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特表2023-541107熱可塑性ポリウレタン、可塑剤及び有機添加剤を含有する焼結粉末(SP)
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  • 特表-熱可塑性ポリウレタン、可塑剤及び有機添加剤を含有する焼結粉末(SP) 図1
  • 特表-熱可塑性ポリウレタン、可塑剤及び有機添加剤を含有する焼結粉末(SP) 図2
  • 特表-熱可塑性ポリウレタン、可塑剤及び有機添加剤を含有する焼結粉末(SP) 図3
  • 特表-熱可塑性ポリウレタン、可塑剤及び有機添加剤を含有する焼結粉末(SP) 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-28
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリウレタン、可塑剤及び有機添加剤を含有する焼結粉末(SP)
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20230921BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20230921BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20230921BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20230921BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230921BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20230921BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20230921BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20230921BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20230921BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230921BHJP
【FI】
C08L75/04
C08L23/26
C08K3/01
C08K5/20
C08K3/013
C08J3/12 A CFF
B29C64/314
B29C64/153
B29C64/165
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023507535
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2021071052
(87)【国際公開番号】W WO2022028963
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】20189239.5
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】フェルベレン,レンダー
(72)【発明者】
【氏名】ホルマン,ラヤン
(72)【発明者】
【氏名】ロシェット,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】シェファー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,フィクトール
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】クルト,ジナン
【テーマコード(参考)】
4F070
4F213
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA53
4F070AC04
4F070AC27
4F070AC28
4F070AC47
4F070AC75
4F070AD02
4F070AE03
4F070AE04
4F070AE06
4F070AE07
4F070DA46
4F070DB09
4F070FA01
4F070FB06
4F070FC05
4F213AA31
4F213AA44
4F213AB05
4F213AB06
4F213AB07
4F213AB11
4F213AB12
4F213AB16
4F213AB17
4F213AR06
4F213AR12
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL92
4J002BB032
4J002BB122
4J002BB212
4J002CK021
4J002DA018
4J002DA019
4J002DA028
4J002DA038
4J002DD048
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE256
4J002DE266
4J002DG046
4J002DH036
4J002DJ006
4J002DJ009
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DK006
4J002DL006
4J002DL009
4J002EG018
4J002EH027
4J002EH047
4J002EP017
4J002EP027
4J002EW068
4J002FA048
4J002FA049
4J002FA059
4J002FA089
4J002FD019
4J002FD038
4J002FD078
4J002FD098
4J002FD118
4J002FD202
4J002FD206
4J002FD207
(57)【要約】
本発明は、いずれの場合も(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、59.5質量%~99.85質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)、0.05質量%~0.5質量%の少なくとも1種の流動剤(B)、0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の有機添加剤(C)、0質量%~5質量%の少なくとも1種のさらなる添加剤(D)、及び0質量%~30質量%の少なくとも1種の補強材(E)を含む焼結粉末(SP)に関する。さらに、本発明は、焼結粉末(SP)を焼結することによって成形体を製造する方法、本発明の方法により得ることができる成形体、及び焼結粉末(SP)の流動性及び凝集を向上するために、少なくとも1種の流動剤(B)及び少なくとも1種の有機添加剤(C)を焼結粉末(SP)に使用する方法に関する。さらに、本発明は、焼結法における焼結粉末(SP)の使用方法、及び焼結粉末(SP)の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、59.5質量%~99.85質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.05質量%~0.5質量%の少なくとも1種の流動剤(B)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の有機添加剤(C)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~5質量%の少なくとも1種のさらなる添加剤(D)、及び
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~30質量%の少なくとも1種の補強材(E)
を含む焼結粉末(SP)であって、
前記少なくとも1種の有機添加剤(C)が、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸でグラフト化したポリプロピレンワックス及びアミドワックスからなる群から選択される、焼結粉末(SP)。
【請求項2】
前記少なくとも1種流動剤(B)が、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、シリカ、金属酸化物、鉱物、ホウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩及び炭酸塩からなる群から、好ましくは疎水性ヒュームドシリカ、タルク、カオリン、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸バリウムから選択される、請求項1に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項3】
前記焼結粉末(SP)が、
i)いずれの場合も成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、74.15質量%~99.7質量%、好ましくは76.12質量%~99.42質量%の成分(A)、及び/又は
ii)いずれの場合も(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.1質量%~0.35質量%、好ましくは0.18質量%~0.28質量%の成分(B)、及び/又は
iii)いずれの場合も(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.2質量%~3質量%、好ましくは0.4質量%~1.1質量%の成分(C)、及び/又は
iv)(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~2.5質量%の成分(D)、及び/又は
v)成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~20質量%の成分(E)
を含む、請求項1又は2に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項4】
前記少なくとも1種の有機添加剤(C)が、
i)N,N’-アルキレン脂肪酸ジアミドである、及び/又は
ii)前記少なくとも1種の有機添加剤(C)の滴点が以下の条件(式I)を満足するように選択される、
【数1】
(式中、Dは前記少なくとも1種の有機添加剤(C)の滴点であり、TM(A)は前記少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の融点である)、及び/又は
iii)前記焼結粉末(SP)の全界面エネルギーγが、25mN・m-1以下、好ましくは15mN・m-1以下、より好ましくは10mN・m-1以下であるように選択される、及び/又は
iv)前記焼結粉末(SP)の分散成分の界面エネルギーγ が、20mN・m-1以下、好ましくは11mN・m-1以下、より好ましくは7mN・m-1以下であるように選択される、及び/又は
v)前記焼結粉末(SP)の極性成分の界面エネルギーγ が、5mN・m-1以下、好ましくは4mN・m-1以下、より好ましくは3mN・m-1以下であるように選択される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項5】
前記焼結粉末(SP)が、
i)10~190μmの範囲、好ましくは15~150μmの範囲、より好ましくは20~110μmの範囲、特に好ましくは40~100μmの範囲の平均粒径(D50)、及び/又は
ii)80~220℃の範囲、好ましくは100~190℃の範囲、より好ましくは120~170℃の範囲の融点(TM(SP))、及び/又は
iii)3~150cm/10分の範囲、好ましくは15~100cm/10分の範囲、より好ましくは30~70cm/10分の範囲のメルトボリュームフローレート(MVR)、及び/又は
iv)300g/L以上、好ましくは350g/L以上、より好ましくは400g/L以上の嵩密度
を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項6】
前記少なくとも1種の流動剤(B)が、10μm以下、好ましくは2μm以下のD90を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項7】
前記少なくとも1種のさらなる添加剤(D)が、抗核形成剤、安定剤、導電性添加剤、末端基ファンクショナライザー、染料、酸化防止剤、難燃剤及び着色顔料からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項8】
前記少なくとも1種の補強材(E)が、カーボンナノチューブ、ガラスビーズ及びアルミニウムシリケートからなる群から、好ましくはガラスビーズ及びアルミニウムシリケートからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項9】
以下の成分:
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、59.5質量%~99.85質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)、
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、0.05質量%~0.5質量%の少なくとも1種の流動剤(B)、
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の有機添加剤(C)、
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、0質量%~5質量%の少なくとも1種のさらなる添加剤(D)、及び
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、0質量%~30質量%の少なくとも1種の補強材(E)
を含む焼結粉末(SP)を製造する方法であって、
a)前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(A)の総量を粉砕する工程
を含み、
工程a)の前に、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(B)の総量の第1部分(BT1)、及び/又は前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(C)の総量の第1部分(CT1)が成分(A)に混合されて粉末(P)が得られ、工程a)の後に、成分(B)の総量の残り部分(BT2)及び/又は成分(C)の総量の残り部分(CT2)が粉末(P)に混合されて焼結粉末(SP)が得られ、前記第1部分(BT1)が、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(B)の総量の0質量%~100質量%を占め、前記第1部分(CT1)が、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(C)の総量の0質量%~100質量%を占め、前記残り部分(BT2)が、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(B)の総量の(100-BT1)質量%を占め、前記残り部分(CT2)が、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(C)の総量の(100-CT1)質量%を占め、
任意に、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(D)の総量、及び/又は、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(E)の総量が工程a)の前又は工程a)の後に混合される、方法。
【請求項10】
以下の工程:
i)請求項1から8のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)の層を提供する工程と、
ii)工程i)で提供された前記焼結粉末(SP)の層を露光又は加熱する工程と
を含む、成形体の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法により得ることができる成形体。
【請求項12】
焼結粉末(SP)の流動性及び凝集を向上するために、少なくとも1種の流動剤(B)及び少なくとも1種の有機添加剤(C)を、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)を含む焼結粉末(SP)に使用する方法。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)の、焼結法、好ましくは選択的レーザー焼結(SLS)法又はマルチジェット溶融(MJF)法における使用方法。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)を使用して、焼結法によって得ることができる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いずれの場合も(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、59.5質量%~99.85質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)、0.05質量%~0.5質量%の少なくとも1種の流動剤(flow agent)(B)、0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の有機添加剤(C)、0質量%~5質量%の少なくとも1種のさらなる添加剤(D)、及び0質量%~30質量%の少なくとも1種の補強材(E)を含む焼結粉末(SP)に関する。さらに、本発明は、焼結粉末(SP)を焼結することによって成形体を製造する方法、本発明の方法により得ることができる成形体、及び焼結粉末(SP)の流動性及び凝集(coalescence)を向上するために、少なくとも1種の流動剤(B)及び少なくとも1種の有機添加剤(C)を焼結粉末(SP)に使用する方法に関する。さらに、本発明は、焼結法における焼結粉末(SP)の使用方法、及び焼結粉末(SP)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトタイプの迅速な提供は、ごく最近よく取り組まれている課題である。この「ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping)」に特に適している1つの方法は、選択的レーザー焼結(SLS)である。これは、チャンバ内でプラスチック粉末にレーザービームを選択的に暴露することを含む。粉末が溶融し、溶融した粒子が融合して再凝固する。プラスチック粉末の繰り返し適用及びその後のレーザーへの暴露により、三次元成形体の形成が可能となる。
【0003】
粉末状ポリマーから成形体を製造するための選択的レーザー焼結の方法は、US 6,136,948及びWO 96/06881の特許明細書に詳細に記載されている。
【0004】
選択的レーザー焼結をさらに発展させたものとして、EP 1 648 686に記載されている高速焼結(HSS)、又はHPからのいわゆるマルチジェット溶融技術(MJF)がある。高速焼結では、焼結する部品の断面に赤外線吸収インクをスプレー塗布し、その後赤外線源に暴露することにより、選択的レーザー焼結よりも高速な加工を実現する。
【0005】
焼結のさらなる変形態様は、従来のサーマルプリンタのプリントユニットを用いてプラスチック粉末を選択的に溶融する選択的加熱焼結(SHS、Selective Heat Sintering)法である。
【0006】
上記の焼結法において特に重要なのは、プラスチック粉末の流動性である。プラスチック粉末の加工性を良くするためには、流動性が最大であることが望ましい。これは、高い流動性により、第一に粉末層の無欠な形成が可能になり、第二にプラスチック粉末の焼結特性が向上し、高品質、すなわち、良好な表面特性及び高い成分密度を備えた成形体が得られるためである。
【0007】
これに対し、焼結法において流動性の低いプラスチック粉末は加工性が悪く、それを用いて製造された成形体に欠陥が発生しやすく、また、機械的性質に反映される成分密度が低いことが多い。さらに、流動性が悪いと、粉末の添加量に問題が生じ、最悪の場合、印刷プロセスが終了してしまうこともある。S.Ziegelmeierらによる論文「レーザー焼結用ポリマー粉末のバルク及び流動挙動が得られる部品の特性に及ぼす影響に関する実験的研究」(Journal of Materials Processing Technology,2015,215,239)に記載されているように、特に弾性材料又は軟質材料、例えば熱可塑性ポリウレタン(TPU)から作られたプラスチック粉末は低下した流動性を有する。
【0008】
したがって、流動性を向上させるために、一般的には流動助剤とも呼ばれるいわゆる流動剤が使用される。流動剤は一般に、無機添加剤、例えばケイ酸塩、金属酸化物及び鉱物である。
【0009】
例えば、US 6,110,411は、ポリエーテルエステルエラストマー、及び焼結粉末の総質量に基づいて0.02~5質量%の流動剤を含む焼結粉末を記載している。使用される流動剤は、例えばヒュームドシリカである。
【0010】
US 2004/0204531は、88質量%~99.99質量%の、ポリアミド、ポリアミドの誘導体及びそれらの混合物から選択されたポリマー、並びに、0.05質量%~0.25質量%の流動助剤を含む組成物を記載している。この流動助剤は、無機顔料及びシリカから選択される。
【0011】
しかしながら、欠点は、例えば、R.D.Goodridgeらによる論文「ポリアミド及び他のポリマーのレーザー焼結」(Progress in Materials Science,2012,57,229)に記載されているように、流動剤の含有量が高すぎると印刷された成形体の機械特性の悪化につながるため、これらの流動剤の使用は制限されていることである。これは、特に、無機添加剤の含有量が高い場合、焼結プロセス中のプラスチック粉末の溶融が防止されるためである。さらに、無機添加剤は核生成種として作用し、結晶化を促進するため、焼結プロセスにおいて、例えば弯曲及び反りなどの問題を引き起こす可能性がある。
【0012】
流動性と同様に、溶融操作におけるプラスチック粉末の凝集も、加工性、特に製造される成形体の機械的特性に大きな影響を与える。ここで、プラスチック粉末、例えばTPUのような弾性プラスチック粉末は、優れた流動性にもかかわらず、凝集特性が悪く、加工性が悪いために、機械的特性が悪い多孔質の成形体が得られる可能性がある。特に、複雑な構造又は形状を有する成形体を製造する場合、表面の欠陥及びクラックの発生が顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US 6,136,948
【特許文献2】WO 96/06881
【特許文献3】EP 1 648 686
【特許文献4】US 6,110,411
【特許文献5】US 2004/0204531
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】S.Ziegelmeierら、レーザー焼結用ポリマー粉末のバルク及び流動挙動が得られる部品の特性に及ぼす影響に関する実験的研究、Journal of Materials Processing Technology,2015,215,239
【非特許文献2】R.D.Goodridgeら、ポリアミド及び他のポリマーのレーザー焼結、Progress in Materials Science,2012,57,229
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、焼結によって成形体を製造する方法において、先行技術に記載された焼結粉末及び方法の前述した欠点を、もし全くないとしても、より少ない程度にしか有さない焼結粉末を提供することにある。この焼結粉末及び方法は、それぞれ、非常に簡単かつ安価な方法で製造可能であり、実行可能であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、以下の成分:
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、59.5質量%~99.85質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.05質量%~0.5質量%の少なくとも1種の流動剤(B)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の有機添加剤(C)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~5質量%の少なくとも1種のさらなる添加剤(D)、及び
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~30質量%の少なくとも1種の補強材(E)
を含む焼結粉末(SP)により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、DSC図を示す。
図2図2は、接触角θ、試験液の界面エネルギーγ、焼結粉末(SP)の界面エネルギーγ、及び試験液と焼結粉末(SP)の間の界面エネルギーγSLを示す。
図3図3は、製造例1~6で使用したビルドスペースレイアウトを示す。
図4図4は、製造例10~12で使用したビルドスペースレイアウトを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
驚くべきことに、少なくとも1種の流動剤と、少なくとも1種の有機添加剤、特にポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸でグラフト化したポリプロピレンワックス、アミドワックス、脂肪酸エステル及びグリセロール脂肪酸エステルからなる群から選択される1種の有機添加剤とを同時に使用することにより、少なくとも1種の流動剤及び少なくとも1種の有機添加剤の使用が製造される成形体の機械的性質に悪影響を及ぼすことなく、焼結操作における焼結粉末の流動性及び凝集の両方を著しく向上させることが見出された。本発明の焼結体粉末から製造される成形体は、高い引張強度と高い破断伸びの両方を有する。
【0019】
さらに、少なくとも1種の流動剤及び少なくとも1種の有機添加剤の使用は、それ自体で焼結体粉末の製造を最適化する。向上した流動性は、ふるいの詰まりが回避されるため、粉砕及び/又はふるい分けなどの粉砕工程を加速する。これにより、経済的な実行可能性及びプロセスの安定性が向上する。
【0020】
焼結粉末(SP)
本発明によれば、焼結粉末(SP)は、いずれの場合も(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(A)として59.5質量%~99.85質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、成分(B)として0.05質量%~0.5質量%の少なくとも1種の流動剤、成分(C)として0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の有機添加剤(C)、成分(D)として0質量%~5質量%の少なくとも1種のさらなる添加剤(D)、及び成分(E)として0質量%~30質量%の少なくとも1種の補強材(E)を含む。
【0021】
成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計は、通常、100質量%である。
【0022】
本発明の文脈において、「成分(A)」及び「少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン」という用語は、同義的に使用され、したがって同じ意味を有する。
【0023】
これは、「成分(B)」及び「少なくとも1種の流動剤」にも同様に適用できる。本発明の文脈において、これらの用語は同様に、同義的に使用され、したがって同じ意味を有する。
【0024】
同様に、「成分(C)」及び「少なくとも1種の有機添加剤」という用語も、同義的に使用され、したがって同じ意味を有する。
【0025】
「成分(D)」及び「少なくとも1種のさらなる添加剤」という用語、及び「成分(E)」及び「少なくとも1種の補強材」という用語も、本発明の文脈においてそれぞれ同義的に使用され、したがって同じ意味を有する。
【0026】
好ましくは、焼結粉末(SP)は、いずれの場合も成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、74.15質量%~99.7質量%の範囲の成分(A)、0.1質量%~0.35質量%の範囲の成分(B)、0.2質量%~3質量%の範囲の成分(C)、0質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び0質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0027】
より好ましくは、焼結粉末(SP)は、いずれの場合も成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、76.12質量%~99.42質量%の範囲の成分(A)、0.18質量%~0.28質量%の範囲の成分(B)、0.4質量%~1.1質量%の範囲の成分(C)、0質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び0質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0028】
焼結粉末(SP)は、成分(D)を含む場合、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、例えば0.1質量%~5質量%の範囲の成分(D)、好ましくは0.2質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)を含んでもよい。
【0029】
焼結粉末(SP)は、成分(E)を含む場合、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、例えば5質量%~30質量%の範囲の成分(E)、好ましくは10質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含んでもよい。
【0030】
焼結粉末(SP)が成分(D)及び/又は成分(E)を含む場合、焼結粉末(SP)に存在する少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の質量パーセントは通常、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)及び/又は成分(E)の合計が100質量%となるように、相応に低減する。
【0031】
焼結粉末(SP)は、成分(D)を含む場合、したがって、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、例えば、59.5質量%~99.75質量%の範囲の成分(A)、0.05質量%~0.5質量%の範囲の成分(B)、0.1質量%~5質量%の範囲の成分(C)、0.1質量%~5質量%の範囲の成分(D)、及び0質量%~30質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0032】
焼結粉末(SP)は、成分(D)を含む場合、したがって、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、好ましくは、74.15質量%~99.5質量%の範囲の成分(A)、0.1質量%~0.35質量%の範囲の成分(B)、0.2質量%~3質量%の範囲の成分(C)、0.2質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び0質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0033】
焼結粉末(SP)は、成分(D)を含む場合、したがって、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、より好ましくは、76.12質量%~99.22質量%の範囲の成分(A)、0.18質量%~0.28質量%の範囲の成分(B)、0.4質量%~1.1質量%の範囲の成分(C)、0.2質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び0質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0034】
焼結粉末(SP)は、成分(E)を含む場合、したがって、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、例えば、59.5質量%~94.85質量%の範囲の成分(A)、0.05質量%~0.5質量%の範囲の成分(B)、0.1質量%~5質量%の範囲の成分(C)、0質量%~5質量%の範囲の成分(D)、及び5質量%~30質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0035】
焼結粉末(SP)は、成分(E)を含む場合、したがって、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、好ましくは、74.15質量%~89.7質量%の範囲の成分(A)、0.1質量%~0.35質量%の範囲の成分(B)、0.2質量%~3質量%の範囲の成分(C)、0質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び10質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0036】
焼結粉末(SP)は、成分(E)を含む場合、したがって、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、より好ましくは、76.12質量%~89.42質量%の範囲の成分(A)、0.18質量%~0.28質量%の範囲の成分(B)、0.4質量%~1.1質量%の範囲の成分(C)、0質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び10質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0037】
焼結粉末(SP)は、成分(D)及び(E)を含む場合、したがって、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、例えば、59.5質量%~94.75質量%の範囲の成分(A)、0.05質量%~0.5質量%の範囲の成分(B)、0.1質量%~5質量%の範囲の成分(C)、0.1質量%~5質量%の範囲の成分(D)、及び5質量%~30質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0038】
焼結粉末(SP)は、成分(D)及び(E)を含む場合、したがって、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、好ましくは、74.15質量%~89.5質量%の範囲の成分(A)、0.1質量%~0.35質量%の範囲の成分(B)、0.2質量%~3質量%の範囲の成分(C)、0.2質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び10質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0039】
焼結粉末(SP)は、成分(D)及び(E)を含む場合、したがって、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、より好ましくは、76.12質量%~89.22質量%の範囲の成分(A)、0.18質量%~0.28質量%の範囲の成分(B)、0.4質量%~1.1質量%の範囲の成分(C)、0.2質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び10質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0040】
典型的には、焼結粉末(SP)は粒子を含む。これらの粒子は、例えば10~190μmの範囲、好ましくは15~150μmの範囲、より好ましくは20~110μmの範囲、特に好ましくは40~100μmの範囲のサイズ(D50)を有する。
【0041】
本発明の文脈において、「D50」とは、粒子の総体積に基づく粒子の50体積%がD50以下であり、粒子の総体積に基づく粒子の50体積%がD50より大きい場合の粒径を意味すると理解される。
【0042】
D50は、本発明の文脈において、1バールで乾燥分散液を用いて、ISO 13320によるレーザー回折(Horiba LA-960、Retsch Technology、ドイツ)により決定される。評価は、Fraunhofer法を用いて行われる。
【0043】
焼結粉末(SP)は、典型的に80~220℃の範囲の融点(TM(SP))を有する。好ましくは、焼結粉末(SP)の融点(TM(SP))は、100~190℃の範囲、特に好ましくは120~170℃の範囲である。
【0044】
本発明の文脈において、融点(TM(SP))は、DIN EN ISO 11357に従って、示差走査熱量測定(DSC;Discovery series DSC、TA Instruments)によって決定される。窒素雰囲気下での測定中、サンプルは以下の温度サイクルに供される:-80℃で5分間、次に20℃/分で少なくとも200℃に加熱(第1加熱ラン(H1))、次に少なくとも200℃で5分間、次に20℃/分で-80℃に冷却、次に-80℃で5分間、次に20℃/分で少なくとも200℃に加熱(第2加熱ラン(H2))。これにより、例えば図1に示すようなDSC図が得られる。「溶融オンセット(TMonset)」及び「溶融エンドセット(TMendset)」という用語は、当業者にとって既知のものである。これらはそれぞれ、溶融ピークの開始点(オンセット)及び終了点(エンドセット)に対応する。融点(TM(SP))は、DSC図の第1加熱ラン(H1)の溶融ピークが最大値を有する温度を意味すると理解される。TMonsetとTMendsetとの間の範囲に複数の局所最大値がある場合、融点(TM(SP))は、それぞれの局所最大値の数値平均を意味すると理解される。
【0045】
焼結粉末(SP)は、典型的に3~150cm/10分の範囲のメルトボリュームフローレート(MVR)も有する。好ましくは、焼結粉末(SP)のメルトボリュームフローレートは、15~100cm/10分の範囲、より好ましくは30~70cm/10分の範囲である。
【0046】
本発明の文脈において、メルトボリュームフローレートは、DIN EN ISO 1133(mi2.1,Goettfert,ドイツ)に従って確認される。この目的のために、焼結粉末(SP)を窒素中110℃で2時間予備乾燥し、次に2.16kgの荷重、及び温度=(Tm(SP)+40℃)で分析する。
【0047】
焼結粉末(SP)は、典型的に300g/L以上、好ましくは350g/L以上、より好ましくは400g/L以上の嵩密度も有する。
【0048】
本発明の文脈において、嵩密度はDIN EN ISO 60に従って決定される。これは、焼結粉末(SP)の流動性の指標として使用することができる。嵩密度が高いほど、焼結粉末(SP)の流動性が高い。
【0049】
焼結粉末(SP)は、当業者に知られている任意の方法によって製造することができる。例えば、焼結粉末は、粉砕により、沈殿により、溶融乳化により、又は微粒化(microgranulation)により製造される。
【0050】
焼結粉末(SP)を沈殿により製造する場合、典型的に、成分(A)は溶媒と混合され、任意に加熱しながら溶媒に溶解されて、溶液を得る。その後、例えば、溶液を冷却し、溶液から溶媒を留去し、又は溶液に沈殿剤を添加することにより、TPU粉末を沈殿させる。成分(B)、(C)、及び任意に(D)及び(E)は、典型的に乾燥TPU粉末に混合されて、焼結粉末(SP)を得る。
【0051】
粉砕は、当業者に知られている任意の方法によって実施することができる。例えば、成分(A)、(B)、(C)、及び任意に(D)及び(E)をミルに導入し、そこで粉砕する。
【0052】
好適なミルには、当業者に知られている全てのミル、例えば分級ミル、対向ジェットミル、ハンマーミル、ボールミル、振動ミル、又はピン付きディスクミル及び旋風ミルなどのローターミルが含まれる。粒径は、通常、ミルの下流に配置されたふるい分け機によって調整される。好ましい実施態様において、長いメッシュ篩が使用される。長いメッシュ篩を使用することにより、良品画分の割合を増加させることができる。篩のメッシュサイズは、焼結粉末(SP)の上述のD50を確立できるように選択されるべきである。
【0053】
ミルでの粉砕は同様に、当業者に知られている任意の方法によって行うことができる。例えば、粉砕は、不活性ガス下で、及び/又は液体窒素で冷却しながら行うことができる。液体窒素での冷却が好ましい。粉砕中の温度は所望の通りである;好ましくは、粉砕は、液体窒素の温度、例えば-210~-195℃の範囲の温度で行われる。その場合の粉砕時の成分の温度は、例えば、-60~0℃の範囲である。
【0054】
好ましくは、成分(A)は、粉砕前に粒状材料の形態である。粒状材料は、例えば、球状、円筒状又は楕円状であってもよい。
【0055】
一実施態様において、焼結粉末(SP)が、
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、59.5質量%~99.85質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)、
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、0.05質量%~0.5質量%の少なくとも1種の流動剤(B)、
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の有機添加剤(C)、
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、0質量%~5質量%の少なくとも1種のさらなる添加剤(D)、及び
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、0質量%~30質量%の少なくとも1種の補強材(E)
を含む場合の焼結粉末(SP)の製造方法は、
a)焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(A)の総量を粉砕する工程
を含み、
ここで、工程a)の前に、焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(B)の総量の第1部分(BT1)、及び/又は焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(C)の総量の第1部分(CT1)が成分(A)に混合されて粉末(P)が得られ、工程a)の後に、焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(B)の総量の残り部分(BT2)、及び/又は焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(C)の総量の残り部分(CT2)が粉末(P)に混合されて焼結粉末(SP)が得られ、第1部分(BT1)が、焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(B)の総量の0質量%~100質量%を占め、第1部分(CT1)が、焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(C)の総量の0質量%~100質量%を占め、残り部分(BT2)が、焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(B)の総量の(100-BT1)質量%を占め、残り部分(CT2)が、焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(C)の総量の(100-CT1)質量%を占め、
任意に、焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(D)の総量、及び/又は、焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(E)の総量が工程a)の前又は工程a)の後に混合される。
【0056】
好ましくは、少なくとも1種の有機添加剤(C)は、粉砕操作の前に成分(A)に添加される。これにより、粉砕操作中のスループットを大幅に向上させることができる。
【0057】
混合の方法は、当業者には知られている。典型的には、成分(B)及び/又は(C)、並びに任意に成分(D)及び/又は(E)は、乾燥形態で成分(A)に混合される。しかしながら、混合が、押出機、特に好ましくは二軸押出機で配合することによって行われることも可能である。しかしながら、部分的な配合と部分的な乾燥混合を組み合わせて使用することも可能である。
【0058】
工程a)における粉砕に関しては、上述した詳細及び優先事項は、粉砕に関して対応して適用可能である。
【0059】
好ましい実施態様において、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)は、工程a)の前に加熱される。
【0060】
好ましくは、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の融点(TM(A))より最大100℃低い温度Tで、より好ましくは少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の融点(TM(A))より最大70℃低い温度Tで、特に好ましくは少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の融点(TM(A))より最大40℃低い温度Tで、加熱される。
【0061】
さらに、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)は、好ましくは少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の融点(TM(A))より少なくとも5℃低い温度Tで、より好ましくは少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の融点(TM(A))より少なくとも10℃低い温度Tで、特に好ましくは少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の融点(TM(A))より少なくとも20℃低い温度Tで加熱される。
【0062】
好ましくは、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)は、少なくとも10時間、より好ましくは少なくとも24時間、特に好ましくは少なくとも48時間加熱される。好ましくは、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)は、7日間加熱される。加熱は、好ましくは、減圧下又は保護ガス下でパドルドライヤー(>4t)中で行われる。使用される保護ガスは、例えば窒素である。
【0063】
したがって、本発明はまた、本発明の方法によって得ることができる焼結粉末(SP)をさらに提供する。
【0064】
成分(A)
本発明によれば、成分(A)は少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンである。
【0065】
本発明の文脈において、「少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン」とは、正確に1種の熱可塑性ポリウレタン(A)又は2種以上の熱可塑性ポリウレタンの混合物(A)のいずれかを意味する。さらに、本発明の文脈における「少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン」という用語は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンと、この少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンと混和性のある少なくとも1種のさらなるポリマーとの混合物を意味する。本発明の文脈において、「この少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンと混和性のある少なくとも1種のさらなるポリマー」とは、この熱可塑性ポリウレタンと混和性のある正確に1種のさらなるポリマー、又はこの熱可塑性ポリウレタンと混和性のある2種以上のポリマーの混合物のいずれかを意味する。
【0066】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)は当業者に知られている任意の方法によって製造することができる。
【0067】
好ましい実施態様において、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)は、以下の成分:
a)少なくとも1種のイソシアネート、
b)少なくとも1種のイソシアネート反応性化合部、及び
c)任意に、50~499g/molの範囲の数平均分子量Mを有する少なくとも1種の鎖延長剤を、
任意に、
d)少なくとも1種の触媒、
e)少なくとも1種の添加剤、及び/又は
f)少なくとも1種の補強材
の存在下で反応させることにより、調製される。
【0068】
本発明の文脈において、数平均分子量Mは、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される。
【0069】
成分(A)は、好ましくは少なくとも100000g/mol、より好ましくは少なくとも400000g/mol、特に好ましくは600000g/molの質量平均分子量Mを有する。また、好ましくは、成分(A)は最大800000g/molの質量平均分子量Mを有する。
【0070】
本発明の文脈において、質量平均分子量Mは、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される。
【0071】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンは、典型的に80~220℃の範囲の融点(TM(A))を有する。好ましくは、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンの融点(TM(A))は、100~190℃の範囲、より好ましくは120~170℃、特に好ましくは135~145℃の範囲である。
【0072】
本発明の文脈において、融点(TM(A))は、DIN EN ISO 11357に従って、示差走査熱量測定(DSC;Discovery series DSC、TA Instruments)によって決定される。窒素雰囲気下での測定中、サンプルは以下の温度サイクルに供される:-80℃で5分間、次に20℃/分で少なくとも200℃に加熱(第1加熱ラン(H1))、次に少なくとも200℃で5分間、次に20℃/分で-80℃に冷却、次に-80℃で5分間、次に20℃/分で少なくとも200℃に加熱(第2加熱ラン(H2))。これにより、例えば図1に示すようなDSC図が得られる。「溶融オンセット(TMonset)」及び「溶融エンドセット(TMendset)」という用語は、当業者にとって既知のものである。これらはそれぞれ、溶融ピークの開始点(オンセット)及び終了点(エンドセット)に対応する。融点(TM(SP))は、DSC図の第1加熱ラン(H1)の溶融ピークが最大値を有する温度を意味すると理解される。TMonsetとTMendsetとの間の範囲に複数の局所最大値がある場合、融点(TM(SP))は、それぞれの局所最大値の数値平均を意味すると理解される。
【0073】
成分(a))
成分(a))は少なくとも1種のイソシアネートである。
【0074】
本発明の文脈において、「少なくとも1種のイソシアネート」は、正確に1種のイソシアネート又は2種以上のイソシアネートの混合物のいずれかを意味する。
【0075】
少なくとも1種のイソシアネートは、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族イソシアネートであってもよい。
【0076】
成分(a))は、好ましくは、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4-HXDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-HXDI)、パラフェニレン2,4-ジイソシアネート(PPDI)、テトラメチレンキシレン2,4-ジイソシアネート(TMXDI)、ジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジイソシアネート(H12 MDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-及び2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’-ジイソシアネート(2,2’-MDI)、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート(2,4’-MDI)及びジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(4,4’-MDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-ジイソシアネート(2,4-TDI)及びトリレン2,6-ジイソシアネート(2,6-TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルジイソシアネート、ジフェニルエタン1,2-ジイソシアネート、及びフェニレンジイソシアネートからなる群から選択されるジイソシアネートである。
【0077】
より好ましくは、成分(a))はジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(4,4’-MDI)である。
【0078】
成分(b))
成分(b))は、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物である。
【0079】
本発明の文脈において、「少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物」は、正確に1種のイソシアネート反応性化合物又は2種以上のイソシアネート反応性化合物の混合物のいずれかを意味する。
【0080】
成分(b))は、好ましくは500~100000g/molの範囲、より好ましくは500~8000g/molの範囲、特に好ましくは700~6000g/molの範囲、特に800~4000g/molの範囲の数平均分子量Mを有する。
【0081】
少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物(b))は、好ましくは、統計平均で少なくとも1.8個、最大3.0個のツェレウィチノフ活性水素原子を有する。
【0082】
本発明の文脈において、ツェレウィチノフ活性水素原子の数は、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物(b))の官能価を意味すると理解される。それは、モル量から1個の分子について理論的に計算された分子内の少なくとも1つのイソシアネート反応性基の量を示すものである。
【0083】
好ましい実施態様において、官能価は、1.8~2.6の範囲、好ましくは1.9~2.2の範囲である。特に官能価は2である。
【0084】
好ましくは、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物(b))は直鎖のものである。
【0085】
好ましくは、少なくとも1種のイソシアネートのイソシアネート基含有量に基づいて、1当量モル%~80当量モル%のモル割合で使用される。
【0086】
好ましくは、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物(b)))は、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基及びカルボン酸基からなる群から選択される反応性基を有し、より好ましくは、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物(b)))は、ヒドロキシ基を有する。
【0087】
本発明の文脈において好ましい一実施形態において、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物(b)))は、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール及びポリカーボネートジオールからなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物(b)))は、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドをベースとする、ポリカプロラクトンなどのポリエステルジオール及び/又はポリエーテルジオールである。特に好ましいポリエーテルは、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)である。
【0088】
より好ましくは、イソシアネート反応性化合物(b)))は、アジピン酸、コハク酸、ペンタンジオ酸及び/又はセバシン酸及びエタン-1,2-ジオールとブタン-1,4-ジオールとの混合物をベースとするコポリエステル、アジピン酸、コハク酸、ペンタン二酸及び/又はセバシン酸及びブタン-1,4-ジオールとヘキサン-1,6-ジオールとの混合物をベースとするコポリエステル、アジピン酸、コハク酸、ペンタン二酸及び/又はセバシン酸及び3-メチルペンタン-1,5-ジオールをベースとするポリエステル、及び/又はポリテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフラン、PTHF)、好ましくは、アジピン酸及びエタン-1,2-ジオールとブタン-1,4-ジオールとの混合物をベースとするコポリエステル、アジピン酸、コハク酸、ペンタン二酸及び/又はセバシン酸をベースとするポリエステル、並びにポリテトラメチレングリコール(PTHF)からなる群から選択される化合物である。
【0089】
成分(c))
成分(c))は、50~499g/molの範囲の数平均分子量Mを有する少なくとも1種の鎖延長剤である。
【0090】
本発明の文脈において、「50~499g/molの範囲の数平均分子量Mを有する少なくとも1種の鎖延長剤」は、50~499g/molの範囲の数平均分子量Mを有する正確に1種の鎖延長剤、又は50~499g/molの範囲の数平均分子量Mを有する2種以上の鎖延長剤の混合物のいずれかを意味する。
【0091】
使用される成分(c))は、50~499g/molの範囲の数平均分子量Mを有する、脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物であってもよい。
【0092】
好ましくは、成分(c))は2個のイソシアネート反応性基を有する。
【0093】
したがって、好ましい鎖延長剤はジアミン及び/又はアルカンジオールであり、より好ましい鎖延長剤は、アルキレンラジカルに2~10個の炭素原子を有するアルカンジオールであり、特に好ましい鎖延長剤はアルキレンラジカルに3~8個の炭素原子を有するアルカンジオールである。アルカンジオールが一級ヒドロキシル基のみを有することがさらに好ましい。
【0094】
好ましい実施態様において、成分(c))は、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-及びデカアルキレングリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ネオペンチルグリコール及びヒドロキノンビス(ベータ-ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)からなる群から選択される。
【0095】
好適なジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-及びデカアルキレングリコールは、例えば、1,2-エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ジエチレングリコール、オリゴ-及びポリプロピレングリコールである。
【0096】
本発明の文脈において、使用される鎖延長剤(成分(c)))は、好ましくは1,2-エチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール及びヘキサン-1,6-ジオール、より好ましくは1,2-エチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール及びヘキサン-1,6-ジオールである。
【0097】
軟質熱可塑性ポリウレタンの調製において、成分(b))(少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物)と成分(c))(50~499g/molの範囲の数平均分子量Mを有する少なくとも1種の鎖延長剤)とのモル比は、好ましくは1:1~1:5の範囲、より好ましくは1:1.5~1:4.5の範囲である。
【0098】
この場合、成分(b))及び(c))が混合されると、ヒドロキシル当量は、好ましくは200を超え;より好ましくは、ヒドロキシル当量は230~450の範囲である。
【0099】
硬質熱可塑性ポリウレタン、例えば98を超えるショアA硬度を有する熱可塑性ポリウレタン、好ましくは55~75の範囲のショアD硬度を有する熱可塑性ポリウレタンの調製において、成分(b))(少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物)と成分(c))(50~499g/molの範囲の数平均分子量Mを有する少なくとも1種の鎖延長剤)とのモル比は、好ましくは1:5.5~1:1の範囲、より好ましくは1:6~1:12の範囲である。
【0100】
この場合、成分(b))及び(c))が混合されると、ヒドロキシル当量は、好ましくは110~200の範囲、より好ましくは120~180の範囲である。
【0101】
成分(a))(少なくとも1種のイソシアネート)のNCO基と、成分(b))及び(c))のOH基の合計との当量比は、好ましくは0.95:1~1.10:1の範囲、より好ましくは0.98:1~1.08:1の範囲、特に好ましくは1:1~1.05:1の範囲である。
【0102】
成分(d))
成分(d))は少なくとも1種の触媒である、
本発明の文脈において、「少なくとも1種の触媒(d))」は、正確に1種の触媒(d))、又は2種以上の触媒(d))の混合物のいずれかを意味する。
【0103】
そのような触媒は、当業者に知られている。本発明の文脈において、イソシアネート(成分(a)))のNCO基と、イソシアネート反応性化合物(成分(b))及び使用される場合には鎖延長剤(成分(c)))のヒドロキシル基との間の反応を促進する触媒を使用することが好ましい。
【0104】
好適な触媒は、例えば、三級アミン、特にトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール及びジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。
【0105】
本発明の文脈において、好ましくは、有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、スズ化合物及びビスマス塩を使用する。
【0106】
好適な鉄化合物の例は、鉄(III)アセチルアセトネートである。好適なスズ化合物は、例えば、スズジアルキル塩、スズジアセテート、スズジオクトエート及びスズジラウレートであり、好ましいスズ化合物は、ジブチルスズジアセテート及びジブチルスズジラウレートである。好適なビスマス塩の例は、デカン酸ビスマスである。
【0107】
本発明の文脈において特に好ましい触媒は、チタン酸エステル、スズジオクトエート及びデカン酸ビスマスである。
【0108】
触媒(d))を使用する場合、イソシアネート反応性化合物(成分(b))の100質量部当たり0.0001~0.1質量部の量で使用することが好ましい。
【0109】
成分(e))
成分(e))は少なくとも1種の添加剤である。
【0110】
本発明の文脈において、「少なくとも1種の添加剤(e))」は、正確に1種の添加剤(e))又は2種以上の添加剤(e))の混合物のいずれかを意味する。
【0111】
少なくとも1種の添加剤(e))は、さらに下に記載される少なくとも1種のさらなる添加剤(D)と同じであっても、さらに下に記載される少なくとも1種のさらなる添加剤(D)とは異なっていてもよい。好ましくは、さらに下に記載される少なくとも1種のさらなる添加剤(D)とは異なるものである。
【0112】
しかしながら、少なくとも1種の添加剤(e))及び少なくとも1種のさらなる添加剤(D)は、それらの添加方法が異なる。好ましくは、少なくとも1種の添加剤(e))は、成分(A)の合成中に反応混合物に添加され、したがってTPUポリマーに組み込まれるか、又は成分(A)の合成の直後に成分(A)に添加されるが、少なくとも1種のさらなる添加剤(D)は、成分(A)の焼結粉末(SP)の製造の直前、製造中又は製造後にのみ添加される。
【0113】
好ましくは、少なくとも1種の添加剤(e))は、表面活性物質、難燃剤、核剤、酸化安定剤、滑剤及び脱型助剤、染料及び顔料、加水分解、光、熱又は変色に対する安定剤、及び可塑剤からなる群から選択される。
【0114】
好適な安定剤の例は、例えば、一次及び二次酸化防止剤、立体障害フェノール、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、UV吸収剤、加水分解安定剤、クエンチャー及び難燃剤である。市販の安定剤の例は、Plastics Additives Handbook,第5版,H.Zweifel編,Hanser Publishers,Munich,2001([1]),98~136頁に見出される。
【0115】
好適なUV吸収剤は、好ましくは、少なくとも300g/mol、より好ましくは少なくとも390g/molの数平均分子量Mを有する。さらに、好適なUV吸収剤は、好ましくは、最大5000g/mol、より好ましくは最大2000g/molの数平均分子量Mを有する。
【0116】
特に好適なUV吸収剤は、シンナメート、オキサニリド及びベンゾトリアゾールからなる群から選択されるUV吸収剤であり、ベンゾトリアゾールが特に好ましい。特に好適なベンゾトリアゾールの例は、Tinuvin(登録商標)213、Tinuvin(登録商標)234、Tinuvin(登録商標)312、Tinuvin(登録商標)571、Tinuvin(登録商標)384及びEversorb(登録商標)82である。
【0117】
UV吸収剤は、成分(a))、(b))及び(e))の質量に基づいて、典型的に0.01質量%~5質量%の量で、好ましくは0.1質量%~2.0質量%の量で、特に0.2質量%~0.5質量%の量で投与される。
【0118】
好適なヒンダードアミン光安定剤は、好ましくは500g/molの数平均分子量Mを有する。さらに、好適なヒンダードアミン光安定剤は、好ましくは最大10000g/mol、より好ましくは最大5000g/molの数平均分子量Mを有する。
【0119】
特に好ましいヒンダードアミン光安定剤(HALS)は、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)セバケート(Tinuvin(登録商標)765,Ciba Spezialitaetenchemie AG)、及び1-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンとコハク酸の縮合生成物(Tinuvin(登録商標)622)。完成品のチタン含有量が、成分(a))及び(b))に基づいて、150ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に10ppm未満である場合、1-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンとコハク酸の縮合生成物(Tinuvin(登録商標)622)が特に好ましい。
【0120】
HALSは、成分(a))、(b))及び(e))の質量に基づいて、典型的に0.01質量%~5質量%の量で、好ましくは0.1質量%~1.0質量%の量で、特に0.15質量%~0.3質量%の量で投与される。
【0121】
特に好ましい安定剤は、フェノール安定剤とベンゾトリアゾールとHALS化合物との混合物を上記の好ましい量で含む。
【0122】
成分(f))
成分(f))は少なくとも1種の補強材である。
【0123】
本発明の文脈において、「少なくとも1種の補強材(f))」は、正確に1種の補強材(f))、又は2種以上の補強材(f))の混合物のいずれかを意味する。
【0124】
少なくとも1種の補強材(f))は、さらに下に記載される少なくとも1種の補強材(E)と同じであっても、さらに下に記載される少なくとも1種の補強材(E)とは異なっていてもよい。
【0125】
例えば、少なくとも1種の補強材(f))は、カーボンナノチューブ、炭素繊維、ホウ素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ繊維、セラミック繊維、玄武岩繊維、ケイ酸アルミニウム、アラミド繊維及びポリエステル繊維からなる群から選択される。
【0126】
少なくとも1種の補強材(f))は、成分(A)の製造過程中で反応混合物に添加されてもよく、この場合、乾燥形態で、又はマスターバッチとして添加されてもよい。
【0127】
しかしながら、反応混合物の成分(A)の製造過程中で、補強材(f))が添加されないことも可能である。この場合、さらに下に記載される少なくとも1種の補強材(E)が、焼結粉末(SP)の製造過程中で、成分(A)、(B)、(C)、及び任意に(D)に添加されることが可能である。
【0128】
勿論、成分(A)の製造過程中で、少なくとも1種の補強材(f))を反応混合物に添加し、その後、焼結粉末(SP)の製造過程で、少なくとも1種の補強材(E)を成分(A)、(B)、(C)及び任意に(D)に添加することも可能である。
【0129】
成分(A)の製造
少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(A)は、バッチ式プロセス又は連続式プロセスで製造することができる。例えば、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(A)は、反応性押出機で、又はベルトプロセスにより、ワンショット法又はプレポリマー法により、好ましくはワンショット法により製造される。
【0130】
ワンショット法では、成分(a))及び(b))、並びに任意にまた成分(c))、(d))及び/又は(e))は、重合反応の開始の直後、同時に又は連続的に互いに混合される。
【0131】
押出機法では、成分(a))及び(b))、並びに任意にまた成分(c))、(d))及び/又は(e))を個別に又は混合物の形態で押出機に導入し、好ましくは100℃~280℃、より好ましくは140℃~250℃の温度で反応させる。得られたポリウレタンは、押出され、冷却され、ペレット化される。好ましくは、それは顆粒又は粉末の形態である。
【0132】
二軸押出機は力伝達モードで作動し、したがって押出機内の温度及び定量出力の調整のより高い精度を可能にするので、二軸押出機を使用することが好ましい。
【0133】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、例えば、BASF社(BASF Polyurethanes GmbH,Lemfoerde,ドイツ)からElastollan(登録商標)SP9415の商品名で入手可能である。
【0134】
成分(B)
本発明によれば、成分(B)は少なくとも1種の流動剤である。
【0135】
本発明の文脈において、「少なくとも1種の流動剤(B)」は、正確に1種の流動剤(B)、又は2種以上の流動剤(B)の混合物のいずれかを意味する。
【0136】
このような流動剤が当業者に知られている。本発明の文脈において、少なくとも1種の流動剤(B)は、好ましくは無機化合物である。
【0137】
少なくとも1種の流動剤(B)は、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、ケイ酸塩、シリカ、金属酸化物、鉱物、ホウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩及び炭酸塩からなる群から選択される。
【0138】
好適な二酸化ケイ素(シリカ化合物)の例は、水和二酸化ケイ素、ガラス状二酸化ケイ素及びパイロジェン二酸化ケイ素である。
【0139】
好適なケイ酸塩の例は、アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩、アルカリ金属アルミノケイ酸塩、カルシウムケイ酸塩及びマグネシウムケイ酸塩である。
【0140】
好適なシリカの例は、疎水性ヒュームドシリカである。
【0141】
好適な金属酸化物の例は、酸化アルミニウム、二酸化チタン、及びガラス状酸化物である。
【0142】
好適な鉱物の例は、タルク、マイカ、カオリン及びアタパルジャイトである。
【0143】
好適なホウ酸塩及びリン酸塩の例は、ガラス状ホウ酸塩及びガラス状リン酸塩である。
【0144】
好適な硫酸塩の例は、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、及び硫酸バリウムである。好適な炭酸塩の例は、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、及び炭酸バリウムである。
【0145】
好ましくは、少なくとも1種の流動剤(B)は、疎水性ヒュームドシリカ、タルク、カオリン、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸バリウムからなる群から選択される。
【0146】
少なくともヒュームドは、典型的に粒子を含む。これらの粒子は、例えば10μm以下、好ましくは2μm以下のサイズ(D90)を有する。
【0147】
本発明の文脈において、「D90」とは、粒子の総体積に基づく粒子の90体積%がD90以下であり、粒子の総体積に基づく粒子の10体積%がD90より大きい場合の粒径を意味すると理解される。
【0148】
D90は、本発明の文脈において、1バールで焼結粉末(SP)又は少なくとも1種の流動剤(B)の乾燥分散が先行する、ISO 13320によるレーザー回折(Horiba LA-960、Retsch Technology、ドイツ)により決定される。評価は、Fraunhofer法を用いて行われる。
【0149】
焼結粉末(SP)は、成分(A)、(B)、(C)、任意に(D)及び任意に(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも0.05質量%、より好ましくは少なくとも0.1質量%、特に好ましくは少なくとも0.18質量%の成分(B)を含む。
【0150】
さらに、焼結粉末(SP)は、成分(A)、(B)、(C)、任意に(D)及び任意に(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、好ましくは最大0.5質量%、より好ましくは最大0.35質量%、特に好ましくは最大0.28質量%の成分(B)を含む。
【0151】
成分(C)
本発明によれば、成分(C)は少なくとも1種の有機添加剤である。
【0152】
本発明の文脈において、「少なくとも1種の有機添加剤」は、正確に1種の有機添加剤、又は2種以上の有機添加剤の混合物のいずれかを意味する。
【0153】
例えば、少なくとも1種の有機添加剤(C)は、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸でグラフト化したポリプロピレンワックス、アミドワックス、脂肪酸エステル及びグリセロール脂肪酸エステルからなる群から選択される。
【0154】
好ましくは、成分(C)は、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸でグラフト化したポリプロピレンワックス及びアミドワックスからなる群から選択される。より好ましくは、成分(C)はN,N’-アルキレン脂肪酸ジアミドである。最も好ましくは、成分(C)はN,N’-エチレンジ(ステアラミド)である。
【0155】
好適な有機添加剤は、例えば、Clariant社又はBaerlocher社から入手可能である。好適なマレイン酸及び/又は無水マレイン酸でグラフト化したポリプロピレンワックスの一例は、Clariant社のLicocene PP MA 6452 TPである。
【0156】
本発明の文脈において、「マレイン酸及び/又は無水マレイン酸でグラフト化した」とは、ポリプロピレンワックスが分岐状であり、その主鎖にポリプロピレンが存在し、その分岐鎖にマレイン酸及び/又は無水マレイン酸が存在していることを意味する。

本発明の好ましい実施態様において、少なくとも1種の有機添加剤(C)は、少なくとも1種の有機添加剤(C)の滴点Dが以下の条件(式I)を満足するように選択される、
【数1】
(式中、Dは少なくとも1種の有機添加剤(C)の滴点であり、TM(A)は少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の融点である)。
【0157】
本発明のより好ましい実施態様において、少なくとも1種の有機添加剤(C)は、少なくとも1種の有機添加剤(C)の滴点Dが以下の条件(式II)を満足するように選択される。
【0158】
【数2】
【0159】
本発明の特に好ましい実施態様において、少なくとも1種の有機添加剤(C)は、少なくとも1種の有機添加剤(C)の滴点Dが以下の条件(式III)を満足するように選択される。
【0160】
【数3】
【0161】
特に好ましくは、少なくとも1種の有機添加剤(C)は、少なくとも1種の有機添加剤(C)の滴点Dが以下の条件(式IV)を満足するように選択される
【数4】
(式中、TM(A),Onsetは、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の溶融ピークの開始点を表し、TM(A),Endsetは、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の溶融ピークの終了点を表す)。
【0162】
少なくとも1種の有機添加剤(C)の滴点Dが決定できない場合、本発明の好ましい実施態様において、少なくとも1種の有機添加剤(C)は、少なくとも1種の有機添加剤(C)の融点TM(C)が以下の条件(式V)を満足するように選択される、
【数5】
(式中、点TM(C)は少なくとも1種の有機添加剤(C)の融点であり、TM(A)は少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の融点である)。
【0163】
本発明のより好ましい実施態様において、少なくとも1種の有機添加剤(C)は、少なくとも1種の有機添加剤(C)の融点TM(C)が以下の条件(式VI)を満足するように選択される。
【0164】
【数6】
【0165】
本発明の特に好ましい実施態様において、少なくとも1種の有機添加剤(C)は、少なくとも1種の有機添加剤(C)の融点TM(C)が以下の条件(式VII)を満足するように選択される。
【0166】
【数7】
【0167】
特に好ましくは、少なくとも1種の有機添加剤(C)は、少なくとも1種の有機添加剤(C)の融点TM(C)が以下の条件(式VIII)を満足するように選択される、
【0168】
【数8】
(式中、TM(A),Onsetは、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の溶融ピークの開始点を表し、TM(A),Endsetは、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の溶融ピークの終了点を表す)。
【0169】
さらに、少なくとも1種の有機添加剤(C)は、好ましくは、焼結粉末(SP)の全界面エネルギーγが、25mN・m-1以下、好ましくは15mN・m-1以下、特に好ましくは10mN・m-1以下であるように選択される。分散成分の界面エネルギーγ は、好ましくは、20mN・m-1以下、好ましくは11mN・m-1以下、特に好ましくは7mN・m-1以下であり、極性成分の界面エネルギーγ は、好ましくは、5mN・m-1以下、好ましくは4mN・m-1以下、特に好ましくは3mN・m-1以下である。
【0170】
本発明の文脈において、界面エネルギーは、Owens-Wendtモデル(Owens,D.K.;Wendt,R.C.;Jour.of Applied Polymer Science,13,1741,(1969))を用いて計算される。
【0171】
この目的のため、粉末状のサンプルを自作の接着フィルム(PETフィルム上のAcronal V215)に適用する。エアガンで余分な材料を除去する。試験液(エチレングリコール、ホルムアミド、水)をそれぞれ8~10滴、約1.5μLの液滴量で粉末層に適用する。表面との最初の接触直後(液滴の分離後5秒)に、液滴の輪郭分析によって、接触角θを決定する。測定は23℃で行われる。使用した分析装置はDrop Shape Analyzer DSA100(Kruess GmbH,ドイツ)である。
【0172】
図2は、接触角θ、試験液の界面エネルギーγ、焼結粉末(SP)の界面エネルギーγ、及び試験液と焼結粉末(SP)の間の界面エネルギーγSLを示す。接触角は、試験液(I)をサンプル(II)に適用することにより測定される。
【0173】
Owens-Wendt式(式IX)と測定した接触角θを用いて、線形回帰により、極性成分γ 及び分散成分γ で粉末の界面エネルギーγを確認することが可能であり、
【数9】
ここで、以下の関係(式X及び式XI)に留意する必要がある
【数10】
(式中、変数が以下の意味を有し:
θは、接触角であり、
γは、試験液の界面エネルギーであり、
γ は、試験液の界面エネルギーの分散成分であり、
γ は、試験液の界面エネルギーの極性成分であり、
γは、焼結粉末(SP)の界面エネルギーであり、
γ は、焼結粉末(SP)の界面エネルギーの分散成分であり、
γ は、焼結粉末(SP)の界面エネルギーの極性成分ある)。
【0174】
焼結粉末(SP)は、成分(A)、(B)、(C)、任意に(D)及び任意に(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも0.1質量%、より好ましくは少なくとも0.2質量%、特に好ましくは少なくとも0.4質量%の成分(C)を含む。
【0175】
さらに、焼結粉末(SP)は、成分(A)、(B)、(C)、任意に(D)及び任意に(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、好ましくは最大5.0質量%、より好ましくは最大3.0質量%、特に好ましくは最大1.1質量%の成分(C)を含む。
【0176】
成分(D)
成分(D)は少なくとも1種のさらなる添加剤である。
【0177】
本発明の文脈において、「少なくとも1種のさらなる添加剤」は、正確に1種のさらなる添加剤、又は2種以上のさらなる添加剤の混合物のいずれかを意味する。
【0178】
このような添加剤は当業者に知られている。例えば、少なくとも1種のさらなる添加剤は、抗核形成剤、安定剤、導電性添加剤、末端基ファンクショナライザー(end group functionalizers)、染料、酸化防止剤(好ましくは立体障害フェノール)、難燃剤及び着色顔料からなる群から選択される。
【0179】
好適な抗核形成剤の例は塩化リチウムである。好適な安定剤は、例えば、フェノール、ホスファイト、金属石鹸及び銅安定剤である。好適な導電性添加剤は、炭素繊維、金属、ステンレス鋼繊維、カーボンナノチューブ及びカーボンブラックである。好適な末端基ファンクショナライザーは、例えば、テレフタル酸、アジピン酸及びプロピオン酸である。好適な染料及び着色顔料は、例えば、カーボンブラック及び酸化クロム鉄である。好適な酸化防止剤の例は、BASF SE製のIrganox(登録商標)245である。
【0180】
好適な金属石鹸は、例えば、金属ステアレート、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸ナトリウム、金属アルキルスルホネート、例えばラウリルスルホン酸ナトリウム、金属アルキルスルフェート、及び金属アルキルホスフェートである。
【0181】
焼結粉末(SP)が成分(D)を含む場合、焼結粉末(SP)は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも0.1質量%、より好ましくは少なくとも0.2質量%の成分(D)を含む。
【0182】
焼結粉末(SP)が成分(D)を含む場合、焼結粉末(SP)はまた、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、好ましくは最大5質量%、より好ましくは最大2.5質量%の成分(D)を含む。
【0183】
成分(E)
本発明によれば、任意に存在する成分(E)は少なくとも1種の補強材である。
【0184】
本発明の文脈において、「少なくとも1種の補強材」は、正確に1種の補強材、又は2種以上の補強材の混合物のいずれかを意味する。
【0185】
本発明の文脈において、補強材は、補強材を含まない成形体と比較して、本発明の方法によって製造された成形体の機械的特性を向上させる材料を意味すると理解される。
【0186】
このような補強材は当業者に知られている。成分(E)は、例えば、球形、プレートレット形、又は繊維形態であり得る。
【0187】
好ましくは、少なくとも1種の補強材は、球形又はプレートレット形である。
【0188】
本発明の文脈において、「プレートレット形」とは、少なくとも1種の補強材の粒子が4:1~10:1の範囲の、灰化後の画像評価を用いた顕微鏡検査によって決定された直径の厚さに対する比を有することを意味すると理解される。
【0189】
好適な補強材は当業者に知られており、例えば、カーボンナノチューブ、ガラスビーズ及びアルミニウムシリケートからなる群から選択される。
【0190】
好ましくは、少なくとも1種の補強材は、ガラスビーズ及びアルミニウムシリケートからなる群から選択される。これらの補強材は、さらにエポキシ官能化されてもよい。
【0191】
好適なアルミニウムシリケートは、それ自体当業者に知られている。アルミニウムシリケートは、Al及びSiOを含む化合物を指す。構造的には、アルミニウムシリケートに共通する要因は、シリコン原子が酸素原子によって四面体に配位し、アルミニウム原子が酸素原子によって八面体に配位していることである。アルミニウムシリケートは、さらなる元素をさらに含んでもよい。
【0192】
好ましいアルミニウムシリケートは、シート状シリケートはである。特に好ましいアルミニウムシリケートは、焼成したアルミニウムシリケート、特に好ましくは焼成したシート状シリケートである。アルミニウムシリケートは、さらに、エポキシ官能化されてもよい。
【0193】
少なくとも1種の補強材がアルミニウムシリケートである場合、アルミニウムシリケートは任意の形態で使用されてもよい。例えば、それは純アルミニウムシリケートの形態で使用することができるが、アルミニウムシリケートを鉱物の形態で使用することが同様に可能である。好ましくは、アルミニウムシリケートは鉱物の形態で使用される。好適なアルミニウムシリケートは、例えば、長石、ゼオライト、ソーダライト、シリマナイト、アンダルサイト及びカオリンである。カオリンは好ましいアルミニウムシリケートである。カオリンは、粘土岩の1種であり、本質的に鉱物カオリナイトを含む。カオリナイトの実験式はAl[(OH)/Si]である。カオリナイトはシート状シリケートである。カオリナイトと同様に、カオリンは、典型的にさらなる化合物、例えば二酸化チタン、酸化ナトリウム及び酸化鉄も含む。本発明に従って好ましいカオリンは、カオリンの総質量に基づいて少なくとも98質量%のカオリナイトを含む。
【0194】
成分(E)が成分(B)とは異なることは、当業者には明らかであろう。成分(E)は、典型的には、成分(B)よりも大きい粒径を有し、すなわち、それは、例えば、10μm超のサイズ(D90)を有する。
【0195】
焼結粉末が成分(E)を含む場合、焼結粉末は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも5質量%、より好ましくは少なくとも10質量%の成分(E)を含む。
【0196】
焼結粉末が成分(E)を含む場合、焼結粉末はまた、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、好ましくは最大30質量%、より好ましくは最大20質量%の成分(E)を含む。
【0197】
焼結法
本発明はさらに、以下の工程:
i)焼結粉末(SP)の層を提供する工程と、
ii)工程i)で提供された焼結粉末(SP)の層を露光又は加熱する工程と
を含む、成形体の製造方法を提供する。
【0198】
工程ii)では、工程i)で提供された焼結粉末(SP)の層を露光又は加熱する。
【0199】
露光又は加熱すると、焼結粉末(SP)の層の少なくとも一部が溶融する。溶融した焼結粉末(SP)が凝集し、均質な溶融物を形成する。露光後、焼結粉末(SP)の層の溶融部分は再び冷却され、均質な溶融物は再び凝固する。
【0200】
好適な露光方法には、当業者に知られている全ての方法が含まれる。好ましくは、工程ii)における露光は、放射線源で行われる。放射線源は、好ましくは、赤外線源及びレーザーからなる群から選択される。特に好ましい赤外線源は近赤外線源である。
【0201】
したがって、本発明は、工程ii)における露光が、レーザー及び赤外線源からなる群から選択される放射線源で行われる方法も提供する。
【0202】
好適なレーザーは、当業者に知られており、例えばファイバーレーザー、Nd:YAGレーザー(ネオジムでドープしたイットリウムアルミニウムガーネットレーザー)、又は二酸化炭素レーザーである。二酸化炭素レーザーは、典型的に10.6μmの波長を有する。
【0203】
工程ii)における露光に使用される放射線源がレーザーである場合、工程i)で提供される焼結粉末(SP)の層は典型的に、局所的に、かつ短時間でレーザービームに露光される。これにより、レーザービームに露光された焼結粉末(SP)の一部だけが選択的に溶融する。レーザーが工程ii)に使用される場合、本発明の方法は選択的レーザー焼結とも称される。選択的レーザー焼結は、それ自体が当業者に知られている。
【0204】
工程ii)における露光に使用される放射線源が、赤外線源、特に近赤外線源である場合、放射線源が放射する波長は、典型的に780nm~1000nmの範囲、好ましくは780nm~50μmの範囲、特に780nm~2.5μmの範囲である。
【0205】
その場合、工程ii)における露光では、典型的に、焼結粉末(SP)の層全体が露光される。焼結粉末(SP)の所望の領域のみが露光で溶融するために、赤外線吸収インク(IR吸収インク)は典型的に、溶融する領域に適用される。
【0206】
その場合、成形体の製造方法は、好ましくは、工程i)と工程ii)との間に、工程i)で提供された焼結粉末(SP)の層の少なくとも一部に少なくとも1種のIR吸収インクを適用する工程i-1)を含む。
【0207】
したがって、本発明はまた、以下の工程:
i)以下の成分:
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、59.5質量%~99.85質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.05質量%~0.5質量%の少なくとも1種の流動剤(B)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の有機添加剤(C)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~5質量%の少なくとも1種のさらなる添加剤(D)、及び
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~30質量%の少なくとも1種の補強材(E)
を含む焼結粉末(SP)の層を提供する工程と、
i-1)工程i)で提供された焼結粉末(SP)の層の少なくとも一部に少なくとも1種のIR吸収インクを適用する工程と、
ii)工程i)で提供された焼結粉末(SP)の層を露光する工程と
を含む、成形体の製造方法を提供する。
【0208】
好適なIR吸収インクは、当業者に知られている全てのIR吸収インク、特に当業者に知られている高速焼結のためのIR吸収インクである。
【0209】
IR吸収インクは典型的に、IR放射線、好ましくはNIR放射線(近赤外線放射線)を吸収する少なくとも1種の吸収剤を含む。工程ii)における焼結粉末(SP)の層の露光では、IR吸収インク中に存在するIR吸収剤によるIR放射線、好ましくはNIR放射線の吸収により、IR吸収インクが適用された焼結粉末(SP)の層の部分を選択的に加熱することをもたらす。
【0210】
IR吸収インクも、少なくとも1種の吸収剤も、キャリア液を含み得る。好適なキャリア液は、当業者に知られており、例えばオイル又は水である。
【0211】
少なくとも1種の吸収剤は、キャリア液に溶解又は分散されてもよい。
【0212】
工程ii)における露光が赤外線源から選択される放射線源で行われ、かつ工程i-1)が行われる場合、本発明の方法は、高速焼結(HSS)又はマルチジェット溶融(MJF)法とも称される。これらの方法はそれ自体当業者に知られている。マルチジェット溶融(MJF)法では、典型的に、非吸収性のインクである「ディテーリング剤(detailing agent)」も使用される。
【0213】
工程ii)の後、典型的には、焼結粉末(SP)の層は、工程i)で提供された焼結粉末(SP)の層の層厚によって低下し、焼結粉末(SP)のさらなる層が適用される。続いて、これを工程ii)で再び露光又は加熱する。
【0214】
これは、まず、焼結粉末(SP)の上層を焼結粉末(SP)の下層に結合する;さらに、上層内の焼結粉末(SP)の粒子は、融合によって互いに結合される。
【0215】
したがって、本発明の方法では、工程i)、ii)、及び任意に工程i-1)を繰り返すことができる。
【0216】
粉末床の低下、焼結粉末(SP)の適用及び露光又は加熱、したがって焼結粉末(SP)の溶融を繰り返すことにより、三次元の成形体が製造される。例えば、空洞を有する成形体を製造することも可能である。未溶融の焼結粉末(SP)自体が担持材料として機能するので、追加の担持材料は必要ではない。
【0217】
したがって、本発明はさらに、本発明の焼結粉末(SP)を使用する焼結法により得ることができる成形体も提供する。
【0218】
本発明の焼結粉末(SP)は、焼結法における使用の適性が特に良好である。
【0219】
したがって、本発明はまた、以下の成分、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、59.5質量%~99.85質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.05質量%~0.5質量%の少なくとも1種の流動剤(B)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の有機添加剤(C)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~5質量%の少なくとも1種のさらなる添加剤(D)、及び
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~30質量%の少なくとも1種の補強材(E)
を含む焼結粉末(SP)の、焼結法、好ましくは選択的レーザー焼結(SLS)法又はマルチジェット溶融(MJF)法における使用方法も提供する。
【0220】
しかしながら、選択的レーザー焼結(SLS)法又はマルチジェッ溶融(MJF)法だけでなく、他の粉末ベースの3D印刷法においても、成形体の製造のために本発明の焼結粉末(SP)を使用することが可能である。
【0221】
本発明はさらに、焼結粉末(SP)の流動性及び凝集を向上するために、少なくとも1種の流動剤(B)及び少なくとも1種の有機添加剤(C)を少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)を含む焼結粉末(SP)に使用する方法を提供するものである。
【0222】
成形体
本発明により、成形体が得られる。成形体は、冷却後に、粉末床から取り外すことができる。溶融していない焼結粉末(SP)のあらゆる付着粒子は、既知の方法によって表面から機械的に除去することができる。成形体の表面処理方法には、例えば、振動粉砕又はバレル研磨、及びまたサンドブラスト、ガラスビーズブラスト又はマイクロビーズブラストが含まれる。
【0223】
得られた成形体をさらなる処理に供すること、又は例えば表面を処理することも可能である。
【0224】
したがって、本発明はさらに、本発明の方法により得ることができる成形体を提供する。
【0225】
得られる成形体は、好ましくは5MPa以上、より好ましくは7MPa以上、より好ましくは9MPa以上の引張強度を有する。さらに、それは、好ましくは100%以上、より好ましくは200%以上、特に好ましくは300%以上の破断伸びを有する。
【0226】
本発明の文脈において、引張強度及び破断伸びは、DIN53504による引張試験と呼ばれるものを用いて決定される。使用される試験形状はS2ダンベル試料であり、サンプルは200mm/分で引っ張った(Z010,Zwick/Roell,ドイツ)。測定には、常にビルドスペースレイアウトでX方向、水平に印刷された試料を採取する。
【0227】
典型的に、得られる成形体は、いずれの場合も成形体の総質量に基づいて、59.5質量%~99.85質量%の成分(A)、0.05質量%~0.5質量%の成分(B)、0.1質量%~5質量%の成分(C)、0質量%~5質量%の成分(D)、及び0質量%~30質量%の成分(E)を含む。
【0228】
好ましくは、得られる成形体は、いずれの場合も成形体の総質量に基づいて、74.15質量%~99.7質量%の範囲の成分(A)、0.1質量%~0.35質量%の範囲の成分(B)、0.2質量%~3質量%の範囲の成分(C)、0質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び0質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0229】
最も好ましくは、得られる成形体は、いずれの場合も成形体の総質量に基づいて、76.12質量%~99.42質量%の範囲の成分(A)、0.18質量%~0.28質量%の範囲の成分(B)、0.4質量%~1.1質量%の範囲の成分(C)、0質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び0質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0230】
典型的には、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計は100質量%である。
【0231】
成形体は、成分(D)を含む場合、成形体の総質量の総質量に基づいて、例えば0.1質量%~5質量%の範囲の成分(D)、好ましくは0.2質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)を含んでもよい。
【0232】
成形体は、成分(E)を含む場合、成形体の総質量に基づいて、例えば5質量%~30質量%の範囲の成分(E)、好ましくは10質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含んでもよい。
【0233】
成形体が成分(D)及び/又は成分(E)を含む場合、成形体に存在する少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の質量パーセントは通常、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)及び/又は成分(E)の合計が100質量%となるように、相応に低減する。
【0234】
成形体は、成分(D)を含む場合、したがって、成形体の総質量に基づいて、例えば、59.5質量%~99.75質量%の範囲の成分(A)、0.05質量%~0.5質量%の範囲の成分(B)、0.1質量%~5質量%の範囲の成分(C)、0.1質量%~5質量%の範囲の成分(D)、及び0質量%~30質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0235】
成形体は、成分(D)を含む場合、したがって、成形体の総質量に基づいて、好ましくは、74.15質量%~99.5質量%の範囲の成分(A)、0.1質量%~0.35質量%の範囲の成分(B)、0.2質量%~3質量%の範囲の成分(C)、0.2質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び0質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0236】
成形体は、成分(D)を含む場合、したがって、成形体の総質量に基づいて、より好ましくは、76.12質量%~99.22質量%の範囲の成分(A)、0.18質量%~0.28質量%の範囲の成分(B)、0.4質量%~1.1質量%の範囲の成分(C)、0.2質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び0質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0237】
成形体は、成分(E)を含む場合、したがって、成形体の総質量に基づいて、例えば、59.5質量%~94.85質量%の範囲の成分(A)、0.05質量%~0.5質量%の範囲の成分(B)、0.1質量%~5質量%の範囲の成分(C)、0質量%~5質量%の範囲の成分(D)、及び5質量%~30質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0238】
成形体は、成分(E)を含む場合、したがって、成形体の総質量に基づいて、好ましくは、74.15質量%~89.7質量%の範囲の成分(A)、0.1質量%~0.35質量%の範囲の成分(B)、0.2質量%~3質量%の範囲の成分(C)、0質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び10質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0239】
成形体は、成分(E)を含む場合、したがって、成形体の総質量に基づいて、より好ましくは、76.12質量%~89.42質量%の範囲の成分(A)、0.18質量%~0.28質量%の範囲の成分(B)、0.4質量%~1.1質量%の範囲の成分(C)、0質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び10質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0240】
成形体は、成分(D)及び(E)を含む場合、したがって、成形体の総質量に基づいて、例えば、59.5質量%~94.75質量%の範囲の成分(A)、0.05質量%~0.5質量%の範囲の成分(B)、0.1質量%~5質量%の範囲の成分(C)、0.1質量%~5質量%の範囲の成分(D)、及び5質量%~30質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0241】
成形体は、成分(D)及び(E)を含む場合、したがって、成形体の総質量に基づいて、好ましくは、74.15質量%~89.5質量%の範囲の成分(A)、0.1質量%~0.35質量%の範囲の成分(B)、0.2質量%~3質量%の範囲の成分(C)、0.2質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び10質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0242】
成形体は、成分(D)及び(E)を含む場合、したがって、成形体の総質量に基づいて、より好ましくは、76.12質量%~89.22質量%の範囲の成分(A)、0.18質量%~0.28質量%の範囲の成分(B)、0.4質量%~1.1質量%の範囲の成分(C)、0.2質量%~2.5質量%の範囲の成分(D)、及び10質量%~20質量%の範囲の成分(E)を含む。
【0243】
一般に、成分(A)は、焼結粉末(SP)中に存在した成分(A)である。同様に、成分(B)は、焼結粉末(SP)中に存在した成分(B)であり、成分(C)は、焼結粉末(SP)中に存在した成分(C)であり、成分(D)は、焼結粉末(SP)中に存在した成分(D)であり、成分(E)は、焼結粉末(SP)中に存在した成分(E)である。
【0244】
工程i-1)が行われた場合、典型的に、成形体はIR吸収インクの残留成分をさらに含む。
【0245】
焼結粉末(SP)の露光又は加熱の結果、成分(A)、(B)、(C)、及び任意に(D)及び(E)が化学反応を起こし、その結果変化し得ることは、当業者には明らかであろう。そのような反応は、当業者に知られている。
【0246】
好ましくは、成分(A)、(B)、(C)、及び任意に(D)及び(E)は、工程ii)における露光時にいかなる化学反応に起こさない;代わりに、焼結粉末(SP)は単に溶融する。
【0247】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例
【0248】
以下の成分を使用した:
成分(A):熱可塑性ポリウレタン(TPU);Elastollan SP9415,BASF SE、
成分(B1):疎水性ヒュームドシリカ;Aerosil R 812,Evonik,ドイツ、
成分(B2):疎水性ヒュームドシリカ;HDK H20,Wacker Chemie、
成分(B3):疎水性ヒュームドシリカ;Aerosil R 972,Evonik,ドイツ、
成分(C):N,N’-エチレンジ(ステアラミド)、滴点D=142℃。
【0249】
試験方法:
焼結粉末(SP)の界面エネルギーの決定
Owens-Wendtモデル(Owens,D.K.;Wendt,R.C.;Jour.of Applied Polymer Science,13,1741,(1969))を用いて、焼結粉末(SP)の界面エネルギーを計算した。
【0250】
この目的のため、粉末状のサンプルを自作の接着フィルム(PETフィルム上のAcronal V215)に適用した。エアガンで余分な材料を除去した。表1に記載の試験液をそれぞれ8~10滴、約1.5μLの液滴量で粉末層に適用した。表面との最初の接触直後(液滴の分離後5秒)に、液滴の輪郭分析によって、接触角θを決定した。23℃で測定を行った。使用した分析装置はDrop Shape Analyzer DSA100(Kruess GmbH,ドイツ)であった。
【0251】
図2は、接触角θ、試験液の界面エネルギーγ、焼結粉末(SP)の界面エネルギーγ、及び試験液と焼結粉末(SP)の間の界面エネルギーγSLを示す。試験液(I)をサンプル(II)に適用することにより、接触角を測定した。
【0252】
【表1】
【0253】
Owens-Wendt式(式IX)と測定した接触角θを用いて、線形回帰により、極性成分γ 及び分散成分γ で粉末の界面エネルギーγを確認することが可能であり、
【数11】
ここで、以下の関係(式X及び式XI)に留意する必要がある
【数12】
(式中、変数が以下の意味を有し:
θは、接触角であり、
γは、試験液の界面エネルギーであり、
γ は、試験液の界面エネルギーの分散成分であり、
γ は、試験液の界面エネルギーの極性成分であり、
γは、焼結粉末(SP)の界面エネルギーであり、
γ は、焼結粉末(SP)の界面エネルギーの分散成分であり、
γ は、焼結粉末(SP)の界面エネルギーの極性成分ある)。
【0254】
焼結粉末(SP)のD50、及び少なくとも1種の流動剤(成分(B))のD90の決定
1バールで焼結粉末(SP)又は少なくとも1種の流動剤(B)の乾燥分散が先行する、ISO 13320によるレーザー回折(Horiba LA-960、Retsch Technology、ドイツ)により、粒径を決定した。Fraunhofer法を用いて、評価を行った。
【0255】
少なくとも1種の有機添加剤(成分(C))の滴点Dの決定
ISO 2176に従って、滴点測定器(AD0566-600,Scavini,イタリア)を使用して、滴点(D)を測定した。
【0256】
焼結粉末(SP)の融点(TM(SP))の決定
DIN EN ISO 11357に従って、DSC(示差走査熱量測定;Discovery series DSC、TA Instruments)によって、融点を決定した。
【0257】
DSC測定では、窒素雰囲気下で、サンプルを以下の温度サイクルに供した:-80℃で5分間、次に20℃/分で少なくとも200℃に加熱(第1加熱ラン(H1))、次に少なくとも200℃で5分間、次に20℃/分で-80℃に冷却、次に-80℃で5分間、次に20℃/分で少なくとも200℃に加熱(第2加熱ラン(H2))。これにより、例えば図1に示すようなDSC図が得られる。融点(TM(SP))は、加熱ラン(H1)の溶融ピークの最大値での温度に対応した。TMonsetとTMendsetとの間の範囲に複数の局所最大値がある場合、融点Tは、それぞれの局所最大値の数値平均を意味すると理解される。
【0258】
嵩密度の決定
DIN EN ISO 60に従って、嵩密度を決定した。
【0259】
引張強度及び破断伸びの決定
DIN53504による引張試験と呼ばれるものを用いて、引張強度及び破断伸びを決定した。使用される試験形状はS2ダンベル試料であり、サンプルは200mm/分で引っ張った(Z010,Zwick/Roell,ドイツ)。測定には、常にビルドスペースレイアウトでX方向、水平に印刷された試料を採取した。
【0260】
焼結粉末(SP)のメルトボリュームフローレート(MVR)の決定
DIN EN ISO 1133(mi2.1,Goettfert,ドイツ)に従って、メルトボリュームフローレートを確認した。この目的のために、焼結粉末(SP)を窒素中110℃で2時間予備乾燥し、次に2.16kgの荷重、及び温度=(Tm(SP)+40℃)で分析した。
【0261】
焼結粉末(SP)の製造
本発明の実施例1(I1)
成分(A)を乾燥窒素雰囲気下100℃で48時間熱処理した。その後、質量%の成分(B1)、1室慮%の成分(C)を添加し、混合物をピンミル(GSM250、Gotic、ドイツ)で極低温条件下で機械的に粉末化処理(低温粉砕)し、ふるい分け機(撹拌ふるい;0.1×0.3mmの長メッシュ)で分級した。粉砕後、(Thermomix TM5,Vorwerk;2000回転/分で5分間)でさらに0.15質量%の成分(B1)を混合した。
【0262】
本発明の実施例2(I2)
この実施例では、実施例1と同様に組成物を製造した。粉砕後、1質量%の成分(C)(N,N’-エチレンジ(ステアラミド)、滴点が142℃)をさらに混合した。
【0263】
比較例3(CE3)
DE 10 2017 124 047 A1の実施例2を再現した。
【0264】
比較例4(CE4)
この比較例では、成分(C)を使用しないことを除いて、実施例1と同様に組成物を製造した。粉砕後に0.15質量%ではなく0.55質量%の成分(B1)を混合することによって行った。
【0265】
比較例5(CE5)
この比較例では、実施例1と同様に組成物を製造した。粉砕後に5質量%の成分(C)をさらに添加することによって行った。
【0266】
比較例6(CE6)
EP 3 157 737 B1の実施例1を再現した。
【0267】
製造した焼結粉末(SP)の特性及び成分の前述の量を表2に報告する。
【0268】
【表2】
【0269】
成形体の製造
製造例1~6のそれぞれでは、同じビルドスペースレイアウトを使用した。使用したビルドスペースレイアウトを図3に示している。ビルドスペースレイアウトには、以下の部品を収容した:37本の引張棒(I)(X及びZ方向)、9個のカールクロス(II)、及び41個のさらなるの技術試験片、例えば中空球体(III)、チューブ(IV)、シート(V)及び自由形状体(free-form bodies)。自由形状体は、特に構成要素の品質の検証に役立った。ビルドスペースレイアウトは、合計で87個の試験片、180×180×226mmの寸法、及び7.7%の梱包密度を有する。
【0270】
同様に、製造例10~12のそれぞれでは、同じビルドスペースレイアウトを使用した。これは、調整したビルドスペースレイアウトであった。これを図4に示している。ビルドスペースレイアウトには、以下の部品を収容した:74本の引張棒(I)(X及びZ方向)、18個のカールクロス(II)、及び120個のさらなるの技術試験片、例えば中空球体(III)、チューブ(IV)、シート(V)、グリッド構造(VI)、靴底(VII)及び自由形状体。自由形状体は、特に構成要素の品質の検証に役立った。ビルドスペースレイアウトは、合計で87個の試験片、380×284×371mmの寸法、及び7.3%の梱包密度を有する。
【0271】
製造例1(M1I1)
市販のレーザー焼結機(Farsoon、HT251P、中国)により、本発明の実施例1(I1)からの焼結粉末(SP)を成形体に加工した。レーザー焼結操作における加工パラメータを表3に示している。
【0272】
製造例2(M1I2)
市販のレーザー焼結機(Farsoon、HT251P、中国)により、本発明の実施例2(I2)からの焼結粉末(SP)を成形体に加工した。レーザー焼結操作における加工パラメータを表3に示している。
【0273】
製造例3(M1CE3)
市販のレーザー焼結機(Farsoon、HT251P、中国)により、比較例3(CE3)からの焼結粉末(SP)を成形体に加工した。レーザー焼結操作における加工パラメータを表3に示している。
【0274】
製造例4(M1CE4)
市販のレーザー焼結機(Farsoon、HT251P、中国)により、比較例4(CE4)からの焼結粉末(SP)を成形体に加工した。レーザー焼結操作における加工パラメータを表3に示している。
【0275】
製造例5(M1CE5)
市販のレーザー焼結機(Farsoon、HT251P、中国)により、比較例5(CE5)からの焼結粉末(SP)を成形体に加工した。レーザー焼結操作における加工パラメータを表3に示している。
【0276】
製造例6(M1CE6)
市販のレーザー焼結機(Farsoon、HT251P、中国)により、比較例6(CE6)からの焼結粉末(SP)を成形体に加工した。レーザー焼結操作における加工パラメータを表3に示している。
【0277】
【表3】
【0278】
製造例10(M2I1)
マルチジェット溶融機(HP、HP Jet Fusion 5210 3D Printer、USA)により、本発明の実施例1(I1)からの焼結粉末(SP)を見本に加工した。使用したパラメータ設定は「Ultrasint TPU01-Balanced」であった。
【0279】
製造例11(M2CE3)
マルチジェット溶融機(HP、HP Jet Fusion 5210 3D Printer、USA)により、比較例3(CE3)からの焼結粉末(SP)を見本に加工した。使用したパラメータ設定は「Ultrasint TPU01-Balanced」であった。
【0280】
製造例12(M2CE5)
マルチジェット溶融機(HP、HP Jet Fusion 5210 3D Printer、USA)により、比較例5(CE5)からの焼結粉末(SP)を見本に加工した。使用したパラメータ設定は「Ultrasint TPU01-Balanced」であった。
【0281】
参照1(R1)
US 8114334 B2の実施例1の値を比較値として表4に記入した。
【0282】
得られた成形体の特性を表4及び表5にまとめた。
【0283】
【表4】
【0284】
【表5】
【0285】
処理性は、10回の完全な印刷作業中で少なくとも3人の異なる機械オペレータによって監視した。完全な印刷作業とは、ビルドスペースレイアウトを完全に製造することができたことを意味すると理解される。さらに、前述の印刷操作中に製造された成形体の構成要素の品質は、機械オペレータによって検査した。その後、加工性及び構成要素の品質は、機械オペレータによって、それぞれの場合において0~10のスケール(10=最良、1=最悪)で評価した。表5及び6における数値は、少なくとも3つの独立した評価の数値平均に対応する。0点が最も低い評価である。ビルド中に非常に多くの欠陥が観察され、スコアが0を下回る場合、印刷操作を停止する(ビルドストップ**を参照)。ビルドスペースレイアウトが完全に製造されるまで、印刷の試行を繰り返した。
【0286】
以下の欠陥は、加工性の評価の低下につながる:
- 粉末製剤の投与/供給における流動性の問題:-2点
- 粉末層の適用における問題(不均一性)、例えば:
粉末床内/粉末床上の粉末凝集物の形成:-1点;
粉末床におけるストリーク:-0.5点(1~3本のストリーク)、-1点(4~6本のストリーク)、-2点(>6本のストリーク);ストリークとは、あまり深くないわずかな溝を意味すると理解される;
粉末床における大きな穴又は溝:-1点(1つの穴又は溝につき);
適用ツール(例えば、スキージ、ローラー)の傾斜/ゆがみ:-2点;
「ショートフィード」(ショートフィードの場合、粉末層として適用される粉末の量が少なすぎる):-2点。
【0287】
以下の欠陥は、構成要素の品質の評価の低下につながる:
- 部品内の局所的な熱の大幅な蓄積による部品の過溶融:-1点
- 製造された部品の反り:-3点
- 表面欠陥:-1点(3つの欠陥につき)
- 部品表面の過度な粗さ:-1点。
【0288】
**ビルドストップの場合、例えば、粉末の適用システム(ブレード、ロール)がブロックされた、(反りにより)部品が隆起した、粉末適用システム上で部品が動かなくなった、及び/又は粉末の投与がブロックされた理由で、さらなる印刷操作が阻止される。
【0289】
ビルドストップの結果、部分的に製造された成形品は廃棄され、再印刷されなければならない。その結果、材料の損失が増加し、総作業時間が長くなり、経済的実行可能性が大幅に低下する。したがって、10回の完全なビルド操作(停止なし)を行った際に発生したビルドストップの数を別途に記載する。したがって、ビルドストップは明らかに失敗したプロセスとなるため、加工性の評価にはビルドストップの数は含まれていない。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、59.5質量%~99.85質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.05質量%~0.5質量%の少なくとも1種の流動剤(B)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の有機添加剤(C)、
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~5質量%の少なくとも1種のさらなる添加剤(D)、及び
(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~30質量%の少なくとも1種の補強材(E)
を含む焼結粉末(SP)であって、
前記少なくとも1種の有機添加剤(C)が、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸でグラフト化したポリプロピレンワックス及びアミドワックスからなる群から選択される、焼結粉末(SP)。
【請求項2】
前記少なくとも1種流動剤(B)が、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、シリカ、金属酸化物、鉱物、ホウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩及び炭酸塩からなる群から、好ましくは疎水性ヒュームドシリカ、タルク、カオリン、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸バリウムから選択される、請求項1に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項3】
前記焼結粉末(SP)が、
i)いずれの場合も成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、74.15質量%~99.7質量%、好ましくは76.12質量%~99.42質量%の成分(A)、及び/又は
ii)いずれの場合も(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.1質量%~0.35質量%、好ましくは0.18質量%~0.28質量%の成分(B)、及び/又は
iii)いずれの場合も(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0.2質量%~3質量%、好ましくは0.4質量%~1.1質量%の成分(C)、及び/又は
iv)(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~2.5質量%の成分(D)、及び/又は
v)成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量パーセントの合計に基づいて、0質量%~20質量%の成分(E)
を含む、請求項1又は2に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項4】
前記少なくとも1種の有機添加剤(C)が、
i)N,N’-アルキレン脂肪酸ジアミドである、及び/又は
ii)前記少なくとも1種の有機添加剤(C)の滴点が以下の条件(式I)を満足するように選択される、
【数1】
(式中、Dは前記少なくとも1種の有機添加剤(C)の滴点であり、TM(A)は前記少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)の融点である)、及び/又は
iii)前記焼結粉末(SP)の全界面エネルギーγが、25mN・m-1以下、好ましくは15mN・m-1以下、より好ましくは10mN・m-1以下であるように選択される、及び/又は
iv)前記焼結粉末(SP)の分散成分の界面エネルギーγ が、20mN・m-1以下、好ましくは11mN・m-1以下、より好ましくは7mN・m-1以下であるように選択される、及び/又は
v)前記焼結粉末(SP)の極性成分の界面エネルギーγ が、5mN・m-1以下、好ましくは4mN・m-1以下、より好ましくは3mN・m-1以下であるように選択される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項5】
前記焼結粉末(SP)が、
i)10~190μmの範囲、好ましくは15~150μmの範囲、より好ましくは20~110μmの範囲、特に好ましくは40~100μmの範囲の平均粒径(D50)、及び/又は
ii)80~220℃の範囲、好ましくは100~190℃の範囲、より好ましくは120~170℃の範囲の融点(TM(SP))、及び/又は
iii)3~150cm/10分の範囲、好ましくは15~100cm/10分の範囲、より好ましくは30~70cm/10分の範囲のメルトボリュームフローレート(MVR)、及び/又は
iv)300g/L以上、好ましくは350g/L以上、より好ましくは400g/L以上の嵩密度
を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項6】
前記少なくとも1種の流動剤(B)が、10μm以下、好ましくは2μm以下のD90を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項7】
前記少なくとも1種のさらなる添加剤(D)が、抗核形成剤、安定剤、導電性添加剤、末端基ファンクショナライザー、染料、酸化防止剤、難燃剤及び着色顔料からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項8】
前記少なくとも1種の補強材(E)が、カーボンナノチューブ、ガラスビーズ及びアルミニウムシリケートからなる群から、好ましくはガラスビーズ及びアルミニウムシリケートからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)。
【請求項9】
以下の成分:
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、59.5質量%~99.85質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)、
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、0.05質量%~0.5質量%の少なくとも1種の流動剤(B)、
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の有機添加剤(C)、
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、0質量%~5質量%の少なくとも1種のさらなる添加剤(D)、及び
焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、0質量%~30質量%の少なくとも1種の補強材(E)
を含む焼結粉末(SP)を製造する方法であって、
a)前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(A)の総量を粉砕する工程
を含み、
工程a)の前に、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(B)の総量の第1部分(BT1)、及び/又は前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(C)の総量の第1部分(CT1)が成分(A)に混合されて粉末(P)が得られ、工程a)の後に、成分(B)の総量の残り部分(BT2)及び/又は成分(C)の総量の残り部分(CT2)が粉末(P)に混合されて焼結粉末(SP)が得られ、前記第1部分(BT1)が、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(B)の総量の0質量%~100質量%を占め、前記第1部分(CT1)が、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(C)の総量の0質量%~100質量%を占め、前記残り部分(BT2)が、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(B)の総量の(100-BT1)質量%を占め、前記残り部分(CT2)が、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて、成分(C)の総量の(100-CT1)質量%を占め、
任意に、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(D)の総量、及び/又は、前記焼結粉末(SP)の総質量に基づいて成分(E)の総量が工程a)の前又は工程a)の後に混合され
前記少なくとも1種の有機添加剤(C)が、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸でグラフト化したポリプロピレンワックス及びアミドワックスからなる群から選択される、方法。
【請求項10】
以下の工程:
i)請求項1から8のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)の層を提供する工程と、
ii)工程i)で提供された前記焼結粉末(SP)の層を露光又は加熱する工程と
を含む、成形体の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法により得ることができる成形体。
【請求項12】
焼結粉末(SP)の流動性及び凝集を向上するために、少なくとも1種の流動剤(B)及び少なくとも1種の有機添加剤(C)を、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(A)を含む焼結粉末(SP)に使用する方法であって、前記少なくとも1種の有機添加剤(C)が、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸でグラフト化したポリプロピレンワックス及びアミドワックスからなる群から選択される、使用方法。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)の、焼結法、好ましくは選択的レーザー焼結(SLS)法又はマルチジェット溶融(MJF)法における使用方法。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか一項に記載の焼結粉末(SP)を使用して、焼結法によって得ることができる成形体。
【国際調査報告】