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特表2023-545626膝プロテーゼに使用するためのインサート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】膝プロテーゼに使用するためのインサート
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
A61F2/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516723
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 US2021051423
(87)【国際公開番号】W WO2022066688
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/082,759
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502032219
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】510059882
【氏名又は名称】スミス・アンド・ネフュー・オルソペディクス・アーゲー
(71)【出願人】
【識別番号】519295384
【氏名又は名称】スミス・アンド・ネフュー・アジア・パシフィク・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カー、クリストファー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】レンツ、ナサニエル エム.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC06
4C097CC13
4C097CC16
4C097EE02
4C097SC08
(57)【要約】
膝プロテーゼ(100)に使用するためのインサート(150)が開示される。一実施形態では、本インサートは、内側部(260)及び外側部(270)を含む。内側部は、より後方の溝(Pm)及び増大した前唇部(265)を伴う凹状の面又は曲線を有する上面(262)を含む。外側部は、少なくとも一区域又は一部分が凸状の面又は曲線を伴う上面(272)を含む。このような配置により、本インサートは、正中溝及び外側凸部を有する既存のインサートと比較して、様々なグレードのPCL欠損に対して改善された安定性を提供するように配置され、構成される。加えて、本インサートは、後外側凸部を欠く凹状の又は平坦な外側関節を伴う既存の設計と比較して、改善された後外側並進を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝プロテーゼであって、
内側顆面、外側顆面、及び関節面を含む、大腿骨部品と、
耐荷重部品を含む、脛骨部品と、
前記関節面と前記耐荷重部品との間に位置付けられたインサートであって、前記インサートが、前面、後面、内側面、外側面、内側部品、及び外側部品を含み、
前記内側部品が、前記内側顆面と接触するように配置され構成されている上面を含み、前記内側部品の前記上面が、内側溝点を含み、
前記外側部品が、前記外側顆面と接触するように配置され構成されている上面を含み、前記外側部品の前記上面が、外側溝点を含み、
前記内側溝点が、前記前面よりも前記後面に近く位置付けられ、
前記内側溝点が、前記外側溝点よりも前記インサートの前記後面に近く位置付けられている、インサートと、を備える、膝プロテーゼ。
【請求項2】
前記外側溝点が、前記後面よりも前記前面に近く位置付けられている、請求項1に記載の膝プロテーゼ。
【請求項3】
前記外側溝点が、前記内側溝点よりも、前記後面と前記前面との間の距離全体の約10~35パーセント前方に位置付けられる、先行請求項のいずれか一項に記載の膝プロテーゼ。
【請求項4】
前記外側溝点が、前記後面から距離Dに位置付けられ、距離Dが、前記前面と前記後面との間の距離全体の約50~65パーセントである、先行請求項のいずれか一項に記載の膝プロテーゼ。
【請求項5】
前記内側溝点が、前記後面から距離Dに位置付けられ、距離Dが、前記前面と前記後面との間の距離全体の約30~45パーセントである、先行請求項のいずれか一項に記載の膝プロテーゼ。
【請求項6】
前記内側溝点が、前記後面から距離Dに位置付けられ、距離Dが、前記前面と前記後面との間の距離全体の約35~40パーセントである、先行請求項のいずれか一項に記載の膝プロテーゼ。
【請求項7】
前記内側部品の前記上面が、凹面を含み、前記外側部品の前記上面が、少なくとも一区域が凸面を含む複心曲線を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の膝プロテーゼ。
【請求項8】
前記内側部品の前記凹面が、前記後面から前記前面まで完全に延在する、請求項7に記載の膝プロテーゼ。
【請求項9】
前記内側部品が、前唇部であって、前記内側溝点から前記前唇部の先端まで測定した高さHを有する、前唇部と、後唇部であって、前記内側溝点から前記後唇部の先端まで測定した高さHを有する、後唇部と、を含み、高さHが、高さHよりも大きい、請求項7又は8に記載の膝プロテーゼ。
【請求項10】
前記前唇部の前記高さHが6.5mm~10mmであり、前記後唇部の前記高さHが3mm~4mmである、請求項9に記載の膝プロテーゼ。
【請求項11】
前記外側部の前記上面の前記複心曲線が、凹面を含む前区を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の膝プロテーゼ。
【請求項12】
前記外側部品の前記上面の前記複心曲線が、前記後面と前記凸状区との間に位置付けられた凹状後区を含む、請求項11に記載の膝プロテーゼ。
【請求項13】
前記外側部品の前記上面の前記複心曲線が、前記凹状後区と前記凸状区との間に位置付けられた凹状後中間区を含む、請求項12に記載の膝プロテーゼ。
【請求項14】
前記外側部品の前記上面の前記複心曲線が、前記前凹状区と前記凸状区との間に位置付けられた平坦区を含む、請求項12に記載の膝プロテーゼ。
【請求項15】
前記外側溝点が、前記前凹状区と前記平坦区との間の移行部に位置付けられている、請求項14に記載の膝プロテーゼ。
【請求項16】
前記外側部品の前記上面の前記複心曲線が、前記凸状区の前端に画定される移行点を含み、前記移行点が、前記後面から距離Tに位置付けられ、距離Tが、前記後面と前記前面との間の距離全体の約40%~50%である、請求項7~14のいずれか一項に記載の膝プロテーゼ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年9月24日出願の「Insert for Use in a Knee Prosthesis」と題された係属中の米国仮特許出願第63/082,759号の非仮出願である。
【0002】
本開示は、整形外科用インプラント、より具体的には、整形外科用膝プロテーゼに使用するためのインサートを対象とする。
【背景技術】
【0003】
膝関節形成術又は膝関節置換術は、概して、患者の膝への膝プロテーゼなどの整形外科用インプラントの移植、設置など(本明細書では、限定する意図なしに交換可能に使用される)を伴う。例えば、膝関節全形成術又は膝関節置換術(「TKA」)に関連して、整形外科用インプラント(例えば、膝プロテーゼ)は、大腿骨部品及び脛骨部品を含み得る。使用時、大腿骨部品は患者の大腿骨に取り付けられ、脛骨部品は患者の脛骨に取り付けられる。概して、大腿骨部品及び脛骨部品は、各々、例えば、関節部品、トレイ、耐荷重部品(本明細書では、限定する意図なしに交換可能に使用される用語)などに取り付け可能な髄内ステムなどといった支持部材を含み得る。使用時、支持部材は、患者の骨に連結するように配置され構成され、例えば、トレイが患者の骨上の準備された表面上に備え付けられる間、患者の骨の髄内管内に挿入され得る。ベアリング部材又はインサートは、典型的には、脛骨部品のトレイ上に備え付けられる。
【0004】
TKAは、例えば関節炎による、患者の膝関節の複数の区画内の損傷に対処するために実施され得る。TKA処置は、関節内の慢性的な疼痛を軽減し、障害のある膝に機能を回復させることを目的としている。早期の膝プロテーゼは、主に誘導動作によって膝を安定させることに重点を置く一方、患者の生来の靭帯構造を大きく無視する傾向があった。しかしながら、関節置換手術の進歩及びインプラント固定による改善に伴い、患者の脛骨に対する患者の大腿骨の運動自由度の増加を可能にしつつ、患者の特定のニーズ及び外科医の好みに基づいて様々な程度の安定性を提供する、患者の軟部組織構造と連動する新しい設計が登場した。
【0005】
今日、膝プロテーゼは、十字靭帯の管理方法に基づいて、4つの主な分類型に分けることができる。後方安定(「PS」)型設計は、患者の膝の両方の十字靭帯を代償しながら、膝の屈曲中に前方並進を制御するのに役立つカム・ポスト機構によって、後方十字靭帯(「PCL」)の代わりとなる。十字靱帯代償(「CS」)型及びディープディッシュ(「DD」)型設計も、両方の十字靱帯の切除を可能にすると同時に、関節を安定させるのに役立つより適合性の関節形状を提供する。後十字靭帯温存(「CR」)型設計は、PCLを保存しながら前十字靱帯のみを代償し、これは、この構造が脛骨に対して屈曲するため、大腿骨に対して前方/後方(A/P)安定性を提供すると同時に、適合性の低い関節形状により自律運動の増加が可能になるという意図によるものである。TKAの第4の型は、両十字靭帯を保存し、限定された適合性及び形状的制約を提供する、両十字靭帯温存(「BCR」)型設計であり、これは、膝の運動学を駆動するために軟部組織構造にのみ依存する。BCR膝プロテーゼは、より正常な運動学を可能にするための理論上の利点を提供し得るが、BCR膝プロテーゼの使用は、多くの外科医がこうした外科手術を行うために必要なより高度な手術手技を会得していないため、依然としてかなり限定的である。その結果、今日行われているTKA処置の大部分には、PS型又はCR型いずれかの膝プロテーゼ設計の使用が継続されている。
【0006】
PS型設計は、大部分のCR型設計と比較してより信頼性のある運動学を促進する傾向があるが、PS型の大腿骨部品のボックス形状のために切除を行う必要がないことにより、患者の生来の骨を保存する動向が高まっている。そのため、より多くの外科医が、骨保存を可能にすると同時に、変わらず信頼性のある運動学を伴う適切なA/P制約を提供する、CR型及びCS型設計のようなインプラントを求めている。加えて、CRタイプのインプラントを使用してTKAをよく行うことがある外科医は、より標準的な関節CRインサートの多くを使用する際に、温存したPCLが許容可能なA/P制約を提供しない事例を経験し得る。これは、PCLが本来のものでないことが判明する場合には術中に明らかとなることも、PCLが関節内で緩み始めて弛緩を与えるにつれて術後に起こることもある。一方で、CS及びDDインサートを使用する選択肢は、より適合性の関節形状が膝の屈曲を改善するための運動学を促す顆運動を妨げ得るため、患者が追加の制約を必要としない限り、使用にはそれほど望ましくない。
【0007】
現在、PSインプラントを使用してTKA処置を典型的に行う外科医によるCR型及びCS/DD型膝プロテーゼの使用が増加している。外科手術観におけるこのシフトは、現在市場に存在し、骨保存のニーズを満たすとともに、両方の十字靭帯が切除される場合であっても安定性の増大をもたらすCR/CS及びDD型膝プロテーゼの数によって支持される。これらのインプラントシステムは、様々な関節の適合性及び特徴を有する特殊な関節インサートの使用を促進する。1つの既存の設計は、内側大腿骨顆の形状に厳密に適合する関節インサートの内側部内のトラフを利用する、内側旋回型膝である。この形状は、脛骨上の大腿骨の前方の滑動を防止するのに役立つ。他の既存の設計は、関節インサートの内側及び外側の両方の区画内に凹状又はカップ状の形状を実装する。これらの選択肢はまた、より適合性であり、定義された屈曲角で内側及び外側の両方の大腿骨顆を一致させて、A/P安定性の増大を促進する傾向がある。
【0008】
それにもかかわらず、残りの生来の軟部組織構造の状態に関して好適なA/P制約を提供しながら、膝の機能の改善を促す信頼性のある運動を可能にする、CR型膝プロテーゼのための関節インサートを提供することが有益である。
【0009】
これを念頭に置いて、本開示が提供される。
【0010】
概要
本概要は、発明を実施するための形態で以下に更に説明される、簡略化された形態における一連の概念を導入するために提供される。本概要は、特許請求の範囲の主題の主要な特徴又は基本的な特徴を識別することを意図しておらず、特許請求の範囲の主題の範囲を決定するための補助としても意図されていない。
【0011】
一実施形態では、膝プロテーゼにおける使用に好適なインサートが開示される。一実施形態では、本関節インサートは、例えば、既存のTKA CR大腿骨部品などの既存の膝プロテーゼに関連して使用されるように配置され構成され、これは、軟部組織構造との組み合わせで、既存のCRインサート設計よりも改善された安定性を提供しながら、既存のCS/DDインサート設計と比較して、膝の回転運動及び屈曲の改善を促進するのに役立つ外側部内の運動学を促す。
【0012】
一実施形態では、本インサートは、略凹状の内側部及び凸状の外側部を含む。つまり、一実施形態では、本インサートは、大腿骨部品又は骨の上に形成された内側顆面と接触するための内側部と、大腿骨部品又は骨の上の外側顆面と接触するための外側部とを含む。内側部は、概凹状の面又は曲線を有する上面を含む。外側部は、少なくとも一区域又は一部分がほぼ凸状の面又は曲線を含む複心曲線を有する上面を含む。
【0013】
このような配置により、使用時、本関節インサートの内側溝は、実質的により後方に位置付けられ、それにより、適合する大きさの大腿骨のための接触領域における大腿骨部品の内側大腿骨顆の形状と厳密に一致する完全に凹状の形状を有する前唇部の増加が可能になる。その結果、内側部は、PCL欠損状態及び代償状態の両方に対して、十分な内側制約を提供することができる。更なる安定性を提供する凹状内側部と併せて、外側部は、伸長中にスクリューホームを可能にするために、弛緩した前唇部を有する前凹部を有するように最適化される。この外側前凹部は、関節表面の後方半分に沿って傾斜が増加する逆の輪郭を持つ凸部に移行して、外側後方並進を促進すると同時に、膝がより深い屈曲へと動く際に脛骨に対する大腿骨の外旋を付与するのを助ける。
【0014】
一実施形態では、大腿骨部品及び脛骨部品を含む、膝プロテーゼにおける使用に好適なインサートが開示される。本インサートは、前面、後面、内側面、外側面、上面、底面、内側部、及び外側部を含む。使用時、内側部は、大腿骨部品の内側顆面と相互作用するように配置され構成される。外側部は、大腿骨部品の外側顆面と相互作用するように配置され構成される。一実施形態では、内側部は、大腿骨部品の内側顆面と接触するための凹状上面を含み、一方で外側部は、大腿骨部品の外側顆面と接触するための少なくとも凸状上区を有する複心曲線を含む上面を含む。
【0015】
一実施形態では、内側部の凹状上面は、内側溝点を含み、内側溝点は、前面よりも後面に近く位置付けられる。
【0016】
一実施形態では、内側溝点は、インサートの後面から距離Dに位置付けられ、距離Dは、インサートの後面と前面との間の距離全体の約35%~40%である。
【0017】
一実施形態では、後面は、前唇部であって、内側溝点から前唇部の先端まで測定した高さHを有する、前唇部と、後唇部であって、内側溝点から後唇部の先端まで測定した高さHを有する、後唇部と、を含み、高さHは、高さHよりも大きい。
【0018】
一実施形態では、前唇部における高さHは6.5mm~10mmである。
【0019】
一実施形態では、後唇部における高さHは3mm~4mmである。
【0020】
一実施形態では、凹状上面は、後面から前面まで完全に延在する。
【0021】
一実施形態では、外側部の複心上面は、逆の輪郭を持った凸部に(例えば、凸状区に)に移行する前凹部(例えば、凹面を含む前区)を含む。
【0022】
一実施形態では、複心上面は、インサートの後面と凸状上区との間に位置付けられた凹状後区を含む。
【0023】
一実施形態では、複心上面は、凹状後区と凸状上区との間に位置付けられた凹状後中間区を含む。
【0024】
一実施形態では、複心上面は、インサートの前面と凸状上区との間に位置付けられた凹状前区を含む。
【0025】
一実施形態では、複心上面は、凹状前区と凸状上区との間に位置する平坦区を含む。
【0026】
一実施形態では、外側部の複心上面は、凹状前区と平坦区との間の移行部として画定される外側溝点を含む(例えば、外側溝点は、凹状前区と平坦区との間の移行部にある)。
【0027】
一実施形態では、外側部の複心上面は、凹状前区の最後端に外側溝点を含む(例えば、外側溝点は、凹状前区の後端にある)。
【0028】
一実施形態では、外側溝点は、インサートの後面から距離Dに位置付けられ、外側溝点は、後面よりもインサートの前面により近く位置付けられる。
【0029】
一実施形態では、インサートの後面からの距離Dは、インサートの後面と前面との間の距離全体の50%~65%である。
【0030】
一実施形態では、内側部品の上面は、内側溝点を含み、外側部品の上面は、外側溝点を含み、外側溝点は、内側溝点よりもインサートの前面に近く位置付けられる(例えば、内側溝点は、外側溝点よりもインサートの後面に近く位置付けられる)。
【0031】
一実施形態では、外側部の複心上面は、後凸部への移行の点(例えば、平坦区と凸状上区との間の移行の点)として画定される移行点を含む。
【0032】
一実施形態では、外側部の複心上面は、凸状上区の前開始部として画定される移行点を含む(例えば、移行点は凸状区の前端にある)。
【0033】
一実施形態では、移行点は、インサートの後面から距離Tに位置付けられ、距離Tは、インサートの後面と前面との間の距離全体の約40%~50%である。
【0034】
一実施形態では、外側部の前面は、高さHを有する前唇部と、高さHを有する後唇部とを含み、高さHは、高さHよりも高い。
【0035】
一実施形態では、インサートは、患者の後十字靱帯が温存される外科処置において、及び患者の後十字靱帯が切除される外科処置において、膝プロテーゼに使用されるように配置され構成される。
【0036】
代替的な実施形態では、膝プロテーゼが開示される。本膝プロテーゼは、大腿骨部品、脛骨部品、及びインサートを含む。大腿骨部品は、内側顆面、外側顆面、及び関節表面を含む。脛骨部品は耐荷重部品を含む。本インサートは、関節面と耐荷重部品との間に位置付けられ、本インサートは、前面、後面、内側面、外側面、内側部品、及び外側部品を含む。内側部品は、内側顆面と接触するように配置され構成されている上面を含み、内側部品の上面は、内側溝点を含む。外側部品は、外側顆面と接触するように配置され構成されている上面を含み、外側部品の上面は、外側溝点を含む。内側溝点は、外側溝点よりもインサートの後面に近く位置付けられる。
【0037】
本開示の実施形態は、多数の利点を提供する。例えば、本開示に従い、本関節インサートにより、十字靭帯温存型又は十字靭帯置換型TKA処置の実施を選択する外科医は、膝置換機能及び長期の臨床的成果に影響を与え得る、患者のニーズ及び様々な軟部組織状態への適応を改善する選択肢を得ることができる。本開示の1つ以上の特徴に従い、本インサートにより、溝がより後方にあり、後唇部が増大した凹状内側部が得られ、それにより、正中溝及び外側凸部を有する既存のインサートと比較して、様々なグレードのPCL欠損に対する安定性が改善される。加えて、本インサートは、後外側凸部を欠く凹状の又は平坦な外側関節を伴う既存の設計と比較して、改善された後外側並進を提供する。
【0038】
本発明の実施形態の少なくとも一部の更なる特徴及び利点、並びに本発明の様々な実施形態の構造及び動作を、添付図面を参照しながら以下で詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
例として、以降、開示されるデバイスの特定の実施形態を、以下の添付図面を参照して説明する。
図1】膝プロテーゼの実施形態の斜視図である。
図2】本開示の1つ以上の特徴に従う、図1に示す膝プロテーゼに使用され得るインサートの実施形態の前方斜視図である。
図3図2に示すインサートの後方斜視図である。
図4図2に示すインサートの前方立面図である。
図5図2に示すインサートの後方立面図である。
図6図2に示すインサートの内側側面図である。
図7図2に示すインサートの外側側面図である。
図8図2に示すインサートの上面図である。
図9図2に示すインサートの断面図であり、図8の線IX-IXに沿ってインサートの内側関節面から取った断面図(すなわち、インサートの正中線から24mmを測定する内側にある設計された接触経路に沿って取った断面図)である。
図10図2に示すインサートの断面図であり、図8の線X-Xに沿ってインサートの外側関節面から取った断面図(すなわち、インサートの正中線から24mmを測定する内側にある設計された接触経路に沿って取った断面図)である。
図11図2に示すインサートの概略図であり、知られている既存のインサート(既存のインサート1及び既存のインサート2)と比較した、本インサートの外側関節面から取った断面形状を図示する。
図12図2に示すインサートの概略図であり、知られている既存のインサート(例えば、既存のインサート1及び既存のインサート2)と比較した、本インサートの内側関節面から取った断面形状を図示する。
図13図2に示すインサートを知られている既存のインサート(例えば、既存のインサート1及び既存のインサート2)と比較する様々な試験データを図示する。
図14図2に示すインサートを知られている既存のインサート(例えば、既存のインサート1及び既存のインサート2)と比較する様々な試験データを図示する。
図15図2に示すインサートを知られている既存のインサート(例えば、既存のインサート1及び既存のインサート2)と比較する様々な試験データを図示する。
図16図2に示すインサートを知られている既存のインサート(例えば、既存のインサート1及び既存のインサート2)と比較する様々な試験データを図示する。
図17図2に示すインサートを知られている既存のインサート(例えば、既存のインサート1及び既存のインサート2)と比較する様々な試験データを図示する。
図18図2に示すインサートを知られている既存のインサート(例えば、既存のインサート1及び既存のインサート2)と比較する様々な試験データを図示する。
図19図2に示すインサートを知られている既存のインサート(例えば、既存のインサート1及び既存のインサート2)と比較する様々な試験データを図示する。
図20図2に示すインサートを知られている既存のインサート(例えば、既存のインサート1及び既存のインサート2)と比較する様々な試験データを図示する。
図21図2に示すインサートを知られている既存のインサート(例えば、既存のインサート1及び既存のインサート2)と比較する様々な試験データを図示する。
図22図2に示すインサートを知られている既存のインサート(例えば、既存のインサート1及び既存のインサート2)と比較する様々な試験データを図示する。
【0040】
図面は必ずしも縮尺どおりではない。図面は、本開示の特定のパラメータを描写することを意図するものではなく、単なる表現である。図面は、本開示の例となる実施形態を示すことを意図しており、したがって、範囲の制限とはみなされない。図面では、同様の番号は同様の要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
これより、膝プロテーゼに使用するために配置され構成されたインサートの様々な特徴又は類似のものを、添付図面を参照して下文でより完全に説明し、ここでは、本インサートの1つ以上の特徴を示し説明する。様々な特徴は、互いに独立して使用しても、組み合わせて使用してもよいことが理解される。本明細書に開示されるインサート及び付属の膝プロテーゼは、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に示す実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではないことが理解されよう。むしろ、これらの実施形態は、本開示が本インサート及び付属の膝プロテーゼのある特定の特徴を当業者に伝達するように、提供される。
【0042】
本明細書に記載するとおり、本開示の1つ以上の特徴に従い、膝プロテーゼ又はインプラント(限定する意図なしに本明細書では交換可能に使用される)に使用するために配置され構成されるインサートが開示される。一実施形態では、当業者であれば理解するように、本膝プロテーゼは、脛骨インプラント、部品など(限定する意図なしに本明細書では交換可能に使用される)及び大腿骨部品を含む。脛骨部品は、概して、脛骨トレイ又は耐荷重部品(限定する意図なしに本明細書では交換可能に使用される用語)と、例えば患者の脛骨などの患者の骨に結合するように配置され構成される支持部材とを含む。同様に、大腿骨部品は、概して、関節運動部品と、例えば患者の大腿骨などの患者の骨に結合するように配置され構成される支持部材とを含む。使用時、脛骨トレイは、本インサートを受けるように配置され構成され、一方で大腿骨部品の関節運動部品は、本インサートの上面に対して移動(例えば、関節運動)するように配置され構成される。
【0043】
図1を参照すると、膝プロテーゼ100は大腿骨部品120及び脛骨部品140を含む。使用中、当業者であれば容易に理解するように、大腿骨部品120は患者の大腿骨の遠位端に結合し、一方で脛骨部品140は患者の脛骨の近位端に結合する。使用時、大腿骨部品120は、脛骨部品140に対して移動する。この運動を容易にするために、膝プロテーゼ100は、大腿骨部品120と脛骨部品140との間に位置付けられたインサート150を含む。
【0044】
概して言えば、インサート150は、例えば、機械的接続(例えば、蟻継ぎ接続)、接着剤などといった、現在既知である又は今後開発される任意の好適な機構によって脛骨部品140に結合する。使用中に、インサート150は、大腿骨部品120が脛骨部品140に対して動くのを可能にするように配置され構成される。例えば、インサート150は、脛骨部品140に対する大腿骨部品120の回転を可能にしてもよい。加えて、インサート150は、脛骨部品140に対する大腿骨部品120の前後並進並びに内旋及び外旋を可能にしてもよい。使用時、インサート150は、脛骨部品140に対する大腿骨部品120の運動の誘導、制御、制約などを行うように構成され構成されてもよい。つまり、インサート150の上面により、表面であって、それに対して、大腿骨部品の関節運動する顆部分が、脛骨に対する大腿骨の動きに概ね対応する動きで関節運動、例えば移動する、表面が提供される。
【0045】
つまり、図示するように、大腿骨部品120は、内側顆面124を有する内側顆部分122と、外側顆面128を有する外側顆部分126とを含む。内側顆面124及び外側顆面128は、丸み付きであってもよく、一部の実装では、非対称であってもよい。内側顆面124と外側顆面128との間で、大腿骨部品120は滑車溝130を画定し、この滑車溝130の上を、膝の屈曲の間に膝蓋骨又は膝蓋骨インプラントが滑動することができる。使用時、本インサートは、内側部及び外側部を有する上面を含み、大腿骨部120の内側顆面124は、内側部の上面に接触するように配置され構成される一方、大腿骨部120の外側顆面128は、外側部の上面に接触するように配置され構成される。
【0046】
図2~10を参照すると、本開示の1つ以上の特徴に従い、膝プロテーゼに使用され得る改善されたインサート200が図示される。使用時、インサート200は、インサート150の代わりに図1に関連して示され説明される膝プロテーゼ100に使用され得る。しかしながら、インサート200は、現在既知である又は今後開発される他の好適な膝プロテーゼに関連して使用されてもよいことが理解される。そのため、本開示のインサートは、いかなる特定の膝プロテーゼにも限定されないことが理解される。
【0047】
インサート200は、現在既知である又は今後開発される任意の好適な形状を有し得る。例えば、インサート200は、大腿骨及び脛骨部品の形状に対応するようにサイズ決定され構成される任意の形状を有し得る。示され説明されるように、インサート200は、人工膝関節全置換手術又は人工膝関節再置換手術における使用のためにサイズ決定され構成される完全インサートとしてサイズ決定され構成されてもよい。一実施形態では、本インサートは、モノリシック又は単一部材として製造されてもよい。あるいは、本インサートは、後で一緒に結合される複数の部分から製造されてもよいことが想定される。例えば、一実施形態では、本インサートは、個々に内側部及び外側部を表す外側部品及び内側部品を含んでもよく、外側部及び内側部は、例えば、接着剤、機械的接続、機械的締結具などを介して、現在既知である又は今後開発される任意の好適な機構又は方法によって、一緒に結合される。
【0048】
加えて、インサート200は、その後面にノッチが形成されていてもよい。一実施形態では、インサート200は、大腿骨部品及び/又は脛骨部品の外形に一致するようにサイズ決定及び形状決定されてもよいが、これは必須ではない。加えて、及び/又はあるいは、本インサートは、現在既知である又は今後開発される任意の好適な機構によって、脛骨部品及び/又は大腿骨部品に結合するように配置され構成されてもよい。本インサートは、現在既知である又は今後開発される任意の好適な材料から製造され得る。
【0049】
図示するように、一実施形態では、インサート200は、左膝プロテーゼにおける使用のために配置され構成されてもよい。しかしながら、当業者であれば理解するように、インサート200は、右膝プロテーゼにおける使用のために配置され構成されてもよく、右膝プロテーゼのインサートは、左膝プロテーゼのインサートの鏡像である。いずれの場合においても、インサート200は、前面210、後面220、内側面230、外側面240、上面250、及び底面252を含む。
【0050】
一実施形態では、インサート200の底面252は、例えば脛骨部品140などの脛骨部品に結合するように配置され構成される。一実施形態では、インサート200は、例えば、蟻継ぎ接続、噛合い突出部、及び陥凹部などといった機械的接続によって脛骨部品に結合してもよいが、他の好適な接続機構を使用してもよい。
【0051】
図示するように、インサート200の上面250は、内側部260及び外側部270を含む。使用時、内側部260は、大腿骨部品120の内側顆面124と相互作用するように配置され構成され、外側部270は、大腿骨部品120の外側顆面128と相互作用するように配置され構成される。本開示の1つ以上の特徴に従い、内側部260は、膝プロテーゼの大腿骨部品120の内側顆面124を接触させるための略凹状の上面262を含み、一方で外側部270は、膝プロテーゼの大腿骨部品120の外側顆面128を接触させるための凸状上面272の少なくとも一部分を含む。このような配置により、インサート200の内側部260内に略凹状の上面262を提供することによって、関節インサート200の内側溝が、凸状の外側関節面を組み込む既存のインサートと比較して、インサート200の後面220に向かってより後方に位置付けられるようになる(例えば、図9、本明細書でより詳細に説明するように、内側溝が、凹状上面262上の最低点と合致し、インサート200の後面220から距離Dに位置付けられる)。加えて、及び/又はあるいは、インサート200の内側部260内に略凹状の上面262を提供することによって、インサート200の前唇部265が増大してもよい(例えば、インサート200の内側部260内のインサート200の前唇部265の高さが、既存のインサートと比較して増大する)。このような配置により、増大した前唇部265を完全に凹状の上面262に提供することによって、内側部260が、PCL欠損状態及び代償状態の両方に対して十分な内側制約を提供することが可能になる。
【0052】
図10を参照して、外側部270は、伸長中にスクリューホームを可能にするために、弛緩した前唇部を有する前凹部を組み込むように配置され構成されてもよい。図示するように、この外側前凹部は、関節表面の後方半分に沿って傾斜が増加する逆の輪郭を持つ凸部に移行して、外側後方並進を促進すると同時に、膝がより深い屈曲へと動く際に脛骨に対する大腿骨の外旋を付与するのを助ける。
【0053】
インサート200の中間点から約24mmの距離で取った断面である、内側部260を通過するインサート200の断面図を図示する図9に最もよく図示されるように、内側部260は、その後面220から前面210に延在する略凹状の上面262を含む。本開示の1つ以上の特徴に従い、溝点Pとも称され得る凹状上面262の底部又は最下部点Pは、インサート200の後面220からの距離Dに位置付けられてもよい。そのため、本開示の1つ以上の特徴に従い、凹状上面262の溝点Pは、インサートをより前方に延在させる必要なく、凸状外側関節面を組み込む既存のインサートと比較して、インサート200の後面220のより近くに位置付けられる。
【0054】
例となる一実施形態では、凹状上面262の溝点Pは、インサート200の後面220から距離Dに位置付けられてもよく、距離Dは、インサート200の幅全体(例えば、前方/後方寸法)の25%~50%パーセント、好ましくは30%~45%パーセント、より好ましくは35%~40%パーセントとほぼ等しい。一実施形態では、距離Dは、インサート200の幅全体(例えば、前方/後方寸法)の約35%~37%であってもよい。例となる一実施形態では、内側部260の凹状上面262は、適合性である大腿骨部品のための内側大腿骨顆の接触部分の102%~125%の範囲の曲率半径Rを有してもよい。当業者であれば理解するように、曲率半径は、インサートのサイズ(例えば、幅)に応じて変化し得る。
【0055】
加えて、凹状上面262の溝点Pを前面210よりも後面220に近く配列することにより、インサート200は、前唇部265で高さHの増大をもたらすように配列され構成される。例となる一実施形態では、大腿骨接触領域のおよその縁部を表す断面(例えば、インサート上の大腿骨の接触領域のおよその最も近心である(又は正中線に最も近い)縁部、インサートの正中線からおよそ13.5mmにおける断面)で、受け側の大腿骨顆のそれぞれの溝に対して測定した、凹状上面262の溝点Pから前唇部265の先端まで測定した場合の前唇部265における高さHは、6.5mm~10mmであってもよい。対照的に、インサート200は、後唇部267において高さHがより低くてもよい(例えば、後唇部267における唇部の高さは、前唇部265における唇部の高さよりも低い)。例となる一実施形態では、凹状上面262の溝点Pから後唇部267の先端まで測定した後唇部267における高さHは、3mm~4mmであり得る。当業者であれば理解するように、前唇部265における高さH及び後唇部267における高さHは、インサートのサイズ(例えば、A/P幅)に応じて変化し得る。
【0056】
以下でより詳細に説明し、図示するように、溝がより後方にある(例えば、溝点P(例えば、凹状上面262の底部又は最下部点)が後面220のより近くに位置付けられる)凹状上面を有する内側部を組み込むことにより、また前唇部の増大した高さHを組み込むことにより、インサート200は、正中溝及び外側凸部を有する市場にある既存のインサートと比較して、様々なグレードのPCL欠損に対して改善された安定性を提供するように配置され構成される。このような配置により、インサート200は、患者が欠損PCL機能又は切除PCLを経験する膝プロテーゼに使用されるように配置され構成される。
【0057】
対照的に、前述したように、外側部270は、少なくとも一部分が凸状の面又は曲線である。つまり、例えば、インサート200の中点から約24mmの距離で取った、外側部270を通過するインサート200の断面図を図示する図10に最も良く図示されるように、外側部270は、その後面220から前面210に延在する複心上面272を含み(例えば、外側部270の上面272が複心曲線を含む)、上面272の少なくとも一部分は凸状の面又は曲線を有する。このような配置により、一実施形態では、外側部270の複心上面272は、後唇部276に隣接する第1の後区272a、第2の後中間区272b、第3の中間区272c、任意選択の第4の前中間区272d、及び第5の前区272eを含んでもよいが、これは1つの構成でしかなく、複心上面272は、より多い区を含んでも、より少ない区を含んでもよい。
【0058】
一実施形態では、第1の後区272aは、後唇部276で唇部付き領域を形成し始める後方(例えば、凹状)曲線を形成してもよい。使用時、第1の後区272aのサイズは、インサートサイズがより大きくなると拡大する。第2の後中間区272b及び第5の前区272eは、各々、凹状の面又は曲線を含んでもよく、一方で、第3の中間区272cは、凸状の面又は曲線を含む。任意選択の第4の前中間区272dは、第3の中間区272cと第5の前区272eとの間に位置付けられた平坦な面又は区を含んでもよい。使用時、平坦な面又は区272dは、第5の前区272eから短い距離で後方に延在した後、第3の中間区272cに移行する。一実施形態では、第2の後中間区272bは、第1の後区272aと比較して、異なる曲率半径を有してもよく、これは、第1の後区272aと第2の後中間区272bとの間の移行点の位置に影響を与え、それにより、第2の後中間区272bと第3の中間区との間の傾斜の変化、及び/又は外側部270内の後唇部276における高さHの増減を可能にする。
【0059】
一実施形態では、本開示の1つ以上の特徴に従い、外側部270の複心上面272の溝点Pは、第5の前区272eと任意選択の第4の前中間区272dとの間の移行点で生じる(例えば、溝点Pは、第5の前区272eが、隣接する第4の前中間区272dと交わる点に位置する)。つまり、外側部270の複心上面272の溝点Pは、前凹状半径曲線(例えば、前区272e)の後端にある。溝点Pは、インサート200の後面220から距離Dに位置付けられてもよい。そのため、本開示の1つ以上の特徴に従い、外側部270の複心上面272の溝点Pは、後面220よりもインサート200の前面210のより近くに位置付けられてもよい。例となる一実施形態では、複心上面272の溝点Pは、インサート200の後面220から距離Dに位置付けられてもよく、距離Dは、インサート200の幅全体(例えば、前方/後方寸法)の約40%~75%、好ましくは50%~65%である。
【0060】
このような配置により、本開示の1つ以上の特徴に従い、外側部270の溝点Pは、内側部260の溝点Pよりもインサート200の前面210のより近くに位置付けられてもよい(例えば、内側部260の溝点Pは、外側部270の溝点Pよりもインサートの後面のより近くに位置付けられる)。例えば、一実施形態では、外側部270の溝点Pは、内側部260の溝点Pよりも、後面と前面との間の距離全体の約10~35パーセント、より前方に位置付けられてもよい。
【0061】
例となる一実施形態では、外側部270の複心上面272の移行点Tは、後凸部への移行の点(例えば、任意選択の第4の前中間区272dと第3の中間区272cとの間の移行の点(例えば、移行点Tは、第4の前中間区272dが隣接する第3の中間区272cと交わる点に位置付けられる))で生じる。そのため、移行点Tは、第3の中間区272cの凸半径の前開始部(例えば、第4の前中間区272dの後端における)として画定され、一方で溝点Pは第4の前中間区272dの前端に画定される。使用時、一実施形態では、溝点P及び移行点Tは、平坦面(例えば、任意選択の第4の前中間区272d)によって接続されてもよいため、これらは、インサートの底面から同じ高さに位置付けられてもよい。しかしながら、代替的に、外側部270の複心上面272が、任意選択の第4の前中間区272dを欠く場合、溝点P及び移行点Tも、A/P幅に沿って合致し得る。図示するように、一実施形態では、移行点Tは、インサート200の後面220から距離Tに位置付けられてもよく、距離Tは、インサートの幅全体(例えば、前方/後方寸法)の約30%~60%、好ましくは35%~55%、より好ましくは40%~50%である。
【0062】
本明細書で使用する場合、溝点P及び移行点Tを個別に定義することにより、上面272が、平坦若しくは凸状曲線に移行する平坦な別の凹状半径部分、又はいずれの中間部分も有しない凸状半径への移行のいずれかの追加の区又は長さを含む代替的な実施形態を可能にする。
【0063】
このような配置により、インサート200は、外側部270の前唇部275で高さHを提供するように配置され構成される。例となる一実施形態では、大腿骨接触領域のおよその縁部を表す断面(例えば、インサート上の大腿骨の接触領域のおよその最も近心である(又は正中線に最も近い)縁部、正中線からおよそ13.5mmにおける断面)で、受け側の大腿骨顆のそれぞれの溝に対して測定した、溝点Pから前唇部275の先端まで測定した場合の外側部270の前唇部275における高さHは、2.5mm~4.5mmであってもよい。対照的に、インサート200は、外側部270の後唇部276において高さHを含んでもよい。例となる一実施形態では、後唇部276における高さHは、0.5mm~1.5mmであってもよい。当業者であれば理解するように、後唇部276における高さHは、インサートのサイズ(例えば、A/P幅)に応じて変化し得る。例えば、後唇部276の深さ又は高さは、溝点Pより約1.5mm下の最も小さいインサートサイズで最大である。使用時、インサートのサイズが拡大するにつれて、後唇部がより顕著になり、追加の第1の後区272aに起因してわずかに高い位置に上昇する。最大サイズのインサートについては、深さ(又は後唇部の高さ)は、溝点Pの約0.5mm下である。
【0064】
例となる一実施形態では、外側部270の凹状上面272の最前区又は部分(例えば、第5の前区272e(図10))は、適合性である大腿骨部品のための外側大腿骨顆の接触部分の半径の155%~225%の範囲の曲率半径Rを有してもよい。使用時、外側部がより弛緩しているため、外側の曲率半径は運動(例えば、伸長中のスクリューホーム)を促進するように配置され構成され、これは、運動を制約するように配置され構成される内側部の曲率半径とは対照的である。当業者であれば理解するように、曲率半径は、インサートのサイズ(例えば、幅)に応じて変化し得る。
【0065】
本開示の1つ以上の特徴に従い、例えば膝プロテーゼ100などの膝プロテーゼに使用するための改善されたインサート200が提供される。例えば、凹状上面262を有する内側部260と、少なくとも一部分が凸状面である複心上面272を有する外側部270とを組み込むことにより、膝置換機能及び長期の臨床的成果に影響を与え得る、患者のニーズ及び様々な軟部組織状態により良好に適応するための選択肢を伴って、十字靭帯温存型又は十字靭帯置換型TKA処置の実施を促進するように配置され構成される関節インサート200が提供される。
【0066】
本開示の1つ以上の特徴に従い、溝がより後方にあり、前唇部が増大した凹状上面262を有する内側部260を組み込むことにより、インサート200は、正中溝及び外側凸部を有する市場にある既存のインサートと比較して、様々なグレードのPCL欠損に対する改善された安定性を提供する(図13、14、18、及び19から明らかであるとおり)。逆に、本開示の1つ以上の特徴に従い、凹状上面262を有する内側部260と、少なくとも部分的凸性を有する外側部270とを組み込むことによって、インサート200は、凹状又は平坦な外側関節を有する市場にある既存のインサートと比較して、改善された外側後並進を促進するように配置され構成される(図15、16、17、20、21、及び22)。
【0067】
更に、使用時、インサート200は、患者のPCLが温存される処置において移植されるように配置され構成される。図13~17を参照して、インサート200は、患者のPCLが温存される膝プロテーゼで利用される。図13~17のデータから明らかなように、インサート200は、既存のインサート1と同様に機能する。使用中、患者のPCLを温存するインサート200を利用することで、屈曲が維持され、同量の内側並進(図13及び図14に提供するとおり)、外側並進(図15及び図16に提供するとおり)、及び内旋/外旋(図17に提供するとおり)を達成することができる。後方大腿骨巻き戻し(例えば、並進)(図15及び図16)及び内旋/外旋(図17)は、より制約的な設計(既存のインサート2)よりも改善され、これはまた、PCLが温存され、靱帯の完全性が当初は本来のものではないか、又は術後にますます欠損するようになる場合に、追加のA/P制約を提供する。
【0068】
逆に、図18~22は、インサート200が、患者のPCLを代償する処置においても利用され得ることを示す。図18~22を参照して、インサート200は、患者のPCLが代償される膝プロテーゼで利用される。図18~22のデータから明らかなように、インサート200は、いくらかの改善を伴って、既存のインサート2と同様に機能する。内側部内の並進は、大腿骨留置点が伸長中により前方にあるという利点を伴って、より制約的な設計(既存のインサート2)と類似している(図18及び図19に提供するとおり)。加えて、これらの図面は、PCL代償状態又は重度に欠損したPCL状態に対する標準的なCRインサート設計よりも改善された安定性を示す。外側に、インサート200は、より制約的なインサート2のよりも、深い屈曲にある大腿骨の改善された後方並進(図20及び21に提供するとおり)及び内旋/外旋(図22に提供するとおり)を促進する。
【0069】
図13~22を参照すると、本開示の1つ以上の特徴に従うインサート200(例えば、溝がより後方にあり、前唇部が増大した凹状上面262を伴う内側部260、及び少なくとも部分的に凸状である外側部270を組み込むインサート200)と、市場にある既存のインサート及び/又は正常な膝とを比較する試験データが図示される。図示するように、インサート200を、正中溝及び外側凸部を含む凹状上面を有する内側部を組み込む既存のインサート(インサート1)、及び内側部及び外側部の両方に凹状上面を組み込む既存のインサート(インサート2)と比較する。
【0070】
図13を参照すると、PCL温存条件で使用される場合の、既存のインサート1及び既存のインサート2と比較した、インサート200の内側部内の前/後並進を説明する、脛骨大腿骨運動学が図示される。
【0071】
図14を参照すると、PCL温存条件で使用され、正常な膝と比較した場合の、既存のインサート1及び既存のインサート2と比較した、インサート200の60度~120度の膝の屈曲中の脛骨に対する内側大腿骨顆弧の並進が図示される。括弧内の値は、完全伸長時の脛骨の正中線に対する内側顆弧の低点の位置を説明する。
【0072】
図15を参照すると、PCL温存条件で使用される場合の、市場にある既存のインサート1及び既存のインサート2と比較した、インサート200の外側部内の前/後並進を説明する、脛骨大腿骨運動学が図示される。
【0073】
図16を参照すると、PCL温存条件及び正常な膝で使用される場合の、既存のインサート1及び既存のインサート2と比較した、インサート200の60度~120度の膝の屈曲中の脛骨に対する外側大腿骨顆弧の並進が図示される。括弧内の値は、完全伸長時の脛骨の正中線に対する外側顆弧の低点の位置を説明する。
【0074】
図17を参照すると、PCL温存条件で使用される場合の、既存のインサート1及び既存のインサート2と比較した、インサート200の内旋/外旋を説明する、脛骨大腿骨運動学が図示される。
【0075】
図18を参照すると、PCL代償条件で使用される場合の、既存のインサート1及び既存のインサート2と比較した、インサート200の内側部内の前/後並進を説明する、脛骨大腿骨運動学が図示される。
【0076】
図19を参照すると、PCL代償条件で使用される場合の、既存のインサート1及び既存のインサート2と比較した、インサート200の60度~120度の膝の屈曲中の脛骨に対する内側大腿骨顆弧の並進が図示される。括弧内の値は、完全伸長時の脛骨の正中線に対する内側顆弧の低点の位置を説明する。
【0077】
図20を参照すると、PCL代償条件で使用される場合の、既存のインサート1及び既存のインサート2と比較した、インサート200の外側部内の前/後並進を説明する、脛骨大腿骨運動学が図示される。
【0078】
図21を参照すると、PCL代償条件で使用される場合の、既存のインサート1及び既存のインサート2と比較した、インサート200の60度~120度の膝の屈曲中の脛骨に対する外側大腿骨顆弧の並進が図示される。括弧内の値は、完全伸長時の脛骨の正中線に対する外側顆弧の低点の位置を説明する。
【0079】
図22を参照すると、PCL代償条件で使用される場合の、既存のインサート1及び既存のインサート2と比較した、インサート200の内旋/外旋を説明する、脛骨大腿骨運動学が図示される。
【0080】
使用時、前述したように、インサート200は、現在既知である又は今後開発される任意の好適な膝プロテーゼ(例えば、大腿骨部品及び脛骨部品)と併用することができる。加えて、インサート200は、例えば超高分子量ポリエチレンなどのプラスチック又はポリマー材料を含む、整形外科用インサートの製造に使用される、現在既知である又は今後開発される任意の好適な生体適合性材料から製造することができる。加えて、インサート200は、現在既知である又は今後開発される任意の好適な様式で構築されてもよい。例えば、インサート200は、典型的な患者の範囲に適合するように様々なサイズで、超高分子量ポリエチレンなどといった医療用の生理学的に許容されるプラスチックから、機械加工、成形、又は別様に一体型の統合ユニットとして構築されてもよく、あるいは特定の患者の理学的検査及び放射線検査後に外科医によって提供されるデータに基づいて、特定の患者に合わせてカスタム設計されてもよい。材料を、例えば、放射線、化学、又は他の技術によって処理して、その摩耗特性及び/又は強度若しくは硬度を改変することができる。インサートの様々な表面の部分を、放射線、化学物質、又は他の物質若しくは技法で処理して、耐摩耗性を強化することができ、また、そのような目的及び他の目的に好適な表面処理に供することもできる。
【0081】
使用時、インサート200は、膝プロテーゼの一部として、又は様々にサイズ決定されたインサート、脛骨部品、及び/若しくは大腿骨部品を含むキットの一部として、個々に提供されてもよい。あるいは、特定の患者の解剖学的構造に合わせてカスタマイズされたインプラントのある特定の形状及び/又は他の特徴を有する、患者と一致した膝プロテーゼが提供されてもよい。
【0082】
上部、底部、上位、下位、内側、外側、前、後、近位、遠位などの用語が、本明細書で相対的に使用されている。しかしながら、かかる用語は、特定の座標配向、距離、又はサイズに限定されず、特定の実施形態を参照する相対的な位置を説明するために使用される。かかる用語は、本明細書になされる特許請求の範囲に概して限定されるものではない。本明細書の類似のセクション、部分、又は構成要素の様々な実施形態に関連して、図示又は具体的に記載されるいずれのセクション、部分、又はいずれの他の構成要素のいずれの実施形態又は特徴も、本明細書に図示又は記載されるいずれの他の類似の実施形態又は特徴にも交換可能に適用され得る。
【0083】
本開示はある特定の実施形態に言及するが、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の領域及び範囲から逸脱することなく、記載の実施形態に対する多数の修正、改変、及び変更が可能である。したがって、本開示は、記載の実施形態に限定されないことが意図される。むしろ、これらの実施形態は、例示とみなされるべきであり、性格として限定されるものではない。本発明の精神の範囲内にある全ての変更及び修正は、本開示の範囲内であるとみなされるべきである。本開示には、以下の特許請求の範囲の文言、及びその等価物によって定義される全範囲が与えられる。
【0084】
上述の説明は、幅広い用途を有する。いずれの実施形態の考察も、説明のみを目的とし、特許請求の範囲を含む本開示の範囲がこれらの実施形態に限定されることを示唆することを意図するものではない。言い換えれば、本開示の例示的な実施形態が本明細書に詳述されているが、本発明の概念は、別様に様々に具現化され用いられ得ること、及び添付の特許請求の範囲は、先行技術によって限定される場合を除き、かかる変形を含むように解釈されることが意図されていることが理解される。
【0085】
本明細書に記載のように、「実施形態」(添付の図面に図示されるものなど)は、開示された概念若しくは特徴が提供若しくは具現化され得る環境若しくは物品若しくは構成要素の例示的な表現、又は概念若しくは特徴のみが提供若しくは具現化され得る様式の表現を指し得ることが理解される。しかしながら、かかる例示的な実施形態は、例として理解されるべきものであり(別段の記載がない限り)、本開示からの概念又は特徴を学ぶ際に当業者であれば理解し得るような、記載の概念又は特徴を具現化する他の様式は、本開示の範囲内である。加えて、図面は、概念又は特徴の1つ以上の実施形態を、かかる概念若しくは特徴を組み込む環境、物品、又は構成要素の単一の実施形態において一緒に示してもよく、かかる概念又は特徴は、互いに独立し、分離しているものとして理解され(別途指定されない限り)、利便性の目的で一緒に示されるものであって、一緒に存在する又は使用されることに制限することを意図していない。例えば、1つの実施形態の一部として図示又は説明される特徴は、別個に、又は別の実施形態とともに使用されて、なお更なる実施形態をもたらすことができる。このため、本主題は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内にあるような修正及び変形を網羅することが意図される。
【0086】
本明細書で使用する場合、単数形で列挙され、「a」又は「an」という用語が先行する要素又はステップは、複数の要素又はステップの排除が明示的に列挙されない限り、複数の要素又はステップを排除しないものとして理解されるべきである。
【0087】
本明細書で使用する場合、「少なくとも1つの」、「1つ以上の」、及び「及び/又は」という語句は、動作において接続的及び離接的両方である非限定的表現である。「a」(又は「an」)、「1つ以上の」、及び「少なくとも1つの」という用語は、本明細書では交換可能に使用され得る。接続の参照(例えば、係合、取り付け、結合、接続、及び接合)は、広く解釈されるべきであり、別途示されない限り、要素の集合間、及び要素間の運動に対する中間部材を含み得る。そのため、接続の参照は、2つの要素が直接接続され、互いに固定関係にあることを必ずしも推定しない。識別の参照(例えば、一次、二次、第1、第2、第3、第4など)は、重要性又は優先順位を示すことを意図しておらず、1つの特徴を別の特徴から区別するために使用される。図面は例示のみを目的としており、本明細書に添付された図面に反映される寸法、位置、順序、及びサイズに対する相対性は、様々であり得る。
【0088】
上述の考察は、例示及び説明の目的で提示されており、本明細書に開示される形態への開示を制限することを意図していない。例えば、本開示の様々な特徴は、本開示の合理化を目的のために、1つ以上の実施形態又は構成で一緒にグループ化されている。しかしながら、本開示のある特定の実施形態又は構成の様々な特徴は、代替的な実施形態又は構成で組み合わせられてもよいことが理解される。更に、以下の特許請求の範囲は、ここに、本参照により本発明の詳細な説明に組み込まれるが、各特許請求の範囲は、本開示の別個の実施形態としてそれ自体で存在する。

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【国際調査報告】