(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ製造用の担持触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/847 20060101AFI20231005BHJP
C01B 32/162 20170101ALI20231005BHJP
【FI】
B01J23/847 M
C01B32/162
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517783
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 KR2021018551
(87)【国際公開番号】W WO2022124799
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173605
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】セ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ウ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ジュン・カン
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC22B
4G146AD20
4G146AD22
4G146BA11
4G146BA12
4G146BC03
4G146BC42
4G146BC43
4G146BC44
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169BC59A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169CB81
4G169DA08
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、数平均粒度(DMN)が1.5~20μmである担持体と、前記担持体に担持された活性成分とを含むカーボンナノチューブ製造用の担持触媒に関し、粒子間の凝集を防止し、担持させる活性成分がいずれも有効成分として作用することができ、活性に優れ、これにより製造収率を向上させることができる担持触媒を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均粒度(D
MN)が1.5μm~20μmである担持体と、
前記担持体に担持された活性成分とを含む、カーボンナノチューブ製造用の担持触媒。
【請求項2】
前記担持体の数平均粒度は4.0μm~20μmである、請求項1に記載のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒。
【請求項3】
前記担持体の数平均粒度は4.0μm~19μmである、請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒。
【請求項4】
前記活性成分は、カーボンナノチューブ製造用の担持触媒の全重量に対して5重量%~30重量%含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒。
【請求項5】
前記活性成分は、主触媒成分および助触媒成分を含み、
前記主触媒成分に対する助触媒成分のモル比は、主触媒成分:助触媒成分が10:0.1~10:10である、請求項1~4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒。
【請求項6】
前記主触媒成分は、ニッケル、コバルトおよび鉄から選択される1種以上である、請求項5に記載のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒。
【請求項7】
前記助触媒成分は、モリブデンおよびバナジウムから選択される1種以上である、請求項5又は6に記載のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒。
【請求項8】
バンドル状カーボンナノチューブの製造に使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を流動床反応器に注入するステップと、
前記流動床反応器に炭素源ガスと流動ガスを供給し反応させてカーボンナノチューブを製造するステップとを含む、カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブは、バンドル状カーボンナノチューブである、請求項9に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月11日付けの韓国特許出願第10-2020-0173605号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、カーボンナノチューブ製造用の担持触媒および前記担持触媒を用いたカーボンナノチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カーボンナノ素材は、素材の形状に応じて、フラーレン(Fullerene)、カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube;CNT)、グラフェン(Graphene)、グラフェンナノプレート(Graphite Nano Plate)などがあり、このうち、カーボンナノチューブは、1個の炭素原子が3個の他の炭素原子と結合した六角形のハニカム状のグラファイトシートがナノサイズの直径に丸く巻かれた巨大分子である。
【0004】
カーボンナノチューブは、中空で軽く、電気伝導度は銅ほど良好であり、熱伝導度はダイヤモンドほど優れ、引張力は鉄鋼に劣らない。巻かれた形状に応じて、シングルウォールカーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon Nanotube;SWCNT)と、マルチウォールカーボンナノチューブ(Multi-Walled Carbon Nanotube;MWCNT)と、ロープ状カーボンナノチューブ(Rope Carbon Nanotube)とに分けられることもある。
【0005】
最近、一度に多量のカーボンナノチューブを合成することができるカーボンナノチューブ合成技術に関する研究が活発に行われている状況であり、様々な方法のうち流動床反応器を用いた熱化学気相蒸着法の場合、容易に連続して多量のカーボンナノチューブを合成できるという点で特に好ましい。
【0006】
このようなカーボンナノチューブの合成では、使用される触媒に対して製造されるカーボンナノチューブの収率が増加したときに製造コストが低減し生産性が向上するが、そのため、一般的に担持体に担持される活性成分を増加させることで触媒の活性を増加させる方法を適用している。しかし、活性成分の担持量を増加させる場合、一定量以上が担持される場合、担持触媒の製造過程でこれらの間に焼結現象が発生し、触媒の活性が減少する問題がある。
【0007】
したがって、活性成分の担持量が最適化し、カーボンナノチューブの製造効率を極大化することができるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒に関するさらなる研究が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】KR10-2010-0074002 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためのものであり、活性成分の担持効率を最適化するとともに活性成分が担持される量を最大化することで、カーボンナノチューブの合成収率を増加することができるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、カーボンナノチューブ製造用の担持触媒を提供する。
【0011】
(1)本発明は、数平均粒度(DMN)が1.5~20μmである担持体と、前記担持体に担持された活性成分とを含むカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を提供する。
【0012】
(2)本発明は、前記(1)において、前記担持体の数平均粒度は4.0~20μmであるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を提供する。
【0013】
(3)本発明は、前記(1)または(2)において、前記担持体の数平均粒度は4.0~19μmであるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を提供する。
【0014】
(4)本発明は、前記(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記活性成分は、カーボンナノチューブ製造用の担持触媒の全重量に対して5~30重量%含まれるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を提供する。
【0015】
(5)本発明は、前記(1)~(4)のいずれか一つにおいて、前記活性成分は、主触媒成分および助触媒成分を含み、前記主触媒成分に対する助触媒成分のモル比は、10:0.1~10:10であるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を提供する。
【0016】
(6)本発明は、前記(1)~(5)のいずれか一つにおいて、前記主触媒成分は、ニッケル、コバルトおよび鉄路から選択される1種以上であるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を提供する。
【0017】
(7)本発明は、前記(1)~(6)のいずれか一つにおいて、前記助触媒成分は、モリブデンおよびバナジウムから選択される1種以上であるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を提供する。
【0018】
(8)本発明は、前記(1)~(7)のいずれか一つにおいて、バンドル状カーボンナノチューブの製造に使用されるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を提供する。
【0019】
(9)本発明は、前記(1)~(8)のいずれか一つによるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を流動床反応器に注入するステップと、前記流動床反応器に炭素源ガスと流動ガスを供給し反応させてカーボンナノチューブを製造するステップとを含むカーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【0020】
(10)本発明は、前記(9)において、前記カーボンナノチューブは、バンドル状カーボンナノチューブであるカーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒は、担持体の選択によって活性成分の担持量が最適化して活性成分の有効量が増加することで、触媒活性に優れ、これにより、触媒の投入量に比べて製造されるカーボンナノチューブの生産量を増加させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
本明細書および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0024】
本発明で使用している用語「カーボンナノチューブ」は、カーボンナノチューブの単位体が全体または部分的にバンドル状をなすように集合して形成された二次構造物であり、前記カーボンナノチューブの単位体は、グラファイトシート(graphite sheet)がナノサイズ直径のシリンダ状を有し、sp2結合構造を有する。ここで、前記グラファイトシートが巻かれる角度および構造に応じて、導体または半導体の特性を示すことができる。カーボンナノチューブの単位体は、壁をなしている結合数にし応じて、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT、single-walled carbon nanotube)と、ダブルウォールカーボンナノチューブ(DWCNT、double-walled carbon nanotube)と、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT、multi-walled carbon nanotube)とに分けられ、壁の厚さが薄いほど抵抗が低い。
【0025】
本発明のカーボンナノチューブは、シングルウォール、ダブルウォールおよびマルチウォールのカーボンナノチューブ単位体のいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0026】
カーボンナノチューブ製造用の担持触媒
本発明の一実施形態によると、数平均粒度(DMN)が1.5~20μmである担持体と、前記担持体に担持された活性成分とを含むカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を提供する。
【0027】
本発明の担持触媒は、特定の粒度を有する担持体を選択することで、担持される活性成分の有効量を増加させることができ、これにより、使用される触媒量に比べて生成されるカーボンナノチューブの量が大きく増加し得る。
【0028】
本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒は、特に、バンドル状カーボンナノチューブの製造への使用に適する。前記バンドル状カーボンナノチューブは、複数個のカーボンナノチューブが所定の方向に並行に配列または整列されたバンドル(bundle)あるいはロープ(rope)状の二次形状を有するカーボンナノチューブを指す。バンドル状カーボンナノチューブは、複数個のカーボンナノチューブが方向性なしに絡み合った球またはポテト状の二次形状を有する絡み合い状カーボンナノチューブに比べて、溶媒に対する分散性が高く、分散液状への製造に適する。本発明のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を用いる場合、バンドル状のカーボンナノチューブがよりスムーズに製造されることができる。
【0029】
以下、本発明の一実施形態による担持触媒についてより詳細に説明する。
【0030】
担持体
本発明の一実施形態による担持体は、数平均粒度(DMN)が1.5~20μmである。前記範囲の粒度を有する担持体を適用する場合、活性成分が担持された担持触媒粒子間の凝集を防止することができ、活性成分の担持量のうち有効量を極大化することができる。
【0031】
具体的には、前記担持体の数平均粒度は、1.5~20μmであり、好ましくは4.0~20μmであることができ、より好ましくは4.0~19.0μmであることができる。担持体の数平均粒度が1.5μmより小さい場合には、担持触媒の粒子間の凝集力によって絡み合う現象が発生し、20μmより大きい場合には、活性成分の有効量がこれ以上増加せず、活性成分として使用される金属の損失が発生し得、かえって担持体内に担持された活性成分が不均一になり、結果、製造コストの上昇および製造収率の低下につながり得る。前記好ましい範囲で粒度分布がより細密に制御されるほど、担持体内に担持される活性成分の有効量がより増加し得る。
【0032】
前記担持体が有する粒度分布特性は、カーボンナノチューブ製造用の担持触媒にそのまま反映されることができ、このような粒度分布を有する担持触媒は、カーボンナノチューブの製造収率の向上に大きな役割を果たすことができる。
【0033】
前記担持体は、マグネシウム酸化物、カルシウム酸化物、アルミニウム水酸化物、ジルコニウム酸化物およびシリコン酸化物からなる群から選択される1種以上を含むことができ、好ましくは、アルミニウム水酸化物であることができ、さらに好ましくは、アルミニウム水酸化物に、ジルコニウム、マグネシウムおよびシリコンからなる群から選択される酸化物を1種以上さらに含むものであることができる。前記のような種類の担持体を使用する場合、担持体の耐久性に優れるとともに活性成分の担持が容易であるという点で利点がある。
【0034】
前記担持体の形状は、特に限定されないが、球状またはポテト状であることができる。また、前記担持体は、単位質量または単位体積当たり比較的高い表面積を有するように、多孔性構造、分子体構造、ハニカム構造などを有することができる。
【0035】
活性成分
本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒は、活性成分が担持体に担持されたものであり、前記活性成分は、主触媒成分と助触媒成分を含むことができる。
【0036】
前記主触媒成分は、ニッケル、コバルトおよび鉄から選択される1種以上であることができ、コバルトであることが特に好ましい。主触媒成分は、炭素源ガスからカーボンナノチューブが合成される反応の活性化エネルギーを直接下げてカーボンナノチューブ合成反応をスムーズにする役割を果たし、上述の種類の主触媒成分を使用する場合、製造される触媒の活性が高いとともに、耐久性もある程度水準以上に確保されることができる点で好ましい。
【0037】
前記助触媒成分は、モリブデンおよびバナジウムから選択される1種以上であることができ、バナジウムであることが特に好ましい。助触媒成分は、前記主触媒成分の触媒活性をより高める役割を果たし、上述の助触媒成分を使用する場合、主触媒成分とのシナジー効果に優れることができ、製造過程での主触媒成分間の凝集を防止することができる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、本発明のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒のうち触媒成分は、下記化学式1の組成を有することができる。
【0039】
[化学式1]
(Ni、Co、Fe)x(Mo、V)y
【0040】
前記式中、xは、主触媒成分のモル比であり、yは、助触媒成分のモル比であり、前記x及びyは、それぞれ、1≦x≦10であり、0.1≦y≦10の範囲を有する実数である。
【0041】
具体的には、前記主触媒成分と助触媒成分とのモル比は、10:0.1~10:10であることができ、好ましくは10:0.5~10:5であることができる。このようなモル比を有するように活性成分の組成を調節する場合、担持触媒の活性を優れた水準に維持し、且つ担持体内の活性成分を凝集現象なしに均一に担持させることができる。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記担持触媒は、その全重量に対して、活性成分が5~30重量%含まれることができ、好ましくは10~30重量%、さらに好ましくは15~30重量%含まれることができる。この時の活性成分の含量は、実質的にカーボンナノチューブの合成に参加する触媒成分の有効量を意味し、このような有効量を有するためには、上述の粒度分布、すなわち、数平均粒度および体積平均粒度の特定の範囲を満たす担持体が適用される必要がある。
【0043】
カーボンナノチューブ製造用の担持触媒の製造方法
本発明は、上述のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒の製造方法を提供する。具体的には、本発明は、数平均粒度(DMN)が1.5~20μmである担持体に触媒溶液を担持させた後、500℃~800℃で焼成して担持触媒を製造するステップを含むカーボンナノチューブ製造用の担持触媒の製造方法を提供する。
【0044】
本発明で使用される担持体は、上述のように、数平均粒度(DMN)が1.5~20μmであり、前記数平均粒度の範囲を満たす担持体を手に入れて使用するか、直接製造して使用することができる。特に、入手または製造した担持体を分級機を通して粒度に応じて分離した後、上述の範囲の数平均粒度を満たす担持体のみを取って使用することができる。
【0045】
前記担持体を直接製造する場合、前記担持体は、水酸化アルミニウムを熱処理するステップにより製造されることができる。また、前記熱処理するステップを行う前に、前記水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を前処理するステップが先に行われることができる。前記前処理は、50℃~150℃で1時間~24時間行うことができる。前記前処理を行う場合、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)の表面に存在し得る残存溶媒または不純物を除去することができる。
【0046】
前記水酸化アルミニウム(Al(OH)3)は、気孔率が0.1~1.0cm3/g、比表面積が1m2/g未満であることができる。
【0047】
前記熱処理を行うことで、水酸化アルミニウムが転換されて、AlO(OH)を30重量%以上、Al(OH)3を70重量%以下、具体的にはAlO(OH)を40重量%以上、Al(OH)3を60重量%以下含むが、Al2O3は含まない担持体を製造することができる。上述の温度未満であると、水酸化アルミニウムがAlO(OH)に転換されず、上述の温度を超えると、水酸化アルミニウムが転換されてAl2O3が製造されることがある。前記熱処理は、空気雰囲気で行われることができる。一方、前記熱処理ステップは、250℃~500℃、特に具体的には400℃~500℃で行われることができる。
【0048】
本発明のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒の製造方法において、前記触媒溶液は、主触媒前駆体、助触媒前駆体および有機酸を含む混合物であることができる。
【0049】
前記触媒溶液は、担持の対象になる主触媒成分の前駆体と助触媒成分の前駆体を含み、これに加えて有機酸を含む。本発明で使用される有機酸は、例えば、マルチカルボン酸であることができ、これは、カルボキシル基を一つ以上含む化合物であり、錯化剤(complexing agent)として溶解性が高く、沈殿を抑制し、触媒の合成を容易にし、活性化剤(activator)としてカーボンナノチューブの合成を増加させる。前記マルチカルボン酸は、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびテトラカルボン酸から選択される1以上であることができ、例えば、クエン酸、シユウ酸、マロン酸、コハク酸、または酒石酸などを使用することができる。
【0050】
前記有機酸は、触媒溶液の全重量に対して0.1~1.5重量%含まれることができる。このような範囲内で、触媒溶液での主触媒および助触媒の金属成分の沈殿が発生せず、以降、焼成過程でのクラックの発生も抑制することができる。
【0051】
また、主触媒前駆体および助触媒前駆体の和と有機酸のモル比としては約5:1~30:1の範囲で適切に混合されることができ、このようなモル比を満たすと、製造されたカーボンナノチューブのかさ密度を優れた水準に実現することができる。
【0052】
前記主触媒前駆体と助触媒前駆体は、以降、乾燥および焼成の過程を経て主触媒成分と助触媒成分に転換されることができる化合物であれば、特に制限なく可能である。上記で好ましい主触媒成分として例示したニッケル、鉄およびコバルトの場合、主触媒前駆体として、これら金属成分の塩、酸化物、またはこれら金属成分を含む化合物を使用することができ、さらに具体的には、Fe(NO3)2・6H2O、Fe(NO3)2・9H2O、Fe(NO3)3、Fe(OAc)2、Ni(NO3)2・6H2O、Co(NO3)2・6H2O、Co2(CO)8、[Co2(CO)6(t-BuC=CH)]、Co(OAc)2のような物質を使用することができる。上記で好ましい助触媒成分として例示したモリブデンおよびバナジウムの場合、助触媒前駆体として、これら成分の塩、酸化物またはこれら成分を含む化合物を使用することができ、さらに具体的には、NH4VO3、(NH4)6Mo7O24・4H2O、Mo(CO)6、(NH4)MoS4といった物質を使用することができる。上記で例示した物質を前駆体として使用する場合、主触媒成分および助触媒成分の担持がスムーズであるという利点がある。
【0053】
前記触媒溶液の溶媒は、上述の主触媒前駆体と助触媒前駆体を溶解させることができるものであれば、特に制限されず、例えば、水を使用することが好ましい。
【0054】
本発明のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒の製造方法で、前記担持は、前記担持体と前記触媒溶液を均一に混合した後、焼成する前に、所定時間熟成させる過程をさらに含むことができる。前記混合は、具体的には45℃~80℃の温度下で、回転または撹拌によって行われることができる。前記熟成は、3分~60分間行われることができる。
【0055】
前記触媒溶液が前記担持体に担持されると、焼成する前に乾燥する過程をさらに含むことができる。前記乾燥は、60℃~200℃で4時間~16時間行われることができ、乾燥方法は、オーブン乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥など、当業界に適用される通常の乾燥方法を適用することができる。
【0056】
上記の一連の過程により製造された中間体は、以降の最終の焼成ステップを経てカーボンナノチューブ製造用の担持触媒として取得される。前記焼成は、500℃~800℃、好ましくは600℃~800℃の温度で行われることができ、このような温度範囲で焼成が行われる場合、主触媒前駆体および助触媒前駆体のほとんどが主触媒成分および助触媒成分に転換されることができる。
【0057】
前記製造方法により製造された担持触媒は、前記触媒溶液の主触媒成分と助触媒成分が前記担持体の表面および細孔にコーティングされた状態で存在する担持触媒が製造されることができ、担持体の特徴的な粒度分布によってコーティングされた活性成分がほとんど有効量で作用することができ、活性に優れ、これにより、カーボンナノチューブの製造収率の向上を期待することができる。
【0058】
カーボンナノチューブの製造方法
本発明の他の一実施形態によると、上述の触媒を用いてカーボンナノチューブを製造する方法を提供する。具体的には、本発明は、上述のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を流動床反応器に注入するステップと、前記流動床反応器に炭素源ガスと流動ガスを供給し反応させてカーボンナノチューブを製造するステップとを含むカーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【0059】
本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブ製造用の担持触媒は、を流動床反応器に注入し、さらに、炭素源ガスと流動ガスを流動床反応器に供給してカーボンナノチューブを製造することができる。
【0060】
前記炭素源ガスは、高温状態で分解されてカーボンナノチューブを形成することができる炭素含有ガスであり、具体的な例として脂肪族アルカン、脂肪族アルケン、脂肪族アルキン、芳香族化合物など、様々な炭素含有化合物が使用可能であり、より具体的には、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、エタノール、メタノール、アセトン、一酸化炭素、プロパン、ブタン、ベンゼン、シクロヘキサン、プロピレン、ブテン、イソブテン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、アセチレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの化合物を使用することができる。
【0061】
前記流動ガスは、流動床反応器内で合成されるカーボンナノチューブと触媒粒子の流動性を付与するためのものであり、炭素源ガスやカーボンナノチューブと反応しないとともに、高い熱安定性を有するガスを使用することができる。例えば、窒素ガスや不活性ガスを前記流動ガスとして使用することができる。
【0062】
前記流動床反応器は、カーボンナノチューブの製造に使用可能であると知られたものであれば特に制限なく使用することができる。
【0063】
カーボンナノチューブ
本発明のカーボンナノチューブの製造方法により製造されるカーボンナノチューブは、バンドル状カーボンナノチューブであることができ、10~500μm、好ましくは40~300μm、特に好ましくは40~200μmの数平均粒度を有することができる。
【0064】
前記カーボンナノチューブは、かさ密度が10~80kg/m3、具体的には20~80kg/m3、より具体的には20~40kg/m3であることができる。また、前記カーボンナノチューブのタップ密度は、15~100kg/m3であることができ、具体的には30~80kg/m3、より具体的には35~70kg/m3であることができる。前記範囲を満たすカーボンナノチューブは、導電性に優れ、最初の形状を維持した状態で分散性に優れることができ、高濃度分散液の製造にも有利である。
【0065】
前記カーボンナノチューブのタップ密度は、通常のタップ密度測定器を用いることができる。具体的には、ASTM B527-06規定に準じて、測定することができ、例えば、LOGAN社製のTAP-2Sを用いて測定することができる。
【0066】
また、前記カーボンナノチューブのタップ密度は、実験室の規模に合わせて測定することができ、実験室の規模に合わせて測定する場合にも、前記規定に準じた結果と実質的に同一の結果が導き出されることができる。実験室の規模に合わせて測定する方法は様々であることができ、例えば、まず、5mlのシリンダを秤に載せてからゼロ点を合わせた後、シリンダにカーボンナノチューブを5ml入れる。カーボンナノチューブの高さと目の高さを合わせて目盛りを読んで体積を測定した後、秤に載せて重量を測定する。シリンダを床に100回程度軽くたたいた後、シリンダの目盛りを読んで体積を測定する。そして、カーボンナノチューブの重量を100回たたいた後のカーボンナノチューブの体積で除した後、タップ密度(カーボンナノチューブの重量(kg)/100回たたいた後のカーボンナノチューブ体積(m3))を測定することができる。
【0067】
前記カーボンナノチューブのBET比表面積は、150m2/g~300m2/gであることができ、より具体的には160m2/g~220m2/gであることができる。上述の範囲を満たすと、高濃度で分散することができる。具体的には、本発明において、カーボンナノチューブの比表面積は、BET法により測定したものであり、例えば、BEL Japan社製のBELSORP-mino IIを用いて、液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から算出することができる。
【0068】
一方、前記カーボンナノチューブの単位体の平均本直径は、30nm以下、具体的には10~30nmであることができ、平均長さは、0.5μm~200μm、具体的には10~60μmであることができる。前記範囲を満たすと、電気伝導性および強度に優れ、常温および高温においていずれも安定していることができ、分散性にも優れることができる。
【0069】
前記カーボンナノチューブ単位体は、カーボンナノチューブ単位体の長さ(単位体の中心を通過する長軸の長さ)と、直径(単位体の中心を通過し、前記長軸に垂直な短軸の長さ)との比と定義されるアスペクト比が5~50,000であることができ、より具体的には10~20,000であることができる。
【0070】
本発明において、カーボンナノチューブ単位体の平均ストランドの直径および長さは、電界放射型走査電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0071】
実施例
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例および実験例をあげて詳細に説明する。しかし、本発明がこれらの実施例および実験例によって制限されるものではない。本発明による実施例は、様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で詳述する実施例に限定されるものと解釈してはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0072】
実施例および比較例
アルミニウム系支持体前駆体として、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を空気雰囲気で450℃で4時間熱処理し、AlO(OH)を40重量%以上含むアルミニウム系担持体を製造した。製造した担持体を分級機に投入し、数平均粒度が4μmである粒子を取得した。これとは別に、NH4VO3を水に溶解した後、NH4VO31モルに対してクエン酸0.44モルを投入し、NH4VO3水溶液を製造した。Co:Vのモル比が10:1になるようにCo(NO3)2・6H2OとNH4VO3水溶液を混合し、クリーンな水溶液である触媒溶液を製造した。
【0073】
前記担持体内のAl100モルに対して、前記触媒溶液内のCoが16モル、Vが1.6モルになるように、前記担持体と前記触媒溶液を混合した。
【0074】
前記担持体に触媒溶液を60℃の恒温槽で5分間担持させた後、空気雰囲気で120℃で6時間乾燥した。次いで、空気雰囲気で720℃で1.5時間焼成して担持触媒を製造し、この時に担持された活性成分の含量を下記表1に示した。
【0075】
また、下記表1に記載のように担持体の数平均粒度を異ならせ、活性成分のうち主触媒成分の含量を異ならせた以外は、前記と同様に実施して、残りの実施例および比較例のカーボンナノチューブ製造用の担持触媒粒子を取得した。
【0076】
実験例1.カーボンナノチューブの収率およびかさ密度
カーボンナノチューブの製造
製造されたカーボンナノチューブ製造用の担持触媒を55mmの直径を有する円筒形クォーツ流動床反応器の中間部に装着した後、窒素雰囲気で670℃まで昇温した後、維持し、窒素、水素およびエチレンガスの体積混合比を1:1:1にして総300sccmで供給しながら60分間反応させてカーボンナノチューブを合成した。前記実施例と比較例の担持触媒によって合成されたカーボンナノチューブの収率とかさ密度を測定し、下記表1に示した。
【0077】
測定方法
1)数平均粒度:製造された担持体の数平均粒度を粒度分析器(Microtrac、bluewave)を活用して測定した。
【0078】
2)収率:使用したカーボンナノチューブ製造用の担持触媒の重量と反応後の重量増加量を基準として、下記式1によって計算した。
【0079】
[式1]
収率(倍)=(反応後の全重量-使用した触媒の重量)/使用した触媒の重量
【0080】
3)かさ密度:重量を知っている5mlの容器にパウダーを満たして重量を測定した後、下記式2によって密度を換算した。
【0081】
[式2]
かさ密度(kg/m3)=カーボンナノチューブの重量(kg)/カーボンナノチューブの体積(m3)
【0082】
測定結果
【0083】
【0084】
前記表1を参照すると、数平均粒度が1.4μmである比較例1-1、2-1、3-1および4-1の場合、各比較例に対応する実施例に比べて、収率とかさ密度が低い水準であることが認められる。これは、数平均粒度が小さくて担持触媒粒子間の凝集現象によって一部の活性が低下した結果であることが分かる。また、担持体の数平均粒度が20μmを超え、24μmである比較例1-2、2-2、3-2および4-2と、50μmである比較例1-3、2-3、3-3および4-3の場合、担持体の数平均粒度が20μm以下の19μmである実施例1-2、2-2、3-2および4-2と比較して、触媒粒子のサイズが大きく増加したにもかかわらず、CNT収率がそのまま維持されるか、かえって減少する結果を示した。これは、すなわち、担持体の数平均粒度が本発明の範囲以上に大きくなる場合、担持体の大きい粒子径がかえって活性成分担持の妨害要因として作用し、触媒活性に良い影響を与えないことを意味し、本発明の担持体の数平均粒度の範囲内で活性成分の担持が極大化し、触媒原料の使用を最小化するとともに最も優れた触媒活性を有する担持触媒を製造することができることを示す。
【0085】
また、実施例で主触媒成分の含量を増加させて担持させる場合、担持される主触媒成分の含量が増加するほど製造収率は増加し続け、それによってかさ密度も増加した結果を示したが、比較例では、主触媒成分の含量が増加しても収率は大きく増加せず、かえって特定の場合には、かえって収率が減少することを確認することができた。これは、上述のように、本発明の担持体の数平均粒度の範囲内では活性成分の担持が極大化できるのに対し、本発明の担持体の数平均粒度の範囲から逸脱する比較例では、担持体の内部に活性成分が均一に分布されず、活性成分が有効量として役割を果たすことができなかったことを意味する。
【0086】
これにより、本発明の一実施形態による担持触媒、すなわち、数平均粒度が1.5~20μmである担持体を活用した担持触媒の場合、担持させる活性成分がほとんど有効成分として作用することで、触媒活性が増加し、凝集現象の防止によって活性の損失を効果的に防止し、そのままカーボンナノチューブの製造収率の向上に寄与することができるという点を確認することができ、このような有効量の増加は、活性成分の含量を増加させることで達成可能なものではなく、適切な粒度分布を有する担持体を適用したときに実現が可能であるという点も確認することができる。
【国際調査報告】