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特表2023-544761機械学習ベースの測定レシピ最適化の動的制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】機械学習ベースの測定レシピ最適化の動的制御
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
H01L21/66 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520397
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 US2021051623
(87)【国際公開番号】W WO2022076173
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/089,550
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/110,005
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パンデブ スティリアン イバノフ
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤラマン アービンド
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA04
4M106DB02
4M106DB03
4M106DB19
4M106DB30
(57)【要約】
本明細書には、複数の性能目標の収束軌道を動的に制御しながら、計測レシピを訓練および実装するための方法およびシステムが記載されている。測定モデルの訓練中、モデルベースの回帰中、またはその両方で採用される最適化プロセスを正則化するために、性能指標が採用される。モデル最適化の損失関数における性能目標のそれぞれに関連付けられた重み付け値は、モデルの訓練中に動的に制御される。このように、各性能目標の収束、および損失関数の複数の性能目標間のトレードオフが制御されて、安定したバランスのとれた方法で、訓練済みの測定モデルに到達する。訓練済みの測定モデルは、1つ以上の対象パラメータの未知の値を有する構造体の測定値に基づいて対象パラメータの値を推定するために採用される。別の態様では、測定モデルでのモデルベースの回帰における性能目標のそれぞれに関連付けられた重み付け値は、動的に制御される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のウェハ上に配置された1つ以上の正則化構造の測定からの一定量の正則化測定データを収集するように構成された、照明源および検出器を含む計測ツールと、
コンピューティングシステムであって、
1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの測定に関連する一定量の実験計画法(DOE)測定データを受け取ることと、
前記DOE計測ターゲットに関連する1つ以上の対象パラメータの既知の参照値を受け取ることと、
前記正則化測定データを受け取ることと、
前記正則化測定データに関連する1つ以上の測定性能指標の値を受け取ることと、
前記一定量の実験計画法(DOE)測定データ、1つ以上の対象パラメータの前記参照値、前記正則化測定データ、および前記1つ以上の測定性能指標を含む最適化関数に基づいて、測定モデルを反復的に訓練することであって、前記最適化関数が、前記1つ以上の測定性能指標のそれぞれに関連する正則化項を含み、前記正則化項のそれぞれに関連付けられた重み付け値が、前記測定モデルの反復中に動的に制御される、測定モデルを反復的に訓練することと
を行うように構成されたコンピューティングシステムと
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの測定に関連する前記一定量の実験計画法(DOE)測定データの少なくとも一部が、シミュレーションによって生成されることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記DOE計測ターゲットに関連する1つ以上の対象パラメータの前記参照値が、前記シミュレーションに関連する既知の値であることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記DOE計測ターゲットに関連する1つ以上の対象パラメータの前記参照値が、信頼できる参照計測システムによって測定されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記一定量の実験計画法(DOE)測定データの少なくとも一部が、第2のウェハ上に配置された1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの実際の測定値から収集されることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記第1のウェハと前記第2のウェハとが、同じウェハであることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記1つ以上の正則化構造と前記1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットとが、同じ構造であることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記計測ツールが、第3のウェハ上に配置された1つ以上の計測ターゲットの測定からの一定量の測定データを収集し、前記1つ以上の計測ターゲットが、未知の値を有する1つ以上の対象パラメータによって特徴付けられ、前記コンピューティングシステムが、
前記訓練済みの測定モデルに基づいて、前記一定量の測定データから前記1つ以上の計測ターゲットの前記対象パラメータの値を推定する
ようにさらに構成されることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、前記訓練済みの測定モデルが、ニューラルネットワークモデル、線形モデル、非線形モデル、多項式モデル、応答曲面モデル、サポートベクタマシンモデル、決定木モデル、ランダムフォレストモデル、カーネル回帰モデル、深層ネットワークモデル、および畳み込みネットワークモデルのうちのいずれかであることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、前記計測ツールが、分光計測ツールであることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記正則化項のそれぞれに関連付けられた前記重み付け値が、線形二次レギュレータ(LQR)ベースのコントローラ、比例積分微分(PID)コントローラ、最適コントローラ、適応コントローラ、およびモデル予測コントローラのうちのいずれかによって動的に制御されることを特徴とするシステム。
【請求項12】
1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの測定に関連する一定量の実験計画法(DOE)測定データを受け取るステップと、
前記DOE計測ターゲットに関連する1つ以上の対象パラメータの既知の参照値を受け取るステップと、
計測ツールによる第1の半導体ウェハ上に配置された1つ以上の正則化構造の測定からの一定量の正則化測定データを受け取るステップと、
前記正則化測定データに関連する1つ以上の測定性能指標の値を受け取るステップと、
前記一定量の実験計画法(DOE)測定データ、1つ以上の対象パラメータの前記参照値、前記正則化測定データ、および前記1つ以上の測定性能指標を含む最適化関数に基づいて、測定モデルを反復的に訓練するステップであって、前記最適化関数が、前記1つ以上の測定性能指標のそれぞれに関連する正則化項を含み、前記正則化項のそれぞれに関連付けられた重み付け値が、前記測定モデルの反復中に動的に制御される、ステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの測定に関連する前記一定量の実験計画法(DOE)測定データの少なくとも一部が、シミュレーションによって生成されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記DOE計測ターゲットに関連する1つ以上の対象パラメータの前記参照値が、前記シミュレーションに関連する既知の値であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法であって、前記一定量の実験計画法(DOE)測定データの少なくとも一部が、第2のウェハ上に配置された1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの実際の測定値から収集されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、第1のウェハと第2のウェハとが、同じウェハであることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項12に記載の方法であって、前記1つ以上の正則化構造と前記1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットとが、同じ構造であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項12に記載の方法であって、
前記計測ツールによる第3のウェハ上に配置された1つ以上の計測ターゲットの測定からの一定量の測定データを受け取るステップであって、前記1つ以上の計測ターゲットが、未知の値を有する1つ以上の対象パラメータによって特徴付けられる、ステップと、
前記訓練済みの測定モデルに基づいて、前記一定量の測定データから前記1つ以上の計測ターゲットの前記対象パラメータの値を推定するステップと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
ウェハ上に配置された1つ以上の計測ターゲットの測定からの一定量の測定データを収集するように構成された、照明源および検出器を含む計測ツールと、
コンピューティングシステムであって、
前記一定量の測定データを受け取ることと、
前記測定データに関連する1つ以上の測定性能指標の値を受け取ることと、
前記1つ以上の計測性能指標によって正則化された最適化関数を含む回帰分析に基づいて、前記一定量の測定データから、前記1つ以上の計測ターゲットを特徴付ける1つ以上の対象パラメータの値を推定することであって、前記最適化関数が、前記1つ以上の測定性能指標のそれぞれに関連する正則化項を含み、前記正則化項のそれぞれに関連付けられた重み付け値が、前記測定モデルの反復中に動的に制御される、1つ以上の対象パラメータの値を推定することと
を行うように構成されたコンピューティングシステムと
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項20】
半導体ウェハ上に配置された1つ以上の計測ターゲットの測定からの一定量の測定データを受け取るステップと、
前記測定データに関連する1つ以上の測定性能指標の値を受け取るステップと、
前記1つ以上の計測性能指標によって正則化された最適化関数を含む回帰分析に基づいて、前記一定量の測定データから、前記1つ以上の計測ターゲットを特徴付ける1つ以上の対象パラメータの値を推定するステップであって、前記最適化関数が、前記1つ以上の測定性能指標のそれぞれに関連する正則化項を含み、前記正則化項のそれぞれに関連付けられた重み付け値が、前記測定モデルの反復中に動的に制御される、ステップと
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載されている実施形態は、計測システムおよび計測方法に関し、より詳細には、半導体構造体の改善された測定のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2020年10月9日に出願された、「Method for Machine Learning Recipe Optimization by Dynamic Control of The Training」と題する米国仮特許出願第63/089,550号に基づく優先権を米国特許法第119条の下で主張するものであり、その主題の全体を本願に引用して援用する。
【0003】
論理デバイスおよびメモリデバイスなどの半導体デバイスは、典型的には、試料に適用される一連の処理ステップによって製造される。半導体デバイスの様々な特徴および多重構造階層は、これらの処理ステップによって形成される。例えば、とりわけリソグラフィは、半導体ウェハ上にパターンを生成することを含む1つの半導体製造プロセスである。半導体製造プロセスのさらなる例には、化学機械研磨、エッチング、堆積、およびイオン注入が含まれるが、これらに限定されない。複数の半導体デバイスが、単一の半導体ウェハ上に製造され、次いで、個々の半導体デバイスに分離されてもよい。
【0004】
計測プロセスは、ウェハ上の欠陥を検出して歩留まりを向上させるために、半導体製造プロセス中の様々なステップにおいて使用される。光学およびX線ベースの計測技法は、サンプルを破壊するリスクを伴うことなく、高スループットの可能性をもたらす。ナノスケール構造体の限界寸法、膜厚、組成、オーバーレイ、および他のパラメータを特徴付けるために、光波散乱計測、反射率計測、および偏光解析の実装ならびに関連する分析アルゴリズムを含む多くの計測ベースの技法が一般的に使用されている。
【0005】
多くの計測技術は、測定中の試料の物理的性質を測定する間接的な方法である。ほとんどの場合、生の測定信号は、試料の物理的性質を直接決定するために使用することはできない。代わりに、測定モデルを採用して、1つ以上の対象パラメータの値を生の測定信号に基づいて推定する。例えば、偏光解析は、測定中の試料の物理的性質を測定する間接的な方法である。一般に、生の測定信号(例えば、αmeasおよびβmeas)に基づいて試料の物理的性質を決定するには、物理ベースの測定モデルまたは機械学習ベースの測定モデルが必要である。
【0006】
いくつかの例では、1つ以上のモデルパラメータの想定値に基づいて生の測定信号(例えば、αmeasおよびβmeas)を予測することを試みる物理ベースの測定モデルが作成される。式(1)および式(2)に示すように、測定モデルは、計測ツール自体に関連するパラメータ、例えば機械パラメータ(Pmachine)と、測定中の試料に関連するパラメータとを含む。対象パラメータの値を求める場合、いくつかの試料パラメータは、固定値(Pspec-fixed)として扱われ、対象となる他の試料パラメータは、浮動値(Pspec-float)として扱われる、すなわち、生の測定信号に基づいて値が求められる。
αmodel=f(Pmachine,Pspec-fixed,Pspec-float) (1)
βmodel=g(Pmachine,Pspec-fixed,Pspec-float) (2)
【0007】
機械パラメータは、計測ツール(例えば、偏光解析器101)を特徴付けるために使用されるパラメータである。例示的な機械パラメータには、入射角(AOI:angle of incidence)、分析器角度(A)、偏光子角度(P)、照明波長、開口数(NA:numerical aperture)、(存在する場合)補償器または波長板などが含まれる。試料パラメータは、試料を特徴付けるために使用されるパラメータ(例えば、測定中の構造体を特徴付ける材料パラメータおよび幾何学的パラメータ)である。薄膜試料の場合、例示的な試料パラメータには、屈折率、誘電関数テンソル、すべての層の公称層厚、層の順序などが含まれる。CD試料の場合、例示的な試料パラメータには、異なる層に関連する幾何学的パラメータ値、異なる層に関連する屈折率などが含まれる。測定目的では、機械パラメータおよび多くの試料パラメータは、既知の固定値パラメータとして扱われる。しかしながら、試料パラメータのうちの1つ以上の値は、対象となる未知の浮動パラメータとして扱われる。
【0008】
いくつかの例では、対象となる浮動パラメータの値は、理論的予測と実験データとの間の最良適合を生み出す反復プロセス(例えば、回帰)によって求められる。モデル出力値と実験による測定値(例えば、αmeasおよびβmeas)との間の十分に近い一致がもたらされる試料パラメータ値セットが決定されるまで反復して、対象となる未知の浮動パラメータの値が変更され、モデル出力値(例えば、αmodelおよびβmodel)が算出されて、生の測定データと比較される。いくつかの他の例では、浮動パラメータは、事前に算出された解のライブラリを検索して最も近い一致を見出すことによって求められる。
【0009】
いくつかの他の例では、生の測定データに基づいて対象パラメータの値を直接推定するために、訓練済みの機械学習ベースの測定モデルが採用される。これらの例では、機械学習ベースの測定モデルは、生の測定信号をモデル入力として取得し、対象パラメータの値をモデル出力として生成する。
【0010】
特定の測定アプリケーションについて対象パラメータの有用な推定値を生成するには、物理学ベースの測定モデルと機械学習ベースの測定モデルとの両方が訓練されなければならない。一般に、モデルの訓練は、対象パラメータの既知の値(実験計画法(DOE:Design of Experiments)データ)を有する試料から収集された生の測定信号に基づいている。
【0011】
機械学習ベースの測定モデルは、いくつかの重みパラメータによってパラメータ化される。従来、機械学習ベースの測定モデルは、回帰プロセス(例えば、通常の最小二乗回帰)によって訓練される。対象パラメータの既知の参照値と測定された生の測定信号に基づいて機械学習ベースの測定モデルによって推定された対象パラメータの値との間の差を最小限に抑えるために、重みパラメータの値が反復的に調整される。
【0012】
前述のように、物理学ベースの測定モデルは、いくつかの機械パラメータおよび試料パラメータによってパラメータ化される。従来、物理学ベースの測定モデルも、回帰プロセス(例えば、通常の最小二乗回帰)によって訓練される。生の測定データとモデル化された測定データとの間の差を最小限に抑えるために、機械パラメータおよび試料パラメータのうちの1つ以上が反復的に調整される。反復ごとに、対象となる試料パラメータの値は、既知のDOE値に維持される。
【0013】
従来、機械学習ベースの測定モデルと物理学ベースの測定モデルとの両方の訓練(測定レシピ生成としても知られる)は、典型的には最小二乗最小化として表される総出力誤差の最小化によって達成される。総出力誤差は、測定の不確実性全体、すなわち、精度誤差、ツール間マッチング誤差、パラメータ追跡誤差、ウェハ内変動などを含む、測定から生じるすべての誤差の集計を表現したものである。残念なことに、測定の不確実性全体の構成要素を制御せずに測定の不確実性全体に基づいてモデルを訓練すると、非最適な測定性能につながる。多くの例では、シミュレートされたデータに基づいて訓練が実行される場合、特にシミュレートされたデータと実データとの間の不一致により、大きなモデル化誤差が発生する。
【0014】
さらに、経験、測定データ、および物理学から得られたドメイン知識は、測定モデルの最適化を促進する目的関数において直接表現されない。その結果、ドメイン知識は、測定レシピの開発プロセスにおいて十分に活用されない。この場合もやはり、非最適な測定性能につながる。
【0015】
さらに、現在の測定モデル訓練技法は、訓練システムの動力学を考慮することができない。したがって、測定モデルが、所望の測定仕様に関連する複数の目標に基づいて訓練されている場合でも、現在の訓練システムは、複数の性能目標の収束軌道を動的に制御することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0325571号
【特許文献2】国際公開第2017/100424号
【特許文献3】国際公開第2017/176637号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
小さい分解能に対する需要の高まり、多重パラメータ相関、幾何学的構造の複雑性の高まり、および不透明材料の使用の増加により、将来の計測アプリケーションにおいて、計測に関する課題が生じる。したがって、測定レシピ生成を改善するための方法およびシステムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本明細書には、複数の性能目標の収束軌道を動的に制御しながら計測レシピを訓練するための方法およびシステムが記載されている。測定モデルの訓練中、モデルベースの回帰中、またはその両方で採用される最適化プロセスを正則化するために、ドメイン知識が採用される。ドメイン知識は、特定の測定アプリケーションにおける計測システムの測定性能を定量的に特徴付けるために採用される性能指標を含む。このように、最適化プロセスは、物理ベースの測定性能指標の1つ以上の表現によって物理的に正則化される。
【0019】
モデル最適化の損失関数における性能目標のそれぞれに関連付けられた重み付け値は、モデルの訓練中に動的に制御される。このように、各性能目標の収束、および損失関数の複数の性能目標間のトレードオフが制御されて、安定したバランスのとれた方法で、訓練済みの測定モデルに到達する。
【0020】
一態様では、測定モデルは、最適化プロセスに関連する各正則化項に関連付けられた重みを動的に制御することによって訓練される。訓練は、1つ以上のウェハ上に配置された1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの複数のインスタンスに関連する測定データ、DOE計測ターゲットに関連する対象パラメータの参照値、1つ以上のウェハ上に配置された1つ以上の正則化構造の複数のインスタンスから収集された実際の測定データ、実際の測定データに関連する測定性能指標に基づく。
【0021】
さらなる態様では、訓練済みの測定モデルは、1つ以上の対象パラメータの未知の値を有する構造体の測定値に基づいて対象パラメータの値を推定するために採用される。いくつかの実施形態では、未知の構造体を測定するために採用される測定システムは、DOE測定データを収集するために採用されるものと同じ測定システムである。一般に、訓練済みの測定モデルは、単一の測定されたスペクトルに基づいて対象パラメータの値を推定するために、または複数のスペクトルに基づいて対象パラメータの値を同時に推定するために採用されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、正則化構造は、DOE計測ターゲットと同じ構造である。しかしながら、一般に、正則化構造は、DOE計測ターゲットとは異なる場合がある。
【0023】
いくつかの実施形態では、実際の正則化測定データは、特定の計測システムによって収集される。これらの実施形態では、測定モデルは、同じ計測システムによって実行される測定を含む測定アプリケーション用に訓練される。
【0024】
いくつかの他の実施形態では、実際の正則化測定データは、計測システムの複数のインスタンス、すなわち実質的に同一である複数の計測システムによって収集される。これらの実施形態では、測定モデルは、計測システムの複数のインスタンスのいずれかによって実行される測定を含む測定アプリケーション用に訓練される。
【0025】
いくつかの例では、計測システムによる1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの複数のインスタンスのそれぞれの測定に関連する測定データがシミュレートされる。シミュレートされたデータは、計測システムによる1つ以上のDOE計測構造のそれぞれの測定のパラメータ化されたモデルから生成される。
【0026】
いくつかの他の例では、1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの複数のインスタンスに関連する測定データは、計測システムまたは計測システムの複数のインスタンスによって収集された実際の測定データである。これらの実施形態のいくつかでは、正則化構造から実際の正則化測定データを収集するために、同じ計測システムまたは計測システムの複数のインスタンスが採用される。
【0027】
いくつかの実施形態では、物理的測定性能指標は、1つ以上の正則化構造の複数のインスタンスのそれぞれから収集された実際の測定データを特徴付ける。いくつかの実施形態では、性能指標は、履歴データ、構造体の作成に関与するプロセスに関するドメイン知識、物理学、またはユーザによる最良の推測に基づく。いくつかの例では、測定性能指標は、単一点推定である。他の例では、測定性能指標は、推定値の分布である。
【0028】
一般に、正則化構造から収集された測定データに関連付けられた測定性能指標は、正則化構造の物理的属性の値に関する情報を提供する。非限定的な例として、正則化構造の物理的属性は、測定精度、ツール間のマッチング、ウェハ平均、ウェハ内レンジ、参照に対する追跡、ウェハ間のマッチング、ウェハ分割に対する追跡などのうちのいずれかを含む。
【0029】
さらなる態様では、訓練済みの測定モデルの性能は、誤差バジェット分析を使用してテストデータを用いて検証される。検証目的のテストデータとして、実測定データ、シミュレートされた測定データ、またはその両方が採用されてもよい。実データに対する誤差バジェット分析により、正確度、追跡、精度、ツールマッチング誤差、ウェハ間の一致性、ウェハシグネチャの一致性などの、誤差全体に対する個々の寄与の推定が可能になる。いくつかの実施形態では、テストデータは、モデル誤差全体が各寄与成分に分割されるように設計される。
【0030】
別の態様では、測定モデルにおけるモデルベースの回帰は、1つ以上の測定性能指標によって物理的に正則化され、各性能指標に関連する各正則化項に関連付けられた重み付け値は、回帰プロセス中に動的に制御される。
【0031】
上記は、要約であり、したがって必要に応じて単純化、一般化、および詳細の省略を含んでおり、したがって、当業者は、要約が例示のみを目的としており、決して限定的なものではないことを理解するであろう。本明細書に記載のデバイスおよび/またはプロセスの他の態様、発明の特徴、および利点は、本明細書に記載の非限定的な詳細な説明において明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本明細書に提示される例示的な方法による、ウェハの特性を測定するためのウェハ計測システム100の図である。
図2】一実施形態における例示的な測定モデル訓練エンジン200を示す図である。
図3A】一例での測定モデル訓練の各反復における測定追跡性能を特徴付ける指標を示すプロットである。
図3B】一例での測定モデル訓練の各反復における測定追跡性能を特徴付ける指標を示すプロットである。
図3C】一例での測定モデル訓練の各反復における測定追跡性能を特徴付ける指標を示すプロットである。
図4A】一例での測定モデル訓練の各反復における、図3A図3Cに示す各測定目標に関連付けられた重み付け値を示すプロットである。
図4B】一例での測定モデル訓練の各反復における、図3A図3Cに示す各測定目標に関連付けられた重み付け値を示すプロットである。
図4C】一例での測定モデル訓練の各反復における、図3A図3Cに示す各測定目標に関連付けられた重み付け値を示すプロットである。
図5】測定追跡性能を特徴付ける指標を示すプロットである。
図6】一実施形態における例示的な測定モデル回帰エンジン190を示す図である。
図7】最適化プロセスに関連する各測定目標に関連付けられた重みを動的に制御することによって、対象パラメータの値を推定するための測定モデルを訓練するための方法300の流れ図である。
図8】最適化プロセスに関連する各測定目標に関連付けられた重みを動的に制御することによって、測定モデルに対して回帰を実行するための方法400の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、背景の例および本発明のいくつかの実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。
【0034】
本明細書では、複数の性能目標の収束軌道を動的に制御しながら計測レシピを訓練するための方法およびシステムについて説明する。測定モデルの訓練中、モデルベースの回帰中、またはその両方で採用される最適化プロセスを正則化するために、ドメイン知識が採用される。ドメイン知識は、特定の測定アプリケーションにおける計測システムの測定性能を定量的に特徴付けるために採用される性能指標を含む。このように、最適化プロセスは、物理ベースの測定性能指標の1つ以上の表現によって物理的に正則化される。非限定的な例として、最適化プロセスを物理的に正則化するために、測定精度、ツール間のマッチング、追跡、ウェハ内変動などに関連する確率分布が採用される。このように、これらの重要な指標は、測定モデルの訓練中、モデルベースの回帰中、またはその両方で制御される。
【0035】
モデル最適化の損失関数における性能目標のそれぞれに関連付けられた重み付け値は、モデルの訓練中に動的に制御される。このように、各性能目標の収束、および損失関数の複数の性能目標間のトレードオフが制御されて、安定したバランスのとれた方法で、訓練済みの測定モデルに到達する。重み付け値の動的制御により、特定の測定レシピに関連する測定モデルの訓練に必要な計算量が大幅に削減される。さらに、結果として得られる訓練済みの測定モデル、モデルベースの測定、またはその両方により、測定の性能および信頼性の大幅な向上が実現する。
【0036】
最適化プロセスに関連する各正則化項に関連付けられた重みを動的に制御することにより、モデルの一致性が向上し、モデルの訓練に関連する計算量が削減される。最適化プロセスは、過剰適合の影響を受けにくい。重み付け値の物理的正則化および動的制御が採用される場合、精度、ツール間のマッチング、パラメータ追跡などの測定性能仕様は、様々な測定モデルアーキテクチャおよび測定アプリケーション全体にわたって、より確実に満たされる。いくつかの実施形態では、シミュレートされた訓練データが採用される。これらの実施形態では、重み付け値の物理的正則化および動的制御により、シミュレートされた測定データと実測定データとの間の不一致による誤差が大幅に減少する。
【0037】
一態様では、測定モデルは、最適化プロセスに関連する各正則化項に関連付けられた重みを動的に制御することによって訓練される。訓練は、1つ以上のウェハ上に配置された1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの複数のインスタンスに関連する測定データ、DOE計測ターゲットに関連する対象パラメータの参照値、1つ以上のウェハ上に配置された1つ以上の正則化構造の複数のインスタンスから収集された実際の測定データ、実際の測定データに関連する測定性能指標に基づく。さらに、測定モデル訓練プロセスを促進する最適化を正則化するために、1つ以上の測定性能指標が採用される。
【0038】
図1は、本明細書に提示される例示的な方法による、試料の特性を測定するためのシステム100を示す。図1に示すように、システム100は、構造体101の分光偏光解析測定を実行するために使用されてもよい。この態様では、システム100は、照明器102と分光計104とを備えた分光偏光解析器を含み得る。システム100の照明器102は、選択された波長範囲(例えば、100~2500nm)の照明を生成し、これを測定スポット110にわたって試料の表面上に配置された構造体に向けるように構成される。次に、分光計104は、構造体101から反射された照明を受け取るように構成される。照明器102から発生する光は、偏光照明ビーム106を生成するために偏光状態生成器107を使用して偏光されることにさらに留意されたい。構造体101によって反射された放射は、偏光状態分析器109を通過し、分光計104に送られる。収集ビーム108において分光計104によって受け取られた放射は、偏光状態に関して分析され、これにより、分析器を通過した放射の分光計によるスペクトル分析が可能になる。これらのスペクトル111は、本明細書に記載の構造体の分析のためにコンピューティングシステム130に渡される。
【0039】
図1に示すように、システム100は、単一の測定技術(すなわち、SE)を含む。しかしながら、一般に、システム100は、任意の数の異なる測定技術を含み得る。非限定的な例として、システム100は、分光偏光解析器(ミュラー行列偏光解析を含む)、分光反射率計、分光散乱計、オーバーレイ散乱計、角度分解型ビームプロファイル反射率計、偏光分解型ビームプロファイル反射率計、ビームプロファイル反射率計、ビームプロファイル偏光解析器、任意の単一もしくは複数の波長偏光解析器、またはそれらの任意の組合せとして構成され得る。さらに、一般に、異なる測定技術によって収集され、本明細書に記載の方法に従って分析される測定データは、非限定的な例として、軟X線反射率計測、小角X線散乱計測、イメージングベースの計測システム、ハイパースペクトルイメージングベースのシステム、散乱計測オーバーレイ計測システムなどを含む、複数のツール、複数の技術を統合する単一のツール、またはそれらの組合せから収集され得る。
【0040】
さらなる実施形態では、システム100は、本明細書に記載の方法に従って開発された測定モデルに基づいて構造体の測定を実行するために採用される1つ以上のコンピューティングシステム130を含み得る。1つ以上のコンピューティングシステム130は、分光計104に通信可能に結合され得る。一態様では、1つ以上のコンピューティングシステム130は、測定中の構造体(例えば、構造体101)の測定に関連する測定データ111を受け取るように構成される。
【0041】
一態様では、コンピューティングシステム130は、本明細書に記載の正則化構造の測定値に基づいて測定モデルを訓練するための測定モデル訓練エンジン150として構成される。図2は、一実施形態における例示的な測定モデル訓練エンジン200を示す図である。図2に示すように、測定モデル訓練エンジン200は、1つ以上のウェハ上に配置された1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの複数のインスタンスのシミュレートされた測定値、実際の測定値、またはその両方に関連する測定データXDOE203を受け取る。分光偏光解析器測定の一例では、DOE測定データは、測定されたスペクトル、シミュレートされたスペクトル、またはその両方を含む。一例では、DOE測定データ203は、1つ以上のDOE計測ターゲットの複数のインスタンスから計測システム100によって収集された、測定されたスペクトル111を含む。
【0042】
さらに、測定モデル訓練エンジン200は、DOE計測ターゲットに関連する1つ以上の対象パラメータ参照値YDOE205を参照源204から受け取る。対象パラメータの例には、測定される構造体を特徴付ける幾何学的パラメータ、測定される構造体を特徴付ける分散パラメータ、測定される構造体を製造するために採用されるプロセスを特徴付けるプロセスパラメータ、測定される構造体の電気的性質などが含まれる。例示的な幾何学的パラメータには、限界寸法(CD)、オーバーレイなどが含まれる。例示的なプロセスパラメータには、リソグラフィの焦点、リソグラフィの線量、エッチング時間などが含まれる。
【0043】
いくつかの実施形態では、参照値205がシミュレートされる。これらの実施形態では、参照源204は、既知の参照値205について対応するシミュレートされたDOE測定データ203を生成するシミュレーションエンジンである。いくつかの実施形態では、参照値205は、信頼できる測定システム(例えば、走査型電子顕微鏡など)によって測定された値である。これらの実施形態では、参照源は、信頼できる測定システムである。
【0044】
測定モデル訓練エンジン200はまた、1つ以上のウェハ上に配置された1つ以上の正則化構造の複数のインスタンスから収集された実際の正則化測定データXREG202を、その実際の正則化測定データ202に関連する測定性能指標θREG201とともに受け取る。一例では、正則化測定データ202は、1つ以上の正則化構造の複数のインスタンスから計測システム100によって収集された、測定されたスペクトル111を含む。
【0045】
測定モデル訓練エンジン200は、1つ以上の測定性能指標によって正則化された最適化関数に基づいて、その最適化関数の各正則化項に関連付けられた重みを動的に制御しながら、測定モデルを訓練する。いくつかの例では、測定モデルはニューラルネットワークモデルである。図2に示すように、ニューラルネットワークモジュール206は、データセットXDOE203およびXREG202についてニューラルネットワークモデルh(・)を評価する。さらに、ニューラルネットワークモジュール206は、モデル訓練に関連する最適化関数に関連する各正則化項を評価する。これらの結果207は、損失評価モジュール208に伝達される。損失評価モジュール208は、参照データYDOE205と、XDOE203からニューラルネットワークモデルによって推定された対応する値と、ニューラルネットワークモジュール206によって推定された正則化項と、正則化重み付け項γの現在の値とに基づいて、最適化関数の値を決定する。損失評価モジュール208は、最適化関数の値に基づいて、ニューラルネットワーク重み付け値Wを更新する。更新済みのニューラルネットワーク重み付け値212は、ニューラルネットワークモジュール206に伝達される。ニューラルネットワークモジュール206は、訓練プロセスの次の反復のために、更新済みのニューラルネットワーク重み付け値でニューラルネットワークモデルを更新する。
【0046】
訓練プロセスの各反復において、制御モジュール210は、各測定目標に関連する各正則化重み付け項γの更新値を決定する。各更新値は、測定目標の達成値および各測定目標の所望の値に基づいて決定される。図2に示すように、制御モジュール210は、達成された各測定目標の値に関する指示209と、各測定目標の所望の値214とを受け取る。各反復において、制御モジュール210は、各測定目標に関連する達成値と所望の値とを比較し、各正則化重み付け項の更新値211を決定する。各正則化重み付け項の更新値211は、損失評価モジュール208に伝達される。損失評価モジュール208は、次の反復において更新値211を使用して最適化関数を評価する。
【0047】
訓練プロセス中に各測定目標の重みを継続的に調整することによって、ニューラルネットワークは、より少ない計算量で各測定目標の所望の仕様を達成するように訓練される。
【0048】
制御モジュール210は、複数の測定目標を最適化するコントローラを採用する。非限定的な例として、コントローラは、線形二次レギュレータ(LQR:Linear Quadratic Regulator)ベースのコントローラ、比例積分微分(PID:proportional-integral-derivative)コントローラ、最適コントローラ、適応コントローラ、モデル予測コントローラなどのうちのいずれかである。
【0049】
いくつかの実施形態では、コントローラのパラメータは、遺伝的アルゴリズム、疑似アニーリングアルゴリズム、勾配降下アルゴリズムなどの検索アルゴリズムによって、ロバスト性能のために最適化される。
【0050】
いくつかの例では、各測定性能指標は、個別の分布として表される。一例では、正則化構造に関連する測定精度の分布は、逆ガンマ分布である。式(1)は、測定精度データセットxについての確率密度関数pを示しており、ここで、Γ(・)はガンマ関数を表し、定数aは形状パラメータを表し、定数bは尺度パラメータを表す。
【数1】
【0051】
別の例では、ウェハ上の測定された正則化構造のインスタンスの平均値の分布は、正規分布によって記述される。式(2)は、測定ウェハ平均データセットxについての確率密度関数mを示しており、ここで、μは特定の平均を表し、σは分布に関連する特定の分散を表す。
【数2】
【0052】
さらなる態様では、測定モデルの訓練を促進する最適化を正則化するために、特に、正則化構造から収集された実際の測定データを特徴付ける統計情報、例えば、測定精度、ウェハ平均などの重要な測定性能指標に関連する既知の分布が採用される。式(3)は、対象となるDOEパラメータyDOEの同時尤度と、正則化構造の測定に関連する測定性能指標のcriteriaregと示している。同時尤度を最大化することによって測定モデルh(・)が訓練中に進化して、DOE測定データxDOEの忠実度を維持しながら、正則化構造に関連する測定データxregの測定性能を満たすように適応する。
P(yDOE,criteriareg|h(・),xDOE,xreg) (3)
【0053】
同時尤度を最大化するために、DOE測定データは平均二乗誤差に寄与し、正則化構造に関連する測定データは損失関数における正則化項として寄与する。要約すると、同時尤度を最大化することは、DOE測定データと正則化データとの間および異なる正則化データセット間に独立性があると仮定し、式(4)に示す損失関数を最小化することと同等であり、ここで、Reg(h(・))は、定数パラメータαによって重み付けされる、モデルパラメータに関する包括的正則化であり、Reg(xreg,k,h(・),θreg,k)は、正則化重み付けパラメータγによって重み付けされるk番目の正則化項であり、ここで、xreg,kは、k番目の正則化データセットであり、θreg,kは、正則化構造から収集された実際の測定データに関連する統計情報を記述するパラメータのベクトルである。
J(h(・);x,y,θ)=||h(xDOE)-yDOE||+α・Reg(h(・))+γ・Reg(xreg,1,h(・),θreg,1)+・・・+γ・Reg(xreg,k,h(・),θreg,k) (4)
【0054】
一例では、測定モデルの最適化では、2つの異なる正則化項RegおよびRegが採用される。Regは、測定精度データセットxreg-precに対する測定精度の正則化を表し、Regは、ウェハ内データセットxWIWに対するウェハ平均の正則化を表す。非限定的な例として、測定精度は、形状パラメータ
【数3】
および尺度パラメータ
【数4】
を有する逆ガンマ分布によって記述されると仮定し、ウェハ平均は、平均μWiWおよび分散
【数5】
を有する正規分布によって記述されると仮定する。これらの仮定を用いることにより、正則化項Regを、式(5)に示すように記述することができ、ここで、
【数6】
であり、σ(h(xreg-prec))はh(xreg-prec)の標準偏差を表す。
【数7】
同様に、正則化項Regを、式(6)に示すように記述することができ、ここで、
【数8】
であり、
【数9】
はウェハ平均を表す。
【数10】
【0055】
この例では、測定モデル最適化関数を、式(7)に示すように記述することができ、ここで、hW,b(・)は、重み付け値Wおよびバイアス値bを有するニューラルネットワークモデルであり、モデル誤差分散は
【数11】
であり、重み分散は
【数12】
である。
【数13】
【0056】
測定モデル最適化関数を使用するモデル訓練に採用されるDOEデータセット、測定精度データセット、およびウェハ平均データセットを式(8)に示す。
【数14】
【0057】
モデル誤差、ニューラルネットワークの重み値、測定精度、およびウェハ内のウェハ平均を記述する統計モデルの既知のパラメータを式(9)に示す。
【数15】
【0058】
モデルの訓練中、式(7)によって示される最適化関数は、DOEデータ推定誤差と他のすべての基準との間で平衡を保つ。第1の項は、DOEデータ推定誤差を、モデル誤差分散
【数16】
によってペナルティが与えられる平均二乗誤差として表している。第2の項は、モデルの重みWに関する包括的正則化項である。モデルの重みWは、重み分散
【数17】
によってペナルティが与えられる。最後の2つの項は、前述のように、測定精度およびウェハ平均に関する最適化を正則化する。
【0059】
各反復において、最適化関数は、ニューラルネットワークモデルhW,b(・)の重み付け値Wおよびバイアス値bに対する変更を促進し、これにより最適化関数が最小化される。最適化関数が十分に低い値に達すると、測定モデルは訓練済みであると見なされ、訓練済みの測定モデル213がメモリ(例えば、メモリ132)に記憶される。
【0060】
図3A図3Cは、一例での測定モデル訓練の各反復における測定追跡性能を特徴付ける指標を示すプロットである。
【0061】
図3Aは、モデル訓練の各反復におけるDOE構造の限界寸法の測定に関連する達成されたR値を示すプロット220を図示している。図3Aに示すように、達成されたR値は、所望の値Rに迅速かつ安定して収束する。
【0062】
図3Bは、モデル訓練の各反復におけるDOE構造の限界寸法の測定に関連する達成された勾配値を示すプロット221を図示している。図3Bに示すように、達成された勾配値は、所望の勾配値に迅速かつ安定して収束する。
【0063】
図3Cは、モデル訓練の各反復におけるDOE構造の限界寸法の測定に関連する達成された精度値を示すプロット222を図示している。図3Cに示すように、達成された精度値は、所望の精度値に安定して収束する。
【0064】
図4A図4Cはそれぞれ、一例での測定モデル訓練の各反復における、図3A図3Cに示す各測定目標に関連付けられた重み付け値を示すプロットである。
【0065】
図4Aは、モデル訓練の各反復における、図3Aに示すDOE構造の限界寸法の測定値のR値を表す目的関数の項に割り当てられた重み付け値を示すプロット223を図示している。図4Aに示すように、R値に関連付けられた重み付け値は、性能目標の所望の値が達成されるにつれて、迅速かつ安定して小さい数に収束する。
【0066】
図4Bは、モデル訓練の各反復における、図3Bに示すDOE構造の限界寸法の測定値の勾配値を表す目的関数の項に割り当てられた重み付け値を示すプロット224を図示している。図4Bに示すように、勾配値に関連付けられた重み付け値は、性能目標の所望の値が達成されるにつれて、迅速かつ安定して小さい数に収束する。
【0067】
図4Cは、モデル訓練の各反復における、図3Cに示すDOE構造の限界寸法の測定値の精度値を表す目的関数の項に割り当てられた重み付け値を示すプロット225を図示している。図4Cに示すように、精度値に関連付けられた重み付け値は、性能目標の所望の値が達成されるにつれて、迅速かつ安定して小さい数に収束する。
【0068】
別のさらなる態様では、訓練済みの測定モデルは、1つ以上の対象パラメータの未知の値を有する構造体の測定値に基づいて対象パラメータの値を推定するために採用される。
いくつかの例では、訓練済みのモデルは、対象パラメータの値の推定値と、測定値の不確実性との両方を提供する。訓練済みの測定モデルは、測定システム(例えば、計測システム100)によって収集された実際の測定データ(例えば、測定されたスペクトル)から1つ以上の対象パラメータの値を推定するために採用される。いくつかの実施形態では、測定システムは、DOE測定データを収集するために採用されるものと同じ測定システムである。他の実施形態では、測定システムは、DOE測定データを合成的に生成するためにシミュレートされたシステムである。一例では、実際の測定データは、1つ以上の対象パラメータの未知の値を有する1つ以上の計測ターゲットから計測システム100によって収集された、測定されたスペクトル111を含む。
【0069】
一般に、訓練済みの測定モデルは、単一の測定されたスペクトルに基づいて対象パラメータの値を推定するために、または複数のスペクトルに基づいて対象パラメータの値を同時に推定するために採用されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、正則化構造は、DOE計測ターゲットと同じ構造である。しかしながら、一般に、正則化構造は、DOE計測ターゲットとは異なる場合がある。
【0071】
いくつかの実施形態では、1つ以上の正則化構造の複数のインスタンスから収集される実際の正則化測定データは、特定の計測システムによって収集される。これらの実施形態では、測定モデルは、同じ計測システムによって実行される測定を含む測定アプリケーション用に訓練される。
【0072】
いくつかの他の実施形態では、1つ以上の正則化構造の複数のインスタンスから収集される実際の正則化測定データは、計測システムの複数のインスタンス、すなわち実質的に同一である複数の計測システムによって収集される。これらの実施形態では、測定モデルは、計測システムの複数のインスタンスのいずれかによって実行される測定を含む測定アプリケーション用に訓練される。
【0073】
いくつかの例では、計測システムによる1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの複数のインスタンスのそれぞれの測定に関連する測定データがシミュレートされる。シミュレートされたデータは、計測システムによる1つ以上のDOE計測構造のそれぞれの測定のパラメータ化されたモデルから生成される。
【0074】
いくつかの他の例では、1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの複数のインスタンスに関連する測定データは、計測システムまたは計測システムの複数のインスタンスによって収集された実際の測定データである。これらの実施形態のいくつかでは、正則化構造から実際の正則化測定データを収集するために、同じ計測システムまたは計測システムの複数のインスタンスが採用される。
【0075】
いくつかの実施形態では、物理的測定性能指標は、1つ以上の正則化構造の複数のインスタンスのそれぞれから収集された実際の測定データを特徴付ける。いくつかの実施形態では、性能指標は、参照計測システムから収集されたデータ、公称DOEパラメータ値、履歴データ、構造体の作成に関与するプロセスに関するドメイン知識、物理学、複数のプロセスおよび複数の計測技法から収集された統計データ、またはユーザによる最良の推測に基づく。いくつかの例では、測定性能指標は、単一点推定である。他の例では、測定性能指標は、推定値の分布である。
【0076】
一般に、正則化構造から収集された測定データに関連付けられた測定性能指標は、正則化構造の物理的属性の値に関する情報を提供する。非限定的な例として、正則化構造の物理的属性は、測定精度、測定正確度、ツール間のマッチング、ウェハ平均、ウェハ内レンジ、ウェハ内変動、ウェハシグネチャ、参照に対する追跡、ウェハ間変動、ウェハ分割に対する追跡などのうちのいずれかを含む。
【0077】
いくつかの例では、測定性能指標は、ウェハ上の特定の位置における正則化構造のパラメータの特定の値および対応する不確実性を含む。一例では、測定性能指標は、ウェハ上の特定の位置における限界寸法(CD)およびその不確実性であり、例えば、CDは35ナノメートル±0.5ナノメートルである。
【0078】
いくつかの例では、測定性能指標は、ウェハ内、ウェハのロット内、または複数のウェハロットにわたる、構造体のパラメータの値の確率分布を含む。一例では、CDは、平均値および標準偏差を有する正規分布を呈し、例えば、CDの平均値は55ナノメートルであり、標準偏差は2ナノメートルである。
【0079】
いくつかの例では、測定性能指標は、ウェハ全体にわたる対象パラメータの値の空間分布、例えば、ウェハマップ、および各位置における対応する不確実性を含む。
【0080】
いくつかの例では、測定性能指標は、ツール間のマッチングを特徴付けるための、複数のツールにわたる対象パラメータの測定値の分布を含む。分布は、各ウェハにわたる平均値、各部位における値、またはその両方を表してもよい。
【0081】
いくつかの例では、測定性能指標は、測定精度誤差の分布を含む。
【0082】
いくつかの例では、測定性能指標は、ウェハロット全体の推定値に一致するウェハマップを含む。
【0083】
いくつかの例では、測定性能指標は、対象パラメータの参照値を用いた対象パラメータの推定値の追跡を特徴付ける1つ以上の指標を含む。いくつかの例では、追跡性能を特徴付ける指標は、R値、勾配値、およびオフセット値のうちのいずれかを含む。
【0084】
いくつかの例では、測定性能指標は、DOE分割実験のためのウェハ平均に対する対象パラメータの推定値の追跡を特徴付ける1つ以上の指標を含む。いくつかの例では、追跡性能を特徴付ける指標は、R値、勾配値、およびオフセット値のうちのいずれかを含む。
【0085】
図5は、追跡性能を特徴付ける指標を示すプロット180を示す。図5に示すように、プロット180上の各データ点のx位置は、対象パラメータの予測値を示し、各データ点のy位置は、対象パラメータの既知の値(例えば、DOE参照値)を示す。理想的な追跡性能は、破線181によって示されている。すべての予測値が対応する既知の信頼できる値と完全に一致した場合、すべてのデータ点は線181上に存在することになる。しかしながら、実際には、追跡性能は完全ではない。線182は、データ点に対する最良適合線を示している。図5に示すように、線182は勾配およびy切片値によって特徴付けられ、既知の値と予測値との間の相関はR値によって特徴付けられる。
【0086】
さらなる態様では、訓練済みの測定モデルの性能は、誤差バジェット分析を使用してテストデータを用いて検証される。検証目的のテストデータとして、実測定データ、シミュレートされた測定データ、またはその両方が採用されてもよい。
【0087】
実データに対する誤差バジェット分析により、正確度、追跡、精度、ツールマッチング誤差、ウェハ間の一致性、ウェハシグネチャの一致性などの、誤差全体に対する個々の寄与の推定が可能になる。いくつかの実施形態では、テストデータは、モデル誤差全体が各寄与成分に分割されるように設計される。
【0088】
非限定的な例として、実データは、以下のサブセット、すなわち、正確度および追跡の算出のための参照値、例えば、勾配、オフセット、R、3STEYX、平均二乗誤差、3シグマ誤差などを含む参照値を伴う実データ、測定精度を推定するために複数回測定された同じ部位の測定からの実データ、ツール間のマッチングを推定するために異なるツールによって測定された同じ部位の測定からの実データ、ウェハ平均およびウェハ分散のウェハ間変動を推定するための複数のウェハ上の部位の測定からの実データ、ならびに、ウェハシグネチャ、例えば、所与のウェハに存在すると予想されるブルズアイパターンのような典型的なウェハパターンを識別するための複数のウェハの測定からの実データのうちのいずれかを含む。
【0089】
いくつかの他の例では、構造体のパラメータ化モデルを採用して、誤差バジェット分析用のシミュレートされたデータを生成する。シミュレートされたデータは、構造体の各パラメータがそのDOE内でサンプリングされ、他のパラメータが公称値に固定されるように生成される。いくつかの例では、シミュレーションの他のパラメータ、例えば、システムモデルパラメータが、誤差バジェット分析に含まれる。パラメータの真の参照値はシミュレートされたデータによって既知であるので、構造体の各パラメータの変化による誤差は分離され得る。
【0090】
いくつかの例では、精度誤差を算出するために、異なるノイズサンプリングを用いて、追加のシミュレートされたデータが生成される。
【0091】
いくつかの例では、外挿誤差を推定するために、パラメータ化された構造体のDOE外で、追加のシミュレートされたデータが生成される。
【0092】
別の態様では、測定モデルにおけるモデルベースの回帰は、1つ以上の測定性能指標によって物理的に正則化され、最適化プロセスに関連する各正則化項に関連付けられた重みは、動的に制御される。1つ以上の対象パラメータの推定値は、1つ以上のウェハ上に配置された1つ以上の対象構造体の複数のインスタンスから収集された実際の測定データ、測定に関連する統計情報、および対象パラメータの事前の推定値に基づいて決定される。
【0093】
一態様では、コンピューティングシステム130は、本明細書に記載の構造体の測定を実行する測定モデル回帰エンジンとして構成される。図6は、一実施形態における例示的な測定モデル回帰エンジン190を示す図である。図6に示すように、測定モデル回帰エンジン190は、回帰モジュール191、損失評価モジュール193、および制御モジュール195を含む。図6に示すように、損失評価モジュール193は、測定源199、例えば分光偏光解析器などから、1つ以上の計測ターゲットの測定に関連する測定データXPOI188を受け取る。一例では、測定データ188は、1つ以上の計測ターゲットから計測システム100によって収集された、測定されたスペクトル111を含む。さらに、損失評価モジュール193は、測定データ188に関連する測定性能指標θREG187を受け取る。
【0094】
回帰モジュール191は、1つ以上の対象パラメータ197の仮定値に基づいて測定スペクトル192をシミュレートする測定モデルを含む。損失評価モジュール193は、1つ以上の測定性能指標によって正則化された最適化関数に基づいて、測定される計測ターゲットに関連する1つ以上の対象パラメータ197の値を反復的に更新する。反復の停止基準が満たされると、1つ以上の対象パラメータの現在の値198がメモリ(例えば、メモリ132)に記憶される。
【0095】
回帰の損失関数は、データ再構築誤差項および1つ以上の正則化項を含む。式(10)は、実際の測定値から1つ以上の対象パラメータの値を推定する、モデルベースの回帰の例示的な損失関数を示す。
【数18】
損失関数の第1の項は、実測定データXとシミュレートされた測定データg(Y)との間の差を測定する再構築誤差であり、ここで、g(・)は、測定されるスペクトルを1つ以上の対象パラメータYの現在の推定値からシミュレートする、既知の測定シミュレーションモデルである。式(10)に示す例では、再構築誤差項は、ノイズ共分散行列Σの逆行列によって重み付けされる。各正則化項は、正則化重み付け項γによって重み付けされる。各正則化項は、各測定性能指標を記述するモデルの既知のパラメータと、1つ以上の対象パラメータの事前の推定値とに基づいて、各測定性能指標がどの程度満たされているかを評価する。各データセットXは、対応する測定情報θおよび推定パラメータYを有するデータXのサブセットである。回帰の目標は、損失関数を最小化する1つ以上の対象パラメータの値を見出すことである。回帰中、パラメータYは、シミュレートされたデータと実データとの間の不一致を減らすと同時に、事前情報が与えられた測定性能指標を満たすように、調整される。
【0096】
回帰プロセスの反復中、制御モジュール195は、各測定目標に関連する各正則化重み付け項γの更新値を決定する。各更新値は、測定目標の達成値および各測定目標の所望の値に基づいて決定される。図6に示すように、制御モジュール195は、達成された測定目標の値に関する指示194と、各測定目標の所望の値189とを受け取る。各反復において、制御モジュール195は、各測定目標に関連する達成値と所望の値とを比較し、各正則化重み付け項の更新値196を決定する。各正則化重み付け項の更新値196は、損失評価モジュール193に伝達される。損失評価モジュール193は、次の反復において更新値196を使用して最適化関数を評価する。
【0097】
回帰プロセス中に各測定目標の重みを継続的に調整することによって、より少ない計算量で各測定目標の所望の仕様が達成されるように対象パラメータの値が決定される。
【0098】
制御モジュール195は、複数の測定目標を最適化するコントローラを採用する。非限定的な例として、コントローラは、線形二次レギュレータ(LQR)ベースのコントローラ、比例積分微分(PID)コントローラ、最適コントローラ、適応コントローラ、モデル予測コントローラなどのいずれかである。
【0099】
いくつかの実施形態では、コントローラのパラメータは、遺伝的アルゴリズム、疑似アニーリングアルゴリズム、勾配降下アルゴリズムなどの検索アルゴリズムによって、ロバスト性能のために最適化される。
【0100】
一例では、正則化項は、前述のように測定精度およびウェハ内のウェハ平均である。この例では、測定精度に関連する正則化項は式(11)で示され、ここで、Yreg-precは対象パラメータの事前の推定値であり、σ(Yreg-prec)はYreg-precの標準偏差を表す。
【数19】
ウェハ内のウェハ平均の精度に関連する正則化項は式(12)で示され、ここで
【数20】
はウェハ内の対象パラメータの事前の推定平均値である。
【数21】
この例では、損失関数は、式(13)によって示される。
【数22】
【0101】
いくつかの実施形態では、測定モデルを訓練するために採用される対象パラメータの値は、参照計測システムによるDOEウェハの測定から導出される。参照計測システムは、十分に正確な測定結果を生成する、信頼できる測定システムである。いくつかの例では、参照計測システムは、ウェハ製造プロセスフローの一部としてオンラインでウェハを測定するために使用するにはあまりも低速であるが、モデル訓練などのためにオフラインで使用するには好適である。非限定的な例として、基準計測システムには、スタンドアロン型光学計測システム、例えば、分光偏光解析器(SE)、複数の照明角を有するSE、ミュラー行列要素を測定するSE、単一波長偏光解析器、ビームプロファイル偏光解析器、ビームプロファイル反射率計、広帯域反射分光計、単一波長反射率計、角度分解反射率計、イメージングシステム、散乱計、例えばスペックルアナライザ、X線ベースの計測システム、例えば、透過もしくはかすめ入射モードで動作する小角X線散乱計(SAXS)、X線回折(XRD)システム、X線蛍光(XRF)システム、X線光電子分光(XPS)システム、X線反射率計(XRR)システム、ラマン分光システム、原子間力顕微鏡(AFM)システム、透過型電子顕微鏡システム、走査型電子顕微鏡システム、軟X線反射率測定システム、イメージングベースの計測システム、ハイパースペクトルイメージングベースの計測システム、散乱計測オーバーレイ計測システム、またはデバイス幾何形状を特定できる他の技術が含まれてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のように訓練された測定モデルは、ニューラルネットワークモデルとして実装される。他の例では、測定モデルは、線形モデル、非線形モデル、多項式モデル、応答曲面モデル、サポートベクタマシンモデル、決定木モデル、ランダムフォレストモデル、カーネル回帰モデル、深層ネットワークモデル、畳み込みネットワークモデル、または他のタイプのモデルとして実装されてもよい。
【0103】
いくつかの例では、本明細書で説明されるように訓練された測定モデルは、モデルの組合せとして実装されてもよい。
【0104】
さらに別の態様では、本明細書に記載の測定結果を使用して、プロセスツール(例えば、リソグラフィツール、エッチングツール、堆積ツールなど)に能動的フィードバックを提供することができる。例えば、本明細書に記載の測定方法に基づいて決定された測定パラメータの値をエッチングツールに伝達して、所望のエッチング深さを達成するようにエッチング時間を調整することができる。同様に、エッチングツールまたは堆積ツールにそれぞれ能動的フィードバックを提供するために、エッチングパラメータ(例えば、エッチング時間、拡散率など)または堆積パラメータ(例えば、時間、濃度など)を測定モデルに含めてもよい。いくつかの例では、測定されたデバイスパラメータ値および訓練済みの測定モデルに基づいて決定されたプロセスパラメータに対する修正がプロセスツールに伝達されてもよい。一実施形態では、コンピューティングシステム130が、測定システムから受信した測定信号111に基づいて、プロセス中に1つ以上の対象パラメータの値を決定する。さらに、コンピューティングシステム130は、1つ以上の対象パラメータの決定された値に基づいて、制御コマンドをプロセスコントローラ(図示せず)に伝達する。制御コマンドは、プロセスコントローラに、プロセスの状態を変更させる(例えば、エッチングプロセスの停止、拡散率の変更、リソグラフィ焦点の変更、リソグラフィ線量の変更など)。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の半導体デバイスの計測のための方法およびシステムは、メモリ構造の測定に適用される。これらの実施形態は、周期構造および平面構造に対する光学限界寸法(CD)、膜、ならびに組成の計測を可能にする。
【0106】
いくつかの例では、測定モデルは、KLA-Tencor Corporation、Milpitas、California、USAから入手可能なSpectraShape(登録商標)光学限界寸法計測システムの要素として実装される。このように、モデルは、作成され、システムによってスペクトルが収集された直後に使用できる状態になる。
【0107】
いくつかの他の例では、測定モデルは、例えば、KLA-Tencor Corporation、Milpitas、California、USAから入手可能なAcuShape(登録商標)ソフトウェアを実装するコンピューティングシステムによって、オフラインで実装される。得られた訓練済みのモデルは、測定を実行する計測システムによってアクセス可能なAcuShape(登録商標)ライブラリの要素として組み込まれてもよい。
【0108】
一般に、最適化損失関数の各項に関連付けられた重み付け値の動的制御は、損失関数が複数の目的を含むとともに、これらの目的それぞれについての所望の仕様が定義されている、任意の機械学習アルゴリズムに適用されてもよい。
【0109】
図7は、少なくとも1つの新規な態様における、1つ以上の計測性能指標に基づいて測定モデルを訓練する方法300を示す。方法300は、本発明の図1に示す計測システム100などの計測システムによる実施に好適である。一態様では、方法300のデータ処理ブロックは、コンピューティングシステム130または任意の他の汎用コンピューティングシステムの1つ以上のプロセッサによって実行される事前プログラム済みのアルゴリズムを介して実施され得ることを理解されたい。本明細書では、計測システム100の特定の構造的態様は制限を表すものではなく、単なる例示として解釈されるべきであることを理解されたい。
【0110】
ブロック301において、1つ以上の実験計画法(DOE)計測ターゲットの測定に関連する一定量の実験計画法(DOE)測定データが、コンピューティングシステムによって受け取られる。
【0111】
ブロック302において、DOE計測ターゲットに関連する1つ以上の対象パラメータの既知の参照値が、コンピューティングシステムによって受け取られる。
【0112】
ブロック303において、計測ツールによる第1のウェハ上に配置された1つ以上の正則化構造の測定からの一定量の正則化測定データが、コンピューティングシステムによって受け取られる。
【0113】
ブロック304において、正則化測定データに関連する1つ以上の測定性能指標の値が、コンピューティングシステムによって受け取られる。
【0114】
ブロック305において、一定量の実験計画法(DOE)測定データ、1つ以上の対象パラメータの参照値、正則化測定データ、および1つ以上の測定性能指標を含む最適化関数に基づいて、測定モデルが反復的に訓練される。最適化関数は、1つ以上の測定性能指標のそれぞれに関連する正則化項を含み、正則化項のそれぞれに関連付けられた重み付け値は、測定モデルの反復中に動的に制御される。
【0115】
図8は、少なくとも1つの新規な態様における、1つ以上の計測性能指標によって正則化された最適化関数に基づいて1つ以上の対象パラメータの値を推定する方法400を示す。方法400は、本発明の図1に示す計測システム100などの計測システムによる実施に好適である。一態様では、方法400のデータ処理ブロックは、コンピューティングシステム130または任意の他の汎用コンピューティングシステムの1つ以上のプロセッサによって実行される事前プログラム済みのアルゴリズムを介して実施され得ることを理解されたい。本明細書では、計測システム100の特定の構造的態様は制限を表すものではなく、単なる例示として解釈されるべきであることを理解されたい。
【0116】
ブロック401において、計測ツールによるウェハ上に配置された1つ以上の計測ターゲットの測定からの一定量の測定データが、コンピューティングシステムによって受け取られる。
【0117】
ブロック402において、測定データに関連する1つ以上の測定性能指標の値が、コンピューティングシステムによって受け取られる。
【0118】
ブロック403において、1つ以上の計測性能指標によって正則化された最適化関数を含む回帰分析に基づいて、一定量の測定データから、1つ以上の計測ターゲットを特徴付ける1つ以上の対象パラメータの値が推定される。最適化関数は、1つ以上の測定性能指標のそれぞれに関連する正則化項を含み、正則化項のそれぞれに関連付けられた重み付け値は、測定モデルの反復中に動的に制御される。
【0119】
さらなる実施形態では、システム100は、本明細書に記載の方法に従って収集された分光測定データに基づいて半導体構造体の測定を実行するために採用される1つ以上のコンピューティングシステム130を含む。1つ以上のコンピューティングシステム130は、1つ以上の分光計、能動光学素子、プロセスコントローラなどに通信可能に結合されてもよい。一態様では、1つ以上のコンピューティングシステム130は、ウェハ101の構造体のスペクトル測定に関連する測定データを受信するように構成される。
【0120】
本開示を通じて記載されている1つ以上のステップは、単一のコンピュータシステム130によって、または代替として複数のコンピュータシステム130によって実行されてもよいことが認識されるべきである。さらに、システム100の異なるサブシステムは、本明細書に記載のステップの少なくとも一部を実行するのに好適なコンピュータシステムを含んでもよい。したがって、前述の説明は、本発明に対する限定と解釈されるべきではなく、単なる例示である。
【0121】
さらに、コンピュータシステム130は、当技術で既知の任意の方法で分光計に通信可能に結合されてもよい。例えば、1つ以上のコンピューティングシステム130は、分光計に関連するコンピューティングシステムに結合されてもよい。別の例では、分光計は、コンピュータシステム130に結合された単一のコンピュータシステムによって直接制御されてもよい。
【0122】
システム100のコンピュータシステム130は、有線部分および/または無線部分を含み得る伝送媒体によって、システムのサブシステム(例えば、分光計など)からデータもしくは情報を受信および/または取得するように構成されてもよい。このように、伝送媒体は、コンピュータシステム130とシステム100の他のサブシステムとの間のデータリンクとして機能してもよい。
【0123】
システム100のコンピュータシステム130は、有線部分および/または無線部分を含み得る伝送媒体によって、他のシステムからデータもしくは情報(例えば、測定結果、モデリング入力、モデリング結果、参照測定結果など)を受信ならびに/または取得するように構成されてもよい。このように、伝送媒体は、コンピュータシステム130と他のシステム(例えば、メモリオンボードシステム100、外部メモリ、または他の外部システム)との間のデータリンクとして機能してもよい。例えば、コンピューティングシステム130は、データリンクを介して記憶媒体(すなわち、メモリ132または外部メモリ)から測定データを受信するように構成されてもよい。例えば、本明細書に記載の分光計を使用して得られたスペクトル結果は、永続的または半永続的なメモリデバイス(例えば、メモリ132または外部メモリ)に記憶されてもよい。この点に関して、スペクトル結果は、オンボードメモリから、または外部メモリシステムからインポートされてもよい。さらに、コンピュータシステム130は、伝送媒体を介して他のシステムにデータを送信してもよい。例えば、測定モデル、またはコンピュータシステム130によって決定された推定パラメータ値は、外部メモリに伝達および記憶されてもよい。この点に関して、測定結果は、別のシステムにエクスポートされてもよい。
【0124】
コンピューティングシステム130には、パーソナルコンピュータシステム、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、画像コンピュータ、並列プロセッサ、または当技術で既知の任意の他のデバイスが含まれるが、これらに限定されない。一般に、「コンピューティングシステム」という用語は、メモリ媒体からの命令を実行する1つ以上のプロセッサを有する任意のデバイスを包含するように広く定義され得る。
【0125】
本明細書に記載の方法などの方法を実施するプログラム命令134は、ワイヤ、ケーブル、またはワイヤレス伝送リンクなどの伝送媒体を介して伝送されてもよい。例えば、図1に示すように、メモリ132に記憶されたプログラム命令134は、バス133を介してプロセッサ131に伝送される。プログラム命令134は、コンピュータ可読媒体(例えば、メモリ132)に記憶される。例示的なコンピュータ可読媒体には、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気ディスクもしくは光ディスク、または磁気テープが含まれる。
【0126】
本明細書に記載の「限界寸法」という用語は、構造体の任意の限界寸法(例えば、下部限界寸法、中間限界寸法、上部限界寸法、側壁角、格子高さなど)、任意の2つ以上の構造体間の限界寸法(例えば、2つの構造体間の距離)、および2つ以上の構造体間の変位(例えば、オーバーレイ格子構造体間のオーバーレイ変位など)を含む。構造体には、3次元構造体、パターン化された構造体、オーバーレイ構造体などが含まれてもよい。
【0127】
本明細書に記載の「限界寸法アプリケーション」または「限界寸法測定アプリケーション」という用語は、任意の限界寸法測定を含む。
【0128】
本明細書に記載の「計測システム」という用語は、限界寸法計測、オーバーレイ計測、焦点/線量計測、および組成計測などの計測アプリケーションを含む、任意の態様で試料を特徴付けるために少なくとも部分的に採用される任意のシステムを含む。しかしながら、そのような技術用語は、本明細書に記載の「計測システム」という用語の範囲を限定するものではない。さらに、システム100は、パターン化されたウェハおよび/またはパターン化されていないウェハの測定のために構成されてもよい。計測システムは、LED検査ツール、エッジ検査ツール、裏面検査ツール、マクロ検査ツール、またはマルチモード検査ツール(1つ以上のプラットフォームからのデータを同時に含む)、および本明細書に記載の技法から恩恵を受ける任意の他の計測または検査ツールとして構成されてもよい。
【0129】
本明細書では、任意の半導体処理ツール(例えば、検査システムまたはリソグラフィシステム)内で試料を測定するために使用され得る半導体測定システムについての様々な実施形態が記載されている。「試料」という用語は、本明細書では、当技術分野において既知の手段によって処理(例えば、印刷、または欠陥について検査)され得るウェハ、レチクル、または任意の他のサンプルを指すために使用されている。
【0130】
本明細書で使用される「ウェハ」という用語は、一般に、半導体材料または非半導体材料で形成された基板を指す。例には、単結晶シリコン、ガリウムヒ素、およびリン化インジウムが含まれるが、これらに限定されない。このような基板は、一般的に、半導体製造設備において見出され、および/または処理されてもよい。いくつかの事例では、ウェハは、基板のみ(すなわち、ベアウェハ)を含んでもよい。代替として、ウェハは、基板上に形成された異なる材料の1つ以上の層を含んでもよい。ウェハ上に形成される1つ以上の層は、「パターン化されている」場合もあれば「パターン化されていない」場合もある。例えば、ウェハは、反復可能なパターン特徴を有する複数のダイを含んでもよい。
【0131】
「レチクル」は、レチクル製造プロセスの任意の段階のレチクル、または半導体製造設備での使用向けにリリースされている場合もあればリリースされていない場合もある完成したレチクルであってもよい。レチクル、または「マスク」は、一般に、上に実質的に不透明な領域が形成され、パターン状に構成された、実質的に透明な基板と定義される。基板は、例えば、非晶質SiOなどのガラス材料を含んでもよい。レチクル上のパターンがレジストに転写されるように、リソグラフィプロセスの露光ステップ中に、レジストで覆われたウェハの上にレチクルが配置されてもよい。
【0132】
ウェハ上に形成される1つ以上の層は、パターン化されている場合もあればパターン化されていない場合もある。例えば、ウェハは、それぞれが反復可能なパターン特徴を有する複数のダイを含んでもよい。このような材料層の形成および処理により、最終的に、完成したデバイスがもたらされ得る。ウェハ上に多くの異なるタイプのデバイスが形成されてもよく、本明細書で使用されるウェハという用語は、当技術で既知の任意のタイプのデバイスが製造されているウェハを包含することを意図している。
【0133】
1つ以上の例示的な実施形態において、記載された機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組合せにおいて実装されてもよい。ソフトウェアにおいて実装される場合、機能は、コンピュータ可読媒体上の1つ以上の命令またはコードとして記憶または伝送されてもよい。コンピュータ可読媒体には、コンピュータ記憶媒体と、ある場所から別の場所へのコンピュータプログラムの転送を容易にする任意の媒体を含む通信媒体との両方が含まれる。記憶媒体は、汎用または専用のコンピュータによってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体であってもよい。限定ではなく例として、そのようなコンピュータ可読媒体には、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM、もしくは他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージ、もしくは他の磁気ストレージデバイス、あるいは、所望のプログラムコード手段を命令もしくはデータ構造の形式で保持または記憶するために使用され得るとともに、汎用もしくは専用のコンピュータ、または、汎用もしくは専用のプロセッサによってアクセスされ得る、任意の他の媒体が含まれてもよい。また、厳密には、任意の接続もコンピュータ可読媒体と呼ばれる。例えば、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(DSL:digital subscriber line)、または赤外線、無線、マイクロ波などのワイヤレス技術を使用して、ソフトウェアがウェブサイト、サーバ、または他のリモートソースから送信される場合、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL、または赤外線、無線、マイクロ波などのワイヤレス技術は、媒体の定義に含まれる。本明細書で使用されるディスク(disk)およびディスク(disc)には、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、光ディスク、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、フロッピディスク、およびブルーレイディスクが含まれ、ディスク(disk)は通常、磁気的にデータを再生し、ディスク(disc)は、レーザを用いて光学的にデータを再生する。上記の組合せも、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0134】
説明のために特定の具体的な実施形態が上に記載されているが、本特許文書の教示は、一般的な適用可能性を有し、上記の具体的な実施形態に限定されない。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態の様々な特徴の様々な変形、適応、および組合せを実施することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】