(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】超吸収性ポリマー粒子を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
C08J3/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517257
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2021074463
(87)【国際公開番号】W WO2022058190
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/115943
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーファート,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヌアサエン,サカンヤ
(72)【発明者】
【氏名】アルソーン,ピーナパ
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA29
4F070AB13
4F070DA44
4F070DA48
4F070DB06
4F070DB09
4F070DC06
4F070DC07
(57)【要約】
本発明は、超吸収性ポリマー粒子を製造する方法であって、モノマー溶液を重合させるステップ、形成されたポリマーゲルを乾燥させるステップ、乾燥されたポリマーゲルを粉砕するステップ、ポリマー粒子を分類して熱的に表面後架橋するステップを含み、モノマー溶液がキレート剤及びアルミニウム塩を含有する、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超吸収性ポリマー粒子を製造する方法であって、
a)酸基を有し、かつ少なくとも部分的に中和されていてもよい少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、
b)少なくとも1種の架橋剤、及び
c)少なくとも1種の開始剤
を含有するモノマー溶液を重合させるステップ、形成されたポリマーゲルを乾燥させるステップ、乾燥されたポリマーゲルを粉砕するステップ、ポリマー粒子を分類して熱的に表面後架橋するステップを含み、モノマー溶液が、更に、それぞれモノマーa)を基準として、0.001~1.00mol%のキレート剤及び0.0001~0.100mol%のアルミニウムカチオンを含有する、方法。
【請求項2】
モノマー溶液が、モノマーa)を基準として0.050~0.25mol%のキレート剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モノマー溶液が、モノマーa)を基準として0.005~0.025mol%のアルミニウムカチオンを含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
モノマー溶液におけるキレート剤がアミノカルボン酸又はその塩である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
モノマー溶液におけるキレート剤がメチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
モノマー溶液におけるアルミニウムカチオン源が三乳酸アルミニウムである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー粒子を基準として0.01~2.0重量%の水酸化アルミニウムが、熱的な表面後架橋の前、その間、又はその後にポリマー粒子に添加される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ポリマー粒子を基準として0.15~0.6重量%の水酸化アルミニウムが、熱的な表面後架橋の前、その間、又はその後にポリマー粒子に添加される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ポリマー粒子を基準として0.001~0.15mol/kgのアルミニウムカチオンが、熱的な表面後架橋の前、その間、又はその後にポリマー粒子に水溶液として添加される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ポリマー粒子を基準として0.005~0.05mol/kgのアルミニウムカチオンが、熱的な表面後架橋の前、その間、又はその後にポリマー粒子に水溶液として添加される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
熱的な表面後架橋の前、その間、又はその後にポリマー粒子に添加されるアルミニウムカチオン源が三乳酸アルミニウムである、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法に従って得られる、キレート剤及びアルミニウム塩を含有する超吸収性ポリマー粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超吸収性ポリマー粒子を製造する方法であって、モノマー溶液を重合させるステップ、形成されたポリマーゲルを乾燥させるステップ、乾燥されたポリマーゲルを粉砕するステップ、ポリマー粒子を分類して熱的に表面後架橋するステップを含み、モノマー溶液がキレート剤及びアルミニウムカチオンを含有する、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超吸収性ポリマー粒子は、おむつ、タンポン、生理用ナプキン、及び他の衛生物品、並びに市場園芸における保水剤を製造するためにも用いられる。超吸収性ポリマー粒子は、「吸収性樹脂」、「超吸収体」、「超吸収性ポリマー」、「吸収性ポリマー」、「吸収性ゲル化材料」、「親水性ポリマー」、又は「ヒドロゲル」と呼ばれることも多い。
【0003】
超吸収性ポリマー粒子の製造は、モノグラフ"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F.L. Buchholz and A.T. Graham, Wiley-VCH, 1998,71~103頁に記載されている。
【0004】
WO2008/009599A1は、透過性促進剤としてのアルミニウム塩の使用を開示しており、EP3264485A1は、フォーム促進剤としてのアルミニウム塩の使用を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/009599A1
【特許文献2】EP3264485A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F.L. Buchholz and A.T. Graham, Wiley-VCH, 1998,71~103頁
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、改善された特性、特に高い吸収速度を有する超吸収性ポリマー粒子を製造する方法を提供することであった。
【0008】
上記目的は、超吸収性ポリマー粒子を製造する方法であって、
a)酸基を有し、かつ少なくとも部分的に中和されていてもよい少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)少なくとも1種の開始剤、
d)場合により、a)に記載のモノマーと共重合可能な1種以上のエチレン性不飽和モノマー、及び
e)場合により、1種以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液を重合させるステップ、形成されたポリマーゲルを乾燥させるステップ、乾燥されたポリマーゲルを粉砕するステップ、ポリマー粒子を分類して熱的に表面後架橋するステップを含み、モノマー溶液が、更に、それぞれモノマーa)を基準として、0.001~1.00mol%、好ましくは0.005~0.75mol%、より好ましくは0.010~0.50mol%、最も好ましくは0.050~0.25mol%のキレート剤及び0.0001~0.100mol%、好ましくは0.0005~0.075mol%、より好ましくは0.001~0.050mol%、最も好ましくは0.005~0.025mol%のアルミニウムカチオンを含有する、方法により達成された。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好適なキレート剤は、アミノカルボン酸、例えばメチルイミノ二酢酸、メチルグリシン二酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、(ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン三酢酸、及びエチレンジアミン四酢酸、又はそれらの塩である。
【0010】
全ての水溶性アルミニウム塩、例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、一酢酸アルミニウム、及び三乳酸アルミニウムが、モノマー溶液におけるアルミニウムカチオン源として用いられうる。三乳酸アルミニウムが好ましい。
【0011】
本発明は、吸収速度が、キレート剤及びアルミニウムカチオンのモノマー溶液への添加により改善されうるという発見に基づく。キレート剤単独での添加、又はアルミニウムカチオン単独での添加では、吸収速度に効果がないか又は逆の効果を有する。
【0012】
ポリマー粒子を基準として、好ましくは0.01~2.0重量%、より好ましくは0.05~1.2重量%、最も好ましくは0.15~0.6重量%の水酸化アルミニウムが、熱的な表面後架橋の前、その間、又はその後にポリマー粒子に添加される。WO2019/197194A1に記載されているX線非晶質水酸化アルミニウムが好ましい。
【0013】
超吸収性ポリマー粒子の表面の水酸化アルミニウムは、透過性を改善する。
【0014】
ポリマー粒子を基準として、好ましくは0.001~0.15mol/kg、より好ましくは0.003~0.10mol/kg、最も好ましくは0.005~0.05mol/kgのアルミニウムカチオンが、熱的な表面後架橋の前、その間、又はその後にポリマー粒子に水溶液として添加される。
【0015】
全ての水溶性アルミニウム塩、例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、一酢酸アルミニウム、及び三乳酸アルミニウムが、ポリマー粒子に添加されるアルミニウムカチオン源として用いられうる。三乳酸アルミニウムが好ましい。
【0016】
本発明は、本発明の方法により得られる超吸収性ポリマー粒子を更に提供する。
【0017】
超吸収性ポリマー粒子の製造を、以下に詳細に記載する。
【0018】
超吸収性ポリマー粒子は、典型的には、水に不溶性であるが膨潤性である。
【0019】
モノマーa)は、好ましくは水溶性、即ち23℃での水への溶解性が典型的には少なくとも1g/水100g、好ましくは少なくとも5g/水100g、より好ましくは少なくとも25g/水100g、最も好ましくは少なくとも35g/水100gである。
【0020】
好適なモノマーa)は、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びイタコン酸である。特に好ましいモノマーはアクリル酸及びメタクリル酸である。非常に特に好ましいのはアクリル酸である。
【0021】
更に好適なモノマーa)は、例えば、エチレン性不飽和スルホン酸、例えばビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0022】
不純物は、重合に強い影響を与えることがある。特に精製されたモノマーa)が好ましい。有用な精製方法はWO2002/055469A1、WO2003/078378A1、及びWO2004/035514A1に開示されている。好適なモノマーa)は、WO2004/035514A1に従い、99.8460重量%のアクリル酸、0.0950重量%の酢酸、0.0332重量%の水、0.0203重量のプロピオン酸、0.0001重量%のフルフラール、0.0001重量%の無水マレイン酸、0.0003重量%のジアクリル酸、及び0.0050重量%のヒドロキノンモノメチルエーテルを有する精製されたアクリル酸である。
【0023】
モノマーa)の全量におけるアクリル酸及び/又はその塩の含有量は、好ましくは少なくとも50mol%、より好ましくは少なくとも90mol%、最も好ましくは少なくとも95mol%である。
【0024】
モノマーa)は、保存のために阻害剤として、重合防止剤、好ましくはヒドロキノンモノエーテルを典型的には含有する。
【0025】
モノマー溶液は、各場合において中和されていないアクリル酸を基準として、好ましくは最大250重量ppm、好ましくは最大130重量ppm、より好ましくは最大70重量ppm、好ましくは少なくとも10重量ppm、より好ましくは少なくとも30重量ppm、とりわけ50重量ppm前後のヒドロキノンモノエーテルを含む。例えば、モノマー溶液は、適当な含有量のヒドロキノンモノエーテルとともに、アクリル酸を用いることによって調製することができる。
【0026】
好ましいヒドロキノンモノエーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)及び/又はアルファ-トコフェロール(ビタミンE)である。
【0027】
架橋剤b)は、好ましくは、フリーラジカルによってポリマーネットワークに重合することができる、少なくとも2つの重合性基を有する化合物である。好適な架橋剤b)は、例えば、EP0530438A1に記載されているエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルオキシエタン、EP0547847A1、EP0559476A1、EP0632068A1、WO93/21237A1、WO2003/104299A1、WO2003/104300A1、WO2003/104301A1、及びDE10331450A1に記載されている、ジ-及びトリアクリレート、DE10331456A1及びDE10355401A1に記載されている、アクリレート基とともに更なるエチレン性不飽和基を含む混合アクリレート、又は例えばDE19543368A1、DE19646484A1、WO90/15830A1、及びWO2002/032962A2に記載されている、架橋剤の混合物である。
【0028】
好ましい架橋剤b)は、ペンタエリスリチルトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、メチレンビスメタクリルアミド、15個(tuply)のエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びトリアリルアミンである。
【0029】
非常に特に好ましい架橋剤b)は、例えばWO2003/104301A1に記載されている、アクリル酸又はメタクリル酸でエステル化されて、ジ-又はトリアクリレートを与えるポリエトキシル化及び/又はポリプロポキシル化グリセロールである。3~10個のエトキシル化グリセロールのジ-及び/又はトリアクリレートが、特に有利である。1~5個のエトキシル化及び/又はプロポキシル化グリセロールのジ-又はトリアクリレートは、非常に特に好ましい。最も好ましいものは、3~5個のエトキシル化及び/又はプロポキシル化グリセロールのトリアクリレート、とりわけ3個のエトキシル化グリセロールのトリアクリレートである。
【0030】
架橋剤b)の量は、各場合において中和されていないアクリル酸を基準として、好ましくは0.05~1.5重量%、より好ましくは0.1~1重量%、最も好ましくは0.3~0.6重量%である。架橋剤の含有量の上昇に伴って、遠心分離保持容量(CRC)は低下し、21.0g/cm2の圧力下吸収性は、最大値を通過する。
【0031】
用いる開始剤c)は、重合条件下でフリーラジカルを発生させるすべての化合物、例えば、熱開始剤、レドックス開始剤、光開始剤であってよい。好適なレドックス開始剤は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/アスコルビン酸、過酸化水素/アスコルビン酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/重亜硫酸ナトリウム、及び過酸化水素/重亜硫酸ナトリウムである。熱開始剤とレドックス開始剤との混合物、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム/過酸化水素/アスコルビン酸を用いることが好ましい。しかしながら、用いる還元成分は、好ましくは、2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸二ナトリウム、又は、2-ヒドロキシ-2-スルフィナト酢酸(sulfinatoacetate)二ナトリウム、2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸二ナトリウム及び重亜硫酸ナトリウムの混合物である。このような混合物は、Brueggolite(登録商標)FF6及びBrueggolite(登録商標)FF7(Brueggemann Chemicals (Heilbronn;ドイツ))として入手可能である。
【0032】
アクリル酸と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーd)は、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートである。
【0033】
用いられる水溶性ポリマーe)は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、変性セルロース、例えばメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、ポリグリコール又はポリアクリル酸であってよく、好ましくはデンプン、デンプン誘導体及び変性セルロースであってよい。
【0034】
典型的には、水性モノマー溶液を用いる。モノマー溶液の含水率は、好ましくは40~75重量%、より好ましくは45~70重量%、最も好ましくは50~65重量%である。モノマー懸濁液、すなわち過剰なアクリル酸ナトリウムを含むモノマー溶液を用いることもできる。含水率の上昇に伴って後続の乾燥におけるエネルギー要求が増加し、含水率の低下に伴って、重合の熱が不十分にしか除去されない場合がある。
【0035】
最適な作用のためには、好ましい重合防止剤は溶存酸素を必要とする。そのため、モノマー溶液は、不活性化によって、すなわち、不活性ガス、好ましくは窒素又は二酸化炭素を流すことによって、重合の前には溶存酸素が除去されている場合がある。モノマー溶液の酸素含有量は、好ましくは、1重量ppm未満まで、より好ましくは0.5重量ppm未満まで、最も好ましくは0.1重量ppm未満まで、重合前に低下させる。
【0036】
モノマー溶液を重合させる。好適な反応器は、例えば、混練反応器又はベルト反応器である。混練機では、水性モノマー溶液又は懸濁液の重合において形成されたポリマーゲルは、例えば、WO2001/038402A1に記載されているように、反転撹拌シャフトによって、連続的に粉砕される。ベルト上での重合は、例えばDE3825366A1及び米国特許第6,241,928号に記載されている。ベルト反応器における重合はポリマーゲルを形成し、これは、更なるプロセスステップにおいて、例えば押出機又は混練機中で、粉砕しなければならない。
【0037】
乾燥特性を改善するため、混練機によって得られた粉砕ポリマーゲルを、追加で押出すことができる。
【0038】
得られたポリマーゲルの酸基は、典型的には、部分的に中和されている。中和は、好ましくは、モノマー段階で行われる。これは、典型的には、水溶液として、又は好ましくは固体としても、中和剤中で混合することによって達成される。中和度は、好ましくは50~85mol%、より好ましくは60~80mol%、最も好ましくは65~75mol%であり、中和のため、通例の中和剤、好ましくは、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩、又はアルカリ金属炭酸水素塩、及びこれらの混合物も用いることができる。アルカリ金属塩の代わりに、アンモニウム塩を用いることもできる。特に好ましいアルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムであるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びまたこれらの混合物は、非常に特に好ましい。
【0039】
得られるポリマーゲルを、乾燥させる。乾燥機は、いずれの制限も受けない。しかしながら、ポリマーゲルの乾燥は、残留水分含有率が、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~7重量%、最も好ましくは2~5重量%になるまで、好ましくはベルト乾燥機によって実行し、残留水分含有率は、EDANA推奨試験法No.WSP230.2(05)「Mass Loss Upon Heating」によって決定される。残留水分含有率が高すぎる場合、乾燥ポリマーゲルは低すぎるガラス転移温度Tgを有し、更に処理をしてもよいが、困難なばかりである。残留水分含有率が低すぎる場合、乾燥ポリマーゲルはあまりにもろく、後続の粉砕ステップにおいて、望ましくないことに、過度に小さな粒子サイズを有するポリマー粒子(微粉)を大量に得る。乾燥前のゲルの固体含有率は、好ましくは25~90重量%、より好ましくは35~70重量%、最も好ましくは40~60重量%である。しかしながら、流動床乾燥機又はパドル式乾燥機も、場合により、乾燥目的で用いてよい。
【0040】
続いて、乾燥ポリマーゲルを粉砕及び分類する。粉砕に用いる器具は、典型的には、単段若しくは多段ロールミル、好ましくは2段若しくは3段ロールミル、ピンミル、ハンマーミル、又は振動ミルであってよい。
【0041】
生成物画分として取り出されるポリマー粒子の平均粒子サイズは、好ましくは少なくとも200μm、より好ましくは250~600μm、非常に特定的には300~500μmである。生成物画分の平均粒子サイズは、EDANA推奨試験法No.WSP220.2(05)「Particle Size Distribution」によって決定されうるが、ふるい分け画分の質量による割合を累積形式でプロットし、図によって平均粒子サイズを決定した。ここでの平均粒子サイズは、累積50重量%を生じさせるメッシュサイズの値である。
【0042】
少なくとも150μmの粒子サイズを有する粒子の割合は、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%である。
【0043】
小さすぎる粒子サイズを有するポリマー粒子は、生理食塩水流れ誘導性(saline flow conductivity)(SFC)を低下させる。そのため、過度に小さなポリマー粒子(「微粉」)の割合は、少なくするべきである。
【0044】
そのため、過度に小さなポリマー粒子は、典型的には、取り出し、プロセスに再利用する。これは、好ましくは、重合の前、その間、又はその直後、すなわち、ポリマーゲルの乾燥の前に行う。過度に小さなポリマー粒子は、再利用の前又はその間に、水及び/又は水性界面活性剤によって潤すことができる。
【0045】
後のプロセスステップにおいて、例えば、表面後架橋又は別のコーティングステップの後で、過度に小さなポリマー粒子を取り出すこともできる。この場合、再利用される過度に小さなポリマー粒子は、別の方法、例えばヒュームドシリカによって、表面後架橋又はコーティングする。
【0046】
重合に混練反応器を用いる場合、過度に小さなポリマー粒子は、好ましくは、重合の最後の1/3に加える。
【0047】
過度に小さなポリマー粒子を、非常に早期の段階で、例えば、実際にモノマー溶液に加える場合、これによって得られる超吸収性ポリマー粒子の遠心分離保持容量(CRC)が低下する。しかしながら、これは、例えば用いる架橋剤b)の量を調整することによって、埋め合わせることができる。
【0048】
過度に小さなポリマー粒子を、非常に遅い段階で加える場合、例えば、重合反応器の下流に接続した器具、例えば押出機まで加えない場合、過度に小さなポリマー粒子は、得られたポリマーゲルに組み込まれうるが、困難なばかりである。しかしながら、不十分に組み込まれた過度に小さなポリマー粒子は、粉砕中に乾燥ポリマーゲルから再び外れ、そのため、分類の過程で再び取り出され、再利用する過度に小さなポリマー粒子の量が増加する。
【0049】
最大850μmの粒子サイズを有する粒子の割合は、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%である。
【0050】
最大600μmの粒子サイズを有する粒子の割合は、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%である。
【0051】
過度に大きな粒子サイズのポリマー粒子は、自由膨潤速度(FSR)を低下させる。そのため、過度に大きなポリマー粒子の割合は、同じく少なくするべきである。
【0052】
そのため、過度に大きなポリマー粒子は、典型的には、取り出して乾燥ポリマーゲルの粉砕に再利用する。
【0053】
特性を改善するため、続いて、ポリマー粒子を熱的に表面後架橋する。好適な表面後架橋剤は、ポリマー粒子の少なくとも2つの酸基と共有結合を形成することができる基を含む化合物である。好適な化合物は、例えば、EP0083022A2、EP0543303A1、及びEP0937736A2に記載されている、多官能アミン、多官能アミドアミン、多官能エポキシド、DE3314019A1、DE3523617A1、及びEP0450922A2に記載されている二官能若しくは多官能アルコール、又はDE10204938A1及び米国特許第6,239,230号に記載されているβ-ヒドロキシアルキルアミドである。
【0054】
DE4020780C1における環式カーボネート、DE19807502A1における2-オキサゾリジノン及びその誘導体、例えば2-ヒドロキシエチル-2-オキサゾリジノン、DE19807992C1におけるビス-及びポリ-2-オキサゾリジノン、DE19854573A1における2-オキソテトラヒドロ-1,3-オキサジン及びその誘導体、DE19854574A1におけるN-アシル-2-オキサゾリジノン、DE10204937A1における環式尿素、DE10334584A1における二環式アミドアセタール、EP1199327A2におけるオキセタン及び環式尿素、並びにWO2003/031482A1におけるモルホリン-2,3-ジオン及びその誘導体が、好適な表面後架橋剤として加えて記載される。
【0055】
好ましい表面後架橋剤は、炭酸エチレン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアミドとエピクロロヒドリンとの反応生成物、及びプロピレングリコールと1,4-ブタンジオールとの混合物である。
【0056】
非常に特に好ましい表面後架橋剤は、2-ヒドロキシエチルオキサゾリジン-2-オン、オキサゾリジン-2-オン、及び1,3-プロパンジオールである。
【0057】
加えて、DE3713601A1に記載されている、追加の重合性エチレン性不飽和基を含む表面後架橋剤を用いることもできる。
【0058】
表面後架橋剤の量は、各場合においてポリマー粒子を基準として、好ましくは0.001~2重量%、より好ましくは0.02~1重量%、最も好ましくは0.05~0.2重量%である。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、アルミニウムカチオンは、表面後架橋剤に加えて、表面後架橋の前、その間、又はその後で、粒子表面に適用される。
【0060】
表面後架橋は、典型的には、表面後架橋剤の溶液が乾燥ポリマー粒子に噴霧される方法で行われる。噴霧適用の後、表面後架橋剤でコーティングされたポリマー粒子を、熱によって乾燥させるが、表面後架橋反応は、乾燥の前又はその間のいずれかに起こりうる。
【0061】
表面後架橋剤の溶液の噴霧適用は、好ましくは、可動混合用具を有する混合機、例えばスクリュー式混合機、ディスク式混合機、及びパドル式混合機で実行する。水平型混合機、例えばパドル式混合機は特に好ましく、垂直型混合機は非常に特に好ましい。水平型混合機と垂直型混合機との区別は、混合シャフトの位置によってなされ、すなわち、水平型混合機は水平に取り付けられた混合シャフトを有し、垂直型混合機は垂直に取り付けられた混合シャフトを有する。好適な混合機は、例えば、水平型Pflugschar(登録商標)プラウシェア混合機(Gebr. Loedige Maschinenbau GmbH;パーダーボルン;ドイツ)、Vrieco-Nauta連続混合機(Hosokawa Micron BV;ドゥーティンヘム;オランダ)、Processall Mixmill混合機(Processall Incorporated;シンシナティ;USA)、及びSchugi Flexomix(登録商標)(Hosokawa Micron BV;ドゥーティンヘム;オランダ)である。しかしながら、流動床において表面後架橋剤溶液の噴霧を行うこともできる。
【0062】
表面後架橋剤は、典型的には、水溶液の形態で用いられる。表面後架橋剤のポリマー粒子への浸透深度は、非水性溶媒の含有率及び溶媒の総量によって、調整することができる。
【0063】
溶媒として水のみを用いた場合、有利には界面活性剤を加える。これによって、湿潤化挙動が改善され、塊を形成する傾向が低下する。しかしながら、溶媒混合物、例えば、イソプロパノール/水、1,3-プロパンジオール/水、及びプロピレングリコール/水を用いることが好ましく、質量による混合比は、好ましくは20:80~40:60である。
【0064】
熱的な表面後架橋は、好ましくは、接触式乾燥機、より好ましくはパドル式乾燥機、最も好ましくはディスク式乾燥機で実行する。好適な乾燥機は、例えば、Hosokawa Bepex(登録商標)Horizontal Paddle Dryer(Hosokawa Micron GmbH;ラインガルテン;ドイツ)、Hosokawa Bepex(登録商標)Disc Dryer(Hosokawa Micron GmbH;ラインガルテン;ドイツ)、及びNara Paddle Dryer(NARA Machinery Europe;フレッヒェン;ドイツ)である。更に、流動床乾燥機も用いてもよい。
【0065】
熱的な表面後架橋は、ジャケットの加熱又は温かい空気中の吹き込みによって、混合機自体の中でも行うことができる。下降流型乾燥機、例えば棚段乾燥機、回転式管状炉、または加熱可能なスクリューは、同様に好適である。流動床乾燥機で混合及び乾燥を行うことは、特に有利である。
【0066】
好ましい表面後架橋温度は、100~250℃、好ましくは120~220℃、より好ましくは130~210℃、最も好ましくは150~200℃の範囲内である。反応混合機又は乾燥機中で、この温度における好ましい滞留時間は、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも20分、最も好ましくは少なくとも30分であり、典型的には最大60分である。
【0067】
続いて、表面後架橋されたポリマー粒子を、再び分類することができ、過度に小さな及び/又は過度に大きなポリマー粒子は取り出され、プロセスに再利用される。
【0068】
特性を更に改善するため、表面後架橋されたポリマー粒子を、コーティング又は再加湿することができる。
【0069】
再加湿は、好ましくは30~80℃において、より好ましくは35~70℃において、最も好ましくは40~60℃において実行する。過度に低い温度では、超吸収性ポリマー粒子が塊を形成する傾向があり、高温では、目に見えるほど水が既に蒸発している。再加湿に用いる水の量は、好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~8重量%、最も好ましくは3~5重量%である。再加湿によって、ポリマー粒子の機械的安定性が上昇し、静電気を帯びる傾向が低下する。
【0070】
自由膨潤速度及び生理食塩水流れ誘導性(SFC)を改善するために好適なコーティングは、例えば、無機不活性物質、例えば、非水溶性金属塩、有機ポリマー、カチオン性ポリマー、及び二価又は多価金属カチオンである。ダストの結合に好適なコーティングは、例えばポリオールである。ポリマー粒子の望ましくないケーキング傾向を抑制するために好適なコーティングは、例えば、ヒュームドシリカ、例えばAerosil(登録商標)200、及び界面活性剤、例えばSpan(登録商標)20である。
【0071】
方法
測定は、別段の指定がない限り、23±2℃の周囲温度、及び50±10%の相対大気湿度において行うものとする。超吸収性ポリマー粒子は、測定の前に十分に混合する。
【0072】
遠心分離保持容量(CRC)
超吸収性ポリマー粒子の遠心分離保持容量は、EDANA推奨試験法No.WSP241.2(05)「Gravimetric Determination of Fluid Retention Capacity in Saline Solution After Centrifugation」によって決定するが、値が大きな遠心分離保持容量については、大きなティーバッグを用いなければならない。
【0073】
ボルテックス
1.00gの乾燥超吸収性ポリマー粒子を25mlガラスビーカーに秤量し、ガラスビーカーの底に均一に広げる。次いで、20mlの0.9重量%塩化ナトリウム溶液を第2のガラスビーカーに分注し、このビーカーの内容物を第1のビーカーに素早く加え、ストップウォッチを始動する。液体表面の反射の消失によって塩溶液の最後の一滴が吸収されたことが確認されたらすぐに、ストップウォッチを止める。
【0074】
ゲル床透過性(GBP)
0.3psi(2070Pa)の圧力下での膨潤ゲル層のゲル床透過性(GBP)を、US2005/0256757(段落[0061]及び[0075])に記載されているように、超吸収性ポリマー粒子の膨潤ゲル層のゲル床透過性として測定した。
【実施例】
【0075】
例1
最初に、2Lステンレス鋼容器に、284.46gの50重量%水性水酸化ナトリウム、及び558.44gの脱イオン水を投入した。冷却浴によって、混合物を15℃に冷却した。次いで、撹拌しながら、251.21gのアクリル酸の第1の部分を加えた。添加の速度は、温度が30℃を超えないように調整した。添加後2分間、混合物を約30℃に保った。
【0076】
その後、混合物の温度を30℃より低く保ち、撹拌しながら、追加となる90.43gのアクリル酸の第2の部分を加えた。中和度は75mol%であった。アクリル酸の第2の部分の添加の後、混合物を20℃に冷却し、撹拌しながら、0.55gの17.5個のエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートを加えた。次いで、撹拌しながら、0.036gの2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン及び0.012gの2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンを加え、混合物を18℃に冷却した。混合物を5℃に冷却しながら、ガラスフリットによって窒素を通過させることによって、混合物から酸素を除去した。
【0077】
次いで、5.12gの水性2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸二ナトリウム塩(5重量%水溶液として)、0.68gの水性乳酸アルミニウム(22重量%水溶液として)、3.42gの水性メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩(40重量%溶液として、Trilon(登録商標)M Liquid(BASF SE、ルートウィヒスハーフェン、ドイツ)として入手可能)、及び5.64の水性過硫酸ナトリウム(10重量%水溶液として)を、モノマー溶液に順次加えた。モノマー溶液をガラス皿に移した。ガラス皿の寸法は、5cmのモノマー溶液の層の厚さが構築されるものであった。
【0078】
モノマー溶液を有するガラス皿をUVランプ(UV強度=25mW/cm2)の下に11.5分間置き、更に4.5分間、UVランプの電源を切っておくことによって、混合物を重合させた(合計反応時間16分間)。6mm有孔ディスクを有する市販の肉挽き機を活用して、得られたポリマーゲルを粉砕した。3.42gの水性メタ重亜硫酸ナトリウム(5重量%水溶液として)を粉砕ゲルに噴霧し、ゲルを更に2回、肉挽き機を通過させた。得られたポリマーゲルを、180℃の実験室乾燥キャビネット中で、60分間乾燥させた。次いで、超遠心ミルによって生成物を粉砕し(12歯ロータ及び1.5mm環状ふるいを有するRetschモデルZM100、14000rpmの速度、Retsch GmbH(ハーン、ドイツ)製)、ミル処理生成物をふるい分けすることによって150~710μmのふるい画分を得た。
【0079】
1200gのポリマー粒子を、実験室プラウシェア混合機(モデルMR5、Gebruder Lodige Maschinenbau GmbH(パーダーボルン、ドイツ)製)で3.6の水酸化アルミニウム(粉末として)と2分間混合した。
【0080】
次いで、0.36gのエチレングリコールジグリシジルエーテル、24gの1,2-プロパンジオール、及び36gの脱イオン水を含有する溶液A、並びに24gの水性乳酸アルミニウム(22重量%水溶液として)を含有する溶液Bを調製した。200rpmの混合機速度で、水溶液(溶液A及びB)を噴霧ノズルで1分以内にポリマー粒子に噴霧した。コーティングされたポリマー粒子を163℃で120分間加熱した。次いで、ポリマー粒子を70℃に冷却した。32.5gの脱イオン水をポリマー粒子に加えた。ポリマー粒子を5分間混合した。次いで、ポリマー粒子を混合機から取り出し、最後にふるい分け(150~710μmの画分)した。
【0081】
例2
三水酸化アルミニウムをポリマー粒子に加えずに例1を繰り返した。
【0082】
例3(比較)
乳酸アルミニウムをモノマー溶液に加えずに例2を繰り返した。
【0083】
例4(比較)
メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩をモノマー溶液に加えずに例2を繰り返した。
【0084】
例5(比較)
乳酸アルミニウムをモノマー溶液に加えず、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩をモノマー溶液に加えずに例2を繰り返した。
【0085】
【国際調査報告】