IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラム リサーチ コーポレーションの特許一覧

特表2023-544303純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上
<>
  • 特表-純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上 図1
  • 特表-純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上 図2
  • 特表-純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上 図3
  • 特表-純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上 図4
  • 特表-純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上 図5
  • 特表-純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上 図6
  • 特表-純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上 図7
  • 特表-純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上 図8
  • 特表-純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上 図9
  • 特表-純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上 図10
  • 特表-純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】純化学的な手段による非晶質炭素ハードマスク膜の堆積速度向上
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20231016BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20231016BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519425
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 US2021052250
(87)【国際公開番号】W WO2022072288
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/198,108
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイマー・マシュー・スコット
(72)【発明者】
【氏名】プゼンコヴィラカム・ラゲシュ
(72)【発明者】
【氏名】レディ・カプ・シリシュ
(72)【発明者】
【氏名】スー・チン-ジュイ
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
5F004AA04
5F004BD04
5F004DA00
5F004DA15
5F004DA23
5F004DA26
5F004DB00
5F004DB01
5F004DB02
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA03
5F004EA37
5F004FA08
5F045AA08
5F045AB07
5F045AC00
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD04
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045BB08
5F045CB06
5F045DA64
5F045DA68
5F045DA69
5F045DA70
5F045DP03
5F045DQ17
5F045EB08
5F045EE02
5F045EE04
5F045EE12
5F045EF05
5F045EH05
5F045EH07
5F045EH14
5F045EH20
5F045EK07
5F045GB07
5F045GB08
(57)【要約】
【解決手段】競合的なエッチングプロセスを低減する添加剤を使用して、高温で基板上にアッシャブルハードマスク(AHM)を堆積するための方法及び関連する装置が、本明細書で提供される。六フッ化硫黄が、得られる膜の特性への最小限の変更で、AHMの堆積速度を改善するために使用されてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッシャブルハードマスク(AHM)膜を形成する方法であって、
炭化水素前駆体ガスと堆積エンハンサ分子とを含むプロセスガスに基板を曝露し、
前記プロセスガスを使用してプラズマ励起化学蒸着(PECVD)プロセスによって前記AHM膜を前記基板上に堆積させること
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記堆積エンハンサ分子は、フッ素含有化合物である、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記堆積エンハンサ分子は、SF6である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記炭化水素前駆体ガスは、アルケンを含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記炭化水素前駆体ガスは、プロピレンを含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、炭化水素前駆体に対する堆積エンハンサ分子の体積流量比は、約0.01から約0.5の間である、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記AHM膜は、約0.45μm/分より速い速度で堆積される、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記AHM膜の堆積中にHFを形成することをさらに備える、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記プロセスガスは、不活性ガスをさらに含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記不活性ガスは、ヘリウム、アルゴン、及び窒素の1つ又は複数である、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記プロセスガスは、前記炭化水素前駆体と、前記堆積エンハンサ分子と、前記不活性ガスとを含む、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記基板は、前記AHM膜を堆積している間に台座の上に配置され、かつ前記台座が、約20℃から約750℃の間の温度を有する、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記堆積エンハンサ分子は、堆積された前記AHM膜中の炭素原子との、水素ラジカル、イオン結合、又はその両方の結果として生じるエッチングプロセスを抑制する、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記堆積エンハンサ分子は、前記AHM膜のエッチングを引き起こさない、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記PECVDプロセスは、高周波(HF)成分と低周波(LF)成分とを含む2周波の高周波(RF)プラズマ源によって生成されたプラズマを点火することを備える、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記HF成分は、約50から約8000Wの電力を有する、方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、前記LF成分が、約0から約6000Wの電力を有する、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、前記PECVDプロセスは、約1から約11Torrの圧力で実行される、方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法であって、前記AHM膜は、約43から約90GPaのモジュラスを有する、方法。
【請求項20】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法であって、前記AHM膜は、約1μmから約2μmの厚さである、方法。
【請求項21】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法であって、前記AHM膜は、約5.3から約8.5GPaの硬度である、方法。
【請求項22】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法であって、前記AHM膜は、約-100から約-550MPaの内部応力を有する、方法。
【請求項23】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法であって、前記AHM膜は、約0.45から約0.65の消衰係数を有する、方法。
【請求項24】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法であって、前記AHM膜は、約1.9から約2.2の屈折率を有する、方法。
【請求項25】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法であって、前記AHM膜は、大部分として炭素を含む、方法。
【請求項26】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法であって、前記AHM膜は、最大約10%原子の水素含有量を有する、方法。
【請求項27】
アッシャブルハードマスク(AHM)膜を形成するための装置であって、
1つ又は複数のプロセスチャンバであって、各プロセスチャンバが基板支持体を含む、1つ又は複数のプロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバへのガス入口であり、かつ流量制御ハードウェアに関連する1つ又は複数のガス入口と、
前記1つ又は複数のプロセスチャンバの1つにある基板を、炭化水素前駆体ガスと堆積エンハンサ分子とを含むプロセスガスに曝露し、
前記プロセスガスを使用してプラズマ励起化学蒸着(PECVD)プロセスによって前記基板上に前記AHM膜を堆積させるように構成されている1つ又は複数のプロセッサと
を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【参照による援用】
【0001】
PCT願書が、本出願の一部として、本明細書と同時に提出されている。同時に提出されたPCT願書に特定されるように、本出願がその利益又は優先権を主張する各出願は、その全体がすべての目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
非晶質炭素膜は、メモリ及び論理デバイスの製造を含む半導体処理において、ハードマスク及びエッチング停止層として使用されることがある。これらの膜は、アッシング技術によって除去され得るため、アッシャブルハードマスク(AHMs)としても知られている。特に3D NAND用途のためにアスペクト比が増すと、AHMsには、より高いエッチング選択性及び/又は厚みが求められる。プラズマ励起化学蒸着(PECVD)プロセスを用いて高選択性のAHMsを形成する現在の方法は、所望の厚さを達成するのに時間がかかり、所有コストが増加する。
【0003】
本明細書に含まれる背景及び文脈の説明は、本開示の文脈を大まかに提示することのみを目的として提供される。本開示の多くは、本発明者らの研究を提示し、そのような研究が背景技術の欄に記載され、又は本明細書の他の箇所に文脈として提示されているというだけで、それが先行技術であると認められることを意味しない。
【発明の概要】
【0004】
非晶質炭素膜を堆積する方法及びシステムが、本明細書に開示される。本明細書の実施形態の一態様において、アッシャブルハードマスク(AHM)膜を形成する方法が提供され、方法は、炭化水素前駆体ガスと堆積エンハンサ分子とを含むプロセスガスに基板を曝露し、プロセスガスを使用してプラズマ励起化学蒸着(PECVD)プロセスによってAHM膜を基板上に堆積させることを含む。いくつかの実施形態では、炭化水素前駆体はプロピレンである。いくつかの実施形態では、炭化水素前駆体に対する堆積エンハンサ分子の体積流量比は、約0.01から約0.5の間である。いくつかの実施形態では、AHMは、約0.45μm/分より速い速度で堆積される。いくつかの実施形態では、AHM膜の堆積中にHFを形成することをさらに含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、プロセスガスは、不活性ガスをさらに含む。いくつかの実施形態では、不活性ガスは、ヘリウム、アルゴン、及び窒素の1つ又は複数である。いくつかの実施形態では、プロセスガスは、炭化水素前駆体と、堆積エンハンサ分子と、不活性ガスとから実質的に成る。いくつかの実施形態では、半導体基板は、AHM膜を堆積している間に台座の上に配置され、かつ台座は、約20℃から約750℃の間の温度を有する。いくつかの実施形態では、堆積エンハンサ分子は、堆積されたAHM中の炭素原子との水素ラジカル及び/又はイオン結合の結果として生じるエッチングプロセスを抑制する。いくつかの実施形態では、堆積エンハンサ分子は、AHM膜のエッチングを引き起こさない。
【0006】
いくつかの実施形態では、AHMは、約1μmから約2μmの厚さである。いくつかの実施形態では、PECVDプロセスは、高周波(HF)成分と低周波(LF)成分とを含む2周波の高周波(RF)プラズマ源によって生成されたプラズマを点火することを含む。いくつかの実施形態では、HF成分は、約50から約8000Wの電力を有する。いくつかの実施形態では、LF成分は、約0から約6000Wの電力を有する。いくつかの実施形態では、PECVDプロセスは、約1から約11Torrの圧力で実行される。
【0007】
いくつかの実施形態では、AHMは、約43から90GPaのモジュラスを有する。いくつかの実施形態では、AHMは、約5.3から約8.5GPaの硬度を有する。いくつかの実施形態では、AHMは、約-100から約-550MPaの内部応力を有する。いくつかの実施形態では、AHMは、約0.45から約0.65の消衰係数を有する。いくつかの実施形態では、AHMは、約1.9から約2.2の屈折率を有する。いくつかの実施形態では、AHMは、大部分として炭素を含む。いくつかの実施形態では、AHMは、最大約10%原子の水素含有量を有する。
【0008】
本明細書の実施形態の別の態様において、アッシャブルハードマスク(AHM)膜を形成するための装置が提供され、装置は、各プロセスチャンバが基板支持体を含む、1つ又は複数のプロセスチャンバと、プロセスチャンバへのガス入口であり、かつ流量制御ハードウェアに関連する1つ又は複数のガス入口と、1つ又は複数のプロセスチャンバの1つにある基板を、炭化水素前駆体ガスと堆積エンハンサ分子とを含むプロセスガスに曝露し、プロセスガスを使用してプラズマ励起化学蒸着(PECVD)プロセスによって基板上にAHM膜を堆積させるように構成されている1つ又は複数のプロセッサとを含む。いくつかの実施形態では、炭化水素前駆体はプロピレンである。いくつかの実施形態では、炭化水素前駆体に対する堆積エンハンサ分子の体積流量比は、約0.01から約0.5の間である。いくつかの実施形態では、AHMは、約0.45μm/分より速い速度で堆積される。いくつかの実施形態では、AHM膜の堆積中にHFを形成することをさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、プロセスガスは、不活性ガスをさらに含む。いくつかの実施形態では、不活性ガスは、ヘリウム、アルゴン、及び窒素の1つ又は複数である。いくつかの実施形態では、プロセスガスは、炭化水素前駆体と、堆積エンハンサ分子と、不活性ガスとから実質的に成る。いくつかの実施形態では、半導体基板は、AHM膜を堆積している間に台座の上に配置され、かつ台座は、約100℃から約750℃の間の温度を有する。いくつかの実施形態では、堆積エンハンサ分子は、堆積されたAHM中の炭素原子との水素ラジカル及び/又はイオン結合の結果として生じるエッチングプロセスを抑制する。いくつかの実施形態では、堆積エンハンサ分子は、AHM膜のエッチングを引き起こさない。いくつかの実施形態では、AHMは、少なくとも約1.5μmの厚さである。いくつかの実施形態では、PECVDプロセスは、高周波(HF)成分と低周波(LF)成分とを含む2周波の高周波(RF)プラズマ源によって生成されたプラズマを点火することを含む。いくつかの実施形態では、HF成分は、約50から約8000Wの電力を有する。いくつかの実施形態では、LF成分は、約0から約6000Wの電力を有する。いくつかの実施形態では、PECVDプロセスは、約1から約11Torrの圧力で実行される。
【0010】
いくつかの実施形態では、AHMは、約43から90GPaのモジュラスを有する。いくつかの実施形態では、AHMは、約5.3から約8.5GPaの硬度を有する。いくつかの実施形態では、AHMは、約-100から約-550MPaの内部応力を有する。いくつかの実施形態では、AHMは、約0.45から約0.65の消衰係数を有する。いくつかの実施形態では、AHMは、約1.9から約2.2の屈折率を有する。いくつかの実施形態では、AHMは、大部分として炭素を含む。いくつかの実施形態では、AHMは、最大約10%原子の水素含有量を有する。
【0011】
開示された実施形態のこれら及び他の特徴は、添付の図面を参照して以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態例の動作のフロー図を示す。
【0013】
図2図2は、一実施形態例における交互層のスタックのエッチングの概略図を示す。
【0014】
図3図3は、SF6とC36の比の関数としての堆積速度を示す。
【0015】
図4図4は、SF6とC36の比の関数としての種々の膜特性のグラフを示す。
図5図5は、SF6とC36の比の関数としての種々の膜特性のグラフを示す。
図6図6は、SF6とC36の比の関数としての種々の膜特性のグラフを示す。
【0016】
図7図7は、本明細書の様々な実施形態に係るFTIRスペクトルを示す。
図8図8は、本明細書の様々な実施形態に係るFTIRスペクトルを示す。
【0017】
図9図9は、開示された実施形態に従い方法を実行するためのプロセスチャンバの例の概略図である。
図10図10は、開示された実施形態に従い方法を実行するためのプロセスチャンバの例の概略図である。
図11図11は、開示された実施形態に従い方法を実行するためのプロセスチャンバの例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
導入と文脈
半導体デバイスの処理は、3D NAND構造などの様々な3次元デバイスの製造に使用され得る多層スタックの形成を含む。いくつかのスタックは、誘電体材料及び導体材料の複数の交互層を含み、その各層は、約10nm以上の厚さであることもある。このようなスタックを形成する1つの方法は、酸化物材料と窒化物材料の複数の交互層の堆積(ONON多層堆積)、続いて材料の選択的除去、及び窒化物材料が以前に占めていた空間への金属の埋め戻し堆積を含む。別の方法は、酸化物とポリシリコン(又は、本明細書の別の箇所で使用される「ポリ」)の複数の交互層のスタックを直接パターニングすることであり、ここでポリシリコンは導体層のままとなる。これらの方法は、3D NAND構造を製造するために使用されることもある。
【0019】
スタックのエッチングは、パターニングされた非晶質炭素膜を使用して行われることもある。非晶質炭素膜は、アッシャブルハードマスク(AHM)とも呼ばれることがある。非晶質炭素層は、スタックのエッチングプロセス中に高い選択性を有するハードマスクとして好適である場合がある。高い選択性は、特定のエッチング化学物質の文脈で決定される。特定のエッチング化学物質の場合、下地基板、例えばONON層は、ハードマスク、例えば非晶質炭素層よりもはるかに速くエッチングされる。本明細書に記載される様々な用途において、下地基板は、酸化シリコン、窒化シリコン、及び/又はポリシリコンを含む。
【0020】
3D NAND用途の場合、アッシャブルハードマスクは、炭素ベースで、かつ約1.5マイクロメートルより厚いこともある。そのような厚さは、3D NANDデバイスなどの一部のメモリデバイスを形成するために使用されるような高アスペクト比のフィーチャをエッチングする必要がある用途に必要とされる場合がある。時には、又は特定の実施形態では、本明細書に記載のように生成された非晶質炭素ハードマスクを使用する用途は、酸化シリコンと窒化シリコンの交互層のスタック又はポリシリコンと酸化シリコンの交互層のスタックをエッチングする。3D NANDのコストに大きく寄与するのは、AHMを堆積するための時間であり、約0.25マイクロメートル/分の速度及び2μm厚のターゲット層では、堆積に8分以上かかる場合がある。したがって、膜特性への最小限の変化で、特にエッチング選択性を低下させることなく、AHMの堆積速度を上昇させることが望ましい。
【0021】
図1は、3D NAND構造を形成するための方法に従って実行される動作のプロセスフロー図を示す。動作182において、基板が提供される。様々な実施形態において、基板は、半導体基板である。基板は、シリコンウェハ、例えば、200mmウェハ、300mmウェハ、又は450mmウェハであってもよく、その上に堆積された誘電体、導体、又は半導体材料などの材料の1つ又は複数の層を有するウェハを含む。動作184において、誘電体層と導体層が交互になった膜スタックが、基板上に堆積される。いくつかの実施形態では、誘電体層は、酸化物層である。様々な実施形態において、堆積された酸化物層は、酸化シリコン層である。様々な実施形態において、導体層は、窒化物層、例えば、窒化シリコン層である。いくつかの実施形態では、導体層は、ポリシリコン層である。各誘電体層及び導体層は、約10nmから約100nmの間、又はいくつかの実施形態では約350Åなど、ほぼ同じ厚さに堆積される。酸化物層は、およそ室温から約600℃までの間の堆積温度で堆積されてもよい。本明細書で使用する「堆積温度」(又は「基板温度」)は、基板を保持する台座が堆積中に設定される温度を指すことが理解されよう。
【0022】
交互になった酸化物及び窒化物の膜スタックを形成するための酸化物層及び導体層は、原子層堆積(ALD)、プラズマ励起原子層堆積(PEALD)、化学蒸着(CVD)、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)、物理蒸着(PVD)、又はスパッタリングなどの任意の適切な技術を使用して堆積されてよい。様々な実施形態において、酸化物層及び窒化物層は、PECVDによって堆積される。
【0023】
膜スタックは、誘電体層と導体層が交互になった48から512の層を含んでもよく、これにより、各誘電体層又は導体層が1つの層を構成する。いくつかの実施形態では、膜スタックは、用途に応じて、48層未満、又は512層より多くの交互の誘電体層及び導体層を含んでもよい。交互の酸化物層及び窒化物層を含む膜スタックは、ONONスタックと呼ばれることもある。記載された膜スタックは、交互の酸化物層及び窒化物層を含んでもよいが、追加の層もスタックに含まれてもよく、さらに、酸化物層及び窒化物層ではない交互層のために他の材料が使用されてもよいことが理解されよう。例えば、場合によっては、窒化物層又は窒化シリコン層の代わりに、シリコンゲルマニウム層が使用されてもよい。スタック上にあってもよい他の追加の層は、シリコン含有層、ゲルマニウム含有層、又はその両方を含む。シリコン含有層の例としては、ドープ及びアンドープ炭化シリコン層、ドープ及びアンドープポリシリコン層、非晶質シリコン層、ドープ及びアンドープ酸化シリコン層、並びにドープ及びアンドープ窒化シリコン層が挙げられる。ドーパントは、非金属ドーパントを含んでもよい。例えば、ドープ炭化シリコン層は、酸素ドープ炭化シリコンである。別の例では、ドープ炭化シリコン層は、窒素ドープ炭化シリコンである。3D NAND用途のための堆積及びエッチング層のさらなる議論は、2019年9月10日に出願された出願PCT/US2019/050369に見出すことができ、これは、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
動作186において、非晶質炭素膜が基板上に形成される。非晶質炭素膜は、下地基板をエッチングするためのマスクとして好適なものになるように、本明細書で説明する様々な特性を有する。特定の用途では、膜は、少なくとも約1μmの厚さである。特定の実施形態では、膜は、少なくとも約1.5μmの厚さである。特定の実施形態では、膜は、少なくとも約2μmの厚さである。いくつかの実施形態では、膜は、約1μmから約2μmの厚さである。動作188において、非晶質炭素膜は、下地基板の一部が露出するようにパターニングされる。パターニングは、例えば、リソグラフィプロセスによって達成されてもよい。
【0025】
動作190において、膜スタックがエッチングされる。使用されるエッチング化学物質は、膜スタックの層よりも遅い速度で非晶質炭素膜がエッチングされるように、下地基板と比較して非晶質炭素膜に選択的である。エッチングの例としては、ラジカル及び/又はイオンベースのエッチングを挙げることができる。エッチング化学物質の例としては、フッ素含有、臭素含有、及び塩素含有エッチング化学物質などのハロゲンベースのエッチング化学物質を挙げることができる。例えば、フルオロカーボン含有プロセスガスから生成される容量結合プラズマが、酸化物層を選択的にエッチングするために使用されてもよい。プロセスガスの具体例としては、任意選択で酸素(O2)及び不活性ガスを伴うCxy含有プロセスガス、例えばC48/CH22/O2/Arなどが挙げられる。特定の実施形態では、非晶質炭素層は、エッチング種がプラズマ中で生成されるエッチングプロセスにおいて、ハードマスクとして使用される。
【0026】
最後に、動作192において、非晶質炭素膜が、例えば、アッシング、プラズマアッシング、又はドライストリッピングと呼ばれる技術によって、除去される。アッシングは、酸素リッチドライエッチングによって行われてもよい。多くの場合、例えばO2、N2O、及びNOの形態の酸素が、真空下のチャンバ内に導入され、RF電力がプラズマ中で酸素ラジカルを生成してAHMと反応し、水(H2O)、一酸化炭素(CO)、及び二酸化炭素(CO2)へと酸化させる。任意選択で、任意の残っているAHM残留物はまた、アッシング後にウェット又はドライエッチングプロセスによって除去されてもよい。その結果は、パターニングされた基板層である。
【0027】
図2は、図1の動作182~192の概略図100~150を提供する。図100では、基板105が提供される。基板105は、その上に前もって形成された1つ又は複数の層を有するシリコンウェハであってもよい。図110では、酸化物(101)膜及び窒化物(102)膜の交互層が、基板105上に堆積される。なお、図2に示す構造では、酸化物が最初に堆積され、次いで窒化物、酸化物、窒化物などが堆積されているが、窒化物が最初に堆積され、次いで酸化物、窒化物、酸化物などが堆積されてもよい。
【0028】
図120において、非晶質炭素膜105が、酸化膜と窒化膜のスタックの上に堆積される。このプロセスの詳細は、本明細書でさらに説明する。図130において、非晶質炭素膜105は、下層のスタックの部分を露出するようにパターニングされる。非晶質炭素膜105の露出した部分は、高アスペクト比のフィーチャがエッチングされる領域を画定する。図140では、非晶質炭素膜105をマスクとして使用して、下層のスタックをエッチングして、交互層のスタックに様々なフィーチャを形成する。図150では、非晶質炭素膜105が除去され、その結果、様々なフィーチャを有する酸化膜と窒化膜の交互層のエッチングされたスタックが得られる。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のAHMを使用してエッチングされるフィーチャは、約10:1から1000:1のアスペクト比を有し得る。いくつかの実施形態では、フィーチャの開口サイズは、約20~100nmの幅を含み得る。
【0030】
堆積プロセス
非晶質炭素ハードマスクを堆積するための特定のプロセスは、炭素前駆体を採用し、炭素前駆体は、プロピレンなどの炭化水素であってもよい。場合によっては、炭化水素前駆体は、比較的高い炭素対水素比を有する。いくつかの実施形態では、プロピレンは、重合してシャワーヘッドの穴を詰まらせたり、堆積チャンバの敏感なコンポーネント上に堆積する傾向が低いため、有利な炭素前駆体である。プロピレンはまた、本明細書に記載のプロセスに採用される高い圧力及び温度における安全性の懸念にとって有利であり得る。
【0031】
プロピレン又は他の適切な炭素含有前駆体に加えて、プロセスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、又はこれらのいずれかの組み合わせなどの不活性ガス又は化学的に反応しないガスを採用してもよい。
【0032】
従来のプロセスは、高品質の非晶質炭素層を生成し得るが、そのような膜を比較的ゆっくりと、例えば、毎分約0.25μmの速度で生成する。本明細書に記載の高アスペクト比エッチング用途の一部(例えば、1.5μm以上のハードマスク厚を必要とするもの)に求められるような比較的厚い膜を堆積する場合、この比較的遅い堆積速度は、プロセスのスループットに悪影響を与え、したがってコストを増加させる可能性がある。したがって、比較的高品質の層を生成するが、より迅速にそれを行うプロセスを採用することが望ましい場合がある。
【0033】
層をより迅速に堆積させる1つの方法は、プロセスガス中の反応物、特にプロピレン又は他の炭素含有前駆体の流量を増加させることである。しかし、単に流量を増加させるだけでは、高アスペクト比のフィーチャをエッチングするための非晶質炭素ハードマスクに望ましい、高密度、良好なエッチング選択性、低い水素含有量、及び適切な機械特性などの適切な特性の膜を必ずしも作成することはない。したがって、炭素前駆体の流量を増加させると、膜堆積速度が上昇し得るが、膜品質は、余分な炭素ハードマスク層を堆積させて全体的により厚い層を生成することなく、所望のエッチング特性を提供するには不十分な場合があり、層を生成する時間を減少させないこともある。
【0034】
層をより速く堆積させる別の方法は、堆積中にAHMのエッチングを抑制することである。堆積速度に寄与するものは、堆積プロセス中に発生する競合的なエッチングプロセスである。一般に、炭素前駆体は、ハードマスクの表面に堆積する炭素原子と相互作用し得る水素ラジカル又はイオンを生成し、例えばメタン又は他の揮発性生成物の発生につながり、最終的に炭素マスクをエッチングして正味の堆積速度を遅らせることがある。
【0035】
本発明者らは、六フッ化硫黄(SF6)などの、本明細書では「堆積エンハンサ分子」と呼ばれる特定の反応物をプロセスガスに添加すると、エッチングプロセスの速度が低下し、堆積速度の純増に至ることを発見した。理論に縛られることなく、SF6は、炭素前駆体及び/又は水素ラジカルと反応してSF及びHFを形成し、SF及びHFは、ハードマスクをエッチングすることなくプロセスチャンバから排出され得ると考えられる。HFの生成は、水素ラジカルの存在を減少させ、競合的なエッチングプロセスを抑制し、したがって、堆積の全体的な速度を上昇させる。
【0036】
本発明者らは、SF6が炭素前駆体の消費を増加させ、結果として得られる膜に最終的に堆積する炭素イオンの発生を増加させ得ることも発見した。以下の表1は、堆積速度及び様々な膜特性に対するSF6の効果を例示する。
【表1】
【0037】
上の表に示すように、SF6の流量を0から200sccmまで増加させると、堆積速度が約37%上昇し、モジュラス及び硬度がそれぞれ約15%及び10%減少する結果となる。300sccmのSF6の流量は、堆積速度をさらに上昇させるが、半区間均一性(R/2 NU%)の著しい低下及び消衰係数kの増加をもたらす。300sccmのSF6の流量は高い不均一性をもたらすが、これは、実験が行われたツールの限界の結果であると考えられ、SF6の300sccm以上の流量は、当業者に理解されるような適切な修正を伴い、300sccm未満と同様の均一性を有する、結果として得られる膜での堆積速度をさらに上昇させるために使用され得ると考えられる。上表のすべての堆積膜の他のプロセス条件は、550℃の台座温度、5Torrの圧力、1500sccmのC36の流量、13.56MHzで6000W、及び400kHzで3450Wを含む。図3は、表1に基づいて、SF6とC36の流量比の関数としての堆積速度のグラフを示す。プロセスガス中のSF6の比率が高くなると、流量が増加し、これは望ましい。
【0038】
プロセスウィンドウ
様々な実施形態において、速度ブースト添加剤が、非晶質炭素膜の堆積中にプロセスガスに添加される。いくつかの実施形態では、速度ブースト添加剤は、六フッ化硫黄である。特定の実施形態では、堆積プロセスは、約0.01から約0.5の体積(およそ1モルあたりの)比で六フッ化硫黄とプロピレンとを含む。特定の実施形態では、堆積プロセスは、約0.05から約0.15の体積(およそ1モルあたりの)比で六フッ化硫黄とプロピレンとを含む。
【0039】
特定の実施形態では、堆積プロセスは、約0.03から約0.5の体積(およそ1モルあたりの)比で、不活性ガス又は化学的に反応しないガス(例えば、Ar、He、及び/又はN2)とプロピレンとを含む。特定の実施形態では、堆積プロセスは、約0.15から約0.25の体積(およそ1モルあたりの)比で、不活性ガス又は化学的に反応しないガスとプロピレンとを含む。
【0040】
特定の実施形態では、堆積プロセスガスは、約3%から約50%のプロピレン又は他の炭化水素前駆体、約0.3から約25%の六フッ化硫黄、及び約25から約97.7%の不活性ガス又は化学的に反応しないガスを有する。すべてのパーセンテージは、体積又はモルによるものである。特定の実施形態では、堆積プロセスガスは、約15%から約25%のプロピレン又は他の炭化水素前駆体、約1.5から約12.5%の六フッ化硫黄、及び約62.5から約83.5%の不活性ガス又は化学的に反応しないガスを有する。特定の実施形態では、不活性ガス又は化学的に反応しないガスは、アルゴン、窒素、及び/又はヘリウムである。
【0041】
いくつかの実施形態では、プロセスガスは、プロピレン及び/又は他の炭素含有前駆体、不活性ガス、並びに六フッ化物からなる。いくつかの実施形態では、プロセスガスは、プロピレン及び/又は他の炭素含有前駆体、不活性ガス、並びに六フッ化物から実質的になる。
【0042】
いくつかの実施形態において、炭化水素前駆体は、式Cxyによって定義されるものであり、式中、Xは2~10の整数であり、Yは2~24の整数である。例としては、メタン(CH4)、アセチレン(C22)、エチレン(C24)、プロピレン(C36)、ブタン(C410)、シクロヘキサン(C612)、ベンゼン(C66)、及びトルエン(C78)が挙げられる。特定の実施形態では、プロセスガスは、プロピレンを単独で、又は任意選択で1つ又は複数の追加の炭化水素前駆体と組み合わせて含む。特定の実施形態では、炭化水素前駆体は、ハロゲン化炭化水素であり、ここで1つ又は複数の水素原子は、ハロゲン、特にフッ素、塩素、臭素、及び/又はヨウ素で置換されている。いくつかの実施形態では、炭化水素前駆体は、少なくとも1:2のC:H比を有する。いくつかの実施形態では、2つ以上の炭化水素前駆体が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、炭化水素前駆体は、アルケン、例えば、プロピレンであってもよい。いくつかの実施形態では、炭化水素前駆体は、アルキン、例えば、アセチレンであってもよい。
【0043】
本明細書は、AHM膜用の堆積エンハンサ分子としてSF6を主に特定しているが、いくつかの実施形態では、堆積エンハンサ分子は、超原子価のハロゲン化合物である。いくつかの実施形態では、堆積エンハンサ分子は、超原子価のフッ化物又は超原子価の塩化物である。超原子価のフッ化物及び超原子価の塩化物は、超原子価のフッ化硫黄(SF6、SF5)、超原子価の塩化リン又は超原子価のフッ化物(例えば、PCl5又はPF5)、及びフッ化キセノン(例えば、XeF2、XeF4、XeF6)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、SF6ではなく、又はSF6に加えて、プロセスガスは、超原子価の塩化リン若しくは超原子価のフッ化物、又はフッ化キセノン(キセノンは8電子で始まるので、フッ化キセノンは、希ガス化合物として、超原子価の化合物と考えられ得ることに留意されたい)の1つ又は複数を含んでもよい。いくつかの実施形態において、堆積エンハンサ分子は、SF6、超原子価の塩化リン又はフッ化物、フッ化キセノン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、堆積エンハンサ分子は、フッ素含有化合物又は塩素含有化合物であってもよい。いくつかの実施形態では、堆積エンハンサ分子は、AHM膜の堆積中に水素イオン及び/又はラジカルと反応する。堆積エンハンサ分子は、AHM膜にいかなる種も実質的に堆積させない一方で、本明細書に記載の競合的な水素エッチングプロセスを低減し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、プロセスチャンバ内の圧力は、典型的には、約1から約15Torr、約2.3から約10.7Torr、又は約5Torrであってもよい。いくつかの実施形態では、高周波(13.56MHz電力)は、4ステーション構成の場合、約50から約8000W、約400から約4000W、又は約6000Wであってもよい。いくつかの実施形態では、低周波(400kHz電力)は、4ステーション構成の場合、約0から約6000W、約900から約4000W、又は約3450Wであってもよい。
【0045】
堆積温度が高いほど、非晶質炭素膜中に存在する水素が少なくなることが、他の文脈で観察されている。ハードマスク用途では水素の量が少ないことが望ましいので、温度を可能な限り高くすることが多い。いくつかの実施形態では、台座温度は、約20℃から約750℃、最高でも約650℃、又は約550℃から約650℃、又は約650℃であってもよい。特定の実施形態では、少なくとも約400℃、又は少なくとも約450℃である。特定の実施形態では、少なくとも約500℃である。650℃よりはるかに高い温度は、チャンバ内でのアーク発生などの望ましくないプラズマ結果をもたらす場合があることが観察されている。
【0046】
堆積された膜は、ウェハの面上で比較的均一であるべきである。堆積された膜の均一性又は不均一性の相対的な量は、必ずしも非晶質炭素層の組成の固有の特性ではなく、非晶質炭素層を堆積するために使用されるプロセス条件の強い関数である。
【0047】
プロセスメカニズム
理論に束縛されることは望まないが、炭素含有前駆体からの非晶質炭素層の堆積速度は、少なくとも2つの経路によって影響されると考えられている。
【0048】
第1の経路は、少なくとも1つの水素原子をストリッピングすることによる炭素前駆体、例えばプロピレンの活性化を含む。最も可能性の高いアセチレンは、反応中間体であると考えられている。つまり、何らかの方法で、プロピレンはアセチレンに変換される。その後、アセチレンが反応して、基板表面に非晶質炭素層が生成される。
【0049】
堆積速度に影響を与える第2の経路は、プラズマ中で生成された水素ラジカル及び/又は水素イオンが堆積炭素膜と相互作用して炭素-水素結合を形成する競合的なエッチングプロセスである。十分な水素が所定の炭素原子に付着すると、揮発性のメタン又は他の軽い炭化水素を形成し、そうでなければ非晶質炭素ハードマスクの構築に使用される炭素原子を伴いチャンバから流出する。
【0050】
したがって、非晶質炭素ハードマスクの堆積は、プロピレンから非晶質炭素への堆積経路と、競合的な水素媒介エッチング反応との間のバランスである。
【0051】
理論に束縛されることは望まないが、六フッ化硫黄はこれらの経路の両方に影響を与えると考えられている。六フッ化硫黄は、プラズマ中の水素と反応し、成長膜をエッチングしないフッ化水素を形成すると思われる。HFはまた、RBS又は固体状態のFTIRによって得られる膜にフッ素が見られないことから、堆積種とはみなされない。したがって、六フッ化硫黄の存在は、競合的な水素媒介エッチングプロセスを低減し得る。
【0052】
この点に関してやや驚くべきことに、六フッ化硫黄自体は、堆積非晶質炭素膜をエッチングしないか、又は少なくとも著しくエッチングしないことがわかっている。六フッ化硫黄は、集積回路製造産業においてエッチャントガスとして広く使用されている。驚くべきことに、堆積炭素層がない場合、本明細書において使用が望まれるプロセスガスである六フッ化硫黄及びプロピレンが反応して、六フッ化炭素を形成することがわかっている。この結果は、エッチャントガスとして広く使用されている六フッ化硫黄が、形成される非晶質炭素ハードマスクと反応し、それをエッチングすることを示唆する。しかし、これは事実ではない。
【0053】
図7は、SF6単独(実線)及びAr/Heを伴うSF6(点線)の気相FTIRスペクトルを重ね合わせて示す。SF6単独の1000付近の大きなピーク、及び他の場所にピークがないことは、SF6単独がプラズマの存在下で解離しないことを示す。
【0054】
点線は、Ar/Heを伴うSF6を表し、3600を超える多数のピークは、HFの発生を表し、SF6がアルゴン、ヘリウム、窒素、又はC36などのキャリアガスの存在下で解離することを示し、C36はプラズマ中でイオン又は反応中性物質に解離することがある。
【0055】
さらに、SiF4及びCF4が生成されたことを示すピークが存在する。本発明者らは、SiF4及びCF4の存在は、この実験が行われたチャンバ内に残留する炭素及びシリコンに起因すると考えている。このような生成物やHFの存在は、さらに、アルゴン及びヘリウムプラズマの存在下でSF6が解離したことを示す。SiF4及びCF4の存在はまた、SF6が一般的に使用される、通常AHM堆積には好ましくないエッチングプロセスを示している。このことのみに基づくと、このスペクトルは、SF6が堆積中のAHM膜から炭素をエッチングすることを示す。
【0056】
図8は、Ar/Heを伴うC36の気相FTIRスペクトルを、Ar/He及びSF6を伴うC36の気相FTIRスペクトルから差し引いたものを示す。正の強度は、SF6を導入した化学種における増加を示し、負の強度は、化学種における減少を示す。予想外なことに、SF6を添加しても、すでに上記表1に示したように、膜のエッチングは起こらなかった。SF6を添加すると、C36の量が減少し、プロピレンの消費量がより多いことを示す。これは、プラズマ中でプロピレンが解離して、C35と水素の反応中性物質を形成し、これがSF6と反応してHFを形成することにより引き起こされ得る。SF6は、吸収源として作用して水素を消費し、3600を超えるピークで表されるHFの増加を引き起こす。SF6は、図8のスペクトルにおいて大きなピークを有するので、堆積プロセス中に完全に消費されない可能性もある。
【0057】
さらに、アセチレンに関連する正のピークは、プロピレンのより大きな消費を示唆する。アセチレンは、堆積中のプロピレンからの中間生成物と考えられ、FTIR読み取りを行う際に排気ラインで容易に追跡できる。したがって、アセチレンは堆積種に変換され得るが、その存在はC36の解離の増加を示し、これは堆積速度の上昇を示す。
【0058】
さらに、SF6及びAr/Heは、SiF4及びCF4に関連するピークを示したが(図7を参照)、ここではそのようなピークはない。これは、プロピレンからの水素ラジカルとイオンがSF6と反応してHFを形成し、フッ素が炭素又はシリコンをエッチングしてSiF4又はCF4を形成するのを抑制した結果であると考えられる。したがって、図7のスペクトルは、SF6が炭素膜をエッチングすることを示しているが、図8は、プロピレンの存在下でSF6がCF4を生成しないため、エッチングを増加させるのではなく、膜のエッチングを抑制していることを示している。
【0059】
膜特性
高アスペクト比のパターニングは、高いエッチング選択性を有するAHMsを使用する。重要なことは、エッチング選択性を維持しながら堆積速度を上げると、IC製造に使用されるAHM膜の所有コストを低くすることができ、これは望ましいことである。いくつかの実施形態では、堆積速度は、少なくとも約3500Å/分、少なくとも約4500Å/分、又は約3500から約6000Å/分である。
【0060】
エッチング選択性は、AHM層のエッチング速度を下地層と比較することによって判定できる。エッチング選択性は、AHM層の水素含有量、屈折率(RI)、密度、及びヤング率、つまり剛性を判定することによって近似できることもある。典型的には、より低い水素含有量、より高いRI、より高い密度、かつより高いモジュラス、つまりより剛性の強いAHMは、より多くのイオン衝撃を含むエッチングプロセスにおいて、より高いエッチング速度に耐えることができる。したがって、より低い水素含有量、より高いRI、より高い密度、及び/又はより高いモジュラスを有するAHMは、より高い選択性及びより低いエッチング速度を有し、高アスペクト比半導体プロセスの処理に、より効率的かつ効果的に使用できる。AHMの所望のエッチング選択性は、エッチングプロセス及び下地層の組成に依存し得るが、エッチング選択性と上記の材料特性との間の相関は、エッチングプロセス又は下地層の組成に関わらず同じままである。ここで説明した選択性の相関は、ポリシリコン層、酸化物層、及び窒化物層を含むすべての種類の下地層に適用される。
【0061】
開示された方法に従って生成されたAHM膜は、典型的には、主に炭素及び水素で構成されるが、他の元素が膜中に存在してもよい。いくつかの実施形態では、炭素濃度は、少なくとも約70%原子である。AHM膜中に存在し得る他の元素の例としては、ハロゲン、窒素、硫黄、ホウ素、酸素、タングステン、チタン、及びアルミニウムが挙げられる。典型的には、そのような他の元素は、約10%原子より多くない量で存在する。いくつかの実施形態では、水素濃度は、多くとも約28%原子、多くとも約25%原子、又は多くとも約10%原子である。
【0062】
堆積された非晶質炭素層は、比較的高い密度を有するべきである。特定の実施形態では、非晶質炭素層は、約1.65から約1.85g/cm3の密度を有する。特定の実施形態では、非晶質炭素層は、約5.0から約8.5GPaの硬度を有する。
【0063】
密度は体積あたりの質量の単位で定義されるが、密度の直接測定は、常に容易に利用できるわけではない。しかし、場合によっては、より簡単に測定可能な特性が、密度の代用となってもよい。そのような特性の1つは、モジュラスである。いくつかの実施形態では、非晶質炭素層は、約40から約90GPa、約60から約85GPa、又は約90から約175GPaのモジュラスを有する。
【0064】
堆積された非晶質炭素層の比較的低い内部応力は、様々な実施形態に適している。比較的低い内部応力は、膜がウェハに弓形又は反りを導入する可能性が低いことを示唆する。特定の実施形態では、非晶質炭素層は、約-100から約-550MPa、又は約-75から約-150MPaの内部応力を有する(マイナスは圧縮)。
【0065】
特定の実施形態では、非晶質炭素層は、ダイヤモンドライクカーボンと比較して、比較的高いグラファイト状炭素の含有量を有する。それは、sp3結合と比較して、比較的高い結合含有量のsp2結合を有するべきである。特定の実施形態では、非晶質炭素層は、約5%から約30%、又は約10%から約15%のsp2含有量を有し、非晶質炭素層の残りは、ダイヤモンドライクsp3結合を有する。
【0066】
非晶質炭素層は、EMスペクトルの光学領域において、その消衰係数kによって特徴付けられることもある。消衰係数は、sp2結合とsp3結合の相対量の代用となり得る。比較的高い消衰係数は、測定波長においてより暗く不透明な材料を示唆する。言い換えれば、633nmにおける比較的高い消衰係数は、膜中のグラファイト含有量が比較的高いことを示唆する。いくつかの実施形態では、消衰係数は、約0.40から約0.70、又は約0.45から約0.65である。特定の実施形態では、非晶質炭素層は、約1.9から約2.2、又は2.0から約2.1の屈折率を有する。
【0067】

図4~6は、SF6流量比の増加に伴う堆積された非晶質炭素膜の特性の変化を示す各種グラフを示す。図4~6の値は、上記の表1からの値である。
【0068】
図4は、SF6対C36流量比の関数としてのモジュラス402及び応力404のグラフを示す。一般に、より高いモジュラスが望ましいが、モジュラスにおける~8GPaの低下は、控えめであり、AHMの全体的な所有コストを低減するための堆積速度の上昇に対して許容できると考えられる。さらに、膜の応力は、SF6でわずかに中立になり、これは、ラインの均一性を低下させるAHMの反りを低減するために一般的に望ましい。
【0069】
図5は、SF6対C36流量比の関数としての屈折率502及び消衰係数504のグラフを示す。一般に、屈折率の変化は公称で、誤差の範囲内と考えられ、したがって、SF6の添加は屈折率を有意に増加させることはない。消衰係数も同様に、SF6がプロセスガス流に添加されるとわずかに変化するが、SF6は消衰係数を有意に増加させることはない。
【0070】
図6は、SF6対C36流量比の関数としての水素含有量602及び硫黄含有量604のグラフを示す。明らかなように、水素含有量の測定値はすべて、誤差の標準内にあり、これは、SF6の存在が、得られる膜の水素含有量を増加させることなく堆積速度を上昇させることを示し、これは望ましいことである。一方、硫黄含有量は、SF6の100sccmの増加あたり約0.1%増加するが、この変化は、得られる膜のエッチング選択性に影響を与えないと考えられる。
【0071】
図4~6に例示されるように、SF6を添加すると、モジュラス及び応力が低下する。より中立な応力は、反りを低減するのに有益である。モジュラスと水素含有量は、膜の性能に関して強く相関するが、本明細書に記載の膜のように水素含有量が低いと、モジュラスは、水素含有量が高い場合ほどエッチング選択性に強く相関しない。
【0072】
屈折率は、とりわけ、不透明なグラファイト状sp2結合と比較した、透明なダイヤモンドライクsp3結合の量を示すため、密度の代用となる。ここでは、RIの変化は、膜特性に関して許容範囲内である。消衰係数は、膜中のグラファイト状結合及びダイヤモンドライク結合の量と相関する。膜中の水素又は硫黄の含有量は、消衰係数を低下させる。
【0073】
装置
実施形態は、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)リアクタにおいて実施できる。このようなリアクタは、多くの異なる形態をとってもよい。様々な実施形態は、既存の半導体処理装置、特に、Lam Research Corporationから入手可能なSequel(商標)又はVector(商標)リアクタチャンバなどのPECVDリアクタと互換性がある。様々な実施形態は、マルチステーション又はシングルステーションのツールで実施されてもよい。具体的な実施形態では、4ステーション成膜スキームを有する300mmのLam Vector(商標)ツール、又は6ステーション成膜スキームを有する200mmのSequel(商標)ツールを使用する。本明細書に記載されるプロセスパラメータは、300mm基板に成膜する4ステーションチャンバのものであるが、適切な修正が、より多い、又はより少ないステーション、より大きい、又はより小さい基板に対して使用されてもよい。
【0074】
一般に、装置は、それぞれが1つ又は複数のステーションを含む1つ又は複数のチャンバ又はリアクタを含む。チャンバは、1つ又は複数のウェハを収容し、ウェハ処理に適している。1つ又は複数のチャンバは、回転、振動、又は他の攪拌を防止することによって、ウェハを1つ又は複数の規定の位置に維持する。いくつかの実施形態では、AHM堆積を受けるウェハは、プロセス中にチャンバ内であるステーションから別のステーションに搬送される。例えば、2000nmのAHM堆積は、完全に1つのステーションで発生してもよく、又は500nmの膜が、様々な実施形態に従い4つのステーションのそれぞれで堆積されてもよい。或いは、全膜厚の他の任意の小部分が、任意の数のステーションで堆積されてもよい。2つ以上のAHMが堆積される様々な実施形態では、各AHM層を堆積するために2つ以上のステーションが使用されてもよい。処理中、各ウェハは、台座、ウェハチャック、及び/又は他のウェハ保持装置によって所定の位置に保持される。ウェハが加熱される特定の動作のために、装置は、加熱プレートなどのヒータを含んでもよい。
【0075】
図9は、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)を使用して材料を堆積するために使用され得るプロセスステーション900の一実施形態を概略的に示す。単純化のために、プロセスステーション900は、低圧環境を維持するためのプロセスチャンバ本体902を有するスタンドアロンプロセスステーションとして記載される。しかしながら、複数のプロセスステーション900が、共通のプロセスツール環境に含まれてもよいことが理解されよう。さらに、いくつかの実施形態では、以下で詳細に論じるものを含むプロセスステーション900の1つ又は複数のハードウェアパラメータは、1つ又は複数のコンピュータコントローラによってプログラム的に調整されてもよいことが理解されよう。
【0076】
プロセスステーション900は、プロセスガスを分配シャワーヘッド906に送達するための反応物送達システム901と流体連通する。反応物送達システム901は、シャワーヘッド906に送達するためのプロセスガスを混ぜ合わせ、かつ/又は条件を調整するための混合容器904を含む。1つ又は複数の混合容器入口弁920は、混合容器904へのプロセスガスの導入を制御してもよい。同様に、シャワーヘッド入口弁905は、シャワーヘッド906へのプロセスガスの導入を制御してもよい。
【0077】
例えば、図9の実施形態は、混合容器904に供給されるべき液体反応物を気化させるための気化ポイント903を含む。いくつかの実施形態では、気化ポイント903は、加熱された気化器であってもよい。そのような気化器から生成された反応物蒸気は、下流の送達配管で凝縮する場合がある。凝縮した反応物への不適合のガスの曝露は、小さな粒子を生成することもある。これらの小さな粒子は、配管を詰まらせ、弁の動作を妨げ、基板を汚染したりすることもある。このような問題に対処するためのいくつかのアプローチは、送達配管を掃除し、かつ/又は排気して、残留する反応物を除去することを含む。しかし、送達配管を掃除することは、プロセスステーションのサイクル時間を増加させ、プロセスステーションのスループットを低下させる場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、気化ポイント903の下流の送達配管は、ヒートトレースされてもよい。いくつかの例では、混合容器904もまた、ヒートトレースされてもよい。1つの非限定的な例では、気化ポイント903の下流の配管は、混合容器904において約100℃から約150℃まで延びる増加する温度プロファイルを有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、反応物液体は液体インジェクタで気化されてもよい。例えば、液体インジェクタは、液体反応物のパルスを混合容器の上流のキャリアガス流に注入してもよい。あるシナリオでは、液体インジェクタは、液体をより高い圧力からより低い圧力に急減圧することによって反応物を気化させてもよい。別のシナリオでは、液体インジェクタは、液体を霧化して分散した微小液滴にし、その後、加熱された送達配管で気化させてもよい。より小さな液滴は、より大きな液滴よりも速く気化し、液体の注入と完全な気化の間の遅延を減少させ得ることが理解されよう。より速い気化は、気化ポイント903から下流の配管の長さを減らし得る。あるシナリオでは、液体インジェクタは、混合容器904に直接取り付けられてもよい。別のシナリオでは、液体インジェクタは、シャワーヘッド906に直接取り付けられてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、気化ポイント903の上流に液体流コントローラが、気化及びプロセスステーション900への送達のための液体の質量流量を制御するために設けられてもよい。例えば、液体流コントローラ(LFC)は、LFCの下流に位置する熱式質量流量計(MFM)を含んでもよい。そして、LFCのプランジャーバルブは、MFMと電気的に連通している比例-積分-微分(PID)コントローラによって提供されるフィードバック制御信号に応答して調整されてもよい。しかし、フィードバック制御を使用して液体流を安定させるには、1秒以上かかることもある。これは、液体反応物を添加するための時間を延長する場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、LFCは、フィードバック制御モードと直接制御モードとの間で動的に切り替えられてもよい。いくつかの実施形態では、LFCは、LFC及びPIDコントローラのセンスチューブを無効にすることによって、フィードバック制御モードから直接制御モードへ動的に切り替えられてもよい。
【0080】
シャワーヘッド906は、基板912に向かってプロセスガスを分配する。図9に示す実施形態では、基板912は、シャワーヘッド906の下に位置し、台座908の上に静止して示されている。シャワーヘッド906は、任意の適切な形状を有してもよく、かつ基板912にプロセスガスを分配するためのポートの任意の適切な数及び配置を有してもよいことが理解されよう。
【0081】
いくつかの実施形態では、微容積907が、シャワーヘッド906の下に配置される。ALD及び/又はCVDプロセスをプロセスステーションの全容積ではなく微容積で実行すると、反応物の曝露時間及びスイープ時間が減少し、プロセス条件(例えば、圧力、温度等)を変更するための時間が減少し、プロセスガスへのプロセスステーションのロボットの曝露が制限される等の可能性がある。微容積のサイズ例としては、0.1リットルから2リットルの間の容積が挙げられるが、これらに限定されない。この微容積は、生産性のスループットにも影響する。サイクルあたりの堆積速度が低下する一方で、サイクル時間も同時に短縮される。特定の場合では、後者の効果は、所与の目標膜厚のためのモジュールの全体的なスループットを改善するのに十分なほど劇的である。
【0082】
いくつかの実施形態では、台座908は、基板912を微容積907に曝露するために、かつ/又は微容積907の容積を変化させるために、上げ下げされてもよい。例えば、基板搬送段階において、台座908は、基板912を台座908上に搭載できるように下げられてもよい。堆積プロセス段階の間、台座908は、基板912を微容積907内に配置するために上げられてもよい。いくつかの実施形態では、微容積907は、基板912だけでなく、台座908の一部を完全に囲んで、堆積プロセス中に高いフローインピーダンスの領域を形成してもよい。
【0083】
任意選択で、台座908は、微容積907内のプロセス圧力、反応物濃度などを調整するために、堆積プロセスの部分の間に下げられ、かつ/又は上げられてもよい。プロセスチャンバ本体902が堆積プロセス中にベース圧力に留まる1つのシナリオでは、台座908を下げると、微容積907を排気することが可能になり得る。微容積とプロセスチャンバ容積の比率の例として、1:900から1:10の間の容積比率が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、台座の高さは、適切なコンピュータコントローラによってプログラム的に調整されてもよいことが理解されよう。
【0084】
別のシナリオでは、台座908の高さを調整することによって、堆積プロセスに含まれるプラズマ活性化及び/又は処理サイクルの間にプラズマ密度を変化させることが可能となり得る。堆積プロセス段階の終了時に、台座908は、別の基板搬送段階の間に下げられ、台座908からの基板912の除去を可能にしてもよい。
【0085】
本明細書に記載された微容積の変化の例は、高さ調整可能な台座に言及しているが、いくつかの実施形態では、シャワーヘッド906の位置を台座908に対して調整して微容積907の容積を変化させてもよいことが理解されよう。さらに、台座908及び/又はシャワーヘッド906の垂直位置は、本開示の範囲内の任意の適切な機構によって変化させてもよいことが理解されよう。いくつかの実施形態では、台座908は、基板912の向きを回転させるための回転軸を含んでもよい。いくつかの実施形態では、これらの調整例の1つ又は複数が、1つ又は複数の適切なコンピュータコントローラによってプログラム的に実行されてもよいことが理解されよう。
【0086】
図9に示す実施形態に戻ると、シャワーヘッド906及び台座908は、プラズマに電力を供給するためにRF電源914及び整合ネットワーク916と電気的に連通する。いくつかの実施形態では、プラズマエネルギーは、プロセスステーション圧力、ガス濃度、RF源電力、RF源周波数、及びプラズマ電力パルスタイミングの1つ又は複数を制御することによって制御されてもよい。例えば、RF電源914及び整合ネットワーク916は、ラジカル種の所望の組成を有するプラズマを形成するために、任意の適切な電力で動作されてもよい。適切な電力の例は、上記に含まれる。同様に、RF電源914は、任意の適切な周波数のRF電力を提供してもよい。いくつかの実施形態では、RF電源914は、高周波及び低周波のRF電源を互いに独立して制御するように構成されてもよい。低周波RF周波数の例は、50kHzから700kHzの間の周波数を含み得るが、これらに限定されない。高周波RF周波数の例は、1.8MHzから2.45GHzの間の周波数を含み得るが、これらに限定されない。任意の適切なパラメータが、表面反応のためのプラズマエネルギーを提供するために、離散的又は連続的に調整されてもよいことが理解されよう。1つの非限定的な例では、プラズマ電力は、連続的に電力が供給されるプラズマと比較して、基板表面とのイオン衝撃を低減するために、断続的にパルス化されてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、プラズマは、1つ又は複数のプラズマモニタによってインサイチュ監視されてもよい。あるシナリオでは、プラズマ電力は、1つ又は複数の電圧、電流センサ(例えば、VIプローブ)によって監視されてもよい。別のシナリオでは、プラズマ密度及び/又はプロセスガス濃度は、1つ又は複数の発光分光分析センサ(OES)によって測定されてもよい。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のプラズマパラメータは、そのようなインサイチュのプラズマモニタからの測定に基づいてプログラム的に調整されてもよい。例えば、OESセンサは、プラズマ電力のプログラム制御を提供するためのフィードバックループで使用されてもよい。いくつかの実施形態において、プラズマ及び他のプロセス特性を監視するために、他のモニタが使用されてもよいことが理解されよう。このようなモニタは、赤外線(IR)モニタ、音響モニタ、及び圧力変換器を含み得るが、これらに限定されない。
【0088】
いくつかの実施形態では、プラズマは、入力/出力制御(IOC)順序付け命令を介して制御されてもよい。一例では、プラズマプロセス段階のためのプラズマ条件を設定するための命令は、堆積プロセスレシピの対応するプラズマ活性化レシピ段階に含まれてもよい。場合によっては、プロセスレシピ段階は、堆積プロセス段階のためのすべての命令がそのプロセス段階と同時に実行されるように、順次配列されてもよい。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のプラズマパラメータを設定するための命令は、プラズマプロセス段階に先行するレシピ段階に含まれてもよい。例えば、第1のレシピ段階は、不活性ガス及び/又は炭化水素前駆体ガスの流量を設定するための命令と、プラズマ発生器を電力設定点に設定するための命令と、第1のレシピ段階のための時間遅延命令とを含んでもよい。第2の後続のレシピ段階は、プラズマ発生器を有効にするための命令と、第2のレシピ段階のための時間遅延命令とを含んでもよい。第3のレシピ段階は、プラズマ発生器を無効にするための命令と、第3のレシピ段階のための時間遅延命令とを含んでもよい。これらのレシピ段階は、本開示の範囲内の任意の適切な方法でさらに細分化及び/又は反復され得ることが理解されよう。
【0089】
いくつかの実施形態では、台座908は、ヒータ910を介して温度制御されてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、堆積プロセスステーション900の圧力制御は、バタフライバルブ918によって提供されてもよい。図9の実施形態に示すように、バタフライバルブ918は、下流の真空ポンプ(図示せず)によって提供される真空を絞る。しかしながら、いくつかの実施形態では、プロセスステーション900の圧力制御は、プロセスステーション900に導入される1つ又は複数のガスの流量を変化させることによっても調整されてよい。
【0090】
図10は、インバウンドロードロック1002及びアウトバウンドロードロック1004を有するマルチステーション処理ツール1000の一実施形態の概略図を示し、インバウンドロードロック1002及びアウトバウンドロードロック1004のいずれか又は両方がリモートプラズマ源を含んでもよい。ロボット1006は、大気圧で、ポッド1008を介して装填されたカセットから大気ポート1010を介してインバウンドロードロック1002にウェハを移動するように構成される。ウェハは、ロボット1006によってインバウンドロードロック1002内の台座1012に置かれ、大気ポート1010が閉じられ、ロードロックがポンプダウンされる。インバウンドロードロック1002がリモートプラズマ源を含む場合、ウェハは、処理チャンバ1014に導入される前に、ロードロック内でリモートプラズマ処理に曝露されてもよい。さらに、ウェハはまた、例えば、水分及び吸着ガスを除去するために、同様にインバウンドロードロック1002において加熱されてもよい。次に、処理チャンバ1014へのチャンバ搬送ポート1016が開かれ、別のロボット(図示せず)が、処理のためにリアクタ内に示された第1のステーションの台座にウェハを置く。図10に描かれた実施形態はロードロックを含むが、いくつかの実施形態では、ウェハがプロセスステーションに直接進入するようにしてもよいことが理解されよう。
【0091】
描かれた処理チャンバ1014は、図10に示された実施形態では1から4の番号を付された4つのプロセスステーションを含む。各ステーションは、加熱された台座(ステーション1については1018で示されている)と、ガスライン入口とを有する。いくつかの実施形態では、各プロセスステーションは、異なる又は複数の目的を有し得ることが理解されよう。描かれた処理チャンバ1014は4つのステーションを含むが、本開示に係る処理チャンバは、任意の適切な数のステーションを有してもよいことが理解されよう。例えば、いくつかの実施形態では、処理チャンバは5つ以上のステーションを有してもよく、他の実施形態では、処理チャンバは3つ以下のステーションを有してもよい。
【0092】
図10はまた、処理チャンバ1014内でウェハを搬送するためのウェハ処理システム1090の一実施形態を描いている。いくつかの実施形態では、ウェハ処理システム1090は、様々なプロセスステーション間、及び/又はプロセスステーションと1つのロードロックとの間で、ウェハを搬送してもよい。任意の適切なウェハ処理システムが採用されてよいことが理解されよう。非限定的な例としては、ウェハカルーセル及びウェハ処理ロボットが挙げられる。図10はまた、プロセスツール1000のプロセス条件及びハードウェア状態を制御するために採用されるシステムコントローラ1050の一実施形態を描いている。システムコントローラ1050は、1つ又は複数のメモリデバイス1056と、1つ又は複数の大容量記憶装置1054と、1つ又は複数のプロセッサ1052とを含んでもよい。プロセッサ1052は、CPU又はコンピュータ、アナログ及び/又はデジタル入力/出力接続、ステッピングモータコントローラボードなどを含んでもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、システムコントローラ1050は、プロセスツール1000の活動のすべてを制御する。システムコントローラ1050は、大容量記憶装置1054に記憶され、メモリデバイス1056にロードされ、かつプロセッサ1052上で実行されるシステム制御ソフトウェア1058を実行する。システム制御ソフトウェア1058は、タイミング、ガスの混合、チャンバ及び/又はステーションの圧力、チャンバ及び/又はステーションの温度、パージ条件及びタイミング、ウェハ温度、RF電力レベル、RF周波数、基板、台座、チャック及び/又はサセプタ位置、並びにプロセスツール1000によって実行される特定のプロセスの他のパラメータを制御する命令を含んでもよい。システム制御ソフトウェア1058は、任意の適切な方法で構成されてもよい。例えば、開示された方法に従って様々なプロセスツールのプロセスを実施するために必要なプロセスツールコンポーネントの動作を制御するために、様々なプロセスツールコンポーネントのサブルーチン又は制御オブジェクトが書き込まれてもよい。システム制御ソフトウェア1058は、任意の適切なコンピュータ可読プログラミング言語でコードディングされてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、システム制御ソフトウェア1058は、上述の様々なパラメータを制御するための入力/出力制御(IOC)順序付け命令を含んでもよい。システムコントローラ1050に関連する大容量記憶装置1054及び/又はメモリデバイス1056に記憶された他のコンピュータソフトウェア及び/又はプログラムが、いくつかの実施形態において採用されてもよい。この目的のためのプログラム又はプログラムのセクションの例は、基板位置決めプログラム、プロセスガス制御プログラム、圧力制御プログラム、ヒータ制御プログラム、及びプラズマ制御プログラムを含む。
【0095】
基板位置決めプログラムは、基板を台座1018に搭載し、かつ基板とプロセスツール1000の他の部品との間の間隔を制御するために用いられるプロセスツールコンポーネントのためのプログラムコードを含んでもよい。
【0096】
プロセスガス制御プログラムは、ガス組成と流量とを制御するためのコード、及び任意選択でプロセスステーション内の圧力を安定させるために堆積前にガスを1つ又は複数のプロセスステーション内に流すためのコードを含んでもよい。プロセスガス制御プログラムは、開示された範囲のいずれかの範囲内でガス組成及び流量を制御するためのコードを含んでもよい。圧力制御プログラムは、例えば、プロセスステーションの排気システムの絞り弁、プロセスステーション内へのガス流などを調整することによって、プロセスステーション内の圧力を制御するためのコードを含んでもよい。圧力制御プログラムは、開示された圧力範囲のいずれかの範囲内で、プロセスステーション内の圧力を維持するためのコードを含んでもよい。
【0097】
ヒータ制御プログラムは、基板を加熱するために使用される加熱ユニットへの電流を制御するためのコードを含んでもよい。或いは、ヒータ制御プログラムは、熱伝達ガス(ヘリウムなど)の基板への送達を制御してもよい。ヒータ制御プログラムは、開示された範囲のいずれかの範囲内で基板の温度を維持するための命令を含んでもよい。
【0098】
プラズマ制御プログラムは、例えば、本明細書に開示されたRF電力レベルのいずれかを使用して、1つ又は複数のプロセスステーションのプロセス電極に適用されるRF電力レベル及び周波数を設定するためのコードを含んでもよい。プラズマ制御プログラムはまた、各プラズマ曝露の持続時間を制御するためのコードを含んでもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、システムコントローラ1050に関連づけられたユーザインタフェースが存在してもよい。ユーザインタフェースは、ディスプレイスクリーン、装置及び/又はプロセス条件のグラフィカルソフトウェアディスプレイ、並びに、ポインティングデバイス、キーボード、タッチスクリーン、マイクロフォンなどのユーザ入力デバイスを含んでもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、システムコントローラ1050によって調整されるパラメータは、プロセス条件に関するものであってもよい。非限定的な例として、プロセスガス組成及び流量、温度、圧力、プラズマ条件(RF電力レベル、周波数、及び曝露時間)などが挙げられる。これらのパラメータは、レシピの形態でユーザに提供されてもよく、ユーザインタフェースを利用して入力されてもよい。
【0101】
プロセスを監視するための信号は、様々なプロセスツールセンサから、システムコントローラ1050のアナログ及び/又はデジタル入力接続によって提供されてもよい。プロセスを制御するための信号は、プロセスツール1000のアナログ及びデジタル出力接続で出力されてもよい。監視され得るプロセスツールセンサの非限定的な例として、質量流量コントローラ、圧力センサ(マノメータなど)、熱電対などが挙げられる。適切にプログラムされたフィードバック及び制御アルゴリズムが、プロセス条件を維持するために、これらのセンサからのデータと共に使用されてもよい。
【0102】
開示された実施形態を実施するために、任意の適切なチャンバが使用されてもよい。成膜装置の例として、カリフォルニア州フリーモントのLam Research Corp.からそれぞれ入手可能なALTUS(登録商標)製品ファミリ、VECTOR(登録商標)製品ファミリ、及び/又はSPEED(登録商標)製品ファミリの装置、又は他の市販の種々の処理システムの任意のものが挙げられるが、これらに限定されない。2つ以上のステーションが、同じ機能を実行してもよい。同様に、2つ以上のステーションが、異なる機能を実行してもよい。各ステーションは、必要に応じて特定の機能/方法を実行するように設計/構成できる。
【0103】
図11は、特定の実施形態に従って薄膜堆積プロセスを行うのに適した処理システムのブロック図である。システム1100は、搬送モジュール1103を含む。搬送モジュール1103は、処理されている基板が様々なリアクタモジュール間を移動する際に汚染されるリスクを最小化するために、清浄で加圧された環境を提供する。2つのマルチステーションリアクタ1109及び1110が搬送モジュール1103に取り付けられており、それぞれが、特定の実施形態に従って、原子層堆積(ALD)及び/又は化学蒸着(CVD)を実行できる。リアクタ1109及び1110は、開示された実施形態に従って動作を順次又は不連続的に実行し得る複数のステーション1111、1113、1115、及び1117を含んでもよい。ステーションは、加熱された台座又は基板支持体、1つ又は複数のガス入口又はシャワーヘッド又は分散板を含んでもよい。
【0104】
また、搬送モジュール1103には、プラズマ若しくは化学(非プラズマ)前洗浄、又は開示された方法に関連して説明される他の任意のプロセスを実行できる1つ又は複数のシングル若しくはマルチステーションモジュール1107が取り付けられてもよい。モジュール1107は、場合によっては、例えば、堆積プロセスのために基板を調製するための様々な処理に使用されてもよい。モジュール1107はまた、エッチング又は研磨などの他の様々な処理を実行するように設計/構成されてもよい。システム1100はまた、処理の前後にウェハが保管される1つ又は複数のウェハソースモジュール1101を含む。大気用搬送チャンバ1119内の大気ロボット(図示せず)は、最初にソースモジュール1101からロードロック1121にウェハを取り出してもよい。搬送モジュール1103内のウェハ搬送装置(一般的には、ロボットアームユニット)は、ウェハをロードロック1121から搬送モジュール1103に搭載されたモジュールへ、及びモジュール間で移動する。
【0105】
様々な実施形態において、システムコントローラ1129が、堆積中のプロセス条件を制御するために採用される。コントローラ1129は、典型的には、1つ又は複数のメモリデバイスと1つ又は複数のプロセッサとを含む。プロセッサは、CPU又はコンピュータ、アナログ及び/又はデジタル入力/出力接続、ステッピングモータコントローラボードなどを含んでもよい。
【0106】
コントローラ1129は、成膜装置の活動のすべてを制御してもよい。システムコントローラ1129は、タイミング、ガスの混合、チャンバ圧力、チャンバ温度、ウェハ温度、高周波(RF)電力レベル、ウェハチャック又は台座の位置、及び特定のプロセスの他のパラメータを制御するための命令のセットを含む、システム制御ソフトウェアを実行する。コントローラ1129に関連するメモリデバイスに記憶された他のコンピュータプログラムが、いくつかの実施形態において採用されてもよい。
【0107】
典型的には、コントローラ1129に関連づけられたユーザインタフェースが存在する。ユーザインタフェースは、ディスプレイスクリーン、装置及び/又はプロセス条件のグラフィカルソフトウェアディスプレイ、並びに、ポインティングデバイス、キーボード、タッチスクリーン、マイクロフォンなどのユーザ入力デバイスを含んでもよい。
【0108】
システム制御論理は、任意の適切な方法で構成されてもよい。一般に、論理は、ハードウェア及び/又はソフトウェアで設計又は構成できる。駆動回路を制御するための命令は、ハードコーディングされてもよいし、ソフトウェアとして提供されてもよい。命令は「プログラミング」によって提供されてもよい。このようなプログラミングは、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路、及び特定のアルゴリズムをハードウェアとして実装した他のデバイスにおいて、ハードコーディングされた論理を含む、任意の形式の論理を含むと理解される。プログラミングはまた、汎用プロセッサ上で実行され得るソフトウェア又はファームウェア命令を含むと理解される。システム制御ソフトウェアは、任意の適切なコンピュータ可読プログラミング言語でコーディングされてもよい。
【0109】
ゲルマニウム含有還元剤パルス、水素流、及びタングステン含有前駆体パルス、並びにプロセスシーケンスの他のプロセスを制御するためのコンピュータプログラムコードは、任意の従来のコンピュータ可読プログラミング言語、例えば、アセンブリ言語、C、C++、Pascal、Fortranなどで書くことができる。コンパイルされたオブジェクトコード又はスクリプトは、プロセッサによって実行され、プログラム内で特定されたタスクを実行する。また、示したように、プログラムコードはハードコーディングされていてもよい。
【0110】
コントローラパラメータは、例えば、プロセスガス組成及び流量、温度、圧力、冷却ガス圧力、基板温度、並びにチャンバ壁温度などのプロセス条件に関する。これらのパラメータは、レシピの形態でユーザに提供され、ユーザインタフェースを利用して入力されてもよい。プロセスを監視するための信号は、システムコントローラ1129のアナログ及び/又はデジタル入力接続によって提供されてもよい。プロセスを制御するための信号は、成膜装置1100のアナログ及びデジタル出力接続で出力される。
【0111】
システムソフトウェアは、多くの異なる方法で設計又は構成されてもよい。例えば、開示された実施形態に従って堆積プロセス(及び場合によっては他のプロセス)を実行するのに必要なチャンバコンポーネントの動作を制御するために、様々なチャンバコンポーネントのサブルーチン又は制御オブジェクトが書かれてもよい。この目的のためのプログラム又はプログラムのセクションの例として、基板位置決めコード、プロセスガス制御コード、圧力制御コード、及びヒータ制御コードが挙げられる。
【0112】
いくつかの実施態様では、コントローラ1129はシステムの一部であり、システムは上述の例の一部であり得る。このようなシステムは、1つ又は複数の処理ツール、1つ又は複数のチャンバ、1つ又は複数の処理用プラットフォーム、及び/又は特定の処理コンポーネント(ウェハ台座、ガス流システムなど)を含む半導体処理装置を含むことができる。これらのシステムは、半導体ウェハ又は基板の処理前、処理中、及び処理後にそれらの動作を制御するための電子機器と統合されてもよい。電子機器は「コントローラ」と呼ばれることもあり、1つ又は複数のシステムの様々なコンポーネント又は子部品を制御してもよい。コントローラ1129は、処理要件及び/又はシステムの種類に応じて、処理ガスの送達、温度設定(例えば、加熱及び/又は冷却)、圧力設定、真空設定、電力設定、いくつかのシステムでの高周波(RF)発生器設定、RF整合回路設定、周波数設定、流量設定、液体送達設定、位置及び動作設定、ツールへのウェハの搬入出、並びに、特定のシステムに接続又は連動する他の搬送ツール及び/又はロードロックへのウェハの搬入出を含む、本明細書に開示されるプロセスのいずれかを制御するようにプログラムされてもよい。
【0113】
大まかに言えば、コントローラは、命令を受信し、命令を発行し、動作を制御し、洗浄動作を可能にし、エンドポイント測定を可能にするなどの、様々な集積回路、論理、メモリ、及び/又はソフトウェアを有する電子機器として定義され得る。集積回路は、プログラム命令を記憶するファームウェアの形態のチップ、デジタル信号プロセッサ(DSPs)、特定用途向け集積回路(ASICs)として定義されるチップ、及び/又はプログラム命令(例えば、ソフトウェア)を実行する1つ又は複数のマイクロプロセッサ若しくはマイクロコントローラを含んでもよい。プログラム命令は、半導体ウェハに対して、半導体ウェハのために、又はシステムに対して、特定のプロセスを実行するための動作パラメータを定義する、様々な個々の設定(又はプログラムファイル)の形態でコントローラに通信される命令であってもよい。動作パラメータは、いくつかの実施形態において、1つ又は複数の層、材料、金属、酸化物、シリコン、二酸化シリコン、表面、回路、及び/又はウェハのダイの製造中に1つ又は複数の処理ステップを達成するためにプロセスエンジニアによって定義されるレシピの一部であってもよい。
【0114】
コントローラは、いくつかの実施態様において、システムに統合された、システムに接続された、そうでなければシステムにネットワーク接続された、又はそれらの組み合わせであるコンピュータの一部であってもよく、又はそのようなコンピュータに接続されていてもよい。例えば、コントローラは、「クラウド」、すなわちファブホストコンピュータシステムの全体又は一部であってもよく、これによりウェハ処理の遠隔アクセスが可能になる。コンピュータは、製造動作の現在の進行状況を監視し、過去の製造動作の履歴を調査し、複数の製造動作から傾向又は性能基準を調査し、現在の処理のパラメータを変更し、処理ステップを設定して現在の処理を追跡し、又は新たなプロセスを開始するために、システムへの遠隔アクセスを可能にしてもよい。いくつかの例では、遠隔コンピュータ(例えば、サーバ)は、ネットワークを介してシステムにプロセスレシピを提供でき、ネットワークはローカルネットワーク又はインターネットを含んでもよい。遠隔コンピュータは、パラメータ及び/又は設定の入力又はプログラミングを可能にするユーザインタフェースを含んでもよく、パラメータ及び/又は設定は次いで遠隔コンピュータからシステムへと伝達される。いくつかの例では、コントローラは、1つ又は複数の動作中に実施される処理ステップのそれぞれのパラメータを指定する、データの形式の命令を受け取る。パラメータは、実施されるプロセスの種類及びコントローラがインタフェース接続する又は制御するように構成されたツールの種類に特有のものであってもよいことを理解されたい。したがって、上述したように、コントローラは、共にネットワーク化され、本明細書に記載のプロセス及び制御などの共通の目的にむけて動作する1つ又は複数の個別のコントローラを含むことなどにより、分散されてもよい。そのような目的のための分散型コントローラの一例は、遠隔地に設置され(プラットフォームレベルで、又は遠隔コンピュータの一部としてなど)、チャンバでのプロセスを協同で制御する1つ又は複数の集積回路と通信するチャンバ上の1つ又は複数の集積回路である。
【0115】
システムの例は、プラズマエッチングチャンバ又はモジュール、成膜チャンバ又はモジュール、スピンリンスチャンバ又はモジュール、金属メッキチャンバ又はモジュール、洗浄チャンバ又はモジュール、ベベルエッジエッチングチャンバ又はモジュール、物理蒸着(PVD)チャンバ又はモジュール、化学蒸着(CVD)チャンバ又はモジュール、原子層堆積(ALD)チャンバ又はモジュール、原子層エッチング(ALE)チャンバ又はモジュール、イオン注入チャンバ又はモジュール、トラックチャンバ又はモジュール、並びに半導体ウェハの製作及び/又は製造に関連し得る、又は使用し得る、任意の他の半導体処理システムを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0116】
上述のように、ツールによって実行される1つ又は複数のプロセスステップに応じて、コントローラは、他のツール回路又はモジュール、他のツールコンポーネント、クラスタツール、他のツールインタフェース、隣接ツール、近隣ツール、工場全体に配置されたツール、メインコンピュータ、別のコントローラ、又は半導体製造工場内のツール位置及び/又はロードポートへウェハの容器を搬入出する材料搬送に用いられるツールの、1つ又は複数と通信してもよい。
【0117】
結論
前述の実施形態は、理解を明確にする目的である程度詳細に説明されたが、添付の特許請求の範囲の範囲内で特定の変更及び変形が実施されてもよいことは明らかであろう。本明細書に開示された実施形態は、これらの具体的詳細の一部又はすべてを用いずに実施されてもよい。他の例では、周知のプロセス動作は、開示された実施形態を不必要に曖昧にすることのないように、詳細には説明されない。さらに、開示された実施形態が具体的な実施形態と共に説明される一方で、具体的な実施形態を開示された実施形態に限定することを意図していないことが理解されよう。本実施形態のプロセス、システム、及び装置を実施する多くの代替的な方法があることに留意されたい。したがって、本実施形態は、例示的なものであって制限的なものではないとみなされ、かつ本実施形態は、本明細書で与えられる詳細に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】