(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-17
(54)【発明の名称】粉末床溶融印刷方法のための新規ポリアミド含有粉末及びその印刷物品
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20231010BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20231010BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231010BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20231010BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20231010BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20231010BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20231010BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B29C64/314
C08L77/06
C08K3/013
B33Y70/00
B33Y80/00
B29C64/153
B29C64/165
C08J5/00 CFG
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519833
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2021076606
(87)【国際公開番号】W WO2022069450
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ゴヤール,ローレン
(72)【発明者】
【氏名】ヒメネス,ジェローム
【テーマコード(参考)】
4F071
4F213
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA55
4F071AB26
4F071AE17
4F071AF20Y
4F071BA01
4F071BB13
4F071BC07
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4J002BD152
4J002CF162
4J002CF182
4J002CL002
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4J002DE236
4J002DF016
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DK006
4J002DL006
4J002FA042
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD130
4J002GH00
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、ポリアミド及び5質量%未満の少なくとも1種の充填剤を含む3D印刷可能粉末組成物に関する。本発明はまた、3D印刷可能粉末の調製方法、及び3D印刷物品の調製のためのその使用法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式
【化1】
(式中、-E-及び-J-は同一又は異なり、互いに独立して、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状のアルキレン、又は芳香族2価部分を表わし、
-G-は、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状のアルキレンを表し、
-L-は、sが0~6の範囲の整数である-(CH
2)
s、又は
【化2】
(式中、-A-は、rが1~6の範囲の整数である-(CH
2)
r-、シクロヘキシレン基、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-O-、zが2~12の範囲の整数である、好ましくはz=2、3、5、6、又は12である-O-(CH
2)
z-O-、-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-、-O-Ph-O-、-S-、-S-S-、-S-(CH
2)
3-S-、-CO-又はSO
2-を表す)を表し、
-R1、-R2、-R3、-R4、-R5、-R6、-R7、及びR8は同一又は異なり、互いに独立して、-H、(C1-C6)アルキル基、-Cl、-Br、又はIを表し、
xは0~6の範囲の整数であり、
yは2~11の整数であり、
n+p+q=1、ただし、p≠0かつq=0、又はp=0かつq≠0、又はp≠0かつq≠0であり、
n≧0.1である)ポリアミド(PA)と、
3D印刷可能粉末の質量に対して、5質量%未満の少なくとも1種の充填剤とを含む、
含む3D印刷可能粉末。
【請求項2】
ポリアミド(PA)が、以下のコモノマー:
式(I)
【化3】
のジアミン、
式(II)
HOOC-(CH
2)
y-COOH (II)
の二酸、
及び、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の脂肪族、又は芳香族二酸又はジアミン、又は脂肪族アミノ酸から選択される少なくとも1種の追加のコモノマー(III)、
から調製された、請求項1に記載の3D印刷可能粉末。
【請求項3】
ジアミン(I)が、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4、4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4-アミノフェニルジスルフィド、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ジアニリン、4,4’-(トリメチレンジチオキシ)ジアニリン、4,4’-(テトラメチレンジオキシ)ジアニリン、4,4’-(ペンタメチレンジオキシ)ジアニリン、4,4’-(ヘキサメチレンジオキシ)ジアニリン、4,4’-ドデカンジイルジオキシジアニリン、2,2’-[1,2-エタンジイルビス(オキシ-2,1-エタンジイルオキシ)]ジアニリン、3,3’-[1,4-フェニレンビス(オキシ)]ジアニリン、2,2’-(1,3-プロパンジイルジスルファンジイル)ジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-(プロパン-2,2,ジイル)ジアニリン、4,4’-シクロヘキシリデンジアニリン、及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリンから選択される、
請求項2に記載の3D印刷可能粉末。
【請求項4】
二酸(II)が、セバシン酸、アジピン酸、及びドデカン二酸から選択される、
請求項2又は3に記載の3D印刷可能用粉末。
【請求項5】
ポリアミド(PA)が、ジアミン(I)、二酸(II)、及び1~90mol%の少なくとも1種の追加のコモノマー(III)から調製される、
請求項2~4のいずれか一項に記載の3D印刷可能粉末。
【請求項6】
少なくとも1種の追加のコモノマー(III)が、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、及びデカンジアミンなどのジアミン、ヘキサン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸などの二酸、及びアミノヘキサン酸、11-アミノウンデカン酸、13-アミノトリデカン酸などのアミノ酸から選択される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の3D印刷可能粉末。
【請求項7】
ポリアミド(PA)が、少なくとも10000g.mol
-1、好ましくは少なくとも15000g.mol
-1、さらに好ましくは少なくとも17500g.mol
-1の数平均分子量Mnを有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の3D印刷可能粉末。
【請求項8】
3D印刷可能粉末の質量に対して、2質量%未満、好ましくは1質量%未満の充填剤を含み、さらに好ましくは3D印刷可能粉末は実質的に充填剤を含まない、
請求項1~7のいずれか一項に記載の3D印刷可能粉末。
【請求項9】
好ましくは、流動助剤、遅延剤、衝撃改良剤、酸化防止剤、共結晶化剤、可塑剤、染料、熱安定剤、帯電防止剤、ワックス、抗核剤、及び/又は相溶化剤から選択される添加剤をさらに含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の3D印刷可能粉末。
【請求項10】
重縮合によるポリアミド(PA)の調製と、少なくとも1種の充填剤が存在する場合には、該少なくとも1種の充填剤と混合する工程とを含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の3D印刷可能粉末の調製方法。
【請求項11】
ポリアミド(PA)が、反応器内で実施される以下の工程、
i)ジアミン(I)、二酸(II)、及び追加のコモノマー(複数種可)(III)から、塩(A)を形成する工程と、
ii)塩(A)を加圧下で加熱する工程と、
iii)水を除去する工程と、
により調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポリアミド(PA)が以下の工程、
a)ジアミン(I)、二酸(II)、及び追加のコモノマー(複数種可)(III)を、共回転する少なくとも2つの搬送スクリューを備える押出機に導入する工程と、
b)コモノマーを混合する工程と、
c)搬送スクリューにより搬送される材料にせん断操作及び減圧操作を連続的に行い、コモノマーを重縮合する工程と、
d)混合工程と重縮合工程との間で、搬送スクリュー上の材料の搬送により連続的に更新される材料のプラグを形成する工程であって、前記材料プラグは、前進する材料からなり、材料の通過に利用できる空間全体を充填し、蒸気、特に発生し得るモノマー蒸気に対して密閉される領域を形成する工程と、
により調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ポリアミド(PA)が以下の工程、
a’)ポリマー(P)を、共回転する少なくとも2つの搬送スクリューを備える押出機に導入する工程であって、前記ポリマー(P)は、ジアミン(I)及び/又は二酸(II)及び/又は追加のコモノマー(複数種可)(III)のホモポリマー又はコポリマーである工程と、
b’)ジアミン(I)、二酸(II)、及び追加のコモノマー(複数種可)(III)から選択される少なくとも1種のコモノマーを、前記押出機に導入する工程と、
c’)ポリマー(P)及び少なくとも1種のコノマーを混合する工程と、
d’)搬送スクリューにより搬送される材料にせん断操作及び減圧操作を連続的に行い、ポリマー(P)及びコモノマーを重縮合する工程と、
e’)混合工程と重縮合工程との間で、搬送スクリュー上の材料の搬送により連続的に更新される材料のプラグを形成する工程であって、前記材料のプラグは、前進する材料からなり、材料の通過に利用できる空間全体を充填し、蒸気、特に発生し得るモノマー蒸気に対して密閉される領域を形成する工程と、
により調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載の3D印刷可能粉末、又は請求項10~13のいずれか一項に記載の方法により得られた3D印刷可能粉末から作製された、三次元印刷物品。
【請求項15】
NF EN ISO 527-2及びASTM D638-08規格により測定されて、少なくとも2000MPaのヤング率を有する、請求項14に記載の三次元印刷物品。
【請求項16】
NF EN ISO 527-2及びASTM D638-08規格により測定されて、少なくとも45MPa、好ましくは少なくとも60MPaの破断強度を有する、請求項14又は15に記載の三次元印刷物品。
【請求項17】
選択的レーザ焼結法、又はマルチジェット融合法などの粉末床融合法を用いる、請求項14~16のいずれか一項に記載の三次元印刷物品の調製方法。
【請求項18】
三次元印刷物品の製造のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の、又は請求項10~13のいずれか一項に記載の方法により得られた3D印刷可能粉末の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元物品作製のためのアディティブ法で使用され得る3D印刷可能粉末に関する。本発明によれば、3D印刷可能粉末は、特定のジアミン、特定の二酸、及び任意の追加のコモノマー(複数種可)を反応させることにより調製されるポリアミドを含む。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、カスタムメイドで低コストの三次元(3D)製品を作製できる3D印刷技術が登場し、転換期を迎えている。このような技術により、3D物品は1層ずつ作製される。この目的のために、上流のコンピュータ支援設計ソフトウェア(CAD)により、得ようとする3D物品の三次元構造はスライスに分割される。そして、3D物品全体が作製されるまで、材料の連続したスライス又は層を積層することにより、3D物品を作製する。つまり、以下の2進法を繰り返し行うことで、層の形態でスライスを1つずつ作製する。
-プラットフォーム上又は既存の連結層上に、所望の物品を作製するために必要な材料の層を堆積させ、次いで、
-前記層を凝集させ、先行する層が存在する場合には、予め定められたパターンにしたがってこの層を前記層に接着させる。
【0003】
このように、3D物品は、互いに接着された基本の層を重ね合わせることで構成されている。
【0004】
従来の3D印刷では、特定の材料に限定されていた。これらの材料は、耐熱性(すなわち、アディティブ法の間、加熱により劣化が生じないこと)、耐湿性、耐放射線性、及び耐候性を有し、遅い固化時間を有すべきである。重要なことは、崩壊しない十分な機械的強度を持つ3D物品を作製するために、スライス又は層が互いに接着することである。理想的には、材料は低い融解温度及び適切な粘度又は流動性も備えるべきである。
【0005】
重要なのは、アディティブ法の後、得られる3D物品が機械的特性などの所望の特性を持ち、所望の寸法、形状を正確に有していることである。
【0006】
材料は通常、ポリマー(複数種可)と、材料の特性や得られる3D物品の特性を調整するために使用される添加剤との組み合わせで構成されている。例えば、染料、充填剤、粘性剤、流動助剤などが通常添加される。充填剤は、熱伝導性に影響を与えるため、非常に重要である。熱伝導率はアディティブ法で重要な意味を持つ。流動助剤は、アディティブ法で使用するために、材料の流動性を調整するために使用される。
【0007】
ポリマーの適性は、その化学構造に依存する熱的及び物理的特性により決まる。溶融温度及び結晶化温度は、得られる粉末の効果的な焼結と、最終的な3D印刷物品の満足のいく強化とを可能にする必要があるため、どちらも重要である。理想的には、熱伝導率が高く、処理ウインドウ(オンセット融解温度とオンセット結晶化温度との差として定義される)も高い。アディティブ法で使用するためには、少なくとも10℃の処理ウインドウが必要だと考えられる。
【0008】
また、得られる3D印刷物品が脆くならないように、高い弾性率、及び/又は破断強度、及び/又は破断伸びが要求される。
【0009】
もう一つの問題は、これらの材料のコストである。確かに、これらの材料及びその調製には高価であるおそれがある。
【0010】
選択的レーザ焼結(SLS)技術などのアディティブ法で最も頻繁に使用されるポリマーはポリアミド(PA)であり、ほとんどの場合、ポリアミド12及びポリアミド11である。ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリアセタールなどの、その他の半結晶性ポリマーが使用されている。また、ポリカーボネート及びポリスチレンなどの非晶質ポリマーも使用されている。
【0011】
ポリアミドを使用して良好な結果が得られている。市販のポリアミド12(Arkema社から販売されているOrgasol(登録商標)など)の焼結ウインドウは20~30℃、ヤング率は1.7~1.8GPa、破断強度は40~45MPa、破断伸びは15~20%である。
【0012】
ポリオレフィンを使用しても満足のいく結果が得られている。例えば、ポリプロピレンの焼結ウインドウは20~35℃である。
【0013】
さらに、アディティブ法の間、堆積した層の一部は、予め定められたパターンにより、凝集されない。この非凝集材料は、別の3D物品の作製に再利用することが望ましい。
【0014】
熱的及び機械的特性をさらに向上させるために、ポリマーの研究が行われてきた。特に、これまで良好な結果が得られていたことから、ポリアミドに着目して研究が行われてきた。例えば、特許出願WO2018/229126には、下記式、
【化1】
(式中、n
p+n
q+n
r+n
s=100、1≦np≦100、1<m≦20、R1は結合、任意にヘテロ原子を含み及び任意に置換されたC1-C15アルキル及びC6-C30アリールからなる群から選択され、R2は任意にヘテロ原子を含み及び任意に置換されたC1-C20アルキル及びC6-C30アリールからなる群から選択され、R3は任意にヘテロ原子を含み及び任意に置換されたC2-C20アルキル及びC6-C30アリールからなる群から選択される)のポリアミドの使用が記載されている。これらのコポリアミドは、高い転移ガラス温度及び低い融点を有することが報告されている。機械的特性及び再利用性については評価されていない。
【0015】
ポリアミドMXD.6(m-キシリレンジアミン及びアジピン酸から得られる)及びMXD.10(m-キシリレンジアミン及びセバシン酸から得られる)は、特許出願US2020/0010627、WO2020/165541、US2016/0215092、及びWO2018229126において、アディティブ法、特にSLSにおけるそれらの使用についても報告された。これらのポリアミドの処理ウインドウ、機械的特性、又は性についてのデータは提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】US2020/0010627
【特許文献2】WO2020/165541
【特許文献3】US2016/0215092
【特許文献4】WO2018229126
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、改善された機械的特性(高い弾性率及び/又は破断伸び、及び/又は破断強度)及び/又は改善された熱的特性(低い溶融温度及び/又は改善された処理ウインドウ)を有し、上記のような特性(例えば、耐熱性、耐湿性、耐放射線性、耐候性、凝固時間が遅い、流動性が良好で熱伝導率が良好)を有するアディティブ法で使用するための材料が必要となっている。重要なことは、材料が、期待される寸法及び形状、及び所望の物理化学的特性を有する3D物品を提供することである。非凝集材料は、他の3D物品の作製のために再利用することができれば有利である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この文脈において、本出願人は、
次の式
【化2】
(式中、-E-及び-J-は同一又は異なり、互いに独立して、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状のアルキレン、又は芳香族2価部分を表わし、
-G-は、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状のアルキレンを表し、
-L-は、sが0~6の範囲の整数である-(CH
2)
s、又は
【化3】
(式中、-A-は、rが1~6の範囲の整数である-(CH
2)
r-、シクロヘキシレン基、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-O-、zが2~12の範囲の整数である、好ましくはz=2、3、5、6、又は12である-O-(CH
2)
z-O-、-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-、-O-Ph-O-、-S-、-S-S-、-S-(CH
2)
3-S-、-CO-又はSO
2-を表す)を表し、
-R1、-R2、-R3、-R4、-R5、-R6、-R7、及びR8は同一又は異なり、互いに独立して、-H、(C1-C6)アルキル基、-Cl、-Br、又はIを表し、
xは0~6の範囲の整数であり、
yは2~11の整数であり、
n+p+q=1であり、
n≧0.1である)のポリアミド(PA)と、
3D印刷可能粉末の質量に対して、5質量%未満の少なくとも1種の充填剤とを含む、
3D印刷可能粉末を提供し、上記課題を解決した。
【0019】
好ましくは、本発明の文脈では、p≠0かつq=0、又はp=0かつq≠0、又はp≠0かつq≠0、すなわちp及びqの少なくとも一方が0とは異なる。
【0020】
本出願人は、これらの特定のポリアミドにより、驚くほど良好な機械的特性及び熱的特性を達成できることを意外にも発見した。充填剤(複数種可)は、非常に少量で使用することができ、又は必要ではない場合もある。さらに、凝固していない3D印刷可能粉末は、別の3D印刷物品の調製に再利用することができる。
【0021】
本発明による3D印刷可能粉末は、さらに、以下の特性のうちの1つ以上を有していてもよい。
【0022】
-ポリアミドPAは、以下のコモノマーから調製される。
【0023】
-式I
【化4】
のジアミン:
-式II
HOOC-(CH
2)
y-COOH (II)
の二酸:
-及び任意に、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の脂肪族、又は芳香族二酸又はジアミン、又は脂肪族アミノ酸から選択される少なくとも1種の追加のコモノマーIII、
-ジアミンIは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4-アミノフェニルジスルフィド、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ジアニリン、4,4’-(トリメチレンジオキシ)ジアニリン、4,4’-(テトラメチレンジオキシ)ジアニリン、4,4’-(ペンタメチレンジオキシ)ジアニリン、4,4’-(ヘキサメチレンジオキシ)ジアニリン、4,4’-ドデカンジイルジオキシ-ジアニリン、2,2’-[1,2-エタンジイルビス(オキシ-2,1-エタンジロキシ)]ジアニリン、3,3’-[1,4-フェニレンビス(オキシ)]ジアニリン、2,2’-(1,3-プロパンジイルジスルファンジイル)ジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-(プロパン-2,2,ジイル)ジアニリン、4,4’-シクロヘキシリデンジアニリン、及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリンから選択される、
-二酸IIは、セバシン酸、アジピン酸、及びドデカンジオ酸から選択される、
-ポリアミドPAは、コモノマーとしてのジアミンI及び二酸IIのみから調製される、
-ポリアミドPAは、ジアミンI、二酸IIから、及び1~90mol%の少なくとも1種の追加のコモノマーIIIから調製される、
-少なくとも1種の追加のコモノマーIIIは、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、及びデカンジアミンなどのジアミン、ヘキサン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸などの二酸、及びアミノヘキサン酸、11-アミノウンデカン酸、13-アミノトリデカン酸などのアミノ酸から選択される、
-ポリアミドPAは、少なくとも10000g.mol
-1、好ましくは少なくとも15000g.mol
-1、さらに好ましくは少なくとも17500g.mol
-1の平均分子量Mnを有する、
-3D印刷可能粉末は、3D印刷可能粉末の質量に対して、2質量%未満、好ましくは1質量%未満を含み、さらに好ましくは3D印刷可能粉末が実質的に充填剤を含まない、
-3D印刷可能粉末は、さらに、好ましくは、流動助剤(複数種可)、遅延剤(複数種可)、衝撃改良剤(複数種可)、酸化防止剤(複数種可)、共結晶化剤(複数種可)、可塑剤(複数種可)、染料(複数種可)、熱安定剤(複数種可)、帯電防止剤(複数種可)、ワックス(複数種可)、抗核剤(複数種可)及び/又は相溶化剤(複数種可)から選択される添加物を含む。
【0024】
本発明は、さらに、本発明による3D印刷可能粉末の調製方法に関する。本発明の文脈では、3D印刷可能粉末は、重縮合と、少なくとも1種の充填剤が存在する場合には、該少なくとも1種の充填剤と混合する工程とにより調製される。
【0025】
本発明による3D印刷可能粉末の調製方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を有していてもよい。
【0026】
-ポリアミドPAを調製するための工程が、反応器において実施され、以下の工程、
i)ジアミンI、二酸II、及び追加のコモノマー(複数種可)IIIから、塩Aを生成する工程と、
ii)塩Aを加圧下で加熱する工程と、
iii)水を除去する工程と、
を含む。
【0027】
-ポリアミドPAを調製するための工程が、以下の工程、
a)ジアミンI、二酸II、及び追加のコモノマー(複数種可)IIIを、共回転する少なくとも2つの搬送スクリューを備える押出機に導入する工程と、
b)コモノマーを混合する工程と、
c)搬送スクリューにより搬送される材料にせん断操作及び減圧操作を連続的に行い、コモノマーを重縮合する工程と、
d)混合工程と重縮合工程との間で、搬送スクリュー上の材料の搬送により連続的に更新される材料のプラグを形成する工程であって、前記材料プラグは、前進する材料からなり、材料の通過に利用できる空間全体を充填し、蒸気、特に発生し得るモノマー蒸気に対して密閉される領域を形成する工程と、
を含む。
【0028】
-ポリアミドPAを調製するための工程が、以下の工程、
a’)ポリマー(P)を、共回転する少なくとも2つの搬送スクリューを備える押出機に導入する工程であって、前記ポリマー(P)は、ジアミン(I)及び/又は二酸(II)及び/又は追加のコモノマー(複数種可)(III)のホモポリマー又はコポリマーである工程と、
b’)ジアミン(I)、二酸(II)、及び追加のコモノマー(複数種可)(III)から選択される少なくとも1種のコモノマーを、前記押出機に導入する工程と、
c’)ポリマー(P)及び少なくとも1種のコノマーを混合する工程と、
d’)搬送スクリューにより搬送される材料にせん断及び減圧操作を連続的に行い、ポリマー(P)及びコモノマーを重縮合する工程と、
e’)混合工程と重縮合工程との間で、搬送スクリュー上の材料の搬送により連続的に更新される材料のプラグを形成する工程であって、前記材料のプラグは、前進する材料からなり、材料の通過に利用できる空間全体を充填し、蒸気、特に発生し得るモノマー蒸気に対して密閉される領域を形成する工程と、
を含む。
【0029】
本発明はまた、本発明による3D印刷可能粉末から、又は本発明による方法により得られた3D印刷可能粉末から作製された3D印刷物品に関する。本発明の文脈では、3D印刷物品は、有利には、NF EN ISO 527-2及びASTM D638-08規格により測定されて、少なくとも2000MPaのヤング率を有する。本発明の文脈では、3D物品は、有利には、NF EN ISO 527-2及びASTM D638-08規格により測定されて、少なくとも45MPa、好ましくは少なくとも60MPaの破断強度を有する。
【0030】
さらに、本発明は、アディティブ法、好ましくは選択的レーザ焼結法又はマルチジェット融合法などの粉末床融合法を用いる、本発明による3D印刷物品の調製方法に関する。
【0031】
最後に、本発明は、3D印刷物品の製造のための、本発明による3D印刷可能粉末の、又は本発明による方法により得られた3D印刷可能粉末の使用法に関する。
【0032】
3D印刷可能粉末
本発明の文脈では、「3D印刷可能粉末」は、選択的レーザ焼結(SLS)又はマルチジェット融合(MJF)技術などの3D印刷方法で使用可能な粉末又は粉末固体を意味する。したがって、そのような方法で使用するために、3D印刷可能粉末は、以下に詳述するように、特定のメルトフローインデックス、熱特性、及び粒度分布などの特定の特性を有することが好ましい。
【0033】
アディティブ法で使用するために、3D印刷可能粉末は、好ましくは、温度Tmfi、2.16kgの荷重で、1g/10分~40g/10分、より好ましくは3g/10分~30g/10分、さらに好ましくは5g/10分~15g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有する。メルトフローインデックスは、3D印刷可能粉末に存在するポリマー(複数種可)に応じてTmfiの値を示すISO 1133:2011規格により決定される。
【0034】
アディティブ法でうまく使用するために、3D印刷可能粉末は好ましくは特定の熱特性を有する。有利には、その融解ピーク温度Tmは、その結晶化ピーク温度Tcより少なくとも20℃高い。有利には、その融解ピーク温度Tmは、そのオンセット融解温度Tm onsetより最大で10℃高い。有利には、その開始溶融温度Tm startは、少なくともオンセット結晶化温度Tc onsetより高い。融解ピーク温度Tm、結晶化ピーク温度Tc、オンセット融解温度Tm onset、及び開始融解温度Tm startは、通常±10℃/分で、示差走査熱量測定(DSC)により決定することができる。
【0035】
融解ピーク温度Tmは、融解に対応する熱現象のピークの最大値で測定される温度に相当する。開始融解温度Tm startは、結晶子の融解現象の開始時、すなわち、最初の結晶子が融解し始める時に相当する。オンセット値は、ピークのベースラインと、ピークの最大温度未満の温度に対する融解ピークの最初の部分の最大の傾きを有する点への接線の交点に対応する外挿温度に相当する。結晶化のオンセットは、冷却段階において同様のグラフ法で決定される。結晶化ピーク温度は、結晶化に対応する熱現象のピークの最大値で測定した温度に相当する。
【0036】
アディティブ法で使用するために、3D印刷可能粉末は、好ましくは、約70℃~約250℃、好ましくは約110℃~約200℃の融解ピーク温度Tmを有する。
【0037】
アディティブ法で使用するために、処理ウインドウ(すなわち、結晶化ピークのオンセットと融解ピークのオンセットとの間のギャップ)は、有利には少なくとも10℃である。
【0038】
アディティブ法で使用するために、3D印刷可能粉末は、以下を有することが有利である。
【0039】
-平均粒子径d10は、20μm~60μmの範囲であり、
-平均粒子径d50は、40μm~130μmの範囲であり、
-平均粒子径d90は、75μm~200μmの範囲である。
【0040】
平均粒径d10、d50、d90及びd99は、乾式レーザグラニュロメトリ技術(レーザ回折式グラニュロメトリとしても公知である)により測定されて、前記粒子のそれぞれ10体積%、50体積%、90体積%及び99体積%が小さいサイズを有する粒子の平均サイズ(前記粒子の最高寸法に相当する)である。なお、粒子が球状である場合、平均粒子サイズd50が、平均粒径d50に相当する。
【0041】
本発明によれば、3D印刷可能粉末は、少なくとも1種のポリアミドと、3D印刷可能粉末の質量に対して5質量%未満の少なくとも1種の充填剤とを含む。
【0042】
本発明によれば、ポリアミド(PA)は、
【化5】
(式中、-E-及びJ-は同一又は異なり、互いに独立して、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状のアルキレン、又は芳香族2価部分を表わし、
-G-は、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状のアルキレンを表し、
-L-は、sが0~6の範囲の整数である-(CH
2)
s、又は
【化6】
(式中、-A-は、rが1~6の範囲の整数である-(CH
2)
r-、シクロヘキシレン基、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-O-、zが2~12の範囲の整数である、好ましくはz=2、3、5、6、又は12である-O-(CH
2)
z-O-、-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-、-O-Ph-O-、-S-、-S-S-、-S-(CH
2)
3-S-、-CO-又はSO
2-を表す)を表し、
を含み、
-R1、-R2、-R3、-R4、-R5、-R6、-R7、及びR8は同一又は異なり、互いに独立して、-H、(C1-C6)アルキル基、-Cl、-Br、又はIを表し、
xは0~6の範囲の整数であり、
yは2~11の整数であり、
n+p+q=1であり、
n≧0.1である。
【0043】
本発明において、「アルキレン」基とは、2価のアルキル基のことである。
【0044】
本発明の文脈では、「シクロヘキシレン」基は、2価のシクロヘキシル基である。シクロヘキシレン基の2つの結合は、1,2位、1,3位、又は1,4位であってもよい。
【0045】
ポリアミドPAは、p及び/又はqが0とは異なる場合、ランダムコポリマーであることが好ましい。すなわち、ポリアミドPAは、p≠0かつq=0又はp=0かつq≠0又はp≠0かつq≠0の場合、ランダムコポリマーであることが好ましい。
【0046】
-E-、-G-及び-J-は、同一でも又は異なっていてもよい。
【0047】
-E-及び/又は-G-及び/又は-J-が、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状のアルキレン基を表す場合、それらは、C2-C36アルキレン、好ましくはC4-C18アルキレン、さらに好ましくはC6-C12アルキレンから選択されることが好ましい。本実施形態によれば、アルキレンは、好ましくは、非環状、直鎖状、又は分枝状である。アルキレン基の例としては、ヘキシレン、1,2-、1,3-、又は1,4-シクロヘキシレン、トリメチルヘキサメチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、ジシクロヘキシレンメタン、1,3-シクロヘキサンビスメチレンである。好ましいアルキレン基は、ヘキシレン、シクロヘキシレン、トリメチルヘキサメチレン、及びジシクロヘキシレンメタンである。
【0048】
-L-は、芳香環とアミノ官能基との間のリンカーである。リンカー-L-は、NH2-(CH2)x-基に対して、オルト、メタ、パラの位置にあってもよいが、好ましくはメタ又はパラの位置である。
【0049】
好ましくは、x及びsは、同一又は異なり、0~4の範囲の整数、より好ましくは0~2の範囲の整数を表し、さらに好ましくは、x及び/又はsは0又は1に等しい。好ましい実施形態では、x=sである。
【0050】
第1の実施形態によれば、-L-は、-(CH2)s-を表し、sは上記で定義された通りである。
【0051】
第2の実施形態によれば、-L-は、以下、
【化7】
(式中、-A-はアミノ基に対してオルト位、メタ位又はパラ位であり、好ましくはメタ位又はパラ位である)を表す。好ましくは、本実施形態によれば、-L-及びA-の両方が、アミノ基に対してメタ位置にあるか、又はL-及びA-の両方が、アミノ基に対してパラ位置にある。本実施形態によれば、-A-は、好ましくは、上記で定義されたようなrを有する-(CH
2)
r-、-O-、-CO-、-SO
2-又はC(CH
3)
2-、より好ましくは-CH
2-、-(CH
2)
2-、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン又は1~4-シクロヘキシレンを表す。本実施形態によれば、-R5、-R6、-R7、及びR8は、好ましくは同一である。本実施形態によれば、-R5、-R6、-R7、及びR8は、好ましくは、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、-Cl、-Br又はIを表す。
【0052】
好ましくは、yは4~11の整数であり、好ましくは4~8の整数である。
【0053】
第1の実施形態によれば、p=q=0である。換言すれば、本実施形態によれば、ポリアミドPAは、下記式PA’、
【化8】
(式中、x、y、n、-R1、-R2、-R3、-R4及びL-は上記で定義された通りである)
を含む。
【0054】
第2の実施形態によれば、p≠0かつq=0である。本実施形態によれば、pは最大で0.9であり、0.005~0.9、好ましくは0.01~0.9、より好ましくは0.2~0.8の範囲であることが有利である。特定の実施形態において、-J-は、-(CH2)x-Ph-L-を表し、-E-は、-(CH2)y-ではない。別の特定の実施形態によれば、-E-は、-(CH2)y-を表し、-J-は-(CH2)x-Ph-L-ではない。
【0055】
第3の実施形態によれば、p=0かつq≠0である。本実施形態によれば、qは最大で0.9であり、0.005~0.9、好ましくは0.01~0.9、より好ましくは0.2~0.7の範囲であることが有利である。
【0056】
第4の実施形態によれば、p≠0かつq≠0である。本実施形態によれば、p+q≦0.9であり、p+qが、0.005~0.9、好ましくは0.01~0.9、より好ましくは0.2~0.7の範囲であることが有利である。特定の実施形態において、-J-は、-(CH2)x-Ph-L-を表し、-E-は、-(CH2)y-ではない。別の特定の実施形態によれば、-E-は、-(CH2)y-を表し、-J-は、-(CH2)x-Ph-L-ではない。
【0057】
本発明の文脈では、p≠0かつq=0、又はp=0かつq≠0、又はp≠0かつq≠0であることが好ましい。さらに好ましくは、
-p≠0、p≦0.9、かつq=0、又は
-p=0、q≠0、かつq≦0.9、又は
-p≠0、q≠0、かつp+q≦0.9である。
【0058】
好ましい実施形態によれば、-L-は、-(CH2)s-を表し、x及びsは同一又は異なり、それぞれ0~4、より好ましくは0~2の範囲、さらに好ましくは0又は1に等しい整数を表わす。
【0059】
別の好ましい実施形態によれば、xは、0~4、より好ましくは0~2の範囲、さらに好ましくは0又は1に等しい整数であり、-L-は、-(CH2)r-Ph-(アミノ基は好ましくはメタ位又はパラ位)を表し、rは上記で定義したとおりである。
【0060】
別の好ましい実施形態によれば、xは、0~4、より好ましくは0~2の範囲、さらに好ましくは0又は1に等しい整数であり、-L-は、-O-Ph-、-COPh-、SO2-Ph-、又はC(CH3)2-Ph(アミノ基は好ましくはメタ位又はパラ位)を表わす。
【0061】
別の好ましい実施形態によれば、-L-は、-(CH2)s-を表し、x及びsは同一又は異なり、それぞれ0~4、より好ましくは0~2の範囲、さらに好ましくは0又は1に等しい整数を表し、yは4~8の範囲の整数を表す。
【0062】
別の好ましい実施形態によれば、xは、0~4、より好ましくは0~2の範囲、さらに好ましくは0又は1に等しい整数であり、yは4~8の範囲の整数であり、-L-は、-(CH2)r-Ph-(アミノ基は好ましくはメタ位又はパラ位)を表し、rは上記で定義したとおりである。
【0063】
別の好ましい実施形態によれば、xは0~4、より好ましくは0~2の範囲、、さらに好ましくは0又は1に等しい整数であり、yは4~8の範囲の整数、-L-は、-O-Ph-、-COPh-、SO2-Ph-、又はC(CH3)2-Ph(アミノ基は好ましくはメタ位又はパラ位)を表わす。
【0064】
本発明によるポリアミドPAは、ジアミンI、二酸II、及び任意の追加のコモノマー(複数種可)IIIから調製される。
【0065】
本発明によれば、ジアミンIは、以下の式、
【化9】
(式中、x、-R1、-R2、-R3、-R4、及びL-は、上記で定義したとおりである)を有する。
【0066】
好ましくは、ジアミンIは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4-アミノフェニルジスルフィド、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ジアニリン、4,4’-(トリメチレンジオキシ)ジアニリン、4,4’-(テトラメチレンジオキシ)ジアニリン、4,4’-(ペンタメチレンジオキシ)ジアニリン、4,4’-(ヘキサメチレンジオキシ)ジアニリン、4,4’-ドデカンジイルジオキシ-ジアニリン、2,2’-[1,2-エタンジイルビス(オキシ-2,1-エタンジイルオキシ]ジアニリン、3,3’-[1,4-フェニレンビス(オキシ)]ジアニリン、2,2’-(1,3-プロパンジイルジスルファンジイル)ジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-(プロパン-2,2,ジイル)ジアニリン、4,4’-シクロヘキシリデンジアニリン、及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリンから選択される。特に好ましいジアミンIは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルメタンであり、特に、m-キシレンジアミンである。
【0067】
本発明によれば、二酸IIは、式HOOC-(CH2)y-COOH であり、yは上記で定義された通りである。
【0068】
好ましい実施形態によれば、二酸IIは、セバシン酸、アジピン酸、及びドデカン二酸から選択され、好ましくはセバシン酸である。
【0069】
本発明の文脈では、NIはジアミンIのモル数を表し、NIIは二酸IIのモル数を表し、NIIIはコモノマーIIIのモル数、又は1種以上のコモノマーIIIを使用する場合にはコモノマーIIIの全モル数を表す。コモノマー(複数種可)IIIは、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の脂肪族、又は芳香族二酸(複数種可)又はジアミン(複数種可)又は脂肪族アミノ酸(複数種可)又はそれらの混合物から選択することができる。1種以上のコモノマーIIIが存在する場合、NIII=NIII二酸+NIIIジアミン+NIIIアミノ酸である(式中、NIII二酸は、コモノマーIIIとして使用される、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の脂肪族、又は芳香族二酸(複数種可)の全モル数を表し、NIIIジアミンは、コモノマーIIIとして使用される、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の脂肪族、又は芳香族ジアミン(複数種可)の全モル数を表し、NIIIアミノ酸は、コモノマーIIIとして使用されるアミノ酸の全モル数を表わす。
【0070】
第1の実施形態によれば、ポリアミドPAは、コモノマーとして上記で定義したジアミンI及びニ酸IIのみを使用して調製される(換言すれば、NIII=0である)。本実施形態によれば、ポリアミドPAは、ジアミンI:二酸IIのモル比(すなわち、比NI/NII)が1:1~1.1:1の範囲、好ましくは1:1~1.05:1の範囲から調製される。
【0071】
本実施形態によれば、ポリアミドPAは、例えば、m-キシリレンジアミン、及びセバシン酸から調製されてもよい。
【0072】
第2の実施形態によれば、ポリアミドPAは、少なくとも1種の追加のコモノマーIII、特に1種、2種又は3種を使用して調製される。本実施形態によれば、少なくとも1種の追加のコモノマーIIIは、コモノマー(すなわち、ジアミンI、二酸II、及びコモノマー(複数種可)III)の総量に対して、0.5~90mol%、好ましくは1~90mol%の範囲の量で存在する。言い換えれば、本実施形態によれば、アミン官能基:酸官能基のモル比(すなわち、(2*NI+2*NIIIジアミン+NIIIアミノ酸)/(2*NII+2*NIII二酸+NIIIアミノ酸)の比)は、1:1~1.1、好ましくは1:1~1.05:1の範囲であり、NIII/(NI+NII+NIII)の比は、0.01~0.9の範囲である。
【0073】
本実施形態によれば、少なくとも1種の追加のコモノマーIIIは、コモノマーの総量に対して1~90mol%の範囲の量で存在する脂肪族アミノ酸であるか、又は、それぞれ、コモノマーの総量に対して、0.5~45mol%の範囲の量で存在する直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の脂肪族、又は芳香族ジアミン(複数種可)と直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の脂肪族、又は芳香族二酸(複数種可)との1:1~1.1:1、好ましくは1:1~1.05:1のモル比である。すなわち、本実施形態によれば、
-(2*NI+NIIIアミノ酸)/(2*NII+NIIIアミノ酸)は、1:1~1.1:1、好ましくは1:1~1.05:1の範囲であり、少なくとも1種の追加のコモノマーIIIが脂肪族アミノ酸である場合、NIIIアミノ酸/(NI+NII+NIIIアミノ酸)は0.01~0.9の範囲であり、又は、
-(NI+NIIIジアミン)/(NII+NIIIニ酸)の比は、1:1~1.1:1、好ましくは1:1~1.05:1の範囲であり、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の脂肪族、又は芳香族の二酸の混合物、及び直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の脂肪族、又は芳香族のニ酸の混合物をコモノマーIIIとして使用する場合、NIII二酸/(NI+NII+NIII)及びNIIIジアミン/(NI+NII+NIII)は、いずれも0.005~0.45の範囲である。
【0074】
本発明の文脈で使用され得るコモノマーIIIの例としては、以下のものが挙げられる。
【0075】
-直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の脂肪族、又は芳香族ニ酸、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、1,8-ノナンジアミン、1,5-ノナンジアミン、及びデカンジアミン、
-直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の脂肪族、又は芳香族二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸及びトリデカン二酸、
-直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の脂肪族アミノ酸、アミノヘキサン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノラウリン酸、13-アミノトリデカン酸。
【0076】
少なくとも1種のコモノマーIIIが存在する場合、ポリアミドPAは、例えば、以下から調製することができる。
【0077】
-m-キシリレンジアミン、セバシン酸、及びヘキサメチレンジアミン、又は
-m-キシリレンジアミン、セバシン酸、トリメチルヘキサメチレンジアミン。
【0078】
有利には、ポリアミドPAは、少なくとも10000g.mol-1、好ましくは少なくとも15000g.mol-1、さらに好ましくは少なくとも17500g.mol-1の数平均分子量Mnを有する。分子量は、HFIP-GPCにより決定され得る。
【0079】
有利には、ポリアミドPAは、2.14kgの負荷、240℃のメルトフローインデクサーで測定されて、100cm3/10分より低い溶融粘度率(MVR)を有し、好ましくは40cm3/10分より低く、さらに好ましくは25cm3/10分より低い。
【0080】
有利には、ポリアミドPAは、120℃~215℃、好ましくは150℃~185℃の範囲のオンセット溶融温度を有する。
【0081】
有利には、ポリアミドPAは、130℃~230℃、好ましくは180℃~210℃の範囲の溶融ピーク温度を有する。
【0082】
有利には、ポリアミドPAは、100℃~190℃、好ましくは135℃~170℃の範囲のオンセット結晶化温度を有する。
【0083】
有利には、ポリアミドPAは、110℃~180℃、好ましくは120℃~155℃の範囲の結晶化ピーク温度を有する。
【0084】
本発明による3D印刷可能組成物は、3D印刷可能組成物の質量に対して、5質量%未満、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1質量%未満、さらに好ましくは、3D印刷可能粉末が充填剤を実質的に含まない量で、少なくとも1種の充填剤をさらに含んでもよい。本発明の文脈では、「充填剤を実質的に含まない」とは、3D印刷可能組成物の質量に対して、0.1質量%未満の充填剤(複数種可)が存在することを意味し、好ましくは充填剤が存在しないことを意味する。
【0085】
本発明の文脈で使用され得る充填剤の例としては、ガラスビーズ、ヒュームドシリカ、中空ガラスビーズ、ガラス繊維、粉砕ガラス、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、カオリン(含水ケイ酸アルミニウム)、及びこれらの組み合わせなどの天然又は合成無機充填剤、セラミック繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、及びこれらの組み合わせなどのセラミック充填剤、炭素繊維、ポリアミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、液晶(LCP)繊維、Kevlar(登録商標)繊維、及びそれらの組み合わせなどの天然又は合成有機充填剤、ジルコニウム、タンタル、チタン、タングステン、ホウ素、アルミニウム及びベリリウムの無機酸化物、窒化物、ホウ化物及び炭化物、炭化ケイ素及び酸化アルミニウムなどの無機酸化物、炭化物及び窒化物が挙げられる。
【0086】
3D印刷可能組成物は、流動助剤(複数種可)、難燃剤(複数種可)、衝撃改良剤(複数種可)、抗酸化剤(複数種可)、共結晶剤(複数種可)、可塑剤(複数種可)、染料(複数種可)、熱安定剤(複数種可)、帯電防止剤(複数種可)、ワックス(複数種可)、抗核剤(複数種可)、及び/又は相溶化剤(複数種可)などの添加物をさらに含んでいてもよい。これらの添加剤が存在する場合、これらの添加剤の量は、3D印刷可能粉末組成物の質量に対して、好ましくは0.01質量%~25質量%の範囲である。
【0087】
特に好ましい添加剤は、流動助剤である。流動助剤(複数種可)が存在する場合、流動助剤(複数種可)の量は、3D印刷可能組成物の質量に対して、好ましくは0.2質量%~1質量%、より好ましくは0.2質量%~0.5質量%の範囲である。本発明の文脈では、流動助剤(複数種可)は、固体形態、例えば、粉末として存在する。好ましくは、流動助剤(複数種可)は、ナノ粒子又はミクロ粒子として存在する。
【0088】
本発明の文脈では、「ナノ粒子」は、ナノメートル基本粒径の粒子、すなわち、少なくとも1nmかつ100nm以下の基本粒径の粒子を意味する。「基本粒径」とは、ナノ粒子の最大の寸法を意味する。
【0089】
本発明の文脈では、「ミクロ粒子」は、ミクロメートル基本径の粒子、すなわち、少なくとも1μmかつ100μm以下の基本粒径の粒子を意味する。
【0090】
極性又は無極性の流動助剤は、本発明の文脈で使用してもよい。本発明の文脈で使用され得る流動助剤の例としては、ミクロメートルサイズのコロイダルシリカ、又はナノメートルサイズのヒュームドシリカなどの無極性又は極性シリカ、アルミナのマイクロ又はナノの球状粒子などのアルミナ、及び長鎖カルボン酸アミド、長鎖カルボン酸エステル、及び長鎖カチオニックカルボン酸などの少なくともポリアミドの融解温度マイナス10℃の融点を呈するワックスが挙げられる。
【0091】
本発明の文脈で使用することができる市販の流動助剤は、PQ Corporation社のGasil(登録商標)23F、Gasil(登録商標)M2、Gasil(登録商標)IJ1及びGasil(登録商標)HP210、Evonik Resources Efficiency GmbH社のSIPERNAT(登録商標)22S及びSIPERNAT(登録商標)50、Wacker社のHDK(登録商標)H20及びHDK(登録商標)N20、Evonik Resources Efficiency GmbH社のAEROXIDE(登録商標)OX50、AEROXIDE(登録商標)ALU C、AEROSIL(登録商標)COK84、AEROSIL(登録商標)200、AEROSIL(登録商標)R812及びAEROSIL(登録商標)R974、Cabot Corporation社のSPECTRAL(登録商標)81、SPECTRAL(登録商標)100、CAB-O-SIL(登録商標)M5である。
【0092】
特定の添加物として、難燃剤を挙げることができる。難燃剤(複数種可)が3D印刷可能粉末中に存在する場合、アルカリ又は土類アルカリスルホネート、スルホンアミド塩、パーフルオロボレート、ハロゲン化合物、ポリリン酸、リンペントキシド、有機ポリホスホナート及びリン含有有機化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択してもよい。有利には、非ハロゲン化難燃剤が好ましい。
【0093】
特定の実施形態において、無機難燃剤(複数種可)は、最終的には有機難燃剤(複数種可)と組み合わせて、添加剤として存在してもよい。本実施形態によれば、5質量%未満、好ましくは2質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満の無機難燃剤が、本発明による3D印刷可能組成物中に存在する。
【0094】
本発明の文脈では、衝撃改良剤は、エラストマーであってもよい。
【0095】
熱安定剤の例としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、リン化合物、塩化銅、ハロゲン化物塩が挙げられる。
【0096】
本発明による3D印刷可能組成物は、30℃~40℃の焼結ウインドウを有することが有利である。
【0097】
本発明による3D印刷可能組成物は、24μm~50μm、好ましくは30μm~45μmの範囲の平均粒子径d10を有することが好ましい。
【0098】
本発明による3D印刷可能組成物は、50μm~80μm、好ましくは54μm~75μmの範囲の平均粒子径d50を有することが好ましい。
【0099】
本発明による3D印刷可能組成物、75μm~130μm、より好ましくは75μm~100μm、さらに好ましくは75μm~90μmの 範囲の平均粒子径d90を有することが好ましい。
【0100】
本発明による3D印刷可能組成物は、最大160μm、好ましくは150μmより小さい平均粒子径d99を有することが好ましい。
【0101】
3D印刷可能組成物の調製工程
本発明は、さらに、本発明による3D印刷可能粉末の調製方法に関する。
【0102】
3D印刷可能粉末は、少なくとも1種の充填剤が存在する場合、重縮合反応中、又は重縮合反応後に、ポリアミドPA及び少なくとも1種の充填剤を混合することにより調製される。
【0103】
本発明の文脈では、ポリアミドPAは、ジアミンI、二酸II、及び最終的に1種以上の追加のコモノマー(複数種可)IIIから重縮合することにより調製される。これは、ジアミンI、二酸II、及び任意の追加のコモノマー(複数種可)IIIが、接触及びまとめて混合されてまとめて反応するか、又はこれらのコモノマーの1種以上が最初に反応してホモ又はコポリマーを形成し、その後、他のコモノマー(複数種可)と接触及び混合されてまとめて反応することを意味する。
【0104】
第1の実施形態によれば、ポリアミドPAは、反応器において反応する。本実施形態によれば、ポリアミドPAは、以下の連続的な工程により調製される。
【0105】
i)ジアミンI、二酸II、及び任意の追加のコモノマー(複数種可)IIIから、塩Aを生成する工程と、
ii)塩Aを加圧下で加熱する工程と、
iii)水を除去する工程。
【0106】
工程i)の間、塩Aは、コモノマー(すなわち、ジアミンI、二酸II、及び任意の追加のコモノマー(複数種可)III)を接触及び混合することにより生成してもよい。そのために、コモノマーは、同時に又は任意の順序で順々に容器内に導入し、次いで混合してもよい。これは、コモノマーを水溶液に溶解させることにより行ってもよい。
【0107】
工程ii)では、重縮合反応を促進するために、塩Aを加熱する。この工程は不活性雰囲気下で実施されることが好ましい。例えば、240℃~280℃の範囲の温度、及び0.01~0.1mLの水銀の圧力が適用され得る。
【0108】
重縮合反応時には、水が生成される。重縮合反応を促進するために、反応混合物から水が除去される。工程iii)における水の除去は、例えば水を蒸発させるための加熱など、当業者に公知の任意の手段により行うことができる。
【0109】
別の実施形態によれば、ポリアミドPAは、押出機、好ましくは二軸押出機において、ジアミンI、二酸II、及び任意の追加のコモノマー(複数種可)IIIを重縮合することにより調製される。本実施形態によれば、ポリアミンの調製方法は、以下の連続した工程を含む。
【0110】
a)ジアミンI、二酸II、及び任意の追加のコモノマー(複数種可)IIIを、共回転する少なくとも2つの搬送スクリューを含む押出機に導入する工程、
b)コモノマー(すなわち、ジアミンI、二酸II、及び任意の追加のコモノマー(複数種可)III)を混合する工程、
c)搬送スクリューで搬送される材料にせん断操作及び減圧操作を連続的に行い、コモノマーを重縮合する工程、
d)混合工程と重縮合工程との間で、搬送スクリュー上の材料の搬送により連続的に更新される材料のプラグを形成する工程であって、前記材料のプラグは、前進する材料からなり、材料の通過に利用できる空間全体を充填し、蒸気、特に発生し得るモノマー蒸気に対して密閉される領域を形成する工程。
【0111】
本実施形態によるポリアミドPAの調製方法は、特許出願WO2014/016521に既述されている。
【0112】
あるいは、ポリアミドPAは、押出機、好ましくは二軸押出機において、ジアミンI及び/又は二酸II及び/又は任意の追加のコモノマー(複数種可)IIIと、これらのコモノマーの1種以上のホモ又はコポリマーと重縮合することにより調製してもよい。本実施形態によれば、ポリアミンの調製工程は、以下の連続した工程を含む。
【0113】
a’)ポリマーPを、共回転する少なくとも2つの搬送スクリューを含む押出機に導入する工程であって、前記ポリマーPは、ジアミンI及び/又は二酸II及び/又は任意の追加のコモノマー(複数種可)IIIのホモポリマー又はコポリマーである工程、
b’)ジアミンI、二酸II、及び任意の追加のコモノマー(複数種可)IIIから選択される少なくとも1種のコモノマーを前記押出機へ導入する工程、
c’)ポリマーP及び少なくとも1種のコノマーを混合する工程、
d’)搬送スクリューにより搬送される材料にせん断及び減圧操作を連続的に行うことにより、ポリマー(P)及びコモノマー(複数種可)を重縮合する工程、
e’)混合工程と重縮合工程との間で、搬送スクリュー上の材料の搬送により連続的に更新される材料のプラグを形成する工程であって、前記材料のプラグは、前進する材料からなり、材料の通過に利用できる空間全体を充填し、蒸気、特に発生し得るモノマー蒸気に対して密閉される領域を形成する工程。
【0114】
本実施形態によれば、ポリアミドPAは、特許出願WO2014/016521に記載された方法により調製してもよい。
【0115】
重縮合を行うために使用される方法が何であれ、触媒を使用してもよい。一般的に使用され、当業者に公知の触媒が、本発明の文脈で使用されてもよい。
【0116】
ポリアミドPAの調製に使用される方法が何であれ、ポリアミドはその後、冷凍粉砕又は溶媒沈殿などの当業者に公知の任意の方法を用いて粉末化されることが好ましい。
【0117】
最後に、充填剤(複数種可)及び/又は添加剤(複数種可)が存在する場合、それらは工程の一つの又は異なる段階で、同時に又は任意の順序で順々に添加してもよい。
【0118】
-ポリアミドPAの調製時、すなわち重縮合反応時に添加する、
-ポリアミドPAの調製後、粉末化工程の前に添加し、これは、押出機で行ってもよい、
-粉末状のポリアミドPAに添加する。
【0119】
三次元印刷物及びその作製方法
本発明は、さらに、上記で定義された3D印刷可能粉末、又は上記方法から得られた3D印刷可能粉末から作製される3D印刷物品に関する。
【0120】
本発明の文脈では、「3D印刷物品」(又は「三次元印刷物品」又は「3D物品」)は、例えばSLS又はMJFなどの3D印刷システムにより造形された物体を意味する。
【0121】
本発明によれば、3D印刷物品は、少なくとも2GPaのヤング率、好ましくは3.6~3.8GPaの範囲のヤング率を有することが好ましい。本発明の文脈では、ヤング率は、NF EN ISO 527-2及びASTM D638-08規格により測定され得る。本発明によれば、この高いヤング率値が、水曝露後又は湿潤条件でも維持されることが有利である。
【0122】
3D印刷物品は、少なくとも45MPaの、好ましくは少なくとも60MPaの、より好ましくは65~80MPaの範囲の破断強度を有することが好ましい。特定の実施形態において、p=q=0であるようなポリアミドPAから調製される印刷物品(すなわち、ポリアミドPAがコモノマーIIIなしで合成される場合)は、少なくとも60MPaの破断強度を有することが好ましい。別の特定の実施形態において、p≠0及び/又はq≠0であるようなポリアミドPAから調製される印刷物品(すなわち、ポリアミドPAが少なくとも1種のコモノマーIIIと合成される場合)は、少なくとも45MPaの破断強度を有することが好ましい。本発明の文脈では、破断強度は、NF EN ISO 527-2及びASTM D638-08規格により測定され得る。
【0123】
最後に、本発明は、3D印刷物品を調製するための方法に関する。いくつかのアディティブ法を用いることができるが、その中でも選択的レーザ焼結(SLS)及びマルチジェット融合(MJF)技術が特に好ましい。
【0124】
SLS技術とは、次の2つの工程を繰り返すことにより、まとめて接着され、重ね合わせた層の形成を意味する。
【0125】
a)本発明の文脈で定義されるような3D印刷可能粉末の、又は粉末組成物Iによってのみ構成される3D印刷可能粉末の連続ベッドを、プラットフォーム上又は従前に圧密した層上に堆積させる工程。
【0126】
b)各層に対して所定のパターンにしたがってレーザビームを適用することにより、堆積した3D印刷可能粉末の一部を局所的に圧密し、同時に、それにより形成された層を、3D物品の所望の三次元形状を漸増させるような方法で、存在すれば、先行する圧密層に接着する工程。
【0127】
有利には、工程a)の3D印刷可能粉末の連続ベッドは、物品の端部での精度を保証するために、一定の厚さを有し、層のレベルで取られた所望の3D物品のセクションの上に表面として延在する。粉末のベッドの厚さは、有利には40μm~120μmの範囲である。
【0128】
工程b)の圧密は、レーザ処理により実施される。この目的のために、例えばSharebot社のSnowWhiteタイプ、3D Systems社のVanguard HSタイプ、EOS社のFormiga P396タイプ、Prodways社のPromaker P1000タイプ、EOS社のFormiga P110タイプ、又はFarsoon社のHT251Pタイプの3Dプリンタのような当業者に公知の任意のSLS印刷機を使用することが可能である。
【0129】
SLS印刷機のパラメータは、粉末組成物のベッドの表面温度が焼結範囲、すなわちオフセット結晶化温度とオンセット融合温度との間にあるように選択される。例えば、処理温度は、140℃~200℃、好ましくは152℃~182℃、より好ましくは162℃~177℃の範囲である。
【0130】
MJF技術は、以下の工程を繰り返すことにより、まとめて接着され、重ね合わせた層の形成を意味する。
【0131】
a)本発明の文脈で定義される3D印刷可能粉末を含む、又はその粉末によってのみ構成される3D印刷可能粉末の連続ベッドを、プラットフォーム上又は従前に圧密した層上に堆積させる工程。
【0132】
b)融合剤を各層に所定のパターンにしたがって塗布する工程。
【0133】
c)エネルギーの適用により、堆積させた3D印刷可能粉末の一部を局所的に圧密する工程。
【0134】
また、MJF法は、ディテーリング剤の塗布を含んでいてもよい。
【0135】
本発明により使用することができる融合剤及びディテーリング剤は、例えば特許出願WO2019/182579に詳述されているように、当該技術分野で一般的に使用されているものである。
【0136】
使用されるアディティブ法が何であれ、3D印刷可能粉末は再利用されてもよい。言い換えれば、3D印刷物品作製のためのアディティブ法の間、凝集されない使用された3D印刷可能粉末は、別の3D印刷物品作製のために再利用してもよい。典型的には、20質量%~100質量%の3D印刷可能粉末は、本実施形態による再利用された3D印刷可能粉末である。本実施形態によれば、3D印刷物品の機械的特性及び3D印刷可能粉末の焼結熱特性の両方は、3D印刷可能粉末が、再利用された非凝集3D印刷可能粉末を含む場合、又は「新鮮」(すなわち、再利用されていない)3D印刷粉末のみを含む場合と同じであることが有利である。
【0137】
次に、本発明を、例示のみの目的で、以下の実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0138】
以下の実施例では、
-溶融粘度率(MVR)を、メルトフローインデクサーを用いて、ISO 1133:2011規格により、240℃、負荷2.14kgで測定する、
-3D印刷可能粉末の粒度は、Malvern社の粒度計Mastersizer 3000で測定する、
-3D印刷可能粉末のハウスナー比及び初期嵩密度は、粒状体密度測定機(GranuTools(商標)社のGranuPack)を用いてタップ密度測定試験で決定する、
-ヤング率、破断応力、降伏応力、降伏時の歪み、及び破断歪みは、NF EN ISO 527-2及びASTM D638-08規格により測定する。
【実施例】
【0139】
連続反応器として110L/D(直径:32mm)の二軸押出機を用いて、特許出願WO2014/016521に記載の方法を用いて、m-キシリレンジアミン(136.19g.mol-1)及びセバシン酸(202.25g.mol-1)を重合し、MVR33cm3/10分のポリアミドPA1を調製した。
【0140】
ポリアミドPA1は、22070gのm-キシリレンジアミン、31800gのセバシン酸、及び50.88gのリン酸(H3PO4)から調製した。ポリアミドPA1には、充填剤及び他の添加物は添加しなかった。
【0141】
20kgの試料を冷凍粉砕装置(Godding and Dressler社製)で粉砕し、0.25%のCabosil M5と混合し、ふるいにかけて(90μm)、本発明による3D印刷可能粉末PP1を得た。
【0142】
3D印刷可能粉末PP1のハウスナー比は、1.175[φ]で、初期嵩密度は0.462g.cm3である。
【0143】
4kgの3D印刷可能粉末PP1使用し、EOS社から販売されているFormiga P110を使用したレーザ焼結印刷で3D印刷物品を作製した。使用されるレーザのパラメータは以下の通りであった。出力12W/14W、ハッチング距離0.15mm、速度3500mm/秒。プリンタのパラメータは以下の通りであった。チャンバー温度177℃、タンク温度150℃。
【0144】
H1引張試験片(ISO 527)を印刷し、印刷終了後、良好な寸法安定性(曲がらない)でビルディング「ケーキ」から取り出した。
【実施例】
【0145】
連続反応器として110L/D(直径:32mm)の二軸押出機を用いて、特許出願WO2014016521に記載の方法を用いて、m-キシリレンジアミン(136.19g.mol-1)及びセバシン酸(202.25g.mol-1)を重合し、MVR25cm3/10分のポリアミドPA2を調製した。
【0146】
ポリアミドPA2は、22070gのm-キシリレンジアミン、31800gのセバシン酸、及び50.88gのリン酸(H3PO4)から調製した。ポリアミドPA2には、充填剤及び他の添加物は添加しなかった。
【0147】
20kgの試料を、90μmのふるいを備えた連続冷凍粉砕装置(Gotic社のGSM250)で粉砕した。次に、粉末状のポリアミドPA2を、0.25質量%のヒュームドシリカ(EVONIK社から販売されているAEROSIL(登録商標)R812)と混合し、3D印刷可能粉末PP2.1を得た。
【0148】
3D印刷可能粉末PP2.1のハウスナー比は、1.216[φ]で、初期嵩密度は0.463g.cm3である。
【0149】
4kgの3D印刷可能粉末PP2.1を使用し、EOS社のFormiga P110を使用したレーザ焼結印刷で3D印刷物品を作製した。レーザのパラメータは以下の通りであった。出力12W/14W、ハッチング距離0.15mm、速度3500mm/秒。プリンタのパラメータは以下の通りであった。チャンバー温度175℃、タンク温度130℃。
【0150】
H1引張試験片(ISO 527)を印刷し、印刷終了後、良好な寸法安定性(曲がらない)でビルディング「ケーキ」から取り出した。
【0151】
また、粉末状のポリアミドPA2は、0.5質量%の別のフュームドシリカ(Cabot Corporation社のCABOSIL(登録商標)M5)と混合し、3D印刷可能粉末PP2.2を得た。
【0152】
3D印刷可能粉末PP2.2のハウスナー比は、1192[φ]、初期嵩密度は0.529g.cm3である。
【0153】
10kgの3D印刷可能粉末PP2.2を使用し、EOS社から販売されているProdways Promaker P1000を使用したレーザ焼結により、3D印刷物品を作製した。使用されるレーザのパラメータは以下の通りであった。出力14.7W/12W、ハッチング距離0.15mm/0.15mm、速度3500mm/秒。使用されるプリンタのパラメータは以下の通りであった。チャンバー温度175.5℃(前)と177.5℃(後)、ピストン温度150℃、チャンバーの3つの加熱ベルトは140℃、フィーダ温度は80℃であった。
【0154】
H1引張試験片(ISO 527)を印刷し、印刷終了後、良好な寸法安定性(曲がらない)でビルディング「ケーキ」から取り出した。
【実施例】
【0155】
連続反応器として110L/D(直径:32mm)の二軸押出機を用いて、特許出願WO2014/016521に記載の方法を用いて、m-キシリレンジアミン(136.19g.mol-1)とセバシン酸(202.25g.mol-1)を重合し、MVR25cm3/10分のポリアミドPA3を調製した。
【0156】
このポリアミドは、22070gのm-キシリレンジアミン、31800gのセバシン酸、及び50.88gのリン酸(H3PO4)から調製した。ポリアミドPA3には、充填剤及び他の添加物は添加しなかった。
【0157】
20kgの試料を、90μmのふるいを備えた連続凍結粉砕機(Gotic社のGSM250)で粉砕した。粉末状のポリアミドPA3を、0.25質量%のヒュームドシリカ(EVONIK社のAEROSIL(登録商標)R812)と混合し、真空下110℃で2時間乾燥させて(最終水分0.4%)、3D印刷可能粉末PP3を得た。
【0158】
3D印刷可能粉末PP3のハウスナー比は、1.23[φ]で、初期嵩密度は0.44g.cm3である。
【0159】
5kgの3D印刷可能粉末PP3を使用し、EOS社のFormiga P110を使用したレーザ焼結印刷で3D印刷物品を作製した。レーザのパラメータは以下の通りであった。出力12W/14W、ハッチング距離0.15mm、速度3500mm/秒。プリンタのパラメータは、以下の通りであった。チャンバー温度175℃、タンク温度130℃。
【0160】
H1引張試験片(ISO 527)を印刷し、印刷終了後、良好な寸法安定性(曲がらない)でビルディング「ケーキ」から取り出した。
【実施例】
【0161】
連続反応器として110L/D(直径:32mm)の二軸押出機を用い、特許出願WO2014/016521に記載の方法を用いて、m-キシリレンジアミン(136.19g.mol-1)、ヘキサメチレンジアミン(116.21g.mol-)及びセバシン酸(202.25g.mol-1)を重合し、MVR37cm3/10分のポリアミドPA4を調製した。
【0162】
ポリアミドPA4は、13555gのm-キシリレンジアミン、1285gのヘキサメチレンジアミン、20450gのセバシン酸、及び32.72gのリン酸から調製した。ヘキサメチレンジアミンは、ジアミン含有量の10%(mol/mol)を占める。ポリアミドPA4には、充填剤及び他の添加物は添加しなかった。
【0163】
20kgの試料を、90μmのふるいを備えた連続冷凍粉砕装置(Gotic社のGSM250)で粉砕した。次に、粉末状のポリアミドPA4を、0.25質量%のヒュームドシリカ(EVONIK社から販売されているAEROSIL(登録商標)R812)と混合し、3D印刷可能粉末PP4を得た。
【0164】
3D印刷可能粉末PP4のハウスナー比は、1.299[φ]で、初期嵩密度は0.488g.cm3である。
【0165】
4kgの3D印刷可能粉末PP4を使用し、EOS社のFormiga P110を使用したレーザ焼結印刷で3D印刷物品を作製した。レーザのパラメータは以下の通りであった。出力12W/14W、ハッチング距離0.15mm、速度3500mm.秒である。プリンタのパラメータは以下の通りであった。チャンバー温度173℃、タンク温度130℃。
【0166】
H1引張試験片(ISO 527)を印刷し、印刷終了後、良好な寸法安定性(曲がらない)でビルディング「ケーキ」から取り出した。
【実施例】
【0167】
連続反応器として110L/D(直径:32mm)の二軸押出機を用いて、特許出願WO2014/016521に記載の方法を用いて、m-キシリレンジアミン(136.19g.mol-1)、トリメチルヘキサメチレンジアミン(158.28g.mol-1)及びセバシン酸(202.25g.mol-1)を重合し、MVR15cm3/10分のポリアミドPA5を調製した。
【0168】
ポリアミドPA5は、14394gのm-キシリレンジアミン、880gのトリメチルヘキサメチレンジアミン、20450gのセバシン酸、及び32.72gのリン酸(H3PO4)から調製した。トリメチルヘキサメチレンジアミンは、ジアミン含有量の5%(mol/mol)を占める。ポリアミドPA5には、充填剤及び他の添加物は添加しなかった。
【0169】
20kgの試料を、100×300μmのふるいを備えた連続冷凍粉砕装置(Gotic社のGSM250)で粉砕した。次に、粉末状のポリアミドPA5を、ヒュームドシリカ(0.2質量%の米国Cabot Corporation社のCabosil(登録商標)M5及び0.2質量%のEvonik社のAerosil R812)と混合し、3D印刷可能粉末PP5を得た。
【0170】
3D印刷可能粉末PP5のハウスナー比は、1.233[φ]で、初期嵩密度は0.471g.cm3である。
【0171】
4kgの3D印刷可能粉末PP5を使用し、EOS社のFormiga P110を使用したレーザ焼結印刷で3D印刷物品を作製した。レーザのパラメータは以下の通りであった。出力12W/14W、ハッチング距離0.15mm、速度3500mm/秒。プリンタのパラメータは以下の通りであった。チャンバー温度171℃、タンク温度135℃。
【0172】
H1引張試験片(ISO 527)を印刷し、印刷終了後、優れた寸法安定性(曲がらない)でビルディング「ケーキ」から取り出した。
【実施例】
【0173】
連続反応器として110L/D(直径:32mm)の二軸押出機を用いて、特許出願WO2014/016521に記載の方法を用いて、m-キシリレンジアミン(136.19g.mol-1)、トリメチルヘキサメチレンジアミン(158.28g.mol-1)及びセバシン酸(202.25g.mol-1)を重合し、MVR45cm3/10分のポリアミドPA6を調製した。
【0174】
ポリアミドPA6は、11974gのm-キシリレンジアミン、3479gのトリメチルヘキサメチレンジアミン、206900gのセバシン酸、及び33.1gのリン酸(H3PO4)から調製した。トリメチルヘキサメチレンジアミンは、ジアミン含有量の20%(mol/mol)を占める。ポリアミドPA6には、充填剤及び他の添加物は添加しなかった。
【0175】
25kgの試料を、100×300μmのふるいを備えた連続冷凍粉砕装置(Gotic社のGSM250)で粉砕した。次に、粉末状のポリアミドPA6を、ヒュームドシリカ(0.2質量%の米国Cabot Corporation社のCabosil(登録商標)M5及び0.2質量%のEvonik社のAerosil R812)と混合し、3D印刷可能粉末PP6を得た。
【0176】
3D印刷可能粉末PP6のハウスナー比は、1.202[φ]で、嵩密度は0.427g.cm3である。
【0177】
4kgの3D印刷可能粉末PP6を使用し、EOS社のFormiga P110を使用したレーザ焼結印刷で3D物品を作製した。レーザのパラメータは以下の通りであった。出力は12W/14W、ハッチング距離0.15mm、速度3500mm/秒。プリンタのパラメータは以下の通りであった。チャンバー温度154℃、タンク温度130℃。
【0178】
7つのH1引張試験片(ISO 527)を印刷し、印刷終了後、優れた寸法安定性(曲がらない)でビルディング「ケーキ」から取り出した。
【実施例】
【0179】
連続反応器として110L/D(直径:32mm)の二軸押出機を用いて、特許出願WO2014/016521に記載の方法を用いて、m-キシリレンジアミン(136.19g.mol-1)、セバシン酸(202.25g.mol-1)及びポリアミド10,10(240℃で18cm3/10分のMVR)を導入し、重合した。MVRが18cm3/10分のポリアミドPA7が得られる。ポリアミド10,10は、特許出願WO2014/016521に記載の方法を用いて、従前に、セバシン酸(202.25g.mol-1及び1-10デカンジアミン(172.31g.mol-1)から調製した。
【0180】
ポリアミドPA7は、4451gのm-キシリレンジアミン、6368gのセバシン酸、25300gのポリアミド10,10、及び33.1gのリン酸(H3PO4)から調製した。ポリアミド10,10は、反応媒体の含有量の70%(g/g)を占める。ポリアミドPA7には、充填剤及び他の添加物は添加しなかった。
【0181】
25kgの試料を、125×125μmのふるいを備えた連続凍結粉砕装置(Gotic社のGSM250)で粉砕した。次に、粉末状のポリアミドPA7を、ヒュームドシリカ(Cabot Corporation社のCabosil(登録商標)M5及び0.2質量%のEvonik社のAerosil R812)と混合し、3D印刷可能粉末PP7を得た。
【0182】
3D印刷可能粉末PP7のハウスナー比は、1.23[φ]で、初期密度は0.52g.cm3である。
【0183】
4kgのこの3D印刷可能粉末PP7を使用し、EOS社のFormiga P110を使用したレーザ焼結印刷で3D物品を作製した。レーザのパラメータは以下の通りであった。出力12W/14W、ハッチング距離0.15mm、速度3500mm/秒。プリンタのパラメータは以下の通りであった。チャンバー温度177℃、タンク温度150℃。
【0184】
7つのH1引張試験片(ISO 527)を印刷し、印刷終了後、優れた寸法安定性(曲がらない)でビルディング「ケーキ」から取り出した。
【実施例】
【0185】
本発明の3D印刷可能粉末、及びその印刷部品の特性を以下の表1~表4に示す。
【0186】
3D印刷可能粉末PP1、PP2.1、PP2.2、PP3、PP4、PP5、PP6、及びPP7の粒度を下記表1に報告する。
【0187】
【0188】
3Dプリンタ用粉末は、すべて満足のいく粒度である。
【0189】
例示した3D印刷可能粉末から得られた3D印刷部品の機械的特性を、表2に報告する。結果は、3D印刷可能粉末PP1、PP2.1、PP2.2、PP4、PP5、PP6、及びPP7については、23℃、相対湿度50%で48時間調整した後、及び(A)真空下80℃で336時間及び(B)湿度62%、70℃で336時間後に得られたものである。
【0190】
【0191】
例示した3D印刷可能粉末から得られたすべての3D印刷物品は、少なくとも2GPaのヤング率を有する。実施例1~6の3D印刷可能粉末と比較して、3D印刷可能粉末PP7は、2000MPaの弾性率を有する一方で、10%の破断伸びの改善を可能にする。
【0192】
PP1の再利用についても検討し(印刷に再利用粉末を100%使用)、各サイクル後の機械的特性を評価した。結果は、以下の表3に溶融粘度とともに報告される。
【0193】
【0194】
表3に示すように、新しい粉末を添加しなくても、7サイクル後の機械的特性は良好で、維持されていることがわかる。
【0195】
3D印刷可能粉末PP1、PP2、PP3、PP4、PP5、PP6、及びPP7の熱的挙動は、DSCスキャン(10℃/分)により決定した。結果は、以下の表4に報告される。
【0196】
【0197】
実施例1~5の3D印刷可能粉末と比較して、アミンコモノマーIIIを20%含む3D印刷可能粉末PP6は、結晶化速度が低下し、オンセット結晶化温度及びピークを測定することができなかった。
【国際調査報告】