(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-17
(54)【発明の名称】インテイン複合体からの標的放出のための方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20231010BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K1/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519172
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2021076448
(87)【国際公開番号】W WO2022064023
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ラッモ,オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】コール,ヴァネッサ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA10
4H045BA41
4H045EA60
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、インテイン複合体を窒素含有ヘテロ芳香族誘導体と接触させることにより、および/または標的分子を取り除くために有効な媒質中でのインテイン複合体の滞留時間を増大させることにより、インテイン-Cタグ付けされた標的分子およびインテイン-Nポリペプチドを含むインテイン複合体から標的分子を放出させる方法に関する。pHを調節することは、標的放出をさらに促進する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法であって、以下のステップ:
(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、インテイン複合体を形成するために十分な第1の期間にわたり、インテイン-Nポリペプチドと接触させること;ならびに
(b)以下:
(i)インテイン複合体を、第1の期間より長い第2の期間にわたり、標的分子を取り除くために有効な媒質と接触させること;および/または
(ii)インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させること
により、インテイン複合体から標的分子を放出させること;
を含む、前記方法。
【請求項2】
インテイン複合体が、タンパク質精製、タンパク質ライゲーション、in vivoでのタンパク質タグ付け、タンパク質標識、タンパク質結晶化、タンパク質重合、インテイン誘導性レポーター経路分析、および融合タンパク質の調製からなる群より選択される、インテイン媒介型プロセスの間に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)が、ステップ(a)よりも低いpHで行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)および(b)が、ほぼ同じpHで行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ヘテロ芳香族化合物が、アゾールまたはアゾール含有化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ヘテロ芳香族化合物が、非置換または置換されたイミダゾール、ピラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、ペンタゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、フラン(1,2,5-オキサジアゾール)、1,3,4-オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール(1,2,3-チアジアゾール)、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、ヒスチジン、ピリジン、ピラジン、ピロール、ピリミジン、ピリダジン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
標的分子を精製するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法であって、以下のステップ:
(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、クロマトグラフィー樹脂上のインテイン-Nポリペプチドと、インテイン複合体を形成するような第1の流速で接触させること;ならびに
(b)第1の流速よりも遅い第2の流速で、インテイン複合体から標的分子を放出させること
を含む、前記方法。
【請求項8】
標的分子を精製するための先行するステップのいずれか1つによる方法であって、以下のステップ:
(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を含む試料を提供すること;
(b)共有結合により連結されたN末端インテインポリペプチドを含むクロマトグラフィー樹脂を含むカラムに、融合タンパク質中のインテイン-Cポリペプチドが樹脂中のインテイン-Nポリペプチドに結合してインテイン複合体を形成する条件下において、試料をロードすること、ここで、試料は、第1の流速/カラム滞留時間において、ロードされる;
(c)任意に、未結合の混入物を取り除くためにインテイン複合体を含む樹脂を洗浄すること;
(d)以下:
(i)インテイン複合体を、第1の流速よりも遅い第2の流速、もしくは第1のカラム滞留時間よりも長い第2のカラム滞留時間において、標的分子を切断するために有効な媒質と接触させること;および/または
(ii)インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させること
により、インテイン複合体から標的分子を切断すること;
(e)クロマトグラフィー樹脂を再生すること;
(f)任意に、ステップ(a)~(e)を少なくとも1回繰り返すことにより、少なくとも1つのさらなる精製サイクルを行うこと;ならびに
(g)任意に、標的分子を単離すること
を含む、前記方法。
【請求項9】
ステップ(d)が、ステップ(b)および任意のステップ(c)よりも低いpHで行われ、
好ましくは、ここで、ステップ(b)は、インテイン-Cタグ付け標的分子を、約8~約10のpH、より好ましくは約9のpHを有する生理食塩水バッファー中でロードすることを含み;およびステップ(d)は、インテイン複合体を、約6~約8のpH、より好ましくは約7のpHを有する生理食塩水バッファーと接触させることを含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(d)が、ステップ(b)および任意のステップ(c)とほぼ同じpHで行われ;
好ましくは、ここで、ステップ(b)、任意のステップ(c)およびステップ(d)は、各々、約8~約10のpHを有する生理食塩水バッファー中で行われ、より好ましくは、ここで、ステップ(b)、任意のステップ(c)およびステップ(d)は、各々、約9のpHにおいて行われる、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)、(c)(行われる場合には)、(d)および(e)の各々が、独立して、静的インキュベーションまたはカラム容積(CV)あたり0.1~120分間の滞留時間を表す定流量下において行われる、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)が、クロマトグラフィー樹脂を、インテイン-Cタグ付け標的分子を含む細胞培養上清と接触させることを含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、ステップ(c)が行われ、インテイン-Cポリペプチドから標的分子を放出させる前に、クロマトグラフィー樹脂を洗浄バッファーで洗浄することを含み;好ましくはここで、洗浄バッファーが、洗剤、塩、カオトロピック剤、好ましくは尿素またはアルギニン、またはこれらの組み合わせを含む、前記方法。
【請求項14】
インテイン-Nポリペプチドが、ヒドロキシル、チオール、エポキシド、アミノ、カルボニルエポキシドおよびカルボン酸からなる群より選択される官能基を通して、クロマトグラフィー樹脂に付着している、請求項7~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
第2の流速が、第1の流速よりも少なくとも約2倍遅く、好ましくは約2~約20倍遅く、より好ましくは約2~約10倍遅く、および最も好ましくは約5~約10倍遅く;
またはここで、第2のカラム滞留時間が、第1のカラム滞留時間よりも少なくとも約2倍長く、好ましくは約2~約20倍長く、より好ましくは約2~約10倍長く、および最も好ましくは約5~約10倍長い、
請求項7~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法であって、
ここで、標的分子放出ステップの間の接触時間の増大、ヘテロ芳香族化合物の存在および/またはpHの低下は、標的分子の総収率を、少なくとも約1%、または少なくとも約2%、または少なくとも約3%、または少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、増大させる、あるいは
ここで、標的分子放出ステップの間の接触時間の増大、ヘテロ芳香族化合物の存在および/またはpHの低下は、溶出ステップ1(E1)の間に回収される標的分子の収率を、少なくとも約1%、または少なくとも約2%、または少なくとも約3%、または少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、増大させる、
前記方法。
【請求項17】
標的分子が、タンパク質であり、好ましくはここで、試料が、粗タンパク質調製物である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法であって、インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させるステップを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は、インテイン複合体を窒素含有ヘテロ芳香族化合物と接触させることにより、および/または標的分子を取り除くために有効な媒質中でのインテイン複合体の滞留時間を増大させることにより、インテイン-Cタグ付けされた標的分子およびインテイン-Nポリペプチドを含むインテイン複合体から標的分子を放出させる方法に関する。pHを調節することは、標的放出をさらに促進する。
【背景技術】
【0002】
背景
インテインは、前駆体タンパク質からのセルフスプライシングを行うことが可能な自己触媒性タンパク質であって、ペプチド性結合を介する隣接タンパク質(エクステイン)の連結をもたらす。インテインは、それらのエクステイン配列の計画的交換を耐容する能力、ならびに2つのポリペプチド鎖から機能的タンパク質を再構成する天然に存在するスプリットインテインの存在のために、バイオテクノロジー、ケミカルバイオロジーおよび合成生物学における多様な適用のために次第に人気を得てきている。
【0003】
一適用において、インテイン技術は、標的タンパク質の精製のために用いることができる。インテイン特異的なスプライシングプロセスは、多様な変異を通して修飾することができ、これは、C末端のスプライシング能力のみ、すなわち切断をもたらす、N末端インテインフラグメントにおける単一の点変異を含む。したがって、インテイン-Nフラグメントは、クロマトグラフィー用支持体上にアフィニティーリガンドとして固定されることができ、一方、インテイン-Cは、標的分子、例えばタンパク質上で、精製タグとして役立つ。それらが所与の条件下において特異的に会合する能力により、インテイン-Cタグ付け標的分子をフィードストックから首尾よく単離することができ、一方、全ての他の不純物は、フロースルー中に留まる。その後、チオール含有化合物もしくは還元剤などの添加物、pHまたは温度によって動かされるバッファー系の変化を通して、標的タンパク質の放出が誘導される。
【0004】
しかし、インテイン-Cでタグ付け標的のキャプチャーのレベルでの中途での(premature)切断を伴うことなく、高いスプライシング速度で、タグなしの標的分子の完全な放出を達成するように、キャプチャーおよび切断反応を制御する必要性が残る。中途でのスプライシングおよび切断の活性は、亜鉛などの二価イオンの添加により、首尾よく抑制することができることが示された。その後のステップにおいて、イオンは、EDTAなどのキレート剤またはDTTなどのチオール含有化合物の添加を通して取り除かれ(Guan et el. 2013, Biotechnol Bioeng. 110(9):2471-81)、標的放出を引き起こす。あるいは、切断反応はまた、温度とpHシフトとの組み合わせを通して制御することができる(Belfort et al. US 6,933,362、Lu et. al. 2011, J Chromatogr A. 1218(18):2553-60)。しかし、今日までに報告された全ての条件および方法は、大規模クロマトグラフィー精製プロセスのためには好適ではない。したがって、当該分野において、インテインカラムからの標的放出を制御するための効率的な方法であって、標的分子の効率的な放出を提供し、中途での放出を最小限にするかまたはこれを回避するものについての、未だ満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
要旨
本開示は、インテイン複合体を、窒素含有ヘテロ芳香族化合物と接触させること、および/または標的分子を取り除くために有効な溶液中でのインテイン複合体の滞留時間を増大させることにより、インテイン-Cタグ付け標的分子およびインテイン-Nポリペプチドを含むインテイン複合体から標的分子を放出させる方法に関する。インテイン複合体を含む溶液のpHを調節することは、標的放出をさらに促進する。
【0006】
今や、驚くべきことに、共有結合した標的分子(例えばタンパク質)を含むインテイン複合体からの標的の放出が、アゾール(例えば、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール)およびアゾール含有化合物(例えばヒスチジン)などの窒素含有ヘテロ芳香族化合物の添加により制御することができることが、見出された。加えて、およびあるいは、今や、標的分子を放出させるために有効な溶液中でのインテイン複合体の滞留時間が、インテイン複合体を形成するために利用される滞留時間と比較してより長いことが、標的切断を促進することが発見された。標的除去の間の溶液のpHの低下は、標的分子の放出をさらに増強する。これらの操作により、酵素による放出反応を、制御して、より早いスプライシング/切断速度およびより高い標的放出の収率をもたらすことができる。
【0007】
したがって、一態様において、本開示は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法を提供し、該方法は、以下のステップ:(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、インテイン複合体を形成するために十分な第1の期間にわたり、インテイン-Nポリペプチドと接触させること;ならびに(b)(i)インテイン複合体を、第1の期間より長い第2の期間にわたり、標的分子を取り除くために有効な媒質と接触させること;および/または(ii)インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させることにより、インテイン複合体から標的分子を放出させること、を含む。
【0008】
別の態様において、本開示は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法を提供し、該方法は、インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させるステップを含む。
【0009】
本開示は、インテイン複合体がクロマトグラフィー樹脂上で形成され、カラム流速を低下させること(より長いカラム滞留時間をもたらすこと)、および/または窒素含有化合物(例えば、ヘテロ芳香族)を添加すること、およびさらに任意にpHを調節することにより、標的分子が切断および溶出される、インテイン媒介型タンパク質精製プロセスにより、この概念を例示する。本明細書において示されるとおり、方法は、一貫して、クロマトグラフィー用支持体上に固定されたインテイン-Nフラグメントを含む様々な精製プロセス全体にわたり、適用してもよい。
【0010】
本開示の方法は、タンパク質精製プロセスについて例示されているが、一方で、本開示の方法が、タンパク質ライゲーション、in vivoでのタンパク質タグ付け、タンパク質標識、タンパク質結晶化、タンパク質重合、インテイン誘導性レポーター経路分析、および融合タンパク質の調製を含むがこれらに限定されない、インテイン媒介型の多様なプロセスに適用可能であることは、当業者には明らかである。加えて、インテインフラグメントにおける構造的および機能的相同性に起因して、本明細書において記載される方法が、広範なインテイン-Cおよびインテイン-N複合体について適用可能であることは、当業者には明らかである。
【0011】
本開示は、例示的でありかつ限定的ではないことを意図される添付の図面の図において説明され、ここで、同様の言及は、同様または対応する部分を指すことが意図され、図面において:
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1A~Bは、異なる切断バッファーB.1~B.3を用いる3つのインテイン精製サイクルのA280の吸光度クロマトグラムのオーバーレイを表す。
図1A:13kDaのインテイン-Cタグ付け標的を用いる、R44-358132を担持するインテイン-Nリガンドプロトタイプカラム(例2-1)。
図1B:36kDaのインテイン-Cタグ付け標的を用いる、R46-358232を担持するインテイン-Nリガンドプロトタイプカラム(例2-2)。カラムに、予備精製されたインテイン-Cタグ付け標的の溶液を3回ロードした。異なる切断バッファーを用いて、標的を溶出させた:B1:標準的な切断バッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH7)を添加物なしで用いる参照サイクル。B2:切断バッファー+0.3Mのイミダゾール。B3:切断バッファー+0.6Mのイミダゾール。
【0013】
【
図2】
図2は、13kDaのインテイン-Cタグ付け標的(
図2A:例2-1);または36kDaのインテイン-Cタグ付け標的(
図2B:例2-2)を用いる、切断バッファーB.1~B.5を用いる5つのインテイン精製サイクルの間の、溶出した標的の量を表す。1:切断バッファー。B2:切断バッファー+0.3Mのイミダゾール。B3:切断バッファー+0.6Mのイミダゾール。B4:切断バッファー+0.3Mのヒスチジン。B5:切断バッファー+0.3Mのピラゾール。
【0014】
【
図3】
図3A~B:例2-1(
図3A)および2-2(
図3B)の溶出ステップ1(E1)および溶出ステップ2(E2)のタンパク質組成を示すSDS Page分析。E1:溶出画分1。E2:溶出画分2。B1:切断バッファー。B2:切断バッファー+0.3Mのイミダゾール。B3:切断バッファー+0.6Mのイミダゾール。B4:切断バッファー+0.3Mのヒスチジン。B5:切断バッファー+0.3Mのピラゾール。
【0015】
【
図4A-4B】
図4A~D:例2のマイクロ流体電気泳動系により分析された溶出画分のオーバーレイ。
図4A、4B(例2-1)は、インテイン精製サイクル1.1~1.5の間に回収された全てのE1(
図4A)およびE2(
図4B)画分の2つのオーバーレイを示す。7kDaと9kDaとの間のマークされた二重ピークは、変性LabChip(登録商標)試料バッファーの非特異的バックグラウンドノイズに起因するので純度計算から除外した。
【
図4C-4D】
図4A~D:例2のマイクロ流体電気泳動系により分析された溶出画分のオーバーレイ。
図4C、4D(例2-2)は、インテイン精製サイクル2.1~2.5の間に回収された全てのE1(
図4C)およびE2(
図4D)画分の2つのオーバーレイを示す。7kDaと9kDaとの間のマークされた二重ピークは、変性LabChip(登録商標)試料バッファーの非特異的バックグラウンドノイズに起因するので純度計算から除外した。
【
図4E】
図4A~D:例2のマイクロ流体電気泳動系により分析された溶出画分のオーバーレイ。
図4Eは、非特異的バックグラウンドノイズを示すための、タンパク質なしのLabChip(登録商標)試料バッファーを示し、研究のための例証である。
【0016】
【
図5】
図5は、例3の2つのインテイン精製サイクルの2つの異なるA280の吸光度クロマトグラムを示す。図は、キャプチャーバッファーA.1およびA.2を用いる、2つの連続するインテイン精製サイクルの溶出1(E1)および溶出2(E2)画分のA280を示す。R44-358132を担持するインテイン-Nリガンドプロトタイプカラムに、予備精製されたインテイン-Cタグ付け標的の溶液(13kDa)を2回ロードし、その後、2つの異なるバッファー(A.1、A.2)で標的を溶出させた。
【0017】
【
図6】
図6は、例3の2つのインテイン精製サイクルから回収された標的の溶出量を示す。R44-358132を担持するインテイン-Nリガンドプロトタイプカラムに、予備精製されたインテイン-Cタグ付けされた標的溶液(13kDa)を2回ロードし、溶出のための2つの異なるキャプチャーバッファー(A.1、A.2)を用いて標的を溶出させた。溶出相1(E1)、相2(E2)の標的量、および溶出の総量を、標的タンパク質のA280の吸光度および適切な消衰係数を用いて計算した。
【0018】
【
図7】
図7:例3の2つの異なる溶出バッファー(A.1、A.2)を用いる2つのインテイン精製サイクルの、溶出ステップ1(E1)および溶出ステップ2(E2)ならびにCIP画分の、タンパク質組成を示すSDS Page分析。E1:溶出画分1。E2:溶出画分2。CIP:0.15MのH
3PO
4で洗浄。A1:キャプチャーバッファーpH9。A2:キャプチャーバッファーpH9+0.3Mのイミダゾール。
【0019】
【
図8】
図8A~Bは、例3の、マイクロ流体電気泳動系により分析された、2つのインテイン精製サイクルからの全ての溶出画分の蛍光吸光度クロマトグラムのオーバーレイを示す。
図8Aは、2つの精製サイクルからの溶出(E1)画分のオーバーレイを示す。
図8Bは、2つの精製サイクルの溶出(E2)画分のオーバーレイを示す。7kDaと9kDaとの間のマークされた二重ピークは、変性LabChip(登録商標)試料バッファーの非特異的バックグラウンドノイズに起因するので、純度計算から除外した(
図4において示される)。
【0020】
【
図9A-9B】
図9A~Cは、例4における、0.2ml/分の流速(
図9A:サイクル1)および1ml/分の流速を、溶出の間の0.1ml/分と組み合わせて用いる(
図9B、9C:サイクル2~5)、合計で5つのインテイン精製サイクルの、異なるA280の吸光度クロマトグラムオーバーレイを示す。2つの切断バッファーB.1(参照、pH=7)およびB.2(参照、pH=7+0.3Mのイミダゾール)を、第1の3つの精製サイクル1、2および3のために用いた(
図9A、9B)。R46-358132を担持するインテイン-Nリガンドプロトタイプカラムに、予備精製されたインテイン-Cタグ付けされた標的溶液をロードした。13kDaの標的を用いた、異なる溶出バッファーを用いて標的を溶出させた。切断は、イミダゾールの添加(バッファーB.2およびA.2)ならびにpHシフト(バッファーB.1およびB.2)により引き起こした。
【
図9C】
図9A~Cは、例4における、0.2ml/分の流速(
図9A:サイクル1)および1ml/分の流速を、溶出の間の0.1ml/分と組み合わせて用いる(
図9B、9C:サイクル2~5)、合計で5つのインテイン精製サイクルの、異なるA280の吸光度クロマトグラムオーバーレイを示す。2つのキャプチャーバッファーA.1(pH9)およびA.2(+0.3Mのイミダゾール)を、精製サイクル4および5のために用いた(
図9C)。R46-358132を担持するインテイン-Nリガンドプロトタイプカラムに、予備精製されたインテイン-Cタグ付けされた標的溶液をロードした。13kDaの標的を用いた、異なる溶出バッファーを用いて標的を溶出させた。切断は、イミダゾールの添加(バッファーB.2およびA.2)ならびにpHシフト(バッファーB.1およびB.2)により引き起こした。
【0021】
【
図10】
図10A~Bは、例4の、切断バッファーB.1、B.2、A.1およびA.2、ならびに溶出の間に5分間(流速0.2ml/分)または10分間(流速0.1ml/分)の滞留時間を用いる、5つのインテイン精製サイクルの間に溶出した標的の量を示す。
図10A=サイクル1~3。サイクル1:切断バッファーB.1(pH7)、流速0.2ml/分。サイクル2:切断バッファーB.1(pH7)、流速0.1ml/分。サイクル3:切断バッファーB.2(pH7、0.3Mのイミダゾール)、流速0.1ml/分。
図10B=サイクル4~5。サイクル4:キャプチャーバッファーA.1(pH9)、流速0.1ml/分。サイクル5:キャプチャーバッファーA.2(pH9、0.3Mのイミダゾール)、流速0.1ml/分。
【0022】
【
図11】
図11:例4の、4つの異なる溶出バッファー(サイクル1および2):B.1、サイクル3:B.2、サイクル4:A.1、サイクル5:A.2)を用いる、2つのインテイン精製サイクルの、溶出ステップ1(E1)および溶出ステップ2(E2)ならびにCIP画分の、タンパク質組成を示すSDS Page分析。E1:溶出画分1。E2:溶出画分2。CIP:0.15MのH
3PO
4による浄化。B1:切断バッファー(pH7)。B2:切断バッファーpH7+0.3Mのイミダゾール。A1:キャプチャーバッファー(pH9)。A2:キャプチャーバッファー+0.3Mのイミダゾール。
【0023】
【
図12A-12B】
図12A~Bは、例4の、マイクロ流体電気泳動系により分析された、5つのインテイン精製サイクル(1~5)からの全ての溶出画分の蛍光吸光度クロマトグラムのオーバーレイを示す。
図12Aおよび12Bは、精製サイクル1、2および3からの溶出(E1およびE2)画分のオーバーレイを示す。7kDaと9kDaとの間のマークされた二重ピークは、変性LabChip(登録商標)試料バッファーの非特異的バックグラウンドノイズに起因するので、純度計算から除外した(
図4において示される)。
【
図12C-12D】
図12A~Bは、例4の、マイクロ流体電気泳動系により分析された、5つのインテイン精製サイクル(1~5)からの全ての溶出画分の蛍光吸光度クロマトグラムのオーバーレイを示す。
図12Cおよび12Dは、精製サイクル4および5の全ての溶出(E1およびE2)画分のオーバーレイを示す。7kDaと9kDaとの間のマークされた二重ピークは、変性LabChip(登録商標)試料バッファーの非特異的バックグラウンドノイズに起因するので、純度計算から除外した(
図4において示される)。
【0024】
【
図13】
図13:例5における、溶出ステップの間の0.1ml/分から0.2ml/分、0.5ml/分および1ml/分への流速のバリエーションを用いた、インテイン精製サイクル1、2、3および4の、異なるA280の吸光度クロマトグラムのオーバーレイ。
【0025】
【
図14】
図14:インテイン精製サイクル1、2、3および4の間に、結合し、溶出し、および再生された総標的の計算。溶出相は、0.1/0.2/0.5または1ml/分の流速で行い、一方、他のプロセスステップは、1ml/分の流速に設定した。総結合タンパク質に対する、溶出およびCIP相から回収された相対的なタンパク質量を示す。
【0026】
【
図15】
図15A~B:2つの図の切り抜きは、例6における、異なる切断バッファーB.1またはB.2、ならびに2つの高度にグリコシル化された標的分子:サイクル1および2中での19kDaのhEPO、およびサイクル3および4中での26kDaのS1-RBDを用いる、4つのインテイン精製サイクルの異なるA280の吸光度クロマトグラムオーバーレイを示す。R46-358132を担持するインテイン-Nリガンドプロトタイプカラム(サイクル1および2、
図15A)、ならびにR49-358232を担持するプロトタイプカラム(サイクル3および4、
図15B)に、インテイン-Cでタグ付けされた標的を含む清澄化された細胞ライセートをロードした。サイクル1および3においては、黒色の実線において示されるように、切断バッファーB.1(100mMのTris、200mMのNaCl、pH7)を用いて標的を溶出させた。あるいは、サイクル2および4の間には、破線で示されるとおり、イミダゾールを多く含む切断バッファーB.2を用いて標的を溶出させた。0.3Mの(B.2)イミダゾールの添加は、より高い量の標的の溶出をもたらし、これは、特に溶出相1から回収された。
【0027】
【
図16】
図16は、例6における、インテイン-Cタグ付けhEPO(サイクル1および2)およびS1-RBD(サイクル3および4)を用いて、ならびに切断バッファーB.1およびB.2を用いる、インテイン精製のサイクル1、2、3および4の間に溶出した標的量をを示す。切断バッファーが0.3Mのイミダゾールを多く含む場合、溶出したhEPOの収率は、これより12.22%高く、溶出したS1-RBD標的は、これより1.95%高かった。
【0028】
【
図17】
図17:例6における、R46-358132(サイクル1および2)およびR49-358132(サイクル3および4)を担持する2つのインテイン-Nリガンドプロトタイプカラムを用いる、4つのインテイン精製のラン(サイクル1~4)の、清澄化された細胞上清(CS)、洗浄ステップ(W)、溶出ステップ(E1、E2)およびCIPのタンパク質組成を示す、SDS Page分析。用いられたタンパク質の両方について、異なる溶出条件(サイクル1および3中ではB.1、またはサイクル2および4中ではB.2)により溶出が引き起こされた場合に、19または26kDaにおいて、タグなしの放出された標的(サイクル1および2中のhEPO、またはサイクル3および4中のS1-RBD)を観察した。タンパク質の高グリコシル化は、SDS-Page上での異なる流動挙動(running behavior)をもたらすが、予想されたよりも高いタンパク質サイズがもたらされた。タンパク質サイズを、SigmaMarker(商標)、6.5-200kDa(M1)、またはPerfect Protein Marker、10-225kDa(M2)と比較した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本開示は、インテイン複合体を窒素含有ヘテロ芳香族誘導体と接触させることにより、および/または標的分子を取り除くために有効な媒質(例えば、溶液)中でのインテイン複合体の滞留時間を増大させることにより、インテイン-Cタグ付け標的分子およびインテイン-Nポリペプチドを含むインテイン複合体から標的分子を放出させる方法に関する。インテイン複合体を含む溶液のpHを調節することは、標的放出をさらに促進する。
【0030】
(1)定義
本開示がより容易に理解され得るために、特定の用語がはじめに定義される。さらなる定義は、詳細な説明全体にわたり記載される。別段に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野における当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0031】
用語「標的分子」とは、本明細書において用いられる場合、生体分子(例えば、タンパク質)、材料または高分子の集合体であって、例えば、混合物(例えば、粗タンパク質混合物)から精製されるかまたは取り除かれるべきであるものを指す。例示的な標的分子として、例えば、抗体(例えば、モノクローナル抗体)、ワクチン、ウイルス、および他の高分子集合体、例えば生体分子および合成の構成成分を取り入れることができるウイルス様粒子およびナノ粒子を含む、組み換えペプチドおよびタンパク質が挙げられる。例として、標的分子は、タンパク質および生体分子集合体(例えば、組み換えDNA技術により生成されるもの)、例えば、ホルモン(例えば、インスリン、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、インターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター)、モノクローナル抗体(mAbs)およびmAb誘導体(例えば、二重特異性mAbs、Fabs、scFvs、サメおよびラクダ科の抗体)、足場(scaffold)由来治療剤(例えば、DARPins、アフィボディー(Affibody)、アンチカリン(anticalin)(登録商標))、治療用酵素(例えば、アルファガラクトシダーゼA、アルファ-L-イズロニダーゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、グルコセレブロシダーゼ)、トキシン(例えば、ボツリヌス、CRM 197、リシン)、組み換えワクチン(例えば、炭疽菌、ジフテリア、破傷風、肺炎、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス)、ウイルス様粒子(例えば、B型肝炎、ヒトパピローマ、インフルエンザ、パルボウイルス、ノーウォークウイルス)、ならびに工業的な酵素(例えば、パパイン、ブロメライン、トリプシン、プロテイナーゼK、BENZONASE(登録商標)酵素、DENERASE(商標)酵素、尿素、ペプシンなど)、診断用試薬(例えば、グルコースおよびラクトースデヒドロゲナーゼ、DNAポリメラーゼ、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、制限酵素、ハイブリドーマ由来抗体など)、ならびにウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、1型単純ヘルペスウイルスベクター(HSV-1)など)などを含んでもよい。
【0032】
用語「融合タンパク質」とは、本明細書において用いられる場合、天然に存在するか、合成、半合成または組み換えの、単一のタンパク質分子であって、ペプチド結合により連結された2つ以上の異種性ポリペプチドの全てまたは部分を含むものを指す。
【0033】
用語「ペプチド」、「ペプチドの」とは、本明細書において用いられる場合、長さが2アミノ酸より長いペプチドおよびタンパク質であって、また非アミノ酸分子を組み入れてもよいものを指す。
用語「ポリペプチド」とは、アミノ酸のポリマーを指し、特定の長さを指すものではない;したがって、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質は、ポリペプチドの定義のうちに含まれる。
【0034】
用語「インテイン」とは、本明細書において用いられる場合、天然から単離されたか、または組み換えDNA技術を通して作製された、自己触媒活性を有するタンパク質を指す。インテインは、より大きな分子が翻訳された後にそれから切り出されることができる内部の配列またはセグメントを含み、残りのセグメント(「エクステイン」)は、再連結して新たなタンパク質を形成する。
用語「スプリットインテイン」とは、本明細書において用いられる場合、天然のものから単離されたか、または組み換えDNA技術を通して作製されたタンパク質であって、以下の特性を有するものを指す:(1)タンパク質は、高いアフィニティーおよび選択性により相互作用する二つの半分において生じる;(2)二つの半分は、触媒活性のために必要とされる全てのインテイン配列を含まなければならず、また、付け加えられた非インテイン-Nペプチド配列を含んでもよい;(3)タンパク質は、2つの半分が密接に会合する場合のみ、酵素活性を有する;および(4)酵素活性は、インテイン配列を非インテイン-Nペプチド配列から分離するか、または非インテイン-Nペプチド配列を連続した直鎖状または環状のタンパク質へとライゲーションするために役立つ、部位選択的なペプチドの切断またはライゲーションである。
【0035】
用語「相補的インテイン」は、本明細書において、スプリットインテイン対のインテイン-Nおよびインテイン-Cの部分を指すために用いられる。
用語「インテイン-N」とは、本明細書において用いられる場合、単一のインテインポリペプチドのN末端部分に対して相同性を有するインテインポリペプチドであって、相補的インテイン-Cと会合して活性なインテイン酵素を形成するものを指す。
【0036】
用語「インテイン-C」とは、本明細書において用いられる場合、単一のインテインポリペプチドのC末端部分に対して相同性を有するインテインポリペプチドであって、相補的インテイン-Nと会合して活性なインテイン酵素を形成するものを指す。
用語「エクステイン」とは、本明細書において用いられる場合、天然においてN-およびインテイン-Cに融合するN-およびC末端ペプチド配列であって、スプリットインテインの酵素作用を通して操作される(例えば、切断されるかまたはライゲーションされる)ものを指す。
【0037】
用語「クロマトグラフィー」とは、本明細書において用いられる場合、目的の標的分子を混合物中の他の分子から分離して、それが単離されることを可能にする、動的分離技術を指す。典型的には、クロマトグラフィー法において、移動相(液体または気体)は、目的の標的分子を含む試料を、固定相(通常は固体)の媒体を越えてまたはこれを通して輸送する。固定相に対する分配またはアフィニティーの差異は、異なる分子を分離し、一方、移動相は、異なる分子を異なる時間において運び出す。
【0038】
用語「アフィニティークロマトグラフィー」とは、本明細書において用いられる場合、分離されるべき標的分子が、標的分子と特異的に相互作用する分子(例えば、インテイン-Nおよびインテイン-N可溶化因子を含む本発明によるアフィニティークロマトグラフィーリガンド)とのその相互作用により単離される、クロマトグラフィーの様式を指す。一態様において、アフィニティークロマトグラフィーは、本明細書において記載されるようなインテイン-N-ベースのリガンドをその上に担持する固体支持体への、標的分子(例えば、タンパク質)を含む試料の付加を含む。
【0039】
(2)発明のプロセスの説明
本発明は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法に関する。方法は、以下のステップ:
(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、インテイン複合体を形成するために十分な第1の期間にわたり、インテイン-Nポリペプチドと接触させること;ならびに
(b)以下:
(i)インテイン複合体を、第1の期間より長い第2の期間にわたり、標的分子を取り除くために有効な媒質と接触させること;および/または
(ii)インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させること
により、インテイン複合体から標的分子を放出させること
を含む。
【0040】
本開示の方法は、インテイン媒介型の多様なプロセスに対して適用可能である。いくつかの態様において、インテイン媒介型プロセスは、タンパク質精製である。他の態様において、インテイン媒介型プロセスは、タンパク質ライゲーションである。他の態様において、インテイン媒介型プロセスは、in vivoでのタンパク質タグ付けである。他の態様において、インテイン媒介型プロセスは、タンパク質標識である。他の態様において、インテイン媒介型プロセスは、タンパク質結晶化である。他の態様において、インテイン媒介型プロセスは、タンパク質重合である。他の態様において、インテイン媒介型プロセスは、インテイン誘導性レポーター経路分析である。他の態様において、インテイン媒介型プロセスは、融合タンパク質の調製のためのプロセスである。
【0041】
本開示の方法は、多様なインテインでタグ付けされた分子、例えばインテイン-Cでタグ付けされた分子に対して適用可能である。一態様において、インテイン-Cタグ付けされた分子は。タンパク質である。一態様において、インテイン-Cタグ付けされた分子は、ポリペプチドである。別の態様において、インテイン-Cタグ付けされた分子は、グリコシル化されたタンパク質である。別の態様において、インテイン-Cタグ付けされた分子は、高度にグリコシル化されたタンパク質である。
【0042】
本明細書において用いられる場合、用語「グリコシル化」とは、糖部分(例えば、単糖、二糖またはオリゴ糖)がタンパク質に付着されて、グリコシド結合または糖ペプチド結合を形成する、翻訳後修飾を意味する。糖ペプチド結合は、糖-ペプチド結合の性質および付着する糖類に基づいて、異なる群に分類することができる。グリコシル化の例として、以下が挙げられる:(a)アスパラギンのアミノ基への糖の結合を含む、N結合型グリコシル化;(b)セリンまたはスレオニンのヒドロキシル基への糖の結合を含む、O結合型グリコシル化;(c)トリプトファンのインドール環への糖の結合を含む、C結合型グリコシル化;および(d)糖部分を介するタンパク質およびリン脂質の結合を含む、グリピエーション(glypiation)。本開示の方法において用いられるグリコシル化されたタンパク質は、これらのグリコシル化パターンのうちのいずれか1つ以上を含んでもよい。
【0043】
本明細書において用いられる場合、用語「高度にグリコシル化されたタンパク質」とは、少なくとも約10%グリコシル化されたアミノ酸を含む、タンパク質を指す。いくつかの態様において、少なくとも約20%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約25%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約30%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約35%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約40%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約45%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約50%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約55%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約60%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約65%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約70%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約75%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約80%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約85%グリコシル化されたアミノ酸、少なくとも約90%グリコシル化されたアミノ酸、または少なくとも約95%グリコシル化されたアミノ酸を含む、タンパク質。
【0044】
いくつかの態様において、インテイン-Cタグ付けされた分子は、インテイン-Cタグ付けタンパク質である。いくつかの態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約1kDa~約100kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約10kDa~約100kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約10kDa~約75kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約10kDa~約50kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約10kDa~約40kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約20kDa~約50kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約20kDa~約40kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約10kDa~約15kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約10kDa~約20kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約10kDa~約25kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約10kDa~約30kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約10kDa~約35kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約20kDa~約40kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約25kDa~約40kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約30kDa~約40kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み約35kDa~約40kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを含み、約10kDa、約11kDa、約12kDa、約13kDa、約14kDa、約15kDa、約16kDa、約17kDa、約18,kDa、約19kDa、約20kDa、約21kDa、約22kDa、約23kDa、約24kDa、約25kDa、約26kDa、約27kDa、約28,kDa、約29kDa、約30kDa、約31kDa、約32kDa、約33kDa、約34kDa、約35kDa、約36kDa、約37kDa、約38,kDa、約39kDa、約40kDa、約41kDa、約42kDa、約43kDa、約44kDa、約45kDa、約46kDa、約47kDa、約48,kDa、約49kDa、約50kDaの分子量(MW)を有する。
【0045】
いくつかの態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約1kDa~約100kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約10kDa~約100kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約10kDa~約75kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約10kDa~約50kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約10kDa~約40kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約20kDa~約50kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約20kDa~約40kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約10kDa~約15kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約10kDa~約20kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約10kDa~約25kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約10kDa~約30kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約10kDa~約35kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約20kDa~約40kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約25kDa~約40kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約30kDa~約40kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて約35kDa~約40kDaの分子量(MW)を有する。他の態様において、インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Cタグを除いて、約10kDa、約11kDa、約12kDa、約13kDa、約14kDa、約15kDa、約16kDa、約17kDa、約18kDa、約19kDa、約20kDa、約21kDa、約22kDa、約23kDa、約24kDa、約25kDa、約26kDa、約27kDa、約28,kDa、約29kDa、約30kDa、約31kDa、約32kDa、約33kDa、約34kDa、約35kDa、約36kDa、約37kDa、約38,kDa、約39kDa、約40kDa、約41kDa、約42kDa、約43kDa、約44kDa、約45kDa、約46kDa、約47kDa、約48,kDa、約49kDa、約50kDaの分子量(MW)を有する。
【0046】
N-ヘテロ芳香族添加物
一側面において、驚くべきことに、共有結合した標的分子(例えばタンパク質)を含むインテイン複合体からの標的の放出を、アゾール(例えば、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール)およびアゾール含有化合物(例えば、ヒスチジン)などの窒素含有ヘテロ芳香族化合物の添加により、制御することができることが見出された。
【0047】
本明細書において企図されるように、今や、特定の触媒性添加物、すなわち、窒素含有ヘテロ芳香族化合物の添加は、インテイン複合体からの標的の放出を促進および触媒することが示された。かかる触媒性添加物により、酵素的なインテイン反応を制御および触媒することが可能であり、これは、より速いスプライシング/切断速度およびより高い標的放出の収率をもたらす。限定するためではなく、例として、この挙動は、広範な添加物およびクロマトグラフィー用支持体上に固定されたインテイン-Nフラグメントを通して、一貫することが見出された。
【0048】
したがって、一態様において、本発明は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法に関し、該方法は、インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させるステップを含む。
【0049】
別の態様において、本発明は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法に関し、該方法は、以下のステップ:(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、インテイン複合体を形成するために十分な第1の期間にわたり、インテイン-Nポリペプチドと接触させること;ならびに(b)インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させることにより、インテイン複合体から標的分子を放出させること、を含む。任意に、放出ステップ(b)は、第1の期間より長い第2の期間にわたり、行われる。
【0050】
いくつかの態様において、インテイン複合体は、タンパク質精製、タンパク質ライゲーション、in vivoでのタンパク質タグ付け、タンパク質標識、タンパク質結晶化、タンパク質重合、インテイン誘導性レポーター経路分析、および融合タンパク質の調製からなる群より選択される、インテイン媒介型プロセスの間に形成される。
【0051】
他の態様において、標的分子を放出させるステップは、媒質のpHを低下させることをさらに含む。例えば、プロセスがタンパク質精製を含む場合、標的分子の溶出を促進するために、ローディング溶液のpHを低下させる。
【0052】
いくつかの態様において、ヘテロ芳香族化合物は、アゾールまたはアゾール含有化合物である。
他の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、非置換または置換されたイミダゾール、ピラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、ペンタゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、フラン(1,2,5-オキサジアゾール)、1,3,4-オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール(1,2,3-チアジアゾール)、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、ヒスチジン、ピリジン、ピラジン、ピロール、ピリミジン、ピリダジン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0053】
いくつかの態様において、本開示の方法は、標的分子を精製するために用いられる。この態様によれば、方法は、以下のステップ:
(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、クロマトグラフィー樹脂上のインテイン-Nポリペプチドと、インテイン複合体を形成するような第1の流速で接触させること;ならびに
(b)少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物の存在下において、インテイン複合体から標的分子を放出させること
を含む。任意に、ステップ(b)は、第1の流速よりも遅い第2の流速において行われる。
【0054】
いくつかの態様において、方法は、以下のステップ:
(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を含む試料を提供すること;
(b)共有結合により連結されたN末端インテインポリペプチドを含むクロマトグラフィー樹脂を含むカラムに、融合タンパク質中のインテイン-Cポリペプチドが樹脂中のインテイン-Nポリペプチドに結合してインテイン複合体を形成する条件下において、試料をロードすること、ここで、試料は、第1の流速/カラム滞留時間において、ロードされる;
(c)任意に、未結合の混入物を取り除くためにインテイン複合体を含む樹脂を洗浄すること;
(d)インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させることにより、インテイン複合体から標的分子を切断すること;任意に、ここで、ステップ(d)は、第1の流速よりも遅い第2の流速、または第1のカラム滞留時間よりも長い第2のカラム滞留時間において、行われる;
(e)クロマトグラフィー樹脂を再生すること;
(f)任意に、ステップ(a)~(e)を少なくとも1回繰り返すことにより、少なくとも1つのさらなる精製サイクルを行うこと;ならびに
(g)任意に、標的分子を単離すること
を含む。
【0055】
いくつかの態様において、ステップ(d)は、ステップ(b)および任意のステップ(c)よりも低いpHで行われる。好ましくは、ステップ(b)は、インテイン-Cタグ付け標的分子を、約8~約10のpH、より好ましくは約9のpHを有する生理食塩水バッファー中でロードすることを含み;およびステップ(d)は、インテイン複合体を、約6~約8のpH、より好ましくは約7のpHを有する生理食塩水バッファーと接触させることを含む。
【0056】
いくつかの態様において、ステップ(d)は、ステップ(b)および任意のステップ(c)とほぼ同じpHで行われる。好ましくは、ステップ(b)、任意のステップ(c)およびステップ(d)は、各々、約8~約10のpHを有する生理食塩水バッファー中で行われ、より好ましくは、ステップ(b)、任意のステップ(c)およびステップ(d)は、各々、約9のpHにおいて行われる。
【0057】
いくつかの態様において、ステップ(b)、(c)(行われる場合には)、(d)および(e)の各々は、独立して、静的インキュベーションまたはカラム容積(CV)あたり0.1~120分間の滞留時間を表す定流量下において行われる。
【0058】
いくつかの態様において、ステップ(b)は、クロマトグラフィー樹脂を、インテイン-Cタグ付け標的分子を含む細胞培養上清と接触させることを含む。
いくつかの態様において、ステップ(c)が行われ、これは、インテイン-Cポリペプチドから標的分子を放出させる前に、クロマトグラフィー樹脂を洗浄バッファーで洗浄することを含み;好ましくは、ここで、洗浄バッファーは、洗剤、塩、カオトロピック試薬、好ましくは尿素またはアルギニン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0059】
いくつかの態様において、インテイン-Nポリペプチドは、ヒドロキシル、チオール、エポキシド、アミノ、カルボニルエポキシドおよびカルボン酸からなる群より選択される官能基を通して、クロマトグラフィー樹脂に付着している.
【0060】
いくつかの態様において、第2の流速は、実行される場合には、第1の流速よりも少なくとも約2倍遅く、好ましくは約2~約20倍遅く、より好ましくは約2~約10倍遅く、および最も好ましくは約5~約10倍遅い。他の態様において、第2のカラム滞留時間は、実行される場合には、第1のカラム滞留時間よりも少なくとも約2倍長く、好ましくは約2~約20倍長く、より好ましくは約2~約10倍長く、および最も好ましくは約5~約10倍長い。
【0061】
いくつかの態様において、標的分子放出ステップの間の接触時間の増大、ヘテロ芳香族化合物の存在および/またはpHの低下は、標的分子の収率を、少なくとも約1%、または少なくとも約2%、または少なくとも約3%、または少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、増大させる。他の態様において、標的分子放出ステップの間の接触時間の増大、ヘテロ芳香族化合物の存在および/またはpHの低下は、溶出ステップ1(E1)の間に回収される標的分子の収率を、少なくとも約1%、または少なくとも約2%、または少なくとも約3%、または少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、増大させる。
【0062】
本明細書において示されるとおり、いくつかの態様において、ヘテロ芳香族化合物の存在は、標的分子の全体的な収率を、少なくとも約1%、または少なくとも約2%、または少なくとも約3%、または少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、増大させる。他の態様において、ヘテロ芳香族化合物の存在は、溶出ステップ1(E1)の間に回収される標的分子の収率を、少なくとも約1%、または少なくとも約2%、または少なくとも約3%、または少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、増大させる。
【0063】
本明細書において示されるとおり、いくつかの態様において、pHシフト(すなわち、pHの低下)は、標的分子の全体的な収率を、少なくとも約1%、または少なくとも約2%、または少なくとも約3%、または少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%。他の態様において、pHシフト(すなわち、pHの低下)は、溶出ステップ1(E1)の間に回収される標的分子の収率を、少なくとも約1%、または少なくとも約2%、または少なくとも約3%、または少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、増大させる。
【0064】
本明細書において示されるとおり、いくつかの態様において、接触時間の増大は、標的分子の全体的な収率を、少なくとも約1%、または少なくとも約2%、または少なくとも約3%、または少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、増大させる。他の態様において、接触時間の増大は、溶出ステップ1(E1)の間に回収される標的分子の収率を、少なくとも約1%、または少なくとも約2%、または少なくとも約3%、または少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、増大させる。
【0065】
いくつかの態様において、標的分子は、タンパク質である。好ましくは、試料は、粗タンパク質調製物である。
本明細書において用いられる場合、用語「少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物」または「少なくとも1つの窒素原子を含むヘテロアリール」または「N含有ヘテロ芳香族化合物」は、本明細書において交換可能に用いられ、少なくとも1つの環窒素(N)原子、ならびに任意に、さらなる窒素、硫黄および酸素原子を含む、ヘテロ芳香族系を含む化合物を意味する。ヘテロアリール環は、好ましくは、5つ以上の環原子を含む。ヘテロアリール基は、単環、二環、三環などであってよい。またこの定義において含まれるのは、ベンゾヘテロ芳香族環である。本開示はまた、窒素含有ヘテロアリールのN-オキシドを企図する。本開示はまた、窒素含有ヘテロアリールの塩を企図する。
【0066】
N含有ヘテロ芳香族化合物の非限定的な例として、非置換または置換されたイミダゾール、ピラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、ペンタゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、フラン(1,2,5-オキサジアゾール)、1,3,4-オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール(1,2,3-チアジアゾール)、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、ヒスチジン、ピリジン、ピラジン、ピロール、ピリミジン、ピリダジン、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。ヘテロアリール基は、非置換であっても、利用可能な原子を通して、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、チオ、およびチオアルキルを含むがこれらに限定されない1つ以上の基で、置換されていてもよい。
【0067】
一態様において、窒素含有ヘテロ芳香族化合物は、アゾールであるか、またはアゾール部分を組み込む。「アゾール」は、本明細書において用いられる場合、窒素原子および少なくとも1つの他の非炭素原子(すなわち、窒素、硫黄または酸素)を環の部分として含む、5員のヘテロ環式化合物を意味する。一態様において、化合物は、アゾールである。別の態様において、化合物は、アゾール誘導体、すなわち、アゾリル部分を組み込む化合物である。一態様において、アゾールは、イミダゾールである。別の態様において、アゾールは、ピラゾールである。別の態様において、アゾールは、ヒスチジン、すなわち、イミダゾール側鎖を含むアミノ酸である。
【0068】
好ましくは、添加物/ヘテロ芳香族化合物は、インテイン複合体からの標的分子放出の速度/収率を促進するかまたはこれを増大させるために有効な濃度において、提供される。クロマトグラフィーによる分離技術に適用される場合、添加物/ヘテロ芳香族化合物は、好ましくは、溶液中に溶解され、クロマトグラフィー用支持体からのインテイン複合体から標的分子を溶出させるために十分な濃度および速度において、クロマトグラフィー系を通過する。
【0069】
一態様において、ヘテロ芳香族化合物ヘテロ芳香族化合物は、約1mM~約1Mの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約5mM~約1Mの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約10mM~約1Mの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約10mM~約1Mの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約100mM~約1Mの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約100mM~約750mMの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約100mM~約600mMの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約100mMの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約200mMの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約300mMの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約400mMの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約500mMの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約600mMの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約700mMの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約750mMの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約800mMの濃度で添加される。別の態様において、ヘテロ芳香族化合物は、約900mMの濃度で添加される。 添加物の特定濃度は、反応、標的分子の性質およびカラム使用の性質に依存して変化し得ることは、当業者には明らかである。適切な濃度は、当業者により決定され得る。
【0070】
接触時間の調節
別の側面において、今や、複合体を形成するために利用される滞留時間と比較した、標的分子を放出させるために有効な媒質(例えば、溶液、懸濁液)中でのインテイン複合体の滞留時間の延長は、標的切断を促進することが発見された。標的除去の間の媒質のpHの低下は、標的分子の放出をさらに増強する。これらの操作により、酵素による放出反応を制御することができ、これは、より速いスプライシング/切断速度およびより高い標的放出の収率をもたらす。
【0071】
したがって、一態様において、本発明は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法に関し、該方法は、以下のステップ:(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、インテイン複合体を形成するために十分な第1の期間にわたり、インテイン-Nポリペプチドと接触させること;ならびに(b)インテイン複合体を、第1の期間より長い第2の期間にわたり、標的分子を取り除くために有効な媒質と接触させることにより、インテイン複合体から標的分子を放出させることを含む。任意に、ステップ(b)は、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物の存在下において、行われる。
【0072】
いくつかの態様において、インテイン複合体は、タンパク質精製、タンパク質ライゲーション、in vivoでのタンパク質タグ付け、タンパク質標識、タンパク質結晶化、タンパク質重合、インテイン誘導性レポーター経路分析、および融合タンパク質の調製からなる群より選択される、インテイン媒介型プロセスの間に形成される。
【0073】
他の態様において、標的分子を放出させるステップは、媒質のpHを低下させることをさらに含む。例えば、プロセスがタンパク質精製を含む場合、標的分子の溶出を促進するために、ローディング溶液のpHを低下させる。
【0074】
いくつかの態様において、任意のヘテロ芳香族化合物は、アゾールまたはアゾール含有化合物である。 他の態様において、任意のヘテロ芳香族化合物は、非置換または置換されたイミダゾール、ピラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、ペンタゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、フラン(1,2,5-オキサジアゾール)、1,3,4-オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール(1,2,3-チアジアゾール)、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、ヒスチジン、ピリジン、ピラジン、ピロール、ピリミジン、ピリダジン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0075】
いくつかの態様において、本開示の方法は、標的分子を精製するために用いられる。この態様によれば、方法は、以下のステップを含む:
(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、クロマトグラフィー樹脂上のインテイン-Nポリペプチドと、インテイン複合体を形成するような第1の流速で接触させること;ならびに
(b)インテイン複合体を、第1の期間より長い第2の期間にわたり、標的分子を取り除くために有効な媒質と接触させることにより、インテイン複合体から標的分子を放出させること。任意に、ステップ(b)は、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物の存在下において行われる。
【0076】
いくつかの態様において、方法は、以下のステップを含む:
(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を含む試料を提供すること;
(b)共有結合により連結されたN末端インテインポリペプチドを含むクロマトグラフィー樹脂を含むカラムに、融合タンパク質中のインテイン-Cポリペプチドが樹脂中のインテイン-Nポリペプチドに結合してインテイン複合体を形成する条件下において、試料をロードすること、ここで、試料は、第1の流速/カラム滞留時間において、ロードされる;
(c)任意に、未結合の混入物を取り除くためにインテイン複合体を含む樹脂を洗浄すること;
(d)インテイン複合体を、第1の流速よりも遅い第2の流速、または第1のカラム滞留時間よりも長い第2のカラム滞留時間において、標的分子を切断するために有効な媒質と接触させることにより、インテイン複合体から標的分子を切断すること、ここで、ステップ(d)は、任意に、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物の存在下において行われる;
(e)クロマトグラフィー樹脂を再生すること;
(f)任意に、ステップ(a)~(e)を少なくとも1回繰り返すことにより、少なくとも1つのさらなる精製サイクルを行うこと;ならびに
(g)任意に、標的分子を単離すること。
【0077】
いくつかの態様において、ステップ(d)は、ステップ(b)および任意のステップ(c)よりも低いpHで行われる。好ましくは、ステップ(b)は、インテイン-Cタグ付け標的分子を、約8~約10のpH、より好ましくは約9のpHを有する生理食塩水バッファー中でロードすることを含み;およびステップ(d)は、インテイン複合体を、約6~約8のpH、より好ましくは約7のpHを有する生理食塩水バッファーと接触させることを含む。
【0078】
いくつかの態様において、ステップ(d)は、ステップ(b)および任意のステップ(c)とほぼ同じpHで行われる。好ましくは、ステップ(b)、任意のステップ(c)およびステップ(d)は、各々、約8~約10のpHを有する生理食塩水バッファー中で行われ、より好ましくは、ステップ(b)、任意のステップ(c)およびステップ(d)は、各々、約9のpHにおいて行われる。
【0079】
いくつかの態様において、ステップ(b)、(c)(行われる場合には)、(d)および(e)の各々は、独立して、静的インキュベーションまたはカラム容積(CV)あたり0.1~120分間の滞留時間を表す定流量下において行われる。
【0080】
いくつかの態様において、ステップ(b)は、クロマトグラフィー樹脂を、インテイン-Cタグ付け標的分子を含む細胞培養上清と接触させることを含む。
いくつかの態様において、ステップ(c)が行われ、これは、インテイン-Cポリペプチドから標的分子を放出させる前に、クロマトグラフィー樹脂を洗浄バッファーで洗浄することを含み;好ましくは、ここで、洗浄バッファーは、洗剤、塩、カオトロピック試薬、好ましくは尿素またはアルギニン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0081】
いくつかの態様において、インテイン-Nポリペプチドは、ヒドロキシル、チオール、エポキシド、アミノ、カルボニルエポキシドおよびカルボン酸からなる群より選択される官能基を通して、クロマトグラフィー樹脂に付着している.
【0082】
いくつかの態様において、第2の流速は、第1の流速よりも少なくとも約2倍遅く、好ましくは約2~約20倍遅く、より好ましくは約2~約10倍遅く、および最も好ましくは約5~約10倍遅い。他の態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも少なくとも約2倍長く、好ましくは約2~約20倍長く、より好ましくは約2~約10倍長く、および最も好ましくは約5~約10倍長い。
【0083】
いくつかの態様において、標的分子放出ステップの間の接触時間の増大、ヘテロ芳香族化合物の存在および/またはpHの低下は、標的分子の収率を、少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、およびより好ましくは少なくとも約20%、およびさらにより好ましくは少なくとも約50%、増大させる。
【0084】
本開示の方法が、カラム上でのタンパク質精製に適用される場合、カラムの流速を変更すること、および/または溶出溶液の滞留時間を操作することにより、接触時間を調節することができる。
【0085】
タンパク質精製
1つの特定の態様において、インテイン複合体は、タンパク質精製プロセスの部分として形成される。この態様によれば、プロセスは、好ましくは固体支持体に付着した、クロマトグラフィー樹脂上に共有結合したインテイン-Nリガンドを利用して、標的生物学的分子を精製するための、アフィニティークロマトグラフィーを含む。インテイン-Cタグ付けされたタンパク質は、インテイン-Nフラグメントとインテイン-Cフラグメントとの間で安定な複合体を形成するために十分な条件下において、カラムを通過する。プロセス混入物を除去するための任意の洗浄ステップの後で、標的のタグなしでの放出は、流速/カラム滞留時間の変更、および/または少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物(例えば、アゾールまたはアゾール含有化合物)の添加、および/またはpHの変更により、引き起こされる。最後に、インテイン-Nとインテイン-Cとの複合体を破壊して、インテインN-樹脂を再生することにより、タンパク質が再生される。任意に、プロセスは、必要に応じて複数のサイクルにおいて繰り返される。
【0086】
この態様によれば、共有結合によりタグ付けされた標的分子を含むインテイン複合体は、インテイン-Cタグ付け標的分子を、その上にインテイン-Nポリペプチドが固定されたクロマトグラフィー樹脂を含むカラム上にロードすることにより、形成される。反応は、インテイン-Nポリペプチドがインテイン-Cタグ付けされた分子と反応してインテイン複合体を形成することを可能にするために十分なカラム流速において、作動される。標的分子は、次いで、インテイン複合体から切断され、放出され、カラムから溶出する。予想外なことに、溶出溶液の流速を調節すること(すなわち、遅くすること)は、標的分子の切断および放出を促進することが見出された。
【0087】
したがって、一態様において、本開示は、さらに、標的分子を精製するための方法に関し、該方法は、以下のステップ:(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、クロマトグラフィー樹脂上のインテイン-Nポリペプチドと、インテイン複合体を形成するような第1の流速で接触させること;ならびに(b)第1の流速よりも遅い第2の流速で、インテイン複合体から標的分子を放出させること、を含む。
【0088】
一態様において、第2の流速は、第1の流速よりも、少なくとも約2倍遅い。別の態様において、第2の流速は、約2~約20倍遅い。別の態様において、第2の流速は、第1の流速よりも、約2~約10倍遅い。別の態様において、第2の流速は、第1の流速よりも、約5~約10倍遅い。別の態様において、第2の流速は、第1の流速よりも、約2~5倍遅い。別の態様において、第2の流速は、第1の流速よりも、約5~8倍遅い。別の態様において、第2の流速は、第1の流速よりも、約8~10倍遅い。別の態様において、第2の流速は、第1の流速よりも、約10~12倍遅い。別の態様において、第2の流速は、第1の流速よりも、約12~14倍遅い。別の態様において、第2の流速は、第1の流速よりも約14~16倍遅い。別の態様において、第2の流速は、第1の流速よりも、約16~18倍遅い。別の態様において、第2の流速は、第1の流速よりも、約18~20倍遅い。第1の流速と第2の流速との間の比は、カラムの性質、用いられる標的分子および他の反応条件に依存して、当業者により決定され得ることは、当業者には明らかである。
【0089】
例として、第1の流速は、少なくとも約1ml/分であり、第2の流速は、約0.1ml/分~約0.9ml/分である。別の態様において、第1の流速は、少なくとも約1ml/分であり、第2の流速は、約0.1ml/分~約0.5ml/分である。別の態様において、第1の流速は、少なくとも約1ml/分であり、第2の流速は、約0.1ml/分~0.2ml/分である。
【0090】
さらに、カラムの流速は、カラム滞留時間、すなわち、溶出溶液がカラム容積(CV)を通過するために要する時間に反比例することは、当業者には明らかである。流速が速いほど、カラム滞留時間は短く、逆もまた真である。したがって、本開示の代替的な側面によれば、溶出溶液のカラム滞留時間を増大させることは、標的分子の切断および放出を促進する。
【0091】
したがって、一態様において、本開示は、さらに、標的分子を精製するための方法に関し、該方法は、以下のステップ:(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、インテイン複合体を形成するような第1のカラム滞留時間において、クロマトグラフィー樹脂上のインテイン-Nポリペプチドと接触させること;ならびに(b)第1のカラム滞留時間より長いカラム滞留時間において、インテイン複合体から標的分子を放出させること、を含む。
【0092】
一態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、少なくとも約2倍長い。別の態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、約2~約20倍長い。別の態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、約2~約10倍長い。別の態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、約5~約10倍長い。一態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、少なくとも約4倍長い。一態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、少なくとも約6倍長い。一態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、少なくとも約8倍長い。一態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、少なくとも約10倍長い。一態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、少なくとも約12倍長い。一態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、少なくとも約14倍長い。一態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、少なくとも約16倍長い。一態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、少なくとも約18倍長い。一態様において、第2のカラム滞留時間は、第1のカラム滞留時間よりも、少なくとも約20倍長い。
【0093】
例として、第1のカラム滞留時間は、カラム容積(CV)あたり、約0.1~約10分間、またはそれより短くてもよく、第2の滞留時間は、カラム容積(CV)あたり、約2分間~約100分間、またはそれより長くてもよい。いくつかの態様において、第1のカラム滞留時間は、カラム容積(CV)あたり、約0.1~約5分間、またはそれより短くてもよく、第2の滞留時間は、カラム容積(CV)あたり、約2分間~約100分間、またはそれより長くてもよい。いくつかの態様において、第1のカラム滞留時間は、カラム容積(CV)あたり、約0.1~約1分間、またはそれより短くてもよく、第2の滞留時間は、カラム容積(CV)あたり、約2分間~約100分間、またはそれより長くてもよい。いくつかの態様において、第1のカラム滞留時間は、カラム容積(CV)あたり、約0.1~約1分間、またはそれより短くてもよく、第2の滞留時間は、カラム容積(CV)あたり、約2分間~約10分間、またはそれより長くてもよい。いくつかの態様において、第1のカラム滞留時間は、約0.1~約1分間であってよい、またはそれより短くてもよく、第2の滞留時間は、カラム容積(CV)あたり、約2分間~約10分間、またはそれより長くてもよい。いくつかの態様において、第1のカラム滞留時間は、カラム容積(CV)あたり、約0.1~約1分間、またはそれより短くてもよく、第2の滞留時間は、カラム容積(CV)あたり、約5分間~約10分間、またはそれより長くてもよい。
【0094】
第1のカラム滞留時間と第2のカラム滞留時間との間の比は、カラムの性質、用いられる標的分子および他の反応条件に依存して、当業者により決定され得ることは、当業者には明らかである。流速/カラム滞留時間の調節は、添加物、すなわち、N含有ヘテロ芳香族化合物の添加とは独立して、またはこれと組み合わせて、適用することができる。
【0095】
pHの調節
他の側面において、インテイン-複合体形成ステップと、標的分子放出/溶出ステップとの間のpHの調節は、標的放出をさらに促進することが見出された。したがって、流速/カラム滞留時間の調節および/またはN-ヘテロ芳香族化合物の添加に関する上記の方法のうちのいずれか1つ以上は、さらに、キャプチャーステップ(すなわち、インテイン複合体形成)と標的溶出/放出ステップとの間で、pHを調節することと組み合わせて行われてもよい。いくつかの態様において、標的溶出ステップは、インテイン形成ステップよりも低いpHにおいて行われる。他の態様において、インテイン複合体形成ステップと標的溶出ステップとは、ほぼ同じpHで行われる。インテイン複合体-形成のために用いられるバッファーは、本明細書において、キャプチャーバッファーとして言及される。標的分子溶出のために用いられるバッファーは、本明細書において、切断バッファーとして言及される。
【0096】
いくつかの態様において、標的溶出ステップは、インテイン形成ステップよりも低いpHにおいて行われる。かかる態様によれば、インテイン複合体-形成ステップは、約8~約10のpHを有する生理食塩水キャプチャーバッファー中で、インテイン-Cタグ付け標的分子をロードすることを含んでもよい。他の態様において、インテイン複合体-形成ステップは、約9のpHを有する生理食塩水キャプチャーバッファー中でインテイン-Cタグ付け標的分子をロードすることを含む。いくつかの態様において、標的分子溶出ステップは、約6~約8のpHを有する生理食塩水切断バッファー中で標的分子を放出および溶出させることを含んでもよい。他の態様において、標的分子溶出ステップは、約7のpHを有する生理食塩水切断バッファー中で標的分子を放出および溶出させることを含んでもよい。代替的な態様において、インテイン複合体-形成ステップは、約8~約10のpHを有する生理食塩水キャプチャーバッファー中で、インテイン-Cタグ付け標的分子をロードすることを含んでもよく、標的分子溶出ステップは、約6~約8のpHを有する生理食塩水切断バッファー中で標的分子を放出および溶出させることを含む。他の態様において、インテイン複合体-形成ステップは、約9のpHを有する生理食塩水キャプチャーバッファー中でインテイン-Cタグ付け標的分子をロードすることを含み、標的分子溶出ステップは、約7のpHを有する生理食塩水切断バッファー中で標的分子を放出および溶出させることを含む。
【0097】
いくつかの態様において、標的溶出ステップは、インテイン形成ステップとほぼ同じであるpHにおいて行われる。かかる態様によれば、インテイン複合体形成ステップは、約8~約10のpHを有する生理食塩水キャプチャーバッファー中でインテイン-Cタグ付け標的分子をロードすること含んでもよい。他の態様において、インテイン複合体形成ステップは、約9のpHを有する生理食塩水キャプチャーバッファー中でインテイン-Cタグ付け標的分子をロードすることを含む。いくつかの態様において、標的分子溶出ステップは、約8~約10のpHを有する生理食塩水切断バッファー中で標的分子を放出および溶出させることを含んでもよい。他の態様において、標的分子溶出ステップは、約9のpHを有する生理食塩水切断バッファー中で標的分子を放出および溶出させることを含んでもよい。代替的な態様において、インテイン複合体形成ステップは、約8~約10のpHを有する生理食塩水キャプチャーバッファー中でインテイン-Cタグ付け標的分子をロードすることを含み、標的分子溶出ステップは、約8~約10のpHを有する生理食塩水切断バッファー中で標的分子を放出および溶出させることを含む。他の態様において、インテイン複合体-形成ステップは、約9のpHを有する生理食塩水キャプチャーバッファー中でインテイン-Cタグ付け標的分子をロードすることを含み、標的分子溶出ステップは、約9のpHを有する生理食塩水切断バッファー中で標的分子を放出および溶出させることを含む。
【0098】
キャプチャーバッファーおよび切断バッファーは、同じバッファー系であっても異なるバッファー系であってもよい。切断バッファーに、本明細書において記載されるようなpHの変更を伴って、またはこれを伴わずに、N-ヘテロ芳香族添加物を補充してもよい。
【0099】
本開示のさらなる態様
本明細書において記載される方法の各々、すなわち、流速/カラム滞留時間の調節、および/または触媒剤(N-ヘテロ芳香族)の添加は、単独で行われても、互いに組み合わせて行われてもよいことは、当業者には明らかである。これらの組み合わせの各々は、さらに、任意に、インテイン複合体形成ステップと標的溶出ステップとの間でpHを調節することにより、行われてもよい。
【0100】
したがって、いくつかの態様において、本発明は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法に関し、該方法は、以下のステップ:(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、インテイン複合体を形成するために十分な第1の期間にわたり、インテイン-Nポリペプチドと接触させること;ならびに(b)インテイン複合体を、第1の期間より長い第2の期間にわたり、標的分子を取り除くために有効な媒質と接触させることにより、インテイン複合体から標的分子を放出させることを含み;ここで、ステップ(b)は、ステップ(a)よりも低いpHで行われる。
【0101】
他の態様において、本発明は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法に関し、該方法は、以下のステップ:(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、インテイン複合体を形成するために十分な第1の期間にわたり、インテイン-Nポリペプチドと接触させること;ならびに(b)インテイン複合体を、第1の期間より長い第2の期間にわたり、標的分子を取り除くために有効な媒質と接触させることにより、インテイン複合体から標的分子を放出させることを含み;ここで、ステップ(b)は、ステップ(a)とほぼ同じpHで行われる。
【0102】
他の態様において、本発明は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法に関し、該方法は、以下のステップ:(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、インテイン複合体を形成するために十分な第1の期間にわたり、インテイン-Nポリペプチドと接触させること;ならびに(b)インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させることにより、インテイン複合体から標的分子を放出させることを含み;ここで、ステップ(b)は、ステップ(a)よりも低いpHで行われる。
【0103】
他の態様において、本発明は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法に関し、該方法は、以下のステップ:(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、インテイン複合体を形成するために十分な第1の期間にわたり、インテイン-Nポリペプチドと接触させること;ならびに(b)インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させることにより、インテイン複合体から標的分子を放出させることを含み;ここで、ステップ(b)は、ステップ(a)とほぼ同じpHで行われる。
【0104】
他の態様において、本発明は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法に関し、該方法は、以下のステップ:(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、インテイン複合体を形成するために十分な第1の期間にわたり、インテイン-Nポリペプチドと接触させること;ならびに(b)(i)インテイン複合体を、第1の期間より長い第2の期間にわたり、標的分子を取り除くために有効な媒質と接触させること;および(ii)インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させること;により、インテイン複合体から標的分子を放出させることを含み、ここで、ステップ(b)は、ステップ(a)よりも低いpHで行われる。
【0105】
他の態様において、本発明は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から、標的分子を放出させるための方法に関し、該方法は、以下のステップ:(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を、インテイン複合体を形成するために十分な第1の期間にわたり、インテイン-Nポリペプチドと接触させること;ならびに(b)(i)インテイン複合体を、第1の期間より長い第2の期間にわたり、標的分子を取り除くために有効な媒質と接触させること;および(ii)インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させること;により、インテイン複合体から標的分子を放出させることを含み、ここで、ステップ(b)は、ステップ(a)とほぼ同じpHで行われる。
【0106】
本明細書において企図されるように、接触時間の増大(例えば、カラム滞留時間、および/または流速の減少)、ヘテロ芳香族化合物の存在、および/または標的分子除去ステップの間のpHの低下は、切断反応を促進し、標的分子の収率を増大させる。いくつかの態様において、前述のプロセスパラメーターのうちの1つ以上を使用しない同等の方法と比較して、標的分子の収率は、少なくとも5%増大する。他の態様において、前述のプロセスパラメーターのうちの1つ以上を使用しない同等の方法と比較して、標的分子の収率は、少なくとも10%増大する。他の態様において、前述のプロセスパラメーターのうちの1つ以上を使用しない同等の方法と比較して、標的分子の収率は、少なくとも15%増大する。他の態様において、前述のプロセスパラメーターのうちの1つ以上を使用しない同等の方法と比較して、標的分子の収率は、少なくとも20%増大する。他の態様において、前述のプロセスパラメーターのうちの1つ以上を使用しない同等の方法と比較して、標的分子の収率は、少なくとも30%増大する。他の態様において、前述のプロセスパラメーターのうちの1つ以上を使用しない同等の方法と比較して、標的分子の収率は、少なくとも40%増大する。他の態様において、前述のプロセスパラメーターのうちの1つ以上を使用しない同等の方法と比較して、。標的分子の収率は、少なくとも50%増大する他の態様において、前述のプロセスパラメーターのうちの1つ以上を使用しない同等の方法と比較して、標的分子の収率は、少なくとも60%増大する。他の態様において、前述のプロセスパラメーターのうちの1つ以上を使用しない同等の方法と比較して、標的分子の収率は、少なくとも70%増大する。他の態様において、前述のプロセスパラメーターのうちの1つ以上を使用しない同等の方法と比較して、標的分子の収率は、少なくとも80%増大する。他の態様において、前述のプロセスパラメーターのうちの1つ以上を使用しない同等の方法と比較して、標的分子の収率は、少なくとも90%増大する。
【0107】
インテイン媒介型タンパク質精製方法
いくつかの態様において、本方法は、クロマトグラフィー分離技術、例えば、カラムクロマトグラフによる、標的分子の精製のために適用することができる。この態様によれば、本開示は、(i)ペプチド結合により標的分子に連結されたインテイン-Cポリペプチドを含む融合タンパク質(インテイン-Cタグ付け標的分子);および(ii)インテイン-Nポリペプチドを含む、インテイン複合体から標的分子を放出させるための方法を提供し、該方法は、以下のステップ:
(a)インテイン-Cタグ付け標的分子を含む試料を提供すること;
(b)共有結合により連結されたN末端インテインポリペプチドを含むクロマトグラフィー樹脂を含むカラムに、融合タンパク質中のインテイン-Cポリペプチドが樹脂中のインテイン-Nポリペプチドに結合してインテイン複合体を形成する条件下において、試料をロードすること、ここで、試料は、第1の流速/第1のカラム滞留時間において、ロードされる;
(c)任意に、未結合の混入物を取り除くためにインテイン複合体を含む樹脂を洗浄すること;
(d)以下:
(i)インテイン複合体を、第1の流速よりも遅い第2の流速、もしくは第1のカラム滞留時間よりも長い第2のカラム滞留時間において、標的分子を切断するために有効な媒質と接触させること;および/または
(ii)インテイン複合体を、少なくとも1つの環窒素原子を含むヘテロ芳香族化合物と接触させること
により、インテイン複合体から標的分子を切断すること;
(e)クロマトグラフィー樹脂を再生すること;
(f)任意に、ステップ(a)~(e)を少なくとも1回繰り返すことにより、少なくとも1つのさらなる精製サイクルを行うこと;ならびに
(g)任意に、標的分子を単離すること
を含む。
【0108】
いくつかの態様において、ステップ(b)、(c)(行われる場合には)、(d)および(e)は、独立して、静的インキュベーションまたはカラム容積(CV)あたり0.1~120分間の滞留時間を表す定流量下において行われる。
【0109】
いくつかの態様において、ステップ(d)は、ステップ(b)および任意のステップ(c)とほぼ同じpHで行われる。他の態様において、ステップ(b)、任意のステップ(c)およびステップ(d)は、各々、約8~約10のpHを有する生理食塩水バッファー中で行われる。他の態様において、ステップ(b)、任意のステップ(c)およびステップ(d)は、各々、約9のpHにおいて行われる。
【0110】
本発明のプロセスは、1回、すなわち、単一の精製および再生サイクルで行ってもよいが、好ましくは、インテイン-Nカラムを複数の精製および再生サイクルに供することにより、複数回行われる。
【0111】
(i)インテイン-Nを含むアフィニティークロマトグラフィーマトリックス
本明細書において記載されるプロセスは、インテイン-Nポリペプチドをアフィニティークロマトグラフィーのためのリガンドとして利用する。したがって、本発明は、ある態様において、固体支持体に結合したインテイン-Nポリペプチドを含むアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供する。特定の態様において、固体支持体は、クロマトグラフィー樹脂またはクロマトグラフィーメンブレンである。一態様において、クロマトグラフィー樹脂は、親水性ポリビニルエーテル基剤を含む。
【0112】
いくつかの態様において、クロマトグラフィー樹脂は、ポリマーベースであるか、ポリマーを含む。いくつかの態様において、クロマトグラフィー樹脂は、親水性ポリビニルエーテル基材またはポリメタクリレートを含む。他の態様において、クロマトグラフィー樹脂は、固体支持体上で処方され、ここで、固体支持体は、ビーズまたはメンブレンである。
【0113】
好ましくは、固体支持体は、親水性ビニルエーテルベースのポリマー、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、例えば、ナイロン、例えばアガロースおよびセルロースなどの多糖、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリビニリデンフロリド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、フルオロカーボンのポリマー、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン-コ-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル))、またはこれらの組み合わせもしくはコポリマーのような、有機ポリマーを含む。
【0114】
さらに他の態様において、固体支持体は、無機性の性質の支持体、例えば、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタンおよびこれらの合金を含む。無機性のマトリックスの表面は、しばしば、好適な反応基を含むように改変される。いくつかの態様において、固体支持体は、例えば、ジルコニア、チタニアまたは孔が制御されたガラスの形態におけるシリカに基づき、これは、リガンドにカップリングされるために、反応基を含むように、および/または腐食性の浸漬を維持するように、修飾されてもよい。
【0115】
例示的な固体支持体の形態として、これらに限定されないが、ビーズ(球状または不規則な)、中空繊維、中実繊維、パッド、ゲル、メンブレン、カセット、カラム、チップ、スライド、プレートまたはモノリスが挙げられる。
【0116】
本明細書において記載されるインテイン-Nを、支持体、例えば、当該分野において周知であり、本明細書において記載されるものを含む固体支持体に結合させるために、任意の好適な技術を用いることができる。例えば、いくつかの態様において、例えばフラグメント中に存在するチオール、アミノ基および/またはカルボキシ基を利用する、慣用的なカップリング技術を介して、インテイン-Nを支持体に結合させてもよい。いくつかの態様において、インテイン-Nポリペプチドは、ヒドロキシル、チオール、エポキシド、アミノ、カルボニルエポキシドおよびカルボン酸からなる群より選択される官能基を通して、クロマトグラフィー樹脂に付着している。例えば、ビスエポキシド、エピクロロヒドリン、CNBr、N-ヒドロキシサクシニミド(NHS)など、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルは、周知のカップリング試薬であり、固体支持体へのインテイン-Nフラグメントの化学的カップリングを促進する。当該分野において公知であるように、他のカップリング剤を用いてもよい。この目的のために用いられるカップリング方法の概説については、例えば、Immobilized Affinity Ligand Techniques、Hermansonら、Greg T. Hermanson、A. Krishna MalliaおよびPaul K. Smith、Academic Press Inc.(1992年)を参照;これらの内容は、本明細書によりその全体において援用される。当該分野において周知であるように、リガンド密度または置換レベル、支持体の孔サイズなどのパラメーターは、所望される特性を有するクロマトグラフィー樹脂を提供するために変化してよい。
【0117】
タンパク質リガンドを固体支持体にカップリングするための適切な条件を選択することは、十分に当業者の能力の範囲内である。このプロセスのための好適なバッファーとして、炭酸、重炭酸、硫酸、リン酸および酢酸バッファーなどの任意の非アミン含有バッファーが挙げられる。バッファーは、さらに塩を含んでもよく、これは、5nM~100mMの範囲であってよい。
【0118】
いくつかの態様において、反応は、0℃~99℃の範囲の温度で行われる。ある態様において、反応方法は、60℃未満、40℃未満、20℃未満、または10℃未満の温度で実施される。いくつかの態様において、本発明の方法は、約4℃の温度で実施される。他の態様において、本発明の方法は、20℃の温度で実施される。
【0119】
(ii)インテイン-C融合タンパク質の調製
本開示のいくつかの態様において、インテイン-Cタグ付け標的分子は、インテイン-Cポリペプチドを標的分子に付着させて融合タンパク質を得ること、および、融合タンパク質を発現系において発現させることにより、調製される。
【0120】
したがって、本明細書において記載される方法は、インテイン-Cタグ付け標的分子(例えばタンパク質)の調製を含む。インテイン-Cタグ付け分子は、インテイン-Cポリペプチドを標的分子に結合させて融合タンパク質を得て、融合タンパク質を発現系において発現させることにより、調製することができる。融合またはキメラのタンパク質を調製する方法は、当該分野において周知であり、これらに限定されないが、標準的な組み換えDNA技術を含む。例えば、異なるタンパク質の配列(例えば、C-インテインおよび標的分子)をコードするDNAフラグメントを、従来の技術に従って、インフレームで一緒にライゲーションする。別の態様において、自動DNA合成機を含む従来の技術により、融合遺伝子を合成することができる。あるいは、2つの連続した核酸フラグメントの間に相補的オーバーハングを生じるアンカープライマーを用いて、核酸フラグメントのPCR増幅を行うことができ、これを後でアニーリングし、再増幅して、キメラ核酸配列を生成することができる(Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(1992年)を参照;その内容は、その全体において参考として援用される)。さらに、既に融合部分をコードする多くの発現ベクターが市販されている(例えば、GST部分、Fc部分)。
【0121】
好ましくは、融合タンパク質は、一過性にまたは安定してトランスフェクトまたは形質転換された原核生物または真核生物の宿主細胞または生物において、コードする核酸から発現される。組み換えタンパク質の発現のために一般的な宿主細胞または生物として、例えば、Escherichia coli、Corynebacterium glutamicum、Pseudomonas fluorescens、Lactococcus lactis、Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiae、Zea maize、Nicotinia tabacum、Daucus carota、SF9細胞、CHO細胞(例えば、CHO DG44細胞、CHO DXB11細胞)、NS0細胞、HEK 293細胞、ならびにウシおよびヤギなどの完全な動物が挙げられる。一態様において、C-インテイン標的融合タンパク質は、E. coliにおいて発現される。発現された融合タンパク質を、次いで、デプスろ過による清澄化、アニオンおよびカチオン交換クロマトグラフィーによる精製、ならびに限外濾過による濃縮などの慣用的な分離およびクロマトグラフィー法を用いて、精製して混入する細胞タンパク質を除去することができる。
【0122】
いくつかの態様において、インテインポリペプチド(例えば、C-インテイン)と標的タンパク質とは、ペプチド結合を介して直接的に連結される。他の態様において、融合タンパク質は、インテインポリペプチド(例えば、C-インテイン)と標的分子との間の分子である、スペーサー、またはリンカーを含む。好適なスペーサー/リンカー分子は、当該分野において公知である。
【0123】
(iii)アフィニティー精製
いくつかの態様において、インテイン複合体形成ステップ(b)は、クロマトグラフィー樹脂を、インテイン-Cタグ付け標的分子を含む細胞培養上清と接触させることを含む。したがって、いくつかの態様において、このステップは、約8~約10のpHを有する生理食塩水キャプチャーバッファー、好ましくは約9のpHを有する生理食塩水キャプチャーバッファー中で、インテイン-Cタグ付け標的分子をロードすることを含む。
【0124】
融合タンパク質中のC-インテインポリペプチドが、クロマトグラフィーに結合したN-インテインポリペプチドに選択的に結合してインテイン複合体を形成する条件は、用いられるインテインに依存して変化し得、当業者により決定され得る。例示的な結合条件として、以下が挙げられる:a)約4~25℃の範囲の温度、および100mMのTris-HCl、25mMのNaCl、0.1mMの塩化亜鉛を含むバッファー(pH=9);b)約4~25℃の範囲の温度、および50mMのNaAc、0.5MのNaClを含むバッファー(pH=5);c)約4~25℃の範囲の温度、および0.5MのNaCl、10mMのTris-HClを含むバッファー(pH=8);d)約4~25℃の範囲の温度、および100mMのTris、200mMのNaClを含むバッファー(pH9);e)約4~25℃の範囲の温度、および100mMのTrisおよび100mMのNaClを含むバッファー(pH7);ならびにf)約4~25℃の範囲の温度、および100mMのTrisおよび200mMのNaClを含むバッファー(pH7)。
【0125】
ロードされたカラムを、次いで、任意に、ステップ(c)において、未結合のおよび弱く結合した混入物を取り除くために、洗浄バッファーを用いて洗浄してもよい。洗浄バッファーは、好ましくは、洗剤(例えば、Triton X100、ND40)、塩(例えば、ナトリウム、アンモニウムまたはカリウムの酢酸塩、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩)、カオトロピック剤、好ましくは尿素またはアルギニン、またはこれらの組み合わせを含む。
【0126】
その後、ステップ(d)において、樹脂を切断バッファーと接触させて、インテイン複合体からの標的の切断および放出を実現する。上記のとおり、標的放出ステップは、好ましくは、インテイン複合体を形成させるために用いられた流速よりも遅い流速で行われる。加えて、上記のとおり、標的放出ステップは、好ましくは、インテイン複合体を形成させるために用いられたカラム滞留時間よりも遅いカラム滞留時間で行われる。標的の切断、放出およびカラムからの溶出を促進するために、触媒剤(例えば、アゾールまたはアゾール含有化合物などのN-ヘテロ芳香族化合物)を、このステップの間にさらに添加してもよい。
【0127】
加えて、上記のようにpHを調節してもよい。したがって、インテイン複合体形成は、上記のとおり、約9のpHで行われてもよく、標的溶出ステップは、インテイン-Cポリペプチドから標的分子を放出させるように、約6~約8のpHを有する生理食塩水バッファー(例えば、100mMのTris、200mMのNaCl、pH=7)中で行われてもよい。標的分子を、次いで、溶出液中で回収する。
【0128】
あるいは、ステップ(b)、任意のステップ(c)およびステップ(d)は、pHを変更することなく行ってもよい。したがって、インテイン複合体形成ステップ(b)および任意の洗浄ステップ(c)は、上記のとおり約8~約10のpHで行われてもよく、標的溶出ステップは、約8~約10のpHを有する生理食塩水バッファー中で行われてもよい。別の態様において、ステップ(b)、(c)(行われる場合には)および(d)は、全て、約9のpHで行われてもよい(例えば、pH9における100mMのTris、200mMのNaCl)。標的分子を、次いで、溶出液中で回収する。
【0129】
カラムを、次いで、上記のとおりステップ(e)において再生し、次いで、任意に、再生ステップと同時に、またはその後に、および再使用の前に、水で洗浄する。
本明細書において記載される本主題は、以下の非限定的な例により、より具体的に説明されるであろう。そこにおいて、本明細書において後で請求される本開示の範囲および精神から逸脱することなく、変化およびバリエーションを行うことができることが、理解される。また、本開示が機能する理由に関する多様な理論が限定的であることを意図されないことも、理解される。
【0130】
例
以下は、本明細書において記載される開示を実施するための態様を説明する例である。これらの例は、限定的であるものとして解釈されるべきではない。
例1:材料および方法
E. Coliにおけるインテイン融合タンパク質遺伝子の発現
インテイン-C標的は、バイオリアクターのバッチ(増殖条件:3h、30℃)において生成した。インテイン-Nリガンドは、増殖条件:20h、20℃、フラスコフォーマット下において生成した。100mLの2xYT培地(Merck kGaA)に、100μlのカナマイシンストック溶液(30mg/ml)および予備培養のうちの2mLで植菌した。本培養は、20~30℃および200~500rpmで増殖させた。0.12mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の最終濃度での誘導は、OD600値=2で行われた。本培養は、3または20時間にわたり培養した。遠心分離により細胞を採取し、上清を破棄し、ペレットを-20℃未満で保存した。
【0131】
インテイン融合タンパク質を発現したE. Coli細胞の細胞溶解
バイオマスを、化学的または機械的細胞溶解により溶解した。インテイン-Cタグ付け(IC)標的を、機械的細胞溶解により溶解し、一方、インテイン-N(IN)リガンドのために化学的細胞溶解を用いた。
機械的細胞破壊は、細胞を、10mLの機械的溶解バッファー(100mMのTris、150mMのNaCl、5mMのMgCl2および25U/mlのBenzonase(登録商標)、pH8~9)中で懸濁することにより行った。細胞溶液を、細胞破壊チャンバー中に移し、1kbarにおいて細胞破壊を完了させた。上清(ライセート)を、4℃、18000rcfで25分間にわたり遠心分離した。遠心分離の後で、上清をろ過し、清澄化されたE. Coli細胞ライセート(CL)として、さらなる精製ステップのために用いた(例えば、以下のインテイン-C標的E. Coliライセート)。
【0132】
化学的細胞溶解は、細胞を、10mLの化学的溶解バッファー(50mMのTris、5mMのMgCl2、1:10のCelLytic B細胞溶解試薬、25U/mLのBenzonase(登録商標)、HClでpH8に調整)中で懸濁することにより行った。混合物をボルテックスし、遠心分離した。遠心分離の後で、上清をろ過し、清澄化されたE. Coli細胞ライセートとして、さらなる精製ステップのために用いた。
【0133】
発現およびフィード調製:哺乳動物のインテイン-Cタグ付けされた標的を発現する細胞ライセートの調節(conditioning)
高度にグリコシル化されたインテイン-Cタグ付けされたヒト由来標的分子を、HEK293細胞において、またはCHOZN(登録商標)GS-/-細胞株において、生成した。分泌され、プロセッシングされ、清澄化された細胞上清中のインテイン-Cタグ付け標的分子を、Pellicon XL 5kDaメンブレンを用いて濃縮し、インテイン-Cタグ付け標的分子の濃度を約0.1~0.3mg/mlに調整した。濃度は、試料のSDS-Page分析を用いて決定した。濃縮された上清を、調節し、2MのNaOHを用いてpH9に調整して、インテイン-Nリガンドプロトタイプカラム(例えば、下の清澄化された哺乳動物細胞上清)にロードした。
【0134】
StrepIIタグベースの精製方法
Strep-Tactin(登録商標)Superflow HCで充填されたアフィニティーカラムを、2カラム容積(CV)のStrep結合バッファー(インテイン-C標的については100mMのtris、200mMのNaCl、pH9;およびインテイン-Nリガンドについては100mMのTris、150mMのNaClおよび1mMのEDTA、pH8)で平衡化した。清澄化されたE. Coli細胞ライセートを、カラムにロードし、未結合のタンパク質を、Strep結合バッファーでカラムから洗い流し、結合した標的を、Strep溶離バッファー(インテイン-C標的については100mMのTris、200mMのNaClおよび2.5mMのd-デスチオビオチン、pH9;およびインテイン-Nリガンドについては100mMのTris、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのTCEPおよび2.5mMのd-デスチオビオチン、pH8)で溶離させた。残留するタンパク質を、Strep再生バッファー(50mMのTris、150mMのNaCl、1mMの4’-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)、1mMのEDTA、pH8)で溶離させることにより、カラムを再生した。100mMのTrisバッファーによるもう1回のカラム洗浄の後で、カラムを、2CVのStrep結合バッファー中で再平衡化した。
【0135】
透析およびインテイン-N/樹脂カップリング反応
StrepIIでタグ付けされ、精製されたインテイン-Nリガンドを、透析カセット中に注入した。カセットを、カップリングバッファー(100mMのNa2CO3/NaH2CO3、1mMのTCEP、pH10)を含むビーカー中に移した。4℃で一晩、透析を行った。2mLのカップリングバッファーを用いて、剤を減少させることなく、Dried Epoxy modified Eshmuno(登録商標)樹脂を膨潤させて、1mLのカラムサイズを達成した。膨潤した樹脂を、吸引して乾燥させた。透析したインテイン-Nリガンドを、次いで、膨潤した樹脂に移した。樹脂を、インテイン-Nリガンドストックに対して1:3の関係(v/v)において、2.5時間にわたりインキュベートした。クエンチバッファー(100mMのNa2CO3/NaH2CO3、0.1~1Mのグリシン、pH8)を用いて、樹脂をクエンチした。
【0136】
当該分野において公知であるようなSDSポリアクリルアミド電気泳動(SDS Page)を用いて、予想されたサイズのタンパク質の生成を確認した。当該分野において公知であるようなBCAアッセイを通して、共有結合したリガンドの量を決定した。
【0137】
機能性試験:カラム形式における動的結合能力
インテイン-N樹脂プロトタイプを、動的カラムプロセスにおけるその性能により試験するために、インテイン-N樹脂プロトタイプカラムを用いてインテイン精製の方法を行った。50%(v/v)の樹脂バルクを含む試料を、1mLの最終樹脂カラム容積でScout(商標)カラムに移した。パックされたプロトタイプカラムを、次いで、インテインベースの精製方法のために用いた。
【0138】
精製方法
樹脂を、10CLのキャプチャーバッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH=9)で平衡化した。上記のStrepII-Tag精製方法を用いて予備精製された5CVの試料サイズのインテイン-C標的溶液、または上記のように調節された、インテイン-Cタグ付けされた標的を含む、清澄化された哺乳動物細胞ライセートを、カラムにロードした。カラムを、10CVキャプチャーバッファーで洗浄し、結合したインテイン-C標的の放出を、10CV切断バッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH=7)によるpHの低下により引き起こした。次いで、カラムから、5CVのCIPバッファー(150mMのH3PO4(pH1~2))を用いて残留するインテイン-Cフラグメントを取り除いた。カラムを、次いで、5CVのキャプチャーバッファーで再平衡化した。
【0139】
精製された試料の分析.
StrepII-Tagまたはインテイン-タグベースの精製ステップの前後に、A280の吸光度(280nmの波長における吸光度)を、クロマトグラフィーソフトウェアにより全ての画分について計算し、各々の画分におけるタンパク質の量をチェックした。標的のA280の吸光度および消衰係数を考慮して、溶出液およびCIP画分の濃度を決定した。
【0140】
当該分野において公知であるようなSDSゲル電気泳動(SDS PAGE)およびキャピラリー電気泳動(LapChip(登録商標))を用いて、試料を分析した。LabChip(登録商標)分析のために、試料を、DTTが豊富な変性LabChip(登録商標)バッファーと共に5分間にわたり加熱した。試料を、蒸留H2Oで35μlまで満たし、Protein Expressアッセイを用いて分離して分析した。
【0141】
例2:標準的な切断条件(pH7)においてイミダゾール、ピラゾールおよびヒスチジンにより増大されたインテイン切断
第3世代のインテイン-Nリガンド(R44-358132)を担持するインテイン-N樹脂プロトタイプカラムを、様々な添加物を様々な濃度において標準的な切断条件バッファー系(pH7)中で用いる5つのインテイン精製サイクル(例2-1:サイクル1.1~1.5)のために用いた。精製は、13kDaのインテイン-Cタグ付け標的分子により行った。
【0142】
第2のインテイン-N樹脂プロトタイプカラム(R46-358132を担持する)を、別の標的分子(36kDa)および別の樹脂バッチにより、5つの連続するインテイン精製サイクル(例2-2:サイクル2.1~2.5)のために用いた。2つのインテイン-Cタグ付けされた標的(13および36kDa)(それぞれ、チオレドキシン(UniProtKB-P0AA25(THIO_ECOLI)と命名されたMW=13kDaの融合標的分子、および湾曲(Curved)DNA結合タンパク質(UniProtKB - P36659(CBPA_ECOLI)と命名されたMW=36kDaの標的分子に対応する)。いずれのタンパク質も、生物Escherichia coli(株K12)のプロテオームからのものであり、これらを、例1において記載されるようにStrep-Tag(登録商標)精製を用いて予備精製し、1mg/mLの濃度まで希釈した。インテイン-Nが固定された樹脂を、10CVキャプチャーバッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)で平衡化し、予備精製されたインテイン-C標的のうちの一方を、5CVで、インテイン-N樹脂プロトタイプカラムに、キャプチャー条件(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)下においてロードした。未結合のタンパク質を、10CVのキャプチャーバッファーで洗浄した。標準的な切断バッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH7)(B.1)は、表1において記載されるように、0.3Mのイミダゾール(B.2)、0.6Mのイミダゾール(B.3)、0.3Mのヒスチジン(B.4)または0.3Mのピラゾール(B.5)を多く含んだ:
表1:異なる添加物を用いる切断バッファー
【表1】
【0143】
インテイン切断反応およびタグなし標的放出を、示される切断バッファーB.1~B.5のうちの1つを用いて、より低いpH値へのpHシフトのステップにより引き起こし、2ステップアプローチにおいて溶出を達成した。第1の溶出を、4CVの切断バッファーB.1~B.5による動的流れ下において引き起こした。2時間の静的カラムインキュベーションを達成するために流れを保留に設定した後で、6CVの切断バッファーB.1~B.5により、第2の溶出を引き起こした。クロマトグラフィーカラムを、1~2のpHを有する、例えば0.15MのH3PO4または類似のバッファーを含む、少なくとも5CVの酸性溶液を用いて再生し、インテイン精製の次のサイクルのために再使用した。
【0144】
5つの異なる切断バッファーB.1~B.5を、5つの連続する精製サイクルにおいて用いた。各々のランは、同じインテイン-C標的タンパク質および同じカラムプロトタイプにより行った。分析のために、A280の吸光度クロマトグラムを、適切な標的の消衰係数を用いて、溶出およびCIP画分中のタンパク質量に関して分析した。2つのクロマトグラムのオーバーレイは、13kDaの標的分子のサイクル1.1、1.2および1.3(
図1A)および溶出の間の、ならびに36kDaの標的分子のサイクル2.1、2.2および2.3(
図1B)および溶出の間の、異なる溶出挙動を示す。サイクル1.4、1.5、2.4および2.5は、ヒスチジンを含有する、およびピラゾールを含有するTrisバッファー系の280nmにおけるバックグラウンド吸光度(A280の吸光度)に起因して、示されていない。示されるように、0.3Mの(B.2)または0.6Mの(B.3)イミダゾールの添加は、参照バッファー(B.1)と比較して、溶出画分1および2から回収された、より高い量の標的溶出をもたらした。
【0145】
溶出ステップ1およびステップ2の間に溶出した標的の量を、10個全てのサイクルについて、切断された標的のA280の吸光度および分子消衰係数を用いて計算し、これを、表2および3において列記する。用いられた切断バッファーB.1~B.5に依存して、13kDaのタグなし標的の溶出の量は、約0.26~0.33mg、36kDaの標的については約0.58~0.73mgであった。インテイン-C標的ストックの切断活性に起因して、いくらかの切断されていないインテイン-C標的が、溶出相の後でカラムに残留した。総インテイン-C結合タンパク質を、溶出した標的および、浄化相の間に残留するインテイン-Cフラグメントと一緒に放出された残留するインテイン-C標的を用いて計算した。総結合インテイン-C標的あたりの、溶出相の間にタグなしで放出された標的の収率を、計算した。収率は、両方の標的について、41.79%より高いものと計算された(表2および3)。両方のプロトタイプカラムを用いて、未結合のインテイン-Cタグ付けされた標的の総量は、両方のインテイン-Cタグ付けされた標的を用いる数回の精製サイクルにわたり、一貫し続ける。
【0146】
アゾールおよびアゾール含有化合物のインテインの機能性に対する正の効果を、両方の標的タンパク質を用いて検証した。例2-1、表2(13kDaの標的を用いる)、または例2-2、表3(36kDaの標的を用いる)中で、イミダゾールまたはイミダゾール誘導体含有切断バッファー(B.2~B.5、
図2A、2B)のうちの1つを用いて、溶出収率は、9.87%(表2)または4.01%(表3)まで増大したが、一方、溶出ステップ1(E1)の間に回収された切断された標的の量は、11.15%(表2)または9.72%(表3)まで増大し得た。
【0147】
溶出画分(E1、E2)の試料を、
図3において示されるように、SDS-PAGEゲル電気泳動により分析した。例2-1および2-2の両方において、異なる溶出条件(B.1~B.5)により溶出が引き起こされた場合に、タグなしの放出された標的を観察することができた(2-1においては13kDa、および2-2においては36kDa)。例2-2においてもまた、カラムの過負荷効果に起因して、いくらかの未切断のインテイン-C標的が観察された。
【0148】
LabChip(登録商標)GXII(商標)マイクロ流体電気泳動分離系を、Protein Expressアッセイ試薬キットおよびLabChip(登録商標)HT Protein Express Chipと組み合わせて用いて、溶出画分からの純度を計算した。溶出した標的の純度は、13kDaの標的については、97.42%より高いことで一貫するものと計算した。例2-2において用いられた36kDaの標的は、より低い量のタンパク質放出およびより低い純度レベルの溶出画分をもたらした(73.04%より高い純度)。値を、表2および表3において列記する。
図4におけるオーバーレイは、マイクロ流体電気泳動系により分析された、サイクル1.1~1.5ならびに2.1~2.5の全ての溶出画分の純度を示す。
図4A、4B(例2-1)は、インテイン精製サイクル1.1~1.5の間に回収された、全てのE1(
図4A)およびE2(
図4B)の画分の2つのオーバーレイを示す。
図4C、4D(例2-2)は、インテイン精製サイクル2.1~2.5の間に回収された、全ての回収されたE1(
図4C)およびE2(
図4D)画分の2つのオーバーレイを示す。7kDaと9kDaとの間のマークされた二重ピークは、変性試料バッファーの非特異的バックグラウンドノイズに起因するので、純度計算から除外した。
図4Eは、非特異的バックグラウンドノイズを示すための、タンパク質なしのLabChip(登録商標)試料バッファーを示し、研究のための例証である。
【0149】
表2および3において要約される結果
表2は、インテイン-N樹脂プロトタイプカラムによる例2-1の結果を示す。インテイン精製の5つの連続するサイクルの間に溶出した標的のパーセンテージを、溶出(E1+E2)および再生画分(CIP:残留するインテイン-C標的およびインテイン-Cフラグメント(IC))から回収された総タンパク質量を用いて計算した。溶出した標的の量を、標準的な条件(B.1)下における溶出に対して比較した。示されるように、精製サイクル1.2および1.3の間に、イミダゾールを含有する溶出バッファー(B.2、B.3)を用いて、6.56%および7.79%高い収率の標的を回収した。精製サイクル1.4および1.5の後で、増大した溶出収率の効果がまた観察され、ここで、2.17%および9.87%の収率改善を計算することができた。特に、総切断インテイン-C標的あたりの、溶出ステップ1(E1)の間に切断された標的の収率は、11.15%まで増大し得た(サイクル1.3)。溶出物から回収された標的および総カラム結合インテイン-C標的を用いて、収率を計算した。サイクル1.2のE2画分を除く全ての溶出画分は、ほぼ97~100%の純度のタグなし標的を含んだ。
表2 - 例2-1
【表2】
【0150】
表3は、インテイン-N樹脂プロトタイプカラムによる例2-2の結果を示す。インテイン精製の5つの連続するサイクルの間に溶出した標的のパーセンテージを、溶出(E1+E2)および再生(CIP:残留するインテイン-C標的およびインテイン-Cフラグメント(IC))から回収された総タンパク質量を用いて計算した。溶出した標的の量を、標準的な条件(B.1)下における溶出に対して比較した。したがって、精製サイクル2.2および2.3の間に、イミダゾールを含有する溶出バッファー(B.2、B.3)を用いて、0.70%および4.01%高い収率の標的を回収した。精製サイクル2.5の後で、増大した溶出収率の効果がまた観察され、ここで、3.83%の収率改善を計算した。特に、総切断インテイン-C標的あたりの、溶出ステップ1の間に切断された標的の収率は、9.72%まで増大した(サイクル2.3、2.5)。溶出物から回収された標的および総カラム結合インテイン-C標的を用いて、収率を計算した。溶出1の画分の全ての純度は、溶出2の純度よりも低かったが、70~80%の一貫したレベルであった。
表3 - 例2-2
【表3】
【0151】
例3:キャプチャー条件(pH9)下におけるアゾールおよびインテイン切断プロセスに対するアゾール由来の効果の検証
第3世代のインテイン-Nリガンド(R44-358132)を担持するインテイン-N樹脂プロトタイプカラムを、2つのインテイン精製サイクルのために用い、アゾールおよびアゾール由来添加物を用いる標準的なキャプチャー条件バッファー系(pH9)中でのインテイン切断の改善を研究し、インテインの機能性に対して正の効果を示した(例2)。13kDaのインテイン-Cタグ付けされた標的を、例1において記載されるように、Strep-II Tag(登録商標)精製を用いて予備精製し、1mg/mLの濃度まで希釈した。インテイン-N樹脂プロトタイプカラムを、10CVのキャプチャーバッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)で平衡化した。予備精製されたインテイン-C標的を、5CVで、キャプチャー条件(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)下において、プロトタイプカラムにロードした。不純物を、10CVのキャプチャーバッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)で洗い流した。A.1と指定されるキャプチャーバッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)を、このセットアップにおける参照として用いた。添加物添加の触媒効果の効果を研究するために、参照バッファーの条件を、0.3Mのイミダゾール(キャプチャーバッファーA.2)により調整した。インテイン切断反応およびタグなしでの標的の放出を引き起こし、2ステップのアプローチにおいて達成した。第1の溶出を、表4において記載されるような4CVのキャプチャーバッファーA1~A.4による動的流れ下において引き起こした。2時間の静的カラムインキュベーションを達成するために流れを保留に設定した後で、6CVのキャプチャーバッファーA.1およびA.2により、第2の溶出を引き起こした。クロマトグラフィーカラムを、例えば0.15MのH
3PO
4を含む、1~2のpHを有する、少なくとも5CVの酸性溶液を用いて再生し、カラムを、インテイン精製の次のサイクルのために再使用した。
表4:異なる添加物を含むキャプチャーバッファー
【表4】
【0152】
2つの異なるキャプチャーバッファーA.1およびA.2を、2つの連続する精製サイクルにおいて用いた。A280の吸光度クロマトグラムを、記録および分析して、溶出およびCIP相から回収したタンパク質の量を決定した。添加物の添加の触媒効果を示すために、精製サイクル1.1および1.2のA280の吸光度クロマトグラムを、オーバーレイにおいて比較した(
図5)。
【0153】
溶出ステップ1および溶出ステップ2から回収された溶出した標的の量を、切断された標的のA280の吸光度および分子消衰係数を用いて決定した。インテイン-Cタグ付けされたタンパク質の総結合量を、溶出した標的、および浄化相の間に残留インテイン-Cフラグメントと一緒に放出された残留インテイン-C標的を用いて計算した。総結合インテイン-C標的あたりの、溶出相の間にタグなしで放出された標的の収率を、計算した。溶離した13kDaのタグなし標的の収率を、キャプチャー条件下において、総結合インテイン-C標的の10.91%であるものと計算し(収率)、一方、総結合タンパク質のうちの13.88%は、イミダゾールを多く含むキャプチャーバッファー(A.2)を用いて溶出させた。合計の溶出された切断標的あたりの、溶出ステップ1(E1)間に回収された切断標的の収率は、イミダゾールを多く含むキャプチャーバッファー(A.2)を用いることにより、4.20%から19.35%に増大した(表5および
図6)。
【0154】
この例は、インテインの機能性に対する、および特に反応の動力学に対する、イミダゾールの正の効果を、インテイン精製プロセスについて、溶出相の間にpHシフトを導入しつつ(例2、溶出ステップ1の間の11.15%まで増大した溶出収率)、ならびにpHシフトを導入することなく(例3、溶出ステップ1(E1)の間の15.15%の溶出収率の増大)、検証することができたことを示す。
【0155】
溶出(E1、E2)の試料を、
図7において示されるように、SDS-PAGEゲル電気泳動により分析した。溶出画分からの純度を、LabChip(登録商標)GXII(商標)マイクロ流体電気泳動分離系を、Protein Expressアッセイ試薬キットおよびLabChip(登録商標)HT Protein Express Chipと組み合わせて用いて計算した。計算された溶出した標的純度は、溶出画分1においては非常に低かったが、溶出画分2においてはより高かった。pH9におけるカラムのインキュベーション時間が長いほど、溶出画分2において測定されたタンパク質の量および純度は高かった。イミダゾールを用いる設定における量および純度レベルは、溶出1において、ならびに溶出2において、62.66%より上で一定の純度を示した。記録された純度を、表5において列記する。
図8におけるオーバーレイは、全ての溶出画分の純度を示す。
【0156】
表5は、インテイン-N樹脂プロトタイプカラムによる溶出サイクル研究を示す。2つの連続する精製サイクルから回収された溶出した標的のパーセンテージを、溶出画分(E1+E2)および再生画分(CIP:残留するインテイン-C標的およびインテイン-Cフラグメント(IC))から回収された総タンパク質量を用いて計算した。イミダゾール含有バッファーA.2についての溶出したタンパク質の量および収率(表4)を、参照条件下における溶出したタンパク質の量および収率(キャプチャーバッファーA.1-表4)に対して比較した。10.91~13.88%の収率を、溶出物から回収された標的および総結合インテイン-C標的を用いて計算した。イミダゾールを多く含むキャプチャーバッファーを用いると、純度がより低いことが計算された。
表5
【表5】
【0157】
例4:pHシフトを導入する、またはこれを導入しない、2つの標的分子の溶出の間の異なる滞留時間による、アゾールにより引き起こされるインテイン切断プロセス
第3世代のインテイン-Nリガンド(R46-358132)を担持するインテイン-N樹脂プロトタイプカラムを、5つのインテイン精製のために用いた。イミダゾールなどの添加物を通したインテイン切断の改善(例2、3)を、より長い滞留時間下において、溶出相の間にpHシフトを導入して、またはこれを導入せずに、研究した。
【0158】
1つの参照ラン(サイクル1)を、精製プロセス全体の間の5分間の滞留時間(0.2ml/分の流速)を用いて、その研究についての参照ランとして達成した。さらに、インテイン-N樹脂プロトタイプカラムを、コンビナトリアルな方法の流速が与えられる、さらなる4つの連続するサイクル(サイクル2~5)において用いた。溶出の滞留時間を10分間に設定しつつ、4つの異なる溶出バッファー(切断バッファーB.1およびB.2、ならびにキャプチャーバッファーA.1およびA.2)を用いた。サイクル2~5中の他のプロセスステップは、1ml/分の流速(1分間の滞留時間)により達成した。13kDaのインテイン-Cタグ付け標的を、Strep-Tag(登録商標)精製を用いて予備精製し、1mg/mLの濃度まで希釈した。インテイン-N樹脂プロトタイプカラムを、10CVのキャプチャーバッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)で平衡化し、予備精製されたインテイン-C標的を、5CVで、プロトタイプカラムにロードした。ローディングは、キャプチャー条件(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)下において達成した。10CVのキャプチャーバッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)により不純物を洗い流した。13kDaの標的分子の溶出は、示される切断バッファーB.1およびB.2のうちの一方を用いて、より低いpHレベルへのpH低下ステップにより活性化した。サイクル1および2のために用いられた標準的な切断バッファーは、バッファーB.1(100mMのTris、200mMのNaCl、pH7)であった。このバッファーは、0.3Mのイミダゾールを多く含み(B.2)、精製サイクル3のために用いられた。
【0159】
インテイン精製の次の2つのラウンド(サイクル4および5)の13kDaの標的の溶出は、キャプチャーバッファーA.1(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)および同じpHを有するイミダゾールを多く含むキャプチャーバッファーA.2(0.3Mのイミダゾール)により行われ、これは、溶出相におけるpHレベルの低下が与えられないことを意味する。記載される5つの精製サイクルの連続する溶出は、2ステップのアプローチにおいて行われた。第1の溶出は、動的流れ下において、6CVの切断バッファーB.1およびB.2、ならびにキャプチャーバッファーA.1およびA.2により引き起こした。2時間の静的カラムインキュベーションを達成するためにカラムの流れを保留にした後で、4CVの切断バッファーB.1およびB.2、ならびにキャプチャーバッファーA.1およびA.2により、第2の溶出を引き起こした。クロマトグラフィーカラムは、例えば0.15MのH
3PO
4を含む、1~2のpHを有する、少なくとも5CVの酸性溶液を用いて再生し、インテイン精製の次のラウンドのために再使用した。2つのクロマトグラムのオーバーレイは、サイクル1~5の間の異なる溶出挙動を示す(
図9)。示されるように、0.3Mのイミダゾールの添加は、溶出1および2の間に、より高い溶出量をもたらした。
【0160】
溶出相の間に用いられたバッファー系に依存して、溶出したタグなしの13kDaの標的の量は、約0.40~0.91mgであった。インテイン-C標的ストックの切断活性に起因して、いくらかの未切断のインテイン-C標的が、溶出相の後でカラム上に残留した。総インテイン-C結合タンパク質を、浄化相の間に残留したインテイン-Cフラグメントと一緒に放出された、溶出した標的および残留するインテイン-C標的を用いて計算した。溶出ステップ1およびステップ2の間に溶出した標的の量を、5つ全てのサイクルについて、切断された標的のA280の吸光度および分子消衰係数を用いて計算した。量を、表6において列記する。流速を0.2ml/分から0.1ml/分に低下させることにより滞留時間を増大させるだけで、溶出収率は、94.80%から97.79%に増大し、第1の溶出ステップ(E1)の間に回収された切断された標的の収率は、81.57%から92.38%に、およびイミダゾール豊富なバッファー(切断バッファーB.1.)を添加することにより94.08%に増大した。精製サイクル5から計算された収率は、サイクル4と比較して23.31%増大し、一方、第1の溶出ステップ(E1)の間の標的放出は、キャプチャーバッファーA.1(サイクル4、
図10)の代わりにイミダゾールを多く含むキャプチャーバッファーA.2(サイクル5)を用いて、36.88%増大した。
【0161】
インテイン-C標的の総結合量あたりの、溶出相の間にタグなしで放出された標的の収率を計算した。収率は、切断バッファーB.1/B.2またはキャプチャーバッファーA.1/A.2を溶出バッファーとして用いて、それぞれ、>94.80%または66.02~89.33%であるものと計算した(表6)。イミダゾールを多く含むことにより、いずれのpH条件を用いても、溶出相の間に回収された標的の、より高い収率がもたらされた。
【0162】
例4のプロセス収率を、例3および2と比較した場合、例の間の達成されたプロセス収率が、溶出を引き起こすためのキャプチャー条件を用いて10.91~66.02%、および溶出の間にpH7へのpHシフトを用いて48.68%~94.80%異なることは、明らかである。
【0163】
LabChip(登録商標)GXII(商標)マイクロ流体電気泳動分離系をProtein Expressアッセイ試薬キットおよびLabChip(登録商標)HT Protein Express Chipと組み合わせて用いて、溶出画分からの純度を計算した。計算された溶出した標的の純度は、一貫して70.81%より高い。記録した純度を、表6において列記する。
図12におけるオーバーレイは、全ての溶出画分の純度を示す。
図11において示されるように、溶出の試料(E1、E2)を、SDS-PAGEゲル電気泳動により分析した。
【0164】
表6は、インテイン-N樹脂プロトタイプカラムによる溶出サイクル研究の結果を示す。インテイン精製の5つの連続するサイクルの間に溶出した標的のパーセンテージを、溶出(E1+E2)および再生画分(CIP:残留するインテイン-C標的およびインテイン-Cフラグメント(IC))から回収された総タンパク質量を用いて計算した。溶出した標的の量を、標準的な条件下において、pHシフトを導入して(サイクル1および2)、またはこれを導入せずに(サイクル4)、ならびに、溶出の間に5(サイクル1)または10(サイクル2~5)分間の滞留時間による、溶出に対して比較した。流速を変化させることにより、第1の溶出ステップ(E1)の間に10.81%高い標的の収率を回収することができた。溶出バッファーがイミダゾールをさらに多く含むことにより、値が、第1の溶出ステップの間に12.51%高い収率まで増大した。精製サイクル5の第1の溶出ステップ(E1)の間にイミダゾールを含有する溶出バッファー(A.2)を用いて、36.88%高い収率を回収した。サイクル3のE2画分以外の全ての画分は、ほぼ70~90%純粋なタグなし標的を含んだ。
表6
【表6】
【0165】
例5:インテインカラム精製の溶出の間に様々な滞留時間を用いる、時間依存的なインテイン切断プロセス
この例において、インテイン精製方法の流速を、0.1ml/分に設定した。溶出相の間のより長い滞留時間による、インテイン切断プロセスの時間依存的な最適化を調べた。
【0166】
この例は、イミダゾールのような添加物の添加により引き起こされる触媒性効果が、速い流速(より短い滞留時間)下において(例2)、インテイン精製プロセスに対してより実質的であることを示す。例は、かかる触媒性の剤の添加が、標的溶出収率を増大させ、反応を加速しつつ、例えばローディングと溶出相との間で(例4)、pHを一定に保つことをさらに示す。効果は、一般的に、少なくとも2つの異なるインテイン-Cタグ付け標的分子について検証することができた。
【0167】
第3世代のインテイン-Nリガンド(R44-358132)を担持するインテイン-N樹脂プロトタイプカラムを、4つの連続するサイクルにおいて用いたが、溶出相の間の流速を変化させた。インテイン精製の1つのサイクルは、全てのプロセスステップ(サイクル4)中で1ml/分の流速により達成された。精製サイクル1~3において、平衡化、試料ローディング、洗浄およびCIP相のための流れに1ml/分の流速、ならびに溶出(サイクル1/2/3)のために0.1/0.2および0.5ml/分の流速を用いて、2つの異なる流速の組み合わせアプローチを検討した。
【0168】
全ての連続する精製サイクルについて、予備精製された13kDaのインテイン-Cタグ付けされた標的(Strep-Tag(登録商標)精製を用いる)を調製し、1mg/mLの濃度まで希釈した。インテイン-N樹脂プロトタイプカラムを、5CVのキャプチャーバッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)で平衡化し、予備精製されたインテイン-C標的を、5CVでプロトタイプカラムにロードした。ローディングは、キャプチャー条件(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)下において達成した。5CVのキャプチャーバッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)で、不純物を洗い流した。切断バッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH7)を用いてのより低いpHレベルへのpH低下ステップにより、13kDaの標的分子の溶出を活性化した。4つのサイクルの溶出は、2ステップのアプローチにおいて行われた。第1の溶出を、5CVの切断バッファーにより、動的流れ下において引き起こした。2時間の静的カラムインキュベーションを達成するためにカラムの流れを保留に設定した後で、5CVの切断バッファーにより、第2の溶出を引き起こした。例えば0.15MのH3PO4を含む、1~2のpHを有する10CVの酸性溶液を用いて、クロマトグラフィーカラムを再生し、上記のように、インテイン精製の次のラウンドのために再使用した。
【0169】
サイクル1、2、3および4のオーバーレイ(
図13)は、溶出ステップの間に滞留時間を変化させた場合の、異なる溶出挙動を示す。
総結合タンパク質の量、ならびに全ての精製サイクルにおいて溶出およびCIP相から回収されたタンパク質量を、表7において列記し、回収されたタンパク質量を、
図14において示す。表7は、4つのインテイン精製サイクルから異なる溶出流速を用いて回収されたタンパク質量を含む。結合したタンパク質の総量に相対的な、相対的タンパク質量を、溶出およびCIP相から回収した。
表7
【表7】
【0170】
総結合タンパク質の計算された量は、1.04~1.08mgで、ほぼ一定であり続けた。全てのサイクルの間に溶出相から回収された累積タンパク質量は、0.74~0.76mgで一定であり続け、このことは、カラム上に結合した総インテイン-Cタグ付け標的と比較して、約70.37%~71.15%の切断された生成物を意味する。溶出相から回収されたタンパク質の総量(収率)のうちの47.37%のみが、全てのプロセスステップについて1ml/分での一定の流速を用いた参照泳動の第1の溶出相(サイクル4)から回収された。より低い0.5ml/分または0.2ml/分の流速により、60.81%または75.34%の収率を、第1の溶出ステップから回収した。0.2ml/分から0.1ml/分への流速の低下は、第1の溶出ステップから回収されたタンパク質の相対量を、86.49%まで増大させた。
【0171】
先の例は、プロセス流速を0.2ml/分から1ml/分および0.1ml/分のコンビナトリアル流速に変化させることによるタンパク質収率の増大を示した(例4、サイクル1および2)が、この例は、増大された滞留時間により観察することができた、溶出相1の間の増大された切断効果を検証した。このことは、溶出の間のみの、より小さい流速(0.5/0.2/0.1ml/分)を意味する。溶出ステップ1の間に回収された溶出量は、38.30%増大した(サイクル1をサイクル4と比較したもの)。
【0172】
例6
標準的な切断条件(pH7)においてイミダゾールを用いて増大されたインテイン切断を2つの高度にグリコシル化された標的分子により試験したもの。
両方の第3世代のインテイン-Nリガンド(R46-358132およびR49-358132)を担持する例示的なインテイン-N樹脂プロトタイプカラムを、各々、2つのインテイン精製サイクル(サイクル1および2、ならびにサイクル3および4)のために用いた。イミダゾールを多く含む切断条件バッファー系(pH7)を用いるインテイン機能性の改善を、2つの高度にグリコシル化された標的分子の精製について評価した。
【0173】
第1の2つの精製サイクルは、hEPOとして記載されるインテイン-Cタグ付け標的分子により行った(対応するUniProtKB-P01588(EPO_HUMAN)、MW=19kDaから修飾された)。インテイン-Cタグを、シグナル結合ペプチドと一緒にhEPO配列に融合させ、融合タンパク質(28kDa)を、CHOZN(登録商標)GS-/-細胞株中で発現させ、上記のように調製した。第3および第4の精製運用は、インテイン-Cタグ付けされた、S1-RBDとして記載されるSARS-CoV-2のS1スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を用いて行われた(UniProtKB-P0DTC2(SPIKE_SARS2)、MW=141kDaに対応するが、一方、RBDは26kDaのMWを有する)。哺乳動物シグナルペプチド(33kDa)を含むインテイン-Cタグ付けされたS1-RBDを、HEK293細胞を用いて発現させた。全ての精製ランにおいて、分泌およびプロセッシングされたインテイン-Cタグ付け標的分子(24kDaおよび31kDaのサイズを有するhEPOおよびS1-RBD)を含む、清澄化された哺乳動物細胞の上清(例1において記載される調製物)を、この例において用いた。分子のストックを、0.1~0.3mg/mlおよびpH9に調整した。
【0174】
インテイン-Nが固定された樹脂を、10CVのキャプチャーバッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)で平衡化し、上で参照された清澄化哺乳動物細胞上清を含むインテイン-Cタグ付け標的のうちの1つを、5CVで、インテイン-N樹脂プロトタイプカラムのうちの1つに、キャプチャー条件(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)下においてロードした。10CVのキャプチャーバッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH9)で、未結合のタンパク質を洗浄した。この例においてB.1として記載される標準的な切断バッファー(100mMのTris、200mMのNaCl、pH7)は、0.3Mのイミダゾールを多く含んだ(B.2)。示された切断バッファーB.1(サイクル1および3)またはB.2(サイクル2および4)のうちの1つを用いて、より低いpH値へのpHシフトステップにより、インテイン切断反応およびタグなしの標的の放出を引き起こし、溶出は、2ステップのアプローチにおいて達成した。第1の溶出を、動的流れ下において、6CVの切断バッファーB.1またはB.2により引き起こした。2時間の静的カラムインキュベーションを達成するために流れを保留に設定した後で、4CVの切断バッファーB.1またはB.2により、第2の溶出を引き起こした。クロマトグラフィーカラムを、例えば0.15MのH3PO4を含む、1~2のpHを有する、少なくとも5CVの酸性溶液を用いて再生し、インテイン精製の次のサイクルのために再使用した。
【0175】
A280の吸光度クロマトグラムを、溶出およびCIP画分中のタンパク質量に関して、適切な標的の消衰係数を用いて分析した。クロマトグラムの2つの切り抜きのオーバーレイは、サイクル1および2の間、ならびに19kDaの標的分子の溶出(
図15A)、ならびにサイクル3および4の間、ならびに26kDaの標的分子の溶出(
図15B)の異なる溶出挙動を示す。計算された、溶出1、2およびCIPステップの間に回収されたタンパク質量を、表8において列記する。hEPO標的の溶出の量は、S1-RBP標的について、用いられた切断バッファーB.1またはB.2に依存して、約0.46~0.69mgおよび0.23~0.25mgであった。浄化相の間に残留したインテイン-Cフラグメントと一緒に放出された、溶出した標的および残留するインテイン-C標的を用いて、総インテイン-C結合タンパク質を計算した。総結合インテイン-C標的あたりの、溶出相の間にタグなしで放出された標的の収率を、計算した。2つの標的について、標準的な切断バッファーB.1を用いて、収率を、32.89%(サイクル1)および80.54%(サイクル3)であるものと計算した。対照的に、切断バッファーB.2を用いて、45.11%(サイクル2)および82.49%(サイクル4)の収率が達成された(表8)。
【0176】
したがって、両方のプロトタイプカラムおよび両方の標的分子を用いて、イミダゾールを多く含むバッファーを用いて、溶出相1のみの間にの収率ならびに溶出した標的の量が増大し(E1の間の5.87%および15.39%高いタンパク質収率)、このことは、インテイン切断の動力学および性能に対するアゾールおよびアゾール様構造の正の効果は、高度にグリコシル化されたタンパク質に対して適用可能であることを示している。
【0177】
表8は、2つのインテイン-N樹脂プロトタイプカラムによるサイクル研究の結果を示す。インテイン精製の4つの連続するサイクルの間に溶出した標的のパーセンテージを、溶出(E1+E2)および再生画分(CIP:残留するインテイン-C標的およびインテイン-Cフラグメント(IC))から回収された総タンパク質量を用いて計算した。溶出した標的の量を、標準的な条件(B.1)下における溶出に対して比較した。したがって、両方の溶出ステップを考慮して、12.22%および1.95%高い収率の切断された標的を、イミダゾールを含有する溶出バッファー(B.2)を用いて、精製サイクル2および4の間に回収した。サイクル2および4の第1の溶出ステップ(E1)の間に、5.87%および15.39%高い標的量を、回収することができた。結果を、
図16において表す。
表8
【表8】
【0178】
選択された画分の試料サイズを、
図17において示されるように、SDS-PAGEゲル電気泳動により分析した。ゲル上で、全ての精製泳動の溶出画分1および2におけるほぼ純粋なバンドが観察された。このことは、溶出の間に、高純度レベルのタグなしの標的が放出されたことを意味する。記録に値することとして、おそらくは2つの標的の異なるグリカンパターンに起因して、溶出画分においてシャープなバンドは検出されなかった。第1に、グリコシル化は、標的分子をいくつかの方法において修飾し、および第2に、グリコシル化は、タンパク質のサイズを変更し、それによりSDS-Page上での流れ挙動を変更し、SDS-Page上で予想されたものよりも大きなサイズをもたらす。カラムの過負荷効果に起因して、いくらかの未切断のインテイン-C標的もまた観察された。
【0179】
本開示の多様な態様が、上に記載されてきたが、一方で、それらは、例として提示されたものであり、限定ではないことが、理解されるべきである。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細において多様な変化を行ってもよいことは、関連する分野の当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、上記の例示的な態様のうちのいずれかにより限定されるべきではなく、以下の請求の範囲およびそれらの均等物に従ってのみ、定義されるべきである。
【国際調査報告】