(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ガリウムベースのIII-N合金の層をエピタキシャル成長させるための基板を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20231024BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20231024BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20231024BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20231024BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20231024BHJP
C30B 25/18 20060101ALI20231024BHJP
C30B 19/12 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L29/80 H
H01L21/265 Q
H01L21/02 B
C30B29/38 D
C30B25/18
C30B19/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518172
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 FR2021051710
(87)【国際公開番号】W WO2022074319
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ギオ, エリック
【テーマコード(参考)】
4G077
5F102
5F152
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE11
4G077BE15
4G077CG10
4G077DB01
4G077ED04
4G077ED06
4G077HA02
4G077HA12
4G077QA71
4G077TA04
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4G077TK06
4G077TK13
5F102GJ02
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5F152NN12
5F152NN22
5F152NP02
5F152NQ09
(57)【要約】
GaN、AlGaN又はInGaNの層をエピタキシャル成長させるための基板を製造するための方法は単結晶炭化ケイ素の少なくとも1つの層を含むベース基板を用意するステップと、ドナー基板を形成するために、単結晶SiCの層上に1μmよりも大きい厚さを有する半絶縁性SiCの層のエピタキシャル成長を行うステップと、転写される単結晶半絶縁性SiCの薄層を画定する脆弱化領域を形成するように、半絶縁性SiCの層にイオン種を注入するステップと、半絶縁性SiCの層を高い電気抵抗率を有するレシーバ基板に直接接合するステップと、単結晶半絶縁性SiCの薄層をレシーバ基板に転写するように、脆弱化領域に沿ってドナー基板を分離するステップと、を含む。
【選択図】
図1E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の層をエピタキシャル成長させるための基板を製造するための方法であって、以下の連続するステップ、すなわち、
単結晶炭化ケイ素の少なくとも1つの層(10、51)を含むベース基板を用意するステップと、
ドナー基板を形成するために、前記単結晶SiCの層(10、51)上に半絶縁性SiCの層(11)のエピタキシャル成長を行うステップと、
転写される単結晶半絶縁性SiCの薄層(12)を画定する脆弱化領域(13)を形成するように、前記半絶縁性SiCの層(11)にイオン種を注入するステップと、
前記半絶縁性SiCの層(11)を、高い電気抵抗率を有するレシーバ基板(20)に接合するステップと、
前記単結晶半絶縁性SiCの薄層(12)を前記レシーバ基板(20)に転写するように、前記脆弱化領域(13)に沿って前記ドナー基板を分離するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記レシーバ基板(20)が、炭化ケイ素との熱膨張係数の差が3×10
-6K
-1以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レシーバ基板(20)が、高い電気抵抗率のシリコン基板、高い電気抵抗率の多結晶SiCの基板、多結晶AlN基板、及びダイヤモンド基板から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記半絶縁性SiCのエピタキシャル層(11)が、3μm以上、好ましくは5μm以上、さらにより好ましくは10μm以上の厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記レシーバ基板(20)に転写された前記薄層(12)が、1μm未満の厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記半絶縁性SiCの層(11)が、前記SiCの前記エピタキシャル成長中にバナジウムをドープすることによって形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
新たなドナー基板を形成することを目的として、前記転写された層(12)から分離された前記ドナー基板のセグメントをリサイクルするステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記リサイクルするステップが、前記半絶縁性SiCの層(11)の残留セグメント(11’)を研磨することを含み、このようにして得られた前記新たなドナー基板を、イオン種を注入する新たなステップにおいて使用することが可能である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リサイクルするステップが、前記半絶縁性SiCの層(11)の残留セグメント(11’)を研磨することと、前記半絶縁性SiCの層の前記厚さを増加させて前記新たなドナー基板を形成するためにエピタキシャル再成長を行うこととを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記リサイクルするステップが、前記半絶縁性SiCの層(11)の残留セグメント(11’)を除去して、前記単結晶SiCの層(10、51)の前記炭素面を露出させることと、前記単結晶SiCの層(10、51)の前記炭素面(10-C、51-C)上に半絶縁性SiCの新たな層(11)のエピタキシャル成長を行って、前記新たなドナー基板を形成することとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ベース基板の前記単結晶炭化ケイ素の層(10、51)が自由炭素面(10-C、51-C)を有し、
前記半絶縁性SiCの層(11)の前記エピタキシャル成長が前記単結晶SiCの層(10、51)の前記炭素面(10-C、51-C)上で行われ、
前記イオン種が前記半絶縁性SiCの層(11)の前記炭素面(11-C)を通して注入され、
前記半絶縁性SiCの層(11)の前記炭素面(11-C)が前記レシーバ基板(20)に接合され、
前記分離の終了時に、前記転写された単結晶半絶縁性SiCの層(12)の前記シリコン面(12-Si)が露出される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
以下の連続するステップ、すなわち、
シリコン面(50-Si)を有する単結晶SiCの出発基板(50)を用意するステップと、
転写される単結晶SiCの薄層(51)を画定する脆弱化領域(52)を形成するように、前記出発基板(50)の前記シリコン面(50-Si)を通してイオン種を注入するステップと、
前記出発基板(50)の前記シリコン面(50-Si)を中間キャリア(40)に接合するステップと、
前記単結晶SiCの薄層(51)を前記中間キャリア(40)に転写し、前記転写された単結晶SiCの層(51)の前記炭素面(51-C)を露出させるように、前記脆弱化領域(52)に沿って前記出発基板(50)を分離するステップであって、前記中間キャリア(40)及び前記転写された単結晶SiCの層(51)が共に前記ベース基板を形成する、ステップと、
を介して前記ベース基板を製造することを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記中間キャリア(40)が、前記出発基板(50)の結晶品質よりも低い結晶品質を有するSiC基板である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記出発基板(50)が、中性種の衝撃によって接合される各表面を活性化した後に、前記中間キャリア(40)に直接接合される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記出発基板(50)が、耐熱性接合層によって前記中間キャリア(40)に接合される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項16】
新たな出発基板を形成することを目的として、前記転写された層(51)から分離された前記出発基板(50’)のセグメントをリサイクルするステップを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の層をエピタキシによって製造するための方法であって、
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を用いて製造された基板を用意するステップと、
前記基板の前記半絶縁性SiCの層(30)上に、窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の前記層(30)のエピタキシャル成長を行うステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の前記層(30)が、1~2μmの厚さを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)を製造するための方法であって、
請求項17又は18に記載の方法を用いて、窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の層(30)をエピタキシによって製造するステップと、
窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の前記層(60)上に、窒化ガリウムとは異なるIII-N材料の層(30)のエピタキシによってヘテロ接合を形成するステップと、
前記ヘテロ接合と同じ高さにトランジスタのチャネルを形成するステップと、
前記チャネル上に前記トランジスタのソース、ドレイン及びゲートを形成するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガリウムベースのIII-N合金の層(すなわち、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の層)をエピタキシャル成長させるための基板を製造するための方法、そのようなIII-N合金の層を製造するための方法、及びそのようなIII-N合金の層に高電子移動度トランジスタ(HEMT)を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III-N半導体、特に、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)又は窒化インジウムガリウム(InGaN)は、特に高出力発光ダイオード(LED)、及び高周波で動作する電子デバイス、すなわち高電子移動度トランジスタ(HEMT)又は他の電界効果トランジスタ(FET)などのデバイスの形成に関して、特に有望であるように思われる。
【0003】
これらのIII-N合金は、大きなサイズのバルク基板の形態で見出すのが困難である限りは、一般に、ヘテロエピタキシによって、すなわち、異なる材料で作られた基板上にエピタキシすることによって形成される。
【0004】
このような基板の選択には、特に、基板の材料とIII-N合金との格子定数の差及び熱膨張係数の差が考慮される。具体的には、これらの差が大きいほど、転位などの結晶欠陥が窒化ガリウム中に形成されるリスクが高くなり、過度の歪みを引き起こしやすい高い機械的応力が発生するリスクが高くなる。
【0005】
III-N合金のヘテロエピタキシで最も頻繁に考慮される材料は、サファイア及び炭化ケイ素(SiC)である。
【0006】
窒化ガリウムとの格子定数の差が小さいことに加えて、炭化ケイ素は、その熱伝導率がサファイアよりも明らかに高く、したがって構成要素の動作中に生成される熱エネルギーをより容易に放散させることができるため、高出力電子用途には特に好ましい。
【0007】
高周波(RF)用途では、基板の寄生損失(一般にRF損失と呼ばれる)を最小限に抑えるために、半絶縁性炭化ケイ素、すなわち105Ωcm以上の電気抵抗率を有する炭化ケイ素を使用することが求められる。しかしながら、この材料は特に高価であり、現在、限られたサイズの基板の形態でしか入手可能でない。
【0008】
シリコンであれば、製造コストが大幅に削減され、大きなサイズの基板を利用することができるが、III-N合金オンシリコン型の構造は、RF損失及び不十分な熱放散によって不利になる。
【0009】
SopSiC又はSiCopSiC構造などの複合構造も研究されたが[1]、完全に満足できるものではないことが判明した。これらの構造は、多結晶SiC基板上に単結晶シリコンの層又は単結晶SiCの層(窒化ガリウムをエピタキシャル成長させるためのシード層を形成することが意図されている)をそれぞれ含む。多結晶SiCは、安価で、大きなサイズの基板の形態で入手可能な、熱を良好に放散する材料であるが、これらの複合構造は、III-N合金の層から多結晶SiC基板への熱の放散を妨げる熱障壁を形成する、単結晶のシリコン又はSiCの層と多結晶SiC基板との間の界面の酸化ケイ素の層の存在によって不利になっている。
【発明の概要】
【0010】
(発明の簡単な説明)
したがって、本発明の1つの目的は、上述の欠点、特に、半絶縁性SiC基板のサイズ及びコストに関する制限を是正することである。
【0011】
したがって、本発明の目的は、RF損失が最小限に抑えられ、熱の放散が最大化される、特にHEMT又は他の高周波高出力電子デバイスを形成することを目的として、ガリウムベースのIII-N合金をエピタキシャル成長させるための基板を製造するための方法を提供することである。
この目的のために、本発明は、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の層をエピタキシャル成長させるための基板を製造するための方法であって、以下の連続するステップ、すなわち、
単結晶炭化ケイ素の少なくとも1つの層を含むベース基板を用意するステップと、
ドナー基板を形成するために、単結晶SiCの層上に半絶縁性SiCの層のエピタキシャル成長を行うステップと、
転写される単結晶半絶縁性SiCの薄層を画定する脆弱化領域を形成するように、半絶縁性SiCの層にイオン種を注入するステップと、
半絶縁性SiCの層を、高い電気抵抗率を有するレシーバ基板に接合するステップと、
単結晶半絶縁性SiCの薄層をレシーバ基板に転写するように、脆弱化領域に沿ってドナー基板を分離するステップと、
を含む方法を提供する。
【0012】
「高周波」とは、本明細書において、3kHzよりも高い周波数を意味する。
【0013】
「高出力」とは、本明細書において、トランジスタのゲートを通して注入される0.5W/mmよりも高い電力密度を意味する。
【0014】
「高い電気抵抗率」とは、本明細書において、100Ωcm以上の電気抵抗率を意味する。
【0015】
「半絶縁性SiC」とは、本明細書において、105Ωcm以上の電気抵抗率を有する炭化ケイ素を意味する。
【0016】
本方法は、窒化ガリウムの層の後続のエピタキシャル成長に適した結晶品質を有する半絶縁性SiCの層を含む高い電気抵抗率及び高い熱伝導率のベース基板を形成することを可能にし、最終構造が、その良好な特性から熱の放散及びRF損失の制限に関して利益を得ることを可能にする。半絶縁性SiCの層は、高い電気抵抗率及び高い熱伝導率の基板と直接接触しているため、この構造は、熱障壁をさらに含まない。
【0017】
高い電気抵抗率の基板上に直接エピタキシによって半絶縁性SiCの層を形成することからなる方法では、高い電気抵抗率の基板の不十分な結晶品質、又は前記基板の材料と炭化ケイ素との格子定数の差のために、半絶縁性SiC中に多数の転位が形成されることになる。対照的に、本発明による方法では、半絶縁性SiCを成長させるためのシードとして、単結晶SiCの層を使用することが可能であり、その品質は、ドナー基板からの転写によって得られていたため、最適である。
【0018】
本発明の有利であるが任意選択の特徴によると、これらの特徴は、単独で、又は技術的に可能な場合は組み合わせて実施されてもよい。
レシーバ基板は、炭化ケイ素との熱膨張係数の差が3×10-6K-1以下であり、
レシーバ基板は、高い電気抵抗率のシリコン基板、高い電気抵抗率の多結晶SiC基板、多結晶AlN基板、及びダイヤモンド基板から選択され、
半絶縁性SiCのエピタキシャル層は、3μm以上、好ましくは5μm以上、さらにより好ましくは10μm以上の厚さを有し、
レシーバ基板に転写された薄層は、1μm未満の厚さを有し、
半絶縁性SiCの層は、SiCのエピタキシャル成長中にバナジウムをドープすることによって形成され、
本方法は、新たなドナー基板を形成することを目的として、転写された層から分離されたドナー基板のセグメントをリサイクルするステップをさらに含み、
前記リサイクルするステップは、半絶縁性SiCの層の残留セグメントを研磨することを含み、このようにして得られた新たなドナー基板は、イオン種を注入する新たなステップにおいて使用することができ、
前記リサイクルするステップは、半絶縁性SiCの層の残留セグメントを研磨することと、前記半絶縁性SiCの層の厚さを増加させて新たなドナー基板を形成するためにエピタキシャル再成長を行うことと、を含み、
前記リサイクルするステップは、単結晶SiCの層の炭素面を露出させるために半絶縁性SiCの層の残留セグメントを除去することと、新たなドナー基板を形成するために単結晶SiCの層の炭素面上に新たな半絶縁性SiCの層のエピタキシャル成長を行うことと、を含み、
ベース基板の単結晶炭化ケイ素の層は、自由炭素面を有し、半絶縁性SiCの層のエピタキシャル成長は、単結晶SiCの層の前記炭素面上で行われ、イオン種は、半絶縁性SiCの層の炭素面を通して注入され、半絶縁性SiCの層の炭素面は、レシーバ基板に接合され、分離の終了時に、転写された単結晶半絶縁性SiCの層のシリコン面が露出され、
本方法は、以下の連続するステップ、すなわち、シリコン面を有する単結晶SiCの出発基板を用意するステップと、転写される単結晶SiCの薄層を画定する脆弱化領域を形成するように、出発基板のシリコン面を通してイオン種を注入するステップと、出発基板のシリコン面を中間キャリアに接合するステップと、単結晶SiCの薄層を中間キャリアに転写するように脆弱化領域に沿って出発基板を分離して、前記転写された単結晶SiCの層の炭素面を露出させるステップであって、中間キャリア及び転写された単結晶SiCの層が共にベース基板を形成する、ステップと、を介してベース基板を製造するステップを含み、
中間キャリアは、出発基板の結晶品質よりも低い結晶品質を有するSiC基板であり、
出発基板は、接合される各表面を中性種の衝撃によって活性化した後に、中間キャリアに直接接合され、
出発基板は、耐熱性接合層によって中間キャリアに接合され、
本方法は、新たな出発基板を形成することを目的として、転写された層から分離された出発基板のセグメントをリサイクルするステップを含む。
【0019】
本発明の別の主題は、上述した方法を使用して得られた基板上にガリウムベースのIII-N合金の層を製造するための方法に関する。
前記方法は、
上述の方法を用いて製造された基板を用意するステップと、
前記基板の半絶縁性SiCの層上に、窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の層のエピタキシャル成長を行うステップと、
を含む。
【0020】
窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の層は、典型的には1~2μmに含まれる厚さを有する。
【0021】
本発明の別の主題は、ガリウムベースのIII-N合金のこのような層に高電子移動度トランジスタ(HEMT)を製造するための方法に関する。
前記方法は、
前述の方法を用いて、窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の層をエピタキシによって製造するステップと、
窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、又は窒化インジウムガリウム(InGaN)の層上に、窒化ガリウムとは異なるIII-N材料の層のエピタキシによるヘテロ接合を形成するステップと、
前記ヘテロ接合と同じ高さにトランジスタのチャネルを形成するステップと、
チャネル上にトランジスタのソース、ドレイン及びゲートを形成するステップと、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【
図1A】単結晶SiCベース基板の概略断面図である。
【
図1B】
図1Aのベース基板のC面上に単結晶半絶縁性SiCの層をエピタキシャル成長させることによって形成されたドナー基板の概略断面図である。
【
図1C】エピタキシ中に前記基板のエッジ上に形成されたSiC突出部(outgrowth)を除去することが意図されたトリミング後のドナー基板の概略断面図である。
【
図1D】転写される薄層を画定するために半絶縁性SiCの層にイオン種を注入することによって脆弱化領域を形成中の
図1Cのドナー基板の概略断面図である。
【
図1E】レシーバ基板と
図1Dのドナー基板とのアセンブリの概略断面図である。
【
図1F】単結晶半絶縁性SiCの薄層をレシーバ基板に転写するために、ドナー基板が脆弱化領域に沿って分離されている概略断面図である。
【
図1G】レシーバ基板の自由表面(シリコン面)を研磨した後の、レシーバ基板に転写された単結晶半絶縁性SiCの薄層の概略断面図である。
【
図1H】
図1Gの単結晶半絶縁性SiCの層のシリコン面上にGaNの層がエピタキシによって形成されている概略断面図である。
【
図1I】エピタキシによる
図1HのGaNの層上のヘテロ接合の形成を示す概略断面図である。
【
図2A】第1の単結晶SiCドナー基板の概略断面図である。
【
図2B】転写される単結晶SiCの薄層を形成するために、前記第1のドナー基板のSi面を通してイオン種を注入することによって脆弱化領域を形成中の
図2Aのドナー基板の概略断面図である。
【
図2C】図第1のレシーバ基板と2Bの第1のドナー基板とのアセンブリの概略断面図である。
【
図2D】薄い単結晶層を第1のレシーバ基板に転写するために、第1のドナー基板が脆弱化領域に沿って分離されている概略断面図である。
【
図2E】第1のレシーバ基板の自由表面(炭素面)が研磨された後に第1のレシーバ基板に転写された単結晶SiCの薄層の概略断面図である。
【
図2F】
図2Eの基板の単結晶SiCの層の炭素面上に単結晶半絶縁性SiCの層をエピタキシャル成長させることによって形成された第2のドナー基板の概略断面図である。
【
図2G】エピタキシ中に前記ドナー基板のエッジ上に形成されたSiC突出部を除去することが意図されたエッジ処理(edging)後の第2のドナー基板の概略断面図である。
【
図2H】転写される薄層を画定するために、半絶縁性SiCの層にイオン種を注入することによって脆弱化領域を形成中の
図2Gの第2のドナー基板の概略断面図である。
【
図2I】第2のレシーバ基板と
図2Hの第2のドナー基板とのアセンブリの概略断面図である。
【
図2J】単結晶半絶縁性SiCの薄層を第2のレシーバ基板に転写するために、第2のドナー基板が脆弱化領域に沿って分離されている概略断面図である。
【
図2K】第2のレシーバ基板の自由表面(シリコン面)が研磨された後に第2のレシーバ基板に転写された単結晶半絶縁性SiCの薄層の概略断面図である。
【
図2L】
図2Kの単結晶半絶縁性SiCの層のシリコン面上にGaNの層が形成されている概略断面図である。
【
図2M】エピタキシによる
図2LのGaNの層上のヘテロ接合の形成を示す概略断面図である。
【0023】
図を見やすくするために、様々な層は必ずしも縮尺通りには示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態の詳細な説明)
本発明は、ガリウムベースの二元又は三元III-N合金をエピタキシャル成長させるための基板を製造するための方法を提供する。前記合金は、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlxGa1-xN、ここで0<x<1であり、以下AlGaNと略記する)及び窒化インジウムガリウム(InxGa1-xN、ここで0<x<1であり、以下InGaNと略記する)を含む。簡潔にするために、本明細書の残りの部分では、GaNの層をエピタキシャル成長させるための基板の製造について説明するが、当業者は、AlGaN又はInGaNの層を形成するために成長条件を調整することができ、このエピタキシャル成長に役立つ基板は同じままである。
【0025】
本方法は、ドナー基板を形成するために、半絶縁性SiCの層を成長させるためのシードとして働く単結晶炭化ケイ素(SiC)のベース基板を使用する。次いで、前記ドナー基板の半絶縁性SiCの薄層を、Smart Cut(商標)プロセスを用いて、高い電気抵抗率を有するレシーバ基板に転写する。
【0026】
この目的のために、優れた結晶品質を有する単結晶SiC、すなわち、特に転位のないSiCで作られたベース基板が選択される。
【0027】
特定の実施形態では、ベース基板は、単結晶SiCのバルク基板であってもよい。他の実施形態では、ベース基板は、単結晶SiCの表面層と、別の材料の少なくとも1つの他の層とを含む複合基板であってもよい。この場合、単結晶SiCの層は、0.5μm以上の厚さを有する。
【0028】
炭化ケイ素には様々な結晶形態(ポリタイプとも呼ばれる)がある。最も一般的なのは、4H、6H及び3Cの形態である。単結晶炭化ケイ素は、4H及び6Hポリタイプから選択されるのが好ましいが、任意のポリタイプを用いて本発明を実施することができる。
【0029】
図には、単結晶SiCで作られたバルクベース基板10が示されている。
【0030】
それ自体知られているように、
図1に示すように、このような基板は、シリコン面10-Si及び炭素面10-Cを有する。
【0031】
現在、GaNのエピタキシの工程は、主にSiCのシリコン面上で実施されている。しかしながら、SiCの炭素面上にGaNを成長させることは不可能ではない。本方法の実施中のベース基板(シリコン面/炭素面)、したがってドナー基板の向きは、GaNの層を成長させることが意図されたSiCの面に応じて選択される。
【0032】
図1Bを参照すると、ベース基板10上に半絶縁性SiCの層11のエピタキシャル成長が行われている。半絶縁性SiCのポリタイプは、有利には、ドナー基板のSiCのポリタイプと同一である。
【0033】
層11の成長は、基板10の炭素面10-C上で行われるのが有利である。したがって、ドナー基板の表面に位置するのは、半絶縁性SiCの炭素面11-Cである。
【0034】
半絶縁性SiCを形成するための様々な技術がある。一実施形態によると、SiCの層は、そのエピタキシャル成長中にバナジウムでドープされる。別の実施形態によると、エピタキシャル反応器内で適切な前駆体を使用して、シリコン、炭素及びバナジウムを同時に堆積させる。
【0035】
半絶縁性SiCの層は、有利には、引き続いて、レシーバ基板に転写される層の厚さよりも大きい厚さを有する。半絶縁性SiCの層は、転写される層の厚さの複数倍よりも大きい厚さを有するのが好ましい。したがって、ドナー基板は、場合によっては、半絶縁性SiCの層を転写するために複数回使用され、これは、本方法をより経済的にする。例えば、半絶縁性SiCのエピタキシャル層は、好ましくは3μm超、より好ましくは5μm以上、さらには10μm以上の厚さを有する。
【0036】
半絶縁性SiCは希少材料であるため、提案された製造方法により、市場での半絶縁性SiC基板の入手可能性がないことを克服することが可能になる。
【0037】
図1Cを参照すると、半絶縁性SiCの層11及びその直下のベース基板10のセグメントがトリミングされる。このようなトリミングは、半絶縁性SiCのエピタキシ中に、余分な厚さの半絶縁性SiCがベース基板のエッジ上に形成されるという事実によって動機付けられている。しかしながら、半導体デバイスの製造ラインに存在するツールは、一般に、公称直径とも呼ばれる所定の基板直径に対して設計されている。したがって、トリミングにより、半絶縁性SiCのエピタキシャル層の直径を公称直径に戻すことができる。このトリミングステップは、層のエッジから数百ミクロンの幅及び数十ミクロンの深さを除去するエッジ研削ツールを用いて行われる。
【0038】
図1Dを参照すると、単結晶半絶縁性SiCの薄層12を画定する脆弱化領域13を形成するように、イオン種がドナー基板の半絶縁性SiCの層11に注入されている。注入される種は、典型的には水素及び/又はヘリウムを含む。当業者であれば、必要な注入ドーズ量及びエネルギーを規定することができるであろう。
【0039】
図示される実施形態では、ベース基板の最初の向きのために、イオン種は、ドナー基板の炭素面11-Cを介して注入される。
【0040】
単結晶半絶縁性SiCの薄層12は、1μm未満の厚さを有するのが好ましい。具体的には、このような厚さは、Smart Cut(商標)プロセスを用いて工業規模で達成可能である。特に、工業製造ラインで利用可能な注入装置により、このような注入深さを得ることができる。
【0041】
図1Eを参照すると、高い電気抵抗率を有するレシーバ基板20がさらに設けられている。
【0042】
前記レシーバ基板の主な機能は、前記レシーバ基板に転写された半絶縁性SiCの層12と共に、GaNのエピタキシャル成長に適した基板を形成することである。
【0043】
エピタキシは高温で行われるため、レシーバ基板は、GaNのエピタキシ中に応力又は歪みを生成しないように、SiCの熱膨張係数と実質的に等しい熱膨張係数を有するように選択されることが好ましい。したがって、レシーバ基板は、SiCとの熱膨張係数の差が絶対値で3×10-6K-1以下であるのが特に有利である。
【0044】
さらに、レシーバ基板は、その高い電気抵抗率に加えて、有利には、最終構造内の熱の放散に寄与する。したがって、高い熱伝導率を有する材料が、有利には、レシーバ基板のために選択される。
【0045】
したがって、レシーバ基板のための好ましい材料は、セラミック(例えば、限定はしないが、多結晶SiC(pSiC)、多結晶窒化アルミニウム(pAlN)、酸化ベリリウム(BeO))、ダイヤモンド、又は、それほどでもないが、100Ωcm以上の電気抵抗率のシリコン(後者の熱伝導率は、言及された他の材料の熱伝導率よりも低い)である。
【0046】
ドナー基板の半絶縁性SiCの層11は、レシーバ基板20に接合されている。これは、直接接合、すなわち、前記基板間に介在する、熱障壁を形成しやすい接合層を使用しない接合の問題である。
【0047】
図1Fを参照すると、ドナー基板は、脆弱化領域13に沿って分離されている。それ自体知られている仕方で、分離は、熱処理、機械的作用、又はこれらの手段の組合せによって引き起こされてもよい。
【0048】
この分離の効果は、半絶縁性SiCの層12をレシーバ基板20に転写することである。
【0049】
図1Gに示すように、転写された単結晶SiCの層12の自由面は、シリコン面12-Siである(炭素面は、レシーバ基板20との界面の側にある)。この面は、例えば化学機械研磨(CMP)によって研磨され、層12の粗さを減少させ、注入に関連する欠陥を除去する。
【0050】
ベース基板10と、レシーバ基板20に転写されなかった半絶縁性SiCの層11のセグメント11’とを含むドナー基板の残りの部分(
図1E参照)は、有利には、新たな使用を目的としてリサイクルすることができる。
【0051】
リサイクルのモードは、残留セグメント11’の厚さに応じて変わることがある。
【0052】
この厚さが非常に小さい場合、特に、転写される半絶縁性SiCの新たな層の厚さよりも小さい(すなわち、典型的には1μmよりも小さい)場合、ベース基板10のみを残しておくために、このセグメントの全体が除去されてもよい。したがって、前記ベース基板10は、
図1Aから始まる説明した方法において再利用されてもよく、特に、
図1Bに示すように、半絶縁性SiCの新たなエピタキシャル層を受け取ることができる。
【0053】
半絶縁性SiCの残留セグメント11’の厚さがかなり大きい(すなわち、典型的には1μmよりも大きい)場合、前記セグメント11’は、その表面の研磨後にベース基板10上に保持されてもよい。
【0054】
研磨後の前記セグメントの厚さが、新たなレシーバ基板に転写される層12の厚さよりも大きい場合、ベース基板10と半絶縁性SiCのセグメント11’とから構成される構造は、
図1Dを参照して説明したステップから始まる上述の方法において、新たなドナー基板として使用することができる。
【0055】
任意選択で、特に研磨後の半絶縁性SiCの前記セグメント11’の厚さが、新たなレシーバ基板に転写される層12の厚さよりも小さい場合、
図1Dを参照して説明したステップから始まる本方法の実施に十分な厚さを有する半絶縁性SiCの層を得るために、研磨後のセグメント11’上にエピタキシャル再成長によって新たな厚さの半絶縁性SiCを成長させることができる。
【0056】
図1Gの基板に戻ると、前記基板は、転写された半絶縁性SiCの層12上にガリウムベースのIII-N合金を成長させるのに適している。
【0057】
図1Hを参照すると、半絶縁性SiCの層12のシリコン面上に、GaN(又は、上述のように、AlGaN若しくはInGaN)の層30を成長させる。層30の厚さは、典型的には、1μm~2μmである。
【0058】
次に、
図1Iに示すように、層30上に、層30とは異なるIII-N合金の層60をエピタキシによって成長させることによって、ヘテロ接合が形成される。
【0059】
したがって、当業者に知られている方法を用いて、このヘテロ接合からトランジスタ、特にHEMTの製造を継続することが可能であり、トランジスタのチャネルがヘテロ接合と同じ高さに形成され、トランジスタのソース、ドレイン、及びゲートがチャネル上に形成される。
【0060】
ベース基板10(注入を受け、レシーバ基板に接合された炭素面10-C)の初期配向のために、最終基板上に露出するのは、半絶縁性SiCの層のシリコン面12-Siであり、これは、GaN、AlGaN又はInGaNの成長に特に好ましい。
【0061】
特に、単結晶SiCのより従来的な配向を可能にし、注入を受け、レシーバ基板に接合されるのがシリコン面である、上述の方法の1つの変形形態についてここで説明する。
【0062】
この目的のために、単結晶SiCの層を出発基板から中間キャリアに転写することによってベース基板が形成され、次いで、ドナー基板を形成するために、転写されたSiCの層上に半絶縁性SiCの層をエピタキシによって成長させる。
【0063】
図2Aを参照すると、優れた結晶品質を有する単結晶SiCの出発基板50、すなわち、特に転位のない基板が用意される。
【0064】
特定の実施形態では、出発基板は、単結晶SiCのバルク基板であってもよい。他の実施形態では、出発基板は、単結晶SiCの表面層と、別の材料の少なくとも1つの他の層とを含む複合基板であってもよい。この場合、単結晶SiCの層は、0.5μm以上の厚さを有する。
【0065】
炭化ケイ素には様々な結晶形態(ポリタイプとも呼ばれる)がある。最も一般的なのは、4H、6H及び3Cの形態である。単結晶炭化ケイ素は、4H及び6Hポリタイプから選択されるのが好ましいが、任意のポリタイプを用いて本発明を実施することができる。
【0066】
図には、単結晶SiCで作られたバルク出発基板50が示されている。
【0067】
それ自体知られているように、
図2Aに示すように、このような基板は、シリコン面50-Si及び炭素面50-Cを有する。
【0068】
本方法の実施中の出発基板(シリコン面/炭素面)、したがってドナー基板の向きは、GaNの層を成長させることが意図されているSiCの面に応じて選択される。
【0069】
本方法のステップの実施のために選択されるのは、出発基板50のシリコン面50-Siであるのが特に有利である。具体的には、これは、単結晶炭化ケイ素を含む工業プロセスにおいて最も一般的な配向である。
【0070】
図2Bを参照すると、転写される単結晶SiCの薄層51を画定する脆弱化領域52を形成するように、出発基板50のシリコン面50-Siを通してイオン種が注入される(矢印によって概略的に表される)。
【0071】
注入される種は、典型的には水素及び/又はヘリウムを含む。当業者であれば、必要な注入ドーズ量及びエネルギーを規定することができるであろう。
【0072】
単結晶半絶縁性SiCの薄層52は、1μm未満の厚さを有するのが好ましい。具体的には、このような厚さは、Smart Cut(商標)プロセスを用いて工業規模で達成可能である。特に、工業製造ラインで利用可能な注入装置により、このような注入深さを得ることができる。
【0073】
図2Cを参照すると、出発基板50のシリコン面50-Siが中間キャリア40に接合されている。
【0074】
前記中間キャリアの主な機能は、単結晶SiCの層52を出発基板から転写することと、半絶縁性SiCの層を単結晶SiCの層上に成長させることとの間で、単結晶SiCの層52を一時的に保持することである。
【0075】
この目的のために、中間キャリア40は、半絶縁性SiCのエピタキシ中に応力又は歪みを生成しないように、SiCの熱膨張係数と実質的に等しい熱膨張係数を有するように選択される。したがって、中間キャリアと出発基板(又は複合出発基板の場合には単結晶SiCの層)とは、熱膨張係数の差が絶対値で3×10-6K-1以下であるのが特に有利である。
【0076】
中間キャリアも、熱膨張係数の差を最小限に抑えるようにSiCで作られているのが好ましい。中間キャリア40は、出発基板の結晶品質よりも低い結晶品質を有するSiC基板であるのが特に有利である。このことは、中間キャリアが多結晶SiC基板であってもよく、又は実際には単結晶SiCの基板であってもよいが、(半絶縁性SiCのエピタキシャル層の品質を確保するために、優れた結晶品質のために選択された出発基板の単結晶SiCとは対照的に)すべてのタイプの転位を含んでいてもよいことを意味する。このような結晶品質の低い基板は、出発基板と同じ品質の基板よりも安価でありながら、一時的なキャリアの機能に完全に適合しているという利点がある。
【0077】
出発基板の中間キャリアへの接合は、有利には直接的であり、すなわち、出発基板と中間キャリアとの間の界面に接合層を使用することなく行われる。任意選択で、接触させる表面の少なくとも1つは、接合エネルギーを高めるために、例えば、中性種による衝撃を介して、洗浄及び/又は活性化されてもよい。
【0078】
或いは、出発基板は、劣化することなく半絶縁性SiCのエピタキシの温度に耐えることができる、耐熱性材料で作られた接合層(図示せず)を介して中間キャリアに接合されてもよい。
【0079】
図2Dを参照すると、出発基板50は、脆弱化領域52に沿って分離されている。それ自体知られている仕方で、分離は、熱処理、機械的作用、又はこれらの手段の組合せによって引き起こされてもよい。
【0080】
この分離の効果は、単結晶SiCの層51を中間キャリア40に転写することである。
【0081】
図2Eに示すように、転写された単結晶SiCの層51の自由面は、炭素面51-Cである(シリコン面は、中間キャリア40との界面の側にある)。この面は、例えば化学機械研磨(CMP)によって研磨され、層51の粗さを減少させ、注入に関連する欠陥を除去する。中間キャリア40及び転写された単結晶SiCの層51は共に、
図1A~
図1Iに示す実施形態で説明したようなベース基板を形成し、(第1の実施形態と同様に)露出しているのは単結晶SiCの炭素面であり、中間キャリアに転写するステップによって、シリコン面が露出したベース基板から開始できるようになっている。
【0082】
出発基板の残りの部分50’(
図2D参照)は、有利には、新たな使用を目的としてリサイクルすることができる。この目的のために、前記残りの部分は、注入に関連する欠陥を除去することを可能にする研磨を受けることができる。その後、この残りの部分は、
図2Aに示すような新たな出発基板として再利用することができる。
【0083】
本方法の残りの部分は、
図1B~
図1Iを参照して説明したステップと同様のステップを含み、したがって、ここでは簡潔に説明する。
【0084】
図2Fを参照すると、ドナー基板を形成するために、ベース基板10の層51上に半絶縁性SiCの層11をエピタキシャル成長させる。半絶縁性SiCのポリタイプは、有利には、出発基板のSiCのポリタイプと同一である。
【0085】
層11の成長は、ベース基板の炭素面51-C上で行われるため、ドナー基板の表面に位置するのは、半絶縁性SiCの炭素面11-Cである。
【0086】
半絶縁性SiCの層は、有利には、引き続いて、レシーバ基板に転写される層の厚さよりも大きい厚さを有する。
【0087】
図2Gを参照すると、半絶縁性SiCの層11及びその直下のベース基板10のセグメントがトリミングされる。
【0088】
図2Hを参照すると、単結晶半絶縁性SiCの薄層12を画定する脆弱化領域13を形成するように、イオン種がドナー基板の半絶縁性SiCの層11に注入される。
【0089】
ベース基板の最初の向きのために、イオン種は、ドナー基板の炭素面51-Cを通して注入される。
【0090】
単結晶半絶縁性SiCの薄層12は、1μm未満の厚さを有するのが好ましく、これは、Smart Cut(商標)プロセスを用いて工業規模で達成可能である。
【0091】
図2Iを参照すると、高い電気抵抗率を有するレシーバ基板20がさらに設けられている。
【0092】
前記レシーバ基板20の主な機能は、前記レシーバ基板に転写された半絶縁性SiCの層12と共に、GaNのエピタキシャル成長に適した基板を形成することである。
【0093】
エピタキシは高温で行われるため、レシーバ基板は、GaNのエピタキシ中に応力又は歪みを生成しないように、SiCの熱膨張係数と実質的に等しい熱膨張係数を有するように選択されることが好ましい。したがって、レシーバ基板は、SiCとの熱膨張係数の差が絶対値で3×10-6K-1以下であるのが特に有利である。
【0094】
さらに、レシーバ基板は、その高い電気抵抗率に加えて、有利には、最終構造内の熱の放散に寄与する。したがって、高い熱伝導率を有する材料が、有利には、レシーバ基板のために選択される。
【0095】
したがって、レシーバ基板のための好ましい材料は、セラミック(例えば、限定はしないが、多結晶SiC(pSiC)、多結晶窒化アルミニウム(pAlN)、酸化ベリリウム(BeO))、ダイヤモンド、又は、それほどでもないが、100Ωcm以上の電気抵抗率のシリコン(後者の熱伝導率は、言及された他の材料の熱伝導率よりも低い)である。
【0096】
ドナー基板の半絶縁性SiCの層11は、レシーバ基板20に接合されている。これは、直接接合、すなわち、前記基板間に介在する、熱障壁を形成しやすい接合層を使用しない接合の問題である。
【0097】
図2Jを参照すると、ドナー基板は、脆弱化領域13に沿って分離される。
【0098】
この分離の効果は、半絶縁性SiCの層12をレシーバ基板20に転写することである。
【0099】
図2Kに示すように、転写された単結晶SiCの層12の自由面は、シリコン面12-Siである(炭素面はレシーバ基板20との界面の側にある)。この面は、例えば化学機械研磨(CMP)によって研磨され、層12の粗さを減少させ、注入に関連する欠陥を除去する。
【0100】
ベース基板と、レシーバ基板20に転写されなかった半絶縁性SiCの層11のセグメント11’とを含むドナー基板の残りの部分(
図2J参照)は、有利には、新たな使用を目的としてリサイクルすることができる。
【0101】
様々なリサイクルモードについては、既に上述した。
【0102】
図2Kの基板に戻ると、前記基板は、転写された半絶縁性SiCの層12上にガリウムベースのIII-N合金を成長させるのに適している。
【0103】
図2Lを参照すると、半絶縁性SiCの層12のシリコン面上にGaN(又は、上述のように、AlGaN若しくはInGaN)の層30を成長させている。層30の厚さは、典型的には、1μm~2μmである。
【0104】
次に、
図2Mに示すように、層30上に、層30とは異なるIII-N合金の層60をエピタキシによって成長させることによって、ヘテロ接合が形成される。
【0105】
したがって、当業者に知られている方法を用いて、このヘテロ接合からトランジスタ、特にHEMTの製造を継続することが可能であり、トランジスタのチャネルがヘテロ接合と同じ高さに形成され、トランジスタのソース、ドレイン、及びゲートがチャネル上に形成される。
【0106】
どの実施形態でも、このようにして得られた構造は、一方ではIII-N合金の層をエピタキシャル成長させるためのシードとして働き、他方では熱を良好に放散し、RF損失を制限し、より低コストで得られる半絶縁性SiCの層を含むという点で特に有利である。さらに、半絶縁性SiCの層を担持し、高い電気抵抗率及び高い熱伝導率の両方を有するレシーバ基板は、この構造がいかなる熱障壁も含まないように、前記層と直接接触している。
【0107】
(参考)
[1] Comparative study on stress in AlGaN/GaN HEMT structures grown on 6H-SiC, Si and on composite substrates of the 6H-SiC/poly-SiC and Si/poly-SiC, M. Guziewicz et al., Journal of Physics: Conference Series 100 (2008) 040235
【国際調査報告】