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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】複合膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/12 20060101AFI20230915BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20230915BHJP
   B01D 71/82 20060101ALI20230915BHJP
   B01D 67/00 20060101ALI20230915BHJP
   B01J 43/00 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
B01D69/12
B01D69/00
B01D71/82 500
B01D67/00
B01J43/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514717
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2021074267
(87)【国際公開番号】W WO2022049193
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】2013838.4
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509077761
【氏名又は名称】フジフィルム・マニュファクチュアリング・ヨーロッパ・ベスローテン・フエンノートシャップ
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】リプケン,ルネ・マリア
(72)【発明者】
【氏名】フエルタ・マルティネス,エリサ
(72)【発明者】
【氏名】成田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】マイリンク,マールテン・コンスタント・ゲルラッハ・マリエ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッシング,ヤッコ
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA13
4D006GA17
4D006MA06
4D006MA15
4D006MA21
4D006MA31
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC24
4D006MC27
4D006MC28
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC37
4D006MC39
4D006MC47
4D006MC48
4D006MC49
4D006MC51X
4D006MC54X
4D006MC58
4D006MC59
4D006MC61
4D006MC62X
4D006MC63
4D006MC74X
4D006NA42
4D006NA64
(57)【要約】
複合膜であって、a)第1の多孔質支持体、および第1の多孔質支持体の空孔中に存在する第1のイオン性ポリマーを含む、第1の層と、b)第2の多孔質支持体、および第2の多孔質支持体の空孔中に存在する第2のイオン性ポリマーを含む、第2の層と、c)第3の多孔質支持体、第3のイオン性ポリマーおよび第4のイオン性ポリマーを含む第3の層であり、第3のイオン性ポリマーが第3の多孔質支持体の空孔中に存在する、第3の層とを含み、(i)第1のイオン性ポリマーおよび第2のイオン性ポリマーのうちの一方がカチオン性ポリマーであり、他方がアニオン性ポリマーであり、(ii)第3の層c)が第1の層a)と第2の層b)との間に挟まれており、(iii)第3のイオン性ポリマーが空孔のネットワークを含み、第4のイオン性ポリマーが第3のイオン性ポリマーの空孔内に存在し、(iv)第3のイオン性ポリマーおよび第4のイオン性ポリマーのうちの一方がカチオン性ポリマーであり、他方がアニオン性ポリマーである、複合膜。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合膜であって、
a)第1の多孔質支持体、および第1の多孔質支持体の空孔中に存在する第1のイオン性ポリマーを含む、第1の層と、
b)第2の多孔質支持体、および第2の多孔質支持体の空孔中に存在する第2のイオン性ポリマーを含む、第2の層と、
c)第3の多孔質支持体、第3のイオン性ポリマー、および第4のイオン性ポリマーを含む第3の層であり、第3のイオン性ポリマーが第3の多孔質支持体の空孔中に存在する、第3の層と
を含み、
(i)第1のイオン性ポリマーおよび第2のイオン性ポリマーのうちの一方がカチオン性ポリマーであり、他方がアニオン性ポリマーであり、
(ii)第3の層c)が第1の層a)と第2の層b)との間に挟まれており、
(iii)第3のイオン性ポリマーが空孔のネットワークを含み、第4のイオン性ポリマーが第3のイオン性ポリマーの空孔内に存在し、
(iv)第3のイオン性ポリマーおよび第4のイオン性ポリマーのうちの一方がカチオン性ポリマーであり、他方がアニオン性ポリマーである、
複合膜。
【請求項2】
第3のイオン性ポリマーが、第3のイオン性ポリマーを調製するために使用される組成物から第3のイオン性ポリマーを相分離することを含む方法によって得ることが可能である、請求項1に記載の複合膜。
【請求項3】
相分離が重合誘導相分離である、請求項2に記載の複合膜。
【請求項4】
第1の硬化性組成物が第4の硬化性組成物と同一である、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項5】
第3のイオン性ポリマーが、第2のイオン性ポリマーと同じ電荷を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項6】
第3および第4のイオン性ポリマーが、第3の層c)中で、第3および第4のイオン性ポリマーを含む共連続ネットワークとして存在する、請求項1から5のいずれかに記載の複合膜。
【請求項7】
第1の層a)、第2の層b)、および第3の層c)中に存在する多孔質支持体が、化学的にかつ物理的に同一である、請求項1から6のいずれかに記載の複合膜。
【請求項8】
層a)、b)、およびc)のうちの2つに存在する多孔質支持体が、互いに化学的にかつ物理的に同一であり、層a)、b)、およびc)のうちの残りの層中に存在する多孔質支持体が、他の2つの層中に存在する多孔質支持体と化学的にかつ/または物理的に異なる、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項9】
層a)、b)、およびc)のそれぞれに存在する多孔質支持体が、層a)、b)、およびc)のうちの他の2つに存在する多孔質支持体と化学的にかつ/または物理的に異なる、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項10】
第1の層a)、第2の層b)、および第3の層c)がそれぞれ独立して、10μm~200μmの間の平均厚さを有する、請求項1から9のいずれかに記載の複合膜。
【請求項11】
第1の層a)と第3の層c)との間の界面(第1の界面)、および第3の層c)と第2の層b)との間の界面(第2の界面)を含み、第1の界面および第2の界面の両方が途切れておらず、第1の層a)と第3の層c)との間にいかなる間隙および/または空間もなく、かつ第3の層c)と第2の層b)との間にいかなる間隙および/または空間もない、請求項1から10のいずれかに記載の複合膜。
【請求項12】
途切れていない、第3のイオン性ポリマーと第4のイオン性ポリマーとの間の界面を含み、第3のイオン性ポリマーと第4のイオン性ポリマーとの間にいかなる間隙および/または空間もない、請求項1から11のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項13】
第1のイオン性ポリマーが、
(a1)1つのエチレン性不飽和基およびイオン基を有する、0~60wt%の硬化性化合物と、
(b1)少なくとも2つのエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を含む、1~88wt%の硬化性化合物と、
(c1)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d1)0~55wt%の溶媒と
を含む第1の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である、請求項1から12のいずれかに記載の複合膜。
【請求項14】
第2のイオン性ポリマーが、
(a2)1つのエチレン性不飽和基、および第1の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷のイオン基を有する、0~60wt%の硬化性化合物と、
(b2)少なくとも2つのエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を含む、1~88wt%の硬化性化合物と、
(c2)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d2)0~55wt%の溶媒と
を含む第2の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である、請求項1から13のいずれかに記載の複合膜。
【請求項15】
第3のイオン性ポリマーが、
(a3)1つのエチレン性不飽和基およびイオン基を有する、0~60wt%の硬化性化合物と、
(b3)少なくとも2つのエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を含む、1~70wt%の硬化性化合物と、
(c3)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d3)20~98wt%の溶媒と
を含む第3の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である、請求項1から14のいずれかに記載の複合膜。
【請求項16】
第4のイオン性ポリマーが、
(a4)1つのエチレン性不飽和基、および第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷のイオン基を有する、0~60wt%の硬化性化合物と、
(b4)少なくとも2つのエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を含む、1~88wt%の硬化性化合物と、
(c4)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d4)0~55wt%の溶媒と
を含む第4の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である、請求項1から15のいずれかに記載の複合膜。
【請求項17】
複合バイポーラ膜である、請求項1から16のいずれかに記載の複合膜。
【請求項18】
第3のイオン性ポリマーの第4のイオン性ポリマーに対する体積比が0.1~0.9である、請求項1から17のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項19】
複合膜を調製するための方法であって、以下のステップ:
I.第1の多孔質支持体、第2の多孔質支持体、および第3の多孔質支持体を用意するステップと、
II.硬化性イオン化合物を含む第1の硬化性組成物、第1の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷の硬化性イオン化合物を含む第2の硬化性組成物、硬化性イオン化合物を含む第3の硬化性組成物、および第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷の硬化性イオン化合物を含む第4の硬化性組成物を用意するステップと、
III.第3の多孔質支持体に第3の硬化性組成物を含浸させるステップと、
IV.第3の多孔質支持体中に存在する第3の硬化性組成物を硬化させて、第3の多孔質支持体、および空孔のネットワークを含む第3のイオン性ポリマーを含む層(「基層」)を形成するステップと、
V.第3のイオン性ポリマーの空孔のネットワークに第4の硬化性組成物を含浸させるステップと、
VI.第1の硬化性組成物を基層の第1の側と接触させるステップと、
VII.第2の硬化性組成物を基層の第2の側と接触させるステップと、
VIII.任意の順序でまたは同時に、第1の硬化性組成物、第2の硬化性組成物、および第4の硬化性組成物を硬化させ、それにより第1のイオン性ポリマー、第2のイオン性ポリマー、および第4のイオン性ポリマーをそれぞれ形成するステップと
を含み、
(a)第1の硬化性組成物を硬化させる場合、第1の硬化性組成物が第1の多孔質支持体を含み、
(b)第2の硬化性組成物を硬化させる場合、第2の硬化性組成物が第2の多孔質支持体を含む、
方法。
【請求項20】
第1の硬化性組成物が、基層の第1の側に適用される場合、第1の多孔質支持体を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第1の硬化性組成物が基層の第1の側に適用された後、第1の多孔質支持体が第1の硬化性組成物に適用される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
第2の硬化性組成物が、基層の第2の側に適用される場合、第2の多孔質支持体を含む、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
第2の硬化性組成物が基層の第2の側に適用された後、第2の多孔質支持体が第2の硬化性組成物に適用される、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
第2の多孔質支持体を含む第2の組成物が硬化される前に、第1の多孔質支持体を含む第1の硬化性組成物が硬化される、請求項19から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
第1の多孔質支持体を含む第1の硬化性組成物、および第2の多孔質支持体を含む第2の組成物が同時に硬化される、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
第1の硬化性組成物が第4の硬化性組成物と同一である、請求項19から25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合膜ならびにその調製および使用のための方法に関する。イオン交換膜は、電気透析、逆電気透析、電気分解、拡散透析、および複数の他のプロセスにおいて使用される。典型的に、膜を通すイオンの輸送は、イオン濃度勾配または代替的に電位勾配などの駆動力の影響下で生じる。
【背景技術】
【0002】
イオン交換膜は一般に、その優勢な電荷に応じて、カチオン交換膜またはアニオン交換膜に分類される。カチオン交換膜は、カチオンの通過を可能にするがアニオンを拒絶する負に帯電した基を含み、一方でアニオン交換膜は、アニオンの通過を可能にするがカチオンを拒絶する正に帯電した基を含む。バイポーライオン交換膜は、カチオン層およびアニオン層の両方を有する。
【0003】
イオン交換膜には、機械的強度を付与する多孔質支持体を含むものがある。そのような膜は、反対に帯電したイオンを区別する、イオン的に帯電したポリマー、および機械的強度を付与する多孔質支持体の両方の存在に起因して「複合膜」と呼ばれることが多い。
【0004】
複合膜は、たとえば、イオン交換樹脂のモノビーズ層を含有するバイポーラ膜について記載したUS4,253,900から公知である。WO2017/205458およびECS Transactions、2015 69(18)35~44ページにおけるMcClureによる論文は、アニオン交換ポリマーとカチオン交換ポリマーとの相互侵入ポリマーナノファイバーまたはマイクロファイバーの接合層を含有するバイポーラ膜を記載している。複合膜の他の例は、たとえば、層のうちの1つがイオン交換樹脂粉末を含む、EP3604404、および界面層におけるイオン交換樹脂の使用を開示するUS4673454に記載されている。向上した特性、たとえば、高い選択透過性、低い電気抵抗性、良好な機械的強度、水性条件下での低膨潤性、極度のpHでの安定性を有する複合膜を提供することが望まれている。理想的には、そのような膜は迅速に、効率的に、かつ安価に製造することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、複合膜であって、
a)第1の多孔質支持体、および第1の多孔質支持体の空孔中に存在する第1のイオン性ポリマーを含む、第1の層と、
b)第2の多孔質支持体、および第2の多孔質支持体の空孔中に存在する第2のイオン性ポリマーを含む、第2の層と、
c)第3の多孔質支持体、第3のイオン性ポリマー、および第4のイオン性ポリマーを含む第3の層であり、第3のイオン性ポリマーが第3の多孔質支持体の空孔中に存在する、第3の層と
を含み、
(i)第1のイオン性ポリマーおよび第2のイオン性ポリマーのうちの一方がカチオン性ポリマーであり、他方がアニオン性ポリマーであり、
(ii)第3の層c)が第1の層a)と第2の層b)との間に挟まれており、
(iii)第3のイオン性ポリマーが空孔のネットワークを含み、第4のイオン性ポリマーが第3のイオン性ポリマーの空孔内に存在し、
(iv)第3のイオン性ポリマーおよび第4のイオン性ポリマーのうちの一方がカチオン性ポリマーであり、他方がアニオン性ポリマーである、
複合膜が提供される。
【0006】
本明細書において(その特許請求の範囲を含む)、「を含む」という動詞およびその活用型は、その非限定的な意味において使用され、この単語に続く品目が含まれることを意味するが、具体的に言及されない品目は除外されない。加えて、不定冠詞「a」または「an」による要素への言及は、要素のうちの1つかつ1つのみが存在することを文脈上明確に求めていない限り、要素のうちの1つより多くが存在する可能性を除外しない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は通常、「少なくとも1つ」を意味する。また、本明細書において、空孔のネットワークを含む第3のイオン性ポリマーは、多くの場合、「第3のイオン性ポリマー」と略記される。
【0007】
好ましくは、多孔質支持体は非イオン性である。
好ましい実施形態において、第3のイオン性ポリマーは、第3のイオン性ポリマーを調製するために使用される組成物から第3のイオン性ポリマーを相分離することによって得ることが可能である。このようにして、空孔のネットワークを含む第3のイオン性ポリマーを得ることができ、第3の層c)を作製するために、空孔を使用して第4のイオン性ポリマー(または第4のイオン性ポリマーを調製するために使用される硬化性組成物)を受け入れることができる。一実施形態において、第4のイオン性ポリマーを調製するために使用される硬化性組成物は、第1のイオン性ポリマーを調製するために使用される硬化性組成物と同一である。このようにして、第1のイオン性ポリマーが第4のイオン性ポリマーと同一である複合膜を得ることができる。
【0008】
好ましくは、第3のイオン性ポリマーは、イオン基および空孔のネットワークを含む多孔質の第1のポリマードメインを含む。好ましくは、第4のイオン性ポリマーは、第1のポリマードメインのイオン基の電荷と反対の電荷を有するイオン基を含む第2のポリマードメインを含む。この実施形態において、第2のポリマードメインは、第1のポリマードメインの空孔中(すなわち、第3のイオン性ポリマーの空孔中)に位置している。
【0009】
特に好ましい実施形態において、第3および第4のイオン性ポリマーは、第3の層c)中で、第3および第4のイオン性ポリマーを含む共連続ネットワークとして存在する。第3および第4のイオン性ポリマーは、好ましくは、2つの個別の、連続した、交じり合う、混合されていない、カプセル化されていない、かつ小線維状でない、ポリマードメインを提供し、一方がアニオン電荷を帯びており、他方がカチオン電荷を帯びている。任意選択で、第3の層c)は、1つまたは複数のさらなるポリマードメインを含有し、ポリマードメインのそれぞれはアニオン電荷またはカチオン電荷を帯びている。
【0010】
好ましい実施形態において、第4のイオン性ポリマーは、第1の層a)中の第1のイオン性ポリマーと化学的に同一である。別の好ましい実施形態において、第3のイオン性ポリマーは、第2の層b)中の第2のイオン性ポリマーと、同じ電荷を有する、かつ/または化学的に同一である。
【0011】
別の好ましい実施形態において、第4のイオン性ポリマーは、第1の層a)中の第1のイオン性ポリマーと化学的に同一であり、第3のイオン性ポリマーは、第2の層b)中の第2のイオン性ポリマーと化学的に同一である。
【0012】
第3の層c)は、好ましくは、互いに広い接触領域を有する、少なくとも2つの連続し交じり合うポリマードメイン(一方のドメインは第3のイオン性ポリマーに由来し、他方のドメインは第4のイオン性ポリマーに由来する)を含む。これは、空孔のネットワークを含む第3のイオン性ポリマー、および第3のイオン性ポリマーとは異なり(たとえば、一方はカチオン性であり、他方はアニオン性である)、かつ第3のイオン性ポリマーの空孔内に存在する第4のイオン性ポリマーによって達成されてもよい。第3の層中に存在する2つ(またはそれより多く)のイオン性ポリマー間の、この広い接触領域の結果として、複合膜がバイポーラ膜として使用される場合、HおよびOHに解離する水分子の時間単位当たりの量は増大し、それにより複合バイポーラ膜の生産性も増大する。
【0013】
第3の層中に存在する、第3と第4のイオン性ポリマーとの間の広い接触領域は、好ましくは、共連続ネットワークによって提供され、第3および第4のイオン性ポリマーに由来する2つ(またはそれより多く)のポリマードメインは、反対の電荷を帯びている(すなわち、一方のドメインはアニオン電荷を有し、他方はカチオン電荷を有する)。共連続ネットワークの利点は、第3と第4のイオン性ポリマーとの間の界面(すなわち、2つのポリマードメインの界面)において作製された、新たに生成されたアニオン(たとえば、OH)およびカチオン(たとえば、H)が、その形成直後に個別のポリマードメインへと分離され、イオン再結合が防止されることである。加えて、第3の層中の第3と第4のイオン性ポリマーとの接着(すなわち第1と第2のポリマードメインとの接着)は、エンタングルメント、および第3の層c)中の第3と第4のイオン性ポリマーとの間の広い接触領域の結果として、極めて強い。第3と第4のイオン性ポリマーとの強い接着は、水で満たされた大きいブリスターが、正電荷および負電荷を帯びたバイポーラ膜のポリマーの間の界面に形成され、そこでOHおよびHが再結合して水を形成する可能性がある、いわゆるバルーン効果を防止/低減する。
【0014】
本発明の複合膜は、好ましくは、第1の層a)と第3の層c)との間の界面(第1の界面)、および第3の層c)と第2の層b)との間の界面(第2の界面)を含み、好ましくは、第1の界面および第2の界面の両方は途切れておらず、第1の層a)と第3の層c)との間にいかなる間隙および/または空間もなく、かつ第3の層c)と第2の層b)との間にいかなる間隙および/または空間もない。
【0015】
一実施形態において、第3の層c)は、それぞれ第3および第4のイオン性ポリマーに由来する、連続した2つのポリマードメインのブレンドモルフォロジーを含み、そのうちの一方のドメイン(第4のイオン性ポリマーに由来する)は他方のドメイン(第3のイオン性ポリマーに由来する)内に位置しており、(第3のイオン性ポリマー内の第4のイオン性ポリマーの)共連続ネットワークを形成する。
【0016】
好ましくは、第1および第2のポリマードメインのそれぞれは連続しており、それ自体に相互接続されるような、単一共有結合された炭素骨格を実質的に含む。
好ましくは、ポリマードメインは、カプセル化されておらず、分離されておらず、中断されておらず、かつ小線維状でない(たとえば、エレクトロスピニング法によって作製されていない)。
【0017】
共連続ネットワークは、好ましくは、同じ体積内に2つ(またはそれより多く)の連続したポリマードメインを含む。換言すると、2つ(またはそれより多く)の連続したポリマードメインは、極めて近接して同じ体積で共存在しており、各相が独立して識別され得るように、均一に混合されていない。したがって、第3および第4のイオン性ポリマーは、別々であり、互いと均一に混合されておらず、たとえば、第3の層c)を切断して、走査型電子顕微鏡を使用して第3の層c)の断面を調べることによって、他方から独立して識別され得る。したがって、第3の層c)は、2つの反対に帯電したポリマーを単に相互混合することによって、または2つの異なる硬化性組成物を混合し、次いで混合物を硬化させることによって、形成される層とは非常に異なる。
【0018】
本発明において、第3の層c)は、多孔質支持体を含み、この支持体の多孔質構造内で、空孔のネットワークを含む第3のイオン性ポリマー、およびそれらの空孔内に存在する第4のイオン性ポリマーは、好ましくは、一方がアニオン電荷を帯び、他方がカチオン電荷を帯びている2つのポリマードメイン(の共連続ネットワーク)を提供する。2つ(またはそれより多く)のポリマードメイン(一方は第3のイオン性ポリマー由来であり、他方は第3のイオン性ポリマーの空孔のネットワーク内に存在する第4のイオン性ポリマー由来である)は、多孔質支持体の空孔を占めており、好ましくは、継ぎ目のない(第3の)界面(第3の層c)と第1および第2の層a)およびb)それぞれとの間である、第1および第2の界面)を含む。したがって、複合膜は、好ましくは、第3の層c)と第1の層a)との間の界面、第3の層c)と第2の層b)との間の界面、および第3のイオン性ポリマーと第4のイオン性ポリマーとの間の、第3の層c)内の第3の界面を含む。好ましくは、この第3の界面は、途切れておらず、第3のイオン性ポリマーと第4のイオン性ポリマーとの間にいかなる間隙および/または空間もない。好ましくは、この第3の界面は、イオン性ポリマーと融合/圧縮ファイバー、ビーズ、または粒子との間の界面ではない。
【0019】
好ましくは、第3の層c)中の第3のイオン性ポリマーの第4のイオン性ポリマーに対する体積比は、第3の層c)中のアニオン性ポリマーのカチオン性ポリマーに対する体積比が、0.1~0.9、より好ましくは0.2~0.8、特に0.3~0.7、たとえば、約0.4、約0.5、または約0.6であるようなものである。
【0020】
一実施形態において、第3のイオン性ポリマーは、重合誘導相分離を含む方法、より好ましくは、たとえば、第3のイオン性ポリマーの、そのポリマーを調製するために使用される組成物からの光重合誘導相分離によって得られる。この選好は、そのような方法が、第4の(反対に帯電した)イオン性ポリマーを受け入れることができる第3のイオン性ポリマーを提供することに特に良好であるため生じる。この方法において、好ましくは、第3のイオン性ポリマーは光重合反応によって形成される。
【0021】
好ましくは、第3のイオン性ポリマーは、5μm未満の、より好ましくは、2μm未満の、特に1.2μm未満の平均空孔径を有する空孔のネットワークを含む。次いで、第3のイオン性ポリマーの間の空孔は硬化性組成物で充填されてもよく、次いで、その硬化性組成物は、第3のイオン性ポリマーの空孔のネットワーク内の第4のイオン性ポリマーを提供するために、硬化されてもよい。好ましい実施形態において、第3のイオン性ポリマーの空孔のネットワークは、実質的にまたは完全に第4のイオン性ポリマーで充填される。結果として、第3の多孔質支持体が第3のイオン性ポリマーで充填され、第3のイオン性ポリマーの空孔のネットワークが(反対に帯電した)第4のイオン性ポリマーで充填される、第3の層が生じる。したがって、第3および第4のイオン性ポリマーは、2つのポリマードメインを含む連続したネットワークを提供してもよく、一方が第3のイオン性ポリマー由来であり、他方が第4のイオン性ポリマー由来である。好ましい実施形態において、この連続したネットワークは他のポリマーを含まない(多孔質支持体中に存在するいかなるポリマーも除く)。一実施形態において、第3と第4のイオン性ポリマーとを一緒に結合する共有結合が存在する。実際には、多孔質の第3のイオン性ポリマー中の空孔のネットワークは、1種より多いイオン性ポリマーを含んでもよく、たとえば、第3のイオン性ポリマー中の空孔のネットワークは、第1のポリマーが第4のイオン性ポリマーとして働いて第3のイオン性ポリマーの空孔を部分的に充填し、第2のイオン性ポリマーが残りの空孔を充填するように、第1のイオン性ポリマー(第1の硬化性組成物に由来する)および任意選択で第2のイオン性ポリマー(第2の硬化性組成物に由来する)を含んでもよい。さらに、所望であれば、多孔質の第3のイオン性ポリマー中の空孔のネットワークは、1種または複数のさらなるポリマーを含んでもよい。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による複合膜を調製するための方法であって、以下のステップ:
I.第1の多孔質支持体、第2の多孔質支持体、および第3の多孔質支持体を用意するステップと、
II.硬化性イオン化合物を含む第1の硬化性組成物、第1の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷の硬化性イオン化合物を含む第2の硬化性組成物、硬化性イオン化合物を含む第3の硬化性組成物、および第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷の硬化性イオン化合物を含む第4の硬化性組成物を用意するステップと、
III.第3の多孔質支持体に第3の硬化性組成物を含浸させるステップと、
IV.第3の多孔質支持体中に存在する第3の硬化性組成物を硬化させて、第3の多孔質支持体、および空孔のネットワークを含む第3のイオン性ポリマーを含む層(簡潔のために以下に「基層」と略記される)を形成するステップと、
V.第3のイオン性ポリマーの空孔のネットワークに第4の硬化性組成物を含浸させるステップと、
VI.第1の硬化性組成物を基層の第1の側と接触させるステップと、
VII.第2の硬化性組成物を基層の第2の側と接触させるステップと、
VIII.任意の順序でまたは同時に、第1の硬化性組成物、第2の硬化性組成物、および第4の硬化性組成物を硬化させ、それにより第1のイオン性ポリマー、第2のイオン性ポリマー、および第4のイオン性ポリマーをそれぞれ形成するステップと
を含み、
(a)第1の硬化性組成物を硬化させる場合、第1の硬化性組成物が第1の多孔質支持体を含み、
(b)第2の硬化性組成物を硬化させる場合、第2の硬化性組成物が第2の多孔質支持体を含む、
方法が提供される。
【0023】
本発明の第2の態様の方法は、複数の異なるやり方で実行されてもよいが、以下にさらに詳細に説明するものに限定されない。
方法の一実施形態において、第1の硬化性組成物は、基層の第1の側に適用される場合、第1の多孔質支持体を含む。たとえば、第1の多孔質支持体は、第1の硬化性組成物を含浸されてもよく、次いで、そのように調製された含浸された支持体は基層と接触されてもよい。一実施形態において、第1の多孔質支持体中に存在する第1の硬化性組成物の過剰である組成物の少なくともいくらかは、基層中の空孔のネットワークに入る。次いで、第1の組成物が硬化されて第1のイオン性ポリマーを形成する場合、第1の多孔質支持体は、第1のイオン性ポリマーによって基層に強く接着する。さらに、基層中の空孔のネットワーク内の第1の硬化性組成物の硬化はまた、第4のポリマーを形成し、それにより、第3の層c)を部分的に、または全体的に形成する。この実施形態において、基層の空孔中に存在する第1のポリマー、および第1の層a)を形成する第1のポリマーは共有結合しており、それにより、第1の層a)と第3の層c)との間に非常に強い結合を形成する。
【0024】
代替的な実施形態において、第1の硬化性組成物が基層の第1の側に適用された後、第1の多孔質支持体は第1の硬化性組成物に適用される。たとえば、基層は第1の硬化性組成物でコーティングされ(それにより基層の空孔は第1の硬化性組成物によって少なくとも部分的に含浸される)、次いで、第1の多孔質支持体は、基層上に存在する第1の硬化性組成物と接触される。
【0025】
先の実施形態におけるように、第1の組成物は、硬化されて第1のイオン性ポリマーを形成し、第1の多孔質支持体は、第1のイオン性ポリマー内の多数の共有結合によって基層に強く接着する。
【0026】
同様に、一実施形態において、第2の硬化性組成物は、基層の第2の側に適用される場合、第2の多孔質支持体を含む。たとえば、第2の多孔質支持体は、第2の硬化性組成物を含浸されてもよく、次いで、そのように調製された含浸された支持体は基層と接触されてもよい。一実施形態において、第2の多孔質支持体中に存在する第2の硬化性組成物の過剰である組成物の少なくともいくらかは、基層中の残りの空孔に入る。好ましくは、第2の硬化性組成物を基層と接触させた後、基層と第2の硬化性組成物との間の界面において空気は残っていない。次いで、第2の組成物が硬化されて第2のイオン性ポリマーを形成する場合、第2の多孔質支持体は、第2のイオン性ポリマーによって基層に強く接着する。
【0027】
代替的な実施形態において、第2の硬化性組成物が基層の第2の側に適用された後、第2の多孔質支持体は第2の硬化性組成物に適用される。たとえば、基層は第2の硬化性組成物でコーティングされ、次いで、第2の多孔質支持体は、基層上に存在する第2の硬化性組成物と接触される。先の実施形態におけるように、第2の組成物が硬化されて第2のイオン性ポリマーを形成する場合、第2の多孔質支持体は、第2のイオン性ポリマーによって基層に強く接着する。
【0028】
一実施形態において、第2の多孔質支持体を含む第2の組成物が硬化される前に、第1の多孔質支持体を含む第1の硬化性組成物は硬化される。あるいは、第1の多孔質支持体を含む第1の硬化性組成物、および第2の多孔質支持体を含む第2の組成物は同時に硬化されてもよい。
【0029】
一実施形態において、第1の多孔質支持体を含む第1の硬化性組成物、および第2の多孔質支持体を含む第2の硬化性組成物はそれぞれ、基層の第1の側および基層の第2の側に、同時に、またはいずれかの順序で適用される。好ましくは、第2の多孔質支持体を含む第2の硬化性組成物が基層の第2の側に適用される前に、第1の多孔質支持体を含む第1の硬化性組成物は基層の第1の側に適用される、または第1の多孔質支持体を含む第1の硬化性組成物および第2の多孔質支持体を含む第2の硬化性組成物はそれぞれ、基層の第1の側および基層の第2の側に同時に適用される。
【0030】
別の実施形態において、基層の第1の側は第1の硬化性組成物のコーティングを有し、基層の第2の側は第2の硬化性組成物のコーティングを有し、第1の多孔質支持体および第2の多孔質支持体はそれぞれ、第1の硬化性組成物でコーティングされた基層の第1の側、および第2の硬化性組成物でコーティングされた基層の第2の側に、同時に、またはいずれかの順序で適用される。
【0031】
さらに別の実施形態において、第4の硬化性組成物は、第1の硬化性組成物と同一ではなく、第1の硬化性組成物が基層の第1の側に適用される前に(第1の多孔質支持体を既に含む、または含まないのいずれか)、基層の第1の側に適用され、硬化される。
【0032】
結果として、複合膜は、第3の層中の第3のイオン性ポリマーおよび第4のイオン性ポリマー、第1の層中の第1のイオン性ポリマー、および第2の層中の第2のイオン性ポリマーを含んで形成される。
【0033】
本発明において、第3のイオン性ポリマーは、好ましくは、多孔質支持体以外の糸状構造(ファイバーなど)を含まない。さらに、好ましくは、第3のイオン性ポリマーは、(融合)ビーズおよびカプセル化構造を含まない。
【0034】
上述のように、重合誘導相分離によって、第3の硬化性組成物から空孔のネットワークを含む第3のイオン性ポリマーを形成し、次いで空孔のネットワークに、第4のポリマーを形成するのに好適な第4の硬化性組成物を含浸させ、第3のイオン性ポリマーの空孔のネットワーク内で、かつ任意選択で、第3の層c)を作製するのと同時に他の層のうちの1つ(すなわち層a))を同時に作製するために第3のイオン性ポリマーの表面上に、第4の硬化性組成物を硬化させることを含む方法によって、第3の層c)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A】先行技術に記載される典型的な複合膜を通る断面を例示する図である。
図1B】本発明による複合膜を通る断面を例示する図である。
図2】本発明による複合膜を調製するための方法の実施形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1Aにおいて、層1はポリマー層、層3は繊維状要素を含む中央層、および層2は別のポリマー層である。
図1Bにおいて、層1は、第1のイオン性ポリマーおよび多孔質支持体(図示せず)を含む第1の層a)である。層3は、それぞれ黒色および白色の、第3および第4のイオン性ポリマーを含む第3の層c)である。第3のイオン性ポリマー(黒色)は、第3の多孔質支持体(図示せず)の空孔内に位置しており、第4のイオン性ポリマー(白色)は、第3のイオン性ポリマー(黒色)の空孔内にある。層2は、第2の多孔質支持体(図示せず)を含む第2の層b)である。
【0037】
図2において、製造部は、巻き出しステーション(1)、硬化性組成物適用ステーション(2)、計量ステーション(3)、硬化ステーション(4)、乾燥ステーション(5)、硬化性組成物適用ステーション(6)、巻き出しステーション(7)、積層ステーション(8)、硬化ステーション(9)、および膜回収ステーション(10)を含む。
【0038】
一実施形態において、第1の層a)、第2の層b)、および第3の層c)中に存在する多孔質支持体は、化学的にかつ物理的に同一である。
別の実施形態において、層a)、b)、およびc)のうちの2つに存在する多孔質支持体は、互いに化学的にかつ物理的に同一であり、層a)、b)、およびc)のうちの残りの層中に存在する多孔質支持体は、他の2つの層中に存在する多孔質支持体と化学的に、かつ/または物理的に異なる。
【0039】
さらなる実施形態において、層a)、b)、およびc)のそれぞれに存在する多孔質支持体は、層a)、b)、およびc)のうちの他の2つに存在する多孔質支持体と化学的に、かつ/または物理的に異なる。この選好は、複合膜の意図される使用に依存する。
【0040】
層a)、b)、および/またはc)中に含まれてもよい多孔質支持体の例として、合成の織布および不織布ならびに押出フィルムが言及されてもよい。例としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのポリアリールエーテルケトン、およびそれらのコポリマーから作製された、湿式および乾式不織布材料、スパンボンド布、メルトブロー布、およびナノファイバーウェブが挙げられる。多孔質支持体はまた、多孔質膜、たとえば、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリフェニレンスルホン膜、ポリフェニレンスルフィド膜、ポリイミド膜、ポリエーテルイミド膜、ポリアミド膜、ポリアミドイミド膜、ポリアクリロニトリル膜、ポリカルボナート膜、ポリアクリラート膜、酢酸セルロース膜、ポリプロピレン膜、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)膜、ポリフッ化ビニリデン膜、ポリテトラフルオロエチレン膜、ポリヘキサフルオロプロピレン膜、およびポリクロロトリフルオロエチレン膜、ならびにそれらの誘導体であってもよい。
【0041】
好ましくは、第1の層a)、第2の層b)、および第3の層c)中に存在する多孔質支持体はそれぞれ独立して、10~200μmの間、より好ましくは20~150μmの間、特に50~100μmの平均厚さを有する。
【0042】
好ましくは、多孔質支持体は、30~95%の間の多孔率を有する。支持体の多孔率は、ポロメーター、たとえば、IB-FT GmbH、ドイツ製のPorolux(商標)1000によって決定されてもよい。
【0043】
多孔質支持体のうちの1つまたは複数は、その表面エネルギーを、たとえば、45mN/mを上回る、好ましくは55mN/mを上回る値に、改変させるように処理されてもよい。好適な処理としては、たとえば、多孔質支持体の濡れ性、および多孔質支持体への接着性を向上する目的の、コロナ放電処理、プラズマグロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、または化学的処理などが挙げられる。
【0044】
市販されている多孔質支持体は、複数の供給源から、たとえば、Freudenberg Filtration Technologies(Novatexx材)、Lydall Performance Materials、Celgard LLC、APorous Inc.、SWM(Conwed Plastics、DelStar Technologies)、帝人株式会社、Hirose、三菱製紙株式会社、およびSefar AGから利用可能である。
【0045】
好ましくは、各支持体は独立して、ポリマー支持体である。好ましい支持体は、共有結合しているイオン基を有しない合成の織布および不織布または押出フィルムを含む。
好ましくは、複合膜の第1の層a)、第2の層b)、および第3の層c)はそれぞれ独立して、10μm~200μmの間、より好ましくは20~150μmの間、特に50~100μmの平均厚さを有する。
【0046】
好ましくは、複合膜は、30μm~600μmの間、より好ましくは60~450μm、特に150~300μmの平均厚さを有する。
好ましくは、本発明の複合膜は、複合バイポーラ膜である。
【0047】
好ましくは、第1のイオン性ポリマーは、
(a1)1つのエチレン性不飽和基およびイオン基を有する0~60wt%の硬化性化合物と、
(b1)少なくとも2つのエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を含む1~88wt%の硬化性化合物と、
(c1)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d1)0~55wt%の溶媒と
を含む第1の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である。
【0048】
好ましくは、第2のイオン性ポリマーは、
(a2)1つのエチレン性不飽和基、および第1の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷のイオン基を有する0~60wt%の硬化性化合物と、
(b2)少なくとも2つのエチレン性不飽和基、および任意選択で(第1の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷の)イオン基を含む1~88wt%の硬化性化合物と、
(c2)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d2)0~55wt%の溶媒と
を含む第2の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である。
【0049】
上に言及されるように、第3のイオン性ポリマーは、好ましくは、第3のイオン性ポリマーを調製するために使用される第3の硬化性組成物からの第3のイオン性ポリマーの重合誘導相分離を含む方法から得られる。この方法は、空孔のネットワーク内に(かつ任意選択で、所望であれば、非常に効率的に第1の層a)を提供するために第3のイオン性ポリマーの表面上にも)第4のイオン性ポリマーを調製するために、(第1の硬化性組成物と同一であっても、第1の硬化性組成物と異なっていてもよい)第4の硬化性組成物を受け入れることができる空孔のネットワークを含む形態で第3のイオン性ポリマーを提供することに特に有用である。
【0050】
このようにして、第3のイオン性ポリマー中に存在する空孔のネットワークを調製し、次いで第4のポリマーを形成するのに好適な第4の硬化性組成物を含浸させ、第3のイオン性ポリマーの空孔内に、かつ任意選択で、第3の層c)を作製するのと同時に層a)を同時に作製するために第3のイオン性ポリマーの表面上に、第4の硬化性組成物を硬化させることができる。
【0051】
好ましくは、空孔のネットワークを含む第3のイオン性ポリマーは、
(a3)1つのエチレン性不飽和基およびイオン基を有する0~60wt%の硬化性化合物と、
(b3)少なくとも2つのエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を含む1~70wt%の硬化性化合物と、
(c3)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d3)20~98wt%の溶媒と
を含む第3の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である。
【0052】
好ましくは、第3の硬化性組成物中の成分(a3)は、第1の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷のイオン基を有する。
好ましくは、第4のイオン性ポリマーは、第1の硬化性組成物のために与えられた定義に収まる第4の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である。第4の硬化性組成物は、第1の硬化性組成物と同じであっても、異なっていてもよい。好ましくは、第4の硬化性組成物は、1つのエチレン性不飽和基、および第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷のイオン基を有する硬化性化合物を含む。したがって、第4のイオン性ポリマーは、
(a4)1つのエチレン性不飽和基、および第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷のイオン基を有する0~60wt%の硬化性化合物と、
(b4)少なくとも2つのエチレン性不飽和基、および任意選択で(第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷の)イオン基を含む1~88wt%の硬化性化合物と、
(c4)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d4)0~55wt%の溶媒と
を含む第4の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である。
【0053】
硬化性組成物中に存在する各成分は、それぞれの定義に収まるいくつかの化合物の混合物であってもよい。成分(a1)、(a2)、および(a4)のそれぞれの量は独立して、好ましくは0~40wt%である。
【0054】
成分(a3)の量は、好ましくは0~30wt%、特に0~20wt%である。
成分(b1)、(b2)、および(b4)のそれぞれの量は独立して、好ましくは、5~80wt%、特に10~70wt%である。
【0055】
成分(b3)の量は、好ましくは、9~65wt%、特に14~59wt%、より特には19~49wt%である。
硬化性組成物は、好ましくは、UV、可視光線によって、または熱的に組成物を硬化させることが意図される場合、ラジカル開始剤(成分(c1)、(c2)、(c3))および(c4)を含む。硬化させるための代替的な方法としては、電子ビームおよびガンマ線照射が挙げられる。それらの方法はラジカル開始剤を必要としない。したがって、関連する組成物中に存在する成分(c1)、(c2)、(c3)、および(c4)の量は、好ましくは0~2wt%、UV、可視光線によって、または熱的に硬化させるために、より好ましくは0.001~2wt%、特に0.005~0.9wt%である。
【0056】
関連する組成物中に存在する成分(d1)、(d2)、および(d4)の量は、好ましくは20~45wt%である。
好ましくは、成分(d1)、(d2)、および(d3)として使用される溶媒は不活性である、すなわち、それらは硬化性組成物の他の成分のうちのいずれとも反応しない。成分(d3)の量は、好ましくは30~90wt%、特に40~85wt%、より特には49~78wt%である。
【0057】
成分(d3)は、好ましくは単一溶媒である。
成分(d3)は、任意選択で、2種以上の不活性溶媒を含み、それらのうちの少なくとも1つが、硬化性組成物の他の成分のための溶媒であり、それらのうちの少なくとも1つが、たとえば、第4の硬化性組成物を受け入れることができる空孔のネットワークを含む第3のイオン性ポリマーを相分離により形成することによって、組成物を硬化させることから形成される第3のイオン性ポリマーのための非溶媒である。
【0058】
不活性溶媒の例としては、水、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ニトリル系溶媒、および有機リン系溶媒が挙げられる。(特に水との組み合わせで)成分(d3)として、または成分(d3)中で、使用されてもよいアルコール系溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびそれらの2つ以上を含む混合物が挙げられる。水が特に好ましい。
【0059】
加えて、成分(d3)中で使用されてもよい好ましい不活性の有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジアセタート、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、y-ブチロラクトン、およびそれらの2つ以上を含む混合物が挙げられる。ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、およびそれらの2つ以上を含む混合物が好ましい。
【0060】
一実施形態において、成分(d3)は、下記のリスト(i)からの溶媒のうちの少なくとも1つ、および下記のリスト(ii)からの溶媒のうちの少なくとも1つを含む。
リスト(i):イソ-プロパノール、メタノール、エタノール、アセトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ブタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、プロピオニトリル、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、酢酸エチル、y-ブチロラクトン、および
リスト(ii):水、グリセロール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルモルホリン、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジアセタート、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、y-ブチロラクトン。
【0061】
一実施形態において、成分(d3)は、水、およびリスト(i)からの1つまたは他のさらなる溶媒を含む。
好ましくは、第1の硬化性組成物および第2の硬化性組成物のうちの一方は、エチレン性不飽和基およびアニオン基を有する硬化性化合物を含み、他方は、エチレン性不飽和基およびカチオン基を有する硬化性化合物を含む。さらに、好ましくは、第3の硬化性組成物および第4の硬化性組成物のうちの一方は、エチレン性不飽和基およびアニオン基を有する硬化性化合物を含み、他方は、エチレン性不飽和基およびカチオン基を有する硬化性化合物を含む。
【0062】
エチレン性不飽和基およびアニオン基またはカチオン基を有する硬化性化合物の例としては、式(A)、(B)、(CL)、(SM)、(MA)、(MB-α)、(C)、(ACL-A)、(ACL-B)、(ACL-C)、および/または(AM-B)の以下の化合物が挙げられる:
【0063】
【化1】
【0064】
[式(A)および(B)において、
A1~RA3はそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表し、RB1~RB7はそれぞれ独立して、アルキル基またはアリール基を表し、
A1~ZA3はそれぞれ独立して、-O-または-NRa-を表し、ここで、Raは水素原子またはアルキル基を表し、
A1~LA3はそれぞれ独立して、アルキレン基、アリーレン基、またはそれらの組み合わせの二価の連結基を表し、
は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、またはそれらの組み合わせの二価の連結基を表し、
A1~XA3はそれぞれ独立して、有機または無機アニオン、好ましくはハロゲンイオンまたは脂肪族もしくは芳香族カルボン酸イオンを表す]。
【0065】
式(A)または式(B)の化合物の例としては、
【0066】
【化2-1】
【0067】
【化2-2】
【0068】
が挙げられる。
合成法は、たとえば、US2015/0353721、US2016/0367980、およびUS2014/0378561において見出すことができる。
【0069】
【化3】
【0070】
[式(CL)および(SM)において、
はアルキレン基またはアルケニレン基を表し、
、R、R、およびRはそれぞれ独立して、直鎖もしくは分岐アルキル基、またはアリール基を表し、
およびR、ならびに/またはRおよびRは、互いに結合されることによって環を形成してもよく、
、R、およびRはそれぞれ独立して、直鎖もしくは分岐アルキル基またはアリール基を表し、RおよびR、またはR、RおよびRは、互いに結合されることによって脂肪族複素環を形成してもよく、
n1、n2、およびn3はそれぞれ独立して、1~10の整数を表し、X 、X 、およびX はそれぞれ独立して、有機または無機アニオンを表す]
式(CL)および(SM)の例としては、
【0071】
【化4】
【0072】
が挙げられる。
合成法は、EP3184558およびUS2016/0001238において見出すことができる。
【0073】
【化5】
【0074】
[式(MA)および式(MB-α)において、
A1は水素原子またはアルキル基を表し、
は-O-または-NRa-(式中、Raは水素原子またはアルキル基を表す)を表し、
は、有機または無機カチオン、好ましくは水素イオンまたはアルカリ金属イオンを表し、
A2は、水素原子またはアルキル基を表し、
A4は、スルホン酸基を含み、エチレン性不飽和基を有しない有機基を表し、
は、-NRa-(式中、Raは、水素原子またはアルキル基、好ましくは水素原子を表す)を表す]
式(MA)および(MB-α)の例としては、
【0075】
【化6】
【0076】
が挙げられる。
合成法は、たとえば、US2015/0353696において見出すことができる。
【0077】
【化7】
【0078】
合成法は、たとえば、US2016/0369017において見出すことができる。
【0079】
【化8】
【0080】
[式(C)において、
は、アルキレン基を表し、
nは1~3の整数、好ましくは1または2を表し、
mは1または2の整数を表し、
はn価の連結基を表し、
は、水素原子またはアルキル基を表し、
は、-SO または-SOを表し、複数のRの場合、各Rは独立して、-SOまたは-SOを表し、
は、水素イオン、無機イオン、または有機イオンを表し、Rは、アルキル基またはアリール基を表す]
式(C)の例としては、
【0081】
【化9】
【0082】
が挙げられる。
合成法は、EP3187516において見出すことができる。
【0083】
【化10】
【0084】
[式(ACL-A)、(ACL-B)、(ACL-C)、および(AM-B)において、
RおよびR’のそれぞれは独立して、水素原子またはアルキル基を表し、
LLは単結合または二価の連結基を表し、
LL、LL’、LL、およびLL’のそれぞれは独立して、単結合または二価の連結基を表し、AおよびA’のそれぞれは独立して、遊離酸または塩の形態でのスルホ基を表し、
mは1または2を表す]
式(ACL-A)、(ACL-B)、(ACL-C)、および(AM-B)の例としては、
【0085】
【化11】
【0086】
が挙げられる。
合成法は、US2016/0362526において見出すことができる。
他の好適なモノマーとしては、
【0087】
【化12】
【0088】
が挙げられる。
硬化性組成物は、熱硬化、光硬化、電子ビーム(EB)照射、ガンマ線照射、および前述の組み合わせを含む、任意の好適な方法によって硬化されてもよい。しかしながら、硬化性組成物は、好ましくは、光硬化によって、たとえば、可視光の紫外線によって硬化性組成物に照射し、それにより組成物中に存在する硬化性成分を硬化させ重合させることによって、硬化される。
【0089】
硬化性組成物中に含まれてもよい好適な熱開始剤の例としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナート)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジスルファート二水和物、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、および2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。
【0090】
硬化性組成物中に含まれてもよい好適な光開始剤の例としては、芳香族ケトン、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトキシムエステル化合物、ホウ酸塩化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、およびアルキルアミン化合物が挙げられる。芳香族ケトン、アシルホスフィンオキシド化合物、およびチオ化合物の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」、77~117ページ(1993年)に記載されている、ベンゾフェノン骨格またはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。それらのより好ましい例としては、JP1972-6416B(JP-S47-6416B)に記載されているアルファ-チオベンゾフェノン化合物、JP1972-3981B(JP-S47-3981B)に記載されているベンゾインエーテル化合物、JP1972-22326B(JP-S47-22326B)に記載されているアルファ-置換ベンゾイン化合物、JP1972-23664B(JP-S47-23664B)に記載されているベンゾイン誘導体、JP1982-30704A(JP-S57-30704A)に記載されているアロイルホスホン酸エステル、JP1985-26483B(JP-S60-26483B)に記載されているジアルコキシベンゾフェノン、JP1985-26403B(JP-S60-26403B)およびJP1987-81345A(JPS62-81345A)に記載されているベンゾインエーテル、JP1989-34242B(JPH01-34242B)、米国特許第4,318,791A号明細書、およびEP0284561A1に記載されているアルファ-アミノベンゾフェノン、JP1990-211452A(JP-H02-211452A)に記載されているp-ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、JP1986-194062A(JPS61-194062A)に記載されているチオ-置換芳香族ケトン、JP1990-9597B(JP-H02-9597B)に記載されているアシルホスフィンスルフィド、JP1990-9596B(JP-H02-9596B)に記載されているアシルホスフィン、JP1988-61950B(JP-S63-61950B)に記載されているチオキサントン、およびJP1984-42864B(JP-S59-42864B)に記載されているクマリンが挙げられる。加えて、JP2008-105379AおよびJP2009-114290Aに記載されている光開始剤も好ましい。加えて、Kato Kiyomi著、「Ultraviolet Curing System」の65~148ページ(Research Center Co.,Ltd.出版、1989年)に記載されている光開始剤が使用されてもよい。
【0091】
特に好ましい光開始剤としては、以下の溶媒、水、エタノール、およびトルエンのうちの1つまたは複数において23℃の温度で測定される場合、380nmより長い波長で最大の吸収を有するNorrish TypeII光開始剤が挙げられる。例としては、キサンテン、フラビン、クルクミン、ポルフィリン、アントラキノン、フェノキサジン、カンファーキノン、フェナジン、アクリジン、フェノチアジン、キサントン、チオキサントン、チオキサンテン、アクリドン、フラボン、クマリン、フルオレノン、キノリン、キノロン、ナフタキノン、キノリノン、アリールメタン、アゾ、ベンゾフェノン、カロテノイド、シアニン、フタロシアニン、ジピリン、スクアリン、スチルベン、スチリル、トリアジン、またはアントシアニン誘導体化光開始剤が挙げられる。
【0092】
硬化性組成物は、好ましくは、硬化性組成物適用ステーション、組成物を硬化させるための照射源を備える1つまたは複数の硬化ステーション、膜回収ステーション、および硬化性組成物適用ステーションから硬化ステーションへ、かつ膜回収ステーションへ多孔質支持体を移動させるための手段を含む製造部によって、移動する多孔質支持体に連続的に適用されてもよい。
【0093】
硬化性組成物適用ステーションは、硬化ステーションに対して上流の位置にあってもよく、硬化ステーションは、膜回収ステーションに対して上流の位置にあってもよい。
適用技法の例としては、スロットダイコーティング、スライドコーティング、エアナイフコーティング、ローラーコーティング、スクリーン印刷、およびディッピングが挙げられる。用いられる技法および望ましい最終仕様に応じて、たとえば、ロールツーロールスクイーズ、ロールツーブレードもしくはブレードツーロールスクイーズ、ブレードツーブレードスクイーズ、またはコーティングバーを使用する除去によって、基材から過剰のコーティングを除去することが必要となることがある。可視光の紫外線による硬化は、40~2000mJ/cmの間の線量を使用して、100nm~800nmの間の波長で生じ得る。熱硬化は、好ましくは0~20時間、20℃~100℃の間の範囲で起こる。
【0094】
いくつかの場合において、40℃~200℃の間の温度が採用され得る追加の乾燥が必要となることがある。
本発明の複合膜は、以下にさらに詳細に説明される方法を含む複数の代替的な方法によって製造されてもよい。
【0095】
本発明の第2の態様による方法において、ステップIV.は、好ましくは、第3の組成物からの第3のイオン性ポリマーの重合誘導相分離(特に光重合誘導相分離)を含む。
一実施形態において、複合膜は触媒を含む。触媒またはそれの前駆体は、第1の硬化性組成物、第2の硬化性組成物、第3の硬化性組成物、および第4の硬化性組成物のうちの1つまたは複数中に含まれてもよい。たとえば、ディッピング、エアナイフコーティング、マイクロローラーコーティング、スプレー法、化学(蒸着)析出、または物理(蒸着)析出(しかしこれらに限定されない)を使用して、触媒またはそれの前駆体を第3のイオン性ポリマーに適用することも可能である(たとえば、後処理ステップとして)(すなわち、ステップIVを完了した後、かつステップV.を開始する前)。
【0096】
好適な触媒の例としては、金属塩、金属酸化物、有機金属化合物、モノマー、ポリマー、またはコポリマーが挙げられる。例としては、FeCl、FeCl、AlCl、MgCl、RuCl、CrCl、Fe(OH)、Sn(OH)、Sn(OH)、SnCl2、SnCl、SnO、SnO、Al、NiO、Zr(HPO、MoS,グラフェンオキシド、Fe-ポリビニルアルコール錯体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリル酸(PAA)、アクリル酸と無水マレイン酸のコポリマー(PAAMA)、超分岐脂肪族ポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの触媒のうち任意のものが、膜の重量の最大5wt%までの範囲、たとえば、0.001wt%または1wt%で、存在してもよい。
【0097】
本発明の複合膜は、電気透析および酸/塩基生成を含む様々な用途のために使用されてもよい。本発明の複合膜はまた、特に、それらが酸性および塩基性媒体における良好な耐久性、低膨潤性を有し、安価に、迅速に、かつ効率的に製造され得るため、バイポーラ膜として使用されてもよい。
【0098】
本発明の例示的な実施形態において、複合膜は、図2に概略的に描写される方法によって調製される。
移動する第3の多孔質支持体は巻き出し機(1)において巻き出され、第3の多孔質支持体は硬化性組成物適用ステーション(2)において第3の硬化性組成物を含浸され、過剰の第3の硬化性組成物は、計量ステーション(3)において、たとえば、スクイーズバーによって除去され、含浸された第3の多孔質支持体は、硬化ステーション(4)において硬化され、それにより第3の多孔質支持体の空孔内に空孔のネットワークを含む第3のイオン性ポリマー(本明細書において「基層」と略記される)が形成される。任意選択で、溶媒は乾燥ステーション(5)において除去される。次いで、硬化性組成物適用ステーション(6)において、第1の硬化性組成物(第4の硬化性組成物としても働く)および第2の硬化性組成物は、同時に基層の第1および第2の側に適用され、任意選択で、第1および第2の硬化性組成物のいずれかまたは両方が、基層中に存在する第3のイオン性ポリマーの空孔のネットワークを含浸するようになる。第1および第2の多孔質支持体は、巻き出し機ステーション(7)において巻き出され、それぞれ、積層ステーション(8)において基層の第1の側および第2の側と接触され、それにより第1および第2の多孔質支持体はそれぞれ、第1および第2の硬化性組成物を含浸される。硬化ステーション(9)において、第1および第2の硬化性組成物は硬化され、それにより第1の層a)、第2の層b)が形成され、その間に第3の層c)が挟まれている。最後に、第1の層a)と第2の層b)の間に挟まれた第3の層c)を含んで形成された複合膜は、膜回収ステーション(10)において回収される。
【0099】
好ましい実施形態において、第4の硬化性組成物を基層に適用するステップおよび第1の硬化性組成物を適用するステップは、第4の硬化性組成物が基層の一方の側の空孔に含浸され、その上に硬化性層を形成するように、単に過剰の第4の硬化性組成物を基層に適用することにより組み合わされる。次いで、第4の硬化性組成物が硬化される場合、第4のイオン性ポリマーは基層の一方の側に形成され、第1の層a)を提供する(それにより第4の硬化性組成物は第1の硬化性組成物としても働いて第1の層a)を形成する)。
【0100】
任意選択で、方法は、多孔質支持体のうちの1つまたは複数を前処理してその濡れ特性を高めるステップをさらに含む。あるいは、その濡れ特性を高めるように既に処理されている市販の多孔質支持体を使用してもよい。
【0101】
誤解を避けるために、ステップVIII.を使用して、基層の一方の側に層a)を、基層の他方の側に(または、第1の硬化性組成物を硬化させることにより層a)およびc)の両方を形成する場合、層c)の他方の側に)層b)を、任意選択で、層c)も(第1の組成物の硬化が層c)を既に形成しなかった場合)形成することができる。
【0102】
好ましい実施形態において、第4の硬化性組成物は、第1の硬化性組成物と同一であり、ステップVI.はステップV.に先立って実行され、ステップVI.に先立って、第1の多孔質支持体は第1の硬化性組成物を含浸される。ステップVII.に先立って、第1の硬化性組成物が硬化される、ステップVIII.の一部が実行され、それは基層の空孔中に存在する第1の硬化性組成物(第4の硬化性組成物とも呼ばれる)の硬化を含み、それにより層a)、および部分的にまたは完全に層c)を形成する。続いて、第2の多孔質支持体は第2の硬化性組成物を含浸され、ステップVII.が実行される。基層中の残りの空孔はすべて、第2の硬化性組成物で充填される。最後に、第2の硬化性組成物が硬化される、ステップVIII.の一部が実行され、それにより層a)の反対側の層c)の側に層b)が形成される。
【0103】
別の好ましい実施形態において、第4の硬化性組成物は第1の硬化性組成物と同一であり、ステップVI.はステップV.に先立って実行され、それにより基層の空孔が含浸されるだけでなく、第1の硬化性組成物の層が基層上に形成される。これに第1の多孔質支持体を第1の硬化性組成物に適用するステップが続き、それにより第1の多孔質支持体は第1の硬化性組成物を含浸される。続いて、第1の硬化性組成物が硬化される、ステップVIII.の一部が実行され、それは基層の空孔中に存在する第1の硬化性組成物(第4の硬化性組成物とも呼ばれる)の硬化を含み、それにより層a)、および部分的にまたは完全に層c)が形成される。これにステップVII.が続き、それにより基層中の残りの空孔はすべて、第2の硬化性組成物で充填され、その後、第2の多孔質支持体は第2の硬化性組成物に適用され、それにより第2の多孔質支持体は第2の硬化性組成物を含浸される。最後に、第2の硬化性組成物が硬化されるステップVIII.の一部が実行され、それにより層a)の反対側の層c)の側に層b)が形成される。
【0104】
さらに別の好ましい実施形態において、ステップIIIの後、第3の硬化性組成物を含浸された第3の多孔質支持体は、透明ホイルの間に配置され、続いて、たとえばローラーまたはブレードの間で圧搾されて過剰の第3の硬化性組成物がすべて除去される。ステップIV.の後に、透明ホイルは除去される。さらなるステップは、好ましい実施形態に関連して上述されるようなものであることが好ましい。
【0105】
さらなる好ましい実施形態において、ステップIV.は、不活性雰囲気下、たとえば、窒素、二酸化炭素、またはアルゴンガス下実行される。他のステップは、好ましい実施形態に関連して上述されるようなものである。
【0106】
ここから本発明は、以下の非限定的な実施例によってより詳細に説明され、そこでは別段の定めがない限り、部および百分率はすべて重量による。
【実施例
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
調製方法1
ステップI.
第1、第2、および第3の多孔質支持体は、上に示す表3に記載した。
【0111】
ステップII.
上に示す表2に示される成分を混合することによって、第1および第2の硬化性組成物を調製した。第1の硬化性組成物を第4の硬化性組成物としても使用した。上の表2に示される成分を混合することによって、第3の硬化性組成物を調製した。
【0112】
ステップIII.
メイヤーバーを使用して、第3の硬化性組成物の100μm厚さの層をPETホイルシートに適用した。第3の多孔質支持体(FO2223-10C)を第3の硬化性組成物の層に適用し、それにより第3の硬化性組成物を含浸させ、含浸された第3の多孔質支持体に第2のPETホイルシートを適用して、含浸された第3の多孔質支持体を2つのホイルの間にサンドイッチしたものを用意した。ローラーを使用して、多孔質支持体から空気をすべて穏やかに絞り出した。
【0113】
ステップIV.
第3の多孔質支持体中に存在する第3の硬化性組成物を硬化させるために、5m/分の速度で60%の強度で動作するDバルブを装着した、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10を使用して、含浸された第3の多孔質支持体を2つのホイルの間にサンドイッチしたものに照射した。硬化後、PETホイルを除去し、硬化物を室温の空気中で乾燥させて基層(すなわち、空孔のネットワークを含む第3のイオン性ポリマーを含む第3の多孔質支持体)を得た。
【0114】
わずかに酸性の水溶液中の1.35wt%のスズ(II)塩化物を含む触媒溶液中に基層を浸漬し、室温で乾燥させた。続いて、0.12N NaOH溶液に基層を浸漬して触媒を析出させ、室温で乾燥させた。
【0115】
ステップV.およびVI.
100μmメイヤーバーを使用して、第1の硬化性組成物をPETホイルに適用した。次いで、第1の多孔質支持体をPET上の第1の硬化性組成物の層に適用し、それにより第1の多孔質支持体に第1の硬化性組成物を含浸させた。5秒後、24μmメイヤーバーを使用して、第1の多孔質支持体から過剰の第1の硬化性組成物を除去し、含浸された第1の多孔質支持体の表面上に第1の硬化性組成物のおよそ24μm厚さの層を得た。第1の硬化性組成物の層の上部に上述のステップIV.において調製された基層を配置し、そこで基層は第1の硬化性組成物を含浸されて、第1の多孔質支持体中および第3のイオン性ポリマーの空孔中の両方に第1の硬化性モノマーを含む、基層-第1の多孔質支持体複合体を得た。
【0116】
ステップVIII(部分的に)
5m/分の速度で50%の強度で動作するDバルブを装着した、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10を使用して、このように調製された基層-第1の多孔質支持体複合体の一方の側(第1の多孔質支持体を有する基層の側)に照射した。得られた硬化されたフィルムは、層a)と、第3のイオン性ポリマーの空孔が、硬化された第1の硬化性組成物で充填された層c)との積層体であった。
【0117】
ステップVII.
メイヤーバーを使用して、層a)と層c)との積層体の層a)の反対側に第2の硬化性組成物の100μmの層を適用し、第2の硬化性組成物の層に第2の多孔質支持体を適用した。5秒後、4μmメイヤーバーを使用して、過剰の第2の硬化性組成物を除去した。
【0118】
ステップVIII.(部分的に)
第2の硬化性組成物を硬化させるために、5m/分の速度で50%の強度で動作するDバルブを装着した、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10を使用して、ステップVII.の生成物の両側に照射した。最後に、PETホイルを除去して、第1の層a)、第2の層b)、および第1の層a)と第2の層b)との間に挟まれた第3の層c)を含む、本発明の第1の態様によるバイポーラの複合膜を得た。
【0119】
調製方法2
方法1に関して上述したように、ステップI.およびII.を実行した。
【0120】
ステップIII.
メイヤーバーを使用してPETホイルシート上に置かれた第3の多孔質支持体上に60μm厚さの第3の硬化性組成物の層を適用した。4μmメイヤーバーを使用して、過剰のコーティングを除去し、それにより第3の多孔質支持体が第3の硬化性組成物を含浸されることを確実にした。含浸された第3の多孔質支持体に第2のPETホイルシートを適用して、含浸された第3の多孔質支持体を2つのホイルの間にサンドイッチしたものを用意した。ローラーを使用して、多孔質支持体から空気をすべて穏やかに絞り出した。
【0121】
ステップIV.
5m/分の速度で60%の強度で動作するDバルブを装着した、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10を使用して、含浸された第3の多孔質支持体を2つのホイルの間にサンドイッチしたものに照射した。硬化後、PETホイルを除去し、硬化物を室温の空気中で乾燥させて基層(すなわち、空孔のネットワークを含む第3のイオン性ポリマーを含む第3の多孔質支持体)を得た。
【0122】
わずかに酸性の水溶液中の1.35wt%のスズ(II)塩化物を含む触媒溶液中に基層を浸漬し、室温で乾燥させた。続いて、0.12N NaOH溶液に基層を浸漬して触媒を析出させ、室温で乾燥させた。
【0123】
ステップV.およびVI.
60μmメイヤーバーを使用して、PETホイル上に置かれた第1の多孔質支持体上に第1の硬化性組成物を適用した。4μmバーを使用して、過剰の第1の硬化性組成物を除去し、それにより第1の多孔質支持体に第1の硬化性組成物を完全に含浸させた。24μmメイヤーバーを使用して、含浸された第1の多孔質支持体に第1の硬化性組成物の第2の層を適用し、それにより、含浸された第1の多孔質支持体の表面上に、およそ24μmの第1の硬化性組成物の層を残した。第1の硬化性組成物の層上に上述のステップIV.から生じた触媒を含む基層を配置し、そこで基層は第1の硬化性組成物を含浸されて、第1の多孔質支持体中および第3のイオン性ポリマーの空孔中の両方に第1の硬化性モノマーを含む、基層-第1の多孔質支持体複合体を得た。
【0124】
ステップVIII(部分的に)
5m/分の速度で50%の強度で動作するDバルブを装着した、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10を使用して、基層-第1の多孔質支持体複合体の一方の側(第1の多孔質支持体を有する基層の側)に照射した。得られた硬化されたフィルムは、層a)と、第3のイオン性ポリマーの空孔が、硬化された第1の硬化性組成物で充填された層c)との積層体であった。
【0125】
ステップVII
60μmメイヤーバーを使用して、第2の硬化性組成物を第2の多孔質支持体に適用し、含浸された第2の多孔質支持体を得た。次いで、含浸された第2の多孔質支持体を層a)と層c)との積層体の層a)の反対側に適用した。5秒後、4μmメイヤーバーを使用して、過剰の第2の硬化性組成物を除去した。
【0126】
ステップVIII(部分的に)
第2の硬化性組成物を硬化させるために、5m/分の速度で50%の強度で動作するDバルブを装着した、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10を使用して、ステップVII.の生成物の両側に照射した。最後に、PETホイルを除去して、第1の層a)、第2の層b)、および第1の層a)と第2の層b)との間に挟まれた第3の層c)を含む、本発明の第1の態様によるバイポーラの複合膜を得た。
【0127】
方法1または方法2のいずれかを用いて調製された基層を分析して平均流量孔(MFP)径を決定したのであり、結果を下記の表4に示す。
方法1または方法2のいずれかを用いて調製された基層中に存在する第3のイオン性ポリマー中の空孔(直径18.5mmの試料)の平均流量孔径を、Porolux(商標)ポロメーターを使用して決定した。基層の試料を、「Porefill(商標)」流体で15秒ほどの間予備湿潤し、試料ホルダーに載置した。測定の間、すべての流体が除かれるまで、最大6バールまでN圧を増大させることを使用して、空孔を排気した。
【0128】
【表4】
【0129】
方法1を用いて実施例1を調製し、方法2を用いて実施例2を調製した。
【0130】
複合膜の特徴付け
体積比とは、第3の層c)における第3のイオン性ポリマーの体積の第4のイオン性ポリマーの体積に対する比であり、後者はこれらの実施例において第1のイオン性ポリマーと同一である。樹脂に実施例1の試料を埋め込み、ミクロトームを使用して薄片を切り取ることによって、体積比を決定した。赤外線プローブを備えた原子間力顕微鏡(AFM)によって、この薄片を分析した。線スペクトルを80μmにわたって一致させ、3μm毎にIRスペクトルを記録し、それに続いてIRスペクトルを使用して主成分分析した。得られた画像は、第3のイオン性ポリマーおよび第4のイオン性ポリマーを個々別々のポリマーとして示し、第3のイオン性ポリマーは緑色で識別され、第4のイオン性ポリマーは青色で識別された。第3および第4のイオン性ポリマーは、第3の層c)中の共連続ネットワークであると見られた。
【0131】
2つのポリマーの比(すなわち、第3の層c)中の第3のイオン性ポリマーの第4のイオン性ポリマーに対する体積比)は、その色によって推定されたのであり、下記の表5において比を与える。
【0132】
実施例1および実施例2からのバイポーラ複合膜の電気化学特性、ならびにそれらのバイポーラ特徴を、市販のバイポーラ膜(BPM)と、それらのいわゆるI-U曲線(ある特定の電流密度における電圧が導出される)を決定することによって比較した。この評価により、本発明のバイポーラ複合膜の電圧は、800A/cmの電流密度において市販のBPMの電圧より低いことが明らかとなった。結果を下記の表5に示す。
【0133】
【表5】
【0134】
アニオン性モノマーと架橋剤およびその前駆体との合成
Cl-SS
【0135】
【化13】
【0136】
5℃に積極的に冷却した二重壁反応器において、DMF(300mL)中の4-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム塩(95.08g、0.500mol、1moleq)と4OH-TEMPO(50mg、500ppm)との溶液に塩化チオニル(109mL、178.46g、1.5mol、3moleq)を滴下した。添加が完了した後、溶液をゆっくりと室温に加熱し、さらに16時間撹拌した。次いで、分液漏斗で、1リットルの低温の1M KClに反応混合物を注いだ。最下層を除去し、500mLのジエチルエーテルに溶解した。この溶液を1M KCl溶液(300mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空中で濃縮して黄色の油を得た。次のステップにおいて、さらなる精製はせずに粗生成物(CL-SS)を使用した。典型的な収量は89.5g(88%)である。HPLC-MS純度>98%;H-NMR:<2wt%DMF、0%ジエチルエーテル。
Cl-DVBS
【0137】
【化14】
【0138】
5℃に積極的に冷却した二重壁反応器において、DMF(300mL)中のジビニルベンゼンスルホナートナトリウム塩(80g、0.345mol、1moleq)と4OH-TEMPO(50mg、500ppm)との溶液に塩化チオニル(75mL、123.1g、1.034mol、3moleq)を滴下した。添加が完了した後、溶液をゆっくりと室温に加熱し、さらに16時間撹拌した。次いで、分液漏斗で、1リットルの低温の1M KClに反応混合物を注いだ。最下層を除去し、500mLのジエチルエーテルに溶解した。この溶液を1M KCl溶液(300mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空中で濃縮して黄色の油を得た。次のステップにおいて、さらなる精製はせずに粗生成物(Cl-DVBS)を使用した。典型的な収量は62g(79%)である。HPLC-MS純度>98%;H-NMR:<2wt%DMF、0%ジエチルエーテル。
NH2-SS
【0139】
【化15】
【0140】
5℃に積極的に冷却した二重壁反応器において、DMF(300mL)中の4-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム塩(95.08g、0.500mol、1moleq)と4OH-TEMPO(50mg、500ppm)との溶液に塩化チオニル(109mL、178.46g、1.5mol、3moleq)を滴下した。添加が完了した後、溶液をゆっくりと室温に加熱し、さらに16時間撹拌した。次いで、分液漏斗で、1リットルの低温の1M KClに反応混合物を注いだ。最下層を除去し、5℃に積極的に冷却した二重壁反応器において、水中の水酸化アンモニウム25%(250mL、3.67mol、15moleq)と4OH-TEMPO(50mg、500ppm)との溶液に滴下した。添加が完了した後、溶液を1時間撹拌した。次いで、溶液を室温に加熱し、1時間撹拌した。次いで、反応混合物を5℃に冷却し直し、生成物をろ別し、50mLの冷水で洗浄した。生成物(NH2-SS)を30℃で一晩真空中にて乾燥させ、さらなる精製をせずに使用した。典型的な収量は66.8g(73%)である。HPLC-MS純度>95%。
XL-Dの合成
【0141】
【化16】
【0142】
合成の前に、メタンスルホンアミドを真空オーブンにおいて一晩乾燥させた(30℃、vac)。THF(100mL)中の、乾燥させたメタンスルホンアミド(8.32g、0.087mol、1moleq)と4OH-TEMPO(30mg、500ppm)との溶液に、LiH(1.53g、0.192mol、2.2moleq)を固体として一度に加えた。反応混合物を30分間室温で撹拌した。次いで、THF(50mL)中のCl-DVBS(20g、0.087mol、1moleq)の溶液を反応混合物に加えた。添加後、反応混合物を60℃(水浴温度)に加熱した。2日後、反応混合物をセライトでろ過してLiHの過剰分を除去した。真空中でろ液を濃縮し、淡黄色の泡を得た。得られた泡を500mLの酢酸エチルに溶解した。セライトを加え、得られたスラリーを5分間撹拌した。次いで、セライトをろ別し、100mLの酢酸エチルで洗浄した。次いで、このセライト工程を繰り返した。次いで、真空中で溶媒を蒸発させ、得られた白色の泡を500mLのジエチルエーテルで一晩洗浄した。得られた白色の粉末をろ別し、30℃の真空オーブンにおいて16時間乾燥させ、吸湿性の白色の固体を得た。典型的な達成された収量は15.5g(60%)である。HPLC-MS純度>95%;H-NMR:<3wt%残存溶媒;2wt%ジビニルベンゼンスルホナート;ICP-OES:24~30g Li/kg生成物。
XL-2の合成
【0143】
【化17】
【0144】
合成の前に、スチレンスルホンアミド(NH2-SS)を真空オーブンにおいて一晩乾燥させた(30℃、vac)。THF(100mL)中の、乾燥させたスチレンスルホンアミド(16.90g、0.092mol、2.05moleq)と4OH-TEMPO(30mg、500ppm)との溶液に、LiH(1.50g、0.189mol、4.2moleq)を固体として一度に加えた。反応混合物を30分間室温で撹拌した。次いで、THF(50mL)中の1,3ベンゼンジスルホニルクロリド(12.38g、0.045mol、1moleq)の溶液を反応混合物に加えた。添加後、反応混合物を60℃(水浴温度)に加熱した。2日後、反応混合物をセライトでろ過してLiHの過剰分を除去した。真空中でろ液を濃縮し、淡黄色の泡を得た。得られた泡を500mLの酢酸エチルに溶解した。セライトを加え、得られたスラリーを5分間撹拌した。次いで、セライトをろ別し、100mLの酢酸エチルで洗浄した。次いで、このセライト手技を繰り返した。次いで、真空中で溶媒を蒸発させ、得られた白色の泡を500mLのジエチルエーテルで一晩洗浄した。得られた白色の粉末をろ別し、30℃の真空オーブンにおいて16時間乾燥させ、吸湿性の白色の固体を得た。典型的な達成された収量は14.5g(54%)である。HPLC-MS純度>96%;H-NMR:<2wt%残存溶媒;<2wt%スチレンスルホンアミド;ICP-OES:35~40gのLi/kg生成物。
MM-Mの合成
【0145】
【化18】
【0146】
合成の前に、メタンスルホンアミドを、真空オーブンにおいて30℃で一晩乾燥させた。THF(100mL)中の、乾燥させたメタンスルホンアミド(0.100mol、1moleq)と4OH-TEMPO(30mg、500ppm)との溶液に、LiH(0.300mol、3moleq)を固体として一度に加えた。反応混合物を30分間室温で撹拌した。次いで、THF(50mL)中のビニルベンジルスルホニルクロリド(Cl-SS)(0.100mol、1moleq)の溶液を加え、反応混合物を16時間60℃(水浴温度)に加熱した。得られた溶液をセライトでろ過し、得られた泡を500mLの酢酸エチルに溶解した。セライトを加え、得られたスラリーを5分間撹拌した。次いで、セライトをろ別し、100mLの酢酸エチルで洗浄した。次いで、真空中で溶媒を蒸発させ、得られた白色の泡を500mLのジエチルエーテルで一晩破砕した。ろ過によって得られた生成物を回収し、白色の吸湿性粉末として単離した(収率は80%であった、純度>94%)。
図1A
図1B
図2
【国際調査報告】