(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】組成物およびポリマーフィルム
(51)【国際特許分類】
C08F 212/00 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
C08F212/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519625
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2021076438
(87)【国際公開番号】W WO2022069384
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509077761
【氏名又は名称】フジフィルム・マニュファクチュアリング・ヨーロッパ・ベスローテン・フエンノートシャップ
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】ファン ライエン,アドリアヌス・ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】成田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】フエルタ・マルティネス,エリサ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッシング,ヤッコ
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AB07P
4J100AB15Q
4J100AL67R
4J100BA28P
4J100BA28Q
4J100BA29P
4J100BA58P
4J100BA58Q
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100CA05
4J100FA03
4J100FA20
4J100FA27
4J100JA16
(57)【要約】
(a)式(I):
(式中、Rは、C
1~4-アルキル、NH
2、またはC
6~12-アリールであり、M
+はカチオンである)の化合物と、(b)少なくとも2つの重合性基を含むモノマーと、(c)溶媒とを含む組成物を重合することによって得られるポリマーフィルム。さらに、ポリマーフィルムを作製するための組成物およびプロセスが特許請求される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I):
【化1】
(式中、
Rは、C
1~4-アルキル、NH
2、またはC
6~12-アリールであり、
M
+は、カチオンである)の化合物と、
(b)少なくとも2つの重合性基を含むモノマーと、
(c)溶媒と
を含む組成物を重合することによって得られるポリマーフィルム。
【請求項2】
組成物が、
(a)5~60wt%の成分(a)、
(b)10~70wt%の成分(b)、
(c)10~50wt%の成分(c)、
を含む、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
Rが、メチル、フェニル、ベンジル、またはNH
2である、請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
重合性基が、それぞれ独立して、(メタ)アクリル酸基およびビニル基から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
成分(b)が、アニオン基をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
アニオン基が、スルホ基またはビススルホニルイミド基を含む、請求項5に記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
成分(a)が、フッ素原子を含まない、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
(d)ラジカル開始剤をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリマーフィルム。
【請求項9】
カチオン交換膜である、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリマーフィルム。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載のポリマーフィルムを含むバイポーラ膜。
【請求項11】
請求項1で定義された式(I)の化合物を含む組成物を重合することを含む、ポリマーフィルムの製造方法。
【請求項12】
組成物が、
(a)式(I);
【化2】
(式中、
Rは、C
1~4-アルキル、NH
2、またはC
6~12-アリールであり、
M
+は、カチオンである)の化合物と、
(b)少なくとも2つの重合性基を含むモノマーと、
(c)溶媒と
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
組成物が、(d)開始剤をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)5~60wt%の成分(a)と、
(b)10~70wt%の成分(b)と、
(c)10~50wt%の成分(c)と、
(d)0~10wt%の成分(d)と
を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
多孔質支持体をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリマーフィルム、または請求項10に記載のバイポーラ膜。
【請求項16】
(a)式(I);
【化3】
(式中、
Rは、C
1~4-アルキル、NH
2、またはC
6~12-アリールであり、
M
+は、カチオンである)の化合物と、
(b)少なくとも2つの重合性基を含むモノマーと、
(c)溶媒と
を含む組成物。
【請求項17】
(d)開始剤をさらに含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
(a)5~60wt%の成分(a)と、
(b)10~70wt%の成分(b)と、
(c)10~50wt%の成分(c)と、
(d)0~10wt%の成分(d)と
を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
極性液体の処理のための、または発電のための、請求項9に記載のカチオン交換膜の使用。
【請求項20】
酸および塩基の製造のための、または発電のための、請求項10に記載のバイポーラ膜の使用。
【請求項21】
式(IV):
【化4】
(式中、
L
1は、アルキレン基またはアルケニレン基であり、
R
a、R
b、R
c、およびR
dはそれぞれ独立して、アルキル基もしくはアリール基であり、またはR
aおよびR
b、ならびに/あるいはR
cおよびR
dは、それらが結合する原子と一緒に環を形成し、
n1およびn2はそれぞれ独立して、1~10の値を有する整数を表し、
X
1
-およびX
2
-はそれぞれ独立して、アニオンを表す)
の化合物を含む組成物を硬化させることによって得られるアニオン交換層(AEL)をさらに含む、請求項10に記載のバイポーラ膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルムを作製するのに好適な組成物、ポリマーフィルム、カチオン交換膜、バイポーラ膜、ならびにそれらの調製および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換膜は、電気透析、逆電気透析、電気分解、拡散透析、およびいくつかの他のプロセスにおいて使用される。典型的に、膜を介するイオンの輸送は、イオン濃度勾配または代替的に電位勾配などの駆動力の影響下で生じる。
【0003】
イオン交換膜は一般に、その優勢な電荷に応じて、カチオン交換膜またはアニオン交換膜に分類される。カチオン交換膜は、カチオンの通過を可能にするがアニオンを拒絶する負に帯電した基を含み、一方でアニオン交換膜は、アニオンの通過を可能にするがカチオンを拒絶する正に帯電した基を含む。バイポーラ膜は、カチオン層およびアニオン層の両方を有する。
【0004】
イオン交換膜およびバイポーラ膜には、機械的強度を付与する多孔質支持体を含むものがある。そのような膜は、逆に帯電したイオンを区別するイオン的に帯電したポリマーと機械的強度を与える多孔質支持体との両方が存在することに起因して、しばしば「複合膜」と呼ばれる。
【0005】
カチオン交換膜は、水溶液および他の極性液体の処理のために、および発電のために、使用されることがある。
バイポーラ膜は、塩溶液から酸および塩基を製造するために、たとえば、フッ化水素酸および硝酸の回収のために、乳酸およびクエン酸などの有機酸の分離および処理のために、ならびにアミノ酸の製造のために、使用されることがある。
【0006】
電気は、プロセス標準のイオン交換膜またはバイポーラ膜が使用され得る、逆電気透析(RED)を用いて生成され得る。カチオン交換膜は、たとえば、燃料電池および電池における水素の生成のためにも使用されることがある。
【0007】
バイポーラ膜は、多くの異なる方法によって調製することができる。米国特許第4,024,043号および第4,057,481号(ともにDegeら)において、シングルフィルムバイポーラ膜が、不溶性の架橋された芳香族ポリマーを比較的多量に含有するプレ膨潤フィルムから調製され、そこで、高度に解離性のカチオン性交換基がフィルムの一方の側からのみ望ましい深さまで芳香核に化学結合し、続いて、高度に解離性のアニオン性交換基がフィルムの他方の側で未反応の芳香核に化学結合する。
【0008】
日本特許公報第78-158638号および79-7196号(ともにTokuyama Soda Co. Ltd.)において、バイポーラ膜は、膜を被覆フィルムで部分的に被覆し、被覆フィルムと接触していない膜の表面をスルホン化してカチオン交換基を導入し、被覆フィルムを剥離し、剥離された表面にアニオン交換基を導入することによって調製される。
【0009】
バイポーラ膜はまた、アニオン交換フィルムまたは膜と、カチオン交換フィルムまたは膜とを接合することによって調製される。熱および圧力を適用して、選択性が反対である2つのモノポーラ膜を融合させることによって、バイポーラ膜を形成することができる。たとえば、水圧プレスにおいて、400lb/sq.inch(2,758kPa)の圧力、150℃で、別々のカチオン膜およびアニオン膜を接合して、2枚重ねのバイポーラ膜構造を形成する、Kollsmanへの米国特許第3,372,101号を参照されたい。
【0010】
しかしながら、このように形成されたバイポーラ膜には、それらの融合によって生成される高い電気抵抗という欠点がある。さらに、これらの膜は気泡またはブリスターができる傾向にあり、比較的低い電流密度において短い時間期間のみ動作可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,024,043号
【特許文献2】米国特許第4,057,481号
【特許文献3】特開昭55-86821号公報
【特許文献4】特開昭55-99927号公報
【特許文献5】米国特許第3,372,101号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の欠点により、公知のバイポーラ膜は、商用の電気透析操作にとって魅力に欠けたものになる。
本発明の第1の態様によれば、
(a)式(I):
【0013】
【0014】
(式中、
Rは、C1~4-アルキル、NH2、またはC6~12-アリールであり、
M+はカチオンである)の化合物と、
(b)少なくとも2つの重合性基を含むモノマーと、
(c)溶媒と、
任意に、(d)ラジカル開始剤と
を含む組成物が提供される。
【0015】
好ましくは、本発明の第1の態様による組成物は、
(a)5~60wt%の成分(a)と、
(b)10~70wt%の成分(b)と、
(c)10~50wt%の成分(c)と、
(d)0~10wt%の成分(d)と
を含む。
【0016】
好ましい実施形態において、M+は、H+、Li+、Na+、K+であるか、または式NL4
+(式中、各Lは独立して、HまたはC1~3アルキルである)のものである。多くの他のカチオンと比較して、水性液体においてより良好な溶解度が得られるため、M+はLi+であることが特に好ましい。
【0017】
式(I)の化合物は、実施例において説明されるものと類似の方法によって得られてもよく、または、それらは市販のものから、または公知の方法によって得られてもよい。
成分(a)として使用され得る式(I)の化合物の例としては、下記に示される、式MM-A、式MM-P、および式MM-Mの化合物が挙げられる。
【0018】
好ましくは、組成物は、5~60wt%、より好ましくは5~50wt%、最も好ましくは5~40wt%の成分(a)を含む。
成分(b)中に存在してもよい、好ましい重合性基としては、エチレン性不飽和基、特に(メタ)アクリル酸基、および/またはビニル基(たとえば、ビニルエーテル基、芳香族ビニル化合物、N-ビニル化合物、およびアリル基)が挙げられる。
【0019】
好適な(メタ)アクリル酸基の例としては、アクリラート(H2C=CHCO-)基、アクリルアミド(H2C=CHCONH-)基、メタクリラート(H2C=C(CH3)CO-)基、およびメタアクリルアミド(H2C=C(CH3)CONH-)基が挙げられる。アクリル酸基はより反応性であるため、アクリル酸基はメタクリル酸基よりも好ましい。
【0020】
得られる組成物の安定性およびpH許容範囲を向上することができるため、好ましいエチレン性不飽和基はエステル基を含まない。エステル基を含まないエチレン性不飽和基は、ビニル基を含む。
【0021】
重合性基の好ましい例としては、以下の式:
【0022】
【0023】
の、言及された基があり得る。
任意に、成分(b)はアニオン基をさらに含む。
好ましくは、いくつかの実施形態において、組成物は、10~70wt%、より好ましくは20~70wt%、最も好ましくは30~60wt%の成分(b)を含む。
【0024】
成分(b)として使用されてもよく、かつアニオン基をさらに含む、少なくとも2つの重合性基を含むモノマーの例としては、以下の式(MA)、式(C)、式(ACL-A)、式(ACL-B)、式(ACL-C)、および/または式(II)の化合物が挙げられる。
【0025】
【0026】
(式(MA)において、
各RA1は独立して、水素原子またはアルキル基を表し、
各Z1は独立して、-O-または-NRa-を表し、Raは、水素原子またはアルキル基を表し、
各M+は独立して、上に定義されるとおりである)。
【0027】
式(MA)において、各M+に対する好ましい態様は独立して、上に定義されるとおりである。一実施形態において、各M+は独立して、有機または無機カチオン、好ましくはH+、またはアルカリ金属イオンである。
【0028】
式(MA)の成分(b)の例としては、以下のもの:
【0029】
【0030】
およびその塩が挙げられる。
合成法は、たとえば、US2015/0353696およびUS2016/0369017において見出すことができる。
【0031】
【0032】
(式(C)において:
各L1は独立して、アルキレン基またはアラルキレン基を表し、
nは、2または3、好ましくは2であり、
各mは独立して、1または2であり、
L2はn価の連結基を表し、
各R1は独立して、水素原子またはアルキル基を表し、
各R2は独立して、-SO3
-M+または-SO3
-R3を表し、
各M+は独立して、上に定義されるとおりであり、
R3は、アルキル基またはアリール基を表す)。
【0033】
式(C)の一実施形態において、M+は、H+、無機イオン、または有機イオンである。
式(C)の成分(b)の例としては、以下のもの:
【0034】
【0035】
およびその代替的な塩が挙げられる。
合成法は、EP3187516において見出すことができる。
【0036】
【0037】
(式(ACL-A)、式(ACL-B)、式(ACL-C)において、
RおよびR’のそれぞれは独立して、水素原子またはアルキル基を表し、
LLは、単結合または二価の連結基を表し、
LL1、LL1’、LL2、およびLL2’のそれぞれは独立して、単結合または二価の連結原子もしくは基を表し、
AおよびA’のそれぞれは独立して、遊離酸または塩形態の基でのメチル基もしくはスルホ基を表し、
mは1または2を表す)。
【0038】
式(ACL-A)、(ACL-B)、または(ACL-C)の成分(b)の例としては、以下のもの:
【0039】
【0040】
およびその代替的な塩が挙げられる。
合成法は、US2016/0362526において見出すことができる。
【0041】
【0042】
(式中、
R’は、ビニル(C2H3)、エポキシ(C2H3O)、またはC1~3-アルキレンチオール(C1~3-アルキレン-SH)であり、
nは1または2であり、
mは1、2、または3の値を有し、
M’+は、H+、Li+、Na+、K+、またはNL4
+であり、各Lは独立して、HまたはC1~3-アルキルであり、
(a)mおよびnの両方が1の値を有する場合、Xは、ビニルフェニル、または式(III):
【0043】
【0044】
(式(III)において、
R”は、ビニル(C2H3)、エポキシ(C2H3O)、またはC1~3-アルキレンチオール(C1~3-アルキレン-SH)であり、
M”+は、H+、Li+、Na+、K+、またはNL4
+であり、各Lは独立して、HまたはC1~3-アルキルである)のものであり、
(b)mおよびnの両方が1の値を有しない場合、Xは、C1~6-アルキレン、C6~18-アリーレン、またはNR’’’(3-m)であり、各R’’’は独立して、HまたはC1~C4アルキルであり、
(c)mが1の値を有し、式(II)に示されるnが2の値を有する場合、Xは、式(III)(上に定義されるとおり)のもの、またはC1~6-アルキル、C6~18-アリール、もしくはN(R’’’)2であり、各R’’’は独立して、HまたはC1~4アルキルである)。
【0045】
式(II)の成分(b)の例としては、以下のもの:
【0046】
【0047】
およびその代替的な塩が挙げられる。
合成法は、たとえば、JP2018043936において見出すことができる。
成分(b)の他の例としては、下記に示される化合物M-23~M-34、およびそれらの塩が挙げられる。
【0048】
【0049】
良好なpH安定性を有するポリマーフィルムが得られるため、好ましくは、成分(b)は、式(ACL-B)、式(ACL-C)、およびそれらの塩、ならびに/または式(II)による化合物から選ばれる。好ましくは、組成物は、少なくとも10wt%、より好ましくは少なくとも20wt%の、式(ACL-B)、式(ACL-C)、およびそれらの塩、ならびに/または式(II)による化合物から選択される成分(b)を含む。
【0050】
好ましくは、成分(c)は不活性溶媒である。換言すると、好ましくは、成分(c)は、硬化性組成物の他の成分のうちのいずれとも反応しない。一実施形態において、溶媒は好ましくは、水、および任意に有機溶媒を含み、特に有機溶媒の一部またはすべてが水混和性であるものである。水は、成分(a)を、および場合により成分(b)をも溶解するのに有用であり、有機溶媒は、組成物中に存在する任意の他の有機成分を溶解するのに有用である。
【0051】
成分(c)は、組成物の粘度および/または表面張力を低減するのに有用である。いくつかの実施形態において、組成物は、10~50wt%、より好ましくは10~40wt%、特に16~40wt%、たとえば23~38wt%の成分(c)を含む。
【0052】
成分(c)として使用されてもよい不活性溶媒の例としては、水、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ニトリル系溶媒、および有機リン系溶媒が挙げられる。成分(c)として、または成分(c)中で(特に水との組合せで)、使用されてもよいアルコール系溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびそれらの2つ以上を含む混合物が挙げられる。加えて、成分(c)中で使用されてもよい好ましい不活性の有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジアセタート、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、y-ブチロラクトン、およびそれらの2つ以上を含む混合物が挙げられる。ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、およびそれらの2つ以上を含む混合物が好ましい。
【0053】
組成物は好ましくは、0~2wt%の成分(d)を含む。熱的に、または光(たとえば、UVまたは可視光線)を用いて、組成物を硬化させることが意図される場合、組成物は好ましくは、0.001~2wt%、特に0.005~0.9wt%の成分(d)を含む。
【0054】
成分(d)として使用されてもよい好適な熱開始剤の例としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナート)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジスルファート二水和物、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、および2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。
【0055】
成分(d)として組成物中に含まれてもよい好適な光開始剤の例としては、芳香族ケトン、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサ-アリールビイミダゾール化合物、ケトキシムエステル化合物、ホウ酸塩化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、およびアルキルアミン化合物が挙げられる。芳香族ケトン、アシルホスフィンオキシド化合物、およびチオ化合物の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」、77~117ページ(1993)に記載されている、ベンゾフェノン骨格またはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。それらのより好ましい例としては、JP1972-6416B(JP-S47-6416B)に記載されているアルファ-チオベンゾフェノン化合物、JP1972-3981B(JP-S47-3981B)に記載されているベンゾインエーテル化合物、JP1972-22326B(JP-S47-22326B)に記載されているアルファ-置換ベンゾイン化合物、JP1972-23664B(JP-S47-23664B)に記載されているベンゾイン誘導体、JP1982-30704A(JP-S57-30704A)に記載されているアロイルホスホン酸エステル、JP1985-26483B(JP-S60-26483B)に記載されているジアルコキシベンゾフェノン、JP1985-26403B(JP-S60-26403B)およびJP1987-81345A(JPS62-81345A)に記載されているベンゾインエーテル、JP1989-34242B(JP H01-34242B)、米国特許第4,318,791A号、およびEP0284561A1に記載されているアルファ-アミノベンゾフェノン、JP1990-211452A(JP-H02-211452A)に記載されているp-ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、JP1986-194062A(JPS61-194062A)に記載されているチオ置換芳香族ケトン、JP1990-9597B(JP-H02-9597B)に記載されているアシルホスフィンスルフィド、JP1990-9596B(JP-H02-9596B)に記載されているアシルホスフィン、JP1988-61950B(JP-S63-61950B)に記載されているチオキサントン、およびJP1984-42864B(JP-S59-42864B)に記載されているクマリンが挙げられる。加えて、JP2008-105379AおよびJP2009-114290Aに記載されている光開始剤も好ましい。加えて、Kato Kiyomi著、「Ultraviolet Curing System」の65~148ページ(Research Center Co.,Ltd.出版、1989)に記載されている光開始剤が使用されてもよい。
【0056】
特に好ましい光開始剤としては、以下の溶媒、水、エタノール、およびトルエンのうちの1つまたは複数において23℃の温度で測定される場合、380nmより長い波長で最大の吸収を有するNorrish Type II光開始剤が挙げられる。例としては、キサンテン、フラビン、クルクミン、ポルフィリン、アントラキノン、フェノキサジン、カンファーキノン、フェナジン、アクリジン、フェノチアジン、キサントン、チオキサントン、チオキサンテン、アクリドン、フラボン、クマリン、フルオレノン、キノリン、キノロン、ナフタキノン、キノリノン、アリールメタン、アゾ、ベンゾフェノン、カロテノイド、シアニン、フタロシアニン、ジピリン、スクアリン、スチルベン、スチリル、トリアジン、またはアントシアニン誘導体化光開始剤が挙げられる。
【0057】
本発明の第2の態様によれば、式(I)の化合物を含む組成物の重合を含み、式(I)の化合物が上に定義されるとおりである、ポリマーフィルムを調製するための方法が提供される。
【0058】
本発明の第2の態様において、式(I)の化合物に対する好ましい態様は、本発明の第1の態様に関して、本明細書において定義されるとおりである。
本発明の第2の態様において、組成物は好ましくは、本発明の第1の態様に関して定義されるとおりである。本発明の第2の態様の方法において使用される組成物に対する好ましい態様は、本発明の第1の態様に関して本明細書で説明されるとおりである。
【0059】
熱硬化、光硬化、電子ビーム(EB)照射、ガンマ線照射、および前述の組合せを含む任意の好適なプロセスによって組成物を硬化して、本発明の第2の態様によるフィルムを調製してもよい。任意に、上に言及された硬化技法のうちの2つの組合せとして定義される二重硬化法を使用してもよい。しかしながら、組成物は、好ましくは光硬化、たとえば、可視光または紫外線が組成物に照射され、それにより組成物中に存在する硬化性成分が重合することによって、硬化される。
【0060】
好ましくは、重合は、多孔質支持体の存在下で実行される。たとえば、式(I)の化合物/本発明の第1の態様による組成物は、多孔質支持体中に及び/または多孔質支持体上に存在する。多孔質支持体は、重合の結果生じるポリマーフィルムに機械的強度を付与し、これは、ポリマーフィルムがカチオン交換膜(CEM)またはバイポーラ膜(BPM)として使用されることが意図される場合、特に有用である。
【0061】
使用されてもよい多孔質支持体の例として、合成の織布および不織布ならびに押出フィルムが言及されてもよい。例としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのポリアリールエーテルケトン、およびそれらのコポリマーから作製された、湿式および乾式不織布材料、スパンボンド布、メルトブロー布、およびナノファイバーウェブが挙げられる。多孔質支持体はまた、多孔質膜、たとえば、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリフェニレンスルホン膜、ポリフェニレンスルフィド膜、ポリイミド膜、ポリエーテルイミド(polyethermide)膜、ポリアミド膜、ポリアミドイミド膜、ポリアクリロニトリル膜、ポリカルボナート膜、ポリアクリラート膜、酢酸セルロース膜、ポリプロピレン膜、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)膜、ポリイニリデンフルオリド膜、ポリテトラフルオロエチレン膜、ポリヘキサフルオロプロピレン膜、およびポリクロロトリフルオロエチレン膜、ならびにそれらの誘導体であってもよい。
【0062】
多孔質支持体は好ましくは、10~800μmの間、より好ましくは15~300μmの間、特に20~150μmの間の平均厚さを有する。
好ましくは、多孔質支持体は、30および95%の多孔率を有する。支持体の多孔率は、ポロメーター、たとえば、IB-FT GmbH、ドイツからのPorolux(商標)1000によって決定されてもよい。
【0063】
多孔質支持体は、存在する場合、その表面エネルギーを、たとえば、45mN/mを上回る、好ましくは55mN/mを上回る値に改変させるように処理されてもよい。好適な処理としては、たとえば、ポリマーフィルムへの多孔質支持体の濡れ性および接着性を向上する目的の、コロナ放電処理、プラズマグロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、または化学的処理などが挙げられる。
【0064】
市販されている多孔質支持体は、いくつかの供給源から、たとえば、Freudenberg Filtration Technologies(Novatexx材料)、Lydall Performance Materials、Celgard LLC、APorous Inc.、SWM(Conwed Plastics、DelStar Technologies)、Teijin、Hirose、Mitsubishi Paper Mills Ltd、およびSefar AGから利用可能である。
【0065】
好ましくは、支持体はポリマー性支持体である。好ましくは、支持体は、共有結合しているイオン基を有しない合成の織布または不織布または押出フィルムを含む。
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様のプロセスによって得られるポリマーフィルムが提供される。
【0066】
好ましくは、ポリマーフィルムは、カチオン交換膜(CEM)であるか、またはバイポーラ膜(BPM)であり、当該バイポーラ膜(BPM)は、本発明の第1の態様による組成物を重合させることから得られるカチオン交換層(CEL)、及び/または本発明の第2の態様によるプロセスによって得られるカチオン交換層(CEL)を含む。好ましくは、BPMはアニオン交換層(AEL)をさらに含む。
【0067】
好ましくは、本発明の第2の態様によるプロセスによって得られるポリマーフィルムは、式(A):
【0068】
【0069】
(式中、M+は、好ましくは上に定義されるとおりのカチオンである)の構造基を含む。
式(A)において、アスタリスクは、構造基が、ポリマーフィルムの他の構造的要素に共有結合している箇所を示す。
【0070】
好ましい本発明の第2の態様によるプロセスにおいて、本発明の第1の態様による硬化性組成物は、好ましくは、硬化性組成物適用ステーション、組成物を硬化させるための1つまたは複数の照射源、膜回収ステーション、および硬化性組成物適用ステーションから照射源へとかつ膜回収ステーションへと支持体を移動させるための手段を含む製造部によって、移動する(多孔質)支持体に連続的に適用される。
【0071】
硬化性組成物適用ステーションは、照射源に対して上流の位置にあってもよく、照射源は、膜回収ステーションに対して上流の位置にあってもよい。
多孔質支持体に本発明の第1の態様による硬化性組成物を適用するための好適なコーティング技法の例としては、スロットダイコーティング、スライドコーティング、エアナイフコーティング、ローラーコーティング、スクリーン印刷、およびディッピングが挙げられる。用いられる技法および望ましい最終仕様に応じて、たとえば、ロールツーロールスクイーズ、ロールツーブレードもしくはブレードツーロールスクイーズ、ブレードツーブレードスクイーズ、またはコーティングバーを使用する除去によって、基材から過剰のコーティングを除去することが望ましいことがある。光による硬化は好ましくは、40~1500mJ/cm-2の間の線量を使用して、400nm~800nmの間の波長で行われる。いくつかの場合において、40℃~200℃の間の温度が採用され得る追加の乾燥が必要となることがある。
【0072】
本発明の第2の態様によるプロセスを使用して、本発明の第3の態様によるポリマーフィルム(たとえば、CEMおよびBPM)を、マルチパスおよびシングルパスプロセスを含むいくつかの仕方で、調製してもよい。たとえば、2パスプロセスにおいて、BPMの層(たとえば、CELおよびAEL)のそれぞれは、別々のステップにおいて製造されてもよい。第1の層を作製するための第1のステップにおいて、任意に前処理された多孔質支持体は、第1の硬化性組成物を含浸されてもよい。薄くてピンホールのない膜を保証するために、好ましくは、コーティングステップに続いて、圧搾が行われる。次いで、含浸された支持体は硬化されて、コーティング機において取り扱われる目的において十分に硬いが第2の層への良好な接着を保証するのに十分な未反応の重合性基を依然として含有している層をもたらしてもよい。第2のステップにおいて、第1の層に関するものと非常によく似たプロセスが用いられ、任意に前処理された多孔質支持体は、第2の硬化性組成物を含浸され、第1の層に積層され、続いて、過剰の組成物を絞り出し、硬化を行ってもよい。
【0073】
BPMを作製するための代替方法において、第2の層は、第1の層上にコーティングされて、続いて、任意に前処理された多孔質支持体が、第2の硬化性組成物の側において積層され、それにより、第2の硬化性組成物は多孔質支持体に浸透する。得られた積層体は、圧搾され、硬化されて、複合膜をもたらしてもよい。
【0074】
上述の2パスプロセスにおいて、好ましくは、第1の硬化性組成物または第2の硬化性組成物のいずれかは、本発明の第1の態様において定義されるとおりである。
より好ましい、BPMを調製するためのシングルパスプロセスにおいて、2つの任意に前処理された多孔質支持体が巻き出され、それぞれに硬化性組成物が含浸され(たとえば、同時にまたは連続的に)、硬化性組成物のうちの一方は、CELを与えるものとして本発明の第1の態様において定義されたものであり、他方の硬化性組成物は、少なくとも1種のカチオン性硬化性モノマーを含んでおりAELを与える。次いで、2つの層(本発明の第1の態様による組成物からのCEL、および他方の硬化性組成物からのAEL)は、一緒に積層され、圧搾され、続いて、得られた積層体は硬化されて最終BPMをもたらす。
【0075】
本発明の第3の態様によるBPMの効率は、たとえば、物理的処理(粗化)によって、または他の手段によって、AELとCELとの間の表面積を大きくすることによって高められてもよい。
【0076】
一実施形態において、本発明の第3の態様によるBPMは、任意に、触媒、たとえば、金属塩、金属酸化物、有機金属化合物、モノマー、ポリマー、またはコポリマー、または塩を、好ましくはBPMのCELとAELとの界面において、含む。
【0077】
触媒として使用されてもよい好適な無機化合物または塩としては、たとえば、元素周期表における、ランタニド系列元素およびアクチニド系列元素と共に、1a族から4a族(1a族および4a族を含める)、たとえば、トリウム、ジルコニウム、鉄、ランタン、コバルト、カドミウム、マンガン、セリウム、モリブデン、ニッケル、銅、クロム、ルテニウム、ロジウム、スズ、チタン、およびインジウム、ならびに前述のうちの2つ以上を含む組合せから選択されるカチオンが挙げられる。触媒として使用されてもよい好適な塩としては、四ホウ酸塩、メタホウ酸塩、ケイ酸塩、メタケイ酸塩、タングステン酸塩、塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、クロム酸塩、ヒドロキシル、炭酸塩、モリブデン酸塩、クロロ白金酸塩、クロロパラダイト、オルトバンド酸、テルル酸塩、および他のものなどのアニオン、ならびに前述のうちの2つ以上を含む組合せが挙げられる。
【0078】
触媒として使用されてもよい無機化合物または塩の他の例としては、FeCl3、FeCl2、AlCl3、MgCl2、RuCl3、CrCl3、Fe(OH)3、Al2O3、NiO、Zr(HPO4)2、MoS2、グラフェンオキシド、Fe-ポリビニルアルコール錯体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリル酸(PAA)、アクリル酸および無水マレイン酸(PAAMA)とのコポリマー、および超分岐脂肪族ポリエステル、ならびに前述のうちの2つ以上を含む組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
低量の成分(c)、たとえば、10~40wt%の成分(c)を有する本発明の第1の態様による組成物からCEMを調製することの結果として、本発明の第3の態様によるCEM(ポリマーフィルムである)は好ましくは、非常に高い密度を有する。したがって、本発明により、非常に高いイオン交換能、ならびにその結果として、高選択性および低電気抵抗(ER)を有するポリマーフィルム(たとえば、CEMおよびBPM)の製造が可能となる。
【0080】
好ましくは、ER(0.5M NaClに関して)は、5オーム.cm2より低く、より好ましくは2.5オーム.cm2より低い。
0~14の範囲において優れたpH安定性を有するポリマーフィルム(たとえば、CEMおよびBPM)をもたらすことができるため、組成物の成分(b)は、式(ACL-B)、式(ACL-C)、および/または式(II)の化合物(前述の塩を含む)を含むことが好ましい。
【0081】
さらに、本発明によるCEM、およびカチオン性交換層(CEL)を含有するBPMは、低電気抵抗を有する。結果として、バイポーラ電気透析において本発明によるCEMおよびBPMを使用して、低電流密度における高電圧を提供することができる。したがって、酸および塩基の製造のためのバイポーラ電気透析プロセスにおいて本発明のBPMが使用される場合、当該BPMは、低エネルギーコストおよび/または高生産性を提供することができる。
【0082】
一実施形態において、本発明の第3の態様によるポリマーフィルムは好ましくは、バイポーラ膜、または加水分解によってバイポーラ膜に変換可能な膜である。
バイポーラ膜のアニオン交換層(AEL)は好ましくは、硬化性カチオン性化合物を含む組成物(すなわち、AEL組成物)を硬化させることによって得られる。したがって、AEL組成物は好ましくは、硬化性カチオン性化合物を含む。
【0083】
好ましい硬化性カチオン性化合物は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基、たとえば、式(IV):
【0084】
【0085】
(式中、
L1は、アルキレン基またはアルケニレン基であり、
Ra、Rb、Rc、およびRdはそれぞれ独立して、アルキル基もしくはアリール基であり、または
RaおよびRb、ならびに/もしくはRcおよびRdは、それらが結合する原子と一緒に環を形成してもよく、
n1およびn2はそれぞれ独立して、1~10の値を有する整数を表し、
X1
-およびX2
-はそれぞれ独立して、アニオンを表す)の化合物を含む。
【0086】
L1は好ましくは、エチレン(CH2CH2)、プロピレン(CH2CH2CH2)、ヘキシレン(CH2CH2CH2CH2CH2CH2)、またはビニレン(CH=CH)である。
【0087】
Ra、Rb、Rc、およびRdのうちのいずれかがアルキル基である場合、それは好ましくは、C1~4-アルキル基、特にメチルである。
Ra、Rb、Rc、およびRdのうちのいずれかがアリール基である場合、それは好ましくは、C6~10-アリール基、特にフェニルである。
【0088】
RaおよびRb、ならびに/またはRcおよびRdが、それらが結合する原子と一緒に環を形成する場合、環は好ましくは、5員環または6員環である。
X1
-およびX2
-によって表されるアニオンは好ましくは、それぞれ独立して、ハロ、特にCl-である。
【0089】
したがって、AEL組成物は好ましくは、以下の原料:
(a2)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含む硬化性カチオン性化合物と、
任意選択で(b2)1つかつ1つのみのエチレン性不飽和基を含む化合物と、
任意選択で(c2)溶媒と、
任意選択で(d2)ラジカル開始剤と
を含む。
【0090】
好ましくは、AEL組成物は、成分(b2)、成分(c2)、および成分(d2)のうちの少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、特に3つすべてを含む。
式(IV)の化合物の例としては、以下:
【0091】
【0092】
が挙げられる。
合成法は、たとえば、EP3184558およびUS2016/0001238において見出すことができる。
【0093】
AEL組成物は好ましくは、30~80wt%の成分(a2)、より好ましくは40~70wt%の間の成分(a2)を含む。
好ましくは、AEL組成物は、
(i)30~80wt%の成分(a2)と、
(ii)0~40wt%の成分(b2)と、
(iii)10~40wt%の成分(c2)と
を含む。
【0094】
成分(b2)は好ましくは、芳香族基を含む。
成分(b2)は好ましくは、カチオン基を含む。
AEL組成物の成分(b2)として使用されてもよい化合物の例としては、以下:
【0095】
【0096】
が挙げられる。
上述の化合物は、たとえば、US2016177006に記載されるように、調製されてもよい。
【0097】
好ましくは、成分(a2)の成分(b2)に対するモル比は、9:1~1:4である。
AEL組成物は、0~60wt%、より好ましくは5~45wt%、最も好ましくは10~40wt%の成分(b2)を含む。
【0098】
AEL組成物の成分(c2)は好ましくは、水、および任意に、特に有機溶媒の一部またはすべてが水混和性である、有機溶媒を含む。水は、式(IV)の化合物を、および存在する場合は成分(c2)を、溶解するのに有用である。溶媒は、組成物の粘度および/または表面張力を低減するのに有用である。
【0099】
AEL組成物の成分(c2)として使用されてもよい好適な溶媒の例としては、水、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ニトリル系溶媒、有機リン系溶媒、およびそれらのうちの2つ以上を含む混合物が挙げられる。成分(c2)として、または成分(c2)中で(特に水との組合せで)使用されてもよいアルコール系溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびそれらのうちの2つ以上を含む混合物が挙げられる。加えて、成分(c2)中で使用されてもよい好ましい不活性の有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジアセタート、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、y-ブチロラクトン、およびそれらのうちの2つ以上を含む混合物が挙げられる。ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、およびそれらのうちの2つ以上を含む混合物が好ましい。
【0100】
いくつかの実施形態において、AEL組成物は、10~40wt%、より好ましくは10~35wt%、最も好ましくは15~30wt%の成分(c2)を含む。
AELを形成するために使用されるAEL組成物中に含まれてもよい成分(c2)~(d2)の例は、それぞれ成分(c)および成分(d)として、CELのために使用される組成物に関して上述されるとおりである。しかしながら、AEL組成物の成分(c2)は好ましくは、水性である。
【0101】
成分(d2)は好ましくは、熱開始剤、光開始剤、またはそれらの組合せであるか、またはそれらを含む。最も好ましくは、成分(d)は、光開始剤であるか、またはそれを含む。
【0102】
AEL組成物の成分(d2)として使用されてもよい好適な光開始剤の例としては、本発明の第1の態様による組成物に関して上述されるものが挙げられる。
AEL組成物は好ましくは、0.001~2wt%の成分(d2)、より好ましくは0.005~0.9wt%を含む。
【0103】
AEL組成物およびCEL組成物は、任意に、それぞれ独立して、重合阻害剤をさらに含む。重合阻害剤は、保管および使用中に安定している組成物を作製するのに有用であり得る。
【0104】
重合阻害剤としては、周知の重合阻害剤を使用することができる。その例としては、フェノール化合物、ヒドロキノン化合物、ある特定のアミン化合物、メルカプト化合物、およびニトロキシルラジカル化合物が挙げられる。
【0105】
フェノール化合物の例としては、ヒンダードフェノール(オルト位置にt-ブチル基を有するフェノール、代表的に、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)、およびビスフェノールが挙げられる。ヒドロキノン化合物の具体例としては、モノメチルエーテルヒドロキノンが挙げられる。アミン化合物の具体例としては、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンおよびN,N-ジエチルヒドロキシルアミンが挙げられる。ニトロキシルラジカル化合物の具体例としては、4-ヒドロキシTEMPO(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル)が挙げられる。
【0106】
AEL組成物およびCEL組成物は、任意に、それぞれ独立して、2種以上の重合阻害剤をさらに含む。
AELまたはCELを形成するために使用される組成物が重合阻害剤を含む場合、含有量は好ましくは、組成物の総重量に対して、0.01~5wt%、より好ましくは0.01~1wt%、さらに好ましくは0.01~0.5wt%である。
【0107】
AEL組成物およびCEL組成物は、任意に、それぞれ独立して、界面活性剤、ポリマー分散剤、および/またはクレーター防止剤をさらに含む。
AEL組成物および/またはCEL組成物のフィルムの物性を調整するために、様々なポリマー化合物がそれに含まれてもよい。好適なポリマー化合物としては、アクリルポリマー、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボナート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル樹脂、ゴム系樹脂、ワックス、および天然樹脂、ならびに前述のうちの2つ以上の組合せが挙げられる。
【0108】
AEL組成物およびCEL組成物は、任意に、それぞれ独立して、界面活性剤、たとえば、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または有機フッ素系界面活性剤などをさらに含む。界面活性剤の具体例としては、アニオン性界面活性剤(たとえば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級アルキルスルホンアミドのアルキルカルボン酸塩、およびアルキルリン酸塩)、および非イオン性界面活性剤(たとえば、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、ポリ(オキシエチレン)アルキルフェニルエーテル、ポリ(オキシエチレン)脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレングリコールのエチレンオキシド付加物、グリセリンのエチレンオキシド付加物、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)が挙げられる。好適な界面活性剤の他の例としては、両性界面活性剤(たとえば、アルキルベタインおよびアミドベタイン)、シリコーン系界面活性剤、およびフッ素系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、当技術分野で公知の界面活性剤、またはその誘導体から好適に選択することができる。
【0109】
AEL組成物およびCEL組成物は、任意に、それぞれ独立して、ポリマー分散剤をさらに含む。
ポリマー分散剤の具体例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリアクリルアミドが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルピロリドンを使用することが好ましい。
【0110】
AEL組成物およびCEL組成物は、任意に、それぞれ独立して、クレーター防止剤(表面調整剤と呼ばれることがある)、CELまたはAEL表面のムラを防止するためのレベリング剤またはスリップ剤をさらに含み、それらの例としては、有機変性ポリシロキサン(ポリエーテルシロキサンとポリエーテルとの混合物)、ポリエーテル変性ポリシロキサンコポリマー、およびシリコン変性コポリマーが挙げられる。
【0111】
AELおよび/またはCELを形成するために使用される組成物に含まれてもよい市販の界面活性剤の例としては、Evonik industries GmbH製のTego Glide(商標)432、Tego Glide(商標)110、Tego Glide(商標)130、Tego Glide(商標)406、Tego Glide(商標)410、Tego Glide(商標)411、Tego Glide(商標)415、Tego Glide(商標)420、Tego Glide(商標)435、Tego Glide(商標)440、Tego Glide(商標)450、Tego Glide(商標)482、Tego Glide(商標)A115、Tego Glide(商標)B1484、およびTego Glide(商標)ZG400(すべて商品名である)が挙げられる。
【0112】
AEL組成物およびCEL組成物は、好ましくは、それぞれ独立して、0~10wt%、より好ましくは0~5wt%、特に1~2wt%のクレーター防止剤を含む(関連する組成物の総重量に対して)。
【0113】
好ましい実施形態において、バイポーラ膜は触媒を含む。触媒は、AEL組成物および/またはCEL組成物硬化性組成物中に含まれてもよい。たとえば、ディッピング、エアナイフコーティング、マイクロローラーコーティング、スプレー法、化学(蒸着)析出、または物理(蒸着)析出(しかしこれらに限定されない)を使用して、AELに触媒を適用することも可能である(後処理ステップとして)(たとえば、CEL組成物をそれに適用する前に)。
【0114】
好適な触媒の例は上述のとおりである。
AEL組成物またはCEL組成物が触媒を含む場合、触媒の量は好ましくは、関連する組成物の重量に対して、最大5wt%まで、たとえば、0.001wt%~1wt%である。
【0115】
バイポーラ膜は、
(i)支持体にAEL組成物を適用するステップと、
(ii)AEL組成物を少なくとも部分的に硬化させ、それによりアニオン交換層(AEL)を形成するステップと、
(iii)AELにCEL組成物を適用するステップと、
(iv)CEL組成物を硬化させ、それによりAEL上にカチオン交換層(CEL)を形成するステップと
を含む方法によって調製されてもよい。
【0116】
ステップ(ii)において、好ましくは、AEL組成物は、たとえば紫外線を使用して、光硬化される。したがって、好ましくは、AEL組成物の成分(d2)は光開始剤であるか、または光開始剤を含む。
【0117】
ステップ(ii)において、好ましくは、得られるAELがCEL組成物のモノマーへの架橋に利用可能である未反応のエチレン性不飽和基を依然として含みながら、硬化性組成物適用ステーションにおいて処理され得るような程度に、AEL組成物が硬化される。
【0118】
ステップ(iv)において、CEL組成物は好ましくは熱的に硬化される。したがって、好ましくは、CEL組成物の成分(d)は熱開始剤であるか、または熱開始剤を含む。
CEL組成物を硬化させるのに好適な温度は、50~120℃、より好ましくは50~100℃、特に60~85℃である。
【0119】
CEL組成物の熱硬化は典型的に、1分以上~数時間かかる。
任意に、CEL組成物は、存在する場合、成分(c)の蒸発を防止するためにポリマーフィルムの間にはさまれた後、硬化される。
【0120】
組成物は好ましくは、ステップ(i)およびステップ(iii)において、好ましくは、組成物適用ステーション、組成物が光硬化性である場合には照射源を備える1つまたは複数の硬化ステーション、組成物が熱硬化性である場合には1つまたは複数の熱源を備える1つまたは複数の硬化ステーション、バイポーラ膜回収ステーション、および組成物適用ステーションから硬化ステーションへとかつバイポーラ膜回収ステーションへと支持体を移動させるための手段を含む製造部によって、連続的に適用される。
【0121】
組成物適用ステーションは、硬化ステーションに対して上流の位置にあってもよく、硬化ステーションは、バイポーラ膜回収ステーションに対して上流の位置にあってもよい。
適用技法の例としては、スロットダイコーティング、スライドコーティング、エアナイフコーティング、ローラーコーティング、スクリーン印刷、およびディッピングが挙げられる。使用される技法および望ましい最終仕様に応じて、たとえば、ロールツーロールスクイーズ、ロールツーブレードもしくはブレードツーロールスクイーズ、ブレードツーブレードスクイーズ、またはコーティングバーを使用する除去によって、基材から過剰の組成物を除去することが必要となることがある。
【0122】
紫外線または可視光による光硬化は好ましくは、典型的に、40~1500mJ/cm2の間の光の線量を使用して、100nm~800nmの間の波長で実行される。熱硬化は好ましくは、20℃~100℃の間の温度で、たとえば、0.01時間~24時間の期間で実行される。
【0123】
バイポーラ膜の性能は、強度対電圧のプロットによって特徴付けられる。このプロットを測定するために、6室セルが使用された。第1の電極室は、カソードとして白金板を含有し、CEM(AstomからのCMX)によって第2室から分離された。電極室は、0.5M Na2SO4で満たされた。第2室と第3室との間に参照BPM(Fumatechから)が存在した。第2室および第3室の両方は、0.5M NaCl溶液を含有した。第3室と第4室との間に、分析されることになるBPMが配置された。第4室と第5室との間に同じ参照BPM(Fumatechから)が、第5室と第6室との間にCEM(AstomからのCMX)が、配置された。第4室および第5室も、0.5M NaCl溶液で満たされる。アノードとして白金板を含有する第6室は電極室であり、0.5M Na2SO4を含有した。
【0124】
上述のセルを使用して、溶液は、25℃の温度で、600A/m2電流密度を印加して、室を通って送り出された。バイポーラ電圧は、分析されることになるBPMの各側に配置されたハーバー・ルギン管を使用して測定された。
【実施例】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
誘導結合プラズマ原子発光分析法(ICP-OES)を使用して、調製した式(I)の化合物のリチウム含有量を定量した。Thermo Fisher ScientificからのThermo iCAP(商標)PRO XP ICP-OES器を使用して、ICP-OES分析を行った。サイクロンスプレーチャンバーと併せて、同軸ネブライザーを使用した。試験下の化合物をそれぞれおよそ50mg、50cm3のMilli-Q水に溶解させた。溶解させた化合物を100倍に希釈し、内部標準としてイットリウムを含有する0.5%濃縮硝酸を用いて酸性にした。すべての試料を2連で調製し、測定した。結果をモノマー1kg当たりLiのgとして表した。
【0129】
Magritek Spincolve 60 Carbon(60MHz、4回のスキャン)NMR分光計を使用して、1H-NMRによって、式(I)の化合物の構造を確認した。DMSO-d6に式(I)の化合物をそれぞれ5wt%、溶解することによって、分析のための試料を調製した。
【0130】
HPLC-MSによって、式(I)の化合物の純度を決定した。Watersの2Dテクノロジー搭載ACQUITY UPLC Systemを使用した。UPLCに2つのポンプ(BSMおよびQSM)、FTNサンプルマネージャー、カラムマネージャー、およびPDA検出器(400nmまで192)を備えつけた。Watersの、作動温度として45℃を使用するXbridge C8 5μm 2.1×150mmカラムをHPLCに備えつけた。さらに、Watersの、ESIおよびESCi イオン化オプションを有するQ-TOF premier質量分析計も機器に備えつけた。二重検出モードを使用してクロマトグラムを収集した。PDA検出器は245nmで信号を収集した。質量検出器を陰性モードに設定して、アニオン性分子を検出した。以下のとおり、式(I)の化合物を含有する試料を調製した。50mlのMilli-Q水に5mgの式(I)の化合物を溶解させた。得られた溶液をMilli-Q水で10倍に希釈し、10μlの体積を、上述のHPLC-MS器に分析のために注入した。
【0131】
表2は、表3に表される式(I)の化合物の試料を溶出するために採用される典型的な方法を示す。表3において、物質の同定のために記録された保持時間および分子量の概要が示される。
【0132】
【0133】
【0134】
視覚的にまたはUV分光分析によって、式(I)の化合物の溶解度を決定した。式(I)の化合物それぞれのために、モル比1:1の式(I)の化合物と架橋剤Li-BVBSIとを含有する3種の溶液を、1種の溶液は30wt%で、1種の溶液は60wt%で、および1種の溶液は70wt%で、調製した。500ppmの4OH-TEMPOは未成熟重合を防止するために3種の溶液すべてに含まれた。40℃の水浴中に溶液を一晩保持し、調査に先立って遠心分離した。Agilent TechnologiesからのCary(商標)100 UV-可視分光光度計において、1mmの経路長の石英キュベットを使用してUVスペクトルを記録した。
【0135】
【0136】
【0137】
表4に示されるものとは別の、比較のための実験において、リチウムスチレンスルホナート(LiSS)およびDVBS-Naを混合することによって達成される最も高い溶解度は、55wt%であることがわかった。さらに、表2に示される式(I)の化合物(式中、MはLiである)がDVBS-Naと合わされる場合、達成される溶解度は、すべての事例で少なくとも60wt%であった。表4に示される式(I)の化合物(式中、MはLiである)が、ビス-スルホンアミドファミリーからの架橋剤(たとえば、式(II)の)と合わされる場合、達成される最も高い溶解度は、70wt%を超える固形分に達した。
【0138】
以下の改変をしたDlugoleckiら、J.of Membrane Science、319(2008)、217~218ページによって説明される方法によって、実施例において調製されたポリマーフィルムのER(オーム.cm2)を測定した。
【0139】
・補助膜は、日本のTokuyama SodaからのCMXおよびAMXであった、
・キャピラリーおよびAg/AgCl参照電極(Metrohm型6.0750.100)は3M KClを含有した、
・キャリブレーション液および室2、室3、室4および室5中の液体は25℃で0.5M NaCl溶液であった、
・膜有効面積は、9.62cm2であった、
・キャピラリー間の距離は5.0mmであった、
・測定温度は25℃であった、
・イージーロードIIモデル77200-62ギアポンプを備えたCole Parmer Masterflexコンソールドライブ(77521-47)をすべての室のために使用した、
・各流れの流量は、Porter Instrument流量計(150AV-B250-4RVS型)およびCole Parmer流量計(G-30217-90型)によって制御されて、475ml/分であった、ならびに
・測定に先立って、試料をNaClの0.5M溶液中で、室温で少なくとも1時間、平衡させた。
【0140】
好ましくは、ER(0.5M NaClに関して)は、5オーム.cm2より低く、より好ましくは2.5オーム.cm2より低い。
選択透過性(PS)の測定
実施例において調製されたカチオン性に帯電した膜の電荷に対して反対の電荷のイオンの通過に対する選択性である選択透過性PS(%)を以下のとおり測定した。分析されることになる膜を2室システムに配置した。1室をNaOHの0.05M溶液で、他方をNaOHの0.5M溶液で満たす。
【0141】
設定:
・キャピラリーおよびAg/AgCl参照電極(Metrohm型6.0750.100)は3M KClを含有した、
・膜有効面積は、9.62cm2であった、
・キャピラリー間の距離は約15mmであった、
・測定温度は21.0±0.2℃であった、
・イージーロードIIモデル77200-62ギアポンプを備えたCole Parmer Masterflexコンソールドライブ(77521-47)を2つの室のために使用した、
・Porter Instrument流量計(150AV-B250-4RVS型)およびCole Parmer流量計(G-30217-90型)を使用して流れを500ml/分で一定に制御した、
・測定に先立って、試料を、0.5M NaOH溶液中で1時間、平衡させた。20分後、標準的なVOM(マルチテスター)から電圧を読み取った。
【0142】
好ましくは、NaOHに関するPSは少なくとも50%であった。
pH安定性
CEMが使用され得る用途の範囲を広くするため、酸性および/またはアルカリ性条件において安定であることが好ましい。安定性は典型的に、4MのHClまたはNaOH中に、80度で7日間、試料を浸漬することによって、試験される。この処理後、選択性は、安定であると判断されるためには、元の選択性の少なくとも80%であるべきである。
式(I)の化合物および比較化合物の調製
MM-Tf、MM-A、MM-P、およびMM-M(上で言及された)は、下記に示す構造を有した。
【0143】
【0144】
以下の一般スキームおよび手順に従って、化合物MM-Tf、MM-A、MM-P、およびMM-Mを合成した。
【0145】
【0146】
一般手順
合成の前に、対応するスルファミドを真空オーブンにおいて30℃で一晩乾燥させた。THF(100mL)中の、乾燥させたスルファミド(0.100mol、1moleq)と4OH-TEMPO(30mg、500ppm)との溶液に、LiH(0.300mol、3moleq)を固体として一度に加えた。反応混合物を30分間室温で撹拌した。次いで、THF(50mL)中のビニルベンジルスルホニルクロリド(0.100mol、1moleq)の溶液を加え、反応混合物を16時間、60℃(水浴温度)に加熱した。得られた溶液をCeliteでろ過し、得られた泡状物を500mLの酢酸エチルに溶解した。Celiteを加え、得られたスラリーを5分間撹拌した。次いで、Celiteをろ別し、100mLの酢酸エチルで洗浄した。次いで、真空中で溶媒を蒸発させ、得られた白色泡状物を500mLのジエチルエーテルで一晩破砕した。得られた式(i)の化合物をろ過によって回収し、白色吸湿性粉体として単離した。収量および純度に関するデータは下記の表5に示される。
【0147】
【0148】
組成物の実施例1~10、比較例CEx1~CEx4、およびポリマーフィルム
下記の表6は、本発明の第1の態様による実施例1~10の組成物および比較例CEx1~CEx4を説明する。組成物のそれぞれを重合して、強化のために100μmメイヤーバーを用いて、組成物をポリプロピレン/ポリエチレン多孔質支持体上にコーティングすることによって、100μm厚さのポリマーフィルムを形成した。0.5N NaClを使用して、得られたポリマーフィルムの電気抵抗ERを、上述のとおりの選択透過性(PS)を測定し、結果は表6の最後の列に示される。
【0149】
【0150】
【0151】
赤外分析
ダイヤモンドトッププレートを備えたUniversal ATR Sampling Accessoryを使用し、PerkinElmer Frontier FT-IR Spectrometerを使用して、ポリマーフィルムに関してATR-FTIRスペクトルを記録した。4cm-1のスペクトル分解能を用いて4000~580cm-1の範囲においてスペクトルを記録し、スペクトルを記録された10個のスペクトルについて平均化した。最適なピーク分解能のために、ポリマーフィルムの試料を、円すい形の先端部を有するATRダイヤモンドに押し付けた(力ゲージ、75)。実施例7および比較例CEx2に関する結果は下記の表8に示される。
【0152】
【0153】
表8から、1262、1151、1076、および1048での強いIRピークを使用して、ポリマーフィルム試料中のビスルホンイミド官能基をスルホン酸官能基から区別することができる。
抽出分析
ポリマーフィルムの重合度を分析し、ポリマーフィルム中の特許請求される物質の存在を示すために、精製水でポリマーフィルムの試料(50mLの精製水中に10cm2)を抽出し、その後、上述のHPLC-MS法において抽出液を分析した。
【0154】
【0155】
AELの調製
58wt%の1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン、1,4-ビス[(4-エテニルフェニル)メチル]-,クロリド、19wt%の水、6wt%のIPA、1wt%のOmnirad(商標)TPO-L、および1wt%のOmnirad(商標)1173を含有するAEL組成物を調製した。ポリエチレン不織布上にAEL組成物をコーティングし、UVによって硬化した。
BPMを製造するためのCELの調製およびAELへの適用
表7(実施例9および比較例CEx4)に従って、CEL組成物を調製した。上述のとおり調製されたAEL上に、CEL組成物をコーティングし、次いで、第2のポリエチレン不織布をCEL組成物の層上に配置し、過剰のCEL組成物をふき取って、UV光を使用してCEL組成物を硬化した。
【0156】
このバイポーラ膜の電気化学特性およびバイポーラ特徴を、印加される電圧の関数として電流密度が測定された、いわゆる電流-電圧特性(I-U曲線)を使用して、参照膜と比較した。典型的には、所与の電流密度、すなわち600mA/cm2を生成するのに必要とされる電圧(U)が低いほど、具体的にはイオン交換層のうちの一方または両方、および一般にバイポーラ膜のイオン抵抗性は低い。この場合においてはカチオン交換層の、低イオン抵抗性は、エネルギー効率がよりよい膜をもたらす。
【0157】
【国際調査報告】