(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ジヘキシルベンゼンジカルボキシレート系可塑剤組成物およびこれを含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20231005BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20231005BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/10
C09K3/00 103Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518012
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 KR2021017321
(87)【国際公開番号】W WO2022114743
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0158964
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・キュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ホ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヒュク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジュ・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ホ・ジョン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB121
4J002BC031
4J002BD031
4J002BF031
4J002CF181
4J002CK021
4J002EH036
4J002EH037
4J002FD026
4J002FD027
(57)【要約】
本発明は、ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートとして、ヘキシルアルコールの異性体混合物由来のアルキル基を有することを特徴とし、これを樹脂に適用する場合、耐ストレス性および機械的物性は同等以上の水準を維持することができ、引張強度と伸び率、および耐移行性はバランスを維持しながら可塑化効率を著しく改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートが1以上含まれた可塑剤組成物であって、
前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートは、ジヘキシルイソフタレートおよびジヘキシルテレフタレートから選択される1以上であり、
前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートのヘキシル基は、ヘキシルアルコールの異性体混合物由来のものであり、
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノール、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノール、3-エチルブタノールおよびシクロペンチルメタノールからなる群から選択される2以上を含む、可塑剤組成物。
【請求項2】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールを含む、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項3】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、分岐状アルコールが30重量部以上で含まれる、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項4】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、分岐状アルコールが40~95重量部含まれる、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項5】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、1-ヘキサノールが40重量部以下で含まれる、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項6】
前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートは、ジヘキシルイソフタレートである、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項7】
前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートは、ジヘキシルテレフタレートである、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項8】
前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートは、ジヘキシルイソフタレートおよびジヘキシルテレフタレートの混合物である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項9】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノール、2-メチルペンタノールおよび3-メチルペンタノールを含む、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項10】
樹脂100重量部と、前記樹脂100重量部に対して5~150重量部の請求項1に記載の可塑剤組成物とを含む、樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂は、ストレート塩化ビニル重合体、ペースト塩化ビニル重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレン重合体、プロピレン重合体、ポリケトン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ乳酸、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群から選択される1種以上である、請求項10に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月24日付けの韓国特許出願第10-2020-0158964号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ヘキシルアルコールの異性体の混合アルコール由来のジヘキシルベンゼンジカルボキシレートを含む可塑剤組成物およびこれを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、可塑剤は、アルコールがフタル酸およびアジピン酸といったポリカルボン酸と反応し、これに相当するエステルを形成する。また、人体に有害なフタレート系可塑剤の韓国内外の規制を考慮して、テレフタレート系、アジペート系、その他の高分子系などのフタレート系可塑剤の代わりに使用可能な可塑剤組成物に関する研究が続いている。
【0004】
一方、床材、壁紙、軟質および硬質シートなどのプラスチゾル業種、カレンダリング業種、押出/射出コンパウンド業種を問わず、このような環境にやさしい製品に対するニーズが増加しており、これに対する完成品ごとの品質特性、加工性および生産性を強化するために、変色および移行性、機械的物性などを考慮して、適切な可塑剤を使用する必要がある。
【0005】
このような様々な使用領域において業種別に求められる特性である引張強度、伸び率、耐光性、移行性、ゲル化性あるいは吸収速度などに応じて、PVC樹脂に、可塑剤、充填剤、安定剤、粘度低下剤、分散剤、消泡剤、発泡剤などの副原料を配合する。
【0006】
一例として、PVCに適用可能な可塑剤組成物のうち、値段が相対的に安くて最も汎用的に使用されるジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)を適用する場合、硬度あるいはゾル粘度が高く、可塑剤の吸収速度が相対的に遅く、移行性およびストレス移行性も良好ではなかった。
【0007】
その改善策として、DEHTPを含む組成物として、ブタノールとのトランスエステル化反応の生成物を可塑剤として適用することが考えられる。しかしながら、可塑化効率は改善するものの、加熱減量や熱安定性などが劣化し、機械的物性が多少低下するなど、物性の改善が求められる。従って、一般的に、他の二次可塑剤との混用によりこれを補完する方式を採用する以外には、現在として解決策がない状況である。
【0008】
しかし、二次可塑剤を適用する場合には、物性の変化に対する予測が難しく、製品コストが上昇する要因として作用する可能性がある。特定の場合以外には物性の改善が明らかではなく、樹脂との相溶性に問題を引き起こすなど、予想できない問題が発生するという欠点がある。
【0009】
また、前記DEHTP製品の劣悪な移行性と減量特性および耐光性を改善するために、トリメリテート系の製品としてトリ(2-エチルヘキシル)トリメリテートやトリイソノニルトリメリテートといった物質を適用する場合、移行性や減量特性は改善するものの、可塑化効率が劣化し、樹脂に適切な可塑化効果を与えるためには相当量投入しなければならないという問題があり、そのため、比較的単価が高い製品であるという点で、商用化が不可能な状況である。
【0010】
なお、テレフタレート系の製品としてジブチルテレフタレートのような物質を混用する場合、加熱減量の劣化によって加工中に大気汚染などの環境問題を引き起こし、一定量以上の使用が制限されるという点で、可塑化効率の改善が不可能であるという問題がある。
【0011】
そのため、既存の製品としてフタレート系製品の環境的問題を解決するための製品またはフタレート系製品の環境問題を改善するための環境にやさしい製品の劣悪な物性を改善した製品などの開発が求められる状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートとして、ヘキシルアルコール異性体混合物由来のアルキル基を有することを特徴とする可塑剤組成物を提供することにより、これを樹脂に適用する場合、引張強度と伸び率、および耐移行性のバランスを維持しながら可塑化効率を著しく改善することができる可塑剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、可塑剤組成物を提供する。
【0014】
(1)本発明は、ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートが1以上含まれた可塑剤組成物であって、前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートは、ジヘキシルイソフタレートおよびジヘキシルテレフタレートから選択される1以上であり、前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートのヘキシル基は、ヘキシルアルコールの異性体混合物由来のものであり、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノール、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノール、3-エチルブタノールおよびシクロペンチルメタノールからなる群から選択される2以上を含む可塑剤組成物を提供する。
【0015】
(2)本発明は、前記(1)において、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールを含む可塑剤組成物を提供する。
【0016】
(3)本発明は、前記(1)または(2)において、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、分岐状アルコールが30重量部以上で含まれる可塑剤組成物を提供する。
【0017】
(4)本発明は、前記(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、分岐状アルコールが40~95重量部含まれる可塑剤組成物を提供する。
【0018】
(5)本発明は、前記(1)~(4)のいずれか一つにおいて、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、1-ヘキサノールが40重量部以下で含まれる可塑剤組成物を提供する。
【0019】
(6)本発明は、前記(1)~(5)のいずれか一つにおいて、前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートは、ジヘキシルイソフタレートである可塑剤組成物を提供する。
【0020】
(7)本発明は、前記(1)~(6)のいずれか一つにおいて、前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートは、ジヘキシルテレフタレートである可塑剤組成物を提供する。
【0021】
(8)本発明は、前記(1)~(7)のいずれか一つにおいて、前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートは、ジヘキシルイソフタレートおよびジヘキシルテレフタレートの混合物である可塑剤組成物を提供する。
【0022】
(9)本発明は、前記(1)~(8)のいずれか一つにおいて、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノール、2-メチルペンタノールおよび3-メチルペンタノールを含む可塑剤組成物を提供する。
【0023】
(10)本発明は、樹脂100重量部と、前記(1)~(9)のいずれか一つによる可塑剤組成物5~150重量部とを含む樹脂組成物を提供する。
【0024】
(11)本発明は、前記(10)において、前記樹脂は、ストレート塩化ビニル重合体、ペースト塩化ビニル重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレン重合体、プロピレン重合体、ポリケトン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ乳酸、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群から選択される1種以上である樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、樹脂組成物に使用する場合、引張強度と伸び率、および耐移行性のバランスを維持しながら可塑化効率を著しく改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0027】
用語の定義
本明細書で用いられているような「組成物」という用語は、当該組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物だけでなく、当該組成物を含む材料の混合物を含む。
【0028】
本明細書で用いられているような「ストレート塩化ビニル重合体」という用語は、塩化ビニル重合体の種類の一つであり、懸濁重合またはバルク重合などにより重合されたものを意味し得、数十~数百マイクロメートルサイズを有する多量の気孔が分布した多孔性粒子の形態を有する重合体であり、凝集性がなく、流動性に優れた重合体を意味する。
【0029】
本明細書で用いられているような「ペースト塩化ビニル重合体」という用語は、塩化ビニル重合体の種類の一つであり、微細懸濁重合、微細シード重合、または乳化重合などにより重合されたものを意味し得、数十~数千ナノメートルサイズを有する微細で緻密な空隙がない粒子形態の重合体であり、凝集性を有し、流動性が劣る重合体を意味する。
【0030】
「含む」、「有する」という用語およびこれらの派生語は、これらが具体的に開示されているかそうではないかに関係なく、任意の追加の成分、ステップあるいは手続きの存在を排除することを意図しない。如何なる不確実性も避けるために、「含む」という用語の使用により請求されたすべての組成物は、逆に記述されない限り、重合体であるかあるいはそれ以外の他のものであるかに関係なく、任意の追加の添加剤、補助剤、あるいは化合物を含むことができる。これとは対照的に、「で本質的に構成される」という用語は、操作性に必須ではないもの以外は、任意のその他の成分、ステップあるいは手続きを任意の連続する説明の範囲から排除する。「で構成される」という用語は、具体的に記述されるか列挙されていない任意の成分、ステップあるいは手続きを排除する。
【0031】
測定方法
本明細書において、組成物内の成分の含量の分析は、ガスクロマトグラフィー測定により行い、Agilent社製のガスクロマトグラフィー機器(製品名:Agilent 7890 GC、カラム:HP-5、キャリアガス:ヘリウム(flow rate 2.4mL/min)、検出器:F.I.D、注入量(injection volume):1μL、初期値:70℃/4.2min、終期値:280℃/7.8min、program rate:15℃/min)により分析する。
【0032】
本明細書において、「硬度(hardness)」は、ASTM D2240に準じて、25℃でのショア硬度(Shore「A」および/またはShore「D」)を意味し、3T 10sの条件で測定し、可塑化効率を評価する指標になることができ、低いほど可塑化効率に優れることを意味する。
【0033】
本明細書において、「引張強度(tensile strength)」は、ASTM D638方法に準じて、テスト機器であるU.T.M(メーカー:Instron、モデル名:4466)を用いて、クロスヘッドスピード(cross head speed)200mm/min(1T)で引っ張った後、試験片が切断される地点を測定し、下記の数学式1で計算する。
【0034】
[数学式1]
引張強度(kgf/cm2)=ロード(load)値(kgf)/(厚さ(cm)×幅(cm))
【0035】
本明細書において、「伸び率(elongation rate)」は、ASTM D638方法に準じて、前記U.T.Mを用いて、クロスヘッドスピード(cross head speed)200mm/min(1T)で引っ張った後、試験片が切断される地点を測定した後、下記数学式2で計算する。
【0036】
[数学式2]
伸び率(%)=伸長後の長さ/初期の長さ×100
【0037】
本明細書において「移行損失(migration loss)」は、KSM-3156に準じて、厚さ2mm以上の試験片を得て、試験片の両面にガラス板(Glass Plate)を付着した後、1kgf/cm2の荷重を加える。試験片を熱風循環式オーブン(80℃)で72時間放置した後、取り出し、常温で4時間冷却させる。その後、試験片の両面に付着したガラス板(Glass Plate)を除去した後、ガラス板とSpecimen Plateをオーブンに放置する前と後の重量を測定し、移行損失量を下記数学式3によって計算する。
【0038】
[数学式3]
移行損失量(%)={[(初期の試験片の重量)-(オーブン放置後の試験片の重量)]/(初期の試験片の重量)}×100
【0039】
本明細書において、「加熱減量(volatile loss)」は、試験片を80℃で72時間処理した後、試験片の重量を測定して計算する。
【0040】
[数学式4]
加熱減量(%)={[(初期の試験片の重量)-(処理後の試験片の重量)]/(初期の試験片の重量)}×100
【0041】
前記様々な測定条件の場合、温度、回転速度、時間などの詳細条件は、場合によって多少相違し得、相違する場合には、その測定方法および条件を別に明示する。
【0042】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。
【0043】
本発明の一実施形態によると、可塑剤組成物は、ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートが1以上含まれたものであり、前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートは、ジヘキシルイソフタレートおよびジヘキシルテレフタレートから選択される1以上であり、前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートのヘキシル基は、ヘキシルアルコールの異性体混合物由来のものであることを特徴とする。
【0044】
本発明の一実施形態によると、前記可塑剤組成物の前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノール、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノール、3-エチルブタノールおよびシクロペンチルメタノールからなる群から選択される2以上を含む。
【0045】
このようなヘキシルアルコール異性体内に含まれたアルコールによって、前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートのアルキル基が定められることができ、最終組成物には、前記二つのアルキル基にヘキシルアルコールの異性体アルキル基がそれぞれ2個または1個が結合するか結合しないものの様々な組成物が含まれることができ、最終組成物内の成分の比率は、反応するアルコールの成分の比率によって定められることができる。
【0046】
このように、ベンゼンジカルボキシレートを適用するに際し、炭素数が6であるアルコールを使用する場合には、炭素数6未満の場合に比べて、適正水準の吸収速度を確保することで、加工性の改善を図ることができ、引張強度、伸び率および加熱減量が大きく改善することができ、炭素数が6を超える場合に比べて、可塑化効率に優れることができ、耐移行性および耐ストレス性を大きく期待することができる。
【0047】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物のヘキシルアルコール異性体混合物は、分岐化度が2.0以下であり、好ましくは1.5以下であることができる。具体的には、前記分岐化度は、1.5以下であることができ、1.3以下であることができ、さらに好ましくは1.1以下であることができる。また、0.1以上であることができ、0.2以上であることができ、0.3以上であることができ、最も好ましくは0.7以上であることができる。このヘキシルアルコールの異性体混合物の分岐化度は、エステル化反応によりジヘキシルベンゼンジカルボキシレートに転換された場合にも維持されることができる。分岐化度が2.0を超えると、物性間のバランスが崩れて製品がいずれか一つ以上の評価基準に達しない問題が発生し得るが、好ましい範囲として1.5以下である場合には、機械的物性だけでなく、移行損失と加熱減量の改善がより最適化することができ、物性間のバランスに優れることができる。
【0048】
ここで、分岐化度とは、組成物内に含まれた物質に結合したアルキル基がいくつの分岐炭素を有するかを意味し得、当該物質の重量比に応じてその程度が決定されることができる。例えば、アルコール混合物にn-ヘキシルアルコールが60重量%、メチルペンチルアルコールが30重量%、およびエチルブチルアルコールが10重量%含まれていると想定すると、前記各アルコールの分岐炭素数は、それぞれ、0、1および2であるため、分岐化度は、[(60×0)+(30×1)+(10×2)]/100に計算され0.5であることができる。ここで、シクロペンチルメタノールの場合、分岐炭素数は0であるとみなす。
【0049】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、ヘキシルアルコール異性体混合物内に1-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールを含むことができ、このような場合、耐移行性と加熱減量の面で優れた効果を得ることができる。
【0050】
前記2-メチルペンタノールを含む分岐状ヘキシルアルコールは、異性体混合物100重量部に対して、30重量部以上含まれることができ、40重量部以上、50重量部以上含まれることができ、好ましくは、60重量部以上、70重量部以上含まれることができる。最大量としては全部分岐状であることができ、99重量部以下、98重量部が含まれることができ、好ましくは、95重量部以下、または90重量部以下で含まれることができる。この範囲で分岐状ヘキシルアルコールが含まれる場合には、機械的物性の改善を期待することができる。
【0051】
また、前記1-ヘキサノールの直鎖状アルコールは、異性体混合物100重量部に対して、50重量部以下で含まれることができ、40重量部以下であることができ、好ましくは30重量部以下であることができる。前記1-ヘキサノールは、成分内に存在しないこともできるが、少なくとも2重量部以上含まれることができ、この場合、物性間のバランスを維持しながら機械的物性が改善する利点を取ることができる。
【0052】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物内に1-ヘキサノール、2-メチルペンタノールおよび3-メチルペンタノールを含むことができる。3-メチルペンタノールをさらに含むことで、物性間のバランスは維持しながら加熱減量をより改善することができる。この場合、3-メチルペンタノールは、前記分岐状ヘキシルアルコールの成分として含まれ、上述の分岐状ヘキシルアルコールの含量を満たすように存在するものであることができる。
【0053】
より好ましくは、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、シクロペンチルメタノールをさらに含むことができ、これにより、耐移行性とストレス移行性を補完できる効果を期待することができる。
【0054】
この場合、前記シクロペンチルメタノールは、それぞれ独立して、異性体混合物100重量部に対して20重量部以下であることができ、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下であることができ、存在しないか、これによる効果を得るための最小量は2重量部であることができる。
【0055】
この場合、前記3-メチルペンタノールおよびシクロペンチルメタノールは、それぞれ独立して、異性体混合物100重量部に対して20重量部以下であることができ、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下であることができ、存在しないか、これによる効果を得るための最小量は2重量部であることができる。
【0056】
具体的には、最終組成物内に分岐状アルキル基が全体のアルキルラジカルのうちどのくらいの比率で存在するか、さらには、分岐状アルキル基のうち特定の分岐アルキルラジカルがどのくらいの比率で存在するかなどの特徴によって、可塑化効率と移行性/減量特性の物性にバランスを取ることができ、引張強度と伸び率のような機械的物性および耐ストレス性も同等以上の水準を維持することができ、組成物内に含まれた様々なタイプのベンゼンジカルボキシレート間の相互作用によって良好な炭化特性を実現することができ、これは、上述のヘキシルアルコールの異性体の成分およびその成分比から達成することができる。
【0057】
これにより、既存のフタレート系製品の環境的な問題を除去し、且つ減量特性をより改善した製品の実現が可能であり、既存のテレフタレート系製品の移行性および減量特性を著しく改善することができ、既存の商用製品に比べて機械的物性および耐移行性が大幅に改善した製品の実現が可能である。
【0058】
本発明の一実施形態による前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートは、ジヘキシルイソフタレートおよびジヘキシルテレフタレートから選択される1以上であることを特徴とする。前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートがジヘキシルフタレートである場合には、環境問題によって規制された物質ではないが、潜在的に環境的な問題を内包しており、使用上制約が多いだけでなく、イソフタレートやテレフタレートに比べて、引張強度と伸び率のような機械的物性が非常に劣っており、可塑化効率も低い水準であるため、適切ではない。
【0059】
また、前記イソフタレートとテレフタレートの場合、フタレート系可塑剤の代わりに使用可能な物質として汎用的に使用されているものの、適用されるアルキル基は、ほとんどがC8の2-エチルヘキシル基であり、このC8のイソフタレートまたはテレフタレートに二次可塑剤を混合した組成物を可塑剤として適用するか、この物質に炭素数が低いアルコール、例えば、C3~C5のアルコールとのトランスエステル化反応により分子量を制御した三成分系組成物を可塑剤として適用することが一般的である。異性体の使用については、C5のテレフタレートとC9のテレフタレート以外には適用された物質がない状況である。
【0060】
しかし、本発明では、炭素数6のヘキシルアルコールを使用して、いずれか一つの物性も極めて劣らず物性間のバランスを最適に維持し、この際、これを単独で使用せずに異性体が混合された状態の混合物として使用することで、可塑化効率を最大値に改善できる効果を提供することができる。
【0061】
具体的には、前記ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートがジヘキシルイソフタレートであることができ、ジヘキシルテレフタレートであることができ、前記イソフタレートとテレフタレートが混合されたものであることができる。このようなイソフタレートおよびテレフタレートの選択は、目的とする用途に応じて適切に選択されて適用されることができ、この二つの成分の混合物を使用する場合には、物性間のバランスを取ることがより容易であるという利点がある。
【0062】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物を製造する方法は、当業界において周知の方法として、上述の可塑剤組成物を製造することができるものであれば、特に制限なく適用可能である。
【0063】
例えば、ベンゼンジカルボン酸(イソフタル酸および/またはテレフタル酸)またはその無水物とヘキシルアルコールの異性体混合物を直接エステル化反応させて前記組成物を製造することができ、ジヘキシルベンゼンジカルボキシレートとヘキシルアルコールの異性体混合物をトランスエステル化反応させて組成物を製造することもできる。
【0064】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、前記エステル化反応を適切に行って製造された物質であり、上述の条件に合致するもの、特に、異性体混合アルコール内の分岐状アルコールの比率の制御および特定の成分が含まれたものであれば、製造方法が特に制限されない。
【0065】
一例として、前記直接エステル化反応は、ベンゼンジカルボン酸またはその誘導体と2種以上の混合アルコールを投入した後、触媒を添加し、窒素雰囲気下で反応させるステップと、未反応の原料を除去するステップと、未反応の原料および触媒を中和(または不活性化)させるステップと、不純物を除去(例えば、減圧蒸留など)、濾過するステップとにより行われることができる。
【0066】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物の成分および成分の重量比率は、上述のとおりである。前記アルコールの異性体混合物は、酸100モル%に対して、200~900モル%、200~700モル%、200~600モル%、250~500モル%、あるいは270~400モル%の範囲内で使用されることができ、このアルコールの含量を制御することで、最終組成物内の成分比を制御することができる。
【0067】
前記触媒は一例として、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、アルキル硫酸などの酸触媒、乳酸アルミニウム、フッ化リチウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化カルシウム、塩化鉄、リン酸アルミニウムなどの金属塩、ヘテロポリ酸などの金属酸化物、天然/合成ゼオライト、カチオンおよびアニオン交換樹脂、テトラアルキルチタネート(tetra alkyl titanate)およびそのポリマーなどの有機金属から選択される1種以上であることができる。具体的な例として、前記触媒は、テトラアルキルチタネートを使用することができる。好ましくは、活性温度が低い酸触媒として、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などが適切である。
【0068】
触媒の使用量は、種類に応じて相違することができ、一例として、均一触媒の場合には、反応物の全100重量%に対して、0.01~5重量%、0.01~3重量%、1~5重量%あるいは2~4重量%の範囲内、また、不均一触媒の場合には、反応物の全量の5~200重量%、5~100重量%、20~200重量%、あるいは20~150重量%の範囲内であることができる。
【0069】
この際、前記反応温度は、100℃~280℃、100℃~250℃、あるいは120℃~230℃の範囲内であることができる。
【0070】
他の一例として、前記トランスエステル化反応は、イソフタレートまたはテレフタレートと、前記二つのベンゼンジカルボキシレートのアルキル基とは異なるアルキル基を有するアルコールが反応するものであることができる。ここで、ベンゼンジカルボキシレートとアルコールが有するアルキル基は、互いに交差されてもよい。
【0071】
本発明で使用される「トランスエステル化反応」は、下記反応式1のように、アルコールとエステルが反応してエステルのアルキルとアルコールのアルキルが互いに交換される反応を意味する。
【0072】
【0073】
前記トランスエステル化反応により製造された混合物は、アルコールの添加量に応じて前記混合物の組成の比率を制御することができる。前記アルコールの添加量は、ジヘキシルベンゼンジカルボキシレート100重量部に対して、0.1~200重量部、具体的には1~150重量部、さらに具体的には5~100重量部であることができる。参考までに、最終組成物内の成分比を決定するものは、前記直接エステル化反応でのように、アルコールの添加量であることができる。
【0074】
本発明の一実施形態によると、前記トランスエステル化反応は、120℃~190℃、好ましくは135℃~180℃、さらに好ましくは141℃~179℃の反応温度下で、10分~10時間、好ましくは30分~8時間、さらに好ましくは1~6時間行われる。前記温度および時間の範囲内では、最終可塑剤組成物の成分比を効率的に制御することができる。この際、前記反応時間は、反応物を昇温した後、反応温度に逹した時点から計算することができる。
【0075】
前記トランスエステル化反応は、酸触媒または金属触媒下で実施されることができ、この場合、反応時間が短縮できる効果がある。
【0076】
前記酸触媒は、一例として、硫酸、メタンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸などであることができ、前記金属触媒は、一例として、有機金属触媒、金属酸化物触媒、金属塩触媒または金属自体であることができる。
【0077】
前記金属成分は、一例として、スズ、チタンおよびジルコニウムからなる群から選択されるいずれか一つまたはこれらの2種以上の混合物であることができる。
【0078】
本発明の他の一実施形態によると、上述の可塑剤組成物および樹脂を含む樹脂組成物が提供される。
【0079】
前記樹脂は、当分野において周知の樹脂を使用することができる。例えば、ストレート塩化ビニル重合体、ペースト塩化ビニル重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン重合体、プロピレン重合体、ポリケトン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ乳酸、天然ゴム、合成ゴムおよび熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1種以上の混合物などを使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0080】
前記可塑剤組成物は、前記樹脂100重量部に対して、5~150重量部、好ましくは5~130重量部、または10~120重量部含まれることができる。
【0081】
一般的に、可塑剤組成物が使用される樹脂は、溶融加工またはプラスチゾル加工により樹脂製品として製造されることができ、溶融加工樹脂とプラスチゾル加工樹脂は、各重合方法に応じて異なるように生産されるものであることができる。
【0082】
例えば、塩化ビニル重合体は、溶融加工に使用される場合、懸濁重合などで製造された平均粒径が大きい固体状の樹脂粒子が使用される。このような塩化ビニル重合体は、ストレート塩化ビニル重合体と称される。プラスチゾル加工に使用される場合、乳化重合などで製造され微細な樹脂粒子としてゾル状態の樹脂が使用され、このような塩化ビニル重合体は、ペースト塩化ビニル樹脂と称される。
【0083】
この際、前記ストレート塩化ビニル重合体の場合、可塑剤は、重合体100重量部に対して5~80重量部の範囲内で含まれることが好ましく、ペースト塩化ビニル重合体の場合、重合体100重量部に対して40~120重量部の範囲内で含まれることが好ましい。
【0084】
前記樹脂組成物は、充填剤をさらに含むことができる。前記充填剤は、前記樹脂100重量部に対して、0~300重量部、好ましくは50~200重量部、さらに好ましくは100~200重量部であることができる。
【0085】
前記充填剤は、当分野において周知の充填剤を使用することができ、特に制限されない。例えば、充填剤は、シリカ、マグネシウムカーボネート、カルシウムカーボネート、硬質炭、タルク、水酸化マグネシウム、チタンジオキシド、マグネシウムオキシド、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケートおよび硫酸バリウムから選択される1種以上の混合物であることができる。
【0086】
また、前記樹脂組成物は、必要に応じて、安定化剤などのその他の添加剤をさらに含むことができる。前記安定化剤などのその他の添加剤は、一例として、それぞれ、前記樹脂100重量部に対して0~20重量部、好ましくは1~15重量部であることができる。
【0087】
前記安定化剤は、例えば、カルシウム-亜鉛の複合ステアリン酸塩などのカルシウム-亜鉛系(Ca-Zn系)安定化剤またはバリウム-亜鉛(Ba-Zn系)安定化剤を使用することができるが、これに特に制限されるものではない。
【0088】
前記樹脂組成物は、上述のように、溶融加工およびプラスチゾル加工にいずれも適用されることができ、例えば、溶融加工は、カレンダリング加工、押出加工、または射出加工が適用されることができ、プラスチゾル加工は、コーティング加工などが適用されることができる。
【0089】
実施例
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例をあげて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0090】
実施例1-1
冷却器、コンデンサ、デカンタ、還流ポンプ、温度コントローラ、撹拌機などを備えた四ツ口の3リットル反応器に、イソフタル酸516.5g、ヘキサノール(n-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールが重量比1:9で混合されたヘキサノール)1,170g、触媒としてテトライソプロピルチタネート1.55gを投入し、反応温度を230℃に設定し、窒素ガスを投入し続けて、約6時間直接エステル化反応を行い、酸価が0.1に逹した時に反応を完了した。
【0091】
反応完了後、未反応の原料を除去するために、減圧下で蒸留抽出を実施した。蒸留抽出後、中和工程、脱水工程および濾過工程を経て、ジ(n-ヘキシル)イソフタレート(DnHIP)、(n-ヘキシル)(2-メチルペンチル)イソフタレート(nH2MPIP)およびジ(2-メチルペンチル)イソフタレート(D2MPIP)を含む組成物を得た。
【0092】
実施例1-2
前記実施例1-1で、ヘキサノールとして、n-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールが重量比3:7で混合された混合物を使用した以外は同様に実施して、ジ(n-ヘキシル)イソフタレート(DnHIP)、(n-ヘキシル)(2-メチルペンチル)イソフタレート(nH2MPIP)およびジ(2-メチルペンチル)イソフタレート(D2MPIP)を含む組成物を得た。
【0093】
実施例1-3
前記実施例1-1で、ヘキサノールとして、n-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールが重量比5:5で混合された混合物を使用した以外は同様に実施して、ジ(n-ヘキシル)イソフタレート(DnHIP)、(n-ヘキシル)(2-メチルペンチル)イソフタレート(nH2MPIP)およびジ(2-メチルペンチル)イソフタレート(D2MPIP)を含む組成物を得た。
【0094】
実施例1-4
前記実施例1-1で、ヘキサノールとして、n-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールが重量比7:3で混合された混合物を使用した以外は同様に実施して、ジ(n-ヘキシル)イソフタレート(DnHIP)、(n-ヘキシル)(2-メチルペンチル)イソフタレート(nH2MPIP)およびジ(2-メチルペンチル)イソフタレート(D2MPIP)を含む組成物を得た。
【0095】
実施例1-5
前記実施例1-1で、ヘキサノールとして、n-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールが重量比9:1で混合された混合物を使用した以外は同様に実施して、ジ(n-ヘキシル)イソフタレート(DnHIP)、(n-ヘキシル)(2-メチルペンチル)イソフタレート(nH2MPIP)およびジ(2-メチルペンチル)イソフタレート(D2MPIP)を含む組成物を得た。
【0096】
実施例1-6
前記実施例1-1で、ヘキサノールとして、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノールおよび3-メチルペンタノールが重量比2:3:5で混合された混合物を使用した以外は同様に実施して、可塑剤組成物を得た。
【0097】
実施例1-7
前記実施例1-1で、ヘキサノールとして、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノールおよびシクロペンチルメタノールが重量比7:37:44:12で混合された混合物を使用した以外は同様に実施して、可塑剤組成物を得た。
【0098】
前記実施例1-1~1-7で使用されたヘキシルアルコールの異性体混合物の全量を100重量部とした時に、前記混合物に含まれた各アルコールの相対的な重量部を下記表1に整理した。
【0099】
【0100】
実施例2-1
冷却器、コンデンサ、デカンタ、還流ポンプ、温度コントローラ、撹拌機などを備えた四ツ口の3リットル反応器に、テレフタル酸516.5g、ヘキサノール(n-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールが重量比1:9で混合されたヘキサノール)1,170g、触媒としてテトライソプロピルチタネート1.55gを投入し、反応温度を230℃に設定し、窒素ガスを投入し続けて、約6時間直接エステル化反応を行い、酸価が0.1に逹した時に反応を完了した。
【0101】
反応完了後、未反応の原料を除去するために、減圧下で蒸留抽出を実施した。蒸留抽出後、中和工程、脱水工程および濾過工程を経て、ジ(n-ヘキシル)テレフタレート(DnHTP)、(n-ヘキシル)(2-メチルペンチル)テレフタレート(nH2MPTP)およびジ(2-メチルペンチル)テレフタレート(D2MPTP)を含む組成物を得た。
【0102】
実施例2-2
前記実施例2-1で、ヘキサノールとして、n-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールが重量比3:7で混合された混合物を使用した以外は同様に実施して、ジ(n-ヘキシル)テレフタレート(DnHTP)、(n-ヘキシル)(2-メチルペンチル)テレフタレート(nH2MPTP)およびジ(2-メチルペンチル)テレフタレート(D2MPTP)を含む組成物を得た。
【0103】
実施例2-3
前記実施例2-1で、ヘキサノールとして、n-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールが重量比7:3で混合された混合物を使用した以外は同様に実施して、ジ(n-ヘキシル)テレフタレート(DnHTP)、(n-ヘキシル)(2-メチルペンチル)テレフタレート(nH2MPTP)およびジ(2-メチルペンチル)テレフタレート(D2MPTP)を含む組成物を得た。
【0104】
実施例2-4
前記実施例2-1で、ヘキサノールとして、n-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールが重量比9:1で混合された混合物を使用した以外は同様に実施して、ジ(n-ヘキシル)テレフタレート(DnHTP)、(n-ヘキシル)(2-メチルペンチル)テレフタレート(nH2MPTP)およびジ(2-メチルペンチル)テレフタレート(D2MPTP)を含む組成物を得た。
【0105】
実施例2-5
前記実施例2-1で、ヘキサノールとして、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノールおよび3-メチルペンタノールが重量比2:3:5で混合された混合物を使用した以外は同様に実施して、可塑剤組成物を得た。
【0106】
実施例2-6
前記実施例2-1で、ヘキサノールとして、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノールおよびシクロペンチルメタノールが重量比7:37:44:12で混合された混合物を使用した以外は同様に実施して、可塑剤組成物を得た。
【0107】
前記実施例2-1~2-6でヘキシルアルコールの異性体混合物の全量を100重量部とした時に、前記混合物に含まれた各アルコールの相対的な重量部を下記表2に整理した。
【0108】
【0109】
比較例1
LG化学社製として、ジオクチルフタレート(DOP)を可塑剤組成物とした。
【0110】
比較例2
LG化学社製の、ジイソノニルフタレート(DINP)を可塑剤組成物とした。
【0111】
比較例3
LG化学社製の、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP、LGflex GL300)を可塑剤組成物とした。
【0112】
比較例4
LG化学社製の、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)、ブチル(2-エチルヘキシル)テレフタレート(BEHTP)およびジブチルテレフタレート(DBTP)の混合物(LGflex GL500)を可塑剤組成物とした。
【0113】
比較例5
前記実施例1-1で、ヘキサノールとして、混合物ではなく、2-メチルペンタノールの単一化合物を使用した以外は同様に実施して、可塑剤組成物を得た。
【0114】
比較例6
前記実施例2-1で、ヘキサノールとして、混合物ではなく、2-メチルペンタノールの単一化合物を使用した以外は同様に実施して、可塑剤組成物を得た。
【0115】
比較例7
前記実施例1-1で、ヘキサノールの代わりにn-ヘプタノールを使用した以外は同様に実施して、可塑剤組成物を得た。
【0116】
比較例8
前記実施例1-3で、イソフタル酸の代わりにフタル酸を使用した以外は同様に実施して、ジ(n-ヘキシル)フタレート(DnHPh)、(n-ヘキシル)(2-メチルペンチル)フタレート(nH2MPPh)およびジ(2-メチルペンチル)テタレート(D2MPPh)を含む組成物を得た。
【0117】
実験例1:シート性能の評価
実施例および比較例の可塑剤を使用して、ASTM D638に準じて、以下のような処方および作製条件で試験片を作製した。
【0118】
(1)処方:ストレート塩化ビニル重合体(LS100)100重量部、可塑第50重量部および安定剤(BZ-153T)3重量部
【0119】
(2)配合:98℃で700rpmでミキシング
【0120】
(3)試験片の作製:ロールミル(Roll mill)で160℃で4分間、プレス(press)で180℃で2.5分間(低圧)および2分間(高圧)処理して、1T、2Tおよび3Tシートを作製
【0121】
(4)評価項目
1)硬度(hardness):ASTM D2240に準じて、25℃でのショア硬度(Shore「A」および「D」を3T試験片で10秒間測定した。数値が小さいほど可塑化効率に優れるものと評価される。
【0122】
2)引張強度(tensile strength):ASTM D638方法に準じて、テスト機器であるU.T.M(メーカー:Instron、モデル名:4466)を用いて、クロスヘッドスピード(cross head speed)200mm/minで引っ張った後、1T試験片が切断される地点を測定した。引張強度は、以下のように計算した。
引張強度(kgf/cm2)=ロード(load)値(kgf)/厚さ(cm)×幅(cm)
【0123】
3)伸び率(elongation rate)の測定:ASTM D638方法に準じて、前記U.T.Mを用いて、クロスヘッドスピード(cross head speed)200mm/minで引っ張った後、1T試験片が切断される地点を測定し、伸び率を以下のように計算した。
伸び率(%)=伸長後の長さ/初期の長さ×100で計算した。
【0124】
4)移行損失(migration loss)の測定:KSM-3156に準じて、厚さ2mm以上の試験片を得て、1T試験片の両面にガラス板(Glass Plate)を付着した後、1kgf/cm2の荷重を加えた。試験片を熱風循環式オーブン(80℃)で72時間放置した後、取り出し、常温で4時間冷却させた。その後、試験片の両面に付着されたガラス板を除去した後、ガラス板とSpecimen Plateをオーブンに放置する前と後の重量を測定し、移行損失量を以下のような式によって計算した。
移行損失量(%)=[{(常温の試験片の初期の重量)-(オーブン放置後の試験片の重量)}/(常温の試験片の初期の重量)]×100
【0125】
5)ストレス移行性の測定:厚さ2mmの試験片を折り曲げた状態で、23℃で168時間放置した後、移行程度(離脱する程度)を観察し、その結果を数値で記載し、0に近いほど優れた特性を示す。
【0126】
6)炭化特性の評価:厚さ0.25mmの試験片を40cm×40cmのサイズに作製し、Mathis Ovenで230℃、5mm/10secの速度で炭化テストを行い、黒く炭化が始まった時間を相対比較して評価した。炭化特性に優れるとは、相対的に炭化が遅く始まったことを意味し、炭化特性が劣るとは、相対的に炭化が早く始まったことを意味し、1~5の数値のうち1は最も劣ること、5は最も優れることを意味する。
【0127】
(5)評価結果
前記項目の評価結果を下記表3に示した。
【0128】
【0129】
前記表3の結果を参照すると、本発明の可塑剤組成物は、引張強度および伸び率の面で、既存の可塑剤に比べて同等な水準を維持し、可塑化効率と耐移行性の面では改善した効果を達成したことを確認することができる。さらに、ストレス移行性と炭化特性の面でも、ある一側面が劣ることなく、バランス的に優れた効果を達成したことを確認することができる。比較例1や2は、過去、可塑剤の製品として最もよく使用されていたものであるが、現在は、環境規制によって使用が不可能な可塑剤であり、本発明の実施例による可塑剤は、比較例1および2の可塑剤に比べて、かえって優れた可塑化効率および機械的物性を示し、炭化特性の面でも改善した効果を示した。これより、本発明の可塑剤は、環境にやさしくない既存の可塑剤製品の代わりに使用可能であり、且つかえってより優れた効果を提供することができることが分かる。また、比較例3と4は、比較例1および2の代わりに使用する環境にやさしい可塑剤であるが、比較例3および4も、比較例1および2と同様、本発明の実施例による可塑剤に比べて劣った可塑化効率を示し、機械的物性の面では、一部の優れた効果を示しているものの、移行損失とストレス移行性の面で大きく劣った結果を示した。移行損失とストレス移行性は、可塑剤製品の適用時の安定性を示す指標として、前記結果を、本発明の実施例の可塑剤組成物がより安定的に性能を実現することができることを意味し、比較例3および4の機械的物性が一部優れているとしても、可塑化効率や耐移行性が劣る点で、実際製品への適用時には、優れた機械的物性を十分に発揮することは難しいと予想される。
【0130】
一方、比較例5および6は、イソフタル酸またはテレフタル酸を適用するに際し、アルコールとして、ヘキシルアルコールの異性体混合物ではなく、単一の分岐状ヘキシルアルコールを適用したものであり、引張強度および伸び率のような機械的物性において実施例に比べて劣った結果が示され、移行損失とストレス移行性の面でも実施例に比べて劣った結果が示されることを確認することができる。これは、すなわち、本発明で実現される優れた機械的物性および耐移行性は、ヘキシルアルコールの異性体混合物由来の様々なアルキル基の間のバランスが適切であることから発生することを意味し、単純に炭素数が6であるアルコールを適用することで、可塑剤組成物の優れた物性が実現されるものではないことを意味する。
【0131】
また、比較例7は、イソフタル酸に、炭素数6ではなく炭素数7のアルコールを適用したものであり、実施例に比べて劣った可塑化効率、機械的物性および耐移行性を示し、これは、すなわち、ベンゼンジカルボキシレートに結合するアルキル基の炭素数が6より大きい場合には、本発明の実施例の可塑剤組成物程度の物性を実現することができず、本発明の実施例の可塑剤組成物で示される優れた効果は、ベンゼンジカルボキシレートに結合するアルキル基が炭素数6である場合に限って達成されることを意味する。
【0132】
最後に、比較例8は、酸として、イソフタル酸やテレフタル酸ではなく、フタル酸を適用した場合に関するものであるが、可塑化効率の面では、本発明の実施例の可塑剤組成物と類似する水準を示すが、機械的物性、耐移行性および炭化特性の面では、実施例に比べて劣った効果を示し、比較例8の可塑剤組成物は、フタル酸由来の成分を含むことから、上述の比較例1および2のように環境にやさしくないという問題を依然として有している。
【国際調査報告】