(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】少なくとも部分的にコーティングされた電極活物質、その製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20231019BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231019BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231019BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231019BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20231019BHJP
C25B 11/077 20210101ALI20231019BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20231019BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M10/052
H01M10/0562
C25B11/077
C25B11/052
C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023515767
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2021073711
(87)【国際公開番号】W WO2022053333
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シヤオハン
【テーマコード(参考)】
4G048
4K011
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4K011AA33
4K011AA34
4K011AA36
5H029AJ02
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM12
5H029CJ11
5H029CJ14
5H029CJ28
5H029CJ30
5H029HJ02
5H029HJ07
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA10
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB11
5H050EA10
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA11
5H050GA15
5H050GA26
5H050GA27
5H050GA29
5H050HA02
5H050HA07
(57)【要約】
本発明は、少なくとも部分的にコーティングされた電極活物質の製造方法に関し、ここで、前記方法は、以下の工程:
(a)一般式Li1+xTM1-xO2(式中、TMは、Niと、Mnと、任意にCoと、任意にAl、Nb、Ta、Zr、Ti及びZrから選択される少なくとも1種の金属との組み合わせであり、xは0.05~0.2の範囲であり、Ni含有量がTMに対して少なくとも55モル%である)による電極活物質を提供する工程と、
(b)前記電極活物質を少なくとも1種の金属アルキル化合物で処理する工程と、
(c)工程(b)で得られた材料を酸化剤又は水分で処理する工程と、
(d)工程(c)から得られた材料を、式M1OR1(式中、M1はLi、Na及びKから選択され、R1はイソプロピル、n-ブチル及びtert.-ブチルから選択される)による化合物で処理する工程と
(e)工程(b)~(d)を1回~30回繰り返す工程と
を含み、
工程(b)~(e)がガス相中で行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にコーティングされた電極活物質を製造する方法であって、前記方法が、以下の工程:
(a)一般式Li
1+xTM
1-xO
2(式中、TMは、Niと、Mnと、任意にCoと、任意にAl、Mg、Nb、Ta、Zr、Ti及びZrから選択される少なくとも1種の金属との組み合わせであり、xは0.05~0.2の範囲であり、Ni含有量がTMに対して少なくとも55モル%である)による電極活物質を提供する工程と、
(b)前記電極活物質を少なくとも1種の金属アルキル化合物又は少なくとも1種の金属アルコキシドで処理する工程と、
(c)工程(b)で得られた材料を酸化剤又は水分で処理する工程と、
(d)工程(c)から得られた材料を、式M
1OR
1(式中、M
1はLi、Na及びKから選択され、R
1はイソプロピル、n-ブチル及びtert.-ブチルから選択される)による化合物で処理する工程であって、M
1OR
1が工程(b)における金属アルコキシドとは異なる、工程と
(e)工程(b)~(d)を1回~30回繰り返す工程と
を含み、
工程(b)~(e)がガス相中で行われる、方法。
【請求項2】
工程(b)におけるアルキル金属化合物が、トリメチルアルミニウム及びトリエチルアルミニウムから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)における前記酸化剤が、オゾンと酸素との混合物から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法がさらなる熱的後処理工程(f)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)~(e)がロータリーキルン、自由落下ミキサー、連続振動床又は流動床で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各工程(b)と(c)と(d)の間にフラッシュ工程が行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)で提供される前記電極活物質が、0.1~1.5m
2/gの範囲の比表面積(BET)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
TMが、一般式(I)
(Ni
aCo
bMn
c)
1-dM
d (I)
(式中、aは、0.6~0.95の範囲であり、
bは、0~0.2の範囲であり、
cは、0.05~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Zr及びNbから選択され、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
一般式Li
1+xTM
1-xO
2(式中、TMは、Niと、Mnと、任意にCoと、任意にAl、Mg、Nb、Ta、Zr、Ti及びZrから選択される少なくとも1種の金属との組み合わせであり、xは0.05~0.2の範囲であり、TMの少なくとも55モル%がNiである)による粒子状カソード活物質であって、前記粒子の外表面が、Al
2O
3と、Li
5AlO
4又はLi
2TiO
3又はLi
4TiO
5又はLi
2ZrO
3と、任意にNa
5AlO
4、Na
2TiO
3、Na
2Ti
3O
7及びNa
2ZrO
3のうちの少なくとも1つとの組み合わせで非均質にコーティングされている、粒子状カソード活物質。
【請求項10】
TMが、一般式(I)
(Ni
aCo
bMn
c)
1-dM
d (I)
(式中、aは、0.6~0.95の範囲であり、
bは、0~0.2の範囲であり、
cは、0.05~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Zr及びNbから選択され、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項9に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項11】
Li
5AlO
4とNa
5AlO
4とのモル比が1:1~1:2の範囲である、請求項9又は10に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項12】
前記コーティングが、少なくとも1種のさらなるリチウム化アルミニウム酸化物種を含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項13】
前記コーティングが、LiAlO
2及びLiAl
5O
8から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含む、請求項9から12のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項14】
リチウムイオン電池の製造における、又はリチウムイオン電池の製造のための、請求項9から13のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質の使用方法。
【請求項15】
全固体リチウムイオン電池の製造における、又は全固体リチウムイオン電池の製造のための、請求項9から13のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的にコーティングされた電極活物質の製造方法に関し、ここで、前記方法は、以下の工程:
(a)一般式Li1+xTM1-xO2(式中、TMは、Niと、Mnと、任意にCoと、任意にAl、Nb、Ta、Zr、Ti及びZrから選択される少なくとも1種の金属との組み合わせであり、xは0~0.1の範囲であり、Ni含有量がTMに対して少なくとも55モル%である)による電極活物質を提供する工程と、
(b)前記電極活物質を少なくとも1種の金属アルキル化合物又は少なくとも1種の金属アルコキシドで処理する工程と、
(c)工程(b)で得られた材料を酸化剤又は水分で処理する工程と、
(d)工程(c)から得られた材料を、式M1OR1(式中、M1はLi、Na及びKから選択され、R1はイソプロピル、n-ブチル及びtert.-ブチルから選択される)による化合物で処理する工程であって、M1OR1が工程(b)における金属アルコキシドとは異なる、工程と
(e)工程(b)~(d)を1回~30回繰り返す工程と
を含み、
工程(b)~(e)がガス相中で行われる。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、エネルギーを貯蔵するための最新の装置である。携帯電話及びラップトップコンピュータなどの小型の装置からカーバッテリー及び他のE-モビリティ(e-mobility)用バッテリーまで、多くの応用分野が考えられてきた。電解質、電極材料及びセパレータなどの様々な電池の構成要素は、電池の性能に関して重要な役割を有する。カソード材料は特に注目されている。いくつかの材料、例えばリチウム鉄ホスフェート、リチウムコバルトオキシド、及びリチウムニッケルコバルトマンガンオキシドが提案されてきた。広範な研究調査が行われてきているが、これまでに見出された解決策は未だに改善の余地がある。
【0003】
現在、いわゆるニッケルリッチ(ニッケルの量が多い)電極活物質、例えば、リチウム以外の金属を指す全金属含有量に対して、少なくとも50モル%又はさらに75モル%以上のNiを含有する電極活物質への特定の関心が観察される。
【0004】
リチウムイオン電池の1つの問題は、電極活物質の表面での望ましくない反応に起因する。このような反応は、電解質又は溶媒又はその両方の分解であり得る。したがって、充電及び放電中のリチウム交換を妨げることなく、表面を保護することが試みられた。例は、例えばアルミニウムオキシド又はカルシウムオキシドで電極活物質をコーティングする試みである(例えば、US 8,993,051参照)。
【0005】
他の理論では、表面の遊離LiOH又はLi2CO3に望ましくない反応が割り当てられる。電極活物質を水で洗浄することにより、そのような遊離のLiOH又はLi2CO3を除去する試みがなされてきた(例えば、JP 4,789,066 B、JP 5,139,024 B、及びUS2015/0372300参照)。しかしながら、場合によっては、得られた電極活物質の特性が改善されないことが観察された。
【0006】
上記の問題を解決するために、いわゆる全固体電池が試みられている。これらは、固体電解質、例えばリチウム、リン及び硫黄を含有する特定の化合物を含有する(例えばEP 3 460 887を参照)。しかしながら、安定性の問題も同様に生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 8,993,051
【特許文献2】JP 4,789,066 B
【特許文献3】JP 5,139,024 B
【特許文献4】US2015/0372300
【特許文献5】EP 3 460 887
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に全固体電池の電気化学特性に優れた電極活物質、特にNiリッチ電極活物質の製造方法を提供することであった。また、本発明の目的は、優れた電気化学特性を有するNiリッチ電極活物質を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、以下に「本発明の方法」とも称される、冒頭で定義された方法が見出された。本発明の方法は、本発明の文脈においてそれぞれ工程(a)、工程(b)及び工程(c)などとも称される5つの工程(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)を含む。(b)~(d)の開始は順次行われる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法は、少なくとも部分的にコーティングされた材料に関するものである。本発明の文脈で使用される「部分的にコーティングされた」という用語は、粒子材料のバッチの粒子の少なくとも80%がコーティングされること、及び各粒子の表面の少なくとも50%、例えば75~99.99%、好ましくは80~90%がコーティングされることを指す。
【0011】
そのようなコーティングの厚さは、非常に薄く、例えば0.1~5nmであってもよい。他の実施態様において、厚さは、6~15nmの範囲内であってもよい。さらなる実施態様において、そのようなコーティングの厚さは、16~50nmの範囲にある。この文脈における厚さは、粒子表面あたりの厚さの量を計算し、100%の変換を仮定することによって数学的に決定される平均厚さを指す。
【0012】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、粒子のコーティングされていない部分は、粒子の特定の化学的性質、例えば、水酸基、化学的制約のある酸化物部位などの化学的に反応性のある基の密度、又は吸着水により反応しないと考えられている。
【0013】
工程(a)では、一般式Li1+xTM1-xO2による電極活物質が提供される。TMは、Niと、Mnと、任意にCoと、任意にAl、Mg、Nb、Ta、Zr、Ti及びZrから選択される少なくとも1種の金属との組み合わせであり、xは0~0.1、好ましくは0.01~0.05の範囲であり、Ni含有量がTMに対して少なくとも55モル%である。
【0014】
好ましい実施態様において、工程(a)で提供される電極活物質は組成Li1+xTM1-xO2によるものであり、ここで、xが0.01~0.05の範囲であり、TMが、一般式(I)
(NiaCobMnc)1-dMd (I)
(式中、aは、0.6~0.95、好ましくは0.8~0.93の範囲であり、
bは、0~0.2、好ましくは0.05~0.1の範囲であり、
cは、0.05~0.2、好ましくは0.03~0.1の範囲であり、
dは、0~0.1、好ましくは0~0.05の範囲であり、
a+b+c=1であり、
Mは、Al、Ti、Zr、W、Mo、Mg、B、及びこれらの少なくとも2種の組み合わせから選択され、Alが好ましい)
による元素の組み合わせである。
【0015】
本発明の一実施態様において、工程(a)で提供される電極活物質は、2.8~3.7g/cm3、好ましくは2.85~3.5g/cm3の範囲の圧縮密度(pressed density)を有する。
【0016】
工程(a)による電極活物質は、2~20μm、好ましくは5~16μmの範囲の平均粒径D50を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法(electroacoustic spectroscopy)によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成され、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0017】
本発明の一実施態様において、工程(a)で提供される電極活物質は、0.1~1.5m2/gの範囲の、DIN-ISO 9277:2003-05に従って決定された比表面積(BET)(以下で「BET表面積」とも称される)を有し、0.2~1.0m2/gが好ましい。
【0018】
一部の金属は、ナトリウム、カルシウム又は亜鉛のように偏在しており、微量のそれらは事実上どこにでも存在するが、そのような微量は、本発明の明細書では考慮されない。この文脈における微量とは、全金属含有量TMに対して、0.05モル%以下の量を意味する。
【0019】
本発明の一実施態様において、工程(a)で提供される電極活物質は、一次粒子の凝集体である二次粒子で構成されている。好ましくは、本発明の材料は、一次粒子の凝集体である球状の二次粒子で構成されている。さらにより好ましくは、このような材料は、プレートレット状一次粒子の凝集体である球状の二次粒子で構成される。
【0020】
本発明の一実施態様において、工程(a)で提供される電極活物質の一次粒子は、1~2000nm、好ましくは10~1000nm、特に好ましくは50~500nmの範囲の平均直径を有する。一次粒子の平均粒径は、例えばSEM又はTEMによって決定することができる。SEMは走査型電子顕微鏡の略称であり、TEMは透過型電子顕微鏡の略称である。
【0021】
本発明の一実施態様において、体積エネルギー密度は、2,750~3,500W・h/lの範囲である。VEDは以下のように定義される:VED=1サイクル目の放電容量×平均電圧×圧縮密度。
【0022】
本発明の一実施態様において、工程(a)で提供される電極活物質は単峰性の粒径分布を有する。代替の実施態様において、本発明の材料は、例えば3~6μmの範囲に最大値、及び9~12μmの範囲に別の最大値を有する、二峰性の粒径分布を有する。
【0023】
本発明の一実施態様において、工程(a)で提供される電極活物質は、メスシリンダーで2000回タップした後に決定される、1.20~1.80g/cm3の範囲のタップ密度を有する。
【0024】
工程(a)で提供される電極活物質は、例えば、金属TMを炭酸塩として、又は好ましくは水酸化物として、又は任意に、オキシ水酸化物として共沈させ、その後、LiOH又はLi2CO3などのリチウムの源と混合し、その後800~950℃の範囲の温度で熱処理することによって合成されてもよい。
【0025】
工程(b)では、前記電極活物質が、少なくとも1種の金属アルキル化合物又は少なくとも1種の金属アルコキシドで処理される。アルキルとして、C1~C8-アルキルが好ましく、C1~C4-アルキルがより好ましい。アルコキシドとして、メタノレート、エタノレート、プロパノレート及びブタノレートが好ましく、メタノレート、イソプロパノレート、イソブタノレート及びsec.-ブタノレートが特に好ましい。金属として、Al、Ti、Zr、Nb、Ta、W及びこれらの少なくとも2種の組み合わせが好ましい。
【0026】
本発明の方法の一実施態様において、工程(b)は、15~1000℃、好ましくは15~500℃、より好ましくは20~350℃、さらにより好ましくは50~220℃の範囲の温度で行われる。工程(b)において、場合により、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物がガス相にある温度を選択することが好ましい。
【0027】
本発明の一実施態様において、工程(b)は常圧で行われるが、工程(b)は同様に減圧又は高圧で行われてもよい。例えば、工程(b)は、常圧より5ミリバール~1バール高い範囲の圧力で、好ましくは常圧より10~150ミリバール高い範囲の圧力で行われてもよい。本発明の文脈において、常圧は1atm又は1013ミリバールである。他の実施態様において、工程(b)は、常圧より150ミリバール~560ミリバール高い範囲の圧力で行われてもよい。他の実施態様において、工程(b)は、常圧より100~1ミリバール低い圧力で行われる。
【0028】
好ましい実施態様において、アルキル金属化合物又は金属アルコキシド又は金属アミドは、それぞれ、Al(R1)3、Al(R1)2OH、AlR1(OH)2、M1(R1)4-yHy、Al(OR1)3、M2(OR1)4(式中、M2はジルコニウム及びチタンから選択される)、及びメチルアルモキサンから選択され、ここで、R1が、異なり又は同一であり、直鎖又は分岐状C1~C8-アルキルから、好ましくはC1~C4-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、-ブチル、sec.-ブチル、イソブチル及びtert.-ブチルから選択される。
【0029】
金属アルコキシドは、アルミニウムのC1~C4-アルコキシド、及び遷移金属のC1~C4-アルコキシドから選択することができる。好ましい遷移金属は、チタン及びジルコニウムである。アルコキシドの例としては、メタノレート(以下でメトキシドとも呼ばれる)、エタノレート(以下でエトキシドとも呼ばれる)、プロパノレート、(以下でプロポキシドとも呼ばれる)、及びブタノレート(以下でブトキシドとも呼ばれる)が挙げられる。プロポキシドの具体例としては、n-プロポキシド及びイソ-プロポキシドが挙げられる。ブトキシドの具体例としては、n-ブトキシド、イソ-ブトキシド、sec.-ブトキシド及びtert.-ブトキシドが挙げられる。アルコキシドの組合せも使用可能である。
【0030】
金属C1~C4-アルコキシドの好ましい例としては、Ti[OCH(CH3)2]4、Ti(OC4H9)4、Zr(OC4H9)4、Zr(OC2H5)4、Al(OCH3)3、Al(OC2H5)3、Al(O-n-C3H7)3、Al(O-イソ-C3H7)3、Al(O-sec.-C4H9)3、及びAl(OC2H5)(O-sec.-C4H9)2、Nb(OC2H5)5、Ta(OC2H5)5が挙げられる。
【0031】
アルミニウムアルキル化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、及びメチルアルモキサンが挙げられる。
【0032】
本発明の一実施態様において、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物の量は、1kgの電極活物質あたり0.1~1gの範囲である。
【0033】
本発明の方法の工程(b)、並びに、以下でより詳細に説明する工程(c)及び(d)は、同じ容器又は異なる容器で行うことができる。
【0034】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、ロータリーキルン、自由落下ミキサー、連続振動床又は流動床で行われる。
【0035】
本発明の好ましい実施態様において、工程(b)の持続時間は、1秒~2時間、好ましくは1秒~10分の範囲である。
【0036】
本発明の文脈において工程(c)とも呼ばれる第3の工程では、工程(b)で得られた材料が水分又は酸化剤で処理される。
【0037】
酸化剤の例としては、オゾン、酸素/オゾン混合物、純酸素、H2O2、及び有機過酸化物、例えばtert.-ブチルペルオキシドが挙げられ、オゾン及び酸素とオゾンからの混合物、酸素中の3~10質量%のオゾンからの混合物が好ましい。
【0038】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、50~250℃の範囲の温度で行われる。前記範囲内のより高い温度では、より高い割合のオゾンが好ましい。
【0039】
本発明の一実施態様において、工程(c)は常圧で行われるが、工程(c)は同様に減圧又は高圧で行われてもよい。例えば、工程(c)は、常圧より5ミリバール~1バール高い範囲の圧力で、好ましくは常圧より10~250ミリバール高い範囲の圧力で行われてもよい。本発明の文脈において、常圧は、大気圧、例えば海面で1atm又は1013ミリバールである。異なる高度では、常圧はより低くてもよい。他の実施態様において、工程(c)は、常圧より150ミリバール~560ミリバール高い範囲の圧力で行われてもよい。
【0040】
工程(b)、(c)及び(d)は、同じ圧力で又は異なる圧力で行われてもよく、同じ圧力が好ましい。
【0041】
前記水分又は酸化剤は、例えば、工程(b)に従って得られた材料を、水分飽和不活性ガス、例えば、水分飽和窒素又は水分飽和希ガス、例えばアルゴンで処理することによって導入されてもよい。飽和とは、通常の条件、又は工程(c)の反応条件を指す。
【0042】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、ロータリーキルン、自由落下ミキサー、連続振動床又は流動床で行われる。
【0043】
本発明の好ましい実施態様において、工程(c)の持続時間は、1秒~2時間、好ましくは1秒~5分の範囲である。
【0044】
工程(d)では、工程(c)から得られた生成物が、M1OR1(式中、M1はLi、Na及びKから選択され、R1はイソプロピル、n-ブチル及びtert.-ブチルから選択される)と反応され、ここで、工程(b)で金属アルコキシドを使用する実施態様において、M1OR1が工程(b)における金属アルコキシドとは異なる。好ましい例としては、n-ナトリウムメトキシド、ナトリウムエタノレート、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムメタノレート、カリウムエタノレート、及びアルカリ金属tert.-ブトキシド、例えばリチウムtert.-ブトキシド、ナトリウムtert.-ブトキシド及びカリウムtert.-ブトキシドが挙げられる。
【0045】
本発明の一実施態様において、工程(d)は、ロータリーキルン、自由落下ミキサー、連続振動床又は流動床で行われる。
【0046】
本発明の一実施態様において、工程(d)は、50~300℃の範囲の温度で行われる。
【0047】
工程(b)~(e)は、気相中で行われる。これは、工程(b)の反応物であるアルキル金属化合物又は金属アルコキシド、工程(c)の水分又は酸化剤、工程(d)のM1OR1が気相中であることを意味するが、電極活物質はそうではない。
【0048】
工程(e)は、工程(b)~(d)の一連を1~30回、例えば5~30回繰り返すことを含み、10~25回が好ましい。このような繰り返しは、サイクルとも呼ばれる。様々なサイクルは、様々な条件下で、好ましくは同じ条件下で行われてもよい。
【0049】
本発明の一実施態様において、本発明の方法が行われる反応器は、工程(b)と(c)の間、工程(c)と(d)の間、又は工程(d)と(b)の間に、不活性ガス、例えば乾燥窒素又は乾燥アルゴンでフラッシュ又はパージされる。好適なフラッシュ又はパージ時間は、1秒~30分、好ましくは1秒~10分である。不活性ガスの量は、1回~5回の反応器の内容物を交換するのに十分な量であることが好ましい。このようなフラッシュ又はパージにより、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物のそれぞれの水との反応生成物の別個粒子などの副生成物の生成を回避することができる。トリメチルアルミニウムと水の一組の場合、そのような副生成物は、粒子状材料に沈着しない、メタン及びアルミナ又はトリメチルアルミニウムであり、後者は望ましくない副生成物である。前記フラッシュは、工程(c)の後、したがって別の工程(b)の前に行われてもよい。この文脈では、「乾燥」とは、10質量ppm未満、例えば3~5ppmの水分含有量を意味する。
【0050】
本発明の一実施態様において、(b)と(c)の間の各フラッシュ工程は、1秒~10分の範囲の持続時間を有する。
【0051】
本発明の一実施態様において、反応器は、工程(b)と(c)の間、又は工程(c)と(d)の間で排気される。前記排気は、工程(d)の後、したがって別の工程(b)の前に行われてもよい。この文脈における排気は、例えば10~1,000ミリバール(abs)、好ましくは10~500ミリバール(abs)の減圧を含む。
【0052】
工程(b)及び(c)及び(d)のそれぞれは、固定床反応器、流動床反応器、強制流反応器、又はミキサー、例えば強制ミキサー又は自由落下ミキサーで行われてもよい。流動床反応器の例は噴流層反応器である。強制ミキサーの例は、プラウシェアミキサー、パドルミキサー及びショベルミキサーである。プラウシェアミキサーが好ましい。好ましいプラウシェアミキサーは水平に設置されており、水平という用語は、混合要素が回転する軸を意味する。好ましくは、本発明の方法は、ショベル混合ツール、パドル混合ツール、ベッカーブレード混合ツール、そして最も好ましくは、プラウシェアミキサーで、ハーリングとワーリングの原理に従って行われる。自由落下ミキサーは、混合を達成するために重力を使用している。好ましい実施態様において、本発明の方法の工程(b)及び(c)は、その水平軸の周りに回転するドラム又はパイプ状の容器で行われる。より好ましい実施態様において、本発明の方法の工程(b)及び(c)は、バッフルを備える回転容器で行われる。
【0053】
本発明の一実施態様において、回転容器は、2~100個の範囲のバッフル、好ましくは2~20個の範囲のバッフルを備える。好ましくは、このようなバッフルは、容器壁に対して埋め込み型(flush mount)である。
【0054】
本発明の一実施態様において、このようなバッフルは、回転容器、ドラム、又はパイプに沿って軸対称に配置されている。前記回転容器の壁との角度は、5~45°、好ましくは10~20°の範囲である。このような配置により、回転容器内を通して、コーティングされたカソード活物質を非常に効率的に輸送することができる。
【0055】
本発明の一実施態様において、前記バッフルは、回転容器の直径に対して、回転容器内に10~30%の範囲で到達する。
【0056】
本発明の一実施態様において、前記バッフルは、回転容器の全長の10~100%、好ましくは30~80%の範囲をカバーする。この文脈において、長さという用語は、回転軸に平行方向に関するものである。
【0057】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の方法は、例えば20~100m/sの空気搬送によって、容器又は複数の容器からそれぞれコーティングされた材料を取り出す工程を含んでいる。
【0058】
本発明の一実施態様において、排気ガスは、1バールを超える圧力で、さらに好ましくは工程(b)及び(c)及び(d)が行われる反応器内よりも高い圧力、例えば1.010~2.1バールの範囲、好ましくは1.005~1.150バールの範囲の圧力で、水で処理される。高圧は、排気ラインにおける圧力損失を補償するのに有利である。
【0059】
本発明の一実施態様において、工程(e)の後に、後処理、例えば熱的後処理(f)が行われる。このような熱的後処理(f)は、工程(e)の後に得られた粒子状電極活物質を、150~800℃、好ましくは150~400℃の範囲の温度で、例えば好ましくは180~350℃の範囲の温度である期間、例えば10分~2時間の期間にわたって処理することによって行われてもよい。
【0060】
本発明の方法に従って処理された電極活物質は、特に長期サイクル安定性及び熱安定性に関して、優れた電気化学特性を示す。
【0061】
本発明のさらなる態様は、一般式Li1+xTM1-xO2(式中、TMは、Niと、Mnと、任意にCoと、任意にAl、Mg、Nb、Ta、Zr、Ti及びZrから選択される少なくとも1種の金属との組み合わせであり、TMの少なくとも55モル%がNiであり、xは0~0.1の範囲である)による粒子状電極活物質に関し、ここで、前記粒子の外表面が、Al2O3と、Li5AlO4又はLi2TiO3又はLi4Ti5O12又はLi2ZrO3と、任意にNa5AlO4、Na2TiO3、Na2Ti3O7及びNa2ZrO3のうちの少なくとも1つとの組み合わせで非均質にコーティングされている。
【0062】
式Li1+xTM1-xO2において、外表面の組成は無視される。
【0063】
好ましい実施態様において、本発明のカソード活物質は、組成Li1+xTM1-xO2によるものであり、ここで、xが0~0.1、好ましくは0.01~0.05の範囲であり、TMが、一般式(I)
(NiaCobMnc)1-dMd (I)
(式中、aは、0.6~0.95、好ましくは0.8~0.93の範囲であり、
bは、0~0.2、好ましくは0.05~0.1の範囲であり、
cは、0.05~0.2、好ましくは0.03~0.1の範囲であり、
dは、0~0.1、好ましくは0~0.05の範囲であり、
a+b+c=1であり、
Mは、Al、Ti、Zr、W、Mo、Mg、B、及びこれらの少なくとも2種の組み合わせから選択され、Alが好ましい)
による元素の組み合わせである。
【0064】
本発明のカソード活物質は、非均質にコーティングされている。本発明の文脈において使用される「非均質にコーティングされている」という用語は、粒子状材料のバッチの粒子の少なくとも80%がコーティングされており、各粒子の表面の少なくとも50%、例えば75~99.99%、好ましくは80~90%がコーティングされているが、それぞれの粒子の厚さ、又は総被覆率、又はその両方が変化することを意味する。
【0065】
そのようなコーティングの厚さは、非常に薄く、例えば0.1~5nmであってもよい。他の実施態様において、厚さは、6~15nmの範囲であってもよい。この文脈における厚さは、粒子表面あたりの厚さの量を計算し、100%の変換を仮定することによって数学的に決定される平均厚さを意味する。
【0066】
本発明の一実施態様において、Li5AlO4とNa5AlO4とのモル比は、1:1~1:2、又は1:1~2:3の範囲である。
【0067】
本発明の一実施態様において、前記コーティングは、少なくとも1種のさらなるリチウム化アルミニウム酸化物種、例えばLiAlO2及びLiAl5O8を含む。前記種は、例えばTEMによって容易に識別できる。
【0068】
本発明の一実施態様において、前記コーティングは、LiAlO2及びLiAl5O8から選択される少なくとも1種の化合物、好ましくはその両方を、より好ましくは1:1~1:2又は1:1~2:3の範囲の比で含む。
【0069】
本発明のカソード活物質は粒子状である。好ましくは、それらは、2~20μm、好ましくは5~16μmの範囲の平均粒径D50を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成され、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0070】
本発明の一実施態様において、本発明のカソード活物質は、0.1~1.5m2/gの範囲の、DIN-ISO 9277:2003-05に従って決定されたBET表面積を有し、0.2~1.0m2/gが好ましい。
【0071】
本発明の一実施態様において、本発明のカソード活物質の一次粒子は、1~2000nm、好ましくは10~1000nm、特に好ましくは50~500nmの範囲の平均直径を有する。一次粒子の平均粒径は、例えばSEM又はTEMによって決定することができる。SEMは走査型電子顕微鏡の略称であり、TEMは透過型電子顕微鏡の略称である。
【0072】
本発明の一実施態様において、本発明のカソード活物質の圧縮密度は、250MPaでけってされ、2.75~3.7g/cm3の範囲であり、2.85~3.5g/cm3が好ましい。
【0073】
本発明の一実施態様において、本発明のカソード活物質は、メスシリンダーで2000回タップした後に決定される、1.20~1.80g/cm3の範囲のタップ密度を有する。
【0074】
本発明の材料は、特に高いエネルギー密度と高いエネルギー密度保持率の両方を示すため、カソード活物質として非常に適している。
【0075】
本発明のさらなる態様は、リチウムイオン電池の製造における又は製造のための、好ましくは全固体リチウムイオン電池の製造における又は製造のための、本発明カソード活物質の使用方法に関する。特に、本発明のカソード活物質は、全固体リチウムイオン電池用のカソード(A)に組み込むことができる。しかしながら、本発明のカソード活物質は、液体電解質に基づくリチウムイオン電池の製造にも好適である。本発明による少なくとも1つの電極活物質を含む電極は、以下、本発明のカソード又は本発明によるカソードとも呼ばれる。
【0076】
本発明によるカソードはさらなる構成要素を含むことができる。それらは、集電器、例えばアルミホイル(これに限定していない)を含むことができる。それらは、導電性炭素及びバインダーをさらに含むことができる。
【0077】
好適なバインダーは、好ましくは、有機(コ)ポリマーから選択される。好適な(コ)ポリマー、すなわち、ホモポリマー又はコポリマーは、例えば、アニオン(共)重合、触媒(共)重合又はフリーラジカル(共)重合により得ることができる(コ)ポリマーから、特にポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、並びに、エチレン、プロピレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル及び1,3-ブタジエンから選択された少なくとも2種のコモノマーのコポリマーから選択することができる。ポリプロピレンも適する。ポリイソプレン及びポリアクリレートはさらに適している。ポリアクリロニトリルが特に好ましい。
【0078】
本発明の文脈において、ポリアクリロニトリルは、ポリアクリロニトリルホモポリマーだけでなく、アクリロニトリルと1,3-ブタジエン又はスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。ポリアクリロニトリルホモポリマーが好ましい。
【0079】
本発明の文脈において、ポリエチレンは、ホモポリエチレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたエチレン、及び50モル%以下の少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えばα-オレフィン、例えばプロピレン、ブチレン(1-ブテン)、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ペンテン、及びまたイソブテン、ビニル芳香族のもの、例えばスチレン、及びまた(メタ)アクリル酸、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、(メタ)アクリル酸のC1~C10-アルキルエステル、特にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びまたマレイン酸、無水マレイン酸及び無水イタコン酸を含むエチレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリエチレンはHDPE又はLDPEであり得る。
【0080】
本発明の文脈において、ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたプロピレン、及び50モル%以下の少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えばエチレン、及びα-オレフィン、例えばブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン及び1-ペンテンを含むプロピレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリプロピレンは、好ましくはイソタクチックなポリプロピレン又は本質的にイソタクチックなポリプロピレンである。
【0081】
本発明の文脈において、ポリスチレンは、スチレンのホモポリマーだけでなく、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC1~C10-アルキルエステル、ジビニルベンゼン、特に1,3-ジビニルベンゼン、1,2-ジフェニルエチレン及びα-メチルスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。
【0082】
別の好ましいバインダーは、ポリブタジエンである。
【0083】
他の好適なバインダーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリイミド及びポリビニルアルコールから選択される。
【0084】
本発明の一実施態様において、バインダーは、50,000g/molから、1,000,000g/molまで、好ましくは500,000g/molまでの範囲の平均分子量MWを有する(コ)ポリマーから選択される。
【0085】
バインダーは、架橋された又は架橋されていない(コ)ポリマーであり得る。
【0086】
本発明の特に好ましい実施態様において、バインダーは、ハロゲン化(コ)ポリマー、特にフッ素化(コ)ポリマーから選択される。ハロゲン化又はフッ素化(コ)ポリマーは、1個の分子当たり少なくとも1個のハロゲン原子又は少なくとも1個のフッ素原子、より好ましくは1個の分子当たり少なくとも2個のハロゲン原子又は少なくとも2個のフッ素原子を有する少なくとも1つの(共)重合された(コ)モノマーを含む(コ)ポリマーを意味すると理解される。例としては、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-HFP)、ビニリデンフルオリド-テトラフルオロエチレンコポリマー、ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、及びエチレン-クロロフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。
【0087】
好適なバインダーは、特に、ポリビニルアルコール及びハロゲン化(コ)ポリマー、例えばポリビニルクロリド又はポリビニリデンクロリド、特にフッ素化(コ)ポリマー、例えばポリビニルフルオリド及び特にポリビニリデンフルオリド及びポリテトラフルオロエチレンである。
【0088】
本発明のカソードは、電極活物質に対して1~15質量%のバインダー(単数又は複数)を含んでもよい。他の実施態様において、本発明のカソードは0.1質量%~1質量%未満のバインダー(単数又は複数)を含んでもよい。
【0089】
本発明のさらなる態様は、本発明の電極活物質、炭素及び固体電解質を含む少なくとも1つのカソード、少なくとも1つのアノード、及び少なくとも1種の固体電解質を含有する電池である。
【0090】
本発明のカソードの実施態様は、すでに上記で詳細に記載されている。
【0091】
前記アノードは、少なくとも1種のアノード活物質、例えばカーボン(グラファイト)、TiO2、酸化リチウムチタン、シリコン又はスズを含有してもよい。前記アノードは、集電器、例えば銅ホイルなどの金属ホイルをさらに含有してもよい。
【0092】
直径は、例えば80~750nmの範囲である。
【0093】
本発明による電池は、任意の形状、例えば、立方体、又は円筒形ディスク又は円筒形の缶の形状を有することができるハウジングをさらに含む。一変形態様において、ポーチとして構成された金属ホイルをハウジングとして使用する。
【0094】
全固体電池用のカソード(A)は、導電性炭素と固体電解質(C)とを組み合わせた本発明のカソード活物質を含む。カソード(A)は、集電器、例えばアルミニウムホイル又は銅ホイル又はインジウムホイル、好ましくはアルミニウムホイルをさらに含む。
【0095】
導電性炭素の例としては、すす、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、及びこれらの少なくとも2つの組み合わせが挙げられる。
【0096】
本発明の好ましい実施態様において、本発明のカソードは、(1)、(2)及び(3)の合計に対して、
(1)70~96質量%の本発明のカソード活物質、
(2)2~10質量%の導電性炭素
(3)2~28質量%の固体電解質(C)
を含有する。
【0097】
前記アノード(B)は、少なくとも1種のアノード活物質、例えば、シリコン、スズ、インジウム、シリコン-スズ合金、炭素(グラファイト)、TiO2、酸化リチウムチタン、例えばLi4Ti5O12又はLi7Ti5O12、又はこれらの少なくとも2つの組み合わせを含有する。前記アノードは、集電器、例えば銅ホイルなどの金属ホイルをさらに含有してもよい。
【0098】
本発明の電気化学セルは、以下で電解質(C)又は固体電解質(C)とも呼ばれる、
(C)リチウム、硫黄及びリンを含む固体電解質
をさらに含む。
【0099】
この文脈において、「固体」という用語は、室温での物質の状態を指す。
【0100】
本発明の一実施態様において、固体電解質(C)は、0.1mS/cm以上、好ましくは0.1~30mS/cmの範囲の、例えばインピーダンス分光法によって測定可能な25℃におけるリチウムイオン伝導度を有する。
【0101】
本発明の一実施態様において、固体電解質(C)は、Li3PS4、またより好ましくは斜方晶β-Li3PS4を含む。
【0102】
本発明の一実施態様において、固体電解質(C)は、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-ZmSn(式中、m及びnは正数であり、Zは、ゲルマニウム、ガリウム及び亜鉛からなる群から選択される元素である)、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LiyPOz(式中、y及びzは正数である)、Li7P3S11、Li3PS4、Li11S2PS12、Li7P2S8I、及びLi7-r-2sPS6-r-sXr(式中、Xは塩素、臭素又はヨウ素であり、変数は以下のように定義される:
0.8≦r≦1.7
0≦s≦(-0.25r)+0.5)
からなる群から選択される。
【0103】
固体電解質(C)の特に好ましい例はLi6PS5Clであり、したがって、r=1.0、s=0である。
【0104】
本発明の一実施態様において、電解質(C)は、Si、Sb、Snのうちの少なくとも1つでドープされる。Siは、好ましくは元素として提供される。Sb及びSnは、好ましくは硫化物として提供される。
【0105】
本発明の一実施態様において、本発明の電気化学セルは、固体電解質(C)を、カソード(A)の総質量に対して、1~50質量%、好ましくは3~30質量%の総量で含む。
【0106】
本発明の電気化学セルはハウジングをさらに含有する。
【0107】
本発明の電気化学セルは、0.1~300MPa、好ましくは1~100MPaの範囲の内圧で動作(充電及び放電)させてもよい。
【0108】
本発明電気化学セルは、-50℃~+200℃、好ましくは-30℃~+120℃の範囲の温度で動作させることができる。
【0109】
本発明の電気化学セルは、複数回のサイクルの後でも、非常に低い容量低下を含む優れた特性を示す。
【0110】
本発明のさらなる態様は、以下で本発明の方法とも呼ばれる、本発明の電気化学セルの製造方法に関する。本発明の方法は、以下の工程、
(β)本発明のカソード活物質(a)を、導電性形態の炭素(b)、及び任意にバインダー(c)又は固体電解質(C)と混合する工程と、
(γ1)工程(β)から得られた混合物を集電器に適用する工程、又は
(γ2)工程(β)から得られた混合物をペレット化する工程
のいずれかとを含む。
【0111】
本発明のカソード活物質(a)、導電性形態の炭素(2)、固体電解質(C)及びバインダー(c)は、上述したとおりである。上記工程により、カソード(A)が得られる。
【0112】
工程(β)は、ミル、例えばボールミルで行われてもよい。
【0113】
工程(γ1)は、スキージ、ドクターブレードで、ドロップキャスト、スピンコーティング、スプレーコーティングによって行われてもよい。好ましくは、工程(γ1)は溶媒の存在下で行われる。
【0114】
工程(γ2)は、金型又は鋳型内で乾燥粉末を圧縮することにより行われてもよい。工程(γ2)は、溶媒の非存在下で行われる。
【0115】
バインダーの例は、特にフッ素化ポリマー、例えばポリビニリデンフルオリド(PVdF)であるが、これに限定されない。
【0116】
本発明のリチウムイオン電池は、高い体積エネルギー密度及び質量エネルギー密度、長いサイクル寿命、優れた安全性及び熱安定性を有する。
【0117】
実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0118】
一般的な備考:sccm:標準条件(25℃で1atm)で立方センチメートル毎分。
【0119】
I.本発明のカソード活物質の製造
I.1.カソード活物質の前駆体の提供
1kgの水当たり49gの硫酸アンモニウムの水溶液を撹拌タンク反応器に入れた。溶液を55℃に温度調節し、水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより、pH値を12に調整した。
【0120】
硫酸遷移金属水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を1.8の流量比で同時に供給し、総流量を8時間の滞留時間とすることにより、共沈反応を開始させた。遷移金属溶液は、Ni、Co及びMnを8.3:1.2:0.5のモル比及び1.65mol/kgの合計の遷移金属濃度で含有した。水酸化ナトリウム水溶液は、6の質量比での25質量%の水酸化ナトリウム溶液及び25質量%のアンモニア溶液を含有した。水酸化ナトリウム水溶液を別に供給することにより、pH値を12に維持した。すべての供給の始動から始めて、母液を継続的に取り出した。33時間後、すべての供給流を停止した。得られた懸濁液を濾過し、蒸留水で洗浄し、空気中120℃で乾燥させ、ふるいにかけることにより、混合遷移金属(TM)オキシ水酸化物前駆体TM-OH.1を得た。(D50):10μm。
【0121】
I.2.処理されていないカソード活物質の製造、工程(a.1)
B-CAM.1(塩基CAM):混合遷移金属オキシ水酸化物前駆体T-M-OH.1を、1.05のLi/(Ni+Co+Mn)モル比でLiOH一水和物と混合した。混合物を780℃に加熱し、60体積%の酸素と40体積%の窒素との混合物の強制流中に10時間保持した。室温まで冷却した後、得られた粉末を解凝集し、32μmのメッシュでふるいにかけて、電極活物質B-CAM 1を得た。
【0122】
Malvern InstrumentsからのMastersize 3000機でレーザー回折の技術を使用して決定されたD50は10.0μmであった。ICP分析によって、Li及び遷移金属の含有量を決定した。250℃で決定した残留水分は300ppm未満であった。
【0123】
I.3.本発明のカソード活物質の製造
I.3.1 本発明のCAM.1の製造
振動発生装置付き流動床反応器(Technion on Beneq社製のALD TFS-200-189)に、150℃で20gのB-CAM.1を入れ、キャリアガスN2(純度99.997体積%)で流動化させた。キャリアガスのガス流量は60sccmであった。50mlのSwagelock容器に、25℃で、トリメチルアルミニウムを入れた。別のSwagelock容器には、リチウムtert.-ブトキシドを180℃に保持した。各サイクルは以下の工程を含んでいた:
- トリメチルアルミニウムで0.5秒パルス、60sccmのキャリアガス、工程(b.1)、
- キャリアガスのみで2分間パージ、100sccm、
- オゾンパルスで1秒、工程(c.1)、
- キャリアガスのみで1分間パージ、100sccm、
- リチウムtert.-ブトキシド、60sccmのキャリアガスで5秒パルス、工程(d.1)、
- キャリアガスのみで1分間パージ、100sccm。
【0124】
工程(e.1):工程(b.1)~(d.1)を20回行った。
【0125】
本発明のCAM.1を得た。TEMにより、CAM.1の粒子の外表面が、モル比1:4~1:5のAl2O3とLi5AlO4の組み合わせで非均質にコーティングされていることを示すことができる。
【0126】
I.3.2 本発明のCAM.2の製造
I.3.1からの振動発生装置付き流動床反応器に、240℃で20gのB-CAM.1を入れ、キャリアガスN2(純度99.997体積%)で流動化させた。キャリアガスのガス流量は40sccmであった。50mlのSwagelock容器に、25℃で、トリメチルアルミニウムを入れた。別のSwagelock容器には、ナトリウムtert.-ブトキシドを270℃に保持した。各サイクルは以下の工程を含んでいた:
- トリメチルアルミニウムで0.5秒パルス、40sccmのキャリアガス、工程(b.2)、
- キャリアガスのみで5分間パージ、60sccm、
- オゾンパルスで1秒、工程(c.2)、
- キャリアガスのみで7分間パージ、60sccm、
- ナトリウムtert.-ブトキシドで、1秒パルスを10回、2つのパルスの間に5秒の休憩、40sccmのキャリアガス、工程(d.2)、
- キャリアガスのみで5分間パージ、60sccm。
【0127】
工程(e.2):工程(b.2)~(d.2)を20回行った。本発明のカソード活物質CAM.2を得た。TEMにより、CAM.2の粒子の外表面が、モル比1:4:7~1:5:9のAl2O3とLi5AlO4とNa5AlO4の組み合わせで非均質にコーティングされていることを示すことができる。
【0128】
II.セルの製造及びテスト
II.1 カソードの製造
(70/0.1/30w/w/w)の比でカソード活物質としての本発明のCAM.1と、(b.1)Super C65カーボンブラック(Timcal)と、(C.1)Li6PS5Cl(NEI社)との混合物1gを遊星ミルで10個のジルコニアボールを用いてアルゴン雰囲気下140rpmで30分粉砕することによりカソード複合粉末を製作した。本発明のカソード(A.1)を得た。
【0129】
(70/0.1/30w/w/w)の比でカソード活物質としての本発明のCAM.2と、(b.1)Super C65カーボンブラック(Timcal)と、(C.1)Li6PS5Cl(NEI社)との混合物1gを遊星ミルで10個のジルコニアボールを用いてアルゴン雰囲気下140rpmで30分粉砕することにより、別のカソード複合粉末を製作した。本発明のカソード(A.1)を得た。
【0130】
II.2 アノードの製造
遊星ミルで10個のジルコニアボールを用いてアルゴン雰囲気下140rpmで30分粉砕することにより、NEI株式会社から市販されているカーボンでコーティングしたLi4Ti5O12(「Li4Ti5O12(cc)」と略記する)を、Li6PS5Cl(C.1)及び導電性炭素(表5に記載している)と30:10:60の質量比で混合した。アノード(B.1)を得た。
【0131】
III.本発明の電気化学セル及び比較用電気化学セルの製造及び電気化学テスト
III.1:本発明の電気化学セルの製造
一般手順:
固体電気化学セルの製造では、100mgの量の(C.1)を125MPaの圧力で圧縮して固体電解質ペレットを形成し、次に65mgのアノード(B.1)を125MPaで固体電解質ペレットにプレスし、最後に11~12mgのカソード(A.1)又は11~12mgのカソード(A.2)を375MPaで反対側に押し付けた。こうして得られたペレットを、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から構成する円筒形のケース中で、2本のステンレス棒の間で圧縮した。
【0132】
III.2 テスト
電気化学テスト中は、55MPaの圧力を維持した。MACCORバッテリーサイクラーを用いて、45℃、1.35~2.85Vの範囲の電圧で、初期サイクルがC/20、後続サイクルがC/5で(1C=190mA/g)で、定電流充電/放電測定を実施した。
【0133】
CAM.1又はCAM.2に基づく本発明の電池は、特に長期サイクル安定性及び熱安定性に関して優れた電気化学的特性を示す。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にコーティングされた電極活物質を製造する方法であって、前記方法が、以下の工程:
(a)一般式Li
1+xTM
1-xO
2(式中、TMは、Niと、Mnと、任意にCoと、任意にAl、Mg、Nb、Ta、Zr、Ti及びZrから選択される少なくとも1種の金属との組み合わせであり、xは0.05~0.2の範囲であり、Ni含有量がTMに対して少なくとも55モル%である)による電極活物質を提供する工程と、
(b)前記電極活物質を少なくとも1種の金属アルキル化合物又は少なくとも1種の金属アルコキシドで処理する工程と、
(c)工程(b)で得られた材料を酸化剤又は水分で処理する工程と、
(d)工程(c)から得られた材料を、式M
1OR
1(式中、M
1はLi、Na及びKから選択され、R
1はイソプロピル、n-ブチル及びtert.-ブチルから選択される)による化合物で処理する工程であって、M
1OR
1が工程(b)における金属アルコキシドとは異なる、工程と
(e)工程(b)~(d)を1回~30回繰り返す工程と
を含み、
工程(b)~(e)がガス相中で行われる、方法。
【請求項2】
工程(b)におけるアルキル金属化合物が、トリメチルアルミニウム及びトリエチルアルミニウムから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)における前記酸化剤が、オゾンと酸素との混合物から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法がさらなる熱的後処理工程(f)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)~(e)がロータリーキルン、自由落下ミキサー、連続振動床又は流動床で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各工程(b)と(c)と(d)の間にフラッシュ工程が行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)で提供される前記電極活物質が、0.1~1.5m
2/gの範囲の比表面積(BET)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
TMが、一般式(I)
(Ni
aCo
bMn
c)
1-dM
d (I)
(式中、aは、0.6~0.95の範囲であり、
bは、0~0.2の範囲であり、
cは、0.05~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Zr及びNbから選択され、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
一般式Li
1+xTM
1-xO
2(式中、TMは、Niと、Mnと、任意にCoと、任意にAl、Mg、Nb、Ta、Zr、Ti及びZrから選択される少なくとも1種の金属との組み合わせであり、xは0.05~0.2の範囲であり、TMの少なくとも55モル%がNiである)による粒子状カソード活物質であって、前記粒子の外表面が、Al
2O
3と、Li
5AlO
4又はLi
2TiO
3又はLi
4TiO
5又はLi
2ZrO
3と、任意にNa
5AlO
4、Na
2TiO
3、Na
2Ti
3O
7及びNa
2ZrO
3のうちの少なくとも1つとの組み合わせで非均質にコーティングされている、粒子状カソード活物質。
【請求項10】
TMが、一般式(I)
(Ni
aCo
bMn
c)
1-dMd (I)
(式中、aは、0.6~0.95の範囲であり、
bは、0~0.2の範囲であり、
cは、0.05~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Zr及びNbから選択され、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項9に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項11】
粒子状材料のバッチの粒子の少なくとも80%がコーティングされ、各粒子の表面のすべて又は75~99.99%がコーティングされるが、厚さ若しくは各粒子の被覆量のいずれか又はその両方が異なる、請求項9又は10に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項12】
前記コーティングが、Li
5AlO
4
及びNa
5AlO
4
を1:1~1:2の範囲のモル比で含有する、請求項9から
11のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項13】
前記コーティングが、少なくとも1種のさらなるリチウム化アルミニウム酸化物種を含む、請求項9から
12のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項14】
前記コーティングが、LiAlO
2及びLiAl
5O
8から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含む、請求項9から
13のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質。
【請求項15】
リチウムイオン電池の製造における、又はリチウムイオン電池の製造のための、請求項9から
14のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質の使用方法。
【請求項16】
全固体リチウムイオン電池の製造における、又は全固体リチウムイオン電池の製造のための、請求項9から
14のいずれか一項に記載の粒子状カソード活物質の使用方法。
【国際調査報告】