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特表2023-540975白色エッチング亀裂を低減するポリアルキレングリコール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】白色エッチング亀裂を低減するポリアルキレングリコール
(51)【国際特許分類】
   C10M 107/34 20060101AFI20230920BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/32 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/12 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/13 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/16 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/06 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/22 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/24 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 40/36 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20230920BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
C10M107/34
C10N20:02
C10N20:04
C10N40:25
C10N40:30
C10N40:32
C10N40:04
C10N40:12
C10N40:13
C10N40:02
C10N40:16
C10N40:08
C10N40:06
C10N40:22
C10N40:24
C10N40:36
C10N50:10
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514879
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 EP2021073762
(87)【国際公開番号】W WO2022049004
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】20194778.5
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リッティヒ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】コシャベク,レネ
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104BH03A
4H104CB14A
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104EA02A
4H104EA03A
4H104LA20
4H104PA01
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA04
4H104PA05
4H104PA07
4H104PA08
4H104PA12
4H104PA20
4H104PA22
4H104PA23
4H104PA37
4H104PA41
4H104PA48
4H104PA49
4H104QA18
(57)【要約】
本発明は、潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減するための、ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤の使用;及び潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減する方法であって、ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤で金属表面を潤滑するステップを含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減するための、ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤の使用。
【請求項2】
潤滑剤が、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%のポリアルキレングリコールを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド単位及びC3~C18アルキレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
ポリアルキレングリコールが、少なくとも25重量%のエチレンオキシド単位及び少なくとも25重量%のプロピレンオキシド単位を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
ポリアルキレングリコールが、35~65重量%のエチレンオキシド単位をポリマー化された形態で含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
ポリアルキレングリコールが、35~65重量%のプロピレンオキシド単位を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
潤滑剤が、150~500cSt、好ましくは200~350cStの40℃における粘度を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
ポリアルキレングリコールが、少なくとも5g/l、好ましくは少なくとも50g/lの20℃における水への溶解度を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
ポリアルキレングリコールが、700~10 000g/mol、好ましくは1000~7000g/molの分子量を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
金属表面に堆積する水素の濃度が低減される、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
金属表面が、ギアの表面、好ましくは風力タービンギアの表面である、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減する方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載のポリアルキレングリコールを含む潤滑剤で金属表面を潤滑するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減するための、ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤の使用;及び潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減する方法であって、ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤で金属表面を潤滑するステップを含む、方法に関する。好ましい実施形態と他の好ましい実施形態との組み合わせは、本発明の範囲内にある。
【背景技術】
【0002】
機械的装置の機械要素は、さらに増加し続ける電力密度、より薄い潤滑膜及び高度に変化することが多い負荷プロファイルから生じる過酷な操作条件にさらされる。典型的な例は、突風、支持構造の屈曲及びグリッド相互作用により引き起こされる大きい負荷振幅を経験し、厳しい環境条件下で作動することが必要とされることが多い風力タービンである。したがって、機械的装置、例えば風力タービンで利用されるものの信頼性の高い作動を達成することは重大な課題である。機械的装置、例えば風力タービンの高維持費及びダウンタイム費用を考慮すると、この課題に対処することは必須である。
【0003】
そのような機械的装置不良の点検により、大きく広がった亀裂網、及び亀裂の近傍における微細構造変化の存在が明らかになることが多く、これはエッチングされた場合に光学顕微鏡下で白色に見える。したがって、そのような不良は、一般に「白色エッチング亀裂」(WEC)と名づけられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減する方法を見い出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減するための、ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤の使用により達成された。この目的はまた、潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減する方法であって、ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤で金属表面を潤滑するステップを含む、方法により達成された。
【発明を実施するための形態】
【0006】
用語「潤滑剤」は、通常、表面(好ましくは金属表面)、例えば機械的装置の表面間の摩擦を低減することができる組成物を指す。機械的装置は、機械的原理に基づいて機能する装置からなる機構であってよい。潤滑剤は通常、潤滑液、潤滑油又は潤滑グリースである。
【0007】
金属表面は通常、金属、例えば純金属又は金属合金の少なくとも一部をなす。金属表面は、通常、機械的装置、例えばパワートレイン、ドライブライン、トランスミッション、ディファレンシャル、ギア、ギアトレイン、ギアセット、ギアボックス、軸受、ブッシング、軸、タービン、コンプレッサー、ポンプ、駆動モータ、発電機の表面である。金属表面は、好ましくはギアの表面、好ましくは風力タービンギアの表面である。
【0008】
用語「潤滑処理金属表面」とは、通常、潤滑剤と接触する金属表面を意味する。
【0009】
白色エッチング亀裂(WECとも呼ばれる)は、通常、金属表面の近傍(例えば金属表面の10mmまで又は5mmまでの内)における亀裂を指す。亀裂は、典型的には、金属表面の近傍における網状の亀裂である。WECは、通常、エッチングされた場合、光学顕微鏡下で白色に見える。
【0010】
潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減するための潤滑剤の使用とは、通常、同じ試験条件下、例えば同じ持続時間、温度、又は風力タービン型で、ポリアルキレングリコールを含まない潤滑剤と比較した場合、WECが低減されることを意味する。
【0011】
金属表面に堆積する水素の濃度は、ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤の使用により低減されることが多い。金属表面の水素含有量は、公知の方法により、例えばキャリアガスを用いた熱抽出により決定することができる。水素は、通常、同じ試験条件下、例えば同じ持続時間、温度、又は風力タービン型で、ポリアルキレングリコールを含まない潤滑剤と比較して低減される。
【0012】
適切なポリアルキレングリコールは公知であり、市販されていることが多い。ポリアルキレングリコールは、通常、C2~C18アルキレンオキシド単位をポリマー化された形態で含む。ポリアルキレングリコールは、1種類のみのアルキレンオキシド又は異なるアルキレンオキシドの混合物をポリマー化された形態で含んでもよい。異なるアルキレンオキシドが存在する場合は、それらはブロック又はランダムにポリマー化された形態で、好ましくはランダムにポリマー化された形態で存在し得る。
【0013】
ポリアルキレングリコールは、好ましくはエチレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む。
【0014】
ポリアルキレングリコールは、好ましくはエチレンオキシド単位及びC3~C18アルキレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む。別の好ましい形態では、ポリアルキレングリコールは、好ましくはエチレンオキシド単位及びC3~C4アルキレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む。別の好ましい形態では、ポリアルキレングリコールは、好ましくはエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む。
【0015】
ポリアルキレングリコールは、少なくとも10、20、25、30、35、40、45又は50重量%のエチレンオキシド単位をポリマー化された形態で含んでもよい。ポリアルキレングリコールは、90、80、70、65、60又は55重量%までのエチレンオキシド単位をポリマー化された形態で含んでもよい。ポリアルキレングリコールは、10~90、20~80、30~70、35~65、40~60又は45~45重量%のエチレンオキシド単位をポリマー化された形態で含んでもよい。
【0016】
ポリアルキレングリコールは、少なくとも10、20、25、30、35、40、45又は50重量%のC3~C18アルキレンオキシド単位をポリマー化された形態で含んでもよい。ポリアルキレングリコールは、90、80、70、65、60又は55重量%までのC3~C18アルキレンオキシド単位をポリマー化された形態で含んでもよい。ポリアルキレングリコールは、10~90、20~80、30~70、35~65、40~60又は45~45重量%のC3~C18アルキレンオキシド単位をポリマー化された形態で含んでもよい。
【0017】
ポリアルキレングリコールは、少なくとも10、20、25、30、35、40、45又は50重量%のプロピレンオキシド単位をポリマー化された形態で含んでもよい。ポリアルキレングリコールは、90、80、70、65、60又は55重量%までのプロピレンオキシド単位をポリマー化された形態で含んでもよい。ポリアルキレングリコールは、10~90、20~80、30~70、35~65、40~60又は45~45重量%のプロピレンオキシド単位をポリマー化された形態で含んでもよい。
【0018】
ポリアルキレングリコールは、少なくとも25重量%のエチレンオキシド単位及び少なくとも25重量%のプロピレンオキシド単位を含んでもよい。別の形態では、ポリアルキレングリコールは、少なくとも35重量%のエチレンオキシド単位及び少なくとも35重量%のプロピレンオキシド単位を含んでもよい。
【0019】
ポリアルキレングリコールは、20~80重量%のエチレンオキシド単位及び20~80重量%のC3~C18アルキレンオキシド単位をポリマー化された形態で含んでもよい。別の形態では、ポリアルキレングリコールは、30~70重量%のエチレンオキシド単位及び30~70重量%のC3~C18アルキレンオキシド単位をポリマー化された形態で含んでもよい。別の形態では、ポリアルキレングリコールは、30~70重量%のエチレンオキシド単位及び30~70重量%のプロピレンオキシド単位をポリマー化された形態で含んでもよい。
【0020】
ポリアルキレングリコールは、500~50 000g/mol、600~20 000、700~10 000、800~9000g/mol、900~8000g/mol、又は1000~7000g/molの分子量を有することが多い。分子量は、例えばサイズ排除クロマトグラフィー又はヒドロキシル価により決定することができ、ヒドロキシル価によることが好ましい。
【0021】
ポリアルキレングリコールは、通常、水溶性である。ポリアルキレングリコールは、少なくとも5g/l、好ましくは少なくとも50g/lの20℃における水への溶解度を有し得る。
【0022】
潤滑剤は、少なくとも1、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は95重量%のポリアルキレングリコールを含んでもよい。
【0023】
潤滑剤は、通常、5~5000cSt、50~1000cSt、150~500cSt、又は200~350cStの40℃における粘度を有する。
【0024】
潤滑剤は、ポリアルキレングリコールに加えて、場合により
- 鉱油、ポリアルファオレフィン、ポリマー化及びインターポリマー化オレフィン、アルキルナフタレン、アルキレンオキシドポリマー、シリコーン油、リン酸エステルから選択される基油;及び/又は
- 潤滑剤添加剤
をさらに含んでもよい。
【0025】
潤滑剤は、好ましくは、ポリアルキレングリコールに加えて、20、15、10、5、3、2又は1重量%未満の基油を含む。別の好ましい形態では、潤滑剤は、ポリアルキレングリコールに加えて、基油を含まない。
【0026】
基油は、鉱油(群I、II又はIII油)、ポリアルファオレフィン(群IV油)、ポリマー化及びインターポリマー化オレフィン、アルキルナフタレン、シリコーン油、リン酸エステル及びカルボン酸エステル(群V油)からなる群から選択してもよい。好ましくは、さらなる基油は、APIの定義に従って、群I、群II、群III基油、又はそれらの混合物から選択される。基油の定義は、米国石油協会(API)刊行物「Engine Oil Licensing and Certification System」、Industry Services Department、Fourteenth Edition、December 1996、Addendum 1, December 1998に見い出されるものと同じである。前記刊行物は、次のように基油を分類する:
a) 群I基油は、90パーセント未満の飽和物(ASTM D 2007)及び/又は0.03パーセントを超える硫黄(ASTM D 2622)を含有し、80以上且つ120未満の粘度指数(ASTM D 2270)を有する。
b) 群II基油は、90パーセント以上の飽和物及び0.03パーセント以下の硫黄を含有し、80以上且つ120未満の粘度指数を有する。
c) 群III基油は、90パーセント以上の飽和物及び0.03パーセント以下の硫黄を含有し、120以上の粘度指数を有する。
d) 群IV基油は、ポリアルファオレフィンを含有する。ポリアルファオレフィン(PAO)としては、アルファオレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマー又はオリゴマーを典型的には含む公知のPAO材料が挙げられ、アルファオレフィンとしては、以下に限定されないが、C2~約C32アルファオレフィンが挙げられ、C8~約C16アルファオレフィン、例えば、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどが好ましい。好ましいポリアルファオレフィンは、ポリ-1-オクテン、ポリ-1-デセン、及びポリ-1-ドデセンである。
e) 群V基油は、群I~IVによって記載されない任意の基油を含有する。群V基油の例としては、アルキルナフタレン、シリコーン油、カルボン酸エステル及びリン酸エステルが挙げられる。
【0027】
合成基油としては、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば、ポリマー化及びインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリ-フェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェノール);及びアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化硫化ジフェニル並びにそれらの誘導体、類似体及び同族体が挙げられる。
【0028】
ケイ素ベースの油、例えば、ポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-又はポリアリールオキシシリコーン油及びシリケート油は、合成基油の別の有用なクラスを構成する;そのような基油としては、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(4-メチル-2-エチル-ヘキシル)シリケート、テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル)シリケート、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。他の合成基油としては、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デシルホスホン酸のジエチルエステル)及びポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。
【0029】
適切な潤滑剤添加剤は、酸化防止剤、粘度指数向上剤、ポリマー増稠剤、腐食防止剤、洗浄剤、分散剤、消泡剤、染料、摩耗保護添加剤、極圧添加剤(EP添加剤)、耐摩耗添加剤(AW添加剤)、摩擦調整剤、金属不活性化剤、流動点降下剤から選択してもよい。
【0030】
粘度指数向上剤は、低温で油の相対粘度を高める以上に高温で油の相対粘度を高める高分子量ポリマーを含む。粘度指数向上剤としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルピロリドン/メタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、オレフィンコポリマー、例えば、エチレン-プロピレンコポリマー又はスチレン-ブタジエンコポリマー、又はポリアルケン、例えば、PIB、スチレン/アクリレートコポリマー及びポリエーテル、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。最も一般的なVI向上剤は、メタクリレートポリマー及びコポリマー、アクリレートポリマー、オレフィンポリマー及びコポリマー、並びにスチレンブタジエンコポリマーである。粘度指数向上剤の他の例としては、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、アルファ-オレフィンポリマー、アルファ-オレフィンコポリマー(例えば、エチレンプロピレンコポリマー)、ポリアルキルスチレン、フェノール縮合物、ナフタレン縮合物、スチレンブタジエンコポリマーなどが挙げられる。これらのうち、10000~300000の数平均分子量を有するポリメタクリレート、及び1000~30000の数平均分子量を有するアルファ-オレフィンポリマー又はアルファ-オレフィンコポリマー、特に1000~10000の数平均分子量を有するエチレン-アルファ-オレフィンコポリマーが好ましい。粘度指数増加剤は、個別に又は混合物の形態で、好都合にはベースストックの重量に対して≧0.05~≦20.0重量%の範囲内の量で、添加及び使用することができる。
【0031】
適切な(ポリマー)増稠剤としては、以下に限定されないが、ポリイソブテン(PIB)、オリゴマーコポリマー(OCP)、ポリメタクリレート(PMA)、スチレンとブタジエンのコポリマー、又は高粘度エステル(複合エステル)が挙げられる。
【0032】
腐食防止剤としては、様々な酸素、窒素、硫黄、及びリンを含有する材料を挙げることができ、金属含有化合物(塩、有機金属など)並びに非金属含有若しくは無灰材料を挙げることができる。腐食防止剤としては、以下に限定されないが、添加剤タイプ、例えば、ヒドロカルビル、アリール、アルキル、アリールアルキル、及びアルキルアリールバージョンの洗浄剤(中性、過塩基性)、スルホネート、フェネート、サリチレート、アルコレート、カルボキシレート、サリキサレート、ホスファイト、ホスフェート、チオホスフェート、アミン、アミン塩、アミンリン酸塩、アミンスルホン酸塩、アルコキシル化アミン、エーテルアミン、ポリエーテルアミン、アミド、イミド、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール(benzothiadole)、メルカプトベンゾチアゾール、トリルトリアゾール(TTZタイプ)、複素環式アミン、複素環式硫化物、チアゾール、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、ジメルカプトチアジアゾール(DMTDタイプ)、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ジチオベンズイミダゾール、イミダゾリン、オキサゾリン、マンニッヒ反応生成物、グリシジルエーテル、無水物、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、ポリグリコールなど、又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0033】
洗浄剤としては、汚れ粒子に付着して、それが臨界面に付着するのを防ぐクリーニング剤が挙げられる。洗浄剤はまた、金属表面自体に付着して、それをきれいに保ち、腐食の発生を防ぎ得る。洗浄剤としては、アルキルサリチル酸カルシウム、カルシウムアルキルフェネート、及びアルカリルスルホン酸カルシウムが挙げられ、代替金属イオン、例えば、マグネシウム、バリウム、又はナトリウムも使用される。使用できるクリーニング剤及び分散剤の例としては、金属ベースの洗浄剤、例えば、中性及び塩基性アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート及びアルカリ土類金属サリチレート、アルケニルスクシンイミド及びアルケニルスクシンイミドエステル及びそれらのホウ水素化物、フェネート、サリエニウス(salienius)錯体洗浄剤及び硫黄化合物で修飾された無灰分散剤が挙げられる。これらの薬剤は、個別に、又は混合物の形態で、好都合にはベースストックの重量に対して≧0.01~≦1.0重量%の範囲内の量で、添加及び使用することができる;これらはまた、高い総塩基数(TBN)、低いTBN、又は高い/低いTBNの混合物であり得る。
【0034】
分散剤は、臨界面上にスラッジ、ワニス、及び他の堆積物が形成するのを防ぐのに役立つ潤滑剤添加剤である。分散剤は、スクシンイミド分散剤(例えば、N置換長鎖アルケニルスクシンイミド)、マンニッヒ分散剤、エステル含有分散剤、脂肪性ヒドロカルビルモノカルボン酸アシル化剤とアミン又はアンモニアとの縮合生成物、アルキルアミノフェノール分散剤、ヒドロカルビル-アミン分散剤、ポリエーテル分散剤又はポリエーテルアミン分散剤であってもよい。一実施形態では、スクシンイミド分散剤としては、ポリイソブチレン置換スクシンイミドが挙げられ、分散剤が由来するポリイソブチレンは、約400~約5000、又は約950~約1600の数平均分子量を有してもよい。一実施形態では、分散剤としては、ホウ酸化分散剤が挙げられる。典型的には、ホウ酸化分散剤としては、ポリイソブチレンスクシンイミドを含むスクシンイミド分散剤が挙げられ、分散剤が由来するポリイソブチレンは、約400~約5000の数平均分子量を有してもよい。ホウ酸化分散剤は、極圧剤の記載の中で上により詳細に記載される。
【0035】
消泡剤は、シリコーン、ポリアクリレートなどから選択してもよい。本明細書に記載の潤滑剤組成物中の消泡剤の量は、配合物の総重量に基づいて、≧0.001重量%~≦0.1重量%の範囲であってもよい。さらなる例として、消泡剤は、約0.004重量%~約0.008重量%の量で存在してもよい。
【0036】
適切な極圧剤は、硫黄含有化合物である。一実施形態では、硫黄含有化合物は、硫化オレフィン、多硫化物、又はそれらの混合物であってもよい。硫化オレフィンの例としては、プロピレン、イソブチレン、ペンテンから誘導された硫化オレフィン;二硫化ベンジルを含む有機硫化物及び/又は多硫化物;二硫化ビス-(クロロベンジル);四硫化ジブチル;ジ-第三級ブチル多硫化物;及びオレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、硫化ディールスアルダー付加物、アルキルスルフェニルN'N-ジアルキルジチオカルバメート;又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、硫化オレフィンとしては、プロピレン、イソブチレン、ペンテン、又はそれらの混合物から誘導された硫化オレフィンが挙げられる。一実施形態では、極圧添加剤硫黄含有化合物としては、ジメルカプトチアジアゾール又はその誘導体若しくは混合物が挙げられる。ジメルカプトチアジアゾールの例としては、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール又はヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールなどの化合物、又はそれらのオリゴマーが挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールのオリゴマーは、典型的には、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール単位間に硫黄-硫黄結合を形成して、前記チアジアゾール単位の2つ以上の誘導体又はオリゴマーを形成することによって形成する。適切な2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール由来の化合物としては、例えば、2,5-ビス(tert-ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール又は2-tert-ノニルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールのヒドロカルビル置換基上の炭素原子の数は、典型的には、1~30、又は2~20、又は3~16を含む。極圧添加剤としては、ホウ素及び/又は硫黄及び/又はリンを含有する化合物が挙げられる。極圧剤は、潤滑剤組成物の0重量%~約20重量%、又は約0.05重量%~約10.0重量%、又は約0.1重量%~約8重量%で潤滑剤組成物中に存在してもよい。
【0037】
耐摩耗添加剤の例としては、有機ボレート、有機ホスファイト、例えば、ジドデシルホスファイト、有機硫黄含有化合物、例えば、硫化鯨油又は硫化テルペン、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛、ホスホ硫化炭化水素及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0038】
摩擦調整剤としては、金属含有化合物若しくは材料、並びに無灰化合物若しくは材料、又はそれらの混合物を挙げることができる。金属含有摩擦調整剤としては、金属が、アルカリ、アルカリ土類、又は遷移族金属を含み得る、金属塩又は金属配位子錯体が挙げられる。そのような金属含有摩擦調整剤はまた、低灰分特性を有してもよい。遷移金属としては、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Znなどを挙げることができる。配位子としては、アルコール、ポリオール、グリセロール、部分エステルグリセロール、チオール、カルボキシレート、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、アミド、イミド、アミン、チアゾール、チアジアゾール、ジチアゾール、ジアゾール、トリアゾールのヒドロカルビル誘導体、並びに有効量のO、N、S、又はPを個別に又は組み合わせて含有する他の極性分子官能基を挙げることができる。特に、Mo含有化合物、例えば、Mo-ジチオカルバメート、Mo(DTC)、Mo-ジチオホスフェート、Mo(DTP)、Mo-アミン、Mo(Am)、Mo-アルコレート、Mo-アルコール-アミドなどが特に有効であり得る。
【0039】
無灰摩擦調整剤としてはまた、有効量の極性基を含有する潤滑剤材料、例えば、ヒドロキシル含有ヒドロカルビル基油、グリセリド、部分グリセリド、グリセリド誘導体などを挙げることができる。摩擦調整剤中の極性基としては、有効量のO、N、S、又はPを個別に又は組み合わせて含有するヒドロカルビル基を挙げることができる。特に有効であり得る他の摩擦調整剤としては、例えば、脂肪酸の塩(灰含有及び無灰誘導体の両方)、脂肪アルコール、脂肪アミド、脂肪エステル、ヒドロキシル含有カルボキシレート、及び同等の合成長鎖ヒドロカルビル酸、アルコール、アミド、エステル、ヒドロキシカルボキシレートなどが挙げられる。ある場合には、脂肪有機酸、脂肪アミン、及び硫化脂肪酸を、適切な摩擦調整剤として使用してもよい。摩擦調整剤の例としては、脂肪酸エステル及びアミド、有機モリブデン化合物、ジアルキルチオカルバミン酸モリブデン及びジアルキルジチオリン酸モリブデンが挙げられる。
【0040】
適切な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、例えば、4-又は5-アルキルベンゾトリアゾール(例えば、トリアゾール)及びその誘導体、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾトリアゾール及び5,5'-メチレンビスベンゾトリアゾール;ベンゾトリアゾール又はトリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば1-[ビス(2-エチル-ヘキシル)アミノメチル)トリアゾール及び1-[ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル)ベンゾトリアゾール;及びアルコキシ-アルキルベンゾトリアゾール、例えば、1-(ノニルオキシメチル)ベンゾトリアゾール、1-(1-ブトキシエチル)ベンゾトリアゾール及び1-(1-シクロヘキシルオキシブチル)トリアゾール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の金属不活性化剤の追加の非限定的な例としては、1,2,4-トリアゾール及びその誘導体、例えば、3-アルキル(又はアリール)-1,2,4-トリアゾール、及び1,2,4-トリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば、1-[ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル-1,2,4-トリアゾール;アルコキシアルキル-1,2,4-トリアゾール、例えば、1-(1-ブトキシエチル)-1,2,4-トリアゾール;及びアシル化3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、イミダゾール誘導体、例えば、4,4'-メチレンビス(2-ウンデシル-5-メチルイミダゾール)及びビス[(N-メチル)イミダゾール-2-イル]カルビノールオクチルエーテル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の金属不活性化剤のさらなる非限定的な例としては、硫黄含有複素環式化合物、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チア-ジアゾール及びそれらの誘導体;及び3,5-ビス[ジ(2-エチルヘキシル)アミノメチル]-1,3,4-チアジアゾリン-2-オン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の金属不活性化剤のさらに非限定的な例としては、アミノ化合物、例えば、サリチリデンプロピレンジアミン(salicylicdenepropylenediamine)、サリチルアミノグアニジン及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の金属不活性化剤は、組成物中の量において特に制限されないが、典型的には、組成物の重量に基づいて、約0.01~約0.1、約0.05~約0.01、又は約0.07~約0.1重量%の量で存在する。あるいは、1つ以上の金属不活性化剤は、組成物の重量に基づいて、約0.1重量%未満、約0.7重量%未満、又は約0.5重量%未満の量で存在してもよい。
【0041】
流動点降下剤(PPD)としては、ポリメタクリレート、アルキル化ナフタレン誘導体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。一般的に使用される添加剤、例えば、アルキル芳香族ポリマー及びポリメタクリレートもまた、この目的に有用である。典型的には、処理率は、ベースストックの重量に対して、≧0.001重量%~≦1.0重量%の範囲である。
【0042】
解乳化剤としては、リン酸トリアルキル、並びにエチレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はそれらの混合物の様々なポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0043】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤又は非フェノール系酸化抑制剤が挙げられる。
【0044】
有用なフェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノールが挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤は、無灰(金属を含まない)フェノール系化合物、又は特定のフェノール系化合物の中性若しくは塩基性金属塩であってもよい。典型的なフェノール系酸化防止剤化合物は、立体障害型ヒドロキシル基を含有するものであるヒンダードフェノール類であり、これらとしては、ヒドロキシル基が互いにo又はp位にあるジヒドロキシアリール化合物の誘導体が挙げられる。典型的なフェノール系酸化防止剤としては、6個以上の炭素原子を有するアルキル基で置換されたヒンダードフェノール、及びこれらのヒンダードフェノールのアルキレン結合誘導体が挙げられる。このタイプのフェノール系材料の例としては、2-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;2-t-ブチル-4-オクチルフェノール;2-t-ブチル-4-ドデシルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-ドデシルフェノール;2-メチル-6-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;及び2-メチル-6-t-ブチル-4-ドデシルフェノールが挙げられる。他の有用なヒンダードモノフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ヒンダード2,6-ジ-アルキル-フェノール系プロピオン酸エステル誘導体を挙げることができる。ビスフェノール系酸化防止剤はまた、本発明と組み合わせて使用してもよい。オルト結合フェノールの例としては、2,2'-ビス(4-ヘプチル-6-t-ブチル-フェノール);2,2'-ビス(4-オクチル-6-t-ブチル-フェノール);及び2,2'-ビス(4-ドデシル-6-t-ブチル-フェノール)が挙げられる。パラ結合ビスフェノールとしては、例えば、4,4'-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)及び4,4'-メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)が挙げられる。
【0045】
使用し得る非フェノール系酸化抑制剤としては、芳香族アミン酸化防止剤が挙げられ、これらは、そのままで、又はフェノール類と組み合わせて使用してもよい。非フェノール系酸化防止剤の典型的な例としては、アルキル化及び非アルキル化芳香族アミン、例えば、式R8R9R10N(式中、R8は、脂肪族、芳香族若しくは置換芳香族基であり、R9は、芳香族若しくは置換芳香族基であり、R10は、H、アルキル、アリールである)又はR11S(O)xR12(式中、R11は、アルキレン、アルケニレン、若しくはアラルキレン基であり、R12は、高級アルキル基、若しくはアルケニル、アリール、若しくはアルカリル基であり、xは、0、1若しくは2である)の芳香族モノアミンが挙げられる。脂肪族基R8は、1~約20個の炭素原子を含有してよく、好ましくは約6~12個の炭素原子を含有する。脂肪族基は、飽和脂肪族基である。好ましくは、R8及びR9の両方は、芳香族又は置換芳香族基であり、芳香族基は、例えばナフチルのような縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基R8及びR9は、例えばSのような他の基と一緒に結合してもよい。
【0046】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも約6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシルが挙げられる。一般的に、脂肪族基は、約14個を超える炭素原子を含有しない。本組成物において有用なアミン酸化防止剤の一般的なタイプとしては、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジル及びジフェニルフェニレンジアミンが挙げられる。2つ以上の芳香族アミンの混合物もまた有用である。ポリマーアミン酸化防止剤も使用することができる。本発明において有用な芳香族アミン酸化防止剤の特定の例としては、p,p'-ジオクチルジフェニルアミン;t-オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン;フェニル-アルファナフチルアミン;及びp-オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミンが挙げられる。硫化アルキルフェノール及びそのアルカリ又はアルカリ土類金属塩も有用な酸化防止剤である。
【0047】
潤滑剤は、例えば、ライト、ミディアム及びヘビーデューティーエンジンオイル、工業用エンジンオイル、船舶用エンジンオイル、自動車用エンジンオイル、クランクシャフトオイル、コンプレッサーオイル、冷凍機油、炭化水素コンプレッサーオイル、超低温潤滑油及び脂肪、高温潤滑油及び脂肪、ワイヤーロープ潤滑剤、繊維機械油、冷凍機油、航空及び航空宇宙潤滑剤、航空タービン油、トランスミッション油、ガスタービン油、スピンドル油、スピン油、トラクション流体、トランスミッション油、プラスチックトランスミッション油、乗用車トランスミッション油、トラックトランスミッション油、工業用トランスミッション油、工業用ギアオイル、絶縁油、インストルメントオイル、ブレーキ流体、トランスミッション液、ショックアブソーバーオイル、熱分配媒体油、変圧器油、脂肪、チェーンオイル、金属加工作業用の最小量の潤滑剤、温冷加工用オイル、水性金属加工液用オイル、ニートオイル金属加工液用オイル、半合成金属加工液用オイル、合成金属加工液用オイル、土壌探査用掘削洗浄剤、油圧オイル、生分解性潤滑剤又は潤滑グリース若しくはワックス、チェーンソーオイル、離型剤、成形流体、銃、ピストル及びライフル潤滑剤又は時計用潤滑剤及び食品グレードで承認された潤滑剤のような様々な用途に使用することができる。
【0048】
本発明はまた、潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減する方法であって、ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤で金属表面を潤滑するステップを含む、方法にも関する。
【0049】
[実施例1]
潤滑剤
以下の潤滑剤を使用した:
Lube PAG-A:約50cStの40℃における動粘性率を有する、ブタノールで開始された、50重量%のエチレンオキシドと50重量%のプロピレンオキシドのランダムにポリマー化された形態のコポリマー(モル重量、およそ1200g/mol)、及び約1100cStの40℃における動粘性率を有する、ジエチレングリコール開始60重量%のエチレンオキシドと40重量%のプロピレンオキシドのランダムにポリマー化された形態のコポリマー(モル重量、およそ6400g/mol)を含むポリアルキレングリコールを有する市販の潤滑剤組成物; 40℃における粘度 230mm2/秒(ISO 3104);粘度指数 約235;流動点 約-40℃;この潤滑剤は、市販の添加剤(オルガノホスフェート及びオルガノチオホスフェートをベースとし、部分的にアミン中和された1.5~2.5%の耐摩耗添加剤;1~3%のフェノール系及びアミン系酸化防止剤;<0.3%のさらなる添加剤(腐食防止剤、脱泡剤))を含有する。
Lube PAG-B:60重量%のエチレンオキシドと40重量%のプロピレンオキシドをランダムにポリマー化された形態で含む純粋ポリアルキレングリコール; 40℃における粘度 225mm2/秒(ASTM D445);粘度指数 約230;流動点 約-45℃;水溶性、分子量およそ2400g/mol;添加剤を含有しない。
【0050】
比較のために、以下の潤滑剤を使用した:
Lube PAO:ポリアルファオレフィン、40℃における粘度 48mm2/秒、100℃における粘度 8mm2/秒(ASTM D445);粘度指数 約140;水に不溶性。
Lube COM:ExxonMobilからの市販の工業用ギアオイル「MobilGear(登録商標)SHC XMP 320」;ポリアルファオレフィン基油をベースとし、10~20重量%のアジピン酸イソトリデシル、1~5重量%のメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)、0.1~1重量%のホスホロチオン酸トリフェニルを含有する。
【0051】
[実施例2]
ボール及びローラー試験機
軸性円筒ローラー軸受の試験用のボール及びローラー試験機で、潤滑剤を試験した。試験条件は以下のようであった:オイル体積 約15ml、これを80~90℃に外部加熱し、垂直力 8kN、回転速度 700分-1、持続時間 100時間、10個の転動体で試験し、最大Hertz'sche圧力 1930MPa、各試験中にストライベック曲線を10時間間隔で作成した。試験した転動体の表面を光学顕微鏡下で分析し、結果を表1(中列)に要約する。
【0052】
[実施例3]
微細構造及び白色エッチング亀裂の分析
試験した各潤滑剤に関して、実施例2の試験試料の微細構造を分析するために、3個の円筒ローラーを前面で断面研磨した。セクショニングでは、断面を0.5mmの距離で作成した。各円筒ローラーは4mm幅であった。研磨した断面を、アルコールの入ったピクリン酸でエッチングしてから、光学顕微鏡で粒子構造を視認できるようにし、エッチング亀裂の評価を改善した。結果を表1に要約する(右列)。データにより、ポリアルキレングリコールをベースとする潤滑剤は白色エッチング亀裂を低減することが実証された。
【0053】
【表1】
【0054】
[実施例4]
水素の堆積
ローラー体中の水素含有量の分析を、キャリアガスを用いた熱抽出により達成した。試料を溶融し、遊離した水素を分析した。1.9ppm±0.2ppmの水素を用いた較正標準を使用した。3個のローラー体を、実施例2の試験後、n-ヘキサン及びアセトンで洗浄し、窒素雰囲気下で乾燥させた後、各潤滑剤に関して分析した。参照及び開始時の水素含有量として、3個のローラー体を、実施例2における試験を行うことなく分析した。実施例2で試験したローラー体中の水素濃度の増加を、表2に要約する。データにより、ポリアルキレングリコールベースの潤滑剤が使用された場合、ローラー体中の水素の堆積の増加が低減されることが示された。
【0055】
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減するための、ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤の使用。
【請求項2】
潤滑剤が、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%のポリアルキレングリコールを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド単位及びC3~C18アルキレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
ポリアルキレングリコールが、少なくとも25重量%のエチレンオキシド単位及び少なくとも25重量%のプロピレンオキシド単位を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
ポリアルキレングリコールが、35~65重量%のエチレンオキシド単位をポリマー化された形態で含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
ポリアルキレングリコールが、35~65重量%のプロピレンオキシド単位を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
潤滑剤が、150~500cSt、好ましくは200~350cStの40℃における粘度を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
ポリアルキレングリコールが、少なくとも5g/l、好ましくは少なくとも50g/lの20℃における水への溶解度を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
ポリアルキレングリコールが、700~10 000g/mol、好ましくは1000~7000g/molの分子量を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
金属表面に堆積する水素の濃度が低減される、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
金属表面が、ギアの表面である、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
金属表面が、風力タービンギアの表面である、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減する方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載のポリアルキレングリコールを含む潤滑剤で金属表面を潤滑するステップを含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
【表2】
(付記)
(付記1)
潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減するための、ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤の使用。
(付記2)
潤滑剤が、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%のポリアルキレングリコールを含む、付記1に記載の使用。
(付記3)
ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む、付記1又は2に記載の使用。
(付記4)
ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド単位及びC 3 ~C 18 アルキレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む、付記1から3のいずれか一項に記載の使用。
(付記5)
ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位をランダムにポリマー化された形態で含む、付記1から4のいずれか一項に記載の使用。
(付記6)
ポリアルキレングリコールが、少なくとも25重量%のエチレンオキシド単位及び少なくとも25重量%のプロピレンオキシド単位を含む、付記1から5のいずれか一項に記載の使用。
(付記7)
ポリアルキレングリコールが、35~65重量%のエチレンオキシド単位をポリマー化された形態で含む、付記1から6のいずれか一項に記載の使用。
(付記8)
ポリアルキレングリコールが、35~65重量%のプロピレンオキシド単位を含む、付記1から7のいずれか一項に記載の使用。
(付記9)
潤滑剤が、150~500cSt、好ましくは200~350cStの40℃における粘度を有する、付記1から8のいずれか一項に記載の使用。
(付記10)
ポリアルキレングリコールが、少なくとも5g/l、好ましくは少なくとも50g/lの20℃における水への溶解度を有する、付記1から9のいずれか一項に記載の使用。
(付記11)
ポリアルキレングリコールが、700~10 000g/mol、好ましくは1000~7000g/molの分子量を有する、付記1から10のいずれか一項に記載の使用。
(付記12)
金属表面に堆積する水素の濃度が低減される、付記1から11のいずれか一項に記載の使用。
(付記13)
金属表面が、ギアの表面、好ましくは風力タービンギアの表面である、付記1から12のいずれか一項に記載の使用。
(付記14)
潤滑処理金属表面における白色エッチング亀裂を低減する方法であって、付記1から13のいずれか一項に記載のポリアルキレングリコールを含む潤滑剤で金属表面を潤滑するステップを含む、方法。
【国際調査報告】