示するラマンスペクトル特徴を示す。具体的に、前記酸化セリウム粒子は、2つ以上のラマンピークスペクトルを有することを特徴としてもよい。
【0218】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子は、455cm-1~460cm-1のバンド範囲で第1ラマンピークを有していてもよい。また他の一具現例において、前記酸化セリウム粒子は、586cm-1~627cm-1のバンド範囲で第2ラマンピークを有していてもよい。さらに他の一具現例で、前記酸化セリウム粒子は、712cm-1~772cm-1のバンド範囲で第3ラマンピークを有していてもよい。ここで、前記バンド範囲は、ラマンスペクトルのX軸であるラマンシフト(Raman shift)の数値範囲を意味し得る。
【0219】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子は、前記第2ラマンピーク強度(B)に対する前記第1ラマンピーク強度(A)の比(A/B)が35以下であることを特徴としてもよい。前記A/Bは、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下であってもよい。前記A/Bの下限は、特に制限されるものではないが、5以上、10以上または15以上であってもよい。前記第2ラマンピークは、Ce3+含有量が増加するにつれて酸素空孔(oxygen vacancy)の比率が増加することで生じるラマンシフト(Raman shift)と解釈でき、したがって、前記強度比(A/B)が小さいほど、酸化セリウム粒子のCe3+含有量が増加することを意味し得うるのであって、これは、酸化膜ウェハーとのSi-O-Ce結合を用いた化学的研磨作用を促進して、従来の酸化セリウム粒子よりも微細な粒径にもかかわらず、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子を利用したとき、研磨速度が向上しうることを示唆しうる。
【0220】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子は、第3ラマンピーク強度(C)に対する前記第1ラマンピーク強度(A)の比(A/C)が50以下であることを特徴としてもよい。前記A/Cは、好ましくは45以下、より好ましくは43以下であってもよい。前記A/Cの下限は、特に制限されるものではないが、5以上、10以上または15以上であってもよい。
【0221】
本願の一具現例に係る酸化セリウム粒子は、上記のように従来の酸化セリウム粒子よりもCe3+を高含有量で含んでいるので、小粒径にもかかわらず、酸化セリウム粒子の含有量に比べて優れた研磨速度を有するスラリー組成物の提供が可能であり、また、研磨傷の発生を抑制することができる。
【0222】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の表面におけるCe3+含有量と関連して、電子エネルギー損失分光(EELS)スペクトルを用いて分析することができ、例えば、2以上の、Ce4+を示す酸化状態を示すEELSピークを有することを特徴としうる。
【0223】
酸化セリウム粒子(及び/またはこれを含むスラリー組成物)は、図23図25のようなEELSスペクトルを示すことができる。
【0224】
本願の一実施例に係る前記酸化セリウム粒子のEELSスペクトルは、876.5~886.5eVの第1ピーク及び894.5~904.5eVの第2ピークを含み、前記第1ピークの最大強度が第2ピークの最大強度よりも大きいことを特徴としてもよい。このような様相は、酸化セリウム粒子のCe3+含有量が多くなるほど、3価の酸化セリウムと類似したEELSスペクトルを示すことを意味し得る。
【0225】
本願の一具現例において、前記スペクトルは、886.5~889.5eVの第3ピークおよび904.5~908.5eVの第4ピークをさらに含むことを特徴としうる。前記第3及び第4ピークの場合、酸化状態によるピーク区分が可能であり、Ce4+の酸化状態によって現れる当該ピーク区間の面積を求めることにより、本発明の酸化セリウム粒子と、従来の酸化セリウム粒子とを区分することができる。
【0226】
また、本願の一具現例において、前記スペクトルのピークの全面積の和(P)に対する、前記第3ピーク区間の面積の和(P)の比率(P/P)が、0.025以下であってもよく、より好ましくは0.024以下、0.022以下、0.018以下、0.015以下、0.012以下、0.011以下または0.01以下であってもよい。これに対し、従来の酸化セリウム粒子の場合、最小0.03以上の値を示し、このような特徴は下記実験例により示されるであろう。
【0227】
本願の一具現例において、前記スペクトルのピークの全面積の和(P)に対する前記第3ピーク区間の面積の和(P)及び前記第4ピーク区間の面積の和(P)の比率((P+P)/P)が0.1以下であってもよい。また、前記面積比率は、好ましくは0.099以下、0.098以下、0.096以下、0.095以下、0.094以下、0.092以下、または0.090以下であってもよい。本願の一実施例に係る酸化セリウム粒子の前記比率は、例えば、同一サンプルに対してn回測定した場合、前記n回測定した値の平均比率を意味し得る。前記面積の比率((P+P)/P)は、他の例示で、0.01以上、0.012以上、0.014以上、0.016以上、または0.018以上であってもよい。前記面積の比率が0.1以下であるとき、前記酸化セリウム粒子の表面における全体の酸化セリウム含有量に対してCe3+含有量が高いことを意味し得るのであって、より高いCe3+含有量は、シリコン酸化膜に対して、Si-O-Ce結合による化学的研磨作用を促進して研磨率を高めることができる。
【0228】
本願の一具現例に係る酸化セリウム粒子は、これを従来技術の研磨粒子と区分させる、粒子表面のCe3+成分が多量に含有されているということを暗示するXAFS(X-ray absorption fine structure)スペクトル特徴を示す。具体的には、前記酸化セリウム粒子は、XAFSスペクトルに2つ以上のピークを有することを特徴としてもよい。
【0229】
本願の一具現例において、酸化セリウム粒子(および/またはこれを含むスラリー組成物)は、図9および図10のようなXAFSスペクトルを示すことができる。
【0230】
一具現例で、前記酸化セリウム粒子は、XAFSスペクトル測定時、5730eV以上5740eV未満の範囲で第1ピークの最大光吸収係数を有していてよく、前記第1ピークは、Ce3+の酸化状態を示すものであってもよい。
【0231】
さらに他の一具現例で、前記酸化セリウム粒子は、XAFSスペクトル測定時、5740eV以上5760eV未満の範囲で第2ピークの最大光吸収係数を有していてよく、前記第2ピークは、Ce4+の酸化状態を示すものであってもよい。
【0232】
本願の一具現例において、前記第1ピークの最大光吸収係数(ピークの最大値)は0.1~0.4であってもよい。本願の他の一具現例において、前記第1ピークの最大光吸収係数は、0.11以上、0.12以上、0.13以上、0.14以上、0.15以上、0.2以上、または0.25以上であってもよく、0.38以下、0.35以下、0.32以下、または0.30以下であってもよい。
【0233】
本願の一具現例において、前記第2ピークの最大光吸収係数(ピークの最大値)は、0.6未満であってもよい。本願の他の一具現例において、前記第2ピークの最大光吸収係数は0.11以上、0.12以上、0.13以上、0.14以上、0.15以上、0.2以上、または0.25以上であってもよく、0.58以下、0.55以下、0.52以下、または0.50以下であってもよい。
【0234】
前記第1ピークの光吸収係数が0.1未満である場合及び前記第2ピークの光吸収係数が0.6を超過する場合、前記酸化セリウム表面の全重量に対してCe3+重量が減少することを意味し、これは、さらに研磨速度が阻害され得ることを意味し得る。
【0235】
本願の一具現例において、前記XAFSスペクトルに示された第2ピークの面積(A)に対する第1ピークの面積(A)の比(A/A)は、0.03以上であってもよい。前記ピークの面積比(A/A)は、0.03以上、0.05以上、0.07以上、0.09以上、または0.1以上であり、より好ましくは0.11以上、さらに好ましくは0.12以上であってもよい。すなわち、XAFS(X-ray absorption fine structure)スペクトルによるCe3+を示すピークの面積A及びCe4+を示すピークの面積Aの和に対して、Ce3+を示すピークの面積Aの比(A/(A ))は0.1以上(10%以上)であってもよい。前記重量比が0.03未満の場合、酸化セリウム粒子表面のCe4+含有量と比べてCe3+含有量が十分でなくて、研磨速度が低下する恐れがある。
【0236】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子に対して光電子分光分析を行うことができ、具体的にUV領域の光を使用するUV光電子分光(UPS:ultraviolet photoelectron spectroscopy)分析を行うことができる。光電子分光技術は、伝統的にX線領域の単一波長光を使用するX線光電子分光(XPS:X-ray photoelectron spectroscopy)とUV領域の光を使用するUV光電子分光(UPS:ultraviolet photoelectron spectroscopy)とに分けられる。XPSは、1000~1500eVの程度のエネルギーを有するX線を用いて主に試料内部原子のコアレベル(core level)から放出される電子を分析して、試料にある元素の種類、化学状態、濃度などを調べる技術であって、多くの商用装備が販売されており、分析方法や使い方などが広く知られているのに対し、UPSは、10~20eVの程度の極紫外線(extreme UV)領域の光を用いて試料の価電子(valence electron)領域の電子を放出するようにして、化学結合に直接参加する電子が固体内で有することができる多様な状態を調べる技術である。特に、いわゆる角度分解UPS(angle-resolved UPS、ARUPS/ARPES)は、単結晶試料のバンド構造を直接測定できるため、このような測定が物質の特異な性質を理解するのに重要な要因となる、高温超伝導体や巨大磁気抵抗物質などで、物理的性質を把握するのに使用できる。固体試料にhvのエネルギーを持つ光を当てると、エネルギーと運動量保存法則を満たしながら電子が運動エネルギーを得ることになる。このときに試料を離れて飛び出す電子の運動エネルギーの値は、次のように与えられる。
【0237】
kin=hv-φ-|E
【0238】
ここで、Ekinは飛び出す電子の運動エネルギー、φは試料の仕事関数(work function)、Eは飛び出す電子が試料に束縛されているときの束縛エネルギー(binding energy)である。外部から、電子エネルギー分析器を利用して、飛び出る電子の運動エネルギーによる強度を測定すれば、試料内部にある電子の束縛エネルギーによる状態密度(density of state)を把握できる。したがって、前記方程式を参照すると、測定される運動エネルギーにより、束縛エネルギーを導き出すことができるが、このとき、試料の仕事関数φは、ソースエネルギーのhv値とフェルミ準位(E)及び真空準位(Ecutoff)を用いて表すことができる。
【0239】
φ=hv-|E-Ecutoff
【0240】
UPS結果値をグラフ上に図示したとき、x軸の零(zero)は試料のフェルミ準位(E)を示し、Ecutoffは真空準位(vacuum level)により表される数値である。hvは、紫外線を放出させる時に使用するソースエネルギー(source energy)であって入射する光のエネルギーを示すが、普遍的に、ソースとしてはヘリウム(He)が使用されうる。
【0241】
本願の一具現例において、前記酸化セリウムのバンド構造は、粒径(粒子の大きさ)によって差を示し得るが、粒径(粒子の大きさ)が小さくなるほど、試料軌道間のエネルギー準位の差が次第に大きくなり、高い値のエネルギーバンドギャップを有し得る。これに対し、粒径が大きくなるほどエネルギー準位の差が次第に小さくなり、低い値のエネルギーバンドギャップを有する。したがって、前述したように、粒径が小さいほど価電子帯と伝導帯との間のエネルギーギャップが増加し、フェルミ準位(E)及び真空準位(vacuum level)の値を変化させて、導出される仕事関数のエネルギー(eV)を高めることができる。
【0242】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子は、UPS分析時、1秒当たりに放出される光電子数(Counts)の最大値が、運動エネルギー10eV以下の範囲に存在することを特徴としてもよい。このような特性は、従来のセリア粒子とは対比される特性である。前記1秒当たりに放出される光電子数(Counts)の最大値は、運動エネルギー6~10eV、または7~10eVに存在し得るのであって、好ましくは8~10eVの範囲に存在し得る。
【0243】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子についての、UPSによって測定された仕事関数(work function)値は、2.5eV以上の範囲であってもよい。前記仕事関数値は、好ましくは2.7eV以上の範囲であり、より好ましくは3.0eV以上の範囲であってもよい。前記仕事関数値の上限は、特に制限されるものではなく、10eV未満、9eV以下または8eV以下であってもよい。仕事関数値が上述した範囲を満たすということは、従来の酸化セリウム粒子とは対比される特徴であって、スラリーに分散されている酸化セリウム粒子の粒径が小さいことを意味し、これは凝集性が非常に小さいことを示すものである。このように凝集性が小さく、単分散される特徴を有するので、本願の一具現例に係る酸化セリウム粒子は、化学的機械的研磨用スラリーに含まれて使用されるとき、ウェハーと接触する粒子数を最大化することができ、酸化膜研磨速度を高めることができると同時に、粒径自体は微細になるので、ウェハー表面の欠陥は最小化することができると予想される。
【0244】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子からなる粉末1gに対して比表面積を測定したとき、BET表面積値が50m/g以下であってもよい。他の一具現例において、前記BET表面積値は、49m/g以下、48m/g以下、47m/g以下、46m/g以下、45m/g以下、44m/g以下、43m/g以下、好ましくは42m/g以下であってもよい。これは、粒径が小さくなるほど大きいBET表面積値を有する従来の酸化セリウム粒子とは異なる傾向を示すのであるが、このことは、ゾル-ゲル法、ボトム-アップ方式などの自己組織化合成法で合成された酸化セリウム粒子が、他の合成法で製造された酸化セリウム粒子よりも小さい比表面積及び気孔体積を有しており、特に、酸化セリウム粒子の表面に存在する-OH官能基の比率が低いためであると類推できる。また、従来の酸化セリウム粒子よりも微細な粒径を有するとともに、粒子を粉末1.0gの同じ条件下でBETによって分析したとき、比較例1に係る従来の酸化セリウム粒子よりも粉末試料が高い密度で整列しており、BET表面積値が小さく測定される結果を予測できる。したがって、本発明の実施例に係る酸化セリウム粒子は、比較例1に係る従来の10nm級の酸化セリウム粒子よりも微細な粒径を有するにもかかわらず、比較例1に係る酸化セリウム粒子よりも小さいBET表面積値を有することを確認することができ、前記結果は、本発明の実施例による酸化セリウム粒子を従来の酸化セリウム粒子と比較したとき、より微細な粒径を有すると同時に、粒子表面にて、Ce4+及び-OH官能基の含有量に比べてCe3+含有量が高いという表面化学的特性を示す傾向と同じ脈絡でとらえられる。
【0245】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の、静置法により測定した見かけ密度が2.00~5.00g/mlであることを特徴としてもよいし、好ましくは2.00~4.00g/ml、より好ましくは2.00~3.00g/mlであることを特徴としてもよい。
【0246】
本願の他の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の、タブ法により測定した見かけ密度が2.90~5.00g/mlであることを特徴としうるのであり、好ましくは3.00~5.00g/ml、より好ましくは3.20~5.00g/mlであることを特徴としうる。
【0247】
前記見かけ密度が5.00g/mlを超える酸化セリウム粒子を水中に分散させたスラリーを研磨に用いると、粗大な1次及び2次粒子の粒径により被研磨表面に傷を発生する可能性がある。また、本願の一具現例において、2.00g/ml未満の酸化セリウム粒子を用いると、1次粒子の粒径の減少と共に研磨速度が極端に小さくなることから十分な研磨効果を得ることができない場合があるため、10nm以下の小粒径であっても2.00g/ml以上の見かけ密度を維持することが好ましい。したがって、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子は、微細な粒径にもかかわらず、従来の酸化セリウム粒子に比べて相対的に高い見かけ密度を有していて、違いがあることが分かる。このような特性が、酸化膜の研磨速度にも一定部分の影響を及ぼしうると期待しうる。
【0248】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液を基準に、325nmの波長で発光強度(PL:Photoluminescence)を測定するとき、435~465nmの波長の第1ピーク(λ)の最大強度が0.1~30、0.2~20、0.3~10、または0.5~7の範囲で示されることを特徴としうる。従来市販の粗大な酸化セリウム粒子の場合、最大ピーク強度が同じ条件で30を超過するが、スラリー中の凝集性も強く、したがって、透過よりは発光が強く起こることを意味し得る。
【0249】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液を基準に、510~540nm波長の第2ピーク(λ)の最大強度が0.1~10、0.1~7.5、0.1~5、または0.1~3の範囲で示されることを特徴としうる。従来の市販の粗大な酸化セリウム粒子の場合、最大ピーク強度が、同じ条件で10を超過するが、スラリー中の凝集性も強く、したがって、透過よりは発光が強く起こることを意味し得る。
【0250】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液に対して、325nmの波長で発光強度(PL:Photoluminescence)を測定して粒子の特性を把握できる。具体的に、本願の一具現例において、励起波長325nmで実施した蛍光分光(Fluorescence spectrometer)を分析する際、310~335nm波長にて励起ピーク(λexc)が現れ、435~465nm波長にて第1ピーク(λ)が現れ、510~540nm波長にて第2ピーク(λ)が現れるのでありうる。前記励起ピークは、励起波長についてのピークを示すものであり、前記第1ピークはCe3+を示すものであり、前記第2ピークはCe4+を示すものと解釈されうるであろう。
【0251】
本発明の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液に対して、325nmの波長で発光強度(PL:Photoluminescence)を測定するとき、310~335nmの波長の励起ピーク(λexc)に対する、435~465nmの波長の第1ピーク(λ)の強度比(λ/λexc)が、30未満、好ましくは27以下、25以下であり、より好ましくは23以下であり、さらに好ましくは18以下、15以下であり、さらにより好ましくは10以下であってもよい。
【0252】
本願の一具現例において、510~540nm波長の第2ピーク(λ)に対する、前記第1ピーク(λ)の強度比(λ/λ)は、4以上、好ましくは5以上、より好ましくは5.5以上、さらに好ましくは6以上であってもよく、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下、さらにより好ましくは10以下であってもよい。
【0253】
本願の一具現例に係る酸化セリウム粒子は、前記励起ピーク(λexc)に対する第1ピーク(λ)の強度比(λ/λexc)及び第2ピーク(λ)に対する、前記第1ピーク(λ)の強度比(λ/λ)を前記範囲で満足している場合、前記酸化セリウム粒子の表面には高含有量のCe3+を含みながらも、分散液中での2次粒子への凝集は非常に少なく、良好な光透過が得られるという特性とともに、粒子表面のCe3+含有量が比較的高いという特性を表していることが分かる。本発明の酸化セリウム粒子の場合、化学的機械的研磨用スラリーに使用した場合、粒子表面のCe3+含有量は高いが、粒子自体は微細であり、スラリー中での凝集が非常に少ないので、その結果、酸化セリウム粒子と酸化膜基板との間のSi-O-Ce結合による化学的研磨率が高くなり、酸化膜研磨率が向上することが分かる。
【0254】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子を含有する分散液の黄色度は、L*a*b*表色系によって評価することができ、ここで、L*a*bは、1976年にCIE(Commission Internationable de Eclairage:国際照明委員会)が決定したCIE1976 L*a*b*の色空間により定義される。この色空間は、直角座標系において、次の式によって決定される量L*、a*、b*を有する色空間である。
【0255】
L*=116(Y/Y1/3-16
a*=500[(X/X1/3-(Y/Y1/3
b*=200[(Y/Y1/3-(Z/Z1/3
(ただし、X/X、Y/Y、Z/Z>0.008856、X、Y、Zは物体色の三刺激値、X、Y、Zは物体色を照明する光源の三刺激値であり、Y=100に標準化されている。
【0256】
L*は明るさを示し、「明度指数」とも呼ばれる。また、a*とb*は色相と彩度を示しており、「クロマチックネス(Chromaticness)指数」とも呼ばれる。L*a*b*表色系では、L*値が大きいほど白に近く、小さいほど黒に近い色になる。そして、a*値が+側に大きくなるほど赤色系の色が強くなり、小さくなる(-側に大きくなる)などほど緑色系の色が強くなる。また、b*値が、+側に向かって大きくなるほど黄色系の色が強くなるのであり、小さくなる(-側に向かって大きくなる)ほど青色系の色が強くなる。さらに、a*値、b*値が共に0の場合は無彩色であることを意味する。
【0257】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液の色をL*a*b*表色系で表したとき、L*値は80以上、好ましくは85以上、より好ましくは90以上、さらに好ましくは95以上、さらにより好ましくは98以上であってもよい。L*値が前記範囲より小さい場合は、酸化セリウム研磨粒子の粒子成長が進みすぎており、研磨時にウェハーに欠陥を生じさせる原因である粗大粒子が多いことを意味し得る。また、前記L*値は、100以下、より好ましくは99.9以下であることを特徴としてもよい。
【0258】
本願の一具現例において、前記b*値は、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上であってもよく、30未満、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、さらにより好ましくは15以下の範囲にあることを特徴としてもよい。b*値が前記範囲よりも小さいと、研磨時に必要な化学反応が得られず、研磨表面の微細な凹凸が平滑に研磨されないおそれがある。
【0259】
本願の一具現例において、前記a*値は-3未満、好ましくは-4以下、より好ましくは-5以下であってもよく、-8以上、より好ましくは-7以上の範囲にあることを特徴としてもよい。
【0260】
したがって、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液の色をL*a*b*表色系で表したとき、それぞれの値が前記範囲内にあれば、分散液は、黄色の透明な状態で観察されうるのであり、前記分散液の黄色味が濃いほど研磨速度が向上されうるだろうと推定される。特に、本願の一具現例に係る酸化セリウム粒子は、微細な粒径(粒子大きさ)にもかかわらず、化学的機械的研磨用スラリーに含まれる場合、酸化セリウム表面におけるCe3+の比率が高いため、酸化膜の研磨速度が著しく高く、微細な粒子により、ウェハー表面の欠陥を最小限に抑えることができるものであり、前記L*a*b*表色系で表した場合、それぞれの値が前記範囲内にある、または特に黄色度が高いことは、従来の酸化セリウム粒子と比較して、酸化セリウム粒子の表面のCe3+の比率が、相対的に非常に高い状態であることを意味すると捉えることができる。
【0261】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液を、遠心力4265G(6,000rpm)の条件で30分間遠心分離したときの酸化セリウム粒子の沈降率は、25重量%以下であってもよい。他の一具現例では、前記沈降率は、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、より好ましくは5重量%以下であってもよい。
【0262】
また、本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液を遠心力2100G(3,200rpm)の条件で10分間遠心分離したときの酸化セリウム粒子の沈降率は、0.6重量%以下であってもよい。他の一具現例では、前記沈降率は、0.55重量%以下、0.5重量%以下、0.45重量%以下、より好ましくは0.4重量%以下であってもよい。
【0263】
また、本願の他の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液を、遠心力3300G(4,000rpm)の条件で30分間遠心分離したときの酸化セリウム粒子の沈降率が5.0重量%以下であってもよい。他の一具現例では、前記沈降率は、4.8重量%以下、4.5重量%以下、4.2重量%以下、より好ましくは4.0重量%以下であってもよい。
【0264】
また、本願の他の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液を、遠心力26188G(12,000rpm)の条件で30分間遠心分離したときの酸化セリウム粒子の沈降率は、45.0重量%以下であってもよい。他の一具現例では、前記沈降率は、42重量%以下、40重量%以下、38重量%以下、より好ましくは35重量%以下であってもよい。
【0265】
さらに、本願の他の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液を、遠心力39282G(18,000rpm)の条件で30分間遠心分離したときの酸化セリウム粒子の沈降率は、90.0重量%以下であってもよい。他の一具現例では、前記沈降率は、80重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、より好ましくは60重量%以下であってもよい。
【0266】
本願の一具現例において、前記水分散液の液粘度は、0.3~2.0mPa・s、0.5~1.8mPa・s、0.55~1.5mPa・s、または0.6~1.2mPa・sであってもよく、好ましい一実施例では、0.65~1.2mPa・sの条件で遠心分離を行うことができる。
【0267】
このように前記弱い遠心力の条件から苛酷な遠心力の条件までそれぞれ遠心分離したとき、酸化セリウム粒子の沈降率がそれぞれ上記範囲以下である場合、本発明の一実施例に係る酸化セリウム粒子は、従来の酸化セリウム粒子よりも微細な粒径を有し、単分散されていることを意味し得、したがって、化学的機械的研磨工程では単分散粒子がウェハーに接触するため、接触粒子数が増えることで酸化膜研磨速度の向上が期待でき、また、微細な粒径を有する本発明の実施例により研磨を行うと、研磨不良の発生率を低減できることがわかる。
【0268】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム1次粒子は、球形、等軸晶系(cube)形状、正方晶系(tetragonal)形状、斜方晶系(orthorhombic)形状、 菱面体晶系(Rhombohedral)形状、単斜晶系(Monoclinic)形状、六方晶系(hexagonal)形状、三斜晶系(triclinic)形状、および立方八面体(cuboctahedron)形状からなる群より選択される1種以上であってもよいが、好ましくは球形粒子であってもよい。
【0269】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子は、化学合成によって粒子を成長させる方法で製造され得るのであり、好ましくはボトムアップ(bottom up)方式であってもよい。前記酸化セリウム粒子の合成方法としては、ゾル-ゲル(sol-gel)法、超臨界反応、水熱反応または共沈法などの方法を用いることができるが、これらに限定されない。前記ボトムアップ方式とは、近年脚光を浴びている化学合成の一種で、原子や分子の出発物質を化学反応によりナノメートルサイズの粒子に成長させる方法である。
【0270】
本願の一具現例において、前記研磨組成物は湿式酸化セリウム粒子を含む。湿式酸化セリウム粒子は、任意の適切な湿式酸化セリウム粒子であり得る。例えば、湿式酸化セリウム粒子は、コロイド状酸化セリウム粒子を含む、沈殿酸化セリウム粒子または縮重合酸化セリウム粒子であってもよい。
【0271】
本願の一具現例において、湿式酸化セリウム粒子はまた、好ましくは粒子の表面上に欠陥を有する。任意の特定の理論に結び付けようとするのではないが、酸化セリウム粒子の粉砕は、酸化セリウム粒子の表面上に欠陥をもたらしうるのであり、このような欠陥はまた、化学的機械的研磨組成物中の酸化セリウム粒子の性能にも影響を及ぼす。特に、酸化セリウム粒子は、粉砕時に破砕される可能性があり、それほど有利でない表面状態が露出しうる。この過程は、リラクゼーション(relaxation:弛緩)と知られており、酸化セリウム粒子の表面周囲にある、制限された再構成能力及び制限されたより有利な状態への復帰能力を有する原子が、粒子表面に欠陥が形成されるようにする。
【0272】
本願の一具現例において、研磨材の二次粒子の生成において、各溶媒は固有の誘電定数値を有し、溶媒の誘電定数は、粉末合成中の核生成及び結晶成長における表面エネルギーや表面電荷などを変化させることで核の凝集及び成長に影響を与え、これは粉末の大きさ及び形状などに影響を与えるようになる。溶媒の誘電定数と溶媒中に分散した粒子の表面電位(ゼータ電位:zeta potential)は互いに比例関係にあり、ゼータ電位が低ければ、微細粒子同士の間あるいは反応によって生じる核同士の間の表面反発力が小さいので、不安定な状態であって、微細粒子間あるいは核間の凝集が非常に速い速度で発生しうる。この際、表面反発力の大きさは微細粒子間または核間で同程度であるため、均一な大きさの凝集が可能である。このように凝集した2次粒子は、温度や濃度などの反応条件によって、1次微細粒子や核の強凝集作用やオズワルド熟成(Oswald ripening)などの粒子併合過程を経て、比較的大きな粒子に成長することとなる。
【0273】
本発明の第2側面は、酸化セリウム粒子;および溶媒;を含み、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において、波長500nmの光に対する光透過率が50%以上であることを特徴とする、化学的機械的研磨用スラリー組成物を提供する。
【0274】
本願の第1側面と重複する部分については詳細な説明を省略するが、本願の第1側面について説明した内容は、第2側面でその説明を省略しても同様に適用され得る。
【0275】
以下、本願の第2側面に係る化学的機械的研磨用スラリー組成物について詳しく説明する。
【0276】
本願の一具現例に係る化学的機械的研磨用スラリー組成物は、酸化セリウム粒子および溶媒を含む。
【0277】
本願の一具現例において、スラリー中に研磨粒子として含まれる前記酸化セリウム粒子は、正のゼータ電位値、好ましくはpH2~8の範囲で1~80mV、5~60mV、10~50mVのゼータ電位値を有し得る。前記酸化セリウム粒子のゼータ電位値が正の値を有し、シリコン酸化膜表面の極性が負の値を示す場合、酸化セリウム粒子とシリコン酸化膜の表面との間の引力によって研磨効率を高めることができる。
【0278】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子は、シリカ粒子やアルミナ粒子よりも低い硬度を有するが、シリカとセリウムとの間でSi-O-Ce結合が形成される化学的研磨メカニズムにより、ガラスや半導体基板などのケイ素を含む面の研磨速度が非常に速く、半導体基板の研磨に有利である。
【0279】
本願の一具現例において、前記スラリー組成物に含まれる前駆体物質の含有量は、重量基準で300ppm以下であり得る。本願の他の一具現例において、前記スラリー組成物に含まれる前駆体物質の含有量は、重量基準で、200ppm以下、150ppm以下、100ppm以下、75ppm以下、50ppm以下、25ppm以下、15ppm以下、10ppm以下、7.5ppm以下、5ppm以下、2.5ppm以下、2ppm以下、1.75ppm以下、1.5ppm以下、1.25ppm以下、1ppm以下、0.75ppm以下、または0.5ppm以下であってもよい。実質的に前記スラリー組成物は、前駆体物質を含まなくてもよい。ここで、前駆体物質は、セリウム前駆体物質、塩基性物質、溶媒、およびアンモニアなど、湿式工程で酸化セリウム粒子を製造する過程で使用および生成される前駆体物質を含むことを意味し得る。
【0280】
本願の一具現例において、化学的機械的研磨用スラリー組成物は、組成物の全重量に対して前記酸化セリウム粒子を5重量%以下で含むことを特徴としてもよい。本願の他の一具現例において、化学的機械的研磨用スラリー組成物は、組成物の全重量に対して前記酸化セリウム粒子を4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下、0.8重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.2重量%未満、0.19重量%以下、0.15重量%以下、0.12重量%以下、0.10重量%以下、0.09重量%以下、または0.07重量%以下であってもよく、0.001重量%以上または0.001重量%以上であってもよい。本発明の化学的機械的研磨用スラリー組成物は、同じ研磨速度を有するスラリーを使用するにもかかわらず、化学的機械的研磨用スラリー組成物の全重量に対して前記酸化セリウム粒子よりも少ない量を添加しても、高い酸化膜研磨効率を達成できることを特徴としてもよい。
【0281】
本発明の一具現例において、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において、波長450~800nmの光に対する平均光透過率が、50%以上または60%以上であることを特徴としてもよく、好ましくは平均光透過率が70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上であってもよい。また、本願の他の一具現例において、波長500nmの光に対する光透過率が、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、または80%以上であることを特徴としてもよい。また、波長600nmの光に対する光透過率が、75%以上、80%以上、85%以上、または90%以上であることを特徴としてもよい。さらに、波長700nmの光に対する光透過率が、87%以上、90%以上、93%以上、または95%以上であることを特徴としてもよい。スラリー組成物の光透過率の値が前記範囲を満たすということは、本発明の一具現例に係る酸化セリウム粒子の1次粒子の粒径自体が小さく、また2次粒子への凝集が従来のセリア粒子よりも少ないことを意味し得る。このように凝集性が低いと、分散安定性が高いために粒子を均一に分布せることができ、ウェハーと接触する粒子が多くなるため酸化膜研磨速度が優れ、粒子自体が微細であるため、前記粒子を含むスラリー組成物を用いて研磨対象膜を研磨すると、表面にスクラッチなどの欠陥が発生する確率が低下することは容易に推定できる。すなわち、1次粒子基準で10nm級以下の酸化セリウム粒子の場合、可視光線領域の光透過率が高いほど、シリコン酸化膜の研磨速度が良好であると予測できる。
【0282】
本願の一具現例において、前記酸化セリウム粒子からなる粉末に対してフーリエ変換赤外線(Fourier-transformation infrared、FT-IR)分光法を行った場合、前記FT-IR分光法により特定されたスペクトルにおける3000cm-1~3600cm-1の範囲で、前記酸化セリウム粒子からなる粉末の赤外線透過率は90%以上であり、あるいは100%以下、97%以下、または95%以下であることを特徴としてもよい。また、本願の一具現例において、720cm-1~770cm-1の範囲で前記粉末の赤外線透過率は96%以下であることを特徴としてもよく、85%以上、88%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であってもよい。前記FT-IRスペクトルの3000cm-1~3600cm-1の範囲で、赤外線透過率が前記範囲の値を有するということは、O-H基によるバンドが相対的に弱いことを意味し得、これは、水酸化セリウム粒子からなる粉末のFT-IRスペクトルとの違いを示す。さらに、本願の一実施例に係る酸化セリウム粒子からなる粉末のFT-IRスペクトルの720cm-1~770cm-1範囲に前記範囲の赤外線透過率を示すピークが存在するということは、前記範囲でCe-O伸縮(stretching)が現れることを意味し得るのであり、これは、本発明の一実施例により製造された粒子が酸化セリウム粒子の特性を示すことを意味し得る。
【0283】
本願の一具現例において、前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、分散安定性および研磨効率の観点から、10以下、好ましくは1~9、1~8、または2~7のpHを有することができる。より詳細に、pHが1未満であると、シリコン酸化膜の除去率が急激に低下し、望ましくない研磨特性を示す可能性があり、pHが10を超えると、望ましくない研磨特性を示すか、pHの安定性及び分散安定性が低下して凝集が起こり、これによってマイクロスクラッチ及び欠陥(defect)が発生する可能性がある。
【0284】
本願の一具現例において、前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、組成物の最終pH、研磨速度、研磨選択比などを考慮してpHを調節できる一つ以上の酸または塩基のpH調節剤および緩衝剤を含んでいてもよい。前記pHを調節するためのpH調節剤としては、化学的機械的研磨用スラリー組成物の特性に影響を及ぼさずにpHを調節できるものを使用することができる。本願の一具現例において、前記pH調節剤は、適切なpHを達成するための酸性pH調節剤または塩基性pH調節剤であってもよい。
【0285】
本願の一具現例において、前記pH調節剤の例としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸からなる群より選択される1種以上の無機酸;酢酸、クエン酸、グルタル酸、グルコール酸、ギ酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、フタル酸、コハク酸、酒石酸からなる群より選択される1種以上の有機酸;リシン、グリシン、アラニン、アルギニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、システイン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、セリン、トリシン、チロシン、アスパラギン酸、トリプトファン(Tryptophan)、アミノ酪酸からなる群より選択される1種以上のアミノ酸;イミダゾール;アルキルアミン類;アルコールアミン;第4級アミンヒドロキシド;アンモニア;またはこれらの組み合わせ;が挙げられる。特に、前記pH調節剤は、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAHまたはTMAOH)またはテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAHまたはTEA-OH)であってもよい。また、前記pH調整剤の例としては、アンモニウムメチルプロパノール(AMP:ammonium methyl propanol)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH:tetra methyl ammonium hydroxide)、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン、ナイアシンアミドからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。好ましくは、前記pH調節剤は、トリエタノールアミンまたはアミノ酪酸であってもよい。
【0286】
本願の一具現例において、前記溶媒は、化学的機械的研磨用スラリー組成物に使用されるものであれば、いずれも使用することができ、例えば、脱イオン水を使用することができるが、本発明がこれに限定されるものではない。また、好ましくは超純水を用いることができる。前記溶媒の含有量は、前記化学的機械的研磨用スラリー組成物全体に対して、前記酸化セリウム粒子及びその他の追加的な添加剤の含有量を除いた残りの量であってもよい。本願の一具現例において、前記溶媒は、水性担体として水(例えば、脱イオン水)を含み、1つ以上の水混和性(water-miscible)有機溶媒を含み得る。使用可能な有機溶媒の例には、アルコール(例えば、プロペニルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、1-プロパノール、メタノール、1-ヘキサノール等);アルデヒド(例えば、アセチルアルデヒド等);ケトン(例えば、アセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン等);エステル(例えば、エチルホルメート、プロピルホルメート、エチルアセテート、メチルアセテート、メチルラクテート、ブチルラクテート、エチルラクテート等);スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO));エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグリム等);アミド(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等);多価アルコール及びこれらの誘導体(例えば、エチレングリコール、グリセロール(グリセリン)、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等);および窒素含有有機化合物(例えば、アセトニトリル、アミルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミン等)が含まれてもよい。
【0287】
本願の一具現例において、前記研磨組成物は、場合により、1つ以上の他の添加剤をさらに含む。前記研磨組成物は、増粘剤および凝固剤(例えば、ウレタン重合体などの高分子レオロジー調節剤)を含む界面活性剤及び/又はレオロジー調整剤、殺生剤(例えば、KATHONTMLX)などを含み得る。適切な界面活性剤には、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陰イオン性高分子電解質、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ化界面活性剤、これらの混合物等が含まれる。
【0288】
本願の一具現例において、前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、分散安定性に優れ、特にシリコン酸化膜に対する研磨率が高いことを特徴としている。
【0289】
前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、酸化セリウム粒子、溶媒及びその他の添加剤などの全ての成分を含む1液型スラリー組成物の形態で提供されてもよく、必要に応じて、前記これらの成分を2つまたは3つ以上の容器にそれぞれ貯蔵した後、使用時点または使用時点付近でそれらを混合する2液型または3液型のスラリー組成物の形態で提供されてもよい。このような提供形態の選択及び貯蔵成分の組み合わせは、当業者の知識の範囲内であり、混合比率を変えることによって全体的な研磨特性及び研磨速度を調整することができる。
【0290】
本願の一具現例において、前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、1,000Å/min以上、好ましくは2,000Å/min以上、より好ましくは3,000Å/min以上のシリコン酸化膜研磨速度を有することを特徴とし、基本的に酸化膜研磨速度は高いほど良く、上限は特に限定されないが、好ましくは10000Å/min以下、9000Å/min以下、8000Å/min以下、7000Å/min以下、6000Å/min以下、または5000Å/min以下のシリコン酸化膜研磨速度を有することを特徴としてもよい。特に、本願の一具現例に係る酸化セリウム粒子を用いた化学的機械的研磨用スラリー組成物の場合、酸化セリウム粒子の含有量が少ない範囲でも、粒径(粒子大きさ)が小さいため、従来の酸化セリウム粒子を含むスラリー組成物に比べて、含まれる粒子数自体が多く、高い表面Ce3+含有量によりSi-O-Ce結合が増加し、これにより、シリコン酸化膜の研磨速度が著しく向上することができる。
【0291】
本願の一具現例において、前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、50以上、100以上、150以上、または200以上の酸化膜/ポリシリコン膜の研磨選択比を有していてよく、3,000以下、2,000以下、1,500以下、1,000以下、900以下、または800以下の酸化膜/ポリシリコン膜の研磨選択比を有することを特徴としてもよい。酸化膜/ポリシリコン膜の選択比の場合、陽イオン性高分子の含有量を適切に調節することにより3,000以上の選択比も達成しうることを排除することはできないであろう。
【0292】
前記酸化セリウムを研磨材として使用する場合、表面に形成された水和層のみを除去する機械的研磨とは異なり、酸化セリウムと酸化ケイ素の高い反応性により、Si-O-Ceの化学結合が起こり、酸化セリウムが酸化ケイ素膜の表面で酸化ケイ素の塊を剥離するように除去して酸化ケイ素膜を研磨する。また、本願発明の実施例に係る酸化セリウム粉末は、小粒径であるため強度が低く、このため、研磨時に広域平坦度が優れていると同時に、大粒子によって形成されるマイクロスクラッチの問題も解決できるというメリットがある。
【0293】
本発明の他の一側面は、酸化セリウム粒子;溶媒;および陽イオン性高分子;を含むことを特徴とする化学的機械的研磨用スラリー組成物を提供する。
【0294】
本願の一具現例において、前記陽イオン性高分子の含有量に応じて酸化膜研磨速度が上昇することを特徴としてもよい。これは、従来技術と比較して本願の化学的機械的研磨用スラリー組成物の主要な技術的特徴であるので、以下に詳細に説明する。
【0295】
本願の一具現例において、陽イオン性高分子は、本発明の化学的機械的研磨用スラリー組成物に2つの役割を果たし得る。まず、陽イオン性高分子は、前記スラリー組成物の安定化剤としての役割を行いうるのであり、pHバッファーとしての役割を行うことで粒子分散性及び分散安定性を確保しうるようになる。また、本発明の陽イオン性高分子は、酸化膜の研磨促進剤としての役割を行いうる。従来の研磨用スラリーでは、分散安定性を高めるために陽イオン性高分子を添加したり、段差除去時のフィールド酸化膜(Field Oxide)の保護を目的として陽イオン性高分子を使用したりしていたのであり、これらの特性を得るために酸化膜研磨速度を一部犠牲にする必要があった。これに対し、本発明の研磨用スラリーに添加する陽イオン性高分子は、分散安定性を高めるだけでなく、陽イオン性高分子の添加量を増加させるほど酸化膜全体の研磨速度を増加させることができることとなる。
【0296】
本願の一具現例において、前記陽イオン性高分子の含有量は、化学的機械的研磨用スラリー組成物の全重量に対して、0.001重量%以上、0.002重量%以上、0.003重量%以上、0.004重量%以上、または0.005重量%以上であってもよく、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.03重量%以下、または0.01重量%以下であってもよい。前記陽イオン性高分子の含有量が化学的機械的研磨用スラリー組成物の全重量に対して0.001%未満である場合、含有量が少なすぎて研磨促進剤としての役割を十分に果たすことができず、研磨速度に影響を与えることができない。逆に1%を超える場合、添加した陽イオン性高分子が酸化セリウムの研磨工程を妨害し、かえって研磨速度を低下させるおそれがある。
【0297】
本願の一具現例において、前記陽イオン性高分子は、アミン基またはアンモニウム基を含む重合体または共重合体であることを特徴としてもよい。例えば、本願の一具現例において、前記陽イオン性高分子は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(polydiallyldimethyl ammonium chloride)、ポリアリルアミン(polyallylamine)、ポリエチレンイミン(polyehthyleneimine)、ポリジアリルアミン(polydiallylamine)、ポリプロピレンイミン(polypropyleneimine)、ポリアクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(polyacrylamide-co-diallydimethyl ammonium chloride)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、またはこれらの組み合わせであることを特徴としてもよく、好ましくは、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(polydiallyldimethyl ammonium chloride)、ポリアリルアミン(polyallylamine)、ポリエチレンイミン(polyehthyleneimine)、ポリアクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(polyacrylamide-co-diallydimethyl ammonium chloride)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、ポリ(トリメチルアンモニオエチルメタクリレート)(Poly(trimethylammonio ethyl methacrylate)、ジシアンジアミド-ジエチレントリアミン共重合体(dicyandiamide-diethylenetriamine copolymer)、ジアリルジメチルアミン/塩酸塩-アクリルアミド共重合体(diallyldimethylamine/hydrochloride-acrylamide copolymer)、ジシアンジアミド-ホルムアルデヒド共重合体(dicyandiamide-formaldehyde copolymer)、またはこれらの組み合わせであることを特徴としてもよい。
【0298】
本発明の第3側面は、前記化学的機械的研磨用スラリー組成物を用いて研磨するステップを含む半導体素子の製造方法を提供する。
【0299】
本願の第1及び第2側面と重複する部分については詳細な説明を省略するが、本願の第1及び第2側面について説明した内容は、第3側面でその説明を省略しても同様に適用され得る。
【0300】
以下、本願の第3側面に係る半導体素子の製造方法について詳しく説明する。
【0301】
先ず、シャロートレンチアイソレーション(STI:shallow trench isolation)ルーチン(Routine)工程を説明すると、絶縁膜の平坦化のための工程のうち、フォト、エッチング及び研磨(polishing)は、共通して適用される基本的な工程として分類できる。
【0302】
素子間を分離するために最初のステップであるフォト工程から始まりうる。フォト工程は、トラック(Track)と呼ばれる補助装置と、光を露出させて回路パターン(マスク)をウェハー上に写す露光機とで行われることとなる。まず、感光剤(Photo Resistor)を塗布するが、感光剤は粘度が高いため、ウェハーを回転させながら絶縁膜上に薄く塗布する。塗布される感光剤は、フォトレジストの深さが適切になるように均一な高さである必要がある。露光時にフォトレジストの深さが十分でない場合、現像時にフォトレジストの残渣が残り、これに続くエッチング工程で下部膜(絶縁層)が十分に除去されなくなる。感光させた後、ウェハーをトラック装置に戻し、感光部分を除去させる現像工程を行う。
【0303】
第二のステップとして、STIのエッチングは、現像部分(フォトレジスト膜が除去された部分)の直下の部分である絶縁層(酸化層+窒化層)と、基板の一部とを除去する工程である。前記エッチング工程は、乾式または湿式工程であり得る。乾式(ドライ)エッチング法は、通常、プラズマ状態を利用して掘り下げて行く方法である。乾式法は、湿式(液体)法に比べて、横の壁をエッチングせず(異方性エッチング)、下方向に掘り下げて行くだけでトレンチの形状を整えるのに有利でありうる。この場合、オーバーエッチング(Over Etch)が発生する可能性があるため、エッチング終点を正確に計算してから進める必要があるであろう。エッチング後には残渣が残るので、これを処理することができる。
【0304】
トレンチ形状がエッチングされた後、感光剤層がもはや役に立たなくなり、アッシング(Ashing)によって除去することができる。前記アッシング工程の場合、好ましくはプラズマを用いることができ、高精度にアッシングすることが可能となる。前記アッシング工程までの半導体素子の形状を、図2に示す。
【0305】
本願の一具現例に係る半導体素子の製造方法は、前記化学的機械的研磨スラリー組成物を用いてシリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜を同時に研磨するステップを含んでいてもよい。
【0306】
図2図6は、本願の一具現例に係る半導体素子の製造方法を示す断面図である。
【0307】
図2を参照すれば、下部膜10上の上部膜11内にトレンチ13を形成しうる。例えば、下部膜10上に上部膜11を形成し、上部膜11上に窒化膜(研磨停止膜)12を形成しうる。下部膜10は、任意の物質の膜を含むのでありうる。例えば、下部膜10は、絶縁膜、導電膜、半導体膜、または半導体ウェハー(基板)であってもよい。上部膜11は、絶縁膜(酸化膜)、導電膜、半導体膜、またはこれらの組み合わせを含むのでありうる。
【0308】
上部膜11が複数の積層された絶縁膜を含む場合、それらの絶縁膜は同種であっても異種であってもよい。例えば、上部膜11は、交互に繰り返し積層されたシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを含んでいてもよい。上部膜11は、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜の下に半導体膜および下部絶縁膜をさらに含んでいてもよい。例えば、下部絶縁膜は半導体膜の下に配置されてもよい。
【0309】
窒化膜(研磨停止膜)12は、例えば、シリコン窒化物(例えばSiN)、ポリシリコン、金属窒化物(例えばTiN)、金属等を蒸着して比較的大きい厚さ(例えば100Å~4,000Å)を有するように形成されてもよい。トレンチ13は、エッチング工程又はドリリング工程によって形成されてもよい。トレンチ13は、窒化膜(研磨停止膜)12および上部膜11を貫通して下部膜10に達する深さを有していてもよい。例えば、トレンチ13は、下部膜10を露出させるのに十分な深さを有していてもよい。
【0310】
図3を参照すると、STIは酸化膜を二重に形成することができる。まず、空間を確保したトレンチ13内に絶縁物質を本格的に埋め込む前に、第1絶縁膜14としてライナー(Liner)酸化膜を拡散法により薄く被せる。この後のステップにおけるCVD蒸着を利用した第2絶縁膜が、シリコン基板に良好に形成されるようにするためであると判断できる。本願の他の一具現例により、高密度プラズマCVD(HDPCVD)でトレンチ13を埋め込む場合、高いエネルギーを含むプラズマからの損傷を防止する役割も果たすことができる。本願の一具現例によれば、第1絶縁膜(ライナー酸化膜)は、拡散炉(Furnace)に酸素ガスを注入して高温に加熱することにより、ゲート酸化膜などの薄膜に形成されうる。また、本願の他の一具現例によれば、酸化膜の代わりに窒化膜を使用してもよい。
【0311】
図4を参照すると、複数の絶縁物を蒸着してトレンチ13を充填する第1絶縁膜14と第2絶縁膜15とを形成してもよい。第1絶縁膜14および第2絶縁膜15は、異なる密度及び蒸着速度を有していてもよい。本発明の実施例によれば、第1絶縁膜14は高密度絶縁物を蒸着して形成し、第2絶縁膜15は低密度絶縁物を蒸着して形成してもよい。例えば、第1絶縁膜14は、高密度プラズマ(HDP)酸化物を蒸着し、パターニングすることによって形成されてもよい。第1絶縁膜14は、トレンチ13の内面に沿って延びるように形成されてもよい。例えば、第1絶縁膜14は、上向きに開いたU字型またはパイプ型の形状を有していてもよい。
【0312】
第1絶縁膜14は、高密度であるため、第1絶縁膜14内に空洞(ボイド)が発生しにくく、これにより後続の熱処理工程でボイドに起因するクラックがなくなるか大幅に減少しうる。第2絶縁膜15は、第1絶縁膜14が形成されたトレンチ13を埋めながら研磨停止膜12を覆うのに十分な厚さでテトラエチルオルソシリケート(TEOS)酸化膜を蒸着して形成することができる。第2絶縁膜15は、第1絶縁膜14よりも速い蒸着速度で形成されてもよい。第2絶縁膜15の蒸着速度が速いため、トレンチ13を第2絶縁膜15で比較的迅速に充填することができる。
【0313】
本願の他の一具現例によれば、図示されていないが、トレンチ13上に第2絶縁膜15を残すために、第2絶縁膜15を部分的に除去することができる。例えば、フォト工程およびエッチング工程を通じて、半導体素子のセルメモリ領域といった特定領域を限定または開放(オープン)するために、第2絶縁膜15を選択的に除去してもよい。これにより、研磨停止膜12上の第2絶縁膜15の一部または全部を除去し、トレンチ13上に第2絶縁膜15を残存させてもよい。前記特定領域の開放(オープン)工程は選択的に実行されてもよく、必ずしも実行されなくてもよい。
【0314】
図5を参照すると、第2絶縁膜15に対して平坦化工程を行ってもよい。例えば、化学的機械的研磨(CMP)工程を用いて第2絶縁膜15を平坦化してもよい。化学的機械的研磨工程は、窒化膜(研磨停止膜)12が露出するまで続けてもよい。化学的機械的研磨工程は、図4の第2絶縁膜15を形成した後に行ってもよい。この場合、窒化膜(研磨停止膜)12上の表面は比較的平坦であるか、あるいは平坦でなくてもその非平坦性が大きくないので、化学的機械的研磨工程を容易に行うことができる。
【0315】
その後、図6を参照すると、窒化膜を除去することでSTIを形成してもよい。窒化膜の目的は、上部膜11が第1絶縁膜14の影響を受けないように上部膜11を保護することである。上部膜11は、薄く信頼性が求められるゲート酸化膜となるため、取り扱いには注意が必要である。窒化膜をエッチング法(湿式)で除去する場合、ウェハーを化学溶液に浸して、酸化膜をエッチングせずに窒化膜のみをエッチングしてもよい。このために、窒化膜に対して高い選択比(エッチング比率)を有する溶液を使用することができる。本願の他の一具現例では、窒化膜もCMPによって除去することもできる。この場合、窒化膜をエッチングしなくてもよいが、酸化膜に物理的なダメージを与える可能性があるため、エッチングにより窒化膜を化学的に処理して酸化膜を保護することが好ましい。
【0316】
本願の他の一具現例によれば、前記化学的機械的研磨(CMP)工程は、ギャップフィリング後に窒化膜(研磨停止膜、12)上の第1絶縁膜14及び第2絶縁膜15を完全に除去して、活性(Active)領域とフィールド(Field)領域とを分離(Isolation)するものであり、図7に示すように、大きく3つのステップに分けることができる。
【0317】
第1ステップでは、プラテン(Platen)で第2絶縁膜15のバルク(Bulk)CMPを行いながら局部(Local)平坦化を行う。第2ステップでは、プラテンで段差が緩和された第2絶縁膜15を洗浄または研磨し(Polishing)、窒化膜(研磨停止膜)12が露出する時点で研磨を停止する(Stopping)。この際、研磨終点検知(EPD:End Point Detection)を使用して異種膜質が露出する時点を検知する。第3ステップでは、プラテンで窒化膜(研磨停止膜)12上に残っているかもしれない第2絶縁膜15の残渣を除去し、窒化膜および酸化膜膜質を研磨してターゲティング(Targeting)を行ってもよい。
【0318】
図8は、本願の一具現例に係る、化学的機械的研磨(CMP)設備の構造を示す。この設備の特徴は、3つのプラテンから構成されていることであり、前述のように、プラテン1、2及び3を順次に経て、段階的なSTI CMP研磨が進行する構造であってもよい。研磨後、洗浄部に移動し、洗浄を完了して工程を終了する。
【0319】
その他にも、本願の一具現例に係る半導体素子の製造方法において、前記化学的機械的研磨スラリー組成物を用いて、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜を同時に研磨する方法は、限定されるものではなく、従来の一般的に使用される研磨方法及び条件であれば、いずれも使用することができ、本発明では特に限定されない。
【0320】
本願の一具現例に係る化学的機械的研磨用スラリー組成物は、分散安定性が高く、前記スラリー組成物に含まれる前記酸化セリウム粒子の表面に高いCe3+含有量を有するため、シリカとセリウムとの間のSi-O-Ceを形成する化学的研磨メカニズムによりケイ素を含む基板への研磨率を高めることができ、セリアの含有量が少ない条件であっても、CMP工程において半導体デバイスの表面から特にシリコン酸化膜を除去するのに効果的に用いることができる。
【0321】
本発明の第4側面は、半導体素子であって、基板;及び前記基板上に絶縁物質が充填されたトレンチ;を含み、前記トレンチは、化学的機械的研磨用スラリー組成物を用いて、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜からなる群より選択される少なくとも1種の膜を研磨することにより生成され、前記化学的機械的研磨用スラリー組成物は、酸化セリウム粒子;及び溶媒;を含み、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において、波長500nmの光に対する光透過率が5550%以上であることを特徴とする、半導体素子を提供する。
【0322】
本願の第1~第3側面と重複する部分については詳細な説明を省略するが、本願の第1~第3側面について説明した内容は、第4側面でその説明を省略しても同様に適用され得る。
【0323】
本発明の第5側面は、原料前駆体を準備するステップ;および原料前駆体を含む溶液中で、酸化セリウム粒子を粉砕または沈殿させて化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子の分散液を得るステップ;を含み、前記酸化セリウム粒子の含有量を1.0重量%に調整した水分散液において、波長500nmの光に対する光透過率が50%以上であることを特徴とする、化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子の製造方法を提供する。
【0324】
本願の第1~第4側面と重複する部分については詳細な説明を省略するが、本願の第1~第4側面について説明した内容は、第5側面でその説明を省略しても同様に適用され得る。
【0325】
本願の一具現例において、原料前駆体を準備するステップを含んでいてもよい。前記原料前駆体は、生成物として酸化セリウム粒子を生成することができる前駆体物質であれば制限なく使用可能である。
【0326】
本願の一具現例において、原料前駆体を含む溶液中で酸化セリウム粒子を粉砕または沈殿させて化学的機械的研磨用酸化セリウム粒子の分散液を得るステップを含んでいてもよい。前記原料前駆体を含む溶液中で酸化セリウム粒子を粉砕するステップは、例えば、ミリング工程による粉砕であり得るのであり、粉砕方法は、当業者の技術常識の範囲内で決定されればよく、限定されてない。原料前駆体を含む溶液中で酸化セリウム粒子を沈殿させて酸化セリウム粒子の分散液を得るステップの場合、上清液を除去するステップまたは濾過するステップなどをさらに含んでいてもよい。
【0327】
本願の一具現例において、前記セリウム前駆体は、硝酸セリウムアンモニウム、硝酸セリウム、硫酸セリウムアンモニウム、酢酸セリウム、塩化セリウム、水酸化セリウム、酸化セリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴としてもよい。
【0328】
本願の一具現例において、前記濾過するステップは、非限定的な濾過装置を使用して、より好ましくはメンブレンが適用されたフィルター装置を使用して行われてもよい。本願の一実施例に係る方法によって製造された酸化セリウム粒子の場合、酸化セリウム粒子の合成自体が高収率で行われるだけでなく、セリウム前駆体物質のほとんどが追加の濾過ステップによって除去されると理解することができる。
【0329】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野の通常の知識を有する者であれば、本発明の技術思想や必須の構成を変更しない範囲で他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解できるであろう。したがって、上述した各実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものでないことを理解しなければならない。例えば、単一型として説明されている各構成要素は、分散されて実施されることも可能であり、これと同様に、分散されたものとして説明されている各構成要素も結合された形態で実施されうる。
【0330】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって定めるもので、特許請求の範囲の意味及び範囲、そして、その均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態は、本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0331】
本発明の一実施例に係る酸化セリウムの粒子の場合、酸化セリウムの表面のCe3+の比率を増加させることにより、小粒径にもかかわらず、化学的機械的研磨用スラリーに含まれるとき、低含有量でも高い酸化膜除去速度を保有することができる。
【0332】
また、本発明の一実施例によれば、ウェハーの表面欠陥を最小化することができ、従来トレードオフ(Trade-off)関係と考えられていた表面欠陥と酸化膜除去速度との相関関係とは異なり、表面欠陥を最小限に抑えながら酸化膜除去速度を最大化することができる、化学的機械的研磨用スラリー組成物用酸化セリウム粒子及びスラリー組成物を提供することができる。
【0333】
また、本発明の一実施例によれば、陽イオン性高分子の添加により、酸化膜研磨速度がさらに上昇し、同時に酸化膜/ポリシリコン膜の選択比が上昇することが確認できる。陽イオン性高分子の添加は、通常、研磨速度を犠牲にしてその他の特性を確保するという従来の技術常識を考えると、本発明の特有の効果といえる。
【0334】
本発明の効果は、上記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解されるべきである。
図1
図2
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図44
図45
図46
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【国際調査報告】