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特表2023-544271表面弾性波デバイス(SAW)用の反射構造体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】表面弾性波デバイス(SAW)用の反射構造体
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518269
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2021076840
(87)【国際公開番号】W WO2022069573
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】2010072
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】バランドラス, シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】クルジョン, エミリー
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール, フローラン
(72)【発明者】
【氏名】ラローシュ, ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】クレレ, アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA06
5J097AA21
5J097AA30
5J097DD14
5J097FF03
5J097GG03
5J097GG04
(57)【要約】
本発明は、音波伝搬基板(114、114’)上に又は音波伝搬基板(114、114’)内に設けられたすだれ状トランスデューサ構造体(102、252)及び少なくとも1つの音波反射構造体(104、106、254、256)を備える表面弾性波(SAW)デバイスであって、すだれ状トランスデューサ構造体(102)が、第1の材料を備え、少なくとも1つの音波反射構造体(104、106)が、第1の材料とは異なる第2の材料を備え、及び/又は、音波反射構造体(104、106)及びすだれ状トランスデューサ構造体(102)は、異なる幾何学的パラメータを有することを特徴とするSAWデバイスに関する。本発明はさらに、前述のSAWデバイスを備えるセンサ、及び、少なくとも1つの音波反射構造体を備えるSAWデバイスを製造するための方法に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波伝搬基板(114、114’)上に又は音波伝搬基板(114、114’)内に設けられたすだれ状トランスデューサ構造体(102、252)及び少なくとも1つの音波反射構造体(104、106、254、256)を備える表面弾性波(SAW)デバイスであって、
前記すだれ状トランスデューサ構造体(102)が、第1の材料を備え、前記少なくとも1つの音波反射構造体(104、106)が、前記第1の材料とは異なる第2の材料を備え、及び/又は、
前記音波反射構造体(104、106)及び前記すだれ状トランスデューサ構造体(102)は、異なる幾何学的パラメータを有する、
ことを特徴とするSAWデバイス。
【請求項2】
前記第2の材料の音響インピーダンスρCref及び前記音波伝搬基板(114、114’)の音響インピーダンスρCsubは、
【数1】

が50%未満、特に25%未満であるように整合されている、請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項3】
前記第1の材料及び前記第2の材料が金属であり、特に、前記第2の材料が、白金Pt、タングステン(W)、モリブデン(Mo)又はタンタル(Ta)のうちの1つである、請求項1又は2に記載のSAWデバイス。
【請求項4】
前記音波反射構造体(104、106)が、互いに電気的に分離された複数の金属ストリップを備える、請求項3に記載のSAWデバイス。
【請求項5】
前記第2の材料及びその結晶方位並びに前記音波伝搬基板(114、114’)の材料及びその結晶方位が、音波反射への電気的及び機械的寄与が位相外れになるようなものである、請求項4に記載のSAWデバイス。
【請求項6】
前記第2の材料が誘電材料である、請求項1又は2に記載のSAWデバイス。
【請求項7】
パッシベーション層(220)が、前記すだれ状トランスデューサ構造体(102)の上にのみ存在する、請求項6に記載のSAWデバイス。
【請求項8】
前記パッシベーション層(220)及び前記少なくとも1つの反射構造体(104、106)が、同じ誘電材料から作製されている、請求項7に記載のSAWデバイス。
【請求項9】
前記音波伝搬基板(114、114’)が、圧電材料として窒化アルミニウム(AlN)、及び誘電材料として酸化アルミニウム(Al)又はタンタル酸リチウム(LiTaO)又は窒化アルミニウム(AlN)又はランガサイト(LGS)を備える、請求項6~8のいずれか一項に記載のSAWデバイス。
【請求項10】
前記音波伝搬基板(114、114’)が、圧電材料としてランガサイト(LGS)、及び誘電材料として酸化アルミニウム(Al)又は窒化アルミニウム(AlN)又はニオブ酸リチウム(LiNbO)又はタンタル酸リチウム(LiTaO)を備える、請求項6~8のいずれか一項に記載のSAWデバイス。
【請求項11】
前記音波伝搬基板(114、114’)が、圧電材料として窒化ガリウム(GaN)、及び誘電材料として酸化タンタル(Ta)又は酸化アルミニウム(Al)又は窒化ガリウム(GaN)又は窒化アルミニウム(AlN)又はニオブ酸リチウム(LiNbO)又はタンタル酸リチウム(LiTaO)を備える、請求項6~8のいずれか一項に記載のSAWデバイス。
【請求項12】
前記音波伝搬基板が、ベース基板、特に適切な軸線に沿った伝搬を呈するシリコンベース基板又はサファイアベース基板又は石英ベース基板、特に(YXlt)/36°/90°に対応するいわゆるSTWカットの上に圧電層を備える複合基板(114’)である、請求項1~11のいずれか一項に記載のSAWデバイス。
【請求項13】
前記圧電層がタンタル酸リチウム(LiTaO)であり、前記誘電材料がタンタル酸リチウム(LiTaO)又は酸化タンタル(Ta)又は酸化アルミニウム(Al)又はランガサイト(LGS)又は窒化ガリウム(GaN)である、請求項6と組み合わせた請求項12に記載のSAWデバイス。
【請求項14】
前記複合基板(114’)がピエゾエレクトリック・オン・インシュレータ(POI)基板である、請求項12又は13に記載のSAWデバイス。
【請求項15】
前記圧電層が、Si(100)のベース基板に設けられたトラップリッチの多結晶、非晶質、又は多孔質材料、特に多結晶シリコン、非晶質シリコン、又は多孔質シリコンにおけるSiOにおけるLiTaO(YXl)/42°層である、請求項14に記載のSAWデバイス。
【請求項16】
前記圧電層が600nmの厚さを有し、前記SiO層が500nmの厚さを有し、前記トラップリッチ多結晶シリコン層が1μmの厚さを有する、請求項15に記載のSAWデバイス。
【請求項17】
前記圧電層がAlN又はGaNである、請求項14に記載のSAWデバイス。
【請求項18】
前記圧電層がニオブ酸リチウム(LiNbO)であり、前記誘電材料がニオブ酸リチウム(LiNbO)又は酸化タンタル(Ta)又は酸化アルミニウム(Al)又はランガサイト(LGS)である、請求項6と組み合わせた請求項12に記載のSAWデバイス。
【請求項19】
前記圧電層が窒化ガリウム(GaN)であり、前記誘電材料が酸化アルミニウム(Al)又は窒化アルミニウム(AlN)又はニオブ酸リチウム(LiNbO)又はランガサイト(LGS)又は窒化ガリウム(GaN)である、請求項6と組み合わせた請求項12に記載のSAWデバイス。
【請求項20】
前記圧電層が窒化アルミニウム(AlN)であり、前記誘電材料が酸化タンタル(Ta)又は酸化アルミニウム(Al)又は窒化ガリウム(GaN)又はランガサイト(LGS)又は窒化アルミニウム(AlN)である、請求項6と組み合わせた請求項12に記載のSAWデバイス。
【請求項21】
前記幾何学的パラメータは、前記音波反射構造体(104、106)及び前記すだれ状トランスデューサ構造体(102)の幅又は高さのうちの1つである、請求項1~20のいずれか一項に記載のSAWデバイス。
【請求項22】
前記すだれ状トランスデューサ構造体(252)の各側に1つずつ、第1の音波反射構造体(254)及び第2の音波反射構造体(256)を備え、前記第1の音波反射構造体及び第2の音波反射構造体(254、256)が2つの異なる材料を備え、及び/又は、前記第1の音波反射構造体及び第2の音波反射構造体(254、256)が異なるピッチ(p3、p4)を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載のSAWデバイス。
【請求項23】
第2のすだれ状トランスデューサ構造体(312、316)を備え、前記すだれ状トランスデューサ構造体及び前記第2のすだれ状トランスデューサ構造体が、互いに電気的に接続されており、追加の反射構造体(310)により互いに分離されている、請求項1~22のいずれか一項に記載のSAWデバイス。
【請求項24】
前記追加の反射構造体(310)が、前記第2の材料とは異なる第3の材料を備える、請求項23に記載のSAWデバイス。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載のSAWデバイスを備える、物理的パラメータを検知するためのセンサデバイス。
【請求項26】
音波伝搬基板上に又は音波伝搬基板内に設けられた音波反射構造体及びすだれ状トランスデューサ構造体を有する、特に請求項1~25のいずれか一項に記載のSAWデバイスを製造するための方法であって、
誘電体層を前記音波伝搬基板の上に形成するステップa)と、前記誘電体層をパターニングすることにより、前記少なくとも1つの音波反射構造体を形成するステップb)と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記ステップa)が、前記誘電体層を前記すだれ状トランスデューサ構造体の上に形成することにより、パッシベーション層を前記トランスデューサ構造体の上に形成することを含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの反射構造体を備える表面弾性波(SAW)デバイス、及びそのようなデバイスを備えるセンサに関する。本発明は、そのようなSAWデバイスを製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
表面弾性波デバイス、特に共振器デバイスは、フィルタ及びセンサなどのますます多くの実用例において用いられている。圧電基板に設けられたすだれ状トランスデューサ(IDT)により、表面弾性波が形成される。表面弾性波を反射し空洞を形成するために、短絡した金属フィンガの大型アレイにより形成されるブラッグ反射器が、IDTの各側に設けられる。1ポートデバイスにおいて、IDTは、入力電気信号を受信して表面弾性波を生成すると共に、反射された音波を測定して出力信号を提供する。2ポートデバイスにおいては、第2のIDTが空洞に挿入され、反射波を検知するために用いられる。SAW温度センサでは、温度の変化が、出力IDTにより検出される共振周波数の変化を生じさせる。
【0003】
SAWデバイスの設計は、複数のパラメータが満たされるものでなければならない。それらには、十分な電気機械結合、十分に高い品質因子、及びブラッグミラーの高い反射率が含まれる。現行の設計においては、ますます小型化するデバイスへの統合を可能とするコンパクト設計と同時に十分に高い反射率を提供することが、特に困難である。これは、特にセンサアプリケーションについて当てはまる。
【0004】
別の対象分野は、SAW温度センサの高温アプリケーションである。この文脈において、高温は、500℃を超える温度にあたる。従来技術の温度SAWセンサは、高温に対するその電気的応答に影響する材料特性の変化をこうむる。PT、TA、W、Ir、Pd又はAuなどの1000℃超の溶融温度を呈する高原子数の金属の音波反射構造体は、より高い温度において劣化し、及び/又は、より高い温度でその物理的特性の大幅な変動、特に反射率の損失を示す。高温において高い反射率値を示すモリブデンなどの他の金属は、その高い融点(Moの場合は2500℃超)に起因して、産業製造プロセスにおいて取り扱うことが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、よりコンパクトな設計を提供し、及び/又は高温アプリケーションに好適である表面弾性波デバイスの代替的設計を提供することにより、上記の難点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、音波伝搬基板上に又は音波伝搬基板内に設けられたすだれ状トランスデューサ構造体及び少なくとも1つの音波反射構造体を備える表面弾性波(SAW)デバイスであって、すだれ状トランスデューサ構造体が、第1の材料を備え、少なくとも1つの音波反射構造体が、第1の材料とは異なる第2の材料を備え、及び/又は、音波反射構造体及びすだれ状トランスデューサ構造体は、異なる幾何学的パラメータを有することを特徴とするSAWデバイスにより実現される。設計者がミラー及びIDTの材料及び/又は幾何学的パラメータを独立して選定することを可能とすることにより、ミラー及びIDTに同じ金属並びに同じジオメトリを用いる従来技術よりも高い自由度が提供されるため、電気機械結合、品質因子、反射率又は温度安定性などのSAWデバイスの重要なパラメータをより良好に最適化することができる。同時に、反射率が最適化される場合、ミラーにおいて必要なストリップの数を低減することができ、それにより、SAWデバイスがよりコンパクトになる。
【0007】
変形例によれば、第2の材料の音響インピーダンスρCref及び音波伝搬基板の音響インピーダンスρCsubは、
【数1】

が50%未満、特に25%未満であるように整合されてもよい。音響インピーダンスが整合するように材料を選定することにより、反射率の増大を観測することができる。
【0008】
本発明の変形例によれば、第1の材料及び第2の材料は金属であり、特に、第2の材料は、白金(Pt)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)又はタンタル(Ta)のうちの1つである。金属を用いることにより製造プロセスが簡略化し、特にリフトオフの製造プロセスステップを用いることができ、これは、特に蒸着法を用いる場合に十分に制御することができる。代替例によれば、イリジウム(Ir)又はジルコニウム(Zr)が第2の材料として用いられてもよい。
【0009】
本発明の変形例によれば、音波反射構造体は、互いに電気的に分離された複数の金属ストリップを備えてもよい。さらに別の変形例によれば、第2の材料及びその結晶方位並びに音波伝搬基板の材料及びその結晶方位は、音波反射への電気的及び機械的寄与が位相外れになるようなものである。よって、例えばアルミニウム(Al)ストリップを用いたLiNbO(YXl)/128°カットにおけるレイリー波の場合のように、電気的及び機械的な反射効果が同位相でない結晶方位を用いる場合、開回路条件が特に好ましい。その場合、機械的及び電気的な反射寄与の間の破壊的結合効果を防止することができる。
【0010】
本発明の変形例によれば、第2の材料は誘電材料である。驚くべきことに、音波反射構造体に誘電材料を用いることで、高温アプリケーションにおけるその使用を可能とする、特に500℃を超える高温における反射率値が提供される。温度に伴う反射率の変動も、高温アプリケーションにおける許容可能な感度を有するセンサを提供することを可能とするのに十分に低い。電気的反射効果がなく、したがって破壊的結合のリスクがないため、機械的反射効果による利点が得られる。この機械的効果の利点を得るためには、波が障害物に入ることが可能でなくてはならない。よって、上記で説明したようなインピーダンス整合により、所望の反射を補助することができる。
【0011】
本発明の変形例によれば、表面弾性波デバイスは、SAWデバイスのすだれ状トランスデューサ構造体の上にのみ設けられたパッシベーション層をさらに備えてもよい。パッシベーション層は、電極を保護し、よって、特に500℃超の温度について、IDT電極の金属完全性を向上させる。
【0012】
本発明の変形例によれば、パッシベーション層及び少なくとも1つの反射構造体は、同じ誘電材料から作製されてもよい。したがって、少なくとも1つの反射構造体及びパッシベーション層の両方が、同じ製造ステップ中に設けられてもよい。よって、IDT及び音波反射構造体に異なる材料が用いられる場合であっても、製造プロセスを簡単に保つことができる。
【0013】
変形例によれば、音波伝搬基板は、圧電材料として窒化アルミニウム(AlN)、及び誘電材料として酸化アルミニウム(Al)又はタンタル酸リチウム(LiTaO)又は窒化アルミニウム(AlN)又はランガサイト(LGS)を備えてもよい。別の変形例によれば、音波伝搬基板は、圧電材料としてランガサイト(LGS)、及び誘電材料として酸化アルミニウム(Al)又は窒化アルミニウム(AlN)又はニオブ酸リチウム(LiNbO)又はタンタル酸リチウム(LiTaO)を備えてもよい。変形例によれば、音波伝搬基板は、圧電材料として窒化ガリウム(GaN)、及び誘電材料として酸化タンタル(Ta)又は酸化アルミニウム(Al)又は窒化ガリウム(GaN)又は窒化アルミニウム(AlN)又はニオブ酸リチウム(LiNbO)又はタンタル酸リチウム(LiTaO)を備えてもよい。それらの材料については、高い反射率及び高い温度安定性を観測することができる。
【0014】
本発明の変形例によれば、音波伝搬基板は、ベース基板、特に適切な軸線に沿った伝搬を呈するシリコンベース基板又はサファイアベース基板又はさらに石英基板、特にYXlt)/36°/90°に対応するいわゆるSTWカットの上に圧電層を備える複合基板であってもよい。複合基板は、SAWデバイスの性能を向上させることができ、設計の柔軟性をもたらす。複合基板を用いることにより、特に、圧電層により誘導されるせん断波又は縦波などの、レイリー波以外の音波を用いることが可能となる。
【0015】
本発明の変形例によれば、圧電層はタンタル酸リチウム(LiTaO)であってもよく、誘電材料はタンタル酸リチウム(LiTaO)又は酸化タンタル(Ta)又は酸化アルミニウム(Al)又はランガサイト(LGS)又は窒化ガリウム(GaN)であってもよい。別の変形例によれば、圧電層はニオブ酸リチウム(LiNbO)であってもよく、誘電材料はニオブ酸リチウム(LiNbO)又は酸化タンタル(Ta)又は酸化アルミニウム(Al)又はランガサイト(LGS)であってもよい。また別の変形例によれば、圧電層は窒化ガリウム(GaN)であってもよく、誘電材料は酸化アルミニウム(Al)、又は窒化アルミニウム(AlN)、又はニオブ酸リチウム(LiNbO)、又はランガサイト(LGS)である。それらの材料については、高い反射率及び高い温度安定性を観測することができる。
【0016】
好適な変形例によれば、圧電基板は、特にSi(100)のベース基板に設けられたいわゆるトラップリッチポリシリコン層におけるSiOにおけるLiTaO(YXl)/42°層を有する、ピエゾエレクトリック・オン・インシュレータ(POI)基板であってもよい。このタイプの基板は通常、厚さ600nmの圧電層、500nmのSiO層、及び1μmのトラップリッチポリシリコン層を有する。このPOI基板は、せん断波に特によく適しており、縦波は、LiTaO(YXlt)/42°/90°を最上層として用いる場合にアクセス可能となる。トラップリッチ層は、ベース基板の分離性能を向上させることができ、例えば多結晶シリコン、非晶質シリコン、又は多孔質シリコンなどの多結晶、非晶質、又は多孔質材料のうちの少なくとも1つにより形成されてもよい。「トラップリッチ」という用語においては、導電層なしで、しかし導電層を形成して、電荷を吸収することが可能な層が理解される。
【0017】
変形例によれば、POI基板の圧電層は、AlN又はGaNである。これらの材料も、音波を提供する。
【0018】
変形例によれば、圧電層はニオブ酸リチウム(LiNbO)であってもよく、誘電材料はニオブ酸リチウム(LiNbO)又は酸化タンタル(Ta)又は酸化アルミニウム(Al)又はランガサイト(LGS)であってもよい。変形例によれば、圧電層は窒化ガリウム(GaN)であってもよく、誘電材料は酸化アルミニウム(Al)又は窒化アルミニウム(AlN)又はニオブ酸リチウム(LiNbO)又はランガサイト(LGS)又は窒化ガリウム(GaN)である。変形例によれば、圧電層は窒化アルミニウム(AlN)であってもよく、誘電材料は酸化タンタル(Ta)又は酸化アルミニウム(Al)又は窒化ガリウム(GaN)又はランガサイト(LGS)又は窒化アルミニウム(AlN)である。それらの材料については、高い反射率値が観測される。
【0019】
変形例によれば、幾何学的パラメータは、音波反射構造体及びすだれ状トランスデューサ構造体の幅又は高さのうちの1つであってもよい。それらのパラメータは、標準的な層堆積及びパターニングの製造ステップにおいて容易に変化させることができる。
【0020】
本発明の変形例によれば、SAWデバイスは、すだれ状トランスデューサ構造体の各側に1つずつ、第1の音波反射構造体及び第2の音波反射構造体を備えてもよく、第1の音波反射構造体及び第2の音波反射構造体は2つの異なる材料を備え、及び/又は、第1の音波反射構造体及び第2の音波反射構造体は異なるピッチを有する。2つのミラーは挙動が異なるため、示差センサを簡単な手段により形成することができる。
【0021】
変形例によれば、SAWデバイスは、互いに電気的に接続され、追加の反射構造体により互いに分離された2つのIDTを備えてもよい。そのような設計は、追加の反射構造体が2つの別個の共振空洞への分離を向上させるため、示差測定において用いることができる。2つの接続されたIDTの間に配置された追加の反射構造体は、両方の空洞において共振器として機能するのに必要な反射率を提供する。よって、IDTが音波源及び反射器の両方として用いられる従来技術の示差SAWデバイスと比較して、反射率をIDTの電気機械結合から切り離すことができ、それにより、デバイスの仕様を満たすように両方を互いに独立して設計することができる。2つのミラーに2つの異なるピッチが用いられる場合、対応するピッチを有する2つの追加の反射構造体が、2つのIDTの間に設けられてもよい。
【0022】
変形例によれば、追加の反射構造体は、第2の材料とは異なる第3の材料を備えてもよい。よって、2つのIDTの間の音波反射構造体について、高温アプリケーションにおける反射率及び安定性に関する同じ利点を実現することができる。よって、本発明によれば、追加の反射構造体、又はIDTが配置される音波反射構造体のうちの少なくとも1つが、誘電材料から作製される。
【0023】
本発明の変形例によれば、少なくとも1つの反射構造体は、300未満のストリップを備えてもよい。よって、ブラッグ反射器において金属電極と比較して向上した反射率を有する誘電材料を用いることで、金属反射構造体と比較してよりコンパクトな反射構造体を実現することができる。よって、SAWデバイスの全体サイズを低減することができる。ストリップの数は通常、アプリケーションに依存する。フィルタについては、ミラーが15~40のストリップから構成されてもよく、一方で電極反射率がより小さい場合が多い共振センサについては、より多くのストリップが必要であるが、300未満で十分である。
【0024】
本発明の目的はまた、前述のSAWデバイスを備える、物理的パラメータを検知するためのセンサデバイスにより実現される。誘電材料を用いることで、SAWセンサデバイスを、例えば500℃超の高温アプリケーションにおいて用いることができる。物理的パラメータは、温度、圧力、歪み等であってもよい。
【0025】
本発明の目的はまた、音波伝搬基板上に又は音波伝搬基板内に少なくとも1つの音波反射構造体及びすだれ状トランスデューサ構造体を備える、特に上述のSAWデバイスを製造するための方法であって、誘電体層を音波伝搬基板上及び/又は音波伝搬基板内に形成するステップa)と、誘電体層をパターニングすることにより、少なくとも1つの音波反射構造体を形成するステップb)とを含むことを特徴とする方法により実現される。向上した反射率特性及び温度安定性を有する本発明に係るSAWデバイスの製造プロセスは、標準的なSAWデバイスの製造プロセスに適合可能である。
【0026】
本発明の変形例によれば、ステップa)は、誘電体層をSAWデバイスのすだれ状トランスデューサ構造体の上に形成することにより、パッシベーション層をトランスデューサ構造体の上に形成することを含む。よって、同じ堆積ステップを用いて、IDTデバイスのパッシベーション層を実現して、IDTデバイスの金属要素及び音波反射構造体を同時に保護することができる。よって、IDT及び音波反射構造体に2つの異なる材料が用いられる場合であっても、パッシベーション層及び音波反射構造体を同時に実現することができるため、追加の製造作業が限定される。
【0027】
参照符号が本発明の特徴を識別する添付の図面と併せて、以下の説明を参照することにより、本発明が理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1a】本発明の第1の実施形態に係るSAWデバイスの側面図を示す。
図1b】本発明の第1の実施形態の変形例に係るSAWデバイスの側面図を示す。
図1c】音響インピーダンス値の表を提示する。
図1d】算出された反射率値の表を提示する。
図2】本発明の第2の実施形態に係るSAWデバイスの側面図を示す。
図3a】本発明の第3の実施形態に係るSAWデバイスの上面図を示す。
図3b】本発明の第4の実施形態に係るSAWデバイスの上面図を示す。
図4a】従来技術の例に係るPt及びTaについての位相速度及び反射率のシミュレートされた分散特性を示す。
図4b】従来技術の例に係るPt及びTaについての位相速度及び反射率のシミュレートされた分散特性を示す。
図5a】本発明の第1の実施形態に係るAlN及びGaNについての位相速度及び反射率のシミュレートされた分散特性を示す。
図5b】本発明の第1の実施形態に係るSi及びAlについての位相速度及び反射率のシミュレートされた分散特性を示す。
図5c】本発明の第1の実施形態に係るSiO及びTaについての位相速度及び反射率のシミュレートされた分散特性を示す。
図6a】本発明の第1の実施形態のLGS(YXlt)/48.5°/26.7°におけるレイリー波についての、反射格子障害物材料としてのSiの比a/p(金属ストリップの幅aを格子周期pで割ったもの)及びh/λ(%)(電極の高さhを格子周期pの2倍にも等しい音波波長λで割ったもの)に対する速度(m/s)との変動の計算の結果を示す。
図6b】本発明の第1の実施形態のLGS(YXlt)/48.5°/26.7°におけるレイリー波についての、反射格子障害物材料としてのSiの比a/p(金属ストリップの幅aを格子周期pで割ったもの)及びh/λ(%)(電極の高さhを格子周期pの2倍にも等しい音波波長λで割ったもの)に対する反射係数(%)の変動の計算の結果を示す。
図7a】本発明の第1の実施形態のLGS(YXlt)/48.5°/26.7°におけるレイリー波についての、反射格子障害物材料としてのAlNの比a/p及びh/λ(%)に対する速度(m/s)の変動の計算の結果を示す。
図7b】本発明の第1の実施形態のLGS(YXlt)/48.5°/26.7°におけるレイリー波についての、反射格子障害物材料としてのAlNの比a/p及びh/λ(%)に対する反射係数(%)の変動の計算の結果を示す。
図8a】本発明の第1の実施形態のLGS(YXlt)/48.5°/26.7°におけるレイリー波についての、反射格子障害物材料としてのAlの比a/p及びh/λ(%)に対する速度(m/s)の変動の計算の結果を示す。
図8b】本発明の第1の実施形態のLGS(YXlt)/48.5°/26.7°におけるレイリー波についての、反射格子障害物材料としてのAlの比a/p及びh/λ(%)に対する反射係数(%)の変動の計算の結果を示す。
図9a】本発明の第1の実施形態のLGS(YXlt)/48.5°/26.7°におけるレイリー波についての、反射格子障害物材料としてのSiOの比a/p及びh/λ(%)に対する速度(m/s)の変動の計算の結果を示す。
図9b】本発明の第1の実施形態のLGS(YXlt)/48.5°/26.7°におけるレイリー波についての、反射格子障害物材料としてのSiOの比a/p及びh/λ(%)に対する反射係数(%)の変動の計算の結果を示す。
図10a】従来技術に係る例のCカットサファイアウエハにおけるAlN(YXl)/90°層を備える複合基板におけるMo及びPt電極の速度及び反射率のシミュレートされた分散特性を示す。
図10b】本発明の第1の実施形態に係るCカットサファイアウエハにおけるAlN(YXl)/90°層を備える複合基板におけるSi及びAlについてのシミュレートされた分散特性を示す。
図11a】本発明の第1の実施形態のCカットサファイアウエハにおけるAlN(YXl)/90°層についてのAl系電極についての比a/p及びh/λ(%)に対する速度(m/s)の変動の計算の結果を示す。
図11b】本発明の第1の実施形態のCカットサファイアウエハにおけるAlN(YXl)/90°層についてのAl系電極についての比a/p及びh/λ(%)に対する反射係数(%)の変動の計算の結果を示す。
図12a】本発明の第1の実施形態のCカットサファイアウエハにおけるGaN(YXl)/90°層についてのAl系電極についての比a/p及びh/λ(%)に対する速度(m/s)の変動の計算の結果を示す。
図12b】本発明の第1の実施形態のCカットサファイアウエハにおけるGaN(YXl)/90°層についてのAl系電極についての比a/p及びh/λ(%)に対する反射係数(%)の変動の計算の結果を示す。
図13】本発明の第5の実施形態に係る表面弾性波SAWデバイスを製造するための方法のステップの模式図を示す。
図14】本発明の第6の実施形態に係る表面弾性波SAWデバイスを製造するための方法のステップの模式図を示す。
図15】本発明の第7の実施形態に係る表面弾性波SAWデバイスを製造するための方法のステップの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1aは、本発明に係る表面弾性波(SAW)デバイス100を示す。本実施形態におけるSAWデバイス100は、2つの音波反射構造体104、106の間に設けられた1つのすだれ状トランスデューサ構造体(IDT)102を備えるシングルポート共振器である。本実施形態において、トランスデューサ構造体102は、反射構造体104、106に対して距離dを空けて対称に配置される。トランスデューサ構造体102及びそれに隣り合う音波反射構造体104、106は、音響空洞を形成し、IDT102と音波反射構造体104及び106との間の自由空間116、118は、それぞれ寸法L1及びL2を有する。本実施形態において、トランスデューサ構造体102は対称に配置され、よってL1=L2であるが、変形例によれば、L1はL2と異なっていてもよい。
【0030】
すだれ状トランスデューサ構造体102及び音波反射構造体104、106は、音波伝搬基板114に形成される。
【0031】
音波伝搬基板114は、バルク圧電基板、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、石英(SiO)、オルトリン酸ガリウム(GaPO)、ランガサイト(LGS)、窒化アルミニウム(AlN)若しくは窒化ガリウム(GaN)、又は複合基板114’であってもよい。
【0032】
複合基板114’は、ベース基板の上に形成される、波長λ以下程度の厚さ、特に約20μm以下の厚さの圧電材料の層を備える。圧電層は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ランガサイト(LGS)、窒化アルミニウム(AlN)又は窒化ガリウム(GaN)の層であってもよい。ベース基板は、適切な軸線に沿った伝搬を呈するシリコン若しくはサファイア系基板又は石英基板、特に(YXlt)/36°/90°に対応するいわゆるSTWカットであってもよい。
【0033】
複合基板114’はまた、ピエゾエレクトリック・オン・インシュレータ(POI)基板であってもよい。一例によれば、圧電層は、Si(100)のベース基板に設けられたいわゆるトラップリッチポリシリコン層におけるSiOにおけるLiTaO(YXl)/42°層である。トラップリッチ層は、ベース基板の分離性能を向上させることができ、例えば多結晶シリコン、非晶質シリコン、又は多孔質シリコンなどの多結晶、非晶質、又は多孔質材料のうちの少なくとも1つにより形成されてもよい。「トラップリッチ」という用語においては、導電層なしで、しかし導電層を形成して、電荷を吸収することが可能な層が理解される。ここで、圧電層は600nmの厚さを有し、SiO層は500nmの厚さを有し、トラップリッチポリシリコン層は1μmの厚さを有する。代替例によれば、圧電層は、AlN又はGaNである。
【0034】
音波反射構造体104、106及び/又はトランスデューサ構造体102が少なくとも部分的に音波基板114内に配置される変形例において、基板114が複合基板である場合、音波反射構造体104、106及び/又はトランスデューサ構造体102は、少なくとも部分的に複合基板の圧電層に埋め込まれる。
【0035】
IDT102は、互いに交互に噛み合わされた、それぞれ複数の電極フィンガを各々が有する、対向するすだれ状櫛形電極108及び110を備える。電極及び電極フィンガ108及び110は、第1の材料、すなわち任意の好適な導電材料、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金から作製される。高温アプリケーション、例えば500℃超の場合、IDT102の櫛形電極108、110は、Ti/Pt、Ta/Pt、Ir、Zr、W、Moの電極であってもよい。これは、それらの金属が高温に適合可能であるためである。
【0036】
図1aに示すように、すだれ状櫛形電極108、110は、2つの隣り合う電極フィンガの間における端から端までの電極フィンガ距離、より正確には、図示のようにそれぞれのフィンガの左端から左端までの距離として画定されるピッチp1を有する。ピッチp1は、p1=λ/2により与えられるブラッグ条件を満たすことが好ましく、λは、当該トランスデューサ構造体の動作音波波長である。よって、トランスデューサ構造体は、ブラッグ条件において機能する。変形例においては、トランスデューサ構造体がブラッグ条件外で動作してもよい。すだれ状櫛形電極108、110のフィンガは、高さh1及び幅a1を有する。
【0037】
音波反射構造体104、106は各々、複数の平行なストリップ112を備える。本発明によれば、音波反射構造体104、106のストリップ112は、IDT102の第1の材料とは異なる第2の材料から作製される。ストリップは、幅a2及び高さh2を有する。
【0038】
音波反射構造体104、106は、図1aに示すように音波反射構造体104、106内のストリップ112間における端から端まで(左端から左端まで)の距離に対応する、ストリップ112のピッチp2により画定される。本実施形態における音波反射構造体104、106のストリップ112のピッチp2は、トランスデューサ構造体102の電極ピッチp1と同じである。
【0039】
変形例において、音波反射構造体104、106のストリップ112のピッチp2は、非同期共振器を形成するように、トランスデューサ構造体102の電極ピッチp1と異なっていてもよい。p1及びp2は、音波反射構造体104、106がその反射関数スペクトル中心をIDT102の同期周波数に有するように選定される。これにより、共振器の電気機械結合が低減するが、所与のミラー長さについてのQ因子が増大し、ミラーのコンパクト性を向上させることができる。
【0040】
p1及びp2であるにもかかわらず、その両方がブラッグ条件を満たすと考えられる。これは、IDTはディラック関数を提供せず、2つの異なるピッチ(異なるが互いに近い)を可能とするスペクトル拡散を有するsinx/x関数を提供するためである。
【0041】
図1aにおいて、音波反射構造体104及び106の高さh2及び幅a2は、IDT102の電極フィンガの高さh1及び幅a1と同じである。音波反射構造体104、106及びIDT102は、別個の製造ステップにより製造され、したがって、例えば電気機械結合、品質因子及び反射率に関して、全体的なデバイス特性を向上させるために、異なる幾何学的パラメータを実現して、両方の高さ及び幅を互いに対して最適化することが容易になる。結果として、図1bに示すように、IDT102のフィンガ及び音波反射構造体104、106のピッチ及び/又は高さ及び/又は幅は、異なっていてもよい。ここでは、a1<a2且つh1<h2である改変されたSAWデバイス100’を示している。
【0042】
第1の実施形態の第1の変形例によれば、第1の材料及び第2の材料は、共に金属であるが、その種類が異なる。第1の材料は、圧電基板114又は114’に応じて電気機械結合及び品質因子を最適化するように選定され、一方で第2の材料は、ミラー及びIDTに同じ材料を用いるSAWデバイスと比較してミラーの反射率を最適化又は少なくとも向上させるように選定される。そうすることにより、IDT及びミラーに同じ金属を用いる従来技術のSAWデバイスと比較して、音波反射構造体104、106に必要なストリップ112の数を低減することができる。よって、本発明に係るSAWデバイスがよりコンパクトになる。
【0043】
音波反射構造体104、106において金属ストリップ112を用いる場合、それらは互いに電気的に分離されてもよく、それにより、金属障害物が浮遊した電気状態になるので、音波の反射を支配する法則の音響的部分のみを考慮すればよい。これは、第2の材料及びその結晶方位並びに音波伝搬基板114、114’の材料及びその結晶方位が、音波反射への電気的及び機械的寄与が位相外れになるようなものである場合に当てはまる。これは例えば、Al電極を用いたLiNbO(YXl)/128°カットにおけるレイリー波について当てはまる。その場合、機械的及び電気的な反射寄与の間の破壊的結合効果を防止することができる。
【0044】
第1の実施形態の第2の変形例によれば、第2の材料は、誘電材料である。この場合、ストリップ112は、互いに分離されてもよく、又は、例えばある種のバスバーにより、境界部において互いに接続されてもよく、それにより機械的密着性を向上させることができる。
【0045】
以下で実例においてさらに示すように、LGSの(YXlt)/48.5°/26.7°カットの圧電基板の上に設けられる誘電材料の第1の群、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、酸化アルミニウム(Al)、又は窒化シリコン(Si)は、金属反射構造体と比較して、より高い反射率特性をもたらす。これらはまた、従来技術の金属反射構造体と比較して、温度に対する向上した安定性を呈する。
【0046】
同じ圧電基板における、誘電材料の第2の群、例えば、Ta又は二酸化シリコン(SiO)などの誘電体では、金属ストリップを備える従来技術の反射構造体と比較して、温度に対する向上した安定性が観測される。これについては、さらに下記で示す。同時に、十分に高い反射率値も実現され、これによっても、それらが高温アプリケーションに好適なものとなる。
【0047】
よって、本発明に係るSAWデバイスは、従来技術のSAWデバイスと比較して温度の変動に対する向上した安定性を有することにより、高温アプリケーションに用いることができる。
【0048】
誘電材料の第1の群は、IDTと同じ金属を用いる金属反射構造体と比較して、十分に高い全体的な反射率を実現するためにより少数のストリップ112、特に300未満のストリップを設ければよいという追加の利点を提供する。よって、本発明に係る音波反射構造体104、106をよりコンパクトにすることができ、それによりSAWデバイス100の全体サイズが低減する。これは、特に短絡条件において、効果的な波動結合を可能とするIDTにおける電極高さについてのストリップ反射率が常に1%よりも大幅に小さい、シリコン又はサファイアにおけるGaN又はAlNなどの複合基板におけるレイリー波について特に当てはまる。
【0049】
音波反射構造体104、106の音響インピーダンスρCref及び音波伝搬基板の音響インピーダンスρCsubが整合し、よって可能な限り近くなる、又は少なくとも
【数2】

が50%未満、特に25%未満になるように選定される場合に、より高い反射率値が観測され得ると考えられる。インピーダンス値が完全に整合している場合、障害物を圧電体に完全に埋め込むことができない。
【0050】
これは、図1c及び図1dに示す表に示されている。
【0051】
図1cは、音波のタイプに応じた様々な材料についての音響インピーダンスを示す。
【0052】
このデータから、ストリップ112の所与の形態、ここでは矩形断面、1μmの周期p、並びに0.5の障害物レーションa/p及び5%の相対高さh/λについて、レイリー型の音波について室温、すなわち25℃において反射率を計算した。誘電材料及び金属材料の両方について、問題の音響的部分、すなわち電気的境界条件の断絶なしでの障害物に起因する反射のみを数値シミュレーションにより解いたことに留意されたい。実際、障害物は、浮遊した電気状態にある。
【0053】
図1dを参照の通り、基板及び障害物材料の音響インピーダンスが近い、特に可能な限り近い場合に、ストリップごとの高い反射率値が得られる。これらの結果は、以下のように実現される数値シミュレーションにより得られた。すなわち、波は、言及した材料の類似の障害物から構成された無限の周期的格子の下で伝搬するものと仮定される。波がどのように励振されるかは考慮されていない。阻止帯域は、問題の自由度に共に関連する行列の行列式を計算し(FEM/BEMシステムと呼ばれる)、周波数に対するゼロを追跡することにより決定される。金属障害物について、開回路電気条件(oc)が仮定される。これは、全ての格子電極が独立であり、対応する大域的電荷が各電極について無いことを意味する。図1dの表において、第1行は、上記で定義したPOI基板である、標準的なPOI基板(標準POI)に関する。
【0054】
図1dにおいて与えられる実例に加えて、Taを有するSi(111)における1μmのトラップリッチ層における1μmのSiOにおけるLiNbO(YXl)/41° 500nmを有するPOI基板 R=8.9%の反射率が観測される。金属ストリップについては、開回路構成におけるMoについてR=17.3%の反射値が得られる。
【0055】
コンパクトな反射器のより正確な例を与えるために、上述のようなSi(100)のベース基板に設けられたトラップリッチポリシリコン層におけるSiOにおけるLiTaO(YXl)/42°層の圧電層を有するPOI基板における短絡されたAlストリップを用いた反射器が分析される。ここで、圧電層は600nmの厚さを有し、SiO層は500nmの厚さを有し、トラップリッチポリシリコン層は1μmの厚さを有し、ストリップごとに10%~15%の反射係数が観測される。図1dの表を見ると、Pt、W、Mo又はTaなどの開回路条件における他の金属については、よりいっそう高い反射率値が観測され得る。よって、無線センサアプリケーションに適合可能な高いQ因子をもたらす、50未満のストリップを有する音波反射構造体を用いることができる。よって、概して、10%を超える単一障害物の反射係数により、ミラー長さを100未満のストリップ/障害物まで低減することが可能となる。
【0056】
シングルポート共振器100は、以下のように機能する。すだれ状トランスデューサは、入来する電気信号の電気エネルギーを音波エネルギーに変換する。音波は、基板114の表面にわたって進行し、音波伝搬方向に配置された音波反射構造体104、106によりIDT102に反射し戻される。共振周波数において、音波反射構造体104、106の間の同期の条件が満たされ、それにより、音波反射構造体の下で生じる異なる反射のコヒーレントな付加を得ることが可能となる。このとき、音響エネルギーの最大値が共振空洞内で観測され、電気的な観点では、トランスデューサにより流される電流の振幅の最大値が観測される。一例として、シングルポート共振器が、アンテナに接続される場合に遠隔でインテロゲートされ得るSAWタグデバイスとして用いられてもよい。
【0057】
図2は、本発明の第2の実施形態を示す。第2の材料として誘電体を用いる変形例における第1の実施形態と第2の実施形態との間の唯一の差異は、トランスデューサ構造体102の上にパッシベーション層220が存在することである。図1aと同じ参照符号を付した特徴については、改めて説明はせず、図1aが参照される。
【0058】
パッシベーション層220は、電極を保護するために、すだれ状トランスデューサ構造体102の上にのみ存在する。第2の材料が誘電材料である場合、パッシベーション層220は、音波反射構造体104、106のストリップ112と同じ誘電材料から作製されることが好ましい。よって、さらに下記で説明するように、デバイスの両方の要素を同じ処理ステップ中に製造することができる。実施形態の変形例においては、パッシベーション層及び音波反射構造体のストリップに異なる誘電材料が用いられてもよい。
【0059】
図3aは、本発明に係る第3の実施形態を示す。本実施形態において、SAWデバイス250は、示差センサである。示差センサ250は、圧電基板258に形成された2つの音波反射構造体254及び256の間に配置されたすだれ状トランスデューサ構造体(IDT)252を備える。IDT252は、第1又は第2の実施形態のIDT102に対応し、圧電基板258は、第1の実施形態の基板114に対応する。本実施形態において、第1の反射構造体及び第2の反射構造体254及び256は、互いに対して2つの異なる材料を備える、及び/又は、異なるピッチp3、p4を有する。
【0060】
一方のミラーが一方側に一方の誘電体を有し、他方のミラーが他方側に他方の誘電体を有する場合、共振周波数は、示差挙動をもたらす。異なるピッチp3及びp4を用いる場合も、同じ効果が得られる。
【0061】
図3bは、本発明に係る第4の実施形態を示す。本実施形態において、SAWデバイス300は、ハイブリッド示差センサである。
【0062】
ハイブリッド示差センサ300は、2つの音波反射構造体306及び308の間に配置された2つのすだれ状トランスデューサ構造体302、304と、圧電基板334に形成された2つのIDT302、304の間に配置された追加の反射構造体310とを備える。圧電基板334は、第1の実施形態の基板114に対応する。
【0063】
本実施形態において、IDT302の櫛形電極312、314及びIDT304の櫛形電極316、318は、同じジオメトリを有する。さらに、2つのIDT302及び304は、互いに電気的に接続される。櫛形電極312及び316は、E1で示される入力を形成し、櫛形電極314及び318は、S1で示される出力を形成する。
【0064】
本実施形態において、IDT302及び304は、ブラッグ条件において動作するように構成されてもよく、又は、ブラッグ条件外で機能するように設計されてもよい。ブラッグ条件外での動作は、指向性効果を低減するのに有用であり得る。
【0065】
音波反射構造体306は、IDT302に対して距離g1を空けて配置される。音波反射構造体308は、IDT304に対して距離g2を空けて配置される。各音波反射構造体306、308は、1つ又は複数のストリップ322を備える。ストリップは、IDTの電極と同じピッチを有する。追加の反射構造体310も、複数のストリップ324を備える。ストリップ324の数は、音波反射構造体306、308と比較して同じである、又は異なる。それらは、導電材料が用いられ、反射に対する電気的及び機械的な寄与が位相外れである場合、開構成である。誘電材料が用いられる場合、ストリップは、例えばバスバーのような構造を用いて、接続されてもよく又は接続されなくてもよい。
【0066】
本発明によれば、追加の反射構造体310を含め、音波反射構造体306、308のうちの少なくとも1つ、好ましくは全てが、第1の実施形態及び第2の実施形態に関して上記で説明したIDTのものとは異なる誘電材料又は金属材料から作製される。改めて、ミラー及びIDTにおける誘電体及び金属のストリップは、同じ又は異なる高さ及び/又は同じ又は異なる幅を有してもよい。
【0067】
反射構造体306とそれに隣り合うトランスデューサ構造体302との間に配置される領域326は、幅g1の音響空洞326を形成する。同様に、反射構造体308とそれに隣り合うトランスデューサ構造体304との間に配置される領域328は、幅g2の別の音響空洞328を形成する。
【0068】
一方の空洞、例えば326は、負の周波数温度補償(TCF)値を呈するAlの層により覆われ、他方の空洞328は、正のTCFを呈するSiOの層により覆われる。したがって、2つの空洞は、温度変化にさらされた場合に異なる挙動を示し、それにより、結果として生じる周波数変化の異なる挙動がもたらされ、このとき、一方の周波数を他方から引くことによって示差測定が可能となる。よって、差分値をSAWセンサ300により検知することができる。
【0069】
さらに、パッシベーション層が、トランスデューサ構造体302、304の上に形成される。変形例において、パッシベーション層は、追加の反射構造体310が金属ストリップ324を有する場合、追加の反射構造体310の上に延びていてもよい。パッシベーション層はまた、空洞326の上に延びていてもよい。典型的には、パッシベーション層は、音波反射構造体のうちの少なくとも1つに用いられる誘電材料と同じ材料から作製される。
【0070】
本発明の変形例において、第1の実施形態と同様に、反射構造体306、308及び/又は追加の反射構造体310は、少なくとも部分的に圧電層又は圧電基板334に埋め込まれてもよい。
【0071】
2つのIDTの間に追加の反射構造体310を組み込むことは、第2の空洞の形成がIDTの設計とは独立であるという利点を有する。特に、例えば500℃超の高温アプリケーションにおいて、IDTの電気機械結合及び安定性に注目し、それとは別に、ミラーについて、例えば誘電材料を用いることにより、十分に高い反射率に注目することが可能である。
【0072】
さらなる変形例において、第2の反射構造体308は、第1の反射構造体306と比較して異なるピッチを有してもよく、この場合、追加の反射構造体310を2つの部分に分割する必要があり、各部分が、音波反射構造体306、308のうちの一方のピッチを有する。
【0073】
以下、誘電体の反射構造体を用いる有利な効果について、音波反射構造体の同じ幾何学的寸法を用いるが、IDTと同じ金属材料、IDTの同じ金属材料及び形状、並びに同じ圧電基板を用いる反射構造体と比較して説明する。
【0074】
以下において、基板の一部、最上層の断片、及び反射構造体からなる有限要素メッシュにより、問題の非同次部分がシミュレートされる。基板は、媒質表面のグリーン関数、すなわちその音響電気的インパルス応答を用いて、境界要素によりシミュレートされる。このアプローチは、例えば、S.Ballandras、R.Lardat、M.Wilm、Th.Pastureaud、A.Reinhardt、N.Champavert、W.Steichen、W.Daniau、V.Laude、R.Armati、G.Martinの「A mixed finite element/boundary element approach to simulate complex guided elastic wave periodic transducers」、J.Appl.Phys.105(1)、014911(2009)において詳述されている。
【0075】
図4図11は、レイリー波に関するシミュレート結果について説明する。
【0076】
図4a及び図4bは、LGSの(YXlt)/48.5°/26.7°カットにおいてブラッグ条件で動作する無限の周期的格子の下で伝搬するレイリー型の波についての、従来技術の2つの例に係る表面弾性波の励振及び反射についてのシミュレートされた分散特性を示す。表面比、すなわち電極幅と格子ピッチとの間の比又は機械的周期a/pは、0.5に固定され、相対電極厚さ、すなわち絶対電極高さと波長h/λとの間の比は、1%に固定される。10μmの波長λが設定され、よって高さhは100nmであった。
【0077】
表面弾性波の励振及び検出に用いられるIDTは、Pt又はTa系電極を備え、音波反射構造体の周期的格子と同じジオメトリを有していた。IDTの材料は、音波反射構造体のものと同じである。
【0078】
Pt系電極の場合、図4aは、単一の反射電極における波の反射が0.7%未満であり、音波反射構造体の動作条件、すなわち開回路であるか短絡であるかにかかわらず、温度と共に10%よりも大きく変動することを示す。図4bにおいて見ることができるように、Ta系電極は、Pt系電極よりもわずかに良好であるが、依然として1%よりもはるかに小さく、温度による変動は両方の金属でほぼ同じである。
【0079】
反射構造体の下で観測される位相速度は、IDTの下の速度との合致が実現され得るようなものである。
【0080】
図5a、図5b及び図5cは、同じIDT構造体を用いるが、本発明に係る反射構造体を用い、よって、誘電材料、すなわちここではAlN、GaN(図5a)、Al、Si図5b)並びにSiO及びTa2O3(図5c)をベースとするストリップを用いた、図4a及び図4bと同じタイプのグラフを示す。誘電材料を用いる場合、電気的寄与を考慮する必要がないため、図4aのような開回路又は短絡の区別が必要でない。
【0081】
図5aは、AlNストリップとGaNストリップとの比較に対応する。GaNについては、0℃~700℃の温度範囲にわたって、約2.02%~2.09%の間で変動する反射率が観測される。AlNについては、同じ温度範囲にわたって、約1.98%~2.05%の間で変動する反射率が観測される。よって、両方の誘電材料について、反射率は金属電極と比較してより高く、2%程度の温度に応じた反射率のより小さい変動が観測される。
【0082】
図5bは、AlストリップとSiストリップとの比較に対応する。Siについては、反射率が約2.05%~2.3%まで温度と共に実質的に増大し、よって、5%程度の温度変動を示す。Alに関しては、反射率が2.54%~2.6%の間で変動し、温度範囲全体にわたって2%未満の相当に小さい変動が生じ、500℃超ではほぼ一定である。
【0083】
図5cは、SiOストリップとTaストリップとの比較に対応する。両方の材料は、図5a及び図5bの誘電材料と比較してより低い反射率を示す。SiOについては、0.64%~0.7%までの温度に伴う反射率の増大が観測され、よって、5%程度の温度変動が生じる。Taに関しては、反射率がわずかにより良好で0.85%~0.92%の間で変動し、よって5%未満の変動が生じる。
【0084】
誘電材料SiO及びTaは、そのように誘電材料AlN、GaN、Al、又はSiと比較してより低い反射率をもたらし、実際、上記の例えば重金属Taのものと同等であるが、特に500℃超の温度に伴う反射率の変動が金属の場合よりも良好である。
【0085】
図6図9は、25℃の固定温度におけるLGS(YXlt)/48.5°/26.7°カット及び電極に用いられる様々な誘電材料についての比a/p及びh/λ(%)に対する(a)位相速度(m/s)及び(b)反射係数(%)の変動の計算の結果を示す。
【0086】
図6a及び図6bは、Si系電極についての計算の結果を示す。
【0087】
図7a及び図7bは、AlN系電極についての計算の結果を示す。
【0088】
図8a及び図8bは、Al系電極についての計算の結果を示す。
【0089】
図9a及び図9bは、SiO系電極についての計算の結果を示す。
【0090】
見ることができるように、誘電材料AlN、Al、又はSiについては、標準的なSAW製造プロセスに適合可能なパラメータウィンドウにおいて、6%又はさらにAlの場合には8%までの反射係数を得ることができる。SiOの場合でも、3%までの反射係数を得ることができる。音波反射構造体及びIDTのジオメトリを互いに独立して最適化することができるため、SAWデバイスの設計者が柔軟性を得る。
【0091】
さらに、誘電体格子/ストリップの下の位相速度は、金属系ストリップの下よりも質量負荷に対する感度が低い。これは、共振器周波数を制御するために特に重要である。しかしながら、金属電極は波の励振及び検出に必要なので、IDT金属の位相速度に対する影響を排除することができない。よって、技術的パラメータに対する全体的なデバイス感度が低減するように、位相速度が整合されてもよい。
【0092】
図10a及び図10bは、複合基板を用いる場合のシミュレート結果を示す。
【0093】
図10aは、1GHz付近の周波数における、Cカットサファイアウエハにおける1μm厚AlN(YXl)/90°層におけるレイリー波の分散特性を示す。表面比、すなわち電極幅と格子ピッチとの間の比又は機械的周期a/pは、0.5に固定され、相対電極厚さ、すなわち絶対電極高さと波長h/λとの間の比は、1%に固定される。5.4μmの波長λを設定したことにより、厚さは54nmとなる。音波の励振及び検出に用いられるIDTは、同じジオメトリを有していた。
【0094】
図10aは、Pt系及びMo系金属ストリップについての結果を示し、一方で図10bは、本発明に係るAl及びSi系ストリップについての結果を示す。
【0095】
Pt系及びMo系ストリップについては、0.1%未満の結合因子が開回路及び短絡の両方において観測される。
【0096】
Ptストリップについては、反射率が低温において相当に高く、0℃において約2.5%であるが、その後1%の値まで低下する。それに対し、Moストリップは、約0.7%の相当に一定の値を有するが、これは1%未満である。結合係数が0.1%よりも低いため、この設計は依然としてSAWデバイスに適合しない。
【0097】
本発明に係る誘電体系ストリップでは、状況が改善される。図10bに示すように、反射係数の変動は、Alについて1.2%~1.4%である。Siについては、1.05%~1.15%の間の変動が観測され得る。よって、誘電体反射構造体は、金属系ストリップと比較して、反射係数のより良好な安定性を示す。
【0098】
図11a及び図11bは、CカットサファイアウエハにおけるAlN(YXl)/90°層についてのAl系電極についての比a/p及びh/λ(%)に対する(a)速度(m/s)及び(b)反射係数(%)の変動の計算の結果を示す。音波反射構造体について、10%にまで至る反射係数をもたらす幾何学的パラメータを見出すことができる。
【0099】
図12a及び図12bは、Cカットサファイアウエハにおける異なる複合基板、すなわちGaN(YXl)/90°層におけるAl系電極についての比a/p及びh/λ(%)に対する(a)速度(m/s)及び(b)反射係数(%)の変動の計算の結果を示す。本発明に係る本例においても、反射率が10%まで至ることができる。
【0100】
図13は、本発明の第5の実施形態に係る表面弾性波SAWデバイスを製造するための方法の模式図を示す。本方法は、第2の実施形態に係るSAWデバイス200を得るために用いられ、上記で既に用いたものと同じ参照符号を付した特徴については、改めて詳細に説明はせず、参照がなされる。
【0101】
本方法は、音波伝搬基板114を用意し、層堆積及びパターニングのステップの組み合わせを用いて、すだれ状トランスデューサ構造体102をその櫛形電極108及び110と共に形成する第1のステップ400を含む。
【0102】
本発明によれば、本方法は、誘電体層500を基板114に形成するステップ402をさらに含む。誘電体は、上記で言及した誘電材料のうちの1つである。よって、AlN、GaN、Al、Si、Ta又はSiOである。ここで、層500は、基板114の全面を覆い、よってIDT102も覆う。
【0103】
次に、パターニングステップ404に続いて、音波反射構造体104及び106並びにパッシベーション層220が形成される。誘電体層500のパターニングは、レジスト塗布ステップ、リソグラフィステップ、及びエッチングなどの材料除去ステップを含む。よって、1つのプロセスステップにおいて、音波反射構造体104、106及びパッシベーション層220が得られる。よって、本発明に係る方法は、金属反射構造体及びIDTにおけるパッシベーション層を有するSAWデバイスのための従来技術の製造プロセスよりも複雑でない。
【0104】
図14に示す第6の実施形態によれば、音波反射構造体604、606のストリップ612は、少なくとも部分的に埋め込まれるように音波伝搬基板614に形成されてもよい。
【0105】
この場合、パターニングステップ、例えばリソグラフィ及びエッチングは、ステップ410に示すように、トランスデューサ構造体102の両側において溝640、642を基板114に形成するために用いられる。
【0106】
その後、ステップ412で示すように、誘電体層616が、音波基板114の全面に形成される。
【0107】
その後の材料除去ステップ、例えば機械的及び/又は化学的な材料除去ステップに続いて、音波反射構造体604、606が、溝640及び642に存在するストリップ612により形成される。
【0108】
本実施形態において、音波反射構造体604、606は、音波伝搬基板614内に完全に埋め込まれ、誘電材料で充填される。本発明の変形例において、音波反射構造体は、ストリップが基板の上方にも延びるように、部分的にのみ埋め込まれてもよい。さらなる変形例において、IDT102は、少なくとも部分的に埋め込まれてもよい。
【0109】
図15は、第7の実施形態に係る表面弾性波デバイスを製造するための方法の模式図を示す。本方法により、第1の実施形態に係るSAWデバイス100を得ることができる。改めて、上記で既に用いたものと同じ参照符号を付した特徴については、改めて詳細に説明はせず、上記が参照される。
【0110】
本方法は、図13に示す第5の実施形態に基づく。
【0111】
ステップ420を参照の通り、基板114にIDT102を設けた後、レジスト塗膜720がIDT102の上に設けられる。次いで、ステップ422を参照の通り、誘電体層500が形成される。よって、誘電体層500は、図13のように、トランスデューサ構造体102に直接堆積されない。
【0112】
次いで、ステップ424で示すように、リフトオフプロセスが行われて、レジスト塗膜720、及びトランスデューサ構造体102の位置における誘電体層716が除去される。
【0113】
最後に、その後のステップ426に示す誘電体層716のパターニングの後、トランスデューサ構造体102の隣に音波反射構造体104、106が得られる。よって、本実施形態において、トランスデューサ構造体102は、プロセスの終了時にパッシベーション層を備えない。
【0114】
その後の堆積ステップが、音波反射構造体のものとは異なる材料のパッシベーション層を付加するために行われてもよい。
【0115】
本発明は、誘電体系反射構造体を用いて、従来技術の金属系反射構造体と比較して摂氏数百度の温度変化に対してより変動の小さい6%までの実効反射率を得るために、LGSのような圧電単結晶及び関連する基板又はAlN/シリコン又はGaN/サファイアなどの高温アプリケーションに適合可能な材料におけるSAWデバイスを提供する。
【0116】
本発明の複数の実施形態について説明した。しかしながら、以下の特許請求の範囲を逸脱しない限りにおいて、様々な修正及び拡張がなされてもよいことを理解されたい。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b
図13
図14
図15
【国際調査報告】