(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】磁気液浸電子銃
(51)【国際特許分類】
H01J 37/07 20060101AFI20230927BHJP
H01J 37/06 20060101ALI20230927BHJP
H01J 37/063 20060101ALI20230927BHJP
H01J 37/065 20060101ALI20230927BHJP
H01J 1/15 20060101ALI20230927BHJP
H01J 1/18 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H01J37/07
H01J37/06 A
H01J37/063
H01J37/065
H01J1/15
H01J1/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515327
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 US2021049189
(87)【国際公開番号】W WO2022055831
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュブン ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】ブリューチェ マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ホードン ローレンス エス
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101BB04
5C101DD08
5C101DD14
5C101DD15
5C101DD18
5C101DD27
5C101DD30
5C101FF02
(57)【要約】
本開示は、磁気液浸電子銃および磁気液浸電子銃を用いて電子ビームを生成する方法を提供する。電子銃は、磁場を形成する磁気レンズと、磁場内に配置されたカソード先端と、カソード先端を直接加熱して磁気レンズを通して電子を放出するように構成されたマルチフィラメントヒータとを含む。マルチフィラメントヒータは、各端部において電源の第1および第2の正端子に接続された第1のフィラメントと、各端部において電源の第1および第2の負端子に接続された第2のフィラメントとを含む。第1の正端子、第2の正端子、第1の負端子、および第2の負端子は、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントがカソード先端において交差し、カソード先端に印加される結果として生じる磁力が低減されるように、カソード先端の周囲に交互に配列される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気液浸電子銃であって、
磁場を形成する磁気レンズと、
前記磁場内に配置されたカソード先端と、
前記カソード先端を直接加熱して、前記磁気レンズを通して電子を放出するように構成されるマルチフィラメントヒータと、
を備え、前記マルチフィラメントヒータは、
各端部において電源の第1の正端子および第2の正端子に接続される第1のフィラメントと、
電源の第1の負端子および第2の負端子に各端部で接続される第2のフィラメントと、
を備え、
前記第1の正端子、前記第2の正端子、前記第1の負端子、および前記第2の負端子は、前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントが前記カソード先端において交差し、前記磁場によって前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントに印加される磁力が相殺され、前記カソード先端に印加される結果として生じる磁力を低減させるように、前記カソード先端の周囲に交互に配列される磁気液浸電子銃。
【請求項2】
前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントは、同じ断面を有し、同じ材料から作製され、同じ電流を流す請求項1に記載の磁気浸漬電子銃。
【請求項3】
前記材料は、最大27%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金である請求項2に記載の磁気浸漬電子銃。
【請求項4】
前記第1のフィラメントは、第1の材料から構成され、前記第2のフィラメントは、前記第1の材料とは異なる第2の材料から構成され、前記第1のフィラメントの断面および前記第2のフィラメントの断面は、前記第1の材料の比抵抗および前記第2の材料の比抵抗に反比例する請求項1に記載の磁気浸漬電子銃。
【請求項5】
前記第1の材料は、最大5%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金であり、前記第2の材料は、20~27%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金である請求項4に記載の磁気浸漬電子銃。
【請求項6】
前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントは直交している請求項1に記載の磁気浸漬電子銃。
【請求項7】
前記マルチフィラメントヒータは、前記カソード先端を1600K~1900Kの温度に直接加熱するように構成される請求項1に記載の磁気浸漬電子銃。
【請求項8】
前記磁場は、100ガウス~1000ガウスの磁束密度を有する請求項1に記載の磁気浸漬電子銃。
【請求項9】
磁気液浸電子銃であって、
磁場を形成する磁気レンズと、
前記磁場内に配置されたカソード先端と、
カソード先端を直接加熱して、磁気レンズを通して電子を放出するように構成されるマルチフィラメントヒータと、
を備え、前記マルチフィラメントヒータは、電源の正端子および負端子に各端部で接続された第1のフィラメントおよび第2のフィラメントを備え、前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントは、カソード先端で交差する磁気液浸電子銃。
【請求項10】
前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントは、同じ断面を有し、同じ材料から作製され、同じ電流を流す請求項9に記載の磁気浸漬電子銃。
【請求項11】
前記材料は、最大27%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金である請求項10に記載の磁気浸漬電子銃。
【請求項12】
前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントは鋭角で交差する請求項9に記載の磁気浸漬電子銃。
【請求項13】
磁気液浸電子銃を用いて電子ビームを発生させる方法であって、
電源からマルチフィラメントヒータの第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに電流を印加するステップであって、前記第1のフィラメントは、各端部において電源の第1の正端子および第2の正端子に接続され、前記第2のフィラメントは、各端部において電源の第1の負端子および第2の負端子に接続される、ステップと、
前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントを用いてカソード先端を加熱するステップであって、前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントは、前記カソード先端において交差し、前記第1の正端子、前記第2の正端子、前記第1の負端子、および前記第2の負端子は、前記カソード先端の周囲に交互に配列される、ステップと、
前記カソード先端から磁気レンズを介してターゲットに向けて電子を放出し、前記カソード先端は、前記磁気レンズによって形成される磁場内に配置され、前記磁場によって前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントに加えられる磁力は相殺され、前記カソード先端に加えられる合磁力が低減されるステップと、
を備える方法。
【請求項14】
前記電源から前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントに電流を印加するステップは、
前記第1のフィラメントに第1の電流を印加するステップと、
前記第2のフィラメントに第2の電流を印加するステップと、
を備え、前記第1の電流は前記第2の電流に等しい請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントは、最大27%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金から構成される請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のフィラメントは、第1の材料から構成され、前記第2のフィラメントは、前記第1の材料とは異なる第2の材料から構成され、前記第1のフィラメントの断面および前記第2のフィラメントの断面は、前記第1の材料の比抵抗および前記第2の材料の比抵抗に反比例する請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の材料は、最大5%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金であり、前記第2の材料は、20~27%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントは直交している請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントを使用する前に前記カソード先端を加熱するステップは、前記第1のフィラメントおよび前記第2のフィラメントを使用する前に前記カソード先端を1600K~1900Kの温度に加熱するステップを含む請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記磁場は、100ガウス~1000ガウスの磁束密度を有する請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子ビームシステム用の電子銃に関し、より詳細には、磁気レンズを備えた電子銃に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の参照
本出願は、2020年9月9日に出願され譲渡された米国仮特許出願63/075,832号に対する優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
半導体製造産業の進化は、歩留まり管理に、特に計測および検査システムに、より大きな要求を課している。臨界寸法は縮小し続けるが、産業界は、高収率、高価値生産を達成するための時間を短縮する必要がある。歩留まり問題を検出してからそれを固定するまでの総時間を最小限に抑えることは、半導体製造業者の投資に対する収益を決定する。
【0004】
論理デバイスおよびメモリデバイスなどの半導体デバイスを製造することは、典型的には、半導体デバイスの様々な特徴および複数のレベルを形成するために、多数の製造プロセスを使用して半導体ウェハまたはEUVマスクを処理することを含む。例えば、リソグラフィは、レチクルから半導体ウェハ上に配置されたフォトレジストにパターンを転写することを含む半導体製造プロセスである。半導体製造プロセスのさらなる例は、化学機械研磨(CMP)、エッチング、堆積、およびイオン注入を含むが、これらに限定されない。複数の半導体デバイスは、個々の半導体デバイスに分離される単一の半導体ウェハ上に配置で製造され得る。
【0005】
検査プロセスは、製造プロセスにおけるより高い歩留りを促進し、したがってより高い利益を促進するために、ウェハ上の欠陥を検出するために半導体製造中の様々なステップで使用される。検査は、集積回路(IC)などの半導体デバイスを製造する上で常に重要な部分であったが、半導体デバイスの寸法が減少するにつれて、より小さい欠陥がデバイスを故障させる可能性があるので、検査は、許容可能な半導体デバイスの製造の成功にとってさらに重要になる。例えば、半導体デバイスの寸法が縮小するにつれて、比較的小さい欠陥でさえも半導体デバイスにおいて望ましくない収差を引き起こし得るため、縮小サイズの欠陥の検出が必要になった。
【0006】
検査プロセスに使用される1つのデバイスは、電子ビームシステムである。電子ビームシステムでは、電子は、ターゲット上に集束された電子銃のカソード先端から放出される。カソード先端は、通電ヘアピンフィラメントヒータを用いて加熱され、電子を発生させる。磁気レンズは、電子をターゲット上に電子ビームに集束させるために使用される。特に、磁気レンズは、カソード先端からターゲットに向かって電子を引き寄せる磁場を生成する。
【0007】
以前の設計では、磁場は、ヒータの通電フィラメントに磁力を印加し得る。この磁力は、カソード先端の即座の偏向を引き起こし得る。例えば、即時偏向は、カソード先端を数ミクロン変位させ得る。加えて、カソード先端は、高温クリーピングを経験し得、これは、カソード先端を、経時的な即時偏向と同じ方向にゆっくりと移動させ得る。例えば、高温クリープは、カソード先端を1年にわたり40ミクロンまで変位させ得る。変位が2ミクロンを超える場合、カソードの再整列が必要とされる。カソード先端の繰り返しの再整列は、ツールの利用可能性を低減し、サービスコストを増加させる。電子銃の耐用年数は減少し、より頻繁な交換を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第2174340号
【特許文献2】欧州特許第2492949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、磁気偏向および高温クリープによって引き起こされる変位の影響を受けにくい電子銃が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の実施形態は、磁気浸漬電子銃を提供する。電子銃は、磁場を形成する磁気レンズと、磁場内に配置されたカソード先端と、カソード先端を直接加熱して磁気レンズを通して電子を放出するように構成されたマルチフィラメントヒータとを備えてもよい。マルチフィラメントヒータは、電源の第1の正端子および第2の正端子に各端部で接続された第1のフィラメントと、電源の第1の負端子および第2の負端子に各端部で接続された第2のフィラメントとを備えることができる。第1の正端子、第2の正端子、第1の負端子、および第2の負端子は、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントがカソード先端において交差し、磁場によって第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに印加される磁力が相殺され、カソード先端に印加される合成磁力を低減させるように、カソード先端の周囲に交互に配列されてもよい。
【0011】
本開示の実施形態によれば、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、同じ断面を有してもよく、同じ材料から作製されてもよく、同じ電流を搬送してもよい。材料は、最大27%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金であってもよい。
【0012】
本開示の実施形態によれば、第1のフィラメントは、第1の材料から構成されてもよく、第2のフィラメントは、第1の材料とは異なる第2の材料から構成されてもよく、第1のフィラメントの断面および第2のフィラメントの断面は、第1の材料の比抵抗および第2の材料の比抵抗に反比例してもよい。第1の材料は、最大5%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金であってもよく、第2の材料は、20~27%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金であってもよい。
【0013】
本開示の実施形態によれば、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは直交していてもよい。
【0014】
本開示の実施形態によれば、マルチフィラメントヒータは、カソード先端を1600K~1900Kの温度に直接加熱するように構成することができる。
【0015】
本開示の実施形態によれば、磁場は、100ガウス~1000ガウスの磁束密度を有し得る。
【0016】
本開示の別の実施形態は、磁気浸漬電子銃を提供する。電子銃は、磁場を形成する磁気レンズと、磁場内に配置されたカソード先端と、カソード先端を直接加熱して磁気レンズを通して電子を放出するように構成されたマルチフィラメントヒータとを備えてもよい。マルチフィラメントヒータは、電源の正端子および負端子に各端部で接続された第1のフィラメントおよび第2のフィラメントを備えてもよく、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、カソード先端において交差してもよい。
【0017】
本開示の実施形態によれば、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは鋭角で交差し得る。
【0018】
本開示の実施形態は、磁気液浸電子銃を使用して電子ビームを生成する方法を提供する。本方法は、電源からの電流をマルチフィラメントヒータの第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに印加するステップを含んでもよい。第1のフィラメントは、各端部において電源の第1の正端子および第2の正端子に接続されてもよく、第2のフィラメントは、各端部において電源の第1の負端子および第2の負端子に接続されてもよい。
【0019】
本方法はさらに、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントを使用して、カソード先端を加熱するステップを含んでもよい。第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、カソード先端において交差してもよく、第1の正端子、第2の正端子、第1の負端子、および第2の負端子は、カソード先端の周囲に交互に配列されてもよい。
【0020】
本方法は、カソード先端から磁気レンズを通してターゲットに向かって電子を放出するステップをさらに含んでもよい。カソード先端は、磁気レンズによって形成される磁場内に配置されてもよく、磁場によって第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに印加される磁力は、相殺され、カソード先端に印加される合成磁力を低減してもよい。
【0021】
本開示の実施形態によれば、電源から第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに電流を印加することは、第1のフィラメントに第1の電流を印加することと、第2のフィラメントに第2の電流を印加することとを含み得る。第1の電流は、第2の電流と等しくてもよい。
【0022】
本開示の実施形態によれば、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントを使用する前にカソード先端を加熱することは、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントを使用する前にカソード先端を1600K~1900Kの温度に加熱することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本開示の性質および目的をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照されたい。
【
図1A】本開示の一実施形態による磁気浸漬電子銃の概略図である。
【
図1B】
図1Aの磁気浸漬電子銃に対する磁力を示す磁場図である。
【
図2A】本開示の別の実施形態による磁気浸漬電子銃の概略図である。
【
図2B】本開示の実施形態による磁気液浸電子銃の磁気レンズの概略図である。
【
図3A】本開示の一実施形態による、磁気液浸電子銃を使用して電子ビームを生成する方法のフローチャートである。
【
図3B】
図3Aの方法のステップ310の詳細のフローチャートである。
【
図4A】本開示の別の実施形態による、磁気液浸電子銃を使用して電子ビームを生成する方法のフローチャートである。
【
図4B】
図4Aの方法のステップ410の詳細のフローチャートである。
【
図5】本開示の実施形態による検査システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特許請求される主題は、ある実施形態に関して説明されるが、本明細書に記載される利益および特徴の全てを提供しない実施形態を含む、他の実施形態もまた、本開示の範囲内である。様々な構造的、論理的、プロセスステップ、および電子的変更が、本開示の範囲から逸脱することなく行われ得る。したがって、開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
【0025】
本開示の実施形態は、
図1Aに示すように、磁気浸漬電子銃100を提供する。電子銃100は、磁気レンズ110を含んでもよい。
図2Bに示されるように、磁気レンズ110は、反対極性を有する一対の極片112から成ってもよい。磁気レンズ110は、開口114を画定する環状形状を有し得る。開口114は、1mm未満の直径を有してもよい。例えば、開口114は、50~100ミクロンの直径を有することができる。磁極片112は、
図2Bの紙面から出てくるように示されている開口114内に磁場116を形成することができる。磁場116は、100ガウス~1000ガウス以上の磁束密度を有し得る。例えば、磁場116は、600ガウスの磁束密度を有し得る。
【0026】
図1Aに戻って参照すると、電子銃100は、カソード先端(チップ)120をさらに備えてもよい。カソード先端120は、タングステン単結晶から構成されてもよい。カソード先端120は、長さ約2mm、直径120μmの鋭利な針であってもよい。カソード先端部120の端部は、1ミクロン未満であってもよい。カソード先端部120は、磁場116内に配置することができる。例えば、カソード先端120は、磁気レンズ110の開口114に配置されてもよい。
【0027】
電子銃100は、マルチフィラメントヒータ130をさらに含み得る。ヒータ130は、カソード先端120を直接加熱するように構成されてもよい。ヒータ130は、カソード先端120を1600K~1900Kの温度に加熱することができる。例えば、ヒータ130は、カソード先端120を1800Kの温度に加熱することができる。ヒータ130を用いてカソード先端120を直接加熱することによって、カソード先端120は、磁気レンズ110を通して電子を放出することができる。磁場116は、電子を集束させ、電子をターゲットに向けることができる。
【0028】
マルチフィラメントヒータ130は、第1のフィラメント131を含んでもよい。第1のフィラメント131の両端は電源140の第1正極端子141a及び第2正極端子141bに接続される。例えば、第1のフィラメント131の第1端部131aは電源140の第1正端子141aに接続され、第1のフィラメント131の第2端部131bは電源140の第2正端子141bに接続される。
【0029】
マルチフィラメントヒータ130は、第2のフィラメント132をさらに備えることができる。第2のフィラメント132は、各端部において、第1の負端子142aおよび第2の負端子142bに接続され得る。例えば、第2のフィラメント132の第1端部132aは電源140の第1負端子142aに接続され、第2のフィラメント132の第2端部132bは電源140の第2負端子142bに接続される。
【0030】
本開示の実施形態によれば、電源140の第1の正端子141a、第2の正端子141b、第1の負端子142a、および第2の負端子142bは、カソード先端120の周囲に交互に配置され得る。例えば、第1のフィラメント131および第2のフィラメント132は、カソード先端120において交差してもよい。第1のフィラメント131および第2のフィラメント132は、0度(すなわち、接触しているが交差していない)と90度との間の角度αで交差し得る。例えば、第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132は直交してもよく、すなわち、角度αは約90度であってもよい。このようにして、電源140からの電流は、第1のフィラメント131および第2のフィラメント132を通って移動して、カソード先端部120を直接加熱することができる。
【0031】
磁場116は、電源140からの電流によって生成される残留磁場に起因して、第1のフィラメント131および第2のフィラメント132に磁力を印加し得ることが理解され得る。以前の設計では、この磁力は、カソード先端120の即時偏向を引き起こし得る。例えば、即時偏向は、カソード先端120に、磁場116に垂直な方向に数ミクロン変位させ得る。加えて、カソード先端120は、高温クリーピングを経験し得、これは、カソード先端120を、経時的な即時偏向と同じ方向にゆっくりと移動させ得る。例えば、高温クリープは、カソード先端120を1年にわたり40ミクロンまで変位させ得る。変位が2ミクロンを超える場合、カソードの再整列が必要となり得る。しかし、本発明の電子銃100によれば、磁力によるカソード先端120の変位を低減することができる。例えば、電源140の第1の正端子141a、第2の正端子141b、第1の負端子142a及び第2の負端子142bの交互配置に基づいて、磁場116によって第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132に加えられる磁力を相殺することができる。したがって、カソード先端120に加えられる結果として生じる磁力は、20%(すなわち、80%以上の減少)未満または10%(すなわち、90%以上の減少)未満に低減され得る。これによりクリープを回避することができる。
【0032】
図1bを参照すると、電源140からの電流は、第1の負端子142aおよび第2の負端子142bからカソード先端120に流れるように示され、電流は、カソード先端120から電源140の第1の正端子131aおよび第2の正端子131bに流れる。磁気レンズ110によって生成された磁場116は、紙面から出るように示されている。磁場116は、第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132に矢印で示す方向に磁力Fを印加する。このように、電源140の第1の正端子141a、第2の正端子141b、第1の負端子142a及び第2の負端子142bが交互に配置されることによって、第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132に印加される磁力Fが相殺される。
【0033】
本開示の実施形態によれば、第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132は、同じ断面を有し得る。例えば、第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132の直径は、30~250μmであってもよい。特定の実施形態では、第1のフィラメント131および第2のフィラメントは、50~150μmの直径を有し得る。第1のフィラメント131および第2のフィラメント132は、同じ材料から作製され得る。例えば、第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132は、タングステン-レニウム合金であってもよい。タングステン-レニウム合金は、最大27%のレニウムを含み得る。例えば、タングステン-レニウム合金は、1%、3%、5%、13%、もしくは20%のレニウム、または他の一般的に入手可能なタングステン-レニウム合金を含んでもよい。他のタングステン合金を使用してもよい。第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132は、同じ電流を流すことができる。例えば、電流は、1Aから2Aの間であってもよいが、特定の設計およびシステム条件に応じて、他の電流が印加されてもよい。第1のフィラメント131および第2のフィラメント132のパラメータの類似性は、磁場116によって反対方向に印加される同様の磁力をもたらし得ることを理解されたい。したがって、第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132に印加された磁力は、カソード先端120の変位を相殺して減少させることができる。
【0034】
本開示の実施形態によれば、第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132は、異なる材料で作製されてもよい。例えば、第1のフィラメント131は第1の材料から構成されてもよく、第2のフィラメント132は第2の材料から構成されてもよい。第1の材料は、最大5%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金であってもよい。第2の材料は、20%~27%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金であってもよい。タングステン合金の他の組み合わせを使用してもよい。第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132は、互いに異なる断面を有することができる。例えば、第1のフィラメント131の断面及び第2のフィラメント132の断面は、第1材料の比抵抗及び第2材料の比抵抗に反比例する。特定の実施形態では、第1のフィラメント131は、70~80ミクロンの直径を有してもよく、第2のフィラメント132は、110~120ミクロンの直径を有してもよい。第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132は、異なる電流を流すことができる。第1のフィラメント131および第2のフィラメント132の特定のパラメータは異なっていてもよいが、それらは、磁場116によって反対方向に印加される同様の磁力を依然として生じ得ることを理解されたい。したがって、第1のフィラメント131及び第2のフィラメント132に印加された磁力は、カソード先端の変位を相殺して減少させることができる。
【0035】
本開示の別の実施形態は、
図2Aに示すように、磁気浸漬電子銃200を提供する。電子銃200は、磁気レンズ210を含んでもよい。
図2Bに示されるように、磁気レンズ210は、反対極性を有する一対の極片212から成ってもよい。磁気レンズ210は、開口214を画定する環状形状を有し得る。開口214は、1mm未満の直径を有してもよい。例えば、開口214は、50~100ミクロンの直径を有することができる。磁極片212は、
図2Bの紙面から出てくるように示されている開口214内に磁場216を形成することができる。磁場216は、100ガウス~1000ガウス以上の磁束密度を有し得る。例えば、磁場216は、600ガウスの磁束密度を有し得る。
【0036】
再び
図2Aを参照すると、電子銃200は、カソード先端220をさらに備えることができる。カソード先端220は、タングステン単結晶から構成されてもよい。カソード先端220は、長さ約2mm、直径120μmの鋭利な針であってもよい。カソード先端220の端部は、1ミクロン未満であってもよい。カソード先端220は、磁場216内に配置されうる。例えば、カソード先端220は、磁気レンズ110の開口114に配置されてもよい。
【0037】
電子銃200は、マルチフィラメントヒータ230をさらに備えてもよい。ヒータ230は、カソード先端220を直接加熱するように構成されてもよい。ヒータ230は、カソード先端220を1600K~1900Kの温度に加熱することができる。例えば、ヒータ230は、カソード先端220を1800Kの温度に加熱することができる。ヒータ230を用いてカソード先端220を直接加熱することにより、カソード先端220は、磁気レンズ210を介して電子を放出することができる。磁場216は、電子を集束させ、電子をターゲットに向けることができる。
【0038】
マルチフィラメントヒータ230は、第1のフィラメント231および第2のフィラメント232を含んでもよい。第1のフィラメント231および第2のフィラメント232は、電源240の正端子241および負端子242に各端部で接続され得る。例えば、第1のフィラメント231の第1の端部231a及び第2のフィラメント232の第1の端部232aは、電源240の正端子241に接続されてもよく、第1のフィラメント231の第2の端部231b及び第2のフィラメント232の第2の端部232bは、電源240の負端子242に接続されてもよい。
【0039】
本開示の実施形態によれば、第1のフィラメント231および第2のフィラメント232は、カソード先端220において交差し得る。例えば、第1のフィラメント231及び第2のフィラメント232は鋭角で交差してもよい。このようにして、電源240からの電流は、第1のフィラメント231および第2のフィラメント232を通って移動して、カソード先端220を直接加熱することができる。
【0040】
磁場216は、電源240からの電流によって生成される残留磁場に起因して、第1のフィラメント231および第2のフィラメント232に磁力を印加し得ることが理解され得る。以前の設計では、この磁力は、カソード先端220の即座の偏向を引き起こし得る。例えば、即時偏向は、カソード先端220を磁場216に垂直な方向に数ミクロン変位させ得る。加えて、カソード先端220は、高温クリーピングを経験し得、これは、カソード先端220を、経時的な即時偏向と同じ方向にゆっくりと移動させ得る。例えば、高温クリープは、カソード先端220を1年間にわたり40ミクロンまで変位させ得る。変位が2ミクロンを超える場合、カソードの再整列が必要となり得る。しかし、本発明の電子銃200によれば、磁力によるカソード先端220の変位を低減することができる。例えば、第1のフィラメント231と第2のフィラメント232との交差配置に基づいて、ヒータ230は、以前の設計よりも剛性であり得、したがって、磁場216によって印加される磁力によって引き起こされる変位が低減され得る。ヒータ230は、以前の設計よりも6~12倍剛性であり得る。
【0041】
本開示の実施形態によれば、第1のフィラメント231及び第2のフィラメント232は、同じ断面を有し得る。例えば、第1のフィラメント231及び第2のフィラメント232の直径は、30~250μmであってもよい。特定の実施形態では、第1のフィラメント231および第2のフィラメント232は、50~150μmの直径を有し得る。第1のフィラメント231および第2のフィラメント232は、同じ材料から作製され得る。例えば、第1のフィラメント231及び第2のフィラメント232は、タングステン-レニウム合金であってもよい。タングステン-レニウム合金は、最大27%のレニウムを含み得る。例えば、タングステン-レニウム合金は、1%、3%、5%、13%、もしくは20%のレニウム、または他の一般的に入手可能なタングステン-レニウム合金を含んでもよい。他のタングステン合金を使用してもよい。第1のフィラメント231及び第2のフィラメント232は、同じ電流を搬送することができる。例えば、電流は、1Aから2Aの間であってもよいが、特定の設計およびシステム条件に応じて、他の電流が印加されてもよい。第1のフィラメント231及び第2のフィラメント232のパラメータの類似性は、ヒータ230において均一な剛性をもたらし得ることが理解され得る。したがって、第1のフィラメント231および第2のフィラメント232に印加される磁力は、電子銃200の剛性に起因して、従来技術の設計と比較して、カソード先端220の変位の低減をもたらし得る。
【0042】
本開示の実施形態は、磁気液浸電子銃を使用して電子ビームを生成する方法300を提供する。方法300は、本開示の電子銃100に適用されてもよい。
図3Aに示すように、方法300は、以下のステップを含むことができる。
【0043】
ステップ310において、電源からの電流をマルチフィラメントヒータの第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに印加する。第1のフィラメントは、各端部において電源の第1の正端子および第2の正端子に接続されてもよく、第2のフィラメントは、各端部において電源の第1の負端子および第2の負端子に接続されてもよい。例えば、第1のフィラメントの第1の端部は、電源の第1の正端子に接続されてもよく、第1のフィラメントの第2の端部は、電源の第2の正端子に接続されてもよい。第2のフィラメントの第1の端部は、電源の第1の負端子に接続されてもよく、第2のフィラメントの第2の端部は、電源の第2の負端子に接続されてもよい。この例を
図1A~1Bに示す。
【0044】
ステップ320において、カソード先端は、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントを使用して加熱される。カソード先端は、タングステン単結晶から構成されてもよい。カソード先端は、長さ約2mm、直径120μmの鋭利な針であってもよい。カソード先端の端部は、1ミクロン未満であってもよい。ヒータは、カソード先端を1600K~1900Kの温度に加熱することができる。例えば、ヒータは、カソード先端を1800Kの温度に加熱することができる。電源の第1の正端子、第2の正端子、第1の負端子、および第2の負端子は、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントがカソード先端において交差するように、カソード先端の周囲に交互に配置されてもよい。第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、0度(すなわち、接触しているが交差していない)と90度との間の角度で交差してもよい。例えば、第1のフィラメント及び第2のフィラメントは直交していてもよい。このように、電源からの電流は、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントを通って移動し、カソード先端を直接加熱してもよい。
【0045】
ステップ330において、電子は、カソード先端から磁気レンズを通してターゲットに向かって放出される。磁気レンズは、開口を画定する環状形状を有してもよい。開口は、1mm未満の直径を有してもよい。例えば、開口は、50~100μmの直径を有し得る。磁極片は、開口内に磁場を形成することができる。磁場は、100ガウス~1000ガウス、またはそれ以上の磁束密度を有し得る。例えば、磁場は、600ガウスの磁束密度を有し得る。カソード先端は、磁気レンズによって形成される磁場内に配置されてもよい。例えば、カソード先端は、開口内に配置されてもよい。磁場によって第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに加えられる磁力は相殺され得、その結果、カソード先端に加えられる結果として生じる磁力は、20%(すなわち、80%以上の減少)未満または10%(すなわち、90%以上の減少)未満に低減され得る。これによりクリープを回避することができる。
【0046】
磁場は、電源からの電流によって生成される残留磁場に起因して、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに磁力を印加し得ることが理解され得る。先行技術の方法では、この磁力は、カソード先端の即座の偏向を引き起こし得る。例えば、即時偏向は、カソード先端を磁場に垂直な方向に数ミクロン変位させ得る。加えて、カソード先端は、高温クリーピングを経験し得、これは、カソード先端を、経時的な即時偏向と同じ方向にゆっくりと移動させ得る。例えば、高温クリープは、カソード先端を1年にわたり40ミクロンまで変位させ得る。変位が2ミクロンを超える場合、カソードの再整列が必要とされる。しかしながら、本開示の方法300では、磁力によるカソード先端の変位が低減され得る。例えば、電源の第1の正端子、第2の正端子、第1の負端子及び第2の負端子の交互配置に基づいて、磁場によって第1のフィラメント及び第2のフィラメントに印加される磁力を相殺することができる。
【0047】
本開示の実施形態によれば、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、同じ断面を有してもよい。例えば、前記第1のフィラメント及び前記第2のフィラメントの直径は、30~250μmであってもよい。特定の実施形態では、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、50~150μmの直径を有し得る。第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、同じ材料から作製されてもよい。例えば、第1のフィラメント及び第2のフィラメントは、タングステン-レニウム合金であってもよい。タングステン-レニウム合金は、最大27%のレニウムを含み得る。例えば、タングステン-レニウム合金は、1%、3%、5%、13%、もしくは20%のレニウム、または他の一般的に入手可能なタングステン-レニウム合金を含んでもよい。他のタングステン合金を使用してもよい。
【0048】
第1のフィラメント及び第2のフィラメントは、同じ電流を流すことができる。例えば、ステップ310は、
図3Bに示すように、以下のステップを含んでもよい。ステップ312において、第1の電流が第1のフィラメントに印加される。ステップ314において、第2の電流が第2のフィラメントに印加される。例えば、第1の電流および第2の電流は、1A~2Aであってもよいが、特定の設計およびシステム条件に応じて、他の電流が印加されてもよい。
【0049】
第1のフィラメントおよび第2のフィラメントのパラメータの類似性は、磁場によって反対方向に印加される同様の磁力をもたらし得ることを理解されたい。したがって、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに加えられる磁力は、相殺し、カソード先端の変位を低減し得る。
【0050】
本開示の実施形態によれば、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、異なる材料から作製され得る。例えば、第1のフィラメントは、第1の材料から構成されてもよく、第2のフィラメントは、第2の材料から構成されてもよい。第1の材料は、最大5%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金であってもよい。第2の材料は、20%~27%のレニウムを含むタングステン-レニウム合金であってもよい。タングステン合金の他の組み合わせを使用してもよい。第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、異なる断面を有してもよい。例えば、第1のフィラメントの断面および第2のフィラメントの断面は、第1材料の比抵抗および第2材料の比抵抗に反比例してもよい。特定の実施形態では、第1のフィラメントは、70~80ミクロンの直径を有してもよく、第2のフィラメントは、110~120ミクロンの直径を有してもよい。第1のフィラメント及び第2のフィラメントは、異なる電流を流すことができる。第1のフィラメントおよび第2のフィラメントの特定のパラメータは異なっていてもよいが、それらは、磁場によって反対方向に印加される同様の磁力を依然として生じ得ることを理解されたい。したがって、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに加えられる磁力は、相殺し、カソード先端の変位を低減し得る。
【0051】
本開示の実施形態は、磁気液浸電子銃を使用して電子ビームを生成する方法400を提供する。方法400は、本開示の電子銃200に適用されてもよい。
図4Aに示すように、方法400は、以下のステップを含むことができる。
【0052】
ステップ410において、電源からの電流がマルチフィラメントヒータの第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに印加される。第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、各端部において、電源への正端子および負端子に接続されてもよい。例えば、第1のフィラメントの第1の端部および第2のフィラメントの第1の端部は、電源の正端子に接続されてもよく、第1のフィラメントの第2の端部および第2のフィラメントの第2の端部は、電源の負端子に接続されてもよい。一例を
図2Aに示す。
【0053】
ステップ420において、カソード先端は、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントを使用して加熱される。カソード先端は、長さ約2mm、直径120μmの鋭利な針であってもよい。カソード先端の端部は、1ミクロン未満であってもよい。ヒータは、カソード先端を1600K~1900Kの温度に加熱することができる。例えば、ヒータは、カソード先端を1800Kの温度に加熱することができる。第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、カソード先端において交差してもよい。第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、0度(すなわち、接触しているが交差していない)と90度との間の角度で交差してもよい。例えば、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、鋭角で交差してもよい。このように、電源からの電流は、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントを通って移動し、カソード先端を直接加熱してもよい。
【0054】
ステップ430では、電子は、カソード先端から磁気レンズを通してターゲットに向かって放出される。カソード先端は、磁気レンズによって形成される磁場内に配置されてもよい。磁気レンズは、開口を画定する環状形状を有してもよい。開口は、1mm未満の直径を有してもよい。例えば、開口は、50~100ミクロンの直径を有し得る。磁場は、100ガウス~1000ガウス、またはそれ以上の磁束密度を有し得る。例えば、磁場は、600ガウスの磁束密度を有し得る。ヒータの剛性は、磁場によって第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに印加される磁力によって引き起こされるカソード先端の変位を低減させ得る。例えば、ヒータは、以前の設計よりも6~12倍剛性であり得る。
【0055】
本開示の実施形態によれば、第1のフィラメント及び第2のフィラメントは、同じ断面を有してもよく、例えば、第1のフィラメント及び第2のフィラメントは、30~250μmの直径を有してもよい。特定の実施形態では、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、50~150μmの直径を有し得る。第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、同じ材料から作製されてもよい。例えば、第1のフィラメント及び第2のフィラメントは、タングステン-レニウム合金であってもよい。タングステン-レニウム合金は、最大27%のレニウムを含み得る。例えば、タングステン-レニウム合金は、1%、3%、5%、13%、もしくは20%のレニウム、または他の一般的に入手可能なタングステン-レニウム合金を含んでもよい。他のタングステン合金を使用してもよい。
【0056】
第1のフィラメントおよび第2のフィラメントは、同じ電流を流すことができる。例えば、ステップ410は、
図4Bに示すように、以下のステップを含んでもよい。ステップ412において、第1の電流が第1のフィラメントに印加される。ステップ414において、第2の電流が第2のフィラメントに印加される。例えば、第1の電流および第2の電流は、1Aと2Aとの間であってもよいが、特定の設計およびシステム条件に応じて、他の電流が印加されてもよい。
【0057】
第1のフィラメント及び第2のフィラメントのパラメータの類似性は、ヒータにおいて均一な剛性をもたらし得ることが理解され得る。したがって、第1のフィラメントおよび第2のフィラメントに印加される磁力は、電子銃200の剛性に起因して、従来技術の設計と比較して、カソード先端の変位の低減をもたらし得る。
【0058】
図5は、システム500の実施形態のブロック図である。システム500は、ウェハ504の画像を生成するように構成されたウェハ検査ツール(電子コラム501を含む)を含む。
【0059】
ウェハ検査ツールは、少なくともエネルギー源および検出器を含む出力取得サブシステムを含む。出力取得サブシステムは、電子ビームベースの出力取得サブシステムであってもよい。例えば、一実施形態では、ウェハ504に向けられたエネルギーは電子を含み、ウェハ504から検出されたエネルギーは電子を含む。このようにして、エネルギー源は電子ビーム源とすることができる。
図5に示される1つのそのような実施形態では、出力取得サブシステムは、コンピュータサブシステム502に結合される電子カラム501を含む。ステージ510は、ウェハ504を保持することができる。
【0060】
また
図5に示すように、電子カラム501は、1つまたは複数の要素505によってウェハ504に集束される電子を生成するように構成された電子ビーム源を含む。電子ビーム源503は、例えば、本開示の電子銃100または電子銃200を含むカソード源またはエミッタ先端を含み得る。1つまたは複数の要素505は、たとえば、磁気レンズ110(または磁気レンズ210)、ガンレンズ、アノード、ビーム制限アパーチャ、ゲートバルブ、ビーム電流選択アパーチャ、対物レンズ、および走査サブシステムを含むことができ、これらのすべては、当技術分野で知られている任意のそのような好適な要素を含むことができる。
【0061】
ウェハ504から戻された電子(例えば、二次電子)は、1つ以上の要素506によって検出器507に集束されてもよい。1つまたは複数の要素506は、たとえば、要素505に含まれるのと同じ走査サブシステムであり得る走査サブシステムを含み得る。
【0062】
電子カラム501はまた、当技術分野で公知の任意の他の好適な要素を含んでもよい。
【0063】
電子カラム501は、電子が斜めの入射角でウェハ504に向けられ、別の斜めの角度でウェハ504から散乱されるように構成されるものとして
図5に示されているが、電子ビームは、任意の適切な角度でウェハ504に向けられ、そこから散乱されてもよい。さらに、電子ビームベースの出力取得サブシステムは、ウェハ504の画像(例えば、異なる照明角度、集光角度などを有する。)を生成するために複数のモードを使用するように構成することができる。電子ビームベースの出力取得サブシステムの複数のモードは、出力取得サブシステムの任意の画像生成パラメータにおいて異なり得る。
【0064】
コンピュータサブシステム502は、上述のように検出器507に結合することができる。検出器507は、ウェハ504の表面から戻ってきた電子を検出し、それによってウェハ504の電子ビーム画像を形成することができる。電子ビーム画像は、任意の適切な電子ビーム画像を含み得る。コンピュータサブシステム502は、検出器507の出力および/または電子ビーム画像を使用して、本明細書に説明される機能のうちのいずれかを行うように構成されてもよい。コンピュータサブシステム502は、本明細書に記載される任意の追加のステップを実行するように構成され得る。
図5に示される出力取得サブシステムを含むシステム500は、本明細書に記載されるようにさらに構成され得る。
【0065】
図5は、本明細書で説明される実施形態で使用され得る電子ビームベースの出力取得サブシステムの構成を概略的に図示するために本明細書で提供されることに留意されたい。本明細書で説明される電子ビームベースの出力取得サブシステム構成は、商業的出力取得システムを設計するときに通常行われるように、出力取得サブシステムの性能を最適化するように変更されてもよい。加えて、本明細書で説明されるシステムは、既存のシステム(たとえば、本明細書で説明する機能を既存のシステムに追加することによって、)を使用して実装され得る。いくつかのそのようなシステムに関して、本明細書で説明される方法は、システムの随意の機能性(例えば、システムの他の機能に加えて、)として提供されてもよい。代替として、本明細書に説明されるシステムは、完全に新しいシステムとして設計されてもよい。
【0066】
出力取得サブシステムは、電子ビームベースの出力取得サブシステムとして上述されているが、出力取得サブシステムは、イオンビームベースの出力取得サブシステムであってもよい。そのような出力取得サブシステムは、電子ビーム源が当技術分野で公知の任意の好適なイオンビーム源と置換され得ることを除いて、
図5に示されるように構成され得る。加えて、出力取得サブシステムは、市販の集束イオンビーム(FIB)システム、ヘリウムイオン顕微鏡(HIM)システム、および二次イオン質量分析(SIMS)システムに含まれるもの等の任意の他の好適なイオンビームベースの出力取得サブシステムであってもよい。
【0067】
コンピュータサブシステム502は、プロセッサ508および電子データ記憶ユニット509を含む。プロセッサ508は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または他のデバイスを含み得る。
【0068】
コンピュータサブシステム502は、プロセッサ508が出力を受信することができるように、任意の適切な様式(例えば、有線および/または無線伝送媒体を含むことができる1つまたは複数の伝送媒体を介する)でシステム500の構成要素に結合され得る。プロセッサ508は、出力を使用していくつかの機能を実行するように構成され得る。ウェハ検査ツールは、プロセッサ508から命令又は他の情報を受信することができる。プロセッサ508および/または電子データ記憶ユニット509は、任意選択で、別のウェハ検査ツール、ウェハ計測ツール、またはウェハレビューツール(図示せず)と電子通信して、追加の情報を受信するか、または命令を送信することができる。
【0069】
プロセッサ508は、検出器507などのウェハ検査ツールと電子通信する。プロセッサ508は、検出器507からの測定値を使用して生成された画像を処理するように構成され得る。たとえば、プロセッサは、方法300または方法400の実施形態を実行することができる。
【0070】
コンピュータサブシステム502、他のシステム、または本明細書で説明される他のサブシステムは、パーソナルコンピュータシステム、画像コンピュータ、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、ネットワークアプライアンス、インターネットアプライアンス、または他のデバイスを含む、種々のシステムの一部であってもよい。サブシステムまたはシステムは、並列プロセッサなど、当技術分野で知られている任意の適切なプロセッサも含み得る。加えて、サブシステムまたはシステムは、スタンドアロンツールまたはネットワークツールのいずれかとして、高速処理およびソフトウェアを有するプラットフォームを含んでもよい。
【0071】
プロセッサ508および電子データ記憶ユニット509は、システム500または別のデバイスの中に配置されるか、または別様にその一部であり得る。ある例では、プロセッサ508および電子データ記憶ユニット509は、独立型制御ユニットの一部であってもよく、または集中型品質制御ユニットであってもよい。複数のプロセッサ508または電子データ記憶ユニット509が使用され得る。
【0072】
プロセッサ508は、実際には、ハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアの任意の組合せによって実装され得る。また、本明細書で説明されるようなその機能は、1つのユニットによって実行されてもよく、または異なる構成要素の間で分割されてもよく、その各々は、ハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアの任意の組み合わせによって順に実装されてもよい。プロセッサ508が様々な方法および機能を実装するためのプログラムコードまたは命令は、電子データ記憶ユニット509内のメモリまたは他のメモリなどの可読記憶媒体に記憶され得る。
【0073】
システム500が複数のコンピュータサブシステム502を含む場合、画像、データ、情報、命令などをサブシステム間で送信できるように、異なるサブシステムを互いに結合することができる。たとえば、1つのサブシステムは、当技術分野で知られている任意の適切な有線および/または無線伝送媒体を含み得る任意の適切な伝送媒体によって追加のサブシステムに結合され得る。そのようなサブシステムのうちの2つ以上はまた、共有コンピュータ可読記憶媒体(図示せず)によって効果的に結合されてもよい。
【0074】
プロセッサ508は、システム500の出力または他の出力を使用して、いくつかの機能を実行するように構成され得る。たとえば、プロセッサ508は、出力を電子データ記憶ユニット509または別の記憶媒体に送るように構成され得る。プロセッサ508は、本明細書で説明するようにさらに構成され得る。
【0075】
プロセッサ508またはコンピュータサブシステム502は、欠陥レビューシステム、検査システム、計測システム、または何らかの他のタイプのシステムの一部であってもよい。したがって、本明細書で開示される実施形態は、異なる用途に多かれ少なかれ適している異なる能力を有するシステムのためにいくつかの方法で調整され得るいくつかの構成を説明する。
【0076】
プロセッサ508は、本明細書で説明される実施形態のいずれかに従って構成され得る。プロセッサ508はまた、システム500の出力を使用して、または他のソースからの画像もしくはデータを使用して、他の機能または追加のステップを行うように構成されてもよい。例えば、プロセッサ508は、電子ビーム源503への電流を調整することができる。
【0077】
プロセッサ508は、当技術分野で知られている任意の方法で、システム500の様々な構成要素またはサブシステムのいずれかに通信可能に結合され得る。さらに、プロセッサ508は、有線および/または無線部分を含み得る伝送媒体によって、他のシステム(例えば、レビューツールなどの検査システムからの検査結果、設計データを含むリモートデータベースなど)からデータまたは情報を受信および/または取得するように構成され得る。このようにして、伝送媒体は、プロセッサ508とシステム500の他のサブシステムまたはシステム500の外部のシステムとの間のデータリンクとして機能し得る。
【0078】
システム500および本明細書で開示される方法の様々なステップ、機能、および/または動作は、以下のうちの1つまたは複数によって実行される:電子回路、論理ゲート、マルチプレクサ、プログラマブル論理デバイス、ASIC、アナログもしくはデジタル制御/スイッチ、マイクロコントローラ、またはコンピューティングシステム。本明細書で説明されるもの等の方法を実装するプログラム命令は、キャリア媒体を介して伝送されるか、またはキャリア媒体上に記憶されてもよい。キャリア媒体は、読取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気または光ディスク、不揮発性メモリ、ソリッドステートメモリ、磁気テープなどの記憶媒体を含み得る。キャリア媒体は、ワイヤ、ケーブル、またはワイヤレス伝送リンクなどの伝送媒体を含み得る。例えば、本開示全体にわたって説明される様々なステップは、単一のプロセッサ508(またはコンピュータサブシステム502)、または代替として、複数のプロセッサ508(または複数のコンピュータサブシステム502)によって実行され得る。さらに、システム500の異なるサブシステムは、1つ以上のコンピューティングまたは論理システムを含んでもよい。したがって、上記の説明は、本開示に対する限定として解釈されるべきではなく、単なる例示として解釈されるべきである。
【0079】
本開示は、1つ以上の特定の実施形態に関して説明されたが、本開示の他の実施形態が、本開示の範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその妥当な解釈によってのみ限定されると見なされる。
【国際調査報告】