(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(54)【発明の名称】新規のポリウレタン及び医薬剤形でのその使用
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20231013BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20231013BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20231013BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231013BHJP
A61K 9/14 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
C08G18/08 019
C08G18/75 010
C08G18/32 018
A61K47/34
A61K9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521048
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2021077330
(87)【国際公開番号】W WO2022073950
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブランドル,フェルディナント,パウル
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,テオ
(72)【発明者】
【氏名】コルター,カール
(72)【発明者】
【氏名】グート,フェリシタス
(72)【発明者】
【氏名】ヘバール,カール
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス,フレデリク
【テーマコード(参考)】
4C076
4J034
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076BB01
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4J034QA03
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4J034RA02
(57)【要約】
本発明は、ジイソシアネート、カルボン酸官能化ジオール、及び無酸ジオールに基づく新規のポリウレタン、このポリウレタンの、胃腸吸収を改善するための医薬賦形剤としての使用、それぞれの医薬剤形、並びにこのポリウレタンを製造する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構成成分A~D:
2つのイソシアネート基間の分子構造中に少なくとも1つの環を有する、45~70重量%の少なくとも1種のジイソシアネートA;
i)2つの第1級ヒドロキシ基、ii)1つの第2級又は第3級カルボン酸基、iii)100~250g/molの分子量を有しており、iv)イソシアネートに対して反応性を示す追加の基を有していない、15~40重量%の少なくとも1種の構成成分B;
i)少なくとも2つのヒドロキシ基、ii)60~250g/molの分子量を有し、iii)酸性基を有しておらず、iv)第1級又は第2級アミン又はチオール基も有していない、5~30重量%の少なくとも1種の構成成分C;
並びに任意選択的に、
i)イソシアネート基に対して反応性を示す1つ又は2つの基を含み、ii)これらの反応基の内の最大1つはヒドロキシ基である、0~5重量%の1種又は複数種の構成成分D
を含むイソシアネートフリーポリウレタンであって、組み込まれている構成成分A~Dの総量は、合計で100重量%となる、イソシアネートフリーポリウレタン。
【請求項2】
前記ジイソシアネートAが、イソホロンジイソシアネートである、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項3】
前記構成成分Bが、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸である、請求項1又は2に記載のポリウレタン。
【請求項4】
前記構成成分Bが、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸である、請求項1又は2に記載のポリウレタン。
【請求項5】
前記構成成分Cが、1,4-シクロヘキサンジメタノールである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項6】
前記構成成分Cが、ネオペンチルグリコールである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項7】
前記構成成分Cが、イソソルビドである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項8】
前記構成成分Cが、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項9】
前記構成成分Cが、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオールである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項10】
前記構成成分Cが、イソソルビドである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項11】
前記ポリウレタンの重量平均分子量が、2,000~100,000g/molの範囲である、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項12】
ジオールBの前記カルボン酸基の少なくとも25%が、中和されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項13】
下記構成成分A~C:
50~65重量%の、Aとしてのイソホロンジイソシアネート;
2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸からなる群から選択される、20~35重量%の少なくとも1種の構成成分B;
並びに
1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、イソソルビド、及びネオペンチルグリコールからなる群から選択される、5~30重量%の少なくとも1種の構成成分C
を含むイソシアネートフリーポリウレタンであって、組み込まれている構成成分A~Cの総量は、合計で100重量%となる、イソシアネートフリーポリウレタン。
【請求項14】
ジオールBのカルボン酸基の少なくとも25%が、中和されている、請求項13に記載のポリウレタン。
【請求項15】
ジイソシアネートAのイソシアネート基と、B及びCの第1級及び第2級アルコール基の合計との比が、1.1:1~0.9:1である、請求項13又は14に記載のポリウレタン。
【請求項16】
前記ポリウレタンの重量平均分子量が、4,000~60,000g/molの範囲である、請求項13~15のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のポリウレタンと、標準条件での水への溶解度が0.1重量%未満である有効医薬成分とを含む医薬剤形であって、前記有効成分は、非晶質形態で存在している、医薬剤形。
【請求項18】
標準条件での水への溶解度が0.1重量%未満である有効成分のヒト又は動物の身体の水性環境中での再結晶を阻害するための医薬剤形中における再結晶阻害剤としての、請求項1~16のいずれか一項に記載のポリウレタンの使用であって、前記有効成分は、そのような医薬剤形中において非晶質形態で存在している、使用。
【請求項19】
土壌中での農業用有効成分の再結晶を阻害するための農業用剤形中における再結晶阻害剤としての、請求項1~16のいずれか一項に記載のポリウレタンの使用であって、前記有効成分は、標準条件での水への溶解度が0.1重量%未満であり、前記有効成分は、そのような農業用剤形中において非晶質形態で存在している、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジイソシアネート、カルボン酸官能化ジオール、及び少なくとも2つのヒドロキシ基を含む無酸構成成分に基づく新規のポリウレタン、このポリウレタンの、胃腸吸収を改善するための医薬賦形剤としての使用、それぞれの医薬剤形、並びにこのポリウレタンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
難水溶性薬物(BCSクラスII及びIV)の腸管吸収は、消化管内腔中で達成可能な最大濃度により制限されている。従って、製剤開発での様々アプローチは、消化管内における溶解速度の上昇及び薬物溶解性の改善を目的とする。薬物の溶液としての投与は、難水溶性薬物の腸管吸収を増強するための一般的なアプローチである。この目的のために、疎水性薬物は、共溶媒、界面活性剤、錯化剤(例えばシクロデキストリン)、及び/又は油の混合物を使用して製剤化されている。経口投与後に、この製剤は、溶液中に存在している薬物の総濃度を増加させるが、このアプローチは、必ずしもバイオアベイラビリティを改善しない。薬物の親油性に応じて、薬物分子の大部分は、コロイド種(例えば、乳化油、ミセル等)の混合物に可溶化している。この部分は、薬物の遊離分子種のみが腸管バリアを通過し得るので、吸収には利用不能である。さらに、消化管中での製剤の希釈及び分布により、可溶化能が低下する。結果として、準安定の過飽和状態が生じ、最終的には薬物が析出する。
【0003】
溶液での投与に加えて、難水溶性薬物の固形での送達を可能にする多くの製剤戦略が存在している。これらのアプローチは、消化管内で過飽和を誘発する高エネルギーの又は急速に溶解する薬物形態を(例えば、粉砕、共粉砕、溶媒蒸発、融解又は結晶操作により)生成することを目的とする。例えば、好適なポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリメタクリレート、セルロース誘導体等)、及び/又は界面活性剤と組み合わせて、難水溶性薬物を、(例えば、噴霧乾燥又は熱溶解押出しにより)固体分散体へと製造し得る。これは、ガラス化、特定の薬物-ポリマー相互作用、及び/又は移動度の低下により非晶質状態を安定化させるポリマーマトリックスに包埋されている非晶質薬物粒子を含む。この包埋されている薬物分子の放出は、ポリマーマトリックスの溶解速度に依存することが多い。消化管内での剤形の溶解後、溶液での薬物の濃度は、飽和溶解度を超えることになる。この過飽和状態は、熱力学的に不安定であり、この系は、薬物析出により平衡状態に戻ろうとする傾向がある。高濃度の恩恵を受けるためには、吸収が行なわれるのに十分な時間にわたり、消化管内腔中で過飽和状態を安定化させることが必要である。ポリマーは、核形成及び/又は結晶成長を妨げることにより、薬物析出を阻害し得る。溶液中でのこのタイプの安定化は、適用前の剤形中での非晶質状態の安定化とは異なることに留意することが重要である。
【0004】
国際公開第2014/159748号パンフレットでは、ポリアクリレートベースの結晶化阻害剤(好ましくは、メタクリル酸ブチル、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、及びメタクリル酸メチルの重量比1:2:1のコポリマー)の使用が言及されている。
【0005】
国際公開第2005/058383号パンフレットでは、アクリル酸アルキル(例えば、アクリル酸オクチル)、並びにアクリル酸及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに基づくコポリマーである、接着性を有する水溶性の生体適合性ポリマーを含む、頭部補修用の接着性インプラントが説明されている。
【0006】
国際公開第2014/182713号パンフレットは、少なくとも3種の異なるアクリレート単量体(例えば、アルキル(メタ)アクリレート、カルバルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びアルキルアセチルアクリレート)から製造された統計的コポリマー、並びにこのコポリマーの、薬物結晶化を阻害するための及び過飽和維持のための使用に関する。国際公開第2014/182710号パンフレットでは、糖部分でさらに置換された同様のコポリマーが言及されている。
【0007】
国際公開第2019/121051号パンフレットで説明されているアクリルターポリマーは、アクリル酸、疎水性メタクリレート、並びにN-ビニルラクタム、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、及びフェノキシエチルアクリレートからなる群から選択される第3のオレフィン単量体をベースとしており、水溶液中での薬物結晶化を阻害する。
【0008】
セルロース誘導体の中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)は、薬物析出を阻害するのに最も有効なポリマーであると考えらている[J.Brouwers,M.E.Brewster,P.Augustijns,Supersaturating drug delivery systems:The answer to solubility-limited oral bioavailability? Journal of Pharmaceutical Sciences,98(2008)2549-2572;D.B.Warren,H.Benameur,C.J.H. Porter,C.W.Pouton,Using polymeric precipitation inhibitors to improve the absorption of poorly water-soluble drugs:A mechanistic basis for utility,Journal of Drug Targeting,18(2010)704-731;S.Baghel,H.Cathcart,N.J.O’Reilly,Polymeric amorphous solid dispersions:A review of amorphization,crystallization,stabilization,solid-state characterization,and aqueous solubilization of biopharmaceutical classification system class II drugs,Journal of Pharmaceutical Sciences,105(2016)2527-2544]。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
難溶性に悩まされている薬物の数が増加している[A.M.Thayer,Finding Solutions,Chem.Eng.News 88(2010)13-18;P.D.Leeson,Molecular inflation,attrition and the rule of five,Advanced Drug Delivery Reviews 101(2016)22-33]。1種のポリマー製品が全ての薬物分子の有効な阻害剤ではないであろうということを考慮すると[G.A.Ilevbare,H.Liu,K.J.Edgar,L.S.Taylor,Maintaining Supersaturation in Aqueous Drug Solutions:Impact of Different Polymers on Induction Times,Crystal Growth & Design,13(2013)740-751]、多種多様な薬物構造はまた、過飽和溶液を安定化させるために使用され得る様々な異なるポリマーも必要とする。本発明が解決しようとする課題は、既知のビニル系、アクリル系、及びセルロース系の阻害剤とは構造的に異なり、且つ様々な薬物の過飽和溶液の安定化で高い有効性を有する結晶化阻害ポリマーを同定することであった。この課題は、ジイソシアネート、カルボン酸官能化ジオール、及びカルボン酸フリージオールをベースとするポリウレタンの発見により解決された。
【0010】
ポリウレタン薬物送達システムの使用が報告されている。このシステムでは、ポリウレタンは、不溶性マトリックスとして機能しており、このポリウレタンから、薬物は、ポリウレタンマトリックスの分解又は膨潤により経時的に放出される。そのようなシステムの例は、移植片、挿入物、及び薬物担体粒子である[C.Englert,J.C.Brendel,T.C.Majdanski,T.Yildirim,S.Schubert,M.Gottschaldt,N.Windhab,U.S.Schubert,Pharmapolymers in the 21st century:Synthetic polymers in drug delivery applications,Progress in Polymer Science 87(2018)107-164;J.Y.Cherng,T.Y.Hou,M.F.Shih,H.Talsma,W.E.Hennink,Polyurethane-based drug delivery systems,International Journal of Pharmaceutics 450(2013)145-162;B.Claeys,A.Vervaeck,X.K.D.Hillewaere,S.Possemiers,L.Hansen,T.De Beer,J.P.Remon,C.Vervaet,Thermoplastic polyurethanes for the manufacturing of highly dosed oral sustained release matrices via hot melt extrusion and injection molding,European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 90(2015)44-52;G.Verreck,I.Chun,J.Rosenblatt,J.Peeters,A.Van Dijck,J.Mensch,M.Noppe,M.E.Brewster,Incorporation of drugs in an amorphous state into electrospun nanofibers composed of a water-insoluble,nonbiodegradable polymer,Journal of Controlled Release 92(2003)349-360;M.R.Nabid,I.Omrani,Facile preparation of pH-responsive polyurethane nanocarrier for oral delivery,Materials Science and Engineering C 69(2016)532-537;B.S.Eftekhari,A.Karkhaneh,A.Alizadeh,Physically Targeted Intravenous Polyurethane Nanoparticles for Controlled Release of Atorvastatin Calcium,Iranian Biomedical Journal 21(2017)369-379;A.Y.Khosroushahi,H.Naderi-Manesh,H.Yeganeh,J.Barar,Y.Omidi,Novel water-soluble polyurethane nanomicelles for cancer chemotherapy, Journal of Nanobiotechnology 10(2012)]。これらの列挙された報告では、薬物放出後、溶解した薬物と、不溶性ポリウレタンとは、もはや相互作用していない。従って、これらの場合でのポリマーは、溶解した薬物の溶液挙動に影響を及ぼさない。結晶化に対して難溶性薬物の溶液を安定化させるための可溶性ポリウレタンの使用は、新規である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリウレタンは、下記構成成分A~D:2つのイソシアネート基間の分子構造中に少なくとも1つの環を有する、45~70重量%の少なくとも1種のジイソシアネートA;i)2つの第1級ヒドロキシ基、ii)1つの第2級又は第3級カルボン酸基、iii)100~250g/molの分子量を有しており、iv)イソシアネートに対して反応性を示す追加の基を有していない、15~40重量%の少なくとも1種の構成成分B;i)少なくとも2つのヒドロキシ基、ii)60~250g/molの分子量を有しており、iii)酸性基を有しておらず、iv)第1級又は第2級アミン又はチオール基も有していない、5~30重量%の少なくとも1種の構成成分C;並びに任意選択的に、i)イソシアネート基に対して反応性を示す1つ又は2つの基を含みii)これらの反応基の内の最大1つはヒドロキシ基である、0~5重量%の1種又は複数種の構成成分Dを含む。
【0012】
別の実施形態では、本発明のポリウレタンは、下記構成成分A~D:2つのイソシアネート基間の分子構造中に少なくとも1つの環を有する、45~70重量%の少なくとも1種のジイソシアネートA;i)2つの第1級ヒドロキシ基、ii)1つの第2級又は第3級カルボン酸基、iii)100~250g/molの分子量を有しており、iv)イソシアネートに対して反応性を示す追加の基を有していない、15~40重量%の少なくとも1種の構成成分B;i)少なくとも2つのヒドロキシ基、ii)60~250g/molの分子量を有しており、iii)酸性基を有しておらず、iv)第1級又は第2級アミン又はチオール基も有していない、5~30重量%の少なくとも1種の構成成分C;並びに任意選択的に、i)イソシアネート基に対して反応性を示す1つ又は2つの基を含み、ii)これらの反応基のうちの最大1つはヒドロキシ基である、0~5重量%の1種又は複数種の構成成分Dから本質的になる。
【0013】
さらなる実施形態では、本発明のポリウレタンは、下記構成成分A~D:2つのイソシアネート基間の分子構造中に少なくとも1つの環を有する、45~70重量%の少なくとも1種のジイソシアネートA;i)2つの第1級ヒドロキシ基、ii)1つの第2級又は第3級カルボン酸基、iii)100~250g/molの分子量を有しており、iv)イソシアネートに対して反応性を示す追加の基を有していない、15~40重量%の少なくとも1種の構成成分B;i)少なくとも2つのヒドロキシ基、ii)60~250g/molの分子量を有しており、iii)酸性基を有しておらず、iv)第1級又は第2級アミン又はチオール基も有していない、5~30重量%の少なくとも1種の構成成分C;並びに任意選択的に、i)イソシアネート基に対して反応性を示す1つ又は2つの基を含み、ii)これらの反応基のうちの最大1つはヒドロキシ基である、0~5重量%の1種又は複数種の構成成分Dからなる。組み込まれている構成成分A~Dの総量は、合計で100重量%となる。本発明のポリマーを、重付加プロセスにおいてA~Dから合成する。残存するイソシアネート基を、この重付加プロセス後に加水分解する。従って、本ポリマー生成物は、イソシアネート基を含まない。Bのカルボン酸基の少なくとも25%を、この重合の前、最中、又は後に、塩基により中和する。
【0014】
本発明の別の態様は、剤形からヒト又は動物の身体の水性環境中への放出後での有効成分のインビボでの再結晶を阻害するためのポリウレタンの使用と、このコポリマー及び有効成分を含むそれぞれの剤形とであり、この有効成分は、標準条件(23℃の温度、及び0.101325MPaの圧力)下での水への溶解度が0.1重量%未満である。好ましくは、この有効成分の標準条件下での水への溶解度は、0.05重量%未満であり、この有効成分は、そのような剤形中において非晶質状態で存在しているか、又は分子的に分散している。非晶質は、5重量%未満が結晶性であることを意味する。結晶の割合を、X線回折法により測定し得る。
【0015】
本発明に従って、溶解度とは、水、リン酸緩衝液、又は他の好適な生物学的に関連する系にかかわらず常に、標準条件(即ち、23℃の温度及び0.101325MPaの圧力)での溶解度のことである。
【0016】
本発明によれば、水に難溶性の有効成分とは、標準条件での水への溶解度が0.1重量%未満の有効成分のことである。
【0017】
本発明の全ての実施形態では、重量パーセントで示される単量体由来部分の量は、±1重量%の偏差を含むことを意味している。
【0018】
本ポリマーを、重付加プロセスにおいて従来の方法で調製し得る。この重合を、バルクで実行し得るか、又は非プロトン性有機溶媒中の溶液で実行し得る。有機溶媒の例として、下記が挙げられる:ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン;ニトリル、例えばアセトニトリル;アルキルエステル、例えば、酢酸エチル、及び酢酸ブチル、芳香族炭化水素、例えば、トルエン及びキシレン、エーテル、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン;非プロトン性極性溶媒、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシド。
【0019】
全ての構成成分を、最初の反応器チャージ(reactor charge)に入れ得る。また、構成成分の一部を最初に反応させ、残りの単量体を後の時点で添加することも可能である。構成成分を、反応器に一度に添加し得るか、又は長時間かけて反応器に供給し得る。反応時間は、数時間~数日の範囲であり得る。
【0020】
本重付加反応を、第3級アミン及び有機金属化合物等の好適な触媒の使用により促進し得る。第3級アミン触媒の例は、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、及びN-メチルモルホリンである。有機金属触媒の例は、ジブチル錫ジラウレート及びオクチル酸スズ(II)である。
【0021】
本重合を、20~180℃の温度で実行し得、好ましくは50~130℃の温度で実行し得る。本重合を、大気圧下、又は高圧下での密閉された反応器中の両方で実行し得る。この場合には、反応中に設定された圧力下で重合させ得るか、又はガスを注入するか若しくは真空にすることにより調整され得る圧力下で重合させ得る。
【0022】
カルボン酸基の中和により、ポリマーが水性環境中で溶解可能であることが保証される。溶解が起こると、ポリマーのカルボン酸基の中和の程度は、媒体のpHにより決定される。本発明のポリウレタンは、吸湿性が中程度にすぎないことが分かった。イソホロンジイソシアネート(構成成分A)60重量%、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(構成成分B)27重量%、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール(構成成分C)13重量%から合成されており、カルボン酸基の90%が水酸化ナトリウムで中和されているポリウレタンは、25℃、70%相対湿度での保存時に、12%の水分を吸着する。対照的に、N-ビニルピロリドン20重量%、t-ブチルメタクリレート55重量%、及びアクリル酸25重量%から合成され、同様にカルボン酸基の90%が水酸化ナトリウムで中和されているポリアクリレートは、同一条件下で26%の水分を吸着することが分かった。
【0023】
本発明によれば、ジイソシアネートAの好適な例は、下記である:トルエンジイソシアネート(2,4-若しくは2,6-トルエンジイソシアネート又はこれらの混合物)(TDI)、水素化TDI(H6TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネートメチレン(TODI)、ジフェニルジイソシアネート(4,4’-、2,4’-、若しくは2,2’-メチレンジフェニルジイソシアネート、又はこれらの混合物)(MDI)、キシリレンジイソシアネート(1,3-若しくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はこれらの混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-若しくは1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート又はこれらの混合物)(TMXDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4-、2,4’-、若しくは2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、トランス-トランス異性体、トランス-シス異性体、シス-シス異性体、又はこれらの混合物)(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、又はビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,2-、1,3-、又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)(H6XDI)。他の好適な化合物は、遊離イソシアネート基に加えて又は代わりに、イソシアネート基を遊離する官能基を有するか又はイソシアネート基と同様に反応する官能基を有する、列挙されているジイソシアネートの変形である。これらの例は、キャップされたイソシアネート基又はウレトジオン基を有する化合物である。キャップされたイソシアネート基は、ブロック剤との反応中に生成され、ブロックされたイソシアネート基を脱ブロック温度として既知の温度と少なくとも等しい温度まで加熱した場合には、イソシアネート基を遊離する。イソシアネート基をブロックする(キャップするか又は保護する)化合物の例は、カプロラクタム、イミダゾール、マロン酸エステル、ジアルキルアミン、又はオキシムである。キャップされたイソシアネートの場合には、本発明のポリマーの合成のためのジイソシアネートの45~70重量%は、キャップされたジイソシアネートから得ることができる遊離ジイソシアネートの量を指す。好ましいジイソシアネートは、TMXDI及びIPDIであり、IPDIが最も好ましい。列挙されているジイソシアネートを全て、単独で使用してもよいし、2種以上の組合せで使用してもよい。
【0024】
構成成分Bの例として、下記が挙げられる:N,N-ビスヒドロキシエチルアラニン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(DMPA)、2,2-ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)、又は2,2-ジ(ヒドロキシメチル)ペンタン酸。これらの化合物の内、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(DMPA)及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)が好ましく、DMBAが最も好ましい。列挙されているジオールBを、単独で使用してもよいし、2種以上の組合せで使用してもよい。カルボン酸を、重合後の工程で除去されてカルボン酸又は中和されたカルボン酸が回復され得る基で保護し得る。カルボン酸を、例えば、エステル化により保護し得る。
【0025】
本発明のポリウレタンのカルボン酸基の少なくとも25%は、塩基で中和されている(脱プロトン化されている)。このカルボン酸を、重合反応の前、最中、又は後に中和し得る。好適な中和剤は下記である:アルカリ金属塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、又は炭酸水素カリウム、アミン、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、又はメグルミン、塩基性アミノ酸、例えば、リシン及びアルギニン、並びにアンモニア。水酸化ナトリウムが好ましい。アミン塩基及びアンモニアの場合には、カルボン酸基を、イソシアネート基が変換された後に中和する。
【0026】
構成成分Cは、酸性基を含まない。酸は、ブレンステッド-ローリーによる酸の定義を指し、即ち、プロトンを供与し得る化合物を指す。例は、カルボン酸、スルホン酸、及びホスホン酸である。
【0027】
構成成分Cの例として、下記が挙げられる:1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フラン、5-ノルボルネン-2,2-ジメタノール、5-ノルボルネン-2-エクソ、3-エクソ-ジメタノール、5-ノルボルネン-2-エンド、3-エンド-ジメタノール、3,4-ビス(ヒドロキシメチル)フラン、1,3-シクロペンタンジメタノール、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、イソソルビド、フルクトース、キシロース、ソルビトール、マンニトール、ネオペンチルグリコール、並びに水素化ビスフェノールA。好ましいのは、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フラン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、イソソルビド、並びに1,3-及び1,4-シクロヘキサンジメタノールである。最も好ましいのは、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールである。
【0028】
構成成分A~Cに加えて、本発明に従って使用されるポリマーは、最大0~5重量%の、1種又は複数種の構成成分Dを組み込み得る。構成成分Dは、ヒドロキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基、並びにチオール基から選択される、イソシアネート基に対して反応性を示す1つ又は2つの基を含む。これらの基に応じて、得られたポリマーは、ウレタン基、尿素基、及び/又はチオカルバメート基を有する。構成成分Dは、これらの基の内の最大1つがヒドロキシ基であるという点で、構成成分B及びCとは異なる。構成成分Dを、例えば、鎖停止剤、鎖延長剤として使用し得るか、又はポリウレタンに尿素基を導入するために使用し得る。構成成分Dの例は、ジアミン、例えば、1,2-、1,3-、及び1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ネオペンタンジアミン、1,3-及び1,4-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン、2,5-ビス(アミノメチル)フラン、アミノアルコール、例えば、2-アミノエタノール、2-(N-メチルアミノ)エタノール、3-アミノプロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、単官能アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、並びに1つの第1級アミノ基又は第2級アミノ基を有するアミン、例えば、イソプロピルアミン、及びジイソプロピルアミン、並びにアミノ酸、例えば、グリシン及びアラニンである。これらの化合物の分子量は、好ましくは、60~300g/molである。
【0029】
ポリ(メチルメタクリレート)標準物質を使用してゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された本発明のポリマーの重量平均分子量(Mw)は、2,000~100,000g/molの範囲であり、好ましくは3,000~70,000g/molの範囲であり、最も好ましくは4,000~60,000g/molの範囲である。
【0030】
本発明の一実施形態では、ポリウレタンは、下記構成成分A~C:50~65重量%の、Aとしてのイソホロンジイソシアネート;2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸からなる群から選択される、20~35重量%の少なくとも1種の構成成分B;並びに1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、イソソルビド、及びネオペンチルグリコールからなる群から選択される、5~30重量%の少なくとも1種の構成成分Cのみを含み、組み込まれる構成成分A~Cの総量は、合計で100重量%となる。
【0031】
イソシアネート基に対して反応性を示す基は、好ましくは、ヒドロキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基、並びにチオール基の中から選択されるものである。これらの基に応じて、得られたポリマーは、ウレタン基、尿素基、及び/又はチオカルバメート基を有する。
【0032】
重付加反応後、反応混合物に、残存するイソシアネート基の量に対して大過剰の水を添加して、残存するイソシアネート基を加水分解する。本発明のポリマーは、イソシアネートを含まない。この点で、本発明のポリマーは、イソシアネート末端基を有するいわゆるポリウレタンプレポリマーとは異なる。これらのポリマーを、イソシアネートに対して反応性を示す基よりも有意に過剰なイソシアネートを使用して調製する。或いは、過剰なアルコール基を使用して、ヒドロキシ末端基を有するプレポリマーを得ることも可能である。プレポリマーは、その後の反応で最終生成物に変換されることを目的に作られている。(H-W.Engels,H-G.Pirkl,R.Albers,R.W.Albach,J.Krause,A.Hoffmann,H.Casselmann,J.Dormish,Polyurethanes:Versatile Materials and Sustainable Problem Solvers for Today‘s Challenges,Angewandte Chemie International Edition,52(2013)9422-9441)。国際公開第2019035382号パンフレットでは、感熱記録材料として使用される中空樹脂粒子が説明されている。カルボキシル基含有活性水素基を含む構成成分、ポリイソシアネート構成成分、及び別の活性水素基を含む構成成分から調製されているポリマーが説明されている。例として、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸から調製されたポリマーが説明されている。この例における単量体の総量に対する2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸の最高量は、6.0重量%である。このポリマーは、本明細書で説明されている本発明のポリマーとは異なり、第一に、カルボン酸ジオールの量がより少なく(最大6.0重量%)、第二に、国際公開第2019035382号パンフレットのポリマーは、過剰なイソシアネート(イソシアネート/ヒドロキシ比は、2:1である)を使用して調製されているポリマーであり、そのため、イソシアネート末端基を有するポリマーが形成されているという事実である。中国特許第103539914号明細書では、コーティング用途の耐熱性ポリウレタン樹脂が説明されている。ポリマー溶液は、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸及び2,2ビス(ヒドロキシメチル)酪酸5~20重量%、ポリイソシアネート20~40重量%、耐熱性ジオール5~20重量%、並びに溶媒30~60重量%から調製されている。中国特許第103539914号明細書の例では、使用された様々な単量体の量が説明されていない(範囲は記載されている)が、合成された生成物は、両方の鎖末端でヒドロキシ基を有する直鎖状プレポリマーであることが述べられている。このプレポリマーは、その後の反応で変換される。ヒドロキシ末端基を有するプレポリマーは、イソシアネート基よりも過剰なヒドロキシ基を使用することにより得られる。この点で、中国特許第103539914号明細書のプレポリマーは、本明細書で説明されている本発明のポリマーとは異なる。
【0033】
本発明によれば、有効成分は、医薬的な、栄養学的な、又は農芸化学的な活性物の群から選択され得る。
【0034】
本明細書で言及され得る例として、下記が挙げられる:降圧剤、ビタミン、細胞分裂阻害薬、特にタキソール、麻酔薬、神経遮断薬、抗うつ薬、抗生物質、抗真菌薬、殺真菌薬、化学療法剤、泌尿器薬、血小板凝集阻害剤、スルホンアミド、鎮痙薬、ホルモン、免疫グロブリン、血清、甲状腺治療薬、向精神剤、パーキンソン薬及び他の抗運動過多薬、目薬、神経障害製剤、カルシウム代謝調整剤、筋弛緩剤、麻薬、抗高脂血症剤、肝臓治療薬、冠動脈薬、強心薬、免疫療法剤、調節ペプチド及びその阻害剤、睡眠薬、鎮静薬、婦人科薬、痛風治療剤、線維素溶解薬、酵素製剤及び輸送タンパク質、酵素阻害剤、催吐薬、減量薬、灌流促進剤、利尿薬、診断薬、コルチコイド、コリン作動薬、胆汁治療薬、抗喘息薬、気管支拡張薬、ベータ受容体遮断薬、カルシウム拮抗薬、ACE阻害剤、動脈硬化症治療薬、消炎薬、抗凝固薬、抗低血圧薬、抗低血糖薬、降圧剤、抗線溶薬、抗てんかん薬、制吐薬、解毒剤、抗糖尿病剤、抗不整脈薬、抗貧血薬、抗アレルギー薬、駆虫薬、鎮痛剤、中枢興奮薬、アルドステロン拮抗薬、又は抗ウイルス有効成分、又はHIV感染及びAIDS症候群の処置のための有効成分。
【0035】
標準条件(23℃の温度及び0.101325MPaの圧力)下での水への溶解度が0.1重量%未満である有効成分と共に製剤を調製するために本発明のコポリマーを使用することが優先される。好ましくは、有効成分の標準条件下での水への溶解度は、0.05重量%未満である。
【0036】
本製剤は、有効成分と本発明のコポリマーとの両方が好適な溶媒又は溶媒混合物に溶解している実際の溶液、又は有効成分が非晶質形態で固体ポリマーマトリックスに包埋されている固体分散体のいずれかであり得る。固体分散体は、固体ポリマーマトリックス中での1種又は複数種の有効成分の分散体である[W.L.Chiou,S.Riegelman,Pharmaceutical applications of solid dispersion systems,Journal of Pharmaceutical Sciences,60(1971)1281-1302]。固体分散体を、有効成分とポリマーとの物理的混合物を融解するまで加熱し、続いて冷却して固化させることにより調製し得る(融解法)。或いは、固体分散体を、有効成分とポリマーとの物理的混合物を一般的な溶媒に溶解させ、続いてこの溶媒を蒸発させることにより調製し得る(溶媒法)。固体分散体は、結晶マトリックス中に分子的に分散している有効成分を含み得る。或いは、固体分散体は、非晶質担体からなり得、有効成分は、この担体中に分子的に分散され得るか、又は非晶質沈殿物を形成し得る。いずれの場合でも、有効成分は、非晶質形態である必要がある。「非晶質」は、有効成分の5重量%未満が結晶であることを意味する。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、本発明に係る固体分散体を、溶媒法により調製し得る。有効成分及び本ポリマーを有機溶媒又は溶媒混合物に溶解させ、次いで、この溶媒を乾燥させる。この溶解はまた、高温(30~150℃)及び圧力下でも起こり得る。好適な有機溶媒は、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルアセトアミド、アセトン、及び/若しくはジオキサン、又はこれらの混合物である。これらの溶媒又は溶媒混合物は、最大20重量%の水をさらに含み得る。
【0038】
原則として、噴霧乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、ベルト乾燥、ローラー乾燥、キャリアガス乾燥、蒸発等のあらゆるタイプの乾燥が可能である。
【0039】
本発明の別の実施形態によれば、固体分散体を、融解プロセスにより調製する。有効成分を、本ポリマーと混合する。50~180℃の温度まで加熱することにより、固体分散体が生成される。ここで、本ポリマーのガラス転移温度又は有効成分の融点を超える温度が有利である。例えば、水、有機溶媒、通常の有機軟化剤等の軟化補助剤を添加することにより、それに応じて処理温度を下げることが可能である。特に有利なのは、後に非常に容易に再度蒸発除去され得る補助剤であり、即ち、沸点が180℃未満であり、好ましくは150℃未満である補助剤である。
【0040】
好ましい実施形態によれば、このタイプの調製を、スクリュー押出機で実行する。ここで、どのプロセスパラメータを個別に調整しなければならないかは、当業者の従来の専門知識の範囲内の簡単な実験により、この当業者によって決定され得る。
【0041】
好ましい実施形態によれば、融解中に軟化剤を添加する。好ましい軟化剤は、下記である:クエン酸エステル、例えば、クエン酸トリエチル又はクエン酸アセチルトリブチル、グリコール誘導体、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、又はポロクサマー;ひまし油誘導体及び鉱油誘導体;セバシン酸エステル、例えばセバシン酸ジブチル、トリアセチン、脂肪エステル、例えばモノステアリン酸グリセロール、脂肪アルコール、例えばステアリルアルコール、脂肪酸、例えばステアリン酸、エトキシ化油、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化脂肪アルコール、又はビタミンE TPGS(トコフェロールポリエチレングリコールスクシネート)。軟化剤を、ポリマーを基準として0.1~40重量%の量で使用し得、好ましくは1~20重量%の量で使用し得る。
【0042】
難溶性の有効成分は、固体分散体中では非晶質状態である。結晶性有効成分の非存在を、X線回折により決定し得る。固体分散体のいわゆる「X線非晶質」状態は、有効成分の結晶割合が5重量%未満であることを意味する。
【0043】
有効成分の非晶質状態をまた、DSCサーモグラム(示差走査熱量測定)を用いても調べ得る。本発明に係る固体分散体は、有効成分の融解ピークを示さずにガラス転移温度のみを示し、このガラス転移温度はまた、本発明に係る固体分散体で使用される有効成分の種類にも依存する。このガラス転移温度を、20K/分の加熱温度で測定する。
【0044】
本発明に係る剤形の調製の過程において、任意選択的に、通常の医薬補助剤を同時に処理し得る。これは、吸着剤、結合剤、崩壊剤、色素、充填剤、香料又は甘味料、滑剤、潤滑剤、防腐剤、軟化剤、可溶化剤、溶媒又は共溶媒、安定剤(例えば抗酸化剤)、界面活性剤、又は湿潤剤のクラスから選択される。
【0045】
本新規のポリウレタンは、有効成分が、本新規ポリマーのポリマーマトリックス中の有効成分の非晶質固体分散体の形態で存在していたか又は好適な溶媒ビヒクル系中での有効成分及び本発明のポリマーの液体溶液の形態で存在していた剤形からの有効成分の放出後での、消化管の水性媒体中における有効医薬成分の再結晶化を阻害する。
【実施例】
【0046】
本発明のポリウレタンIP1の合成手順:
機械式撹拌機、凝縮器、窒素スイープ(nitrogen sweep)、温度計、及び出発物質の添加用の入口を備えた2リットルガラス反応器に、ブタノン(MEK)400グラム、構成成分Bとしての2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸61.7グラム(417mmol)、及び構成成分Cとしての1,4-シクロヘキサンジメタノール30.0グラム(208mmol)を投入した。得られた混合物を、窒素雰囲気下で、100rpmにて撹拌して80℃まで加熱した。構成成分Aとして使用されるイソホロンジイソシアネート(138.9グラム、625mmol)を、滴下漏斗により20分以内に添加した。この滴下漏斗をMEK50グラムですすぎ、これも反応混合物に添加した。この反応混合物を、窒素雰囲気下で80℃にて、24時間にわたり撹拌した。この後、水100gを添加し、得られた混合物を1時間にわたり70℃で撹拌して、残存するイソシアネート基を加水分解した。周囲温度までの冷却後、生成物混合物中のカルボン酸基を、25%水酸化ナトリウム水溶液60グラム(380mmol)の添加により中和した。揮発性物質を除去し、その後に、ポリマー生成物を、0.02MPaで75℃にて、真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【0047】
【0048】
この手順の変形を使用することにより、他のポリマーを合成した。表2では、重合レシピの差違が説明されている。括弧内の数字は、使用量(グラム)を指す。IP3の合成の場合には、MEK及び水の半分の量のみを使用した。供給前投入において及び滴下漏斗をすすぐために、それぞれ140グラム及び20グラムのMEKを使用し、残存するイソシアネートを加水分解するために水35グラムを使用して、CP2を調製した。他の場合には、溶媒及び水の使用量は、IP1の合成に関して示した量と同一であった。同様に、反応時間、残存するイソシアネートの加水分解中の温度、及び乾燥手順も、上記で説明した通りであった。全ての場合において、Bのカルボン酸基の90%を、重合、及び残存するイソシアネート基の加水分解の後に、塩基により中和した。IP6の場合には、ポリマーを、水酸化ナトリウム水溶液の代わりにトリエタノールアミンで中和した。
【0049】
【0050】
GPC法:
ポリマーの分子量を、下記を使用して、35℃でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定した:溶出液としての、トリフルオロ酢酸のカリウム塩0.05重量%を含むヘキサフルオロ-2-プロパノール、狭分子量分布ポリ(メチルメタクリレート)標準物質(PSS Polymer Standard Solutions GmbHから市販、M=800~M=2,200,000の範囲の分子量)、及び示差屈折率(DRI)検出器。
【0051】
噴霧乾燥による非晶質固体分散体の調製:
ダナゾール-ポリマー製剤(10重量%薬物負荷):
固体分散体は、ポリマー及びダナゾールで構成されていた。この製剤を調製するために、ダナゾール1.5g及びポリマー13.5gを、メタノール285gに溶解させた(固形分5重量%)。噴霧乾燥を、下記の条件下で、0.7mm二流体ノズルを備えたBuechi Mini Spray Dryer B-290により実施した。
窒素流速 35m3/h
入口温度 85~105℃
出口温度 50~70℃
噴霧圧力 0.7MPa
液体流速 300g/h
生成物を、サイクロンを使用して集めた。噴霧乾燥製剤の薬物含有量を、286nmでのUV吸光度を測定することにより決定し;固体状態の性質を、粉末X線回折(PXRD)を使用して分析した。
薬物含有量(UVスペクトル)9.4~10.8重量%
固体状態の性質(PXRD)X線非晶質
【0052】
他の薬物の非晶質固体分散体を同一条件下で調製したが、この場合には、25重量%薬物負荷を利用した。非晶質固体分散体での薬物含有量を、表3で列挙されている波長での吸光度を測定することによりUV分光法で決定し、いずれの場合でも、24.6~27.5重量%であることが分かった。
【0053】
【0054】
絶食状態模擬腸液(FaSSIF)の調製:
1LのFaSSIF溶液を調製するために、水酸化ナトリウム0.42gをメスフラスコに入れ、水約900mLに溶解させた。次いで、リン酸二水素ナトリウム3.95g、塩化ナトリウム6.19g、及びFaSSIF/FeSSIF/FaSSGF粉末(Biorelevant.com Ltd.,London,United Kingdom)2.24gを添加した。この溶液を、水で1Lまで希釈し、1モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を使用してpHを6.8に調整し、2時間にわたり静置した。
【0055】
溶解試験:
インビトロでの溶解試験を行なって、薬物放出を定量し、且つ過飽和の維持を測定した。この目的のために、300ml FaSSIFを、ミニガラス容器を備えたERWEKA溶解試験機の溶解容器に充填した(撹拌速度 約75rpm)。37℃の温度に達した後、規定量の噴霧乾燥製剤(0.14mg/mlという薬物濃度に相当する)を添加した。5分、15分、30分、60分、90分、120分、180分、240分、300分、及び360分の後に、3mLのサンプルを採取した。全てのサンプルを、0.45μm PVDFシリンジフィルタに通してろ過し、メタノール又はメタノール/水で希釈した(薬物濃度に応じて1:4又は1:10)。溶液中の薬物の濃度を、メタノール中の純粋な薬物の校正曲線を使用して、UV分光法により決定した。ポリマーの性能を評価するために、濃度時間曲線下面積(AUC)を、下記のように算出した。
【数1】
C
t=時間tでの濃度(mg/mL)、t=時間(分)
【0056】
AUC値を使用して、最大可能API放出のパーセンテージ値として有効医薬成分(API)放出を算出した。最大放出は、6時間(360分)の溶解実験の全期間にわたりAPIの使用量の完全な溶解を意味する。
【数2】
【0057】
表4及び5に概要をまとめた結果から、本発明のポリマーIPは有効な結晶化阻害剤であることが示されている。
【0058】
【0059】
【国際調査報告】