(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】可塑剤組成物およびこれを含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20231016BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20231016BHJP
C08L 23/02 20060101ALI20231016BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20231016BHJP
C08K 5/11 20060101ALI20231016BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L27/06
C08L23/02
C08L25/04
C08K5/11
C08K5/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520354
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-04-03
(86)【国際出願番号】 KR2022001612
(87)【国際公開番号】W WO2022164266
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0013021
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・キュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ホ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ホ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・スク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヒュク・チェ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AC001
4J002AC011
4J002BB021
4J002BB111
4J002BC021
4J002CC011
4J002CF191
4J002CK021
4J002EH097
4J002EH146
4J002FD010
4J002FD026
4J002FD027
4J002FD030
4J002FD320
4J002GL00
(57)【要約】
本発明は、テレフタレート系組成物およびシトレート系組成物を含み、前記テレフタレート系組成物は、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート、ヘキシル(2-エチルヘキシル)テレフタレートおよびジヘキシルテレフタレートを含み、前記シトレート系組成物は、トリヘキシルシトレートを含み、前記テレフタレートのヘキシル基およびシトレートのヘキシル基は、ヘキシルアルコールの異性体混合物に由来することを特徴とし、樹脂に適用する場合、耐移行性と耐ストレス性を改善することができ、さらに、機械的物性を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタレート系組成物およびシトレート系組成物を含み、
前記テレフタレート系組成物は、ジヘキシルテレフタレート、ヘキシル(2-エチルヘキシル)テレフタレートおよびジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートを含み、
前記シトレート系組成物は、トリヘキシルシトレートを含み、
前記テレフタレートのヘキシル基およびシトレートのヘキシル基は、ヘキシルアルコールの異性体混合物に由来し、
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノール、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノール、3-エチルブタノールおよびシクロペンチルメタノールからなる群から選択される2以上を含む、可塑剤組成物。
【請求項2】
前記テレフタレート系組成物は、ジヘキシルテレフタレート0.5~50.0重量%と、ヘキシル(2-エチルヘキシル)テレフタレート3.0~70.0重量%と、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート0.5~95.0重量%とを含む、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項3】
前記シトレート系組成物は、下記化学式1のシトレートが1以上含まれる、請求項1または2に記載の可塑剤組成物。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、R
1~R
3は、それぞれ独立して、n-ヘキシル基、分岐状ヘキシル基またはシクロペンチルメチル基であり、R
4は、水素である。
【請求項4】
前記テレフタレート系組成物と前記シトレート系組成物を95:5~5:95の重量比で含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の可塑剤組成物。
【請求項5】
前記テレフタレート系組成物と前記シトレート系組成物を95:5~50:50の重量比で含む、請求項4に記載の可塑剤組成物。
【請求項6】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、2-メチルペンタノールおよび3-メチルペンタノールを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の可塑剤組成物。
【請求項7】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、分岐状アルコールが40重量部以上含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の可塑剤組成物。
【請求項8】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、分岐状アルコールが50~95重量部含まれる、請求項7に記載の可塑剤組成物。
【請求項9】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノールをさらに含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の可塑剤組成物。
【請求項10】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、1-ヘキサノールが40重量部以下含まれる、請求項9に記載の可塑剤組成物。
【請求項11】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、4-メチルペンタノールをさらに含む、請求項6から10のいずれか一項に記載の可塑剤組成物。
【請求項12】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、シクロペンチルメタノールをさらに含む、請求項6から11のいずれか一項に記載の可塑剤組成物。
【請求項13】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、シクロペンチルメタノールが20重量部以下含まれる、請求項12に記載の可塑剤組成物。
【請求項14】
樹脂100重量部と、請求項1から13のいずれか一項に記載の可塑剤組成物5~150重量部とを含む、樹脂組成物。
【請求項15】
前記樹脂は、ストレート塩化ビニル重合体、ペースト塩化ビニル重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレン重合体、プロピレン重合体、ポリケトン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ乳酸、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群から選択される1種以上である、請求項14に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月29日付けの韓国特許出願第10-2021-0013021号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、テレフタレート系組成物とシトレート系組成物を含む可塑剤組成物およびこれを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、可塑剤は、アルコールがフタル酸およびアジピン酸といったポリカルボン酸と反応し、これに相当するエステルを形成する。また、人体に有害なフタレート系可塑剤の韓国内外の規制を考慮して、テレフタレート系、アジペート系、その他の高分子系などのフタレート系可塑剤の代わりに使用可能な可塑剤組成物に関する研究が続いている。
【0004】
一方、床材、壁紙、軟質および硬質シートなどのプラスチゾル業種、カレンダリング業種、押出/射出コンパウンド業種を問わず、このような環境にやさしい製品に対するニーズが増加しており、これに対する完成品ごとの品質特性、加工性および生産性を強化するために、変色および移行性、機械的物性などを考慮して、適切な可塑剤を使用する必要がある。
【0005】
このような様々な使用領域において業種別に求められる特性である引張強度、伸び率、耐光性、移行性、ゲル化性あるいは吸収速度などに応じて、PVC樹脂に、可塑剤、充填剤、安定剤、粘度低下剤、分散剤、消泡剤、発泡剤などの副原料を配合する。
【0006】
一例として、PVCに適用可能な可塑剤組成物のうち、値段が相対的に安くて最も汎用的に使用されるジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)を適用する場合、硬度あるいはゾル粘度が高く、可塑剤の吸収速度が相対的に遅く、移行性およびストレス移行性も良好ではなかった。
【0007】
その改善策として、DEHTPを含む組成物として、ブタノールとのトランスエステル化反応の生成物を可塑剤として適用することが考えられる。しかしながら、可塑化効率は改善するものの、加熱減量や熱安定性などが劣化し、機械的物性が多少低下するなど、物性の改善が求められる。一般的に、他の二次可塑剤との混用によりこれを補完する方式を採用する以外には、現在のところ解決策がない状況である。
【0008】
しかし、二次可塑剤を適用する場合には、物性の変化に対する予測が難しく、製品単価が上昇する要因として作用する可能性がある。特定の場合以外には物性の改善が明らかではなく、樹脂との相溶性に問題を引き起こすなど、予想できない問題が発生するというデメリットがある。
【0009】
また、前記DEHTP製品の劣悪な移行性と減量特性および耐光性を改善するために、トリメリテート系の製品としてトリ(2-エチルヘキシル)トリメリテートやトリイソノニルトリメリテートといった物質を適用する場合、移行性や減量特性は改善するものの、可塑化効率が低下し、樹脂に適切な可塑化効果を与えるためには相当量投入しなければならないという問題があり、そのため、比較的単価が高い製品であるという点で、商用化が不可能な状況である。
【0010】
このように、各物質が混合される場合、いずれも優れた物性のみが実現されるものではなく、劣悪な物性のみが実現される場合も発生し、混合される成分間のメリットが薄くなり、改善品としての機能を果たすことができない場合が頻発するという問題も業界の解決課題である。
【0011】
既存の商用品であるフタレート系製品の環境的な問題を解決するための製品またはフタレート系製品の環境問題を改善するための環境にやさしい可塑剤は、特定の物性は非常に優れるが、それ以外の他の特定の物性が劣り、可塑剤として有意に使用することができない。そのため、ある一物性の劣化なしに物性間のバランスに優れ、ブレンディングの時に二つの成分間のメリットのみを実現することができるブレンディング可塑剤製品などの開発が求められる状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、既存の可塑剤に比べて、機械的物性と可塑化効率を同等以上の水準に維持および改善し、且つ耐移行性および耐ストレス性を著しく改善することができる可塑剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、可塑剤組成物および樹脂組成物を提供する。
【0014】
(1)本発明は、テレフタレート系組成物およびシトレート系組成物を含み、前記テレフタレート系組成物は、ジヘキシルテレフタレート、ヘキシル(2-エチルヘキシル)テレフタレートおよびジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートを含み、前記シトレート系組成物は、トリヘキシルシトレートを含み、前記テレフタレートのヘキシル基およびシトレートのヘキシル基は、ヘキシルアルコールの異性体混合物に由来し、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノール、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノール、3-エチルブタノールおよびシクロペンチルメタノールからなる群から選択される2以上を含むものである可塑剤組成物を提供する。
【0015】
(2)本発明は、前記(1)において、前記テレフタレート系組成物は、ジヘキシルテレフタレート0.5~50.0重量%と、ヘキシル(2-エチルヘキシル)テレフタレート3.0~70.0重量%と、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート0.5~95.0重量%とを含むものである可塑剤組成物を提供する。
【0016】
(3)本発明は、前記(1)または(2)において、前記シトレート系組成物は、下記化学式1のシトレートが1以上含まれるものである可塑剤組成物を提供する。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、R
1~R
3は、それぞれ独立して、n-ヘキシル基、分岐状ヘキシル基またはシクロペンチルメチル基であり、R
4は、水素である。
【0017】
(4)本発明は、前記(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記テレフタレート系組成物と前記シトレート系組成物を95:5~5:95の重量比で含むものである可塑剤組成物を提供する。
【0018】
(5)本発明は、前記(1)~(4)のいずれか一つにおいて、前記テレフタレート系組成物と前記シトレート系組成物を95:5~50:50の重量比で含むものである可塑剤組成物を提供する。
【0019】
(6)本発明は、前記(1)~(5)のいずれか一つにおいて、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、2-メチルペンタノールおよび3-メチルペンタノールを含む可塑剤組成物を提供する。
【0020】
(7)本発明は、前記(1)~(6)のいずれか一つにおいて、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、分岐状アルコールが40重量部以上含まれるものである可塑剤組成物を提供する。
【0021】
(8)本発明は、前記(1)~(7)のいずれか一つにおいて、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、分岐状アルコールが50~95重量部含まれるものである可塑剤組成物を提供する。
【0022】
(9)本発明は、前記(1)~(8)のいずれか一つにおいて、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノールをさらに含むものである可塑剤組成物を提供する。
【0023】
(10)本発明は、前記(1)~(9)のいずれか一つにおいて、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、1-ヘキサノールが40重量部以下含まれるものである可塑剤組成物を提供する。
【0024】
(11)本発明は、前記(1)~(10)のいずれか一つにおいて、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、4-メチルペンタノールをさらに含むものである可塑剤組成物を提供する。
【0025】
(12)本発明は、前記(1)~(11)のいずれか一つにおいて、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、シクロペンチルメタノールをさらに含むものである可塑剤組成物を提供する。
【0026】
(13)本発明は、前記(1)~(12)のいずれか一つにおいて、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、異性体混合物100重量部に対して、シクロペンチルメタノールが20重量部以下含まれるものである可塑剤組成物を提供する。
【0027】
(14)本発明は、樹脂100重量部と、前記(1)~(13)のいずれか一つの可塑剤組成物5~150重量部とを含む樹脂組成物を提供する。
【0028】
(15)本発明は、前記(14)において、前記樹脂は、ストレート塩化ビニル重合体、ペースト塩化ビニル重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレン重合体、プロピレン重合体、ポリケトン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ乳酸、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群から選択される1種以上のものである樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、樹脂組成物に使用する場合、既存の可塑剤に比べて、機械的物性と可塑化効率を同等以上の水準に維持および改善し、且つ耐移行性および耐ストレス性を著しく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施例1-5による可塑剤組成物と比較例1~6による可塑剤組成物の炭化特性評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0032】
用語の定義
本明細書で用いられている「組成物」という用語は、当該組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物だけでなく、当該組成物を含む材料の混合物を含む。
【0033】
本明細書で用いられている「ストレート塩化ビニル重合体」は、塩化ビニル重合体の種類の一つであり、懸濁重合またはバルク重合などにより重合される。この重合体は、気孔が多数個存在する多孔性粒子であり、数十~数百マイクロメートルサイズを有し、凝集性がなく、流動性に優れる。
【0034】
本明細書で用いられている「ペースト塩化ビニル重合体」は、塩化ビニル重合体の種類の一つであり、微細懸濁重合、微細シード重合、または乳化重合などにより重合される。この重合体は、空隙がない微細で緻密な粒子であり、数十~数千ナノメートルサイズを有し、凝集性があり、流動性が劣る。
【0035】
「含む」、「有する」という用語およびこれらの派生語は、これらが具体的に開示されているかそうでないかに関係なく、任意の追加の成分、ステップあるいは手続きの存在を排除することを意図しない。何らの不確実性も避けるために、「含む」という用語の使用により請求されたすべての組成物は、逆に記述されない限り、重合体であるかあるいはその他のものであるかに関係なく、任意の追加の添加剤、補助剤、あるいは化合物を含むことができる。これとは対照的に、「で本質的に構成される」という用語は、操作性に必須ではないもの以外は、任意のその他の成分、ステップあるいは手続きを任意の連続する説明の範囲から排除する。「で構成される」という用語は、具体的に記述されるか列挙されていない任意の成分、ステップあるいは手続きを排除する。
【0036】
測定方法
本明細書において、組成物内の成分の含量の分析は、ガスクロマトグラフィー測定により行い、Agilent社製のガスクロマトグラフィー機器(製品名:Agilent 7890 GC、カラム:HP-5、キャリアガス:ヘリウム(flow rate 2.4mL/min)、検出器:F.I.D、注入量(injection volume):1μL、初期値:70℃/4.2min、終期値:280℃/7.8min、program rate:15℃/min)により分析する。
【0037】
本明細書において、「硬度(hardness)」は、ASTM D2240に準じて、25℃でのショア硬度(Shore「A」および/またはShore「D」)を意味し、3T 10sの条件で測定し、可塑化効率を評価する指標になることができ、低いほど可塑化効率に優れることを意味する。
【0038】
本明細書において、「引張強度(tensile strength)」は、ASTM D638方法に準じて、テスト機器であるU.T.M(メーカー名:Instron、モデル名:4466)を用いて、クロスヘッドスピード(cross head speed)を200mm/min(1T)として引っ張った後、試験片が切断される地点を測定し、下記の数学式1で計算する。
【0039】
[数学式1]
引張強度(kgf/cm2)=ロード(load)値(kgf)/(厚さ(cm)×幅(cm))
【0040】
本明細書において、「伸び率(elongation rate)」は、ASTM D638方法に準じて、前記U.T.Mを用いて、クロスヘッドスピード(cross head speed)を200mm/min(1T)として引っ張った後、試験片が切断される地点を測定し、下記数学式2で計算する。
【0041】
[数学式2]
伸び率(%)=伸長後の長さ/初期の長さ×100
【0042】
本明細書において「移行損失(migration loss)」は、KSM-3156に準じて、厚さ2mm以上の試験片を得て、試験片の両面にガラスプレート(Glass Plate)を付着させた後、1kgf/cm2の荷重を加える。試験片を熱風循環式オーブン(80℃)で72時間放置した後、取り出し、常温で4時間冷却させる。その後、試験片の両面に付着したガラスプレート(Glass Plate)を除去した後、ガラスプレートとSpecimen Plateをオーブンに放置する前と後の重量を測定し、移行損失量を下記数学式3によって計算する。
【0043】
[数学式3]
移行損失量(%)={[(初期の試験片の重量)-(オーブン放置後の試験片の重量)]/(初期の試験片の重量)}×100
【0044】
本明細書において、「加熱減量(volatile loss)」は、試験片を80℃で72時間処理した後、試験片の重量を測定する。
【0045】
[数学式4]
加熱減量(%)={[(初期の試験片の重量)-(処理後の試験片の重量)]/(初期の試験片の重量)}×100
【0046】
前記様々な測定条件の場合、温度、回転速度、時間などの詳細条件は、場合によって多少相違し得、相違する場合には、その測定方法および条件を別に明示する。
【0047】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。
【0048】
本発明の一実施形態によると、可塑剤組成物は、テレフタレート系組成物およびシトレート系組成物を含み、前記テレフタレート系組成物は、ジヘキシルテレフタレート、ヘキシル(2-エチルヘキシル)テレフタレートおよびジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートを含み、前記シトレート系組成物は、トリヘキシルシトレートを含み、前記テレフタレートのヘキシル基およびシトレートのヘキシル基は、ヘキシルアルコールの異性体混合物に由来し、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノール、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノール、3-エチルブタノールおよびシクロペンチルメタノールからなる群から選択される2以上を含むことを特徴とする。
【0049】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物の一成分としてテレフタレート系組成物が使用され、テレフタレート系組成物は、ジヘキシルテレフタレート、ヘキシル(2-エチルヘキシル)テレフタレートおよびジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートを含む。
【0050】
一般的に、テレフタレート系組成物は、炭素数の差が大きいアルコールを使用して、炭素数が小さいものと炭素数が大きいものが有するそれぞれのメリットをいずれも有するようにすることを目的とすることができる。しかし、本発明では、炭素数の差が大きくない二つのアルコールとして、ヘキサノールと2-エチルヘキサノールを組み合わせて、可塑化効率に優れ、且つ機械的物性は劣悪ではなく、優れた減量特性を示し、物性間のバランスを取ることができることを確認した。
【0051】
また、本発明の一実施形態によると、前記テレフタレート系組成物において、ヘキシル基を異性体が混合されたヘキサノール由来のものとすることで、さらに他の一成分であるシトレート系組成物と混合する時に最大化した相乗効果を得ることができる。
【0052】
前記テレフタレート系組成物は、ジヘキシルテレフタレート0.5~50.0重量%と、ヘキシル(2-エチルヘキシル)テレフタレート3.0~70.0重量%と、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート0.5~95.0重量%とを含むことができる。好ましくは、前記テレフタレート系組成物は、ジヘキシルテレフタレート0.5~30.0重量%と、ヘキシル(2-エチルヘキシル)テレフタレート10.0~60.0重量%と、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート35.0~90.0重量%とを含むことができる。このような組成比を有する場合、上述の効果の再現性に優れ、物性間のバランスが適切であるというメリットがある。
【0053】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、他の一成分としてシトレート系組成物が使用され、シトレート系組成物は、トリヘキシルシトレートを含み、この場合、ヘキシル基は、異性体が混合されたヘキサノールから由来する。
【0054】
このように、シトレート系組成物を適用する際に、炭素数が6であるアルコールを使用して製造されたトリヘキシルシトレートを適用すると、炭素数が6に達しないシトレートに比べて適正水準の吸収速度を確保することで、加工性の改善を達成することができ、引張強度、伸び率および加熱減量を大きく改善することができる。また、炭素数が6を超えるシトレートに比べて可塑化効率に優れることができ、耐移行性および耐ストレス性を大きく期待することができる。
【0055】
一方、前記テレフタレート系組成物は、既存の商用可塑剤に比べて、耐移行性と耐ストレス性、および機械的物性の中でも伸び率が相対的に劣る傾向があり、加熱減量と炭化特性、および残率特性に優れることを特徴とする。また、シトレート系組成物は、熱的特性と引張強度が既存の商用可塑剤に比べて劣るが、可塑化効率と耐移行性および耐ストレス性に優れることを特徴とする。
【0056】
一般的に、二つの組成物を混合する場合、二つの成分のメリット・デメリットを薄める結果を示すが、本発明でのような特徴を有するテレフタレート系組成物とシトレート系組成物を混合する場合には、二つの成分のメリットのみが実現される特性を示すことができる。これは、二つの成分において、同様にヘキシル基を適用し、この際、異性体が混合されたヘキサノールを介してヘキシル基を適用することで、このような相乗効果を実現することができる。
【0057】
このようなシナジー効果は、二つの成分において共通事項であるヘキシル基の適用およびヘキシルアルコールの異性体混合物の適用がない場合、実現されない可能性があり、二つの成分のメリット・デメリットが互いに薄くなる結果を示すことができる。
【0058】
前記相乗効果を最大化するために、本発明の可塑剤組成物は、テレフタレート系組成物およびシトレート系組成物を95:5~5:95、95:5~10:90、95:5~20:80、95:5~30:70、95:5~50:50、95:5~70:30、90:10~10:90、90:10~30:70、90:10~50:50または90:10~70:30の重量比で含むことができる。本発明の可塑剤組成物を適用する際、テレフタレート系組成物の熱安定性がシトレート系組成物に比べて優れるという点で、高温環境での処理を要する場合、相対的にシトレート系組成物の含量が少なく、テレフタレート系組成物の含量が高い可塑剤組成物を使用することができ、逆に、シトレート系組成物の伸び率および耐移行性がテレフタレート系組成物に比べて優れるという点で、高伸び率および高耐移行性を要する製品に対しては、シトレート系組成物の含量が高く、テレフタレート系組成物の含量が低い可塑剤組成物を使用することができる。
【0059】
本発明の一実施形態によるシトレート系組成物は、下記化学式1のシトレートが1以上含まれることができる。
【0060】
【0061】
前記化学式1中、R1~R3は、それぞれ独立して、n-ヘキシル基、分岐状ヘキシル基またはシクロペンチルメチル基であり、R4は、水素である。
【0062】
本発明の一実施形態によると、前記テレフタレートのヘキシル基とシトレートのヘキシル基は、ヘキシルアルコールの異性体混合物に由来する。
【0063】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物は、1-ヘキサノール、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノール、3-エチルブタノールおよびシクロペンチルメタノールからなる群から選択される2以上を含む。
【0064】
このようなヘキシルアルコール異性体内に含まれたアルコールによって、前記テレフタレートとシトレートのヘキシル基が決定されることができ、それぞれの最終組成物内の成分の比率は、反応するアルコールの成分の比率によって決定されることができる。
【0065】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、ヘキシルアルコール異性体混合物内に2-メチルペンタノールおよび3-メチルペンタノールを含むことができる。場合によっては、1-ヘキサノール、2-メチルペンタノールおよび3-メチルペンタノールを含むか、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノールおよび4-メチルペンタノールを含むか、1-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノールおよび4-メチルペンタノールを含むことができる。2-メチルペンタノールと3-メチルペンタノールをともに含むと、物性間のバランスを維持することができ、加熱減量の面で優れた効果を得ることができる。
【0066】
前記2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノールおよび4-メチルペンタノールのうち一つ以上を含む分岐状ヘキシルアルコールは、異性体混合物100重量部に対して、40重量部以上が含まれることができ、50重量部以上、60重量部以上が含まれることができ、好ましくは65重量部以上、70重量部以上が含まれることができる。最大量としては、全部分岐状であることができ、99重量部以下、98重量部が含まれることができ、好ましくは95重量部以下、または90重量部以下が含まれることができる。この範囲で分岐状ヘキシルアルコールが含まれる場合には、機械的物性の改善を期待することができる。
【0067】
また、前記1-ヘキサノールの直鎖状アルコールは、異性体混合物100重量部に対して50重量部以下が含まれることができ、40重量部以下であることができ、好ましくは30重量部以下であることができる。前記1-ヘキサノールは、成分内に存在しないこともあるが、少なくとも2重量部以上が含まれることができ、この場合、物性間のバランスを維持し、且つ機械的物性が改善する利点を得ることができる。直鎖状アルコールは、理論上、優れた効果を奏するものと知られているが、本発明では、このような理論上の結果とは異なる結果を得ており、分岐状のアルコールが含まれた異性体混合物が適用される場合に、より物性のバランスに優れることを確認した。
【0068】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、上述の前記ヘキシルアルコールの異性体混合物内にシクロペンチルメタノールをさらに含むことができる。好ましくはシクロペンチルメタノールをさらに含むことで、物性間のバランスを維持し、且つ加熱減量をより改善することができる。
【0069】
この場合、前記シクロペンチルメタノールは、異性体混合物100重量部に対して、20重量部以下であることができ、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下であることができ、存在しないか、これに伴う効果を得るための最小量は2重量部であることができる。
【0070】
具体的には、最終組成物内に分岐状アルキル基が全体のアルキル基のうちどの程度の比率で存在するか、さらには、分岐状アルキル基のうち特定の分岐アルキル基がどの程度の比率で存在するかなどの特徴によって、可塑化効率と移行性/減量特性の物性においてバランスを取ることができ、引張強度と伸び率といった機械的物性および耐ストレス性も同等以上の水準を維持することができる。
【0071】
これにより、既存のフタレート系製品の環境的な問題を除去し、且つ減量特性をより改善した製品の実現が可能であり、既存の商用製品に比べて物性間のバランスが大幅に改善した製品の実現が可能である。
【0072】
本発明の一実施形態によると、前記シトレート系組成物内に含まれるシトレートとして化学式1のR4は水素が結合する。R4が水素である場合には、一般的に、可塑化効率、耐移行性、耐光性において優れた効果を実現することができ、吸収速度が適正水準によく維持されるメリットがある。
【0073】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物を製造する方法は、当業界に知られている方法として、上述の可塑剤組成物を製造することができる場合であれば特に制限されず適用されることができる。
【0074】
例えば、ヘキシルアルコールの異性体混合物と2-エチルヘキサノールのアルコール混合物をテレフタル酸またはその無水物と直接エステル化反応させてテレフタレート系組成物を製造することができ、クエン酸またはその無水物とヘキシルアルコールの異性体混合物を直接エステル化反応させて前記シトレート系組成物を製造することができる。
【0075】
また、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートとヘキシルアルコールの異性体混合物をトランスエステル化反応させてテレフタレート系組成物を製造することができ、トリヘキシルシトレートとヘキシルアルコールの異性体混合物をトランスエステル化反応させてシトレート系組成物を製造することもできる。
【0076】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、前記エステル化反応を適切に行って製造された物質であり、上述の条件に合致するもの、特に、異性体混合アルコール内の分岐状アルコールの比率の制御および特定の成分が含まれたものであれば、製造方法が特に制限されない。
【0077】
一例として、前記直接エステル化反応は、酸またはその誘導体と2種以上の混合アルコールを投入した後、触媒を添加し、窒素雰囲気下で反応させるステップと、未反応原料を除去するステップと、未反応原料および触媒を中和(または非活性化)させるステップと、不純物を除去(例えば、減圧蒸留など)濾過するステップとで行われることができる。
【0078】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物の成分および成分の重量比は、上述のとおりである。前記直接エステル化反応におけるアルコールは、酸100モール%に対して、150~900モル%、200~700モル%、200~600モル%、250~500モル%、あるいは270~400モル%の範囲内で使用されることができ、このアルコールの含量を制御することにより、最終組成物内の成分比を制御することができる。
【0079】
前記触媒は一例として、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、アルキル硫酸などの酸触媒、乳酸アルミニウム、フッ化リチウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化カルシウム、塩化鉄、リン酸アルミニウムなどの金属塩、ヘテロポリ酸などの金属酸化物、天然/合成ゼオライト、カチオンおよびアニオン交換樹脂、テトラアルキルチタネート(tetra alkyl titanate)およびそのポリマーなどの有機金属から選択される1種以上であることができる。具体的な例として、前記触媒は、テトラアルキルチタネートを使用することができる。好ましくは、活性温度が低い酸触媒として、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などが適切である。
【0080】
触媒の使用量は、種類に応じて相違することができ、一例として、均一触媒の場合には、反応物の総100重量%に対して、0.01~5重量%、0.01~3重量%、1~5重量%あるいは2~4重量%の範囲内、また、不均一触媒の場合には、反応物の全量の5~200重量%、5~100重量%、20~200重量%、あるいは20~150重量%の範囲内であることができる。
【0081】
この際、前記反応温度は、100℃~280℃、100℃~250℃、あるいは120℃~230℃の範囲内であることができる。
【0082】
他の一例として、前記トランスエステル化反応は、テレフタレートまたはシトレートと、前記テレフタレートまたはシトレートのアルキル基とは異なるアルキル基を有するアルコールが反応するものであることができる。ここで、前記各エステルとアルコールが有するアルキル基は、互いに交差されてもよい。
【0083】
本発明で使用される「トランスエステル化反応」は、アルコールとエステルが反応してエステルのアルキルとアルコールのアルキルが互いに交換される反応を意味する。
【0084】
前記トランスエステル化反応により製造された混合物は、アルコールの添加量に応じて前記混合物の組成比を制御することができる。前記アルコールの添加量は、テレフタレートまたはシトレート100重量部に対して、0.1~200重量部、具体的には1~150重量部、さらに具体的には5~100重量部であることができる。参考までに、最終組成物内の成分比を決定するものは、前記直接エステル化反応でのように、アルコールの添加量であることができる。
【0085】
本発明の一実施形態によると、前記トランスエステル化反応は、120℃~190℃、好ましくは135℃~180℃、さらに好ましくは141℃~179℃の反応温度下で、10分~10時間、好ましくは30分~8時間、さらに好ましくは1~6時間行われる。前記温度および時間の範囲内では、最終可塑剤組成物の成分比を効率的に制御することができる。この際、前記反応時間は、反応物を昇温した後、反応温度に逹した時点から計算されることができる。
【0086】
前記トランスエステル化反応は、酸触媒または金属触媒下で実施されることができ、この場合、反応時間が短縮する効果がある。
【0087】
前記酸触媒は、一例として、硫酸、メタンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸などであることができ、前記金属触媒は、一例として、有機金属触媒、金属酸化物触媒、金属塩触媒または金属自体であることができる。
【0088】
前記金属成分は、一例として、スズ、チタンおよびジルコニウムからなる群から選択されるいずれか一つまたはこれらの2種以上の混合物であることができる。
【0089】
また、前記トランスエステル化反応の後、未反応アルコールと反応副生成物などを蒸留させて除去するステップをさらに含むことができる。前記蒸留は、一例として、前記アルコールと反応副生成物の沸点の差を用いて別に分離する2ステップ蒸留であることができる。さらに他の一例として、前記蒸留は、混合蒸留であることができる。この場合、エステル系可塑剤組成物を所望の組成比で比較的安定的に確保することができる効果がある。前記混合蒸留は、未反応アルコールと反応副生成物を同時に蒸留することを意味する。
【0090】
本発明の他の一実施形態によると、上述の可塑剤組成物および樹脂を含む樹脂組成物が提供される。
【0091】
前記樹脂は、当分野において周知の樹脂を使用することができる。例えば、ストレート塩化ビニル重合体、ペースト塩化ビニル重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン重合体、プロピレン重合体、ポリケトン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ乳酸、天然ゴム、合成ゴムおよび熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1種以上の混合物などを使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0092】
前記可塑剤組成物は、前記樹脂100重量部に対して、5~150重量部、好ましくは5~130重量部、または10~120重量部含まれることができる。
【0093】
一般的に、可塑剤組成物が使用される樹脂は、溶融加工またはプラスチゾル加工により樹脂製品として製造されることができ、溶融加工樹脂とプラスチゾル加工樹脂は、各重合方法に応じて異なるように生産されるものであることができる。
【0094】
例えば、塩化ビニル重合体は、溶融加工に使用される場合、懸濁重合などで製造され平均粒径が大きい固体状の樹脂粒子が使用され、このような塩化ビニル重合体は、ストレート塩化ビニル重合体と称し、プラスチゾル加工に使用される場合、乳化重合などで製造され微細な樹脂粒子としてゾル状態の樹脂が使用され、このような塩化ビニル重合体は、ペースト塩化ビニル樹脂と称する。
【0095】
この際、前記ストレート塩化ビニル重合体の場合、可塑剤は、重合体100重量部に対して5~80重量部の範囲内で含まれることが好ましく、ペースト塩化ビニル重合体の場合、重合体100重量部に対して40~120重量部の範囲内で含まれることが好ましい。
【0096】
前記樹脂組成物は、充填剤をさらに含むことができる。前記充填剤は、前記樹脂100重量部に対して、0~300重量部、好ましくは50~200重量部、さらに好ましくは100~200重量部であることができる。
【0097】
前記充填剤は、当分野において周知の充填剤を使用することができ、特に制限されない。例えば、シリカ、マグネシウムカーボネート、カルシウムカーボネート、硬質炭、タルク、水酸化マグネシウム、チタンジオキシド、マグネシウムオキシド、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケートおよび硫酸バリウムから選択される1種以上の混合物であることができる。
【0098】
また、前記樹脂組成物は、必要に応じて、安定化剤などのその他の添加剤をさらに含むことができる。前記安定化剤などのその他の添加剤は、一例として、それぞれ、前記樹脂100重量部に対して、0~20重量部、好ましくは1~15重量部であることができる。
【0099】
前記安定化剤は、例えば、カルシウム-亜鉛の複合ステアリン酸塩などのカルシウム-亜鉛系(Ca-Zn系)安定化剤またはバリウム-亜鉛(Ba-Zn系)安定化剤を使用することができるが、これに特に制限されるものではない。
【0100】
前記樹脂組成物は、上述のように、溶融加工およびプラスチゾル加工のいずれにも適用可能であり、例えば、溶融加工は、カレンダリング加工、押出加工、または射出加工が適用されることができ、プラスチゾル加工は、コーティング加工などが適用されることができる。
【0101】
実施例
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例をあげて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0102】
前記ヘキシルアルコールの異性体混合物内の成分の含量は、ガスクロマトグラフィー測定により、Agilent社製のガスクロマトグラフィー機器(製品名:Agilent 7890 GC、カラム:HP-5、キャリアガス:ヘリウム(flow rate 2.4mL/min)、検出器:F.I.D、注入量:1μL、初期値:70℃/4.2min、終期値:280℃/7.8min、program rate:15℃/min)で分析した。
【0103】
製造例1.テレフタレート系組成物の製造
冷却器、コンデンサ、デカンタ、還流ポンプ、温度コントローラ、撹拌機などを備えた四ツ口の3リットル反応器に、テレフタル酸498g、ヘキシルアルコールの異性体混合物343g、2-エチルヘキサノール656g、触媒としてテトライソプロピルチタネート1.5gを投入し、反応温度を220℃に設定し、窒素ガスを投入し続けながら、約8時間直接エステル化反応を行い、酸価が0.1に達した時に反応を完了した。
【0104】
反応完了後、未反応原料を除去するために、減圧下で蒸留抽出を実施した。蒸留抽出後、中和工程、脱水工程および濾過工程を経てジヘキシルテレフタレート、ヘキシル(2-エチルヘキシル)テレフタレートおよびジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートを含むテレフタレート系組成物を得た。
【0105】
前記組成物の他に、前記過程中に使用されたヘキシルアルコールの異性体混合物内に含まれる異性体の種類および各異性体の組成とヘキシルアルコールの異性体混合物と2-エチルヘキサノールとの組成比を変化させて複数種のテレフタレート系組成物を製造し、各場合に使用されたヘキシルアルコールの異性体混合物組成およびヘキシルアルコールの異性体混合物と2-エチルヘキサノールとの組成比を下記表1にまとめた。一方、本製造例において、「ヘキシル」は、ヘキシルアルコールの異性体混合物由来の様々な構造のヘキシル基の通称の表現である。
【0106】
【0107】
製造例2.シトレート系組成物の製造
冷却器、コンデンサ、デカンタ、還流ポンプ、温度コントローラ、撹拌機などを備えた四ツ口の3リットル反応器に、クエン酸384g、ヘキシルアルコールの異性体混合物857g、触媒としてテトライソプロピルチタネート1.5gを投入し、反応温度を200℃に設定し、窒素ガスを投入し続けながら、約8時間直接エステル化反応を行い、酸価が1に逹した時に反応を完了した。
【0108】
反応完了後、未反応原料を除去するために、減圧下で蒸留抽出を実施した。蒸留抽出後、中和工程、脱水工程および濾過工程を経てトリヘキシルシトレートを含むシトレート系組成物を得た。
【0109】
前記組成物の他に、前記過程中に使用されたヘキシルアルコールの異性体混合物内に含まれる異性体の種類および各異性体の組成を変化させて複数種のシトレート系組成物を製造し、各場合に使用されたヘキシルアルコールの異性体混合物組成を下記表2にまとめた。一方、本製造例において、「ヘキシル」は、ヘキシルアルコールの異性体混合物由来の様々な構造のヘキシル基の通称の表現である。
【0110】
【0111】
実施例
上記で製造したテレフタレート系組成物とシトレート系組成物を特定の重量比で混合して可塑剤組成物を製造した。各実施例で使用されたテレフタレート系組成物とシトレート系組成物の種類およびこれらの重量比を下記表3にまとめた。
【0112】
【0113】
比較例1~4
従来可塑剤として使用されていた製品4種を比較例1~4として使用した。比較例1としてはジオクチルフタレート(DOP)、比較例2としてはジイソノニルフタレート(DINP)、比較例3としてはジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート(製品名:GL300、メーカー名:LG化学)、比較例4としてはジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート、ブチル(2-エチルヘキシル)テレフタレートおよびジブチルテレフタレートの混合物(製品名:GL500、メーカー名:LG化学)を使用した。
【0114】
比較例5および6
前記製造例1-5で製造されたテレフタレート系組成物を単独可塑剤として使用したものを比較例5とし、前記製造例2-1で製造されたシトレート系組成物を単独可塑剤として使用したものを比較例6とした。
【0115】
実験例1:シート性能の評価
実施例および比較例の可塑剤を使用して、ASTM D638に準じて、以下のような処方および作製条件で試験片を作製した。
【0116】
(1)処方:ストレート塩化ビニル重合体(LS100)100重量部、可塑第50重量部および安定剤(BZ-153T)3重量部
【0117】
(2)配合:98℃で700rpmでミキシング
【0118】
(3)試験片の作製:ロールミル(Roll mill)で160℃で4分間、プレス(press)で180℃で2.5分間(低圧)および2分間(高圧)処理して、1T、2Tおよび3Tシートを作製
【0119】
(4)評価項目
1)硬度(hardness):ASTM D2240に準じて、25℃でのショア硬度(Shore「A」および「D」を3T試験片で10秒間測定した。数値が小さいほど可塑化効率に優れるものと評価される。
【0120】
2)引張強度(tensile strength):ASTM D638方法に準じて、テスト機器であるU.T.M(メーカー名:Instron、モデル名:4466)を用いて、クロスヘッドスピード(cross head speed)を200mm/minとして引っ張った後、1T試験片が切断される地点を測定した。引張強度は、以下のように計算した。
引張強度(kgf/cm2)=ロード(load)値(kgf)/(厚さ(cm)×幅(cm))
【0121】
3)伸び率(elongation rate)の測定:ASTM D638方法に準じて、前記U.T.Mを用いて、クロスヘッドスピード(cross head speed)を200mm/minとして引っ張った後、1T試験片が切断される地点を測定し、伸び率を以下のように計算した。
伸び率(%)=伸長後の長さ/初期の長さ×100で計算した。
【0122】
4)移行損失(migration loss)の測定:KSM-3156に準じて、厚さ2mm以上の試験片を得て、1T試験片の両面にガラスプレート(Glass Plate)を付着した後、1kgf/cm2の荷重を加えた。試験片を熱風循環式オーブン(80℃)で72時間放置した後、取り出し、常温で4時間冷却した。その後、試験片の両面に付着されたガラスプレートを除去した後、ガラスプレートとSpecimen Plateをオーブンに放置する前と後の重量を測定し、移行損失量を以下のような式によって計算した。
移行損失量(%)={(常温での試験片の初期の重量-オーブン放置後の試験片の重量)/(常温での試験片の初期の重量}×100
【0123】
5)加熱減量(volatile loss)の測定:前記作製された試験片を80℃で72時間処理した後、試験片の重量を測定した。
【0124】
加熱減量(重量%)=初期の試験片の重量-(80℃、72時間処理後の試験片の重量)/初期の試験片の重量×100で計算した。
【0125】
6)ストレステスト(耐ストレス性):厚さ2mmの試験片を折り曲げた状態で23℃で168時間放置した後、移行程度(出てくる程度)を観察し、その結果を数値で記載し、0に近いほど優れた特性を示した。
【0126】
7)吸収速度の測定
吸収速度は、77℃、60rpmの条件下で、プラネタリーミキサー(Planetary mixer;Brabender、P600)を使用して、樹脂とエステル化合物が互いに混合されてミキサーのトルクが安定化する状態になるまでかかった時間を測定し、評価した。
【0127】
各実施例および比較例の評価結果を下記表4および5にまとめた。
【0128】
【0129】
【0130】
前記表4および5の結果を参照すると、本発明の実施例による可塑剤組成物は、既存の可塑剤製品である比較例1~4の可塑剤組成物に比べて、同等以上の可塑化効率を示し、且つ機械的物性、耐移行性および熱安定性の面で優れた効果を示すことを確認することができる。
【0131】
具体的には、比較例1および2は、最もよく使用されていたフタレート系可塑剤製品であるが、本発明の実施例は、前記比較例1と類似する水準の可塑化効率を示し、且つ比較例1に比べて、引張強度と伸び率のような機械的物性では改善した効果を示す。また、比較例2と比べると、本発明の実施例が改善した可塑化効率および伸び率を示し、残りの物性では類似する結果を示す。前記比較例1および2の可塑剤製品は、現在、環境規制によって使用が容易でないという点を考慮すると、本発明の実施例による可塑剤組成物が、既存の可塑剤製品の環境にやさしい代替剤として充分に使用可能であることを確認することができる。
【0132】
また、比較例3および4は、前記比較例1および2を代替するための環境にやさしい可塑剤であるが、比較例3および4の可塑剤組成物は、本発明の実施例の可塑剤組成物に比べて、耐移行性および耐ストレス性が大きく劣ることを確認することができる。比較例3および4のように耐移行性および耐ストレス性が劣る場合、樹脂組成物と混合された可塑剤が溶出しやすく、人体に有害であり得るという致命的なデメリットがある。
【0133】
比較例5および6は、本発明の実施例の可塑剤組成物の成分であるテレフタレート系組成物とシトレート系組成物のいずれか一つのみを使用したものであるが、テレフタレート系組成物のみを使用した比較例5の場合、可塑化効率、伸び率および移行損失の面で実施例に比べて劣る結果を示し、シトレート系組成物のみを使用した比較例6の場合には、実施例に比べて引張強度が大きく劣り、可塑化した製品が破損しやすいというデメリットを示した。特に、テレフタレート系組成物とシトレート系組成物が9:1の重量比で混合した実施例4-4とテレフタレート系組成物のみを使用した比較例5を比較すると、比較例5で引張強度の大きい低下が示され、移行損失も大きく増加することを確認することができるが、これより、可塑剤組成物内に少量でもシトレート系組成物が含まれると、機械的物性と耐移行性での改善が発生することを確認することができる。
【0134】
前記の結果から、テレフタレート系組成物とシトレート系組成物を組み合わせて使用し、この際、テレフタレート系組成物とシトレート系組成物のアルキル基としてヘキシルアルコールの異性体混合物由来のものを適用し、テレフタレート系組成物のアルキル基としてヘキシル基および2-エチルヘキシル基を適用する場合、環境にやさしく、且つ既存の可塑剤製品に比べて同等以上の性能を実現し、既存の可塑剤製品を成功的に代替することができることを確認した。
【0135】
実験例2:炭化特性の評価
前記実施例1-5と比較例1~6の可塑剤組成物を使用して、実験例1と同一の条件で、厚さ0.25mmの試験片を40cm×40cmのサイズに製作した。製造された試験片に対して、Mathis Ovenで、230℃、5mm/10secの速度で炭化テストを行い、その結果を
図1に示した。
【0136】
図1から確認することができるように、本発明の実施例1-5による可塑剤組成物は、既存の可塑剤製品と同様、良好な炭化特性を示すのに対し、シトレートのみを単独使用した比較例6の可塑剤組成物は、極めて劣る炭化特性を示した。これは、シトレート化合物自体の劣る熱安定性によって高温露出時の変色現象が発生したものであり、本発明の可塑剤組成物は、シトレート系組成物自体の上記のようなデメリットをテレフタレートとの混用により解消したことを確認することができる。
【国際調査報告】