(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】光学素子を製造する方法、光学素子、光学素子を製造する装置、二次ガス、及び投影露光システム
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20231011BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20231011BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
C23C14/34 D
G02B5/08 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519711
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2021076033
(87)【国際公開番号】W WO2022069310
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】102020212353.5
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【氏名又は名称】河合 隆慶
(72)【発明者】
【氏名】アナスタシア ゴンチャー
(72)【発明者】
【氏名】ヨルン ウェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ビタリー シュクロベール
【テーマコード(参考)】
2H042
2H197
4K029
【Fターム(参考)】
2H042DA08
2H042DA12
2H042DC02
2H042DE00
2H197AA10
2H197BA02
2H197BA21
2H197CA10
2H197CB16
2H197CC16
2H197GA12
2H197GA13
2H197HA03
4K029BA43
4K029BA44
4K029BA48
4K029BC07
4K029BD09
4K029CA06
4K029DC16
4K029DC32
4K029DC39
4K029EA01
(57)【要約】
本発明は、特に投影露光システム(400)用の光学素子(2)を製造する方法であって、保護材料からなる保護層(11)が保護層厚に達するまで本体(7)の表面に塗布され、本体(7)は反射層(18)が塗布された基板(17)を含む方法に関する。本発明によれば、保護層(11)は少なくとも事実上欠陥がない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に投影露光装置(400)用の光学素子(2)を製造する方法であって、キャッピング材料から形成されたキャッピング層(11)がキャッピング層厚に達するまで本体(7)の表面に塗布され、前記本体(7)は反射層(18)が塗布された基板(17)を含む方法において、前記キャッピング層(11)は少なくとも事実上欠陥がないことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記キャッピング層(11)にシャープな境界が形成されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記キャッピング層(11)はスパッタリングにより形成され、少なくとも1つのターゲット(3)のターゲット材料の粒子(5)が作動ガス(6)のイオンによるボンバードにより個別化され続け、前記作動ガス(6)の少なくとも間接的なイオン化のために放電電圧が印加され、且つ欠陥防止方式に関連して前記キャッピング層(11)が形成されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層(11)は、化学量論的組成を有するキャッピング材料から形成されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の方法において、前記ターゲット材料の粒子は、キャッピング材料を形成し、前記本体(7)に向かって移動し、該本体(7)に堆積して前記キャッピング層(11)を形成することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の方法において、反応ガスが前記ターゲット材料の粒子(5)と反応して前記キャッピング材料の粒子を形成し、該キャッピング材料の粒子は前記本体(7)に向かって移動し、該本体(7)に堆積して前記キャッピング層(11)を形成することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記反応ガスは酸素であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか1項に記載の方法において、前記欠陥防止方式は、個別化後に損傷を引き起こす前記ターゲット材料の粒子(5)のポテンシャル、且つ/又は前記キャッピング材料の粒子のポテンシャル、且つ/又は前記作動ガス(6)のイオン及び/又は原子及び/又は電子のポテンシャル、且つ/又は前記本体(7)及び/又は形成されるキャッピング層(11)に当たる前の前記反応ガスの粒子のポテンシャルが、少なくとも1つの損傷パラメータに関して低減されるように構成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記少なくとも1つの損傷パラメータは、好ましくは閾値を超える低減運動エネルギーであることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項3~9のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層(11)はスパッタリングにより形成され、欠陥防止方式で荷電粒子が磁気トラップ(14)に捕捉されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項3~10のいずれか1項に記載の方法において、前記欠陥防止方式は対向ターゲット式スパッタリング動作として構成されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項3~11のいずれか1項に記載の方法において、前記作動ガスのイオンは、前記欠陥防止方式で遠隔プラズマ源により形成されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項3~12のいずれか1項に記載の方法において、前記作動ガスのイオンは、前記欠陥防止方式でパルスプラズマを形成することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項3~13のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層はスパッタリングにより形成され、前記少なくとも1つのターゲット(3)は、前記欠陥防止方式でアクティブアノード及び/又はパッシブアノードを有するデュアルカソードマグネトロンの形態をとることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項3~14のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層(11)はスパッタリングにより形成され、前記作動ガス(6)は、欠陥防止方式で二次ガス(13)でのペニングイオン化によりイオン化されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記放電電圧は、前記欠陥防止方式で二次ガス(13)が用いられる場合に下げられることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法において、前記二次ガス(13)の電気活性化エネルギーが前記作動ガス(6)のイオン化エネルギーよりも大きいことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項3~17のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層(11)はスパッタリングにより形成され、前記欠陥防止方式で、個別化後の前記キャッピング材料の粒子と前記作動ガス(6)からのイオン及び/又は原子及び/又は電子とが、前記作動ガス(6)による熱化によりエネルギー的に均等化されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記欠陥防止方式で熱化が起こるように前記作動ガス(6)の圧力が調整されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項3~19のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層(11)はスパッタリングにより形成され、前記欠陥防止方式で前記少なくとも1つのターゲット(3)が加熱且つ/又は溶融されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項3~20のいずれか1項に記載の方法において、前記放電電圧は、前記少なくとも1つのターゲット(3)が加熱且つ/又は溶融されている場合に下げられることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項3~21のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層(11)はスパッタリングにより形成され、前記欠陥防止方式で電位を有するメッシュ(16)の電場により前記作動ガス(6)のイオンが減速されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載の方法において、酸化ジルコニウムZrO
x及び/又は酸化チタンTiO
x及び/又は酸化ニオブNbO
x及び/又は酸化イットリウムYO
x及び/又は酸化ハフニウムHfO
x及び/又は酸化セリウムCeO
x及び/又は酸化ランタンLaO
x及び/又は酸化タンタルTaO
x及び/又は酸化アルミニウムAlO
x及び/又は酸化エルビウムErO
x及び/又は酸化タングステンWO
x及び/又は酸化クロムCrO
x及び/又は酸化スカンジウムScO
x及び/又は酸化バナジウムVO
xが、純粋な形態で且つ/又は混合物として、キャッピング材料として提供されることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層厚は0.1nm~20nm、好ましくは0.3nm~10nm、より好ましくは0.5nm~3nmであることを特徴とする方法。
【請求項25】
反射層(18)が塗布された基板(17)を有する本体(7)と、該本体(7)の表面に塗布されキャッピング層厚を有する、キャッピング材料から形成されたキャッピング層(11)とを備えた光学素子(2)、特に投影露光装置(400)のミラーであって、前記キャッピング層(11)は少なくとも事実上欠陥がないことを特徴とする光学素子。
【請求項26】
請求項25に記載の光学素子(2)において、前記キャッピング層(11)はシャープな境界を有することを特徴とする光学素子。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の光学素子(2)において、前記キャッピング材料は化学量論的組成を有することを特徴とする光学素子。
【請求項28】
請求項25~27のいずれか1項に記載の光学素子(2)において、前記キャッピング層(11)は対向ターゲット式スパッタリングにより形成されることを特徴とする光学素子。
【請求項29】
請求項25~28のいずれか1項に記載の光学素子(2)において、前記キャッピング層(11)はペニングイオン化と組み合わせたスパッタリングにより形成されることを特徴とする光学素子。
【請求項30】
請求項25~29のいずれか1項に記載の光学素子(2)において、前記キャッピング層(11)は熱化と組み合わせたスパッタリングにより形成されることを特徴とする光学素子。
【請求項31】
請求項25~30のいずれか1項に記載の光学素子(2)において、酸化ジルコニウムZrO
x及び/又は酸化チタンTiO
x及び/又は酸化ニオブNbO
x及び/又は酸化イットリウムYO
x及び/又は酸化ハフニウムHfO
x及び/又は酸化セリウムCeO
x及び/又は酸化ランタンLaO
x及び/又は酸化タンタルTaO
x及び/又は酸化アルミニウムAlO
x及び/又は酸化エルビウムErO
x及び/又は酸化タングステンWO
x及び/又は酸化クロムCrO
x及び/又は酸化スカンジウムScO
x及び/又は酸化バナジウムVO
xが、純粋な形態で且つ/又は混合物として、キャッピング材料として提供されることを特徴とする光学素子。
【請求項32】
請求項25~31のいずれか1項に記載の光学素子(2)において、前記キャッピング層厚は0.1nm~20nm、好ましくは0.3nm~10nm、より好ましくは0.5nm~3nmであることを特徴とする光学素子。
【請求項33】
ターゲット材料からなるターゲット(3)と、反射層(18)が塗布された基板(17)を有する本体(7)のコーティングのためにイオン化された作動ガス(6)により前記ターゲット材料の粒子(5)を個別化するよう設定されたコーティングデバイス(4)と、前記本体(7)を収容する加工室(8)と、該加工室(8)内に真空を形成する真空デバイス(9)とを含む、特に投影露光装置(400)用の光学素子(2)を製造する装置(1)であって、個別化後の前記粒子(5)のエネルギー、及び/又は前記本体(7)に当たる前記作動ガス(6)のイオン及び/又は電子及び/又は原子のエネルギーを制限するために少なくとも1つの制限デバイス(10)が設けられることを特徴とする装置。
【請求項34】
請求項33に記載の装置(1)において、前記エネルギーは運動エネルギーであることを特徴とする装置。
【請求項35】
請求項33又は34に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は、前記真空中の前記作動ガス(6)の密度を変えるように構成されることを特徴とする装置。
【請求項36】
請求項33~35のいずれか1項に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は、二次ガス(13)が前記作動ガス(6)に供給されるようにペニングイオン化デバイス(12)として構成されることを特徴とする装置。
【請求項37】
請求項36に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は、前記二次ガス(13)の電子活性化エネルギーが前記作動ガス(6)のイオン化エネルギーよりも大きいように構成されることを特徴とする装置。
【請求項38】
請求項33~37のいずれか1項に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は磁気トラップ(14)の形態をとることを特徴とする装置。
【請求項39】
請求項33~38のいずれか1項に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は2つの相互に対向するターゲット(3)の形態をとることを特徴とする装置。
【請求項40】
請求項33~39のいずれか1項に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は、前記ターゲット(3)を加熱し且つ/又は溶融させる加熱デバイス(15)の形態をとることを特徴とする装置。
【請求項41】
請求項33~40のいずれか1項に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は電位を有するメッシュ(16)の形態をとることを特徴とする装置。
【請求項42】
請求項33~41のいずれか1項に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)はアフターグローデバイスの形態をとることを特徴とする装置。
【請求項43】
請求項42に記載の装置(1)において、前記アフターグローデバイスは遠隔プラズマ源の形態をとることを特徴とする装置。
【請求項44】
請求項42又は43に記載の装置(1)において、前記アフターグローデバイスはパルスプラズマ源の形態をとることを特徴とする装置。
【請求項45】
請求項3~24のいずれか1項に記載の方法及び/又は請求項33~44のいずれか1項に記載の装置(1)で用いる二次ガス(13)であって、該二次ガス(13)の電子活性化エネルギーが作動ガス(6)のイオン化エネルギーよりも大きいことを特徴とする二次ガス。
【請求項46】
放射線源(402)と少なくとも1つの光学素子(2、402a、415、416、418、419、420)を有する光学ユニット(403、408)とを含む露光系(401)を備えた、半導体リソグラフィ用の投影露光装置(400)であって、前記光学素子(2、402a、415、416、418、419、420)の少なくとも1つは、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法により少なくとも部分的に製造されており、且つ/又は前記光学素子(2、402a、415、416、418、419、420)の少なくとも1つは、請求項33~44のいずれか1項に記載の装置(1)を用いて製造されており、且つ/又は前記光学素子(2、402a、415、416、418、419、420)の少なくとも1つは、請求項25~32のいずれか1項に記載の光学素子である投影露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、独国特許出願第10 2020 212 353.5号の優先権を主張し、その内容を参照により本明細書に完全に援用する。
【0002】
本発明は、特に投影露光装置用の光学素子を製造する方法であって、キャッピング材料から形成されたキャッピング層がキャッピング層厚に達するまで本体の表面に塗布され、本体は反射層が塗布された基板を含む方法に関する。
【0003】
本発明はさらに、反射層が塗布された基板を有する本体と、本体の表面に塗布されキャッピング層厚を有する、キャッピング材料から形成されたキャッピング層とを備えた光学素子、特に投影露光装置のミラーに関する。
【0004】
本発明は、ターゲット材料からなるターゲットと、反射層が塗布された基板を有する本体のコーティングのためにイオン化された作動ガスによりターゲット材料の粒子を個別化するよう設定されたコーティングデバイスと、本体を収容する加工室と、加工室内に真空を形成する真空デバイスとを備えた、特に投影露光装置用の光学素子を製造する装置にも関する。
【0005】
本発明はさらに、二次ガスの使用に関する。
【0006】
本発明は、放射線源と少なくとも1つの光学素子を有する光学ユニットとを備えた、半導体リソグラフィ用の投影露光装置にも関する。
【背景技術】
【0007】
既知のように、光学素子はそれらと相互作用する光線の特性に影響を及ぼす。その結果生じる波面の望ましくない構造を回避するために、光学素子の正確な表面加工が必要である。光学素子として、例えば、平面ミラー、中空ミラー、曲面ミラー、ファセットミラー、凸面ミラー、凹面ミラー、凹凸レンズ、平凸レンズ、及び平凹レンズが挙げられる。光学素子、特にミラーの既知の材料として、ガラス及びケイ素が挙げられる。
【0008】
投影露光装置は、複数の光学素子を有する。特に光学素子がマイクロリソグラフィEUV(極紫外線)投影露光装置で用いられる場合、光学素子の特性が非常に重要である。
【0009】
ここで、光学素子は、その特性を変えてその機能を損なわせる多くの有害な影響を受けるが、その理由は第1に、光学素子、例えばEUVミラーにより変調された光の波長が非常に小さく、したがって光学素子の特性が僅かに損なわれただけでも得られる波面が乱されるからである。第2に、投影面に結像された構造が非常に小さく、したがって光学素子の特性の僅かな変化にも影響されやすい。光学素子に影響を及ぼし得る有害な影響として、例えばEUV光が挙げられ、これは高エネルギーを有し、そのエネルギーは光学素子に吸収されると光学素子に損傷を与える可能性がある。
【0010】
実際には、EUV放射線をあらゆる方向に発するプラズマを形成するようにスズの液滴をイオン化することにより、EUV光を生成できることが知られている。
【0011】
EUV放射線は、例えばコレクタミラーにより集光されるが、これはプラズマが発したEUV光だけでなくさらにスズイオン及びスズ液滴の悪影響にも曝される。さらに、生じたプラズマは、例えば、水素イオン及びラジカル、酸素種及び酸素ラジカル、水又は気相の水、窒素種及び窒素ラジカル、希ガス及び希ガスイオン、並びに上記ガスの反応生成物の存在により、コレクタミラーに悪影響を及ぼす。
【0012】
さらに、EUV投影露光装置の光学素子は、不純物、例えば炭化水素に曝される。スズプラズマの領域では、温度も非常に高いことで、熱膨張、特に光学素子の、特にコレクタミラーの素子毎に異なる熱膨張の結果として反り、歪み、及び特に結果的な損傷に至り得る。
【0013】
光学素子の洗浄に、例えば不純物及び/又は炭化水素不純物の除去に用いられる洗浄媒体も同様に、光学素子に悪影響を及ぼすことが多い。
【0014】
上記悪影響は、コーティングにおけるブリスタの形成により、且つ/又はコーティングの層の剥離により、且つ/又は望ましくないスズ層の塗布及び層を形成する層材料とスズとの望ましくない混合により、光学素子に現れ得る。
【0015】
上記悪影響により光学素子の光学的に関連する層が劣化するのを防止するために、光学素子にキャッピング層を設けるのが一般的である。
【0016】
特許文献1は、EUVリソグラフィ用の多層ミラーのパッシベーションを記載している。
【0017】
光学素子は、基板の上に反射層系が塗布され、さらにその上に1つ又は複数のバリア層が塗布されているのも一般的である。したがって、キャッピング層は、その下の少なくとも1つのバリア層及びその下の反射層系を外的影響から保護する機能を有する。
【0018】
しかしながら、キャッピング層自体も同じ悪影響を受けるので、キャッピング層自体でも損傷が見つかる場合がある。
【0019】
従来技術は、キャッピング層をスパッタリングにより形成することを開示している。
【0020】
従来技術の欠点は、従来技術に従って作製されたキャッピング層が上記悪影響下で短い耐用寿命しか有しないことである。特に、従来技術に従って作製されたキャッピング層は、短期間の後でもブリスタ形成、層剥離、スズ被覆、及びスズとの混合等の損傷を示し得る。
【0021】
従来技術から既知のキャッピング層を作製する方法のさらなる欠点は、キャッピング層の堆積プロセス中のキャッピング層の下の層の酸化及び/又は混合である。酸化及び/又は混入は、ここでは光学素子、特にミラーの反射率の低下につながり得る。
【0022】
さらに別の欠点は、例えば、キャッピング層が反応性スパッタリングにより形成される場合のターゲットの有害な変質(「ターゲットポイズニング」)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第8,501,373号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、従来技術の欠点を回避し且つ長寿命で有用なキャッピング層を提供する、光学素子を製造する方法を提供することである。
【0025】
本発明によれば、この目的は請求項1に記載の特徴を有する方法により達成される。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、従来技術の欠点を回避し特に光学特性に関して長寿命で有用な光学素子、特に投影露光装置のミラーを提供することである。
【0027】
本発明によれば、この目的は請求項23に記載の特徴を有する光学素子により達成される。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、従来技術の欠点を回避し特に長寿命で有用なキャッピング層の形成を可能にする、光学素子を製造する装置を提供することである。
【0029】
本発明によれば、この目的は請求項30に記載の特徴を有する装置により達成される。
【0030】
本発明のさらに別の目的は、従来技術の欠点を回避し特に長寿命で有用なキャッピング層の形成を可能にする二次ガスを提供することである。
【0031】
本発明によれば、この目的は請求項42に記載の特徴を有する二次ガスにより達成される。
【0032】
本発明のさらに別の目的は、従来技術の欠点を回避し特に長寿命で確実な動作を可能にする半導体リソグラフィ用の投影露光装置を提供することである。
【0033】
本発明によれば、この目的は、請求項43に記載の特徴を有する投影露光装置により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0034】
特に投影露光装置用の光学素子を製造する本発明の方法において、キャッピング材料から形成されたキャッピング層がキャッピング層厚に達するまで本体の表面に塗布され、本体は反射層が塗布された基板を含む。本発明によれば、キャッピング層は少なくとも事実上欠陥がない。
【0035】
本発明者らの認識によれば、少なくとも事実上欠陥がない光学素子のキャッピング層が有利な点として長寿命及び高性能を有する。
【0036】
欠陥は、例えば構造欠陥、例えばピンホール、細孔、粒界、及び/又は転位、並びに粒子及び/又は汚染の堆積を意味すると理解され得る。
【0037】
「事実上欠陥がない」は、例えば、面積100μm2内の欠陥数が11個未満であることを意味し得る。
【0038】
本発明における本体は、反射層が塗布された基板と、任意選択で反射層に、任意にその面積の一部のみに塗布された1つ又は複数のバリア層とから形成されると考えるべきである。つまり、本発明によれば、本体の表面が反射層により形成されている場合はキャッピング層は反射層に塗布され、反射層はキャッピング層の塗布後にキャッピング層の下にあり、又は本体の表面が1つ又は複数のバリア層により形成されている場合はキャッピング層は1つ又は複数のバリア層に塗布され、バリア層はキャッピング層の塗布後にキャッピング層の下にある。
【0039】
反射層が塗布された基板からの本体の形成は、本発明においてはまず、反射層が塗布された基板を本体が有すると広義に解釈すべきである。上述のように、本体は特にバリア層も有し得る。
【0040】
狭義では、本発明における本体は、反射層が塗布された基板と、任意選択で反射層に、任意にその面積の一部のみに塗布された1つ又は複数のバリア層とからのみ形成されると考えるべきである。
【0041】
反射層は複数の層を含み得る。
【0042】
複数の層は、光学素子の使用波長の屈折率の実部が大きい材料と光学素子の使用波長の屈折率の実部が小さい材料とを交互に含み得る。
【0043】
基板は、低熱膨張率を有する材料、例えばZerodur(登録商標)、ULE(登録商標)、又はClearceram(登録商標)を含む場合もある。光学素子は、垂直入射で、すなわち面法線に対して通常は約45°未満の入射角αで光学素子に入射するEUV放射線を反射するよう設計され得る。EUV放射線の反射のために、反射多層系が基板に塗布されていてもよい。多層系は、使用波長の屈折率の実部が大きい材料(「スペーサ」とも称する)と使用波長の屈折率の実部が小さい材料(「アブソーバ」とも称する)との交互塗布層を含み、アブソーバ・スペーサ対が積層体を形成するものであり得る。多層系のこの構成の結果として、ブラッグ反射が起こるアブソーバ層に対応する格子面を有する結晶がある意味で模倣される。十分な反射率を確保するために、多層系3は概して50個を超える交互層を含み得る。
【0044】
個々の層の厚さ及び反復する積層体の厚さは、多層系全体で一定であり得るか、又は達成すべき分光又は角度依存反射プロファイルに応じて変わり得る。各使用波長の可能な最大反射率を高めるために、アブソーバ及びスペーサからなる基本構造にさらなる多少の吸収材料を補うことにより、反射プロファイルに及ぼす影響を制御することもできる。この目的で、積層体によっては、アブソーバ及び/又はスペーサ材料を交換してもよく、又は積層体を2つ以上のアブソーバ及び/又はスペーサ材料から構成してもよい。アブソーバ及びスペーサ材料は、反射率を最適化するために全積層体で厚さが一定であっても変わってもよい。さらに、スペーサ層とアブソーバ層との間に例えば拡散バリアとして追加の層を設けることも可能である。
【0045】
光学素子が13.5nmの使用波長に最適化された可能な一実施例において、すなわち実質的に垂直入射のEUV放射線下にて13.5nmの波長で最大反射率を示す光学素子では、多層系の積層体は交互のケイ素層及びモリブデン層を含み得る。この系において、ケイ素層は、13.5nmの屈折率の実部が大きい層に相当し、モリブデン層は、13.5nmの屈折率の実部が小さい層に相当する。使用波長の正確な値に応じて、他の材料の組み合わせ、例えばモリブデン及びベリリウム、ルテニウム及びベリリウム、又はランタン及びB4Cも同様に可能である。
【0046】
反射層は、特に、例えばモリブデン-ケイ素(MoSi)からなる多層系により形成された反射層系を含み得る。
【0047】
任意選択で反射層系の上にある1つ又は複数のバリア層は、特に垂直入射(NI)のミラーの場合に有利であり得る。
【0048】
反射層は、斜入射(GI)のミラーのためのコーティング、好ましくは比較的厚いコーティングでもあり得る。
【0049】
基板とキャッピング層との間の複雑な層系、例えば反射層系と、任意選択で1つ又は複数のバリア層とがある場合、これらは、EUV光の生成時のプラズマから例えば出る弊害を特に受けやすい。
【0050】
したがって、このような層系は、本発明の方法により欠陥なく形成されるキャッピング層の利益を特に享受する。
【0051】
さらに、反射層及び場合によっては1つ又は複数のバリア層を予めコーティングした上記本体の作製は、特に複雑でもあり、したがって費用もかかるので、キャッピング層の耐用寿命が長いことが特に重要である。
【0052】
さらに、キャッピング層を上記本体に特に確実な方法で塗布すべきだが、その理由は、この場合にキャッピング層の塗布が不正確だと本体をさらに加工することができなくなり得るからである。
【0053】
本発明の方法の有利な発展形態において、キャッピング層にシャープな境界が形成される場合もある。
【0054】
本発明者らが確認したところ、本体との界面がシャープな光学素子のキャッピング層が、特に長寿命且つ高性能を有する。特に、キャッピング層を形成するキャッピング材料と本体の表面を形成する表面材料とに、10nm未満、好ましくは1nm未満、好ましくは0.1nm未満の相互浸透がある場合もある。
【0055】
本発明の方法の有利な発展形態において、少なくとも1つのターゲットのターゲット材料の粒子が作動ガスのイオンによるボンバードにより個別化され続け、作動ガスの少なくとも間接的なイオン化のために放電電圧が印加され、且つ欠陥防止方式に関連してキャッピング層が形成される場合もある。
【0056】
スパッタリング法を欠陥防止方式で拡張することにより、従来技術から既知のキャッピング層をスパッタリング法により形成することができ、その結果として、例えば従来技術から既知のスパッタリングシステムを用いてキャッピング層を特に効果的に作製することができる。欠陥の回避のために、キャッピング層の単位面積当たりの欠陥密度を有利に減らして事実上欠陥がないキャッピング層を形成できるように、スパッタリング法が欠陥防止方式で拡張される。
【0057】
本発明の方法の有利な発展形態において、キャッピング層は化学量論的組成を有するキャッピング材料から形成される場合もある。
【0058】
キャッピング材料が化学的に純粋な形態であれば有利であり得る。よって、キャッピング層が化学的に純粋なキャッピング材料から形成されることで、例えば化学的外来粒子の混入により生じ得る格子欠陥の回避により欠陥が最小限に抑えられる。化学量論的組成は、キャッピング材料の形成が意図される化合物の化学量論比でキャッピング材料を形成する元素によるものである。よって、キャッピング材料の化学量論的組成は、キャッピング材料の化学純度を指し得る。
【0059】
特に、キャッピング材料として酸化物を用いるのが有利であり得る。
【0060】
本発明の方法の有利な発展形態において、酸化ジルコニウムZrOx及び/又は酸化チタンTiOx及び/又は酸化ニオブNbOx及び/又は酸化イットリウムYOx及び/又は酸化ハフニウムHfOx及び/又は酸化セリウムCeOx及び/又は酸化ランタンLaOx及び/又は酸化タンタルTaOx及び/又は酸化アルミニウムAlOx及び/又は酸化エルビウムErOx及び/又は酸化タングステンWOx及び/又は酸化クロムCrOx及び/又は酸化スカンジウムScOx及び/又は酸化バナジウムVOxが、純粋な形態で且つ/又は混合物として、キャッピング材料として設けられ得る。
【0061】
特に、上記酸化物の少なくとも2つ以上の多成分混合物がキャッピング材料を形成する場合もある。
【0062】
特に、キャッピング材料は、上記酸化物の1つ又はそれらの混合物と、任意の不可避的不純物とからなる場合もある。キャッピング層は、キャッピング材料のみからなり得ることが好ましい。
【0063】
上記酸化物の化学量論係数としての添え字xは、酸化物を形成する元素と酸素との間の化学量論的組成を表す。添え字xは、整数又は各酸化物の化学的性質から得られる有理数であり得る。
【0064】
さらに、本発明の方法の有利な発展形態において、キャッピング層厚は0.1nm~20nm、好ましくは0.3nm~10nm、より好ましくは0.5nm~3nmである場合もある。
【0065】
本発明におけるこのような層厚は、寿命、性能、及び光学特性に関して特に有利な特性を有する。
【0066】
さらに、キャッピング層は非晶質及び/又は結晶キャッピング材料から形成される場合もある。特に、キャッピング材料は非晶質構造及び結晶構造の両方を有し、好ましくは非晶質構造のゾーン及び結晶構造のゾーンが表面の面法線に沿って配置されている場合もある。
【0067】
特に、光学素子は斜入射(GI)ミラーであり、且つ/又は光学素子は垂直入射(NI)ミラーである場合もある。
【0068】
有利な発展形態において、ターゲット材料の粒子は、キャッピング材料を形成し、本体に向かって移動し、本体上に堆積してキャッピング層を形成する場合もある。
【0069】
キャッピング材料がターゲット材料の粒子により形成される場合、キャッピング材料は、ターゲット材料と同一なので特に単純に設けることができる。よって、ターゲット材料のさらなる処理が不要であり、したがってキャッピング層の塗布が特に効率的である。
【0070】
このような方法をスパッタリング又はカソードアトマイゼーションと称する。
【0071】
光学素子に関連しない穏やかなスパッタリングの比較が、「Comparison of low damage sputter deposition techniques to enable the application of very thin a-Si passivation films」(AIP Conference Proceedings 2147, 040009(2019))に記載されている。シリコン太陽電池セルでの使用をここでは参照されたい。
【0072】
本発明の方法のさらに有利な発展形態において、反応ガスがターゲット材料の粒子と反応してキャッピング材料の粒子を形成し、キャッピング材料の粒子が本体に向かって移動し、本体に堆積してキャッピング層を形成する場合もある。
【0073】
ターゲット材料の粒子と反応ガスとの反応によるキャッピング材料の生成には、ターゲット材料の粒子の個別化に伴うターゲット材料の表面積の増大がターゲット材料の粒子と反応ガスとの反応を特に完全な形で起こすという利点がある。結果として形成されたキャッピング材料が原材料に堆積した場合、特に有利な化学的に純粋で化学量論的なキャッピング層が形成される。
【0074】
このような方法を反応性スパッタリングと称することが多い。
【0075】
本発明の有利な発展形態において、反応ガスは酸素であり得る。
【0076】
反応ガスとしての酸素の使用により、上記酸化物をその場で特に有利な形で生成することができる。
【0077】
本発明のさらに別の有利な発展形態において、欠陥防止方式は、個別化後に損傷を引き起こすターゲット材料の粒子のポテンシャル、且つ/又はキャッピング材料の粒子のポテンシャル、且つ/又は作動ガスからのイオン及び/又は原子及び/又は電子のポンテンシャル、且つ/又は本体及び/又は形成されるキャッピング層に当たる前の反応ガスの粒子のポテンシャルが、少なくとも1つの損傷パラメータに関して低減されるように構成され得る。
【0078】
粒子による損傷ポテンシャルが少なくとも1つの損傷パラメータに関して低減されるという欠陥防止方式の構成には、キャッピング層の欠陥につながり得ると共に粒子により媒介される悪影響が具体的に低減されるという利点がある。特に、粒子の微視的レベルでは、損傷ポテンシャルを1つ又は複数の損傷パラメータに特に効率的に割り当てることができる。よって、損傷パラメータに寄与する粒子の特性に影響を及ぼすことで、特に目標通りに損傷ポテンシャルを低減することができる。損傷ポテンシャルにつながる損傷パラメータに関して損傷ポテンシャルを顕微鏡分析することで、損傷パラメータに影響を及ぼすことにより損傷ポテンシャルの具体的な低減を可能にする。
【0079】
本発明の有利な発展形態において、少なくとも1つの損傷パラメータは、好ましくは閾値を超える低減運動エネルギーであり得る。
【0080】
損傷パラメータが閾値よりも大きな運動エネルギーと識別された場合、閾値よりも大きな粒子の運動エネルギーを低減することが可能なのが有利である。特に大きなエネルギー、特に閾値を超える運動エネルギーを有する粒子、特に作動ガスのイオンは、本体又は形成されるキャッピング層に特に悪影響を及ぼし得る。例えば、ターゲットにおいて高運動エネルギーで反射して本体及び/又は形成されるキャッピング層に当たる作動ガスのイオンは、形成される層にピンホールを事実上開ける可能性がある。キャッピング層及び/又は本体へのイオンの浸透により、キャッピング層及び/又は本体の化学組成が変わる可能性もある。これが欠陥の発生につながり得る。したがって、損傷惹起閾値を超える運動エネルギーを減らし且つ/又はこのように高い運動エネルギーを有する粒子が本体及び/又は形成されるキャッピング層に当たるのを防ぐことが有利である。これら2つの措置により、本体及び/又は形成されるキャッピング層に当たる粒子の運動エネルギーの損傷パラメータを低減することができる。
【0081】
本発明の有利な発展形態において、キャッピング層は、スパッタリングにより形成することができ、ここで欠陥防止方式で荷電粒子が磁気トラップに捕捉される。
【0082】
荷電粒子、特に作動ガスのイオンを磁場の作用により磁気トラップに捕捉したままにすることが有利であり得る。ローレンツ力が高速の、したがって高運動エネルギーの粒子に特に作用するので、磁気トラップは、特に高速の粒子を例えば本体及び/又は形成されるキャッピング層から離れる方向の経路に押し進めることで、特にこれらの高速の粒子が本体及び/又は形成されるキャッピング層の方向に移動するのを防止することができるのが有利である。よって、これらの非常に高速の粒子による損傷ポテンシャルを低減することが可能である。
【0083】
本発明の方法の有利な発展形態において、欠陥防止方式は対向ターゲット式スパッタリング動作として構成される場合もある。
【0084】
ターゲット同士が向かい合うようにした2つのターゲットの配置の形態の欠陥防止方式をスパッタリング法に補うことにより、例えば、1つのターゲットで反射した高運動エネルギーの粒子が本体及び/又は形成されるキャッピング層に当たるのではなく、第1のターゲットに対向する第2のターゲットに当たるという効果を達成することができる。これにより、高速で移動する粒子がターゲット材料の粒子を個別化するので本体及び/又は形成されるキャッピング層に悪影響を及ぼさなくなる確率が上がる。
【0085】
対向するターゲットの構成と磁気トラップとの組み合わせにより、高運動エネルギーを有する荷電粒子が特に対向するターゲット間の空間に留まるという効果を達成することができる。
【0086】
粒子による損傷ポテンシャルを低減することにより、欠陥も回避される。
【0087】
光学素子との関連はないが、対向ターゲット式スパッタリングは欧州特許第1 505 170号明細書、独国特許出願公開第11 2008 000 252T5号明細書、国際公開第2018/069091号、及び欧州特許出願公開第3 438 322号明細書から既知である。
【0088】
欧州特許第1 505 170号明細書は、有機エレクトロルミネセンスデバイスに関連した対向ターゲット式スパッタリングの使用を記載している。
【0089】
独国特許出願公開第11 2008 000 252T5号明細書は、樹脂基板上の薄膜の形成に関連した対向ターゲット式スパッタリングの使用を記載している。
【0090】
国際公開第2018/069091号は、発光ダイオード(LED)の製造に関連した対向ターゲット式スパッタリングの使用を記載している。
【0091】
欧州特許出願公開第3 438 322号明細書は、液晶ディスプレイ及び太陽電池の製造に関連した対向ターゲット式スパッタリングの使用を記載している。
【0092】
本発明の有利な発展形態において、作動ガスのイオンは、欠陥防止方式で遠隔プラズマ源により形成される場合もある。
【0093】
作動ガスから作動ガスのイオンを形成するプラズマ源が本体及び/又は形成されるキャッピング層から空間的に離れている場合、プラズマがターゲット及び/又は本体及び/又は形成されるキャッピング層に近接して形成される場合よりも、作動ガスの高速イオンが本体及び/又は形成されるキャッピング層に当たる可能性が低い。特に、イオン化された作動ガスをターゲットに輸送することにより、高エネルギー粒子を除去することが可能である。
【0094】
欠陥防止方式で二次ガスが用いられる場合に放電電圧が下げられれば有利であり得る。
【0095】
これにより、荷電粒子の加速度、ひいては運動エネルギー、ひいては損傷ポテンシャルを低減することができるのが有利である。
【0096】
キャッピング層がスパッタリングにより形成され、ここで欠陥防止方式で少なくとも1つのターゲットがアクティブアノード及び/又はパッシブアノードを有するデュアルカソードマグネトロンの形態をとれば有利であり得る。
【0097】
デュアルカソードマグネトロンを用いることで、高エネルギー荷電粒子を磁場の形成により捕捉することが可能なのが有利である。この場合、マグネトロンのアノードをアクティブアノードとすると、アノードは作動ガスのイオン化及び高エネルギー粒子の捕捉の両方をもたらす。これに対して、アノードをパッシブアノードとすると、マグネトロンの磁場がアノードにより形成されるだけである。
【0098】
光学素子との関連はないが、コーティング法用のデュアルカソードマグネトロンが欧州特許第2 186 108号明細書から既知である。
【0099】
キャッピング層がスパッタリングにより形成され、ここで欠陥防止方式で二次ガスでのペニングイオン化により作動ガスがイオン化されれば有利であり得る。
【0100】
作動ガスが二次ガスでのペニングイオン化によりイオン化される場合、二次ガスは、最初に電子励起状態になり、その励起エネルギーを作動ガスに伝えて作動ガスをイオン化する。このようにして、放電電圧により作動ガスを直接イオン化することなく、作動ガスのイオンを得ることができる。これにより、作動ガスの特に高速のイオンの発生を少なくすることができるのが有利である。
【0101】
光学素子との関連はないが、スパッタリング法におけるペニングイオン化が、「Influence of Unbalanced Magnetron and Penning Ionization for RF Reactive Magnetron Sputtering」(Jpn. J. Appl. Phys. Vol 38 (1999) pp.186-191, Part 1 No. 1A, January 1999)から既知である。
【0102】
光学素子との関連はないが、スパッタリング法におけるペニングイオン化は、「Are the Argon metastables important in high power impulse magnetron sputtering discharges?」(PHYSICS OF PLASMA 22, 113508 (2015))からも既知である。
【0103】
光学素子との関連はないが、スパッタリング法におけるペニングイオン化は、「Niobium films produced by magnetron sputtering using an AR-HE mixture as discharge gas」(Proceedings of the 1995 Workshop on RF Superconductivity, Gif-sur Yvette, France (SRF95C22), pp 479-483)からも既知である。ここに記載されているのは、超伝導高周波加速共振器の製造のための使用である。
【0104】
欠陥防止方式で二次ガスが用いられる場合に放電電圧が下げられれば有利であり得る。
【0105】
有利な点として、ペニングイオン化の結果として放電電圧を下げることが可能であり、結果として、放電電圧から生じる電場による作動ガスのイオン化された粒子の加速がさほど大きくなく、したがって運動エネルギーが小さい。これにより、荷電粒子による損傷ポテンシャルが欠陥防止方式で低減される。
【0106】
本発明の有利な発展形態において、二次ガスの電子活性化エネルギーが作動ガスのイオン化エネルギーよりも大きい場合もある。
【0107】
ペニングイオン化が特に効率的に起こることができるようにするために、二次ガスの電子活性化エネルギーが作動ガスのイオン化エネルギーよりも大きく、これにより、二次ガスの電子活性化された粒子との遭遇時に作動ガスの粒子がイオン化される確率を特に高くすることが可能であれば有利であり得る。
【0108】
特に、有利な点として、二次ガスがヘリウムであり作動ガスがアルゴンである場合もある。
【0109】
キャッピング層がスパッタリングにより形成され、欠陥防止方式で、個別化後のキャッピング材料の粒子と作動ガスからのイオン及び/又は原子及び/又は電子とが、作動ガスによる熱化によりエネルギー的に均等化されれば有利であり得る。
【0110】
本体及び/又は形成されるキャッピング層に当たる前の粒子同士の衝突の確率を上げた場合、衝突時に非常に高速の粒子がその運動エネルギーの一部を他の粒子に伝達する可能性が高い。したがって、このプロセスが頻繁に繰り返された場合、粒子の運動エネルギーはエネルギー的に均等化される。十分に高い衝突確率を達成するために、粒子の平均自由行程長を減らす必要がある。これにより、非常に高速の粒子が本体及び/又は形成されるキャッピング層に減速されずに衝突するのが防止される。
【0111】
欠陥防止方式で熱化が起こるように作動ガスの圧力が調整されれば有利である。
【0112】
特に、作動ガスの密度が非常に高いことで高速粒子が本体及び/又は形成されるキャッピング層と減速されずに衝突するのが確実に防止されるように、作動ガスの圧力を高めることにより、高速粒子が他のあまり高速でない粒子と衝突する確率を上げることが可能である。
【0113】
代替として、熱化ガスの粒子との作動ガスの高速粒子の衝突により、高速粒子が本体及び/又は形成されるキャッピング層に当たるのが防止される可能性が十分に高いように、熱化ガスの圧力が調整される場合もある。この場合、熱化ガスは、例えば二次ガス及び/又は別のガス及び/又は他のガスの混合物であり得る。特に、熱化ガスは、望ましくない反応生成物を形成しないように化学的に不活性である場合もある。
【0114】
キャッピング層がスパッタリングにより形成され、ここで欠陥防止方式で少なくとも1つのターゲットが加熱且つ/又は溶融されれば有利である。
【0115】
ターゲットが加熱且つ/又は溶融される場合、ターゲットの粒子を個別化するのにより小さな運動エネルギーで十分であり得る。これにより、損傷ポテンシャルがあり得る特に高エネルギーの粒子の発生の可能性も明確に低くなる。これは、ターゲットの粒子の個別化に要するエネルギーが、ターゲットに供給された熱エネルギーにより既に一部供給されているからである。
【0116】
加熱且つ/又は溶融されたターゲットの使用により、ターゲット材料及び/又はターゲット材料から形成されたキャッピング材料の粒子が有利な高運動エネルギーを有する一方で、作動ガスのイオンが有利な低運動エネルギーを有することも可能になる。ターゲット材料の粒子の高運動エネルギーにより、原材料の表面とキャッピング層との間の境界を有利にシャープに形成することができる。したがって、キャッピング材料の粒子が特定の速度範囲内で本体の表面及び/又は形成されるキャッピング層に当たれば有利であり得る。よって、キャッピング材料の粒子が遅すぎることも速すぎることもなければ有利である。加熱且つ/又は溶融されたターゲットが用いられる場合、キャッピング材料の粒子は、事実上欠陥がないキャッピング層を形成するのに十分なほど高速であり得ると同時に、キャッピング層の欠陥を回避するのに十分なほど低速であり得る。
【0117】
特に、ターゲットを溶融させ、ターゲット材料が蒸発するまでさらに加熱する場合もある。さらに、ターゲットの加熱は、ターゲット材料の昇華にも有利に寄与することができる。
【0118】
光学素子との関連はないが、コーティング法のための溶融ターゲットによるスパッタリング法が、米国特許出願第2017/0268122号明細書から既知である。
【0119】
光学素子との関連はないが、コーティング法のためのターゲットの蒸発によるスパッタリング法が、「Magnetron Deposition of Coatings with Evaporation of the Target」(Technical Physics, 2015, Vol. 60, No. 12, pp. 1790-1795)から既知である。
【0120】
キャッピング層がスパッタリングにより形成され、ここで欠陥防止方式で作動ガスのイオンが電位を有するメッシュの電場により減速されれば有利である。
【0121】
有利な点として、メッシュの電場により特に高速の荷電粒子を減速させることで、粒子の運動エネルギーを減らし、ひいては粒子による損傷ポテンシャルを低減することも可能である。
【0122】
特に、メッシュが本体及び/又は形成されるキャッピング層の方向の非常に高速の粒子の潜在的な飛行経路に位置決めされ、メッシュが荷電粒子の電荷とは逆の符号を有する電位にあれば有利である。結果として、メッシュに向かって飛行する荷電粒子が電場に逆らって仕事をし、ひいてはその運動エネルギーを低減する。メッシュを通過する粒子は、続いてメッシュから離れて加速されるが、本体から適切な距離にメッシュが位置決めされているとすれば、損傷ポテンシャルを高めるほどの運動エネルギーを蓄積することができない。これに対して、本体に向かって移動してキャッピング層を形成するターゲット材料及び/又はキャッピング材料の粒子は、帯電せずにメッシュを通過することができる。
【0123】
本発明はさらに、請求項25に記載の光学素子に関する。
【0124】
本発明の光学素子、特に投影露光装置のミラーは、反射層が塗布された基板を有する本体と、本体の表面に塗布されているキャッピング材料から形成されたキャッピング層とを有する。キャッピング層は、ここでは特定のキャッピング層厚を有する。本発明によれば、キャッピング層は、少なくとも事実上欠陥がない。
【0125】
本体の表面にキャッピング層が事実上欠陥なく形成されることで、例えば、キャッピング層及び/又は例えば反射層であるキャッピング層の下の層のフレーキングを低減且つ/又は防止することにより光学素子の寿命及び性能を向上することができるのが有利である。
【0126】
本体は、本発明においては、反射層が塗布された基板と、任意選択で反射層に塗布された1つ又は複数のバリア層とから形成されるとも考えるべきである。つまり、本発明によれば、本体の表面が反射層により形成されている場合はキャッピング層は反射層に塗布され、反射層はキャッピング層の塗布後にキャッピング層の下にあり、又は本体の表面が1つ又は複数のバリア層により形成されている場合はキャッピング層は1つ又は複数のバリア層に塗布され、バリア層はキャッピング層の塗布後にキャッピング層の下にある。
【0127】
反射層が塗布された基板からの本体の形成は、本発明においてはまず、反射層が塗布された基板を本体が有すると広義に解釈すべきである。上述のように、本体は特にバリア層も有し得る。
【0128】
狭義では、本発明における本体は、反射層が塗布された基板と、任意選択で反射層に、任意にその面積の一部のみに塗布された1つ又は複数のバリア層とからのみ形成されると考えるべきである。
【0129】
本発明の光学素子は、EUV投影露光装置で用いるのに特に適している。コレクタミラーとしての光学素子の使用もここでは有利であり得る。
【0130】
本発明の光学素子の有利な発展形態において、キャッピング層はシャープな境界を有する場合もある。
【0131】
キャッピング層と本体の表面との間、すなわちキャッピング層とその下の反射層及び/又は少なくとも1つのバリア層との間の特にシャープな界面は、キャッピング層と本体の表面を形成する反射層及び/又は本体の表面を形成する少なくとも1つのバリア層との特に有利に顕著な化学純度につながる。特に、これにより、キャッピング層の粒子がその下の反射層及び/又はその下の本体の少なくとも1つのバリア層に浸透すること、及び/又は本体の表面を形成する反射層及び/又は少なくとも1つのバリア層の粒子がキャッピング層に浸透することを防止することができる。
【0132】
特に、本体の表面を形成する反射層及び/又は少なくとも1つのバリア層の粒子とキャッピング材料の粒子とに、10nmを超えない深さの、好ましくは5nmを超えない深さの、好ましくは0.1nmを超えない深さの、好ましくは1原子層を超えない深さの、好ましくは1原子層未満の相互浸透がある場合もある。
【0133】
特に、界面がシャープであることにより、キャッピング層と本体の表面を形成する反射層及び/又は少なくとも1つのバリア層との両方の機能の損失を防止することができる。
【0134】
本発明の光学素子の有利な発展形態において、キャッピング材料は化学量論的組成を有する場合もある。
【0135】
化学量論的組成を有するキャッピング材料、したがって化学量論的組成を有するキャッピング層には、このように顕著な特に高い化学純度の場合にキャッピング材料の外来原子及び外来粒子に起因した欠陥が有利に低減されるという利点がある。
【0136】
本発明の光学素子の有利な発展形態において、キャッピング層は対向ターゲット式スパッタリングにより形成される場合もある。
【0137】
キャッピング層が対向ターゲット式スパッタリングにより形成される場合、望ましくない欠陥の発生が減り、したがって事実上欠陥がないキャッピング層が形成される。
【0138】
本発明の光学素子の有利な発展形態において、キャッピング層はペニングイオン化と組み合わせたスパッタリングにより形成される場合もある。
【0139】
キャッピング層が本体の表面にスパッタリングされ、ここでスパッタリング法の作動ガスがペニングイオン化によりイオン化される場合、特に高速の粒子の発生を低減することができ、ひいてはキャッピング層の望ましくない欠陥の発生も低減することができる。
【0140】
本発明の光学素子の有利な発展形態において、キャッピング層は熱化と組み合わせたスパッタイングにより形成される場合もある。
【0141】
本発明の光学素子の有利な発展形態において、酸化ジルコニウムZrOx及び/又は酸化チタンTiOx及び/又は酸化ニオブNbOx及び/又は酸化イットリウムYOx及び/又は酸化ハフニウムHfOx及び/又は酸化セリウムCeOx及び/又は酸化ランタンLaOx及び/又は酸化タンタルTaOx及び/又は酸化アルミニウムAlOx及び/又は酸化エルビウムErOx及び/又は酸化タングステンWOx及び/又は酸化クロムCrOx及び/又は酸化スカンジウムScOx及び/又は酸化バナジウムVOxが、純粋な形態で且つ/又は混合物として、キャッピング材料として設けられ得る。
【0142】
特に、上記酸化物の少なくとも2つ以上の多成分混合物がキャッピング材料を形成する場合もある。
【0143】
さらに、本発明の光学素子の有利な発展形態において、キャッピング層厚は0.1nm~20nm、好ましくは0.3nm~10nm、より好ましくは0.5nm~3nmである場合もある。
【0144】
本発明はさらに、請求項33に記載の光学素子を製造する方法に関する。
【0145】
特に投影露光装置用の光学素子を製造する本発明の装置は、ターゲット材料からなるターゲットと、反射層が塗布された基板を有する本体のコーティングのためにイオン化された作動ガスによりターゲット材料の粒子を個別化するよう設定されたコーティングデバイスと、本体を収容する加工室と、加工室内に真空を形成する真空デバイスとを備える。本発明によれば、個別化後の粒子のエネルギー、及び/又は本体に当たる作動ガスのイオン及び/又は電子及び/又は原子のエネルギーを制限するために少なくとも1つの制限デバイスが設けられる。このような装置には、本体に当たる高エネルギー粒子が引き起こす欠陥が低減されるという利点がある。
【0146】
コーティングデバイスは、特にカソードアトマイゼーションデバイス又はスパッタリングデバイスであり得る。
【0147】
よって、本発明の装置において形成される本体のキャッピング層は、少なくとも事実上欠陥がないか又は欠陥レベルが低いのが有利である。
【0148】
本発明の装置の有利な発展形態において、エネルギーは運動エネルギーである場合もある。
【0149】
本発明の装置の有利な発展形態において、制限デバイスは、真空中の作動ガスの密度を変えるように構成される場合もある。
【0150】
本体に当たる粒子の運動エネルギーは、特に、本体に当たる前の高速粒子と他の粒子との衝突確率を上げることにより制限され得る。これは、真空中の作動ガスの密度を制限デバイスのない装置に比べて高めることで達成することができる。結果として、真空の単位体積中に存在する作動ガスの粒子が多くなり、つまり衝突確率が上がり、特に作動ガスの高速粒子の運動エネルギーが均等化される。
【0151】
このような均等化プロセスを熱化と称することが多い。
【0152】
本発明の装置の有利な発展形態において、制限デバイスは、二次ガスが作動ガスに供給されるようにペニングイオン化デバイスとして構成される場合もある。
【0153】
二次ガスが作動ガスに供給される場合、作動ガスは、電子励起された二次ガスによりペニングイオン化でイオン化され得る。二次ガスを作動ガス及び/又は加工室に供給できるようにするために、室内の圧力及び/又は室内の作動ガス量に応じて特定の量の二次ガスを加工室及び/又は作動ガスに供給する二次ガス供給デバイスを設けることができる。
【0154】
特に、10体積%~1体積%、好ましくは1体積%~5体積%、好ましくは3体積%の二次ガスが作動ガスに供給される場合もある。
【0155】
特に有利な方法では、作動ガスはアルゴンであり、二次ガスはヘリウムである場合もある。
【0156】
本発明の装置のさらに有利な発展形態において、制限デバイスは、二次ガスの電子活性化エネルギーが作動ガスのイオン化エネルギーよりも大きいように構成される場合もある。
【0157】
本発明の装置のさらに有利な発展形態において、制限デバイスは磁気トラップの形態をとる場合もある。
【0158】
制限デバイスを磁気トラップとして形成することには、ローレンツ力の速度依存性により、特に高速の荷電粒子が本体に当たるのを磁気トラップで特に効率的に防ぐことができるという利点がある。
【0159】
本発明の装置のさらに有利な発展形態において、制限デバイスは、ターゲットを加熱し且つ/又は溶融させる加熱デバイスの形態をとる場合もある。
【0160】
制限デバイスは、ターゲットを加熱し且つ溶融させるために、ひいてはターゲットのターゲット材料の個別化に要するエネルギーを低減するために、加熱デバイスの形態をとり得ることも有利である。このように、比較的低エネルギーの作動ガスのイオンを用いて、高エネルギー粒子が原材料及び/又は形成されるキャッピング層に当たる確率を下げることが可能なのが有利である。同時に、ターゲット材料の粒子は、本体に少なくとも事実上欠陥がないキャッピング層を形成するのに十分なほど高い運動エネルギーを有し得る。
【0161】
本発明の装置の有利な発展形態において、制限デバイスは静電電位を有するメッシュにより形成される場合もある。
【0162】
制限デバイスが電位を有するメッシュにより形成される場合、電位が適切に選択されれば、作動ガスの高速荷電イオンを本体及び/又は形成されるキャッピング層に当たる前に斥力により減速させることができる。
【0163】
本発明の装置の有利な発展形態において、制限デバイスはアフターグローデバイスの形態をとる場合もある。
【0164】
光学素子との関連はないが、プラズマアフターグローの使用が米国特許第7,338,581号明細書に記載されている。
【0165】
アフターグローデバイスの使用には、プラズマグローではなくプラズマアフターグローがターゲット材料の粒子の個別化につながるという効果があり得る。
【0166】
これにより、作動ガスの高エネルギー粒子及びターゲット材料の高エネルギー粒子による損傷ポテンシャルを低減することができるのが有利である。
【0167】
特に、プラズマアフターグローでの作動ガスのプラズマ化学がプラズマグローでの作動ガスのプラズマ化学とは大きく異なることにより、損傷ポテンシャルを低減することができる。
【0168】
作動ガスのプラズマアフターグローは、ここでは依然としてプラズマであり、したがってプラズマの特性のほとんどを保持する。しかしながら、アフターグローを用いた場合に作動ガスによる損傷ポテンシャルを低減することができるのが有利である。
【0169】
本発明の装置の有利な発展形態において、アフターグローデバイスは遠隔プラズマ源の形態をとる場合もある。
【0170】
遠隔プラズマ源は、作動ガスの放電を開始させてプラズマを形成させる外部電磁場から空間的に離れた作動ガスのプラズマである。外部電磁場から遠隔にあり、例えばターゲットに供給されるプラズマは、ターゲットと接触するとアフターグローを示し、これがターゲット材料の高エネルギー粒子及び/又は作動ガスの高エネルギー粒子の形成の低減につながる。
【0171】
本発明の装置の有利な発展形態において、アフターグローデバイスはパルスプラズマ源の形態をとる場合もある。
【0172】
プラズマ放電とターゲット材料の個別化との上記空間的な分離だけでなく、この分離は、時間的に、すなわち時間領域でもたらすこともできる。パルスプラズマ源は、作動ガスを短期間で放電させる。その後の期間には、プラズマ源によるアクティブ放電はなくアフターグローだけである。したがって、ターゲット材料の粒子の個別化プロセスの大部分は、作動ガスのプラズマアフターグローにより行われる。これにより、作動ガス及び/又はターゲット材料の高エネルギー粒子による損傷ポテンシャルを低減することができる。
【0173】
空間的な分離に比べて、放電とターゲットとの接触とを時間的に分離することの大きな利点は、時間的な分離を密閉装置で達成できることである。結果として、アフターグロープラズマをプラズマ源からターゲットへ輸送する必要がない。
【0174】
結果として、本発明の装置は、遠隔プラズマ源に比べてはるかに小型にすることができる。
【0175】
本発明の装置の有利な発展形態において、制限デバイスは2つの相互に対向したターゲットの形態をとる場合もある。
【0176】
このような対向ターゲット式スパッタリング形状には、作動ガスの高エネルギー粒子がコーティング及び/又は光学素子に直接当たらないという利点がある。
【0177】
本発明はさらに、請求項45において、請求項33~44のいずれか1項に記載の装置で用いる二次ガスに関する。
【0178】
本発明の二次ガスは、請求項33~44のいずれか1項に記載の装置又は請求項1~24のいずれか1項に記載の方法での使用に適している。本発明によれば、二次ガスの電子活性化エネルギーは作動ガスのイオン化エネルギーよりも大きい。
【0179】
このように、二次ガスの電子活性化された粒子との衝突時に高確率で作動ガスの粒子がイオン化されることを保証することが可能なのが有利である。
【0180】
有利な点として、二次ガスは、ヘリウム及び/又はネオン及び/又はアルゴン及び/又はクリプトン及び/又はキセノン及び/又は水銀及び/又はラドン及び/又はフランシウム及び/又はハッシウムである場合もある。ここで、イオン化エネルギーは、元素の所与の順序で大きい順になっている。
【0181】
当業者であれば、指定の物質から少なくとも1つの作動ガスと少なくとも1つの二次ガスとの適切な組み合わせを選択することができよう。
【0182】
特に、アルゴンよりもイオン化エネルギーが大きいヘリウム及び/又はネオンが二次ガスとして想定され、アルゴンが作動ガスとして想定される場合もある。
【0183】
本発明はさらに、請求項46に記載の投影露光装置に関する。
【0184】
投影露光装置は、複数の光学素子を有する。特に光学素子をマイクロリソグラフィEUV(極紫外線)投影露光装置で用いる場合、本発明の方法及び/又は本発明の装置により少なくとも部分的に製造された光学素子を用いることが可能なのが有利である。
【0185】
本発明の投影露光装置は、特に本発明の少なくとも1つのミラーの形態で本発明の少なくとも1つの光学素子を含む場合もある。
【0186】
本発明の主題、すなわち本発明の方法、本発明の光学素子、本発明の装置、本発明の二次ガス、及び本発明の投影露光装置の形態の主題の1つに関連して記載した特徴は、本発明の他の主題に関しても実施可能なのが有利である。本発明の主題、すなわち本発明の方法、本発明の光学素子、本発明の装置、本発明の二次ガス、及び本発明の投影露光装置の形態の主題の1つに関連して述べた利点は、本発明の他の主題に関するとも理解され得る。
【0187】
「comprising」、「having」、「with」等の用語は、他の特徴又はステップを除外するものではないことをさらに指摘しておく。さらに、単一のステップ又は特徴を示す「a(an)」又は「the」等の語は、複数の特徴又はステップを除外するものではなく、またその逆も同様である。
【0188】
図面を参照して本発明の実施例を以下で詳細に説明する。
【0189】
図はそれぞれ、本発明の個々の特徴が相互に組み合わせて示される好ましい実施例を示す。いずれの実施例の特徴も、同じ実施例の他の特徴とは関係なく実施可能でもあり、当業者が他の実施例の特徴と適宜容易に組み合わせてさらなる実行可能な組み合わせ及び組み合わせの構成要素を形成することができる。
【0190】
図中、機能的に同一の要素には同じ参照符号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【
図3】デバイスの実施例のさらに別の概略原理図である。
【
図4】デバイスの実施例のさらに別の概略原理図である。
【
図5】デバイスの実施例のさらに別の概略原理図である。
【
図6】デバイスの実施例のさらに別の概略原理図である。
【
図7】デバイスの実施例のさらに別の概略原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0192】
図1は、本発明を好適に用いることができる半導体リソグラフィ用のEUV投影露光装置400の基本構成を例として示す。特に、以下に記載するようにキャッピング材料から形成されたキャッピング層をキャッピング層厚に達するまで本体の表面に塗布し、キャッピング層を少なくとも事実上欠陥がなく形成することにより、投影露光装置の少なくとも1つの光学素子が製造されるという点で、本発明を用いることができる。
【0193】
投影露光装置400の照明系401は、放射線源402に加えて、物体面405の物体視野404の照明用の光学ユニット403を備える。物体視野404に配置され、概略的に示すレチクルホルダ407により保持されたレチクル406が照明される。概略的に示してあるにすぎない投影光学ユニット408は、物体視野404を像面410の像視野409に結像する働きをする。レチクル406上の構造が、像面410の像視野409の領域に配置されたウェーハ411の感光層に結像され、ウェーハ411は、同じく部分的に示されているウェーハホルダ412により保持される。
【0194】
放射線源402は、特に5ナノメートル~30ナノメートルの範囲の、特に13.5nmのEUV放射線413を発することができる。光学的に異なる設計の機械的に調整可能な光学素子が、EUV放射線413の放射線経路の制御に用いられる。
図1に示すEUV投影露光装置400の場合、光学素子は、以下で例として述べるにすぎない適当な実施形態で調整可能なミラーの形態である。
【0195】
放射線源402により生成されたEUV放射線413は、EUV放射線413が中間焦点面414の領域の中間焦点を通過した後に視野ファセットミラー415に達するように放射線源402に組み込まれたコレクタ402aにより位置合わせされる。視野ファセットミラー415の下流で、EUV放射線413は瞳ファセットミラー416により反射される。瞳ファセットミラー416とミラー418、419、420を有する光学アセンブリ417とを用いて、視野ファセットミラー415の視野ファセットが物体視野404に結像される。
【0196】
図2は、特に投影露光装置400用の光学素子2を製造する装置1の原理図を示し、装置1は、ターゲット材料からなるターゲット3と、反射層18が塗布された基板17を有する本体7のコーティングのためにイオン化された作動ガス6によりターゲット材料の粒子5を個別化するよう設定されたコーティングデバイス4と、本体7を収容する加工室8と、加工室8内に真空を形成する真空デバイス9とを備えている。装置は、個別化後の粒子5のエネルギー、及び/又は本体7に当たる作動ガス6のイオン及び/又は電子及び/又は原子のエネルギーを制限するために制限デバイス10をさらに備える。
【0197】
光学素子2は、特に投影露光装置400の光学素子2、402a、415、416、418、419、420であり得る。
【0198】
特に、光学素子2は、EUV投影露光装置400のコレクタミラー402aでもあり得る。
【0199】
本体7は、ここでは1つ又は複数の材料からなる反射層18が塗布された基板17により形成され、反射層18にはさらにバリア層19が塗布されている(
図8参照)。
【0200】
別の実施形態(図示せず)において、本体7は、1つ又は複数の材料からなる反射層18が塗布された基板17により形成され、反射層18にはさらに複数のバリア層19が塗布されている場合もある。
【0201】
図2に示す装置1は、例えば、特に製造露光装置400用の光学素子2を製造する方法の実施に適している。これは、キャッピング材料から形成されたキャッピング層11をキャッピング層厚に達するまで本体7の表面に塗布することを含み、本体7は反射層18が塗布された基板17を含む。キャッピング層11は、ここでは少なくとも事実上欠陥なく形成される。
【0202】
装置1について示す実施例では、光学素子2を製造する方法は、キャッピング層11がスパッタリングにより形成されるように実施され得る。これは、作動ガス6のイオンによるボンバードにより少なくとも1つのターゲット3でターゲット材料の粒子5を個別化し続けることを含む。さらに、作動ガス6の少なくとも間接的なイオン化のために放電電圧が印加され、欠陥防止方式に関連してキャッピング層11が形成される。
【0203】
本実施例のキャッピング層11は、化学量論的組成を有するキャッピング材料から形成される。さらに、本実施例において、キャッピング層11は、キャッピング層と本体との間にシャープな境界が形成されるように形成される。
【0204】
実施例において実施される方法では、ターゲット材料の粒子5がキャッピング材料を形成し、本体7に向かって移動し、本体7に堆積してキャッピング層11を形成する。
【0205】
ターゲット材料の粒子5は、反応ガスと反応してキャッピング材料の粒子5を形成し、キャッピング材料の粒子5は、続いて本体7に向かって移動し、本体7に堆積してキャッピング層11を形成する場合もある。
【0206】
本実施例において、反応ガスは酸素である場合もある。
【0207】
図2に示す実施例において装置1の一部である制限デバイス11は、欠陥防止方式の実施に適している。欠陥防止方式では、個別化後のターゲット材料の粒子5による、且つ/又はキャッピング材料の粒子5による、且つ/又は作動ガス6のイオン及び/又は原子及び/又は電子による、且つ/又は本体7に当たる前且つ/又は形成されるキャッピング層11に当たる前の反応ガスの粒子による損傷ポテンシャルが、少なくとも1つの損傷パラメータに関して低減される。
【0208】
特に、本実施例において、少なくとも1つの損傷パラメータは、好ましくは閾値を超える運動エネルギーであり得る。制限デバイス10は、生じる最大運動エネルギーを低減する。
【0209】
したがって、制限デバイス10により制限されるエネルギーは運動エネルギーである。
【0210】
図2に示す実施例において装置1の一部である制限デバイス10は、真空中の作動ガス6の密度を変えるようにここでは構成される。作動ガス6の粒子間の衝突頻度を上げると、それらの運動エネルギーが均等化又は制限される。
【0211】
本実施例における作動ガス6の密度は、制限デバイス10が加工室8に作動ガス6を供給することにより高められる。特に、制限デバイス10は、計量デバイス及び/又は弁デバイスの形態をとる場合もある。さらに、本実施例において、制限デバイス10は加工室8に作動ガスとして働かない熱化ガスを供給するが、作動ガスの粒子がその粒子と衝突してその運動エネルギーが均等化される場合もある。
【0212】
図2に示す装置1の一部として詳述した制限デバイス10により、キャッピング層11をスパッタリングにより形成すると共に、欠陥防止方式で、個別化後のキャッピング材料の粒子5と作動ガス6のイオン及び/又は原子及び/又は電子とを作動ガス6による熱化によりエネルギー的に均等化する方法を実行することができる。特に、計量デバイスの形態の制限デバイス10により、欠陥防止方式で熱化が起こるように作動ガス6の圧力を調整することが可能である。
【0213】
制限デバイス10は、アフターグローデバイスの形態をとる場合もある。特に、アフターグローデバイスは、遠隔プラズマ源の形態をとる場合もある。プラズマ源は、ターゲット3及び/又はキャッピング層11から空間的に離れて作動ガスを形成し、続いてそれをターゲット3に向けて移動させる。
【0214】
ターゲット材料の粒子5の個別化は、プラズマアフターグローにより行われる。
【0215】
同様に、アフターグローデバイスは、パルスプラズマ源の形態をとる場合もある。この場合、作動ガス6は、経時的にパルス状にイオン化されるにすぎない。したがって、ターゲット材料の粒子5の個別化は、プラズマアフターグローにより大部分はもたらされる。
【0216】
制限デバイス10がアフターグローデバイスの、特に遠隔プラズマ源の形態をとる場合、デバイス1は、欠陥防止方式で作動ガス6のイオンを遠隔プラズマ源により形成する方法を実施するのに適している。
【0217】
アフターグローデバイスがパルスプラズマ源の形態をとる場合、欠陥防止方式で作動ガス6のイオンがパルスプラズマを形成する方法を実施することが可能である。特に、欠陥防止方式で、少なくとも1つのターゲットはデュアルカソードマグネトロンの形態をとる場合もある。
【0218】
図3は、二次ガス13が作動ガス6に供給されるように制限デバイス10がペニングイオン化デバイス12として構成された装置1を示す。ペニングイオン化デバイス12は、二次ガス13の電子活性化エネルギーが作動ガス6のイオン化エネルギーよりも大きいようにここでは構成される。
【0219】
図3に示す実施例に従って構成された装置1は、キャッピング層11を欠陥防止方式と組み合わせたスパッタリングにより形成する方法の実施を可能にする。欠陥防止方式は、二次ガス13でのペニングイオン化による作動ガス6のイオン化を含む。
【0220】
欠陥を防止するために、二次ガス13が用いられる場合に放電電圧を下げることがここでは可能である。
【0221】
この目的で、二次ガス13の電子活性化エネルギーは作動ガス6のイオン化エネルギーよりも大きい。
【0222】
図4は、装置1のさらに別の実施例の原理図を示す。制限デバイス10は、ここでは磁気トラップ14の形態をとる。磁気トラップ14は、ここでは高運動エネルギーを有する荷電粒子がキャッピング層11から遠ざけられるように磁場を形成する。
【0223】
特に、磁気トラップ14は、特に高運動エネルギーを有する作動ガス6のイオンが加工室8の限られた領域内に保持され、特にキャッピング層11と相互作用しないように構成される。
【0224】
図4に示す装置1を用いて、例えば、キャッピング層11をスパッタリングにより形成すると共に、欠陥防止方式で、帯電した粒子、特に作動ガスのイオンを磁気トラップ14に捕捉する方法を実施することができる。
【0225】
図5は、制限デバイス10が2つの相互に対向するターゲット3の形態をとる装置1の原理図を示す。このような装置1を用いて、例えば、欠陥防止方式を対向ターゲット式スパッタリング動作として構成する方法を実行することができる。特に、ターゲット3が向かい合うことで、特に作動ガス6の非常に高速のイオンがキャッピング層11の下の本体7に直接当たることができなくなる。
【0226】
その代わりに、非常に高速の粒子、特に作動ガス6のイオンが対向するターゲット3それぞれに当たる確率が高い。
【0227】
図6は、制限デバイス10がターゲット3を加熱し且つ/又は溶融させる加熱デバイス15の形態をとる装置1のさらに別の実施例を示す。このような装置1は、例えば、キャッピング層11をスパッタリングにより形成すると共に、欠陥防止方式で少なくとも1つのターゲット3を加熱し且つ/又は溶融させる方法の実施を可能にする。
【0228】
ターゲット3の溶融により、ターゲット材料の粒子5の個別化に要するエネルギーが少なくなる。このように、開示された実施例において、少なくとも1つのターゲット3が加熱且つ/又は溶融されているときに放電電圧が下げられることが想定される。
【0229】
図7は、制限デバイス10が静電電位を有するメッシュ16の形態をとる装置1の実施例の原理図を示す。このような装置により、例えば、キャッピング層11をスパッタリングにより形成すると共に、欠陥防止方式で電位を有するメッシュ16の電場により作動ガス6のイオンを減速させる方法を実行することが可能である。
【0230】
荷電粒子、特に作動ガス6のイオンの減速により、作動ガス6のイオンによる損傷ポテンシャルを低減するのが有利である。
【0231】
図8は、反射層18が塗布された基板17を有する本体7と、本体7の表面に塗布されキャッピング層厚を有する、キャッピング材料から形成されたキャッピング層11とを備え、キャッピング層11は少なくとも事実上欠陥がない、光学素子2、特に投影露光装置400のミラーの原理図を示す。
【0232】
本体7は、1つ又は複数の材料からなる反射層18が塗布された基板17により形成され、反射層18にはさらにバリア層18が塗布されている。
【0233】
キャッピング層11は、ここではバリア層19に対向する側及びバリア層19から遠い側の両方にシャープな境界を有する。
【0234】
さらに、本実施例においてキャッピング層11を形成するキャッピング材料は、化学量論的組成を有する。本実施例において、キャッピング層11は、対向ターゲット式スパッタリング及び/又はペニングイオン化と組み合わせたスパッタリング及び/又は熱化と組み合わせたスパッタリング及び/又は本発明に関して開示したさらに他の方法により形成され得る。
【0235】
反射層18が塗布された基板17からの本体7の形成は、本発明においてはまず、反射層18が塗布された基板17を本体7が有すると広義に解釈すべきである。その場合、上述のように、本体7は特に
図8に示すようにバリア層19も有し得る。
【0236】
狭義では、本発明における本体7は、反射層18が塗布された基板17と、任意選択で反射層18に、任意にその面積の一部のみに塗布された1つ又は複数のバリア層19とからのみ形成されると考えるべきである。
【符号の説明】
【0237】
1 装置
2 光学素子
3 ターゲット
4 コーティングデバイス
5 ターゲット材料の粒子
6 作動ガス
7 本体
8 加工室
9 真空デバイス
10 制限デバイス
11 キャッピング層
12 ペニングイオン化デバイス
13 二次ガス
14 磁気トラップ
15 加熱デバイス
16 メッシュ
17 基板
18 反射層
19 バリア層
400 投影露光装置
401 照明系
402 放射線源
402a コレクタ
403 光学ユニット
404 物体視野
405 物体面
406 レチクル
407 レチクルホルダ
408 投影光学ユニット
409 像視野
410 像面
411 ウェーハ
412 ウェーハホルダ
413 EUV放射線
414 中間焦点面
415 視野ファセットミラー
416 瞳ファセットミラー
417 光学アセンブリ
418 ミラー
419 ミラー
420 ミラー
【手続補正書】
【提出日】2023-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
本発明によれば、この目的は請求項41に記載の特徴を有する二次ガスにより達成される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
本発明によれば、この目的は、請求項42に記載の特徴を有する投影露光装置により達成される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0123
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0123】
本発明はさらに、請求項23に記載の光学素子に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0144
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0144】
本発明はさらに、請求項30に記載の光学素子を製造する装置に関する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0177
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0177】
本発明はさらに、請求項41において、請求項30~40のいずれか1項に記載の装置で用いる二次ガスに関する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0178
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0178】
本発明の二次ガスは、請求項30~40のいずれか1項に記載の装置又は請求項1~22のいずれか1項に記載の方法での使用に適している。本発明によれば、二次ガスの電子活性化エネルギーは作動ガスのイオン化エネルギーよりも大きい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0183
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0183】
本発明はさらに、請求項42に記載の投影露光装置に関する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に投影露光装置(400)用の光学素子(2)を製造する方法であって、キャッピング材料から形成されたキャッピング層(11)がキャッピング層厚に達するまで本体(7)の表面に塗布され、前記本体(7)は反射層(18)が塗布された基板(17)を含む方法において、前記キャッピング層(11)は少なくとも事実上欠陥がな
く、さらに、前記キャッピング層(11)はスパッタリングにより形成され、少なくとも1つのターゲット(3)のターゲット材料の粒子(5)が作動ガス(6)のイオンによるボンバードにより個別化され続け、前記作動ガス(6)の少なくとも間接的なイオン化のために放電電圧が印加され、且つ欠陥防止方式に関連して前記キャッピング層(11)が形成され、前記欠陥防止方式は対向ターゲット式スパッタリング動作として構成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記キャッピング層(11)にシャープな境界が形成されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の方法において、前記キャッピング層(11)は、化学量論的組成を有するキャッピング材料から形成されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項
1又は
3に記載の方法において、前記ターゲット材料の粒子は、キャッピング材料を形成し、前記本体(7)に向かって移動し、該本体(7)に堆積して前記キャッピング層(11)を形成することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項
1~
4のいずれか1項に記載の方法において、反応ガスが前記ターゲット材料の粒子(5)と反応して前記キャッピング材料の粒子を形成し、該キャッピング材料の粒子は前記本体(7)に向かって移動し、該本体(7)に堆積して前記キャッピング層(11)を形成することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の方法において、前記反応ガスは酸素であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項
1~
6のいずれか1項に記載の方法において、前記欠陥防止方式は、個別化後に損傷を引き起こす前記ターゲット材料の粒子(5)のポテンシャル、且つ/又は前記キャッピング材料の粒子のポテンシャル、且つ/又は前記作動ガス(6)のイオン及び/又は原子及び/又は電子のポテンシャル、且つ/又は前記本体(7)及び/又は形成されるキャッピング層(11)に当たる前の前記反応ガスの粒子のポテンシャルが、少なくとも1つの損傷パラメータに関して低減されるように構成されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の方法において、前記少なくとも1つの損傷パラメータは、好ましくは閾値を超える低減運動エネルギーであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項
1~
8のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層(11)はスパッタリングにより形成され、欠陥防止方式で荷電粒子が磁気トラップ(14)に捕捉されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項
1~
9のいずれか1項に記載の方法において、前記作動ガスのイオンは、前記欠陥防止方式で遠隔プラズマ源により形成されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項
1~
10のいずれか1項に記載の方法において、前記作動ガスのイオンは、前記欠陥防止方式でパルスプラズマを形成することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項
1~
11のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層はスパッタリングにより形成され、前記少なくとも1つのターゲット(3)は、前記欠陥防止方式でアクティブアノード及び/又はパッシブアノードを有するデュアルカソードマグネトロンの形態をとることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項
1~
12のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層(11)はスパッタリングにより形成され、前記作動ガス(6)は、欠陥防止方式で二次ガス(13)でのペニングイオン化によりイオン化されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項
13に記載の方法において、前記放電電圧は、前記欠陥防止方式で二次ガス(13)が用いられる場合に下げられることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項
13又は
14に記載の方法において、前記二次ガス(13)の電気活性化エネルギーが前記作動ガス(6)のイオン化エネルギーよりも大きいことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項
1~
15のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層(11)はスパッタリングにより形成され、前記欠陥防止方式で、個別化後の前記キャッピング材料の粒子と前記作動ガス(6)からのイオン及び/又は原子及び/又は電子とが、前記作動ガス(6)による熱化によりエネルギー的に均等化されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項
16に記載の方法において、前記欠陥防止方式で熱化が起こるように前記作動ガス(6)の圧力が調整されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項
1~
17のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層(11)はスパッタリングにより形成され、前記欠陥防止方式で前記少なくとも1つのターゲット(3)が加熱且つ/又は溶融されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項
1~
18のいずれか1項に記載の方法において、前記放電電圧は、前記少なくとも1つのターゲット(3)が加熱且つ/又は溶融されている場合に下げられることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項
1~
19のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層(11)はスパッタリングにより形成され、前記欠陥防止方式で電位を有するメッシュ(16)の電場により前記作動ガス(6)のイオンが減速されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1~
20のいずれか1項に記載の方法において、酸化ジルコニウムZrO
x及び/又は酸化チタンTiO
x及び/又は酸化ニオブNbO
x及び/又は酸化イットリウムYO
x及び/又は酸化ハフニウムHfO
x及び/又は酸化セリウムCeO
x及び/又は酸化ランタンLaO
x及び/又は酸化タンタルTaO
x及び/又は酸化アルミニウムAlO
x及び/又は酸化エルビウムErO
x及び/又は酸化タングステンWO
x及び/又は酸化クロムCrO
x及び/又は酸化スカンジウムScO
x及び/又は酸化バナジウムVO
xが、純粋な形態で且つ/又は混合物として、キャッピング材料として提供されることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1~
21のいずれか1項に記載の方法において、前記キャッピング層厚は0.1nm~20nm、好ましくは0.3nm~10nm、より好ましくは0.5nm~3nmであることを特徴とする方法。
【請求項23】
反射層(18)が塗布された基板(17)を有する本体(7)と、該本体(7)の表面に塗布されキャッピング層厚を有する、キャッピング材料から形成されたキャッピング層(11)とを備えた光学素子(2)、特に投影露光装置(400)のミラーであって、前記キャッピング層(11)は少なくとも事実上欠陥がな
く、さらに、前記キャッピング層(11)は対向ターゲット式スパッタリングにより形成されることを特徴とする光学素子。
【請求項24】
請求項
23に記載の光学素子(2)において、前記キャッピング層(11)はシャープな境界を有することを特徴とする光学素子。
【請求項25】
請求項
23又は
24に記載の光学素子(2)において、前記キャッピング材料は化学量論的組成を有することを特徴とする光学素子。
【請求項26】
請求項
23~
25のいずれか1項に記載の光学素子(2)において、前記キャッピング層(11)はペニングイオン化と組み合わせたスパッタリングにより形成されることを特徴とする光学素子。
【請求項27】
請求項
23~
26のいずれか1項に記載の光学素子(2)において、前記キャッピング層(11)は熱化と組み合わせたスパッタリングにより形成されることを特徴とする光学素子。
【請求項28】
請求項
23~
27のいずれか1項に記載の光学素子(2)において、酸化ジルコニウムZrO
x及び/又は酸化チタンTiO
x及び/又は酸化ニオブNbO
x及び/又は酸化イットリウムYO
x及び/又は酸化ハフニウムHfO
x及び/又は酸化セリウムCeO
x及び/又は酸化ランタンLaO
x及び/又は酸化タンタルTaO
x及び/又は酸化アルミニウムAlO
x及び/又は酸化エルビウムErO
x及び/又は酸化タングステンWO
x及び/又は酸化クロムCrO
x及び/又は酸化スカンジウムScO
x及び/又は酸化バナジウムVO
xが、純粋な形態で且つ/又は混合物として、キャッピング材料として提供されることを特徴とする光学素子。
【請求項29】
請求項
23~
28のいずれか1項に記載の光学素子(2)において、前記キャッピング層厚は0.1nm~20nm、好ましくは0.3nm~10nm、より好ましくは0.5nm~3nmであることを特徴とする光学素子。
【請求項30】
ターゲット材料からなるターゲット(3)と、反射層(18)が塗布された基板(17)を有する本体(7)のコーティングのためにイオン化された作動ガス(6)により前記ターゲット材料の粒子(5)を個別化するよう設定されたコーティングデバイス(4)と、前記本体(7)を収容する加工室(8)と、該加工室(8)内に真空を形成する真空デバイス(9)とを含む、特に投影露光装置(400)用の光学素子(2)を製造する装置(1)であって、個別化後の前記粒子(5)のエネルギー、及び/又は前記本体(7)に当たる前記作動ガス(6)のイオン及び/又は電子及び/又は原子のエネルギーを制限するために少なくとも1つの制限デバイス(10)が設けられ
、前記制限デバイス(10)は2つの相互に対向するターゲット(3)の形態をとることを特徴とする装置。
【請求項31】
請求項
30に記載の装置(1)において、前記エネルギーは運動エネルギーであることを特徴とする装置。
【請求項32】
請求項
30又は
31に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は、前記真空中の前記作動ガス(6)の密度を変えるように構成されることを特徴とする装置。
【請求項33】
請求項
30~
32のいずれか1項に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は、二次ガス(13)が前記作動ガス(6)に供給されるようにペニングイオン化デバイス(12)として構成されることを特徴とする装置。
【請求項34】
請求項
33に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は、前記二次ガス(13)の電子活性化エネルギーが前記作動ガス(6)のイオン化エネルギーよりも大きいように構成されることを特徴とする装置。
【請求項35】
請求項
30~
34のいずれか1項に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は磁気トラップ(14)の形態をとることを特徴とする装置。
【請求項36】
請求項
30~
35のいずれか1項に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は、前記ターゲット(3)を加熱し且つ/又は溶融させる加熱デバイス(15)の形態をとることを特徴とする装置。
【請求項37】
請求項
30~
36のいずれか1項に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)は電位を有するメッシュ(16)の形態をとることを特徴とする装置。
【請求項38】
請求項
30~
37のいずれか1項に記載の装置(1)において、前記制限デバイス(10)はアフターグローデバイスの形態をとることを特徴とする装置。
【請求項39】
請求項
38に記載の装置(1)において、前記アフターグローデバイスは遠隔プラズマ源の形態をとることを特徴とする装置。
【請求項40】
請求項
38又は
39に記載の装置(1)において、前記アフターグローデバイスはパルスプラズマ源の形態をとることを特徴とする装置。
【請求項41】
請求項
1~
22のいずれか1項に記載の方法及び/又は請求項
30~
40のいずれか1項に記載の装置(1)で用いる二次ガス(13)であって、該二次ガス(13)の電子活性化エネルギーが作動ガス(6)のイオン化エネルギーよりも大きいことを特徴とする二次ガス。
【請求項42】
放射線源(402)と少なくとも1つの光学素子(2、402a、415、416、418、419、420)を有する光学ユニット(403、408)とを含む露光系(401)を備えた、半導体リソグラフィ用の投影露光装置(400)であって、前記光学素子(2、402a、415、416、418、419、420)の少なくとも1つは、請求項1~
22のいずれか1項に記載の方法により少なくとも部分的に製造されており、且つ/又は前記光学素子(2、402a、415、416、418、419、420)の少なくとも1つは、請求項
30~
40のいずれか1項に記載の装置(1)を用いて製造されており、且つ/又は前記光学素子(2、402a、415、416、418、419、420)の少なくとも1つは、請求項
23~
29のいずれか1項に記載の光学素子である投影露光装置。
【国際調査報告】