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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-02
(54)【発明の名称】バッテリの充電状態を推定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/367 20190101AFI20230925BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20230925BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20230925BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20230925BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/387
H01M10/48 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516219
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 KR2021007413
(87)【国際公開番号】W WO2022055080
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0117047
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストバー・ラヤッパン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウク・ペク
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・フイ・イム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジュン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ギ・ホン・キム
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA41
2G216CB13
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
バッテリの充電状態を推定する方法は、充電状態初期値及びカルマン誤差共分散初期値を設定する段階、バッテリのGパラメータ推定値、電流現在値及び電圧現在値を受信する段階、拡張カルマンフィルタに、Gパラメータ推定値、電流現在値及び電圧現在値を入力し、バッテリの充電状態現在値とカルマン誤差共分散現在値とを更新する段階、及び充電状態現在値を出力する段階を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの充電状態を推定する方法において、
充電状態初期値及びカルマン誤差共分散初期値を設定する段階と、
前記バッテリのGパラメータ推定値、電流現在値及び電圧現在値を受信する段階と、
拡張カルマンフィルタに、前記Gパラメータ推定値、前記電流現在値及び前記電圧現在値を入力し、前記バッテリの充電状態現在値とカルマン誤差共分散現在値とを更新する段階と、
前記充電状態現在値を出力する段階と、を含む、バッテリ充電状態推定方法。
【請求項2】
前記バッテリの充電状態現在値と前記カルマン誤差共分散現在値とを更新する段階は、
前記電流現在値に基づき、充電状態一次推定値及びカルマン誤差共分散一次推定値を算出する段階と、
前記バッテリについて事前に決定された開放回路電圧(OCV)・充電状態(SOC)関係から生成された係数データを受信する段階と、
前記係数データ、前記電流現在値及び前記Gパラメータ推定値に基づき、電圧推定値及びカルマン利得現在値を算出する段階と、
前記充電状態一次推定値、前記カルマン利得現在値、前記電圧現在値及び前記電圧推定値に基づき、前記充電状態現在値を更新する段階と、
前記カルマン誤差共分散一次推定値、前記カルマン利得現在値、前記係数データ及び前記Gパラメータ推定値に基づき、前記カルマン誤差共分散現在値を更新する段階と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項3】
前記充電状態一次推定値SOCest-(t)は、充電状態直前値SOCest(t-1)、電流現在値I(t)、サンプリング周期Ts及び前記バッテリの最大容量Qmaxを利用し、SOCest-(t)=SOCest(t-1)+I(t)×Ts/Qmaxによって算出されることを特徴とする請求項2に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項4】
前記カルマン誤差共分散一次推定値P-(t)は、カルマン誤差共分散直前値P(t-1)、サンプリング周期Ts、前記バッテリの最大容量Qmax及びプロセッサノイズσを利用し、P-(t)=P(t-1)+(Ts/Qmax)2×σによって算出されることを特徴とする請求項2に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項5】
前記電圧推定値を算出する段階は、
前記係数データから、前記充電状態一次推定値SOCest-(t)に対応する第1係数値C(t)を抽出する段階と、
前記第1係数値C(t)、前記充電状態一次推定値SOCest-(t)、前記Gパラメータ推定値Gest(t)及び前記電流現在値I(t)を利用し、Vest(t)=C(t)×SOCest-(t)+Gest(t)×I(t)により、前記電圧推定値Vest(t)を算出する段階と、を含むことを特徴とする請求項2に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項6】
前記第1係数値C(t)は、前記充電状態一次推定値SOCest-(t)に隣接した充電状態データ値Nε[SOCest-(t)]、及び前記充電状態データ値Nε[SOCest-(t)]に対応する開放回路電圧データ値OCV(Nε[SOCest-(t)]を利用し、C(t)=OCV(Nε[SOCest-(t)]/Nε[SOCest-(t)]によって決定されることを特徴とする請求項5に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項7】
前記電圧推定値を算出する段階は、
前記係数データから、前記充電状態一次推定値SOCest-(t)に対応する第2係数値C(t)及び第3係数値E(t)を抽出する段階と、
前記第2係数値C(t)、前記充電状態一次推定値SOCest-(t)、前記Gパラメータ推定値Gest(t)、前記電流現在値I(t)及び前記第3係数値E(t)を利用し、Vest(t)=C(t)×SOCest-(t)+Gest(t)×I(t)+E(t)により、前記電圧推定値Vest(t)を算出する段階と、を含むことを特徴とする請求項2に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項8】
前記第2係数値C(t)と前記第3係数値E(t)は、前記開放回路電圧(OCV)・充電状態(SOC)関係に対応する曲線において、前記充電状態一次推定値SOCest-(t)に隣接した充電状態データ値Nε[SOCest-(t)]に該当する点に接する線形関数の勾配及びOCV切片として、それぞれ決定されることを特徴とする請求項7に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項9】
前記カルマン利得現在値を算出する段階は、
前記係数データから、前記充電状態一次推定値SOCest-(t)に対応する第1係数値C(t)を抽出する段階と、
前記第1係数値C(t)、前記カルマン誤差共分散一次推定値P-(t)、前記Gパラメータ推定値Gest(t)及び測定ノイズσを利用し、L(t)=C(t)×P-(t)/[C(t)2×P-(t)+Gest(t)2×σ]により、前記カルマン利得現在値L(t)を算出する段階と、を含むことを特徴とする請求項2に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項10】
前記充電状態現在値SOCest(t)は、前記充電状態一次推定値SOCest-(t)、前記カルマン利得現在値L(t)、前記電圧現在値V(t)及び前記電圧推定値Vest(t)を利用し、SOCest(t)=SOCest-(t)+L(t)×(V(t)-Vest(t)によって算出されることを特徴とする請求項2に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項11】
前記カルマン誤差共分散現在値を算出する段階は、
前記係数データから、前記充電状態一次推定値SOCest-(t)に対応する第1係数値C(t)を抽出する段階と、
前記カルマン誤差共分散一次推定値P-(t)、前記カルマン利得現在値L(t)、前記第1係数値C(t)、前記Gパラメータ推定値Gest(t)及び測定ノイズσを利用し、P(t)=P-(t)-L(t)2×[C(t)2×P-(t)+Gest(t)2×σ]により、前記カルマン誤差共分散現在値P(t)を算出する段階と、を含むことを特徴とする請求項2に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項12】
前記バッテリの電圧及び電流を事前に設定されたサンプリング周期Tsごとに感知し、前記バッテリの電圧値及び電流値を周期的に生成する段階と、
適応型フィルタを利用し、前記電圧値及び前記電流値から、前記バッテリの電流変化に対する電圧の敏感度を示すGパラメータを数値化した前記Gパラメータ推定値を生成する段階と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項13】
前記適応型フィルタは、再帰的最小自乗法(RLS)を利用したフィルタであることを特徴とする請求項12に記載の充電状態推定方法。
【請求項14】
前記適応型フィルタを利用し、前記電圧現在値及び前記電流現在値から、前記バッテリ内の局所平衡電位散布と抵抗分布とによって決定される有効電位を示すHパラメータを数値化したHパラメータ推定値を生成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項15】
前記バッテリの状態ベクトル初期値と共分散行列初期値とを設定する段階をさらに含み、
前記バッテリの電圧値と電流値とを周期的に生成する段階は、
前記バッテリの電圧直前値と電流直前値とを生成する段階と、
前記サンプリング周期Ts後、前記バッテリの前記電圧現在値と前記電流現在値とを生成する段階と、を含むことを特徴とする請求項14に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項16】
前記Gパラメータ推定値と前記Hパラメータ推定値とを生成する段階は、
前記電流現在値と状態ベクトル直前値とに基づき、前記バッテリの電圧推定値を算出する段階と、
前記電流現在値と共分散行列直前値とに基づき、利得行列現在値と共分散行列現在値とを算出する段階と、
前記電圧現在値と前記電圧推定値とを基に、電圧誤差を算出する段階と、
前記状態ベクトル直前値、前記利得行列現在値及び前記電圧誤差に基づき、状態ベクトル現在値を算出することにより、前記Gパラメータ推定値と前記Hパラメータ推定値とを生成する段階と、を含むことを特徴とする請求項15に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項17】
前記電圧推定値Vest(t)は、前記電流現在値I(t)、Gパラメータ直前値Gest(t-1)及びHパラメータ直前値Hest(t-1)を利用し、Vest(t)=Gest(t-1)×I(t)+Hest(t-1)によって算出されることを特徴とする請求項16に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項18】
前記状態ベクトル現在値Θest(t)は、前記状態ベクトル直前値Θest(t-1)、前記利得行列現在値L(t)及び前記電圧誤差e(t)を利用し、Θest(t)=Θest(t-1)+L(t)×e(t)によって算出されることを特徴とする請求項15に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項19】
前記Gパラメータ推定値と前記Hパラメータ推定値とを生成する段階は、
前記Gパラメータと係わる第1忘却ファクタλ、及び前記Hパラメータと係わる第2忘却ファクタλを受信する段階をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項20】
前記利得行列現在値は、下記数式によって算出され、
【数1】
前記共分散行列現在値は、下記数式によって算出され、
【数2】
ここで、L(t)は、前記利得行列現在値であり、P(t)は、前記共分散行列現在値であり、P(t-1)は、前記共分散行列直前値であり、I(t)は、前記電流現在値であり、λは、前記第1忘却ファクタであり、λは、前記第2忘却ファクタであることを特徴とする請求項19に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項21】
前記バッテリの電圧及び電流を、事前に設定されたサンプリング周期Tsごとに感知し、前記バッテリのセンシング電圧値及びセンシング電流値を生成する段階と、
前記センシング電圧値及び前記センシング電流値をそれぞれノイズフィルタに入力し、前記バッテリの電圧値及び電流値を周期的に生成する段階と、
適応型フィルタを利用し、前記電圧値及び前記電流値から、前記バッテリの電流変化に対する電圧の敏感度を示すGパラメータを数値化した前記Gパラメータ推定値と、前記バッテリ内の局所平衡電位散布と抵抗分布とによって決定される有効電位を示すHパラメータを数値化したHパラメータ推定値と、を生成する段階と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【請求項22】
前記電流現在値及び前記電圧現在値を受信する段階は、
前記電流現在値として、前記電流値を受信する段階と、
前記電圧現在値として、前記センシング電圧値を受信する段階と、を含むことを特徴とする請求項21に記載のバッテリ充電状態推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用中であるバッテリの充電状態を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリは、他のエネルギー保存装置と比較し、電気装置に容易に適用され、相対的に高いエネルギー、電力密度などの特性により、携帯用電子装置だけではなく、電気的駆動源によって駆動する電気車両(EV:electric vehicle)またはハイブリッド車両(HEV:hybrid electric vehicle)などに広範囲に適用されている。特に、強い出力が必要な場合には、複数のバッテリセルを直列及び並列に連結したバッテリパックが使用されうる。
【0003】
バッテリまたはバッテリパックによって駆動される電気装置を、エネルギー効率的に安全に利用しようとすれば、バッテリ管理が重要であり、そのためには、バッテリ状態の正確な推定と診断とが必須である。現在汎用される推定値としては、充電状態(SOC:state of charge)、健康状態(SOH:state of health)、出力制限推定(PLE:power limit estimation)などがある。
【0004】
従来の充電状態(SOC)は、バッテリ充電量、バッテリ残存容量などによって表現され、バッテリの満充電容量対比の現在容量の百分率として定義される。該充電状態(SOC)を推定する方法として、放出または流入された電荷量を電流センサで測定した後で積分する方法、開放回路電圧(OCV:open-circuit voltage)と充電状態(SOC)との関係を活用する方法、及びバッテリモデルを使用し、充電状態(SOC)を推定する方法などがある。
【0005】
電流センサを活用し、放出または流入された電荷量を測定し、充電状態(SOC)を推定する方法は、電流積分値を満充電容量で除した値を、初期充電状態(SOC)に加えることにより、現在充電状態(SOC)を推定する。該方法は、電流積算法(Ah-counting)またはクーロンカウンティング(coulomb counting)とも呼ばれ、簡便であるという理由で汎用されるが、電流センサの正確度に影響を受ける。
【0006】
開放回路電圧(OCV)を測定し、充電状態(SOC)を推定する方法は、バッテリごとに固有な開放回路電圧(OCV)・充電状態(SOC)関係を利用する。該開放回路電圧(OCV)・充電状態(SOC)関係は、バッテリが劣化されても、ほとんど変わらないと知られているために、信頼性が高い方法である。しかしながら、開放回路電圧(OCV)を測定するためには、電流が0である状態で長期間放置しなければならないので、バッテリを使用する最中には、開放回路電圧(OCV)を測定することができず、充電状態(SOC)を正確に予測し難い。
【0007】
バッテリモデルを使用する場合、電流センサの誤差(ノイズ)による影響を最小化させることができ、バッテリの長期間休息がないにしても、充電状態(SOC)をリアルタイムで推定することができる。該バッテリモデルには、等価回路モデル(ECM:equivalent circuit model)や物理基盤モデル(physics-based model)などがある。該等価回路モデルは、バッテリセル内部において、いかなることが起るかということに係わる識見(insight)を提供することができ、該等価回路モデルで使用されるパラメータは、実際、物理的意味を有さない。該物理基盤モデルは、該等価回路モデルより正確であるが、複雑性と収斂性との問題がある。
【0008】
そのように、従来の充電状態(SOC)推定方法は、バッテリモデルが複雑になるか、あるいはバッテリ使用を中止しなければならないという問題がある。正確な充電状態(SOC)推定は、バッテリの過充電と過放電を防止し、セルバランシングを行うために、必須である。しかしながら、電流積算法の場合、電流測定誤差により、正確度を担保にすることができない。例えば、電流センサが0.1Aの誤差だけ有すると仮定しても、電気車両を8時間使用する場合、0.8Ahの充電状態推定誤差が生じ、一週間に5Ah以上の充電状態推定誤差が生じる。バッテリ容量が100Ahである場合、誤差が5%にも至る。
【0009】
充電状態(SOC)推定において、正確性だけではなく、少ない計算負担と、迅速な計算速度も重要である。バッテリの内部状態を正確に推定して制御することができるとき、価格対比及び重量対比で、バッテリパックの安全性と性能とが向上され、自動車だけではなく、航空のような交通手段、及び多様な分野にも適用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、バッテリの電圧値と電流値とを利用し、バッテリの充電状態(SOC)をリアルタイムで正確に推定する方法を提供することである。本発明は、バッテリの内部状態を示すGパラメータを利用し、バッテリの充電状態(SOC)をリアルタイムで正確に推定する方法を提供する。本発明の充電状態(SOC)推定方法は、バッテリ管理システム(BMS:battery management system)に搭載され、該バッテリ管理システムによっても実行され、実際に使用バッテリの充電状態(SOC)を推定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によるバッテリの充電状態を推定する方法は、充電状態初期値及びカルマン誤差共分散初期値を設定する段階、前記バッテリのGパラメータ推定値、電流現在値、及び電圧現在値を受信する段階、拡張カルマンフィルタに、前記Gパラメータ推定値、前記電流現在値及び前記電圧現在値を入力し、前記バッテリの充電状態現在値とカルマン誤差共分散現在値とを更新する段階、及び前記充電状態現在値を出力する段階を含む。一態様によるバッテリの充電状態を推定する方法は、コンピュータ装置によっても実行される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多様な実施形態によるバッテリ充電状態推定方法は、費用、拡張性及び適応性の側面において、従来の方法に比べ、大きく改善されている。既存のバッテリモデル基盤の充電状態推定方法は、複雑性により、バッテリ管理システム(BMS)に適用し難かったが、本発明の充電状態推定方法は、実際のバッテリ管理システム(BMS)に搭載されうる。
【0013】
それだけでなく、従来の方法は、充電状態の正確度を高めるためには、バッテリの使用を中止しなければならないが、本発明の充電状態推定方法は、実際に使用中であるバッテリの充電状態をリアルタイムで推定することができる。その上、従来の方法は、充電状態推定の正確度が、電流センサ誤差によって制約を受けるが、本発明の充電状態推定方法は、フィルタを使用することにより、電流センサ誤差による影響を最小化させることができる。また、本発明の充電状態推定方法は、バッテリセルやバッテリパックだけではなく、バッテリシステムにも汎用的に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態によるバッテリシステムの概略的な構成図を図示する図である。
図2】一実施形態による充電状態推定方法を遂行するための内部構成図を図示する図である。
図3】一実施形態による、拡張カルマンフィルタが充電状態を推定する動作について説明するためのフローチャートである。
図4】一実施形態による、GH推定器により、Gパラメータ値を算出する動作について説明するためのフローチャートである。
図5】バッテリの充電状態(SOC)に係わる開放回路電圧(OCV)を示すSOC-OCV曲線を図示する。
図6】他の実施形態による充電状態推定方法を遂行するための内部構成図を図示する図である。
図7】他の実施形態による、ノイズフィルタの動作について説明するためのフローチャートである。
図8】本発明によって推定された充電状態値と、実際バッテリの充電状態値とを比較したグラフである。
図9】本発明によって推定されたセル電圧と、実際バッテリのセル電圧とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の利点、特徴、及びそれらを達成する方法は、添付される図面と共に、詳細に説明される実施形態を参照すれば明確になるであろう。しかしながら、本発明は、以下で提示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態にも具現され、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むと理解されなければならない。以下に提示される実施形態は、本発明の開示を完全にものにさせ、本発明が属する技術分野において当業者に、発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。本発明についての説明におき、関連公知技術に係わる具体的な説明が、本発明の要旨を不明確にすると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0016】
本出願で使用される用語は、単に特定の実施形態についての説明に使用されたものであり、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせが存在するということを指定とするものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明にも使用されるが、該構成要素は、前述の用語によって限定されるものではない。前述の用語は、1つの構成要素を、他の構成要素から区別する目的のみに使用される。
【0017】
以下、本発明による実施形態について、添付された図面を参照して詳細に説明するが、添付図面を参照しての説明において、同一であるか、あるいは対応する構成要素は、同一図面番号を付し、それらに係わる重複説明は、省略する。
【0018】
図1は、一実施形態によるバッテリシステムの概略的な構成図を図示する。
【0019】
図1を参照すれば、バッテリシステム100は、バッテリ110、電圧測定部120、電流測定部130、マイクロプロセッサ140及びメモリ150を含むものでもある。
【0020】
バッテリ110は、電力を保存する部分であり、第1端子101と第2端子102との間に、互いに電気的に連結される複数のバッテリセル111を含む。バッテリセル111は、直列に連結されるか、並列に連結されるか、あるいは直列と並列との組み合わせに連結されうる。バッテリセル111それぞれは、同一サイズの容量を有し、同一サイズの電流を放電及び充電することができる。しかしながら、実際、バッテリセル111の内部状態は、それぞれ異なりうる。例えば、バッテリセル111それぞれは、互いに異なる内部抵抗と起電力とを有しうる。バッテリセル111それぞれは、互いに異なるGパラメータ値とHパラメータ値とを有しうる。バッテリセル111を含むバッテリ110も、やはりバッテリ110のGパラメータ値とHパラメータ値とを有しうる。
【0021】
本発明においては、バッテリ110の充電状態を推定する方法を基準に説明するが、本発明の充電状態推定方法は、バッテリセル111それぞれの充電状態を推定するときにも適用されうる。
【0022】
バッテリセル111は、充電可能な二次電池を含むものでもある。例えば、バッテリセル111は、ニッケル・カドミウム電池(nickel-cadmium battery)、鉛蓄電池、ニッケル・水素電池(NiMH:nickel metal hydride battery)、リチウム・イオン電池(lithium ion battery)、リチウムポリマー電池(lithium polymer battery)などを含むものでもある。バッテリ110を構成するバッテリセル111の個数は、バッテリ110に要求される容量、出力電圧及び出力電流によっても決定される。
【0023】
図1には、1つのバッテリ110が図示されるが、複数のバッテリ110が、並列及び/または直列にも接続され、第1端子101及び第2端子102を介し、負荷及び/または充電装置にも連結される。図1に図示されていないが、バッテリ110は、負荷及び/または充電装置に連結されて使用中でもある。また、本発明の充電状態推定方法は、並列及び/または直列に接続される複数のバッテリ110全体の充電状態を推定するときにも適用される。
【0024】
バッテリシステム100は、少なくとも1つのバッテリセル111を含むバッテリパックまたはバッテリモジュールでもある。バッテリシステム100は、少なくとも1つのバッテリパックまたはバッテリモジュールを含むシステムでもある。
【0025】
電圧測定部120は、バッテリ110の両電極の電圧を、事前に設定されたサンプリング周期Tsごとに測定し、バッテリ110の電圧値を周期的に生成することができる。他の例によれば、電圧測定部120は、バッテリセル111それぞれの電圧を、サンプリング周期Tsごとに測定し、バッテリセル111それぞれの電圧値を、周期的に生成することができる。バッテリセル111が並列に連結される場合、電圧測定部120は、1つのバッテリセル111の電圧のみを測定し、並列に連結されるバッテリセル111がいずれも同一電圧値を有すると決定することもできる。
【0026】
サンプリング周期Tsは、単に例示的に1秒でもある。しかしながら、サンプリング周期Tsは、他の時間、例えば、0.1秒、0.5秒、2秒、5秒または10秒などにも設定される。サンプリング周期Tsは、バッテリシステム100に連結される電気システムにより、適切に設定されうる。現在測定された電圧値は、電圧現在値と称し、V(t)と表示する。サンプリング周期Ts前に測定された電圧値は、電圧直前値と称し、V(t-1)と表示する。
【0027】
電流測定部130は、バッテリ110を介して流れる電流を、サンプリング周期Tsごとに測定し、バッテリ110の電流値を周期的に生成することができる。他の例によれば、電流測定部130は、バッテリセル111それぞれのサンプリング周期Tsごとに電流を測定し、バッテリセル111それぞれの電流値を、周期的に生成することができる。バッテリをセル111が直列に連結される場合、電流測定部130は、1つのバッテリセル111の電流のみを測定し、直列に連結されるバッテリセル111が、いずれも同一値を有すると決定することもできる。
【0028】
電流測定部130が測定した電流値は、充電電流であるとき、正(+)と表示され、放電電流であるとき、負(-)と表示される。現在測定された電流値を、電流現在値と称し、I(t)と表示し、サンプリング周期Ts前に測定された電流値を、電流直前値と称し、I(t-1)と表示する。電圧測定部120と電流測定部130は、互いに同期化され、同一タイミングでもって、バッテリ110の電圧と電流とをそれぞれ測定することができる。
【0029】
マイクロプロセッサ140は、バッテリ110の充電状態を推定することができる。マイクロプロセッサ140は、充電状態初期値SOCest(0)及びカルマン誤差共分散初期値P(0)を設定し、バッテリ110のGパラメータ推定値Gest(t)、電流現在値I(t)及び電圧現在値V(t)を受信し、拡張カルマンフィルタに、Gパラメータ推定値Gest(t)、電流現在値I(t)及び電圧現在値V(t)を入力し、バッテリ110の充電状態現在値SOCest(t)とカルマン誤差共分散現在値P(t)とを更新し、充電状態現在値SOCest(t)を出力するようにも構成される。
【0030】
マイクロプロセッサ140は、電圧測定部120が提供するバッテリ110の電圧値、及び電流測定部130が提供するバッテリ110の電流値から、バッテリ110の現在状態を示すGパラメータとHパラメータとのそれぞれを数値化したGパラメータ推定値Gest(t)とHパラメータ推定値Hest(t)とをリアルタイムで更新することができる。該Gパラメータは、バッテリ110の電流変化に対する電圧の敏感度を示すパラメータであり、該Hパラメータは、バッテリ110内の局所平衡電位散布と抵抗分布とによって決定される有効電位を示すパラメータである。
【0031】
マイクロプロセッサ140は、適応型フィルタを利用し、バッテリ110の電圧値と電流値とから、バッテリ110のGパラメータ推定値Gest(t)とHパラメータ推定値Hest(t)とをリアルタイムで生成することができる。該適応型フィルタは、再帰的最小自乗法(RLS:recursive least squares)を利用したフィルタ、または加重最小自乗法(WLS:weighted least squares)を利用したフィルタでもある。本明細書においては、マイクロプロセッサ140が、再帰的最小自乗法(RLS)フィルタを利用し、バッテリ110の電圧値と電流値とから、バッテリ110のGパラメータ推定値Gest(t)とHパラメータ推定値Hest(t)とをリアルタイムで生成する実施形態について詳細に説明するが、本発明は、それに限定されるものではない。
【0032】
マイクロプロセッサ140は、適応型フィルタを利用して生成されるバッテリ110のGパラメータ推定値Gest(t)、電流現在値I(t)及び電圧現在値V(t)を、拡張カルマンフィルタに入力し、バッテリ110の充電状態現在値SOCest(t)を、リアルタイムで生成することができる。マイクロプロセッサ140は、メモリ150に保存される係数データを利用することができる。該係数データは、バッテリ110について事前に決定された開放回路電圧(OCV)・充電状態(SOC)関係からも生成される。
【0033】
マイクロプロセッサ140は、バッテリ110の充電状態現在値SOCest(t)をリアルタイムで生成するのにおいて、四則演算のような簡単な演算のみを使用するために、バッテリシステム100、またはバッテリパック内に搭載されるバッテリ管理システム(BMS)にも含まれる。他の例によれば、本実施形態による充電状態推定方法は、電気自動車のバッテリ管理システム(BMS)内のマイクロコントローラまたはECU(electronic control unit)によっても遂行される。さらに他の例によれば、本実施形態による充電状態推定方法は、エネルギー保存システムの統合コントローラによっても遂行される。さらに他の例によれば、本実施形態による充電状態推定方法は、バッテリシステムまたはエネルギー保存システムと通信によって連結されるサーバのプロセッサによっても遂行される。
【0034】
メモリ150は、マイクロプロセッサ140が、本実施形態による充電状態推定方法を遂行するために必要な命令語及びデータを保存することができる。本実施形態によれば、サンプリング周期Tsごとに生成されるバッテリ110の電圧値と電流値とを基に、バッテリ110のGパラメータ推定値Gest(t)が生成され、Gパラメータ推定値Gest(t)、電流現在値I(t)及び電圧現在値V(t)を基に、充電状態現在値SOCest(t)が生成されるので、メモリ150には、バッテリ110の電圧現在値、電流現在値及び電流直前値などが保存され、それ以外に、他の電圧データ及び電流データがメモリ150に保存されないのである。メモリ150には、多量の命令語及びデータが保存される必要がないために、小サイズのメモリによっても具現される。例えば、メモリ150は、マイクロプロセッサ140内のメモリによっても具現される。
【0035】
本発明は、バッテリの現在状態を示すパラメータであるGパラメータとHパラメータとを利用し、バッテリの充電状態を推定する方法を提示する。本発明による充電状態推定方法は、バッテリ管理システム(BMS)においても実行されるほどに、比較的簡単に具現され、付加的な運転条件なしにも、高い正確度を有しうる。
【0036】
Gパラメータは、使用中であるバッテリセルに印加される電流変化に対するバッテリセルの端子電圧の敏感度を示す状態量であり、抵抗の単位を有する。Hパラメータは、使用中であるバッテリセル内の局所平衡電位散布と抵抗分布とによって決定される有効電位である。バッテリセルのGパラメータとHパラメータは、理論モデルを利用し、バッテリ素材物性と設計変数との明示的な相関式によって定量化することができる。以下において、バッテリセルのGパラメータとHパラメータとについて説明する。
【0037】
バッテリセルにおいて、電圧Vと電流Iとが、V=f(I;x,p)のような関係を有すると仮定することができる。ここで、xは、バッテリセルの内部状態を示す物理量であり、pは、パラメータである。
【0038】
関数fは、非線形陰関数(nonlinear implicit function)であり、もし関数fを早く変化する量gと、徐々に変化する量hとに分離することができるならば、電圧Vと電流Iは、V=g(I;x,p)+h(I;x,p)のように表現されうる。
【0039】
もし電流Iに対し、徐々に変わるG(I;x,p)=∂g/∂Iという関数が存在すると仮定すれば、電圧Vと電流Iは、V=G(I;x,p)×I+H(I;x,p)のようにも表現される。ここで、∂G/∂Iと∂H/∂Iは、非常に小さい値を有する。言い換えれば、前述の仮定が満足されれば、GとHとが電流Iに対して遅く変わる関数であるので、電圧Vと電流Iとの非線形的関係を示す関数fは、前述のように、準線形関係にも表現される。
【0040】
ここで、Gは、Gパラメータと称され、Hは、Hパラメータと称される。電流Iが充放電電流であり、Ueqがバッテリセルの平衡電位であるとすれば、放電過電圧は、GパラメータGとHパラメータHとを利用し、Ueq-V=-G×I+(Ueq-H)のようにも表現される。
【0041】
ここで、-G×Iは、バッテリが端子を介して電流を流すために生じる過電圧であり、反応動力学的分極量と、電子とイオンとの抵抗分極量とを含む。(Ueq-H)は、バッテリ内の局所的な熱力学的平衡状態が、全体システムの平衡状態から外れていることによって生じる過電圧である。すなわち、(Ueq-H)は、バッテリ内部の熱力学的不均一によって生じる非効率を示し、バッテリの内部システムが、熱力学的な平衡状態に至ることになれば、HパラメータHは、平衡電位Ueqと同じようになる。
【0042】
本発明の実施形態による充電状態推定方法は、バッテリの電圧値と電流値とから、直接にバッテリのGパラメータGを抽出し、GパラメータGを利用し、バッテリの充電状態を推定するものである。
【0043】
図2は、一実施形態による充電状態推定方法を遂行するための内部構成図を図示する。
【0044】
図1と共に図2を参照すれば、マイクロプロセッサ140は、GH推定器142及び拡張カルマンフィルタ144を含むものでもある。メモリ150には、バッテリ110について事前に決定された開放回路電圧(OCV)・充電状態(SOC)関係から生成されたルックアップテーブル152が保存されうる。ルックアップテーブル152は、充電状態値に対応する係数データを保存することができる。開放回路電圧(OCV)・充電状態(SOC)関係は、非線形的であるので、該開放回路電圧(OCV)・充電状態(SOC)関係に対応する係数データが、ルックアップテーブル152に保存され、拡張カルマンフィルタ144は、ルックアップテーブル152に保存された係数データを、バッテリ110の充電状態を推定するのに使用することができる。該係数データは、第1係数データを含むか、あるいは第2係数データと第3係数データとを含むものでもある。
【0045】
図1の電圧測定部120は、バッテリ110の電圧値Vを生成し、GH推定器142と拡張カルマンフィルタ144とに提供する。電圧値Vは、電圧現在値V(t)と電圧直前値V(t-1)とを含む。サンプリング周期Tsが経過しながら、電圧現在値V(t)は、電圧直前値V(t-1)になり、新たな電圧値は、電圧現在値V(t)になる。
【0046】
図1の電流測定部130は、バッテリ110の電流値Iを生成し、GH推定器142と拡張カルマンフィルタ144とに提供する。電流値Iは、電流現在値I(t)と電流直前値I(t-1)とを含む。サンプリング周期Tsが経過しながら、電流現在値I(t)は、電流直前値I(t-1)になり、新たな電流値は、電流現在値I(t)になる。
【0047】
GH推定器142は、適応型フィルタを利用し、電圧値Vと電流値Iとに基づき、バッテリ110のGパラメータ推定値Gestを生成する。該適応型フィルタは、例えば、再帰的最小自乗法(RLS)を利用したフィルタでもある。バッテリ110のGパラメータ推定値Gestは、バッテリ110の電流変化に対する電圧の敏感度を示すGパラメータを数値化した値である。一例によれば、GH推定器142は、該適応型フィルタを利用し、電圧値Vと電流値Iとに基づき、バッテリ110のHパラメータ推定値Hestを生成する。バッテリ110のHパラメータ推定値Hestは、バッテリ110内の局所平衡電位散布と抵抗分布とによって決定される有効電位を示すHパラメータを数値化した値である。GH推定器142の動作については、図4を参照し、以下においてさらに詳細に説明する。
【0048】
拡張カルマンフィルタ144は、GH推定器142で生成されたGパラメータ推定値Gest、電圧値V及び電流値Iを受信し、Gパラメータ推定値Gest、電圧値V及び電流値Iに基づき、充電状態値SOCestを生成することができる。拡張カルマンフィルタ144は、ルックアップテーブル152に保存された係数データを利用することができる。拡張カルマンフィルタ144は、Gパラメータ推定値Gest、電圧値V及び電流値Iが新たに入力されるたびに、充電状態値SOCestをリアルタイムで出力するために、充電状態値SOCestとカルマン誤差共分散値とを更新することができる。
【0049】
一実施形態によれば、電流現在値I(t)に基づき、充電状態一次推定値及びカルマン誤差共分散一次推定値が算出されうる。ルックアップテーブル152に保存された係数データ、電流現在値I(t)及びGパラメータ推定値Gestに基づき、電圧推定値及びカルマン利得現在値が算出されうる。該充電状態一次推定値、該カルマン利得現在値、電圧現在値V(t)及び該電圧推定値に基づき、充電状態現在値が更新されうる。また、該カルマン誤差共分散一次推定値、該カルマン利得現在値、該係数データ及びGパラメータ推定値Gestに基づき、該カルマン誤差共分散現在値が更新されうる。
【0050】
拡張カルマンフィルタ144の動作については、図3を参照し、以下においてさらに詳細に説明する。
【0051】
図3は、一実施形態による、拡張カルマンフィルタが充電状態を推定する動作について説明するためのフローチャートを図示する。
【0052】
図1ないし図3を参照すれば、拡張カルマンフィルタ144の動作は、マイクロプロセッサ140によって遂行される。
【0053】
マイクロプロセッサ140は、充電状態初期値SOCest(0)及びカルマン誤差共分散初期値P(0)を受信し、充電状態初期値SOCest(0)及びカルマン誤差共分散初期値P(0)を設定することができる(S10)。充電状態初期値SOCest(0)及びカルマン誤差共分散初期値P(0)は、それぞれ充電状態直前値SOCest(t-1)及びカルマン誤差共分散直前値P(t-1)として使用される。ユーザは、バッテリ110の充電状態を推測し、充電状態初期値SOCest(0)を入力するか、あるいは任意の値を充電状態初期値SOCest(0)で入力することができる。該ユーザは、カルマン誤差共分散初期値P(0)として、任意の値を入力することができる。
【0054】
マイクロプロセッサ140の拡張カルマンフィルタ144は、サンプリング周期Tsごとに、Gパラメータ推定値Gest(t)、電流現在値I(t)及び電圧現在値V(t)を受信することができる(S20)。マイクロプロセッサ140は、GH推定器142で生成されるGパラメータ推定値Gest(t)を、拡張カルマンフィルタ144に入力することができる。マイクロプロセッサ140は、電圧測定部120から、電圧現在値V(t)を受信し、電流測定部130から、電流現在値I(t)を受信することができる。
【0055】
マイクロプロセッサ140は、充電状態直前値SOCest(t-1)、電流現在値I(t)、サンプリング周期Ts及びバッテリ110の最大容量Qmaxに基づき、充電状態一次推定値SOCest-(t)を算出することができる(S30)。マイクロプロセッサ140は、サンプリング周期Tsに係わる情報と、バッテリ110の最大容量Qmaxに係わる情報を保存することができる。充電状態直前値SOCest(t-1)は、サンプリング周期Ts以前の充電状態現在値SOCest(t)に対応する。充電状態一次推定値SOCest-(t)は、SOCest-(t)=SOCest(t-1)+I(t)×Ts/Qmaxによっても算出される。
【0056】
マイクロプロセッサ140は、カルマン誤差共分散直前値P(t-1)、サンプリング周期Ts、最大容量Qmax及びプロセッサノイズσに基づき、カルマン誤差共分散一次推定値P-(t)を算出することができる(S40)。プロセッサノイズσは、システムの仕様により、ユーザによって設定され、例えば、10-6と10-1との間の値にも設定される。プロセッサノイズσは、例えば、0.0002にも設定される。カルマン誤差共分散直前値P(t-1)は、サンプリング周期Ts以前のカルマン誤差共分散現在値P(t)に対応する。カルマン誤差共分散一次推定値P-(t)は、P-(t)=P(t-1)+(Ts/Qmax)2×σによっても算出される。
【0057】
マイクロプロセッサ140は、係数データ、電流現在値I(t)及びGパラメータ推定値Gest(t)に基づき、電圧推定値Vest(t)を算出することができる(S50)。
【0058】
一実施形態によれば、マイクロプロセッサ140は、ルックアップテーブル152に保存された係数データから、段階(S30)で算出された充電状態一次推定値SOCest-(t)に対応する第1係数値C(t)を抽出することができる。
【0059】
該係数データは、バッテリ110について事前に決定された開放回路電圧(OCV)・充電状態(SOC)関係からも生成される。例えば、図5に、充電状態(SOC)に係わる開放回路電圧(OCV)を示す曲線が図示される。図5に図示されているように、充電状態(SOC)に係わる開放回路電圧(OCV)は、非線形的である。ルックアップテーブル152には、図5に図示された充電状態(SOC)に係わる開放回路電圧(OCV)の曲線に対応し、充電状態(SOC)に係わる開放回路電圧(OCV)のデータが保存される。ルックアップテーブル152は、メモリ150に保存されなければならないので、一部の充電状態データ値に対応する開放回路電圧データ値を保存する。例えば、一部の充電状態データ値は、例えば、0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、0.8、0.9、0.95、0.99でもあり、ルックアップテーブル152には、0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、0.8、0.9、0.95及び0.99の充電状態データ値にそれぞれ対応する開放回路電圧データ値が、該係数データとしても保存される。他の例によれば、一部の充電状態データ値は、例えば、0.05または0.1の倍数でもある。
【0060】
第1係数値C(t)は、充電状態一次推定値SOCest-(t)に隣接した充電状態データ値Nε[SOCest-(t)]及び充電状態データ値Nε[SOCest-(t)]に対応する開放回路電圧データ値OCV(Nε[SOCest-(t)]に基づいても決定される。例えば、第1係数値C(t)は、C(t)=OCV(Nε[SOCest-(t)]/Nε[SOCest-(t)]によっても決定される。例えば、充電状態一次推定値SOCest-(t)が0.11である場合、0.11に隣接した充電状態データ値Nε[SOCest-(t)]は、0.1でもある。0.1の充電状態データ値に対応する開放回路電圧データ値が3であるならば、第1係数値C(t)は、3/0.1である30でもあり、そのような値は、係数データとして、メモリ150にも保存される。充電状態データ値Nε[SOCest-(t)]は、係数データにおいて、充電状態一次推定値SOCest-(t)に最も隣接した充電状態データ値でもある。
【0061】
マイクロプロセッサ140は、第1係数値C(t)、充電状態一次推定値SOCest-(t)、Gパラメータ推定値Gest(t)及び電流現在値I(t)に基づき、電圧推定値Vest(t)を算出することができる。電圧推定値Vest(t)は、Vest(t)=C(t)×SOCest-(t)+Gest(t)×I(t)によっても算出される。C(t)×SOCest-(t)は、充電状態一次推定値SOCest-(t)に対応する開放回路電圧値に該当し、Gest(t)×I(t)は、バッテリ110の抵抗成分に起因した電圧降下に該当する。
【0062】
他の実施形態によれば、マイクロプロセッサ140は、ルックアップテーブル152に保存された係数データから、段階(S30)で算出された充電状態一次推定値SOCest-(t)に対応する第2係数値C(t)及び第3係数値E(t)を抽出することができる。ルックアップテーブル152には、充電状態一次推定値SOCest-(t)による第2係数値C(t)及び第3係数値E(t)を含む係数データが保存されうる。
【0063】
係数データは、バッテリ110について事前に決定された開放回路電圧(OCV)・充電状態(SOC)関係からも決定される。図5の充電状態(SOC)に係わる開放回路電圧(OCV)を示すSOC-OCV曲線を参照すれば、第2係数値C(t)と第3係数値E(t)は、図5のSOC-OCV曲線において、充電状態一次推定値SOCest-(t)に隣接した充電状態データ値Nε[SOCest-(t)]に該当する点に接する線形関数の勾配及びOCV切片として、それぞれ決定されうる。例えば、充電状態データ値Nε[SOCest-(t)]が、図5のSOCである場合、第2係数値C(t)と第3係数値E(t)は、SOC-OCV曲線において、SOCに該当する点に接する線形関数(TLa)の勾配C及びOCV切片Eとして、それぞれ決定されうる。他の例として、充電状態データ値Nε[SOCest-(t)]が、図5のSOCである場合、第2係数値C(t)と第3係数値E(t)は、SOC-OCV曲線において、SOCに該当する点に接する線形関数TLの勾配C及びOCV切片Eとして、それぞれ決定されうる。
【0064】
マイクロプロセッサ140は、第2係数値C(t)、充電状態一次推定値SOCest-(t)、Gパラメータ推定値Gest(t)、電流現在値I(t)及び第3係数値E(t)に基づき、電圧推定値Vest(t)を算出することができる。電圧推定値Vest(t)は、Vest(t)=C(t)×SOCest-(t)+Gest(t)×I(t)+E(t)によっても算出される。C(t)×SOCest-(t)+E(t)は、充電状態一次推定値SOCest-(t)に対応する開放回路電圧値に該当し、Gest(t)×I(t)は、バッテリ110の抵抗成分に起因した電圧降下に該当する。
【0065】
マイクロプロセッサ140は、係数データ、カルマン誤差共分散一次推定値P-(t)及びGパラメータ推定値Gest(t)に基づき、カルマン利得現在値L(t)を算出することができる(S60)。
【0066】
マイクロプロセッサ140は、ルックアップテーブル152に保存された係数データから、充電状態一次推定値SOCest-(t)に対応する第1係数値C(t)を抽出することができる。第1係数値C(t)は、一実施形態により、段階(S50)で抽出された第1係数値C(t)と同一であるか、あるいは他の実施形態により、段階(S50)で抽出された第2係数値C(t)と同一でもある。
【0067】
マイクロプロセッサ140は、第1係数値C(t)、カルマン誤差共分散一次推定値P-(t)、Gパラメータ推定値Gest(t)及び測定ノイズσに基づき、カルマン利得現在値L(t)を算出することができる。測定ノイズσは、システムの仕様(例えば、電圧測定部120及び電流測定部130)により、ユーザによって設定され、例えば、10-1と10-3との間の値にも設定される。測定ノイズσは、例えば、0.01にも設定される。カルマン利得現在値L(t)は、L(t)=C(t)×P-(t)/[C(t)2×P-(t)+Gest(t)2×σ]によっても算出される。
【0068】
マイクロプロセッサ140は、段階(S30)で算出された充電状態一次推定値SOCest-(t)、段階(S60)で算出されたカルマン利得現在値L(t)、段階(S20)で受信した電圧現在値V(t)、及び段階(S50)で算出された電圧推定値Vest(t)に基づき、充電状態現在値SOCest(t)を更新して出力することができる(S70)。充電状態現在値SOCest(t)は、SOCest(t)=SOCest-(t)+L(t)×(V(t)-Vest(t)によっても算出される。そのように算出された充電状態現在値SOCest(t)は、バッテリ110の充電状態推定値としても出力される。次のサンプリング周期Ts後にも、充電状態現在値SOCest(t)を更新し、リアルタイムで出力しなければならないので、段階(S80)において、カルマン誤差共分散現在値P(t)が更新される。
【0069】
マイクロプロセッサ140は、カルマン誤差共分散一次推定値P-(t)、カルマン利得現在値L(t)、係数データ及びGパラメータ推定値Gest(t)に基づき、カルマン誤差共分散現在値P(t)を更新することができる(S80)。
【0070】
マイクロプロセッサ140は、ルックアップテーブル152に保存された係数データから、充電状態一次推定値SOCest-(t)に対応する第1係数値C(t)を抽出することができる。第1係数値C(t)は、一実施形態により、段階(S50)で抽出された第1係数値C(t)と同一であるか、あるいは他の実施形態により、段階(S50)で抽出された第2係数値C(t)と同一でもある。
【0071】
マイクロプロセッサ140は、段階(S40)で算出されたカルマン誤差共分散一次推定値P-(t)、段階(S60)で算出されたカルマン利得現在値L(t)、第1係数値C(t)、段階(S20)で受信されたGパラメータ推定値Gest(t)、及び測定ノイズσに基づき、カルマン誤差共分散現在値P(t)を算出することができる。カルマン誤差共分散現在値P(t)は、P(t)=P-(t)-L(t)2×[C(t)2×P-(t)+Gest(t)2×σ]によっても算出される。
【0072】
マイクロプロセッサ140は、サンプリング周期Tsが過ぎれば(S90)、段階(S20)に進み、新たなGパラメータ推定値Gest(t)、新たな電流現在値I(t)、及び新たな電圧現在値V(t)を受信することができる(S20)。以前のGパラメータ推定値Gest(t)は、Gパラメータ直前値Gest(t-1)になり、以前の電流現在値I(t)は、電流直前値I(t-1)になり、以前の電圧現在値V(t)は、電圧直前値V(t-1)になる。新たに受信されたGパラメータ推定値Gest(t)、電流現在値I(t)及び電圧現在値V(t)に基づき、段階(S20)ないし段階(S80)を反復ことにより、新たな充電状態現在値SOCest(t)が算出され、リアルタイムで出力される。
【0073】
図4は、一実施形態により、GH推定器により、Gパラメータ値を算出する動作について説明するためのフローチャートを図示する。
【0074】
GH推定器142の動作は、マイクロプロセッサ140によって遂行される。マイクロプロセッサ140は、適応型フィルタを利用し、バッテリ110のGパラメータ値とHパラメータ値とを推定することができる。
【0075】
図1図2及び図4を参照すれば、マイクロプロセッサ140が、再帰的最小自乗法(RLS)フィルタを利用する場合、マイクロプロセッサ140は、バッテリ110の状態ベクトル初期値Θest(0)=[Gest(0);Hest(0)]と共分散行列初期値P(0)=[P(0);P(0)]を設定することができる(S110)。状態ベクトル初期値Θest(0)及び共分散行列初期値P(0)は、それぞれ状態ベクトル直前値Θest(t-1)及び共分散行列直前値P(t-1)として使用される。状態ベクトル現在値Θest(t)と共分散行列現在値P(t)は、後で収斂するものであるので、ユーザは、任意の値を、状態ベクトル初期値Θest(0)及び共分散行列初期値P(0)として入力することができる。例えば、状態ベクトル初期値Θest(0)は、Θest(0)=[Gest(0);Hest(0)]=[1;1]に設定され、共分散行列初期値P(0)は、P(0)=[P(0);P(0)]=[1;1]にも設定される。本例において、状態ベクトル初期値Θest(0)と共分散行列初期値P(0)とがいずれも1に初期化されたが、それは、例示的なものであり、他の値にも初期化される。
【0076】
マイクロプロセッサ140は、バッテリ110の電圧現在値V(t)と電流現在値I(t)とを受信することができる(S120)。電圧測定部120と電流測定部130は、バッテリ110の電圧と電流とを、サンプリング周期Tsごとにそれぞれ感知し、電圧値と電流値とをサンプリング周期Tsごとに、マイクロプロセッサ140に提供することができる。マイクロプロセッサ140は、現在または最近受信される電圧値を、電圧現在値V(t)に決定し、現在または最近受信される電流値を、電流現在値I(t)に決定することができる。サンプリング周期Ts前に受信されたバッテリ110の電圧現在値V(t)と電流現在値I(t)は、それぞれ、電圧直前値V(t-1)と電流直前値I(t-1)とになる。
【0077】
マイクロプロセッサ140は、サンプリング周期Tsごとに受信される電圧現在値V(t)と電流現在値I(t)とに基づき、状態ベクトル現在値Θest(t)=[Gest(t);Hest(t)]と共分散行列現在値P(t)=[P(t);P(t)]とを更新することができる。バッテリ110の状態ベクトル現在値Θest(t)は、バッテリ110のGパラメータ推定値Gest(t)とHパラメータ推定値Hest(t)とからなり、Θest(t)=[Gest(t);Hest(t)]のように定義される。共分散行列現在値P(t)は、共分散行列第1値P(t)と共分散行列第2値P(t)とからなり、P(t)=[P(t);P(t)のように定義される。
【0078】
バッテリ110の電圧現在値V(t)と電流現在値I(t)とがサンプリング周期Tsごとに受信され、状態ベクトル現在値Θest(t)及び共分散行列現在値P(t)も、再帰的方法により、サンプリング周期Tsごとに更新される。マイクロプロセッサ140は、再帰的最小自乗法(RLS)を利用し、サンプリング周期Tsごとに受信される電圧現在値V(t)と電流現在値I(t)とに基づき、状態ベクトル現在値Θest(t)をサンプリング周期Tsごとに更新することができる。状態ベクトル現在値Θest(t)が更新されれば、Gパラメータ推定値Gest(t)及びHパラメータ推定値Hest(t)も決定される。
【0079】
マイクロプロセッサ140は、第1忘却ファクタ(forgetting factor)λ及び第2忘却ファクタ(forgetting factor)λ、電流現在値I(t)、並びに共分散行列直前値P(t-1)に基づき、利得行列現在値L(t)を算出する(S130)。
【0080】
利得行列現在値L(t)は、状態ベクトル現在値Θest(t)と共分散行列現在値P(t)とを算出するときに利用される。利得行列L(t)は、利得行列第1値L(t)と利得行列第2値L(t)とからなり、以下のようにも算出される。
【0081】
【数1】
【0082】
ここで、λは、第1忘却ファクタであり、Gパラメータと係わる。λは、第2忘却ファクタであり、Hパラメータと係わる。第1忘却ファクタλと第2忘却ファクタλは、それぞれGパラメータ推定値Gest(t)とHパラメータ推定値Hest(t)とを算出するにおいて、過去の電圧値及び電流値が、現在のGパラメータ推定値Gest(t)と、現在のHパラメータ推定値Hest(t)とに及ぼす影響を表示した値である。第1忘却ファクタλと第2忘却ファクタλは、1に近いほど、長時間の間、Gパラメータ推定値Gest(t)とHパラメータ推定値Hest(t)とに影響を及ぼし、0に近いほど、短時間の間だけ影響を及ぼす。
【0083】
一例によれば、第1忘却ファクタλと第2忘却ファクタλは、0.9以上1以下でもある。他の例によれば、第1忘却ファクタλは、第2忘却ファクタλより大きいか、あるいはそれと同じ値にも設定される。例えば、第1忘却ファクタλは、0.99999に設定され、第2忘却ファクタλは、0.95にも設定される。そのような設定値は、バッテリ100の特性によっても異なる。
【0084】
本発明の発明者らは、特定バッテリセルについて行った実験において、第1忘却ファクタλと第2忘却ファクタλとが、それぞれ0.99999と0.95とであるとき、高信頼度の結果が導き出されたことを見出した。しかしながら、前述の数値は、例示的なものであり、バッテリセル111の特性により、異なる値にも設定される。例えば、第1忘却ファクタλは、0.9999に設定され、第2忘却ファクタλは、0.98に設定されうる。
【0085】
他の例において、第1忘却ファクタλと第2忘却ファクタλは、いずれも1にも設定される。その場合、第1忘却ファクタλと第2忘却ファクタλとが適用されないとも見ることができる。
【0086】
マイクロプロセッサ140は、第1忘却ファクタλ及び第2忘却ファクタλ、電流現在値I(t)、共分散行列直前値P(t-1)、並びに利得行列現在値L(t)に基づき、共分散行列現在値P(t)を算出する(S140)。
【0087】
共分散行列現在値P(t)は、サンプリング周期Ts後、利得行列現在値L(t)を算出するとき、共分散行列直前値P(t-1)として利用される。共分散行列現在値P(t)は、以下のようにも算出される。
【0088】
【数2】
【0089】
マイクロプロセッサ140は、状態ベクトル直前値Θest(t-1)、利得行列現在値L(t)、電圧現在値V(t)及び電流現在値I(t)に基づき、状態ベクトル現在値Θest(t)を算出する(S150)。
【0090】
マイクロプロセッサ140は、電流現在値I(t)と状態ベクトル直前値Θest(t-1)=[Gest(t-1);Hest(t-1)]とに基づき、バッテリ110の電圧推定値Vest(t)を算出することができる。例えば、電圧推定値Vest(t)は、電流現在値I(t)、Gパラメータ直前値Gest(t-1)及びHパラメータ直前値Hest(t-1)に基づき、Vest(t)=Gest(t-1)×I(t)+Hest(t-1)のようにも算出される。
【0091】
マイクロプロセッサ140は、電圧現在値V(t)と電圧推定値Vest(t)とに基づき、e(t)=V(t)-Vest(t)のように、電圧誤差e(t)を算出することができる。
【0092】
マイクロプロセッサ140は、状態ベクトル直前値Θest(t-1)、利得行列現在値L(t)及び電圧誤差e(t)に基づき、状態ベクトル現在値Θest(t)を算出することができる。例えば、状態ベクトル現在値Θest(t)は、Θest(t)=Θest(t-1)+L(t)×e(t)のようにも算出される。状態ベクトル現在値Θest(t)が算出されることにより、Gパラメータ推定値Gest(t)とHパラメータ推定値Hest(t)とが決定される。
【0093】
マイクロプロセッサ140は、段階(S150)で決定されたGパラメータ推定値Gest(t)及び電流現在値I(t)を、拡張カルマンフィルタ144に提供することができる(S160)。
【0094】
マイクロプロセッサ140は、サンプリング周期Tsごとに、段階(S120)ないし段階(S150)を反復して遂行することができる(S170)。
【0095】
状態ベクトル現在値Θest(t)を再帰的に表現する数式Θest(t)=Θest(t-1)+L(t)×e(t)は、以下のようにも導き出される。
【0096】
まず、第1忘却ファクタλと第2忘却ファクタλとが適用された損失関数(loss-function)εは、以下のように定義される。
【0097】
【数3】
【0098】
ここで、V(i)は、i番目電圧値であり、I(i)は、i番目電流値である。V(t)とI(t)は、それぞれ電圧現在値と電流現在値とであり、V(t-1)とI(t-1)は、それぞれ電圧直前値と電流直前値とである。
【0099】
G(i)とH(i)は、それぞれi番目Gパラメータ実際値と、i番目Hパラメータ実際値とであり、Gest(t)とHest(t)は、それぞれ現在Gパラメータ推定値と現在Hパラメータ推定値とである。
【0100】
損失関数εを、Gest(t)とHest(t)とに対してそれぞれ微分した結果が0になるとき、Gest(t)とHest(t)とに対して損失関数εが最小になる。
【0101】
損失関数εを、Gest(t)に対して微分した結果が0になるGest(t)を求めれば、以下の通りである。
【0102】
【数4】
【0103】
前述の数式を整理すれば、Gest(t)は、以下の通りである。
【0104】
【数5】
【0105】
損失関数εを、Hest(t)に対して微分した結果が0になるHest(t)を求めば、以下の通りである。
【0106】
【数6】
【0107】
前述の数式を整理すれば、Hest(t)は、以下の通りである。
【0108】
【数7】
【0109】
リアルタイム推定のために、状態ベクトル現在値Θest(t)を利用し、前述のところで求められたGest(t)とHest(t)とを再帰的な形態で整理すれば、以下の通りである。
【0110】
Θest(t)=[Gest(t);Hest(t)]=Θest(t-1)+L(t)×[V(t)-Gest(t-1)×I(t)-Hest(t-1)]
電圧推定値Vest(t)は、Vest(t)=Gest(t-1)×I(t)+Hest(t-1)のように算出され、電圧誤差e(t)は、e(t)=V(t)-Vest(t)のように定義されるので、状態ベクトル現在値Θest(t)は、前述のように、下記のようにも表現される。
【0111】
Θest(t)=[Gest(t);Hest(t)]=Θest(t-1)+L(t)×e(t)
ここで、利得行列現在値L(t)と共分散行列現在値P(t)は、それぞれ前述のように、下記のように算出される。
【0112】
【数8】
【0113】
【数9】
【0114】
本実施形態によれば、Gパラメータ値を算出するために、再帰的方法を利用するので、メモリ150には、電圧現在値V(t)、電流現在値I(t)、状態ベクトル現在値Θest(t)、共分散行列現在値P(t)、第1忘却ファクタλ及び第2忘却ファクタλが保存される。演算が非常に簡単なだけではなく、数kBレベルの小サイズのメモリ150においても演算が可能である。状態ベクトル現在値Θest(t)と共分散行列現在値P(t)とが周期的に更新されるので、バッテリ110の電圧変動及び電流変動が、リアルタイムでGパラメータ推定値Gest(t)とHパラメータ推定値Hest(t)とに反映されうる。
【0115】
図6は、他の実施形態による充電状態推定方法を遂行するための内部構成図を図示する。
【0116】
図6を参照すれば、マイクロプロセッサ140は、GH推定器142及び拡張カルマンフィルタ144以外、ノイズフィルタ146をさらに含むものでもある。GH推定器142及び拡張カルマンフィルタ144については、前述のところで説明したので、反復を避ける。
【0117】
本実施形態によれば、電圧測定部120で感知した電圧に対応するセンシング電圧値Vsenがノイズフィルタ146に入力され、ノイズフィルタ146は、センシング電圧値Vsenに対応し、電圧値Vを出力することができる。電圧値Vは、電圧直前値V(t-1)及び電圧現在値V(t)を含む。電流測定部130で感知した電流に対応するセンシング電流値Isenがノイズフィルタ146に入力され、ノイズフィルタ146は、センシング電流値Isenに対応し、電流値Iを出力することができる。電流値Iは、電流直前値I(t-1)及び電流現在値I(t)を含む。
【0118】
ノイズフィルタ146は、センシング電圧値Vsenとセンシング電流値Isenとに含まれているノイズを除去し、該ノイズが除去された電圧値Vと電流値Iとを出力することができる。ノイズフィルタ146は、例えば、ローパスフィルタでもある。ノイズフィルタ146は、移動平均フィルタでもある。ノイズフィルタ146は、IIR(infinite impulse response)フィルタまたはFIR(finite impulse response)フィルタでもある。
【0119】
ノイズフィルタ146から出力される電圧値Vと電流値Iは、GH推定器142にも入力される。ノイズフィルタ146に入力されるセンシング電圧値Vsenと、ノイズフィルタ146から出力される電流値Iは、拡張カルマンフィルタ144にも入力される。拡張カルマンフィルタ144に入力されるセンシング電圧値Vsenと電流値Iとがそれぞれ電圧現在値V(t)と電流現在値I(t)とに対応する。
【0120】
図7は、他の実施形態により、ノイズフィルタの動作について説明するためのフローチャートを図示する。
【0121】
図7を参照すれば、電圧測定部120によって感知されたバッテリ110の電圧に対応するセンシング電圧値Vsenが生成され、電流測定部120によって感知されたバッテリ110の電流に対応するセンシング電流値Isenが生成される(S210)。
【0122】
センシング電圧値Vsenとセンシング電流値Isenとがそれぞれノイズフィルタ146に入力され、ノイズフィルタリングされた電圧値Vと、ノイズフィルタリングされた電流値Iとが生成される(S220)。
【0123】
電圧値Vと電流値IとがGH推定器142に伝達され、電流値Iとセンシング電圧値Vsenが拡張カルマンフィルタ144に伝達される。拡張カルマンフィルタ144に入力されるセンシング電圧値Vsenと電流値Iは、それぞれ電圧現在値V(t)と電流現在値I(t)とに対応する。
【0124】
図8は、本発明によって推定された充電状態値と、実際バッテリの充電状態値とを比較したグラフであり、図9は、本発明によって推定されたセル電圧と、実際バッテリのセル電圧とを比較したグラフである。
【0125】
図8に図示されているように充電状態初期値を0.3に設定したが、およそ400秒後には、本発明によって推定された充電状態値が、実際充電状態値に追従することが分かる。経時的に、実際充電状態値との誤差は、低減されている。本発明による方法は、簡単な演算を使用するので、低仕様のプロセッサにおいても駆動されつつも、バッテリの充電状態を非常に正確に推定することができる。
【0126】
図9に図示されているように、本発明によって推定されたセル電圧も、実際セル電圧に追従することが分かる。本発明の推定アルゴリズムが正確であるために、実際に多様な製品にも適用されるということを示している。
【0127】
本発明の思想は、前述の実施形態に限って定められるものではなく、特許請求の範囲だけではなく、該特許請求の範囲と均等であるか、あるいはそこから等価的に変更された全ての範囲は、本発明の思想の範疇に属するものなのである。
【符号の説明】
【0128】
100 バッテリシステム
101 第1端子
102 第2端子
110 バッテリ
111 バッテリセル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】