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特表2023-542884ガリウムベースのIII-N合金の層をエピタキシャル成長させるための基板を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ガリウムベースのIII-N合金の層をエピタキシャル成長させるための基板を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20231004BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20231004BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20231004BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20231004BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20231004BHJP
   C30B 25/18 20060101ALI20231004BHJP
   C30B 19/12 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L29/80 H
H01L21/265 Q
H01L21/02 B
H01L21/02 C
C30B29/38 D
C30B25/18
C30B19/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517668
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 FR2021051709
(87)【国際公開番号】W WO2022074318
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】2010206
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ギオ, エリック
【テーマコード(参考)】
4G077
5F102
5F152
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE11
4G077BE15
4G077CG10
4G077DB01
4G077ED04
4G077ED06
4G077HA02
4G077HA12
4G077QA71
4G077TA04
4G077TK01
4G077TK06
4G077TK13
5F102GJ02
5F102GJ04
5F102GJ09
5F102GK02
5F102GK04
5F102GL04
5F102HC01
5F102HC07
5F152LP01
5F152LP06
5F152LP08
5F152LP09
5F152MM05
5F152MM09
5F152MM18
5F152NN02
5F152NN03
5F152NN05
5F152NN09
5F152NN12
5F152NN22
5F152NP02
5F152NP09
5F152NQ09
(57)【要約】
ガリウムベースのIII-N合金の層のエピタキシャル成長のための基板を製造するための方法は、単結晶半絶縁性炭化ケイ素のドナー基板を用意するステップと、転写される単結晶半絶縁性SiCの薄層を画定する脆弱化領域を形成するように、ドナー基板にイオン種を注入するステップと、接合層を介してドナー基板を第1のレシーバ基板に接合するステップと、単結晶半絶縁性SiCの薄層を第1のレシーバ基板に転写するように、脆弱化領域に沿ってドナー基板を分離するステップと、転写された薄層上に半絶縁性SiCの追加の層を形成するステップと、追加の層を、高い電気抵抗率を有する第2のレシーバ基板に接合するステップと、第1のレシーバ基板を分離し、転写された単結晶半絶縁性SiCの層を露出させるように、接合層の少なくとも一部を除去するステップと、を含む。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の層のエピタキシャル成長のための基板を製造するための方法であって、以下の連続するステップ、すなわち、
単結晶半絶縁性炭化ケイ素のドナー基板(10)を用意するステップと、
転写される単結晶半絶縁性SiCの薄層(11)を画定する脆弱化領域(12)を形成するように、前記ドナー基板(10)にイオン種を注入するステップと、
接合層(21)を介して前記ドナー基板(10)を第1のレシーバ基板(20)に接合するステップと、
前記単結晶半絶縁性SiCの薄層(11)を前記第1のレシーバ基板(20)に転写するように、前記脆弱化領域(12)に沿って前記ドナー基板(10)を分離するステップと、
前記転写された半絶縁性SiCの薄層(11)上に半絶縁性SiCの追加の層(13)を形成するステップと、
前記半絶縁性SiCの追加の層(13)を、高い電気抵抗率を有する第2のレシーバ基板(40)に接合するステップと、
前記第1のレシーバ基板(20)を分離し、前記転写された単結晶半絶縁性SiCの層(11)を露出させるように、前記接合層(21)の少なくとも一部を除去するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のレシーバ基板(20)と前記ドナー基板(10)とが、熱膨張係数の差が3×10-6-1以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のレシーバ基板(20)が、前記ドナー基板の結晶品質よりも低い結晶品質を有するSiC基板である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のレシーバ基板(20)に転写された前記単結晶半絶縁性SiCの薄層(11)の厚さが1μm未満の厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記接合層(21)が、前記半絶縁性SiCの層(13)の前記形成中に熱的に安定した状態にあり、かつ前記転写された単結晶半絶縁性SiCの層(11)と前記第1のレシーバ基板(20)との間の前記界面から除去することができる材料から形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記接合層(21)が窒化ケイ素又は窒化ガリウムの層である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記接合層(21)の少なくとも一部を除去するステップが、化学エッチング、レーザによる層剥離、及び/又は機械的応力の印加を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記半絶縁性SiCの追加の層(13)が、ケイ素、炭素及びバナジウムを同時に堆積させることによって形成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のレシーバ基板(40)が100Ωcm以上の電気抵抗率を有するシリコン基板である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記半絶縁性SiCの追加の層(13)が1~5μmに含まれる厚さを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のレシーバ基板(40)が、多結晶SiC基板、ダイヤモンド基板、又は多結晶AlN基板である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記半絶縁性SiCの追加の層(13)が80μm以下の厚さを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記イオン種が前記ドナー基板(10)の前記シリコン面(10-Si)を通して注入され、
前記ドナー基板(10)の前記シリコン面(10-Si)が、前記接合層(21)が除去された後に、前記転写された単結晶半絶縁性SiCの層(11)の前記シリコン面が露出されるように、前記第1のレシーバ基板(20)に接合される、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
新たなドナー基板を形成することを目的として、前記転写された層(11)から分離された前記ドナー基板の前記セグメント(10’)をリサイクルするステップをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
窒化ガリウムの層をエピタキシによって製造するための方法であって、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を用いて製造された基板を用意するステップと、
前記基板の前記転写された単結晶半絶縁性SiCの層(11)の前記シリコン面(11-Si)上に前記窒化ガリウムの層(50)のエピタキシャル成長を行うステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記窒化ガリウムの層(50)が、1~2μmに含まれる厚さを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)を製造するための方法であって、
請求項15又は16に記載の方法を用いて窒化ガリウムの層(50)をエピタキシによって製造するステップと、
前記窒化ガリウムの層(50)上に、窒化ガリウムとは異なるIII-N材料の層のエピタキシによってヘテロ接合を形成するステップと、
前記ヘテロ接合と同じ高さに前記トランジスタのチャネルを形成するステップと、
前記チャネル上に前記トランジスタのソース、ドレイン及びゲートを形成するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1]本発明は、窒化ガリウムの層のエピタキシャル成長のための基板を製造するための方法、このような窒化ガリウムの層を製造するための方法、及びこのような窒化ガリウムの層に高電子移動度トランジスタ(HEMT)を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[2]III-N半導体、特に、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)又は窒化インジウムガリウム(InGaN)は、特に高出力発光ダイオード(LED)、及び高周波で動作する電子デバイス、すなわち高電子移動度トランジスタ(HEMT)又は他の電界効果トランジスタ(FET)などの形成に関して、特に有望であるように思われる。
【0003】
[3]これらのIII-N合金は、大きなサイズのバルク基板の形態で見出すのが困難である限りは、一般に、ヘテロエピタキシによって、すなわち、異なる材料で作られた基板上にエピタキシによって形成される。
【0004】
[4]このような基板の選択には、特に、基板の材料とIII-N合金との格子定数の差及び熱膨張係数の差が考慮される。具体的には、これらの差が大きいほど、III-N合金の層において、転位などの結晶欠陥が形成されるリスクが高くなり、過度の歪みを引き起こしやすい高い機械的応力が発生するリスクが高くなる。
【0005】
[5]III-N合金のヘテロエピタキシで最も頻繁に考慮される材料は、サファイア及び炭化ケイ素(SiC)である。
【0006】
[6]窒化ガリウムとの格子定数の差がより小さいことに加えて、炭化ケイ素は、その熱伝導率がサファイアよりも明らかに高く、したがって構成要素の動作中に生成される熱エネルギーをより容易に放散させることができるため、高出力電子用途に特に好ましい。
【0007】
[7]高周波(RF)用途では、基板の寄生損失(一般にRF損失と呼ばれる)を最小限に抑えるために、半絶縁性炭化ケイ素、すなわち典型的には10Ωcm以上の電気抵抗率を有する炭化ケイ素を使用することが求められる。しかしながら、この材料は特に高価であり、現在、限られたサイズの基板の形態でしか入手可能でない。
【0008】
[8]シリコンであれば、製造コストが大幅に削減され、大きなサイズの基板を利用することができるが、III-N合金オンシリコン型の構造は、RF損失によって、及び不十分な熱放散によって不利になる。
【0009】
[9]SopSiC又はSiCopSiC構造などの複合構造も研究されたが[1]、完全に満足できるものではないことが判明している。これらの構造は、多結晶SiC基板上に単結晶シリコン層又は単結晶SiC層(窒化ガリウムをエピタキシャル成長させるためのシード層を形成することが意図されている)をそれぞれ含む。多結晶SiCは、安価で、大きなサイズの基板の形態で入手可能な、熱を良好に放散する材料であるが、これらの複合構造は、III-N合金の層から多結晶SiC基板への熱の放散を妨げる熱障壁を形成する、単結晶のシリコン又はSiCの層と多結晶SiC基板との間の界面の酸化ケイ素の層の存在によって不利になっている。
【発明の概要】
【0010】
(発明の簡単な説明)
[10]したがって、本発明の1つの目的は、前述の欠点、特に、半絶縁性SiC基板のサイズ及びコストに関する制限を是正することである。
【0011】
[11]したがって、本発明の目的は、RF損失が最小限に抑えられ、熱の放散が最大化されたHEMT又は他の高周波、高出力電子デバイスを形成することを特に目的として、ガリウムベースのIII-N合金をエピタキシャル成長させるための基板を製造するための方法を提供することである。
[12]この目的のために、本発明は、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の層のエピタキシャル成長のための基板を製造するための方法であって、以下の連続するステップ、すなわち、
単結晶半絶縁性炭化ケイ素のドナー基板を用意するステップと、
転写される単結晶半絶縁性SiCの薄層を画定する脆弱化領域を形成するように、ドナー基板にイオン種を注入するステップと、
接合層を介してドナー基板を第1のレシーバ基板に接合するステップと、
単結晶半絶縁性SiCの薄層を第1のレシーバ基板に転写するように、脆弱化領域に沿ってドナー基板を分離するステップと、
転写された半絶縁性SiCの薄層上に半絶縁性SiCの追加の層を形成するステップと、
半絶縁性SiCの追加の層を、高い電気抵抗率を有する第2のレシーバ基板に接合するステップと、
第1のレシーバ基板を分離し、転写された単結晶半絶縁性SiCの層を露出させるように、接合層の少なくとも一部を除去するステップと、
を含む、方法を提供する。
【0012】
[13]「高周波」とは、本明細書において、3kHzよりも高い周波数を意味する。
【0013】
[14]「高出力」とは、本明細書において、トランジスタのゲートを通して注入される電力密度が0.5W/mmよりも高いことを意味する。
【0014】
[15]「高い電気抵抗率」とは、本明細書において、100Ωcm以上の電気抵抗率を意味する。
【0015】
[16]「半絶縁性SiC」とは、本明細書において、10Ωcm以上の電気抵抗率を有する炭化ケイ素を意味する。
【0016】
[17]本方法は、シリコン、ダイヤモンド、又はセラミックをベースとし、高い電気抵抗率及び高い熱伝導率を有し、大きなサイズで入手可能であり、熱の放散及びRF損失の制限に関して、良好な特性から最終構造が利益を得ることを可能にする半絶縁性SiCの層を含む低コストの基板を形成することを可能にする。半絶縁性SiCの層は、レシーバ基板と直接接触するため、この構造は、熱障壁をさらに含まない。
【0017】
[18]高い電気抵抗率のシリコン基板上に直接エピタキシによって半絶縁性SiCの層を形成するという方法では、シリコンと炭化ケイ素との格子定数の差のために、半絶縁性SiC中に多数の転位が形成されることになる。対照的に、本発明による方法では、ドナー基板からの転写によって得られたため、品質が最適である単結晶半絶縁性SiCの層を、その後のガリウムベースのIII-N合金の成長のためのシードとして使用することが可能である。半絶縁性SiCの層の残りの部分、すなわち、III-N合金の層とは反対側の転写された層の側に位置する、転写された層上に堆積させた追加の層は、必ずしも単結晶ではない。
【0018】
[19]一時的キャリアの役割を果たす第1のレシーバ基板を使用することで、本方法の様々なステップにおいて半絶縁性SiCのシリコン面を最適に配向させることが可能になる。
【0019】
[20]本方法の有利であるが任意選択の特徴によると、これらは、別々に、又はこれらの任意の技術的に可能な組合せで実施することができる。
[21] 第1のレシーバ基板とドナー基板は、熱膨張係数の差が3×10-6-1以下であり、
[22] 第1のレシーバ基板は、ドナー基板の結晶品質よりも低い結晶品質を有するSiC基板であり、
[23] 第1のレシーバ基板に転写された単結晶半絶縁性SiCの薄層の厚さは、1μm未満の厚さを有し、
[24] 接合層は、半絶縁性SiCの層の形成中に熱的に安定した状態にあり、かつ転写された単結晶半絶縁性SiCの層と第1のレシーバ基板との間の界面から除去することができる材料から形成され、
[25] 接合層は、窒化ケイ素又は窒化ガリウムの層であり、
[26] 接合層の少なくとも一部を除去するステップは、化学エッチング、レーザによる層剥離、及び/又は機械的応力の印加を含み、
[27] 半絶縁性SiCの追加の層は、シリコン、炭素及びバナジウムを同時に堆積させることによって形成され、
[28] 第2のレシーバ基板は、100Ωcm以上の電気抵抗率を有するシリコン基板であり、
[29] 半絶縁性SiCの追加の層は、1~5μmに含まれる厚さを有し、
[30] 第2のレシーバ基板は、多結晶SiC基板、ダイヤモンド基板、又は多結晶AlN基板であり、
[31] 半絶縁性SiCの追加の層は、80μm以下の厚さを有し、
[32] イオン種は、ドナー基板のシリコン面を通して注入され、ドナー基板のシリコン面は、接合層が除去された後、転写された単結晶半絶縁性SiCの層のシリコン面が露出されるように第1のレシーバ基板に接合され、
[33] 本方法は、新たなドナー基板を形成することを目的として、転写された層から分離されたドナー基板のセグメントをリサイクルするステップをさらに含む。
【0020】
[34]本発明の別の主題は、上述した方法を用いて得られた基板上にガリウムベースのIII-N合金の層を製造するための方法に関する。
【0021】
[35]前記方法は、
上述したような方法を用いて製造された基板を用意するステップと、
前記基板の転写された単結晶半絶縁性SiCの層のシリコン面上に窒化ガリウムの層のエピタキシャル成長を行うステップと、
を含む。
【0022】
[36]窒化ガリウムの層は、典型的には1~2μmに含まれる厚さを有する。
【0023】
[37]本発明の別の主題は、このようなIII-N合金の層に高電子移動度トランジスタ(HEMT)を製造するための方法に関する。
[38]前記方法は、
上述したような方法を用いて窒化ガリウムの層をエピタキシによって製造するステップと、
窒化ガリウムの層上に、窒化ガリウムとは異なるIII-N材料の層のエピタキシによるヘテロ接合を形成するステップと、
前記ヘテロ接合と同じ高さにトランジスタのチャネルを形成するステップと、
チャネル上にトランジスタのソース、ドレイン及びゲートを形成するステップと、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
図1】単結晶半絶縁性SiCドナー基板の概略断面図である。
図2図1のドナー基板の概略断面図であり、この基板には、転写される薄層を画定するために、イオン種を注入することによって脆弱化領域が形成されている。
図3】除去可能な接合層で覆われた一時的キャリアの概略断面図である。
図4図3の一時的キャリアが、除去可能な接合層を介して図2のドナー基板に接合されている概略断面図である。
図5】単結晶半絶縁性SiCの薄層を一時的キャリアに転写するためにドナー基板が脆弱化領域に沿って分離されている概略断面図である。
図6】一時的キャリアの自由表面が研磨された後に単結晶SiCの薄層が一時的キャリアに転写された概略断面図である。
図7】半絶縁性SiCの追加の層が、転写された単結晶半絶縁性SiCの薄層上に形成されている概略断面図である。
図8図7の構造が半絶縁性SiCの追加の層を介してレシーバ基板に接合されている概略断面図である。
図9】転写された半絶縁性SiCの層のシリコン面を露出させるように、除去可能な接合層の化学エッチングによる、一時的キャリアを図8の構造から除去した概略断面図である。
図10】GaNの層が、転写された半絶縁性SiCの層のシリコン面上にエピタキシによって形成されている概略断面図である。
図11】ヘテロ接合が、GaNの層上にGaNとは異なるIII-N合金の層のエピタキシによって形成されている概略断面図である。
【0025】
図を見やすくするために、様々な層は必ずしも縮尺通りには示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態の詳細な説明)
[52]本発明は、ガリウムベースの二元又は三元III-N合金をエピタキシャル成長させるための基板を製造するための方法を提供する。前記合金は、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGa1-xN、ここで0<x<1であり、以下AlGaNと略記する)及び窒化インジウムガリウム(InGa1-xN、ここで0<x<1であり、以下InGaNと略記する)を含む。簡潔にするために、本明細書の残りの部分では、GaNの層をエピタキシャル成長させるための基板の製造について説明するが、当業者であれば、AlGaN又はInGaNの層を形成するために成長条件を調整することができ、このエピタキシャル成長に役立つ基板は同じままである。
【0027】
[53]本方法は、単結晶半絶縁性炭化ケイ素(SiC)のドナー基板を使用し、Smart Cut(商標)プロセスを使用して第1のレシーバ基板に転写されたドナー基板の薄層は、必ずしも単結晶ではない半絶縁性SiCの追加の層を成長させるためのシードとして働く。以下で分かるように、半絶縁性SiCの追加の層は、GaNの層の成長のために意図された前記層のセグメントのみが単結晶である限り、最適化されたコストで、RF損失を実質的に低減するのに十分に大きな厚さの半絶縁性SiCが最終構造に設けられることを可能にする。
【0028】
[54]この目的のために、優れた結晶品質を有する単結晶半絶縁性SiCドナー基板、すなわち、特に転位のない基板が選択される。
【0029】
[55]特定の実施形態において、ドナー基板は、単結晶半絶縁性SiCのバルク基板であってもよい。他の実施形態では、ドナー基板は、単結晶半絶縁性SiCの表面層と、別の材料の少なくとも1つの他の層とを含む複合基板であってもよい。この場合、単結晶半絶縁性SiCの層は、0.5μm以上の厚さを有する。
【0030】
[56]炭化ケイ素には様々な結晶形態(ポリタイプとも呼ばれる)がある。最も一般的なのは、4H、6H及び3Cの形態である。単結晶半絶縁性炭化ケイ素は、4H及び6Hポリタイプから選択されるのが好ましいが、任意のポリタイプを用いて本発明を実施することができる。
【0031】
[57]図には、単結晶半絶縁性SiCのバルク基板10が示されている。
【0032】
[58]それ自体知られているように、図1に示すように、このような基板は、シリコン面10-Si及び炭素面10-Cを有する。
【0033】
[59]現在、GaNのエピタキシ法は、主に半絶縁性SiCのシリコン面上で実施されている。しかしながら、半絶縁性SiCの炭素面上にGaNを成長させることは不可能ではない。本方法の実施中のドナー基板の向き(シリコン面/炭素面)は、GaNの層を成長させることが意図された半絶縁性SiCの面に応じて選択される。
【0034】
[60]図2を参照すると、単結晶半絶縁性SiCの薄層11を画定する脆弱化領域12を形成するように、イオン種がドナー基板10に注入される。注入される種は、典型的には水素及び/又はヘリウムを含む。当業者であれば、必要な注入ドーズ量及びエネルギーを規定することができるであろう。
【0035】
[61]ドナー基板が複合基板である場合、注入は、前記基板の単結晶半絶縁性SiCの表面層に行われる。
【0036】
[62]イオン種は、ドナー基板のシリコン面10-Siを通して注入されるのが好ましい。以下で分かるように、ドナー基板のこの配向によって、GaNの層を成長させることが意図された最終基板の表面に、半絶縁性SiCのシリコン面を配置することが可能になり、これはより好ましい。しかしながら、半絶縁性SiCの炭素面上にGaNの層を成長させることが想定される場合は、イオン種は、ドナー基板の炭素面10-Cを通して注入されなければならない。
【0037】
[63]単結晶半絶縁性SiCの薄層11は、1μm未満の厚さを有するのが好ましい。具体的には、このような厚さは、Smart Cut(商標)プロセスを用いて工業規模で達成可能である。特に、工業的製造ラインで利用可能な注入ツールにより、このような注入深さを得ることができる。
【0038】
[64]図3を参照すると、第1のレシーバ基板20がさらに用意されている。
【0039】
[65]前記第1のレシーバ基板の主な機能は、ドナー基板からの単結晶半絶縁性SiCの層11の転写と、単結晶半絶縁性SiCの層上での半絶縁性SiCの追加の層の成長との間で、単結晶半絶縁性SiCの層11を一時的に保持することである。
【0040】
[66]この目的のために、第1のレシーバ基板は、半絶縁性SiCの追加の層の形成中に応力又は歪みを生成しないように、半絶縁性SiCの熱膨張係数と実質的に等しい熱膨張係数を有するように選択される。したがって、第1のレシーバ基板とドナー基板(又は複合ドナー基板の場合には単結晶半絶縁性SiCの層)とは、熱膨張係数の差が絶対値として3×10-6-1以下であるのが特に有利である。
【0041】
[67]第1のレシーバ基板も、熱膨張係数の差を最小限に抑えるようにSiCで作られているのが好ましい。第1のレシーバ基板20は、ドナー基板の結晶品質よりも低い結晶品質を有するSiC基板であるのが特に有利である。このことは、第1のレシーバ基板が多結晶SiC基板、又は実際に単結晶SiCの基板であってもよいが、(GaNのエピタキシャル層の品質を確保するために、優れた結晶品質のために選択されるドナー基板の単結晶半絶縁性SiCとは対照的に)すべてのタイプの転位を含んでもよいことを意味する。このような結晶品質の低い基板は、ドナー基板と同じ品質の基板よりも安価でありながら、一時的キャリアの機能に完全に適合しているという利点がある。
【0042】
[68]図4を参照すると、単結晶SiCの薄層11を含むドナー基板10が第1のレシーバ基板20に接合されている。
【0043】
[69]ドナー基板の第1のドナー基板への良好な接着を確実にするために、接合層21が前記基板間の界面に形成される。
【0044】
[70]図3では、接合層21は、第1のレシーバ基板20上に形成されているが、図示されていない他の実施形態では、接合層は、ドナー基板上に(薄層11の側に)形成されてもよく、又は実際には、ある部分はドナー基板上に、ある部分は第1のレシーバ基板上に形成されてもよい。
【0045】
[71]接合層は、引き続き行われる薄層11上への半絶縁性SiCの追加の層の形成中に熱的に安定した状態にある材料から形成される。
【0046】
[72]参考までに、4H-又は6H-SiCのエピタキシは、典型的には1500℃よりも高い温度で行われるため、選択された接合層の材料は、半絶縁性SiCの追加の層がエピタキシによって形成される場合、このような温度で劣化又は解離しない。しかしながら、優れた結晶品質が半絶縁性SiCの追加の層に必要とされない限り、エピタキシ法を使用することは必須ではない。したがって、多結晶の追加の層又は転位を含む追加の層をもたらす、より低温でのより迅速な堆積方法を使用することができ、これにより、基板を製造する期間及びコストを低減することが可能になる。
【0047】
[73]さらに、接合層の材料は、転写された単結晶半絶縁性SiCの層と第1のレシーバ基板20との間の界面から、例えば、任意選択でプラズマによって支援される選択的エッチングによって除去することができる。
【0048】
[74]好ましい一実施形態によると、接合層は、窒化ケイ素又は窒化ガリウムの層である。前記層の厚さは、典型的には10nm~数百ナノメートルに含まれる。
【0049】
[75]図5を参照すると、ドナー基板は、脆弱化領域12に沿って分離されている。それ自体知られている仕方で、分離は、熱処理、機械的作用、又はこれらの手段の組合せによって引き起こされてもよい。
【0050】
[76]この分離の効果は、単結晶半絶縁性SiCの薄層11を第1のレシーバ基板20に転写することである。ドナー基板の残りの部分10’は、任意選択で、別の使用のためにリサイクルされてもよい。
【0051】
[77]図6に示すように、転写された単結晶半絶縁性SiCの層11の自由面は、炭素面11-Cである(シリコン面11-Siは接合界面の側にある)。この面は、イオン種の注入に関連する欠陥を除去し、層11の粗さを減少させるために、例えば化学機械研磨(CMP)によって研磨される。
【0052】
[78]図7を参照すると、半絶縁性SiCの追加の層13が単結晶半絶縁性SiCの薄層11上に形成されている。追加の層のSiCのポリタイプは、有利には、転写された層のポリタイプと同一である。
【0053】
[79]上述したように、追加の層13は、必ずしも単結晶である必要はなく、多結晶であってもよく、これにより、エピタキシよりも低い温度で堆積を行うことが可能になる。いずれにせよ、第1のレシーバ基板の材料とSiCとの熱膨張係数の差が小さいため、スタック内で生成される機械的応力が最小限に抑えられる。
【0054】
[80]半絶縁性SiCを形成するための様々な技術がある。一実施形態によると、SiCの層は、そのエピタキシャル成長中にバナジウムでドープされる。別の実施形態によると、エピタキシャル反応器内で適切な前駆体を使用して、シリコン、炭素及びバナジウムを同時に堆積させる。
【0055】
[81]半絶縁性SiCの追加の層は、有利には、最終構造内での熱の放散に著しく寄与するように、1μmよりも大きい厚さを有する。この厚さは、工業的に利用可能な機器を使用してSmart Cut(商標)プロセスで直接達成可能な厚さよりも大きい。加えて、この追加の層は、転写されたドナー基板の層よりも安価な方法によって形成することができる。
【0056】
[82]したがって、1μm未満の厚さを有する単結晶半絶縁性SiCの層を転写し、次いで、前記転写された層上にエピタキシによって必ずしも単結晶ではない半絶縁性SiCの層を形成することからなる方法は、Smart Cut(商標)プロセスを実施するために工業的に利用可能な注入ツールの技術的限界を回避し、製造方法のコストを低減することを可能にする。
【0057】
[83]図8を参照すると、高い電気抵抗率を有する第2のレシーバ基板40が用意され、半絶縁性SiCの層13に接合されている。例えば、第2のレシーバ基板は、100Ωcm以上の電気抵抗率を有するシリコン基板、又は好ましくは、多結晶SiC基板、多結晶AlN基板、若しくはダイヤモンド基板であってもよい。
【0058】
[84]半絶縁性SiCの追加の層13の厚さは、場合によっては、第2のレシーバ基板の材料に応じて選択される。したがって、第2のレシーバ基板が電気抵抗率の高いシリコン基板である場合、半絶縁性SiCの追加の層13は、有利には、1~5μmに含まれる厚さを有する。第2のレシーバ基板が多結晶AlN、ダイヤモンド、又は多結晶SiCで作られている場合、最終構造内の熱の放散を改善するために、半絶縁性SiCの追加の層13は、場合によっては最大80μm、例えば約50~80μmといったはるかに大きい厚さを有するのが有利である可能性がある。
【0059】
[85]次に、第1のレシーバ基板を本構造の残りの部分から分離するように、接合層21の少なくとも一部が除去される。この除去の間、層21は、構造からの分離を可能にするために十分に損傷されなければならない。任意の適切な手段が使用されてもよい。例えば、非限定的に、接合層は、化学エッチング、レーザによる層剥離、及び/又は機械的応力の印加によって除去されてもよい。
【0060】
[86]したがって、図9に示すように、この分離の終了時に、第2のレシーバ基板40、半絶縁性SiCの追加の層13、及び転写された単結晶半絶縁性SiCの薄層11が連続的に構成された構造が残る。接合層21のいかなる残留物も、研磨及び/又はエッチングによって除去される。
【0061】
[87]転写された層11の露出面は、GaNのエピタキシャル成長に好ましい単結晶半絶縁性SiCのシリコン面である。このようにして、III-N合金のエピタキシャル成長に適した基板が形成された。
【0062】
[88]図10を参照すると、GaN(又は、上述したように、AlGaN若しくはInGaN)の層50を半絶縁性SiCの層11の自由面上に成長させる。層50の厚さは、典型的には1~2μmに含まれる。
【0063】
[89]次に、図11に示すように、層50上に、層50とは異なるIII-N合金の層60をエピタキシによって成長させることによって、ヘテロ接合が形成される。
【0064】
[90]したがって、当業者に知られている方法を用いて、このヘテロ接合からトランジスタ、特にHEMTの製造を継続することが可能であり、トランジスタのチャネルがヘテロ接合と同じ高さに形成され、トランジスタのソース、ドレイン、及びゲートがチャネル上に形成される。
【0065】
[91]このようにして得られた構造は、比較的厚い半絶縁性SiCの層を含み、III-N合金の層のエピタキシャル成長のためのシードとして働く部分のみが単結晶であればよく、熱を良好に放散し、RF損失を制限するという点で特に有利である。さらに、半絶縁性SiCの層を担持する第2のレシーバ基板は、この構造がいかなる熱障壁も含まないように、前記層と直接接触している。
【0066】
[92]したがって、このような構造上にエピタキシによって形成されたII-N合金の層に形成されたHEMT又は別の高周波、高出力電子デバイスは、RF損失が最小限に抑えられ、熱の放散が最大化されている。
【0067】
(参考文献)
[93] [1] Comparative study on stress in AlGaN/GaN HEMT structures grown on 6H-SiC, Si and on composite substrates of the 6H-SiC/poly-SiC and Si/poly-SiC, M. Guziewicz et al, Journal of Physics: Conference Series 100 (2008) 040235
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【国際調査報告】