(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】正極活物質、これを含む正極及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20231011BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231011BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519756
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-03-29
(86)【国際出願番号】 KR2022000386
(87)【国際公開番号】W WO2022149933
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2021-0002838
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・シグ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ヨン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ア・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・フイ・ベク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ピル・キム
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050FA17
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA13
(57)【要約】
本発明は、結晶粒長軸配向度DoAが0.5~1であり、電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析により得られた結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRcと前記結晶粒の位置単位ベクトルP’の外積値で表される結晶粒c軸配向度が0.5未満の結晶粒Cの割合が正極活物質粒子の断面の全結晶粒の25%~70%である正極活物質と、これを含む正極及びリチウム二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[式1]で表される結晶粒長軸配向度DoAが0.5~1であり、電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析により得られた結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRcと前記結晶粒の位置単位ベクトルP’の外積値で表される結晶粒c軸配向度が0.5未満の結晶粒Cの割合が、正極活物質粒子の断面の全結晶粒の25%~70%である正極活物質:
[式1]
【数1】
前記[式1]において、
λ
1は、前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られた画像データから測定された当該結晶粒の長軸ベクトルE
Iの大きさであり、
λ
2は、前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られた画像データから測定された当該結晶粒の短軸ベクトルE
IIの大きさであり、
C
Dは、当該結晶粒の位置単位ベクトルP’と長軸単位ベクトルE
I’の内積値である。
【請求項2】
前記走査イオン顕微鏡分析は、前記正極活物質の断面に集束イオンビームを照射して走査イオン顕微鏡画像を得た後、ディープラーニングを用いて前記走査イオン顕微鏡画像から結晶粒単位にセグメンテーション(segmentation)されたデータを得て、前記セグメンテーションされたデータから前記[式1]で表されるDoAを計算する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析は、前記正極活物質の断面の電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)測定により、各結晶粒の位置情報及びオイラー角(Euler angle)情報を含むEBSDオイラーマップ(Euler map)データを得て、下記[式2]により、前記結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRc(x、y、z)を求める、請求項1に記載の正極活物質:
[式2]
【数2】
前記[式2]において、
[X、Y、Z]は、(0、0、1)であり、ψ、θ、φは、オイラーマップデータから得られたオイラー角(Euler angle)である。
【請求項4】
前記正極活物質は、
前記DoAが0.5~1であり、結晶粒c軸配向度が0.5~1の結晶粒Aと、
前記DoAが0.5未満であり、結晶粒c軸配向度が0.5~1の結晶粒Bと、
前記DoAが0.5未満であり、結晶粒c軸配向度が0.5未満の結晶粒Dと、をさらに含み、
前記正極活物質粒子の断面の全結晶粒のうち、結晶粒Aの割合は20%以上25%未満、前記結晶粒Bの割合は5%~30%、前記結晶粒Cの割合は25%~70%、前記結晶粒Dの割合は5%~30%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記正極活物質粒子の断面の全結晶粒のうち、結晶粒Aと結晶粒Cの合計割合が50%~90%である、請求項4に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記正極活物質は、結晶粒の大きさが70nm~200nmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記正極活物質は、マイクロストレインが0.04%~0.25%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記正極活物質の1次粒子の平均粒径が0.05μm~8μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記正極活物質の2次粒子の平均粒径が2μm~25μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記正極活物質は、下記[化学式1]で表されるリチウム複合遷移金属酸化物である、請求項1に記載の正極活物質:
[化学式1]
Li
x[Ni
aCo
bM
1
cM
2
d]O
2-yA
y
前記[化学式1]において、
前記M
1は、Mn及びAlからなる群から選択される1種以上の元素であり、
前記M
2は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、Ta、Y、In、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、及びMoからなる群から選択される1種以上の元素であり、
前記Aは、F、Cl、Br、I、At及びSからなる群から選択される1種以上の元素であり、
0.98≦x≦1.20、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0≦d≦0.2、0≦y≦0.2である。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極。
【請求項12】
請求項11に記載の正極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年1月8日に出願された韓国特許出願第10-2021-0002838号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、正極活物質、これを含む正極及びリチウム二次電池に関し、より詳しくは、二次電池に適用する際に、二次電池の容量特性を改善できるだけでなく、二次電池の充放電時に発生するガスの量を減少させ得る優れたリチウム二次電池用正極活物質とこれを含む正極及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、モバイル機器及び電気自動車に対する技術開発及び需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、かつサイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質として、LiCoO2のようなリチウムコバルト酸化物、LiNiO2などのようなリチウムニッケル酸化物、LiMnO2又はLiMn2O4などのようなリチウムマンガン酸化物、LiFePO4などのようなリン酸鉄リチウム酸化物などのようなリチウム遷移金属酸化物が開発され、最近には、Li[NiaCobMnc]O2、Li[NiaCobAlc]O2、Li[NiaCobMncAld]O2などのように、2種以上の遷移金属を含むリチウム複合遷移金属酸化物が開発されて広く使用されている。
【0005】
現在まで開発された2種以上の遷移金属を含むリチウム複合遷移金属酸化物は、通常、数十~数百個の1次粒子が凝集された球状の2次粒子の形態で製造され、1次粒子の配向形態や1次粒子の形状(縦横比)などによって、リチウムイオンの移動性や電解液含浸性などの物性が変わるようになる。これにより、正極活物質粒子の粒子構造を制御して正極活物質の性能を向上させるための研究が試みられている。
【0006】
韓国登録特許第10-1611784号(特許文献1)には、1次粒子のa軸方向の長さがc軸方向の長さよりも長く、1次粒子のa軸が放射状に配列された正極活物質が開示されている。前記特許文献1では、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)及び/又は透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)を用いて、正極活物質の1次粒子の形態や1次粒子の配向性を分析した。
【0007】
しかし、前記特許文献1で使用したTEM分析の場合、粒子全体ではなく、一部領域に対する情報のみ得られ、正極活物質粒子全体の特性を代弁し難いという問題がある。また、正極活物質の物性は、1次粒子の形態や配向性だけでなく、結晶粒(Crystalline)の形態や配向によっても変わるので、1次粒子の形態や配向性が類似の場合にも、互いに異なる物性を示すことができる。
【0008】
したがって、より優れた特性を有する正極活物質を開発するためには、正極活物質の結晶粒構造に対する研究が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1611784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記のような問題を解決するために、結晶粒の長軸及びc軸の配向が特定の条件を満たす結晶粒を特定の割合で含むことにより、二次電池に適用する際に、二次電池の容量特性を改善できるだけでなく、二次電池の充放電時に発生するガスの量を減少させ得る正極活物質の提供を目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記本発明に係る正極活物質を含む正極及びリチウム二次電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一具現例によれば、本発明は、下記[式1]で表される結晶粒長軸配向度DoAが0.5~1であり、電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析により得られた結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRcと前記結晶粒の位置単位ベクトルP’の外積値で表される結晶粒c軸配向度が0.5未満の結晶粒Cの割合が、正極活物質粒子の断面の全結晶粒の25%~70%であるリチウム二次電池用正極活物質を提供する:
[式1]
【数1】
前記[式1]において、
λ
1は、前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られた画像データから測定された当該結晶粒の長軸ベクトルE
Iの大きさであり、λ
2は、前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られた画像データから測定された当該結晶粒の短軸ベクトルE
IIの大きさであり、C
Dは、当該結晶粒の位置単位ベクトルP’と長軸単位ベクトルE
I’の内積値である。
【0013】
この際、前記走査イオン顕微鏡分析は、前記正極活物質の断面に集束イオンビームを照射して走査イオン顕微鏡画像を得た後、ディープラーニングを用いて前記走査イオン顕微鏡画像から結晶粒単位にセグメンテーション(segmentation)されたデータを得て、前記セグメンテーションされたデータから前記[式1]で表されるDoAを計算するものであってよい。
【0014】
一方、前記電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析は、前記正極活物質の断面の電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)測定により、各結晶粒の位置情報及びオイラー角(Euler angle)情報を含むEBSDオイラーマップ(Euler map)データを得て、下記[式2]により前記結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRc(x、y、z)を求めるものであってよい:
[式2]
【数2】
前記[式2]において、
[X、Y、Z]は(0、0、1)であり、ψ、θ、φは、オイラーマップデータから得られたオイラー角(Euler angle)である。
【0015】
好ましくは、前記正極活物質は、前記DoAが0.5~1であり、結晶粒c軸配向度が0.5~1の結晶粒A、前記DoAが0.5未満であり、結晶粒c軸配向度が0.5~1の結晶粒B、及び前記DoAが0.5未満であり、結晶粒c軸配向度が0.5未満の結晶粒Dをさらに含んでよく、前記正極活物質粒子の断面の全結晶粒のうち、結晶粒Aの割合は20%以上25%未満、前記結晶粒Bの割合は5%~30%、前記結晶粒Cの割合は25%~70%、前記結晶粒Dの割合は5%~30%であってよい。
【0016】
この際、前記正極活物質粒子の断面の全結晶粒のうち、結晶粒Aと結晶粒Cの合計割合は50%~90%、好ましくは50%~80%であってよい。
【0017】
一方、前記正極活物質は、結晶粒の大きさが70nm~200nm、好ましくは100nm~180nm、より好ましくは100nm~150nmであってよい。
【0018】
また、前記正極活物質は、マイクロストレインが0.04%~0.25%、好ましくは0.06%~0.15%であってよい。
【0019】
また、前記正極活物質は、1次粒子の平均粒径が0.05μm~8μm、好ましくは0.1μm~4μmであってよく、2次粒子の平均粒径が2μm~25μm、好ましくは4μm~18μmであってよい。
【0020】
一方、前記正極活物質は、下記[化学式1]で表されるリチウム複合遷移金属酸化物であってよい。
【0021】
[化学式1]
Lix[NiaCobM1
cM2
d]O2-yAy
前記[化学式1]において、
前記M1は、Mn及びAlからなる群から選択される1種以上の元素であり、前記M2は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、Ta、Y、In、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、及びMoからなる群から選択される1種以上の元素であり、前記Aは、F、Cl、Br、I、At及びSからなる群から選択される1種以上の元素であり、0.98≦x≦1.20、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0≦d≦0.2、0≦y≦0.2である。
【0022】
他の具現例によれば、本発明は、前記本発明に係る正極活物質を含む正極及び前記正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の正極活物質は、結晶粒の長軸配向性が高く、c軸配向性が低い結晶粒を特定の割合で含み、二次電池に適用する際に、優れた容量特性及びガス発生低減特性を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】正極活物質の断面の走査イオン顕微鏡画像を示す図である。
【
図2】正極活物質の断面の走査イオン顕微鏡画像を分析してセグメンテーション(segmentation)画像を得る過程を示す図である。
【
図3】結晶粒の長軸配向性とDoA値を示す図である。
【
図4】正極活物質の断面を電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析して得られたEBSDオイラーマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられる用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最良の方法により説明するために用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0026】
本発明において、「結晶粒」は、規則的な原子配列を有する単結晶粒子単位を意味する。前記結晶粒の大きさは、正極活物質の断面のX線回折データをリートベルト法(Rietveld refinement)により分析して測定することができる。例えば、前記結晶粒の大きさは、Malyer Panalyticla社のEmpyreon XRD設備を用いて下記条件でX線回折分析を行ってXRDデータを得た後、前記XRDデータをMalyer Panalytical社のHighscoreプログラムを用いて処理することにより得られる。この際、半価幅は、Caglioti equationを用いて測定するように設定した。
【0027】
<X線回折分析の条件>
光源:Cu-ターゲット、45kV、40mA出力、波長=1.54Å
デテクター:GaliPIX3D
試料準備:約5g程度の試料を2cm直径のホルダーに満たして回転ステージ(ratiation stage)にローディングした。
【0028】
測定時間:約30分
測定領域:2θ=15°~85°
【0029】
本発明において、「1次粒子」は、走査イオン顕微鏡(SEM)を介して正極活物質の断面を観察した際に、一体として区別される最小粒子単位を意味するものであって、一つの結晶粒からなってよく、複数の結晶粒からなってもよい。本発明において、前記1次粒子の平均粒径は、正極活物質粒子の断面SEMデータと区別されるそれぞれの粒子サイズを測定した後、これらの算術平均値を求める方法により測定され得る。
【0030】
本発明において、「2次粒子」は、複数の1次粒子が凝集して形成される2次構造体を意味する。前記2次粒子の平均粒径は、粒度分析器を用いて測定されてよく、本発明においては、粒度分析器としてMicrotrac社のs3500を使用した。
【0031】
本発明において、「マイクロストレイン(microstrain)」は、X線回折データのリートベルト法分析により測定される値であって、結晶格子の変形程度を示す値である。
【0032】
一方、本発明において、各結晶粒の割合(%)は、(当該結晶粒の個数/正極活物質粒子の断面に存在する全結晶粒の個数)×100を意味する。
【0033】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0034】
本発明者は、二次電池に適用する際に、二次電池の容量特性を改善できるだでなく、二次電池の充放電時に発生するガスの量を減少させ得る正極活物質を開発するために研究を重ねた結果、正極活物質の結晶粒のうち、結晶粒の長軸配向性が高く、c軸の配向性が低い結晶粒の割合が特定の範囲を満たすと、二次電池の容量特性及びガス発生低減特性を向上させ得ることを見出し、本発明を完成した。
【0035】
正極活物質
本発明に係る正極活物質は、[式1]で表される結晶粒長軸配向度DoAが0.5~1であり、結晶粒c軸配向度が0.5未満の結晶粒Cの割合が、正極活物質粒子の断面の全結晶粒の25%~70%を満たすことを特徴とする。
【0036】
【0037】
前記[式1]において、
λ1は、前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られた画像データから測定された当該結晶粒の長軸ベクトルEIの大きさであり、λ2は、前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られた画像データから測定された当該結晶粒の短軸ベクトルEIIの大きさであり、CDは、当該結晶粒の位置単位ベクトルP’と長軸単位ベクトルEI’の内積値である。
【0038】
先ず、前記[式1]で表されるDoAについて説明する。
【0039】
前記[式1]で表されるDoA値は、結晶粒の長軸配向性を示すためであって、走査イオン顕微鏡分析により得られたデータを用いて求めることができる。
【0040】
具体的には、前記正極活物質の断面に集束イオンビームを照射して走査イオン顕微鏡画像を得た後、ディープラーニングを用いて前記走査イオン顕微鏡画像から結晶粒単位にセグメンテーション(segmentation)されたデータを得て、前記セグメンテーションされたデータから前記[式1]で表される結晶粒長軸配向度DoAを計算することができる。
【0041】
以下では、走査イオン顕微鏡分析によりDoA値を求める方法をより具体的に説明する。
【0042】
走査イオン顕微鏡は、試料の表面にイオンビームを走査する際に出る信号イオン画像を介して試料の表面構造を測定する装置である。この際、前記イオンビームは、互いに異なる結晶面で反射率が変わるので、走査イオン顕微鏡を用いると、同一の原子配列構造を有する単結晶結晶粒単位に区別された正極活物質粒子の断面画像を得ることができる。
図1には、正極活物質粒子の断面の走査イオン顕微鏡画像が示されている。
図1により、正極活物質粒子の断面画像が結晶粒単位に区別されていることを確認することができる。
【0043】
次に、前記のように得られた走査イオン顕微鏡画像を分析して結晶粒単位にセグメンテーション(segmentation)されたデータを得る。この際、前記画像分析は、ディープラーニング(deep learning)を用いて行われてよい。
【0044】
図2には、走査イオン顕微鏡画像を分析してセグメンテーションされたデータ情報を得る過程が示されている。
図2に示されたように、前記画像分析は、例えば、ディープラーニングにより走査イオン顕微鏡画像から境界線を検出した後、この境界線を用いて結晶粒単位にセグメンテーションされた画像データを得る方法により行われてよい。
【0045】
この際、前記境界線の検出は、オートエンコーダ(AutoEncoder)ニューラルネットワーク(U-NET)アルゴリズムを用いて行われてよく、前記セグメンテーションは、ウォーターシェッドセグメンテーション(Watershed segmentation)アルゴリズムなどを用いて行われてよい。
【0046】
走査イオン顕微鏡画像自体は数値化された情報を含んでいないので、本発明においては、ディープラーニングにより各結晶粒単位にセグメンテーションされたデータ情報を求め、これにより結晶粒の形状、位置などの情報を数値化できるようにした。
【0047】
前記のような走査イオン顕微鏡画像分析によりセグメンテーションされたデータを得るようになると、前記データから測定しようとする結晶粒の位置ベクトル、長軸ベクトル、及び短軸ベクトルを求めることができ、これを用いて、式1のDoA値を計算することができる。
【0048】
【0049】
前記[式1]において、
λ1は、前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られた画像データから測定された当該結晶粒の長軸ベクトルEIの大きさであり、この際、前記長軸ベクトルEIは、当該結晶粒の重心を通るベクトルのうち、前記ベクトルと結晶粒内の各ピクセルまでの距離の合計が最も小さなベクトルを意味する。
【0050】
λ2は、前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られた画像データから測定された当該結晶粒の短軸ベクトルEIIの大きさであり、この際、前記短軸ベクトルEIIは、当該結晶粒の重心を通るベクトルのうち、前記ベクトルと結晶粒内の各ピクセルまでの距離の合計が最も大きなベクトルを意味する。
【0051】
一方、CDは、当該結晶粒の位置単位ベクトルP’と前記長軸単位ベクトルEI’の内積値であり、前記結晶粒の位置単位ベクトルP’は、正極活物質粒子の断面の中心から当該結晶粒の重心を結ぶ位置ベクトルを、大きさが1になるように換算したベクトルであり、前記長軸単位ベクトルEI’は、長軸ベクトルEIを、大きさが1になるように換算したベクトルである。この際、前記正極活物質粒子の断面の中心は、2次元画像(正極活物質の断面の走査イオン顕微鏡画像)での質量中心(center of mass)である。
【0052】
前記[式1]により計算されたDoA値は、当該結晶粒の長軸が、正極活物質の中心と当該結晶粒の重心とを通る直線に対し、どの程度傾いているかを示す値であって、DoA値が1に近いほど、当該結晶粒の長軸と前記直線との間の角度が小さくなり、0に近いほど、当該結晶粒の長軸と前記直線との間の角度が大きくなることを意味する。すなわち、DoAが1に近いほど、結晶粒の長軸配向性が高いと言える。
【0053】
図3には、前記方法により得られたDoA値と、当該結晶粒の長軸を表示した図面が示されている。
図3に示されたように、結晶粒の長軸と正極活物質の中心と当該結晶粒の重心とを通る直線間の角度が小さな結晶粒1の場合、DoAが0.965で1に近く示されたのに対し、結晶粒の長軸と正極活物質の中心と当該結晶粒の重心とを通る直線間の角度が大きな結晶粒2は、DoAが0.352で小さく示されることが分かる。
【0054】
一方、前記のようなそれぞれの結晶粒長軸配向度の情報をマッピングすることにより、正極活物質粒子の断面で特定の長軸配向度値を有する結晶粒の割合を測定することができる。
【0055】
次に、結晶粒c軸配向度について説明する。
【0056】
前記結晶粒c軸配向度は、結晶粒の結晶格子のc軸の配向性を示すためであって、電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析により得られた結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRcと前記結晶粒の位置単位ベクトルP’の外積値である。
【0057】
具体的には、前記結晶粒c軸配向度は、正極活物質の断面の電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)測定により、各結晶粒の位置情報及びオイラー角(Euler angle)情報を含むEBSDオイラーマップ(Euler map)データを得て、前記EBSDオイラーマップデータを用いて、結晶格子のc軸回転ベクトルRcを求め、前記結晶格子のc軸回転ベクトルRcと当該結晶粒の位置単位ベクトルP’を外積して得ることができる。
【0058】
以下、本発明に係る結晶粒c軸配向度を求める方法を具体的に説明する。
【0059】
電子後方散乱回折分析は、試料の回折パターンを用いて、結晶相(crystallographic phase)と結晶方位(crystallographic orientation)を測定し、これに基づいて試料の結晶学的情報を分析する方法である。走査型電子顕微鏡において、試料(すなわち、正極活物質の断面)を電子ビームの入射方向に対して大きな角度を有するように傾けると、入射された電子ビームが試料内で散乱されながら試料表面方向に回折パターンが現れ、これを電子後方散乱回折パターン(Electron Back scattered Diffraction Pattern、EBSP)という。電子後方散乱回折パターンは、電子ビームが照射された領域の結晶方位に反応するので、これを用いると、試料の結晶方位を正確に測定することができ、EBSDソフトウェアにより、試料全体の結晶方位に関する様々な情報を含むオイラーマップ(Euler map)データを得ることができる。
図4には、正極活物質粒子の断面を電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析して得られたオイラーマップが示されている。
【0060】
前記EBSDオイラーマップデータは、各結晶粒の位置ベクトル情報及びオイラー角(Euler angle)情報を含む。一方、前記オイラー角情報を用いると、各結晶粒での結晶格子のc軸回転ベクトルRcを求めることができる。
【0061】
前記結晶格子のc軸回転ベクトルRcは、当該結晶粒の重心と正極活物質の中心とを通る直線に対し、当該結晶粒のc軸がどの方向に回転されたかを示す。
【0062】
具体的には、前記結晶格子のc軸回転ベクトルRcは、下記[式2]により計算された(x、y、z)であってよい。
【0063】
【0064】
前記[式2]において、[X、Y、Z]は、(0、0、1)であり、ψ、θ、φは、オイラーマップデータから得られた各結晶粒のオイラー角(Euler angle)である。
【0065】
前記のように求められた結晶格子のc軸回転ベクトルRcとオイラーマップデータに含まれた各結晶粒の位置ベクトル情報を用いて、結晶粒配向度を求めることができる。具体的には、前記結晶粒配向度は、結晶格子のc軸回転ベクトルRcと結晶粒の位置単位ベクトルP’を外積した値に数値化され得る。
【0066】
この際、前記位置単位ベクトルP’は、当該結晶粒の位置ベクトルを、大きさが1になるように換算したことを意味する。例えば、当該結晶粒の位置ベクトルが(a、b、0)であれば、前記位置単位ベクトルは、
【数6】
となる。
【0067】
前記位置単位ベクトルP’と結晶格子のc軸回転ベクトルRcの外積値は、正極活物質粒子内で当該結晶粒c軸配向度を示す数値である。具体的には、前記位置単位ベクトルP’と結晶格子のc軸回転ベクトルRcの外積値が1の場合には、当該結晶粒のc軸が正極活物質粒子の中心と当該結晶粒の重心とを通る直線に対して垂直に配置されたことを意味し、前記外積値が0の場合には、当該結晶粒のc軸が前記直線に対して水平に配置されたことを意味する。
【0068】
正極活物質において、リチウムイオンは、c軸と垂直した方向に沿って移動するときの移動度が、c軸方向に移動するときよりも10倍以上速い。よって、c軸に垂直した方向に沿ってリチウム移動経路(Lithium path)が形成されるようになる。また、前記リチウム移動経路が正極活物質粒子の中心と当該結晶粒の重心とを通る直線に平行に形成される際に、リチウム移動距離が最小化されるので、リチウム伝導度が向上する。よって、前記位置単位ベクトルP’と結晶格子のc軸回転ベクトルRcの外積値が1に近いほど、当該結晶粒のc軸配向性に優れていると判断することができる。
【0069】
一方、前記のように得られた各結晶粒のc軸配向度を総合すると、正極活物質粒子の断面における全結晶粒のc軸配向度を得ることができる。
図5には、各結晶粒のc軸配向度を総合して得られた正極活物質の結晶粒c軸配向性マップ(map)が示されている。
図5において、赤色に近いほどc軸配向性に優れ、青色に近いほどc軸配向性が低下することを意味する。前記のようなc軸配向性マップを用いると、正極活物質粒子の断面において、c軸配向性の条件を満たす結晶粒の割合を求めることができる。
【0070】
本発明者の研究によれば、正極活物質粒子の断面の全結晶粒のうち、[式1]で表される結晶粒長軸配向度DoAが0.5~1であり、結晶粒c軸配向度が0.5未満の結晶粒(以下、結晶粒Cという)の割合が25%~70%、好ましくは25%~60%、より好ましくは30%~65%、さらに好ましくは30%~45%であってよい。結晶粒Cの割合が前記範囲を満たすと、優れた容量特性及びガス発生低減特性を具現することができると示された。結晶粒Cの割合が25%未満の場合には、容量特性及びガス発生特性の改善効果が得られず、70%を超える場合には、寿命特性が低下するだけでなく、ガス発生特性の改善効果が得られない。
【0071】
一方、本発明に係る正極活物質は、前記結晶粒C以外に、結晶粒c軸配向度が0.5~1であり、結晶粒長軸配向度DoAが0.5~1の結晶粒(以下、結晶粒Aという)、結晶粒c軸配向度が0.5~1であり、結晶粒の長軸DoAが0.5未満の結晶粒(以下、結晶粒Bという)、及び結晶粒c軸配向度が0.5未満であり、結晶粒長軸配向度DoAが0.5未満の結晶粒(以下、結晶粒Dという)がさらに含まれてよく、前記正極活物質粒子の断面の全結晶粒のうち、結晶粒Aの割合は20%以上25%未満、前記結晶粒Bの割合は5%~30%、前記結晶粒Cの割合は25%~70%、前記結晶粒Dの割合は5%~30%であってよい。
【0072】
この際、前記正極活物質粒子の断面の全結晶粒のうち、結晶粒Aと結晶粒Cの合計割合は50%~90%、具体的には50%~80%、より具体的には55%~65%であることが好ましい。結晶粒A及び結晶粒Cの割合が前記範囲を満たすと、容量特性及び寿命特性、特に寿命特性の側面で、より優れた効果を得ることができる。
【0073】
一方、正極活物質の結晶粒の割合は、正極活物質の製造時に使用される前駆体の組成、前駆体の結晶粒の形状及び配向性、ドーピング元素の種類及び/又は焼成温度などによって変わるので、前駆体の種類、ドーピング元素、焼成温度などを適宜調節することにより、本発明の結晶粒の割合を満たす正極活物質を製造することができる。
【0074】
一方、本発明に係る正極活物質は、2以上の遷移金属を含むリチウム複合遷移金属酸化物であってよく、例えば、下記[化学式1]で表されるリチウム複合遷移金属酸化物であってよい。
【0075】
[化学式1]
Lix[NiaCobM1
cM2
d]O2-yAy
前記[化学式1]において、前記M1は、Mn及びAlからなる群から選択される1種以上の元素であってよい。
【0076】
前記M2は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、Ta、Y、In、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、及びMoからなる群から選択される1種以上の元素であってよい。
【0077】
また、前記Aは、F、Cl、Br、I、At及びSからなる群から選択される1種以上の元素であってよい。
【0078】
前記xは、遷移金属の総モル数に対するLiのモル数の比を示すものであって、0.98≦x≦1.20、好ましくは0.99≦x≦1.10、より好ましくは1.0≦x≦1.10であってよい。
【0079】
前記aは、遷移金属の総モル数に対するNiのモル数の比を示すものであって、0<a<1、好ましくは0.3≦a<1、より好ましくは0.6≦a<1、さらに好ましくは0.8≦a<1であってよい。
【0080】
前記bは、遷移金属の総モル数に対するCoのモル数の比を示すものであって、0<b<1、好ましくは0<b<0.7、より好ましくは0<b<0.4、さらに好ましくは0<b<0.2であってよい。
【0081】
前記cは、遷移金属の総モル数に対するM1のモル数の比を示すものであって、0<c<1、好ましくは0<c<0.7、より好ましくは0<c<0.4、さらに好ましくは0<c<0.2であってよい。
【0082】
前記dは、遷移金属の総モル数に対するM2のモル数の比を示すものであって、0≦d≦0.2、好ましくは0≦d≦0.15、より好ましくは0≦d≦0.10であってよい。
【0083】
前記yは、酸素サイトで置換されたA元素のモル数の比を示すものであって、0≦y≦0.2、好ましくは0≦y≦0.15、より好ましくは0≦y≦0.10であってよい。
【0084】
一方、前記正極活物質は、結晶粒の大きさが70nm~200nm、好ましくは100nm~180nm、より好ましくは100nm~150nmであってよい。結晶粒の大きさが非常に大きくなると、岩塩(rock salt)相が形成されることから、抵抗特性及び寿命特性が低下することがあり、結晶粒の大きさが非常に小さくなると、電解液との接触面積が増加することから、すぐに劣化することがある。
【0085】
また、前記正極活物質は、マイクロストレインが0.04%~0.25%、好ましくは0.06~0.15%であってよい。マイクロストレインが非常に大きくなると、寿命特性が低下し、非常に小さくなると、リチウムイオン移動性が低下する。
【0086】
また、前記正極活物質は、1次粒子の平均粒径が0.05μm~8μm、好ましくは0.1μm~2μmであってよい。1次粒子の平均粒径が非常に大きくなると、岩塩(rocksalt)相が形成されることから、抵抗特性及び寿命特性が低下することがあり、1次粒子の平均粒径が非常に小さくなると、電解液との接触面積が増加することから、すぐに劣化することがある。
【0087】
また、前記正極活物質は、2次粒子の平均粒径が2μm~25μm、好ましくは4μm~18μmであってよい。2次粒子の平均粒径が前記範囲を満たすと、圧延工程で正極活物質粒子が壊れるか、スラリー製造時に工程性が低下することを防止することができる。
【0088】
正極
次に、本発明に係る正極について説明する。
【0089】
前記正極は、本発明に係る正極活物質を含む。具体的には、前記正極は、正極集電体、前記正極集電体上に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、本発明に係る正極活物質を含む。
【0090】
この際、前記正極活物質は、前述したとおりであるので、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0091】
前記正極集電体は、伝導性の高い金属を含んでよく、正極活物質層が容易に接着されるが、電池の電圧範囲で反応性のないものであれば、特に制限されるものではない。前記正極集電体は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されてよい。また、前記正極集電体は、通常3~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0092】
前記正極活物質層は、前記正極活物質とともに、必要に応じて選択的に導電材、バインダー、及び分散剤を含んでよい。
【0093】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99重量%、より具体的には85~98.5重量%の含量で含まれてよい。前記含量の範囲で含まれると、優れた容量特性を示すことができる。
【0094】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく、電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末又は金属繊維;カーボンナノチューブなどの導電性チューブ;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;又はポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物が使用されてよい。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれてよい。
【0095】
前記バインダーは、正極活物質粒子同士の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethymethaxrylate)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)、及びこれらの水素をLi、Na、又はCaで置換された高分子、又はこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物が使用されてよい。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれてよい。
【0096】
前記分散剤は、水系分散剤又はN-メチル-2-ピロリドンなどの有機分散剤を含んでよい。
【0097】
前記正極は、前記正極活物質を用いること以外は、通常の正極の製造方法により製造され得る。具体的には、前記正極活物質及び必要に応じて選択的に、バインダー、導電材、及び分散剤を溶媒中に溶解又は分散させて製造した正極スラリー組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することにより製造することができる。
【0098】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide、DMF)、アセトン(acetone)、又は水などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物が使用されてよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材、バインダー、及び分散剤を溶解又は分散させ、その後、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0099】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極スラリー組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0100】
二次電池
また、本発明は、前記正極を含む電気化学素子を製造することができる。前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシターなどであってよく、より具体的には、リチウム二次電池であってよい。
【0101】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極、前記正極と対向して位置する負極、及び前記正極と負極との間に介在される分離膜及び電解質を含んでよい。前記正極は、前述したとおりであるので、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0102】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、分離膜の電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を封止する封止部材を選択的にさらに含んでよい。
【0103】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0104】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こすことなく、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されてよい。また、前記負極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0105】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的に、バインダー及び導電材を含む。
【0106】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物が使用されてよい。具体例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金、又はAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープ及び脱ドープ可能な金属酸化物;又はSi-C複合体又はSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が使用されてよい。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されてもよい。また、炭素材料としては、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などが全て使用されてよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)などが代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、麟片状、球状又は繊維状の天然黒鉛、又は人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)、及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0107】
前記負極活物質は、負極活物質層の総重量に対して80重量%~99重量%で含まれてよい。
【0108】
前記バインダーは、導電材、活物質及び集電体の間の結合に助力する成分であって、通常、負極活物質層の総重量に対して0.1重量%~10重量%で含まれてよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などが挙げられる。
【0109】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分であって、負極活物質層の総重量に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下で添加されてよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こすことなく、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されてよい。
【0110】
前記負極活物質層は、一例として、負極集電体上に負極活物質及び選択的に、バインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥するか、又は前記負極スラリー組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0111】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば、特別な制限なしに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して、低抵抗でありかつ電解液含浸能に優れているものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム又はこれらの2層以上の積層構造体が使用されてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性又は機械的強度の確保のために、セラミック成分又は高分子物質が含まれているコーティングされた分離膜が使用されてもよく、選択的に単層又は多層構造で使用されてよい。
【0112】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0113】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含んでよい。
【0114】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をするものであれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)又はテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状又は環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環又はエーテル結合を含んでよい)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;又はスルホラン(sulfolane)類などが使用されてよい。この中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優れて示され得る。
【0115】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的には、前記リチウム塩のアニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、CF3CF2SO3
-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(SF5)3C-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3CO2
-、CH3CO2
-、SCN-及び(CF3CF2SO2)2N-からなる群から選択される少なくとも一つ以上であってよく、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、又はLiB(C2O4)2などが使用されてよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0116】
前記のように、本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた容量特性及びガス発生低減特性を示し、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器や電気自動車などの様々な分野で有用に使用され得る。
【0117】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例は、様々な異なる形態に変形されてよく、本発明の範囲が以下の実施例により限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0118】
実施例
製造例1-正極活物質前駆体Aの製造
NiSO4、CoSO4、及びMnSO4をニッケル:コバルト:マンガンのモル比が92:4:4になるようにする量で、蒸留水中で混合して2.4M濃度の遷移金属水溶液を準備した。
【0119】
次に、前記反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスを反応器にパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気に組成した。その後、7.96MのNaOHを投入して、反応器内のpHが11.9を維持するようにした。
【0120】
その後、前記遷移金属水溶液を前記反応器内に850mL/hrの速度で投入し、NaOH水溶液を510mL/hr、NH4OH水溶液を160mL/hrの速度でそれぞれ投入し、反応温度50℃、pH11.4、撹拌速度600rpmの条件で40時間反応を進行させ、平均粒径(D50)が13μmであり、Ni0.92Co0.04Mn0.04(OH)2で表される正極活物質前駆体Aを製造した。
【0121】
製造例2-正極活物質前駆体Bの製造
共沈反応を12時間進行させたこと以外は、製造例1と同様の方法により平均粒径(D50)が4μmであり、Ni0.92Co0.04Mn0.04(OH)2で表される正極活物質前駆体Bを製造した。
【0122】
実施例1
前記製造例1により製造された正極活物質前駆体AとLiOHを、Li:遷移金属のモル比が1.05:1になるように混合し、ここにNb2O3を、Nb:遷移金属のモル比が0.00125:1になるように追加混合した後、760℃で13時間焼成して、Li[Ni0.92Co0.04Mn0.04]0.99875Nb0.00125O2を製造した。
【0123】
その後、前記Li[Ni0.92Co0.04Mn0.04]0.99875Nb0.00125O2を水で水洗し、乾燥させた後、ホウ酸500ppmを混合し、300℃で熱処理してBコーティングされた正極活物質1を製造した。
【0124】
実施例2
Nb2O3を、Nb:遷移金属のモル比が0.0025:1になるように追加混合したこと以外は、実施例1と同様の方法により正極活物質2を製造した。
【0125】
比較例1
前記製造例1により製造された正極活物質前駆体AとLiOHを、Li:遷移金属のモル比が1.05:1になるように混合し、760℃で13時間焼成して、Li[Ni0.92Co0.04Mn0.04]O2を製造した。
【0126】
その後、前記Li[Ni0.92Co0.04Mn0.04]O2を水で水洗し、乾燥させた後、ホウ酸500ppmを混合し、300℃で熱処理してBコーティングされた正極活物質3を製造した。
【0127】
比較例2
前記製造例1により製造された正極活物質前駆体AとLiOHを、Li:遷移金属のモル比が1.05:1になるように混合し、ここにTa2O3を、Ta:遷移金属のモル比が0.0025:1になるように追加混合した後、760℃で13時間焼成して、Li[Ni0.92Co0.04Mn0.04]0.9975Ta0.0025O2を製造した。
【0128】
その後、前記Li[Ni0.92Co0.04Mn0.04]0.9975Ta0.0025O2を水で水洗し、乾燥させた後、ホウ酸500ppmを混合し、300℃で熱処理してBコーティングされた正極活物質4を製造した。
【0129】
比較例3
前記製造例2により製造された正極活物質前駆体BとLiOHを、Li:遷移金属のモル比が1.05:1になるように混合し、ここにNb2O3を、Nb:遷移金属のモル比が0.0025:1になるように追加混合した後、770℃で13時間焼成して、Li[Ni0.92Co0.04Mn0.04]0.9975Nb0.0025O2を製造した。
【0130】
その後、前記Li[Ni0.92Co0.04Mn0.04]0.9975Nb0.0025O2を水で水洗し、乾燥させた後、ホウ酸500ppmを混合し、300℃で熱処理してBコーティングされた正極活物質5を製造した。
【0131】
実験例1:正極活物質の分析
イオンミリングシステム(Hitachi社、IM4000)を用いて、実施例1~2及び比較例1~3により製造された正極活物質1~5のそれぞれを断面切断した後、前述した走査イオン顕微鏡分析及び電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析を実施し、結晶粒A、B、C、Dの割合を測定した。
【0132】
また、Malvern panalytical社のEmpyrean設備を用いて、前記実施例1~2及び比較例1~3により製造された正極活物質1~5のXRDデータを測定し、Malvern panalytical社のHighscoreプログラムに内蔵したリートベルト法により、それぞれの正極活物質の結晶粒の大きさ(Crystal size)及びマイクロストレイン(micro strain)を測定した。
【0133】
測定結果は、下記表1に示された。
【0134】
【0135】
実験例2:電池特性の評価
前記実施例1~2及び比較例1~3でそれぞれ製造した正極活物質と、導電材(デンカブラック)及びバインダー(PVDF)を97.5:1:1.5の重量比でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒中に混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の片面に塗布し、乾燥した後、圧延して、正極を製造した。
【0136】
負極としては、リチウムメタル電極を使用した。
【0137】
前記正極と負極との間に分離膜を介在して電極組立体を製造した後、電池ケースの内部に位置させた後、電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。この際、電解液としては、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジエチルカーボネートを3:3:4の体積比で混合した有機溶媒に、1MのLiPF6を溶解させた電解液を使用した。
【0138】
その後、前記二次電池を、それぞれ25℃で0.1Cの定電流で4.2Vまで充電を実施した。その後、0.1Cの定電流で3Vまで放電を実施して、初期充電容量及び初期放電容量を測定し、これを下記表2に示した。
【0139】
また、前記実施例1~2及び比較例1~3でそれぞれ製造した正極活物質と、導電材(デンカブラック)及びバインダー(PVDF)を97.5:1:1.5の重量比でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の片面に塗布し、乾燥した後、圧延して、正極を製造した。
【0140】
次に、負極活物質(天然黒鉛)、導電材(カーボンブラック)、及びバインダー(PVDF)を95.6:1:3.4の重量比でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒中で混合して負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを銅集電体の片面に塗布し、乾燥した後、圧延して、負極を製造した。
【0141】
前記正極と負極との間に分離膜を介在して電極組立体を製造した後、電池ケースの内部に位置させた後、電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。この際、電解液としては、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネートを3:7の体積比で混合した有機溶媒に、1MのLiPF6を溶解させた電解液を使用した。
【0142】
その後、前記二次電池を、それぞれ25℃で0.1Cの定電流で4.2Vまで充電を実施した。その後、0.1Cの定電流で3Vまで放電を実施(1サイクル)し、その後、45℃で0.33Cの定電流で3V~4.2V区間で200サイクル充放電を行った。この際、200サイクルでの放電容量を1サイクルでの放電容量で割った後、100を掛けて容量維持率(%)を計算し、これを下記表2に示した。
【0143】
前記1サイクル充放電された二次電池と200サイクル充放電された二次電池とを、それぞれ真空チャンバーで穿孔して電池内部のガスを排出させて真空チャンバー内部に捕集し、チャンバー内部のガスをガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化型検出器(GC-FID)を用いて、ガス発生量を定量分析した。その後、200サイクル充放電された二次電池でのガス発生量を、1サイクル充放電された二次電池でのガス発生量で割った後、100を掛けてガス増加量(%)を計算し、これを下記表2に示した。
【0144】
【0145】
前記[表2]に示されたように、結晶粒Cの割合が、本発明の範囲を満たす実施例1~2の正極活物質を使用した二次電池の容量特性及びガス発生低減特性が、比較例1~3の正極活物質を使用した二次電池に比べて優れていることを確認することができる。そして、実施例1~2の正極活物質を使用した二次電池の寿命特性が、比較例1~3の正極活物質を使用した二次電池と同等水準以上であることを確認することができる。
【国際調査報告】