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特表2023-545257膝蓋骨に対する置換術を計画するコンピュータ実装方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-27
(54)【発明の名称】膝蓋骨に対する置換術を計画するコンピュータ実装方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20231020BHJP
【FI】
A61B34/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519483
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 US2021054101
(87)【国際公開番号】W WO2022076773
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/089,847
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
2.BLUETOOTH
3.ZIGBEE
4.Linux
(71)【出願人】
【識別番号】502032219
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】510059882
【氏名又は名称】スミス・アンド・ネフュー・オルソペディクス・アーゲー
(71)【出願人】
【識別番号】519295384
【氏名又は名称】スミス・アンド・ネフュー・アジア・パシフィク・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリネスク タナソカ、ルクサンドラ クリスティアーナ
(72)【発明者】
【氏名】マッキノン、ブライアン ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ダックスベリー、エリザベス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ブルック、ラッセル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】モリソン、マーク エル.
(57)【要約】
患者に対する膝蓋骨置換を計画する方法が提供される。患者の解剖学的構造に関連する入力が受信され(例えば、人口統計学的情報)、撮像データが2D又は3D医療撮像から取得される。機械的軸及び術前の脚の変形を含む、膝蓋大腿関節の生体力学的測定値が決定される。入力に基づいて患者の解剖学的構造の3Dモデルが生成され、3Dモデルは膝蓋骨の形態に関して特徴付けられる。インプラントが、サイズ決定され、3Dモデルに適合され、インプラントの位置及び配向が、生体力学に基づいて最適化される。結果は、患者報告書又は外科手術計画として、コンピューティングデバイス及び/又は記憶媒体に出力される。膝蓋骨を追跡するためのトラッカユニットも提供される。トラッカユニットは、膝蓋骨を貫通するように構成された支持体と、追跡システムによる検出のための基準マーカと、を備える。
【選択図】図17A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の膝の膝蓋骨に対する置換術を計画するコンピュータ実装方法であって、前記方法が、
前記患者の解剖学的構造に関連する入力を受信することであって、前記入力が前記膝に関連する撮像データを含む、受信することと、
前記入力に基づいて、前記膝の膝蓋大腿関節の1つ以上の生体力学的測定値を決定することと、
前記入力に基づいて前記解剖学的構造の三次元(3D)モデルを生成することであって、前記3Dモデルが、膝蓋骨モデルを含む、生成することと、
前記3Dモデルに基づいて、前記膝蓋骨の形態を特徴付けることと、
前記3Dモデル及び前記形態のうちの1つ以上に基づいて、1つ以上のインプラントパラメータを選択することと、
前記1つ以上のインプラントパラメータに基づいて、1つ以上の生体力学的シミュレーションを実施することと、
前記1つ以上の生体力学的シミュレーションに基づいて、前記インプラントの位置及び配向を最適化することと、
外部コンピューティングデバイス及びコンピュータ可読記憶デバイスのうちの1つ以上に患者特異的計画情報を出力することであって、前記患者特異的計画情報が、前記最適化された位置及び前記最適化された配向に関連する、出力することと、を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記膝蓋骨モデル上の1つ以上の解剖学的目印を識別することを更に含み、
前記膝蓋骨の形態を特徴付けることが、前記1つ以上の解剖学的目印に更に基づいており、
1つ以上のインプラントパラメータを選択することが、前記1つ以上の解剖学的目印に更に基づいている、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記1つ以上の解剖学的目印が、内側極点、外側極点、上方極点、下方極点、前方極点、後方極点、下関節極点、膝蓋骨の重心、1つ以上の後方稜点、後方稜線、1つ以上の周囲点、内側ファセット中心点、外側ファセット中心点、ファセット軸、及び膝蓋骨中立点のうちの1つ以上を含む、請求項2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記入力が、前記患者の少なくとも祖先データを含む人口統計学的情報を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記撮像データが、X線撮像データ、MRI撮像データ、及びCT撮像データのうちの1つ以上を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記三次元モデルが、大腿骨モデル及び脛骨モデルのうちの1つ以上を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記大腿骨モデルに基づいて前記患者の大腿骨の特徴を評価することを更に含み、前記大腿骨の前記特徴が、滑車溝アライメント、滑車溝配向、滑車溝オフセット、及び滑車溝半径のうちの1つ以上を含む、請求項6に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記大腿骨モデル及び前記脛骨モデルに基づいて大腿四頭筋角度を決定することを更に含む、請求項6又は7に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記膝蓋骨の形態を特徴付けることが、Wiberg分類を前記膝蓋骨に割り当てることを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記1つ以上のインプラントパラメータが、インプラントファミリー、インプラントサイズ、インプラント厚さ、及びインプラント形状のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記1つ以上の生体力学的シミュレーションが、前記膝の動きの範囲にわたる前記膝の1つ以上の姿勢と関連付けられた生体力学的情報を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記生体力学的情報が、靭帯長さ及び靭帯歪みのうちの1つ以上を含み、
前記生体力学的情報が、内側側副靱帯及び外側側副靱帯のうちの1つ以上と関連付けられている、請求項11に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記患者特異的計画情報が、患者報告書、術前外科手術計画、及び術中外科手術計画のうちの1つ以上を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記術前外科手術計画が、患者特異的外科手術器具の3Dモデルを含む、請求項13に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
前記術中外科手術計画が、前記患者の前記膝蓋骨に対する計画された切除平面を含む、請求項13に記載のコンピュータ実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月9日出願の「Automatic Patellar Tracking in Total Knee Arthroplasty」と題された米国仮出願第63/089,847号に対する優先権の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、膝関節全置換術における膝蓋骨置換ワークフローを自動化するための方法、システム、及び装置に関する。より具体的には、本開示は、特定の患者の膝蓋骨インプラントの選択及び配置を最適化し、それによって外科医への認知負荷を低減し、術後の痛み又は合併症の可能性を低減するために、患者特異的様式で膝蓋骨を評価し、様々な計算を自動化するための方法、システム、及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
膝関節全置換術(TKA)は、インプラントを使用して膝関節を置換し、自己膝関節の機能を回復することを目的とする。米国では、年間、合計60万を超える膝関節全置換術が実施される。TKA(例えば、患者特異的器具(PSI)、大腿骨及び脛骨のカスタムメイド切断ガイド、大腿骨及び脛骨の術前テンプレートツール、及び外科手術ナビゲーションシステム)における大腿骨及び脛骨構成要素を正しく位置決め及び配向するための技術及びツールの開発に、広範な研究が集中してきた。
【0004】
従来的なTKA手技では、多くの場合、髄内(IM)大腿骨アライメントシステムが、脚のアライメントを改善するために使用される。遠位大腿骨切除は、慎重に計画され、遠位大腿骨切断ブロックを使用して実行される。特別な器具、サイズガイドは、大腿骨構成要素の回転アライメントを設定し、最適な大腿骨インプラントサイズを決定するために使用される。正確なサイズの前方/後方(A/P)切断ブロックが、精密な前方、後方、及び面取り切断を行うために使用される。脛骨切除では、同様の外科手術ステップは、慎重に計画し、近位脛骨を切除し、脛骨をサイズ決定し、回転アライメント及びバランスをチェックするために実施される。構成要素を試すことは、大腿骨及び脛骨構成要素の位置、並びに靭帯バランスをチェックするための重要なステップである。大腿骨及び脛骨の切除は、慎重に計画され、高度に専門化された器具を使用して実行され、アライメント及び靱帯バランスが、成功を確保するために各ステップで評価される。
【0005】
一方で、膝蓋骨置換に関する開発は限定されている。患者特異的器具及び他のスマート外科手術計画ツールなどの、TKA手技のための既存のツールは、典型的には、膝蓋骨の準備を含まない。更に、ロボット支援TKAの進歩は、正確なインプラントの位置決め、増加した可動域、より良好な軟部組織バランス、及び軟部組織整形外科に対する低減された損傷リスクを含む様々な利点を有するが、現在のロボット支援外科手術システムは、膝蓋骨追跡及び準備を実施しない。
【0006】
現在のところ、膝蓋骨置換のための好ましい外科手術技術は、膝蓋大腿関節の生体力学を標的にしないか、又は考慮しない、フリーハンド技術である。外科医は、典型的には、切断前及び切断後の膝蓋骨厚さを、比較的洗練されておらず、不正確なツールである、外科手術キャリパーを用いて一次元で測定する。更に、切断は、フリーハンドで実施され、外科医の技能及び経験に完全に依拠する。更に、膝蓋骨厚さを術中に測定することは、膝蓋骨の非常に可変的な形態及び複雑な形状に起因して、単純ではない。
【0007】
更に、従来的な知恵は、膝蓋骨が、オスの膝蓋骨について、およそ25mmの厚さに、メスの膝蓋骨について、22mmの厚さ(すなわち、白人集団における自己膝蓋骨厚さ)に回復されるべきであることを示唆している。多くの外科医は、膝蓋骨を「関節表面のすぐ下」で自由に切除し、約12~15mm未満の厚さに膝蓋骨を切断しないことを選好する。しかしながら、自己膝蓋骨の解剖学的構造は、集団間で大きく異なり得るため、多くの場合、外科手術計画において適切に考慮されない。膝関節に関する研究はまた、膝関節の生体力学に著しい影響を有し得る、自己解剖学的構造における大きなばらつきも報告している。西洋人集団の患者のために設計された現在の膝蓋骨インプラントは、他の祖先超母集団(例えば、アフリカ人、東アジア人、南アジア人、及び混血アメリカ人)間の差を適切に考慮していない場合がある。膝蓋骨は、中央隆起の厚さ、高さ/幅比、及び相対位置が異なり得、これらのばらつきは、膝蓋骨構成要素の選択、膝蓋大腿部の接触応力、及び滑車溝における膝蓋骨追跡に影響し得る。
【0008】
更に、膝蓋骨追跡(すなわち、位置及び配向)は、多くの場合、慎重に評価されず、大腿骨及び脛骨構成要素が正しく配置された場合に十分であると単純に想定される。膝蓋骨の誤配置は、膝蓋骨骨折、膝蓋骨クランク症候群、膝蓋大腿部の不安定性、膝蓋骨追跡不良(すなわち、膝蓋骨追跡障害)、膝蓋骨高位、膝蓋骨低位、及び膝蓋骨回転異常を含む、様々な術後の困難につながる可能性がある。これらのような膝蓋大腿部の合併症は、TKA手技後に前膝関節痛を結果的に生じさせ、臨床転帰及び患者の満足度に実質的な負の影響を有し得る。全体的に、TKA患者の20~30%は、慢性的疼痛及び/又は機能的限界に起因して、その転帰に満足していない。
【0009】
膝蓋骨置換に関する様々な困難、及びそれに対する洗練されたツールの欠如に起因して、膝蓋大腿関節の生体力学を適切に回復することは、外科医の技能及び経験に極めて依存する。外科医は、複雑な情報を同時に処理し、手術室内で複数の困難な決定を速やかに行う必要がある。膝蓋骨の切断は、適切な切断厚さ及び適切なインプラントサイズで計画され、実行されなければならず、膝蓋骨構成要素に対して設計が選択されなければならない。更に、膝蓋骨構成要素の最適な位置及び配向は、大腿骨及び脛骨構成要素の位置及び配向と併せて選択されなければならない。更に、膝蓋大腿関節の生体力学は、膝関節の正常な機能を回復させるために最適化され得る。膝蓋大腿部の解剖学的構造及び生体力学の複雑さを考慮すると、外科医がこれらの様々な計画決定を術中に最小限の入手可能な情報で行う必要がある場合、高リスクの膝蓋大腿部の合併症及び疼痛が存在する。したがって、外科医に対する高い認知負荷を低減し、ユーザの体験を自動化する必要性が存在する。
【0010】
膝蓋骨置換の計画及び実施の追加の困難は、膝蓋骨の固有の幾何学的形状から生じる。TKA中のロボット支援は、有利なことに、関節の生理機能及び機能の精密な測定を可能にするが、多くの場合、個々の骨上のトラッカの配置を必要とする術中追跡を利用する。膝蓋骨が小さく、奇妙な形状であるため、その上にトラッカを安全かつ確実な様式で配置することが特に困難である場合がある。説明されるように、現在の手技は、膝蓋大腿関節の生体力学を慎重に考慮することなく、膝蓋骨を切除するためのフリーハンド技術を利用する。
【0011】
そのため、術中の意思決定を効率化し、外科手術転帰を改善し、膝蓋大腿部の合併症のリスクを低減するために、膝蓋骨置換ワークフローを自動化する方法を提供することが有利であろう。加えて、ロボット外科手術システムによる膝蓋骨の術中追跡を容易にするために、膝蓋骨への取り付けに好適な追跡マーカを有することが有利であろう。
【発明の概要】
【0012】
患者の膝の膝蓋骨に対する置換術を計画する方法が提供される。方法は、患者の解剖学的構造に関連する入力を受信することであって、入力が膝に関連する撮像データを含む、受信することと、入力に基づいて、膝の膝蓋大腿関節の1つ以上の生体力学的測定値を決定することと、入力に基づいて解剖学的構造の三次元(3D)モデルを生成することであって、3Dモデルが、膝蓋骨モデルを含む、生成することと、3Dモデルに基づいて、膝蓋骨の形態を特徴付けることと、3Dモデル及び形態のうちの1つ以上に基づいて、1つ以上のインプラントパラメータを選択することと、1つ以上のインプラントパラメータに基づいて、1つ以上の生体力学的シミュレーションを実施することと、1つ以上の生体力学的シミュレーションに基づいて、インプラントの位置及び配向を最適化することと、外部コンピューティングデバイス及びコンピュータ可読記憶デバイスのうちの1つ以上に患者特異的計画情報を出力することであって、患者特異的計画情報が、最適化された位置及び最適化された配向に関連する、出力することと、を含む。
【0013】
一部の実施形態によると、方法は、膝蓋骨モデル上の1つ以上の解剖学的目印を識別することを更に含み、膝蓋骨の形態を特徴付けることが、1つ以上の解剖学的目印に更に基づいており、1つ以上のインプラントパラメータを選択することが、1つ以上の解剖学的目印に更に基づいている。追加の実施形態によると、1つ以上の解剖学的目印は、内側極点、外側極点、上方極点、下方極点、前方極点、後方極点、下関節極点のうちの1つ以上を含む。追加の実施形態によると、1つ以上の解剖学的目印は、膝蓋骨の重心、1つ以上の後方稜点、後方稜線、1つ以上の周囲点、内側ファセット中心点、外側ファセット中心点、ファセット軸、及び膝蓋骨中立点のうちの1つ以上を含む。
【0014】
一部の実施形態によると、入力は、患者の人口統計学的情報を含む。追加の実施形態によると、人口統計学的情報は、患者の祖先データを含む。
【0015】
一部の実施形態によると、撮像データは、X線撮像データ、MRI撮像データ、及びCT撮像データのうちの1つ以上を含む。
【0016】
一部の実施形態によると、三次元モデルは、大腿骨モデル及び脛骨モデルのうちの1つ以上を更に含む。追加の実施形態によると、方法は、大腿骨モデルに基づいて患者の大腿骨の特徴を評価することを更に含み、大腿骨の特徴は、滑車溝アライメント、滑車溝配向、滑車溝オフセット、及び滑車溝半径のうちの1つ以上を含む。追加の実施形態によると、方法は、大腿骨モデル及び脛骨モデルに基づいて大腿四頭筋角度を決定することを更に含む。
【0017】
一部の実施形態によると、膝蓋骨の形態を特徴付けることは、Wiberg分類を膝蓋骨に割り当てることを含む。
【0018】
一部の実施形態によると、1つ以上のインプラントパラメータは、インプラントファミリー、インプラントサイズ、インプラント厚さ、及びインプラント形状のうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
一部の実施形態によると、1つ以上のインプラントパラメータは、過去の患者データ及び経験的データのうちの少なくとも1つに基づいて選択され、過去の患者データ及び経験的データのうちの少なくとも1つは、人種データを含む。
【0020】
一部の実施形態によると、1つ以上の生体力学的シミュレーションは、膝の動きの範囲にわたる膝の1つ以上の姿勢と関連付けられた生体力学的情報を含む。追加の実施形態によると、生体力学的情報は、靭帯長さ及び靭帯歪みのうちの1つ以上を含む。更なる実施形態によると、生体力学的情報は、内側側副靱帯及び外側側副靱帯のうちの1つ以上と関連付けられている。
【0021】
一部の実施形態によると、患者特異的計画情報は、患者報告書、術前外科手術計画、及び術中外科手術計画のうちの1つ以上を含む。追加の実施形態によると、術前外科手術計画が、患者特異的外科手術器具の3Dモデルを含む。追加の実施形態によると、術中外科手術計画は、患者の膝蓋骨に対して計画された切除平面を含む。
【0022】
患者の膝の膝蓋骨に対する置換術を計画するためのシステムが提供される。システムは、プロセッサと、命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体と、を備え、命令は、実行されたときに、プロセッサに、患者の解剖学的構造に関連する入力を受信することであって、入力が膝に関連する撮像データを含む、受信することと、入力に基づいて、膝の膝蓋大腿関節の1つ以上の生体力学的測定値を決定することと、入力に基づいて解剖学的構造の三次元(3D)モデルを生成することであって、3Dモデルが、膝蓋骨モデルを含む、生成することと、3Dモデルに基づいて、膝蓋骨の形態を特徴付けることと、3Dモデル及び形態のうちの1つ以上に基づいて、1つ以上のインプラントパラメータを選択することと、1つ以上のインプラントパラメータに基づいて、1つ以上の生体力学的シミュレーションを実施することと、1つ以上の生体力学的シミュレーションに基づいて、インプラントの位置及び配向を最適化することと、外部コンピューティングデバイス及びコンピュータ可読記憶デバイスのうちの1つ以上に患者特異的計画情報を出力することであって、患者特異的計画情報が、最適化された位置及び最適化された配向に関連する、出力することと、を行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付の図面は、本発明の実施形態を示し、記述とともに、本発明の原理、特性、及び特徴を説明するのに役立つ。図面において、
【0024】
図1】一実施形態による、例示のコンピュータ支援外科手術システム(CASS)を含む、手術室を示している。
図2】一部の実施形態による、電磁センサデバイスの例を示している。
図3A】一部の実施形態による、3つの垂直コイルを有する、電磁センサデバイスの代替例を示している。
図3B】一部の実施形態による、2つの非平行な固定されたコイルを有する、電磁センサデバイスの代替例を示している。
図3C】一部の実施形態による、2つの非平行な別個のコイルを有する、電磁センサデバイスの代替例を示している。
図4】一部の実施形態による、電磁センサデバイス及び患者の骨の例を示している。
図5A】一実施形態による、外科手術コンピュータがCASSの他の構成要素に提供する、例示の制御命令を示している。
図5B】一実施形態による、CASSの構成要素が外科手術コンピュータに提供する、例示の制御命令を示している。
図5C】一実施形態による、外科手術コンピュータがネットワークを介して外科手術データサーバに接続されている、例示の実装形態を示している。
図6】一実施形態による、手術患者ケアシステム及び例示のデータソースを示している。
図7A】一実施形態による、術前外科手術計画を決定するための例示のフロー図を示している。
図7B】一実施形態による、術前、術中、及び術後の動作を含む、ケアのエピソードを決定するための例示のフロー図を示している。
図7C-1】一実施形態による、インプラント配置を示す画像を含む、例示のグラフィカルユーザインターフェースを示している。
図7C-2】一実施形態による、インプラント配置を示す画像を含む、例示のグラフィカルユーザインターフェースを示している。
図7C-3】一実施形態による、インプラント配置を示す画像を含む、例示のグラフィカルユーザインターフェースを示している。
図8】一実施形態による、患者に対する膝蓋骨置換を計画する例示の方法を示している。
図9A】一実施形態による、識別された膝蓋骨目印を有する膝蓋骨の3Dモデルの正面図及び側面図を示している。
図9B】一実施形態による、識別された膝蓋骨目印を有する膝蓋骨の3Dモデルの正面図及び側面図を示している。
図10A】一実施形態による、識別された膝蓋骨測定値を有する膝蓋骨の3Dモデルの正面図及び側面図を示している。
図10B】一実施形態による、識別された膝蓋骨測定値を有する膝蓋骨の3Dモデルの正面図及び側面図を示している。
図11A】一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデル上の例示の後方稜点のセットの正面図及び側面図を示している。
図11B】一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデル上の例示の後方稜点のセットの正面図及び側面図を示している。
図12A】一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデル上の内側及び外側のファセット点及びファセット軸の対向する図を示している。
図12B】一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデル上の内側及び外側のファセット点及びファセット軸の対向する図を示している。
図13】一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデル上のおよその内側及び外側平面を示している。
図14A】一実施形態による、大腿骨の3Dモデルに沿って識別された溝点を示している。
図14B】一実施形態による、膝関節の3Dモデル上で識別された大腿骨近位目印、膝蓋骨の中心、及び脛骨結節目印を示している。
図15A】一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデルの中立点に整列された膝蓋骨インプラントモデルの中立点の側面図及び正面図を示している。
図15B】一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデルの中立点に整列された膝蓋骨インプラントモデルの中立点の側面図及び正面図を示している。
図16A】一実施形態による、インプラントモデルの位置に基づく、膝蓋骨の切除された3Dモデルの側面図及び正面図を示している。
図16B】一実施形態による、インプラントモデルの位置に基づく、膝蓋骨の切除された3Dモデルの側面図及び正面図を示している。
図17A】一実施形態による、切除された3Dモデル上のインプラントモデルの最終的な適合の側面図及び正面図を示している。
図17B】一実施形態による、切除された3Dモデル上のインプラントモデルの最終的な適合の側面図及び正面図を示している。
図18】一実施形態による、動きの範囲にわたる膝の生体力学を表示する分析応答表面を示している。
図19】例示の実施形態の特徴が実装される、例示のデータ処理システムのブロック図を例示している。
図20】一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデルを自動的に目印付けするための例示のワークフローを示している。
図21】一実施形態による、膝蓋骨を追跡するためのトラッカユニットを示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、記載される特定のシステム、デバイス、及び方法に限定されるものではない。これは、これらが変化し得るためである。説明の中で使用される用語は、特定の変形例又は実施形態のみを記載する目的で使用されるものであり、範囲を限定することを意図するものではない。
【0026】
本文書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の参照を含む。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本開示内のいかなるものも、本開示に説明される実施形態が、先行発明により、かかる開示に先立つ権利が与えられていないことを認めるものとして解釈されるべきではない。本文書で使用される場合、「備える(comprising)」という用語は、「含むが、これらに限定されない(including, but not limited to)」ことを意味する。
【0027】
定義
本開示の目的のために、用語「インプラント」は、生物学的構造を置換又は強化するために製造された人工デバイス又は構造を指すために使用される。例えば、人工寛骨臼カップ(インプラント)は、人工股関節全置換術において、患者の摩耗又は損傷した寛骨臼を置換又は強化するために使用される。用語「インプラント」は一般に人工構造(移植とは対照的)を示すものとみなされるが、本明細書の目的では、インプラントは、生物学的構造を置換又は強化するために移植された生物学的組織又は材料を含み得る。
【0028】
本開示の目的のために、用語「リアルタイム」は、イベントが発生したか、又は動作可能なシステムによって入力が受信されたときに、その場で実施される計算又は動作を指すために使用される。しかしながら、用語「リアルタイム」の使用は、レイテンシが機械の性能特性によって引き起こされる意図しない結果である限り、入力と応答との間にある程度のレイテンシを引き起こす動作を排除することを意図するものではない。
【0029】
本開示の多くは、特定の職位又は役割による外科医又はその他の医療専門家を指すが、本開示のいかなるものも、特定の職位又は機能に限定されることを意図していない。外科医又は医療専門家には、いずれの医師、看護師、医療専門家、又は技師も含めることができる。これらの用語又は職位のいずれも、別段の明示的な指定がない限り、本明細書に開示されるシステムのユーザと互換的に使用することができる。例えば、外科医への言及は、一部の実施形態では、技師又は看護師にも適用され得る。
【0030】
CASSエコシステムの概要
図1は、一部の実施形態による、例示のコンピュータ支援外科手術システム(CASS)100の図を提供している。以下のセクションで更に詳細に説明するように、CASSは、コンピュータ、ロボット工学、及び撮像技術を使用して、外科医が人工膝関節全置換術(TKA)又は人工股関節全置換術(THA)などの整形外科手術を実施することを助ける。例えば、外科手術ナビゲーションシステムは、外科医が患者の解剖学的構造を見つけ、外科手術器具を誘導し、高度な精度で医療デバイスを移植することを助けることができる。CASS100などの外科手術ナビゲーションシステムは、多くの場合、様々な形態のコンピューティング技術を採用して、幅広い標準及び低侵襲の外科手術手技及び技術を実施する。更に、これらのシステムは、外科医が、患者の身体に対する器具及びインプラントの配置をより正確に計画、追跡、及びナビゲートすること、並びに術前及び術中の身体撮像を行うことを可能にする。
【0031】
エフェクタプラットフォーム105は、手術中に患者に対して外科手術ツールを位置決めする。エフェクタプラットフォーム105の正確な構成要素は、採用される実施形態に応じて変化するであろう。例えば、膝の手術については、エフェクタプラットフォーム105は、使用中に外科手術ツール又は器具を保持する、エンドエフェクタ105Bを含み得る。エンドエフェクタ105Bは、外科医が使用する手持ち式デバイス又は器具(例えば、NAVIO(登録商標)のハンドピース又は切断ガイド若しくはジグ)であり得、代替的に、エンドエフェクタ105Bは、ロボットアーム105Aによって保持又は位置決めされるデバイス又は器具を含み得る。1つのロボットアーム105Aが図1に示されているが、一部の実施形態では、複数のデバイスが存在し得る。実施例として、手術テーブルTの両側にロボットアーム105Aが1つ、又はテーブルTの一方の側に2つのデバイスがあり得る。ロボットアーム105Aは、テーブルTに直接的に装着されるか、フロアプラットフォーム(図示せず)上のテーブルTの隣に位置するか、床から天井までのポール上に装着されるか、又は手術室の壁若しくは天井に装着され得る。フロアプラットフォームは、固定され得、又は移動可能であり得る。1つの特定の実施形態では、ロボットアーム105Aは、患者の脚又は足の間に位置する、床から天井までのポール上に装着される。一部の実施形態では、エンドエフェクタ105Bは、創傷の閉鎖を補助するための縫合ホルダ又はステープラを含み得る。更に、2つのロボットアーム105Aの場合、外科手術コンピュータ150は、ロボットアーム105Aを駆動して、閉鎖時に創傷を縫合するために協働することができる。代替的に、外科手術コンピュータ150は、閉鎖時に創傷をステープルで留めるために、1つ以上のロボットアーム105Aを駆動し得る。
【0032】
エフェクタプラットフォーム105は、手術中に患者の肢を位置決めするための肢位置決め器105Cを含み得る。肢位置決め器105Cの一例は、SMITH AND NEPHEW SPIDER2システムである。肢位置決め器105Cは、外科医によって手動で操作されてもよく、又は代替的に、外科手術コンピュータ150(以下に説明される)から受信した命令に基づいて肢位置を変更してもよい。1つの肢位置決め器105Cが図1に示されているが、一部の実施形態では、複数のデバイスが存在し得る。実施例として、手術テーブルTの両側に肢位置決め器105Cが1つ、又はテーブルTの一方の側に2つのデバイスがあり得る。肢位置決め器105Cは、テーブルTに直接的に装着されるか、フロアプラットフォーム(図示せず)上のテーブルTの隣に位置するか、ポール上に装着されるか、又は手術室の壁若しくは天井に装着され得る。一部の実施形態では、肢位置決め器105Cは、リトラクタ又は特定の骨ホルダなどの非従来的な方法で使用され得る。肢位置決め器105Cは、例として、足首ブーツ、軟部組織クランプ、骨クランプ、又はフックされた、湾曲した、若しくは角度の付いたブレードなどの軟部組織のリトラクタスプーンを含み得る。一部の実施形態では、肢位置決め器105Cは、創傷の閉鎖を補助するための縫合ホルダを含み得る。
【0033】
エフェクタプラットフォーム105は、軸若しくは平面、気泡レベル、ピンドライバ、ピンプラー、平面チェッカ、ポインタ、指、又はそれらのいくつかの組み合わせを示すための、ドライバ、光、又はレーザなどのツールを含み得る。
【0034】
切除装置110(図1には図示せず)は、例えば、機械的、超音波、又はレーザ技術を使用して、骨又は組織切除を行う。切除装置110の例としては、ドリルデバイス、バリ取りデバイス、振動ソーイングデバイス、振動衝突デバイス、リーマ、超音波骨切断デバイス、無線周波数アブレーションデバイス、往復運動デバイス(擦り傷又はブローチなど)、及びレーザアブレーションシステムが挙げられる。一部の実施形態では、切除装置110は、手術中に外科医によって保持及び操作される。他の実施形態では、エフェクタプラットフォーム105は、使用中に切除装置110を保持するために使用され得る。
【0035】
エフェクタプラットフォーム105はまた、手術中に組織を切除するために使用されるソー又はドリルを誘導するために使用される、切断ガイド又はジグ105Dを含み得る。こうした切断ガイド105Dは、エフェクタプラットフォーム105若しくはロボットアーム105Aの一部として一体的に形成され得、又は切断ガイドは、エフェクタプラットフォーム105若しくはロボットアーム105Aに嵌合及び/若しくは取り外し可能に取り付けられ得る、別個の構造であり得る。エフェクタプラットフォーム105又はロボットアーム105Aは、CASS100によって制御されて、術前又は術中に開発された外科手術計画に従って、患者の解剖学的構造に隣接して切断ガイド又はジグ105Dを位置決めし、その結果、切断ガイド又はジグは、外科手術計画に従って正確な骨切断を生成することになる。
【0036】
追跡システム115は、1つ以上のセンサを使用して、患者の解剖学的構造及び外科手術器具を特定する、リアルタイム位置データを収集する。例えば、TKA手技については、追跡システムは、手技中にエンドエフェクタ105Bの場所及び配向を提供し得る。位置データに加えて、追跡システム115からのデータを更に使用して、ツール制御に使用され得る解剖学的構造/計測の速度/加速を推測することができる。一部の実施形態では、追跡システム115は、エンドエフェクタ105Bに取り付けられたトラッカアレイを使用して、エンドエフェクタ105Bの場所及び配向を決定し得る。エンドエフェクタ105Bの位置は、追跡システム115の位置及び配向、並びに追跡システム115とエンドエフェクタ105Bとの間の三次元空間における既知の関係に基づいて推測され得る。本発明の様々な実施形態で、様々なタイプの追跡システムが使用されてもよく、これには、赤外線(IR)追跡システム、電磁(EM)追跡システム、ビデオ又は画像ベースの追跡システム、並びに超音波登録及び追跡システムが含まれるが、これらに限定されない。追跡システム115によって提供されるデータを使用して、外科手術コンピュータ150は、物体を検出し、衝突を防止することができる。例えば、外科手術コンピュータ150は、ロボットアーム105Aが軟部組織と衝突することを防止することができる。
【0037】
任意の好適な追跡システムを使用して、外科手術空間内の外科手術対象及び患者の解剖学的構造を追跡することができる。例えば、IRカメラと可視光カメラとの組み合わせを、アレイで使用することができる。IR LED光源などの様々な照明源が、シーンを照明して、三次元撮像を可能にすることができる。一部の実施形態では、これは、立体視、三鏡、四面視などの撮像を含み得る。一部の実施形態では、カートに固定されたカメラアレイに加えて、追加のカメラは、外科手術空間全体にわたって配置され得る。例えば、手持ち式ツール又はオペレータ/外科医が着用するヘッドセットは、画像を中央プロセッサに通信して、それらの画像をカメラアレイによって捕捉された画像と相関させる、撮像能力を含み得る。これにより、複数の視点を使用したモデリングのための環境のより堅牢な画像が得られ得る。更に、一部の撮像デバイスは、好適な解像度であり得、又は、クイック応答(QR)コード若しくはバーコードに記憶された情報を捕捉するために、シーンに対して好適な視点を有し得る。これは、システムに手動で登録されていない特定の物体を識別するのに役立ち得る。一部の実施形態では、カメラは、ロボットアーム105A上に装着され得る。
【0038】
しかし、本明細書で論じるように、追跡及び/又はナビゲーション技術の大部分は、画像ベースの追跡システム(例えば、IR追跡システム、ビデオ又は画像ベースの追跡システムなど)を利用する。しかしながら、電磁(EM)ベースの追跡システムは、様々な理由からより一般的になりつつある。例えば、標準的な光学トラッカの移植には、組織切除(例えば、皮質まで)、並びにそれに続く皮質ピンのドリル加工及び駆動が必要である。更に、光学トラッカは、追跡システムとの直接の照準線を必要とするため、こうしたトラッカの配置は、外科医又は医療従事者の動きを制限しないようにするために、外科手術部位から遠く離れている必要がある場合がある。
【0039】
一般に、EMベースの追跡デバイスは、1つ以上のワイヤコイル及び参照フィールドジェネレータを含む。1つ以上のワイヤコイルは、(例えば、有線又は無線電源を介して)通電され得る。通電されると、コイルは、1つ以上のワイヤコイルの場所及び配向を決定することを可能にする様式で、(例えば、参照フィールドジェネレータ又は追加のデバイスによって)検出及び測定され得る、電磁場を生成する。当業者であれば理解するように、図2に示すような単一のコイルは、合計5つの(5)自由度(DOF)の検出に限定される。例えば、センサ200は、X、Y、又はZ方向の動き、並びにY軸202又はZ軸201の周りの回転を追跡/決定することが可能であり得る。しかしながら、コイルの電磁特性のため、X軸の周りの回転運動を適切に追跡することはできない。
【0040】
したがって、ほとんどの電磁追跡用途では、図3Aに示すような3つのコイルシステムを使用して、三次元空間(すなわち、前方/後方310、上/下320、左/右330、ロール340、ピッチ350、及びヨー360)内で剛体が移動することを可能にする、6つの自由度全てにおける追跡が可能になる。しかしながら、2つの追加のコイル及びそれらが位置決めされる90°のオフセット角度の包含は、追跡デバイスをはるかに大きくする必要がある場合がある。代替的に、当業者が知っているように、6DOFの全てを追跡するために、3つ未満の完全なコイルを使用し得る。一部のEMベースの追跡デバイスでは、図3Bに示すように、2つのコイルが互いに固定され得る。2つのコイル301B及び302Bは、完全に平行ではなく、互いに強固に固定され、互いに対して既知の場所を有するため、この配置で第6の自由度303Bを決定することができる。
【0041】
2つの固定されたコイル(例えば、301B及び302B)の使用は、6DOFにおけるEMベースの追跡を可能にするが、センサデバイスは、追加のコイルのために単一のコイルよりも実質的に直径が大きい。したがって、外科手術環境でEMベースの追跡システムを使用する実用的な適用は、EMトラッカの挿入を可能にするために、患者の骨の一部分の組織切除及びドリル加工を必要とし得る。代替的に、一部の実施形態では、ピンのみを使用して(例えば、実質的な骨をドリル加工する、又は切り出す必要なく)、単一のコイル又は5DOF EM追跡デバイスを患者の骨に移植/挿入することが可能であり得る。
【0042】
したがって、本明細書に説明されるように、EM追跡システムの使用を、小直径の針又はピンを使用して挿入/埋め込むのに十分なほど小さい(すなわち、骨内に新しい切開又は大直径の開口部を作成する必要なく)デバイスに制限され得るソリューションが必要である。したがって、一部の実施形態では、第1のものに取り付けられず、したがって、小さい直径を有する第2の5DOFセンサが、全ての6DOFを追跡するために使用され得る。ここで図3Cを参照すると、一部の実施形態では、2つの5DOF EMセンサ(例えば、301C及び302C)は、異なる場所及び異なる角度配向(例えば、角度303Cはゼロではない)で、患者(例えば、患者の骨)に挿入され得る。
【0043】
次に図4を参照すると、例示の実施形態が示されており、第1の5DOF EMセンサ401及び第2の5DOF EMセンサ402が、大部分のORで典型的である標準的な中空針405を使用して、患者の骨403に挿入される。更なる実施形態では、第1のセンサ401及び第2のセンサ402は、角度オフセット「α」404を有し得る。一部の実施形態では、オフセット角度「α」404が所定の値(例えば、0.50°、0.75°などの最小角度)よりも大きいことが、必要であり得る。この最小値は、一部の実施形態では、CASSによって決定され、外科手術計画中に外科医又は医療専門家に提供され得る。一部の実施形態では、最小値は、例えば、追跡システムの配向正確度、第1のEMセンサと第2のEMセンサとの間の距離、フィールドジェネレータの場所、フィールド検出器の場所、EMセンサのタイプ、EMセンサの品質、患者の解剖学的構造などの、1つ以上の因子に基づいてもよい。
【0044】
したがって、本明細書で論じるように、一部の実施形態では、ピン/針(例えば、カニューレ状装着針など)を使用して、1つ以上のEMセンサを挿入し得る。一般に、ピン/針は、使い捨ての構成要素であり、一方で、センサ自体は、再利用可能であり得る。しかしながら、これは1つの潜在的なシステムであり、ピン/針及び/又はEMセンサが独立して使い捨て可能又は再利用可能な様々な他のシステムが使用されてもよいことが理解されるべきである。更なる実施形態では、EMセンサは、(例えば、ルアーロック取り付け具などを使用して)装着針/ピンに固定されてもよく、これにより、迅速な組み立て及び分解が可能となり得る。追加の実施形態において、EMセンサは、センサの低侵襲的配置を可能にする、代替的なスリーブ及び/又はアンカーシステムを利用し得る。
【0045】
別の実施形態では、上記システムは、電磁追跡システムを悩ませる視野歪みを検出及び修正することができる、マルチセンサナビゲーションシステムを可能にし得る。視野歪みは、参照視野内の任意の強磁性材料の移動から生じる場合があることが理解されるべきである。したがって、当業者であれば分かるように、典型的なORは、干渉を引き起こし得る多数のデバイス(例えば、手術台、LCDディスプレイ、照明装置、撮像システム、外科手術器具など)を有する。更に、視野歪みは、検出が著しく困難であると知られている。複数のEMセンサの使用は、システムが、視野歪みを正確に検出すること、及び/又は現在の位置測定値が正確ではない場合があることをユーザに警告することを可能にする。センサは骨の解剖学的構造に(例えば、ピン/針を介して)強固に固定されるため、センサ位置(X、Y、Z)の相対測定を使用して、視野歪みを検出し得る。非限定的な例として、一部の実施形態では、EMセンサが骨に固定された後、2つのセンサ間の相対距離は既知であり、一定に保たれるべきである。したがって、この距離の任意の変化は、視野歪みの存在を示し得る。
【0046】
一部の実施形態では、特定の物体は、外科医によって、システムに術前又は術中に手動で登録され得る。例えば、ユーザインターフェースと相互作用することによって、外科医は、ツール又は骨構造の開始場所を識別し得る。そのツール若しくは骨構造と関連付けられた基準マークを追跡することによって、又は他の従来的な画像追跡モダリティを使用することにより、プロセッサは、三次元モデルにおいて、そのツール又は骨が環境を移動する際に、そのツール又は骨を追跡し得る。
【0047】
一部の実施形態では、空間内の個人、重要なツール、又は骨を識別する、基準マークなどの特定のマーカは、追跡システムと関連付けられたカメラ又はカメラアレイによってピックアップされ得る、受動的又は能動的識別子を含み得る。例えば、IR LEDは、固有の識別子をそのパターンのソースに伝達するパターンを点滅させ、動的識別マークを提供することができる。同様に、一次元又は二次元の光学コード(バーコード、QRコードなど)を空間内の物体に貼り付けて、画像分析に基づいて発生し得る受動的識別を提供することができる。これらのコードが、物体上に非対称に配置される場合、これらのコードはまた、識別子の場所を画像中の物体の範囲と比較することによって、物体の配向を決定するために使用され得る。例えば、QRコードは、ツールトレーの隅に配置されてもよく、そのトレーの配向及び識別性を追跡することができる。他の追跡モダリティは、全体で説明されている。例えば、一部の実施形態では、拡張現実ヘッドセットは、外科医及び他のスタッフによって着用されて、追加のカメラ角度及び追跡能力を提供することができる。
【0048】
光学的追跡に加えて、物体の物理的特性を登録し、ツール又は骨に固定された基準マークなどの追跡可能な物体と関連付けることによって、物体の特定の特徴を追跡することができる。例えば、外科医は、追跡されたツール及び追跡された骨が、互いに対して操作され得る、手動登録プロセスを実施し得る。ツールの先端を骨の表面に対して押し付けることによって、その基準マークの参照フレームに対する位置及び配向と関連付けられたその骨に対して、三次元表面をマッピングすることができる。その骨と関連付けられた基準マークの位置及び配向(ポーズ)を光学的に追跡することによって、その表面のモデルを、外挿を介して環境とともに追跡することができる。
【0049】
CASS100を患者の関連する解剖学的構造に登録する登録プロセスにはまた、骨又は軟骨上の目印などの解剖学的目印の使用を伴うことができる。例えば、CASS100は、関連する骨又は関節の3Dモデルを含み得、外科医は、CASSに接続されたプローブを使用して、患者の実際の骨上の骨の目印の場所に関するデータを術中に収集し得る。骨の目印には、例えば、内果及び外果、近位大腿骨及び遠位脛骨の端、並びに股関節の中心が含まれ得る。CASS100は、プローブで外科医が収集した骨の目印の場所データを、3Dモデル内の同じ目印の場所データと比較し、登録することができる。代替的に、CASS100は、術前画像データなしで、骨の目印の場所データ、及びCASSプローブ又は他の手段を使用して外科医によって収集される骨表面を使用して、骨又は関節の3Dモデルを構築し得る。登録プロセスはまた、関節の様々な軸を決定することを含み得る。例えば、TKAについては、外科医は、CASS100を使用して、大腿骨及び脛骨の解剖学的軸及び機械的軸を決定することができる。外科医及びCASS100は、患者の脚をらせん状方向に移動させること(すなわち、外転)によって、股関節の中心を識別し、それにより、CASSは股関節の中心がどこに位置するかを決定することができる。
【0050】
組織ナビゲーションシステム120(図1には示されていない)は、外科医に、外科手術領域を囲む患者の骨、軟骨、筋肉、神経、及び/又は血管組織の術中のリアルタイムの可視化を提供する。組織ナビゲーションに採用され得るシステムの例には、蛍光撮像システム及び超音波システムが含まれる。
【0051】
ディスプレイ125は、組織ナビゲーションシステム120によって収集された画像、並びに手術に関連するその他の情報を表示する、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を提供する。例えば、一実施形態では、ディスプレイ125は、術前又は術中に収集された様々なモダリティ(例えば、CT、MRI、X線、蛍光、超音波など)から収集された画像情報をオーバーレイして、外科医に患者の解剖学的構造及びリアルタイム状態の様々なビューを与える。ディスプレイ125は、例えば、1つ以上のコンピュータモニタを含み得る。ディスプレイ125の代替又は補足として、外科手術スタッフの1人以上のメンバーは、拡張現実(AR)ヘッドマウントデバイス(HMD)を着用してもよい。例えば、図1では、外科医111は、例えば、患者に術前画像データをオーバーレイするか、又は外科手術計画の提案を提供し得る、AR HMD155を着用している。外科手術手技におけるAR HMD155の様々な例示の使用は、以下のセクションで詳述される。
【0052】
外科手術コンピュータ150は、CASS100の様々な構成要素に対する制御命令を提供し、それらの構成要素からデータを収集し、手術中に必要とされる様々なデータに対する一般的な処理を提供する。一部の実施形態では、外科手術コンピュータ150は、汎用コンピュータである。他の実施形態では、外科手術コンピュータ150は、複数の中央処理ユニット(CPU)又はグラフィック処理ユニット(GPU)を使用して処理を行う、並列コンピューティングプラットフォームであり得る。一部の実施形態では、外科手術コンピュータ150は、1つ以上のコンピュータネットワーク(例えば、インターネット)を介してリモートサーバに接続される。リモートサーバは、例えば、データの記憶又は計算集約型処理タスクの実行のために使用され得る。
【0053】
外科手術コンピュータ150をCASS100の他の構成要素に接続するために、当技術分野で一般的に知られている様々な技術を使用することができる。更に、コンピュータは、技術の組み合わせを使用して外科手術コンピュータ150に接続し得る。例えば、エンドエフェクタ105Bは、有線(すなわち、シリアル)接続を介して外科手術コンピュータ150に接続し得る。追跡システム115、組織ナビゲーションシステム120、及びディスプレイ125は、同様に有線接続を使用して外科手術コンピュータ150に接続され得る。代替的に、追跡システム115、組織ナビゲーションシステム120、及びディスプレイ125は、限定されないが、Wi-Fi、Bluetooth、近距離無線通信(NFC)、又はZigBeeなどの無線技術を使用して、外科手術コンピュータ150に接続し得る。
【0054】
電動式衝突及び寛骨臼リーマデバイス
図1に関して上述したCASS設計の柔軟性の一部は、特定の外科手術手技をサポートするために必要に応じて、追加的又は代替的なデバイスをCASS100に追加することができることである。例えば、股関節の外科手術の文脈において、CASS100は、電動式衝突デバイスを含み得る。衝突デバイスは、外科医がインプラントアライメントなどの活動を行うために使用することができる衝突力を反復して印加するように設計される。例えば、人工股関節全置換術(THA)では、外科医は多くの場合、衝突デバイスを使用して、人工寛骨臼カップをインプラント宿主の寛骨臼内に挿入する。衝突デバイスは、本質的には手動(例えば、外科医がマレットでインパクタに当てて操作する)であるが、電動式衝突デバイスは概して、外科手術設定でより簡単でより速く使用できる。電動式衝突デバイスは、例えば、デバイスに取り付けられた電池を使用して給電され得る。様々な取り付け部品が、手術中に必要に応じて、様々な方法で衝突力が方向付けされるように、電動式衝突デバイスに接続され得る。また、股関節外科手術の文脈において、CASS100は、寛骨臼カップインプラントを収容するために寛骨臼をリーミングする、電動のロボット制御式エンドエフェクタを含み得る。
【0055】
ロボット支援THAでは、患者の解剖学的構造は、CT又は他の画像データ、解剖学的目印の識別、患者の骨に取り付けられたトラッカアレイ、及び1つ以上のカメラを使用して、CASS100に登録され得る。トラッカアレイは、クランプ及び/又は骨ピンを使用して腸骨頂上に装着され得、こうしたトラッカは、皮膚を通して外側から、又はTHAを実施するために作製された切開部を通して内側(後外側又は前外側のいずれか)から装着され得る。THAについては、CASS100は、近位大腿骨に挿入された1つ以上の大腿骨皮質ねじをチェックポイントとして利用して、登録プロセスを支援することができる。CASS100はまた、登録プロセスを支援するために、骨盤に挿入された1つ以上のチェックポイントねじを追加チェックポイントとして利用することができる。大腿骨トラッカアレイは、大腿骨皮質ねじに固設又は装着され得る。CASS100は、外科医がディスプレイ125上で外科医のために識別された近位大腿骨及び骨盤の重要な領域上に正確に置いたプローブを使用して、登録が検証されるステップを採用することができる。トラッカは、ロボットアーム105A又はエンドエフェクタ105B上に位置して、アーム及び/又はエンドエフェクタをCASS100に登録することができる。検証ステップはまた、近位及び遠位大腿骨チェックポイントを利用することができる。CASS100は、関連する骨及びロボットアーム105A又はエンドエフェクタ105Bの登録プロセスが、ある程度の精度(例えば、1mm以内)で検証されたことを外科医に知らせるために、色プロンプト又はその他のプロンプトを利用することができる。
【0056】
THAについては、CASS100は、外科医が術中にブローチの位置及び配向を捕捉し、患者の股関節の長さ及びオフセット値を計算することを可能にする、大腿骨アレイを使用したブローチ追跡オプションを含み得る。患者の股関節、並びにブローチ追跡が完了した後に計画されたインプラント位置及び配向について提供された情報に基づいて、外科医は、外科手術計画を修正又は調整することができる。
【0057】
ロボット支援THAについては、CASS100は、ロボットアーム105A又はエンドエフェクタ105Bに接続又は取り付けられ、外科手術計画に従って寛骨臼インプラントを受容するように骨盤骨を調製する、1つ以上の電動リーマを含み得る。ロボットアーム105A及び/又はエンドエフェクタ105Bは、外科医に通知し、及び/又はリーマの電力を制御して、寛骨臼が外科手術計画に従って切除(リーミング)されていることを確実にすることができる。例えば、外科医が、外科手術計画に従って切除される骨の境界の外側の骨を切除しようとする場合、CASS100は、リーマの電源をオフにするか、又はリーマの電源をオフにするように外科医に指示することができる。CASS100は、外科医に、リーマのロボット制御をオフにするか、又はそれを解除するかの選択肢を提供することができる。ディスプレイ125は、異なる色を使用して、外科手術計画と比較して、切除される(リーミングされる)骨の進行を示すことができる。外科医は、切除される(リーミングされる)骨の表示を見て、リーマを誘導して、外科手術計画に従ってリーミングを完了させることができる。CASS100は、外科手術計画に従っていない切除が行われていることを外科医に警告する視覚的又は可聴のプロンプトを、外科医に提供することができる。
【0058】
リーミング後、CASS100は、ロボットアーム105A若しくはエンドエフェクタ105Bに取り付けられるか、又は接続される手動若しくは電動のインパクタを用いて、試験インプラント及び最終的なインプラントを寛骨臼に衝突させることができる。ロボットアーム105A及び/又はエンドエフェクタ105Bは、外科手術計画に従って、試験及び最終的なインプラントを寛骨臼に衝突させるように、インパクタを誘導するために使用され得る。CASS100は、外科医が脚及び股関節を操作する際に、試験及び最終的なインプラントの配向及び位置を、どのように外科手術計画と比較するかについて外科医に知らせるために、表示されるべき骨に対して試験及び最終的なインプラントの位置及び配向を生じさせ得、またディスプレイ125は、インプラントの位置及び配向を示し得る。CASS100は、外科医が元のインプラント位置及び配向に満足しない場合、新しい外科手術計画を準備することによって、外科医に、リーミング及びインプラントの衝突を再計画及び再実行する選択肢を提供することができる。
【0059】
術前、CASS100は、股関節の三次元モデル、並びに脚骨の機械的軸及び解剖学的軸、上顆軸、大腿骨頸部軸、大腿骨及び股関節の寸法(例えば、長さ)、股関節の正中軸、股関節のASIS軸、及び下顎骨の目印などの解剖学的目印の場所、遠位目印、及び股関節の回転の中心などの患者に特有のその他の情報に基づいて、提案される外科手術計画を立てることができる。CASSが立てた外科手術計画は、股関節の三次元モデル及び患者に特有の他の情報に基づいて、推奨される最適なインプラントサイズ並びにインプラント位置及び配向を提供することができる。CASSが立てた外科手術計画には、オフセット値、傾斜及び前傾値、回転中心、カップサイズ、内側化値、上下適合値、大腿骨ステムのサイズ及び長さに関する提案された詳細が含まれ得る。
【0060】
THAについては、CASSが立てた外科手術計画を術前及び術中に見ることができ、外科医は、CASSが立てた外科手術計画を術前又は術中に修正することができる。CASSが立てた外科手術計画は、計画された切除を股関節に示し、計画された切除に基づいて、計画されたインプラントを股関節に重ね合わせることができる。CASS100は、外科医の好みに基づいて、外科医に表示される様々な外科手術ワークフローの選択肢を外科医に提供することができる。例えば、外科医は、チェック及び捕捉される解剖学的目印の数及びタイプ、並びに/又は登録プロセスで使用されるトラッカアレイの場所及び数に基づいて、異なるワークフローから選択することができる。
【0061】
一部の実施形態によれば、CASS100とともに使用される電動式衝突デバイスは、様々な異なる設定で動作し得る。一部の実施形態では、外科医は、手動スイッチ又は電動式衝突デバイス上の他の物理的機構を通して設定を調整する。他の実施形態では、例えば、電動式衝突デバイスのタッチスクリーンを介して、入力の設定を可能にするデジタルインターフェースを使用してもよい。こうしたデジタルインターフェースは、例えば、電力取り付けデバイスに接続された取り付け部品のタイプに基づいて、利用可能な設定を変えることを可能にし得る。一部の実施形態では、電動式衝突デバイス自体の設定を調整するのではなく、設定は、ボタン、ダイヤル、スイッチ、タッチスクリーン、ヘッドセット(例えば、拡張現実ヘッドセット)を通した入力、視覚的な合図又はジェスチャ、聴覚的合図(例えば、発話指令)、及び類似のものを含む、本明細書に記載の様々な入力手段を介して、CASS100内のロボット又は他のコンピュータシステムとの通信を通して変更することができる。こうした接続は、例えば、電動式衝突デバイス上のBluetooth又はWi-Fiネットワーキングモジュールを使用して確立され得る。別の実施形態では、衝突デバイス及び端片部は、衝突デバイスが、どの端片部(カップインパクタ、ブローチハンドルなど)が取り付けられているかを、外科医によって必要な動作なしに認識し、それに応じて設定を調整することを可能にする特徴を含み得る。これは、例えば、QRコード、バーコード、RFIDタグ、又は他の方法を介して達成され得る。
【0062】
使用され得る設定の例としては、カップ衝突設定(例えば、単一方向、特定された周波数範囲、特定された力及び/又はエネルギー範囲)、ブローチ衝突設定(例えば、特定された周波数範囲での双方向/振動、特定された力、及び/又はエネルギー範囲)、大腿骨頭衝突設定(例えば、特定された力又はエネルギーでの単一方向/単一吹き)、並びにステム衝突設定(例えば、所定の力又はエネルギーを有する、特定された周波数での単一方向)が含まれる。更に、一部の実施形態では、電動式衝突デバイスは、寛骨臼ライナーの衝突に関連する設定(例えば、指定された力又はエネルギーでの単一方向/単一吹き)を含む。ポリ、セラミック、オキシニウム、又はその他の材料などのライナーの各タイプに対して、複数の設定があり得る。更に、電動式衝突デバイスは、外科医による術前検査/画像/知識及び/又は術中評価に基づいて、異なる骨質に対する設定を提供し得る。一部の実施形態では、電動式インパクタデバイスは、二重機能を有し得る。例えば、電動式インパクタデバイスは、衝突力を提供するために往復運動を提供できるだけでなく、ブローチ又はラスプのために往復運動を提供することもできる。
【0063】
一部の実施形態では、電動式衝突デバイスは、器具の使用中にデータを収集し、デバイス又は外科手術コンピュータ150内のコントローラなどのコンピューティングデバイスにデータを送信するフィードバックセンサを含む。次に、このコンピューティングデバイスは、後の分析及び使用のためにデータを記録することができる。収集され得るデータの例としては、音波、各器具の所定の共鳴周波数、患者の骨からの反応力若しくはリバウンドエネルギー、撮像(例えば、フルオロ、CT、超音波、MRIなど)に関するデバイスの場所、及び/又は骨上の外部歪みゲージが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
データが収集されると、コンピューティングデバイスは、外科医が外科手術手技を実施することを助けるために、リアルタイム又はほぼリアルタイムに1つ以上のアルゴリズムを実行し得る。例えば、一部の実施形態では、コンピューティングデバイスは、収集されたデータを使用して、適切な最終ブローチサイズ(大腿骨)、ステムが完全に着座しているとき(大腿骨側)、又はカップがTHAに対して着座しているとき(奥行き及び/又は配向)などの情報を導出する。情報が分かると、その情報は、外科医のレビューのために表示され得、又はハプティック若しくは他のフィードバック機構を起動して、外科手術手技を誘導するために使用され得る。
【0065】
更に、前述のアルゴリズムから導出されたデータを使用して、デバイスの動作を駆動し得る。例えば、電動式衝突デバイスでの人工寛骨臼カップの挿入中、デバイスは、インプラントを適切な場所に動かす衝突ヘッド(例えば、エンドエフェクタ)を自動的に延ばすか、又はインプラントが完全に着座した後、デバイスへの電源をオフにすることができる。1つの実施形態では、導出された情報を使用して、電動式衝突デバイスが、大腿骨/寛骨臼/骨盤の骨折又は周囲の組織への損傷を軽減するためにより少ない電力を使用するべきである、骨の質の設定を自動的に調整し得る。
【0066】
ロボットアーム
一部の実施形態では、CASS100は、外科手術手技中に使用される様々な器具を安定化及び保持するためのインターフェースとして機能する、ロボットアーム105Aを含む。例えば、股関節手術の文脈では、これらの器具は、リトラクタ、矢状又は往復式ソー、リーマハンドル、カップインパクタ、ブローチハンドル、及びステムインサータを含み得るが、これらに限定されない。ロボットアーム105Aは、(Spiderデバイスのような)複数の自由度を有してもよく、(例えば、ボタンを押す、音声起動、外科医がロボットアームから手を取り外す、又は他の方法によって)定位置に係止される能力を有し得る。
【0067】
一部の実施形態では、ロボットアーム105Aの移動は、ロボットアームシステム内に組み込まれた制御パネルの使用によって引き起こされ得る。例えば、表示画面は、ロボットアーム105Aの直接的な移動である、1つ以上のアイコンを有する物理的ボタン又はユーザインターフェースなどの1つ以上の入力源を含み得る。外科医又は他の医療従事者は、外科手術手技を実施するときに、1つ以上の入力源と係合して、ロボットアーム105Aを位置決めしてもよい。
【0068】
ロボットアーム105Aに取り付けられるか、又はロボットアーム105Aに組み込まれたツール又はエンドエフェクタ105Bは、バリ取りデバイス、メス、切断デバイス、リトラクタ、関節張力デバイスなどを含み得るが、これらに限定されない。エンドエフェクタ105Bが使用される実施形態では、エンドエフェクタは、任意のモータ制御動作がロボットアームシステム内で実施されるように、ロボットアーム105Aの端に位置決めされ得る。ツールが使用される実施形態では、ツールは、ロボットアーム105Aの遠位端に固設されてもよいが、モータ制御動作は、ツール自体の中に存在してもよい。
【0069】
ロボットアーム105Aは、ロボットアームの両方を安定化するために内部的に電動化されてもよく、それによって、ロボットアームが患者、手術台、外科手術スタッフなどに落下し、及び当たることを防止し、外科医がその重量を完全に支持することなく、ロボットアームを移動させることが可能になる。外科医がロボットアーム105Aを移動している間、ロボットアームは、ロボットアームがあまりにも速く移動すること、又は一度にアクティブになる自由度があまりにも多くなることを防ぐために、ある程度の抵抗を提供し得る。ロボットアーム105Aの位置及び係止状態は、例えば、コントローラ又は外科手術コンピュータ150によって追跡され得る。
【0070】
一部の実施形態では、ロボットアーム105Aは、(例えば、外科医によって)手によって、又は実施される作業のためのその理想的な位置及び配向内に内部モータとともに移動することができる。一部の実施形態では、ロボットアーム105Aは、外科医がアームを制限されることなく所望の位置に位置決めすることを可能にする、「自由」モードで動作可能とすることができる。自由モードの間、ロボットアーム105Aの位置及び配向は、上述のように、なおも追跡され得る。一実施形態では、ある程度の自由度は、外科手術コンピュータ150によって追跡される外科手術計画の特定の部分の間に、ユーザ(例えば、外科医)からの入力時に選択的に解除され得る。ロボットアーム105Aが油圧若しくはモータを通して内部的に電力供給されるか、又は同様の手段を介して外部での手動動作に対する抵抗を提供する設計は、電力供給されたロボットアームとして記述され得、一方で、電力フィードバックなしで、手動で操作されるが、手動で又は自動的に定位置に係止され得るアームは、受動的ロボットアームとして記述され得る。
【0071】
ロボットアーム105A又はエンドエフェクタ105Bは、ソー又はドリルの力を制御するためのトリガ又は他の手段を含み得る。外科医によるトリガ又はその他の手段の係合は、ロボットアーム105A又はエンドエフェクタ105Bを、電動アライメントモードから、ソー又はドリルが係合し、電源がオンであるモードに移行させることができる。更に、CASS100は、起動されたときにシステムが特定の機能を実行させるフットペダル(図示せず)を含み得る。例えば、外科医は、フットペダルを起動して、ロボットアーム又はエンドエフェクタを患者の解剖学的構造に対して適切な位置に持ってきて、必要な切除を行う自動モードに、ロボットアーム105A又はエンドエフェクタ105Bを配置するようにCASS100に指示することができる。CASS100はまた、外科医がロボットアーム又はエンドエフェクタを手動で操作し、特定の場所に位置決めすることを可能にする協働モードにロボットアーム105A又はエンドエフェクタ105Bを配置することができる。協働モードは、外科医がロボットアーム105A又はエンドエフェクタ105Bを内側又は横方向に移動させながら、他の方向への移動を制限することを可能にするように構成され得る。論じるように、ロボットアーム105A又はエンドエフェクタ105Bは、切断デバイス(ソー、ドリル、及びバリ)、又は切断デバイスを誘導する切断ガイド若しくはジグ105Dを含み得る。他の実施形態では、ロボットアーム105A又はロボット制御式エンドエフェクタ105Bの移動は、外科医又は他の医療専門家からの支援若しくは入力なしで、又は最小限の支援若しくは入力のみで、CASS100によって完全に制御され得る。更に他の実施形態では、ロボットアーム105A又はロボット制御式エンドエフェクタ105Bの移動は、例えば、ジョイスティック又は対話型のモニタ又は表示制御デバイスを使用して、ロボットアーム又はロボット制御式エンドエフェクタデバイスから分離した制御機構を使用して、外科医又は他の医療専門家によって遠隔制御され得る。
【0072】
以下の実施例は、股関節手術の文脈におけるロボットデバイスの使用を説明するが、ロボットアームは膝、肩などを伴う外科手術手技のための他の用途を有し得ることが理解されるべきである。前十字靭帯(ACL)グラフトトンネルの形成の文脈におけるロボットアームの使用の一例は、2019年8月28日に出願された「Robotic Assisted Ligament Graft Placement and Tensioning」と題する、WIPO公開第WO2020/047051号に記述されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
ロボットアーム105Aは、リトラクタを保持するために使用され得る。例えば、一実施形態では、ロボットアーム105Aは、外科医によって所望の位置に移動され得る。この時点で、ロボットアーム105Aは、定位置に係止され得る。一部の実施形態では、ロボットアーム105Aは、患者が動く場合、ロボットアームがそれに応じてリトラクタ位置を調整することができるように、患者の位置に関するデータが提供される。一部の実施形態では、複数のロボットアームを使用してもよく、それによって、複数のリトラクタが保持されるか、又は2つ以上の活動(例えば、リトラクタの保持及びリーミング)が同時に実施される。
【0074】
ロボットアーム105Aはまた、大腿骨頸部を切断しながら外科医の手を安定化するのを助けるために使用され得る。この用途では、ロボットアーム105Aの制御は、軟部組織損傷の発生を防止するために、特定の制限を課すことができる。例えば、一実施形態では、外科手術コンピュータ150は、ロボットアーム105Aが作動すると、ロボットアーム105Aの位置を追跡する。追跡された場所が、組織損傷が予測される領域に近づく場合、コマンドをロボットアーム105Aに送信して、停止させてもよい。代替的に、ロボットアーム105Aが外科手術コンピュータ150によって自動的に制御される場合、外科手術コンピュータは、軟部組織損傷が発生しやすい領域に入る原因となるいかなる命令もロボットアームに提供されないことを確実にし得る。外科手術コンピュータ150は、外科医が寛骨臼の内側壁にリーミングしすぎること、又は誤った角度若しくは配向でリーミングすることを防止するために、外科医に特定の制限を課すことができる。
【0075】
一部の実施形態では、ロボットアーム105Aは、カップ衝突中にカップインパクタを所望の角度又は配向に保持するために使用され得る。最終位置が達成されると、ロボットアーム105Aは、骨盤への損傷を防ぐために、任意の更なるシ着座を防止し得る。
【0076】
外科医は、ロボットアーム105Aを使用して、ブローチハンドルを所望の位置に位置決めし得、外科医がブローチを所望の配向で大腿管内へ衝突させることができる。一部の実施形態では、外科手術コンピュータ150が、ブローチが完全に着座しているというフィードバックを受信すると、ロボットアーム105Aは、ハンドルを制限して、ブローチの更なる前進を防止し得る。
【0077】
ロボットアーム105Aはまた、再表面処理用途に使用され得る。例えば、ロボットアーム105Aは、従来的な器具を使用している間に外科医を安定化させ、インプラント構成要素(例えば、ガイドワイヤ配置、面取りカッター、スリーブカッター、プランカッターなど)の適切な配置を可能にするために、特定の制約又は制限を提供することができる。バリのみが採用される場合、ロボットアーム105Aは、外科医のハンドピースを安定化させてもよく、外科医が外科手術計画に違反して意図しない骨を除去することを防止するために、ハンドピースに制約を課すことができる。
【0078】
ロボットアーム105Aは、受動的アームであり得る。一例として、ロボットアーム105Aは、Brainlab AGから入手可能なCIRQロボットアームであり得る。CIRQは、Brainlab AG、Olof-Palme-Str.9 81829、Munchen、FED REP of GERMANYの登録された商標である。1つの特定の実施形態では、ロボットアーム105Aは、Krinningerらの米国特許出願第15/525,585号、Nowatschinらの米国特許出願第15/561,042号、Nowatschinらの米国特許出願第15/561,048号、及びNowatschinらの米国特許出願第10,342,636号に開示されているようなインテリジェント保持アームであり、その各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
外科手術手技データの生成及び収集
臨床状態を治療するために医療専門家によって提供される様々なサービスは、総称して、「ケアのエピソード」と称される。特定の外科的介入については、ケアのエピソードには、術前、術中、及び術後の3つの段階が含まれ得る。各段階の間、手技の様々な特徴を理解して、例えば、最小限のヒトの介入で決定を行うためにモデルを訓練する際に使用され得るパターンを識別するために、ケアのエピソードを分析するために使用され得る、データが収集又は生成される。ケアのエピソードにわたって収集されたデータは、完全なデータセットとして外科手術コンピュータ150又は外科手術データサーバ180に記憶され得る。したがって、ケアの各エピソードについて、患者について集合的に術前の全てのデータ、CASS100によって術中に収集又は記憶された全てのデータ、及び患者によって又は患者を監視する医療従事者によって提供される任意の術後データを含む、データセットが存在する。
【0080】
より詳細に説明するように、ケアのエピソード中に収集されたデータは、外科手術手技の性能を向上させるために、又は外科手術手技及び患者の転帰の全体的理解を提供するために使用され得る。例えば、一部の実施形態では、ケアのエピソードにわたって収集されたデータは、外科手術計画を生成するために使用され得る。一実施形態では、高レベルの術前計画は、手術中にデータが収集される際に術中に精密化される。このようにして、外科手術計画は、CASS100の構成要素によって新しいデータが収集されるにつれて、リアルタイム又はほぼリアルタイムに動的に変化するものとして見ることができる。他の実施形態では、術前画像又は他の入力データは、手術中に単純に実行される堅牢な計画を術前に開発するために使用され得る。この場合、手術中にCASS100によって収集されるデータは、外科医が術前外科手術計画内にとどまることを確実にする推奨を行うために使用され得る。例えば、外科医が特定の所定のカット又はインプラントアライメントをどのように達成するか定かでない場合、外科手術コンピュータ150に推奨を求めることができる。更に他の実施形態では、術前及び術中の計画アプローチは、外科手術手技中に、必要に応じて又は望ましい場合に、堅牢な術前計画が動的に修正され得るように組み合わされ得る。一部の実施形態では、患者の解剖学的構造の生体力学ベースのモデルは、術前、術中、及び術後/リハビリテーション手技の開発においてCASS100によって考慮されるシミュレーションデータに寄与して、患者のインプラント性能転帰を最適化する。
【0081】
外科手術手技自体を変更する以外に、ケアのエピソード中に収集されたデータは、外科手術に付属する他の手技への入力として使用され得る。例えば、一部の実施形態では、インプラントは、ケアデータのエピソードを使用して設計され得る。設計、サイズ設定、及び適合インプラントのための例示のデータ駆動技術は、2011年8月15日に出願された「Systems and Methods for Optimizing Parameters for Orthopaedic Procedures」と題する、米国特許出願第13/814,531号、2012年7月20日に出願された「Systems and Methods for Optimizing Fit of an Implant to Anatomy」と題する、米国特許出願第14/232,958号、2008年9月19日に出願された「Operatively Tuning Implants for Increased Performance」と題する、米国特許出願第12/234,444号に説明されており、その各々の内容全体が参照により本特許出願に組み込まれる。
【0082】
更に、データは、教育、研修、又は研究目的に使用され得る。例えば、図5Cに後述するネットワークベースのアプローチを使用して、他の医師又は学生は、CASS100の様々な構成要素から収集されるデータを選択的に見ることを可能にする、インターフェースで手術を遠隔で見ることができる。外科手術手技の後、類似のインターフェースを使用して、訓練又はその他の教育目的で手術を「再生」し、又は手技の問題若しくは合併症の源を識別することができる。
【0083】
術前フェーズ中に取得されたデータには、一般に、手術の前に収集又は生成された全ての情報が含まれる。したがって、例えば、患者に関する情報は、患者摂取形態又は電子医療記録(EMR)から取得され得る。収集され得る患者情報の例としては、患者の人口統計、診断、既往歴、経過記録、バイタルサイン、既往歴情報、アレルギー、及び臨床検査結果が含まれるが、これらに限定されない。術前データはまた、関心対象の解剖学的領域に関連する画像を含み得る。これらの画像は、例えば、磁気共鳴画像診断法(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)、X線、超音波、又は当技術分野で公知の任意の他のモダリティを使用して捕捉され得る。術前データはまた、患者から捕捉された生活の質データを含み得る。例えば、一実施形態では、術前患者は、モバイルアプリケーション(アプリ)を使用して、現在の生活の質に関する質問票に回答する。一部の実施形態では、CASS100によって使用される術前データは、活動レベル及び特定の患者の活動と一致して、外科手術計画を患者にカスタマイズすることができる、患者に関する患者背景、人体計測、文化、又はその他の特定の形質を含む。例えば、特定の文化又は患者背景は、毎日しゃがむことを必要とするトイレを使用する可能性がより高い場合がある。
【0084】
図5A及び5Bは、ケアのエピソードの術中段階中に取得され得るデータの例を提供する。これらの実施例は、図1を参照して上述したCASS100の様々な構成要素に基づくが、手術中に使用される装置のタイプ及びそれらの使用に基づいて、他のタイプのデータが使用され得ることが理解されるべきである。
【0085】
図5Aは、一部の実施形態による、外科手術コンピュータ150がCASS100の他の構成要素に提供する、制御命令の一部の例を示している。図5Aの実施例は、エフェクタプラットフォーム105の構成要素が各々、外科手術コンピュータ150によって直接的に制御されることを想定していることに留意されたい。構成要素が外科医111によって手動で制御される実施形態では、ディスプレイ125又はAR HMD155上に、構成要素の移動方法を外科医111に指示する命令が提供され得る。
【0086】
エフェクタプラットフォーム105に含まれる様々な構成要素は、座標系内でどこに移動するかを構成要素に指示する位置コマンドを提供する、外科手術コンピュータ150によって制御される。一部の実施形態では、外科手術コンピュータ150は、エフェクタプラットフォーム105の構成要素が外科手術計画から逸脱した場合の反応方法を定義する命令をエフェクタプラットフォーム105に提供する。これらのコマンドは、図5Aで「ハプティック」コマンドとして参照されている。例えば、エンドエフェクタ105Bは、切除が計画されている領域の外側の動きに抵抗する力を提供し得る。エフェクタプラットフォーム105によって使用され得る他のコマンドには、振動及び音声キューが含まれる。
【0087】
一部の実施形態では、ロボットアーム105Aのエンドエフェクタ105Bは、切断ガイド105Dと動作可能に結合される。手術シーンの解剖学的モデルに応答して、ロボットアーム105Aは、エンドエフェクタ105B及び切断ガイド105Dを、外科手術計画に従って実施される大腿骨又は脛骨の切断の場所に合致する位置に移動させることができる。これにより、誤差の可能性を低減することができ、その視覚システム及びプロセッサを利用して、外科手術計画を実装して、脛骨又は大腿骨に対して正確な場所及び配向に切断ガイド105Dを配置し、切断ガイドの切断スロットを、外科手術計画に従って実施される切断と整列させることができる。次に、外科医は、ツールが切断ガイド105Dの特徴によって機械的に制限されるため、好適な任意のツール、例えば、振動又は回転のこぎり又はドリルを使用して、完璧な配置及び配向で切断(又は穴を開けること)を行うことができる。一部の実施形態では、切断ガイド105Dは、切断ガイドを使用して患者の組織の切除を実施する前に、外科医が切断ガイドをドリルでねじ込み又はピン留めするために使用する、1つ以上のピン穴を含み得る。これにより、ロボットアーム105Aを解放することができ、又は切除される骨に対して移動することなく、切断ガイド105Dが完全に固定されることを確実にすることができる。例えば、この手技は、膝関節全置換術中に大腿骨の第1の遠位切断をするために使用され得る。関節形成が股関節形成術である一部の実施形態では、切断ガイド105Dは、それぞれの股関節形成切除のために大腿骨頭又は寛骨臼に固定され得る。正確な切断を利用する任意の関節形成術は、ロボットアーム105A及び/又は切断ガイド105Dをこのように使用することができることが理解されるべきである。
【0088】
切除装置110には、骨又は組織の操作を行うための様々なコマンドが提供される。エフェクタプラットフォーム105と同様に、位置情報は、切除装置110に提供され、切除を実施する際にそれがどこに位置するべきかを指定してもよい。切除装置110に提供される他のコマンドは、切除装置のタイプに依存し得る。例えば、機械的又は超音波切除ツールの場合、コマンドは、ツールの速度及び頻度を指定し得る。無線周波アブレーション(RFA)及びその他のレーザアブレーションツールでは、コマンドは、強度及びパルス持続時間を指定し得る。
【0089】
CASS100の一部の構成要素は、外科手術コンピュータ150によって直接的に制御される必要はなく、むしろ、外科手術コンピュータ150は、構成要素を起動させるだけでよく、その後、データを収集し、それを外科手術コンピュータ150に提供する手法を指定するソフトウェアをローカルに実行する。図5Aの例では、この様式で操作される2つの構成要素である、追跡システム115及び組織ナビゲーションシステム120がある。
【0090】
外科手術コンピュータ150は、手術中に外科医111が必要とする任意の可視化をディスプレイ125に提供する。モニタについては、外科手術コンピュータ150は、当技術分野で公知の技術を使用して、画像、GUIなどを表示するための命令を提供し得る。ディスプレイ125は、外科手術計画のワークフローの様々な部分を含み得る。登録プロセスの間、例えば、ディスプレイ125は、術前に構築された3D骨モデルを示し、外科医がプローブを使用して患者の解剖学的目印の場所を収集する際に、プローブの場所を示すことができる。ディスプレイ125は、外科手術標的領域についての情報を含み得る。例えば、TKAに関連して、ディスプレイ125は、大腿骨及び脛骨の機械的軸及び解剖学的軸を示すことができる。ディスプレイ125は、外科手術計画に基づいて膝関節の内反角及び外反角を示すことができ、CASS100は、外科手術計画への企図された修正が行われた場合に、そのような角度がどのように影響されるかを示すことができる。したがって、ディスプレイ125は、外科手術計画への変更が、骨に取り付けられたインプラントの手技並びに最終的な位置及び配向にどのように影響するかを、動的に更新及び表示することができる対話型インターフェースである。
【0091】
ワークフローが骨切断又は切除の準備へと進行するにつれて、ディスプレイ125は、任意の切断が実施される前に、計画される、又は推奨される骨切断を示すことができる。外科医111は、ターゲット領域の異なる解剖学的な視点を提供するために画像表示を操作することができ、患者の術中評価に基づいて、計画された骨切断を変更又は修正する選択肢を有することができる。ディスプレイ125は、計画された骨切断が行われた場合に、選択されたインプラントが骨にどのように取り付けられるかを示すことができる。外科医111が以前に計画された骨切断を変えることを選択した場合、ディスプレイ125は、骨に取り付けられたときに、修正された骨切断がどのようにインプラントの位置及び配向を変えるかを示すことができる。
【0092】
ディスプレイ125は、外科医111に、患者、計画された外科的介入、及びインプラントに関する様々なデータ及び情報を提供することができる。心拍数、血圧などの患者の健康に関するリアルタイムデータを含む、様々な患者特異的情報を表示することができる。ディスプレイ125はまた、目印の場所、解剖学的構造の現在の状態(例えば、任意の切除が行われたかどうか、計画された、及び実行された骨切断の深さ及び角度)、及び外科手術計画が進行するにつれての解剖学的構造の将来の状態を含む、外科手術標的領域の解剖学的構造についての情報を含み得る。ディスプレイ125はまた、外科手術標的領域に関する追加的な情報を提供することができ、又は示すことができる。TKAについては、ディスプレイ125は、大腿骨と脛骨との間のギャップ(例えば、ギャップバランス)、及び計画された外科手術計画が実施された場合に、そのようなギャップがどのように変化するかについての情報を提供することができる。TKAについては、ディスプレイ125は、関節の張力(例えば、靭帯弛緩)に関するデータ、並びに関節の回転及びアライメントに関する情報などの、膝関節に関する追加的な関連情報を提供することができる。ディスプレイ125は、膝関節が屈曲するにつれて、計画されたインプラントの場所及び位置がどのように患者に影響を与えるかを示すことができる。ディスプレイ125は、異なるインプラントの使用、又は同じインプラントの異なるサイズの使用が、外科手術計画にどのように影響するかを示し、こうしたインプラントが骨上にどのように位置決めされるかをプレビューすることができる。CASS100は、TKA又はTHAにおいて計画された骨切除の各々に対して、かかる情報を提供することができる。TKAでは、CASS100は、計画された骨切除のうちの1つ以上に対するロボット制御を提供することができる。例えば、CASS100は、最初の遠位大腿骨切断のみに対してロボット制御を提供することができ、外科医111は、4-in-1切断ガイド又はジグ105Dなどの従来的な手段を使用して、他の切除(前方、後方及び面取り切断)を手動で実施することができる。
【0093】
ディスプレイ125は、異なる色を採用して、外科医に外科手術計画のステータスを通知し得る。例えば、切除されていない骨を第1の色で表示することができ、切除された骨を第2の色で表示することができ、計画された切除を第3の色で表示することができる。インプラントは、ディスプレイ125で骨上に重ね合わせることができ、インプラントの色は、インプラントの異なるタイプ若しくはサイズに変わり得るか、又は対応し得る。
【0094】
ディスプレイ125上に示される情報及びオプションは、実施される外科手術手技のタイプに応じて変化し得る。更に、外科医111は、その外科手術計画の好みに合致するか、又はそれと一致する特定の外科手術ワークフロー表示を要求又は選択することができる。例えば、TKAにおける大腿骨切断の前に通常脛骨切断を実施する外科医111については、ディスプレイ125及び関連するワークフローを、この好みを考慮に入れて適合させることができる。外科医111はまた、特定のステップが、標準的な外科手術ワークフロー表示に含められるか、又はそれから削除されることを予め選択することができる。例えば、外科医111が切除測定値を使用して、インプラント計画を最終決定するが、インプラント計画を最終決定する際に靭帯ギャップバランスを分析しない場合、外科手術ワークフロー表示は、モジュールに整理され得、外科医は、外科医の好み又は特定の外科手術の状況に基づいて、どのモジュールを表示するか、及びモジュールが提供される順序を選択することができる。靭帯及びギャップバランスを対象とするモジュールは、例えば、切除前及び切除後の靭帯/ギャップバランスを含むことができ、外科医111は、こうした靭帯及びギャップバランスを、骨切除の前又は後(又は両方)に実施するかどうかに応じて、どのモジュールをその既定の外科手術プランのワークフローに含めるかを選択することができる。
【0095】
AR HMDなどのより専門化されたディスプレイについては、外科手術コンピュータ150は、装置によってサポートされるデータフォーマットを使用して、画像、テキストなどを提供し得る。例えば、ディスプレイ125が、Microsoft HoloLens(商標)、又はMagic Leap One(商標)などのホログラフィーデバイスである場合、外科手術コンピュータ150は、HoloLensアプリケーションプログラムインターフェース(API)を使用して、外科医111の視野内に表示されるホログラムの位置及び内容を指定するコマンドを送信してもよい。
【0096】
一部の実施形態では、1つ以上の外科手術計画モデルは、CASS100に組み込まれ、外科医111に提供される外科手術計画の開発に使用され得る。用語「外科手術計画モデル」は、様々なシナリオの下で生体構造の性能をシミュレートして、切断及び他の外科手術活動を実施する最適な方法を決定するソフトウェアを指す。例えば、膝の置換手術については、外科手術計画モデルは、深い膝の屈曲、歩行などの機能活動のためのパラメータを測定し、インプラント配置を最適化するように膝上の切断場所を選択することができる。外科手術計画モデルの一例は、SMITH AND NEPHEW,INC.からのLIFEMOD(商標)シミュレーションソフトウェアである。一部の実施形態では、外科手術コンピュータ150は、手術中に外科手術計画モデル(例えば、GPUベースの並列処理環境)の完全な実行を可能にするコンピューティングアーキテクチャを含む。他の実施形態では、外科手術コンピュータ150は、ネットワークを介して、外科手術データサーバ180(図5Cを参照)などのこうした実行を可能にするリモートコンピュータに接続され得る。外科手術計画モデルの完全な実行の代替として、一部の実施形態では、モデルによって捕捉された数学的演算を1つ以上の予測因子方程式に単純化する、一連の伝達関数が導出される。次に、手術中に全てのシミュレーションを実行するのではなく、予測因子方程式を使用する。伝達関数の使用に関する更なる詳細は、2019年8月19日に出願された「Patient Specific Surgical Method and System」と題する、WIPO公開第2020/037308号に記述されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
図5Bは、CASS100の様々な構成要素から外科手術コンピュータ150に提供され得る、一部のタイプのデータの例を示している。一部の実施形態では、構成要素は、手術中にリアルタイム又はほぼリアルタイムに、データを外科手術コンピュータ150にストリーミングし得る。他の実施形態では、構成要素は、データをキューに入れ、設定された間隔(例えば、毎秒)で外科手術コンピュータ150に送信し得る。データは、当技術分野で公知の任意のフォーマットを使用して通信され得る。したがって、一部の実施形態では、構成要素は全て、共通フォーマットでデータを外科手術コンピュータ150に伝送する。他の実施形態では、各構成要素は、異なるデータフォーマットを使用してもよく、外科手術コンピュータ150は、データの翻訳を可能にする1つ以上のソフトウェアアプリケーションで構成される。
【0098】
一般に、外科手術コンピュータ150は、CASSデータが収集される中心点として機能し得る。データの正確な内容は、ソースによって異なる。例えば、エフェクタプラットフォーム105の各構成要素は、測定された位置を外科手術コンピュータ150に提供する。したがって、測定された位置を外科手術コンピュータ150(図5Bを参照)により当初指定された位置と比較することによって、外科手術コンピュータは、手術中に起こる偏差を識別することができる。
【0099】
切除装置110は、使用される装置のタイプに応じて、様々なタイプのデータを外科手術コンピュータ150に送信することができる。送信され得る例示のデータタイプには、測定されたトルク、オーディオシグネチャ、及び測定された変位値が含まれる。同様に、追跡技術115は、用いられる追跡方法に応じて、異なるタイプのデータを提供することができる。例示の追跡データタイプには、追跡された品目(例えば、解剖学的構造、ツールなど)、超音波画像、及び表面又は目印の収集点又は軸についての位置値が含まれる。組織ナビゲーションシステム120は、システムが動作するときに解剖学的場所、形状などを、外科手術コンピュータ150に提供する。
【0100】
ディスプレイ125は、一般に、ユーザへの提示のためにデータを出力するために使用されるが、更に外科手術コンピュータ150にデータを提供することができる。例えば、ディスプレイ125の一部としてモニタが使用される実施形態については、外科医111は、GUIと相互作用して、更なる処理のために外科手術コンピュータ150に送信される入力を提供し得る。AR用途では、HMDの測定された位置及び変位は、必要に応じて提示されたビューを更新することができるように、外科手術コンピュータ150に送信され得る。
【0101】
ケアのエピソードの術後段階の間、様々なタイプのデータを収集して、手術の結果としての患者の状態の全体的な改善又は悪化を定量化することができる。データは、例えば、質問票を介して患者によって報告された自己報告情報の形態を取ることができる。例えば、膝関節置換手術の文脈において、機能状態は、Oxford Knee Score質問票を用いて測定され得、術後の生活の質は、EQ5D-5L質問票を用いて測定され得る。股関節置換手術の文脈のその他の例には、Oxford Hip Score、Harris Hip Score、及びWOMAC(Western Ontario及びMcMaster大学変形性関節炎指数)が含まれ得る。こうした質問票は、例えば、医療従事者によって、臨床現場において直接的に、又は患者が質問に直接的に応答することを可能にするモバイルアプリを使用して、管理され得る。一部の実施形態では、患者は、手術に関連するデータを収集する1つ以上のウェアラブルデバイスを装備し得る。例えば、膝の手術の後、患者は、膝の位置決め、柔軟性などを監視するセンサを含む、膝ブレースを装備し得る。この情報は収集され、外科医によるレビューのために患者の携帯機器に転送されて、外科手術の転帰を評価し、いくつかの問題に対処することができる。一部の実施形態では、1つ以上のカメラは、術後の指定された活動中に患者の身体セグメントの動きを捕捉し、記録することができる。この動きの捕捉は、患者の関節の機能性をより良く理解して、回復の進捗をより良く予測し、必要とされ得るいくつかの可能性のある修正を識別するバイオメカニクスモデルと比較され得る。
【0102】
ケアのエピソードの術後の段階は、患者の生涯にわたって継続することができる。例えば、一部の実施形態では、外科手術コンピュータ150又はCASS100を含む他の構成要素は、手技が実施された後に、外科手術手技に関連するデータを受信及び収集し続けることができる。このデータには、例えば、画像、質問に対する回答、「正常な」患者データ(例えば、血液型、血圧、状態、薬剤など)、生体認証データ(例えば、歩行など)、及び特定の問題(例えば、膝関節又は股関節痛)に関する客観的かつ主観的データが含まれ得る。このデータは、患者又は患者の医師によって、外科手術コンピュータ150又は他のCASS構成要素に明示的に提供され得る。代替的に、又は追加的に、外科手術コンピュータ150又は他のCASS構成要素は、患者のEMRを監視し、利用可能となったときに関連情報を取得することができる。患者の回復のこの長期的な視野によって、外科手術コンピュータ150又は他のCASS構成要素が、患者の転帰のより客観的な分析を提供し、所与の手技の成功又は成功の欠如を測定及び追跡することができる。例えば、外科手術手技のずっと後に患者が経験する病態は、ケアのエピソードの間に収集された様々なデータ項目の回帰分析を通して、手術に再びリンクされ得る。この分析は、類似の手技を有し、及び/又は類似の解剖学的構造を有する患者の群に対して分析を実施することによって更に強化され得る。
【0103】
一部の実施形態では、データは、より簡単な分析及び使用を提供するために、中央位置で収集される。一部の実例では、様々なCASS構成要素から手動でデータを収集することができる。例えば、ポータブル記憶デバイス(例えば、USBスティック)は、手術中に収集されたデータを取得するために、外科手術コンピュータ150に取り付けることができる。次に、データは、例えば、デスクトップコンピュータを介して、集中型ストレージに転送され得る。代替的に、一部の実施形態では、外科手術コンピュータ150は、図5Cに示すように、ネットワーク175を介して中央ストレージに直接的に接続される。
【0104】
図5Cは、外科手術コンピュータ150がネットワーク175を介して外科手術データサーバ180に接続される、「クラウドベースの」実装を示している。このネットワーク175は、例えば、プライベートイントラネット又はインターネットであり得る。外科手術コンピュータ150からのデータに加えて、他のソースは、関連するデータを外科手術データサーバ180に転送することができる。図5Cの実施例は、患者160、医療従事者165、及びEMRデータベース170である、3つの追加データソースを示している。したがって、患者160は、例えば、モバイルアプリを使用して、術前及び術後のデータを外科手術データサーバ180に送信することができる。医療従事者165には、外科医及びそのスタッフ、並びに患者160に従事するいずれのその他の専門家(例えば、かかりつけ医、リハビリテーション専門医など)も含まれる。また、EMRデータベース170は、術前のデータ及び術後のデータの両方に使用され得ることに留意されたい。例えば、患者160が適切な許可を与えたと仮定すると、外科手術データサーバ180は、患者の術前のEMRを収集し得る。次に、外科手術データサーバ180は、術後のいくつかの更新についてEMRを監視し続けることができる。
【0105】
外科手術データサーバ180では、ケアのエピソードデータベース185を使用して、患者のケアのエピソードにわたって収集された様々なデータが記憶される。ケアのエピソードデータベース185は、当技術分野で公知の任意の技術を使用して実装され得る。例えば、一部の実施形態では、SQLベースのデータベースは、様々なデータ項目の全てが、行及び列の2つのSQLの集合に容易に組み込まれ得るように構造化されている場合に使用され得る。しかしながら、他の実施形態では、No-SQLデータベースを使用して、非構造化データを可能にする一方で、クエリーを迅速に処理及び応答する能力を提供することができる。当技術分野で理解されるように、用語「No-SQL」は、その設計において非リレーショナルであるデータ記憶装置のクラスを定義するために使用される。様々なタイプのNo-SQLデータベースが、一般にその基礎となるデータモデルに従ってグループ化され得る。これらのグループ化は、列ベースのデータモデル(例えば、Cassandra)、文書ベースのデータモデル(例えば、MongoDB)、キー値ベースのデータモデル(例えば、Redis)、及び/又はグラフベースのデータモデル(例えば、Allego)を使用するデータベースを含み得る。任意のタイプのNo-SQLデータベースを使用して、本明細書に記載される様々な実施形態を実装してもよく、一部の実施形態では、異なるタイプのデータベースが、ケアのエピソードデータベース185をサポートしてもよい。
【0106】
データは、当技術分野で公知の任意のデータフォーマット及び転送技術を使用して、様々なデータソースと外科手術データサーバ180との間で転送され得る。図5Cに示すアーキテクチャは、データソースから外科手術データサーバ180への伝送、並びにデータソースによる外科手術データサーバ180からのデータの取り出しを可能にすることに留意されたい。例えば、以下で詳細に説明するように、一部の実施形態では、外科手術コンピュータ150は、過去の手術、機械学習モデルなどからのデータを使用して、外科手術手技を誘導することを助け得る。
【0107】
一部の実施形態では、外科手術コンピュータ150又は外科手術データサーバ180は、非識別化プロセスを実行して、ケアのエピソードデータベース185に記憶されたデータが、医療保険の相互運用性及び説明責任法(HIPAA)の基準又は法律により義務付けられるその他の要件を満たすことを確実にし得る。HIPAAは、非識別化の際にデータから削除する必要のある特定の識別子のリストを提供する。前述の非識別化プロセスは、記憶のためにケアのエピソードデータベース185に転送されるデータ内のこれらの識別子をスキャンすることができる。例えば、一実施形態では、外科手術コンピュータ150は、特定のデータ項目又は一連のデータ項目の外科手術データサーバ180への転送を開始する直前に、非識別化プロセスを実行する。一部の実施形態では、固有の識別子は、必要に応じてデータの再識別を可能にするために、特定のケアのエピソードからのデータに割り当てられる。
【0108】
図5A~5Cは、単一のケアのエピソードの文脈におけるデータ収集について論じているが、一般的な概念は、複数のケアのエピソードからのデータ収集に拡張され得ることが理解されるべきである。例えば、外科手術データは、手術がCASS100で行われ、外科手術コンピュータ150又は外科手術データサーバ180に記憶されるたびに、ケアの全エピソードにわたって収集され得る。以下で更に詳細に説明するように、ケアデータのエピソードの堅牢なデータベースは、最適化された値、測定値、距離、又はその他のパラメータ、及び外科手術手技に関連するその他の推奨事項の生成を可能にする。一部の実施形態では、様々なデータセットは、外科手術手技中に関連情報の迅速な取得を可能にする方法で、データベース又は他の記憶媒体にインデックス付けされる。例えば、一実施形態では、特定の患者又は特定の患者と類似した患者のセットに関するデータを容易に抽出することができるように、患者中心型の指標セットを使用し得る。この概念は、同様に外科医、インプラントの特徴、CASS構成要素バージョンなどに適用され得る。
【0109】
ケアデータのエピソードの管理の更なる詳細は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年12月21日に出願された「Methods and Systems for Providing an Episode of Care」と題する米国特許出願第62/783,858号に説明されている。
【0110】
オープン対クローズ型デジタルエコシステム
一部の実施形態では、CASS100は、自己完結型又は「クローズ型」デジタルエコシステムとして動作するように設計される。CASS100の各構成要素は、クローズ型エコシステムで使用するように特別に設計され、データは一般に、デジタルエコシステム外部のデバイスからはアクセスすることができない。例えば、一部の実施形態では、各構成要素には、通信、記憶、セキュリティなどの活動の専有プロトコルを実装する、ソフトウェア又はファームウェアが含まれる。クローズ型デジタルエコシステムの概念は、特定の互換性、セキュリティ、信頼性基準を確実に満たすために、CASS100の全ての構成要素を管理したい企業にとって望ましい場合がある。例えば、CASS100は、会社が認定しない限り、CASSで新しい構成要素を使用することができないように設計され得る。
【0111】
他の実施形態では、CASS100は、「オープン型」デジタルエコシステムとして動作するように設計される。これらの実施形態では、構成要素は、通信、記憶、及びセキュリティなどの活動の基準に従って、様々な異なる企業によって製造され得る。そのため、これらの基準を使用することで、どの企業もCASSプラットフォームの独立した準拠構成要素を自由に構築することができる。データは、公開されているアプリケーションプログラミングインターフェース(API)及びオープンで共有可能なデータフォーマットを使用して、構成要素間で転送され得る。
【0112】
CASS100を用いて実施され得る1つのタイプの推奨を説明するために、外科手術パラメータを最適化する技術が以下に開示されている。この文脈における用語「最適化」は、特定の指定基準に基づいて最適であるパラメータの選択を意味する。極端な場合、最適化は、任意の術前データ、所定の時点におけるCASSデータの状態、及び術後の目標を含む、ケアの全エピソードからのデータに基づいて、最適なパラメータを選択することを指すことができる。更に、最適化は、例えば、同じ外科医、現在の患者と類似した身体的特徴を有する過去の患者などを含む過去の外科手術中に生成されたデータなどの履歴データを使用して実施され得る。
【0113】
最適化されたパラメータは、操作される患者の解剖学的構造の部分に依存し得る。例えば、膝の外科手術については、外科手術パラメータは、回転アライメント(例えば、内反/外反の回転、外部の回転、大腿骨構成要素の屈曲の回転、脛骨構成要素の後方の傾斜)、切除深度(例えば、内反膝、内反膝)、並びにインプラントタイプ、サイズ及び位置を含むが、これらに限定されない、大腿骨及び脛骨構成要素の位置決め情報を含み得る。位置決め情報には、更に、全体的肢のアライメント、組み合わせた脛骨大腿側過伸展、及び組み合わせた脛骨大腿側切除などの、組み合わせたインプラントの外科手術パラメータが含まれ得る。CASS100によって所与のTKA大腿骨インプラントに対して最適化され得るパラメータの追加的な例には、以下が含まれる。
【表1】
【0114】
CASS100によって所与のTKA脛骨インプラントに対して最適化され得るパラメータの追加的な例には、以下が含まれる。
【表2】
【0115】
股関節外科手術については、外科手術パラメータは、大腿骨頸部切除の場所及び角度、カップ傾斜角、カップ前傾角、カップ奥行き、大腿骨ステム設計、大腿骨ステムサイズ、大腿骨ステムの管内への適合、大腿骨オフセット、脚長、及びインプラントの大腿骨バージョンを含み得る。
【0116】
肩のパラメータには、上腕骨切除の深度/角度、上腕骨ステムのバージョン、上腕骨オフセット、グレノイドのバージョン及び傾斜、並びに上腕骨切除の深度/角度、上腕骨ステムのバージョン、グレノイドの傾斜/バージョン、グレノスフェアの配向、グレノスフェアのオフセット及びオフセットの方向などの逆肩のパラメータが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0117】
外科手術パラメータを最適化するための様々な従来的な技術が存在する。しかしながら、これらの技術は典型的には、計算集約的であり、したがって、パラメータは多くの場合、術前に決定する必要がある。結果として、外科医は、手術中に起こり得る問題に基づいて最適化されたパラメータを修正する能力が制限される。更に、従来的な最適化技術は、推奨パラメータ値に関する説明がほとんど又は全くない状態で、典型的には「ブラックボックス」で作動する。したがって、外科医が推奨パラメータ値から逸脱することを決定した場合、外科医は通常、その逸脱が外科手術ワークフローの残りの部分に与える影響、又は逸脱が患者の術後の生活の質に与える影響を完全に理解することなく、逸脱を行う。
【0118】
手術患者ケアシステム
最適化の一般的な概念は、図6に示すように、手術データ、並びに患者605及び医療従事者630からのその他のデータを使用する手術患者ケアシステム620を使用して、ケアの全エピソードに拡張されて、転帰及び患者の満足度を最適化し得る。
【0119】
従来は、関節全形成術の術前診断、術前手術計画、所定の計画の術中の実行、及び術後管理は、個人の経験、公開された文献、及び外科医の訓練知識ベース(最終的には、個々の外科医に関するトライバルの知識、並びに同業者及びジャーナル出版物の「ネットワーク」)、並びにガイド及び視覚的な合図を使用して、「バランス」の正確な術中の触覚識別及び平面切除の正確な手動実行を行うそれらの本来の能力に基づくものである。この既存の知識ベース及び実行は、ケアを必要とする患者に提供される転帰の最適化に関して制限される。例えば、適切な最小侵襲の処方ケアに対して患者を正確に診断すること、動的な患者、医療経済、及び外科医の好みを患者の望ましい転帰と整合させること、適切な骨アライメント及びバランスなどをもたらす外科手術計画を実行すること、並びに異なるバイアスを有する分離されたソースからデータを受信することに関して、限界が存在するが、これらは、全体的な患者フレームワークと整合させることは困難である。したがって、より正確に解剖学的応答をモデル化し、外科手術計画を誘導するデータ駆動型ツールは、既存のアプローチを改善することができる。
【0120】
手術患者ケアシステム620は、患者固有のデータ、外科医データ、医療施設データ、及び過去の転帰データを利用して、望ましい臨床転帰に基づいて、患者のケアの全エピソード(術前、術前、及び術後)に対する最適な全体的な治療計画を提案又は推奨するアルゴリズムを開発するように設計される。例えば、一実施形態では、手術患者ケアシステム620は、提案又は推奨される計画への順守を追跡し、患者/医療従事者の性能に基づいて計画を調整する。外科手術治療計画が完了すると、収集されたデータは、手術患者ケアシステム620によって履歴データベースにログ記録される。このデータベースは、将来の患者及び将来の治療計画の開発のためにアクセス可能である。統計モデル及び数学モデルを活用することに加えて、シミュレーションツール(例えば、LIFEMOD(登録商標))を使用して、予備的又は提案された外科手術計画に基づいて、転帰、アライメント、運動学などをシミュレートし、患者のプロファイル又は外科医の好みに従って、望ましい又は最適な結果を達成するために予備的又は提案された計画を再構成することができる。手術患者ケアシステム6320は、各患者が個別化された手術及びリハビリテーションケアを受けていることを確実にし、それによって、成功した臨床転帰の可能性を改善し、短期的な改訂に関連する施設の経済的負担を軽減する。
【0121】
一部の実施形態では、手術患者ケアシステム620は、データ収集及び管理方法を採用して、CASS100を使用して監視及び/又は実行される別個のステップを有する詳細な外科手術ケース計画を提供する。ユーザの性能は、各ステップの完了時に計算され、ケース計画の次のステップへの変更を提案するために使用され得る。ケース計画の生成は、ローカル又はクラウドストレージデータベースに記憶される一連の入力データに依存する。入力データは、治療を受けている現在の患者、及び類似の治療を受けている患者からの履歴データの両方と関連付けされ得る。
【0122】
患者605は、現在の患者データ310及び履歴患者データ615などの入力を、手術患者ケアシステム620に提供する。当技術分野で一般的に公知の様々な方法を使用して、患者605からこうした入力を収集することができる。例えば、一部の実施形態では、患者605は、患者データを抽出するために手術患者ケアシステム620によって分析される、紙又はデジタル調査に記入する。他の実施形態では、手術患者ケアシステム620は、電子医療記録(EMR)、病歴ファイル、及び支払人/プロバイダーの履歴ファイルなどの既存の情報源から患者データを抽出し得る。更に他の実施形態では、手術患者ケアシステム620は、外部データソースが手術患者ケアシステムにデータをプッシュすることを可能にする、アプリケーションプログラムインターフェース(API)を提供し得る。例えば、患者605は、データ(例えば、心拍数、痛み若しくは不快感のレベル、運動若しくは活動レベル、又は任意の数の術前計画基準若しくは状態への患者の順守に対する患者から提出された回答)を収集する携帯電話、ウェアラブルデバイス、又はその他の携帯機器を有し、そのデータを手術患者ケアシステム620に提供し得る。同様に、患者605は、データを収集し、手術患者ケアシステム620に伝送することを可能にする、デジタルアプリケーションを、その携帯又はウェアラブルデバイス上に有し得る。
【0123】
現在の患者データ610には、限定されるものではないが、活動レベル、既存の疾患、併存疾患、プリハブパフォーマンス、健康及びフィットネスのレベル、術前期待値(病院、手術、及び回復に関連する)、メトロポリタン統計地域(MSA)主導のスコア、遺伝子背景、以前の怪我(スポーツ、外傷など)、以前の関節形成術、以前の外傷手技、以前のスポーツ医学手技、対側関節又は手足の治療、歩行又は生体力学的情報(背中及び足首の問題)、痛み又は不快感のレベル、ケアインフラストラクチャ情報(支払者の補償範囲タイプ、在宅医療インフラストラクチャレベルなど)、並びに手技の予想される理想的な転帰の表示が含まれ得る。
【0124】
過去の患者データ615には、限定されるものではないが、活動レベル、既存の疾患、併存疾患、プリハブパフォーマンス、健康及びフィットネスのレベル、術前期待値(病院、手術、及び回復に関連する)、MSA主導のスコア、遺伝子背景、以前の怪我(スポーツ、外傷など)、以前の関節形成術、以前の外傷手技、以前のスポーツ医学手技、対側関節又は手足の治療、歩行又は生体力学的情報(背中及び足首の問題)、痛み又は不快感のレベル、ケアインフラストラクチャ情報(支払者の補償範囲タイプ、在宅医療インフラストラクチャレベルなど)、手技の予想される理想的な転帰、手技の実際の転帰(患者報告転帰[PRO]、インプラントの生存率、痛みのレベル、活動レベルなど)、使用したインプラントのサイズ、使用したインプラントの位置/配向/アライメント、達成した軟組織のバランスなどが含まれ得る。
【0125】
手技又は治療を実施する医療従事者630は、手術患者ケアシステム620に様々なタイプのデータ625を提供し得る。この医療従事者データ625には、例えば、公知の、又は好ましい外科手術技術(例えば、十字型保持(CR)対後方安定化(PS)、アップサイジング対ダウンサイジング、止血帯対止血帯なし、大腿骨ステムスタイル、THAの優先アプローチなど)、医療従事者630の訓練のレベル(例えば、何年もの間、フェローシップは訓練され、訓練を受けた場所、それらの技術がエミュレートされている)、過去のデータを含む以前の成功レベル(転帰、患者の満足度)、並びに可動域、回復日数、及びデバイスの生存に関して期待される理想的な転帰が含まれ得る。医療従事者データ625は、例えば、医療従事者630に提供された紙又はデジタル調査で、医療従事者によるモバイルアプリケーションへの入力を介して、又はEMRから関連データを抽出することによって、捕捉され得る。更に、CASS100は、プロファイルデータ(例えば、患者固有の膝器具プロファイル)又は手術中のCASSの使用を記述する履歴ログなどのデータを提供し得る。
【0126】
手技又は治療が行われる施設に関する情報が、入力データに含まれ得る。このデータには、以下が含まれるが、これらに限定されない。外来手術センタ(ASC)対病院、施設外傷レベル、関節置換プログラム(CJR)又はバンドル候補の包括的ケア、MSA主導のスコア、コミュニティ対メトロ、学術対非学術、術後ネットワークアクセス(熟練看護施設[SNF]のみ、在宅医療など)、医療専門家の利用可能性、インプラントの利用可能性、及び外科手術機器の利用可能性。
【0127】
これらの施設入力は、例えば、調査(紙/デジタル)、外科手術スケジューリングツール(例えば、アプリ、ウェブサイト、電子医療記録〔EMR〕など)、病院情報のデータベース(インターネット上)などによって捕捉され得るが、これらに限定されない。患者の社会経済的プロファイル、患者が受けるであろう償還の期待レベル、及び治療が患者固有である場合を含むが、これらに限定されない、関連する医療経済に関連する入力データがまた、捕捉され得る。
【0128】
これらの医療経済入力は、例えば、限定されるものではないが、調査(紙/デジタル)、直接支払者情報、社会経済的ステータスのデータベース(郵便番号を含むインターネット上の)などによって捕捉され得る。最後に、手技のシミュレーションから導出されたデータが捕捉される。シミュレーション入力には、インプラントのサイズ、位置、及び配向が含まれる。シミュレーションは、カスタム又は市販の解剖学的モデリングソフトウェアプログラム(例えば、LIFEMOD(登録商標)、AnyBody、又はOpenSIM)を用いて実行され得る。上述のデータ入力は、全ての患者に利用可能ではなく、治療計画は、利用可能なデータを使用して生成されることに留意されたい。
【0129】
手術の前に、患者データ610、615及び医療従事者データ625を捕捉し、クラウドベースのデータベース又はオンラインデータベース(例えば、図5Cに示す外科手術データサーバ180)に記憶してもよい。手技に関連する情報は、無線データ転送を介して、又はポータブルメディアストレージの使用により手動でコンピューティングシステムに提供される。コンピューティングシステムは、CASS100で使用するためのケース計画を生成するように構成されている。以下に、ケース計画の生成について説明する。システムは、コンピュータ支援の、患者特異的膝用器具(PSKI)選択システムによって、又はCASS100自体によって自動的に生成されるようなインプラントサイズ、配置、及び配向を含む、治療を受けている以前の患者からの履歴データにアクセスできることに留意されたい。これを達成するために、症例ログデータは、オンラインポータルを使用して外科手術販売担当者又は症例エンジニアによって履歴データベースにアップロードされる。一部の実施形態では、オンラインデータベースへのデータ転送は、無線及び自動化である。
【0130】
オンラインデータベースからの履歴データセットは、例えば、反復ニューラルネットワーク(RNN)又は他の形態の人工ニューラルネットワークなどの機械学習モデルへの入力として使用される。当技術分野で一般的に理解されるように、人工ニューラルネットワークは、生物学的ニューラルネットワークと類似した機能を持ち、一連のノード及び接続から構成されている。機械学習モデルは、入力データに基づいて1つ以上の値を予測するように訓練される。続くセクションについては、機械学習モデルが、予測因子方程式を生成するように訓練されていると仮定される。これらの予測因子方程式は、最良の結果又は満足度レベルを達成するために、インプラントの最適なサイズ、位置、及び配向を決定するように最適化され得る。
【0131】
手技が完了すると、全ての患者データ及びCASS100によって決定されるインプラントのサイズ、位置及び配向を含む利用可能な転帰データが収集され、履歴データベースに記憶される。RNNを介した標的方程式の任意の後続の計算は、この様式で以前の患者からのデータを含み、システムの継続的な改善を可能にする。
【0132】
インプラントの位置決めを決定することに加えて、又はそれの代替として、一部の実施形態では、予測因子方程式及び関連する最適化を使用して、PSKIシステムで使用するための切除平面を生成することができる。PSKIシステムと併用する場合、予測因子方程式の計算及び最適化は、手術前に完了される。患者の解剖学的構造は、医療画像データ(X線、CT、MRI)を使用して推定される。予測因子方程式のグローバル最適化は、インプラント構成要素の理想的なサイズ及び位置を提供することができる。インプラント構成要素と患者の解剖学的構造のブール交差は、切除体積として定義される。PSKIを作製して、最適化された切除エンベロープを除去することができる。この実施形態では、外科医は、術中に外科手術計画を変更することができない。
【0133】
外科医は、手技の前又は手技の最中にいつでも、外科手術ケース計画を変更し得る。外科医が外科手術ケース計画から逸脱することを選択した場合、構成要素の変更されたサイズ、位置、及び/又は配向が係止され、(前述の技術を使用して)構成要素の新しいサイズ、位置、及び/又は配向に基づいてグローバル最適化が更新されて、他の構成要素の新しい理想的な位置、並びに構成要素の新規に最適化されたサイズ、位置、及び/又は配向を達成するために実施する必要のある対応する切除を見つける。例えば、外科医が、TKAにおける大腿骨インプラントのサイズ、位置、及び/又は配向を術中に更新又は修正する必要があると決定した場合、大腿骨インプラント位置は、解剖学的構造に対して係止され、脛骨の新しい最適化位置は、大腿骨インプラントのサイズ、位置及び/又は配向に対する外科医の変化を考慮して(グローバル最適化を介して)計算されることになる。更に、ケース計画を実施するために使用される外科手術システムがロボット支援(例えば、NAVIO(登録商標)又はMAKO Rioと同様に、)される場合、手術中の骨除去及び骨形態をリアルタイムで監視することができる。手技中に行われた切除が外科手術計画から逸脱する場合、追加の構成要素のその後の配置は、既に行われた実際の切除を考慮に入れて、プロセッサによって最適化され得る。
【0134】
図7Aは、手術患者ケアシステム620がどのようにケース計画マッチングサービスを実施するように適合され得るかを示している。この実施例では、データは、現在の患者610に関連して捕捉され、患者データ及び関連付けられる転帰615の履歴データベースの全て又は一部分と比較される。例えば、外科医は、現在の患者の計画を、履歴データベースのサブセットに対して比較することを選択し得る。履歴データベース内のデータは、例えば、好ましい転帰を有するデータセット、現在の患者プロファイルと同一若しくは類似のプロファイルを有する患者の履歴外科手術に対応するデータセット、特定の外科医に対応するデータセット、外科手術計画の特定の要素に対応するデータセット(例えば、特定の靭帯が保持される手術のみ)、又は外科医若しくは医療専門家によって選択された任意の他の基準のみを含むようにフィルタリングされ得る。例えば、現在の患者データが、良好な転帰を経験した以前の患者のものと合致するか、又は相関する場合、以前の患者のケース計画にアクセスして、現在の患者と使用するために適合又は採用することができる。予測因子方程式は、ケース計画と関連付けられた動作を識別又は決定する術中アルゴリズムと組み合わせて使用され得る。履歴データベースからの関連及び/又は事前に選択された情報に基づいて、術中アルゴリズムは、外科医が実行する一連の推奨動作を決定する。アルゴリズムの各実行は、ケース計画の次の動作を生成する。外科医が動作を実施する場合、結果が評価される。外科医が動作を実行する結果は、ケース計画の次のステップを生成するための術中アルゴリズムへの入力を精密化し、及び更新するために使用される。ケース計画が完全に実行されると、外科医によって推奨される動作から実施されたいくつかの逸脱を含む、ケース計画と関連付けられた全てのデータが、履歴データのデータベースに記憶される。一部の実施形態では、システムは、一連のケア全体とは対照的に、部分的様式で術前、術中、又は術後モジュールを利用する。言い換えれば、介護者は、単一のモジュールの使用を含む、任意の置換又は治療モジュールの組み合わせを処方することができる。これらの概念は、図7Bに示されており、CASS100を利用する任意のタイプの手術に適用され得る。
【0135】
手術プロセス表示
図1及び5A~5Cに関して上述したように、CASS100の様々な構成要素は、手術中に詳細なデータ記録を生成する。CASS100は、手術の各ステップ中の外科医の様々な動作及び活動を追跡及び記録し、実際の活動を術前又は術中の外科手術計画と比較することができる。一部の実施形態では、ソフトウェアツールを採用して、このデータを、手術が効果的に「再生」され得るフォーマットに処理してもよい。例えば、一実施形態では、手術中にディスプレイ125上に提示された全ての情報を示す、1つ以上のGUIが使用され得る。これは、異なるツールによって収集されたデータを示すグラフ及び画像で補足され得る。例えば、組織切除中に膝の視覚的描写を提供するGUIは、視覚的描写に隣接する切除装置の測定されたトルク及び変位を提供し、計画された切除領域から生じた任意の逸脱の理解をより良く提供することができる。外科手術計画の再生をレビューする能力、又は実際の手術の異なる段階と外科手術計画との間のトグル能力は、外科医及び/又は外科手術スタッフに利益を提供し得、そのような人は、将来の手術で修正することができるように、手術の任意の欠陥又は困難な段階を識別することができる。同様に、学術的設定では、前述のGUIは、将来の外科医及び/又は外科手術スタッフを訓練するための教育ツールとして使用され得る。更に、データセットは、外科医の活動の多くの要素を効果的に記録するため、特定の外科手術手技の正しい又は不正確な実施の証拠として、他の理由(例えば、法的又はコンプライアンス上の理由)にも使用され得る。
【0136】
経時的に、より多くの外科手術データが収集されるにつれて、異なる患者についての異なる外科医によって、様々なタイプの解剖学的構造(膝、肩、股関節など)に対して実施される外科手術手技を記述する、豊富なデータライブラリが取得され得る。更に、例えば、インプラントのタイプ及び寸法、患者の人口統計などの情報を更に使用して、データセット全体を強化することができる。データセットが確立されたら、それを使用して、機械学習モデル(例えば、RNN)を訓練し、CASS100の現在の状態に基づいて手術がどのように進行するかの予測を行わせることができる。
【0137】
機械学習モデルの訓練は、以下のように実施され得る。CASS100の全体的な状態は、手術期間中、複数の期間にわたってサンプリングされ得る。次に、機械学習モデルを訓練して、第1の期間での現在の状態を、異なる期間での将来の状態に変換することができる。個々のデータ項目ではなくCASS100の全状態を分析することによって、CASS100の異なる構成要素間の相互作用の任意の因果関係を捕捉することができる。一部の実施形態では、単一のモデルではなく、複数の機械学習モデルを使用し得る。一部の実施形態では、機械学習モデルは、CASS100の状態だけでなく、患者データ(例えば、EMRから捕捉される)及び外科手術スタッフのメンバーの識別情報も使用して訓練され得る。これにより、モデルは、更に高い特異性で予測を行うことができる。更に、外科医は、必要に応じて、自身の外科手術経験のみに基づいて選択的に予測を行うことができる。
【0138】
一部の実施形態では、前述の機械学習モデルによって作られる予測又は推奨は、外科手術ワークフローに直接的に統合され得る。例えば、一部の実施形態では、外科手術コンピュータ150は、今後の動作又は外科手術状態に対する予測又は推奨をバックグラウンドで行い、機械学習モデルを実行し得る。したがって、複数の状態を、各期間について予測又は推奨することができる。例えば、外科手術コンピュータ150は、30秒刻みで次の5分間の状態を予測又は推奨し得る。この情報を使用して、外科医は、将来の状態を可視化することを可能にする、手術の「プロセス表示」ビューを利用することができる。例えば、図7Cは、インプラント配置インターフェースを示す外科医に表示され得る一連の画像を示している。外科医は、例えば、特定の時間をCASS100のディスプレイ125に入力するか、又は触覚、口腔、若しくは他の命令を使用して、特定の時間増分でディスプレイを進めるか、若しくは巻き戻すようにシステムに指示することによって、これらの画像を循環させることができる。一実施形態では、プロセス表示は、AR HMDの外科医の視野の上部に提示され得る。一部の実施形態では、プロセス表示は、リアルタイムで更新され得る。例えば、外科医が計画された切除領域の周りに切除ツールを移動させると、その動作が手術の他の要因にどのように影響しているかを外科医が見ることができるように、プロセス表示を更新することができる。
【0139】
一部の実施形態では、機械学習モデルへの入力としてCASS100の現在の状態を単に使用するのではなく、モデルへの入力は、計画された将来の状態を含み得る。例えば、外科医は、自身が膝関節の特定の骨切除をすることを計画していることを示し得る。この表示は、外科手術コンピュータ150に手動で入力されてもよく、又は外科医が口頭で表示を提供してもよい。次いで、外科手術コンピュータ150は、手術に対する切断の予測された効果を示す、フィルムストリップを作製することができる。こうしたフィルムストリップは、例えば、企図される動作過程が実施される場合、患者の解剖学的構造の変化、インプラント位置及び配向の変化、並びに外科手術介入及び器具に関する変化を含む、外科手術がどのように影響を受けるかを特定の時間増分で示すことができる。外科医又は医療専門家は、企図される動作が実行される場合、企図される動作過程が外科手術計画にどのように影響するかをプレビューするために、手術の任意の時点で、このタイプのフィルムストリップを起動又は要求することができる。
【0140】
更に、十分に訓練された機械学習モデル及びロボットCASSを用いて、外科医が、例えば、手術の様々なステップの承認のみを提供することによって、最小限にしか関与する必要がないように、手術の様々な要素を自動化することができる。例えば、アーム又は他の手段を使用したロボット制御は、経時的に外科手術ワークフローに徐々に統合されてもよく、外科医はロボット操作と比較して、手動の相互作用に徐々に関与することが少なくなる。この場合の機械学習モデルは、CASS実装計画の特定の状態を達成するために、ロボットコマンドが何を必要とするかを学習することができる。最終的に、機械学習モデルは、初期状態から手術全体を予測し、かつプレビューすることができる、フィルムストリップ、又は類似のビュー若しくはディスプレイを作製するために使用され得る。例えば、患者情報、外科手術計画、インプラント特性、及び外科医の好みを含む、初期状態が定義され得る。この情報に基づいて、外科医は、手術全体をプレビューして、CASS推奨計画が外科医の期待及び/又は要件を満たしていることを確認することができる。更に、機械学習モデルの出力は、CASS100自体の状態であるため、コマンドを導出して、CASSの構成要素を制御して、各予測された状態を達成することができる。極端な場合、したがって、手術全体は、初期の状態情報のみに基づいて自動化され得る。
【0141】
点プローブを使用して、股関節手術中に重要な領域の高解像度を取得する
点プローブの使用は、「Systems and Methods for Planning and Performing Image Free Implant Revision Surgery」と題する、米国特許出願第14/955,742号に説明されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。簡潔に述べると、光学的に追跡された点プローブを使用して、新しいインプラントを必要とする標的骨の実際の表面をマッピングし得る。マッピングは、欠陥又は摩耗したインプラントの除去後、並びに任意の罹患した骨、又は別には望ましくない骨の除去後に実施される。残りの骨の全体を点プローブの先端で、ブラシで磨く、又は擦り取ることによって、複数の点が骨表面上に収集される。これは、骨をトレーシングするか又は「ペイントする」と称される。収集された点は、コンピュータ化された計画システム内の骨表面の三次元モデル又は表面マップを作成するために使用される。次いで、残りの骨の作成された3Dモデルを、手技及び必要なインプラントサイズの計画のための基礎として使用する。X線を使用して3Dモデルを決定する代替的な技術は、2019年4月17日に出願された「Three-Dimensional Selective Bone Matching」と題する、米国特許出願第16/387,151号、及び2020年2月13日に出願された「Three-Dimensional Selective Bone Matching」と題する、米国特許出願第16/789,930号に記載されており、その各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0142】
股関節用途では、点プローブペインティングを使用して、寛骨臼縁及び寛骨臼窩などの重要な領域で高分解能データを取得することができる。これにより、外科医は、リーミング開始前に詳細ビューを取得することが可能になり得る。例えば、一実施形態では、点プローブは、寛骨臼の床(窩)を識別するために使用され得る。当技術分野でよく理解されているように、股関節手術では、内側壁の破壊を避けるために、寛骨臼の床がリーミング中に損なわれていないことを確実にすることが重要である。内側壁が不注意で破壊された場合、手術は、骨移植の追加ステップを必要とする。これを念頭に置いて、点プローブからの情報を使用して、外科手術手技中の寛骨臼リーマに手術ガイドラインを提供することができる。例えば、寛骨臼リーマは、外科医が床に到達したとき、又はそうでなければ外科手術計画から逸脱したときに、外科医にハプティックフィードバックを提供するように構成され得る。代替的に、CASS100は、床に達したとき、又はリーマが閾値距離内にあるときに、リーマを自動的に停止し得る。
【0143】
追加の保護手段として、寛骨臼と内側壁との間の領域の厚さを推定することができる。例えば、寛骨臼縁及び寛骨臼窩が一旦ペイントされ、術前3Dモデルに登録されると、寛骨臼の表面の場所を内側壁の場所と比較することによって、厚さを容易に推定することができる。この知識を使用して、CASS100は、リーミング中に何らかの外科手術活動が寛骨臼壁を通して突出すると予測される場合に、警告又はその他の応答を提供し得る。
【0144】
点プローブはまた、3Dモデルを患者に配向するために使用される共通の参照点の高解像度データを収集するために使用され得る。例えば、ASIS及び恥骨結合のような骨盤平面の目印については、外科医は、骨をペイントして、真の骨盤平面を表すために、点プローブを使用し得る。これらの目印のより完全なビューを考慮すると、登録ソフトウェアは、3Dモデルを配向するためのより多くの情報を有する。
【0145】
点プローブはまた、インプラント配置の精度を高めるために使用され得る、近位大腿骨参照点を記述する高分解能データを収集するために使用され得る。例えば、大転子(GT)の先端と大腿骨頭の中心との間の関係は、一般に、股関節形成中に大腿骨構成要素を整列させるための参照点として使用される。アライメントは、GTの適切な場所に大きく依存する。したがって、一部の実施形態では、点プローブは、GTをペイントして、領域の高解像度ビューを提供するために使用される。同様に、一部の実施形態では、小転子(LT)の高解像度ビューを有することが有用であり得る。例えば、股関節形成術の間、Dorr分類は、手術中にプレスフィットを達成する能力を最大化して、術後の大腿骨構成要素の微小な動きを防止し、最適な骨の内成長を確実にする、ステムを選択するのに役立つ。当技術分野で理解されているように、Dorr分類は、LTでの管幅とLTの10cm下の管幅との間の比を測定する。分類の精度は、関連する解剖学的構造の正しい場所に大きく依存する。したがって、LTをペイントして、領域の高解像度ビューを提供することが有利であり得る。
【0146】
一部の実施形態では、点プローブは、大腿骨頸部をペイントして、外科医が頸部をどこで切断するかをより良く理解することを可能にする高分解能データを提供するために使用される。次いで、ナビゲーションシステムは、外科医が頸部切断を実施する際に、外科医を誘導することができる。例えば、当技術分野で理解されるように、大腿骨頸部の角度は、大腿骨シャフトの中心に1本の線を、大腿骨頸部の中心に第2の線を配置することによって測定される。したがって、大腿骨頸部(及び場合により、大腿骨シャフト)の高解像度ビューは、大腿骨頸部角度のより正確な計算を提供するであろう。
【0147】
高分解能大腿骨頭頸部データはまた、ソフトウェア/ハードウェアが、近位大腿骨の準備及び大腿骨構成要素の配置において外科医を支援する、ナビゲーションされた再表面化手技にも使用され得る。当技術分野で一般的に理解されるように、股関節の再表面化の間、大腿骨の頭部及び頸部は除去されず、むしろ、頭部は、滑らかな金属被覆でトリミングされ、かつ覆われる。この場合、外科医は、大腿骨頭部及びキャップをペイントして、その結果、それぞれの形状の正確な評価を理解し、大腿骨構成要素のトリミング及び配置を誘導するために使用し得ることが有利であろう。
【0148】
点プローブを使用した、患者の解剖学的構造への術前データの登録
上述のように、一部の実施形態では、3Dモデルは、関心対象の解剖学的領域の2D又は3D画像に基づいて、術前段階の間に開発される。こうした実施形態では、3Dモデルと外科手術部位との間の登録は、外科手術手技の前に実施される。登録された3Dモデルは、患者の解剖学的構造及び外科手術ツールを術中に追跡及び測定するために使用され得る。
【0149】
外科手術手技中、この術前3Dモデルの患者の解剖学的構造への登録を容易にするために、目印が取得される。膝の手技については、これらの点は、大腿骨頭部の中心、遠位大腿骨軸の点、内側及び外側上顆、内果及び外果、近位脛骨機械軸の点、及び脛骨A/P方向を含むことができる。股関節手技については、これらの点は、上前腸骨棘(ASIS)、恥骨結合、寛骨臼縁に沿った、及び半球内の点、大転子(GT)、及び小転子(LT)を含むことができる。
【0150】
改訂手術では、外科医は、解剖学的欠陥を含む特定の領域をペイントして、インプラント挿入のより良好な可視化及びナビゲーションを可能にし得る。これらの欠陥は、術前画像の分析に基づいて識別され得る。例えば、一実施形態では、各術前画像は、(すなわち、欠陥のない)「健康な」解剖学的構造を示す画像のライブラリと比較される。患者の画像と健康な画像との間のいくつかの著しい偏差は、潜在的な欠陥としてフラグ付けされ得る。次に、手術中、外科医は、CASS100のディスプレイ125上の視覚的警報を介して、欠陥の可能性について警告を受け得る。次に、外科医は、領域をペイントして、外科手術コンピュータ150に、潜在的な欠陥に関する更なる詳細を提供することができる。
【0151】
一部の実施形態では、外科医は、骨の解剖学的構造の内部切開の登録のための非接触方法を使用し得る。例えば、一実施形態では、レーザ走査が、登録のために採用される。レーザストライプは、関心対象の解剖学的領域上に投影され、領域の高さの変形は、線の変化として検出される。白色光干渉法又は超音波法などの他の非接触光学法は、代替的に、表面高さ測定又は解剖学的構造の登録に使用され得る。例えば、超音波技術は、登録点と登録される骨との間に軟部組織がある場合(例えば、ASIS、股関節外科手術における恥骨結合)に有益であり、それによって、解剖学的平面のより正確な定義を提供することができる。
【0152】
膝蓋骨置換
本明細書で論じられるように、膝蓋骨置換は、術前計画を提供するために自動化され得る。理想的には、計画情報は、TKA手技の前に外科医に伝達されてもよく、患者特異的外科手術器具を製造するために追加的に使用されてもよい。更に、例えば、ロボット支援TKAにおいて、術中計画及びフィードバックが提供されてもよい。ロボット支援外科手術経験は、様々なタイプの膝蓋骨情報を段階的なワークフローで提供することによって強化され得る。
【0153】
ここで図8を参照すると、一実施形態による、患者に対する膝蓋骨置換を計画する例示の方法が示されている。方法800は、患者の解剖学的構造に関連する入力を受信すること(805)と、膝蓋大腿関節の1つ以上の生体力学的測定値を決定すること(810)と、入力に基づいて解剖学的構造の三次元モデルを生成すること(815)と、三次元モデルを目印付けすること(820)と、3Dモデルに基づいて膝蓋骨を特徴付けること(825)と、3Dモデルに対してインプラントを適合及びサイズ設定すること(830)と、関節の生体力学に基づいてインプラント位置及び配向を最適化すること(835)と、結果を生成及び出力すること(840)と、を含む。
【0154】
一部の実施形態では、入力(すなわち、患者データセット)を受信すること(805)は、年齢、性別、体重、身長、人種、BMIなどを含む患者の人口統計学的情報を受信することを含み得る。一部の実施形態では、患者データセットは、医療撮像システムから取得される撮像データを含む。一部の実施形態では、撮像データは、x線撮像などの2D撮像から取得される。一部の実施形態では、撮像データは、MRI及び/又はCT撮像などの3D撮像から取得される。追加的又は代替的なタイプの従来的な撮像モダリティは、当業者に明らかであろうように、使用され得る。一部の実施形態では、患者データセットは、患者の解剖学的構造を表す仮想データ、例えば、点群又は点の配列を含む。例えば、代表的な点群又は点の配列は、患者の解剖学的構造に対して作成され、その後の手技で使用するために記憶され得る。したがって、入力を受信すること(805)は、点群又は点の配列をデータベース又は別の記憶媒体から受信することを含み得る。
【0155】
膝蓋大腿関節の生体力学的測定値が、入力に基づいて決定され得る(810)。一部の実施形態では、生体力学的測定値を決定すること(810)は、撮像データから1つ以上のパラメータを識別又は測定することを含む。しかしながら、生体力学的測定値は、患者データセット中の追加のタイプのデータに基づいて決定され得る。一部の実施形態では、1つ以上のパラメータは、膝蓋大腿関節の機械的軸を含む。一部の実施形態では、1つ以上のパラメータは、術前の脚の変形の測定値を含む。膝蓋大腿関節の生体力学に関連する膝の追加的又は代替的な測定値が評価され得る。一部の実施形態では、測定値は、ユーザ入力を通して決定される。例えば、1つ以上のパラメータは、入力デバイスを通した(例えば、ソフトウェアアプリケーションのユーザインターフェースを通した)ユーザ入力に基づいて、ユーザによってMRI又はX線画像上で識別され得る。別の実施例では、1つ以上のパラメータは、過去の患者の過去の画像データに基づいて、及び/又は機械学習技術の使用を通して、プロセッサによって自動的に識別され得る。
【0156】
患者の解剖学的構造の三次元モデルは、確立された方法に従って入力から生成され得る(815)。一部の実施形態では、3Dモデルは、コンピュータ支援設計(CAD)モデルである。一部の実施形態では、骨モデリングソフトウェアアプリケーションが、3Dモデルを生成する(815)ために使用され得る。一部の実施形態では、3Dモデルは、患者の解剖学的構造に関連する撮像データに基づいて生成される(815)。例えば、3Dモデルは、MRI又はCT画像データに基づいて生成され得る(815)。一部の実施形態において、3Dモデルは、追加の撮像データに更に基づいて生成される。例えば、撮像データがX線又は他の2D撮像データである場合、骨モデリングアプリケーションは、患者の撮像データとともにテンプレート骨モデル及び/又は過去の撮像データを使用して、患者の解剖学的構造の3Dモデルを生成し得る。
【0157】
一部の実施形態では、撮像データは、患者の大腿骨、脛骨、及び/又は膝蓋骨の3Dモデルを生成する(815)ために使用され得る。例えば、各骨は、残りの骨に対して操作され得る、個々の別個の3D物体として生成され得る(815)。しかしながら、一部の実施形態では、1つ以上の骨は、3Dモデルで連結又は相互接続され得る。
【0158】
結果的に得られる3Dモデルは、様々な様式で目印付けされ得る(820)。一部の実施形態では、結果的に得られる3Dモデルは、プロセッサ上で実行される目印付けソフトウェアアプリケーションにインポートされ、その中で自動目印付けされ得る。例えば、3Dモデルは、SMITH AND NEPHEW,INC.からのLIFEMOD(商標)シミュレーションソフトウェア内のVOLT Orientation and Landmarking Toolを使用して、自動目印付けされ得る。例えば、患者の解剖学的構造上の1つ以上の目印は、過去の患者の過去の画像データに基づいて、及び/又は機械学習技術の使用を通して、3Dモデル上で自動的に識別及び表示され得る。しかしながら、一部の実施形態では、目印は、ユーザ入力に基づいて手動で実施され得る。例えば、ユーザは、ユーザインターフェース上で3Dモデルを視認して、入力デバイスを介して様々な目印の場所を識別し得る。一部の実施形態では、手動目印及び自動目印の組み合わせが使用され得る。
【0159】
一部の実施形態では、目印付けすること(820)は、3Dモデル上の1つ以上の目印の場所を識別することを含む。ここで図9A及び9Bを参照すると、一実施形態による、識別された膝蓋骨目印を有する膝蓋骨の3Dモデルの正面図及び側面図が示されている。一部の実施形態では、目印は、膝蓋骨目印を含む。一部の実施形態では、膝蓋骨目印は、様々なベクトルの方向で膝蓋骨上に位置する極点(すなわち、最遠点)を含む。例えば、図9A及び9Bに示されるように、膝蓋骨目印は、内側極点、外側極点、上方極点、下方極点、前方極点、後方極点、下関節極点(すなわち、最も後方かつ下方)などを含み得る。一部の実施形態では、目印は、後方隆起、滑車に関連するパラメータ、大腿四頭筋角度(Q角度)などを含む。一部の実施形態では、目印は、膝蓋骨の重心、後方稜点、後方稜線、周囲点、内側ファセット中心点、外側ファセット中心点、ファセット軸、及び/又は膝蓋骨中立点を含み得る。しかしながら、本明細書では、膝蓋大腿関節に関連する追加のタイプの目印が意図されている。追加の解剖学的目印が、表1に識別されている。
【0160】
一部の実施形態では、目印付けすること(820)は、識別された目印に基づいて患者の解剖学的構造の1つ以上の測定値を決定することを追加的に含み得る。ここで図10A及び10Bを参照すると、一実施形態による、識別された膝蓋骨測定値を有する膝蓋骨の3Dモデルの正面図及び側面図が図示される。一部の実施形態では、測定値は、全体的な膝蓋骨寸法を含む。例えば、図10A及び10Bに示されるように、膝蓋骨寸法は、膝蓋骨の幅(W1)、膝蓋骨の高さ(H)、及び/又は膝蓋骨の厚さ(T1)を含み得る。一部の実施形態では、膝蓋骨寸法は、特定の場所又は領域で測定される。例えば、膝蓋骨寸法は、目印に関連する場所で測定され得る。一部の実施形態では、膝蓋骨寸法は、最大、例えば、最大幅、最大高さ、及び/又は最大厚さとして測定される。一部の実施形態では、測定値は、膝蓋骨の領域又は特定の寸法を含む。例えば、図10A及び10Bに示されるように、領域寸法は、横方向ファセット幅(LF1)、内側ファセット幅(MF1)、関節表面高さ(H1)などを含み得る。一部の実施形態では、測定値は、膝蓋骨、例えば、膝蓋骨後方角度に関連する角度を含む。追加の意図される解剖学的測定値が表1に識別されている。目印は、膝蓋骨に関して本明細書に一般的に説明されているが、大腿骨及び/又は脛骨の測定値は、当業者に明らかであろうものと同様の様式で、膝蓋骨に加えて決定され得ることが理解されるべきである。
【表3】
【0161】
ここで図20を参照すると、一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデルを自動的に目印付けする(すなわち、図8の目印付けする(820)ステップ)ための例示のワークフローが示されている。しかしながら、当然のことながら、図示されたワークフロー2000は、本質的に例示であり、本明細書の開示の範囲を逸脱することなく、様々な追加、省略、及び/又は修正が行われ得る。
【0162】
一部の実施形態では、ワークフローは、3Dモデルの膝蓋骨固体を読み取ることと、医療画像データにおけるように、膝蓋骨固体を3Dモデルにおいて同一に位置決めすることとを含む、アライメントステップ2005を含む。
【0163】
一部の実施形態では、ワークフローは、大腿骨及び脛骨の目印に基づいて、患者の主軸を生成すること(2010)を含む。主軸は、(2010A)大腿骨近位及び脛骨遠位シャフト重心点からの上ベクトル、(2010B)大腿骨内側及び外側上顆点からの左ベクトル、並びに/又は(2010C)大腿骨遠位及び前方溝点からの画面の奥行き方向を含み得る。
【0164】
一部の実施形態では、ワークフローは、患者の主軸を使用して、それぞれのベクトル(内側、外側、上方、下方、前方、後方、下関節)の方向の最遠点(すなわち、極点)を選択することによって、膝蓋骨を自動的に目印付けすること(2015)を含む。
【0165】
一部の実施形態では、ワークフローは、膝蓋骨固体を包囲する境界ボックスの中心として、膝蓋骨固体の重心を計算すること(2020)を含む。
【0166】
一部の実施形態では、ワークフローは、(2025A)1mmの垂直増分で、横平面で膝蓋骨固体を切除すること、(2025B)各切除で後方極点を印すこと、及び(2025C)上関節点と下関節点との間の後方稜点のセットに三次元で線を適合させることによって、垂直稜線又は後方稜線を作成すること(2025)を含む。一部の実施形態では、後方垂直隆起の位置は、以前に画定され、かつ1mmの増分で、水平面で膝蓋骨を実質的に切除する目印を使用して計算される。各スライスについて、最も後方の点が計算される。例えば、図11A及び11Bは、一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデル上の例示の後方稜点のセットの正面図及び側面図を示している。後方垂直隆起の位置を正確に見つけるために、次いで、線が、関節表面上の全ての後方稜点(下関節点の下の点を除く)を通って適合される。
【0167】
一部の実施形態では、ワークフローは、(2030A)後方及び上方軸の合計として半径方向ベクトルを作成し、最も遠い周囲点を見つけること、(2030B)半径方向ベクトルを、例えば、限定なしで、2度の増分で回転させ、各増分で全ての固有点を選択すること、及び(2030C)重心からの距離に基づいて、周囲点を内側及び外側の周囲のセットに分割することによって、周囲点を作成すること(2030)を含む。例えば、図12Bは、一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデル上の例示の後方稜点のセットを示している。
【0168】
一部の実施形態では、ワークフローが、(2035A)全てのそれぞれの周囲点及び稜点の周りに境界ボックスを作成すること、(2035B)境界ボックスの重心にファセット点を配置すること、(2035C)ファセット点を膝蓋骨の表面に移動させること(まだその表面に位置していない場合)、(2035D)Z成分が膝蓋骨表面に垂直であるようにファセット点を位置決めすること、及び(2035E)ファセット点の間にファセット軸を作成することによって、内側及び外側ファセット中心点(すなわち、ファセット中点)及びファセット軸を作成すること(2035)を含む。例えば、図12A及び12Bは、一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデル上の内側及び外側のファセット点及びファセット軸の対向する図を示している。
【0169】
一部の実施形態では、ワークフローは、(2040A)境界ボックスの重心に点を位置決めすること、(2040B)後方稜線に平行なZ成分と配向すること、及び(2040C)X成分がファセット中点線に平行であるようにZ軸を中心として回転させることによって、膝蓋骨中立点を生成すること(2040)を含む。
【0170】
様々な追加的又は代替的な目印付け計算が、本明細書に説明されるワークフローの一部として実施され得ることが企図される。一部の実施形態では、目印付けすること(820)は、後方膝蓋骨角度を計算することを含む。例えば、後方膝蓋骨角度は、内側及び外側のファセットの平面に基づいて計算され得る。図13は、一実施形態による、膝蓋骨の3Dモデル上のおよその内側及び外側平面を示している。図13に示されるように、内側及び外側平面の各々の法線を引くことができ、その間の角度が計算されて、後方膝蓋骨角度を決定し得る。
【0171】
一部の実施形態では、目印付けすること(820)は、膝蓋骨追跡に関連する情報を提供する、滑車溝幾何学的形状を決定することを含む。一部の実施形態では、スイーププロセスが、前後ビューにおいて定義された増分で大腿骨スライスを作成し、各スライスにおける溝点を決定する。図14Aは、一実施形態による、大腿骨の3Dモデルに沿って識別された溝点を示している。一部の実施形態では、大腿骨の溝点が、滑車溝パラメータを計算するために使用され得る。例えば、大腿骨の溝点は、滑車溝アライメント、滑車溝配向、滑車溝オフセット、滑車溝半径などを計算するために使用され得る。滑車溝の評価は、患者のリスクを評価すること、及び/又は膝蓋骨の追跡不良の確率を予測することに関連し得る。
【0172】
一部の実施形態では、目印付けすること(820)は、自己大腿四頭筋角度(Q角度)を計算することを含む。一部の実施形態では、Q角度は、大腿骨、脛骨、及び/又は膝蓋骨の目印に基づいて計算され得る。一部の実施形態では、Q角度は、第1の線と第2の線との交点で、正面で計算される。第1の線は、大腿骨近位目印と膝蓋骨の中心との間に延在する線として定義され得る。第2の線は、膝蓋骨の中心と脛骨結節目印との間に延在する線として定義され得る。図14Bは、一実施形態による、膝関節の3Dモデル上で識別された大腿骨近位目印、膝蓋骨の中心、及び脛骨結節目印を示している。第1の線と第2の線との間の角度が、Q角度を決定するために測定され得る。
【0173】
再び図8を参照すると、膝蓋骨を特徴付けること(825)は、膝蓋骨の形態を分類することを含み得る。一部の実施形態では、膝蓋骨の形状は、Wiberg分類方法に基づいて分析及び分類される。Wiberg分類では、膝蓋骨の形状は、内側ファセット及び外側ファセットの寸法に基づいて分類され得る。例えば、内側及び外側ファセットがおよそ等しいサイズであり、後方隆起が膝蓋骨の中心にほぼ位置する場合、膝蓋骨は、「正常タイプ1」に分類され得る。別の実施例では、内側ファセットが外側ファセットよりも小さい場合、膝蓋骨は、「正常タイプ2」に分類され得る。別の実施例では、垂直隆起が内側に位置し、内側ファセットが外側ファセットよりも小さく、前向きに傾斜している場合、膝蓋骨は、「正常タイプ3」に分類され得る。
【0174】
一部の実施形態では、膝蓋骨を特徴付けることは、1つ以上のパラメータに従って、滑車溝の形態を分類することを含み得る。例えば、滑車溝アライメント又は配向が決定され得る。別の実施例では、滑車溝オフセットが決定され得る。別の実施例では、滑車溝半径が決定され得る。しかしながら、滑車溝の1つ以上の分類は、目印付けすること(820)の間に代替的に決定され得る。
【0175】
もう一度図8を参照すると、インプラントは、膝関節の3Dモデルに適合及びサイズ設定され得る(830)。インプラントの適合及びサイズ設定(830)は、インプラント(例えば、製造元及び/若しくはモデル、インプラントサイズ、並びに/又はインプラント厚さを含むインプラントファミリー)を選択することと、3Dモデル上の1つ以上の仮想切除平面を作成することと、3Dモデルへのインプラントの適合を最適化することと、3Dモデルを切除することと、選択されたインプラントを検証することと、を含み得る。
【0176】
インプラントは、本明細書に説明される様々な識別された目印及び計算に基づいて選択され得る。一部の実施形態では、患者の膝蓋骨の3Dモデルと関連付けられた特定のデータは、過去の及び/又は経験的膝蓋骨データと比較され得る。例えば、3Dモデル及び患者の様々なパラメータ(例えば、膝蓋骨及び滑車溝のサイズ、形状、分類、祖先、及び本明細書に説明される他のデータ)は、5つの異なる祖先超母集団、すなわち、アフリカ人、東アジア人、南アジア人、混血アメリカ人、及び/又はヨーロッパ人に関して3Dモデルを分類するための過去の患者データと比較され得る。一部の実施形態では、3Dモデルのパラメータは、5つの超母集団からの個人で構成される参照データセット(例えば、データベースからの)と比較され得る。一部の実施形態では、参照データセットは、5つの超母集団の各々に対する代表的な膝蓋骨3Dモデルを含み得る。一部の実施形態では、参照データセットは、各超母集団に対する複数の代表的な3Dモデルを含み得る。一部の実施形態では、インプラントファミリー、サイズ、及び/又は厚さなどのインプラントパラメータは、3Dモデルが整列する超母集団に基づいて決定され得る。一部の実施形態では、3Dモデルとの相当程度の類似性を示す、過去の患者の特定の過去のデータセットが、インプラントパラメータを選択するために使用され得る。例えば、過去の患者がTKA手技を受けた場合、過去のケースで使用されるインプラントパラメータは、現在のケースにおけるインプラントパラメータの選択に関連し得る。したがって、既知の5つの祖先群及び/又は特定の過去の患者のモデルに対する3Dモデルのパラメータに基づいて、最適な膝蓋骨機能を有する最適な膝蓋骨インプラントは、患者の自己解剖学的構造に適合するように選択され得る。
【0177】
一部の実施形態では、1つ以上の仮想切除平面が作成され、3Dモデルは、ステップ810~825で計算された膝蓋骨座標系及び膝蓋骨測定値に基づいて切除される。一部の実施形態では、仮想切除平面は、1つ以上の標的術後膝蓋骨パラメータ及び/又は既知のインプラントサイズに基づいて作成される。例えば、仮想切除平面は、異なる膝蓋骨厚さを有する異なるインプラントサイズを考慮するために、膝蓋骨の複数の深さで作成され得る。一部の実施形態では、仮想切除平面は、既知の標的術後膝蓋骨厚さに基づいて作成され得る。一部の実施形態では、術後膝蓋骨厚さは、術前膝蓋骨厚さに基づいてもよく、例えば、実質的にそれと同様であってもよい。一部の実施形態では、術後膝蓋骨厚さは、過去のデータ又は経験的データ(例えば、過去の患者データ及び/又は5つの超母集団のうちの1つと関連付けられたデータ)に基づき得る。
【0178】
3Dモデルへのインプラントの適合の最適化は、当業者に明らかである任意の公知の様式で完了され得る。一部の実施形態では、選択されたインプラントのインプラントモデル(例えば、CADモデルなどの3Dモデル)は、適合を最適化するために、患者の解剖学的構造の3Dモデルに関して評価され得る。例えば、選択されたインプラントに対するインプラントモデルは、インプラントデータベースから受信され得る。一部の実施形態では、中立点は、本明細書に説明される各骨(大腿骨、脛骨、及び膝蓋骨)に対して決定され、インプラントは、骨モデルの中立点をインプラントの中立点に整列させることによって最初に位置決めされ得る。例えば、図15A及び15Bは、実施形態による、膝蓋骨の3Dモデルの中立点に整列された膝蓋骨インプラントモデルの中立点の側面図及び正面図を示している。一部の実施形態では、初期位置決めは、外科医の選考、インプラント設計の制約、切除深さなどのうちの1つ以上に基づく。適合は、例えば、標的適合パラメータ、過去の患者データ、及び/又は機械学習技術に基づいて、プロセッサによって最適化され得る。その後、インプラントパラメータ及び適合が検証され得る。一部の実施形態では、検証は、ユーザ入力を含む。一部の実施形態では、インプラントの精密な位置決めは、検証中に調整され得る。例えば、ユーザは、インプラントの位置又は適合を手動で調整し得る。一部の実施形態では、検証が失敗及び/又は却下される場合、プロセスは、インプラントを再選択する、及び/又はインプラントを再適合することによって繰り返され得る。本明細書に説明される任意の数のステップが自動化され得るが、外科医により大きな制御を提供するために、インプラント選択及び適合プロセスにおいてユーザ入力が提供され得ることが理解されるべきである。
【0179】
検証が成功すると、インプラントファミリー(例えば、製造元及び/又はモデル)、サイズ、厚さ、及び適合が最終確定され得、膝蓋骨骨モデルは、決定された適合に従って切除され得る。一部の実施形態では、切除は、膝蓋骨測定値、インプラント寸法、選択されたインプラント配置、及び選択されたインプラントカバレッジのうちの1つ以上に基づく。図16A及び16Bは、実施形態によるインプラントモデルの位置に基づく、膝蓋骨の切除された3Dモデルの側面図及び正面図を示している。図17A及び17Bは、一実施形態による、切除された3Dモデル上のインプラントモデルの最終的な適合の側面図及び正面図を示している。
【0180】
再び図8を参照すると、インプラント位置及び配向は、関節の生体力学に基づいて最適化され得る(835)。説明されたように膝蓋大腿部の測定値及び形状分類に基づいて、推奨された膝蓋骨構成要素サイズが見つかると、靱帯(又は他の軟部組織)バランスアルゴリズムが、膝蓋骨構成要素の最適な位置及び配向を検証するために使用され得る。一部の実施形態では、患者の解剖学的構造を表す1つ以上の3D筋骨格モデルが、生体力学データベースに記録された様々な生体力学シミュレーション及び応答に使用され得る。一部の実施形態では、3D筋骨格モデルは、特定の膝蓋骨形態及び/又は靭帯状態の評価を含む、個別の患者状態に対して特異的であり得る。一部の実施形態では、3D筋骨格モデルは、5つの超母集団、他の収集された人口統計学的情報、本明細書に説明される解剖学的構造の様々な寸法などに関する分類に基づき得る。一部の実施形態では、3D筋骨格モデルは、膝蓋骨形態及び/又は靱帯状態を含む、一般的又は標準的な患者状態を表し得る。
【0181】
特定の事例では、患者特異的情報に対応する3D筋骨格モデルは、3D筋骨格モデルのデータベースから選択され得る。一部の実施形態では、シミュレーションは、ジャストインタイムのシミュレーションを実施する必要性なしで、結果がアクセスされ得るように、実施され、データベース内に記憶され得る。例えば、様々なシミュレーションが、各3D筋骨格モデルを用いて実施され得、1つ以上の方程式が導出され得る。したがって、データベースは、特定の3D筋骨格モデルと関連付けられた方程式又は方程式セット、及び患者の解剖学的構造と関連付けられた変数を取得するためにアクセスされ得、選択されたインプラントは、関節(例えば、内側側副靱帯、外側側副靱帯、前十字靱帯、及び/又は後十字靱帯)中の軟部組織の生体力学を計算するために入力され得る。一部の実施形態では、生体力学的情報は、例えば、動きの範囲にわたる、関節の様々な位置における靭帯の歪み及び/又は靭帯の長さなどの情報を提供し得る。一部の実施形態では、生体力学的情報は、運動曲線として出力され得る。一部の実施形態では、生体力学は、分析応答表面として出力され得る。例えば、図18は、選択されたインプラントパラメータに対する膝の動きの範囲を通して、様々な位置における膝の生体力学(すなわち、MCL長さ、MCL歪み、LCL長さ、LCL歪み)を表示する分析応答表面を示している。しかしながら、当業者に明らかであろうように、生体力学的情報の出力のための追加的又は代替的なフォーマットが本明細書で意図されている。
【0182】
一部の実施形態では、生体力学的情報は、1つ以上の生体力学的標準に基づいて評価され得る。例えば、生体力学的標準は、所定の歪み閾値、例えば、動きの範囲を通した最大歪み及び/又は動きの範囲を通した最小歪みを含み得る。生体力学的情報が評価の目的を満たす場合、膝蓋骨インプラントのサイズ、位置、及びアライメントが最終確定される。生体力学的情報が評価の目的を満たさない場合、インプラント位置及び配向が調整され得、生体力学的情報は、3D筋骨格モデルを使用して再計算されて、新しいインプラント位置及び配向を評価し得る。一部の実施形態では、インプラント位置は、自動的に最適化及び選択され得る(例えば、標的生体力学的パラメータ、過去の患者データ、及び/又は機械学習技術に基づいてプロセッサによって)。一部の実施形態では、インプラント位置及び配向は、ユーザ入力を含む。一部の実施形態では、インプラントの精密な位置及び/又は配向は、検証中に調整され得る。例えば、ユーザは、インプラントの位置及び/又は配向の適合を手動で調整し得る。更に、追加のパラメータは、生体力学的評価中に調整され得る。例えば、適切な生体力学的出力を取得するために、生体力学的シミュレーションの結果に基づいて、以前に選択されたインプラントサイズを変更することが望ましい場合がある。
【0183】
再び図8を参照すると、結果は、様々な様式で生成及び出力され得る(840)。一部の実施形態では、結果は、従来的なTKA手術の前に外科医によって使用するための患者報告書(例えば、術前患者評価)として出力される(840)。一部の実施形態では、患者報告書は、主要寸法、精密なコンピュータ生成測定値、膝蓋骨及び/又は滑車溝形状の評価、膝蓋骨及び/若しくは滑車分類、術前機械的軸、術前アライメント、並びに/又は術前変形レベルに関連する情報を含む。一部の実施形態では、患者報告書は、膝蓋骨追跡と関連付けられたスコア又はメトリックを含む。例えば、スコア又はメトリックは、リスクを評価する、及び/又は膝蓋骨追跡不良の可能性を予測し得る。一部の実施形態では、患者報告書は、提案される最適なインプラントのサイズ、位置及び/又は配向を含み、一部の実施形態では、患者報告書は、構成要素配置に関する外科手術感受性の評価を含む。一部の実施形態では、患者報告書は、後方膝蓋骨接触圧、接触面積及びせん断力などの推定値を含む。しかしながら、本明細書に説明されるパラメータ、寸法、計算、及び/又は他の情報の任意の数が、患者報告書に含まれ得る。
【0184】
一部の実施形態では、結果は、術前外科手術計画及び/又は患者特異的器具(例えば、切断ジグ)の製造のための計画若しくはモデルとして出力される(840)。したがって、器具は、最適なインプラントサイズ、位置、及びアライメント情報などの特定の情報が提供される、承認された外科手術計画に従って製造され得る。一部の実施形態では、術前外科手術計画は、術前機械的軸、術前変形レベル、インプラントサイズ、膝蓋骨厚さ、膝蓋骨高さ、膝蓋骨直径、1つ以上の仮想骨切断、膝蓋骨切除(例えば、mm単位の深さ)、膝蓋骨アライメントなどを含む。一部の実施形態では、術前外科手術計画は、膝蓋骨追跡と関連付けられたスコア又はメトリックを含む。例えば、スコア又はメトリックは、リスクを評価する、及び/又は膝蓋骨追跡不良の可能性を予測し得る。一部の実施形態では、術前外科手術計画は、膝蓋大腿関節の重要な寸法及び/又は生体力学に関する情報を含む。しかしながら、本明細書に説明されるパラメータ、寸法、計算、及び/又は他の情報の任意の数は、術前外科手術計画に含まれ得る。
【0185】
一部の実施形態では、結果は、ロボット支援TKA手術のための術中外科手術計画として出力される(840)。ロボット支援外科手術経験は、段階的な従い易いワークフローで本明細書に説明される所定の膝蓋骨情報を提供することによって強化され得る。一部の実施形態では、最適な膝蓋骨構成要素のサイズ、位置、配向、及びアライメントは、膝蓋骨高さ、直径、膝蓋骨厚さ、形態学的分類、Q角度、軟部組織バランス、術前脚アライメント、術前変形レベルなどに基づいて提案され得る。一部の実施形態では、術中外科手術計画は、外科手術システム(例えば、図1のCASS100)のディスプレイ上の外科手術手技全体を通して段階的な指示を含む。一部の実施形態では、術中外科手術計画は、外科手術システムを通して外科手術ワークフローで外科医によって調整され得る(例えば、膝蓋骨構成要素を操作及び/又は再配置することによって)。一部の実施形態では、術中外科手術計画は、外科手術手技中に視認又は表示され得る構成要素配置に基づく、外科手術感度分析結果を含む。一部の実施形態では、術中外科手術計画は、膝蓋大腿関節の生体力学、アライメント、及び3つのインプラント構成要素間の空間関係に関連する情報を含む、術後膝蓋骨追跡評価を含む。しかしながら、本明細書に説明される任意の数のパラメータ、寸法、計算、及び/又は他の情報は、術中外科手術計画に含まれ得る。
【0186】
一部の実施形態では、結果は、ローカルデバイス又は遠隔デバイスに対して、コンピュータ可読形式で出力される(840)。一部の実施形態では、結果は、コンピュータ可読記憶媒体、コンピュータ(例えば、ラップトップコンピュータ若しくはデスクトップコンピュータ)、サーバ、データベース、外科手術システム(例えば、図1のCASS100)、外科手術計画システム、又は任意の他のデバイスに出力される(840)。一部の実施形態では、結果は、限定されるものではないが、有線接続、無線接続(例えば、Bluetooth、WiFiなど)、ローカルエリアネットワーク、インターネット、及び/又はセルラーネットワークを含む、任意の公知の伝送手段によって出力される(840)。
【0187】
本明細書に説明される主題の別の特徴では、方法800は、説明されるステップの各々を実施するように構成されたシステムに実装され得る。例えば、システムは、少なくとも1つのプロセッサと、命令を含むコンピュータ可読記憶媒体と、を備え得、命令は、実行されたときに、少なくとも1つのプロセッサに、患者の解剖学的構造に関連する入力を受信することと、膝蓋大腿関節の1つ以上の生体力学的測定値を決定することと、入力に基づいて患者の解剖学的構造の三次元モデルを生成することと、三次元モデルを目印付けすることと、3Dモデルに基づいて膝蓋骨を特徴付けることと、3Dモデルに対してインプラントを適合及びサイズ設定することと、関節の生体力学に基づいてインプラント位置及び配向を最適化することと、本明細書に説明されるように結果を生成及び出力すること(840)と、を行わせる。一部の実施形態では、システムは、患者の解剖学的構造に関連する入力を受信し、ユーザ入力を少なくとも1つのプロセッサに送信するように構成された入力デバイスを更に備え得る。入力デバイスはまた、本明細書に説明される様々な段階で、ユーザ入力及び/又はフィードバックを受信するように構成され得る。入力デバイスは、当業者に明らかであろう任意の様式で実装され得る。
【0188】
本明細書に説明されるシステム、及び方法は、従来的なシステム及び方法に勝るいくつかの利点を提示する。本明細書に説明される主題は、外科医のための様々なステップ及び意思決定を単純化及び/又は排除し、それによってTKA手技の完了と関連付けられた認知負荷を低減する、ガイド付きワークフローを提供する。従来的な方法は、外科医の技能及び経験に大きく依存するが、本明細書に説明される方法は、それにあまり依存せず、経験の少ない外科医にとって特に有利であり得る。本明細書に説明される方法は、評価及び結果をより効率的な様式で提供し、したがって、手術室で必要とされる時間を低減し得る。更に、本明細書に説明されるシステム及び方法は、より少ない外れ値で、より高い正確度及びより高い程度の再現性を結果的にもたらす。結果として、術後の痛み及び膝蓋大腿部の合併症の可能性が低減され、膝の安定性が改善される可能性が高くなり、術後のリハビリテーションが加速される潜在性が高くなる。
【0189】
本明細書に説明されるようなデバイス、システム、及び方法は、説明される特定の実施形態に関して限定されることを意図するものではなく、これらは、様々な特徴の図解としてのみ意図されている。当業者には明らかであるように、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、デバイス、システム、及び方法に対する多くの修正及び変形を行うことができる。
【0190】
一部の実施形態では、本明細書に説明される方法及びシステムは、術前の撮像なしで利用され得る。例えば、患者の解剖学的構造に関連する情報は、追加的な手段を介して受信され得る。一部の実施形態では、患者の解剖学的構造上の表面点の収集は、目印、寸法、形状、形態、及び膝蓋骨、大腿骨、脛骨などに関連する他のパラメータを識別するために、術中に収集され得る。したがって、収集された情報は、本明細書に説明されるように入力として受信され、当業者に明らかであろう軽微な修正を伴う同様の様式で、後続するステップを実施するために使用され得る。
【0191】
一部の実施形態では、インプラントファミリー(例えば、メーカー及び/又はモデル)に加えて、サイズ及び厚さ、様々なインプラント形状が、自己膝蓋骨形状に合致するように利用可能であり得る。したがって、インプラント形状は、患者の解剖学的構造に最も合致するように、及び/又は最も望ましい術後関節機能を提供するように選択され得る。一部の実施形態では、インプラント形状選択は、自動化され得る。一部の実施形態では、インプラント形状選択は、術前及び/又は術中のユーザ入力に基づいて完了され得る。
【0192】
膝蓋骨のための追跡マーカ
本明細書に説明されるように、ロボット外科手術システムによる膝蓋骨の術中追跡を容易にするために、膝蓋骨への取り付けに好適な追跡マーカを有することが有利であろう。理想的には、追跡マーカは、膝蓋骨への損傷を制限し、膝蓋骨の不規則なサイズ及び形状を考慮しながら、膝蓋骨からの容易な挿入及び取り外しができるべきである。更に、追跡マーカは、膝蓋骨の位置及び配向の両方の追跡を容易にするように構成されるべきである。
【0193】
ここで図21を参照すると、一実施形態による、膝蓋骨を追跡するためのトラッカユニットが示されている。トラッカユニット2100は、支持体2105及び基準マーカ2110を備える。図21に示されるように、支持体2105は、基準マーカ2110を受容するように構成されたインターフェース部分2105Aと、トラッカユニット2100を膝蓋骨に固定するように構成された装着部分2105Bと、を備え得る。一部の実施形態では、支持体2105は、画鋲と同様の全体的な設計を含む。
【0194】
インターフェース部分2105Aは、基準マーカ2110が固設され得るプラットフォームを備え得る。一部の実施形態では、インターフェース部分2105Aは、基準マーカ2105Aを受容するための実質的に平坦な表面を形成し得る。一部の実施形態では、インターフェース部分2105Aは、基準マーカ2110の形状に相補的な形状を有し、それによって基準マーカ2105Aを受容するためのレセプタクルを形成し得る。例えば、基準マーカ2110が実質的に球状である場合、インターフェース部分2105Aは、部分的球(すなわち、球状ドーム又はキャップ)を形成して、基準マーカの外面と嵌合するために、凹状であってもよい。
【0195】
一部の実施形態では、トラッカユニット2100は、インターフェース部分2105Aに恒久的に固定された基準マーカ2110を備え得る。例えば、基準マーカ2110は、接着剤を用いてインターフェース部分2105Aに固定され得る。別の実施例では、爪又は別の機械的留め具が、基準マーカ2110をインターフェース部分2105Aに固設し得る(例えば、基準マーカ2110を通過し、インターフェース部分2105A内に進入する爪)。別の実施例では、基準マーカ2110及び支持体2105は、単一体として製造される。しかしながら、一部の実施形態では、基準マーカ2110は、支持体2105とは別個の構成要素として提供され得る。例えば、支持体2105を膝蓋骨に装着し、その後、当業者に明らかであろうように、接着剤、機械的留め具、又は他の固定手段を用いて基準マーカ2110を支持体2105に固定することが有利であり得る。
【0196】
一部の実施形態では、基準マーカ2110は、インターフェース部分2105Aに選択的に貼り付けられてもよく、及び/又はそこから取り外されてもよい。したがって、インターフェース部分2105Aは、その上に基準マーカを保持するための1つ以上の保持機構を備え得る。例えば、インターフェース部分2105Aは、基準マーカ2110の表面と接触し、インターフェース部分2105上に基準マーカ2110を保持するための、1つ以上のクリップ、ストラップ、ばね(例えば、板ばね)、突出部(例えば、弾力性又は硬質突出部)などを備え得る。一部の実施形態では、基準マーカ2110は、インターフェース部分2105A又はその区分にスナップフィット又は摩擦嵌合し得る。例えば、基準マーカ2110は、インターフェース部分2105Aの本明細書に説明されたような凹状レセプタクルにスナップフィット又は摩擦嵌合して、その上に基準マーカ2110を保持し得る。一部の実施形態では、基準マーカ2110は、基準マーカ2110をインターフェース部分2105Aに固設するために、説明されるような保持機構のいずれかを備え得る。一部の実施形態では、インターフェース部分2105A及び基準マーカ2110は、保持特徴部を備え得る。例えば、インターフェース部分2105A及び基準マーカ2110は、基準マーカ2110を界面部分2105Aに固設するための協働する嵌合構成要素を含み得る。一部の実施形態では、インターフェース部分2105Aは、基準マーカ上の開口内に受容されるように構成されたロッドなどの突出部を備える。一部の実施形態では、嵌合構成要素は、嵌合フランジ、フック、及びパイル留め具などの嵌合留め具を含む。インターフェース部分2105A上に基準マーカ2110を保持するための追加の手段は、当業者に明らかであろうように、本明細書で意図されている。
【0197】
再び図21を参照すると、支持体2105は、トラッカユニット2100を膝蓋骨に固定するように構成された装着部分2105Bを更に備える。装着部分2105Bは、支持体2105から離れて延在する鋭利なボスとして形成され得る。例えば、装着部分2105Bは、ピン又は爪として形状決めされ得る。装着部分2105Bは、膝蓋骨を貫通してトラッカユニット2100をそこに固定することができる硬質材料から形成され得る。例えば、装着部分2105Bは、金属から形成され得る。しかしながら、当業者に明らかであろうように、十分な剛性を有する他の材料が本明細書で意図されている。装着部分2105Bは、それに力を加えることによって(例えば、ハンマーによって)、膝蓋骨に挿入され得る。挿入に必要な力は、膝蓋骨の損傷を制限するのに十分小さくてもよい。
【0198】
図21に示されるように、装着部分2105Bは、基準マーカ2110の反対側の面で支持体2105上に位置し得る。例えば、支持体2105は、インターフェース部分2105Aを形成する第1の面と、装着部分2105Bを備える第2の面と、を備え得る。しかしながら、追跡システムによって基準マーカ2110の可視性を不明瞭にしない追加的又は代替的な配置が、当業者に明らかであろうように、本明細書で意図されている。
【0199】
一部の実施形態では、支持体2105は、金属を含む。しかしながら、支持体2105は、追加的又は代替的に、当業者に明らかであろうように、プラスチック材料、ポリマー、複合材料、及び/又は追加材料を含み得る。支持体2105は、基準マーカ2110が膝蓋骨に対して一貫した幾何学的形状に維持されるように、実質的に硬質の材料から形成されることが理解されるべきである。一部の実施形態では、インターフェース部分2105A及び装着部分2105Bは、同じ材料から、例えば、単一の製造プロセスを介して形成され得る。一部の実施形態では、インターフェース部分2105A及び装着部分2105Bは、異なる材料から形成されてもよい。例えば、膝蓋骨を貫通し、支持体2105を装着部分2105Bに固定するために、より大きな剛性及び/又は機械的強度を呈する材料から装着部分2105Bを形成することが好ましい場合がある。
【0200】
再び図21を参照すると、基準マーカ2110は、追跡システムの1つ以上の赤外線(IR)センサによって検出されるように構成された反射構成要素を含む、受動的マーカであってもよい。示されるように、反射構成要素は、反射球として形成され得る。しかしながら、一部の実施形態では、反射構成要素は、反射ディスク、又は追跡システムによって精密に検出され得る別の形状として形成され得る。一部の実施形態では、基準マーカ2110は、反射箔材料で形成される。しかしながら、他のタイプのIR反射材料が本明細書で意図されている。基準マーカ2110は、IR光がIRセンサによって検出されて基準マーカの場所を識別し得るように、外部源(例えば、追跡システムのIR LED)からのIR光を反射するように構成され得る。
【0201】
一部の実施形態では、基準マーカ2110は、可視光、IR光、又は別のタイプの光であってもよい、特定の検出可能な波長又は波長範囲で光を放射するLEDを含む、能動的マーカであってもよい。したがって、外部光源は、追跡システムの一部として必要とされない場合がある。一部の実施形態では、基準マーカ2110は、放射された光が通過する拡散材料を更に含み、それによって追跡システムによって検出される均一な光信号を提供する。
【0202】
基準マーカ2110は、光ベースの追跡システム(例えば、IR又は可視光)に関して本明細書に説明されているが、基準マーカ2110は、異なる追跡モダリティのために構成された別のタイプのマーカを含み得ることが理解されるべきである。例えば、基準マーカ2110は、電磁(EM)追跡システム、ビデオ若しくは画像ベースの追跡システム、並びに/又は超音波登録及び追跡システムとともに使用するように構成され得る。
【0203】
一部の実施形態では、精密な姿勢推定(すなわち、膝蓋骨の位置及び配向)を容易にするために、複数のトラッカユニット2100が膝蓋骨に適用され得る。例えば、2つ、3つ、又はそれ以上のトラッカユニット2100が、膝蓋骨に挿入され得る。追跡システム及び/又はそれと関連付けられたコンピューティングデバイス(例えば、図1のCASS100の外科手術コンピュータ150)は、画像処理を実施して、各基準マーカ2110を検出し、各基準マーカ2110の場所を決定し得る。更に、追跡システム及び/又はコンピューティングデバイスは、複数のトラッカユニット2100の間の位置関係に基づいて、膝蓋骨の配向を評価するために、追加の画像処理を実施し得る。例えば、トラッカユニット2100が既知の空間関係に配置される場合、トラッカユニット2100の検出された場所は、姿勢を推定するために互いに対して評価され得る。追跡システム及び/又はコンピューティングデバイスは、膝蓋骨に対する既知の幾何学的形状(すなわち、基準マーカと、トラッカユニット2100が装着部分2105Bを介して固定される膝蓋骨の既知の場所との間の既知の空間関係)を更に説明して、手技全体を通して膝蓋骨のリアルタイム位置及び配向を決定し得る。
【0204】
一部の実施形態では、トラッカユニット2100は、個別に膝蓋骨に挿入される。したがって、較正手順が、挿入後に、膝蓋骨(すなわち、膝蓋骨上のトラッカユニット2100の取り付け点)及びトラッカユニット2100の間の空間関係(すなわち、その相対的な配置及び/又は三次元空間におけるその間の距離)に関して、幾何学的形状を最初に識別するために必要とされ得る。
【0205】
一部の実施形態では、複数のトラッカユニット2100は、単一化されたトラッカアレイとして、すなわち、トラッカユニット2100を所定の幾何学的形状に維持するために、それらの間に硬質の取り付け部を有するものとして提供され得る。したがって、較正手順は、1つ以上のトラッカユニット2100の場所が、少なくとも1つの他のトラッカユニット2100の既知の場所に基づいて推測され得るため、単純化され得る。
【0206】
従来的な追跡デバイスは、骨に追加の損傷又は破損を生じさせ得るが、本明細書に説明されるトラッカユニット2100は、示されるように細い装着部分2105Bのみで膝蓋骨を貫通し、それによって膝蓋骨への損傷を制限する。したがって、トラッカユニット2100は、膝蓋骨への影響を最小化しながら、安全かつ静止した様式で膝蓋骨に固定され得る。取り外し時に、装着部分2105の挿入に由来する膝蓋骨の孔は、それらが自然に治癒し得るように、十分に小さく、狭くてよい。
【0207】
更に、従来的な追跡デバイスは、かさばる及び/又は重く、そのため、術中計画及び分析中に骨の機能を阻害し得る(例えば、動作評価中に膝蓋骨追跡動作を変更する)が、説明されるトラッカユニット2100は、評価中の膝蓋骨の機能への影響を制限するために十分に小さくて軽い。したがって、トラッカユニット2100は、機能への影響を最小化しながら、安全かつ静止した様式で膝蓋骨に固定され得る。加えて、トラッカユニット2100のサイズ及び設計は、目立たず、外科手術環境内の外科医を邪魔しないことになる。
【0208】
本明細書に説明されるようなデバイス、システム、及び方法は、説明される特定の実施形態に関して限定されることを意図するものではなく、これらは、様々な特徴の図解としてのみ意図されている。当業者には明らかであるように、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、デバイス、システム、及び方法に対する多くの修正及び変形を行うことができる。
【0209】
図19は、例示の実施形態が実装される、例示のデータ処理システム1900のブロック図を例示している。データ処理システム1900は、本発明の例示的実施形態のプロセスを実装するコンピュータで使用可能なコード又は命令が位置する、サーバ又はクライアントなどのコンピュータの実施例である。一部の実施形態では、データ処理システム1900は、サーバコンピューティングデバイスであってもよい。例えば、データ処理システム1900は、上述のように外科手術システム100に動作可能に接続されたサーバ又は別の類似のコンピューティングデバイスに実装され得る。データ処理システム1900は、例えば、外科手術システム100を用いて、患者及び/又は関連する外科手術計画に関する情報を送信及び受信するように構成され得る。
【0210】
図示の実施例では、データ処理システム1900は、ノースブリッジ及びメモリコントローラハブ(NB/MCH)1901と、サウスブリッジ及び入力/出力(I/O)コントローラハブ(SB/ICH)1902と、を含む、ハブアーキテクチャを用いることができる。処理ユニット1903、メインメモリ1904、及びグラフィックプロセッサ1905は、NB/MCH1901に接続され得る。グラフィックプロセッサ1905は、例えば、アクセラレーテッドグラフィックポート(AGP)を介して、NB/MCH1901に接続され得る。
【0211】
図示の実施例では、ネットワークアダプタ1906は、SB/ICH1902に接続する。オーディオアダプタ1907、キーボード及びマウスアダプタ1908、モデム1909、読み出し専用メモリ(ROM)1910、ハードディスクドライブ(HDD)1911、光学ドライブ(例えば、CD又はDVD)1912、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート及びその他の通信ポート1913、並びにPCI/PCIeデバイス1914は、バスシステム1916を介してSB/ICH1902に接続してもよい。PCI/PCIeデバイス1914は、イーサネットアダプタ、アドインカード、及びノートパソコン用のPCカードを含み得る。ROM1910は、例えば、フラッシュベーシック入力/出力システム(BIOS)であってもよい。HDD1911及び光学ドライブ1912は、統合ドライブ電子機器(IDE)又はシリアルアドバンスドテクノロジーアタッチメント(SATA)インターフェースを使用することができる。スーパーI/O(SIO)デバイス1915は、SB/ICH1902に接続され得る。
【0212】
オペレーティングシステムは、処理ユニット1903上で実行することができる。オペレーティングシステムは、データ処理システム1900内の様々な構成要素の制御を調節及び提供することができる。クライアントとして、オペレーティングシステムは、市販のオペレーティングシステムとすることができる。Java(商標)プログラミングシステムなどのオブジェクト指向プログラミングシステムは、オペレーティングシステムとともに実行され、データ処理システム1900上で実行されるオブジェクト指向プログラム又はアプリケーションからオペレーティングシステムへの呼び出しを提供し得る。サーバとして、データ処理システム1900は、Advanced Interactive Executiveオペレーティングシステム又はLinuxオペレーティングシステムを実行する、IBM(登録商標)eServer(商標)System(登録商標)であってもよい。データ処理システム1900は、処理ユニット1903内に複数のプロセッサを含み得る、対称型マルチプロセッサ(SMP)システムであってもよい。別の方法として、単一のプロセッサシステムを用いてもよい。
【0213】
オペレーティングシステム、オブジェクト指向プログラミングシステム、及びアプリケーション又はプログラムの命令は、HDD1911などの記憶デバイス上に位置し、処理ユニット1903によって実行するためにメインメモリ1904にロードされる。本明細書に記載の実施形態に対するプロセスは、例えば、メインメモリ1904、ROM1910などのメモリ内、又は1つ以上の周辺デバイス内に位置することができる、コンピュータで使用可能なプログラムコードを使用して、処理ユニット1903によって実施され得る。
【0214】
バスシステム1916は、1つ以上のバスから構成され得る。バスシステム1916は、ファブリック又はアーキテクチャに取り付けられた異なる構成要素又はデバイス間のデータの転送を提供することができる、任意のタイプの通信ファブリック又はアーキテクチャを使用して実装され得る。モデム1909又はネットワークアダプタ1906などの通信ユニットは、データを送信及び受信するために使用され得る、1つ以上のデバイスを含み得る。
【0215】
当業者であれば、図19に図示されるハードウェアは、実装に応じて変化し得ることを認識するであろう。フラッシュメモリ、同等の不揮発性メモリ、又は光ディスクドライブなどの他の内部ハードウェア又は周辺デバイスを、図示したハードウェアに加えて、又はその代わりに使用することができる。更に、データ処理システム1900は、クライアント計算デバイス、サーバ計算デバイス、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、電話又は他の通信デバイス、パーソナルデジタルアシスタントなどを含むが、これらに限定されない、いくつかの異なるデータ処理システムのうちのいずれかの形態を取ることができる。本質的に、データ処理システム1900は、アーキテクチャ上の制限なしに、任意の公知又は後に開発されたデータ処理システムであってもよい。
【0216】
本教示の原理を組み込んだ様々な例示の実施形態が開示されているが、本教示は、本開示の実施形態に限定されない。代わりに、本出願は、本教示の任意の変形、使用、又は適合をカバーし、その一般原則を使用することを意図している。更に、本出願は、これらの教示が関連する技術分野で公知又は慣習的慣行の範囲内にある本開示からのかかる逸脱をカバーすることを意図している。
【0217】
上記の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付図面を参照する。図面では、文脈上別段の指示がない限り、類似の記号は、典型的には類似の構成要素を識別する。本開示に記載される例示の実施形態は、限定することを意図するものではない。本明細書に提示される主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態を使用してもよく、その他の変更を行ってもよい。本開示の様々な特徴は、一般に本明細書に説明され、図に示されるように、多種多様な異なる構成で配設、置換、結合、分離、及び設計され得、それらの全ては、本明細書に明示的に企図されている。
【0218】
本開示は、様々な特徴の図解として意図される、本出願に説明される特定の実施形態に関して限定されない。当業者には明らかであるように、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変形を行うことができる。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に同等の方法及び装置は、前述の説明から当業者には明らかであろう。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物学的システムに限定されないが、それらは変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記述するためのものであり、限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0219】
本明細書における実質的に任意の複数形及び/又は単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は用途に適切なように、複数形から単数形及び/又は単数形から複数形に翻訳することができる。様々な単数形/複数形の配列は、明確にするために本明細書に明示的に記載され得る。
【0220】
一般に、本明細書で使用される用語は、一般に「オープン」な用語として意図されていること(例えば、用語「含む(including)」は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであるなど)は、当業者であれば理解されるであろう。様々な組成物、方法、及びデバイスは、様々な構成要素又はステップを「含む(comprising)」という観点から説明される(「含む(including)が、これに限定されない」という意味として解釈される)が、組成物、方法、及びデバイスはまた、様々な構成要素及びステップから「本質的になる」又は「なる」ことができ、そのような用語は、本質的にクローズドメンバーグループを定義するものとして解釈されるべきである。
【0221】
更に、特定の数が明示的に列挙されていても、当業者は、このような列挙は、少なくとも列挙された数を意味する(例えば、他の修飾子なしでの「2つの列挙」のありのままの列挙は、少なくとも2つの列挙、又は2つ以上の列挙を意味する)と解釈されるべきであることを認識するであろう。更に、「A、B、及びCなどのうちの少なくとも1つ」に類似した慣習が使用されている場合、一般に、こうした構造は、当業者が慣習を理解するという意味で意図されている(例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、並びに/又はA、B、及びCを一緒に有するシステムなどが含まれるが、これらに限定されない)。「A、B、又はCなどのうちの少なくとも1つ」に類似した慣習が使用されている場合、一般に、こうした構造は、当業者が慣習を理解するという意味で意図されている(例えば、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、並びに/又はA、B、及びCを一緒に有するシステムなどが含まれるが、これらに限定されない)。説明、サンプルの実施形態、又は図面のいずれにおいても、2つ以上の代替的な用語を提示する実質的に任意の離散的な単語及び/又は語句は、用語、用語のいずれか、又は両方の用語のうちの1つを含む可能性を企図するために理解されるべきであると、当業者によって更に理解されるであろう。例えば、語句「A又はB」は、「A」若しくは「B」、又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるであろう。
【0222】
更に、本開示の特徴がマーカッシュグループに関して記述される場合、当業者は、本開示がまた、それにより、マーカッシュグループの任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループに関して記述されることを認識するであろう。
【0223】
当業者であれば理解するであろうように、書面による説明を提供するなどの任意の及び全ての目的のために、本明細書に開示される全ての範囲はまた、任意の及び全ての可能な部分範囲、並びにそれらの部分範囲の組み合わせを包含する。いくつかの列挙された範囲は、同じ範囲を少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割できるように十分に記述し、可能にするものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で論じる各範囲は、ローワーサード、ミドルサード、及びアッパーサードなどに容易に分割され得る。また、当業者であれば理解されるように、「最大」、「少なくとも」、及びこれに類するものなどの全ての言語には、列挙された数が含まれ、上記で論じたように、後で部分範囲に実質的に分割することができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個のセルを有するグループは、1、2、又は3個のセルを有するグループを指す。同様に、1~5個のセルを有するグループは、1個、2個、3個、4個、又は5個のセルを有するグループを指すなどである。
【0224】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、例えば、これらの手技での不注意によるエラーによる、組成物又は試薬の製造、供給源、又は純度の違い、及びこれに類するものによる、現実世界での測定又は取り扱い手技を通じて発生する可能性のある数値の変動を指す。典型的には、本明細書で使用される場合、用語「約」は、記載された値の1/10だけ記載された値又は値の範囲よりも大きい又は小さいこと(例えば、±10%)を意味する。用語「約」はまた、当業者によって、そのような変形が先行技術によって実践される既知の値を包含しない限り、等価であると認識される変形を指す。用語「約」が前に付く各値又は値の範囲はまた、述べられた絶対値又は値の範囲の実施形態を包含することを意図している。用語「約」によって修飾されるか否かにかかわらず、本開示に列挙される定量値は、列挙された値と同等のもの、例えば、発生する可能性があるが、当業者によって同等であると認識されるであろうそのような値の数値の変動を含む。
【0225】
様々な上記で開示された及びその他の特徴及び機能、又はその代替例は、多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得る。その中の様々な現在予想されない若しくは予期しない代替、修正、変形、又は改善は、その後、当業者によって行われ得、これらの各々はまた、開示された実施形態によって包含されることが意図される。

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C-1】
図7C-2】
図7C-3】
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】