IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星エスディアイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特表-全固体電池 図1
  • 特表-全固体電池 図2
  • 特表-全固体電池 図3
  • 特表-全固体電池 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20230920BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230920BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20230920BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230920BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20230920BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20230920BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230920BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230920BHJP
   H01M 50/474 20210101ALI20230920BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M10/0585
H01M4/134
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M10/0562
H01M50/474
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515816
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 KR2021007810
(87)【国際公開番号】W WO2022055086
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0115636
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユンチェ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジンキュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジンフン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ビョンギュ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ホンジョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】サンイル・ハン
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021AA02
5H021EE00
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH10
5H029AJ06
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM12
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029DJ04
5H029DJ08
5H029DJ16
5H029EJ12
5H029EJ14
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ12
5H050AA12
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA03
5H050DA11
5H050DA19
5H050EA27
5H050EA28
5H050FA02
5H050FA17
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA12
(57)【要約】
負極と正極および前記負極と正極の間に位置する固体電解質を含む電極組立体;および、前記電極組立体を収容するケースを含む全固体電池であって、前記負極は負極集電体および負極活物質およびバインダーを含む負極活物質層を含み、前記負極活物質は炭素系材料と金属粒子を含み、前記バインダーはブタジエン系ゴムの第1高分子およびカルボキシアルキルセルロース(ここで、アルキルは炭素数1~6のアルキルである)、これらの塩およびこれらの組み合わせから選択される第2高分子を含み、前記第1高分子と第2高分子は1:1~6:1の重量比で含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極と正極および前記負極と正極の間に位置する固体電解質を含む電極組立体;および、
前記電極組立体を収容するケース
を含む全固体電池であって、
前記負極は負極集電体および負極活物質およびバインダーを含む負極活物質層を含み、
前記負極活物質は炭素系材料と金属粒子を含み、
前記バインダーはブタジエン系ゴムの第1高分子およびカルボキシアルキルセルロース(ここで、アルキルは炭素数1~6のアルキルである)、これらの塩およびこれらの組み合わせから選択される第2高分子を含み、
前記第1高分子と第2高分子は1:1~6:1の重量比で含まれる、
全固体電池。
【請求項2】
前記金属粒子は、Ag、Zn、Al、Sn、Mg、Ge、Cu、In、Ni、Bi、Au、Si、Pt、Pdまたはこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記金属粒子は5nm~800nmの大きさを有する、請求項1又は請求項2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記炭素系材料は非黒鉛系炭素である、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記非黒鉛系炭素は複数の1次粒子が凝集された2次粒子形態を有する、請求項4に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記1次粒子の粒径は20nm~100nmである、請求項5に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記非黒鉛系炭素はカーボンブラック、活性炭、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラックまたはこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つである、 請求項4~6のうちのいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記バインダーは負極活物質100重量部に対して0.01~40重量部で含まれる、請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項9】
前記ブタジエン系ゴムは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、メタクリレートブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ゴムまたはこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つである、 請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項10】
前記固体電解質は、硫化物系固体電解質である、請求項1~9のうちのいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項11】
前記固体電解質はLi(a、b、c、dおよびeは全て0以上12以下、MはGe、Sn、Siまたはこれらの組み合わせであり、AはF、Cl、Br、またはIのうちの一つである)の固体電解質を含む、請求項10に記載の全固体電池。
【請求項12】
前記負極内に固体電解質が存在しない、請求項1~11のうちのいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項13】
前記負極は10gf/mm以上の極板の結着力を有する、請求項1~12のうちのいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項14】
前記負極は充電時リチウムが析出されるリチウム析出層をさらに含む、請求項1~13のうちのいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項15】
前記リチウム析出層の厚さは10μm~50μmである、請求項14に記載の全固体電池。
【請求項16】
前記負極および前記ケースの間に緩衝材をさらに含む、請求項1~15のうちのいずれか一項に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
全固体電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車など電池を使用する電子機器の急速な普及に伴って小型軽量でありながらも相対的に高容量である二次電池の需要が急速に増大している。特に、リチウム二次電池は軽量でありエネルギー密度が高いため携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。これにより、リチウム二次電池の性能向上のための研究開発が活発に行われている。
【0003】
リチウム二次電池のうちの固体電解質を使用する全固体電池は電解液漏出危険がなくて安全性に優れ薄形の電池製作が容易であるという長所がある。
しかし、固体電解質を使用するリチウム二次電池は液体電解質を使用するリチウムイオン
【0004】
電池に比べてイオン伝導度が低く、特に低温で出力特性が低下するという問題点がある。また、固体電解質が液状電解質に比べて活物質との表面密着性が劣って界面抵抗が増加し、電極活物質と非接触状態で固体電解質に分布していて投入された活物質量に比べて出力特性や容量特性が低下する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、基材に対する活物質層の接着力に優れ低い抵抗を有する電極を含む全固体電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、負極と正極および前記負極と正極の間に位置する固体電解質を含む電極組立体;および、前記電極組立体を収容するケースを含む全固体電池であって、前記負極は負極集電体および負極活物質およびバインダーを含む負極活物質層を含み、前記負極活物質は炭素系材料と金属粒子を含み、前記バインダーはブタジエン系ゴムの第1高分子およびカルボキシアルキルセルロース(ここで、アルキルは炭素数1~6のアルキルである)、これらの塩およびこれらの組み合わせから選択される第2高分子を含み、前記第1高分子と第2高分子は1:1~6:1の重量比で含まれる、全固体電池を提供する。
【0007】
前記金属粒子は、Ag、Zn、Al、Sn、Mg、Ge、Cu、In、Ni、Bi、Au、Si、Pt、Pd、およびこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つであってもよい。
【0008】
前記金属粒子は、5nm~800nmの大きさを有することができる。
【0009】
前記炭素系材料は、非黒鉛系炭素であってもよい。
【0010】
前記非黒鉛系炭素は、複数の1次粒子が凝集された2次粒子形態を有することができる。
【0011】
前記1次粒子の粒径は、20nm~100nmであってもよい。
【0012】
前記非黒鉛系炭素は、カーボンブラック、活性炭、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、およびこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つであってもよい。
【0013】
前記バインダーは、負極活物質100重量部に対して0.01~40重量部で含まれてもよい。
【0014】
前記ブタジエン系ゴムの第1高分子は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、メタクリレートブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ゴム、およびこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つであってもよい。
【0015】
前記固体電解質は、硫化物系固体電解質であってもよい。
【0016】
前記固体電解質は、Li(a、b、c、dおよびeは全て0以上12以下、MはGe、Sn、Siまたはこれらの組み合わせであり、AはF、Cl、Br、またはIのうちの一つである)を含むことができる。
【0017】
前記負極内に固体電解質が存在しなくてもよい。
【0018】
前記負極は10gf/mm以上の極板結着力を有することができる。
【0019】
前記負極は、充電時負極集電体と負極活物質層の間にリチウムが析出されて形成されるリチウム析出層をさらに含むことができる。
【0020】
前記リチウム析出層の厚さは10μm~50μmであってもよい。
【0021】
前記全個体電池は、前記負極および前記ケースの間に緩衝材をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
前記全固体電池は、基材に対する活物質層の接着力に優れ、抵抗の低い電極を含むことによって向上した電池性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態による全固体電池の概略的断面図である。
図2】充電時の全固体電池の概略的断面図である。
図3】実施例1、2および4および比較例1による全固体電池の初期放電容量に対する容量維持率を測定した結果を示したグラフである。
図4】実施例1と2および比較例1による全固体電池の寿命を測定した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されず、本発明は後述の請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0025】
本明細書で特別な言及がない限り、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“上に”あるという時、これは他の部分の“直上”にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。
【0026】
本発明において“粒子大きさ”または“粒径”は、粒径分布曲線(cumulative size-distribution curve)で体積累積量の50%基準での平均粒径(D50)と定義することができる。前記粒径は、例えば走査電子顕微鏡(scanning electron microscopy、SEM)、電界放射型走査電子顕微鏡(field emission scanning electron microscopy、FE-SEM)などを用いた電子顕微鏡観察や、またはレーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。レーザー回折法によって測定時、より具体的には、測定しようとする粒子を分散媒中に分散させた後、市販されるレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac社のMT 3000)に導入して約28kHzの超音波を60Wの出力で照射した後、測定装置における粒径分布の50%基準での平均粒径(D50)を算出することができる。
【0027】
以下、図1を参照して全固体電池を説明する。図1は、一実施形態による全固体電池の断面図である。
【0028】
図1を参照すれば、全固体電池100は、負極集電体401と負極活物質層403を含む負極400、固体電解質層300、および正極活物質層203および正極集電体201を含む正極200を積層させた電極組立体をケース500に収納して製造できる。図1には負極400、固体電解質層300、および正極200を含む一つの電極組立体が示されているが、2つ以上の電極組立体を積層して全固体電池を製作することもできる。
【0029】
前記負極活物質層403は、負極活物質およびバインダーを含む。前記負極活物質は、炭素系材料と金属粒子を含む。
【0030】
前記炭素系材料は結晶質炭素および非黒鉛系炭素が全て可能であり、特定炭素に限定されない。一実施形態で、前記炭素系材料として非黒鉛系炭素が好ましい。前記非黒鉛系炭素とは、X線回折強度(XRD)で測定した炭素系材料のd002値が0.337nmを超過することを意味する。
【0031】
前記結晶質炭素は天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(mesophasecarbon microbeads)、およびこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つであってもよく、前記非黒鉛系炭素は、カーボンブラック、活性炭、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、およびこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つであってもよい。前記カーボンブラックの例としてはSuper P(TIMCAL社)が挙げられる。
【0032】
前記非黒鉛系炭素は複数の1次粒子が凝集された2次粒子形態を有し、前記1次粒子の粒径は20nm~100nm、前記2次粒子の粒径は1μm~20μmであってもよい。
【0033】
一実施形態で、前記1次粒子の粒径は20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上または90nm以上、および100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、または20nm以下であってもよい。
【0034】
一実施形態で、前記2次粒子の粒径は1μm以上、3μm以上、5μm以上、7μm以上、10μm以上または15μm以上、および20μm以下、15μm以下、10μm以下、7μm以下、5μm以下、または3μm以下であってもよい。
【0035】
前記1次粒子の形態は球形、楕円形、板状型、およびこれらの組み合わせであってもよく、一実施形態で、前記1次粒子の形態は球形、楕円形、およびこれらの組み合わせであってもよい。
【0036】
前記金属粒子は、Ag、Zn、Al、Sn、Mg、Ge、Cu、In、Ni、Bi、Au、Si、Pt、Pd、およびこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つであってもよい。負極活物質に前記金属粒子を使用して極板の電気伝導性を向上させることができる。一実施形態で、前記金属粒子はAgが好ましい。
【0037】
前記金属粒子は、5nm~800nmの大きさを有することができる。前記金属粒子の大きさは5nm以上、50nm以上、100nm以上、150nm以上、200nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上、500nm以上、550nm以上、600nm以上、650nm以上、700nm以上または750nm以上であってもよい。また、前記金属粒子の大きさは800nm以下、750nm以下、700nm以下、650nm以下、600nm以下、550nm以下、500nm以下、450nm以下、400nm以下、350nm以下、300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、または50nm以下であってもよい。金属粒子の大きさが前記範囲内にある時、全固体電池の電池特性(例えば、寿命特性)を向上させることができる。
【0038】
前記負極活物質は、前記炭素系材料と前記金属粒子を1:1~99:1の重量比で含むことができる。例えば、前記炭素系材料の重量は、金属粒子に対して1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、90以上または95以上、および99以下、95以下、90以下、85以下、80以下、75以下、70以下、65以下、60以下、55以下、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、5以下、4以下、3以下、または2以下であってもよい。例えば、前記炭素系材料と金属粒子の重量比は1:1~5:1、1:1~10:1、1:1~20:1、1:1~30:1、1:1~40:1、1:1~50:1、1:1~60:1、1:1~70:1、1:1~80:1、または1:1~90:1であってもよい。前記炭素系材料と前記金属粒子が前記重量比で含まれる時、全固体極板の電気伝導性が向上できる。一実施形態で、前記重量比は3:1であってもよい。
【0039】
従来の全固体電池は電極極板内に反応性の高い固体電解質を導入する場合が多いため水系バインダーを適用して極板を製造することが難しいので、通常のリチウムイオン電池とは異なり水系バインダーでないPVDFなどの非水系バインダーを主に使用した。しかし、非水系バインダーは伝導性が低いため非水系バインダーに囲まれた電極素材はリチウムイオン伝導性および電気伝導性が低いという問題があった。
【0040】
このような問題を解決するために、一実施形態は負極400極板内に固体電解質を排除し炭素系材料、金属粒子、および特定バインダーを含む負極400を提供し、負極400内に固体電解質が含まれないので、電気伝導性に優れ、高い接着力および低い電気抵抗を確保することができて全固体電池の特性が向上できる。
【0041】
前記バインダーは、ブタジエン系ゴムの第1高分子およびカルボキシアルキルセルロース、これらの塩およびこれらの組み合わせから選択される第2高分子を含むことができる。前記バインダーは負極活物質層形成用組成物(スラリー)内負極活物質の分散性を向上させ、また強い接着力を有してバインダーの含量を減少させることができ、負極活物質の含量を増加させて全固体電池を高容量化することができる。また、負極400の構造的安定性を高めて電池の諸般特性を向上させることができる。
【0042】
前記ブタジエン系ゴムは置換されたアルキレン構造単位およびブタジエン由来構造単位を含むことができ、具体的に、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、メタクリレートブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ゴム、およびこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つであってもよい。
【0043】
前記ブタジエン系ゴムは、置換されたアルキレン構造単位およびブタジエン由来構造単位を1:1~3:1のモル比で含むことができる。例えば、前記モル比は、1:1~1.5:1、1:1~2:1または1:1~2.5:1であってもよい。前記ブタジエン系ゴムのモル比が前記範囲である場合、接着力改善効果および負極構造安定性効果が改善できる。
【0044】
前記置換されたアルキレン構造単位は置換もしくは非置換のスチレン系モノマーに由来でき、前記置換もしくは非置換のスチレン系モノマーの具体的な例としてはスチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、2-メチル-4-クロロスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、cis-β-メチルスチレン、trans-β-メチルスチレン、4-メチル-α-メチルスチレン、4-フルオロ-α-メチルスチレン、4-クロロ-α-メチルスチレン、4-ブロモ-α-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、2-フルオロスチレン、3-フルオロスチレン、4-フルオロスチレン、2,4-ジフルオロスチレン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、2,、6-ジクロロスチレン、オクタクロロスチレン、2-ブロモスチレン、3-ブロモスチレン、4-ブロモスチレン、2,4-ジブロモスチレン、α-ブロモスチレン、β-ブロモスチレンまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
他の実施形態で、前記置換されたアルキレン構造単位は置換もしくは非置換のニトリル系モノマーに由来でき、前記置換もしくは非置換のニトリル系モノマーの具体的な例としてはアクリロニトリル、マタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
前記ブタジエン由来構造単位はブタジエンモノマーに由来した構造単位であってもよく、前記ブタジエンモノマーの具体的な例としては1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、または2-エチル-1,3-ブタジエンまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
前記第2高分子は、カルボキシアルキルセルロース、これらの塩およびこれらの組み合わせから選択される。前記カルボキシアルキルセルロースのアルキルは低級アルキルである炭素数1~6のアルキルであってもよい。一実施形態で、前記カルボキシアルキルセルロースは、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose;CMC)またはその塩であってもよい。
【0048】
前記カルボキシアルキルセルロースは増粘性が高く優れた塗布性を付与すると同時に接着力向上にも寄与して活物質が集電体から脱落することを防止し、優れたサイクル特性を示すことができる。また、前記カルボキシアルキルセルロースのアルキル基は低級アルキル基であるので、前記カルボキシアルキルセルロースは水溶解度が高くて水系電極を製造することにおいても適する。
【0049】
より具体的に、前記カルボキシメチルセルロースは、分子量(Mw)が10万~400万であるものを使用することができる。前記分子量が前記範囲内である場合、各高分子間引力が向上して負極活物質を均一に分散させることができ、活物質の接着力も向上して寿命特性が向上でき、スラリーの粘度がコーティングに適するので、電極の生産性が向上できる。
【0050】
前記バインダーの第1高分子と第2高分子は、1:1~6:1の重量比で負極に含まれてもよい。前記第1高分子の重量は、第2高分子に対して1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上、2.9以上、または3.0以上および5以下、4.9以下、4.8以下、4.7以下、4.6以下、4.5以下、4.4以下、4.3以下、4.2以下、4.1以下、4.0以下、3.9以下、3.8以下、3.7以下、3.6以下、3.5以下、3.4以下、3.3以下、3.2以下、3.1以下、または3.0以下であってもよい。一実施形態で、前記バインダーの第1高分子と第2高分子の重量比は1:1~5:1または1:1~6:1であってもよい。
【0051】
前記第1高分子および第2高分子が前記重量比で含まれる場合、バインダーが電極層に適切な柔軟性を付与して電極層の亀裂を防止することができ、電極層表面の粘着性が増加できる。反面、第1高分子および第2高分子が前記範囲を超過する範囲で存在する場合、電極の剛直性が低下することがある。
【0052】
前記バインダーは、負極活物質100重量部に対して0.01~40重量部で含まれてもよい。前記バインダーは負極活物質100重量部に対して1~15重量部で含まれてもよく、例えば、前記バインダーは負極活物質100重量部に対して1重量部以上、2重量部以上、3重量部以上、4重量部以上、5重量部以上、6重量部以上、7重量部以上、8重量部以上、9重量部以上、10重量部以上、11重量部以上、12重量部以上、13重量部以上または14重量部以上、および15重量部以下、14重量部以下、13重量部以下、12重量部以下、11重量部以下、10重量部以下、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、または2重量部以下に含まれてもよい。
【0053】
前記バインダーが前記含量範囲で全固体電池100の負極400に含まれる場合、電気抵抗と接着力が改善されて全固体電池の特性(電池容量および出力特性)が向上できる。
【0054】
前記負極活物質層403には前述の負極活物質およびバインダーと共に、例えば、導電材、フィラー、分散剤、イオン導電材などの添加剤が適切に配合されてもよい。負極活物質層403に含有可能な導電材としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、金属粉末などが挙げられる。また、負極活物質層403に含有可能なフィラー、分散剤、イオン導電材などとして、一般に全固体電池に使用される公知の材料を使用することができる。
【0055】
前記負極活物質層403は、負極集電体401の上に形成できる。前記負極集電体401としては例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレス鋼、チタニウム(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはこれらの合金からなる板状体、箔状体などが挙げられる。前記負極集電体401は省略されてもよい。
【0056】
前記負極400は、5.0・10-2ohm・cm以下の極板電気抵抗を有することができる。例えば、前記負極は、5.0・10-2ohm・cm以下、4.9・10-2ohm・cm以下、4.8・10-2ohm・cm以下、4.7・10-2ohm・cm以下、4.6・10-2ohm・cm以下、4.5・10-2ohm・cm以下、4.4・10-2ohm・cm以下、4.3・10-2ohm・cm以下、4.2・10-2ohm・cm以下、4.1・10-2ohm・cm以下、4.0・10-2ohm・cm以下の極板電気抵抗を有することができる。前記負極が5.0・10-2ohm・cm以下の低い極板電気抵抗を有するため極板の電気伝導度が高まって全固体電池の特性が向上できる。
【0057】
前記負極400は10gf/mm以上の負極極板結着力を有することができる。例えば、前記負極は10gf/mm以上、20gf/mm以上、30gf/mm以上、40gf/mm以上、50gf/mm以上、60gf/mm以上、70gf/mm以上、80gf/mm以上、90gf/mm以上の負極極板の結着力を有することができる。前記負極が10gf/mm以上の高い負極極板結着力を有するため極板の安定性が増加するため、全固体電池の特性が向上できる。
【0058】
前記全固体電池100は前記固体電解質層300を含むことによって、より広い温度範囲で高い特性を発揮することができる。前記固体電解質層300は固体電解質を含む。前記固体電解質層300に含まれる固体電解質は、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などの無機固体電解質または固体高分子電解質であってもよい。
【0059】
一実施形態で、前記固体電解質はイオン伝導性に優れる硫化物系固体電解質であってもよく、前記固体電解質はLi(a、b、c、dおよびeは全て0以上12以下、MはGe、Sn、Siまたはこれらの組み合わせであり、AはF、Cl、Br、またはIのうちの一つである)であってもよく、具体的にLiPS、Li11、LiPSClなどを使用することができる。例えば、前記xは0~7であってもよい。前記全固体電池に用いられる硫化物系固体電解質のイオン伝導度は高いほど好ましいが、少なくとも10-4~10-2S/cmである。前記範囲で充放電容量が改善できる。
【0060】
硫化物系固体電解質は、LiSとPを50:50~80:20の混合比で混合させて得ることができる。前記混合比範囲で、好ましいイオン伝導度を有する硫化物系固体電解質を提供することができる。他の成分としてSiS、GeS、Bなどを含んでイオン伝導度をさらに向上させることができる。前記硫化物固体電解質は、非晶質または結晶質であってもよいが、活物質と良好な接触性を有する、非晶質の硫化物系固体電解質を使用することが良い。
【0061】
混合法としては機械的ミリング(mechanical milling)や溶液法を適用することができる。機械的ミリングとは、反応器内に前記の出発原料とボールミルなどを入れて強く攪拌して、出発原料を微粒子化して混合させる方法である。溶液法を用いる場合は、溶媒内で出発原料を混合させて析出物として固体電解質を得ることができる。また、追加的に焼成を行うことができる。追加的な焼成を行う場合、固体電解質の結晶はさらに堅固になり得る。
【0062】
前記全固体電池100は、正極活物質層203および正極集電体201を含む正極200を含む。前記正極活物質層203は正極活物質を含むことができる。正極活物質はリチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することができる正極活物質が好ましく、例えば、前記正極活物質はコバルト、マンガン、ニッケル、およびこれらの組み合わせから選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうちの1種以上のものを使用することができ、その具体的な例としては、Li1-b (前記式中、0.90≦a≦1.8、および0≦b≦0.5である);Li1-b 2-c (前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-b 4-c (前記式中、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCo α(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cCo 2-α α(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cCo 2-α (前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMn α(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cMn 2-α α(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMn 2-α (前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である。);LiNiCoMnGeO(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である。);LiNiG(前記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);LiCoG(前記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);LiMnG(前記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);LiMn(前記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiI;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうちのいずれか一つで表される化合物を使用することができる:
【0063】
前記化学式において、AはNi、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり;BはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであり;DはO、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり;EはCo、Mn、またはこれらの組み合わせであり;FはF、S、P、またはこれらの組み合わせであり;GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはこれらの組み合わせであり;QはTi、Mo、Mn、またはこれらの組み合わせであり;IはCr、V、Fe、Sc、Y、またはこれらの組み合わせであり;JはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせである。
【0064】
例えば、正極活物質はリチウムコバルト酸化物(以下、LCOという)、リチウムニッケル酸化物(lithium nickel oxide)、リチウムニッケルコバルト酸化物(lithium nickel cobalt oxide)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(以下、NCAという)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(以下、NCMという)などのリチウム酸化物、硫化ニッケル、硫化銅、硫黄、酸化鉄、酸化バナジウム(vanadium oxide)などを用いて形成することができる。これらの正極活物質はそれぞれ単独で使用されるか、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
また、正極活物質として層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を使用することができる。ここで、“層状”は薄い層状の形状を示す。また、“岩塩型構造”とは結晶構造の1種である塩化ナトリウム型構造のことを示し、具体的には陽イオンおよび陰イオンそれぞれが形成する面心立方格子が互いに単位格子の角が1/2のみずれて配置された構造を示す。
【0066】
このような層状岩塩型構造を有する遷移金属複合酸化物としては、LiNiCoAl(NCA)、LiNiCoMn(NCM)(但し、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)などの三成分系リチウム遷移金属酸化物がある。
【0067】
正極活物質が前記の層状岩塩型構造を有する三成分系リチウム遷移金属複合酸化物を含む場合、全固体電池100のエネルギー密度および熱安定性を向上させることができる。
【0068】
正極活物質は被覆層で覆われていてもよい。前記被覆層は全固体電池の正極活物質の被覆層として公知のものであれば全て適用することができる。被覆層の例としてはLiO-ZrOなどが挙げられる。
【0069】
また、正極活物質がNCAまたはNCMなどの三成分系リチウム遷移金属複合酸化物から形成されており、正極活物質としてニッケル(Ni)を含む場合、全固体電池100の容量密度が上昇し充電状態で正極活物質の金属溶出を減らすことができる。これによって、全固体電池100は充電状態で長期信頼性およびサイクル(cycle)特性を向上させることができる。
【0070】
ここで、正極活物質の形状としては、例えば、球形、楕円球形などの粒子形状が挙げられる。また、正極活物質の平均粒径は特に制限されず、既存の全固体二次電池の正極活物質に適用可能な範囲であればよい。また、正極活物質層203の正極活物質の含量も特に制限されず、既存の全固体二次電池の正極層に適用可能な範囲であればよい。
【0071】
前記正極活物質層203は、固体電解質を追加的に含むことができる。前記正極層に含まれている固体電解質は、固体電解質層300に含まれる固体電解質と同一であるか異なるものであってもよい。前記固体電解質は、前記正極層の総重量を基準にして10~30重量%含まれてもよい。
【0072】
前記正極活物質層203は正極集電体201の上に形成できる。この時、正極活物質層203は乾式または湿式コーティング方法によって、正極集電体201の上に形成できる。前記正極集電体201としては例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレス鋼、チタニウム(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはこれらの合金からなる板状体、箔状体などが挙げられる。前記正極集電体201は省略されてもよい。
【0073】
また、正極活物質層203には前述の正極活物質および固体電解質と共に、導電材、バインダー、フィラー(filler)、分散剤、イオン導電材などの添加物が適切に配合できる。
【0074】
正極活物質層203に含有可能なフィラー、分散剤、およびイオン導電材としては、前述の負極活物質層403に配合される添加剤と同一なものが使用できる。この時、前記導電材は前記正極活物質層203の総重量を基準にして1~10重量%存在可能である。正極活物質層203に含有可能なバインダーとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)などが挙げられる。
【0075】
前記負極400の厚さは1μm~30μmであってもよい。例えば、前記負極400の厚さは1μm以上、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上または25μm以上、および25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、または5μm以下であってもよい。前記のように負極400の厚さが薄いため全固体電池の寿命を改善することができ、エネルギー密度も高めることができる。
【0076】
前記正極200の厚さは100μm~200μmであってもよい。例えば、前記正極200の厚さは100μm以上、110μm以上、120μm以上、130μm以上、140μm以上、150μm以上、160μm以上、170μm以上、180μm以上、または190μm以上、および200μm以下、190μm以下、180μm以下、170μm以下、160μm以下、150μm以下、140μm以下、130μm以下、120μm以下、または110μm以下であってもよい。前記のように正極200の厚さは負極400の厚さより厚いため、正極200の容量が負極400の容量より大きい。
【0077】
前記負極400に対する前記正極200の厚さ比は3~200であってもよい。例えば、前記負極400に対する前記正極200の厚さ比は3以上、5以上、7以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、100以上、または150以上、および200以下、150以下、100以下、50以下、40以下、30以下、20以下、10以下、7以下、5以下であってもよい。一実施形態で、前記負極400に対する前記正極200の厚さ比は3~10であってもよい。
【0078】
電池の充電時、前記負極および正極は膨張して負極および正極の厚さが増加できる。負極の厚さが増加する時、前記負極はリチウム析出層を追加的に含むことができる。このような構造を有する全固体電池を図2を参照して説明する。図2は、充電時の全固体電池の概略的断面図である。図2において先にすでに説明された構成要素と同一な構成要素については図1と同一な図面符号を適用し、その説明は省略する。図2を参照すれば、全固体電池100の負極400’は負極集電体401’および負極活物質層403’の間に形成されたリチウム析出層405’をさらに含む。充電時、正極200から負極400’に移動するリチウムによってリチウム析出層405’が形成でき、前記リチウム析出層405’を通じて全固体電池の安全性および寿命が増加できる。
【0079】
前記リチウム析出層405’の厚さは、10μm~50μmであってもよい。例えば、前記リチウム析出層405’の厚さは10μm以上、20μm以上、30μm以上または40μm以上、および、50μm以下、40μm以下、30μm以下、または20μm以下であってもよい。前記リチウム析出層405’を含むことによって、充電後前記負極400’の厚さは2倍~5倍増加できる。即ち、充電後前記負極の厚さは充電前初期または放電時負極の厚さに比べて2倍~5倍増加できる。
【0080】
一実施形態で、全固体電池100にリチウム析出層405’による厚さの変化を緩衝させるための緩衝材が追加的に含まれてもよい。前記緩衝材は前記負極400’とケース500の間またはケース500外面に配置されてもよく、電極組立体が一つ以上積層される電池の場合、互いに異なる電極組立体と電極組立体の間に配置されてもよい。
【0081】
前記緩衝材として、弾性回復率が50%以上であり、絶縁機能を有する物質が使用され、具体的にシリコンゴム、アクリルゴム、フッ素系ゴム、ナイロン、合成ゴム、またはこれらの組み合わせが使用される。前記緩衝材は、高分子シート(sheet)形態で存在可能である。
【0082】
以下の実施例および比較例を通じて本発明がさらに詳細に説明される。但し、実施例は本発明を例示するためのものであって、これらのみで本発明の範囲が限定されるのではない。
【実施例
【0083】
実施例1
(1)正極活物質の製造
無水2-プロパノール100重量部、リチウムメトキシド(10%メタノール溶液)10重量部、およびジルコニウム(IV)テトラプロポキシド0.5重量部を混合してLZOコーティング溶液を製造した。前記LZOコーティング溶液にNCM(LiNi0.9Co0.05Mn0.05)を混合して1時間攪拌後、50℃で真空乾燥して正極活物質を製造した。
【0084】
(2)正極の製造
LZOコーティングした正極活物質NCM(LiNi0.9Co0.05Mn0.05)、アルジロダイト型固体電解質LiPSCl、導電材CNF(Carbon Nano Fiber)、およびバインダーポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合した混合物を製造した。前記混合物において正極活物質、固体電解質、導電材、およびバインダーの重量比は85:15:3:1.5であった。
【0085】
その後、混合物にキシレン(xylene)を投入して混合した後、真空チャンバーで45℃で2時間乾燥して150μm厚さの正極を製造した。
【0086】
(3)固体電解質層の製造
アルジロダイト型固体電解質LiPSClにバインダー溶液としてイソブチリルイソブチレート(isobutylyl isobutylate、IBIB)を投入して混合した。この時、前記混合物をシンキー混合器(Thinkymixer)で攪拌して適切な粘度に調節した。粘度調節後、2mmジルコニアボールを添加しシンキー混合器で再び攪拌してスラリーを製造した。前記スラリーを離型PETフィルム上にキャスティングし常温乾燥して固体電解質層を製造した。
【0087】
(4)負極の製造
SBR(styrene butadiene rubber)、およびCMC(sodium carboxymethyl cellulose)を水を溶媒として用いてバインダー溶液を製造した。その後、バインダー溶液とAgナノ粒子(D50:60nm)およびカーボンブラックを混合した。この時、Agナノ粒子、カーボンブラック、SBR、およびCMCの重量比は25:75:6:3であった。
【0088】
前記混合物をシンキー混合器で攪拌して適切な粘度に調節した。粘度調節後、2mmジルコニアボールを添加しシンキー混合器で再び攪拌してスラリーを製造した。攪拌したスラリーをSUS foil上にコーティングした後、100℃で真空乾燥して10μm厚さの負極を製造した。
【0089】
(5)全固体電池の製造
前記(2)で製造した正極を2.89cmの正四角形大きさに裁断し、前記(3)で製造した固体電解質層を4.41cmの正四角形大きさに裁断し、前記(4)で製造した負極を3.61cmの正四角形大きさに裁断した後、積層して全固体電池を製造した。
【0090】
実施例2
負極を製造する時、Agナノ粒子(D50:60nm)、カーボンブラック、SBR、およびCMCの重量比を25:75:8:4になるように混合物を製造したことを除いては実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0091】
実施例3
負極を製造する時、Agナノ粒子(D50:60nm)、カーボンブラック、SBR、およびCMCの重量比を25:75:10:5になるように混合物を製造したことを除いては実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0092】
実施例4
負極を製造する時、Agナノ粒子(D50:60nm)、カーボンブラック、SBR、およびCMCの重量比を25:75:7.5:1.5になるように混合物を製造したことを除いては実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0093】
実施例5
負極を製造する時、Agナノ粒子(D50:60nm)、カーボンブラック、SBR、およびCMCの重量比を25:75:4.5:4.5になるように混合物を製造したことを除いては実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0094】
実施例6
負極を製造する時、Agナノ粒子の代わりにBiナノ粒子を使用し、Biナノ粒子(D50:60nm)、カーボンブラック、SBR、およびCMCの重量比を25:75:6:3になるように混合物を製造したことを除いては実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0095】
実施例7
負極を製造する時、Agナノ粒子の代わりにSnナノ粒子を使用し、Snナノ粒子(D50:60nm)、カーボンブラック、SBR、およびCMCの重量比を25:75:6:3になるように混合物を製造したことを除いては実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0096】
実施例8
負極を製造する時、Agナノ粒子の代わりにZnナノ粒子を使用し、Znナノ粒子(D50:60nm)、カーボンブラック、SBR、およびCMCの重量比を25:75:6:3になるように混合物を製造したことを除いては実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0097】
比較例1
負極を製造する時、バインダーとしてPVDF(polyvinylidene fluoride)をn-メチルピロリドン(N-methylpyrrolidone;NMP)に溶解させて製造した高分子バインダー溶液を使用したことを除いては、実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0098】
この時、製造においてAgナノ粒子(D50:60nm)、カーボンブラック、およびPVdFの重量比は25:75:7であった。
【0099】
比較例2
負極を製造する時、Agナノ粒子(D50:60nm)、カーボンブラック、SBR、およびCMCの重量比を25:75:8.5:0.5になるように混合物を製造したことを除いては実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。この時、スラリーの粘度が確保されなくて極板が製作されなかった。
【0100】
比較例3
負極を製造する時、Agナノ粒子(D50:60nm)、カーボンブラック、SBR、およびCMCの重量比を25:75:3:6になるように混合物を製造したことを除いては実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。この時、スラリーコーティング後、乾燥過程でSUS foilからスラリーが脱離されて極板が製作されなかった。
【0101】
評価1:極板電気伝導度測定
46pin多点極板抵抗測定器を用いて実施例1~5および比較例1~3で製造した負極極板の抵抗を測定した。測定電流は1mA、電圧範囲は0.7Vであり、基材であるSUS foilの抵抗は7*10-5ohm・cmである。
【0102】
測定結果を下記表1に示した。
【0103】
【表1】
【0104】
上記表1を参照すれば、バインダーとしてSBRおよびCMCを1:1~6:1の重量比で混合したバインダーを使用して製造した実施例1~5の負極極板の抵抗値が5.0・10-2ohm・cm以下であって低い反面、SBRおよびCMCの代わりにPVDFバインダーを使用した比較例1は負極極板の抵抗値が5.6・10-2ohm・cmであって高かった。
【0105】
このような結果は、負極にSBRおよびCMCを1:1~6:1の重量比で混合したバインダーを使用して極板抵抗値を低めて負極の電気伝導度を向上させることができるということを示す。
【0106】
評価2:極板結着力評価
前記実施例1~5、7および8の負極極板および比較例1~3の負極極板を幅25mmに裁断してスライドグラス上に両面テープで固定した。固定した負極極板を引張試験器(UTM)を用いて結着力を評価した。この時、10mm/minの速度で負極極板をスライドグラスから180°に分離させた。
【0107】
測定結果を下記表2に示した。
【0108】
【表2】
【0109】
上記表2に示されているように、水系バインダーであるSBRおよびCMCを1:1~6:1の重量比で混合したバインダーを使用して製造した実施例1~5、7および8の負極極板の結着力が39.3gf/mm以上であって高い反面、SBRおよびCMCの代わりにPVDFバインダーを使用した比較例1は負極極板の結着力が7.9gf/mmであって低かった。
【0110】
このような結果は、負極にSBRおよびCMCを1:1~6:1の重量比で混合したバインダーを使用して極板結着力を増加させて電極の安定性を向上させることができるということを示す。
【0111】
評価3:電池出力特性評価
実施例1、2および4、および比較例1による全固体電池に対して充放電を行って初期放電容量に対する容量維持率を評価した。出力特性評価時、45℃で0.1Cで一番目の充放電を行い、二番目のサイクルは0.1Cで充電、0.33Cで放電し、三番目の充放電は0.1Cで充電、1Cで放電して出力特性を評価した。
【0112】
測定結果を図3に示した。図3は、実施例1、2、4、および比較例1による全固体電池の初期放電容量に対する容量維持率を測定した結果を示したグラフである。
【0113】
図3を参照すれば、バインダーとしてSBRおよびCMCを1:1~6:1の重量比で使用した実施例1、2および4の電池の出力特性がSBRおよびCMCの代わりにPVDFバインダーを使用した比較例1の電池出力特性より優れるということが分かる。
【0114】
評価4:電池寿命評価
実施例1と2および比較例1で製造した電池に対して充放電を行って電池寿命特性を評価した。電池寿命評価時、45℃で0.33Cで充放電して電池寿命特性を評価した。
測定結果を図4に示した。
【0115】
図4を参照すれば、バインダーとしてSBRおよびCMCを1:1~6:1の重量比で混合したバインダーを使用して製造した実施例1および2の電池の寿命がSBRおよびCMCの代わりにPVDFバインダーを使用した比較例1の電池寿命より優れるということが分かる。
【0116】
以上で本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく添付された請求範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するのである。
【符号の説明】
【0117】
100:全固体電池
200:正極
201:正極集電体
203:正極活物質層
300:固体電解質層
400、400’:負極
401、401’:負極集電体
403、403’:負極活物質層
405’:リチウム析出層
500:ケース
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極と正極および前記負極と正極の間に位置する固体電解質を含む電極組立体;および、
前記電極組立体を収容するケース
を含む全固体電池であって、
前記負極は負極集電体および負極活物質およびバインダーを含む負極活物質層を含み、
前記負極活物質は炭素系材料と金属粒子を含み、
前記バインダーはブタジエン系ゴムの第1高分子およびカルボキシアルキルセルロース(ここで、アルキルは炭素数1~6のアルキルである)、これらの塩およびこれらの組み合わせから選択される第2高分子を含み、
前記第1高分子と第2高分子は1:1~6:1の重量比で含まれる、
全固体電池。
【請求項2】
前記金属粒子は、Ag、Zn、Al、Sn、Mg、Ge、Cu、In、Ni、Bi、Au、Si、Pt、Pdまたはこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記金属粒子は5nm~800nmの大きさを有する、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記炭素系材料は非黒鉛系炭素である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記非黒鉛系炭素は複数の1次粒子が凝集された2次粒子形態を有する、請求項4に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記1次粒子の粒径は20nm~100nmである、請求項5に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記非黒鉛系炭素はカーボンブラック、活性炭、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラックまたはこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つである、 請求項4に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記バインダーは負極活物質100重量部に対して0.01~40重量部で含まれる、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項9】
前記ブタジエン系ゴムは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、メタクリレートブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ゴムまたはこれらの組み合わせから選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項10】
前記固体電解質は、硫化物系固体電解質である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項11】
前記固体電解質はLi(a、b、c、dおよびeは全て0以上12以下、MはGe、Sn、Siまたはこれらの組み合わせであり、AはF、Cl、Br、またはIのうちの一つである)の固体電解質を含む、請求項10に記載の全固体電池。
【請求項12】
前記負極内に固体電解質が存在しない、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項13】
前記負極は10gf/mm以上の極板の結着力を有する、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項14】
前記負極は充電時リチウムが析出されるリチウム析出層をさらに含む、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項15】
前記リチウム析出層の厚さは10μm~50μmである、請求項14に記載の全固体電池。
【請求項16】
前記負極および前記ケースの間に緩衝材をさらに含む、請求項1に記載の全固体電池。
【国際調査報告】