(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/09 20060101AFI20230926BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20230926BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20230926BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20230926BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H01J37/09 Z
H01J37/28 B
H01J37/305 A
H01J37/317 E
C23C16/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517400
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021075319
(87)【国際公開番号】W WO2022058346
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】102020124306.5
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】アウス ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ブダッハ ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン トルステン
(72)【発明者】
【氏名】オスター イェンス
【テーマコード(参考)】
4K030
5C101
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA04
4K030AA11
4K030AA12
4K030BA05
4K030BA06
4K030BA07
4K030BA08
4K030BA12
4K030BA16
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4K030CA06
4K030CA17
4K030FA12
4K030KA10
4K030KA39
4K030LA15
5C101AA03
5C101AA31
5C101AA36
5C101BB08
5C101CC17
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5C101EE57
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5C101EE67
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5C101FF19
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5C101GG04
5C101GG23
5C101GG42
(57)【要約】
提案されるのは、試料(200)を粒子線(112)で分析および/または処理するための装置(100)であって、試料(200)を保持するための試料ステージ(120)と、粒子線(112)を供給するための供給ユニット(110)であり、粒子線(112)を試料(200)上の処理位置(202)まで誘導するための開口部(114)、および試料(200)上に蓄積した電荷(Q)によって生成される電界(E)をシールドするためのシールド要素(116)、を備え、シールド要素(116)は、開口部(114)を覆っており、シート状の様式で具現化されており、導電性材料を含み、シールド要素(116)は凸セクション(117)を備え、このセクションは試料ステージ(120)に対して凸であり、凸セクション(117)は粒子線(112)が試料(200)へと通過するための貫通開口部(118)を有する、供給ユニット(110)と、を備える、装置(100)、である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(200)を粒子線(112)で分析および/または処理するための装置(100)であって、
前記試料(200)を保持するための試料ステージ(120)と、
前記粒子線(112)を供給するための供給ユニット(110)であり、
前記粒子線(112)を前記試料(200)上の処理位置(202)まで誘導するための開口部(114)、および
前記試料(200)上に蓄積した電荷(Q)によって生成される電界(E)をシールドするためのシールド要素(116)、を備え、
前記シールド要素(116)は、前記開口部(114)を覆っており、シート状の様式で具現化されており、導電性材料を含み、
前記シールド要素(116)は凸セクション(117)を備え、前記セクションは前記試料ステージ(120)に対して凸であり、
前記凸セクション(117)は前記粒子線(112)が前記試料(200)へと通過するための貫通開口部(118)を有する、供給ユニット(110)と、を備える、装置(100)。
【請求項2】
前記シールド要素(116)の前記貫通開口部(118)を通して前記試料(200)上の前記処理位置(202)までプロセスガス(PG)を給送するように構成されているガス給送部(130)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
間隙内にプロセスガス(PG)を給送するように構成されているガス給送部(130)を備え、前記間隙は、前記試料ステージ(120)上に配置されている前記試料(200)によっておよび前記シールド要素(116)によって形成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記ガス給送部(130)は前記シールド要素(116)に組み込まれた給送チャネルを備える、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記貫通開口部(118)は、前記シールド要素(116)と前記試料ステージ(120)との間の距離が最も小さい点を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記シールド要素(116)は平面状セクション(116A)を備え、そこから前記凸セクション(117)が前記試料ステージ(120)の方向に延在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記凸セクション(117)は漏斗形状の様式で、特に円形の断面を有して具現化されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記凸セクション(117)は、前記シールド要素(116)の前記凸セクション(117)の表面上にある2つの点(P1、P2)を接続する接続直線(LIN)が、前記シールド要素(116)の前記凸セクション(117)の前記表面上の2つの点(P1、P2)のどのような組合せに対しても、前記シールド要素(116)の外部に存在するような様式で具現化されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記シールド要素(116)はその表面上に導電性材料から成る層を備え、前記層の層厚さは、前記材料内への前記粒子線(112)の前記粒子の侵入深さ以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記シールド要素(116)はちょうど1つの貫通開口部(118)を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記シールド要素(116)はウェブ(119)によって互いから分離されている複数の貫通開口部(118)を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記貫通開口部(118)は六角形の断面を各々有する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ウェブ(119)は、前記貫通開口部(118)上の前記シールド要素(116)の面法線(N)に対して垂直な第1の平面内の前記複数の貫通開口部(118)のうちのそれぞれ1つの、試料ステージ側断面積(118A)が、前記第1の平面と平行な第2の平面内の対応する前記貫通開口部(118)の開口部側断面積(118B)よりも小さくなるような形状となっている、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記複数の貫通開口部(118)のうちの1つは、前記貫通開口部(118)を更なる前記貫通開口部(118)から区別する幾何学的特徴を有する、請求項11~13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記複数の貫通開口部(118)のうちの1つは前記シールド要素(116)と前記試料ステージ(120)との間の距離が最小である点を含み、更なる前記貫通開口部(118)は前記1つの貫通開口部(118)に対して対称に配置されている、請求項11~14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
ビーム生成ユニット(111)と、前記ビーム生成ユニット(111)と前記シールド要素(116)との間に配置されておりかつ前記粒子線(112)を誘導するように構成されている、ビーム誘導要素(113)と、を備え、前記シールド要素(116)と前記ビーム誘導要素(113)との間に電圧を印加するための電圧源(U1)が設けられている、請求項1~15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記シールド要素(116)は保持装置(116
*)によって前記供給ユニット(110)に固定されており、前記保持装置(116
*)および前記シールド要素(116)は互いに電気的に絶縁されており、前記保持装置(116
*)と前記ビーム誘導要素(113)および/または前記シールド要素(116)との間に電圧を印加するための更なる電圧源(U2)が設けられている、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記シールド要素(116)は電気的に絶縁される様式で保持されており、前記シールド要素(116)から流れ去る電流を検出するための検出ユニット(I1)を備える、請求項1~17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記シールド要素(116)は、互いに電気的に絶縁されておりかつ前記貫通開口部(118)を画定する、複数のセクション(Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb)を備え、対向して配置されているいずれの場合も2つのセクション(Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb)の間に、対応する電圧源(UI、UII、UIII、UIV)によって電圧を印加することができる、請求項1~18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
複数のシールド要素(116)が前記ビーム方向に沿って1つずつ並んで配置されておりかつ前記開口部(114)を覆っており、前記複数のシールド要素(116)のうちの少なくとも1つは、絞り値を設定可能な開口部を提供する目的で変位可能な様式で保持されている、請求項1~19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の装置(100)によって試料(200)を粒子線(112)で分析および/または処理するための方法であって、
前記試料(200)を前記試料ステージ(120)上に配置するステップ(S1)と、
前記粒子線(112)を供給するステップ(S2)と、
前記貫通開口部(118)を通して前記試料(200)上の前記処理位置(202)上へと前記粒子線(112)を放射するステップ(S3)と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を粒子線で分析および/または処理するための装置に、ならびに対応する方法に関する。
【0002】
優先権出願である独国特許出願第102020124306.5号の内容の全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
微細構造構成要素、例えば集積回路などを製造するために、マイクロリソグラフィが使用される。マイクロリソグラフィプロセスは、照射系と投影系とを有するリソグラフィ装置を使用して実行される。照射系によって照射されるマスク(レチクル)の像はこの場合、投影系によって、基板の感光性コーティングにマスク構造を転写する目的で、感光性層(フォトレジスト)でコーティングされ投影系の像面内に配置されている基板、例えばシリコンウエハ上に投影される。
【0004】
この場合、マスク、さもなければリソグラフィマスクは多数の露光に使用され、したがって上記マスクに欠陥のないことが非常に重要である。したがって、欠陥がないかリソグラフィマスクを検査するために、および特定された欠陥を修繕するために、それに応じて多大な労力が払われる。リソグラフィマスクの欠陥の大きさは数ナノメートル範囲のオーダーであり得る。そのような欠陥を修繕するためには、修繕プロセスのための非常に高い空間解像度を提供する装置が必要となる。
【0005】
この目的にとって適切な装置は、粒子線誘起プロセスに基づいて局所的なエッチングまたは堆積プロセスを活性化するものである。
【0006】
欧州特許第1587128号には、化学反応プロセスを開始するために変化した粒子のビーム、特に電子顕微鏡の電子ビームを使用する、1つのそのような装置が開示されている。試料が導電性を有さないかまたはその誘電性がごく僅かである場合、荷電粒子の使用によってその試料が帯電する可能性がある。このことは制御されていないビーム偏向をもたらす可能性があり、このことによって達成可能なプロセス解像度が制限される。したがって、試料の帯電が最小限になり、プロセス解像度およびプロセス制御が改善されるように、シールド要素を処理位置の非常に近くに配置することが提案されている。
【0007】
所望の修繕プロセスのためには、プロセスガスを処理位置まで移動させねばならない。一般的なプロセスガスはその基底状態で既に非常に反応性が高い場合があり、加えて更に、処理プロセス中に、例えば粒子線装置の構成要素を損なうおよび/またはその表面に堆積する場合もある、非常に反応性の高い原子または分子が生じる場合がある。この結果、それぞれの粒子線装置のサービスインターバルが短くなる、および/またはプロセスが不安定になる可能性がある。
【0008】
そのような粒子線誘起プロセスで達成可能な処理速度はとりわけ、処理位置におけるプロセスガス圧に大きく依存する。処理速度を速くするには処理位置におけるプロセスガス圧が高いのが望ましい。このことは例えば、プロセスガスが粒子線の出口開口部を通して給送されることによって達成することができ、その場合、プロセスガスはその後粒子線装置内へと邪魔されずに流れることができる。他方で、使用される構成要素の寿命の観点から、処理位置から粒子線装置内に入るプロセスガスのガス流を、最小限にすることを目指すべきである。
【0009】
独国特許出願公開第10208043号には、例えばCVD(化学気相成長)などの、ガスからの材料堆積による材料処理、または、給送中の反応ガスによる材料除去のための方法で使用可能な、材料処理システムが開示されている。この場合特に、材料堆積または材料除去をもたらすガス反応は、処理すべきワークピースのある領域に向けられたエネルギービームによって開始される。
【発明の概要】
【0010】
この背景に照らして、試料を粒子線で分析および/または処理するための改良された装置を提供することが、本発明の目的である。
【0011】
第1の態様によれば、試料を粒子線で分析および/または処理するための装置が提案される。装置は、試料を保持するための試料ステージと、粒子線を供給するための供給ユニットと、を備える。供給ユニットは、試料上の処理位置まで粒子線を誘導するための開口部と、試料上に蓄積した電荷によって生成される電界をシールドするためのシールド要素と、を備える。シールド要素は開口部を覆い、シート状の様式で具現化され、導電性の材料を含む。また更に、シールド要素は凸セクションを備えるが、このセクションは試料ステージに対して凸であり、粒子線が試料へと通過するための貫通開口部を有する。
【0012】
この装置は、試料または試料の表面の帯電に起因してシールド要素と試料との間に形成される電界が、制御されないまま粒子線に影響を与えることが少なくなる、という利点を有する。シールド要素の凸セクションによって、処理位置の領域におけるシールド要素と試料の表面との間の距離を、シールド要素全体を非常に小さい距離に維持する必要なく、非常に小さく維持することができ、この理由から、シールド要素に対して試料を位置付ける際の複雑さが低減される。傾斜に関する試料と供給ユニットとの間の余地が大きくなるということもできる。
【0013】
装置は試料を保持するための試料ステージを備える。好ましくは、試料ステージは真空ハウジング内に配置される。試料ステージは好ましくは、供給ユニットに対して試料ステージを位置付けるための位置決めユニットを有する。位置決めユニットは例えば、試料ステージを3つの空間軸線に沿って変位させるように構成され得る。更に、位置決めユニットは、試料ステージを上記軸線のうちの少なくとも1つを中心にして、好ましくは上記軸線のうちの少なくとも2つを中心にして、回転させるように構成され得る。試料ステージは好ましくは、保持構造体によって、振動から切り離された様式でおよび/または能動的に制振される様式で保持される。
【0014】
粒子線は、例えばイオン、電子、または陽電子などの荷電粒子を含む。これに応じて、供給ユニットは例えば、イオン源または電子源を備えるビーム生成ユニットを有する。電界および磁界によって、荷電粒子から成る粒子線に影響を与える、つまり例えば加速、方向付け、成形、および/または集束を行うことができる。この目的のために、供給ユニットは、対応する電界および/または磁界を生成するように構成されているいくつかの要素を有し得る。上記要素は特にビーム生成ユニットとシールド要素との間に配置される。粒子線は好ましくは処理位置上に集束される。このことは例えば、粒子線が処理位置に衝突するときの予め定められた直径、特に最小直径を有することを意味するものと理解される。供給ユニットは好ましくは、上述した要素が中に配置されている専用のハウジングを備え、このハウジングは好ましくは、例えば10-7~10-8mbarの残留ガス圧に維持される、真空ハウジングとして具現化される。
【0015】
シールド要素は、粒子線が中を試料上の処理位置まで誘導される、供給ユニットの開口部上に配置されており、この結果、シールド要素は、ビーム方向において試料ステージに最も近い供給ユニットの構成要素を形成する。
【0016】
装置は例えば走査型電子顕微鏡である。高解像度を達成するために、特に電子エネルギー、試料に衝突するときのビーム径(以下では焦点と呼ぶ)、および衝突時点の時間的安定性に関して、電子ビームを非常に正確に制御すべきである。特に、非導電性のまたはごく僅かに導電性の材料から成るセクションを有する試料の場合、荷電粒子が入射する結果、電界を形成する試料上の電荷の蓄積が生じる。粒子線の粒子、また例えば像を生成するために検出される2次電子および後方散乱電子も電界の影響を受け、この結果例えば解像度の低下が生じ得る。
【0017】
シールド要素は、上記電荷の電界をシールドする、言い換えれば上記電界を、特にシールド要素と試料との間の可能な最小の間隙へと、空間的に限定するタスクを実行する。この目的のために、シールド要素は導電性材料を含む。例として、シールド要素に衝突する電荷が放散するように、シールド要素は接地される。
【0018】
シールド要素自体はシート状の様式で具現化され、このシートは表面に凸セクションを有する3次元形状を形成し、このセクションは試料ステージに対して凸である。凸セクションは好ましくは試料ステージに最も近いセクションを形成する、つまり、試料ステージまたは試料とシールド要素との間の距離が、凸セクションの領域において最も小さい。
【0019】
シールド要素の表面、特に凸セクション内には、凸エリアが形成されている。
【0020】
この場合、「凸」は、凸セクションを通って延びるシールド要素を通る断面の切断縁部が、凸セクション内でこの用語の数学的定義に従う凸経路を有することを意味するものと理解される。上記定義は以下の通りである:
関数f:C→R、式中、CはRnの凸部分集合である、は、Cに属する全てのx、yに対しておよび区間[0、1]に属する全てのaに対して、下の式(1):
f(a・x+(1-a)・y)≦a・f(x)+(1-a)・f(y) 式(1)
が成り立つ場合に、凸であると言われる。
【0021】
式(1)において、Rnは実数に対するn次元ベクトル空間を表す。シールド要素の場合、n=2、つまりRn=R2であり、Cはシールド要素の試料ステージ上への投影であり、fはシールド要素の試料ステージよりも上の高さを記述している。
【0022】
式(1)における左辺と右辺との間の関係が、「~に等しい」場合を含まず、すなわち、真の「~未満」が要求され、x=yおよびa=0またはa=1である場合が除外される場合、専門用語ではこれは厳密に凸であるとも呼ばれる。シールド要素の凸セクションは好ましくは、凸セクションを通って延びるシールド要素の切断縁部が、この意味において厳密に凸である経路を有するように具現化される。この形状を有するエリアの例は、球面または球面のある区画である。また更に、厳密な凸関数は、この関数に基づいて回転体が形成される場合、対応するエリア、例えば放物線の回転による回転放物面を生成する。
【0023】
シールド要素は凸セクション内に貫通開口部を有し、そこを粒子線が通過し、試料に入射する。粒子線の起点であるシールド要素の上方の空間領域内では、試料上に配された電荷の電界がシールド要素によって効果的にシールドされる。シールド要素は更なる貫通開口部を有することができ、その場合、1つまたは複数の貫通開口部をシールド要素の凸セクションの外部に配置できることに留意すべきである。
【0024】
例として、シールド要素の凸セクションは、粒子線による試料の分析または処理中に、試料から最大で1mm、好ましくは最大で500μm、好ましくは最大で100μm、好ましくは最大で50μm、好ましくは最大で25μm、より好ましくは最大で10μmの距離にある。距離が小さくなるほど、電気的な干渉場が粒子線に与えることのできる影響は小さくなる。
【0025】
その結果、粒子線を非常に正確に制御することができ、この粒子線は無作為のおよび/または制御不可能な干渉から受ける影響がそれほど大きくはない。この結果、走査型電子顕微鏡の場合などの像取得中、ならびに、粒子線誘起エッチングもしくは堆積プロセス、イオン注入、および/または更なる構造改変プロセスなどの、粒子線を用いて実施される処理方法中の両方で、非常に高い解像度が可能となる。
【0026】
供給ユニットは、例えば10eV~10keVの範囲内のエネルギーおよび1μA~1pAの範囲内の電流を有する電子ビームを供給可能な、電子カラムである。ただしこれはイオンビームを供給するイオン源であってもよい。集束される粒子線は好ましくは試料の表面上に集束され、例えば1nm~100nmの範囲内の直径を有する照射領域が達成される。
【0027】
シールド要素は例えば1mm~50mmの範囲内の長さおよび幅を有する。
【0028】
シールド要素の材料厚さは例えば、1nm~100μm、好ましくは10nm~100μm、好ましくは100nm~50μm、より好ましくは1μm~30μm、更により好ましくは5μm~15μmの範囲内である。シールド要素の材料厚さは、例えば圧力差、静電力などに起因する、予想される機械的および/または熱的負荷に特に応じて、好適な様式で選ばれる。特に薄い材料厚さを達成することが意図されている場合、シールド要素は例えば、膜体の様式でまたは自己支持型のフィルムとして具現化され得る。
【0029】
貫通開口部は例えば、100μm2~2500μm2、好ましくは400μm2~1600μm2、より好ましくは750μm2~1400μm2の範囲内の断面積を有する。
【0030】
貫通開口部は例えば10μm~50μm、好ましくは20μm~40μm、より好ましくは25μm~35μmの範囲内の直径を有する。直径は例えば、貫通開口部の対向して配置されている2つの点の間の距離に関連している。
【0031】
凸セクションは例えば、100μm~5mm、好ましくは500μm~3mm、好ましくは1mm~2mmの範囲内の直径を有し、例えば、試料ステージに向かう方向において少なくとも10μm、好ましくは少なくとも50μm、好ましくは少なくとも100μmの距離にわたって延在する。つまり、シールド要素から最も近い地点と試料ステージとの間の距離と、シールド要素から最も遠い点と試料ステージとの間の距離と、の間の差が、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも50μm、好ましくは少なくとも100μmである。
【0032】
装置の1つの実施形態によれば、この装置は、シールド要素の貫通開口部を通して試料上の処理位置までプロセスガスを給送するように構成されている、ガス給送部を備える。
【0033】
この実施形態では、プロセスガスは粒子線の方向に貫通開口部を通って流れる。この実施形態では、貫通開口部に対する流れ抵抗を可能な限り低くして、プロセスガスを処理位置に標的を定めた様式で効率的に誘導できれば有利である。また更に、粒子線に対向するように供給ユニットへと向かうガス流を制限するアパーチャが提供され得る。この場合、プロセスガスは例えば、シールド要素とアパーチャとの間の領域内へと給送される。シールド要素が複数の開口部を有する場合、プロセスガスは複数の開口部の各々を通って流れることができるが、このことは流れ抵抗を低くするのに有利であり得る。
【0034】
装置の更なる実施形態によれば、この装置は間隙内にプロセスガスを給送するように構成されているガス給送部を備え、この間隙は試料ステージ上に配置されている試料によって、およびシールド要素によって形成されている。
【0035】
プロセスガスはこの間隙を介して試料上の処理位置まで流れる。この実施形態は、このようにして処理位置へのプロセスガス給送を良好に制御できるため有利である。特に、ビーム方向に対向して供給ユニットに入るプロセスガス流は、貫通開口部だけしか利用できないため減少する。結果的に、プロセスガスおよび/またはプロセスガスから形成される反応性分子との接触に起因する供給ユニットの、特に検出器の要素の腐食を低減することができる。
【0036】
供給ユニットは例えば、粒子線用の開口部を備える循環プレートを有する。ガス給送は例えば循環プレートを介して、循環プレートの試料に面する側にある給送開口部によって実施される。その後プロセスガスは、試料とシールド要素との間の間隙内に入り、処理位置まで流れることができる。
【0037】
試料は例えば、10nm~10μmの範囲内のフィーチャサイズを有するリソグラフィマスクである。これは例えば、DUVリソグラフィ(DUV:「深紫外」、動作光波長範囲30~250nm)用の透過型リソグラフィマスク、または、EUVリソグラフィ(EUV:「極紫外」、動作光波長範囲1~30nm)用の反射型リソグラフィマスクなどであり得る。この場合に実行される処理プロセスには例えば、材料が試料の表面から局所的に除去されるエッチングプロセス、材料が試料の表面に局所的に適用される堆積プロセス、および/または、パッシベーション層の形成もしくは層の圧縮などの、類似の局所活性化プロセスが含まれる。
【0038】
材料の堆積にまたは高さのある構造の成長に適した適切なプロセスガスは特に、主族元素、金属、または遷移元素のアルキル化合物である。これらの例は、シクロペンタジエニルトリメチル白金CpPtMe3(Me=CH4)、メチルシクロペンタジエニルトリメチル白金MeCpPtMe3、テトラメチルすずSnMe4、トリメチルガリウムGaMe3、フェロセンCp2Fe、ビス-アリルクロムAr2Cr、ならびに/または、主族元素、金属、もしくは遷移元素のカルボニル化合物、例えば、クロムヘキサカルボニルCr(CO)6、モリブデンヘキサカルボニルMo(CO)6、タングステンヘキサカルボニルW(CO)6、ジコバルトオクタカルボニルCo2(CO)8、トリルテニウムドデカカルボニルRu3(CO)12、鉄ペンタカルボニルFe(CO)5など、ならびに/または、主族元素、金属、もしくは遷移元素のアルコキシド化合物、例えば、テトラエチルオルトシリケートSi(OC2H5)4、テトライソプロポキシチタンTi(OC3H7)4など、ならびに/または、主族元素、金属、もしくは遷移元素のハロゲン化物化合物、例えば、六フッ化タングステンWF6、六塩化タングステンWCl6、四塩化チタンTiCl4、三フッ化ホウ素BF3、四塩化ケイ素SiCl4など、ならびに/または、主族元素、金属、もしくは遷移元素を含む錯体、例えば、銅ビス-(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)Cu(C5F6HO2)2、ジメチル金トリフルオロアセチルアセトネートMe2Au(C5F3H4O2)など、ならびに/または、有機化合物、例えば一酸化炭素CO、二酸化炭素CO2、脂肪族および/もしくは芳香族炭化水素、などである。
【0039】
材料をエッチングするのに適した適切なプロセスガスは例えば、二フッ化キセノンXeF2、二塩化キセノンXeCl2、四塩化キセノンXeCl4、水蒸気H2O、重水D2O、酸素O2、オゾンO3、アンモニアNH3、塩化ニトロシルNOCl、および/または以下のハロゲン化物化合物:XNO、XONO2、X2O、XO2、X2O2、X2O4、X2O6、ここでXはハロゲン化物である、のうちの1つである。材料をエッチングするための更なるプロセスガスが、本出願人の米国特許出願第13/0103281号に指定されている。
【0040】
例えば処理プロセスをよりよく制御するためにプロセスガスとある割合で混合できる添加ガスとしては例えば、過酸化水素H2O2、亜酸化窒素N2O、窒素酸化物NO、二酸化窒素NO2、硝酸HNO3、およびそれ以外の酸素含有ガスなどの酸化ガス、ならびに/または、塩素Cl2、塩化水素HCl、フッ化水素HF、ヨウ素I2、ヨウ化水素HI、臭素Br2、臭化水素HBr、三塩化リンPCl3、五塩化リンPCl5、三フッ化リンPF3、およびそれ以外のハロゲン含有ガスなどのハロゲン化物、ならびに/または、水素H2、アンモニアNH3、メタンCH4、およびそれ以外の水素含有ガスなどの還元ガスが挙げられる。上記添加ガスは、例えばエッチングプロセスにおいて緩衝ガスとして、パッシベーション媒体として、などで使用され得る。
【0041】
装置の更なる実施形態によれば、ガス給送部は、シールド要素に組み込まれた給送チャネルを備える。
【0042】
この実施形態によって、プロセスガスを処理位置まで非常に正確に誘導することが可能になる。このことによって粒子線の誘起処理プロセスの速さおよび効率が向上するが、その理由は、常に十分な量のプロセスガス分子が存在し、枯渇を回避できるからである。この実施形態では、シールド要素は特に、特別な製造方法、特にLIGA製作法(LIGA:ドイツ語のLithographie,Galvanik und Abformung[リソグラフィ、電気めっき、および成形]からの略語)によって製造される。
【0043】
シールド要素は例えば部分的に中空なものとして具現化することができ、その場合シールド要素の内部は給送チャネルを形成する。シールド要素の外縁部において、内部がガス給送部に流体接続される。この場合、移行用部片または減衰用部片が使用され得る。凸領域内の貫通開口部の可能な限り近くに、ガスを給送するための出口開口部が配置されるのが有利である。
【0044】
更なる例では、シールド要素は、プロセスガスを給送するための入口とプロセスガスが流出するための出口とを有する、気密コーティングで覆われたミクロ多孔質材料を含む。出口は好ましくは凸セクション内に処理位置に対向して形成される。
【0045】
装置の複数の実施形態において、この装置は、シールド要素の凸セクションによって試料との電気接触を確立するように構成される。このことは特に導電性表面を有する試料の場合に有利であり得るが、その理由は、電荷が直接試料の表面から流れ去ることができ、その結果妨害的な電界が形成されないからである。
【0046】
更なる実施形態では、試料がシールド要素と接触する前に、粒子線誘起プロセスによって、試料の表面上の処理位置の周囲に、保護層を堆積させることができる。保護層は有利な導電性を有し、またシールドユニットが試料と接触しているときにシールドユニットによって引き起こされる試料の機械的損傷に対する保護物として働く。保護層は分析または処理の完了後、例えば粒子線誘起エッチングプロセスによって再び除去され得る。
【0047】
装置の更なる実施形態によれば、貫通開口部は、シールド要素と試料ステージとの間の最小距離の点を含む。
【0048】
このことは、シールド要素が開口部を有さなかった場合のシールド要素と試料ステージとの間の幾何学的に最小の距離が、貫通開口部によって占有されるシールド要素の点において存在することを意味するものと理解される。この場合、特に貫通開口部の縁部は、試料ステージに最も近いシールド要素の点を形成する。
【0049】
装置の更なる実施形態によれば、シールド要素は平面状セクションを備え、そこから試料ステージの方向に凸セクションが延在する。
【0050】
平面状セクションは例えば、シールド要素を供給デバイスに、例えば開口部の縁部にある保持構造に固定するのに役立ち得る。平面状セクションは好ましくは、試料の分析または処理中に、試料の表面と実質的に平行に延在する。
【0051】
シールド要素の平面状セクションは、シールド要素の凸セクションとは異なる材料から製作され得る。この場合、シールド要素を2つの部分、平面状セクションおよび凹状セクションから構成することができ、その場合これら2つの部分を、1つに螺着すること、互いに接着結合すること、互いに溶接すること、および/または対応する好適な係合要素によって互いに接続することができる。
【0052】
装置の更なる実施形態によれば、凸セクションは漏斗形状の様式で、特に円形の断面を有して具現化される。
【0053】
凸セクションは凸関数に基づく回転体の表面を形成するということもできる。
【0054】
ただし凸セクションはまた、円形形状から逸脱する断面、特に楕円形の断面も有し得る。
【0055】
好ましくは、凸セクションは貫通開口部に向かってテーパするように具現化されている。
【0056】
更なる実施形態によれば、凸セクションは、シールド要素の凸セクションの表面上にある2つの点を接続する接続直線が、シールド要素の凸セクションの表面上の2つの点のどのような組合せに対しても、シールド要素の外部に存在するような様式で具現化される。
【0057】
凸セクションは数学的観点において厳密に凸であることを満足するエリアを形成する、ということもできる。ある関数は、式(1)において、右辺に対して左辺が真に「未満」であることが要求される場合に、厳密に凸である。
【0058】
この形状を有するエリアの例は、球面または球面のある区画である。また更に、放物線などの厳密な凸関数は、この関数に基づいて回転体が形成される場合、対応するエリア、例えば放物線の回転による回転放物面を生成する。
【0059】
接続直線が外部に存在することは、接続直線が凸セクションと共通の点を持たないことを意味するものと理解される。このことから、この接続直線はまた、凸セクションまたはシールド要素と交差しないことになる。平面状のエリアは、この平面自体の2つの点の間の接続直線がその平面内に存在するため、この実施形態を満足しないことに留意すべきである。
【0060】
装置の更なる実施形態によれば、シールド要素はその表面上に導電性材料から成る層を備え、この層の層厚さは、材料内への粒子線の粒子の侵入深さ以上である。
【0061】
このことは、シールド要素自体の中または表面に電荷が蓄積され得ないという利点を有する。例えば、導電体としては不十分である自然酸化物層を形成することができる材料は、それほど好適ではない可能性がある。
【0062】
有利な実施形態では、シールド要素は完全に導電性材料から成る。これは純粋な材料、さもなければ合金、複合材料、および/または微小構造を有する材料であり得る。
【0063】
材料から成る要件は特定の用途によって異なる。導電性以外に、材料の磁気特性および材料の化学特性が関係すると考えることができる。好ましくは、材料は例えば非磁性である。また更に、材料は好ましくは化学的に不活性であり、このためこの材料は、他の反応生成物中でおよび/またはそれらと一緒に給送されるプロセスガスとごく僅かにしか、または全く、化学反応しない。このことによりシールド要素の長寿命が可能になる。
【0064】
シールド要素は例えば貴金属は含む。例として、シールド要素は、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、イリジウムを含むリストから、少なくとも1種の元素を含む。複数の実施形態において、シールド要素は金またはニッケルで形成される。
【0065】
シールド要素は好ましくは非常に平滑な表面を有する。例として、表面粗さのRMS値は、最大50nm、好ましくは最大10nm、好ましくは最大5nm、より好ましくは最大2nmである。
【0066】
装置の更なる実施形態によれば、シールド要素はちょうど1つの貫通開口部を有する。
【0067】
シールド要素が単一穴の絞りとして具現化されるということもできる。貫通開口部は好ましくは円形のものとして具現化される。同様に、正方形、六角形、八角形、長方形、および/または楕円形などの、更なる開口部の幾何形状を持たせることができる。
【0068】
シールド要素の側壁を画定する貫通開口部は好ましくは貫通開口部の対称軸に対して傾斜を有し、これにより側壁はビーム方向に対向して上向きに開口した錐体を形成する。その結果、試料側の貫通開口部の開口部断面は、対向側のものよりも小さい。このことは、試料からの2次電子または後方散乱電子をより大きい立体角で検出できるという利点を有する。このことによって、検出効率、信号対ノイズ比、および/または解像度が改善され得る。
【0069】
装置の更なる実施形態によれば、シールド要素は、ウェブによって互いから分離されている複数の貫通開口部を有する。
【0070】
ウェブは例えば、2つの貫通開口部の間に存在しそれらを互いから分離するシールド要素の材料によって形成される。ウェブは好ましくは可能な最も小さい幅を有する。貫通開口部の幾何形状に応じて、ウェブは一定の幅を有し得るか、さもなければ様々な幅を有し得る。例として、ウェブは、1μm~100μm、好ましくは1μm~50μm、好ましくは5μm~30μm、より好ましくは10μm~20μmの範囲内の幅を有する。
【0071】
シールド要素が網体を形成するまたは網体で形成されるということもできる。
【0072】
複数の貫通開口部を有するシールド要素は、電界のシールドを損なうことなく粒子線が試料のまたは試料の表面のより大きいセクションに到達できることを可能にして有利である。処理位置または処理領域を拡大できるということもできる。この結果、概観の改善が達成され得る。しかしながら、複数の貫通開口部の場合、試料とシールド要素との間の隙間内にガスが給送されるときに、ビーム方向に対向するガス流の増加が明白になる可能性がある。
【0073】
シールド要素が複数の貫通開口部を有する場合には、それら貫通開口部がシールド要素の凸セクションの最も深い地点の周囲の近いところに配置されるのが好ましい。例として、最も深い貫通開口部は凸セクションの最も深い地点を含み、この最も深い貫通開口部と直接隣り合う様式で、更なる貫通開口部が配置される。
【0074】
例として、凸セクションは、最も深い点の代わりに最も深い平面状領域が存在し、複数の貫通開口部が上記領域内に配置されるように具現化され得る。
【0075】
装置の更なる実施形態によれば、貫通開口部は六角形の断面を各々有する。
【0076】
貫通開口部の幾何形状は、貫通開口部の下方のシールドされるべき電界の電界プロファイルに影響する、および粒子線にも影響する可能性がある。
【0077】
六角形の幾何形状によって高い面積占率が可能になり、更なる静電特性との良好な折り合いが実現される。
【0078】
更なる可能な幾何形状としては、正方形の幾何形状、長方形の幾何形状、円形の幾何形状、楕円形の幾何形状、五角形の幾何形状、八角形の幾何形状、などが挙げられる。
【0079】
互いに対する複数の貫通開口部の配置は規則的であり得るか、さもなければ不規則であり得る。また更に、貫通開口部は、対称軸を中心に互いに対して回転される様式で配置され得る。
【0080】
装置の更なる実施形態によれば、ウェブは、貫通開口部上のシールド要素の面法線に対して垂直な第1の平面内の複数の貫通開口部のうちのそれぞれ1つの、試料ステージ側断面積が、第1の平面と平行な第2の平面内の対応する貫通開口部の開口部側断面積よりも小さくなるような形状となっている。
【0081】
装置の更なる実施形態によれば、複数の貫通開口部のうちの1つは、貫通開口部を更なる貫通開口部から区別する幾何学的特徴を有する。
【0082】
この実施形態は、複数の貫通開口部が例えば全て同じ幾何形状を有し規則的に配置されている場合に有利であるが、その理由は、その場合に貫通開口部を互いに区別するのが困難となり得るからである。この場合したがって、例えば、試料ステージまたは試料から最小の距離にあるシールド要素の点を含む貫通開口部を確認することが可能である。幾何学的特徴を有する貫通開口部が基準位置をマークし、これに基づいて更なる貫通開口部の位置が曖昧さなしに判定可能になる、ということもできる。
【0083】
例として、区別可能な貫通開口部はマーキングを有する。そのようなマーキングは、追加の材料を有するセクションによって、および/または欠落した材料のあるセクションによって形成され得る。
【0084】
複数の貫通開口部が互いに区別可能なマーキングなどを有することも可能であり、その場合、曖昧さなしに判定できるマークされた複数の貫通開口部が存在することになる。
【0085】
この幾何学的特徴を有する貫通開口部は、更なる貫通開口部とは異なる幾何形状を有し得る。例として、2つの貫通開口部を接続して単一の貫通開口部を形成することができ、その場合その貫通開口部は2重の貫通開口部を形成する。
【0086】
区別可能な貫通開口部から進めて、最も深い貫通開口部を判定することが可能であるが、この貫通開口部は特に、電界のシールドがこの貫通開口部において最も良好であるため、分析および/または処理プロセスに最適である。
【0087】
装置の更なる実施形態によれば、複数の貫通開口部のうちの1つが、シールド要素と試料ステージとの間の距離が最小である点を含み、更なる貫通開口部が、この1つの貫通開口部と対称に配置されている。
【0088】
貫通開口部の配置は特に、回転対称および/または鏡面対称であり得る。対称な配置は少なくとも1つの対称軸を有し得る。
【0089】
装置の更なる実施形態によれば、この装置はビーム生成ユニットとビーム誘導要素とを備える。ビーム誘導要素はビーム生成ユニットとシールド要素との間に配置されており、粒子線を誘導するように構成されている。また更に、シールド要素とビーム誘導要素との間に電圧を印加するための電圧源が設けられている。
【0090】
ビーム生成ユニットは粒子線を生成するように構成されている。これは例えば電子ビームを生成するための熱陰極である。ビーム誘導ユニットは例えば、粒子線中の粒子を加速するように構成されている。ビーム誘導ユニットは、粒子線を成形するために、粒子線を集束させるために、などで、粒子線を偏向するように構成され得る。
【0091】
シールド要素とビーム誘導要素との間に電圧を印加する結果、これらの要素間に電界が生成される。粒子線はこの電界を通過し、したがってそれに応じた影響を、例えば電界による加速、減速、成形、および/または偏向を、受けることができる。この結果、粒子線に試料の表面までにわたって直接影響を与えることができる。
【0092】
試料から発し粒子線方向に対向して貫通開口部を通って飛行する荷電粒子の飛行軌道も、電界の影響を受ける。例として、シールド要素およびビーム誘導要素の電位を適切に設定することによって、2次電子および後方散乱電子用のエネルギーフィルタを確立することが可能である。この場合、試料または試料ステージは基準点として好適であり、その場合、試料または試料ステージに対して、エネルギーフィルタ、例えばシールド要素は負電位を有し、ビーム誘導要素は正電位を有する。
【0093】
また更に、シールド要素が特定の電位を有することによって、シールド要素と試料との間に電界も生じる。この電界を、試料の表面上の深部構造から2次電子がより良好に抽出されるように設定することができる。この目的のためには、シールド要素が試料または試料ステージに対して正電位を有すれば有利である。このことは、この結果、高いアスペクト比を有する試料上のより深い領域から放射される電子の検出が改善され得るという利点を有する。アスペクト比は例えば構造の高さ対幅の比を意味するものと理解される。例えば高さ/幅が≧0.5であれば、高アスペクト比を示している。このことは、例えばシールド要素によって放射される2次電子を捕捉できるという更なる利点を有する。その結果、そのような2次電子によって開始され得る望まれない化学反応を回避することができる。
【0094】
装置の複数の実施形態において、シールド要素は保持装置によって供給ユニットに固定される。
【0095】
保持装置とシールド要素との間の接続は例えば、溶接、クランピングによって、および/または接着結合によって実施され得る。
【0096】
複数の実施形態において、保持装置およびシールド要素は1つの構成要素として、特に一体式に具現化されている。このことは、特別な製造方法、特にLIGA製作法(LIGA:ドイツ語のLithographie,Galvanik und Abformung[リソグラフィ、電気めっき、および成形]からの略語)によって可能となる。
【0097】
装置の更なる実施形態によれば、シールドユニットは供給ユニットに保持装置によって固定され、その場合、保持装置とシールド要素は互いから電気的に絶縁される。保持装置とビーム誘導要素および/またはシールド要素との間に電圧を印加するための更なる電圧源が設けられている。
【0098】
この実施形態では2つの電界が形成され、ビーム誘導要素と保持装置との間に第1の電界が存在し、保持装置とシールド要素との間に第2の電界が存在している。この結果、ビーム誘導要素の下方に特に2つの電界セクションが生じ、これらの電界セクションを使用して例えば粒子線を集束させることができる。その場合、残留分極効果などをもたらし得る磁気集束を用いないことが可能である。
【0099】
粒子線が電子ビームである場合、保持装置は好ましくはビーム誘導要素に対して負電位に設定され、このことにより電子が減速される。例えば、ブースト電圧またはUboostとも呼ばれる、試料に対する所望の入射エネルギーよりも高いエネルギーを与えられた電子ビームのエネルギーを、所望のエネルギーに設定することができる。
【0100】
装置の更なる実施形態によれば、シールド要素は電気的に絶縁される様式で保持され、シールド要素から離れる方へと流れる電流を検出するための検出ユニットが設けられる。
【0101】
検出ユニット、例えば電流測定デバイスは、様々な方法で検出器として使用され得る。特に、シールド要素と保持装置またはビーム誘導要素との間に印加されエネルギーフィルタとして働く電圧と協働して、例えば、数電子ボルト~数10電子ボルトの範囲内の低いエネルギーを有する2次電子を、そのビームエネルギーの範囲内のより高いエネルギーを有する後方散乱電子から区別することが可能である。シールド要素はその場合例えば、2次電子検出器として使用され得る。
【0102】
後方散乱電子の後方散乱効率は電子エネルギーおよび材料の原子番号に依存するので、エネルギーフィルタによって材料の原子番号についての情報も取得することができる。
【0103】
また更に、検出された電流からシールド要素の領域内のガス圧を推定することができるが、その理由は、ガス圧と電流との間に正の相関が存在するからである。ガス圧が増大すると粒子線の粒子とガス分子との間により多くの衝突が生じ、したがってより程度の強い散乱が生じ、この結果シールド要素へと散乱される粒子の数が増え、したがって検出される電流も大きくなる。
【0104】
装置の更なる実施形態によれば、シールド要素は互いに電気的に絶縁されておりかつ貫通開口部を画定する複数のセクションを備え、その場合、対向して配置されているいずれの場合も2つのセクションの間に、対応する電圧源によって電圧を印加することができる。
【0105】
このようにして、シールド要素を偏向ユニットとして追加的に使用することができる。したがって、シールド要素の上方に配置されている別個の偏向ユニットを省略することができる。したがって、このことによって装置の構造が単純化され、また更に、効率が改善され得る。第1に、後方散乱電子または2次電子が検出され得る立体角が、別個の偏向ユニットによって更に小さくなることがない。第2に、貫通開口部が例えば30μm~150μmの直径しか有さないため、偏向ユニットが動作する電圧をより低くすることができる。貫通開口部が小さくなるほど、同じ電圧に対する電界の勾配がより大きくなる。
【0106】
好ましくは、シールドユニットはそのようなセクションを8つ備える。シールドユニットはその場合、八重極ユニットと呼ぶこともできる。
【0107】
この実施形態では、シールド要素はまた更に、粒子線用の、特に粒子線を試料上に集束させるための、スティグメータおよび/またはレンズとしても使用され得る。スティグメータは非点収差を補正するように構成されている。
【0108】
また更に、シールド要素は「ビームブランカ」の役割を果たし得る。従来の粒子線カラムでは、カラムにおいて粒子が高いエネルギーを有する位置に、(粒子線のオフとオンを素早く切り換えるために使用される)ビームブランカが配置されており、この理由から、粒子線を偏向させるために高電圧を使用することも必要である。対照的に本実施形態では、ビームはそのエネルギーが既に低下した位置において偏向され、この理由から、そのような高電圧は必要ない。したがって、構造を単純化することができ、また更に、より速い切り換え時間が可能になる。電流測定デバイスを利用して、また更に、粒子線がシールド要素に向けられるときの粒子線の電流を決定することができる。
【0109】
複数の実施形態において、シールド要素と試料との間のキャパシタンスを確認するように構成されている、キャパシタンス測定デバイスが提供され得る。
【0110】
例として、シールド要素と試料との間の距離をキャパシタンスに基づいて確認することができる。このことは特に、導電性であるかまたは導電性のセクションを備える試料の場合に可能である。
【0111】
装置の更なる実施形態によれば、ビーム方向に沿って1つずつ並んで配置されておりかつ各々が開口部を覆っている、複数のシールド要素が提供される。複数のシールド要素のうち少なくとも1つは、絞り値を設定可能な開口部を提供する目的で、変位可能な様式で保持されている。
【0112】
変位可能な様式で保持されているシールド要素によって、変位可能な様式で保持されているシールド要素の更なるシールド要素に対する相対位置が設定可能になり得る。この結果、ビーム方向を設定可能な開口部が得られる。開口部のサイズを小さくすることによって、例えばビーム方向に対向するプロセスガス体積流量を減少させることが可能である。
【0113】
シールド要素は好ましくは、開口部に対して、事前に決定された焦点区間内での焦点の変動、および/または事前に決定されたエネルギー区間内でのビームエネルギーの変動による、ビーム位置に対する影響が最小限となる、および/または、検出効率に対する影響が最小限となるように、配置される。
【0114】
変動する焦点および/またはビームエネルギーのプロセスを「ウォブル」と呼ぶ場合もある。
【0115】
シールド要素のこの配置は、シールド要素が供給ユニットに取り付けられるときに、特にそれぞれの供給ユニットに対して1回設定される。上記したような位置の最適化により、特に解像度に関して、装置が高いロバスト性を有することが保証される。
【0116】
第2の態様によれば、第1の態様に係る装置によって試料を粒子線で分析および/または処理するための方法が提案される。第1のステップにおいて、試料は試料ステージ上に配置されている。第2のステップにおいて、粒子線は供給される。第3のステップにおいて、粒子線が貫通開口部を通して試料上の処理位置へと放射される。
【0117】
この方法は装置に関して既に記載したものと同じ利点を有する。
【0118】
装置に関して説明した実施形態および特徴は提案されている方法にも準用され、この逆も成り立つ。
【0119】
方法の1つの実施形態によれば、この方法は、プロセスガスを処理位置まで給送するステップを追加的に含み、その場合プロセスガスは、シールドユニットおよび試料によって形成されている間隙のみを介して試料上の処理位置まで流れる。
【0120】
方法の更なる実施形態によれば、この方法は試料の表面をシールド要素と接触させることを含み、その場合、シールド要素の凸セクションは、試料の表面との少なくとも1つの接点を有する。
【0121】
試料が導電性表面を有する場合、電気接点およびシールドユニットを介して電荷が流れ去ることができるので、このようにして試料の全体が帯電することを回避できる。
【0122】
繊細な試料である場合、予め試料の表面上に局所的に堆積される保護層を設けることができる。上記保護層は例えば、シールド要素が試料と最初に接触する処理位置の周囲の領域内に形成される。保護層は特に粒子線誘起プロセスによって生成することができる。保護層は有利な導電性を有する。保護層は好ましくは、選択的エッチングプロセスによって残留物を残さずまた試料の表面を損傷することなく再び除去可能な材料から製造される。保護層は、続くパージプロセスにおいてまたは粒子線誘起エッチングプロセスにおいて再び除去され得る。
【0123】
本件における「1つの(A(n))、1つの(one)」はちょうど1つの要素に制限するものと必ずしも理解されるべきではない。むしろ、例えば2つ、3つ、またはそれ以上などの、複数の要素が提供され得る。本明細書で使用される他のいかなる数字も、述べられたちょうどその数の要素への制限が存在するという趣旨で理解すべきではない。むしろ、そうではないと示されていない限りは、上下への数の逸脱が可能である。
【0124】
本発明の更なる可能な実装形態はまた、例示的な実施形態に関して上記したまたは下記する特徴または実施形態の、明示的に述べられていない組合せも含む。この場合当業者はまた、個々の態様を、本発明のそれぞれの基本形態に対する改善または補足として追加するであろう。
【0125】
本発明の更なる有利な構成および態様は、従属請求項の、また以下に記載する本発明の例示的な実施形態の主題である。以下の本文では、本発明について、添付の図を参照し、好ましい実施形態に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【
図1】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置の、第1の例示的な実施形態の概略図である。
【
図2】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置の、第2の例示的な実施形態の概略図からの抜粋である。
【
図3】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置の、第3の例示的な実施形態の概略図からの抜粋である。
【
図4】シールド要素の6つの異なる例示的な実施形態を概略的に示す図である。
【
図5】シールド要素の1つの例示的な実施形態を通る断面を概略的に示す図である。
【
図6】シールド要素の更なる例示的な実施形態を概略的に示す図である。
【
図7】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置の、第4の例示的な実施形態の概略図である。
【
図8】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置の、第5の例示的な実施形態の概略図である。
【
図9】シールド要素の更なる例示的な実施形態を概略的に示す図である。
【
図10】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置の、第6の例示的な実施形態からの抜粋を概略的に示す図である。
【
図11】試料を粒子線で分析および/または処理するための方法の、1つの例示的な実施形態の概略ブロック図である。
【
図12】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置の、第7の例示的な実施形態からの抜粋を概略的に示す図である。
【
図13】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置の、第8の例示的な実施形態の概略図からの抜粋である。
【
図14A-14D】複数の異なる実施形態におけるシールド要素を通る断面を各々示す図である。
【
図15】用語「凸」を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0127】
同一の要素または同一の機能を有する要素には、そうではないと示されていない限り、図中に同じ参照符号を付してある。図中の描写は必ずしも縮尺通りに描かれていないことにも留意されたい。
【0128】
図1は、試料200(
図2、
図3、または
図12を参照)を粒子線112で分析および/または処理するための装置100の、第1の例示的な実施形態の概略図を示す。装置100は好ましくは真空ハウジング(図示せず)内に配置される。装置100は、粒子線112を供給するための供給ユニット110と、試料200を保持するための試料ステージ120と、を備え、上記試料ステージは供給ユニット110の下方に配置されている。
【0129】
供給ユニット110は特に、粒子線112を生成する粒子線生成ユニット111を備える。粒子線112は荷電粒子から、例えばイオンからまたは電子から成る。
図1の例では電子ビームが関与している。供給ユニット110はしたがって電子カラムとも呼ばれ、その場合、装置100は例えば走査型電子顕微鏡を形成する。電子ビーム112はビーム誘導要素(
図1には示されていない)によって誘導される。これは電子光学ユニットとも呼ばれる。また更に、
図1の電子カラム110は、例えば後方散乱電子からおよび/または2次電子から発する電子信号を検出するための、検出器(図示せず)を備える。
【0130】
電子カラム110は、例えば10-7mbar~10-8mbarの残留ガス圧まで真空引きされる、専用の真空ハウジングを有する。電子ビーム112用の開口部114は下面に配置されている。開口部114はシールド要素116によって覆われている。シールド要素116はシート状の様式で具現化されており、導電性材料を含む。例として、シールド要素116は金で形成される。シールド要素116は凸セクション117を有し、このセクションは試料ステージ120に対して凸である。凸セクション117は試料ステージ120の方向に湾曲している。凸セクション117は粒子線112が通過するための貫通開口部118を有する。貫通開口部118は特に、試料ステージに最も近い凸セクション117の点を含む。シールド要素116と試料ステージ120との間の距離はしたがって、貫通開口部118の領域において最も小さい。装置100の動作中、貫通開口部118と試料200との間の距離は、好ましくは5μm~30μm、好ましくは10μmである。好ましくは試料ステージ120は位置決めユニット(図示せず)を有し、これによって試料ステージ120と電子カラム110との間の距離を設定可能である。
【0131】
シールド要素116は平面状領域116A(
図14A~
図14Dを参照)を有し得、そこから凸セクション117が突出している。平面状領域116Aは好ましくは、凸セクション117の上側端部から半径方向に延在する。シールド要素116は、例えば平面状領域116Aの外縁部において、電子カラム110の開口部114に固定される。
【0132】
シールド要素116に地電位が印加される。シールド要素はしたがって電界Eをシールドするように構成されている。このことを明確にするために、
図1には例として、電界Eを生成する電荷Qが図示されている。電荷Qは、シールド要素116の下方で、装置100の使用中に試料200の処理領域202(
図2、
図3、または
図12を参照)が配備されると考えられる領域内に図示されている。特に(少なくとも部分的に)非導電性であるかまたは導電性がごく僅かである試料200の場合、粒子線112が試料200に入射するとき、
図1に図示されているように、試料200の帯電およびしたがって電界Eの形成が生じる。
図1には例として、電子ビーム112の入射の結果として生じる負電荷Qが示されている。
【0133】
電界Eをシールドする結果として、第1に、試料200上の衝突点および更には電子ビーム112の集束位置に対する正確度の向上が達成され、このことにより解像度およびプロセス制御が改善される。第2に、電子ビーム112に対向してビーム供給ユニット111の方向に飛行する後方散乱電子および2次電子の飛行軌道はそれほど影響を受けず、このことによって同様に解像度、およびプロセス制御、および更に感度が改善される。
【0134】
図2は、試料200を粒子線112で分析および/または処理するための装置100の、第2の例示的な実施形態の概略図からの抜粋を示す。以下で別様に記載されていなければ、
図2の装置100は
図1の装置100と同じ特徴を有し得る。示されている例は、特に粒子線誘起処理プロセスを実行するように構成されている。
【0135】
装置100の動作時、試料200が表面に配置されている試料ステージ120は、貫通開口部118がビーム方向において試料200上の処理位置202の上方に配備されるように、供給ユニット110の下方に位置付けられる。試料200と供給ユニット110、特にシールド要素116との間に、間隙が形成される。
【0136】
この例では、供給ユニット110は、間隙内にプロセスガスPGを給送するように構成されている、ガス給送部130を有する。プロセスガスPGは間隙に沿って流れ、その結果、試料200上の処理位置202に到達する。ガス給送部130によって、こうして第1に、処理位置202に十分なプロセスガスPGが供給されることが保証され、第2に、貫通開口部118を通って供給ユニット110内に入るプロセスガスPGの体積流量が比較的小さくなり、特にプロセスガスPGが上方から処理位置202まで貫通開口部118を通って誘導された場合よりも、遥かに小さくなる。
【0137】
試料200は例えば、10nm~10μmの範囲内のフィーチャサイズを有するリソグラフィマスクである。これは例えば、DUVリソグラフィ(DUV:「深紫外」、動作光波長範囲30~250nm)用の透過型リソグラフィマスク、または、EUVリソグラフィ(EUV:「極紫外」、動作光波長範囲1~30nm)用の反射型リソグラフィマスクなどであり得る。この場合に実行される処理プロセスには例えば、材料が試料200の表面から局所的に除去されるエッチングプロセス、材料が試料200の表面に局所的に適用される堆積プロセス、および/または、パッシベーション層の形成もしくは層の圧縮などの、類似の局所活性化プロセスが含まれる。
【0138】
プロセスガスPGは複数種のガス状物質の混合物を含み得る。材料の堆積に、または高さのある構造の成長に適した適切なプロセスガスPGは特に、主族元素、金属、または遷移元素のアルキル化合物である。これらの例は、シクロペンタジエニルトリメチル白金CpPtMe3(Me=CH4)、メチルシクロペンタジエニルトリメチル白金MeCpPtMe3、テトラメチルすずSnMe4、トリメチルガリウムGaMe3、フェロセンCp2Fe、ビス-アリルクロムAr2Cr、ならびに/または、主族元素、金属、もしくは遷移元素のカルボニル化合物、例えば、クロムヘキサカルボニルCr(CO)6、モリブデンヘキサカルボニルMo(CO)6、タングステンヘキサカルボニルW(CO)6、ジコバルトオクタカルボニルCo2(CO)8、トリルテニウムドデカカルボニルRu3(CO)12、鉄ペンタカルボニルFe(CO)5など、ならびに/または、主族元素、金属、もしくは遷移元素のアルコキシド化合物、例えば、テトラエチルオルトシリケートSi(OC2H5)4、テトライソプロポキシチタンTi(OC3H7)4など、ならびに/または、主族元素、金属、もしくは遷移元素のハロゲン化物化合物、例えば、六フッ化タングステンWF6、六塩化タングステンWCl6、四塩化チタンTiCl4、三フッ化ホウ素BF3、四塩化ケイ素SiCl4など、ならびに/または、主族元素、金属、もしくは遷移元素を含む錯体、例えば、銅ビス-(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)Cu(C5F6HO2)2、ジメチル金トリフルオロアセチルアセトネートMe2Au(C5F3H4O2)など、ならびに/または、有機化合物、例えば一酸化炭素CO、二酸化炭素CO2、脂肪族および/もしくは芳香族炭化水素、などである。
【0139】
材料をエッチングするのに適した適切なプロセスガスは例えば、二フッ化キセノンXeF2、二塩化キセノンXeCl2、四塩化キセノンXeCl4、水蒸気H2O、重水D2O、酸素O2、オゾンO3、アンモニアNH3、塩化ニトロシルNOCl、および/または以下のハロゲン化物化合物:XNO、XONO2、X2O、XO2、X2O2、X2O4、X2O6、ここでXはハロゲン化物である、のうちの1つである。
【0140】
例えば処理プロセスをよりよく制御するためにプロセスガスPGとある割合で混合できる添加ガスとしては例えば、過酸化水素H2O2、亜酸化窒素N2O、窒素酸化物NO、二酸化窒素NO2、硝酸HNO3、およびそれ以外の酸素含有ガスなどの酸化ガス、ならびに/または、塩素Cl2、塩化水素HCl、フッ化水素HF、ヨウ素I2、ヨウ化水素HI、臭素Br2、臭化水素HBr、三塩化リンPCl3、五塩化リンPCl5、三フッ化リンPF3、およびそれ以外のハロゲン含有ガスなどのハロゲン化物、ならびに/または、水素H2、アンモニアNH3、メタンCH4、およびそれ以外の水素含有ガスなどの還元ガスが挙げられる。上記添加ガスは、例えばエッチングプロセスにおいて緩衝ガスとして、パッシベーション媒体として、などで使用され得る。
【0141】
図3は、試料200を粒子線112で分析および/または処理するための装置100の、第3の例示的な実施形態の概略図からの抜粋を示す。これには特に、
図2に示す装置100の特定の実施形態が含まれる。
【0142】
この場合、シールド要素116は、ガス給送部130の経路の最後のセクションを形成するチャネルを備える。この場合したがって、プロセスガスPGはシールドユニット116を通して誘導される。このようにして、プロセスガスPGを処理位置202の非常に近くまで運ぶことができる。この結果、装置100の周囲へのプロセスガスPGの漏出を低減することができ、プロセスガスPGの消費を抑えることができる。特に、処理位置202において、より高いプロセスガス圧とより少ないプロセスガス消費が同時に達成され得る。この結果、処理速度を高めることができる。
【0143】
組み込まれたガス給送部を有するシールド要素116は例えば、特別な製造方法、特にLIGA製作法(LIGA:ドイツ語のLithographie,Galvanik und Abformung[リソグラフィ、電気めっき、および成形]からの略語)によって製造される。
【0144】
図4は、シールド要素116の6つの異なる例示的な実施形態(A)~(F)を概略的に示す。
図4はシールド要素116を平面図で、例えばビーム方向から示しており、この理由から凸セクション117はいずれの場合も、点線として示されている。例として、凸セクション117はこの線から始まり、外側ではシールド要素が特に平面状の様式で具現化され得る。
図4に図示されている例は全て円形の外縁を有するシールド要素116を備えるが、そこから逸脱する幾何形状も可能である。図示されているシールド要素116の各々は、
図1~
図3、
図7、
図8、
図10、または
図12のいずれかに係る装置100において使用され得る。
【0145】
図4(A)の例では、シールド要素116は。単一穴の絞りの形態で具現化されている。シールド要素116は例えば4mmの直径を有し、貫通開口部118は30μmの直径を有する。凸セクション117は例えば2mmの直径を有する。
【0146】
図4(B)の例では、シールド要素116は複数の貫通開口部118を有するが、より明確にするために参照符号で特定したのはそのうちの1つだけである。2つの貫通開口部118の間にウェブ119が配備されており、上記ウェブは例えばシールド要素116の材料から成る。例として、シールド要素116は10μmの厚さを有する金膜で形成し、貫通開口部118は打ち抜き法で形成した。この例では、シールド要素116の凸セクション117内に複数の貫通開口部118が配備されている。この例では貫通開口部118は全て同じサイズおよび幾何形状を有するが、様々なサイズおよび/または様々な幾何形状を有する複数の貫通開口部118を設けてもよい。
【0147】
図4(C)の例では、シールド要素116は複数の貫通開口部118を有するが、より明確にするために参照符号で特定したのはそのうちの1つだけである。貫通開口部118はここでは全て六角形の幾何形状を有する。したがって、2つの貫通開口部118の間のそれぞれのウェブ119は一定の幅を有する。この例では、凸セクション117の少なくとも一部に、複数の貫通開口部118が同様に配備されている。
【0148】
図4(D)の例では、シールド要素116は複数の貫通開口部118を有するが、より明確にするために参照符号で特定したのはそのうちの1つだけである。貫通開口部118はここでは全て正方形の幾何形状を有する。したがって、2つの貫通開口部118の間のそれぞれのウェブ119は一定の幅を有する。この例では、凸セクション117の少なくとも一部に、複数の貫通開口部118が同様に配備されている。
【0149】
図4(E)の例では、シールド要素116は複数の貫通開口部118を有するが、より明確にするために参照符号で特定したのはそのうちの1つだけである。貫通開口部118はここでは全て六角形の幾何形状を有する。ただし異なるサイズの貫通開口部118が設けられる。
【0150】
最も大きい貫通開口部118は、凸セクション117内で中央に配置されている。中央貫通開口部118は、試料ステージ120に最も近いシールド要素116の点を含む(
図1~
図3、
図5、
図7、
図8、
図10、または
図12を参照)。中央貫通開口部118は好ましくは、試料200を分析または処理するための粒子線112(
図1~
図3、
図7、
図8、
図10、または
図12を参照)が中を誘導される、貫通開口部118である。中央貫通開口部118と直接隣り合う様式で、6つの幾分小さい貫通開口部118が配置されている。これらの貫通開口部118同士の間のウェブ119のウェブ幅は、例えば10μmである。半径方向の更に外側には、特に六角形のパターンで配置されている、全部で12個の更なる貫通開口部118が配置されている。これら外側貫通開口部118同士の間のウェブ幅は、例えば50μmである。
【0151】
この例のシールド要素116では、第1に、貫通開口部118の各々の上を粒子線112で走査することによって試料200の概観記録を生成することと、第2に、一方で同時に、幅広のウェブ119によって自由な断面積を小さくし、以ってシールド要素116を通るプロセスガスの体積流量を低減することと、が可能になる。
【0152】
図4(F)の例では、シールド要素116は複数の貫通開口部118を有するが、より明確にするために参照符号で特定したのはそのうちの1つだけである。貫通開口部118はここでは全て六角形の幾何形状を有する。この例では貫通開口部118は全て同じサイズのものであり、ウェブ119は例えば40μmである、一定の幅を有する。この例のシールド要素116は例えば、例(E)のシールド要素116と同じ利点を有する。
【0153】
図5は、複数の貫通開口部118を有するシールド要素116の1つの例示的な実施形態を通る断面からの抜粋を概略的に示しており、
図5のこの抜粋にはそのうち1つの貫通開口部118だけが示されている。シールド要素116は例えば、
図1~
図4を参照して記載したように具現化され得る。出口開口部118は2つのウェブ119によって画定される。ウェブ119の断面は、貫通開口部118上のシールド要素116の面法線Nに対して垂直な第1の平面内の試料ステージ側断面積118Aが、第1の平面と平行な第2の平面内の貫通開口部118の開口部側断面積118Bよりも小さくなるような様式で形成される。
【0154】
ウェブ119が上向きにテーパするといってもよい。ウェブ119は例えば、三角形または台形形状のものとして具現化され得る。この断面によって達成されるのは、例として
図5に描かれている開口角度αを有する錐体によって図示されているように、試料200が発する後方散乱電子または2次電子を、シールド要素116に対するより大きい立体角範囲内で検出できるということである。
【0155】
この結果、シールド要素116の機械的安定性は同じままで、検出効率および/または解像度が改善され得る。
【0156】
シールド要素116が単一穴の絞りとして具現化されている場合(
図4(A)を参照)、例えば個々の貫通開口部118の側壁は、同じ効果を達成するように対応して形成される。例として、貫通開口部118の側壁は錐体を形成する(図示せず)。
【0157】
図6は、
図4(F)のものと同様に具現化されているが貫通開口部118のうちの1つがある幾何学的特徴を有する点が異なる、シールド要素116の更なる例示的な実施形態を概略的に示す。この例では貫通開口部118
*は2つの隣り合う貫通開口部118を備え、それらの間でウェブ119が除去されている。この貫通開口部118
*はしたがって、その他の貫通開口部118から曖昧さなしに区別可能であり、したがって向きの設定が可能になる。特に、貫通開口部118
*から進めて、試料ステージ120の最も近くにくる中央貫通開口部118を見付けることが可能である(
図1~
図3、
図5、
図7、
図8、
図10、または
図12を参照)。
【0158】
図7は、試料200(
図2、
図3、または
図12を参照)を粒子線112で分析および/または処理するための装置100の、第3の例示的な実施形態の概略図を示す。以下で別様に記載されていなければ、
図7の装置100は、
図1、
図2、または
図3のいずれかの装置100と同じ特徴を有し得る。
【0159】
この例では、供給ユニット110は、シールド要素116とビーム生成ユニット111との間に配置されているビーム誘導要素113を備える。電圧源U0は、ビーム生成ユニット111とビーム誘導要素113との間に特定の加速電圧を印加するように構成される。粒子線112の荷電粒子はしたがって、ビーム誘導要素113の方向に加速される。
【0160】
シールド要素116は例えば、供給ユニット110から絶縁される様式で保持される。更なる電圧源U1が、ビーム誘導要素113とシールド要素116との間に電圧を印加するように構成される。その結果、ビーム誘導要素113とシールド要素116との間に電界(図示せず)が形成される。この電界は、更なる電圧源U1によって印加される電圧によって制御可能である。こうして、ビーム誘導要素113とシールド要素116との間の領域において、粒子線112を誘導すること、特に加速もしくは減速および/または偏向することができる。同じことが、試料200から発し、ビーム方向に対向してシールド要素116を通過する、荷電粒子にも当てはまる。ビーム誘導要素113はシールド要素116および電圧源U1と共に電気光学要素を形成する、ということもできる。
【0161】
図7の図の代替として、更なる電圧源U1は例えば、磁極片として具現化されているビーム誘導要素113とシールド要素116との間に配置することができる。
【0162】
図8は、試料200(
図2、
図3、または
図12を参照)を粒子線112で分析および/または処理するための装置100の、第4の例示的な実施形態の概略図を示す。この例の装置100は
図7の装置100と同じ構造を有する。ただしシールド要素116はここでは、保持装置116
*によって追加的に保持される。保持装置116
*はここでは別個の要素として具現化されており、シールド要素116は保持装置116
*から電気的に絶縁されている。追加の電圧源U2が、ビーム誘導要素113と保持装置116
*との間に電圧を印加するように構成される。
【0163】
ビーム方向に沿って2つの電界(図示せず)が並んで配置されており、粒子線112はこれらを通過し、このことによって粒子線112に影響を与えることができる。この構造を用いて多数の異なる電界構成を設定可能である。
【0164】
示されている構造の代替として、追加の電圧源U2を、保持装置116*とシールド要素116との間に配置することもできる。
【0165】
更なる代替としては、保持装置116*とビーム誘導要素113との間に電圧源U1が、および保持装置116*とシールド要素116との間に追加の電圧源U2が配置される。
【0166】
図8には更に、シールド要素116から離れる方に流れる電流を検出するように構成されている、電流測定デバイスI1が示されている。電流測定デバイスI1は、様々な方法で検出器として使用され得る。特に、シールド要素116と保持装置116
*またはビーム誘導要素113との間に印加されエネルギーフィルタとして働く電圧と協働して、例えば、数電子ボルト~数10電子ボルトの範囲内の低いエネルギーを有する2次電子を、ビームエネルギーの範囲内のより高いエネルギーを有する後方散乱電子から区別することが可能である。シールド要素116はその場合、例えば2次電子検出器として使用され得る。
【0167】
また更に、検出された電流からシールド要素116の領域内のガス圧を推定することができるが、その理由は、ガス圧と電流との間に正の相関が存在するからである。ガス圧が増大すると粒子線の粒子とガス分子との間により多くの衝突が生じ、したがってより広範囲の散乱が生じ、この結果シールド要素116へと散乱される粒子の数が増え、したがって検出される電流も大きくなる。
【0168】
図9は、ここでは各々が貫通開口部118と隣り合う互いに絶縁された8つのセクションIa、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVbを備える、シールド要素116の更なる例示的な実施形態を概略的に示す。これらのセクションの互いに対向する対、つまりIa-Ib、IIa-IIb、IIIa-IIIb、IVa-IVbのそれぞれに、この対にそれぞれ割り当てられた制御可能な電圧源UI、UII、UIII、UIVによって、電圧を印加することができる。ビーム偏向要素を形成するこのシールド要素116によって、粒子線112に対して追加の制御を実現することが可能である(
図1~
図3、
図7、
図8、
図10、または
図12を参照)。
【0169】
図10は、試料200を粒子線112で分析および/または処理するための装置100(
図2、
図3、または
図12を参照)の、更なる例示的な実施形態からの抜粋を、概略的に示す。以下で別様に記載されていなければ、
図10の装置100は、
図1~
図3、
図7、または
図8のいずれかの装置100と同じ特徴を有し得る。
【0170】
この例示的な実施形態の特別な特徴は、2つのシールド要素116がビーム方向に沿って並んで設けられ、上記シールド要素がいずれも開口部114を覆っていることである。この場合、シールド要素116のうちの1つが位置決めユニット140によって保持される。こうしてこのシールド要素116を、その上方に固定的に配置されているシールド要素116に対して変位させることができる。このようにして、2つのシールド要素116は設定可能な絞りを形成する。位置決めユニット140は特に、1つもしくは複数の湾曲部および/または圧電アクチュエータを備える。これによりシールド要素116は、少なくとも1つの軸線に沿って変位可能である。シールド要素116は、少なくとも2つの軸線に沿って変位可能であるのが好ましい。加えておよび/または別法として、シールド要素116は回転可能な様式で保持され得る。
【0171】
【0172】
第1のステップS1において、試料200は試料ステージ120上に配置される。これは例えば、貫通開口部118(
図1~
図10、または
図12を参照)が試料200上の処理位置202(
図2、
図3、または
図12を参照)の直上にくるように、試料200をシールド要素116(
図1~
図10、または
図12を参照)の下方に位置付けることを含む。
【0173】
第2のステップS2において、粒子線112が供給され、第3のステップS3において、粒子線112が貫通開口部118を通して試料200上の処理位置202上へと放射され、このようにして試料200が分析および/または処理される。
【0174】
図12は、試料200を粒子線112で分析および/または処理するための装置の、更なる例示的な実施形態の概略図を示す。以下で別様に記載されていなければ、
図12の装置100は、
図1~
図3、
図7、
図8、または
図10のいずれかの装置100と同じ特徴を有し得る。
【0175】
この例示的な実施形態では、装置100は、シールド要素116の凸セクション117によって試料200との電気接触を確立するように構成される。このことは特に導電性表面を有する試料200の場合に有利であり得るが、その理由は、電荷が直接試料の表面から流れ去ることができ、その結果妨害的な電界が形成されないからである。特にこの例示的な実施形態では、試料200をシールド要素116と接触させる前に、粒子線誘起プロセスによって試料の表面上に処理位置202の周囲に保護層204が堆積される。特に、堆積プロセスは装置100によって実行された。この目的のため、例えば、プロセスガスPGとしてモリブデンヘキサカルボニルMo(CO)
6を使用した(
図2または
図3を参照)。このように生成された保護層204は有利な導電性を有し、またシールドユニット116が試料200と接触しているときにシールドユニット116によって引き起こされる試料200の機械的損傷に対する保護物として働く。分析または処理の完了後、保護層204は、例えば粒子線誘起エッチングプロセスによって再び除去され得る。
【0176】
図13は、試料200を粒子線112で分析および/または処理するための装置100の、第8の例示的な実施形態の概略図からの抜粋を示す。以下で別様に記載されていなければ、
図13の装置100は、
図1~
図3、
図7、
図8、
図10、または
図12のいずれかの装置100と同じ特徴を有し得る。
【0177】
この例では、供給ユニット110は、シールド要素116の貫通開口部118を通して試料200上の処理位置202へとプロセスガスPGを給送するように構成されている、ガス給送部130を備える。プロセスガスPGは貫通開口部118を通って粒子線112のビーム方向に沿って流れ、この結果試料200上の処理位置202に到達する。
【0178】
ガス給送部130のこの構成を用いる場合、プロセスガスPGがビーム生成ユニット111に向かってビーム方向と対向する方向にも流れて(
図1、
図7、または
図8を参照)、例えば供給ユニット110中の要素と化学反応するリスクが存在する。したがってこの例では、アパーチャ132はノズルまたはガス給送部130の出口の上方に設けられている。アパーチャ132は粒子線112用の貫通開口部を有する。アパーチャ132は、自由なガス流がビーム方向に対向して上向きに流れるのを防止する。
【0179】
同時に、アパーチャ132に電位を印加することができ、このことにより、アパーチャ132をビーム誘導に使用すること、および/またはさもなければ検出器として使用することができる。アパーチャ132に加えて、差動ポンプ段を設けることができ(図示せず)、これらによりビーム方向に対向する上向きのガス流が更に低減される。
【0180】
【0181】
図14A~
図14Dに図示されているシールド要素116は全て平面状のセクション116Aを有し、そこから凸セクション117が延在する。ここに図示されているシールド要素116は、特にそのそれぞれの凸セクション117の幾何形状が異なる。ただし、平面状セクション116Aがシールド要素116の必須の特徴ではないことに留意すべきである。複数の実施形態(図示せず)において、シールド要素116は平面状セクション116Aを備えない。更なる実施形態では、シールド要素116は凸セクション117から成る。
【0182】
図14Aに図示されているシールド要素116は半球状の凸セクション117を有し、その場合貫通開口部118は、この半球の最も深い地点に配置されている。凸セクション117が完全な半球を構成する必要はないことに留意すべきである。更なる実施形態では、凸セクション117は球面におけるより小さい区画を構成する。更に、形状は厳密な球状である必要はなく、例えば形状を圧縮または延伸する場合など、むしろそこからの逸脱が存在してもよい。
【0183】
図14Bは、
図14Aに示したものと幾何学的に同一であるが、貫通開口部118に加えて更に別の開口部(参照符号なし)を有する、シールド要素116を示す。シールド要素116の凸セクション117が網体として具現化されるということもできる。
【0184】
図14Cに図示されているシールド要素116は、回転放物面の形態の凸セクション117を有し、貫通開口部118は回転放物面の最も深い地点に配置されている。
【0185】
図14Dに図示されているシールド要素116は錐体の形態の凸セクション117を有し、その場合貫通開口部118は錐体の頂点に配置される。
【0186】
図4(A)~
図4(F)、
図6、または
図9に図示されている各シールド要素116を、
図14A~
図14Dを参照して図示されているような形状にすることができることに留意すべきである。言い換えれば、
図14A~
図14Dに図示されているシールド要素116の各々は、
図4(A)~
図4(F)、
図6、または
図9を参照して記載したシールド要素116の追加の特徴も同じく有し得る。
【0187】
図14A~
図14Cに図示した実施形態は、数学的定義に従い厳密に凸である、凸セクション117の例である。用語「凸」について、
図15を参照し説明的な例に基づいて説明する。
【0188】
図15は用語「凸」を説明するための概略図を示す。
図15は、例えば凸セクション117を通る断面の切断縁部を表す、曲線117を示す。曲線117上の2つの点P1、P2が強調されている。これらの2つの点P1、P2の間の接続直線LINが更に図示されている。
【0189】
曲線117は凸であるが、このことは例えば、
図15において例として2つの点P1、P2に関して図示されているように、曲線117上の点P1、P2のどの無作為の対に対する接続直線LINも、曲線117の外部に存在していることから認識できる。
【0190】
本発明について例示的な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は様々な方法で修正可能である。特に、様々な例示的な実施形態で説明した特徴および態様は互いに組合せ可能であり、このことは例示的な実施形態の対応する説明でそのように明示的に述べられていない場合にも当てはまる。
【符号の説明】
【0191】
100 装置
110 供給ユニット
111 ビーム生成ユニット
112 粒子線
113 ビーム誘導要素
114 開口部
116 シールド要素
116* 保持装置
116A 平面状領域
117 凸セクション
118 貫通開口部
118* 貫通開口部
118A 断面積
118B 断面積
119 ウェブ
120 試料ステージ
130 ガス給送部
132 アパーチャ
140 位置決めユニット
200 試料
202 処理位置
204 保護層
Α 開口角度
E 電界
I1 電流測定デバイス
Ia セクション
Ib セクション
IIa セクション
IIb セクション
IIIa セクション
IIIb セクション
IVa セクション
IVb セクション
LIN 接続直線
P1 点
P2 点
PG プロセスガス
Q 電荷
S1 方法のステップ
S2 方法のステップ
S3 方法のステップ
U0 電圧源
U1 電圧源
U2 電圧源
UI 電圧源
UII 電圧源
UIII 電圧源
UIV 電圧源
【手続補正書】
【提出日】2023-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(200)を粒子線(112)で分析および/または処理するための装置(100)であって、前記試料(200)はリソグラフィマスクであり、前記装置(100)は、
前記試料(200)を保持するための試料ステージ(120)と、
前記粒子線(112)を供給するための供給ユニット(110)であり、
前記粒子線(112)を前記試料(200)上の処理位置(202)まで誘導するための開口部(114)、および
前記試料(200)上に蓄積した電荷(Q)によって生成される電界(E)をシールドするためのシールド要素(116)、を備え、
前記シールド要素(116)は、前記開口部(114)を覆っており、シート状の様式で具現化されており、導電性材料を含み、
前記シールド要素(116)は凸セクション(117)を備え、前記セクションは前記試料ステージ(120)に対して凸でありかつ前記試料ステージ(120)の方向に湾曲しており、
前記凸セクション(117)は前記粒子線(112)が前記試料(200)へと通過するための貫通開口部(118)を有する、供給ユニット(110)と、を備え、
前記装置(100)は、前記粒子線(112)による前記試料(200)の分析または処理中に、前記シールド要素(116)の前記凸セクション(117)が前記試料(200)から最大で500μmの距離にあるように構成されている、装置(100)。
【請求項2】
前記シールド要素(116)の前記貫通開口部(118)を通して前記試料(200)上の前記処理位置(202)までプロセスガス(PG)を給送するように構成されているガス給送部(130)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
間隙内にプロセスガス(PG)を給送するように構成されているガス給送部(130)を備え、前記間隙は、前記試料ステージ(120)上に配置されている前記試料(200)によっておよび前記シールド要素(116)によって形成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記ガス給送部(130)は前記シールド要素(116)に組み込まれた給送チャネルを備える、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記貫通開口部(118)は、前記シールド要素(116)と前記試料ステージ(120)との間の距離が最も小さい点を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記シールド要素(116)は平面状セクション(116A)を備え、そこから前記凸セクション(117)が前記試料ステージ(120)の方向に延在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記凸セクション(117)は漏斗形状の様式で、特に円形の断面を有して具現化されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記凸セクション(117)は、厳密に凸であるセクション、球面、および/または球面のある区画を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記凸セクション(117)は、前記シールド要素(116)の前記凸セクション(117)の表面上にある2つの点(P1、P2)を接続する接続直線(LIN)が、前記シールド要素(116)の前記凸セクション(117)の前記表面上の2つの点(P1、P2)のどのような組合せに対しても、前記シールド要素(116)の外部に存在するような様式で具現化されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記シールド要素(116)はその表面上に導電性材料から成る層を備え、前記層の層厚さは、前記材料内への前記粒子線(112)の前記粒子の侵入深さ以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記シールド要素(116)はちょうど1つの貫通開口部(118)を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記シールド要素(116)はウェブ(119)によって互いから分離されている複数の貫通開口部(118)を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記貫通開口部(118)は六角形の断面を各々有する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ウェブ(119)は、前記貫通開口部(118)上の前記シールド要素(116)の面法線(N)に対して垂直な第1の平面内の前記複数の貫通開口部(118)のうちのそれぞれ1つの、試料ステージ側断面積(118A)が、前記第1の平面と平行な第2の平面内の対応する前記貫通開口部(118)の開口部側断面積(118B)よりも小さくなるような形状となっている、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記複数の貫通開口部(118)のうちの1つは、前記貫通開口部(118)を更なる前記貫通開口部(118)から区別する幾何学的特徴を有する、請求項12~14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記複数の貫通開口部(118)のうちの1つは前記シールド要素(116)と前記試料ステージ(120)との間の距離が最小である点を含み、更なる前記貫通開口部(118)は前記1つの貫通開口部(118)に対して対称に配置されている、請求項12~15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
ビーム生成ユニット(111)と、前記ビーム生成ユニット(111)と前記シールド要素(116)との間に配置されておりかつ前記粒子線(112)を誘導するように構成されている、ビーム誘導要素(113)と、を備え、前記シールド要素(116)と前記ビーム誘導要素(113)との間に電圧を印加するための電圧源(U1)が設けられている、請求項1~16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記シールド要素(116)は保持装置(116
*)によって前記供給ユニット(110)に固定されており、前記保持装置(116
*)および前記シールド要素(116)は互いに電気的に絶縁されており、前記保持装置(116
*)と前記ビーム誘導要素(113)および/または前記シールド要素(116)との間に電圧を印加するための更なる電圧源(U2)が設けられている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記シールド要素(116)は電気的に絶縁される様式で保持されており、前記シールド要素(116)から流れ去る電流を検出するための検出ユニット(I1)を備える、請求項1~18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記シールド要素(116)は、互いに電気的に絶縁されておりかつ前記貫通開口部(118)を画定する、複数のセクション(Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb)を備え、対向して配置されているいずれの場合も2つのセクション(Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb)の間に、対応する電圧源(UI、UII、UIII、UIV)によって電圧を印加することができる、請求項1~19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
複数のシールド要素(116)が前記ビーム方向に沿って1つずつ並んで配置されておりかつ前記開口部(114)を覆っており、前記複数のシールド要素(116)のうちの少なくとも1つは、絞り値を設定可能な開口部を提供する目的で変位可能な様式で保持されている、請求項1~20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の装置と試料(200)の組合せであって、前記試料(200)はリソグラフィマスクである、請求項1~21のいずれか1項に記載の装置と試料(200)の組合せ。
【請求項23】
請求項1~21のいずれか1項に記載の装置(100)によって試料(200)を粒子線(112)で分析および/または処理するための方法であって、前記試料(200)はリソグラフィマスクであり、前記方法は、
前記試料(200)を前記試料ステージ(120)上に配置するステップ(S1)と、
前記粒子線(112)を供給するステップ(S2)と、
前記貫通開口部(118)を通して前記試料(200)上の前記処理位置(202)上へと前記粒子線(112)を放射するステップ(S3)と、を含む、方法。
【国際調査報告】