(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】真空システム用の冷却剤微小漏出センサ
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20230908BHJP
【FI】
G01M3/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513739
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 US2021047426
(87)【国際公開番号】W WO2022046826
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファラツェフ ナディル エス
(72)【発明者】
【氏名】サシュシーク マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハーブ サラム
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA11
2G067AA34
2G067BB04
2G067CC11
2G067DD02
(57)【要約】
システムは、真空チャンバと、真空チャンバ内に配置され、動作時に加熱される構成要素とを備える。システムはまた、構成要素に機械的に結合され、作動時に構成要素を冷却するために冷却剤を循環させるために使用される冷却ラインを備える。システムは、真空チャンバ内の全圧を測定するために使用される真空ゲージと、冷却ラインから漏れやすい物質の真空チャンバ内の分圧を測定するために使用される分析器をさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
真空チャンバと、
動作中に加熱する、前記真空チャンバ内に配置された構成要素と、
動作中に冷却剤を循環させて前記構成要素を冷却するために、前記構成要素に機械的に結合された冷却ラインと、
前記真空チャンバ内の全圧を測定する真空ゲージと、
前記真空チャンバ内の前記冷却ラインから漏出し得る物質の分圧を測定する分析器と、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記冷却ラインは、前記真空チャンバ内に冷却剤マニホールドを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記冷却ライン内の前記冷却剤を冷却するためのチラーをさらに含み、前記チラーは前記真空チャンバの外側に配置され、前記冷却ラインは、前記真空チャンバから出て前記チラーを通り、前記真空チャンバに戻るように延在する請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記冷却ラインは、前記冷却剤を含み、さらにマーカー種を含み、
前記マーカー種は、前記冷却ラインから漏出し得る物質である請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記冷却剤は、普通水を含む請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記マーカー種は重水である請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記マーカー種は、1-プロパノールに相当する請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記冷却剤は、前記冷却ラインからの漏れの場合を除いて前記真空チャンバに存在しないフルオロカーボン系流体を含み、
前記冷却ラインから漏出し得る物質は、フルオロカーボン系流体である請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記構成要素は、前記真空チャンバ内に配置されたモータを備え、
前記モータは、前記冷却ラインが機械的に接続されるモータコイルを備え、前記モータコイルを冷却する請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
基板を支持するチャックと、
前記チャックを平行移動させるために、前記チャックが取り付けられる平行移動可能なステージと、
をさらに備え、前記モータは、前記ステージを平行移動させるステージモータである請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記真空チャンバは、走査型電子顕微鏡(SEM)の真空チャンバである請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記真空チャンバ内に配置された極端紫外(EUV)光学系をさらに含む請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記真空チャンバ内に配置された電子光学系をさらに含み、前記電子光学系は磁気レンズを含む請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記構成要素は、磁気レンズを含み、
前記冷却ラインは、前記磁気レンズに機械的に接続され、前記磁気レンズを冷却する請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記構成要素は、前記真空チャンバ内に配置されたデジタルカメラを含み、
前記冷却ラインは、前記デジタルカメラに機械的に接続され、前記デジタルカメラを冷却する請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記分析器は、質量分析計を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記分析器は、赤外線分光計を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記冷却ラインは、可撓性プラスチックを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
方法であって、
真空チャンバ内に配置された構成要素を動作させるステップであって、前記構成要素を動作させるステップが加熱を引き起こすステップと、
前記構成要素を冷却するために、前記構成要素に機械的に結合された冷却ラインを通して冷却剤を循環させるステップと、
前記真空チャンバ内の全圧を測定するステップと、
前記真空チャンバ内の、前記冷却ラインから漏出し得る物質の分圧を測定するステップと、
前記分圧に基づいて、前記冷却ラインが漏れを有するかどうかを判定するステップと、
を備える方法。
【請求項20】
前記冷却ライン内で前記冷却剤と共にマーカー種を循環させるステップと、
をさらに備え、
前記分圧を測定するステップは、前記真空チャンバ内の前記マーカー種の分圧を測定するステップを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記冷却剤は、普通水を含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記マーカー種は、重水である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記マーカー種は、1-プロパノールに相当する請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記冷却剤を循環させるステップは、前記冷却ラインからの漏出の事象を除いて前記真空チャンバに存在しないフルオロカーボン系流体を前記冷却ライン内で循環させるステップを含み、
前記分圧を測定するステップは、前記真空チャンバ内のフルオロカーボン系流体の分圧を測定するステップを含む請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記構成要素を動作させることは、前記真空チャンバ内に配置されたモータを動作させることを含み、
前記冷却ラインは、前記モータのモータコイルに機械的に接続される請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記モータを動作させることは、基板を支持するチャックが取り付けられたステージを移動させることを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記分圧を測定するステップは、質量分析を行うステップを含む請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記分圧を測定するステップは、赤外分光法を実施するステップを含む請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空システムにおける冷却ラインに関し、より詳細には、冷却ラインからの冷却剤漏れを検知することに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願63/071,373号(2020年8月28日)に対する優先権を主張し、これは、あらゆる目的のために参照によりその全体が組み込まれる。
【0003】
真空チャンバ内の冷却ラインは、例えば、機械的運動からの応力の結果として、微小漏出(マイクロリーク)を発生させる可能性がある。検出されないままである場合、微小漏出は、破滅的な漏出になるまで成長し得る。破滅的な漏出による損傷は、大規模な修復を必要とし、長い休止時間を引き起こす。真空ゲージを使用して真空チャンバ内の全真空圧力を監視することは、真空ゲージが微小漏出を何らかの他のリークから、または真空チャンバ内のガス放出源から区別することができないため、冷却ライン内の微小漏出を識別するには不充分であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0269911号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0211949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、破滅的な漏出が生じる前に冷却ラインを修復することができるように、真空システム内の冷却剤微小漏出を検出するための方法およびシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態では、システムは、真空チャンバと、動作中に加熱する、真空チャンバ内に配置される構成要素とを含む。システムはまた、作動中に冷却剤を循環させて構成要素を冷却するために、構成要素に機械的に結合された冷却ラインを含む。システムはさらに、真空チャンバ内の全圧を測定するための真空ゲージと、冷却ラインから漏出し得る物質の真空チャンバ内の分圧を測定するための分析器とを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、方法は、真空チャンバ内に配置された構成要素を動作させることを含む。構成要素を動作させることは、加熱を引き起こす。本方法はまた、構成要素を冷却するために、構成要素に機械的に結合された冷却ラインを通して冷却剤を循環させるステップを含む。方法は、真空チャンバ内の全圧を測定するステップと、真空チャンバ内の、冷却ラインから漏出し得る物質の分圧を測定するステップと、分圧に基づいて、冷却ラインが漏れを有するかどうかを判定するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
様々な説明される実装形態をより良く理解するために、以下の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照されたい。同様の参照番号は、図面および明細書を通して対応する部分を指す。
【
図1A】いくつかの実施形態による、冷却剤およびマーカー種を含有する冷却ラインを伴う真空システムを示すブロック図である。
【
図1B】いくつかの実施形態による、マイクロクラックまたは割れが冷却ライン内に形成されている、
図1Aの真空システムの一例を示すブロック図である。
【
図2A】いくつかの実施形態による、マーカー種を伴わない冷却剤を含有する冷却ラインを伴う真空システムを示すブロック図である。
【
図2B】いくつかの実施形態による、マイクロクラックまたは割れが冷却ライン内に形成されている、
図2Aの真空システムの一例を示すブロック図である。
【
図3】いくつかの実施形態による、真空システム内の冷却ライン漏出を検出する方法を図示する、フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、様々な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。以下の詳細な説明では、説明される様々な実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が述べられる。しかしながら、当業者には、これらの具体的な詳細なしに、説明される様々な実施形態を実施することができることが明らかであろう。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、回路、およびネットワークは、実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように、詳細には説明されていない。
【0010】
図1Aは、いくつかの実施形態による真空システム100を示すブロック図である。真空システム100は、真空チャンバ102を含む。いくつかの実施形態では、真空チャンバ102は、超高真空(UHV)を提供する(UHVは、10
-9トル以下のオーダーの圧力を有する真空を指す標準的な周知の技術用語である。)。真空システム100は、半導体検査または計測システムであってもよい。例えば、真空システム100は、走査電子顕微鏡(SEM)であってもよい。真空システムは、半導体検査または計測(すなわち、13.5nmの光に対する光学系である)のためのEUV光学系を含むことができる。あるいは、真空システム100は、異なる用途を有してもよい。
【0011】
構成要素104は、真空チャンバ102内に配置される。構成要素104は、動作中に加熱される。例えば、構成要素104は、電力を消費し、結果として加熱する能動構成要素である(電力を消費しない受動部品とは対照的である)。別の例では、構成要素104は、能動構成要素の加熱が構成要素104も加熱するように、能動構成要素に直接または間接的に機械的および熱的に結合される。
【0012】
いくつかの実施形態では、構成要素104は、モータであるか、またはモータを含む。冷却ライン106は、モータを冷却するためにモータ(例えば、モータ内のモータコイルに対する)に機械的に接続されてもよい。モータは、例えば、真空チャンバ102内に配置されたステージを平行移動させるステージモータであってもよい。ステージは、基板(例えば、半導体ウェハ)を支持するためにその上に取り付けられたチャックを有することができる。ステージはチャックを平行移動させる。したがって、モータを動作させることにより、ステージ、したがってチャックおよび基板を所望の位置に平行移動させる。
【0013】
いくつかの実施形態では、構成要素104は、デジタルカメラであるか、またはデジタルカメラを含む。例えば、カメラは、基板(例えば、半導体ウェハ)を撮像するために使用される。冷却ライン106は、デジタルカメラを冷却するために、デジタルカメラに機械的に接続され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、構成要素104は、電子光学系(例えば、磁気レンズなどの電子光学用のレンズ)であるか、またはそれを含む。冷却ライン106は、電子光学系を冷却するために、電子光学系に(例えば、レンズに)機械的に接続されてもよい。
【0015】
冷却ライン106は、構成要素104に機械的に(および熱的に)結合される。冷却ライン106は、
図1Aでは単一のループとして示されているが、真空チャンバ102内で分岐する冷却剤マニホールドを含んでもよい。冷却剤108は、システム100の動作中に冷却ライン106内を循環し、部品104を冷却する。構成要素104を冷却することによって、循環冷却剤108はまた、そうでなければ構成要素104からの熱によって加熱されるであろう真空チャンバ102内の他の構成要素を間接的に冷却する。例えば、真空チャンバ102が、構成要素104に熱的に結合された光学構成要素(例えば、EUV光学系)(例えば、磁気レンズまたは他の電子光学レンズなどの電子光学系)を含む場合、循環冷却剤108は、光学構成要素を間接的に冷却する。
【0016】
いくつかの実施形態では、真空システム100は、真空チャンバ102の外側に配置されたチラー116を含む。冷却ライン102は、真空チャンバ102から出てチラー116を通り、真空チャンバ102内に戻るように延在する。冷却器116は、構成要素104によって停止され、したがって、構成要素104から熱を運び去った冷却剤108を冷却する。
【0017】
冷却ライン106は、構成要素104の移動(例えば、モータの移動)に適応するように可撓性であってもよい。いくつかの実施形態では、冷却ライン106は、全体的または部分的にポリマーで作製される。例えば、冷却ライン106は、全体的または部分的に可撓性プラスチックであってもよい。あるいは、冷却ライン106は、金属またはエラストマーなどの他の材料から全体的または部分的に作製される。
【0018】
いくつかの実施形態では、冷却剤108は、普通水(H2O)であるか、またはそれを含む。普通水は重水とは異なる。普通水の分子中の両水素原子は、プロトンが単一で中性子を含まない通常の水素である。一方、重水としては、分子中の両水素原子が重水素原子である酸化重水素(D2O)や、分子中の一方の水素原子が通常の水素で他方の水素原子が重水素である水素-酸化重水素(HDO)などがある。
【0019】
真空システム100は、真空チャンバ112内の全圧を測定する真空ゲージ112を含む。しかし、真空ゲージ112は、冷却ライン106の微小亀裂または破損118を検出するには感度が不足することがある。微小亀裂または破壊118は、微小漏出をもたらす。冷却剤108は、
図1Bに示すように、冷却ライン106からマイクロクラックまたは割れ目118を通って漏れる。微小漏出は、微小漏出の存在を示す量だけ真空チャンバ102の全圧を増加させるのに充分な大きさを有さない場合がある。真空ゲージ112が漏出冷却剤108を検出することができる時までに、微小漏出は、真空チャンバ102および/または真空チャンバ102内の生成物(例えば、半導体ウエハなどの基板である)に深刻な損傷を引き起こす破滅的な漏出に変わっている可能性がある。
【0020】
例えば、冷却剤108が通常の水である場合、冷却ライン106から漏出する水108は、真空チャンバ102内の複数の水蒸気源のうちの1つにすぎない場合がある。水はまた、真空チャンバ102を密閉するために使用されるエラストマーシール(例えば、Oリング)から脱気してもよい。また、真空チャンバ102内には、水以外の他の物質がそれぞれの分圧で存在してもよい。真空ゲージ112は、真空チャンバ102内の全圧を測定し、したがって、水が全圧に寄与する程度(すなわち、真空チャンバ102内の水の分圧を検出することができない)を検出することができない。真空ゲージ112はまた、別の源とは対照的に、水が微小亀裂または破砕118から来る程度を検出することができない。
【0021】
いくつかの実施形態では、これらの問題を解決するために、冷却ライン106は、冷却剤108に加えてマーカー種110を含有する。マーカー種110は、冷却剤108と共に冷却ライン106内を循環する。マーカー種110は、
図1Bに示されるように、微小亀裂または破壊118の場合に冷却ライン106から漏出し得る物質(例えば、分子)である。マーカー種110は、真空チャンバ102内の残留ガスの組成(すなわち、冷却ライン106からの漏れの場合を除いて、真空チャンバ102には存在しない)に特有であるように選択することができる。真空システム100は、真空チャンバ102内のマーカー種110の分圧を測定するように構成された分析器114を含む。分析器114は、真空ゲージ112がそれを検出できる点まで微小亀裂または破砕118が広がるまたは成長する前に(例えば、破滅的な故障が生じる前に)、微小亀裂または破砕118からの微小漏出を検出することができ、その理由は、それが真空チャンバ102の全圧とは対照的にマーカー種110の分圧を測定するからである。
図1Aおよび1Bにおける真空ゲージ112および分析器114の読み取り値の比較が示すように、微小亀裂または破砕118は、真空チャンバ102の全圧よりもマーカー種110の分圧の有意に大きい増加を引き起こす。微小亀裂または破砕118からの微小漏出の検出は、マーカー種110の分圧が閾値(例えば、特定の値を上回るか、またはそれと等しいかもしくは上回るか、または少なくとも、または特定量を超えて増加する)を満たすときに生じ得る。分析器114は、マイクロクラックまたは破砕118からの微小漏出の検出に応答して警告信号を生成するコンピュータシステムに通信可能に結合され得る。次いで、真空チャンバ102を制御された方法でオフラインにし、冷却ライン106を修理することができる。いくつかの実施形態では、分析器114は、残留ガス分析器(RGA)(例えば、質量分析計)である。いくつかの実施形態では、分析器114は、赤外分光法(例えば、フーリエ変換赤外分光法(FT1R))を実行する赤外分光計を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、マーカー種110は重水である。例えば、冷却剤108はH2Oであり、D2Oは冷却ライン106内の冷却剤108に加えられる。D2OはH2Oと反応して、マーカー種110であるHDOを生成する。分析器114は、HDOを検出するように構成される。
【0023】
いくつかの実施形態では、1-プロパノールを冷却剤108に添加して(例えば、これはH2Oである)、マーカー種110を提供する。したがって、マーカー種110は1-プロパノールに対応する。分析器114は、微小亀裂または破砕118の存在下で、冷却剤108への1-プロパノールの添加から生じるピークを検出するように構成される。
【0024】
マーカー種110は、冷却剤108と反応しないように選択することができる。したがって、マーカー種110は、冷却剤108に添加される。あるいは、冷媒108と反応してマーカー種110を生成する化学物質が冷媒108に加えられる。マーカー種110は、構成要素104の所望の冷却を提供するために、冷却剤の比熱容量の±50%以内の比熱容量を有するように選択され得る。マーカー種110は、冷却ライン106およびチラー116において腐食を引き起こすことを回避するために、化学的に不活性であってもよい。マーカー種110は、冷却剤108の蒸気圧の±50%以内の蒸気圧を有することができ、したがって、マーカー種110および冷却剤108は、微小亀裂または破砕118が形成される場合に真空チャンバ102への同様の流量を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、そうでなければ真空チャンバ102内に存在せず(すなわち、真空チャンバ102内の残留ガスの組成に特有である)、したがって、冷却ライン106からの漏出(例えば、マイクロクラックまたは破砕118が冷却ライン106上に形成される場合である)の場合を除いて、真空チャンバ102から存在しない、冷却剤が使用される。そのような冷却剤は、マーカー種110なしで使用され得る。
図2Aおよび2Bは、いくつかの実施形態による、このタイプの冷却剤を使用する真空システム200を示す。真空システム200では、マーカー種110は使用されず、冷却剤108は、冷却ライン106からの漏出の場合を除いて、真空チャンバ102に存在しない冷却剤202と交換される。
図2Aでは、冷却ライン206は無傷であるが、
図2Bは、冷却ライン106上に形成された微小亀裂または破砕118を示す。分析器114は、冷却剤202を検出するように構成される。したがって、分析器114は、微小亀裂または破砕118(すなわち、微小亀裂または破砕118から生じる微小漏出を検出する)を検出することができる。
【0026】
冷却剤202は、フルオロカーボン系流体であってもよい。例えば、冷却剤202は、FLUORINERT(登録商標)ブランド名で販売されているものなどのペルフルオロ化合物(PFC)であってもよい。あるいは、冷却剤202は、NOVEC(登録商標)ブランド名で販売されているものなどの分離ヒドロフルオロエーテル(HFE)化合物またはフルロケトン(FK)化合物であってもよい。
【0027】
図3は、いくつかの実施形態による、真空システム(例えば、真空システム100、
図1A~1B;
図2A~2Bの真空システム200)における冷却ライン漏れ(例えば、微小亀裂または破砕118からの微小漏出)を検出する方法300を示すフローチャートである。方法300におけるステップは特定の順序で示され説明されているが、ステップは並行して実行されてもよい。例えば、方法300におけるステップの全ては、進行中の方法において同時に実行されてもよい。
【0028】
方法300では、真空チャンバ(例えば、真空チャンバ102)内に配置される構成要素(例えば、構成要素104)が作動される(302)。構成要素を動作させることは、加熱を引き起こす(例えば、構成要素を加熱させる)。いくつかの実施形態では、構成要素を動作させることは、真空チャンバ内に配置されたモータを動作させること(304)を含む。例えば、チャックが取り付けられたステージを平行移動させるためにモータが作動される。チャックは、基板(例えば、半導体ウエハ)を支持する。いくつかの他の実施形態では、構成要素を動作させることは、真空チャンバ内に配置されたデジタルカメラを動作させること、および/または真空チャンバ内に配置された電子光学系(例えば、磁気レンズまたは他の電子光学レンズ)を動作させることを含む。
【0029】
構成要素を冷却するために、冷却剤(例えば、冷却剤108、
図1A~1B;冷却剤202、
図2A~2B)は、構成要素に機械的に連結される冷却ライン(例えば、冷却ライン106)を通して循環させられる(306)。いくつかの実施形態では、冷却剤(例えば、冷却剤108、
図1A~1B)は、普通水を含む(308)。代替として、冷却剤(例えば、冷却剤202、
図2A~
図2B)は、冷却ラインからの漏出の場合を除いて真空チャンバに存在しないフルオロカーボン系流体(例えば、FLUORINERT(R)またはNOVEC(登録商標)ブランドで販売されているものなどの流体)であってもよい(310)。
【0030】
いくつかの実施形態では、冷却ラインは、モータのモータコアに機械的に接続される(312)。いくつかの実施形態では、冷却ラインは、デジタルカメラおよび/または電子光学系に機械的に接続される。
【0031】
いくつかの実施形態では、マーカー種(例えば、マーカー種110、
図1A~1B)は、冷却ライン内の冷却剤とともに循環させられる(314)。例えば、マーカー種は、(316)重水(例えば、HDO)である。別の例では、マーカー種は1-プロパノール(例えば、冷却剤108への1-プロパノールの添加に起因する)に対応する(318)。
【0032】
真空チャンバ内の全圧が測定される(320)。例えば、全圧は真空ゲージ112を用いて測定される。
【0033】
冷却ラインから漏出し得る物質の真空チャンバ内の分圧が測定される(322)。例えば、真空チャンバ内のマーカー種の分圧が測定される(324)。別の例では、真空チャンバ内のフルオロカーボン系流体の分圧が測定される(326)。分圧は、分析器114を用いて測定される。いくつかの実施形態において、分圧は、質量分析法を使用して測定される。あるいは、分圧は、赤外分光法(例えば、フーリエ変換赤外分光法(FTIR))を使用して測定することができる。
【0034】
方法300は、真空システムの冷却ライン(例えば、冷却剤マニホルド)における微小亀裂または破砕の早期検出を可能にする。微小亀裂または破砕は、次いで、破滅的な損傷が生じる前に真空システムを遮断することによって、整然とした様式で修復することができる。
【0035】
前述の説明は、説明の目的のために、特定の実施形態を参照して説明されている。しかしながら、上記の例示的な説明は、網羅的であること、または特許請求の範囲を開示された厳密な形態に限定することを意図するものではない。上記の教示を考慮して、多くの修正及び変形が可能である。実施形態は、特許請求の範囲の基礎をなす原理およびそれらの実際の適用を最良に説明し、それによって、他の当業者が、企図される特定の使用に適した様々な修正とともに実施形態を最良に使用することを可能にするために選択されたものである。
【国際調査報告】