(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】膜
(51)【国際特許分類】
B01D 69/02 20060101AFI20231011BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20231011BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20231011BHJP
B01J 43/00 20060101ALI20231011BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20231011BHJP
C08J 5/22 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B01D69/02
B01D69/00
B01D69/12
B01J43/00
C08J5/18 CEY
C08J5/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519459
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2021076437
(87)【国際公開番号】W WO2022069383
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509077761
【氏名又は名称】フジフィルム・マニュファクチュアリング・ヨーロッパ・ベスローテン・フエンノートシャップ
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】リプケン,ルネ・マリア
(72)【発明者】
【氏名】成田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】マイリンク,マールテン・コンスタント・ゲルラッハ・マリエ
(72)【発明者】
【氏名】フエルタ・マルティネス,エリサ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッシング,ヤッコ
【テーマコード(参考)】
4D006
4F071
【Fターム(参考)】
4D006GA12
4D006GA13
4D006GA16
4D006GA17
4D006MA03
4D006MA08
4D006MA09
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4F071FA10
4F071FB03
4F071FC03
4F071FC05
(57)【要約】
a)第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有する第1のポリマーまたは第4のポリマーを含む第1の層と、b)第3のポリマーのイオン基の極性と同じ極性のイオン基を有する第2のポリマーを含む第2の層と、c)(ii)イオン基および空孔のネットワークを有する第3のポリマーと、(ii)第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有する第4のポリマーとの共連続ポリマーネットワークを含む第3の層とを含む膜であって、層c)が、層a)と層b)との間に挟まれており、第3のポリマーが、第3のポリマーを調製するために使用される硬化性組成物からの第3のポリマーの相分離を含む方法によって得ることが可能である、膜。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有する第1のポリマーまたは第4のポリマーを含む第1の層と、
b)第3のポリマーのイオン基の極性と同じ極性のイオン基を有する第2のポリマーを含む第2の層と、
c)(i)イオン基および空孔のネットワークを有する第3のポリマーと、(ii)第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有する第4のポリマーとの共連続ポリマーネットワークを含む第3の層と
を含む膜であって、
層c)が、層a)と層b)との間に挟まれており、第3のポリマーが、第3のポリマーを調製するために使用される硬化性組成物からの第3のポリマーの相分離を含む方法によって得ることが可能である、
膜。
【請求項2】
方法が、第3のポリマーを調製するために使用される組成物からの第3のポリマーの重合誘導相分離を含む、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
重合誘導相分離が、第3のポリマーを調製するために使用される組成物からの第3のポリマーの光重合誘導相分離を含む、請求項2に記載の膜。
【請求項4】
共連続ポリマーネットワークが、第3のポリマーおよび第4のポリマーを含み、第3のポリマーが空孔のネットワークを提供し、第4のポリマーが空孔のネットワーク内に存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項5】
少なくとも第3の層c)が、多孔質支持体を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の膜。
【請求項6】
第3の層c)が、イオン的に帯電したファイバーおよびビーズを含まない、請求項1から5のいずれか一項に記載の膜。
【請求項7】
第3のポリマーと第4のポリマーとの接合部における継ぎ目のない界面を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の膜。
【請求項8】
第3のポリマーが空孔のネットワークを提供し、第3の層c)が、空孔のネットワークに、第4のポリマーを作製するために使用される組成物を含浸させるステップと、第3のポリマーの空孔のネットワーク内の第4の硬化性組成物を硬化させるステップとを含む方法によって得られる、請求項1から7のいずれか一項に記載の膜。
【請求項9】
第1のポリマーの化学組成が、第4のポリマーの化学組成と実質的に同じである、請求項1から8のいずれか一項に記載の膜。
【請求項10】
第2のポリマーの化学組成が、第3のポリマーの化学組成と実質的に同じである、請求項1から9のいずれか一項に記載の膜。
【請求項11】
共連続ポリマーネットワークが、2つの個別の、連続したポリマードメインを含み、一方がアニオン電荷を帯びており、他方がカチオン電荷を帯びている、請求項1から10のいずれか一項に記載の膜。
【請求項12】
第1の層a)および第2の層b)のうちの少なくとも一方が、多孔質支持体を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の膜。
【請求項13】
層c)と層a)との界面、および/または層c)と層b)との界面に多孔質支持体を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の膜。
【請求項14】
単一の多孔質支持体が、第1の層a)および第3の層c)の両方において、かつそれらに共通して存在する、請求項1から13のいずれか一項に記載の膜。
【請求項15】
第1の層a)、第2の層b)、および第3の層c)のそれぞれが独立して、10μm~200μmの間の平均厚さを有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の膜。
【請求項16】
30μm~600μmの間の平均厚さを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の膜。
【請求項17】
第1の層a)と第3の層c)との接合部における界面(第1の界面)、および第3の層c)と第2の層b)との接合部における界面(第2の界面)を含み、第1の界面および第2の界面の両方が途切れておらず、第1の層a)と第3の層c)との間にいかなる間隙および/または空間もなく、かつ第3の層c)と第2の層b)との間にいかなる間隙および/または空間もない、請求項1から16のいずれか一項に記載の膜。
【請求項18】
途切れていない、第3のポリマーと第4のポリマーとの接合部における界面(第3の界面)を含み、第3のポリマーと第4のポリマーとの間にいかなる間隙および/または空間もない、請求項1から17のいずれか一項に記載の膜。
【請求項19】
第1、第2、第3、および第4のポリマーが、それぞれ独立して、イオン基を有する硬化性化合物を含む硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得られる、請求項1から18のいずれか一項に記載の膜。
【請求項20】
第1および第4のポリマーのそれぞれが独立して、
(a1)1つのエチレン性不飽和基およびイオン基を有する、0~60wt%の硬化性化合物と、
(b1)少なくとも2つのエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を含む、1~88wt%の硬化性化合物と、
(c1)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d1)0~55wt%の溶媒と
を含む組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である、請求項1から19のいずれか一項に記載の膜。
【請求項21】
第2のポリマーが、
(a2)1つのエチレン性不飽和基およびイオン基を有する、0~60wt%の硬化性化合物と、
(b2)少なくとも2つのエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を含む、1~88wt%の硬化性化合物と、
(c2)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d2)0~55wt%の溶媒と
を含む組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である、請求項1から20のいずれか一項に記載の膜。
【請求項22】
第3のポリマーが、
(a3)1種のエチレン性不飽和基およびイオン基を有する、0~60wt%の硬化性化合物と、
(b3)少なくとも2種のエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を含む、1~70wt%の硬化性化合物と、
(c3)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d3)20~98wt%の溶媒と
を含む組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である、請求項1から21のいずれかに記載の膜。
【請求項23】
バイポーラ膜である、請求項1から22のいずれか一項に記載の膜。
【請求項24】
第3の層中の第3のポリマーの体積分率が、0.1~0.9である、請求項1から23のいずれか一項に記載の膜。
【請求項25】
層および/または界面のうちの少なくとも1つが触媒を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の膜。
【請求項26】
第1のポリマーおよび第4のポリマーがアニオン基を含み、第2および第3のポリマーがカチオン基を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の膜。
【請求項27】
膜を調製するための方法であって、以下のステップ:
(i)それぞれ、イオン基を有する硬化性化合物を含む、第2、第3、および第4の硬化性組成物、ならびに任意選択で第1の硬化性組成物を用意するステップであり、
a).第2の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物のイオン基が、第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物のイオン基と同じ極性を有し、
b).第4の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物のイオン基が、第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物のイオン基の極性と反対の極性を有し、
c).第1の硬化性組成物が与えられる場合、第1の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物のイオン基が、第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物のイオン基の極性と反対の極性を有する、
ステップと、
(ii)多孔質支持体に第3の硬化性組成物を含浸させるステップと、
(iii)第3の硬化性組成物からの第3のポリマーの相分離を含む方法によって、多孔質支持体内に存在する第3の硬化性組成物を硬化させるステップであり、第3のポリマーがイオン基および空孔のネットワークを含み、それにより多孔質支持体および第3のポリマーを含む基層を提供し、基層が、第1の側、および第1の側と反対側の第2の側を備える、ステップと、
(iv)第4の硬化性組成物の少なくとも一部が第3のポリマーの空孔の少なくとも一部へと入り、任意選択で、基層の第1の側に第4の硬化性組成物の層を提供するように、基層の第1の側を第4の硬化性組成物と接触させるステップと、
(v)第2の硬化性組成物が、第3のポリマーの残りの空孔すべてに入り、基層の第2の側に第2の硬化性組成物の層を提供するように、基層の第2の側を第2の硬化性組成物と接触させるステップと、
(vi)基層の第1の側を第4の硬化性組成物と接触させるステップが基層の第1の側に第4の硬化性組成物の層を提供しない場合、第1の硬化性組成物の層が基層の第1の側に提供されるように、基層の第1の側を第1の硬化性組成物と接触させるステップと、
(vii)任意の順序で、または同時に、基層の各側に存在する硬化性組成物の層、および第3のポリマーの空孔内に存在する硬化性組成物の層を硬化させて、
それぞれの場合に第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有する第1のポリマーまたは第4のポリマーを含む第1の層a)と、
第3のポリマーのイオン基の極性と同じ極性のイオン基を有する第2のポリマーを含む第2の層b)と、
(i)イオン基を有する第3のポリマーと、(ii)第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有し、第3のポリマーの空孔のネットワーク内に存在する第4のポリマーとの共連続ポリマーネットワークを含む第3の層c)と
を形成するステップであり、
層c)が層a)と層b)との間に挟まれている、ステップと
を含む、方法。
【請求項28】
ステップ(i)において、第1の硬化性組成物が用意されず、ステップ(vi)において、基層の第1の側を第4の硬化性組成物と接触させるステップが、基層の第1の側に第4の硬化性組成物の層を提供する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
膜が、請求項1から26のいずれか一項において定義されるとおりである、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
第1の硬化性組成物および第4の硬化性組成物がそれぞれ、アニオン基を有する硬化性化合物を含み、第2の硬化性組成物および第3の硬化性組成物が両方とも、カチオン基を有する硬化性化合物を含む、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(ii)が、第3の組成物を含浸された多孔質支持体を、透明ホイルの間に配置して、含浸された多孔質支持体および2つのホイルのサンドイッチを得、次いでサンドイッチを圧搾して、過剰の第3の硬化性組成物をすべて除去するステップをさらに含む、請求項27から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
硬化させるステップ(iii)の後、ステップ(iv)を実行する前に、透明ホイルが除去される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(iii)における第3の硬化性組成物を硬化させるステップが、不活性雰囲気下で実行される、請求項27から32のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜、その調製方法、およびその使用に関する。イオン交換膜は、電気透析、逆電気透析、電気分解、拡散透析、および複数の他のプロセスにおいて使用される。典型的に、膜を通すイオンの輸送は、イオン濃度勾配または代替的に電位勾配などの駆動力の影響下で生じる。
【背景技術】
【0002】
イオン交換膜は一般に、その優勢な電荷に応じて、カチオン交換膜またはアニオン交換膜に分類される。カチオン交換膜は、カチオンの通過を可能にするがアニオンを拒絶する負に帯電した基を含み、一方でアニオン交換膜は、アニオンの通過を可能にするがカチオンを拒絶する正に帯電した基を含む。バイポーラ膜は、カチオン層およびアニオン層の両方を有する。
【0003】
イオン交換膜およびバイポーラ膜には、機械的強度を付与する多孔質支持体を含むものがある。そのような膜は、反対に帯電したイオンを区別する、イオン的に帯電したポリマー、および機械的強度を付与する多孔質支持体の両方の存在に起因して「複合膜」と呼ばれることが多い。
【0004】
複合膜は、たとえば、イオン交換樹脂のモノビーズ層を含有するバイポーラ膜について記載したUS4,253,900から公知である。WO2017/205458およびECS Transactions、2015 69(18)35~44ページにおけるMcClureによる論文は、アニオン交換ポリマーとカチオン交換ポリマーとの相互侵入ポリマーナノファイバーまたはマイクロファイバーの接合層を含有するバイポーラ膜を記載している。複合膜の他の例は、たとえば、層のうちの1つがイオン交換樹脂粉末を含む、EP3604404、および界面層におけるイオン交換樹脂の使用を開示するUS4673454に記載されている。向上した特性、たとえば、高い選択透過性、低い電気抵抗性、良好な機械的強度、水性条件下での低膨潤性、極度のpHでの安定性を有する膜を提供することが望まれている。理想的には、そのような膜は迅速に、効率的に、かつ安価に製造することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、
a)第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有する第1のポリマーまたは第4のポリマーを含む第1の層と、
b)第3のポリマーのイオン基の極性と同じ極性のイオン基を有する第2のポリマーを含む第2の層と、
c)(i)イオン基および空孔のネットワークを有する第3のポリマーと、(ii)第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有する第4のポリマーとの共連続ポリマーネットワークを含む第3の層と
を含む膜であって、
層c)が、層a)と層b)との間に挟まれており、第3のポリマーが、第3のポリマーを調製するために使用される硬化性組成物からの第3のポリマーの相分離を含む方法によって得ることが可能である、
膜が提供される。
【0006】
本文献において(その特許請求の範囲を含む)、「を含む」という動詞およびその活用型は、その非限定的な意味において使用され、この単語に続く品目が含まれることを意味するが、具体的に言及されない品目は除外されない。加えて、不定冠詞「a」または「an」による要素への言及は、要素のうちの1つかつ1つのみが存在することを文脈上明確に求めていない限り、要素のうちの1つより多くが存在する可能性を除外しない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は通常、「少なくとも1つ」を意味する。また、本明細書において、第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有する第1のポリマーは、「第1のポリマー」と略記されることがあり、第3のポリマーのイオン基の極性と同じ極性のイオン基を有する第2のポリマーは、「第2のポリマー」と略記されることがあり、第1のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有する第3のポリマーは、「第3のポリマー」と略記されることがあり、第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有する第4のポリマーは、「第4のポリマー」と略記されることがある。
【0007】
第3のポリマーおよび第4のポリマーのために必要とされる、反対の2つの極性を達成するために、第3のポリマーおよび第4のポリマーのうちの一方は、カチオン性ポリマーであり(すなわち、正に帯電した基を有する)、他方はアニオン性ポリマーである(すなわち、負に帯電した基を有する)。
【0008】
第3のポリマーおよび第1のポリマーのために必要とされる、反対の2つの極性を達成するために、第3のポリマーおよび第1のポリマーのうちの一方は、カチオン性ポリマーであり(すなわち、正に帯電した基を有する)、他方はアニオン性ポリマーである(すなわち、負に帯電した基を有する)。
【0009】
好ましい実施形態において、第3のポリマーは、第3のポリマーを調製するために使用される組成物から第3のポリマーを相分離することによって得ることが可能である。このようにして、空孔のネットワークを含む形態である第3のポリマーを得ることができ、第3の層c)を作製するために、空孔を使用して第4のポリマー(または第4のポリマーを調製するために使用される硬化性組成物)を受け入れ、(i)イオン基を有する第3のポリマーと(ii)第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有し、第3のポリマーの空孔のネットワーク内に存在する第4のポリマーとの共連続ポリマーネットワークを提供することができる。
【0010】
一実施形態において、第4のポリマーを調製するために使用される硬化性組成物は、第1のポリマーを調製するために使用される硬化性組成物と同一である。このようにして、第1のポリマーが第4のポリマーと同一である膜を得ることができる。好ましくは、共連続ポリマーネットワークは、第3のポリマーおよび第4のポリマーを含み、第3のポリマーは空孔のネットワークを提供し、第4のポリマーは空孔のネットワーク内に存在する。
【0011】
好ましくは、第3のポリマーは、イオン基および空孔のネットワークを含む多孔質の第1のポリマードメインを含む。好ましくは、第4のポリマーは、第1のポリマードメインのイオン基の電荷と反対の電荷を有するイオン基を含む第2のポリマードメインを含む。この実施形態において、第2のポリマードメインは、第1のポリマードメインの空孔中(すなわち、第3のポリマーの空孔のネットワーク中)に位置している。
【0012】
共連続ポリマーネットワークは、好ましくは、2つの個別の、連続したポリマードメインを含み、一方がアニオン電荷を帯びており、他方がカチオン電荷を帯びている。好ましくは、ポリマードメインのうちの一方は相分離されており、たとえば、第3のポリマーおよび第4のポリマーのうちの一方、特に第3のポリマーは、そのポリマーを多孔質形態で調製するために使用される組成物から相分離によって得られ、そのポリマーの空孔を、他方のポリマー、すなわち第4のポリマーが充填する。好ましくは、第3の層(c)中の第3のポリマーおよび第4のポリマーは、混合されておらず、カプセル化されておらず、好ましくは、それらは小線維状ではない。任意選択で、第3の層は、1つまたは1つより多いさらなるポリマードメインを含有し、それぞれはアニオン電荷またはカチオン電荷を帯びている。
【0013】
好ましい実施形態において、第4のポリマーは、第3のポリマーの空孔のネットワーク中および第1の層a)中に存在する。別の好ましい実施形態において、第3のポリマーは、第2の層b)中の第2のポリマーと、同じ電荷を有する、かつ/または化学的に同一である。
【0014】
好ましい実施形態において、第1のポリマーの化学組成は、第4のポリマーの化学組成と同じであるか、または実質的に同じである。
別の好ましい実施形態において、第2のポリマーの化学組成は、第3のポリマーの化学組成と同じであるか、または実質的に同じである。
【0015】
第3の層c)は、好ましくは、互いに広い接触領域を有する、少なくとも2つの連続し交じり合うポリマードメイン(一方のドメインは第3のポリマーに由来し、他方のドメインは第4のポリマーに由来する)を含む。これは、空孔のネットワークを含む第3のポリマー、および第3のポリマーとは異なり(たとえば、一方はカチオン性であり、他方はアニオン性である)、かつ第3のポリマーの空孔のネットワーク内に存在する第4のポリマーによって達成されてもよい。第3の層中に存在する2つ(またはそれより多く)のポリマー間の、この広い接触領域の結果として、膜がバイポーラ膜として使用される場合、H+およびOH-に解離する水分子の時間単位当たりの量は増大し、それによりバイポーラ膜の生産性も増大する。
【0016】
第3の層中に存在する、第3と第4のポリマーとの間の広い接触領域は、好ましくは、共連続ネットワークによって提供され、第3および第4のポリマーに由来する2つ(またはそれより多く)のポリマードメインは、反対の電荷を帯びている(すなわち、一方のドメインはアニオン電荷を有し、他方はカチオン電荷を有する)。共連続ネットワークの利点は、第3と第4のポリマーとの間の界面(すなわち、2つのポリマードメインの界面)において作製された、新たに生成されたアニオン(たとえば、OH-)およびカチオン(たとえば、H+)が、その形成直後に個別のポリマードメインへと分離され、イオン再結合が防止されることである。加えて、第3の層中の第3と第4のポリマーとの接着(すなわち第1と第2のポリマードメインとの接着)は、第3と第4のポリマーとのエンタングルメント、および第3と第4のポリマーとの間の広い接触領域の結果として、極めて強い。第3と第4のポリマーとの強い接着は、水で満たされた大きいブリスターが、正電荷および負電荷を帯びたバイポーラ膜のポリマーの間の界面に形成されるおそれがあり、そこでOH-およびH+が再結合して(不所望に)、水を形成する可能性がある、いわゆるバルーン効果を防止/低減する。
【0017】
本発明の膜は、好ましくは、第1の層a)と第3の層c)との間の界面(第1の界面)、および第3の層c)と第2の層b)との間の界面(第2の界面)を含み、好ましくは、第1の界面および第2の界面の両方は途切れておらず、第1の層a)と第3の層c)との間にいかなる間隙および/または空間もなく、かつ第3の層c)と第2の層b)との間にいかなる間隙および/または空間もない。
【0018】
一実施形態において、第3の層c)は、それぞれ第3および第4のポリマーに由来する、連続した2つのポリマードメインのブレンドモルフォロジーを含み、そのうちの一方のドメイン(第4のポリマーに由来する)は他方のドメイン(第3のポリマーに由来する)内に位置しており、(第3のポリマーの空孔のネットワーク内の第4のポリマーの)上述の共連続ポリマーネットワークを形成する。
【0019】
好ましくは、第1および第2のポリマードメインのそれぞれは連続しており、それ自体に相互接続されるような、単一共有結合された炭素骨格を実質的に含む。
好ましくは、ポリマードメインは、カプセル化されておらず、分離されておらず、中断されておらず、かつ小線維状でない(たとえば、エレクトロスピニング法によって作製されていない)。
【0020】
本発明において、第3の層c)は好ましくは、多孔質支持体、およびこの支持体の多孔質構造内に、空孔のネットワークを含む第3のポリマー、およびそれらの空孔内に存在する第4のポリマーを含み、それにより、共連続ポリマーネットワーク、たとえば、一方がアニオン電荷を帯び、他方がカチオン電荷を帯びる2つのポリマードメインを提供する。2つ(またはそれより多く)のポリマードメイン(一方は第3のポリマー由来であり、他方は第3のポリマーの空孔のネットワーク内に存在する第4のポリマー由来である)は、多孔質支持体の空孔を占めており、好ましくは、継ぎ目のない(第3の)界面(第3の層c)と第1の層a)および第2の層b)それぞれとの接合部における、第1の界面および第2の界面)を含む。したがって、膜は、好ましくは、第3の層c)と第1の層a)との接合部における界面、第3の層c)と第2の層b)との接合部における界面、および第3のポリマーと第4のポリマーとの接合部における、第3の層c)内の第3の界面を含む。好ましくは、この第3の界面は、途切れておらず、第3のポリマーと第4のポリマーとの間にいかなる間隙および/または空間もない。好ましくは、この第3の界面は、ポリマーと融合/圧縮ファイバー、ビーズ、または粒子との間の界面ではない。
【0021】
第3のポリマーまたは第4のポリマーの体積分率は、第3の層c)それ自体の総体積の部分としての、第3のポリマーまたは第4のポリマーの体積の分率と定義される。第3の層c)中の第3のポリマーの体積分率は、好ましくは、0.1~0.9、より好ましくは0.2~0.8、特に0.3~0.7、たとえば、約0.4、約0.5、または約0.6である。
【0022】
一実施形態において、第3のポリマーは、重合誘導相分離を含む方法、より好ましくは、たとえば、第3のポリマーの、そのポリマーを調製するために使用される組成物からの光重合誘導相分離によって得られる。この選好は、そのような方法が、第4の(反対に帯電した)ポリマーまたは第4の(反対に帯電した)ポリマーを調製するための硬化性組成物を受け入れることができる空孔のネットワークを含む第3のポリマーを提供することに特に良好であるため生じる。このプロセスにおいて、好ましくは、第3のポリマーは(光)重合反応によって形成される。
【0023】
好ましくは、第3のポリマーは、5μm未満の、より好ましくは、2μm未満の、特に1μm未満の平均空孔径を有する空孔のネットワークを含む。次いで、第3のポリマー内の空孔は(第4の)硬化性組成物で充填されてもよく、次いで、その硬化性組成物は、第3のポリマーの空孔のネットワーク内の第4のポリマーを提供するために、硬化されてもよい。好ましい実施形態において、第3のポリマーの空孔のネットワークは、実質的にまたは完全に第4のポリマーで充填される。結果として、第3のポリマーが、第4のポリマー(反対に帯電した)で充填された空孔のネットワークを含む、第3の層が生じる。したがって、第3および第4のポリマーは、2つのポリマードメインを含む共連続ポリマーネットワークを提供してもよく、一方が第3のポリマー由来であり、他方が第4のポリマー由来である。好ましい実施形態において、この共連続ポリマーネットワークは他のポリマーを含まない(多孔質支持体中に存在するいかなるポリマーも除く)。一実施形態において、第3と第4のポリマーとを一緒に結合する共有結合が存在する。実際には、第3のポリマー中に存在する空孔は、第4のポリマーが第3のポリマーの空孔を部分的に充填し、第2のポリマーが残りの空孔を充填するように、1種より多いポリマー、たとえば、第4のポリマー(第4の硬化性組成物に由来する)および任意選択で第2のポリマー(第2の硬化性組成物に由来する)を含んでもよい。さらに、所望であれば、第3のポリマー中の空孔は、1種または複数のさらなるポリマーを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1Aは、先行技術に記載される典型的な膜を通る断面を例示する。
図1Bは、本発明による膜を通る断面を例示する。
図1Aにおいて、層1はポリマー層、層3は繊維状要素を含む中央層、および層2は別のポリマー層である。
【0026】
図1Bにおいて、層a)は、第1のポリマーまたは第4のポリマー、および任意選択で多孔質支持体(図示せず)を含む第1の層a)である。層c)は、それぞれ黒色および白色の、第3(2’)および第4の(1’)ポリマーを含む第3の層c)である。第3のポリマー(黒色)は、多孔質支持体(図示せず)の空孔内に位置しており、第4のポリマー(白色)は、第3のポリマー(黒色)の多孔質ネットワーク内にある。層b)は、第2のポリマー、および任意選択で多孔質支持体(図示せず)を含む第2の層b)である。
【0027】
膜が、1つより多い多孔質支持体を含む場合、多孔質支持体は、膜にとって望ましい特性、および膜の意図される使用に応じて、互いに対して物理的かつ化学的に同一であってもよく、またはそれらは、膜中に存在する他の多孔質支持体(存在する場合)のうちの1つまたは複数とは異なってもよい。
【0028】
好ましくは、層a)、層b)、および層c)のうちの少なくとも1つは、多孔質支持体を含む。したがって、本発明の膜は好ましくは、複合膜である。多孔質支持体は、機械的強度を付与するのに有用であり、典型的に、層a)、層b)、および層c)のうちの1つまたは複数は、多孔質支持体を含む。各多孔質支持体は、全体が層内に、または所望であれば、層c)と層a)との界面、および/もしくは層c)と層b)との界面に位置付けられてもよい。
【0029】
一実施形態において、単一の多孔質支持体が、第1の層a)および第3の層c)の両方において、かつそれらに共通して存在する。この実施形態において、層b)は任意選択で第2の多孔質支持体を含む。それぞれの場合において、関連する層のポリマーは好ましくは、関連する多孔質支持体の空孔内に存在する。
【0030】
別の実施形態において、単一の多孔質支持体は、第2の層b)および第3の層c)の両方において、かつそれらに共通して存在する。この実施形態において、層a)は任意選択で第2の多孔質支持体を含む。それぞれの場合において、関連する層のポリマーは好ましくは、関連する多孔質支持体の空孔内に存在する。
【0031】
任意選択で、層a)、層b)、および層c)のうちの2つのみが多孔質支持体を含む。たとえば、層a)および層c)は多孔質支持体を含み、層b)は多孔質支持体を含まない、または層b)および層c)は多孔質支持体を含み、層a)は多孔質支持体を含まない、または層a)および層b)は多孔質支持体を含み、層c)は多孔質支持体を含まない。層a)、層b)、および層c)のうちの2つのみが多孔質支持体を含む場合、それら2つの層は任意選択でそれぞれ、別々の支持体を含むか、または2つの層は、同じ単一の支持体を含む。
【0032】
好ましい実施形態において、少なくとも層c)は多孔質支持体を含む。
別の実施形態において、層c)は、部分的に第1の多孔質支持体によって支持されており、部分的に支持されていない。好ましくは、この実施形態において、膜は、層a)または層b)を完全に支持し、かつ部分的に層c)を支持する多孔質支持体を含む。残りの層(場合によって層b)または層a))は好ましくは、多孔質支持体を含まないか、または第2の多孔質支持体を含む。
【0033】
層a)、b)、および/またはc)中に含まれてもよい多孔質支持体の例として、合成の織布および不織布ならびに押出フィルムが言及されてもよい。例としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのポリアリールエーテルケトン、およびそれらのコポリマーから作製された、湿式および乾式不織布材料、スパンボンド布、メルトブロー布、およびナノファイバーウェブが挙げられる。多孔質支持体はまた、多孔質膜、たとえば、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリフェニレンスルホン膜、ポリフェニレンスルフィド膜、ポリイミド膜、ポリエーテルイミド膜、ポリアミド膜、ポリアミドイミド膜、ポリアクリロニトリル膜、ポリカルボナート膜、ポリアクリラート膜、酢酸セルロース膜、ポリプロピレン膜、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)膜、ポリフッ化ビニリデン膜、ポリテトラフルオロエチレン膜、ポリヘキサフルオロプロピレン膜、およびポリクロロトリフルオロエチレン膜、ならびにそれらの誘導体であってもよい。
【0034】
好ましくは、多孔質支持体は存在する場合、それぞれ独立して、10~400μmの間、より好ましくは、20~150μmの間、特に30~100μmの間の平均厚さを有する。
【0035】
好ましくは、多孔質支持体は存在する場合、30~95%の間の多孔率を有する。支持体の多孔率は、ポロメーター、たとえば、IB-FT GmbH、ドイツ製のPorolux(商標)1000によって決定されてもよい。
【0036】
多孔質支持体のうちの1つまたは複数は、その表面エネルギーを、たとえば、45mN/mを上回る、好ましくは55mN/mを上回る値に、改変させるように処理されてもよい。好適な処理としては、たとえば、多孔質支持体の濡れ性、および多孔質支持体への接着性を向上する目的の、コロナ放電処理、プラズマグロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、または化学的処理などが挙げられる。
【0037】
市販されている多孔質支持体は、複数の供給源から、たとえば、Freudenberg Filtration Technologies(Novatexx材)、Lydall Performance Materials、Celgard LLC、APorous Inc.、SWM(Conwed Plastics、DelStar Technologies)、帝人株式会社、Hirose、三菱製紙株式会社、およびSefar AGから利用可能である。
【0038】
好ましくは、各多孔質支持体は独立して、ポリマー支持体である。好ましい支持体は、共有結合しているイオン基を有しない合成の織布または不織布または押出フィルムを含む。
【0039】
好ましくは、膜の第1の層a)、第2の層b)、および第3の層c)はそれぞれ独立して、10μm~200μmの間の、より好ましくは、20μm~150μmの間の、特に30~100μmの間の平均厚さを有する。
【0040】
好ましくは、本発明の膜は、30μm~600μmの間、より好ましくは、60μm~450μmの間の、特に90~300μmの間の平均厚さを有する。
好ましくは、本発明の膜はバイポーラ膜である。
【0041】
第1、第2、第3、および第4のポリマーは好ましくは、それぞれ独立して、イオン基、たとえばアニオン基またはカチオン基を有する硬化性化合物を含む硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得られる。したがって、第1のポリマーは、第1の硬化性組成物から得られてもよく、第2のポリマーは、第2の硬化性組成物から得られてもよく、第3のポリマーは、第3の硬化性組成物から得られてもよく、第4のポリマーは、第4の硬化性組成物から得られてもよい。
【0042】
イオン基は、組成物のpHに応じて、部分的に、または全体的に塩の形態であってもよい。イオン基を有する硬化性化合物は、1つまたは複数のエチレン性不飽和基の存在によって硬化性にされてもよい。したがって、イオン基を有する硬化性化合物は好ましくは、エチレン性不飽和基およびカチオン基またはアニオン基を含む。アニオン基は、カチオン基と反対の極性を有する。
【0043】
好ましいエチレン性不飽和基としては、ビニル基および(メタ)アクリル酸基(たとえば、CH2=CR4C(O)-基)、特にアリル基、芳香族ビニル基(たとえば、スチレン基)、(メタ)アクリラート基(たとえば、CH2=CR4C(O)O-基)、および(メタ)アクリルアミド基(たとえば、CH2=CR4C(O)NR4-基)(式中、各R4は独立して、HまたはCH3である)が挙げられる。
【0044】
好ましいアニオン基は、酸性基、たとえば、スルホ基、カルボキシ基、および/またはホスファト基、特にスルホ基である。好ましい塩は、リチウム塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩、ならびにそれらの2つ以上を含む混合物である。
【0045】
好ましいカチオン基は、第四級アンモニウム基である。
アニオン基または第四級アンモニウム基を有する硬化性化合物の例は、下記で与えられる。
【0046】
第1、第2、第3、および第4のポリマーを調製するために使用されてもよい硬化性組成物は好ましくは、架橋剤、たとえば、少なくとも2つのエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を1~88wt%(または1~70wt%)の量で含む硬化性化合物をさらに含む。少なくとも2つのエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を含む硬化性化合物の例は、下記で与えられる。
【0047】
第1、第2、第3、および第4のポリマーを調製するために使用されてもよい硬化性組成物は好ましくは、ラジカル開始剤、たとえば、0~10wt%のラジカル開始剤をさらに含む。好適なラジカル開始剤の例は、下記で与えられる。
【0048】
第1、第2、第3、および第4のポリマーを調製するために使用されてもよい硬化性組成物は好ましくは、溶媒、たとえば、0~55wt%、または20~98wt%の溶媒をさらに含む。好適な溶媒の例は、下記で与えられる。好ましくは、第1のポリマーは、
(a1)1つのエチレン性不飽和基およびイオン基を有する0~60wt%の硬化性化合物と、
(b1)少なくとも2つのエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を含む1~88wt%の硬化性化合物と、
(c1)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d1)0~55wt%の溶媒と
を含む第1の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である。
【0049】
好ましくは、第2のポリマーは、
(a2)1つのエチレン性不飽和基、および第1の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷のイオン基を有する0~60wt%の硬化性化合物と、
(b2)少なくとも2つのエチレン性不飽和基、および任意選択で(第1の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷の)イオン基を含む1~88wt%の硬化性化合物と、
(c2)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d2)0~55wt%の溶媒と
を含む第2の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である。
【0050】
上に言及されるように、第3のポリマーは、好ましくは、第3のポリマーを調製するために使用される第3の硬化性組成物からの第3のポリマーの重合誘導相分離を含む方法から得られる。この方法は、空孔のネットワーク内に(かつ任意選択で、所望であれば、非常に効率的に第1の層a)を提供するために第3のポリマーの表面上にも)第4のポリマーを調製するために、(第1の硬化性組成物と同一であっても、第1の硬化性組成物と異なっていてもよい)第4の硬化性組成物を受け入れることができる空孔のネットワークを含む形態で第3のポリマーを提供することに特に有用である。このようにして、第3のポリマー中に存在する空孔のネットワークを調製し、次いで第4のポリマーを形成するのに好適な第4の硬化性組成物を含浸させ、第3のポリマーの空孔のネットワーク内に、かつ任意選択で、第3の層c)を作製するのと同時に層a)を同時に作製するために第3のポリマーの表面上に、第4の硬化性組成物を硬化させることができる。
【0051】
好ましくは、イオン基および空孔のネットワークを含む第3のポリマーは、
(a3)1つのエチレン性不飽和基およびイオン基を有する0~60wt%の硬化性化合物と、
(b3)少なくとも2つのエチレン性不飽和基および任意選択でイオン基を含む1~70wt%の硬化性化合物と、
(c3)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d3)20~98wt%の溶媒と
を含む第3の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である。
【0052】
好ましくは、成分(a3/b3)のイオン基の極性は、成分(a2/b2)のイオン基の極性と同じであり、成分(a1/b1)のイオン基の極性と反対である。
好ましくは、第4のポリマーは、第1の硬化性組成物のために与えられた定義に収まる第4の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である。第4の硬化性組成物は、第1の硬化性組成物と同じであっても、異なっていてもよい。好ましくは、第4の硬化性組成物は、1種のエチレン性不飽和基、および第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷のイオン基を有する硬化性化合物を含む。したがって、第4のポリマーは、
(a4)1種のエチレン性不飽和基、および第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷のイオン基を有する0~60wt%の硬化性化合物と、
(b4)少なくとも2種のエチレン性不飽和基、および任意選択で(第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物と反対の電荷の)イオン基を含む1~88wt%の硬化性化合物と、
(c4)0~10wt%のラジカル開始剤と、
(d4)0~55wt%の溶媒と
を含む第4の硬化性組成物を硬化させるステップを含む方法によって得ることが可能である。
【0053】
成分(a1)、(a2)、および(a4)のそれぞれの量は独立して、好ましくは0~40wt%である。
成分(a3)の量は、好ましくは0~30wt%、特に0~20wt%である。
【0054】
成分(b1)、(b2)、および(b4)のそれぞれの量は独立して、好ましくは、5~80wt%、特に10~70wt%である。
成分(b3)の量は、好ましくは、9~65wt%、特に14~59wt%、より特には19~49wt%である。
【0055】
第1、第2、第3、および第4のポリマーを作製するために使用されてもよい硬化性組成物は、好ましくは、UV、可視光線によって、または熱的に組成物を硬化させることが意図される場合、ラジカル開始剤(成分(c1)、(c2)、(c3)および(c4))を含む。硬化させるための代替的な方法としては、電子ビームおよびガンマ線照射が挙げられる。それらの方法はラジカル開始剤を必要としない。したがって、関連する組成物中に存在する成分(c1)、(c2)、(c3)、および(c4)の量は、好ましくは0~2wt%、UV、可視光線によって、または熱的に硬化させるために、より好ましくは0.001~2wt%、特に0.005~0.9wt%である。
【0056】
関連する組成物中に存在する成分(d1)、(d2)、および(d4)の量は、好ましくは20~45wt%である。
好ましくは、成分(d1)、(d2)、および(d3)として使用される溶媒は不活性である、すなわち、それらは硬化性組成物の他の成分のうちのいずれとも反応しない。成分(d3)の量は、好ましくは30~90wt%、特に40~85wt%、より特には49~78wt%である。
【0057】
成分(d3)は、好ましくは単一溶媒である。
成分(d3)は、任意選択で、2種以上の不活性溶媒を含み、それらのうちの少なくとも1つが、硬化性組成物の他の成分のための溶媒であり、それらのうちの少なくとも1つが、たとえば、第4の硬化性組成物を受け入れることができる空孔のネットワークを含む第3のポリマーを相分離により形成することによって、組成物を硬化させることから形成される第3のポリマーのための非溶媒である。
【0058】
硬化性組成物中に存在してもよい不活性溶媒の例としては、水、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ニトリル系溶媒、および有機リン系溶媒が挙げられる。(特に水との組み合わせで)成分(d3)として、または成分(d3)中で、使用されてもよいアルコール系溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびそれらの2つ以上を含む混合物が挙げられる。好ましくは、成分(d3)は水である。
【0059】
加えて、成分(d3)中で使用されてもよい好ましい不活性の有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジアセタート、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、y-ブチロラクトン、およびそれらの2つ以上を含む混合物が挙げられる。ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、およびそれらの2つ以上を含む混合物が好ましい。
【0060】
一実施形態において、成分(d3)は、下記のリスト(i)からの溶媒のうちの少なくとも1つ、および下記のリスト(ii)からの溶媒のうちの少なくとも1つを含み、少なくとも2つの溶媒は異なる。
リスト(i):イソ-プロパノール、メタノール、エタノール、アセトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ブタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、プロピオニトリル、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、酢酸エチル、y-ブチロラクトン、ならびに
リスト(ii):水、グリセロール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルモルホリン、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジアセタート、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、およびy-ブチロラクトン。
【0061】
溶媒の選択は、組成物の他の成分に依存する。
一実施形態において、成分(d3)は、水、およびリスト(i)からの1つまたはさらなる他の溶媒を含む。
【0062】
好ましくは、第1の硬化性組成物および第2の硬化性組成物のうちの一方は、エチレン性不飽和基およびアニオン基を有する硬化性化合物を含み、他方は、エチレン性不飽和基およびカチオン基を有する硬化性化合物を含む。さらに、好ましくは、第3の硬化性組成物および第4の硬化性組成物のうちの一方は、エチレン性不飽和基およびアニオン基を有する硬化性化合物を含み、他方は、エチレン性不飽和基およびカチオン基を有する硬化性化合物を含む。エチレン性不飽和基およびアニオン基またはカチオン基を有する硬化性化合物の例としては、式(A)、(B)、(CL)、(SM)、(MA)、(MB-α)、(C)、(ACL-A)、(ACL-B)、(ACL-C)、および/または(AM-B)の以下の化合物が挙げられる:
【0063】
【0064】
[式(A)および(B)において、
RA1~RA3はそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表し、RB1~RB7はそれぞれ独立して、アルキル基またはアリール基を表し、
ZA1~ZA3はそれぞれ独立して、-O-または-NRa-(式中、Raは水素原子またはアルキル基を表す)を表し、
LA1~LA3はそれぞれ独立して、アルキレン基、アリーレン基、またはそれらの組み合わせの二価の連結基を表し、
RXは、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、またはそれらの組み合わせの二価の連結基を表し、
XA1~XA3はそれぞれ独立して、有機または無機アニオン、好ましくはハロゲンイオンまたは脂肪族もしくは芳香族カルボン酸イオンを表す]。
【0065】
式(A)または(B)の化合物の例としては、
【0066】
【0067】
【0068】
が挙げられる。
合成法は、たとえば、US2015/0353721、US2016/0367980、およびUS2014/0378561において見出すことができる。
【0069】
【0070】
[式(CL)および(SM)において、
L1はアルキレン基またはアルケニレン基を表し、
Ra、Rb、Rc、およびRdはそれぞれ独立して、直鎖もしくは分岐アルキル基、またはアリール基を表し、
RaおよびRb、ならびに/またはRcおよびRdは、互いに結合されることによって環を形成してもよく、
R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、直鎖もしくは分岐アルキル基またはアリール基を表し、R1およびR2、またはR1、R2およびR3は、互いに結合されることによって脂肪族複素環を形成してもよく、
n1、n2、およびn3はそれぞれ独立して、1~10の整数を表し、X1
-、X2
-、およびX3
-はそれぞれ独立して、有機または無機アニオンを表す]
式(CL)および(SM)の例としては、
【0071】
【0072】
が挙げられる。
合成法は、EP3184558およびUS2016/0001238において見出すことができる。
【0073】
【0074】
[式(MA)および(MB-α)において、
RA1は水素原子またはアルキル基を表し、
Z1は-O-または-NRa-(式中、Raは水素原子またはアルキル基を表す)を表し、
M+は、有機または無機カチオン、好ましくは水素イオンまたはアルカリ金属イオンを表し、
RA2は、水素原子またはアルキル基を表し、
RA4は、スルホン酸基を含み、エチレン性不飽和基を有しない有機基を表し、
Z2は、-NRa-(式中、Raは、水素原子またはアルキル基、好ましくは水素原子を表す)を表す]
式(MA)および(MB-α)の例としては、
【0075】
【0076】
が挙げられる。
合成法は、たとえば、US2015/0353696において見出すことができる。
【0077】
【0078】
合成法は、たとえば、US2016/0369017において見出すことができる。
【0079】
【0080】
[式(C)において、
L1は、アルキレン基を表し、
nは1~3の整数、好ましくは1または2を表し、
mは1または2の整数を表し、
L2はn価の連結基を表し、
R1は、水素原子またはアルキル基を表し、
R2は、-SO3
-M+または-SO3R3を表し、複数のR2の場合、各R2は独立して、-SO3M+または-SO3R3を表し、
M+は、水素イオン、無機イオン、または有機イオンを表し、
R3は、アルキル基またはアリール基を表す]
式(C)の例としては、
【0081】
【0082】
が挙げられる。
合成法は、EP3187516において見出すことができる。
【0083】
【0084】
[式(ACL-A)、式(ACL-B)、式(ACL-C)、および式(AM-B)において、
RおよびR’のそれぞれは独立して、水素原子またはアルキル基を表し、
LLは、単結合または二価の連結基を表し、
LL1、LL1’、LL2、およびLL2’のそれぞれは独立して、単結合または二価の連結基を表し、AおよびA’のそれぞれは独立して、遊離酸または塩の形態でのスルホ基を表し、
mは1または2を表す]
式(ACL-A)、(ACL-B)、(ACL-C)、および(AM-B)の例としては、
【0085】
【0086】
が挙げられる。
合成法は、US2016/0362526において見出すことができる。
他の好適なモノマーとしては、
【0087】
【0088】
が挙げられる。
硬化性組成物は、熱硬化、光硬化、電子ビーム(EB)照射、ガンマ線照射、および前述の組み合わせを含む、任意の好適なプロセスによって硬化されてもよい。しかしながら、硬化性組成物は、好ましくは、光硬化によって、たとえば、可視光の紫外線によって硬化性組成物に照射し、それにより組成物中に存在する硬化性成分を硬化させ重合させることによって、硬化される。
【0089】
硬化性組成物中に含まれてもよい好適な熱開始剤の例としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナート)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジスルファート二水和物、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、および2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。
【0090】
硬化性組成物中に含まれてもよい好適な光開始剤の例としては、芳香族ケトン、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトキシムエステル化合物、ホウ酸塩化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、およびアルキルアミン化合物が挙げられる。芳香族ケトン、アシルホスフィンオキシド化合物、およびチオ化合物の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」、77~117ページ(1993年)に記載されている、ベンゾフェノン骨格またはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。それらのより好ましい例としては、JP1972-6416B(JP-S47-6416B)に記載されているアルファ-チオベンゾフェノン化合物、JP1972-3981B(JP-S47-3981B)に記載されているベンゾインエーテル化合物、JP1972-22326B(JP-S47-22326B)に記載されているアルファ-置換ベンゾイン化合物、JP1972-23664B(JP-S47-23664B)に記載されているベンゾイン誘導体、JP1982-30704A(JP-S57-30704A)に記載されているアロイルホスホン酸エステル、JP1985-26483B(JP-S60-26483B)に記載されているジアルコキシベンゾフェノン、JP1985-26403B(JP-S60-26403B)およびJP1987-81345A(JPS62-81345A)に記載されているベンゾインエーテル、JP1989-34242B(JPH01-34242B)、米国特許第4,318,791A号明細書、およびEP0284561A1に記載されているアルファ-アミノベンゾフェノン、JP1990-211452A(JP-H02-211452A)に記載されているp-ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、JP1986-194062A(JPS61-194062A)に記載されているチオ-置換芳香族ケトン、JP1990-9597B(JP-H02-9597B)に記載されているアシルホスフィンスルフィド、JP1990-9596B(JP-H02-9596B)に記載されているアシルホスフィン、JP1988-61950B(JP-S63-61950B)に記載されているチオキサントン、およびJP1984-42864B(JP-S59-42864B)に記載されているクマリンが挙げられる。加えて、JP2008-105379AおよびJP2009-114290Aに記載されている光開始剤も好ましい。加えて、Kato Kiyomi著、「Ultraviolet Curing System」の65~148ページ(Research Center Co.,Ltd.出版、1989年)に記載されている光開始剤が使用されてもよい。
【0091】
特に好ましい光開始剤としては、以下の溶媒、水、エタノール、およびトルエンのうちの1つまたは複数において23℃の温度で測定される場合、380nmより長い波長で最大の吸収を有するNorrish TypeII光開始剤が挙げられる。例としては、キサンテン、フラビン、クルクミン、ポルフィリン、アントラキノン、フェノキサジン、カンファーキノン、フェナジン、アクリジン、フェノチアジン、キサントン、チオキサントン、チオキサンテン、アクリドン、フラボン、クマリン、フルオレノン、キノリン、キノロン、ナフタキノン、キノリノン、アリールメタン、アゾ、ベンゾフェノン、カロテノイド、シアニン、フタロシアニン、ジピリン、スクアリン、スチルベン、スチリル、トリアジン、またはアントシアニン誘導体化光開始剤が挙げられる。
【0092】
硬化性組成物は、好ましくは、硬化性組成物適用ステーション、組成物を硬化させるための照射源を備える1つまたは複数の硬化ステーション、膜回収ステーション、および硬化性組成物適用ステーションから硬化ステーションへ、かつ膜回収ステーションへ支持体を移動させるための手段を含む製造部によって、移動する支持体に連続的に適用されてもよい。
【0093】
硬化性組成物適用ステーションは、硬化ステーションに対して上流の位置にあってもよく、硬化ステーションは、膜回収ステーションに対して上流の位置にあってもよい。
適用技法の例としては、スロットダイコーティング、スライドコーティング、エアナイフコーティング、ローラーコーティング、スクリーン印刷、およびディッピングが挙げられる。用いられる技法および望ましい最終仕様に応じて、たとえば、ロールツーロールスクイーズ、ロールツーブレードもしくはブレードツーロールスクイーズ、ブレードツーブレードスクイーズ、またはコーティングバーを使用する除去によって、基材から過剰のコーティングを除去することが必要となることがある。可視光の紫外線による硬化は、40~2000mJ/cm2の間の線量を使用して、100nm~800nmの間の波長で生じ得る。熱硬化は、好ましくは0~20時間、20℃~100℃の間の範囲で起こる。
【0094】
いくつかの場合において、40℃~200℃の間の温度が採用され得る追加の乾燥が必要となることがある。
一実施形態において、膜は触媒を含む。触媒またはそれの前駆体は、第1の硬化性組成物、第2の硬化性組成物、第3の硬化性組成物、および第4の組成物のうちの1つまたは複数中に含まれてもよい。たとえば、ディッピング、エアナイフコーティング、マイクロローラーコーティング、スプレー法、化学(蒸着)析出、または物理(蒸着)析出(しかしこれらに限定されない)を使用して、触媒またはそれの前駆体を第3のポリマーに適用することも可能である(たとえば、後処理ステップとして)(すなわち、第3の硬化性組成物を硬化させた後)。この実施形態において、第3と第4のポリマーとの間の(第3の)界面に触媒は存在する。好ましい実施形態において、第3の層は触媒を含む。
【0095】
一実施形態において、層a)、層b)、および層c)ならびに/または界面のうちの少なくとも1つ、は、触媒を含む。
好適な触媒の例としては、金属塩、金属酸化物、有機金属化合物、モノマー、ポリマー、またはコポリマーが挙げられる。例としては、FeCl3、FeCl2、AlCl3、MgCl2、RuCl3、CrCl3、Fe(OH)3、Sn(OH)2、Sn(OH)4、SnCl2、SnCl4、SnO、SnO2、Al2O3、NiO、Zr(HPO4)2、MoS2,グラフェンオキシド、Fe-ポリビニルアルコール錯体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリル酸(PAA)、アクリル酸と無水マレイン酸のコポリマー(PAAMA)、超分岐脂肪族ポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの触媒のうち任意のものが、膜の重量の最大5wt%までの範囲、たとえば、0.001wt%または1wt%で、存在してもよい。
【0096】
本発明の第2の態様によれば、膜を調製するための方法であって、以下のステップ:
(i)それぞれ、イオン基を有する硬化性化合物を含む、第2、第3、および第4の硬化性組成物、ならびに任意選択で第1の硬化性組成物を用意するステップであり、
a).第2の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物のイオン基が、第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物のイオン基と同じ極性を有し、
b).第4の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物のイオン基が、第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物のイオン基の極性と反対の極性を有し、
c).第1の硬化性組成物が与えられる場合、第1の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物のイオン基が、第3の硬化性組成物中に存在する硬化性化合物のイオン基の極性と反対の極性を有する、
ステップと、
(ii)多孔質支持体に第3の硬化性組成物を含浸させるステップと、
(iii)第3の硬化性組成物からの第3のポリマーの相分離を含む方法によって多孔質支持体内に存在する第3の硬化性組成物を硬化させるステップであり、第3のポリマーがイオン基および空孔のネットワークを含み、それにより多孔質支持体および第3のポリマーを含む基層を提供し、基層が、第1の側、および第1の側と反対側の第2の側を備える、ステップと、
(iv)第4の硬化性組成物の少なくとも一部が第3のポリマーの空孔の少なくとも一部へと入り、任意選択で、基層の第1の側に第4の硬化性組成物の層を提供するように、基層の第1の側を第4の硬化性組成物と接触させるステップと、
(v)第2の硬化性組成物が、第3のポリマーの残りの空孔すべてに入り、基層の第2の側に第2の硬化性組成物の層を提供するように、基層の第2の側を第2の硬化性組成物と接触させるステップと、
(vi)基層の第1の側を第4の硬化性組成物と接触させるステップが基層の第1の側に第4の硬化性組成物の層を提供しない場合、第1の硬化性組成物の層が基層の第1の側に提供されるように、基層の第1の側を第1の硬化性組成物と接触させるステップと、
(vii)任意の順序で、または同時に、基層の各側に存在する硬化性組成物の層、および第3のポリマーの空孔内に存在する硬化性組成物の層を硬化させて、
それぞれの場合に第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有する第1のポリマーまたは第4のポリマーを含む第1の層a)と、
第3のポリマーのイオン基の極性と同じ極性のイオン基を有する第2のポリマーを含む第2の層b)と、
(i)イオン基を有する第3のポリマーと、(ii)第3のポリマーのイオン基の極性と反対の極性のイオン基を有し、第3のポリマーの空孔のネットワーク内に存在する第4のポリマーとの共連続ポリマーネットワークを含む第3の層c)と
を形成するステップであり、
層c)が層a)と層b)との間に挟まれている、ステップと
を含む、方法が提供される。
【0097】
方法の一実施形態において、ステップ(i)において、第1の硬化性組成物は用意されず、ステップ(vi)において、基層の第1の側を第4の硬化性組成物と接触させるステップは基層の第1の側に第4の硬化性組成物の層を提供する(したがって、第1の硬化性組成物の層が基層の第1の側に提供されるように、基層の第1の側を第1の硬化性組成物と接触させることは必要ではなく、それは、第4の硬化性組成物が、層c)中に存在する第4のポリマーに加えて、第1の層a)を提供するためである)。
【0098】
別の実施形態において、ステップ(iv)において、第4の硬化性組成物の層は、基層の第1の側に提供され、この層はステップ(vi)において、第1の硬化性組成物の層が、基層の第1の側に存在する第4の硬化性組成物の層上に提供されるように、第1の硬化性組成物と接触される。他のステップは上述されるようなものである。
【0099】
本発明の第2の態様の方法は好ましくは、本発明の第1の態様による膜を提供する。
別の好ましい実施形態において、第1の層a)および第2の層b)のうちの一方は、多孔質支持体を含む。これは、上述の方法の間に、第1の硬化性組成物中に多孔質支持体または第2の硬化性組成物を含めることによって達成されてもよい。
【0100】
好ましい実施形態において、第1の硬化性組成物および第4の硬化性組成物はそれぞれ、アニオン基を有する硬化性化合物を含み、第2の硬化性組成物および第3の硬化性組成物は両方とも、カチオン基を有する硬化性化合物を含む。
【0101】
さらに別の好ましい実施形態において、方法のステップ(ii)は、第3の硬化性組成物を含浸された多孔質支持体を透明ホイルの間に配置して、含浸された多孔質支持体および2つのホイルのサンドイッチを得、次いで、たとえばローラーまたはブレードの間でサンドイッチを圧搾して、過剰の第3の硬化性組成物をすべて除去するステップをさらに含む。硬化させるステップ(iii)の後、ステップ(iv)を実行する前に、透明ホイルは除去されてもよい。さらに好ましい実施形態において、ステップ(iii)において、第3の硬化性組成物を硬化させるステップは、不活性雰囲気下、たとえば、窒素、二酸化炭素、またはアルゴンガス下で実行される。
【0102】
本発明の膜は、電気透析および酸/塩基生成を含む様々な用途のために使用されてもよい。本発明の膜はまた、特に、それらが酸性および塩基性媒体における良好な耐久性、低膨潤性を有し、安価に、迅速に、かつ効率的に製造され得るため、バイポーラ膜として応用されてもよい。
【0103】
ここから本発明は、以下の非限定的な実施例によってより詳細に説明され、そこでは別段の定めがない限り、部および百分率はすべて重量による。
【実施例】
【0104】
【0105】
【0106】
膜の調製
実施例1
表2に示される成分を混合することによって、第1、第2、および第3の硬化性組成物を調製した。この実施例において、第1の硬化性組成物を第4の硬化性組成物としても使用した。
【0107】
メイヤーバーを使用して、第3の硬化性組成物の100μm厚さの層を透明PETホイルシートに適用した。多孔質支持体(FO2223-10C)を第3の硬化性組成物の層に適用し、それにより第3の硬化性組成物を含浸させた。含浸された多孔質支持体に第2の透明PETホイルシートを適用して、含浸された多孔質支持体を2つの透明ホイルの間にサンドイッチしたものを用意した。ローラーを使用して、多孔質支持体から空気をすべて穏やかに絞り出した。
【0108】
多孔質支持体中に存在する第3の硬化性組成物を硬化させるために、5m/分の速度で60%の強度で動作するDバルブを装着した、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10を使用して、含浸された多孔質支持体を2つの透明ホイルの間にサンドイッチしたものに照射した。硬化後、透明PETホイルを除去し、硬化物を室温の空気中で乾燥させて、第1の側および第2の側を有する基層(すなわち、イオン基および空孔のネットワークを含む第3のポリマーを含む多孔質支持体)を得た。
【0109】
わずかに酸性の水溶液中の1.35wt%のスズ(II)塩化物を含む触媒溶液中に基層を浸漬し、室温で乾燥させた。続いて、0.12N NaOH溶液に基層を浸漬して触媒を析出させ、室温で乾燥させた。
【0110】
80μmメイヤーバーを使用して、第1の硬化性組成物を透明PETホイルに適用した。次いで、第1の硬化性組成物の層の上部に、上述のとおりに調製された、触媒を含む基層を、基層の第1の側が第1の硬化性組成物に接触した状態で配置し、そこで第1の組成物(この場合、第4の組成物として倍加する)の一部は第3のポリマーの空孔に入った。これにより、第1の硬化性組成物(この場合、第4の組成物として倍加する)を含浸された基層が得られ、基層の第1の側に第1の硬化性組成物(この場合、第4の組成物として倍加する)の層が提供された。
【0111】
5m/分の速度で50%の強度で動作するDバルブを装着した、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10を使用して、第1の硬化性組成物を含浸され、かつその第1の側に第1の組成物(この場合、第4の組成物として倍加する)の層を有する基層に、基層の第2の側(すなわち、第1の硬化性組成物を有しない側)において照射した。得られた硬化されたフィルムは、層a)と、第3のポリマーの空孔が、硬化された第1の硬化性組成物で充填された層c)との積層体であった。
【0112】
メイヤーバーを使用して、層a)と層c)との積層体の層a)を含まない第2の側に第2の硬化性組成物の100μmの層を適用し、第2の多孔質支持体(FO2223-10C)を第2の硬化性組成物の層に適用した。5秒後、4μmメイヤーバーを使用して、過剰の第2の硬化性組成物を除去した。
【0113】
第2の硬化性組成物を硬化させるために、5m/分の速度で50%の強度で動作するDバルブを装着した、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10を使用して、得られた生成物の両側に照射した。最後に、PETホイルを除去して、第1の層a)、第2の層b)、および第1の層a)と第2の層b)との間に挟まれた第3の層c)を含む、本発明の第1の態様によるバイポーラの複合膜を得た。
【0114】
実施例2
表2に示される成分を混合することによって、第1、第2、第3、および第4の硬化性組成物を調製した。
【0115】
メイヤーバーを使用して、第3の硬化性組成物の60μm厚さの層を透明PETホイルシート上に置かれた多孔質支持体に適用した。4μmメイヤーバーを使用して、多孔質支持体から過剰の硬化性組成物を除去し、それにより多孔質支持体が第3の硬化性組成物を含浸されることを確実にした。含浸された多孔質支持体に第2の透明PETホイルシートを適用して、含浸された多孔質支持体を2つの透明ホイルの間にサンドイッチしたものを用意した。ローラーを使用して、多孔質支持体から空気をすべて穏やかに絞り出した。
【0116】
多孔質支持体中に存在する第3の硬化性組成物を硬化させるために、5m/分の速度で60%の強度で動作するDバルブを装着した、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10を使用して、含浸された多孔質支持体を2つの透明ホイルの間にサンドイッチしたものに照射した。硬化後、PETホイルを除去し、硬化物を室温の空気中で乾燥させて、第1の側および第2の側を有する基層(すなわち、イオン基および空孔のネットワークを含む第3のポリマーを含む多孔質支持体)を得た。
【0117】
わずかに酸性の水溶液中の1.35wt%のスズ(II)塩化物を含む触媒溶液中に基層を浸漬し、室温で乾燥させた。続いて、0.12N NaOH溶液に基層を浸漬して触媒を析出させ、室温で乾燥させた。
【0118】
上述のとおりに調製された、触媒を含む基層を、その第2の側を透明PETホイル上にして配置した。24μmメイヤーバーを使用して、第4の硬化性組成物を基層の第1の側(触媒を含む)に適用し、それにより第3のポリマーの多孔質ネットワークに第4の硬化性組成物を含浸させた。4μmメイヤーバーを使用して、過剰の第4の硬化性組成物を除去した。
【0119】
60μmメイヤーバーを使用して、第1の硬化性組成物を、別の透明PETホイル上に適用した。第3のポリマーおよび第3のポリマーの多孔質ネットワーク中の第4の硬化性組成物を含む基層を、基層の第1の側が第1の硬化性組成物に接触している状態で、第1の硬化性組成物の層に配置した。結果として、第3のポリマーの空孔のネットワーク中の第4の硬化性組成物、および基層の第1の側の第1の硬化性組成物の層を有する基層が形成された。
【0120】
5m/分の速度で50%の強度で動作するDバルブを装着した、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10を使用して、第3のポリマーの空孔中に存在する第4の硬化性組成物、および基層の第1の側にある第1の硬化性組成物の層を有する基層に、第2の側(すなわち、第1の硬化性組成物を有しない側)において照射し、その後、基層の第2の側の透明PETホイルを除去した。得られた硬化されたフィルムは、層a)と、第3のポリマーの空孔が、第4の硬化性組成物を硬化させることによって得られた第4のポリマーで充填された層c)との積層体であった。
【0121】
60μmメイヤーバーを使用して、第2の多孔質支持体(FO2223-10C)に第2の硬化性組成物を適用し、含浸された第2の多孔質支持体を得た。次いで、含浸された第2の多孔質支持体を層a)と層c)との積層体のその第2の側(層a)の反対側)に適用した。5秒後、4μmメイヤーバーを使用して、過剰の第2の硬化性組成物を除去した。第2の硬化性組成物を硬化させるために、5m/分の速度で50%の強度で動作するDバルブを装着した、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10を使用して、得られた生成物の両側に照射した。最後に、透明PETホイルを除去して、第1の層a)、第2の層b)、および第1の層a)と第2の層b)との間に挟まれた第3の層c)を含む、本発明の第1の態様によるバイポーラの複合膜を得た。
膜の特徴付け:
体積分率とは、第3の層c)における第3のポリマーの体積の分率(または、第4のポリマーの体積分率、後者は第1のポリマーと、実施例1において同一であり、実施例2において異なる)である。樹脂に実施例1および実施例2それぞれの試料を埋め込み、ミクロトームを使用して薄片を切り取ることによって、体積分率を決定した。赤外線プローブを備えた原子間力顕微鏡(AFM)によって、この薄片を分析した。線スペクトルを80μmにわたって得、3μm毎にIRスペクトルを記録し、それに続いてIRスペクトルにおける特性振動数(characterizing frequency)を使用して主成分分析した。得られた画像は、第3のポリマーおよび第4のポリマーを個々別々のポリマーとして示し、第3のポリマーは緑色で識別され、第4のポリマーは青色で識別された。第3および第4のポリマーは、第3の層c)中の共連続ネットワークであると見られた。
【0122】
2つのポリマーのそれぞれの体積分率(すなわち、第3の層c)中の第3のポリマーの、および第4のポリマーの相対体積)は、その色によって推定されたのであり、下記の表3においてその分率を示す。
【0123】
実施例1および実施例2からの膜の電気化学特性、ならびにそれらのバイポーラ特徴を、市販のバイポーラ膜(BPM)と、それらのいわゆる電流-電圧特性(I-U曲線)(ある特定の電流密度における電圧が導出される)を決定することによって比較した。この評価により、本発明のバイポーラ複合膜の電圧は、800A/cm2の電流密度において市販のBPMの電圧より低いことが明らかとなった。結果を下記の表3に示す。
【0124】
【0125】
アニオン性モノマーと架橋剤およびその前駆体との合成
Cl-SS
【0126】
【0127】
5℃に積極的に冷却した二重壁反応器において、DMF(300mL)中の4-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム塩(95.08g、0.500mol、1moleq)と4OH-TEMPO(50mg、500ppm)との溶液に塩化チオニル(109mL、178.46g、1.5mol、3moleq)を滴下した。添加が完了した後、溶液をゆっくりと室温に加熱し、さらに16時間撹拌した。次いで、分液漏斗で、1リットルの低温の1M KClに反応混合物を注いだ。最下層を除去し、500mLのジエチルエーテルに溶解した。この溶液を1M KCl溶液(300mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空中で濃縮して黄色の油を得た。次のステップにおいて、さらなる精製はせずに粗生成物(CL-SS)を使用した。典型的な収量は89.5g(88%)である。HPLC-MS純度>98%;1H-NMR:<2wt%DMF、0%ジエチルエーテル。
Cl-DVBS
【0128】
【0129】
5℃に積極的に冷却した二重壁反応器において、DMF(300mL)中のジビニルベンゼンスルホナートナトリウム塩(80g、0.345mol、1moleq)と4OH-TEMPO(50mg、500ppm)との溶液に塩化チオニル(75mL、123.1g、1.034mol、3moleq)を滴下した。添加が完了した後、溶液をゆっくりと室温に加熱し、さらに16時間撹拌した。次いで、分液漏斗で、1リットルの低温の1M KClに反応混合物を注いだ。最下層を除去し、500mLのジエチルエーテルに溶解した。この溶液を1M KCl溶液(300mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空中で濃縮して黄色の油を得た。次のステップにおいて、さらなる精製はせずに粗生成物(Cl-DVBS)を使用した。典型的な収量は62g(79%)である。HPLC-MS純度>98%;1H-NMR:<2wt%DMF、0%ジエチルエーテル。
NH2-SS
【0130】
【0131】
5℃に積極的に冷却した二重壁反応器において、DMF(300mL)中の4-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム塩(95.08g、0.500mol、1moleq)と4OH-TEMPO(50mg、500ppm)との溶液に塩化チオニル(109mL、178.46g、1.5mol、3moleq)を滴下した。添加が完了した後、溶液をゆっくりと室温に加熱し、さらに16時間撹拌した。次いで、分液漏斗で、1リットルの低温の1M KClに反応混合物を注いだ。最下層を除去し、5℃に積極的に冷却した二重壁反応器において、水中の水酸化アンモニウム25%(250mL、3.67mol、15moleq)と4OH-TEMPO(50mg、500ppm)との溶液に滴下した。添加が完了した後、溶液を1時間撹拌した。次いで、溶液を室温に加熱し、1時間撹拌した。次いで、反応混合物を5℃に冷却し直し、生成物をろ別し、50mLの冷水で洗浄した。生成物(NH2-SS)を30℃で一晩真空中にて乾燥させ、さらなる精製をせずに使用した。典型的な収量は66.8g(73%)である。HPLC-MS純度>95%。
XL-Dの合成
【0132】
【0133】
合成の前に、メタンスルホンアミドを真空オーブンにおいて一晩乾燥させた(30℃、vac)。THF(100mL)中の、乾燥させたメタンスルホンアミド(8.32g、0.087mol、1moleq)と4OH-TEMPO(30mg、500ppm)との溶液に、LiH(1.53g、0.192mol、2.2moleq)を固体として一度に加えた。反応混合物を30分間室温で撹拌した。次いで、THF(50mL)中のCl-DVBS(20g、0.087mol、1moleq)の溶液を反応混合物に加えた。添加後、反応混合物を60℃(水浴温度)に加熱した。2日後、反応混合物をセライトでろ過してLiHの過剰分を除去した。真空中でろ液を濃縮し、淡黄色の泡を得た。得られた泡を500mLの酢酸エチルに溶解した。セライトを加え、得られたスラリーを5分間撹拌した。次いで、セライトをろ別し、100mLの酢酸エチルで洗浄した。次いで、このセライト工程を繰り返した。次いで、真空中で溶媒を蒸発させ、得られた白色の泡を500mLのジエチルエーテルで一晩洗浄した。得られた白色の粉末をろ別し、30℃の真空オーブンにおいて16時間乾燥させ、吸湿性の白色の固体を得た。典型的な達成された収量は15.5g(60%)である。HPLC-MS純度>95%;1H-NMR:<3wt%残存溶媒;2wt%ジビニルベンゼンスルホナート;ICP-OES:24~30g Li/kg生成物。
【0134】
【0135】
合成の前に、スチレンスルホンアミド(NH2-SS)を真空オーブンにおいて一晩乾燥させた(30℃、vac)。THF(100mL)中の、乾燥させたスチレンスルホンアミド(16.90g、0.092mol、2.05moleq)と4OH-TEMPO(30mg、500ppm)との溶液に、LiH(1.50g、0.189mol、4.2moleq)を固体として一度に加えた。反応混合物を30分間室温で撹拌した。次いで、THF(50mL)中の1,3ベンゼンジスルホニルクロリド(12.38g、0.045mol、1moleq)の溶液を反応混合物に加えた。添加後、反応混合物を60℃(水浴温度)に加熱した。2日後、反応混合物をセライトでろ過してLiHの過剰分を除去した。真空中でろ液を濃縮し、淡黄色の泡を得た。得られた泡を500mLの酢酸エチルに溶解した。セライトを加え、得られたスラリーを5分間撹拌した。次いで、セライトをろ別し、100mLの酢酸エチルで洗浄した。次いで、このセライト手技を繰り返した。次いで、真空中で溶媒を蒸発させ、得られた白色の泡を500mLのジエチルエーテルで一晩洗浄した。得られた白色の粉末をろ別し、30℃の真空オーブンにおいて16時間乾燥させ、吸湿性の白色の固体を得た。典型的な達成された収量は14.5g(54%)である。HPLC-MS純度>96%;1H-NMR:<2wt%残存溶媒;<2wt%スチレンスルホンアミド;ICP-OES:35~40gのLi/kg生成物。
【0136】
【0137】
合成の前に、メタンスルホンアミドを、真空オーブンにおいて30℃で一晩乾燥させた。THF(100mL)中の、乾燥させたメタンスルホンアミド(0.100mol、1moleq)と4OH-TEMPO(30mg、500ppm)との溶液に、LiH(0.300mol、3moleq)を固体として一度に加えた。反応混合物を30分間室温で撹拌した。次いで、THF(50mL)中のビニルベンジルスルホニルクロリド(Cl-SS)(0.100mol、1moleq)の溶液を加え、反応混合物を16時間60℃(水浴温度)に加熱した。得られた溶液をセライトでろ過し、得られた泡を500mLの酢酸エチルに溶解した。セライトを加え、得られたスラリーを5分間撹拌した。次いで、セライトをろ別し、100mLの酢酸エチルで洗浄した。次いで、真空中で溶媒を蒸発させ、得られた白色の泡を500mLのジエチルエーテルで一晩破砕した。ろ過によって得られた生成物を回収し、白色の吸湿性粉末として単離した(収率は80%であった、純度>94%)。
【国際調査報告】