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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】遅延時間測定方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
H01L21/66 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511862
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2021074669
(87)【国際公開番号】W WO2022053491
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】20195860.0
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ゴリー,ブノワ,エルベ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン レンズ,ジャスパー,フランズ,マティス
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA02
4M106CA70
4M106DH24
4M106DH33
4M106DJ20
(57)【要約】
回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定する方法が提供され、この方法は、荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射することを含み、荷電粒子ビームのパルスのパルス繰り返し周波数は変動する。この方法は、更に、パルス繰り返し周波数の各周波数について、それぞれのパルス繰り返し周波数にある荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定することと、パルス繰り返し周波数の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出することと、を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
命令を記憶するコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射することであって、前記荷電粒子ビームの前記パルスのパルス繰り返し周波数は変動する、照射することと、
前記パルス繰り返し周波数の各周波数について、前記それぞれのパルス繰り返し周波数にある前記荷電粒子ビームの前記パルスによって前記ラインを前記照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定することと、
前記パルス繰り返し周波数の前記変動に応答した前記二次荷電粒子放出に基づいて、前記ラインの遅延時間を導出することと、を含む動作を実施させる、コンピュータ可読媒体。
【請求項2】
前記パルス繰り返しは、前記ラインの前記遅延時間に渡る周波数によって定義される周波数を含むパルス繰り返し周波数範囲に渡って変動する、請求項1に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項3】
前記ラインの前記遅延時間は、前記パルス繰り返し周波数の前記変動に応答した前記二次荷電粒子放出の高周波数ロールオフ点として決定される、請求項1に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項4】
前記パルスのパルス幅は、前記パルス繰り返し周波数によって決まるパルス繰り返し時間よりも小さい、請求項1に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項5】
パルス繰り返し周波数毎に、少なくとも2つの後続のパルスによって前記ラインを前記照射することが繰り返され、前記少なくとも2つの後続のパルスに応答した前記二次荷電粒子放出が繰り返しの度に測定され、繰り返し周波数毎に、前記測定された二次荷電粒子放出が平均される、請求項1に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項6】
前記ラインの前記遅延時間は、前記平均された二次荷電粒子放出と前記パルス繰り返し周波数との間の関係から導き出される、請求項5に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項7】
回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定するためのシステムであって、
荷電粒子ビームのパルスによって前記ラインを照射するように構成された荷電粒子ビーム源であって、前記荷電粒子ビームの前記パルスのパルス繰り返し周波数は変動する、荷電粒子ビーム源と、
前記パルス繰り返し周波数の各周波数について、前記それぞれのパルス繰り返し周波数にある前記荷電粒子ビームの前記パルスによって前記ラインを前記照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定するための二次荷電粒子放出検出器と、
前記パルス繰り返し周波数の前記変動に応答した前記二次荷電粒子放出に基づいて、前記ラインの前記遅延時間を導出するように構成されたデータ処理デバイスと、を含む、システム。
【請求項8】
前記荷電粒子ビーム源は、前記ラインの前記遅延時間に渡る周波数によって定義される周波数を含むパルス繰り返し周波数範囲に渡って、前記パルス繰り返しを変動させるように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記データ処理デバイスは、前記パルス繰り返し周波数の前記変動に応答した前記二次荷電粒子放出の高周波数ロールオフ点として前記ラインの前記遅延時間を決定するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記パルスのパルス幅は、前記パルス繰り返し周波数によって決まるパルス繰り返し時間よりも小さい、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記荷電粒子ビームは、パルス繰り返し時間毎に、少なくとも2つの後続のパルスによって前記ラインを前記照射することを繰り返すように構成され、前記検出器は、繰り返しの度に前記少なくとも2つの後続のパルスに応答した前記二次荷電粒子放出を測定するように構成され、前記データ処理デバイスは、繰り返し時間毎に、前記測定された二次荷電粒子放出を平均するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記データ処理デバイスは、前記荷電粒子ビームの前記2つの後続のパルス間の前記パルス繰り返し時間の関数として、前記平均された二次荷電粒子放出の変化から前記ラインの前記遅延時間を導き出すように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記荷電粒子ビームは電子ビームであり、前記二次荷電粒子放出は二次電子放出である、請求項7に記載のシステム。
【請求項14】
前記回路構造はダイである、請求項7に記載のシステム。
【請求項15】
前記荷電粒子ビームの前記パルスは前記ラインをある電位に帯電させ、前記ラインの前記電位は前記二次荷電粒子放出に影響を与え、前記データ処理デバイスは、前記ラインの前記電位の減衰から前記ラインの前記遅延時間を導き出すように、且つ、前記パルス繰り返し周波数の変化が前記二次荷電粒子放出に与える効果から前記ラインの前記電位の前記減衰を導き出すように構成される、請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年9月11日に出願された欧州特許出願第20195860.0号の優先権を主張するものであり、該出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本開示は、回路構造内のライン内の信号の伝播の遅延時間を測定する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 集積回路は、正確に時間合わせされた電気信号で動作するように設計されている。信号は、集積回路内のあるノードに印加され、集積回路内の別のノードによって受け取られる。それに加えて、これらのノードは、金属ラインなどの集積回路のラインによって相互接続されている。信号がノードに印加された時間と信号が別のノードによって受け取られた時間との間で遅延が発生することがある。遅延、又は、意図した値からの遅延の偏差は、集積回路の適切な機能にとって好ましくないことがある。回路の遅延は、ドライブ、ラインに印加される負荷、及びラインそのものに依存することがある。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 開示される技術の目的は、集積回路のラインの非接触式遅延測定を提供することである。
【0005】
[0005] この技術の一態様によれば、回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定する方法が提供され、この方法は、
-荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射することであって、荷電粒子ビームのパルスのパルス繰り返し周波数は変動することと、
-パルス繰り返し周波数の各周波数について、それぞれのパルス繰り返し周波数にある荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定することと、
-パルス繰り返し周波数の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出することと、を含む。
【0006】
[0006] この技術の別の態様によれば、命令を記憶するコンピュータ可読媒体が提供され、この命令は、コンピュータによって実行されると、そのコンピュータにこの技術の上記の態様による方法を実施させる。
【0007】
[0007] この技術の別の態様によれば、回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定するためのシステムが提供され、このシステムは、
-荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射するように構成された荷電粒子ビーム源であって、荷電粒子ビームのパルスのパルス繰り返し周波数は変動する、荷電粒子ビーム源と、
-パルス繰り返し周波数の各周波数について、それぞれのパルス繰り返し周波数にある荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定するための二次荷電粒子放出検出器と、
-パルス繰り返し周波数の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出するように構成されたデータ処理デバイスと、を含む。
【0008】
[0008] この技術の別の態様によれば、ノードのRC定数を決定する方法が提供され、この方法は、
可変の繰り返し周波数で電子ビームパルスを生成し、その電子ビームパルスをノードに向けることと、
電子ビームパルスに応答して放出されたSEを検出することと、
電子ビームパルス間の時間の関数として、検出され時間平均されたSEに基づいて、ノードのRC定数を決定することと、を含む。
【0009】
[0009] この技術の別の態様によれば、回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定する方法が提供され、この方法は、
-時間間隔Tで荷電粒子ビームの第1のパルスによってラインを照射することと、
-時間間隔Tで荷電粒子ビームの第2のパルスによってラインを照射することであって、第2のパルスは、第1のパルスに関してパルス遅滞時間だけ遅滞しており、パルス遅滞時間は変動することと、
-パルス遅滞時間の異なる値について、荷電粒子ビームの第1及び第2のパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定することと、
-パルス遅滞時間の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出することと、を含む。
【0010】
[0010] この技術の別の態様によれば、命令を記憶するコンピュータ可読媒体が提供され、この命令は、コンピュータによって実行されると、そのコンピュータにこの技術の上記の態様による方法を実施させる。
【0011】
[0011] この技術の別の態様によれば、回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定するためのシステムが提供され、このシステムは、
-時間間隔Tで荷電粒子ビームの第1のパルスによってラインを照射し、時間間隔Tで荷電粒子ビームの第2のパルスによってラインを照射するように構成された荷電粒子ビーム源であって、第2のパルスは、第1のパルスに関してパルス遅滞時間だけ遅滞しており、パルス遅滞時間は変動する、荷電粒子ビーム源と、
-パルス遅滞時間の異なる値について、荷電粒子ビームの第1及び第2のパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定するための二次荷電粒子放出検出器と、
-パルス遅滞時間の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出するように構成されたデータ処理デバイスと、を含む。
【0012】
[0012] この技術の別の態様によれば、ノードのRC定数を決定する方法が提供され、この方法は、
時間間隔Tで第1の電子ビームパルスを生成し、この第1の電子ビームパルスをノードに向けることと、
第1の電子ビームパルスに応答して放出された第1のSEを検出することと、
時間間隔Tで、第1の電子ビームパルスに関して可変遅延を伴う、第2の電子ビームパルスを生成し、この第2の電子ビームパルスをノードに向けることと、
第2の電子ビームパルスに応答して放出された第2のSEを検出することと、
遅延の関数として、時間平均されたSE信号の監視に基づいて、ノードのRC定数を決定することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0013]荷電粒子ビームによるラインの照射を示す。
図2A】[0014]電子ビームパルスのタイムチャートを示す。
図2B】[0014]ライン電位及び二次荷電粒子放出のタイムチャートを示す。
図3】[0015]パルス繰り返し時間の関数として二次荷電粒子放出の図を示す。
図4】[0016]荷電粒子ビームを生成するためのデバイスの一実施形態を示す。
図5A】[0017]電子ビームパルスのタイムチャートを示す。
図5B】[0017]連続するパルス間の遅延時間の関数としての二次荷電粒子放出のタイムチャートを示す。
図6】[0018]連続するパルス間の遅延時間の関数として、時間積分された二次荷電粒子放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0019] ここで、例示的な実施形態を詳細に参照する。これらの実施形態の例が、添付の図面に示されている。以下の説明では添付の図面を参照しており、異なる図面中の同じ番号は、特に断りの無い限り、同じ又は類似の要素を表す。例示的な実施形態の以下の説明文中に記載される実施態様は、本開示に適合する全ての実施態様を表すものではない。その代わり、それらは、添付の特許請求の範囲に列挙された主題に関連した態様に適合する装置及び方法の単なる例にすぎない。例えば、幾つかの実施形態は、電子ビームを利用するという文脈で説明されているが、本開示はそのように限定はされない。他のタイプの荷電粒子ビームも同様に適用することができる。更に、光学撮像、光検出、x線検出、極紫外線検査、深紫外線検査などの他の撮像システムを使用することもできる。
【0015】
[0020] 電子デバイスは、基板と呼ばれるシリコン片上に形成された回路から構築される。多数の回路が、同じシリコン片上に一緒に形成されることがあり、集積回路又はICと呼ばれる。はるかに多くの回路を基板上に収めることができるように、これらの回路のサイズは劇的に縮小されてきた。例えば、スマートフォン内のICチップは、親指の爪程小さいことがありながら、20億個を超えるトランジスタを含むことがあり、各トランジスタのサイズは、人間の髪の毛のサイズの1/1000よりも小さい。
【0016】
[0021] これらの極端に小さなICを作製することは、複雑で時間がかかり高価なプロセスであり、しばしば数百にのぼる個別ステップを伴う。たった1つのステップでのエラーが、完成したICにおける欠陥をもたらし、それによって、そのICを使い物にならなくする可能性がある。従って、製造プロセスの目標の1つは、そのような欠陥を回避して、プロセスにおいて作製される機能的ICの数を最大化すること、即ち、プロセスの全体的歩留まりを向上させることである。
【0017】
[0022] 歩留まりを向上させる1つの要素は、チップ作製プロセスを監視して、十分な数の機能的集積回路が製造されていることを確認することである。プロセスを監視する1つの方法は、チップ回路構造物を、それを形成する様々な段階で検査することである。検査は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して実施することができる。SEMを使用すると、これらの非常に小さな構造物を撮像すること、要するに、これらの構造物の「写真」を撮ることができる。この画像を使用して、構造物が適切に形成されたかどうか、及び構造物が適切な位置に形成されたかどうかを判断することができる。構造物に欠陥がある場合、欠陥が再発する可能性が低くなるようにプロセスを調整することができる。IC製造業者の要件を満足するために、欠陥検出及び検査プロセスのスループットをより高くすることが望ましい場合がある。
【0018】
[0023] 集積回路は、正確に時間合わせされた電気信号で動作するように設計されている。信号は、集積回路内のあるノードに印加され、集積回路内の別のノードによって受け取られる。それに加えて、これらのノードは、金属ラインなどの集積回路のラインによって相互接続されている。信号がノードに印加された時間と信号が別のノードによって受け取られた時間との間で遅延が発生することがある。遅延、又は、意図した値からの遅延の偏差は、集積回路の適切な機能にとって好ましくないことがある。回路の遅延は、ドライブ、ラインに印加される負荷、及びラインそのものに依存することがある。
【0019】
[0024] コンピュータチップなどの集積回路は、高速で動作することがあるので、回路を接続するラインは、データを高速で伝送する必要がある。これらのラインには、時として製造欠陥があることがあり、製造欠陥により、ラインが遅くなり、且つ、コンピュータチップが速度要件を満たさなくなることがある。そのチップを修理してその欠陥を取り除くか、又は、将来のチップにその欠陥が生じないように製造プロセスを修正することができるように、そのような欠陥をできる限り早く検出することが望ましい。
【0020】
[0025] 現在の試験では、後の段階、例えば、ラインそのものの製造工程から数週間後でしか、ライン内の欠陥を有効に決定することができない。
【0021】
[0026] 従って、本明細書で開示する技術は、製造の早い段階で使用できる非接触式遅延測定を提案する。
【0022】
[0027] 本発明者らは、集積回路内のラインの遅延時間は、電荷によってラインを非接触で帯電させ、電荷が流れ去るのにかかる時間を測定することによって、測定できることに気付いた。非接触の帯電は、電子ビームパルスなどの荷電粒子ビームパルスをラインに放射することにより行われる。入射荷電粒子の結果として、ラインはそのような粒子を放出する傾向があり、これは二次放出とも呼ばれる。二次放出は、ラインが電気的に帯電するにつれて変化する。すなわち、ラインの帯電の結果として、二次電子はラインに引き戻される傾向があり、従って、有効な二次放出が減少する。本技術によれば、後続のパルス間の時間は変動する。前の電子ビームパルスからの電荷が漏れ去ったときに後続の電子ビームパルスが到着する場合、後続のパルスに応答した二次放出は変わらない。しかしながら、前の電子ビームパルスからの電荷がまだ漏れ去っていないときに後続の電子ビームパルスが到着する場合、後続のパルスに応答した二次放出は、ラインに残っている電荷の結果として、減少する。パルスと後続のパルスとの間の時間を変動させることにより、二次放出への影響が観察される。本技術によれば、ラインの放電速度は、パルスと後続のパルスとの間の時間の変動が二次放出に及ぼす影響から導き出される。本技術によれば、ラインの放電速度は、ラインの遅延を表す。
【0023】
[0028] 既存の技術によれば、ウェーハが製造されている間に、回路の電気的特性が、スクライブライン試験構造を使用して試験される。製品ダイ上の回路はまだ試験することができない、というのも、チップには、製造工程の後の方まで、プローブすることができるI/Oパッドがないからである。スクライブライン試験構造には、大きな制約があり、正確にオンダイの回路を反映してはいない。オンダイの回路は、初期金属化の数週間後まで試験することができず、これは、望ましい時点よりもはるかに後である。
【0024】
[0029] スクライブライン試験は、回路の入力/出力パッドを物理的に接続して電流、電圧、及び周波数を記録するプローブカードによって、実施されることがある。スクライブライン試験は、機械的応力を誘起することがあり、且つ製造歩留まりの低下を引き起こすことがあるので、ウェーハにとって完全に安全ではない場合がある。また、これらの試験は、ダイそのもの上で実施されるのではない。ダイの試験は、歩留まり試験中に、即ち、集積回路製造工程の後の方の段階で、実施されることがある。
【0025】
[0030] 製造のもっと早い段階で、ダイそのもの上で遅延時間を測定することが望ましい。
【0026】
[0031] 図1は、パルス荷電粒子ビームPB、即ち、集積回路、特に集積回路の基板SUBの誘電体層上のライン構造LNに向けられている荷電粒子の時間パルス、を生成するパルスビーム源PBSを示す。荷電粒子ビームは、電子などの任意の適切な荷電粒子によって形成されることがある。荷電粒子の他の例としては、陽子を挙げることができる。本実施形態では、電子ビームが使用される。
【0027】
[0032] 電子ビームがパルス化されると、電子ビームの複数のパルスによってラインが照射される。そのようなパルス電子ビームは、モード同期レーザー、マイクロ波キャビティ、進行波伝達ストリップライン、又はマイクロストリップを使用する超高速光電子放出を使用し、高速静電ブランカーを使用して連続的な電子ビームを細断することにより、又はそれらの技術の組み合わせにより、生み出すことができる。電子ビームの後続パルス間の時間は、パルス繰り返し時間Tとして、即ち、パルス繰り返し周波数1/Tとして、定義される。パルス繰り返し周波数は、パルス繰り返し周波数範囲に沿って変動することがある。パルスの持続時間tは、RC時間よりも小さいことがある、即ち、t≪RCであり得る。
【0028】
[0033] ラインのRC時間は、ラインの周囲に向かって(例えば、ラインに隣接する基板SUBに向かって等)直列の抵抗R及び寄生容量Cによって形成される。遅延時間は、RC時間によって決まることがある。しかしながら、本技術によれば、誘導効果も、ラインの遅延の一因となることがある。
【0029】
[0034] ラインの遅延は、例えば、電気的に直列なラインの抵抗Rとラインの周囲に対するラインの静電容量)の関数であり得る。ラインの直列インダクタンスも、遅延に寄与することがある。集積回路は、初めは、抵抗及び静電容量、並びにインダクタンスを最小にし、従って、ラインの遅延を最小にするように設計されることがある。しかしながら、集積回路の製造工程(リソグラフィ、エッチング等)により、ライン及び周囲に変動が持ち込まれることがあり、これにより、例えば、望ましくない寄生抵抗及び静電容量が誘発されることがある。その結果、ラインの実際の遅延は、ラインの予期される遅延から逸脱することがある。
【0030】
[0035] 例えば持続時間が100fsの電子パルスが、レーザートリガー放射源及びマイクロ波キャビティチョップ放射源によって、生み出されることがある。電子パルスの持続時間の他の例は、1ps又は10psである。透過型電子顕微鏡(TEM)の一例では、電子パルスのパルス繰り返し周波数は、例えば、100MHz未満の周波数範囲に渡って変動することがある。(例えば、進行波金属コームストリップラインに基づく)ビームチョッパーにより、繰り返し周波数が例えば40MHz~12GHzの間で連続的に可変であり得る30psのパルス(300kVの電子の場合)を生み出すことができる。開示される技術は、走査型電子顕微鏡(SEM)、集束イオンビーム等を含め、様々なタイプの荷電粒子システムで利用することができる。
【0031】
[0036] パルス電子ビームをライン上に照射すると、ラインに負の電位が結果として生じることがある。ラインの負の電位は、ラインの静電容量に反比例することがある。ライン静電容量は、基板構造内、即ち、集積回路内のライン周囲に対するラインの寄生容量であり得る。一定量の電荷を印加した結果として、ラインの静電容量が大きいほど、ラインと周囲との間の電圧差が小さくなる。1パルス当たりのラインの電位の低下量は、電子ビームのパルスのパルスパワー及びパルス長に比例することがある。
【0032】
[0037] しかしながら、そのようなパルス電子ビームをラインに照射すると、ラインからの二次電子放出が発生することがある。一般論として、ラインを荷電粒子ビームで照射すると、二次荷電粒子放出が発生することがある。ラインの二次電子発生率が1よりも大きい場合、1個の入射電子ごとに放出される二次電子の数は1よりも大きくなる。その結果、ラインの電位は低下するのではなく高くなる、というのも、幾つかの入射電子は、より多くの二次電子の放出をもたらすからである。これに呼応して、あらゆる入射電子パルスは、ウェーハ表面上に、より具体的にはライン上に、正の電位を生み出すことがある。ラインの静電容量が小さいほど、ラインに衝突する所定量の荷電粒子に起因して、電位が高くなる。
【0033】
[0038] 結果として生じる正の電位は、時間の関数として低下することがある、というのも、電荷が、例えば抵抗的に漏れ去るからである。ライン上の電位が二次電子をウェーハの表面に引き戻すことがあるという点で、ライン上の正の電位は、励起した二次電子に影響を及ぼすことがある。その結果、測定される二次電子放出が減少することがある。
【0034】
[0039] 2つの連続する電子パルス間の時間が金属ワイヤのRC時間よりもはるかに長い場合、結果として生じる電荷は大部分が放電され、電位が、励起した二次電子、及び二次電子(SE)検出器DET上のカウント数、に影響を及ぼすには弱すぎるようになることがある。しかしながら、電荷が完全に漏れ去る前に後続の電子パルスがラインに当たる場合には、後続のパルスに関連して測定される二次放出は、残留電位の影響を受けることがある。
【0035】
[0040] 後続のパルス間の時間を変動させることにより、二次放出の変化が観察されることがある。後続のパルス間の時間がラインの遅延時間を上回る限り、ラインの正味の電荷は、次のパルスの前に漏れ去ることがある。しかしながら、周波数が増加すると共に、即ち、後続のパルス間の時間が減少すると共に、ライン上の残留電荷が、正味の二次放出に影響を与えることがある。後続のパルス間の時間の関数として正味の二次放出を測定することにより、そこから遅延時間を導き出すことができる。二次放出が、前のパルスからの残留電荷によって影響を受けているとき、即ち、後続のパルス間の時間がRC時間と同じかそれよりも短い場合、ラインの遅延時間、例えばラインのRC時間は、測定された二次電子放出とパルス繰り返し周波数との間の関係から導き出すことができる。後続のパルス間の時間は、遅延時間を含む時間範囲に渡って変動することがある。前のパルスと現在のパルスとの間の時間(後続のパルス間の時間)が、遅延時間と概ね同じかそれよりも短い場合、二次放出は前のパルスからの残留電荷によって影響を受けるので、遅延時間は二次放出から導き出すことができる。
【0036】
[0041] 二次電子放出に対する影響は、二次電子放出発生率に依存することがある。上述のように、二次電子放出発生率が1よりも大きい場合、1つの入射電子は、平均して1つより多くの二次電子放出をもたらし、電子の正味の外向きフラックス、従って、負の電荷の正味の外向きフラックスを引き起こす。結果としてラインの正の電荷がもたらされ、正に帯電したラインと負に帯電した二次電子との間の正味の静電力の結果として、二次放出電子の一部がラインに戻ることになる。一方、二次電子放出発生率が1よりも小さい場合、1つの入射電子は、平均して1つより少ない二次電子放出をもたらし、電子の正味の内向きフラックス、従って、負の電荷の正味の内向きフラックスを引き起こす。結果として、ラインの負の電荷が生じる。負に帯電すると、二次放出が増加することがあり、従って、測定信号の増加がもたらされることがある。
【0037】
[0042] 幾つかの実施形態について以下で説明する。
【0038】
[0043] 図2Aは、入射電子パルスのパルス列を示す。入射電子パルスは、パルス繰り返し時間T及びこれに関連したパルス繰り返し周波数で繰り返される。結果として生じるウェーハ電位の増加が、図2B(下側の部分)に示されており、検出器DETによって検出される、結果として生じる二次電子放出が、図2B(上側の部分)に示されている。図2Bに示すように、電位は、各電子パルスの入射と共に増加する。幾つかのパルスの後、電位の増加は一定になることがある。同様に、幾つかのパルスの後、検出器によって検出される二次電子信号は一定になることがある。この一定化により、時間平均されたライン電位の上昇がもたらされ、二次電子SEがウェーハ表面に引き戻され、従って、検出器DETによって測定されるSE信号が実質的に低下することがある。
【0039】
[0044] 上記で説明したように、検出器によって検出される二次電子信号のレベルは、後続のパルス間の繰り返し時間に関係していることがある。より具体的には、パルスの繰り返し時間がラインのRC時間とほぼ同じであるか又はそれより小さい場合、二次電子信号は、パルスの繰り返し周波数の関数として低下又は増加することがある。図2Bの下部分は、パルス間の2つの異なる繰り返し時間、ショートS及びロングLについての電位の増加を示す。図2Bの上部分は、後続のパルス間の2つの異なる繰り返し時間、ショートS及びロングLについての、結果として生じる二次電子電流Icを示す。図2Bから分かるように、二次電子発生率が1より大きい例では、後続のパルス間のより短い時間で、より高い電位が築かれ、これに呼応したより低い二次電子信号が検出されることがある。従って、連続する電子パルス間の時間Tの関数として、時間平均されたSE信号を測定することにより、図3以降に示すように、金属ワイヤのRC時間を調べる方法がもたらされる。
【0040】
[0045] 図3は、縦軸及び横軸に沿った対数軸を用いたプロットを示しており、縦軸に沿って二次電子電流を、横軸に沿って後続のパルス間の時間をプロットしたものである。図3に示すように、検出される二次電子電流とパルス間の時間との間で結果的に得られる関係における屈曲が観察されることがあり、この屈曲より上の後続のパルス間の時間については、水平な部分が観察される。この場合には、1つのパルスからの電荷が、次のパルスが到着する前に漏れ去っている。屈曲より下の後続パルス間の時間については、傾斜部分が観察される。この場合には、1つのパルスからの電荷は、次のパルスが到着する前にまだ漏れ去っていない。破線は、T≪RC及びT≫RC(黄色)の漸近線である。この対数の対数で表わされるプロットにおける「屈曲」は、T=RC/[sqrt(3)phi/(eV_0)]によって与えられることがあり、ここで、phiはeV単位での金属仕事関数であり、V_0は、生み出されたライン電位、単一の電子パルスである。
【0041】
[0046] 従って、RC時間は、曲線における屈曲が観察される繰り返し時間から導き出すことができる。なお、図3は、繰り返し時間の代わりに横軸に沿って繰り返し周波数を使用して描画されることもある。このとき、短い繰り返し時間でのロールオフは、高い繰り返し周波数でのロールオフに転換されることがある。従って、遅延時間は、パルス繰り返し周波数の関数としての二次荷電粒子放出の曲線における高周波数ロールオフ点として、決定されることがある。
【0042】
[0047] 検出器DETにより測定される二次放出から遅延時間を決定することは、データ処理デバイスDPD、例えば、適切なプログラム命令を備えたコンピュータデバイス、によって、行われることがある。なお、データ処理デバイスは、例えば、後続パルス間のパルス繰り返し時間を制御するために、パルス荷電粒子ビーム源も制御することがある。
【0043】
[0048] 本技術は、回路構造のラインの遅延を非接触で測定可能にすることができ、ダイ上で実施することができる。
【0044】
[0049] この技術の一態様により、回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定する方法が提供され、この方法は、
-荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射することであって、荷電粒子ビームのパルスのパルス繰り返し周波数は変動することと、
-パルス繰り返し周波数の各周波数について、それぞれのパルス繰り返し周波数にある荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定することと、
-パルス繰り返し周波数の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出することと、を含む。
【0045】
[0050] この技術の別の態様により、命令を記憶するコンピュータ可読媒体が提供され、この命令は、コンピュータによって実行されると、そのコンピュータにこの技術の上記の態様による方法を実施させる。
【0046】
[0051] この技術の一態様により、回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定するためのシステムが提供され、このシステムは、
-荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射するように構成された荷電粒子ビーム源であって、荷電粒子ビームのパルスのパルス繰り返し周波数は変動する、荷電粒子ビーム源と、
-パルス繰り返し周波数の各周波数について、それぞれのパルス繰り返し周波数にある荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定するための二次荷電粒子放出検出器と、
-パルス繰り返し周波数の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出するように構成されたデータ処理デバイスと、を含む。
【0047】
[0052] この技術の一態様により、ノードのRC定数を決定する方法が提供され、この方法は、
可変の繰り返し周波数で電子ビームパルスを生成し、その電子ビームパルスをノードに向けることと、
電子ビームパルスに応答して放出されたSEを検出することと、
電子ビームパルス間の時間の関数として、検出され時間平均されたSEに基づいて、ノードのRC定数を決定することと、を含む。
【0048】
[0053] 図4図6を参照して、更なる実施形態について説明する。
【0049】
[0054] 図4は、レーザー、例えば本実施形態では、フェムト秒レーザーパルスを生成するフェムト秒レーザーなど、を示す。レーザーパルスは、レーザーパルスを2つの光路に分割するスプリッタに提供され、一方の光路は、レーザーパルスを遅らせるための遅延ステージを備える。結合器は、レーザーパルス(第1のパルス)と遅延されたレーザーパルス(第2のパルス)を合成するように、これらの二重光路、即ち、直接光路と遅延ステージを備えた光路とを結合する。
【0050】
[0055] レーザーパルス(第1のパルス)及び遅延されたレーザーパルス(第2のパルス)によって励起されるように、結合された光路内に光電陰極が配置される。これに対応して、光電陰極は、レーザーパルスに応答して第1の電子ビームパルスを放出し、遅延されたレーザーパルスに応答して遅延された第2の電子ビームパルスを放出する。
【0051】
[0056] 図5Aは、パルス及び遅延されたパルス、即ち第1及び第2のパルスの、結果的に得られる波形を示す。後続パルス間の時間は、パルスと、遅滞されたパルスとも呼ばれる遅延されたパルスとの間の遅延時間(Δとしても示されている)によって形成される。上記の説明に沿って、ラインの帯電は、入射電子ビームパルス及び結果として生じる二次電子放出の正味の影響の結果として発生する。結果として生じるラインの電荷は、ラインのRC時間に従って漏れ去る。結果的に得られるウェーハ電位の波形を、図5Bに示す。図5Bの上図では、パルスと遅延されたパルスとの間の時間はラインのRC時間を上回っており、従って、遅延された第2のパルスより前に、第1のパルスから生じた電荷が漏れ去ることになる。図5Bの下図では、パルスと遅延されたパルスとの間の時間はラインのRC時間よりも短くなっており、従って、遅延されたパルスから生じた電荷が、パルスからの電荷の残りに蓄積することになる。パルス及び遅延されたパルスからの電荷が蓄積する結果として、遅延時間がRC時間の桁以下に減少するにつれて、遅延されたパルスに応答して検出される二次放出が変化する。遅延されたパルスと次のパルスとの間の時間が、パルス遅延時間よりも長いと、それら2つのパルスの蓄積電荷は漏れ去ることになる。
【0052】
[0057] 第1と第2の電子パルス間の時間が金属ワイヤのRC時間よりもはるかに長い場合、結果として生じる電荷は大部分が放電され、電位が、励起した二次電子、及び二次電子(SE)検出器DET上のカウント数、に影響を及ぼすには弱すぎるようになることがある。しかしながら、第1のパルスに関連した電荷が完全に漏れ去る前に後続の第2の電子パルスがラインに当たる場合には、後続の第2のパルスに関連して測定される二次放出は、残留電位の影響を受けることがある。
【0053】
[0058] 第1と第2のパルス間の時間を変動させることにより、二次放出の変化が観察されることがある。第1と第2のパルス間の時間がラインの遅延時間を上回る限り、ラインの正味の電荷は、次のパルスの前に漏れ去ることがある。しかしながら、周波数が増加すると共に、即ち、後続のパルス間の時間が減少すると共に、ライン上の残留電荷が、正味の二次放出に影響を与えることがある。後続のパルス間の時間の関数として正味の二次放出を測定することにより、そこから遅延時間を導き出すことができる。二次放出が、前のパルスからの残留電荷によって影響を受けているとき、即ち、後続のパルス間の時間がRC時間と同じかそれよりも短い場合、ラインの遅延時間、例えばラインのRC時間は、測定された二次電子放出とパルス繰り返し周波数との間の関係から導き出すことができる。第1と第2のパルス間の時間は、遅延時間を含む時間範囲に渡って変動することがある。前のパルスと現在のパルスとの間の時間(後続のパルス間の時間)が、遅延時間と概ね同じか又はそれよりも短い場合、二次放出は前のパルスからの残留電荷によって影響を受けるので、遅延時間は二次放出から導き出すことができる。
【0054】
[0059] 図1図3を参照して説明したのと同様に、第2のパルスの遅延時間は、ある範囲に渡って変動し、従って、第1のパルスと遅延された第2のパルス(後続のパルス)との間の時間は、パルス繰り返し時間の範囲に渡って変動することになる。遅延されたパルスの遅延時間のそれぞれについて、即ち、パルスと遅延されたパルスとの間に結果的に生じる時間のそれぞれについて、遅延されたパルスに応答した二次放出が測定される。
【0055】
[0060] 二次放出の予期される挙動は、1-exp(-t/RC)によって与えられる。
【0056】
[0061] 図6は、測定された時間積分された二次放出と、異なるRC時間での後続のパルス間の時間との相関関係を示している。相関関係のピークが示されており、測定される二次放出の予期される挙動対パルス間の時間との最も高い相関を持つRC時間の値が示されている。
【0057】
[0062] この技術の一態様により、回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定する方法が提供され、この方法は、
-時間間隔Tで荷電粒子ビームの第1のパルスによってラインを照射することと、
-時間間隔Tで荷電粒子ビームの第2のパルスによってラインを照射することであって、第2のパルスは、第1のパルスに関してパルス遅滞時間だけ遅滞しており、パルス遅滞時間は変動することと、
-パルス遅滞時間の異なる値について、荷電粒子ビームの第1及び第2のパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定することと、
-パルス遅滞時間の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出することと、を含む。
【0058】
[0063] この技術の一態様により、命令を記憶するコンピュータ可読媒体が提供され、この命令は、コンピュータによって実行されると、そのコンピュータにこの技術の上記の態様による方法を実施させる。
【0059】
[0064] この技術の一態様により、回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定するためのシステムが提供され、このシステムは、
-時間間隔Tで荷電粒子ビームの第1のパルスによってラインを照射し、時間間隔Tで荷電粒子ビームの第2のパルスによってラインを照射するように構成された荷電粒子ビーム源であって、第2のパルスは、第1のパルスに関してパルス遅滞時間だけ遅滞しており、パルス遅滞時間は変動する、荷電粒子ビーム源と、
-パルス遅滞時間の異なる値について、荷電粒子ビームの第1及び第2のパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定するための二次荷電粒子放出検出器と、
-パルス遅滞時間の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出するように構成されたデータ処理デバイスと、を含む。
【0060】
[0065] この技術の一態様により、ノードのRC定数を決定する方法が提供され、この方法は、
時間間隔Tで第1の電子ビームパルスを生成し、この第1の電子ビームパルスをノードに向けることと、
第1の電子ビームパルスに応答して放出された第1のSEを検出することと、
時間間隔Tで、第1の電子ビームパルスに関して可変遅延を伴う、第2の電子ビームパルスを生成し、この第2の電子ビームパルスをノードに向けることと、
第2の電子ビームパルスに応答して放出された第2のSEを検出することと、
遅延の関数として、時間平均されたSE信号の監視に基づいて、ノードのRC定数を決定することと、を含む。
【0061】
[0066] パルスと遅延されたパルスとの間の遅延時間は、パルスの繰り返し時間よりも実質的に短くてもよいので、図4図6を参照して説明した実施形態を、図1図3を参照して説明した実施形態を用いて測定することができる遅延時間よりも短い遅延時間、即ちRC時間を測定するのに、採用することができる。
【0062】
[0067] なお、レーザートリガー源とマイクロ波キャビティ源の両方について、典型的なパルス持続時間は100fs程度であり、繰り返し周波数は1kHzから100MHzまで変動することがある。従って、RC=6psの場合、条件τ≪RC≪Tを容易に満足することができる。
【0063】
[0068] 説明した実施形態では、後続のパルスのパルス幅は、パルス繰り返し時間よりも小さいことがある。
【0064】
[0069] 測定は繰り返されることがあり、測定された二次放出は、ノイズ及び他の擾乱を低減するために、パルス繰り返し時間毎に平均されることがある。従って、パルス繰り返し時間毎に、少なくとも2つの後続のパルスによるライン照射が繰り返され、この少なくとも2つの後続のパルスに応答した二次荷電粒子放出が繰り返しの度に測定され、繰り返し時間毎に、測定された二次荷電粒子放出が平均される。
【0065】
[0070] 平均化すると、荷電粒子ビームの2つの後続のパルス間のパルス繰り返し時間の関数として、平均された二次荷電粒子放出の変化から遅延時間が導き出される。
【0066】
[0071] 実施形態については、以下の条項を使用して、更に説明することができる。
1.回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定する方法であって、この方法は、
-荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射することであって、荷電粒子ビームのパルスのパルス繰り返し周波数は変動することと、
-パルス繰り返し周波数の各周波数について、それぞれのパルス繰り返し周波数にある荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定することと、
-パルス繰り返し周波数の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出することと、を含む、方法。
2.パルス繰り返しは、ラインの遅延時間に渡る周波数によって定義される周波数を含むパルス繰り返し周波数範囲に渡って変動する、条項1に記載の方法。
3.ラインの遅延時間は、パルス繰り返し周波数の変動に応答した二次荷電粒子放出の高周波数ロールオフ点として決定される、条項1又は2に記載の方法。
4.パルスのパルス幅は、パルス繰り返し周波数によって決まるパルス繰り返し時間よりも小さい、先行する条項の何れか一項に記載の方法。
5.パルス繰り返し周波数毎に、少なくとも2つの後続のパルスによるライン照射が繰り返され、この少なくとも2つの後続のパルスに応答した二次荷電粒子放出が繰り返しの度に測定され、繰り返し周波数毎に、測定された二次荷電粒子放出が平均される、先行する条項の何れか一項に記載の方法。
6.ラインの遅延時間は、平均された二次荷電粒子放出とパルス繰り返し周波数との間の関係から導き出される、条項5に記載の方法。
7.荷電粒子ビームは電子ビームであり、二次荷電粒子放出は二次電子放出である、先行する条項の何れか一項に記載の方法。
8.回路構造はダイである、先行する条項の何れか一項に記載の方法。
9.荷電粒子ビームのパルスはラインをある電位に帯電させ、ラインの電位は二次荷電粒子放出に影響を与え、ラインの遅延時間はラインの電位の減衰から導き出され、ラインの電位の減衰は、パルス繰り返し周波数の変化が二次荷電粒子放出に与える効果から導き出される、先行する条項の何れか一項に記載の方法。
10.命令を記憶するコンピュータ可読媒体であって、この命令は、コンピュータによって実行されると、そのコンピュータに条項1~9の何れか一項による方法を実施させる、コンピュータ可読媒体。
11.回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定するためのシステムであって、このシステムは、
-荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射するように構成された荷電粒子ビーム源であって、荷電粒子ビームのパルスのパルス繰り返し周波数は変動する、荷電粒子ビーム源と、
-パルス繰り返し周波数の各周波数について、それぞれのパルス繰り返し周波数にある荷電粒子ビームのパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定するための二次荷電粒子放出検出器と、
-パルス繰り返し周波数の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出するように構成されたデータ処理デバイスと、を含む、システム。
12.荷電粒子ビーム源は、ラインの遅延時間に渡る周波数によって定義される周波数を含む、パルス繰り返し周波数範囲に渡ってパルス繰り返しを変動させるように構成される、条項11に記載のシステム。
13.データ処理デバイスは、パルス繰り返し周波数の変動に応答した二次荷電粒子放出の高周波数ロールオフ点としてラインの遅延時間を決定するように構成される、条項11又は12に記載のシステム。
14.パルスのパルス幅は、パルス繰り返し周波数によって決まるパルス繰り返し時間よりも小さい、条項11~13の何れか一項に記載のシステム。
15.荷電粒子ビームは、パルス繰り返し時間毎に、少なくとも2つの後続のパルスによってラインを照射することを繰り返すように構成され、検出器は、繰り返しの度に少なくとも2つの後続のパルスに応答した二次荷電粒子放出を測定するように構成され、データ処理デバイスは、繰り返し時間毎に、測定された二次荷電粒子放出を平均するように構成される、条項11~14の何れか一項に記載のシステム。
16.データ処理デバイスは、荷電粒子ビームの2つの後続のパルス間のパルス繰り返し時間の関数として、平均された二次荷電粒子放出の変化からラインの遅延時間を導き出すように構成される、条項15に記載のシステム。
17.荷電粒子ビームは電子ビームであり、二次荷電粒子放出は二次電子放出である、条項11~16の何れか一項に記載のシステム。
18.回路構造はダイである、条項11~17の何れか一項に記載のシステム。
19.荷電粒子ビームのパルスはラインをある電位に帯電させ、ラインの電位は二次荷電粒子放出に影響を与え、データ処理デバイスは、ラインの電位の減衰からラインの遅延時間を導き出すように、且つ、パルス繰り返し周波数の変化が二次荷電粒子放出に与える効果からラインの電位の減衰を導き出すように構成される、条項11~18の何れか一項に記載のシステム。
20.ノードのRC定数を決定する方法であって、
可変の繰り返し周波数で電子ビームパルスを生成し、その電子ビームパルスをノードに向けることと、
電子ビームパルスに応答して放出されたSEを検出することと、
電子ビームパルス間の時間の関数として、検出され時間平均されたSEに基づいて、ノードのRC定数を決定することと、を含む、方法。
21.回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定する方法であって、
-時間間隔Tで荷電粒子ビームの第1のパルスによってラインを照射することと、
-時間間隔Tで荷電粒子ビームの第2のパルスによってラインを照射することであって、第2のパルスは、第1のパルスに関してパルス遅滞時間だけ遅滞しており、パルス遅滞時間は変動することと、
-パルス遅滞時間の異なる値について、荷電粒子ビームの第1及び第2のパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定することと、
-パルス遅滞時間の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出することと、を含む、方法。
22.パルス遅滞時間だけ第1のパルスを遅滞させて第2のパルスを形成することを更に含む、条項21に記載の方法。
23.パルス遅滞時間は、時間間隔Tよりも小さい、条項21又は22に記載の方法。
24.パルスのパルス幅は、パルス繰り返し周波数によって決まるパルス繰り返し時間よりも小さい、条項21~23の何れか一項に記載の方法。
25.パルス遅滞時間毎に、少なくとも2つの後続のパルスによるライン照射が繰り返され、それらのパルスに応答した二次荷電粒子放出が繰り返しの度に測定され、パルス遅滞時間毎に、測定された二次荷電粒子放出が平均される、条項21~24の何れか一項に記載の方法。
26.ラインの遅延時間は、平均された二次荷電粒子放出とパルス繰り返し周波数との間の関係から導き出される、条項25に記載の方法。
27.荷電粒子ビームは電子ビームであり、二次荷電粒子放出は二次電子放出である、条項21~26の何れか一項に記載の方法。
28.回路構造はダイである、条項21~27の何れか一項に記載の方法。
29.荷電粒子ビームのパルスはラインをある電位に帯電させ、ラインの電位は二次荷電粒子放出に影響を与え、遅延時間はラインの電位の減衰から導き出され、ラインの電位の減衰は、パルス遅滞時間の変化が二次荷電粒子放出に与える効果から導き出される、条項21~28の何れか一項に記載の方法。
30.命令を記憶するコンピュータ可読媒体であって、この命令は、コンピュータによって実行されると、そのコンピュータに条項21~29の何れか一項による方法を実施させる、コンピュータ可読媒体。
31.回路構造内のラインにおける信号の伝播の遅延時間を測定するためのシステムであって、このシステムは、
-時間間隔Tで荷電粒子ビームの第1のパルスによってラインを照射し、時間間隔Tで荷電粒子ビームの第2のパルスによってラインを照射するように構成された荷電粒子ビーム源であって、第2のパルスは、第1のパルスに関してパルス遅滞時間だけ遅滞しており、パルス遅滞時間は変動する、荷電粒子ビーム源と、
-パルス遅滞時間の異なる値について、荷電粒子ビームの第1及び第2のパルスによってラインを照射することに応答した、二次荷電粒子放出を測定するための二次荷電粒子放出検出器と、
-パルス遅滞時間の変動に応答した二次荷電粒子放出に基づいて、ラインの遅延時間を導出するように構成されたデータ処理デバイスと、を含む、システム。
32.荷電粒子ビーム源は、パルス遅滞時間だけ第1のパルスを遅滞させて第2のパルスを形成するように更に構成される、条項31に記載のシステム。
33.パルス遅滞時間は、時間間隔Tよりも小さい、条項31又は32に記載のシステム。
34.パルスのパルス幅は、パルス繰り返し周波数によって決まるパルス繰り返し時間よりも小さい、条項31~33の何れか一項に記載のシステム。
35.荷電粒子ビーム源は、パルス遅滞時間毎に、少なくとも2つの後続のパルスが繰り返されるまでにはラインを照射するように構成され、二次荷電粒子放出検出器は、繰り返しの度にそれらのパルスに応答した二次荷電粒子放出を測定するように構成され、データ処理デバイスは、パルス遅滞時間毎に、測定された二次荷電粒子放出を平均するように構成される、条項31~33の何れか一項に記載のシステム。
36.データ処理デバイスは、平均された二次荷電粒子放出とパルス繰り返し周波数との間の関係からラインの遅延時間を導き出すように構成した、条項35に記載のシステム。
37.荷電粒子ビームは電子ビームであり、二次荷電粒子放出は二次電子放出である、条項31~36の何れか一項に記載のシステム。
38.回路構造はダイである、条項31~37の何れか一項に記載のシステム。
39.荷電粒子ビームのパルスはラインをある電位に帯電させ、ラインの電位は二次荷電粒子放出に影響を与え、データ処理デバイスは、ラインの電位の減衰から遅延時間を導き出すように構成され、ラインの電位の減衰は、パルス遅滞時間の変化が二次荷電粒子放出に与える効果から導き出される、条項31~38の何れか一項に記載のシステム。
40.ノードのRC定数を決定する方法であって、
時間間隔Tで第1の(ポンプ)電子ビームパルスを生成し、この第1の電子ビームパルスをノードに向けることと、
第1の電子ビームパルスに応答して放出された第1のSEを検出することと、
時間間隔Tで、第1の電子ビームパルスに関して可変遅延Δを伴う、第2の(プローブ)電子ビームパルスを生成し、この第2の電子ビームパルスをノードに向けることと、
第2の電子ビームパルスに応答して放出された第2のSEを検出することと、
遅延Δの関数として、時間平均されたSE信号の監視に基づいて、ノードのRC定数を決定することと、を含む、方法。
41.電子ビームパルスは、レーザーパルスが電子エミッタに向けられるのに応答して生成され、2つのパルス列の間の遅延Δは、1本のレーザービームを分割し、統合し、分岐のうちの1つの光路長を変えることにより実現される、条項40に記載の方法。
【0067】
[0072] 本明細書で使用する場合、特段の断りが無い限り、「又は」という用語は、実現不可能である場合を除いて、全ての可能な組み合わせを包含する。例えば、構成要素がA又はBを含むことがあると記載されている場合、特段の断りが無い限り又は実現不可能で無い限り、その構成要素は、A、又はB、又はA及びBを含むことがある。第2の例として、構成要素がA、B、又はCを含むことがあると記載されている場合、特段の断りが無い限り又は実現不可能で無い限り、その構成要素はA、又はB、又はC、又はA及びB、又はA及びC、又はB及びC、又はA及びB及びCを含むことがある。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
【国際調査報告】