(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】結晶スポンジのための可撓性試料ホルダ
(51)【国際特許分類】
G01N 23/20025 20180101AFI20231018BHJP
【FI】
G01N23/20025
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521610
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2020078485
(87)【国際公開番号】W WO2022073621
(87)【国際公開日】2022-04-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガング ヒエルゼ
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA18
2G001CA01
2G001KA08
2G001QA02
(57)【要約】
ここに記載されるのは、被分析物を結晶学的構造分析するためにCS結晶材料中に被分析物を導入する結晶スポンジ(CS)法において使用するための試料ホルダである。試料ホルダは、全ソーキング法実施中(すなわちCS結晶材料中に被分析物を導入すること、そしてこの材料のX線結晶学的分析を含む任意の後続のステップ)に使用するのに適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶スポンジのための試料ホルダであって、
a.保持エレメントに結合されたロッドを含み、前記保持エレメントが、密閉空間を取り囲むループを含む、第1エレメントと、
b.前記第1エレメントに対向しており、第2エレメントの少なくとも一部が、前記保持エレメント又は前記保持エレメントの領域によって包囲された前記密閉空間を覆う、第2エレメントと、および
c.前記第1エレメントを前記第2エレメントに固定的に結合するコネクタエレメントと、
を含み、
ここで前記密閉空間が、前記ループに結合された3つ以上の内向きスパイン又は1つ以上の切り欠きを有する材料によって少なくとも部分的に覆われており、かつ前記ロッド及び前記保持エレメントの少なくとも一方が可撓性である、
結晶スポンジのための試料ホルダ。
【請求項2】
前記保持エレメントの領域を覆う前記第2エレメントの少なくとも一部分が剛性の表面である、請求項1に記載の試料ホルダ。
【請求項3】
前記第2エレメントが剛性であり且つソリッドなエレメントである、請求項1又は2に記載の試料ホルダ。
【請求項4】
前記第2エレメントが、保持エレメントに結合されたロッドを含み、前記保持エレメントが、密閉空間を取り囲むループを含み、前記密閉空間が、前記ループに結合された3つ以上の内向きスパイン又は1つ以上の切り欠きを有する材料によって少なくとも部分的に覆われている、請求項1に記載の試料ホルダ。
【請求項5】
前記第2エレメントの前記保持エレメントが、前記第1エレメントの前記保持エレメントによって包囲された密閉空間を覆い、あるいは前記第1エレメントの前記保持エレメントの領域を覆う、請求項4に記載の試料ホルダ。
【請求項6】
前記保持エレメント及びスパインが弾性ポリマー材料から成っている、請求項1から5のいずれか1項に記載の試料ホルダ。
【請求項7】
前記ポリマー材料が、耐有機溶媒性であり、50℃を上回る温度に対して耐性を有し、そして低分子量成分を実質的に含まない、請求項6に記載の試料ホルダ。
【請求項8】
前記有機溶媒が環状脂肪族、n-アルカン、塩素化C
1-3アルカン、C
2-5ケトン、C
1-4アルコール、C
2-4エステル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、MTBE、ジエチルホルムアミド(DMF)、芳香族脂肪族、例えばトルエン、ジメチルアミン、エチレングリコール、及びジメトキシエタン(DME)を含む、請求項7に記載の試料ホルダ。
【請求項9】
前記ポリマーが、フッ素化ポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE、Teflon(登録商標))、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、及びエチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE、Halar(登録商標)))、高密度、高分子量等級のポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテル-エーテルケトン(PEEK)、ポリイミド及びポリイミド-ポリアミドから選択される、請求項6から8のいずれか1項に記載の試料ホルダ。
【請求項10】
前記ポリマーがポリイミド又はポリイミド-ポリアミドである、請求項9に記載の試料ホルダ。
【請求項11】
前記ポリマーがKapton(登録商標)である、請求項10に記載の試料ホルダ。
【請求項12】
前記剛性であり且つソリッドな材料が、ポリマー及びガラス又はガラス様無機材料から成る群から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の試料ホルダ。
【請求項13】
前記ポリマーが、フッ素化ポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE、Teflon(登録商標))、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、及びエチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE、Halar(登録商標)))、高密度、高分子量等級のポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテル-エーテルケトン(PEEK)、ポリイミド及びポリイミド-ポリアミドから選択される、請求項12に記載の試料ホルダ。
【請求項14】
前記ポリマーがポリイミド又はポリイミド-ポリアミドである、請求項13に記載の試料ホルダ。
【請求項15】
前記ポリマーがKapton(登録商標)である、請求項14に記載の試料ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、可撓性試料ホルダに関し、このツールはX線結晶学法において使用するための結晶材料を操作するために使用される。具体的には、本発明は、X線結晶学的構造解明のために被分析物を伴って又は伴わずに結晶性多核金属錯体を操作する際に使用するためのこのような試料ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
有機化合物の分子構造を決定する方法として、X線単結晶構造分析が知られている。有機化合物の分子構造は、高品質単結晶を調製することが可能であるときには、X線単結晶構造分析を用いて正確に決定することができる。
【0003】
結晶スポンジ(CS)法は、多孔質結晶多核金属錯体内へ被分析物を秩序正しく導入することによってX線結晶学試料被分析物を調製する方法である。被分析物のX線結晶構造分析は、被分析物と結晶多核金属錯体との複合体を用いて、X線結晶解析を介して実施することができる。CS法において使用するための結晶多核金属錯体(CS)材料は、約0.1mm直径の小型単結晶の形態を成して使用される。これらの結晶を先ず適宜の条件下で、典型的には有機溶媒中の被分析物の溶液に晒すことにより、被分析物の分子をCS格子の孔内へ組み込み(「ソーキング(soaking)」)、そして次いで構造決定のためにSC-XRD機器内へマウントする(「測定(measuring)」)。
【0004】
CS結晶は小さいので、ばらの物体(loose objects)としてのこれらのハンドリングは容易なことではなく、顕微鏡を必要とする。このようなCS結晶を事前マウント形態で使用し得るならば、ハンドリング及び操作を改善することができる。このようなものとしてCS結晶は、ソーキングステップ中及び測定ステップ中の両方において、そしてこれらのステップ間の移行中に、また一般には配送及び輸送のために、より容易にハンドリングし操作することができる。CS結晶材料に適した試料ホルダであれば、それは事前マウント形態でCS結晶を使用するためにこのような支持を提供することになる。
【0005】
このような好適な試料ホルダは、いくつかの要件を満たす必要がある。例えば、手動ハンドリングが好都合であるべきであり、試料ホルダは、標準化された磁気アタッチメントを介してSC-XRD内へ直接にマウントされるのに適するべきであり、そしてマウント済のCS材料の近くに位置する試料ホルダ部分は、CS材料のCSの回折パターンに干渉してはならない。最後の点に関しては、X線散乱バックグラウンドは拡散し且つ弱いものであるべきである。このことは、使用される材料が理想的には薄く、非晶質であり、そして軽量エレメントから成るべきであることを意味する。商業的に入手可能な試料ホルダの現在のデザインはこれらの要件を満たしている。
【0006】
しかしながら、具体的には、CS法において調製される結晶試料材料に対しては、ソーキングステップにおいて試料ホルダを適用することから生じる以下のような付加的な要件がある。これらの付加的な要件は、結晶と試料ホルダとの結合が液体、特に種々の温度の種々の有機溶媒中への浸漬及び有機溶媒からの抽出に耐えなければならないことを含む。さらに、試料ホルダ自体の材料も同じ条件に耐えなければならない。具体的には、これらの材料は有機溶媒との接触によって、高温時にも溶解されてはならず、化学的に変化させられてはならず、軟化されてはならず、又は変形されてはならない。加えて、低分子成分を、上述の条件に暴露することによって試料ホルダのこれらの材料から抽出又は浸出させてはならない。このような低分子成分は被分析物の代わりにCSへ入り、ひいては分析プロセスに不都合に干渉する恐れがある。
【0007】
現在商業的に入手可能な試料ホルダの大部分は、結晶性被分析物を主として結晶と試料ホルダのマウント先端部との間の表面接着を介して所定の位置に保持する。この接着を強化するために、種々の油、脂肪、及び接着剤が付加的に被着されてよい。試料ホルダのためのこのようなデザインは、固定サイズ繊維ループデザイン(例えばHampton ResearchのCryoLoop(登録商標))、固定サイズ剛性リングデザイン(例えばMitegenのMicroLoops(登録商標)及びMicroMounts(登録商標))、直線ピン(例えばHampton Researchのグラスファイバー)、メッシュ(例えばMitegenのMicroMeshes(登録商標))、及び例えば結晶の平らな支持体として、ここでは「スクーピング(scooping)モード」で操作される、内向きスパインを有するループ(例えばMitegenのMicroGrippers(登録商標))を含む。
【0008】
このような位置固定メカニズムが有機溶媒への暴露に耐えることは期待できない。それというのも、液体の浸漬及び抽出と関連する表面張力が液晶と試料ホルダとの表面接着を克服し得るからである。さらに、油、脂肪、及び接着剤はある特定の有機溶媒によって溶解されることがあり、そしてその低分子成分はCS材料中に染み込むことがある。
【0009】
いくつかの商業的に入手可能な試料ホルダはリング状構造を含む。リング状構造は半径方向内向きの圧力を加えることにより、結晶を所定の位置に保持する。これらは例えば、「グリッピングモード(gripping mode)」で操作される内向きスパインを有するループ(例えばMitegenのMicroGrippers(登録商標))、及び結晶を固定化するよう収縮させ得る可変サイズのファイバーループデザインを含む。このような試料ホルダは、2つの次元において結晶をより安定的に固定化し得るものの、結晶材料はリング又はループ平面に対して垂直方向の変位に対しては未だに不安定な場合がある。
【0010】
したがって、CS法の目的としては、3つのすべての次元においてCS材料を安定的に固定化する、CS結晶材料を所定の位置に保持する異なる方法を提供することが必要である。
【発明の概要】
【0011】
概要
本発明は、機械的弾性歪み力によって結晶材料が所定の位置に保持される、CS法とともに使用するための試料ホルダを有することにおいて、上記問題点の解決手段を提供する。本発明の試料ホルダは、CS結晶材料が、ソーキングステップ中及び決定ステップ中、並びにステップ間の移行中に、試料ホルダ内に固定化され続けることを保証する、このような解決手段を提供する。
【0012】
一実施形態では、本発明はCS結晶材料のための試料ホルダであって、
a.) 保持エレメントに結合されたロッドを含む第1エレメントと、
b.) 当該第2エレメントが前記第1エレメントに対向しており、前記第2エレメントの少なくとも一部が、前記保持エレメントの領域全体を覆う、第2エレメントと、
c.) 前記第1エレメントを前記第2エレメントに固定的に結合するコネクタエレメントと、
を含み、
前記保持エレメントが密閉空間を取り囲むループを含み、前記密閉空間が、前記ループに結合された3つ以上の内向きスパイン又は1つ以上の切り欠きを有する材料によって少なくとも部分的に覆われており、そして前記ロッド及び前記保持エレメントの少なくとも一方が可撓性である、
CS結晶材料のための試料ホルダを提供する。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記試料ホルダは、保持エレメントを含む第1エレメントと、少なくとも前記保持エレメントを覆う第2エレメントとを含み、少なくとも、前記保持エレメントの領域を覆う第2エレメントの部分が剛性の表面である。
【0014】
本発明の別の実施形態では、前記試料ホルダは、保持エレメントを含む第1エレメントと、少なくとも前記保持エレメントを覆う第2エレメントとを含み、前記第2エレメントが、保持エレメントに結合されたロッドを含み、前記保持エレメントが、密閉空間を取り囲むループを含み、前記密閉空間が、前記ループに結合された3つ以上の内向きスパイン又は1つ以上の切り欠きを有する材料によって少なくとも部分的に覆われている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、保持エレメントを有する第1エレメントと、少なくとも保持エレメントの領域全体を覆うソリッドなエレメントである第2エレメントとを含む可撓性試料ホルダの実施形態を示している。
図1Aには、CS結晶材料を含む概観が示されている。
図1Bは、CS結晶材料を第2エレメントに固定化する可撓性保持エレメントを斜視図で示している。
【
図2】
図2は、第1エレメントと第2エレメントとを含む可撓性試料ホルダであって、第1エレメント及び第2エレメントの両方が保持エレメントを含む実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
適宜の溶媒中での被分析物によるソーキング中にCS結晶材料の操作を可能にすると同時に、CS結晶材料及び被分析物上の結晶学的分析のための固定化を可能にするツールは、目下のところ入手できない。本発明は、CS結晶材料が機械的弾性歪み力によって所定の位置に保持される解決手段を提供する。このような機械的弾性歪みは、可撓性試料ホルダを介して、そして具体的には保持エレメントを介してCS結晶材料に加えられる。この保持エレメントは弾性材料を含む。この弾性材料は、CS結晶材料を位置固定化するのに十分な力をCS結晶材料に加える一方、弾性材料はソーキング条件に対して耐性を有する。
【0017】
このようなものとして一実施形態では、機械的剛性部分がCS結晶材料を1つの方向から支持する。反対方向からは、少なくとも1つの付加的な機械的弾性部分が、CS結晶材料を反対側の剛性部分に押し付ける力を加えることになる。あるいは、CS結晶材料は少なくとも2つの弾性部分によって所定の位置に保持され、CS結晶材料に対向力を加え、そしてこれによりCS結晶材料を2つの弾性部分間の平衡位置に保つ。両実施形態では、結晶は、これと接触する少なくとも2つの異なる部分との結晶の機械的摩擦によって、又はより好ましくは、これと接触する少なくとも2つの異なる部分の一方又は両方の形状によって提供される付加的な機械的バリアによって、圧縮力の方向に対して垂直方向の運動に対して安定化される。
【0018】
例えば
図1に示されているような本発明による試料ホルダは、被分析物によるCS結晶材料のソーキング中、及び後続の結晶学的分析プロセス(及びその間の任意のステップ)中にCS結晶材料を同じ試料ホルダ内部に位置固定化するのを可能にする。
図1Aに示された試料ホルダの実施形態では、試料ホルダは第1エレメント(1)を含み、第1エレメントは、保持エレメント(11)と結合されたロッド又はロッド様エレメント(4)を含む。試料ホルダは第2エレメント(6)をさらに含む。第2エレメントは、対向側の保持エレメント(11)を包囲する領域を少なくとも覆う。第1エレメント(1)と第2エレメント(6)とは、第1エレメントと第2エレメントとを互いに位置固定/固定するために、例えば1つ以上のコネクタエレメント(5)を使用して、互いに結合されている。
【0019】
保持エレメント(11)は、密閉空間を取り囲むループ(2)を含む。密閉空間は、ループ(2)に結合された3つ以上の内向きスパイン(3)又は任意には1つ以上の切り欠きを有する可撓性材料によって(少なくとも部分的に)覆われている。ループ(2)、内向きスパイン(3)、任意には1つ以上の切り欠きを有する材料、又はこれらの組み合わせのうちのいずれか1つは、可撓性であり、好ましくは弾性の材料から成る。例えば、ループ(2)は剛性であってよく、内向きスパイン(3)は弾性材料から成る。1つのこのような実施形態が
図1Bに示されている。保持エレメント(11)を覆う第2エレメント(6)は剛性材料から成り、そしてCS結晶材料(10)は、内向きスパイン(3)の弾性材料によってこのCS結晶材料に加えられた機械力により、所定の位置に保持されている。
図1Bに示された事例では、ループ(2)は剛性材料から成っているが、しかし、CS結晶スポンジ材料(10)の周りによりぴたりと輪郭に沿ってフィットするように、弾性材料から成っていてもよい。ループ(2)によって密閉された空間が、任意には1つ以上の切り欠きを有する可撓性材料によって覆われている、同様の形態も当てはまる(図示されていない形態)。
【0020】
図1A及びBに示された実施形態では、保持エレメント(11)の領域を覆う第2エレメント(6)は、剛性の表面を含み、好ましくは、第2エレメントは剛性であるか又はソリッドなエレメントである。
【0021】
あるいは、第2エレメントは、
図2に示されているように、保持エレメント(12)に結合されたロッド又はロッド様構造(4)を含む。保持エレメント(11)及び(12)は同じものであり得るが、しかし保持エレメント(12)の領域が、保持エレメント(11)によって包囲された密閉空間を覆うか、あるいは保持エレメント(11)の領域を覆う限り、異なる形状及び/又は材料から成っていてもよい。
図1に示された実施形態と同様に、
図2に示された実施形態でも、試料ホルダは、保持エレメント(11)に結合されたロッド又はロッド様構造(4)を含む第1エレメント(1)を含む。試料ホルダは第1エレメント(1)とは対向側の第2エレメント(6)をさらに含み、そしてこのような第2エレメント(6)の領域の少なくとも一部は、保持エレメント(11)によって取り囲まれた密閉空間を覆い、あるいは第1エレメント(1)の保持エレメント(11)の領域を覆う。
図2の実施形態では、第2エレメント(6)もロッド又はロッド様構造(4)と保持エレメント(12)とを含む。両保持エレメント(11)及び(12)は、密閉空間を取り囲むループ(2)から成っている。このような密閉空間は、3つ以上の内向きスパイン(3)、又は1つ以上の切り欠きを任意に含む可撓性材料によって少なくとも部分的に覆われている。
【0022】
言うまでもなく、ループ(2)によって取り囲まれる密閉空間を覆う可撓性材料は、CS結晶材料(10)を位置固定化するものであればいかなる形状を有してもよい。このように、可撓性材料は例えばメッシュ、一連の糸、又はフィルム様材料であってもよい。
【0023】
さらに、結合エレメント(5)は第1エレメント(1)と第2エレメント(6)とを固定的に結合する任意の結合手段であってよい。例えば、結合エレメントはコード、接着剤、又はクリップであってよい。
【0024】
ソーキング中のCS結晶材料と被分析物溶液との接触を容易にするために、CS結晶材料と接触する種々異なる部分のうちの1つ又はいくつかは好ましくは、開口、穴、又は孔を有するように構造化されるか、又は本質的に多孔質又は透過性材料から成ってよい。
【0025】
例えば3つ以上の内向きスパイン(3)のための好ましい材料、及び/又はループ(2)によって取り囲まれた密閉空間を覆う材料は、弾性材料である。ループ(2)は弾性材料、又はループ構造を維持し得るのに十分に剛性の材料から成っていてもよい。弾性成分は好ましくはポリマーである。このようなポリマーはまた、50℃以上の高温時にも、耐有機溶媒性である。加えて、弾性ポリマー材料は、いかなる低分子成分、例えばモノマー、可塑剤、着色剤、又は化学反応又は分解生成物をも含んではならない。これらは、被分析物の代わりにCS結晶材料内へ吸収され、分析プロセスに干渉し、そして潜在的には、被分析物のための正しくない又は不正確な結晶構造分析に導くおそれがある。
【0026】
このようなポリマー材料が暴露される溶媒は、CS結晶材料の貯蔵時及びソーキング中のために典型的に適用される溶媒である。これらの溶媒は環状脂肪族(cyclic aliphates)、n-アルカン、塩素化C1-3アルカン、C2-5ケトン、C1-4アルコール、C2-4エステル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、MTBE、ジエチルホルムアミド(DMF)、芳香族脂肪族(aromatic aliphates)、例えばトルエン、ジメチルアミン、エチレングリコール、及びジメトキシエタン(DME)を含む。
【0027】
前述の溶媒に対する高い耐性に関しては、フッ素化ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE、Teflon(登録商標))、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、及びエチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE、Halar(登録商標)))が適している。高密度、高分子量等級のポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)、並びにポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテル-エーテルケトン(PEEK)も、強い耐溶媒性を提供する。しかしながらこの場合の好ましい選択肢は、ポリイミド(Kapton(登録商標))又はポリイミド-ポリアミド(Tecator(登録商標)、Torlon(登録商標))である。Kapton(登録商標)として商業的に知られるポリマーは、いかなる既知の有機溶媒によっても攻撃されず、また、X線回折に不都合に干渉しない、弱く且つ大部分が拡散するバックグラウンドに寄与するように高度に非晶質であるという特に好ましい特性プロフィールを有する。
【0028】
剛性成分の好ましい材料は上記タイプの好適に剛性のポリマー、ガラス、又はガラス様無機材料であってもよい。ガラスが使用される場合には、その厚さは、吸収又は回折によってX線に大きく干渉しないように、X線回折試料をマウントするために使用される典型的なガラス毛管の壁厚、すなわち約10μmを超えないことが好ましい。
【国際調査報告】