(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】基材上の金属エフェクト顔料を含むレーダー対応コーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230915BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230915BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230915BHJP
C09D 5/29 20060101ALI20230915BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230915BHJP
C09C 1/62 20060101ALI20230915BHJP
C09C 3/00 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
C09D201/00
B32B27/20 A
B05D7/24 303J
C09D5/29
C09D7/61
C09C1/62
C09C3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512455
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2021073926
(87)【国際公開番号】W WO2022049041
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ピロンティ ジャンフランコ
(72)【発明者】
【氏名】ランドマン クリストフ
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC14
4D075AC21
4D075AC57
4D075AE03
4D075CB13
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4J038HA066
4J038KA08
4J038KA20
4J038NA19
4J038PB07
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、基材上の金属エフェクト顔料を含有するレーダー対応コーティング、かかるコーティングを製造するための方法、及びかかる方法でコーティングされた基材の、特に車両建造における使用に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の金属エフェクト顔料を含むレーダー対応コーティングであって、前記コーティングは、
-吸収特性を有する顔料を少なくとも1つ含み、且つ金属エフェクト顔料を含まない、層(A)と、
-フレーク状エフェクト顔料を含む層(B)であって、前記フレーク状エフェクト顔料は金属エフェクト顔料のみであり、層(B)は2~10μmの範囲の層厚を有する、層(B)と、
からなる少なくとも1つの層パッケージを有することを特徴とする、
コーティング。
【請求項2】
第1の層は、有機吸収顔料、無機吸収顔料、及び/又は吸収特性を有するフレーク状エフェクト顔料を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
層(A)と(B)とを含む前記層パッケージは、10~40μmの範囲の全層厚を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のコーティング。
【請求項4】
層(A)は、フレーク状エフェクト顔料として、銀白色の吸収色を有する干渉顔料を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項5】
層(A)は、フレーク状エフェクト顔料として、赤色の吸収色を有する干渉顔料を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項6】
層(B)の前記金属エフェクト顔料はアルミニウム顔料であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項7】
層(B)は、前記金属エフェクト顔料を、層(B)の質量に基づいて3~25質量%の範囲の濃度で含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項8】
層(A)は、吸収特性を有する前記顔料を、層(A)の質量に基づいて10~25質量%の範囲の濃度で含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項9】
前記基材はプラスチックプレート又はフィルムであることを特徴とし、前記プレート又はフィルムは三次元の外形を有してもよい、請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項10】
更なる層が、前記基材と、層(A)及び(B)を含む前記層パッケージとの間、及び/又は前記層パッケージの上に位置してもよいことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項11】
前記更なる1つの層又は複数の層が、プライマー層及び/又は最外クリアコートであることを特徴とする、請求項10に記載のコーティング。
【請求項12】
車両仕上げであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項13】
基材上の金属エフェクト顔料を含むレーダー対応コーティングの製造方法であって、
-吸収特性を有する顔料を少なくとも1つ含み、且つ金属エフェクト顔料を含まない、層(A)が、プラスチックプレート又はプラスチックフィルムを含むプレコートされていてもよい基材に適用され、その後
-フレーク状エフェクト顔料を含む層(B)であって、前記フレーク状エフェクト顔料は金属エフェクト顔料のみであり、層(B)は2~10μmの範囲の乾燥層厚を有する、層(B)が、層(A)に適用されること、
又は
-フレーク状エフェクト顔料を含む層(B)であって、前記フレーク状エフェクト顔料は金属エフェクト顔料のみであり、層(B)は2~10μmの範囲の乾燥層厚を有する、層(B)が、プラスチックプレート又はプラスチックフィルムを含むプレコートされていてもよい基材に適用され、その後
-吸収特性を有する顔料を少なくとも1つ含み、且つ金属エフェクト顔料を含まない、層(A)が、層(B)に適用されること
を特徴とする、方法。
【請求項14】
層(A)及び(B)は、スプレー法、刷毛塗り法、ローラーコーティング法、コイルコーティング法、カーテンコーティング法、又はインモールド法によって適用されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基材は、プライマー層でプレコートされていることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
クリアコートが、層パッケージ(A)(B)の層(B)又は層パッケージ(B)(A)の層(A)に、前記コーティングの最外層として適用されることを特徴とする、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか一項に記載の基材上の金属エフェクト顔料を含むコーティングの、車両部品のレーダー対応車両仕上げとしての使用。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか一項に記載のコーティングを少なくとも1つ有する、プラスチックプレート又はプラスチックフィルムを含む基材を含有する車両部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上の金属エフェクト顔料を含むレーダー対応(Radar-fahige)コーティング、かかるコーティングを製造するための方法、及び当該方法でコーティングされた基材の、特に車両建造における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転が可能な車両の増加に伴い、他の車両又は交通障害物との距離測定と、他の交通参加者の速度測定との両方を可能にするレーダー装置を、対応する自動車部品に組み込むことが、これまで想像できなかったほど必要となっている。かかるレーダー装置は、車両の外観を損なわないために、一般的に車両のバンパーの背後に設置される。
長年にわたり、メタリック塗料、好ましくは銀色メタリック塗料は、特に自家用車分野で、最も人気のある車両用塗料の1つに数えられてきた。しかし、通常のメタリック塗料はアルミニウム系金属エフェクト顔料を含有しており、レーダー波(通常は76~81GHzの周波数領域にある)を反射、減衰又は吸収する可能性があり、その度合は、これまで通例であった車両のレーダー装置のカバー部品用のメタリック車両塗料の使用がレーダー装置の機能の望ましくない低下を招くほどであることから、これらのメタリック塗料は、かかる車両の内部に設置されたレーダー装置のカバー部品の最適設計に関して大きな課題を呈する。
従って、車両の外観を損なわず、且つ設置したレーダー装置の優れた機能を有効にする、車両用レーダー装置をカバーするための解決策を提供する試みは十分に行われてきた。
従って、対応するカバー部品は、例えば、かなり実質的にレーダー波を透過する領域及びレーダー波の通過能力をごくわずかしか減衰しない金属化ストラットを有するラジエーターグリルとして設計される。
かかるカバー部品は、例えば、独国特許発明第19844021号(C2)明細書に記載されている。上記明細書では、外側に見える金属層は、ナノメートル範囲の厚さを有する蒸着インジウム層で構成される。こうしてコーティングされたラジエーターグリルストラットの視覚的印象は、クロムめっきに等しいと主張されている。
【0003】
例えば、欧州特許第954052号(B1)明細書に記載のように、この種の極めて薄いスパッタ金属層を用いた社章を提供することも可能である。
一方、独国特許出願公開第102011016683号(A1)明細書では、黒色プラスチック基材を、厚さがナノメートル領域のシリコンの層でコーティングしている。
上記カバー部品は、一部の領域にクロム光沢に相当する外見の光沢を有することを意図するラジエーターグリル又は社章である。しかし、この種のコーティングは、レーダー装置のビーム経路内に位置しているものの、観察者に従来の銀色又は着色メタリック塗料の視覚的印象を残すことを意図しない車両部品には適さない。ここで困難な点は、メタリック塗料で通例である強力な明度フロップ(照射角度又は観察角度の変化時の明色から暗色への明らかな変化)を達成すること、メタリック塗料の隠蔽力を達成すること、及びレーダー波の伝送が設置されたレーダー装置が十分に機能する形で動作することを可能にするのに十分な程度まで、レーダー波の減衰を低減することにある。
特開2004-244516号公報は、ラジエーターグリルとして用いることができるが、別の車両部品の構成要素、例えばテールゲートとしても用いることができる、電磁放射に対して高い透過性を有する光輝性製品を開示している。ポリカーボネートパネル上の層は、亜鉛、スズ又はインジウムなどの金属粒子を含んでもよいが、そうではなく、例えば、二酸化チタン被覆マイカなどの干渉顔料で着色されていてもよい。粒子は、ポリウレタン含有層中に3~8質量%の濃度でパネルに適用される。黒色のベースコートが裏面のコーティングとして適用される。
複数の層を含む得られた光輝性製品は、電磁放射に対する高い透過性及び高い光輝性を有すると主張されている。
レーダー放射に対する優れた透過性は、そのようなコーティングに二酸化チタン被覆マイカを含む干渉顔料を用いて達成できるが、メタリック仕上げの隠蔽力及び後者を用いて達成できる強力なメタリックの明度フロップは、単純構造のみを有するそのようなマイカ系干渉顔料では得ることができない。
特開2010-030075号公報は、従って、層であって、ガラスフレーク又は二酸化チタン被覆マイカに加えて低濃度のアルミニウム顔料もプラスチック基材上に有し、例えば車両バンパーに用いることができる、層を提案している。この層におけるアルミニウム顔料は低濃度であり、結果として個別のアルミニウム顔料粒子間で達成し得る比較的大きな距離は、良好なレーダー透過性を高い光輝性と同時に生じると主張されている。しかし、少量でしか存在しないアルミニウム顔料は、メタリック塗料から通例得られる隠蔽力を達成できず、ガラスフレーク又はTiO2マイカ顔料は事実上隠蔽力を有さない。
独国特許出願公開第102019209893号(A1)明細書も、アルミニウム顔料とシリケート系顔料との混合物をプラスチック基材上の層に含む車両部品(例えば、ラジエーターグリル)用のレーダー波透過性コーティングを開示している。後者の顔料は、二酸化チタン被覆マイカ又は二酸化チタン被覆ガラスであり得る。基材上のこの層の下に位置する第2の層は、明度が低く、好ましくは黒色である。得られたラジエーターグリルは、真珠層様の白色を有することから、金属様の外観を有する。しかし、メタリック仕上げの視覚的印象は、この種の層構造では達成できない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、基材上のレーダー波透過性コーティングを提供することであり、当該コーティングは、特に車両建造においてレーダー装置のカバー部品への使用に好適であり、従来の金属エフェクト顔料、特にアルミニウム顔料を含み、好ましくは従来の車両メタリック仕上げとの視覚的な違いは出来るだけ小さく、特にメタリックの外観と、高い隠蔽力と、強力な明度フロップとを、良好なレーダー波透過性と同時に有する。
本発明の更なる目的は、上記のコーティングの製造方法を提供することである。
加えて、本発明の更なる目的は、この種のコーティングの使用を示すことである。
【0005】
本発明の目的は、基材上の金属エフェクト顔料を含むレーダー対応コーティングによって達成され、当該コーティングは、
-吸収特性を有する顔料を少なくとも1つ含み、且つ金属エフェクト顔料を含まない、層(A)と、
-フレーク状エフェクト顔料を含む層(B)であって、フレーク状エフェクト顔料は排他的に金属エフェクト顔料であり、層(B)は2~≦10μmの範囲の層厚を有する、層(B)と、
からなる少なくとも1つの層パッケージを有する。
更に、本発明の目的は、基材上の金属エフェクト顔料を含むレーダー対応コーティングの製造方法によっても達成され、当該方法において、
-吸収特性を有する顔料を少なくとも1つ含み、且つ金属エフェクト顔料を含まない、層(A)が、プラスチックプレート又はプラスチックフィルムを含む任意選択でプレコートされた基材に適用され、その後
-フレーク状エフェクト顔料を含む層(B)であって、フレーク状エフェクト顔料は排他的に金属エフェクト顔料であり、層(B)は2~≦10μmの範囲の乾燥層厚を有する、層(B)が層(A)に適用される、
又は
-フレーク状エフェクト顔料を含む層(B)であって、フレーク状エフェクト顔料は排他的に金属エフェクト顔料であり、層(B)は2~≦10μmの範囲の乾燥層厚を有する、層(B)が、プラスチックプレート又はプラスチックフィルムを含む任意選択でプレコートされた基材に適用され、その後
-吸収特性を有する顔料を少なくとも1つ含み、
-且つ金属エフェクト顔料を含まない、層(A)が、層(B)に適用される。
更に、本発明の目的は、基材上の上記コーティングを、レーダー対応車両仕上げとして車両部品に使用することでも達成される。
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、先行技術文献に記載された解決策とは対照的に、フレーク状エフェクト顔料を含む層を有するコーティングであって、フレーク状エフェクト顔料が排他的に金属エフェクト顔料からなるコーティングを用いて、車両建造においてレーダー装置のカバー部品を提供できることを見出した。従って、この種の層は、従来のメタリック仕上げの層と非常に類似している。しかし、レーダー装置の適切な動作に必要な十分に高いレーダー波伝送を達成するためには、特別な注意を払わなければならない。従って、例えば、金属エフェクト顔料を含むコーティング層は、低層厚のみを有することが必須である。本発明によると、これは2~≦10μmの範囲である。この層厚範囲内で、好ましい範囲を、使用するコーティング組成物中の金属エフェクト顔料の濃度の選択によって設定できる。従って、コーティング組成物中の金属エフェクト顔料の割合が比較的高い場合、好ましくは4~7μmの範囲の層厚で十分であるが、コーティング組成物中の金属エフェクト顔料が比較的低濃度の場合、>7~<10μmの範囲の層厚の方が有利である。加工技術の結果としての層内での層厚変動は、ここで示した層厚範囲の事例に影響してはいけないことは言うまでもない。決定的な要因は、それぞれのコーティング操作の標的平均層厚である。
しかし、コーティングの所望の機能モードのためには、金属エフェクト顔料を含むこの層が、好適な基材上に位置する層パッケージの一部であることが特に重要である。
金属エフェクト顔料で着色された層は、本明細書において層パッケージの層(B)と呼ばれる。層(B)は、基材から見て基材上の層(A)のすぐ上に位置するが、基材から見て層(A)のすぐ下にも位置し得る。いずれの変形でも、基材上のコーティングの優れたレーダー波伝送を達成できるが、この2つの変形は外観が異なる。
従って、本発明による層パッケージは、基材上の層(A)と層(B)とからなり、第1の実施形態では、層(B)は、層(A)の真上に位置し、その結果基材上の層パッケージの最外層を表す。あるいは、第2の実施形態では、層(A)は、層(B)の真上に位置し、その結果基材上の層パッケージの最外層を表す。
【0007】
本発明によると、層パッケージの層(A)は、吸収特性を有する顔料を少なくとも1つ(1種類)含む。これは、有機吸収顔料、無機吸収顔料及び/又は吸収特性を有するフレーク状エフェクト顔料であり得る。吸収特性を有する顔料は、それぞれの場合に、個別に、又は1つの物質分類内の混合物として(例えば、種々の無機又は有機吸収顔料の混合物として)、異なる物質分類からの混合物として(例えば、吸収特性を有するフレーク状エフェクト顔料と、有機及び/又は無機吸収顔料との混合物として)、又は有機及び/又は無機吸収顔料と、フレーク状で吸収特性のない非メタリックエフェクト顔料との混合物としても、層(A)に存在し得る。層(A)は、好ましくは、吸収特性を有する少なくとも1つのフレーク状エフェクト顔料(1種)を含み、有機吸収顔料及び/又は無機吸収顔料は、任意選択で同様に存在してもよい。層(A)に存在する吸収特性を有するフレーク状エフェクト顔料が、金属エフェクト顔料ではあり得ないことは、本発明に必須である。
使用される吸収特性を有する有機又は無機顔料は、種々の産業用コーティングに通常用いられる全ての吸収顔料であることができる。上記顔料は、好ましくは10~500nm、特に10~<100nmの範囲の粒子直径で存在する。追加的に用いた吸収顔料が有機顔料か無機顔料かにかかわらず、入射光を透過するような小さな粒子直径を有する場合に、フレーク状エフェクト顔料と組み合わせると、その特殊な効果(光沢、光輝性、干渉色など)は、視覚的に特に優れた効果を生じる。そのような場合、吸収顔料の粒子直径は、好ましくは10~<40nmの範囲である。吸収顔料の調製物は、一般的に市販されている。用いる塗料システムとの適合性に応じて、例えば、Heucotint(登録商標)W(Heubach、ドイツ)、Heucotint(登録商標)UN(Heubach、ドイツ)、MIPA WBC(Mipa、ドイツ)、Standoblue(登録商標)(Standox GmbH、ドイツ)、Standohyd(登録商標)(Standox GmbH、ドイツ)、Vocaflex(登録商標)(Arichemie、ドイツ)、Vocaplast(登録商標)(Arichemie、ドイツ)などのシステム、又は他のシステムも考慮される。
好適な吸収顔料には、例えば、イソインドリドン(isoindolidone)、ベンゾイミダゾール、キナクリドン、フタロシアニンCu、ペリレン、カーボンブラック及び/又は二酸化チタンが数例として挙げられる。
好ましくは、本発明によるコーティングへの使用に好適なのは(ここでは層(A)において)、個別又は混合物の無機及び有機吸収顔料、吸収特性を有さない非メタリックフレーク状エフェクト顔料との混合物の無機及び/若しくは有機吸収顔料、又は任意選択で有機及び/若しくは無機吸収顔料との混合物の吸収特性を有するフレーク状エフェクト顔料である。
好ましい実施形態では、本発明によるコーティングの層パッケージの層(A)は、吸収特性を有するフレーク状エフェクト顔料である。
特に、吸収特性を有するフレーク状干渉顔料が本発明に従って使用される。
【0008】
フレーク状干渉顔料の光学的効果は、一般に、この種のエフェクト顔料(通常はフレーク状支持材上にある)が含む薄層の配列における光の反射と伝送現象との組み合わせから一般的になる。かなりの頻度で、無色で実質的に可視光に対して透過性である材料、例えば、二酸化チタンで被覆されたフレーク状マイカ顔料のみが使用される。かかる顔料は、銀色の干渉色を有することができ、又は有彩の干渉色も有し得るが、全体的に透明でマストーンを有さない。かかる顔料は、有機及び/又は無機吸収顔料との組み合わせでのみ、本発明によるコーティングの層(A)に用いることができる。
フレーク状支持体、あるいはフレーク状支持体上に位置する層の少なくとも1つのいずれかが、固有の色、すなわち、吸収色を有する材料からなる場合に、干渉顔料は吸収特性(従ってマストーン)を獲得する。これらは、着色金属酸化物、金属亜酸化物、混合金属酸化物、又は酸素欠乏金属酸化物又は金属酸化物水和物であり得る。
干渉顔料は、有機着色顔料を含む層による吸収特性も獲得する。
それに加えて好適な顔料は、いわゆる炭素包含顔料で、これはフレーク状干渉顔料からなる層の少なくとも1つに、ある割合の元素状炭素を含む。
特に好ましくは、透明な支持体フレーク上に1つ以上の干渉層と、最終層として、炭素からなる極薄の光伝達層とを有する干渉顔料を用いることも可能である。かかる顔料は、例えば、本特許所有者による欧州特許公開第3795645号(A1)明細書に記載されている。
【0009】
好ましくは本発明に従って用いられる、吸収特性を有するフレーク状エフェクト顔料は、Fe2O3、FeO、Fe3O4、FeOOHなどの酸化鉄、TiO、Ti2O3、Ti3O5、Ti4O7、Ti2O、Ti3O若しくはTi6Oなどの亜酸化チタン、又はCr2O3などの酸化クロムを含む少なくとも1つの層、又は炭素からなる層を有する干渉顔料である。
考慮されるフレーク状支持体材料は、天然又は合成マイカ、カオリン、タルク又はセリサイト、更にはガラス、ホウケイ酸カルシウムアルミニウム、SiO2、TiO2、Al2O3、黒鉛フレーク又は酸化鉄フレークである。用いられるフレーク状支持体材料は、好ましくは天然又は合成マイカ、ホウケイ酸カルシウムアルミニウムフレーク、ガラスフレーク、SiO2フレーク又はAl2O3フレークである。
有彩干渉色及び有彩吸収色を示す干渉顔料を、層(A)に容易に用いることができる。従って、例えばMerck KGaA(Darmstadt)から商標名Colorstream(登録商標)F10-51 Lava Redで販売されている干渉顔料は、特に好適な着色干渉顔料であることが証明されている。この顔料は、フレーク状SiO2基材をベースとし、Fe2O3でコーティングされている。
特に好ましくは銀白色の吸収色を有する干渉顔料が使用される。かかる干渉顔料は、例えば、Merck KGaAから商標名Iriodin(登録商標)9602 Silver-Grey SW、Iriodin(登録商標)9605 Blue Shade Silver SW及びIriodin(登録商標)9612 Silver-Grey Fine Satin SWで入手できる。これらはマイカフレークをベースとし、Fe2O3又は亜酸化チタンを含む層を少なくとも1つ有する。
吸収色、特に銀白色の吸収色を有する干渉顔料は、既に上に記載したように、吸収特性を有する他の顔料との混合物、例えばカーボンブラックとの混合物にも用いることができる。
【0010】
銀白色の吸収色を有する干渉顔料は、コーティングが全体として銀メタリックの外観を有することを意図する場合に、層(A)における吸収特性を有する顔料としての使用に特に好適であることが確認されている。フレーク状基材上の薄層の配列形態という顔料構造により、この種の干渉顔料は、入射光が顔料に当たったときに、視覚的に認識可能な光沢を示す。層(B)は、金属エフェクト顔料を含み、層厚が非常に低いことから、その隠蔽力だけでは、不透明な銀メタリック仕上げの全体的な視覚的印象を得るには不十分である。従って、層(B)の隠蔽力は、特に銀白色の吸収色を有する干渉顔料が存在する場合に、層(A)中の吸収特性を有する顔料の隠蔽力によって効果的に補足される。層(B)が銀色メタリックエフェクト顔料、例えば銀色アルミニウム顔料を含む場合に、干渉顔料の銀白色の吸収色は、層パッケージの層(A)及び(B)が同じ色領域に位置し、層パッケージによって形成されるコーティングが、高い隠蔽力、高光沢及び明らかな明度フロップを有する本質的に均質な銀メタリックの印象を残すことを確実とする。
【0011】
コーティングの層パッケージ全体の不透明な銀色の外観は、基材から見て層(A)-(B)の配列の場合、及び層(B)-(A)の配列の場合の両方で生じる。層配列(A)-(B)で達成され得る光沢と、コーティングの明度フロップは、層配列(B)-(A)よりも顕著である。一方、上記2つの実施形態のレーダー性能は同じオーダーである。
従って、層パッケージの銀色の全体的印象を達成するためには、層パッケージの層(A)が吸収特性を有する顔料を含み、その種類及び量が、層(A)が、個別に考えたときに灰色の色調を有し、従って無彩であり、中明度領域(L*a*b*色空間において、黒色背景でのL*15°が40~90の範囲)にあるような種類及び量である場合に、本発明の成功に特に有利である。L*15値の決定法は、実施例の部分に記載されている。この目的で、銀白色の吸収色を有する干渉顔料を有する層(A)の着色は、極めて好適であることが証明されている。無機又は有機吸収顔料は、有利には無彩吸収色を有し、追加的に第1の層に存在してもよい。
有彩吸収色を有する吸収顔料、特に有彩吸収色を有する干渉顔料を、層(B)の隠蔽力を増大するために、層(A)に用いることもできる。基材上の層配列(A)-(B)において、層パッケージ全体の外観は、用いる金属エフェクト顔料に応じて異なる。層(B)中の銀色金属エフェクト顔料の場合、有彩吸収色を有する干渉顔料の吸収色方向への銀メタリックの全体的印象のわずかなカラーシフトが生じ、これは特定の色ニュアンスとして望ましい場合がある。対照的に、層(B)中の着色金属エフェクト顔料が同じ色領域(例えば、オレンジ又は赤色領域)に吸収色を有する干渉顔料と組み合わされた場合、層(A)において、飽和色で鮮明なメタリック効果が達成できる。基材上の層配列(B)-(A)の場合、飽和色を有するかかるメタリック効果は、層(B)における銀色金属エフェクト顔料の使用時に既に生じる。その結果、コーティング全体の認識可能な色は、更なる着色顔料が層(A)に存在しない場合、非メタリック干渉顔料の吸収色に対応する。
本発明によると、層(A)は、有彩吸収色を有する顔料を含み、黒色背景での明度L*15°(L*a*b*色空間における)が50~100(実施例部分の測定条件)の範囲である。
対照的に、吸収特性を有する顔料を含有することで黒色の外観を有する層パッケージの層(A)は、層配列(A)-(B)において層(B)の低い層厚によって生じるコーティングの全体的外観が曇った又は斑状の性質を有することから、本発明によるコーティングにかなり不適切である。層配列(B)-(A)の場合でも、不均一な外観が得られると考えられる。従って、黒色を有する層(A)は、本発明によると、好ましくない。
層(A)における吸収特性を有する顔料の総濃度は、層(A)の質量を基準にして、10~25質量%の範囲、好ましくは15~20質量%の範囲である。
吸収特性を有する干渉顔料を第1の層に用いた場合、干渉顔料は一般に1~100μmの範囲、特に2~70μm、特に好ましくは3~50μmの範囲の粒径を有する。干渉顔料の厚さは、0.1~2μmの範囲である。
対照的に、古典的な吸収顔料は、有機又は無機の性質であることができ、約10~<100nm、好ましくは1~<40nmの範囲の粒子直径を有する。
【0012】
本発明で用いられる層パッケージの層(A)と異なり、層(B)はフレーク状エフェクト顔料として金属エフェクト顔料を排他的に含む。
本発明の意味で、金属エフェクト顔料は、金属からなる又は少なくとも1つの金属層を有するフレーク状エフェクト顔料を意味するとみなされる。こうした顔料としては、特に、メタリック仕上げに通常用いられるアルミニウム顔料が挙げられ、これはいわゆるコーンフレーク又は1ドル銀貨の形態で、本発明によるコーティングへの使用に好適である。湿式研削によって製造された他のアルミニウム顔料も好適であるが、真空蒸着法によって製造されたアルミニウム顔料は好適ではない。上記アルミニウム顔料は、塗料及びコーティング、特に自動車仕上げに頻繁に使用される。純アルミニウムフレークは、顔料の使用又は色特性を変更又は最適化するために、有機及び/又は無機材料でコーティングすることができる。
青銅又は真鍮顔料もまた金属エフェクト顔料として好適であるが、好ましくはアルミニウム顔料が用いられる。
金属エフェクト顔料は、種々の製造業者から、多種多様な種類及びサイズで市販されている。ここで好適な金属エフェクト顔料の粒径は、d50値として5~50μmの範囲、好ましくは10~35μmのd50範囲である。粒径は、製造業者によって報告されており、それに従って選択できることから、別途粒径測定を必要としない。
本発明によるコーティングの層(B)に用いられる金属エフェクト顔料のサイズ比は、表示の範囲に特に限定されない。すなわち、通常の市販金属エフェクト顔料を用いることができる。
【0013】
例えば、好適な銀色金属エフェクト顔料は、アルミニウム顔料又は顔料調製物であるEckart GmbH社のStapa(登録商標)IL Hydrolan 2156、Stapa(登録商標)IL Hydrolan 8154及びStapa(登録商標)IL Hydrolan 3580、Toyal社のEmeral(登録商標)EMR-767E及びEmeral(登録商標)EMR-1227、又はSilberline社のAPE-5245-C33又はAQUA PASTE(登録商標)5500-C43が数例として挙げられる。
着色金属エフェクト顔料としては、特にMerck KGaAのMeoxal(登録商標)シリーズの顔料、Meoxal(登録商標)F120-30 CWT Taklamakan Gold、Meoxal(登録商標)F120-51 CWT Victoria Red,Meoxal(登録商標)F120-58 CWT Wahiba Orange及びMeoxal(登録商標)F121-51 CWT Atacama Redが挙げられる。
【0014】
金属エフェクト顔料は、コーティングの層パッケージの層(B)中に、層(B)の質量を基準にして3~25質量%、特に15~20質量%の量で存在する。用いられる金属エフェクト顔料の量と層(B)の層厚とは、互いに一致する。
層パッケージの層(B)は、金属エフェクト顔料に加えて、微粉化した吸収顔料又は染料も任意選択で含み得るが、更なるフレーク状エフェクト顔料は含まない。有機及び無機着色顔料の例及びそのサイズ比は、既に上に記載している。
層(B)の層厚は、層内に存在する金属エフェクト顔料によるレーダー放射の減衰が過度にならないように、2~≦10μmの範囲に制限される。しかし、そのビーム経路に基材上の本発明によるコーティングが在るレーダー装置の正常な動作が確保される、わずかなレーダー放射の減衰は許容される。層(B)の最適な層厚がこの層内の金属エフェクト顔料の濃度に依存すること(低濃度は、表示範囲内の大きい方の層厚を可能にする)は、既に上に記載した。更に、用いる金属エフェクト顔料の粒径は、別の層としての層(B)が不透明層を示さないように選択されるべきである。層(B)の層厚は、固化及び乾燥した層の厚さ、すなわち、乾燥層厚を意味するととらえられる。
【0015】
本発明の意味において「レーダー対応」は、76.5GHzのピーク周波数を有する電磁波に曝露したときに、<30の誘電率を有するコーティングを意味するととらえられる。更に、350μmPET基材上のコーティングは、76.5GHzのピーク周波数を有する電磁波に曝露したときに、<2dBの一方向伝送減衰(one-way transmission attenuation)を有することが必要である。一方向伝送減衰は、好ましくは<1.5dBである。
コーティングの誘電率及び基材上のコーティングの一方向伝送減衰の測定は、ドイツのperisens GmbHのRMS-D-77/79G装置を標準モードで用いて実施した。
本発明による層システムの層(A)の層厚は、層(A)及び(B)を含む層パッケージの全層厚が、10~40μm、好ましくは15~25μmの範囲にあるように設定される。
【0016】
層パッケージの層(A)及び(B)に用いられる結合剤は、固化状態で透明に見える全ての従来の結合剤及び結合剤システムであることができる。ここで、従来のコーティング法に用いられ、用いる顔料との適合性がある全ての一般的な種類の結合剤を使用できる。溶媒系結合剤システム、水性結合剤システム、及び放射硬化結合剤システムは、顔料の選択に関する技術分野及びコーティング法に関する技術分野において通例である特定の要素(factor)が観察される限り、等しく用いることができる。
本発明によるコーティングの層(A)及び層(B)の両方が、当該技術分野で通例の更なる添加剤、例えば、充填剤、阻害剤、難燃剤、潤滑剤、レオロジー助剤、分散剤、再分散剤、消泡剤、流動制御剤、皮膜形成剤、接着促進剤、乾燥促進剤、光開始剤などを含んでもよい。
用いる結合剤システムに応じて、層パッケージの層(A)及び(B)の製造に用いられるコーティング組成物は、任意選択で、有機溶媒及び/又は水も含むが、これは上記2層の固化後は、本発明によるコーティング中に存在しない。当該技術分野で通例の溶媒システムを制約なく用いることができる。結合剤システムに対応する組成物は、溶媒及び添加剤を含め、当業者に周知であり、場合によっては、未着色状態で完成製品として市販されている。対応する選択は、用いようとするそれぞれの着色及び所望のコーティング法に基づいて、当業者が行うことができる。
層(A)及び(B)を含む本発明による層パッケージが適用される可能性のある基材は、プラスチックプレート又はフィルムである。自動車建造に通常使用されるプラスチックを使用でき、例えばポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PUR)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)又はアクリロニトリル-エチレン-スチレン(AES)基材が数例として挙げられる。この種のプラスチックプレート又はプラスチックフィルムは、レーダー信号の特定の基本減衰を有し、これはその上に位置するコーティングにより、わずかしか増加しない。本発明によるコーティングのレーダー性能に関して、(それぞれの基材により存在する)一方向伝送に関するレーダー信号の基本減衰の値は、測定値に含まれる。基材のみによって引き起こされるレーダー信号の一方向伝送の基本減衰は、別途実施例に示している。コーティングのみによって引き起こされるレーダー信号の減衰の測定は、技術的機器関連又は製造関連の理由から不可能である。
言うまでもなく、基材は、用途に応じて三次元に成形できる。すなわち、三次元の外形を有することができる。従って、例えば、車両テールゲートの部品を形成することを意図するプラスチックプレートは、当然、バンパーを意図するプラスチックプレートとは異なる三次元外形を有する。一般に、基材の三次元形状は、本発明によるコーティングを適用する前に、従来の成形方法によって製造される。
【0017】
基材上の本発明によるコーティングの必須コア要素は、互いに直接配置された上記の層(A)及び(B)を含む層パッケージであり、実施形態に応じて、層(A)又は層(B)のいずれかは、基材から見て層パッケージの最外層を表す。加えて、更なる層(同様に本発明によるコーティングの部品であってもよい)は、任意選択で、基材と第1の層(実施形態に応じて層(A)又は層(B))との間、及び/又は第2の層(実施形態に応じて層(A)又は層(B))の上に位置付けされてもよい。
この種の追加層は、基材への塗料層の接着を改善するため、着色されたアクセントをつけるため、及び/又は塗料層の機械的・化学的強度及び耐候性を改善するため、のいずれかを目的として、自動車建造に頻繁に用いられる。これらはプライマー層、更なる着色層又は最外クリアコートであり、クリアコートは一般的に無色透明に設計される。本発明によるコーティングは、有利には、プライマー層及び/又はクリアコートを有し得る。本発明によると、産業界で広く使用され、従って更なる説明を必要としない全ての従来材料を、ここで用いることができる。
【0018】
基材上の本発明によるコーティングは、有利には、メタリック仕上げの外観を有するカバーをレーダー装置に設けようとする全ての場合に、レーダー装置の機能に悪影響を及ぼすことなく用いることができる。これは当然、特に、車両建造に使用されるカバー部品に当てはまる。本発明によるコーティングは、好ましくは車両仕上げである。その優れた光学特性により、本発明によるコーティングは、視覚的に従来のメタリック仕上げに相当するあらゆる種類の仕上げにも使用でき、通常用いられる金属エフェクト顔料を少量しか消費しない。レーダービーム透過性の存在は副次的な役割も果たす場合があり、対応する使用分野は車両建造に制限されない。
【0019】
本発明は、基材上の金属エフェクト顔料を含むレーダー対応コーティングの製造方法にも関し、当該方法において、層(A)及び層(B)を含む層パッケージは、プラスチックプレート又はプラスチックフィルムを含む任意選択でプレコートされた基材に適用され、ここで層(A)は吸収特性を有する顔料を少なくとも1つ含み、且つ金属エフェクト顔料を含まず、層(B)はフレーク状エフェクト顔料を含み、フレーク状エフェクト顔料は排他的に金属エフェクト顔料であり、層(B)は2~≦10μmの範囲の乾燥層厚を有する。層パッケージの層(A)及び(B)は、基材上に、配列(A)-(B)又は配列(B)-(A)で配置される。
好適なプラスチック基材及び層(A)及び(B)の組成に関する全材料の詳細は、既に上に説明されている。この範囲で、上記説明をここで参照する。
層パッケージの2つの層は、基材に、従来のコーティング法によって、例えば、スプレー法、刷毛塗り法、インモールド法、ローラーコーティング法、コイルコーティング法、カーテンコーティング法によって適用できる。
この種のコーティング法は、大規模産業で通例であり、特定の適応を必要とすることなく巧妙に用いることができる。層(B)の層厚のみが適用中に設定されて、2~≦10μmの範囲の最終乾燥層厚が得られる。これは同等の金属エフェクト顔料を含む従来のメタリック仕上げの乾燥層厚よりもかなり小さい。しかし、当業者は、自らの専門知識に基づき、かかる乾燥層厚を問題なく設定できるであろう。
用いられるプラスチック基材は、予め定められたレーダー特性を有し、任意選択で、例えば、1つ以上のプライマー層及び/又は着色層でプレコートできる。しかし、コーティングが全体としてレーダー対応の性質を有する必要がある場合、それぞれの基材上に任意選択で追加的に存在する層に、全体として、コーティングに必要なレーダー透過性に悪影響を及ぼし得る金属エフェクト顔料又はその他の成分を含むものがないことを確実としなければならない。
プライマー層は、とりわけ、コーティングの機械的安定性を全体として改善し、層パッケージの第1層の基材への接着を改善することから、プラスチック基材にプライマー層をプレコートすることは有利である。加えて、最外クリアコートは、一般に無色かつ可視光透過性であるように設計され、特にコーティングの機械的安定性及び耐候性に有利である。クリアコートはまた、好ましくは、本発明において層パッケージの上層に、コーティング全体の最外層として適用される。
【0020】
本発明は、金属エフェクト顔料を含む上記コーティングの、車両部品のレーダー対応車両仕上げとしての使用にも関する。コーティングは、プラスチック基材をベースとする全ての車両部品に適用できる。金属基材は、所望のレーダー性能を保証できないことから、好適ではない。コーティングは、車両内装に設置されたレーダー装置の外側カバー又は遮蔽部品を意図する外部車体部品に適用することができ、又は好適な車体部品の表面全体に適用することもできる。車体部品としては、特に、バンパー、テールゲート、ラジエーターグリル、ウイング又はこれらの部品が挙げられる。本発明によるコーティングは、当然、メタリック仕上げのみに関心があり、レーダー性能の重要性は二の次である場合、上記以外の車両部品にも適用できる。後者の場合、本発明の応用分野はまた、車両建造に制限されない。
本発明を、実施例を参照して以下に説明するが、本発明はこれらに制限されない。
【0021】
実施例
用いた基材は、各事例において、厚さ350μmのPETフィルム(Hostaphan RN 350,Mitsubishi Polyester Film GmbH、ドイツ)である。L*値及び色分解ΔEを測定するため、Leneta社の黒色/白色パネルを、PETフィルムと同様の方法でコーティングする。コーティングは、空気式スプレーコーティングとして実施される。用いた結合剤は、MIPA SE(ドイツ)社の調製物WBC 000である。
【0022】
実施例1(参照):
コーティングの標的外見の参照として、アルミニウム顔料のみで着色されたコーティング組成物を単層としてフィルムに適用する。
【表1】
PMC:顔料質量濃度
Al:アルミニウム顔料(Stapa(登録商標)IL Hydrolan 2156,Stapa(登録商標)IL Hydrolan 8154、1:1混合物、Eckart)
DLT:乾燥層厚
L
*:L
*a
*b
*色空間における特定の測定角度における明度値L
*
フロップインデックス:観察角度が変化したときの明度フロップの指標であり、次式で求められる。
【数1】
ΔE
*:L
*a
*b
*色空間における標準化された黒色及び白色背景上での試料の色分解であり、次式で求められる:
ΔE
*=√(ΔL
*2+Δa
*2+Δb
*2)
【0023】
【0024】
各事例において、4回のコーティング操作を実施する。最初の3回のコーティング操作は、18質量%のIriodin(登録商標)9602 Silver Grey SW(銀白色の吸収色を有するシルバーグレー干渉顔料、酸化鉄含有、Merck KGaA,Darmstadt)のみで着色したコーティング組成物を用いて実施する。中間乾燥がないことから、3回のコーティング操作は、本発明による層パッケージの層(A)をもたらす(3重適用技術が必要である)。
層(B)として、12質量%(Ex.2)、15質量%(Ex.3)又は18質量%(Ex.4)のアルミニウム顔料混合物(上記)のみで着色されたコーティング組成物を適用する。
表は、層(A)及び(B)を含む全体としてのコーティングの乾燥層厚を示す。各コーティング操作で、各事例においてほぼ同量のコーティング組成物が適用される。
試料の色度測定は、BYKMac i 測色計(Byk-Gardner)をSMC5モードで用いて実施される。
層(A)の黒色背景でのL*15値は、有機又は無機吸収顔料のみを使用して、規格化された黒/白コーティングされた基材上の4領域の、完全に不透明なコーティングで実施される。吸収特性を有するフレーク状エフェクト顔料を層(A)に用いた場合、層(A)の色度測定、特に黒色背景でのL*15値の測定は、基材上に18質量%の質量濃度の顔料を有するコーティングによって実施される。
用いられる顔料の濃度及びコーティングの層厚は、本発明によるコーティングの個々の層及び層パッケージのそれぞれの事例において示されている。
ここで基材として使用される黒/白パネルはASTM E 1347規格に準拠し、Leneta社からMetopac T12G panelの名称で販売されている。
第2層(各事例において約4~5μmの厚さ)中のアルミニウム顔料の濃度増加は、フロップインデックスの増加及びΔE値の減少を招き、参照例に従う従来の銀メタリック仕上げの外観は実施例2~4で良好~非常に良くシミュレートできることが表からわかる。
【0025】
レーダー波の伝送性:
下の表は、それぞれの層構造の誘電定数(誘電率)と、1回のビーム通過(76.5GHz)に対するレーダー信号の減衰(dB)を示す。
【表3】
【0026】
本発明の例は、参照試料による従来のメタリック仕上げと比較して、1回のビーム通過に対するレーダー放射の減衰の明らかな低減を示す。本発明による全てのコーティングは、優れた隠蔽力と非常に良好な明度フロップと同時に、技術要件に応じて、レーダー装置のビーム経路内に位置する車両部品に対するレーダー対応コーティングとして、アルミニウム顔料を含む従来の不透明メタリック仕上げよりもはるかに好適である。
【0027】
実施例5~7:
実施例1に記載のPET基材及びコーティング法を用いて、RALシェード7030(ストーングレー、実施例5)、7033(セメントグレー、実施例6)及び7035(ライグレー、実施例7)の完全に不透明なコーティングが、各事例において基材に層(A)として適用される。15質量%のフレーク状アルミニウム顔料(Stapa(登録商標)IL Hydrolan 2156,Stapa(登録商標)IL Hydrolan 8154,1:1混合物、Eckart)で着色された層(B)が、各事例において層(A)に適用される。
ぞれぞれのコーティングの色特性又はレーダー性能に関する個別の結果は、表3及び4に見ることができる。
【表4】
【表5】
【0028】
上記例は、メタリック様の外観が、高い隠蔽力と十分なフロップインデックスと共に得られることを示す。実施例5及び6のコーティングは、レーダー信号の一方向減衰が標的範囲内にあり、実施例7では、標的範囲をわずかだけ超える。
【0029】
実施例8:
上記のように18質量%のアルミニウム顔料で着色されたコーティング(B)を、実施例1に従うPET基材に、実施例1に記載のスプレー適用によって適用する。18質量%のColorstream(登録商標)F10-51 Lava Red(Merck KGaA、SiO
2基材上の酸化鉄)で着色されたコーティングを、3回のコーティング操作で層(A)として適用する。
ぞれぞれのコーティングの色特性又はレーダー性能に関する個別の結果は、表5及び6に見ることができる。
【表6】
【表7】
【0030】
実施例8は、良好な明/暗フロップを有し、アルミニウム顔料のみを用いた標準的な市販のメタリックコーティングよりもレーダー信号の一方向減衰が有意に低いコーティングが基材上の層構造(B)-(A)の場合にも得られることがわかる。本発明によるコーティングは、視覚的に魅力的な赤メタリックの特徴と、良好な隠蔽力とを示す。
【国際調査報告】