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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(54)【発明の名称】反応性ポリウレタンエラストマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/67 20060101AFI20230919BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230919BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230919BHJP
   C08G 18/71 20060101ALI20230919BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230919BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20230919BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20230919BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20230919BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230919BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230919BHJP
【FI】
C08G18/67 010
C08G18/42
C08G18/48
C08G18/71
C08F290/06
B29C64/314
B29C64/106
B29C64/264
B33Y70/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514922
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 US2021048898
(87)【国際公開番号】W WO2022051521
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】63/074,349
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シヤオフイ
(72)【発明者】
【氏名】ディーチュ,ハーフェ
(72)【発明者】
【氏名】アレン,ミシェル,ナターシャ
(72)【発明者】
【氏名】ハンドレン,ドナルド
【テーマコード(参考)】
4F213
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4F213AA42
4F213AA43
4F213AA44
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL23
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DC50
4J034DG03
4J034DG04
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4J034DG08
4J034DG09
4J034FA02
4J034FB01
4J034FB03
4J034FC01
4J034FD01
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4J034HA04
4J034HA07
4J034HA18
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
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4J034HC73
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4J034KB02
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4J034KC17
4J034KD02
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4J034LA23
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4J034RA02
4J034RA05
4J034RA07
4J034RA11
4J034RA12
4J127AA01
4J127AA02
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB111
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4J127BD461
4J127BD471
4J127BD481
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BE511
4J127BE51Y
4J127BF141
4J127BF14X
4J127BF191
4J127BF19X
4J127BF201
4J127BF20X
4J127BF611
4J127BF61Y
4J127BF621
4J127BF62Y
4J127BF631
4J127BF63Y
4J127CB161
4J127CC291
4J127EA12
4J127FA06
4J127FA08
4J127FA13
4J127FA22
4J127FA23
(57)【要約】
光重合性組成物に含まれ得る反応性ポリウレタンエラストマーが本明細書に記載されている。そのような組成物は、三次元印刷において有用であり得る。これらのポリウレタンエラストマーの製造方法も記載されている。即席的に説明するエラストマーが、必要な強度を維持しながら弾性を増加させるユニークな組み合わせを有する3Dプリントオブジェクトの製造を可能にし、それら3Dプリントオブジェクトが靴底及び医療機器を含む多くの産業に特に適していることが見出だされた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)による:
【化1】
ここで、H(Me)は、水素又はメチル基のいずれかを示し、
各xは、それぞれ独立して、1~11の範囲の数であり、
yは1~20の範囲の数であり、
ジイソシアネートは、TDI、HDI、IPDI、及びイソシアネート官能性アクリレートからなる群から選択され;
ポリオールは、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールである、
反応性ポリウレタンエラストマー。
【請求項2】
前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、及びメチレンジフェニルジイソシアネートからなる群から選択される、請求項1に記載の反応性ポリウレタンエラストマー。
【請求項3】
前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートである、請求項2に記載の反応性ポリウレタンエラストマー。
【請求項4】
前記ポリオールは、500~5,000の範囲の分子量を有するポリエーテルジオールである、請求項1に記載の反応性ポリウレタンエラストマー。
【請求項5】
ポリエーテルジオールが2,000~2,900の範囲の分子量を有する、請求項4に記載の反応性ポリウレタンエラストマー。
【請求項6】
前記反応性ポリウレタンエラストマーが、
【化2】
からなる群から選択され、
ここで、nは1~16の範囲の数であり;m及びpはそれぞれ独立して、0~16の範囲の数である、請求項1に記載の反応性ポリウレタンエラストマー。
【請求項7】
請求項1に記載の反応性ポリウレタンエラストマーを含む、光重合性組成物。
【請求項8】
少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーをさらに含む、請求項7に記載の光重合性組成物。
【請求項9】
反応性ポリウレタンエラストマーとは異なる少なくとも1つのオリゴマーをさらに含む、請求項7に記載の光重合性組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の反応性ポリウレタンエラストマーの製造方法であって:
前記反応性ポリウレタンエラストマーを形成するために、ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーとヒドロキシル又はアミン末端のアクリレート誘導体をジイソシアネートと反応させること、
を含む方法。
【請求項11】
前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、及びメチレンジフェニルジイソシアネートからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーが、500~5,000g/molの範囲の分子量を有するポリエーテルジオールである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリエーテルジオールが2,000~2,900g/molの範囲の分子量を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の反応性ポリウレタンエラストマーの製造方法であって、
前記反応性ポリウレタンエラストマーを生成するために、ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーとイソシアネート修飾アクリレートを直接反応させること、
を含む方法。
【請求項15】
前記ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーが、500~5,000g/mの範囲の分子量を有するポリエーテルジオールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリエーテルジオールが、2,000~2,900g/molの範囲の分子量を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記イソシアネート修飾アクリレートは
【化3】
から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
三次元物品の調製方法であって、請求項7に記載の組成物の1種類以上による連続する複数の層を施与して三次元物品を製造し、前記連続する複数の層にUV照射することを含む、三次元物品の調製方法。
【請求項19】
前記の施与は、前記組成物の第1層を基板に堆積させることと、前記第1層に前記組成物の第2層を施与することと、任意でその後に連続する複数の層を施与することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記の施与は、前記組成物のインクジェット印刷を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法によって調製される三次元物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、反応性ポリウレタンエラストマーに関する。このようなエラストマーは、例えば、3次元(3D)印刷技術、より具体的には、インクジェット、ステレオリソグラフィー(SLA)、及びデジタル光処理(DLP)において使用され得る。本明細書に記載される反応性ポリウレタンエラストマーは、そのような条件が望まれる様々な潜在的に可能な産業で使用されるように、十分な靭性と組み合わされて特に高い弾性を示すことが示されている。
【背景技術】
【0002】
以下の背景の議論においては、特定の構造及び/又は方法が参照される。しかし、以下の参照は、これらの構造及び/又は方法が先行技術を構成することを認めるものとして解釈されるべきではない。出願人は、そのような構造及び/又は方法が先行技術として適格でないことを示す権利を明示的に留保する。
【0003】
光硬化性組成物は、光重合開始剤を用いてラジカル重合を開始させて光源を使用してモノマーとオリゴマーのネットワークを硬化(重合)させる、3D印刷技術に使用される材料である。一般的に、これらの組成物は、光重合開始剤、モノマー、オリゴマー、その他の成分を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこには、結果物の3D印刷品に特定の用途に必要とされる靭性と弾性の組み合わせを与えるオリゴマーの提供に対する要望が依然としてある。現在のところ、単一成分による解決策はなく、改善されたエラストマーに対する市場の要望が存在する。
【0005】
さらに、最終的に製造されたエラストマーの弾性は改善を必要とする可能性がある。医療機器メーカー、靴メーカー、触覚デバイスメーカーなど、いくつかの業界では、強靭で弾性のある材料を必要としている。さらに、コスト及びリソースの使用に利益をもたらすように、成分(モノマー/オリゴマー)の数を制限しながら、これらの利点をもたらすことができる配合を提供する要望が存在する。
【0006】
本書に記載された反応性ポリウレタンエラストマーの使用は、驚くべきことに、様々な用途に使用される著しく向上した弾性と十分な強度/靭性ユニークな組み合わせを与えることが、見出された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の一態様は、様々な分野で使用されることができる弾性で強靭な物品の配合に使用されることができる反応性ポリウレタンエラストマーに関する。これらの反応性ポリウレタンエラストマーは、以下でより詳細に説明されるように、プレポリマー(ポリマー又はオリゴマー)鎖とウレタンアクリレート末端とから構成される。
【0008】
本技術の別の態様では、第1の態様の反応性ポリウレタンエラストマーの配合方法が記載されている。
【0009】
第1の配合方法では、ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーとヒドロキシル又はアミン末端のアクリレート誘導体をジイソシアネートと反応させて、反応性ポリウレタンエラストマーを形成させる。
【0010】
第2の配合方法では、ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーをイソシアネート修飾アクリレートと直接反応させて、反応性ポリウレタンエラストマーを生成させる。第3の方法では、アクリレートをイソシアネート修飾プレポリマーと反応させる。
【0011】
これら配合方法のいずれにおいても、反応は任意で触媒の存在下で行われることができる。
【0012】
これら配合方法のいずれにおいても、液層下のリーンエアーバブリングを使用して、製品エラストマー中の酸化防止剤の最終的な安定性を高めることができる。
【0013】
本技術の別の態様では、いずれの配合方法でも使用されるヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーは、10,000g/molまでの、例えば250~3000g/mol、例えば1,000~2,900g/molの質量平均分子量を有するポリエーテルジオールである。任意で、ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーは、10,000g/molまでの、例えば250~3000g/mol、特に2,000~2,900g/molの質量平均分子量を有するポリエーテルジオールである。反応性ポリウレタンエラストマーにおいて、プレポリマー鎖は、10,000g/molまでの、例えば250~3000g/mol、任意で2,000~2,900g/molの質量平均分子量を有するポリエーテルジオールに相当する。
【0014】
本技術の別の態様は、本明細書に記載された反応性ポリウレタンエラストマーを含む組成物である。そのような組成物は、例えば、3D印刷において使用され得る。
【0015】
本技術の別の態様は、1つ以上の追加のウレタンアクリレートオリゴマーをさらに含む上記の組成物である。
【0016】
本技術の別の態様は、組成物が1つ以上の反応性モノマーをさらに含む、先の2つの態様のいずれかに記載の組成物である。
【0017】
本技術の別の態様は、任意の実施形態に記載された1種類以上の組成物からなる連続する複数の層(連続層)を施与して3D物品を作製すること;及び連続層にUV照射を行うことによる、3D印刷物品の製造方法である。任意の実施形態においても、組成物は、インクジェット、SLA、及び/又はDLPによる堆積であり得る。
【0018】
本技術の別の態様は、本明細書に記載される方法によって製造される3D物品である。いずれの実施形態においても、組成物は、インクジェット、SLA、又はDLPによって堆積され得る。
【0019】
本技術の別の態様は、20%を超える弾性を有する、本明細書に記載の3D印刷された物品である。任意で、3D印刷された物品は、20%を超える弾性に加え、30N/mmを超える引裂抵抗、及び200%より大きい破断伸びを有する。
定義
【0020】
本発明をさらに詳細に説明する前に、本出願で使用される用語は、別段の指示がない限り、以下のように定義される。
【0021】
本明細書で使用される「約」は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じてある程度まで変化する。使用される文脈でも当業者に明確ではないこの用語の使用がある場合、「約」は、その特定の用語の最大±10%を意味することになる。
【0022】
要素を記載する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)「a」及び「an」及び「the」という用語ならびに類似の参照の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾されない限り、単数及び複数の両方をカバーするものと解釈されるべきである。本明細書での値の範囲の記載は、本明細書で別段の表示がない限り、範囲内にある各個別の値を個別に参照する簡略な方法として単に機能することを意図され、各個別の値は、本明細書で個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されたすべての方法は、本明細書で別段の表示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾されない限り、任意の適切な順序で実行され得る。本明細書で提供されるすべての例又は例示的な言葉(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に実施形態をよりよく明らかにすることを意図したものであり、別段の記載がない限り、特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書内のいかなる文言も、特許請求されていない要素を必須として示すものと解釈されるべきではない。
【0023】
「任意の(optional)」又は「任意に(optionally)」は、後に記述される状況が発生してもしなくてもよいことを意味し、その記述にはその状況が発生する場合と発生しない場合とが含まれる。
【0024】
「事前に決定された」という用語は、その正体がその使用前に知られている要素を指す。
【0025】
本明細書で使用される「ステレオリソグラフィー」又は「SLA」という用語は、光重合を使用してレイヤーバイレイヤーの様式でモデル、プロトタイプ、パターンの作成、及び部品の製造に使用する3D印刷技術の一形態を指し、それによれば、光によって分子鎖が結合してポリマーを形成する。次に、これらのポリマーは、三次元固体の本体を構成する。
【0026】
本明細書で使用される「デジタル光処理」又は「DLP」という用語は、3Dモデリングソフトウェアで作成した設計を取得し、DLP技術を使用して3D物体を印刷する、3D印刷及びステレオリソグラフィーとしても知られている付加製造プロセスを指す。DLPは、デジタルマイクロミラーデバイスを使用する光学マイクロエレクトロメカニカルテクノロジーに基づく表示デバイスである。DLPは、樹脂を固体の3D物体に硬化するためのプリンターにおける光源として使用されることができる。
【0027】
発明の詳細な説明
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されず、当然ながら変化し得ることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのみであり、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0028】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、下限の単位の10分の1までその範囲の上限および下限のそれぞれの介在する値、及びその記述された範囲の他の記述された値または介在する値は、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、記述された範囲において具体的に排除される限界に従うことを条件に、独立して、より小さな範囲中に含まれてよく、本発明内にも包含される。記述された範囲が、限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方または両方を除く範囲もまた、本発明に含まれる。
【0029】
本明細書中のある範囲は、「約」という用語によって先行される数値によって提示される。「約」という用語は、それが先行する正確な数、ならびにその用語が先行する数に近い数か、または近似する数である数の、文言上のサポートを提供するために、本明細書中で使用される。数が、具体的に列挙された数に近いか、または近似する数であるかどうかを決定する際に、近いか、または近似する列挙されていない数は、それが提示される文脈において、具体的に列挙された数の実質的に同等のものを提供する数であってよい。
【0030】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似又は同等の任意の方法及び材料も本発明の実施又は試験に使用されることができるが、代表的な例示的方法及び材料をここで説明する。
【0031】
本開示を読む当業者には明らかであるように、本明細書中に記載および説明される個々の実施形態それぞれは、本発明の範囲または趣旨を逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と容易に分離され、または組み合わされ得る別個の構成要素および特徴を有する。任意の列挙された方法は、記載された事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実行されることができる。
【0032】
本明細書に記載されているのは、成形、コーティング、又は付加製造に使用され得る高性能ウレタンアクリレート弾性材料のファミリーである。この材料は、UV、Eビーム、及び他のエネルギー硬化によって硬化させることができる。このような反応性ポリウレタンエラストマーは、例えば、様々な産業例えば医療機器、靴、及び触覚デバイスにおける3D印刷用途で使用され得る。
【0033】
これらの高性能ウレタンアクリレート材料は、プレポリマー(ポリマー又はオリゴマー)鎖とウレタンアクリレート末端を含む構造を有する。
【0034】
本明細書に記載される反応性ポリウレタンアクリレートエラストマーは、一般に以下の構造:
【化1】
に入る。
【0035】
ここで、それぞれの場合において、xは1~15、例えば1~11であり、yは1~20、例えば1~16であり、「H(Me)」は水素又はメチル基のいずれかの存在を示す。
【0036】
これらのエラストマー材料を実現するために、2つの別々の例示的な経路(route)が存在する。最初の経路では、ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーとヒドロキシル又はアミン末端のアクリレート誘導体をジイソシアネートと反応させて生成物を形成する(図1)。
【0037】
第2の経路では、ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーとイソシアネート修飾アクリレートを直接反応させて、請求されたウレタンアクリレートを生成する。
【0038】
ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーは、例えば、ポリエーテル又はポリエーテルを含むコポリマーであり得る。例えば、ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーは、エチレンとプロピレンのコポリマー、又はポリエーテルホモポリマーであり得る。
【0039】
任意に、ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーは、ポリエステル又はポリエーテル含有コポリマー、例えばPolyTHFポリエーテルジオールであり得る。このようなポリマーの分子量は、500~100,000Da、例えば2,000~100,000Da、例えば2,000~2,900Da、又は2,500~2,900Daであり得る。
【化2】
【0040】
使用されることができるジイソシアネートは、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)(例えば、2,4-異性体、2,6-異性体、又はそれらの混合物として)、又はメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)である。
【化3】
【0041】
ヒドロキシル又はアミン末端のアクリレート誘導体は、任意に、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、又は2-ヒドロキシエチルメタクリレートであり得る。例示的なヒドロキシル又はアミン末端のアクリレート誘導体は、任意で、以下の式に包含されるヒドロキシル又はアミン末端のアクリレート誘導体のいずれかであってよい。
【化4】
【0042】
ここで、「Me」はメチルである。
【0043】
第2の合成経路では、イソシアネート修飾アクリレートを用い、ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーと直接反応させる。ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーは、上述の第1の合成経路で与えられたものと同じであろう。イソシアネート修飾アクリレートは、例えば、上述したアクリレート誘導体と、上述したジイソシアネートとを反応させることにより作製される。このようなイソシアネート修飾アクリレートは、式(I):
【化5】
に従う修飾アクリレートであってよい。
【0044】
この第2の合成経路は、以下の反応:
【化6】
によって例示される。
【0045】
上記反応において、イソシアネート修飾アクリレート(カレンズ AOI)とポリオール(polyTHF)の分子比は、2:1とすることができる。このプロセスに使用され得る触媒は、ネオデカン酸亜鉛などの亜鉛触媒、ビス(2-エチルヘキサノエート)スズ及びジオクタン酸スズなどのスズ触媒、同様にジブチルスズジラウレート、ビスマス20エチルヘキサノエートを含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知の任意の触媒が含まれる。
【0046】
いずれかの経路でも、本方法は、熱的に又は触媒の存在下で実施され得る。いずれの実施形態でも、本方法は、熱的に実施される。例えば、本方法は、重合に適した熱条件下で実施される。いずれの実施形態でも、本方法は、触媒の存在下で実施される。例えば、適切な触媒には、有機亜鉛、テトラアルキルアンモニウム、又は有機スズ化合物が含まれるが、これらに限定されない。いずれの実施形態でも、触媒は、有機亜鉛化合物である。例えば、適切な有機亜鉛化合物には、アセチルアセトネート亜鉛、2-エチルカプロン酸亜鉛などが含まれるが、これらに限定されない。いずれの実施形態でも、触媒は、テトラアルキルアンモニウム化合物である。例えば、適切なテトラアルキルアンモニウム化合物には、N,N,N-トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウムヒドロキシド、N,N,N-トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム2-エチルヘキサノエートなどが含まれるが、これらに限定されない。いずれの実施形態でも、触媒は、有機スズ化合物である。例えば、適切な有機スズ化合物には、ジブチルスズジラウレートが含まれるが、これに限定されない。
【0047】
いずれの実施形態でも、本方法は、約25℃~約100℃の温度で実施され得る。例えば、適切な温度には、約25℃~約100℃、約25℃~約75℃、約25℃~約50℃、又は約50℃~約100℃が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
これらの合成経路を介して生成される反応性ポリウレタンアクリレートエラストマーは、一般に以下の構造に入る:
【化7】
ここで、定義は上記の通りである。
【0049】
即席的に記載された本発明による有用ないくつかの例示的なポリウレタンアクリレートエラストマーは以下のものが挙げられる:
【化8】
【0050】
上記のそれぞれにおいて、nは1~20の数、例えば1~11の数であり、使用されるポリオールの分子量に応じて変化する。m及びpの値は、任意に0~16、例えば1~16である。
【0051】
本明細書に記載される反応性ポリウレタンエラストマーは、靴底及び医療機器など、様々な用途に特に有用な弾性と靭性の組み合わせを有することが利点である。これらのエラストマーからの3D印刷品は、例えば、20%を超える弾性を有する。任意に、3D印刷品は、20%を超える弾性に加え、30N/mmを超える引裂強度、及び200%を超える破断伸びを有する。
【0052】
上記のエラストマー及びエラストマーの製造方法に加えて、本明細書には、エラストマーを含む組成物も記載されている。これらの組成物は、例えば、3D印刷品を作成するのに有用であり得る。
【0053】
本明細書には、光重合方法による三次元印刷に使用するための、本明細書に記載されたエラストマーを含む組成物も記載されている。
【0054】
本組成物は、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含んでよい。1つ以上のエチレン性不飽和モノマーには、ビニル及び/又は(メタ)アクリレートモノマーを含んでよい。適切なエチレン性不飽和モノマーには、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、ビニルモノマー、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。例えば、適切な(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドモノマーには、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォーマル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ラクトン変性エステル、メタクリル酸ラクトン変性エステル、メタクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化メチロールメラミン、2-(N,N-ジエチルアミノ)-エチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルコキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(エチレン又はプロピレンオキシドのいずれかを2~14モル含有するもの)、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチルアリルエーテルイソボルニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、4-アクリロイルモルホリンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
適切なビニルモノマーには、N-ビニルホルムアミド(NVF)、ジイソシアネートを有するNVFの付加物、例えば、トルエンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、ブチルビニルエーテル、1,4-ブチルジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート及び酢酸、ラウリル酸、ドデカン酸、シクロヘキシルカルボン酸、アジピン酸、グルタル酸などのビニルエステルの誘導体などが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
組成物は、1つ以上の光重合開始剤を含むことができる。適切な光重合開始剤には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロピルフェニル)プロパノン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-ドデシルフェニル)プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパノン、ベンゾフェノン、置換ベンゾフェノン、及びこれらの任意の2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書に記載の組成物がエチレン性不飽和モノマーを含む場合、モノマーと即席的に説明された反応性ポリウレタンオリゴマーの相対量は、反応性モノマーと反応性ポリウレタンオリゴマーの総量に基づいて、反応性モノマーが0.5~99.5質量%、任意で20~80質量%の量で存在するように制御される。任意に、組成物は、反応性モノマーと反応性ポリウレタンオリゴマーの組み合わせに基づいて、10~90、20~80、25~75、30~70、又は40~60質量%の反応性モノマーを含んでよい。
【0058】
本明細書に記載の組成物は、即席的に説明された反応性ポリウレタンエラストマーに加えて、1つ以上のウレタンアクリレートオリゴマーを含んでよい。ウレタンアクリレートオリゴマーは、例えば、市販のウレタンアクリレートオリゴマーを含む。このタイプの例示的なウレタンアクリレートは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、アルキル又はアリールポリオール、アルキル又はアリールポリイソシアネート、ヒドロキシル官能性(メタ)アクリレート、及びポリオール及び/又はイソシアネートのブレンドからなる群から誘導されるものである。
【0059】
本明細書に記載の組成物は、1つ以上の光重合開始剤を含むことができる。適切な光重合開始剤には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロピルフェニル)プロパノン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-ドデシルフェニル)プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパノン、ベンゾフェノン、置換ベンゾフェノン、及びこれらの任意の2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。任意の実施形態において、1つ以上の光重合開始剤は、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及びそれらの2つ以上の組合せであってよい。
【0060】
いずれの実施形態でも、1つ以上の光重合開始剤は、組成物の総質量の約0.01質量%~約6.0質量%の量で存在し得る。光重合開始剤の適切な量には、光重合性組成物に基づいて、約0.01質量%~約6.0質量%、約0.1質量%~約4.0質量%、約0.20質量%~約3.0質量%、又は約0.5質量%~約1.0質量%、又は約1~2質量%が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、光重合開始剤は、0.25質量%~約2.0質量%の量で存在する。別の実施形態では、光重合開始剤は、0.5質量%~約1.0質量%の量で存在する。
【0061】
いずれの実施形態でも、組成物は、さらに溶媒を含み得る。適切な溶媒には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、及びこれらの2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
任意の実施形態によれば、組成物には、ナノ粒子をさらに含み得る。適切なナノ粒子には、有機カチオン修飾フィロケイ酸塩、TiO、ZnO、Ag、SiO、Fe、CaCO、A1、Mg(OH)、Al(OH)、CeO、MnO、セルロース、グラフェン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、粘土、例えばクロイサイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト等、及びこれらの2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。いずれの実施形態でも、ナノ粒子は、有機カチオン修飾フィロケイ酸塩であり得る。いずれの実施形態でも、有機カチオン修飾フィロケイ酸塩は、アルキルアンモニウムカチオン交換モンモリロナイトである。
【0063】
任意の実施形態によれば、組成物は、性能改良剤をさらに含み得る。適切な性能改良剤には、チオール、シリルアクリレート、及びチオール-官能性シランが含まれるが、これらに限定されない。いずれの実施形態でも、性能改良剤は、チオールである。例えば、適切なチオールには、1-ペンタンチオール、1-ヘキサンチオール、1-ヘプタンチオール、1-オクタンチオール、1-デカンチオール、1-ドデカンチオール、1-ヘキサデカンチオール、1-オクタデカンチオール、シクロヘキサンチオール、エイコサンチオール、ドコサンチオール、テトラコサンチオール、ヘキサコサンチオール、オクタコサンチオール、t-ドデシルメルカプタン、メチルチオグリコレート、メチル-3-メルカプトプロピオネート、エチルチオグリコレート、ブチルチオグリコレート、ブチル-3-メルカプトプロピオネート、イソオクチルチオグリコレート、イソオクチル-3-メルカプトプロピオネート、イソデシルチオグリコレート、イソデシル-3-メルカプトプロピオネート、ドデシルチオグリコレート、ドデシル-3-メルカプトプロピオネート、オクタデシルチオグリコレート、オクタデシル-3-メルカプトプロピオネート、チオグリコール酸、3-メルカプトプロピオン酸、及びこれらの2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
いずれの実施形態でも、性能改良剤は、チオ官能性シランであってよい。例えば、適切なチオ官能性シランには、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-テトラスルフィド、γ-メルカプトプロピルチメトキシシラン、γ-メルカプトプロピル-トリエトキシシラン、及びこれらの2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
任意の実施形態によれば、組成物は、本技術の組成物の機械的及び化学的特性をさらに高め得るエチレン性官能性又は非官能性非ウレタンオリゴマーをさらに含み得る。適切な非ウレタンオリゴマーには、エポキシ、エトキシル化又はプロポキシル化エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリケトン、及びこれらの2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
三次元物品を得るために組成物を適用することは、組成物を堆積させることを含み得る。いずれの実施形態でも、適用は、組成物の第1層を堆積し、組成物の第2層を第1層に堆積し、その後に連続する複数の層(連続層)を堆積して、3D物品を得ることを含み得る。このような堆積には、UVインクジェット印刷、SLA、連続液体界面製造(CLIP)、及びDLPを含む1つ以上の方法が含まれるが、これらに限定されない。組成物の他の用途には、印刷、包装、自動車、家具、光ファイバー、及び電子機器のための他のコーティング及びインク用途が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書に記載された方法には、組成物の層を紫外線照射と接触させて組成物の硬化を誘発することが含まれる。いずれの実施形態でも、接触には、短波長及び長波長の紫外線照射が含まれる。適切な短波長の紫外線照射には、UV-C又はUV-B照射が含まれる。一実施形態では、短波長の紫外線照射は、UV-C光である。適切な長波長の紫外線照射には、UV-A照射が含まれる。さらに、電子ビーム(EB)照射を利用して、組成物の硬化を誘発してよい。
【0068】
本明細書に記載された方法には、3D物品を得るために、組成物の層の堆積及びUV照射への暴露を繰り返すことが含まれる。いずれの実施形態でも、繰り返しが連続的に起こり得、そこではUV照射への暴露の前に、3D物品を得るために組成物の層の堆積が繰り返される。いずれの実施形態でも、繰り返しが続いて起こり得、そこでは組成物の層の堆積及びUV照射への暴露が、両方の工程の後に繰り返される。
【0069】
別の関連する態様では、本明細書に記載された組成物のいずれかのUV硬化した連続層を含む3D物品が提供される。いずれの実施形態でも、組成物は、インクジェット、SLA、又はDLP堆積されていてよい。
【0070】
いずれの実施形態でも、3D物品には、研磨パッドが含まれ得る。いずれの実施形態でも、研磨パッドは、化学機械研磨(CMP)パッドである。研磨パッドは、任意の既知の方法、例えば、米国特許出願第2016/0107381号、米国特許出願第2016/0101500号、及び米国特許第10,029,405号(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)で提供された方法に従って作製され得る。
【0071】
本技術の3D物品は、改善された靭性を示す。いずれの実施形態でも、三次元物品は、例えば、56~75MPa、又は任意に26~55MPaの引張強度を示し得る。三次元物品は、任意で15~80J/m、又は任意で13~54J/mの衝撃強度を有し得る。
【0072】
例示的な実施形態
第1の実施形態には、式(I)による反応性ポリウレタンエラストマーが記載されている:
【化9】
ここで、H(Me)は、水素又はメチル基のいずれかを示し、
各xは、それぞれ独立して、1~11の範囲の数であり、
yは1~20の範囲の数であり、
ジイソシアネートは、TDI、HDI、IPDI、及びイソシアネート官能性アクリレートからなる群から選択され;
ポリオールは、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールである。
【0073】
第2の実施形態には、前記ジイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、及びメチレンジフェニルジイソシアネートからなる群から選択される、第1の実施形態による反応性ポリウレタンエラストマーが記載される。
【0074】
第3の実施形態には、前記ジイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートである、第2の実施形態による反応性ポリウレタンエラストマーが記載される。
【0075】
第4の実施形態には、前記ポリオールが、500~5,000の範囲の分子量を有するポリエーテルジオールである、最初の3つの実施形態のうちのいずれか1つによる反応性ポリウレタンエラストマーが記載される。
【0076】
第5の実施形態には、ポリエーテルジオールが2,000~2,900の範囲の分子量を有する、第4の実施形態による反応性ポリウレタンエラストマーが記載される。
【0077】
第6の実施形態には、前記反応性ポリウレタンエラストマーが
【化10】
式中、nは1~16の範囲の数であり;m及びpはそれぞれ独立して、0~16の範囲の数である、
からなる群から選択される、第1の実施形態による反応性ポリウレタンエラストマーが記載される。
【0078】
第7の実施形態には、第1~第6の実施形態のいずれか1つによる反応性ポリウレタンエラストマーを含む、光重合性組成物が記載される。
【0079】
第8の実施形態には、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーをさらに含む、第7の実施形態による光重合性組成物が記載される。
【0080】
第9の実施形態には、反応性ポリウレタンエラストマーとは異なる少なくとも1つのオリゴマーをさらに含む、第7又は第8の実施形態による光重合性組成物が記載される。
【0081】
第10の実施形態には、第1~第6の実施形態のいずれか1つによる反応性ポリウレタンエラストマーの製造方法であって:
前記反応性ポリウレタンエラストマーを形成するために、ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーとヒドロキシル又はアミン末端のアクリレート誘導体をジイソシアネートと反応させること、
を含む方法が記載される。
【0082】
第11の実施形態には、前記ジイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、及びメチレンジフェニルジイソシアネートからなる群から選択される、第10の実施形態による方法が記載される。
【0083】
第12の実施形態には、前記ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーが、500~5,000g/molの範囲の分子量を有するポリエーテルジオールである、第10又は11の実施形態による方法が記載される。
【0084】
第13の実施形態には、前記ポリエーテルジオールが2,000~2,900g/molの範囲の分子量を有する、第12の実施形態による方法が記載される。
【0085】
第14の実施形態には、第1~第6のいずれか1つの実施形態による反応性ポリウレタンエラストマーの製造方法であって、
前記反応性ポリウレタンエラストマーを生成するために、ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーとイソシアネート修飾アクリレートを直接反応させること、
を含む方法が記載される。
【0086】
第15の実施形態には、前記ヒドロキシル基又はアミン基末端のプレポリマーが、500~5,000g/mの範囲の分子量を有するポリエーテルジオールである、第14の実施形態による方法が記載される。
【0087】
第16の実施形態には、前記ポリエーテルジオールが、2,000~2,900g/molの範囲の分子量を有する、第15の実施形態による方法が記載される。
【0088】
第17の実施形態には、前記イソシアネート修飾アクリレートが
【化11】
から選択される、第14、第15、又は第16の実施形態による方法が記載される。
【0089】
第18の実施形態には、第7~第9の実施形態のいずれか1種類以上の組成物による連続する複数の層を適用(施与)して三次元物品を製造し、前記連続層にUV照射することを含む、三次元物品の調製方法が記載される。
【0090】
第19の実施形態には、前記適用することが、組成物の第1層を基板に堆積させることと、前記第1層に組成物の第2層を適用することと、任意でその後連続層を適用することを含む、第18の実施形態の方法が記載される。
【0091】
第20の実施形態には、前記適用することが、前記組成物のインクジェット印刷を含む、第18又は第19の実施形態の方法が記載される。
【0092】
第21の実施形態には、第18~第20のいずれか1つの実施形態による方法により調製される三次元物品が記載される。
【0093】
このように一般的に記載された本技術は、以下の実施例を参照することにより、より容易に理解され、これらの実施例は、説明のために提供されるものであり、本発明を限定することを意図したものではない。
【0094】
実施例
印刷とテスト
以下に記載される各実施例では、印刷はOrigin MDK 26プリンターを使用した。プリンターには発熱要素が装備されており、チャンバは最大60°C、バットは最大48°Cに達することができる。典型的なUV385nmの光は、8~9mW/cmである。露光時間は2秒に固定された。溶剤の影響を避けるため、残留樹脂をナプキンによる拭き取りで除去した。後硬化処理は、CCW UV硬化チャンバ内で、4mW/cmのUV405nmで、各平坦面について2分間行った。
【0095】
後述の各実施例において、ASTM D638に従って、タイプVの試験片形状を利用して引張強度の試験を実施した。引張速度は100mm/分であった。
【0096】
引裂抵抗の試験は、ASTM D624に従って行われた。ジオメトリダイCクーポンは、Originプリンターから直接印刷された。測定は、標準的な万能試験機で20インチ/分で行われた。
【0097】
弾性はASTM D2632に従って試験された。厚さ12.5/6/0.5mm(0.50/6/0.02インチ)の標準試験片をスラブから切り出し、又はプランジャーの衝突点が試験片の端から14mm(0.55インチ)の最小距離となるように特別に成形された。
【0098】
ショアA硬度は、ASTM D2240に従って試験された。ショアAアタッチメントの付いたZwick Roell硬度計を標準測定に使用した。平均値と標準偏差を得るために、8つの異なる点の硬度を測定した。
【0099】
市販の及び既存のアクリレートプレポリマーの機械的性能
以下に示す表1は、フォトレジンに使用される市販及び既存のアクリレートプレポリマーの機械的性能を示す。これらは、靭性と弾性の良好なバランスを実現することができなかったことがわかる。
【0100】
例えばLaromer(登録商標)LR UA9072は、30%の反応性希釈剤を含むpTHF1000ベースのウレタンアクリレートである。破断伸びが200%である典型的なソフトタッチ材料であるが、この材料は一般的に弾性は低く、反発性能(rebounding performance)はわずか22.5%である(表3.1)。靴底又はその他の過酷な機械的エラストマーの用途など、高い弾性を必要とする用途では、この材料は適切ではないであろう。
【0101】
【表1】
【0102】
上記の表において、及び残りの実施例を通して、「TPO」はジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドである。上記提示された結果から、比較的高い弾性を得たそれらのプレポリマーは、靭性及び/又は強度も著しく低下しており、一方、靭性/強度がより高いものは、例えば靴底などの特定の用途に必要な弾性を有していないことが分かる。
【0103】
第1合成経路によるオリゴマー合成
オリゴマー合成は、オーバーヘッドメカニカルスターラー、温度プローブ、コンデンサー、及びやはり出発反応成分の液面下に到達する空気導入管を備えたオーブン乾燥反応フラスコ内で無水条件下において実施された。イソシアネートは室温でフラスコに添加され、次いで所望のポリオールが80℃より低い発熱温度に維持される速度で徐々に添加される前に50℃まで加熱した。ポリオールの添加後、配合物中に存在する場合は、任意の短鎖ジオールも添加し、次いで反応混合物を80℃で2時間攪拌させた。次いで、外部加熱を停止し、反応混合物を、反応温度が自然に60℃又は一晩放置した場合には室温に下がるまで攪拌させた。次いで、Journal of Cellular Plastics,J.Cellular Plastics 27(1991)459に記載されているように、1,2,4-トリクロロベンゼンの溶液中のジブチルアミンに対する自動滴定によって%NCO決定を実施した。次いで、化学量論的量のアクリレートを添加して残りのNCO基をすべて消費させ、NCO基の消滅を促進するために反応温度を70℃まで上げ、約2275~2250cm-1にNCOピークの形跡が存在しなくなるまで赤外線(IR)分光法で監視した。この修正法で作られたオリゴマーサンプルのほとんどは、この時間枠中に粘度が2倍にならないという証拠によって、6ヶ月以上安定していることが証明されたが、Aramco Chemicals社製の市販のConvergeポリオールと、内部で製造された新しいポリカプロラクタム-ポリブタジエンポリオールを含む実験バッチでは、説明のつかないゲル化が観察された。表2は、この方法で合成されたいくつかのオリゴマーをまとめたものである。
【0104】
【表2】
【0105】
第1合成経路によるさらなるオリゴマー合成では、ネオデカン酸亜鉛触媒と酸化防止剤を使用した。この第1の合成経路の代替バージョンでは、ネオデカン酸亜鉛触媒、酸化防止剤、ジイソシアネート、ポリオール、及び(メタ)アクリレートを含むすべての反応成分を、反応開始時に同時に添加した。反応は、イソシアネートが完全に消費されるのを監視し、赤外分光法によって確認した。しかし、それでも反応速度が依然として不当に長く感じられる場合には、メタノールの添加によってさらに強制的に反応を完結させた例があった。最初の変更された合成で必要性が特定されたように、生成混合物の全体的な安定性と酸化防止剤の活性を促進するために、乾燥空気を液面下の反応混合物に連続的にバブリングした。表3は、第1合成経路の代替バージョンで合成されたTDI、IPDI、及びHDIベースのオリゴマーをまとめたものである。
【0106】
【表3】
【0107】
第2合成経路による合成
上記でさらに詳細に説明されたように、アミン又はヒドロキシル末端のプレポリマーと、アクリレートによって修飾されたイソシアネートとの反応を通して、即席的に説明された反応性ポリウレタンエラストマーを得ることが可能である。これらの修飾化合物を以下に示す:
【化12】
【0108】
これらの化合物の延伸をPolyTHF 2000で実施し、フォトポリマー配合中のこれらのウレタンアクリレートと上記で形成されたオリゴマーとの相対的な構造-特性関係を比較した。表4は、これらの修飾イソシアネートを使用して第2合成経路により合成されたオリゴマーの分析的特性を示す。
【0109】
【表4】
【0110】
鎖長の影響
異なるジイソシアネート(すなわち、TDI、IPDI、HDI)について、polyTHFの鎖長を変えることによって(すなわち、1000,2000,2900g/mol)、続いてすべてのNCO官能基を2-ヒドロキシルエチルアクリレート(HEA)でキャップすることにより、アクリレート官能化を行い、いくつかのウレタンアクリレートオリゴマーを合成した。これらのオリゴマーの分子量は、合成中の相対的なISO-ポリオール化学量論の変化によって、及びより高い分子量のポリオールを使用することによって調整された。ウレタンジアクリレートがより高い分子量である場合、最終的に硬化した3D印刷サンプルは架橋密度が低くなり、弾性と引張強度が向上する。表5に示されるように、TDI由来のウレタンアクリレートシリーズは、より高分子量のポリオールを使用した場合、弾性が25%から47%に向上している。TDIシリーズのガラス転移温度(Tg)も、polyTHFビルディングブロックの分子量が1000から2900g/molに増加すると、1から-62℃に劇的に減少した。
【0111】
【表5】
【0112】
HDI由来のウレタンアクリレートシリーズは、弾性が44%から70%へと最も高くなった。HDIシリーズの破断伸びは、より長いpTHF2900のポリオール鎖で92%に増加した。同様に、IPDI由来のウレタンアクリレートシリーズは、pTHF2900で89%の伸びを示した。イソシアネートとポリオールの選択に加えて、残留HEAの量も、最終的な3D印刷部品の機械的特性に寄与する可能性がある。未反応HEAモノマーの存在によって、機械的性能の障害が引き起こされる可能性があり、それは表3.9にまとめられたすべてのオリゴマーで4%から8%の範囲であった。HDI/pTHF 2900及びIPDI/pTHF 2900の両オリゴマーサンプルの両方は、さまざまなイソシアネート成分及びpolyTHF分子量を有するすべてのISO/polyTHFバッチの中で際立っている。
【0113】
配合
上記試験されたオリゴマーをMitsubishi UV3500BAを用いて50:50の配合でさらに試験を行った配合物を作成した。結果は以下の表6に示されている。
【0114】
【表6】
【0115】
1つ以上のエチレン性不飽和モノマーの包含
エチレン性不飽和モノマーを使用して、機械的性能をさらに向上させることができる。わずか1~10質量%の使用で、効果的に特性を微調整することができる。例えば、アクリレートモルホリン(ACMO)は、通常、強靭な材料の配合に使用される反応性希釈剤である。HDI及びIPDIイソシアネートとpTHF2900に基づく主要な実験用ウレタンアクリレートをUV3500BaとACMOで配合し、Carbon 3D EPU41ベンチマークと比較した。機械的データを表7に示す。
【0116】
【表7】
【0117】
10質量%のACMOの存在により、HEA-HDI-pTHF2900-HDI-HEA/UV3500BA配合物の弾性が35%から45%に増加した。同様に、HEA-IPDI-pTHF2900-IPDI-HEA/UV3500BA配合物は、弾性が46.3%から42.5%にわずかに減少したものの、同様のレベルであった。この現象は、ACMOの固有の弾性性能に関連している。Carbon3D EPUシリーズ製品の20から25%と比較すると、BASF社の弾性材料は全体的な機械的性能で上回っている。硬度は、反応性希釈剤によって13から18%に向上した。ACMO10質量%で引張強度が8.1MPaから17.8MPaに向上した。引張強度は、Carbon 3D EPU 40(6.2MPa)とEPU 41(9.7MPa)の性能をはるかに超える19.3%まで向上した。
【0118】
以下の表8は、Carbon EPU市販ベンチマーク製品と比較して、上記の表7に示されたX1及びX2配合物で観察された物理的及び機械的特性の詳細な比較を示している。
【0119】
【表8】
【0120】
以下に説明する実施例では、イソシアネート修飾アクリレートをポリエーテルと反応させる合成スキームを利用してHEA-HDI-PolyTHF-HDI-HEAを作製した。
【0121】
本発明の好ましい実施形態は、本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の態様を含めて、本明細書に記載されている。本発明は、好ましい実施形態を参照して上述した詳細に限定されるものではなく、以下の請求項によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の修正及び変更を行うことができることが理解されよう。
【国際調査報告】