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特表2023-544807抗菌性高分子およびこれを含む抗菌性高分子フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】抗菌性高分子およびこれを含む抗菌性高分子フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 123/22 20060101AFI20231018BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C09D123/22
C09D4/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521392
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 KR2022012197
(87)【国際公開番号】W WO2023033410
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0114960
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0097511
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヘスン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンボン・モク
(72)【発明者】
【氏名】ヒェラン・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンスク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンサム・チェ
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CB131
4J038FA111
4J038KA03
4J038NA27
(57)【要約】
本発明は、抗菌性重合単量体を含む架橋重合体と、これを含むことで粘着フィルムの性能を維持しながら向上したバクテリア増殖抑制特性を示すことができる抗菌性高分子フィルムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される重合性抗菌単量体;ブチレン由来繰り返し単位およびイソプレン繰り返し単位を含むブチル系ゴム;および架橋剤の架橋重合体である、
抗菌性高分子:
【化1】
前記化学式1において、
~Rは、それぞれ独立して、水素、またはメチルであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキルであり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【請求項2】
およびRは、それぞれ水素であり、
は、メチルである、
請求項1に記載の抗菌性高分子。
【請求項3】
は、ターシャリーブチルである、
請求項1に記載の抗菌性高分子。
【請求項4】
は、水素である、
請求項1に記載の抗菌性高分子。
【請求項5】
は、エチレンである、
請求項1に記載の抗菌性高分子。
【請求項6】
前記化学式1で表される重合性抗菌単量体は、下記の化学式1-1で表される、
請求項1に記載の抗菌性高分子:
【化2】
【請求項7】
前記重合性抗菌単量体は、前記ブチル系ゴム100重量部に対して5~20重量部使用される、
請求項1に記載の抗菌性高分子。
【請求項8】
前記ブチレン由来繰り返し単位は、イソブチレン繰り返し単位である、
請求項1に記載の抗菌性高分子。
【請求項9】
前記ブチル系ゴムは、ブチレン由来繰り返し単位とイソプレン繰り返し単位とを90:10以上99:1以下の重量比で含む、
請求項1に記載の抗菌性高分子。
【請求項10】
前記ブチル系ゴムの重量平均分子量は、50,000g/mol以上2,000,000g/mol以下である、
請求項1に記載の抗菌性高分子。
【請求項11】
前記架橋剤は、多官能性(メタ)アクリレートモノマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、およびこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つである、
請求項1に記載の抗菌性高分子。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗菌性高分子を含む、抗菌性高分子フィルム。
【請求項13】
粘着付与剤をさらに含む、
請求項12に記載の抗菌性高分子フィルム。
【請求項14】
前記粘着付与剤は、水素化されたジシクロペンタジエン系(Dicyclopentadiene系、DCPD系)樹脂である、
請求項13に記載の抗菌性高分子フィルム。
【請求項15】
前記抗菌性高分子フィルムは、グラム陰性菌に対して抗菌性を示す、
請求項12に記載の抗菌性高分子フィルム。
【請求項16】
前記グラム陰性菌は、大腸菌(Escherichia coli)である、
請求項15に記載の抗菌性高分子フィルム。
【請求項17】
下記の化学式1で表される重合性抗菌単量体;ブチレン由来繰り返し単位およびイソプレン繰り返し単位を含むブチル系ゴム;および架橋剤を含む抗菌性高分子組成物を硬化して形成されたものである、
抗菌性高分子フィルム:
【化3】
前記化学式1において、
~Rは、それぞれ独立して、水素、またはメチルであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキルであり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【請求項18】
1つ以上の基材;および
前記基材上の少なくとも一面に備えられた、請求項12に記載の抗菌性高分子フィルムを含む、
抗菌性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年8月30日付の韓国特許出願第10-2021-0114960号および2022年8月4日付の韓国特許出願第10-2022-0097511号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、抗菌性高分子およびこれを含む抗菌性高分子フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
最近、生活の多様化、生活水準の向上、意識の変化および改善により、個人の生活環境での衛生と快適さの増進に対する関心が高まっている。これによって、これを脅かす微生物に関する研究が行われているが、日常生活環境に存在する微生物はその種類が極めて多いだけでなく、自然界に広範囲に分布していて被害が深刻なのが現状である。
【0004】
特に、食生活、住居環境、衣服、工業製品などの多様な環境にバクテリア、カビなどのような微生物が生息しうるが、この時、バクテリアは各種炎症や食中毒などの原因になり、カビは悪臭を発生させるだけでなく、各種皮膚疾患、呼吸器疾患、アレルギー、アトピー性皮膚炎などの原因になりうるので、問題になる。また、電子製品および生活用品類の表面に生息する微生物の場合、製品の性能低下の要因にもなりかねない。
【0005】
特に、最近は、パンデミックなどの影響により多目的施設などで人体と接触が不可避な部分に抗菌フィルムを付着させるケースが増える傾向にある。このため、微生物による人間の被害を防止するために、微生物の増殖を抑制したり、あるいは微生物を死滅するための多様な抗菌物質が開発されている。
【0006】
前記抗菌フィルムに関連し、フィルム内に無機粒子(銀または銅など)を混合して製造することによって抗菌機能を付与する無機抗菌剤が主に使用されている。しかし、無機粒子を混合する場合、高温条件でも抗菌特性が維持できるというメリットがあるが、価格が高く、加工後に含まれている金属イオンによる変色の可能性があり、フィルムの粘度および不透明度が増加して基本物性が阻害される問題がある。
【0007】
一方、かつて開発された他の抗菌物質として有機抗菌剤がある。有機抗菌剤は、無機抗菌剤に比べて価格が安価で少量でも抗菌効果に優れているというメリットがあるが、製品への適用後に溶出する可能性があって抗菌持続性が良くないという問題がある。さらに、有機抗菌剤は、微生物の繁殖の阻止および死滅の面で製品の安定性は確保できるものの、同時に毒性があって使用者の皮膚に刺激を誘発する原因になったりもする。
【0008】
これによって、抗菌粘着フィルムとして使用されかつ、フィルムから溶出することなく抗菌性が持続して安全であり、粘着フィルムの基本物性が維持される抗菌性高分子組成物に対する要求が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、抗菌性重合単量体を含む抗菌性高分子と、これを含むことで粘着フィルムの性能を維持しながら向上したバクテリア増殖抑制特性を示すことができる抗菌性高分子フィルムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の化学式1で表される重合性抗菌単量体;ブチレン由来繰り返し単位およびイソプレン繰り返し単位を含むブチル系ゴム;および架橋剤の架橋重合体である、抗菌性高分子を提供する:
【0011】
【化1】
【0012】
前記化学式1において、
~Rは、それぞれ独立して、水素、またはメチルであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキルであり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【0013】
また、本発明は、前記架橋重合体を含む抗菌性高分子フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の抗菌性高分子は、抗菌特性を有する重合性抗菌単量体を含むことで、フィルムへの製造時に安全でかつ安定した抗菌性高分子フィルムの製造が可能である。
【0015】
具体的には、前記抗菌性高分子は、単量体の架橋時に重合性抗菌単量体が共に硬化して、フィルムへの製造時に外観の変化なく製造可能である。これによって、グラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の少なくとも1つに対して抗菌特性を示しながらも、使用された抗菌単量体が樹脂内に残っておらず、抗菌剤の溶出による人体安全性の問題が発生しない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上、明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0017】
また、本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」形成されると言及された場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味したり、他の層または要素が各層の間、対象体、基材の上に追加的に形成されてもよいことを意味する。
【0018】
本発明は多様な変更が加えられて様々な形態を有することができるが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0019】
また、本明細書に使用される専門用語は単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0020】
また、本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~20のものが好ましい。一実施態様によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。もう一つの実施態様によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。前記アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。さらに、本明細書において、アルキレンは、2価の基であることを除けば、前述したアルキル基に関する説明が適用可能である。
【0021】
一般に、家庭、オフィス、多目的施設などの日常的な生活空間で使用される生活化学製品に抗菌特性を示すために、このような生活化学製品の表面にバクテリアなどの微生物の繁殖の阻止および/または死滅可能な抗菌コーティングが行われている。特に、最近は、パンデミックの影響により多目的施設で多数が接触する物品に追加的に抗菌フィルムを付着させる場合が増えている。この時、抗菌フィルム内に含まれている抗菌剤が微生物の細胞膜または細胞壁を損傷させたりこれらのタンパク質の変性を誘導し、これによって微生物の成長が阻害されて、微生物の繁殖および/または死滅が行われる。
【0022】
バクテリア(細菌)は確認されたものだけで5千種を超すほど多様な種類が存在する。具体的には、バクテリアは球状、棒状、螺旋状などとその細胞の形状が多様であり、酸素を要求する程度も菌ごとに異なっていて、好気性菌、通性菌および嫌気性細菌に分けられる。したがって、通常1種類の抗菌剤が多様なバクテリアの細胞膜/細胞壁を損傷させたりタンパク質を変成させることができる物理/化学的メカニズムを有することは容易ではなかった。
【0023】
また、時間が経過するほど、抗菌コーティングのために使用された抗菌剤が溶出したり、あるいは持続的な抗菌剤に使用者が曝露する場合、むしろ使用者の健康を脅かすなどの問題が発生した。
【0024】
しかし、特定の構造を有する重合性抗菌単量体が架橋重合された抗菌性高分子を抗菌性高分子フィルムとして使用する場合、フィルムから抗菌単量体が溶出せず、前記抗菌性高分子フィルムがグラム陰性菌に対して抗菌性を示すことができることを確認して、本発明を完成した。前記化学式1で表される重合性抗菌単量体のアミノ基が陽子と結合して正電荷を帯びると、微生物の細胞壁との相互作用(interaction)が増加し、ペンダント基(Pendant group)に相当するアルキル基が微生物の細胞壁を不安定にして微生物の生長を抑制することによって抗菌性を示す。
【0025】
前記抗菌性高分子フィルムは、抗菌単量体をフィルムの原料となる高分子(ブチル系ゴム)と共に硬化することによってフィルム内に架橋された形態で含む。したがって、フィルムの外観に変化がなく、抗菌性高分子フィルム内に前記抗菌単量体が化合物の形態で残らなくなるので、時間が経過しても抗菌剤が溶出する恐れがなく、これによって優れた安全性および安定性を示すことができる。
【0026】
以下、発明の具体的な実施形態により抗菌性高分子および抗菌性高分子フィルムについてより詳細に説明する。
【0027】
抗菌性高分子
一実施形態の抗菌性高分子は、下記の化学式1で表される重合性抗菌単量体;ブチレン由来繰り返し単位およびイソプレン繰り返し単位を含むブチル系ゴム;および架橋剤の架橋重合体である:
【0028】
【化2】
【0029】
前記化学式1において、
~Rは、それぞれ独立して、水素、またはメチルであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキルであり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【0030】
大部分の細菌の細胞膜は負電荷を帯びるので、大部分の抗菌性物質は正電荷を有する。前記化学式1で表される化合物のアミンに水素陽イオン(陽子)が結合して陽イオン性を示すと細菌の細胞膜と相互作用が可能なため、前記化学式1で表される化合物は抗菌性を有する。
【0031】
前記化学式1で表される重合性抗菌単量体は、後述するブチル系ゴムに架橋されて前記架橋重合体を形成する。前記架橋重合体は、前記重合性抗菌単量体とブチル系ゴム、および架橋剤が光重合して形成されるので、重合性抗菌単量体も高分子化が進行する。つまり、前記重合性抗菌単量体は、抗菌性高分子フィルム内で別途の化合物として存在せず、ブチル系ゴムと架橋されて存在するため、時間が経過しても流出しないので、高分子フィルムへの製造時にフィルムの抗菌特性が持続的に維持されながらも人体に無害である。
【0032】
前記化学式1において、好ましくは、RおよびRは、それぞれ水素であり、Rは、メチルであってもよい。
【0033】
また、好ましくは、Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキルであってもよく、より好ましくは、Rは、ターシャリーブチルであってもよい。一般に、R位の炭素数が多いほど、微生物の外部細胞壁の二重層と親和性が高まり、これによって強い抗菌力を示す。炭素数が8以上のアルキルの場合には、水中でも強い殺菌性を示すことが可能で適切な長さを有することが重要である。
【0034】
好ましくは、Rは、水素であってもよい。Rがアルキル基の場合、先に述べたように、微生物の外部細胞壁と相互作用する役割を果たすことができる。ただし、RとRがすべてアルキル基の場合、電子の誘導効果(Inductive Effect)が増加する代わりに、立体効果(Steric Effect)によって細胞膜と正電荷の相互作用に否定的な影響を及ぼす。これに対し、Rが水素の場合には、立体効果が小さくなって、陽子とより容易に結合して正電荷を帯びるので、負電荷を有する微生物の細胞壁とより強い相互作用を発揮することができる。したがって、Rが相対的に少ない炭素数を有するターシャリーブチルの場合にも、優れた抗菌性能を示すことができる。
【0035】
好ましくは、Lは、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキレンであってもよく、より好ましくは、Lは、エチレンであってもよい。
【0036】
一例として、前記重合性抗菌単量体は、下記の化学式1-1で表される化合物であってもよい:
【0037】
【化3】
【0038】
一方、前記重合性抗菌単量体は、前記抗菌性高分子内に前記ブチル系ゴム100重量部に対して5重量部以上20重量部以下の含有量で含まれる。前記重合性抗菌単量体が少なく含まれる場合、粘着フィルムの性能は従来のフィルムと同等またはそれ以上の性能を示すのに対し、抗菌単量体が不足して十分な抗菌効果を示しにくく、重合性抗菌単量体が多量に含まれる場合、抗菌性能は非常に優れることができるが、相対的に粘着フィルムの粘着性能が減少し、外観が黄色く変化する黄色化(Yellowish)問題が発生しうる。したがって、前記重合性抗菌単量体が上述した範囲を満足する時、粘着フィルムの性能と抗菌性能の両面ですべて優れた効果を有することができる。
【0039】
より具体的には、前記重合性抗菌単量体は、前記抗菌性高分子内に前記ブチル系ゴム100重量部に対して5重量部以上、7重量部以上、9重量部以上、11重量部以上または13重量部以上かつ、20重量部以下、または19重量部以下の含有量で含まれる。
【0040】
一方、前記抗菌性高分子は、ブチル系ゴムを含む。前記ブチル系ゴムは、ブチレン由来繰り返し単位とイソプレン繰り返し単位とを含む。上述した重合性抗菌単量体とブチル系ゴムとの重合時、前記イソプレン繰り返し単位と前記重合性抗菌単量体とが架橋できる。
【0041】
好ましくは、前記ブチル系ゴムにおいてブチレン由来繰り返し単位は、イソブチレン繰り返し単位であってもよい。
【0042】
好ましくは、前記ブチル系ゴムは、ブチレン由来繰り返し単位とイソプレン繰り返し単位とを90:10~99:1の重量比で含むことができる。前記ブチル系ゴムのブチレン由来繰り返し単位とイソプレン繰り返し単位の重量比が前記範囲以内の場合に、水分遮断性に優れた粘着剤組成物を得ることができる。これはイソプレン由来の骨格中の二重結合によるスタッキング作用によるものと推測される。より好ましくは、ブチレン由来繰り返し単位とイソブチレン繰り返し単位の重量比は、92:8以上、95:5以上、97:3以上、または98:2以上であり、99:1以下であってもよい。
【0043】
前記ブチル系ゴムは、重量平均分子量(Mw)が50,000g/mol以上2,000,000g/mol以下であってもよい。前記ブチル系ゴムの重量平均分子量が50,000g/mol未満の場合、フィルム製造のための組成物が十分な粘度を有しにくくて基材表面へのコーティング時に均一に塗布しにくく、コーティングが完了した状態で封止剤として十分な物性を有しにくいことがある。2,000,000g/molを超える場合、コーティング液への製造時に粘度が高くて均一なコーティング液の製造に困難があり、高い粘度によってコーティング過程でも均一なコーティングが難しいことがある。より好ましくは、前記抗菌性高分子の重量平均分子量は、100,000g/mol以上、200,000g/mol以上、300,000g/mol以上、400,000g/mol以上、または500,000g/mol以上であり、1,500,000g/mol以下、1,200,000g/mol以下、1,000,000g/mol以下、900,000g/mol以下、800,000g/mol以下、700,000g/mol以下、または600,000g/mol以下であってもよい。
【0044】
この時、前記ブチル系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン(PS)をキャリブレーション(Calibration)用標準試料として用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。より具体的には、前記抗菌性高分子200mgを200mlのN,N-ジメチルホルムアミド(N,N-Dimethylformamide)(DMF)溶媒で希釈して約1000ppmのサンプルを製造した後、Agilent 1200 series GPC機器を用いて1ml/minの流速(Flow)でRI detectorにより重量平均分子量を測定することができる。この時、サンプルの分子量は、標準PSスタンダード(Standard)8種を用いて検量線を作成した後、これを基準として算出できる。
【0045】
前記架橋剤としては、抗菌性高分子組成物の重合時に架橋結合の導入を可能にするものであればいかなる化合物でも可能である。好ましくは、前記架橋剤としては、多官能性(メタ)アクリレートモノマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよびこれらの混合物からなる群より選択された1つであってもよいし、前記架橋剤としては、光硬化可能な多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましく使用できる。前記多官能性(メタ)アクリレートとしては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペート(neopentylglycol adipate)ジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレートまたは9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの2官能性アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3官能性ウレタン(メタ)アクリレートまたはトリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどの3官能性アクリレート;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能性アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能性アクリレート;およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレート、イソシアネート単量体およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの反応物などの6官能性アクリレートなどが挙げられるが、これらに制限されるわけではない。これらは単独または2種以上混合して使用可能である。より好ましくは、前記架橋剤としてトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(TCDDA;Tricyclodecane dimethanol diacrylate)が使用できる。
【0046】
好ましくは、前記架橋剤は、ブチル系ゴム100重量部に対して5~20重量部使用できる。より好ましくは、前記架橋剤は、ブチル系ゴム100重量部に対して、6重量部以上、7重量部以上、8重量部以上、9重量部以上、または10重量部以上かつ、18重量部以下、16重量部以下、14重量部以下、12重量部以下、または11重量部以下で使用できる。
【0047】
抗菌性高分子フィルム
本発明の他の実施形態では、前述した抗菌性高分子を含む抗菌性高分子フィルムを提供する。
【0048】
前記抗菌性高分子を含む抗菌性高分子フィルムは、多様な分野に容易に適用可能であり、大量生産に適するだけでなく、抗菌効果がある化学式1で表される重合性抗菌単量体が前記高分子に重合されて溶出せず抗菌効果が長く持続できる。
【0049】
一方、本発明の一実施例によれば、前記抗菌性高分子フィルムは、前記化学式1で表される重合性抗菌単量体、ブチル系ゴム、および架橋剤と、発明が目的とする効果を低下させない範囲内で溶媒およびその他の添加剤を特別な制限なく含む抗菌性高分子組成物を硬化して製造できる。前記溶媒は、通常使用される溶媒であれば制限がなく、前記抗菌性高分子組成物に含まれる各成分を混合する時に添加されるか、各成分が溶媒に分散または混合された状態で添加されながら前記抗菌性高分子組成物に含まれてもよい。例えば、前記抗菌性高分子組成物は、含まれる成分の全体固形分の濃度が1重量%~80重量%、または2重量%~50重量%となるように溶媒を含むことができる。
【0050】
前記有機溶媒の非制限的な例としては、メチルエチルケノン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンまたはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、またはt-ブタノールなどのアルコール類;エチルアセテート、i-プロピルアセテート、またはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;トルエン;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0051】
一例として、前記添加剤には、粘着付与剤、光開始剤、緩衝剤、湿潤剤、中和剤、重合終結剤などがあり、これらのいずれか1つ以上を追加的に含むことができる。
【0052】
前記粘着付与剤は、好ましくは、水素化された環状オレフィン系重合体であってもよい。例えば、石油樹脂を水素化して得られる水素化された石油樹脂を使用することができる。水素化された石油樹脂は、部分的にまたは完全に水素化されてもよいし、それら樹脂の混合物であってもよい。このような粘着付与剤は、前述した抗菌性高分子組成物を構成する物質と相溶性が良いながらも水分遮断性に優れ、有機揮発成分が低いものを選択することができる。水素化された石油樹脂の具体例としては、水素化されたテルペン系樹脂、水素化されたエステル系樹脂または水素化されたジシクロペンタジエン系樹脂などが挙げられる。前記粘着付与剤の含有量は、必要に応じて適切に調節可能である。最も好ましくは、水素化されたジシクロペンタジエン系樹脂を粘着付与剤として使用することができる。
【0053】
前記光開始剤は、アルファ-ヒドロキシケトンタイプの化合物、ペンジルケタールタイプの化合物や、これらの混合物が使用できるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、アルファ-ヒドロキシケトンタイプの化合物として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドなどが使用できる。
【0054】
緩衝剤、湿潤剤、中和剤、重合終結剤などの添加剤も、当該技術分野にて通常使用されるものであれば制限なく使用可能である。
【0055】
前記抗菌性高分子フィルムは、グラム陰性菌に対して抗菌性を示すことができる。前記グラム陰性菌は、グラム染色法で染色すれば赤色で染色されるバクテリアを総称するもので、グラム陽性菌に比べて相対的に少量のペプチドグリカンを有する細胞壁を有する代わりに、脂質多糖質、脂質タンパク質、および他の複雑な高分子物質からなる外膜を有する。これによって、クリスタルバイオレットなどの塩基性染料で染色した後、エタノールを処理すれば脱色が起こり、サフラニンなどの赤色の染料で対比染色すれば赤色を示す。このようなグラム陰性菌に分類されるバクテリアとしては、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、大腸菌(Escherichia coli)、チフス菌(Salmonella typhi)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、またはコレラ菌(Vibrio cholerae)などが挙げられる。
【0056】
好ましくは、前記抗菌性高分子フィルムは、大腸菌(Escherichia coli、E.coli)に対して抗菌性を示すことができる。
【0057】
具体的には、前記抗菌性高分子フィルムの大腸菌(Escherichia coli、E.coli)に対する抗菌特性評価はJIS Z 2081の抗菌評価法を利用し、後述する数式1で計算して菌増殖抑制率を確認できる。これによって測定された前記抗菌性高分子組成物の大腸菌増殖抑制率は、70%以上、72%以上、80%以上、84%以上、90%以上、92%以上、95%以上、96%以上、または96.43%以上であり、100%以下、または99.89%以下であってもよい。
【0058】
具体的には、前記抗菌特性は、以下の方法で測定することができる。試験バクテリアであるE.Coliを2×10CFU/mlの濃度で接種したPBSバッファ(buffer)溶液400μlを5cm×5cmの大きさの抗菌性高分子フィルムに塗布する。フィルム表面における水分の蒸発を防止するために、アルコールで消毒して乾燥したPETフィルムを覆った後、24時間培養し、24時間培養された菌を順次に希釈して固体寒天(Agar)培地に塗抹して現れる群集により菌数を確認して測定することができる。前記測定は1回または2回以上進行させて、その結果の平均値で確認できる。
【0059】
一方、菌増殖抑制率は、下記数式1で計算して確認できる。
【0060】
[数式1]
菌抑制率(%)=(1-S24hrs/R24hrs)×100
【0061】
24hrsは、菌抑制率を確認しようとする抗菌処理試料を24時間培養後、寒天(agar)培地に塗抹して確認した群集の菌数であり、R24hrsは、抗菌処理をしなかった比較例を24時間培養後、寒天(agar)培地に塗抹して確認した群集の菌数を意味する。
【0062】
本発明の抗菌性高分子フィルムは、ガラス(Glass)粘着力および粘度が重合性抗菌単量体を含まない従来の物質と同等水準を有することができる。
【0063】
好ましくは、前記抗菌性高分子フィルムのガラス(Glass)粘着力は、2300gf/25mm以上2500gf/25mm以下であってもよい。より好ましくは、2350gf/25mm以上、2400gf/25mm以上、または2420gf/25mm以上であり、2480gf/25mm以下、または2450gf/25mm以下であってもよい。
【0064】
前記抗菌性高分子フィルムのガラス(Glass)粘着力は、次のような方法で測定できる。抗菌性高分子フィルムの離型フィルムを除去した後、銅箔とPET付きフィルムのCu面を粘着フィルムとラミネーションして付着させる。付着したフィルムを幅25mm、長さ150mmに裁断し、用意された試験片を90mm×150mmのガラス板に50℃の温度でラミネーションして付着させる。作製された試験片のガラス板を固定し、フィルム部を剥離してTA.XTplus Texturean alyserのT.A Tension modeで低速剥離力を測定する。低速剥離力の測定は、速度5mm/sec、Trigger force5.0g、distance80mmの条件で進行させる。
【0065】
好ましくは、前記抗菌性高分子フィルムの粘度(Viscosity)は、70,000Pa・s以上90,000Pa・s以下であってもよい。より好ましくは、72,000Pa・s以上、75,000Pa・s以上、77,000Pa・s以上、または78,000Pa・s以上であり、85,000Pa・s以下、83,000Pa・s以下、81,000Pa・s以下、80,000Pa・s以下、または79,000Pa・s以下であってもよい。
【0066】
前記抗菌性高分子フィルムの粘度は、次のような方法で測定できる。まず、同一の粘着フィルム2つの試料のprotect film(離型フィルム)をそれぞれ除去した後、両側の大きさをよく合わせてラミネーションして付着させる。周辺部を一部除去し、2等分してそれぞれ一方の離型フィルムを除去し、再びラミネーションする。このような方法を繰り返して粘着フィルムの厚さが500~800μmの範囲に入るようにする。正確な厚さを測定した後、15mm×15mmの正方形サイズに切断した後、ARES-G2 Rheometerを用いて測定する。測定はFrequency sweepモードで、Strain5%、温度(Temperature)27℃の条件で進行させ、1Hzでの複合粘度(Complex viscosity)を測定する。
【0067】
前記抗菌性高分子フィルムは、粘着付与剤などを含めて硬化することによって、それ自体で粘着または接着フィルムの機能をしてもよく、抗菌性高分子組成物を基材上に塗布した後、塗布された結果物を光硬化して使用してもよい。
【0068】
具体的には、本発明の一実施例によれば、1つ以上の基材;および前記基材上の少なくとも一面に備えられたコーティング層を含み、前記コーティング層は、上述した抗菌性高分子を含む抗菌性高分子組成物を硬化して形成されたものである、抗菌性物品が提供される。
【0069】
前記基材は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)などの高分子フィルム;織物;ガラス;ウレタンフォーム、スチロールなどのプラスチックフォーム;原木;合板;金属基材であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0070】
また、前記抗菌性物品は、抗菌性が要求される各種生活化学用品、自動車用部品、建築材料、有機電子装置などその種類に限定がない。一例として、前記抗菌性高分子フィルムが有機電子装置に使用される場合、封止フィルムとして使用できる。
【0071】
具体的には、前記抗菌性物品は、鮮度保持用材料、ファブリック製品、農業用フィルム、有機電子装置、各種オフィス用品および各種包装材料の中から選択される1種以上であってもよい。
【0072】
例えば、食品包装資材、野菜包装資材、穀物包装資材、果物包装資材、精肉包装資材、水産物包装資材、加工食品包装資材などの包装資材、野菜、穀物、果物、精肉、水産物、加工食品などの容器のような鮮度保持用材料;食品用トレイマット;テーブルマット、テーブルクロス、カーペット、座席用シートカバーなどのファブリック製品;農業用フィルム;有機電子装置;マスク;テープ、粘着テープ、マスキングテープ、マスキングフィルムなどのオフィス用品;花包装資材、プラスチック封筒、イージーオープン包装封筒、ショッピングバッグ、スタンディングバッグ、透明包装箱、自動包装フィルム、電子部品包装資材、機械部品包装資材などの各種包装材料などであってもよい。
【0073】
また、前記コーティング層は、例えば、10μm以上、20μm以上、50μm以上、80μm以上、100μm以上、または150μm以上かつ、1mm以下、800μm以下、600μm以下、500μm以下、300μm以下、250μm以下、または200μm以下の厚さで備えられ、このようなコーティング層は、前記基材上の少なくとも一面に前記抗菌性高分子組成物を塗布した後、40℃~80℃の温度で60分~240分間乾燥することによって、薄膜コーティングして形成することができる。
【0074】
前記抗菌性高分子組成物を塗布するのに通常使用される方法および装置を格別な制限なく使用可能であり、例えば、Meyer barなどのバーコーティング法、グラビアコーティング法、2ロールリバース(roll reverse)コーティング法、バキュームスロットダイ(vacuum slot die)コーティング法、2ロール(roll)コーティング法などを使用することができる。
【0075】
前記抗菌性高分子フィルムの厚さは、最終的に製造される前記フィルムの用途などによって決定可能であり、例えば、前記抗菌性高分子組成物は、1μm~1,000μmの厚さにコーティング(塗布)されるか、単独の粘着フィルムに製造される。
【0076】
前記抗菌性高分子組成物を光硬化させる段階では、200~400nmの波長の紫外線または可視光線を照射することができ、照射時の露光量は50~2,000mJ/cmが好ましい。露光時間も特に限定されるものではなく、使用される露光装置、照射光線の波長または露光量により適切に変化させることができる。
【0077】
また、前記抗菌性高分子コーティング組成物を光硬化させる段階では、窒素大気条件を適用するために、窒素パージングなどが可能である。
【0078】
以下、本発明の理解のためにより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0079】
[実施例:抗菌性高分子フィルムの製造]
比較例1
98重量%のイソブテンと2重量%のイソプレンの共重合体であるブチルゴム(重量平均分子量500,000g/mol、製品名:BR268、ExxonMobil Chemical)を、トルエンに固形分16重量%に溶解した溶液99g、粘着付与剤としてトルエンに溶解したジシクロペンタジエン水添樹脂(SU500、コーロン、固形分70重量%)20g、架橋剤としてTCDDA(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、Tricyclodecane dimethanol diacrylate)1.6g、光開始剤としてIrgacure651(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-Dimethoxy-2-phenylacetophenone)0.3gをトルエンに溶解して、全体固形分が22重量%となるように混合して高分子組成物を得た。
【0080】
前記製造された組成物溶液を400メッシュのナイロンフィルタでフィルタを経た後、離型PETの離型面にバー(Bar)コーターを用いて塗布し、乾燥機で120℃で4分間乾燥して、乾燥した高分子フィルムの上面に追加的に離型PETを離型面にラミした。乾燥完了した後の高分子フィルム層の厚さが30~40μmとなるように高分子フィルムを製造した。前記高分子フィルムに紫外線を計2J/cm照射して硬化した。
【0081】
参考例1
高分子組成物が、比較例1の高分子組成物に加えて、重合性抗菌単量体として2-(ターシャリーブチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(tert-butylamino)ethyl methacrylate、Sigma-Aldrich社)をブチルゴム100重量部に対して3重量部だけさらに含むことを除き、前記比較例1と同様の方法で製造して抗菌性高分子フィルムを製造した。
【0082】
参考例2
高分子組成物が、比較例1の高分子組成物に加えて、重合性抗菌単量体として2-(ターシャリーブチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(tert-butylamino)ethyl methacrylate、Sigma-Aldrich社)をブチルゴム100重量部に対して25重量部だけさらに含むことを除き、前記比較例1と同様の方法で製造して抗菌性高分子フィルムを製造した。
【0083】
実施例1
高分子組成物が、比較例1の高分子組成物に加えて、重合性抗菌単量体として2-(ターシャリーブチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(tert-butylamino)ethyl methacrylate、Sigma-Aldrich社)をブチルゴム100重量部に対して13重量部だけさらに含むことを除き、前記比較例1と同様の方法で製造して抗菌性高分子フィルムを製造した。
【0084】
実施例2
高分子組成物が、比較例1の高分子組成物に加えて、重合性抗菌単量体として2-(ターシャリーブチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(tert-butylamino)ethyl methacrylate、Sigma-Aldrich社)をブチルゴム100重量部に対して19重量部だけさらに含むことを除き、前記比較例1と同様の方法で製造して抗菌性高分子フィルムを製造した。
【0085】
実施例3
高分子組成物が、比較例1の高分子組成物に加えて、重合性抗菌単量体として2-(ターシャリーブチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(tert-butylamino)ethyl methacrylate、Sigma-Aldrich社)をブチルゴム100重量部に対して7重量部だけさらに含むことを除き、前記比較例1と同様の方法で製造して抗菌性高分子フィルムを製造した。
【0086】
[実験例]
(1)抗菌性高分子フィルムの大腸菌(E.coli)に対する抗菌特性評価
実施例および比較例で製造した抗菌性粘着フィルムそれぞれに対して抗菌性評価を進行させた。
【0087】
具体的には、抗菌試験としてJIS Z 2081の抗菌評価法を用いて菌数を確認した。試験バクテリアであるE.Coliを2×10CFU/mlの濃度で接種したPBSバッファ(buffer)溶液400μlを5cm×5cmの大きさの抗菌性高分子フィルムに塗布した。フィルム表面における水分の蒸発を防止するために、アルコールで消毒して乾燥したPETフィルムを覆った後、24時間培養した。24時間培養された菌を順次に希釈して固体寒天(Agar)培地に塗抹して現れる群集により菌数を確認して、その結果を表1に示した。前記実験は2回進行させてそれぞれ菌数を確認して平均を出した。
【0088】
一方、菌増殖抑制率は下記のように計算して、その結果を表1に示した。
【0089】
[数式1]
菌抑制率(%)=(1-S24hrs/R24hrs)×100
【0090】
24hrsは、実施例(抗菌処理試料)を24時間培養後、寒天(agar)培地に塗抹して確認した群集の菌数であり、R24hrsは、比較例を24時間培養後、寒天(agar)培地に塗抹して確認した群集の菌数を意味する。
【0091】
【表1】
【0092】
前記表1を参照すれば、実施例の抗菌性高分子組成物を用いて抗菌性フィルムを製造する場合、抗菌性高分子を含まない比較例1の抗菌性フィルムとは異なり、グラム陰性菌である大腸菌(E.Coli)に対して95%以上の優れた菌増殖抑制率を示すことが分かる。参考例1のように抗菌性単量体の含有量が低い場合、抗菌性能が基準値を超えられず抗菌機能が発現しないと判断される。参考例2の場合には、抗菌性単量体の含有量が高いため、高い抗菌性能を発現することが確認された。
【0093】
(2)抗菌性高分子フィルムのガラス(Glass)粘着力の測定
実施例および比較例で製造された抗菌性高分子フィルムの離型フィルムを除去した後、銅箔とPET付きフィルムのCu面を粘着フィルムとラミネーションして付着させた。付着したフィルムを幅25mm、長さ150mmに裁断した。用意された試験片を90mm×150mmのガラス板に50℃の温度でラミネーションして付着させた。作製された試験片のガラス板を固定し、フィルム部を剥離してTA.XTplus Texture analyser(Stable micro systems社)のT.A Tension modeで低速剥離力を測定した。低速剥離力の測定は速度5mm/sec、Trigger force5.0g、distance80mmの条件で進行させて、その結果を下記表2に示した。
【0094】
(3)抗菌性高分子フィルムの粘度(Viscosity)の測定
まず、同一の粘着フィルム2つの試料のprotect film(離型フィルム)をそれぞれ除去した後、両側の大きさをよく合わせてラミネーションして付着させた。周辺部を一部除去し、2等分してそれぞれ一方の離型フィルムを除去し、再びラミネーションした。このような方法を繰り返して粘着フィルムの厚さが500~800μmの範囲に入るようにした後、正確な厚さを測定した後、15mm×15mmの正方形サイズに切断した後、ARES-G2 Rheometer(TA instrument社)を用いて測定した。測定はFrequency sweepモードで、Strain5%、温度(Temperature)27℃の条件で進行させ、1Hzでの複合粘度(Complex viscosity)を測定した。その結果は下記表2に示した。
【0095】
【表2】
【0096】
前記表2に示されているように、抗菌性単量体を共に重合して製造したフィルムと、抗菌性単量体を含まないフィルムの粘着力の差が大きくないことを確認した。粘度も、ガラス(Glass)粘着力と同じく、抗菌機能を有する実施例においても大差がないことを確認した。このような結果に基づき、重合可能な抗菌物質の場合、一定の含有量水準まで粘着特性に大きな影響を及ぼさないことを確認した。ただし、参考例2のように、抗菌性単量体の含有量が高い場合には、粘着力と粘度ともすべて減少する現象を確認した。これは抗菌性単量体の共重合比率が高くなることによって、既存の粘着力に影響を及ぼすと判断される。
【国際調査報告】