(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】周期的低温膜成長プロセス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20230926BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230926BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20230926BHJP
C23C 16/509 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H01L21/318 A
H01L21/31 C
C23C16/34
C23C16/509
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517928
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 US2021050516
(87)【国際公開番号】W WO2022060875
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514028776
【氏名又は名称】トーキョー エレクトロン ユーエス ホールディングス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,ジャンピン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツェク,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 俊彦
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA13
4K030BA40
4K030EA03
4K030FA03
4K030JA10
4K030JA20
4K030KA02
5F045AA15
5F045AA20
5F045AB33
5F045AC12
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD04
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AE01
5F045BB07
5F045DP03
5F045DP04
5F045DQ10
5F045EE17
5F045EH01
5F045EK07
5F058BA20
5F058BC08
5F058BC09
5F058BC10
5F058BC20
5F058BD10
5F058BD12
5F058BD13
5F058BE10
5F058BF74
5F058BF75
5F058BF76
5F058BH16
(57)【要約】
窒化方法は、約400℃未満の温度の処理チャンバー内で、以下のステップ:非反応性表面をエネルギー流束に曝露することによって、処理チャンバー内の基板の非反応性表面を処理して非反応性表面を反応性表面に変換するステップ、及び窒素系ガスを使用して反応性表面を窒化して、反応性表面をその後の非反応性表面を含む窒化物層へと変換するステップをin situで周期的に実行することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約400℃未満の温度の処理チャンバー内で以下のステップ:
非反応性表面をエネルギー流束に曝露することによって、前記処理チャンバー内の基板の前記非反応性表面を処理して前記非反応性表面を反応性表面に変換するステップ、及び
窒素系ガスを使用して前記反応性表面を窒化して、前記反応性表面をその後の非反応性表面を含む窒化物層へと変換するステップ
をin situで周期的に実行することを含む窒化方法。
【請求項2】
非反応性表面の各処理が約5秒未満行われること;及び
反応性表面の各窒化が約5秒未満行われること;をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記窒素系ガスがアンモニア(NH3)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非反応性表面を処理することが、前記処理チャンバー内で生成されたプラズマを使用して前記エネルギー流束を供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非反応性表面を処理することが、イオンビーム源、電子ビーム源、光子源、ラジカル源、又は熱フラッシング源を使用してエネルギー流束を供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非反応性表面を処理することが、
前記エネルギー流束を生成するためにソース電力を印加することと、
前記処理チャンバーへの前記窒素系ガスの拡散を防止することを同時に含み、
前記反応性表面を窒化することが、
前記ソース電力を除去することと、
前記窒素系ガスを前記処理チャンバーに供給することを同時に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
約400℃未満の温度のプラズマ処理チャンバー内で、以下のステップ:
前記プラズマ処理チャンバー内で生成されたプラズマからのイオン及び光子をシリコン基板に衝突させることによって、前記シリコン基板の非反応性領域から水素を除去して前記非反応性領域を反応性領域に変換するステップ;及び
水素化窒素ガスを使用して前記反応性領域を窒化して、前記反応性領域をその後の非反応性領域を含む窒化物領域へと変換するステップ
をin situで周期的に実行することを含む、窒化方法。
【請求項8】
前記イオン及び光子が約4.06eVより大きい平均エネルギーを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非反応性領域からの前記水素の除去と、前記反応性領域の窒化とが同時に行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記水素化窒素ガスがアンモニア(NH
3)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記プラズマ処理チャンバー内で生成される前記プラズマがヘリウムプラズマである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記温度が約30℃未満である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
約400℃未満の温度の処理チャンバー内で、以下のステップ:
基板の水素化表面に入射するエネルギー流束を使用して前記水素化表面から水素を除去することによって、前記処理チャンバー中の前記水素化表面を処理して前記水素化表面を反応性表面へと変換するステップであって、前記基板が第1の材料を含むステップ、及び
第2の材料を含む水素系ガスに前記反応性表面を曝露して、前記反応性表面を、その後の水素化表面と、前記第1の材料及び第2の材料を含む化合物とを含む膜へと変換するステップ
をin situで周期的に実行することを含む、膜成長方法。
【請求項14】
前記ステップを周期的に繰り返す前に、約250℃の温度に前記基板を加熱し、ステップを周期的に繰り返す間に前記温度が維持されることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップを周期的に繰り返す前に、前記処理チャンバー内の前記基板をプラズマプロセスで処理することであって、前記プラズマプロセスと前記ステップを周期的に実行することとの間に前記基板が前記処理チャンバーから取り出されないことをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記基板の前記水素化表面を処理することが、前記水素化表面を熱的にフラッシングして前記水素化表面の温度を局所的に上昇させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記水素化表面を処理することが、前記処理チャンバー内で生成されたプラズマで前記水素化表面を処理することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の材料が窒素であり、前記第2の材料がケイ素であり、前記化合物が窒化ケイ素である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の材料が窒素であり、前記第2の材料が酸化ケイ素であり、前記化合物が酸窒化ケイ素である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の材料が炭素であり、前記第2の材料がケイ素であり、前記化合物が炭化ケイ素である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許及び出願の相互参照
本出願は、2020年9月19日に出願された米国非仮特許出願第17/026,168号明細書に基づく優先権及びその出願日の利益を主張するものであり、該出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して低温膜成長プロセスに関し、特定の実施形態では、低温で周期的に行われる膜成長プロセスのための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロエレクトロニクスワークピース内のデバイス形成は、基板上の多くの材料層の形成、パターニング及び除去を含む一連の製造技術を伴い得る。膜形成プロセスは、デバイス形成時に必須であり、基板表面上に堆積及び/又は成長させることができる。例えば、膜成長プロセスは、典型的には、膜の構成要素として、及び/又は結晶成長のためのシード領域として、基板内(例えば露出面)の材料を利用する。
【0004】
窒化物系材料は、マイクロエレクトロニクスデバイスの製造において、バリア層、パッシベーション層、誘電体層、マスク層、及び基板として使用することができる。マイクロ電子デバイスに有用な窒化物のいくつかの例は、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化アルミニウム、及び窒化ガリウムである。熱窒化及びプラズマ窒化などの窒化プロセスは、典型的には、基板からの材料を構成要素として含む窒化膜を形成するために使用される。
【0005】
窒化などの熱及びプラズマ支援膜成長プロセスは、いくつかの欠点を有する場合がある。例えば、熱窒化プロセスは、多くのマイクロエレクトロニクスワークピースのサーマルバジェットを超える可能性がある(例えばデバイスが既に形成されている場合)。さらに、プラズマ窒化などのプラズマ支援プロセスは、基板の表面に望ましくない損傷を与える場合がある。したがって、基板の損傷を最小限に抑える低温で行われる膜成長プロセスが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、窒化方法は、約400℃未満の温度の処理チャンバー内で、以下のステップをin situで周期的に実行することを含む:非反応性表面をエネルギー流束に曝露することによって、処理チャンバー内の基板の非反応性表面を処理して非反応性表面を反応性表面に変換するステップ、及び窒素系ガスを使用して反応性表面を窒化して、反応性表面をその後の非反応性表面を含む窒化物層へと変換するステップ。
【0007】
本発明の別の実施形態によれば、窒化方法は、約400℃未満の温度のプラズマ処理チャンバー内で、以下のステップをin situで周期的に実行することを含む:プラズマ処理チャンバー内で生成されたプラズマからのイオン及び光子をシリコン基板に衝突させることによって、シリコン基板の非反応性領域から水素を除去して非反応性領域を反応性領域に変換するステップ;及び水素化窒素ガスを使用して反応性領域を窒化して、反応性領域をその後の非反応性領域を含む窒化物領域へと変換するステップ。
【0008】
本発明の更に別の実施形態によれば、膜成長方法は、約400℃未満の温度の処理チャンバー内で、以下のステップをin situで周期的に実行することを含む:水素化表面に入射するエネルギー流束を使用して水素化表面から水素を除去することによって、処理チャンバー中の基板の水素化表面を処理して水素化表面を反応性表面へと変換するステップであって、基板が第1の材料を含むステップ、及び第2の材料を含む水素系ガスに反応性表面を曝露して、反応性表面を、その後の水素化表面と、第1の材料及び第2の材料を含む化合物を含む膜へと変換するステップ。
【0009】
本発明及びその利点をより完全に理解するために、ここで、添付図面と併せて読まれるべき以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A-B】本発明の一実施形態による、約400℃未満の温度の処理チャンバー内でin situで周期的に行われる例示的な窒化プロセスを示す。
図1Aは、非反応性表面を含む基板の初期状態を示し、
図1Bは、第1の処理ステップを示す。
【
図1C-D】本発明の一実施形態による、約400℃未満の温度の処理チャンバー内でin situで周期的に行われる例示的な窒化プロセスを示す。
図1Cは、窒化膜を形成するための第1の窒化ステップを示し、
図1Dは、窒化膜上に形成されたその後の非反応性表面を示す。
【
図1E-F】本発明の一実施形態による、約400℃未満の温度の処理チャンバー内でin situで周期的に行われる例示的な窒化プロセスを示す。
図1Eは、第2の処理ステップを示し、
図1Fは、第2の窒化ステップを示す。
【
図1G-H】本発明の一実施形態による、約400℃未満の温度の処理チャンバー内でin situで周期的に行われる例示的な窒化プロセスを示す。
図1Gは、窒化膜上に形成された別のその後の非反応性表面を示し、
図1Hは、第3の処理ステップを示す。
【
図2】本発明の一実施形態による、約400℃未満の温度で酸窒化ケイ素を形成するために使用される別の例示的な窒化プロセスを示す。
【
図3】本発明の一実施形態による、約400℃未満の温度で炭化ケイ素を形成するために使用される例示的な炭化プロセスを示す。
【
図4】本発明の一実施形態による、約400℃未満の温度で行われる例示的な膜成長プロセスを示す。
【
図5】本発明の一実施形態による例示的な膜成長装置を示す。
【
図6】本発明の一実施形態による例示的なプラズマ処理装置を示す。
【
図7】本発明の一実施形態による窒化の例示的な方法を示す。
【
図8】本発明の一実施形態による膜成長の例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
異なる図中の対応する数字及び記号は、特段の指示のない限り、対応する部分を概して参照する。図面は、実施形態の関連する態様を明確に示すように描かれており、必ずしも正確な縮尺で描かれているわけではない。図面に描かれる特徴の端部は、特徴の範囲の終端を必ずしも示していない。
【0012】
様々な実施形態を作成すること及び使用することについて、以下で詳述する。しかしながら、本明細書で説明する様々な実施形態は、多様な具体的な文脈において適用可能であると理解されるべきである。述べる具体的な実施形態は、様々な実施形態を作成及び使用する具体的な方法を単に例示するものであり、限定された範囲において解釈されるべきではない。
【0013】
窒化(「窒化処理」とも呼ばれる)は、基板の露出面に窒化物を形成する方法である。窒化物は、窒素を基板の材料と反応させることによって形成される。熱窒化(「ガス窒化」とも呼ばれる)は、通常高温(例えば少なくとも600℃、典型的には900℃超)で行われる。熱窒化プロセスの窒化効率は、温度が低いほど低下し、多くの場合、400℃未満で完全に停止する。窒素源は通常アンモニア(NH3)であり、基板をNH3雰囲気に置くことによって基板に供給される。
【0014】
熱窒化プロセスには様々な欠点が存在する。要求される高い温度は、典型的にはマイクロ電子基板のサーマルバジェットに対して非常に高く、許容できないほど高い基板温度になる。例えば、基板温度の上昇は、ドーパントの制御不能な再拡散を引き起こし、望ましくないドーパントの再分布が生じる可能性がある。デバイスの劣化や材料の変性など、基板材料に対するその他の副次的な影響も考えられる。その結果、熱窒化プロセスは、デバイス製造プロセス(例えば先端ノード用)と適合性がないことが多い。
【0015】
プラズマ窒化は、基板の露出面に窒化物を形成する方法としても使用される。潜在的に低い温度のため、プラズマ窒化は熱窒化に代わるものと考えられているが、典型的にはまだ約400℃で実行されている。600℃よりも低いにもかかわらず、400℃のプラズマ窒化温度は、マイクロエレクトロニクス基板のサーマルバジェットに対しては中程度の温度である(例えばデバイスの観点からは低温ではない)とより正確には考えることができる。さらに、プラズマ窒化は、基板への損傷及びコンフォーマルでない窒化を誘発するという追加の潜在的な欠点も有している。
【0016】
熱窒化及びプラズマ窒化に加えて、又はその代わりに、他の技術を使用することができる。例えば、高機能の反応性化学物質を使用することができる。しかし、これはコストと煩雑さを上昇させる可能性がある。原子層堆積(ALD)などの技術も使用することができる。しかし、ALDは遅く(例えば1~2nm/分)、費用がかかり、また非常に純粋な材料や、正確な操作条件や、関与する表面前処理準備を必要とするほど繊細である。さらに、ALDは、熱ALDやプラズマ強化ALDのように、高い基板温度も必要とする場合がある。
【0017】
従来の窒化プロセスは、不利なことに、高温(例えば基板のサーマルバジェットを超える)及び異なる装置(例えば煩雑さを増加させる、スループットを低下させる、及び汚染物質への暴露の可能性を増加させる)を必要とする。さらに、窒化処理温度を下げる従来のメカニズムは、費用がかかり、煩雑であり、また基板損傷などの他の望ましくない影響をもたらす。従来の窒化プロセスのこれらの欠点は、他の様々な従来の膜成長プロセスにも当てはまる。したがって、低温で実行することができ、基板の損傷が最小限に抑えられ、追加の特殊な装置なしで実行できる膜成長プロセスが望まれるであろう。
【0018】
発明者らは、400℃未満のアンモニア(NH3)雰囲気ではケイ素(Si)の窒化が起こらないことを確認した。ただし、低温(例えば400℃未満)における窒化の反応障壁は、Si表面に化学吸着されたNH3から解離した水素(H)原子によるSi表面の不動態化に起因する可能性がある。本発明者らは、Hの除去によって形成されたダングリングボンドが低温での窒化を促進することを発見した。結果として、室温又は400℃未満の任意の低温で窒化物形成を達成するために、完全に異なる方式を探索することができる。
【0019】
さらに、他の膜成長プロセスの反応障壁も、表面から停止種を除去することによって克服又は低減することができる。例えば、この概念は、Siの窒化のみならず、あらゆる半導体及び金属表面の窒化にも拡張することができる。加えて、窒化物成長、エリア選択的堆積(ASD)、炭化物形成、酸化物形成などの他の膜成長プロセスにも潜在的に有用である。
【0020】
様々な実施形態では、膜成長プロセスは、約400℃未満の温度の処理チャンバー内でin situで処理ステップ及び表面曝露ステップを周期的に実行することを含む。処理ステップは、処理チャンバー内の基板の非反応性表面を反応性表面に変換するために、非反応性表面に入射するエネルギー流束を生成することを含む。例えば、非反応性表面は水素化(すなわち水素終端)表面である場合があり、エネルギー流束は、水素の一部又は全部を除去して反応性表面(例えばダングリングボンドを有する)をもたらすことができる。
【0021】
表面曝露ステップは、反応性材料を含む前駆体ガス(例えば水素系ガス)に反応性表面を曝露することを含む。前駆体ガスの反応性材料は、バルク材料を含む基板の表面及び表面下と反応して、反応性材料とバルク材料とから形成された化合物を含む膜を形成する。反応により形成された膜は、その後の非反応性表面も含む。すなわち、前駆体ガスにさらされた膜の表面は、経時的に反応性が低下し、その結果、次のサイクルの後続の処理ステップで処理に利用可能な別の非反応性表面が得られる(例えばプロセスは自己制限的である)。
【0022】
様々な実施形態では、膜成長プロセスは窒化プロセスである。温度は、400℃よりも大幅に低くてもよい(例えば約250℃未満又は室温)。エネルギー流束は、エネルギー粒子、熱フラッシング、又は他の適切な手段を使用して供給することができる。いくつかの実施形態では、処理チャンバーはプラズマ処理チャンバーであり、エネルギー流束は、プラズマ処理チャンバー内で生成されたプラズマを使用して供給される。基板は、任意の適切な基板であってもよく、いくつかの実施形態ではSiを含む。一実施形態では、前駆体ガスはNH3ガスである。
【0023】
本明細書に記載の膜成長プロセスは、有利なことには、約250℃未満又はほぼ室温などの約400℃未満の低温における膜成長(例えばSi又は他の表面の熱窒化)を可能にすることができる。室温/低温における窒化又は窒化物成長は、プロセスの統合及び新規な資本設備の開発に非常に有益な場合がある。例えば、膜成長プロセスは、拡張されたプロセスウィンドウによって現行の装置に価値を付与することができる。
【0024】
実施形態の膜成長プロセスは、ロジックとメモリのデバイス及びプロセスの両方にとって有益な場合がある。膜成長プロセス(例えば窒化及び/又は窒化物成長プロセス)は、有利なことには、高い温度(例えば熱プロセス)や中程度の温度(例えばプラズマプロセス)の必要性を回避することができ、これは、デバイス特性及びプロセス統合にとって有益な場合がある。
【0025】
加えて、レイヤーバイレイヤーの自己制限的膜成長プロセスは、有利なことには、室温/約400℃未満の低温で達成可能にすることができる。さらなる利点は、Si表面の異なる領域上でのエリア選択的膜成長(例えばASD)を可能にすることであろう。このメカニズムは、有利なことには、Si表面から、他の半導体表面、金属表面、及び誘電体表面などの他の適切な表面へと拡張することができる。
【0026】
以下で提供される実施形態は、膜成長プロセス、特に、低温で周期的に行われる膜成長プロセスのための様々な方法及び装置を説明する。以下の説明は、これらの実施形態を説明する。例示的な窒化プロセスを説明するために
図1A~1Hが使用される。窒化プロセスの別の例は、
図2を用いて説明される。
図3及び
図4は、例示的な炭化プロセス及び例示的な膜成長プロセスをそれぞれ説明するために使用される。
図5及び
図6を使用して2つの例示的な装置が説明される一方で、
図7を使用して例示的な窒化方法が説明され、
図8を使用して例示的な膜成長方法が説明される。
【0027】
図1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、及び1Hは、本発明の一実施形態による、約400℃未満の温度の処理チャンバー内でin situで周期的に行われる例示的な窒化プロセスを示す。
図1Aは、非反応性表面を含む基板の初期状態を示し、
図1Bは、第1の処理ステップを示し、
図1Cは、窒化膜を形成するための第1の窒化ステップを示し、
図1Dは、窒化膜上に形成されたその後の非反応性表面を示し、
図1Eは、第2の処理ステップを示し、
図1Fは、第2の窒化ステップを示し、
図1Gは、窒化膜上に形成された別のその後の非反応性表面を示し、
図1Hは、第3の処理ステップを示す。
【0028】
図1Aを参照すると、窒化プロセス100は、バルク領域118と非反応性表面111とを含む基板110の初期状態を含む。非反応性表面111は、終端結合によって不動態化された不動態化表面であってよい。例えば、非反応性表面111は、図示のように水素化表面であってもよい。或いは、非反応性表面111は、別の種(すなわち窒素と反応して窒化物を形成する基板110の材料とは異なる種)で終端していてもよい。
【0029】
様々な実施形態では、基板110は半導体基板であり、一実施形態ではシリコン基板である。別の実施形態では、半導体基板は、ゲルマニウム(Ge)であってもよく、或いはガリウム(Ga)、ヒ素(As)、窒素(N)などを含む化合物半導体であってもよい。或いは、基板110は、金属基板又は誘電体基板であってもよい。例えば、基板110は、アルミニウム、炭素(例えばグラフェン)、又は酸化ケイ素(SiO2)であってもよい。さらに、基板110は、多くの異なる材料層を含んでいてもよく、多層基板の最上層とすることができる。例えば、基板110は、別の材料の上に形成されたSiO2であってもよい。
【0030】
基板110は、処理チャンバー102内に配置される。処理チャンバー102は、任意の適切な処理チャンバー102であってよい。しかしながら、処理チャンバー102は、低温処理チャンバーであれば十分である(例えば基板を約400℃より高く加熱できる必要はない)。様々な実施形態では、処理チャンバー102は多目的処理チャンバーであり、一実施形態ではプラズマ処理チャンバーである。
【0031】
ここで
図1Bを参照すると、窒化プロセス100は、処理チャンバー102内でin situで行われる第1の処理ステップをさらに含み、その際にエネルギー流束120が基板110の非反応性表面111に供給される。エネルギー流束120は、非反応性表面111を反応性表面112に変換する。例えば、非反応性表面111が水素化表面である場合(図示の通り)、エネルギー流束120は、非反応性表面111に十分なエネルギーを与えて水素を除去し、反応性表面112を残す。図示のように、反応性表面112は、表面で形成されたダングリングボンドの結果として反応性であることができる(例えば、反応性表面112との反応は、エネルギー的に有利であることができる)。
【0032】
いくつかの場合では、エネルギー流束120又は処理継続時間は、非反応性表面の領域のみを反応性にするようなものとすることができる。例えば、非反応性領域(例えば非反応性領域131によって定性的に示される)は、反応性領域(例えば反応性領域132)に変換され得る一方で、非反応性表面111の他の部分は非反応性のままである(例えば水素で終端)。すなわち、処理によって各サイクル中に全ての水素が除去されるわけではない。
【0033】
エネルギー流束120は、反応性表面112で基板110のバルク材料140を曝露することができる。例えば、基板110のバルク領域118は、バルク材料140を含み得る。この具体例では、バルク材料140はSiであるが、他のバルク材料も可能である。本開示の目的のためには、バルクという用語は、基板110(多層基板の最上層であってもよい)の大部分を構成する材料を指す。
【0034】
エネルギー流束120は、基板温度を400℃を超えて上昇させない、又は基板110の下にある構造に損傷を与えない、任意の適切な方法を使用して基板に供給することができる。例えば、エネルギー流束120は、エネルギー粒子(例えばイオン、電子、ラジカル、光子)を使用して基板110に供給することができる。様々な実施形態では、エネルギー流束120はエネルギー粒子のビームであり、いくつかの実施形態ではプラズマによって生成されたエネルギー粒子の混合物である。例えば、エネルギー流束120は、電子ビーム照射、イオンビーム照射(例えばAr+、He+などの不活性イオン)、紫外(UV)光照射(すなわち波長400nm未満)、不活性ラジカルビーム照射、不活性ガスプラズマ(例えばHeプラズマ、Arプラズマなど)、或いは400℃より上で非反応性表面の熱フラッシングを行ってからすぐに低温に戻すことを含み得る。
【0035】
一実施形態では、エネルギー流束120は、ヘリウム(He)プラズマによって生成される。Heプラズマなどの不活性ガスプラズマは、エネルギー粒子ビーム(イオン、電子、ラジカル、及び光子)の組み合わせであるエネルギー流束源として機能することができる。Heプラズマは、基板110の表面に損傷を与えることなしに、終端種の結合を切断するのに十分なエネルギーを有するイオン(He+)及び光子を生成することができる。例えば、S-H結合の具体例(図示の通り)では、エネルギー流束120は、非反応性表面111のS-H結合に少なくとも約4.06eVを供給することができる。すなわち、イオン及び光子の平均エネルギーは、少なくとも約4.06eVであってよい。しかしながら、場合によっては、より低いエネルギーでも表面からHを除去するのに十分なこともある(例えば凝集体に必要なエネルギーを供給するなど)。例えば、イオン及び光子の平均エネルギーは、4.06eVより低くてもよい(例えば1.114eV以下ほどの低さ)。
【0036】
Heプラズマによって生成されるエネルギー粒子は、例えばエネルギーイオン、ラジカル、電子、及び光子を含み得る。Heプラズマの特定の例では、放出された光子(例えばUV光子)は好都合なエネルギー(例えば約24eV)を有し得る。特に、Heは、衝撃が基板表面(例えばSi/SiN表面)に対して最小限しか又は全く損傷を与えないように軽量であることと、表面から終端種(例えばH)を有利に効率的に除去し得る高エネルギー光子(約24eV)、イオン、及びラジカル、の二重の利点をもたらすことができる。
【0037】
なお、表面結合を効率的に切断するために必要なエネルギーは、エネルギーが非反応性表面111によってどのように吸収されるかに応じて変化し得ることに留意する必要がある。例えば、入射粒子からのエネルギーはいくつかの局在化された表面原子間で広がる可能性があり、これは必要な粒子エネルギーを増加させ得る。さらに、終端種の脱離断面積はエネルギー依存性である可能性があり、断面積を最大化すると効率が有利に改善される可能性がある。プロセスの自己制限的な性質のためほとんどの場合では重要ではないが、基板へのエネルギー流束120の均一性が望ましい場合がある。
【0038】
別の実施形態では、エネルギー流束120は、熱フラッシング(例えばミリ秒フラッシング)又は集束粒子ビーム(例えばイオンビーム源、電子銃などの電子ビーム源、UVランプなどの光子源、ラジカル発生器などのラジカル源など)などの技術を使用して部分的に又は完全に生成することができる。例えば、熱フラッシング及び/又は集束粒子ビームは、有利なことには、非反応性表面111の局在領域(例えば非反応性領域131)に直接エネルギーを向けることができ、領域選択的膜成長(例えばASD)を可能にする。エネルギー源の具体的な選択は、実施の容易さ、エネルギー収支、均一性、効率、及びデバイスプロセスの適合性などの様々な要因に依存し得る。
【0039】
図1Cを参照すると、窒化プロセス100は、処理チャンバー102内に前駆体ガス122を供給することを含む窒化ステップをさらに含む。前駆体ガス122は、基板110からのバルク材料140(例えばSi)と反応する反応性材料141(例えばN)を含む。例えば、前駆体ガス122は、処理ステップの後に処理チャンバー102に導入することができ、或いは窒化プロセス100全体を通して存在していてもよい。前駆体ガス122は、様々な実施形態では水素系ガスであり、いくつかの実施形態では水素化窒素ガスである(N
mH
n、窒素水素化物とも呼ばれる)。
【0040】
例えば、前駆体ガス122は、ヒドラジン(N2H4)又はシクロアザン(NmHm)などのアザン(NmHm+2)であってよく、またアンモニウム(NH4
+)などの窒素系イオンを含んでいてもよい。一実施形態では、前駆体ガス122は、図示の通りアンモニア(NH3)である。前駆体ガス122は、不活性ガス(例えばキャリアガス)などの他のガスと共に供給されてもよい。一実施形態では、前駆体ガス122はNH3であり、アルゴン(Ar)と共に1:4の比率(NH3:Ar)で供給される。
【0041】
しかしながら、N及びH以外の他の官能基及び元素も含まれていてもよい。さらに、前駆体ガス122は窒素を含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、前駆体ガス122は炭化水素ガスであり、別の実施形態では、前駆体ガス122は別の水素系ガスである。前駆体ガスに水素を含ませることは、基板のタイプによって影響を受ける場合がある。例えば、非反応性表面111が各サイクルで水素で終端する場合には水素は前駆体ガスに含まれてもよいが、他の場合には別の元素又は官能基である場合がある。
【0042】
NH
3(及び例えばその他の水素化窒素前駆体)は、窒化中に基板を加熱せずにNH
x(x=1、2)及びH(+H)へと容易に解離するという利点を有し得る。さらに、反応性表面112(例えば表面Si原子からのダングリングボンドを有する)の存在下では、窒化は、有利なことに、任意の基板温度で熱力学的に好都合であろう(すなわち、ダングリングボンドが利用可能である場合には、窒化に対する反応障壁がほとんどない)。なお、
図1C及び他の同様の図面において、窒化された表面部位は、明確にするためにNとして図示されているが、例えばNH
x(x=1、2)のような他の窒素含有種であってもよいことに留意すべきである。類似の概念は、N以外の反応種にも適用される。
【0043】
処理ステップは、真空(例えば中真空又は高真空)で実施することができる。さらに、処理ステップは、非水素環境(例えばNH3などの周囲の水素系ガスの存在なし)で実行することができ、その後、処理プロセス(例えばH除去プロセス)を止めると同時に(又はその後に遅れて)前駆体ガス122を導入することができる。例えば、エネルギー流束120を供給するエネルギー源のソース電力を除去(すなわち停止)することができ、前駆体ガス122を処理チャンバー102に導入することで窒化ステップを開始することができる。
【0044】
或いは、処理ステップと窒化ステップは、同時に実行されてもよい。すなわち、エネルギー流束120(例えばHeプラズマなどの不活性プラズマ)は、前駆体ガス122(例えばNH3)と同時に処理チャンバー102内に供給されてもよい。このシナリオでは、H原子を、基板110の露出した表面で連続的に蓄積及び除去することができ、Hが表面の領域を不動態化しても、熱力学的に(すなわちエネルギー的に)都合がよい部位が常に生成されるようにすることができる。そのようなシナリオは、表面全体又は表面のかなりの部分が任意の時点で非反応性又は反応性であるのではなく、非反応性領域131及び反応性領域132の形成をもたらす状況の一例とすることができる。
【0045】
ここで
図1Dを参照すると、窒化プロセス100の窒化ステップは、前駆体ガス122の反応性材料141が基板110のバルク材料140との結合を形成し続けて、窒化物である化合物144を含む窒化物層142を形成することを継続する。図示の通り、窒化物である化合物144は、反応性材料141とバルク材料140との間の結合(Si-N)を含む。一実施形態では、窒化物である化合物144は、Si
3N
4である。
【0046】
しかし、前駆体ガス122は、反応性表面112をその後の非反応性表面111にも変換し、窒化ステップを自己制限的にする。すなわち、基板110の表面における窒化反応は、反応部位(例えばダングリングボンド)が終端種(例えばH)によって占有されるのに伴い、減速又は停止する場合がある。例えば、Siのダングリングボンドは窒化を促進する可能性があるが、図示のようにH原子によって不動態化されるなど、ダングリングボンドが利用できない場合には窒化は進行しないことがある。
【0047】
その結果、処理及び窒化ステップは、レイヤーバイレイヤー(又は実質的にレイヤーバイレイヤー)のプロセスで窒化物層を有利に形成するために周期的に繰り返される場合がある。そのようなレイヤーバイレイヤー制御により、高い均一性及び/又は正確な厚さ制御を可能にすることができる。
【0048】
in situの周期的プロセスは、従来のレイヤーバイレイヤープロセス(ALDなど、数分のオーダーでのステップを伴う)と比較して、はるかに高い速度で有利に実行することができる。例えば、処理ステップと窒化ステップの両方を秒のオーダーで行うことができる。一実施形態では、処理ステップは約5秒未満で行われる。一実施形態では、窒化ステップは約5秒未満で行われる。処理及び窒化ステップのタイムスケールは、エネルギー流束、サイクル効率、ガス流量、ポンプ速度、及び/又は温度(例えば温度が高いほど速くなる)に依存し得る。処理ステップ及び窒化ステップのそれぞれの継続時間は、窒化プロセスの所定の実施の具体的な詳細事項に応じて、同様であっても異なっていてもよい。
【0049】
さらに、窒化プロセスのin situでの性能のため、有利なことには、基板を処理チャンバーから取り出すことなしに、他の製造プロセスの後に窒化物を形成することもできる。例えば、処理チャンバーは、窒化プロセスのための窒化処理チャンバーとして使用される前に及び/又は後にプラズマ処理チャンバーとして使用される多目的処理チャンバーであってもよい。
【0050】
ここで
図1E、1F、1G、及び1Hを参照すると、処理ステップ及び窒化ステップは、基板110における厚さが増加した窒化物層142の継続した形成を示すために、周期的な形式で繰り返される。第2の処理ステップは、前の窒化ステップの自己制限的な性質の結果として形成された後続の非反応性表面111を反応性表面112に変換するために行われ(
図1E)、これは、次に第2の窒化ステップ(
図1F)の間に、窒化物層142が厚さを増した後に非反応性表面111(
図1G)へと再度変換される。エネルギー流束120は、第3の処理ステップ(
図1H)で再び適用され、以下同様である。
【0051】
上記のステップのそれぞれは、約400℃未満の温度で行われる。例えば、温度は約250℃未満とすることができ、室温であってもよい。室温は、一般的に低温(例えば25℃、22℃などの約20℃~約40℃)であると定義することができ、処理チャンバー内の周囲温度を指すことができる。しかしながら、「室温」は、プロセス中に追加のチャンバー又は基板の加熱がされない状況を指す場合もある(例えばエネルギー流束により局所的な表面加熱になる場合がある)。さらに、上記ステップは、室温より低い温度(例えば0℃以下)で実行することもできる。
【0052】
重要なことには、基板全体が約400℃を超えて上昇せず、多くの場合ではるかに低い。例えば、具体的な目的(例えば特定の状況で有用な場合があるSi-NHx結合膜)のために望まれない限り、追加のチャンバーや又は基板の加熱は回避することができる。例えば、いくつかの実施形態では、チャンバー温度を約250℃に維持して、SiとNとHとを含む三元化合物(ケイ素窒化水素化物)を形成することができる。すなわち、温度(約400℃未満、約250℃未満であってもよい)は、窒化物層の水素含有量を制御するのに有用な場合がある。
【0053】
熱フラッシングの場合、基板表面の温度は、非反応性表面に必要なエネルギーを供給するためにミリ秒のオーダーで局所的に上昇させることができるが、基板の他の領域への損傷を回避することができる。
【0054】
図2は、本発明の一実施形態に従って約400℃未満の温度で酸窒化ケイ素を形成するために使用される窒化プロセスの別の例を示している。
図2の窒化プロセスは、例として、
図1A~1Hの窒化プロセス、又は
図4の膜成長プロセスなど、本明細書に記載の他の膜成長プロセス(例えば窒化プロセス)の特定の実施である場合がある。同様にラベルが付与された要素は、前述の通りであり得る。
【0055】
図2を参照すると、窒化プロセス200は、バルク領域218と窒化物層242とを含む基板210を含む。ここ及び以下では、簡潔さ及び明確さのために慣例が採用されており、この場合、パターン[x10]に従う要素は、様々な実施形態におけるプラズマ処理チャンバーの関連する実施であり得ることに留意されたい。例えば、基板210は、別段の明記がない限り、基板110と同様であってもよい。前述の3桁の記数法と組み合わせて同様の用語を使用することで明らかになるように、他の要素にも同様の規則が採用されている。
【0056】
窒化プロセス200は、簡略化及び明確化のためにも、窒化ステップの代表的な自己制限的段階によってのみ示されており、残りのステップは
図1A~1Hのものと類似しているが、相違があり、その一部は以下で説明される。窒化プロセス200では、基板210は酸化物である(例えば全体又は多層基板上の酸化物層)。基板210のバルク領域218は、図示のようにSiO
2を含み、その結果SiとOの両方を含むバルク材料240になっている。
【0057】
前駆体ガス222は、基板210の非反応性表面211にエネルギー流束を供給する処理ステップに続くか又はその最中の窒化ステップの間に供給される。前駆体ガス222は、反応性材料241(図示の通りN)を含む水素化窒素ガスであるが、上に説明したように他のガスであってもよい。一実施形態では、前駆体ガス222はNH3である。
【0058】
得られる窒化物層242は、反応性材料241(N)とバルク材料240(Si及び酸素、O)との反応から形成される酸窒化物である化合物244を含む。1つの具体例では、酸窒化物である化合物244は、酸窒化ケイ素(例えばSi2N2O、又はSiO2とSi3N4との間の局所的な変化を伴うある程度のアモルファス性を有する)であるが、窒化プロセス200は、他の酸窒化物の形成に一般化することができる。
【0059】
図3は、本発明の一実施形態による、約400℃未満の温度で炭化ケイ素を形成するために使用される例示的な炭化プロセスを示している。
図3の炭化プロセスは、例えば
図4の膜成長プロセスなど、本明細書に記載の他の膜成長プロセスの特定の実施であってもよい。同様にラベルが付与された要素は、前述の通りであり得る。
【0060】
図3を参照すると、炭化プロセス300は、バルク領域318と炭化物層342とを含む基板310を含む。
図2と同様に、炭化プロセス300は、簡潔さと明瞭さのために、炭化ステップ(窒化ステップに類似)の代表的な自己制限的段階によってのみ示されている。残りのステップは
図1A~1Hのものと類似しているが、相違があり、その一部は以下で説明される。
【0061】
炭化プロセス300では、基板310は半導体であり、いくつかの実施形態ではSiである(例えば全体又は多層基板上のSi層)。基板310のバルク領域318は、図示のようにSiのバルク材料340を含む。前駆体ガス322は、基板310の非反応性表面311にエネルギー流束を供給する処理ステップに続くか又はその最中の炭化ステップの間に供給される。
【0062】
前述した前駆体とは対照的に、前駆体ガス322は、反応性材料341(図示の通り炭素、C)を含む炭化水素ガスであるが、Cを含む他のガスであってもよい。様々な実施形態では、前駆体ガス322はアルカンである。或いは、又はそれに加えて、前駆体ガス322は、アルケン、アルキン、及び/又は環状及び置換されたバリエーションなどの他の炭化水素ガスを含む。一実施形態では、前駆体ガス322はメタン(CH4)を含む。一実施形態では、前駆体ガス322はエチレン(C2H4)を含む。
【0063】
得られる炭化物層342は、反応性材料341(C)とバルク材料340(Si)との反応から形成された炭化物である化合物344を含む。1つの具体例では、炭化物である化合物344は、炭化ケイ素(SiC)であるが、炭化プロセス300は、他の炭化物の形成に一般化することができる。
【0064】
図4は、本発明の一実施形態に従って約400℃未満の温度で行われる膜成長プロセスの例を示している。
図4の膜成長プロセスは、例えば
図1A~1H及び
図2の窒化プロセス又は
図3の炭化プロセスなど、本明細書に記載の他の膜成長プロセス(例えば窒化プロセスや炭化プロセスなど)の一般的な実施であってもよい。同様にラベルが付与された要素は、前述の通りであり得る。
【0065】
図4を参照すると、膜成長プロセス400は、バルク領域418と膜442とを含む基板410を含む。
図2と同様に、膜成長プロセス400は、簡潔さと明瞭さのために、膜成長ステップ(これは窒化ステップの一般化である)の代表的な自己制限的段階によってのみ示されている。残りのステップは
図1A~1Hのものと類似しているが、相違があり、その一部は以下で説明される。
【0066】
膜442は、基板410の非反応性表面411にエネルギー流束を供給する処理ステップに続くか又はその最中の、前駆体ガス422が供給される膜成長ステップの間に形成される。膜442は、前駆体ガス422の反応性材料441と基板410のバルク材料440との間の反応の結果である。
【0067】
この一般化されたシナリオでは、反応性材料441は、いくつかの種Z(その具体的な例はN及びCであった)として示される一方で、バルク材料440は、いくつかの種X(Si及びSi、Oを含む具体的な提示例)として示されている。その後、膜442は、XとZ(例えばX-Z結合)を含む化合物444を含む。例えば、Xは、C(例えば基板410がグラフェンである場合)、アルミニウム(Al)、及び具体的に記載されていない他のものであってよい。同様に、Zは、O、反応性官能基、及びその他のものであってもよい。
【0068】
図5は、本発明の一実施形態による膜成長装置の一例を示している。
図5の膜成長装置は、
図1A~1H及び
図2~4の膜成長プロセスなど、本明細書に記載の任意の膜成長プロセスを実行するために使用することができる。
図5の膜成長装置は、
図7及び
図8で後に説明されるような膜成長方法を実行するために使用することもできる。同様にラベルが付与された要素は、前述の通りであり得る。
【0069】
図5を参照すると、膜成長装置500は、処理チャンバー502内で基板510を支持する基板ホルダー504を含む。例えば、処理チャンバー502は、多目的処理チャンバーであってもよい。前駆体ガス522(ここではNH
3として示されている)などの様々なガスを、1つ以上のガス入口506を介して処理チャンバー502に供給することができる。圧力(例えば中真空、高真空など)は、1つ以上のガス出口507を通して処理チャンバー502から前駆体ガス522及び他のガスを排出するポンプ508を使用して処理チャンバー502内で制御することができる。
【0070】
エネルギー源514は、基板510の表面512にエネルギー流束520を供給する。前述したように、エネルギー流束520は、前駆体ガス522の後又は最中に供給することができる。エネルギー源514は、プラズマ源、イオンビーム源、電子ビーム源、光子源(例えばUV光源)、ラジカルビーム源、熱フラッシング源などの任意の適切なエネルギー源又はエネルギー源の組み合わせであってよい。
【0071】
温度制御(すなわち約400℃未満)が望まれる場合には、基板ホルダー504及び/又は基板510の温度を制御するために、任意選択的な温度コントローラ516を含めることができる。任意選択的な温度コントローラ516は、いくつかの実施においては、熱フラッシング源などのエネルギー源も含むことができる。
【0072】
図6は、本発明の実施形態によるプラズマ処理装置の一例を示している。
図6のプラズマ処理装置は、
図1A~1H及び
図2~4の膜成長プロセスなど、本明細書に記載の任意の膜成長プロセスを行うために使用することができる。さらに、
図6のプラズマ処理装置は、
図7及び
図8で後に説明されるような膜成長方法を行うために使用されてもよい。同様にラベルが付与された要素は、前述の通りであり得る。
【0073】
図6を参照すると、プラズマ処理装置600は、プラズマ処理チャンバー602内で基板610を支持する基板ホルダー604を含む。
図6のプラズマ処理装置は、
図5の膜成長装置の具体的な実施であってよく、この中ではエネルギー源はプラズマ源614であり、基板610の表面612へのエネルギー流束は、プラズマ処理チャンバー602内で生成したプラズマ620によって供給される。例えば、プラズマ620は、1つ以上のガス入口606を通して供給される不活性ガス624(例えばHe)を使用して生成される不活性プラズマ(例えばHeプラズマ)であってよい。
【0074】
前駆体ガス622は、ガス入口606(例えば不活性ガス624と同じガス入口又は専用のガス入口)を通して供給されてもよい。ポンプ608は、前駆体ガス622、不活性ガス624、及び任意の他のガスを、1つ以上のガス出口607を通してプラズマ処理チャンバー602から排気する。前述したように、基板の温度制御が望まれる場合には、任意選択的な温度コントローラ616を含めることができる。
【0075】
図7は、本発明の一実施形態による窒化の例示的な方法を示している。
図7の方法は、他の方法及びプロセスと組み合わせることができ、例として、
図5の膜成長装置又は
図6のプラズマ処理装置など、本明細書に記載の膜成長装置のいずれかを使用して行うことができる。さらに、
図7の方法は、例として、
図1A~1Hの窒化プロセス又は
図4の膜成長プロセスなど、本明細書に記載の実施形態のプロセスのいずれかのステップの一部又は全部を適用することができる。論理的な順序で示されているものの、
図7のステップの配置及び番号付けは、限定することを意図していない。
図7の方法のステップは、当業者に明らかなように、任意の適切な順序で、或いは互いに同時進行で実行することができる。
【0076】
図7を参照すると、窒化方法700の方法のステップ701は、非反応性表面をエネルギー流束にさらすことによって、基板の非反応性表面を処理することで非反応性表面を反応性表面に変換することを含む。窒化の方法700のステップ702は、窒素系ガスを使用して反応性表面を窒化し、反応性表面をその後の非反応性表面を含む窒化物層へと変換することを含む。ステップ701及び702は、処理チャンバー内で(すなわち処理チャンバーから基板を取り出さずにin situで)、約400℃未満の温度で行われる。
【0077】
ステップ703は、ステップ701及び702を周期的に実行することである。具体的には、ステップ702は、その後に行われる処理ステップ(ステップ701)によって除去され得るその後の非反応性表面によって自己制限的であることができる。窒化の方法700は、窒化膜の望まれる均一性及び/又は厚さが達成されるまで継続することができる。場合によっては、処理条件を調整したり、サイクルを適切な時に終了したりできるように、計測(例えばin situ)を利用して窒化物層の状態を動的に測定することができる。例えば、in situエリプソメトリーを使用することができる。さらに、エネルギー流束(プラズマ生成など)中の種の比率(例えばN/Hシグナル比)から洞察を得ることができる。
【0078】
図8は、本発明の一実施形態による膜成長の例示的な方法を示している。
図8の方法は、他の方法及びプロセスと組み合わせることができ、例として、
図5の膜成長装置又は
図6のプラズマ処理装置など、本明細書に記載の膜成長装置のいずれかを使用して行うことができる。さらに、
図8の方法は、例として、
図1A~1Hの窒化プロセス又は
図4の膜成長プロセスなど、本明細書に記載の実施形態のプロセスのいずれかのステップの一部又は全部を適用することができる。論理的な順序で示されているものの、
図8のステップの配置及び番号付けは、限定することを意図していない。
図8の方法のステップは、当業者に明らかなように、任意の適切な順序で、或いは互いに同時進行で行うことができる。
【0079】
図8を参照すると、膜成長方法800のステップ801は、水素化表面に入射するエネルギー束を使用して水素化表面から水素を除去することによって、基板の水素化表面を処理して水素化表面を反応性表面に変換することを含む。基板は第1の材料を含む。反応性表面を膜へと変換するために、ステップ802において、反応性表面は第2の材料を含む水素系ガスに曝露される。膜は、その後の水素化表面と、第1の材料及び第2の材料を含む化合物とを含む。ステップ801及び802は、約400℃未満の温度で処理チャンバー内で行われる。ステップ803は、ステップ801及び802を周期的に実行することである。
【0080】
本発明の例示的な実施形態をここで要約する。他の実施形態も、本明細書の全体及び本明細書で出願される特許請求の範囲から理解することができる。
【実施例】
【0081】
実施例1.約400℃未満の温度の処理チャンバー内で、以下のステップをin situで周期的に実行することを含む、窒化方法:非反応性表面をエネルギー流束に曝露することによって、前記処理チャンバー内の基板の非反応性表面を処理して前記非反応性表面を反応性表面に変換するステップ;及び窒素系ガスを使用して前記反応性表面を窒化して、前記反応性表面をその後の非反応性表面を含む窒化物層へと変換するステップ。
【0082】
実施例2.非反応性表面の各処理が約5秒未満行われること;及び反応性表面の各窒化が約5秒未満行われること;をさらに含む、実施例1に記載の方法。
【0083】
実施例3.前記窒素系ガスがアンモニア(NH3)を含む、実施例1又は2に記載の方法。
【0084】
実施例4.前記非反応性表面を処理することが、前記処理チャンバー内で生成されたプラズマを使用して前記エネルギー流束を供給することを含む、実施例1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
実施例5.前記非反応性表面を処理することが、イオンビーム源、電子ビーム源、光子源、ラジカル源、又は熱フラッシング源を使用してエネルギー流束を供給することを含む、実施例1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施例6.前記非反応性表面を処理することが、エネルギー流束を生成するためにソース電力を印加することと、前記処理チャンバーへの前記窒素系ガスの拡散を防止することとを同時に含み;前記反応性表面を窒化することが、前記ソース電力を除去することと、前記窒素系ガスを前記処理チャンバーに供給することとを同時に含む、実施例1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施例7.約400℃未満の温度のプラズマ処理チャンバー内で、以下のステップをin situで周期的に実行することを含む、窒化方法:プラズマ処理チャンバー内で生成されたプラズマからのイオン及び光子をシリコン基板に衝突させることによって、前記シリコン基板の非反応性領域から水素を除去して前記非反応性領域を反応性領域に変換するステップ;及び水素化窒素ガスを使用して前記反応性領域を窒化して、前記反応性領域をその後の非反応性領域を含む窒化物領域へと変換するステップ。
【0088】
実施例8.前記イオン及び光子が約4.06eVより大きい平均エネルギーを含む、実施例7に記載の方法。
【0089】
実施例9.前記非反応性領域からの前記水素の除去と、前記反応性領域の窒化とが同時に行われる、実施例7又は8に記載の方法。
【0090】
実施例10.前記水素化窒素ガスがアンモニア(NH3)を含む、実施例7~9のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施例11.前記プラズマ処理チャンバー内で生成される前記プラズマがヘリウムプラズマである、実施例7~10のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
実施例12.前記温度が約30℃未満である、実施例7~11のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施例13.約400℃未満の温度の処理チャンバー内で、以下のステップをin situで周期的に実行することを含む、膜成長方法:基板の水素化表面に入射するエネルギー流束を使用して前記水素化表面から水素を除去することによって、前記処理チャンバー中の前記水素化表面を処理して前記水素化表面を反応性表面へと変換するステップであって、前記基板が第1の材料を含むステップ、及び第2の材料を含む水素系ガスに前記反応性表面を曝露して、前記反応性表面を、その後の水素化表面と、前記第1の材料及び第2の材料を含む化合物を含む膜へと変換するステップ。
【0094】
実施例14.前記ステップを周期的に繰り返す前に、約250℃の温度に前記基板を加熱し、ステップを周期的に繰り返す間に前記温度が維持されることをさらに含む、実施例13に記載の方法。
【0095】
実施例15.前記ステップを周期的に繰り返す前に、前記処理チャンバー内の前記基板をプラズマプロセスで処理することであって、前記プラズマプロセスと前記ステップを周期的に実行することとの間に前記基板が前記処理チャンバーから取り出されないことをさらに含む、実施例13又は14に記載の方法。
【0096】
実施例16.前記基板の前記水素化表面を処理することが、前記水素化表面を熱的にフラッシングして前記水素化表面の温度を局所的に上昇させることを含む、実施例15に記載の方法。
【0097】
実施例17.前記水素化表面を処理することが、前記処理チャンバー内で生成されたプラズマで前記水素化表面を処理することを含む、実施例13~16のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
実施例18.前記第1の材料が窒素であり、前記第2の材料がケイ素であり、前記化合物が窒化ケイ素である、実施例13~17のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施例19.前記第1の材料が窒素であり、前記第2の材料が酸化ケイ素であり、前記化合物が酸窒化ケイ素である、実施例13~17のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
実施例20.前記第1の材料が炭素であり、前記第2の材料がケイ素であり、前記化合物が炭化ケイ素である、実施例13~17のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
本発明は、例示的実施形態を参照して説明されているが、本明細書は、限定的な意味で解釈されることを意図するものではない。当業者であれば、本明細書を参照することにより、それらの例示的実施形態の様々な修正形態及び組み合わせ並びに本発明の別の実施形態が明らかになるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなあらゆる修正形態又は実施形態を包含することが意図されている。
【国際調査報告】