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特表2023-545814使用済みポリウレタンの水素化によるバリューチェーンリターン方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】使用済みポリウレタンの水素化によるバリューチェーンリターン方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/62 20060101AFI20231024BHJP
   C07C 211/50 20060101ALI20231024BHJP
   C07C 211/54 20060101ALI20231024BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20231024BHJP
   C07C 29/00 20060101ALI20231024BHJP
   C08J 11/10 20060101ALI20231024BHJP
   C08G 18/82 20060101ALI20231024BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
C07C209/62
C07C211/50
C07C211/54
C07C31/20 Z
C07C29/00
C08J11/10
C08G18/82
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023522799
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2021078127
(87)【国際公開番号】W WO2022078996
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】20201520.2
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21180038.8
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】シャウプ,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ノイマン,パウル
(72)【発明者】
【氏名】アル バタル,モナ
(72)【発明者】
【氏名】ハシミ,エー.シュテフェン ケー.
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘドラー,アンドレアス トマス
(72)【発明者】
【氏名】シェッテ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ツバール,フィクトリア
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
4H039
4J034
【Fターム(参考)】
4F401AA26
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401CA90
4F401CB01
4F401EA04
4F401EA10
4F401EA17
4F401EA34
4F401EA54
4F401EA59
4F401EA62
4F401EA67
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4F401FA20Z
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC52
4H006BA16
4H006BA23
4H006BA47
4H006BA48
4H006BB11
4H006BB14
4H006BB25
4H006BC10
4H006BC11
4H006BE20
4H006FE11
4H006FG29
4H039CA60
4H039CA71
4H039CE40
4J034CA04
4J034CC03
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC71
4J034LA14
4J034LA34
(57)【要約】
使用済みポリウレタンは、水素雰囲気中で、少なくとも1つの均一な遷移金属触媒錯体の存在下で、使用済みポリウレタンを水素化してポリアミン及びポリオールを得ることによって、バリューチェーンに戻され、遷移金属は、IUPACによる元素の周期表の第7族、第8族、第9族及び第10族の金属から選択される。水素化反応は、10・10-30C・m以下の双極子モーメントを有する非還元性溶媒中で少なくとも120℃の反応温度で実施される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みポリウレタンのバリューチェーンリターン方法であって、水素雰囲気中で、少なくとも1つの均一な遷移金属触媒錯体の存在下で、使用済みポリウレタンを水素化してポリアミン及びポリオールを得ることを含み、遷移金属は、IUPACによる元素の周期表の第7族、第8族、第9族及び第10族の金属から選択される方法において、水素化反応は、10・10-30C・m以下の双極子モーメントを有する非還元性溶媒中で少なくとも120℃の反応温度で実施されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記非還元性溶媒は、少なくとも1つの電子対供与体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非還元性溶媒は、エーテル、アルコール及びアミンから選択され、好ましくはエーテル、より好ましくはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン又はアニソールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非還元性溶媒は、芳香族溶媒、特に芳香族炭化水素から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記芳香族溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、及びアニソールから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水素化反応は、DMSOの本質的な非存在下で実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
反応温度は150から220℃、好ましくは180から210℃である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記使用済みポリウレタンは、芳香族イソシアネートベースのポリウレタンから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記均一な遷移金属触媒錯体は、マンガン、レニウム、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金から選択される遷移金属を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記遷移金属がマンガンであり、前記非還元性溶媒が芳香族溶媒、好ましくはトルエンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記均一な遷移金属触媒錯体は、遷移金属に配位可能な少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つのリン原子を有する少なくとも1つの多座配位子を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの多座配位子は、一般式(I)
【化1】
に適合し、ここで、
各R’は、独立してH又はC~C-アルキルであり、
及びRは、互いに独立して、C~C12-アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、
前記アルキルは、非置換であるか、又は1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基Rを有し、
前記シクロアルキル及びアリールは非置換であるか、又は1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基Rを有し、
及びRは、互いに独立して、H又はC~C12-アルキルであり、このC~C12-アルキルは非置換であるか、又はヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、ヒドロキシル、NE及びPRから選択される1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基を有し、
はH又はC~C12-アルキルであり、C~C12-アルキルは非置換であるか、又は1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基Rを有し、
はH又はC~C-アルキルであり、
又は
及びRは存在せず、R及びRは、Rが結合している窒素原子及びRが結合している炭素原子とともに、6員ヘテロ芳香環を形成し、
前記6員ヘテロ芳香環は、非置換であるか、又はC~C12-アルキル、シクロアルキル、アリール及びヘタリールから選択される、1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基を有し、
前記アルキルは非置換であるか、又は1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基Rを有し、そして
前記シクロアルキル、アリール及びヘタリールは、非置換であるか、又はアルキル置換基を有し、前記アルキル置換基は、非置換であるか、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、ヒドロキシル、NE及びPRから選択される置換基を有し、
各Rは、独立してシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、ヒドロキシル又はNEであり、
各Rは、独立して、C~C-アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、ヒドロキシル又はNEであり、及び
及びEは、互いに独立して、発生ごとに独立して、H、C~C12-アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択されるラジカルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの多座配位子は、一般式(II)
【化2】
に適合し、ここで、
Dは、H、C~C12-アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘタリールであり、
前記アルキルは、非置換であるか、又は1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基Rを有し、そして
前記シクロアルキル、アリール又はヘタリールは非置換であるか、又は、アルキル置換基を有し、前記アルキル置換基は、非置換であるか、又はアルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、ヒドロキシル、NE及びPRから、好ましくは、NE及びPRから選択される、置換基を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの多座配位子は、化合物A~Lから選択され、

ここで、Etはエチル、Prはイソプロピル、Buはtert-ブチル、Cyはシクロヘキシル、Phはフェニルである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記水素化反応は、30~500barの絶対圧、好ましくは50~300barの絶対圧、より好ましくは80~200barの絶対圧で実施される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記水素化反応は、塩基、好ましくはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、又はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のアルコラート、より好ましくは、アルカリ金属tert-ブトキシドの存在下で実施される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みポリウレタン(spent polyurethanes)のバリューチェーンリターン方法に関し、それらを水素化してポリアミンとポリオールを得ることを含む。この方法は、選択された溶媒中、均一な遷移金属触媒錯体の存在下で実施される。
【背景技術】
【0002】
過去30年間で、世界のプラスチック需要は大幅に増加している。例えば、過去10年間で、世界中で生産されるプラスチックの量はほぼ50%増加した。30年のうちに、ほぼ4倍にもなり、2018年には3億5900万トンという量に達している。これらの事実から、前記大量のプラスチックが生産されると、使用済みプラスチックの処分又はリサイクルが必要であることは明らかになっている。例えば、モノマーとして機能できる化合物のような貴重な材料は、例えばプラスチック生産で直接再利用することによって、バリューチェーンに戻されるように、リサイクルすることが好ましい。
【0003】
そのため、使用済みプラスチックから材料を回収するための処理技術の開発が求められている。使用済みプラスチックのリサイクル方法は、材料の無駄と二酸化炭素排出量の両方を削減する必要がある。さらに、それは、高い技術的特徴を備えた貴重な材料を提供する、経済的でエネルギー効率の良い方法であるべきである。これに対して、燃焼などによる廃棄は、環境に、同様に二酸化炭素排出量に悪影響を及ぼす。
【0004】
上記のプラスチックの中でも、ポリウレタン(PU)などは重要な代表格である。ポリウレタンは、例えば、フォーム、エラストマー、レンズ、包装、断熱材、履物、繊維、合成皮革、コーティング、塗料又はシーリングなどの用途に使用されている。
【0005】
工業的に重要な芳香族ベースのポリウレタン、例えばトルエンジイソシアネートベースのポリウレタンを、価値あるモノマー化合物にリサイクルすることは、依然として課題である。これまでのところ、ポリオール化合物のみが解糖又は加水分解によって回収及びリサイクルできる(参照:Plastics recycling,in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,2020,DOI:10.1002/14356007.a21_057.pub2)。しかし、該貴重な芳香族ビルディングブロックは、まだ十分な収率でリサイクルされていない。したがって、ポリオールと芳香族化合物を得られるように水素化によってトルエンジイソシアネートベースのポリウレタンを解重合することは、経済的関心が非常に高い。
【0006】
A.Kumarらによる、J.Am.Chem.Soc.2020,142,14267-14275は、ナイロン及びポリウレタンの水素化解重合を記載している。ジイソシアネートビルディングブロックは、ジアミンの形で得られ、これは新しいジイソシアネートを製造するために容易に使用されることができる。カルボニル基は、メタノールに水素化される。著者らは、三座のP,N,N-配位子を有する均一なルテニウムベースの触媒の存在下でのジイソシアネートベースのポリウレタンの水素化を記載している。これまでのところ、溶媒としてのDMSO中、150℃で良好な結果が得られている。実際、溶媒としてのDMSOが重要な役割を果たすと主張されている。一方、「トルエン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、水又はジメチルホルムアミドを使用した場合には、ナイロン6の変換は観察されなかった」(14268頁右欄)と記載されている。
【0007】
T.Schaubらによる、ChemSusChem,2020,DOI:10.1002/cssc.202002465は、テトラヒドロフランを溶媒として、三座のP,N,N-配位子を有する均一なルテニウム触媒を用いたナイロンとポリウレタンの解重合を記載している。これまでのところ、200℃、H(100bar)の下、溶媒としてテトラヒドロフラン中で、ルテニウム触媒を用いて良好な結果が得られた。このシステムの欠点は、活性触媒金属として高価で希少なルテニウムを使用することである。経済的な技術方法のためには、活性触媒材料としてより安価で豊富な金属を使用することが望ましい。
【0008】
T.Skrydstrupらによる、JACS Au,2021,DOI:10.1021/jacsau.1c00050は、150℃で、H圧(30bar)の下、溶媒としてテトラヒドロフラン中で、三座のP,N,N-配位子を有する2mol%の均一なマンガン触媒を用いたポリウレタンの解重合を記載している。しかし、この条件下では、ポリマー材料の変換率は25%という低い転化率しか達成されず、これは方法での潜在的に可能な使用には十分ではない。そこで、マンガン触媒を使用してポリウレタン材料のより高い転化率を実現するシステムが必要である。
【0009】
しかし、前記プラスチック再生方法は、低い触媒ターンオーバー活性、又は高価な貴金属触媒の使用などの大きな欠点を有する。さらに芳香族官能基を有するプラスチックに基材の適用範囲を拡張する場合、上記の条件は、コアの水素化などの望ましくない副反応を引き起こす可能性がある。また、極性不飽和溶媒であるDMSOの使用は、この水素化条件下ではDMSOの水素化によって副生成物としてジメチルスルフィドが生成される可能性があるため、欠点となる。さらに、生成物からのDMSO分離は、沸点が高いため困難であり、及び、DMSOは高い反応温度で分解する傾向がある(参照:Org.Process Res.Dev.2020,24,1614~1620)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、使用済みポリウレタンを水素化してポリアミンとポリオールを得るための、環境に優しく経済的に有利な触媒水素化反応を提供することである。
【0011】
この目的は、使用済みポリウレタンのバリューチェーンリターン方法によって達成された。この方法は、水素雰囲気中で、少なくとも1つの均一な遷移金属触媒錯体の存在下で、使用済みポリウレタンを水素化してポリアミン及びポリオールを得ることを含み、前記遷移金属は、IUPACによる元素の周期表の第7族、第8族、第9族及び第10族の金属から選択され、水素化反応は、10・10-30C・m以下の双極子モーメントを有する非還元性溶媒中で少なくとも120℃の反応温度で実施されることを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
「バリューチェーンリターン」とは、本発明の方法によって得られた低分子生成物が、ポリウレタンに至るバリューチェーンに再統合され得ること、あるいは、他のバリューチェーンでの原料として使用されることを意味するものとする。
【0013】
ポリウレタンの水素化に適した溶媒は、出発材料となるポリウレタンを溶解する能力、水素化条件下での化学的不活性、ポリウレタンの水素化を可能にする電子的特性など、一定の特性を有しなければならない。
【0014】
本発明によれば、水素化は、10・10-30C・m以下、例えば1・10-30から10・10-30C・mの範囲の双極子モーメントを有する非還元性溶媒(non-reducible solvent)中で実施される。
【0015】
「非還元性」という用語は、適用される反応条件、例えば方法が操作される温度と圧力で、溶媒が水素と反応することができないことを意味する。すなわち、非還元性溶媒は、C=O、C=S、C≡N又は非芳香族C=C結合を含んでいない。
【0016】
溶媒は、温度298Kで測定されて、10・10-30C・m以下、例えば1・10-30から10・10-30C・mの範囲の双極子モーメントを有する。例えば、溶媒は、1.5・10-30~8・10-30C・mの範囲、より好ましくは、2・10-30~6・10-30C・mの範囲の双極子モーメントを有する。溶媒の双極子モーメントは、その化学的極性の相対的な尺度である。高い双極子モーメント値は、極性溶媒と相関している。一般的に使用される溶媒の双極子モーメントの基準値が、例えば、Handbook of Chemistry and Physics,CRC Press,Boca Raton,Florida,91st Edition,2010から得られ得る。
【0017】
ポリウレタンの溶解度は極性の高い溶媒ほど高いと考えられる。しかしながら、極性の高い溶媒には、上述したような欠点がある。
【0018】
したがって、ゼロから中程度の極性を有する溶媒、すなわち10・10-30C・m以下の双極子モーメント値を有する溶媒の本選択は、極性の高い溶媒の欠点を回避しながら、少なくとも水素化に利用できる程度にポリウレタンを溶解する適切な極性の間のトレードオフである。
【0019】
好ましい実施形態では、非還元性溶媒は、少なくとも1つの電子対供与体を含む。「電子対供与体」は、溶媒に求核性を与え、それによって水素化される結合の活性化を容易にする。溶媒は、電子対供与体として機能する官能基を含む。適切な電子対供与体は、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基又はエーテル部分として結合された窒素又は酸素などの原子が挙げられる。一般に、非プロトン性溶媒が好ましい。
【0020】
一実施形態において、非還元性溶媒は、エーテル、アルコール及びアミンから選択される。
【0021】
適切なエーテル(括弧内の双極子モーメント値)は、テトラヒドロフラン(5.84・10-30C・m)、1,4-ジオキサン(1.50・10-30C・m)、アニソール(4.17・10-30C・m)、ジエチルエーテル(4.34・10-30C・m)、ジイソプロピルエーテル(4.34・10-30C・m)、ジブチルエーテル(3.90・10-30C・m)、メチルtert-ブチルエーテル(4.40・10-30C・m)及びジエチレングリコールジメチルエーテル(5.70・10-30C・m)から選択される。
【0022】
適切なアルコールは、メタノール(5.67・10-30C・m)、エタノール(5.77・10-30C・m)、n-プロパノール(5.54・10-30C・m)、イソプロパノール(5.54・10-30C・m)、tert-ブタノール(5.54・10-30C・m)、トリフルオロエタノール(6.77・10-30)、エチレングリコール(7.61・10-30C・m)及び1,3-プロパンジオール(8.41・10-30C・m)から選択される。
【0023】
適切なアミンは、1-ブチルアミン(3.34・10-30C・m)、トリエチルアミン(2.90・10-30C・m)、エチレンジアミン(6.64・10-30C・m)、モルホリン(4.94・10-30C・m)、ピペリジン(3.97・10-30C・m)及びアニリン(5.04・10-30C・m)から選択される。
【0024】
必要に応じて、前述の溶媒の2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0025】
好ましい実施形態においては、非還元性溶媒は、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン又はアニソールから選択される。テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0026】
一実施形態において、非還元性溶媒は、芳香族溶媒、特に芳香族炭化水素から選択される。
【0027】
芳香族溶媒は、少なくとも1つの芳香環を有する芳香族化合物として定義され、該芳香環は、ポリウレタン水素化の条件下で水素化されておらず、70℃超の温度で液体である。
【0028】
適切な芳香族溶媒(括弧内の双極子モーメント値)は、ベンゼン(0・10-30C・m)、トルエン(1.20・10-30C・m)、オルト-キシレン(2.10・10-30C・m)、メタ-キシレン(1.17・10-30C・m)、パラ-キシレン(0・10-30C・m)、エチルベンゼン(1.93・10-30C・m)、メシチレン(0.16・10-30C・m)、アニソール(4.17・10-30C・m)、ピリジン(7.34・10-30C・m)、2,3-ルチジン(7.34・10-30C・m)、2,4-ルチジン(7.67・10-30C・m)、2,5-ルチジン(7.17・10-30C・m)、2,6-ルチジン(5.50・10-30C・m)、3,4-ルチジン(6.24・10-30C・m)、3,5-ルチジン(8.61・10-30C・m)、コリジン(6.44・10-30C・m)、2-ピコリン(6.54・10-30C・m)、3-ピコリン(8.04・10-30C・m)、4-ピコリン(8.57・10-30C・m)、アニリン(5.04・10-30C・m)、N,N-ジメチルアニリン(5.37・10-30C・m)及びジフェニルエーテル(3.90・10-30C・m)から選択される。
【0029】
好ましい実施形態においては、芳香族溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、及びアニソールから選択される。
【0030】
必要に応じて、2つ以上の芳香族溶媒の混合物を使用することができる。さらに、1つ以上の芳香族溶媒と、上記に開示したような非還元性の非芳香族溶媒との混合物を使用することができる。そのような混合物は、例えば、トルエンとテトラヒドロフランの混合物であってよい。
【0031】
芳香族溶媒の量は、溶媒の総量に対して10~100質量%、好ましくは30~100質量%、より好ましくは50~100質量%の範囲である。
【0032】
一実施形態において、水素化反応は、DMSOの本質的な非存在下で実施される。より好ましくは、水素化反応は、上記で定義した溶媒以外の溶媒の非存在下で、すなわち、本方法の条件下で還元可能であり、及び/又は10・10-30C・mを超える双極子モーメントを有する溶媒の非存在下で実施される。
【0033】
水素化反応の正味のエネルギー収支は発熱であるが、その開始にはエネルギー(活性化エネルギー)の供給が必要である。温度が高いほど、上記溶媒によるポリウレタンの可溶化が促進され、ポリウレタンが水素化されやすくなる。必要な活性化エネルギーを供給し、十分な量のポリウレタンを可溶化するために、水素化反応は、少なくとも120℃の高温の反応温度で実施される。一実施形態では、反応温度は150から220℃、好ましくは180から210℃である。
【0034】
水素化反応は、水素雰囲気中で実施される。これは、ポリウレタンの水素化反応中に分子状水素が消費されるためである。水素圧力は、反応の結果に影響を及ぼす。圧力が低いと、通常、反応速度が遅くなり、圧力が高いと反応速度が速くなる。したがって、水素雰囲気は、高圧レベルで適切に存在する。したがって、水素化反応は、加圧された反応容器、例えばオートクレーブで起こる。一実施形態では、水素化反応は、30~500barの絶対圧、好ましくは50~300barの絶対圧、より好ましくは80~200barの絶対圧で実施される。
【0035】
水素化反応は、遷移金属に配位可能な少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つのリン原子を有する少なくとも1つの多座配位子を含む、少なくとも1つの均質な遷移金属触媒錯体(以下、「水素化触媒」ともいう)の存在下に行われる。
【0036】
一般に、水素化反応に存在する水素化触媒の量は、広い範囲で変化させることができる。適切には、水素化触媒は、0.1~5000ppm(触媒金属として計算した質量部)、好ましくは1~2000ppm、より好ましくは50~1000ppmの量で水素化反応に存在する。
【0037】
水素化触媒は、IUPACによる元素周期表の第7族、第8族、第9族及び第10族の金属、好ましくは第7族又は第8族の金属から選択される遷移金属を含む。
【0038】
一実施形態においては、均一な遷移金属触媒錯体は、マンガン、鉄、コバルト、ロジウム、オスミウム、レニウム、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金から選択される遷移金属を含む。好ましい遷移金属は、ルテニウムである。さらに好ましい遷移金属は、広く入手可能なことにより、マンガンである。
【0039】
本発明の一実施形態は方法に関し、そこでは、遷移金属はマンガンであり、非還元性溶媒がエーテル、アルコール、及び芳香族溶媒から選択され、好ましくは芳香族溶媒、特にトルエンである。
【0040】
一般に、均一な遷移金属触媒錯体は、反応溶液中で遷移金属を可溶化し、遷移金属を水素化のために活性な形態に維持するために、少なくとも1つの配位子を含む。好ましい配位子は、遷移金属に配位可能な少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つのリン原子を有する多座配位子である。
【0041】
水素化触媒は、1つ以上の追加の配位子、例えば、水素化物、アルコキシド、アリールオキシド、カルボキシレート及びアシルからなる群から選択されるアニオン、又は一酸化炭素、トリアリールホスフィン、アミン、N-ヘテロ環カルベン及びイソニトリルからなる群から選択される中性配位子をさらに含むことができる。好ましくは、水素化触媒は、一酸化炭素配位子、ハロゲン化物又は水素化物をさらに含む。
【0042】
一実施形態において、少なくとも1つの多座配位子は、一般式(I)
【化1】
に適合し、ここで、
各R’は、独立してH又はC~C-アルキルであり、
及びRは、互いに独立して、C~C12-アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、このアルキルは、非置換であるか、又は1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基Rを有し、そして
シクロアルキル及びアリールは非置換であるか、又は1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基Rを有し、
及びRは、互いに独立して、H又はC~C12-アルキルであり、これは非置換であるか、又は1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基Rを有し、これは非置換であるか、又はヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、ヒドロキシル、NE及びPRから選択される1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基を有し、
はH又はC~C12-アルキルであり、これは非置換であるか、又は1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基Rを有し、
はH又はC~C-アルキルであり、
又は
及びRは存在せず、R及びRは、Rが結合している窒素原子及びRが結合している炭素原子とともに、6員ヘテロ芳香環を形成し、
該6員ヘテロ芳香環は、非置換であるか、又はC~C12-アルキル、シクロアルキル、アリール及びヘタリールから選択される、1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基を有し、
このアルキルは非置換であるか、又は1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基Rを有し、そして
該シクロアルキル、アリール及びヘタリールは、非置換であるか、又は、アルキル置換基を有し、該アルキル置換基は、非置換であるか、又は、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、ヒドロキシル、NE及びPRから選択される置換基を有し、
各Rは、独立してシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、ヒドロキシル又はNEであり、
各Rは、独立して、C~C-アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、ヒドロキシル又はNEであり、及び
及びEは、互いに独立して、発生ごとに独立して、H、C~C12-アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択されるラジカルである。
【0043】
「シクロアルキル」(「シクロアルキルオキシ」などの組み合わせでも)という用語は、3~8個の炭素原子、好ましくは4~7個の炭素原子、より好ましくは5~6個の炭素原子を有する飽和環式脂肪族炭化水素ラジカルを示す。シクロペンチル又はシクロヘキシルが好ましい。
【0044】
「ヘテロシクロアルキル」(「ヘテロシクロアルコキシ」などの組み合わせでも)という用語は、飽和3~8員環状炭化水素ラジカルを示し、ここで、1つ以上の炭素原子はO、S、N及びPから選択されるヘテロ原子、又はそれらの組み合わせによって置換される。ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェンなど、またそれらのメチル-、エチル-、プロピル-、イソプロピル-及びtert-ブチル置換誘導体が好ましい。
【0045】
「アリール」(アリールオキシなどの組み合わせでも)という用語は、単環又は縮環(annelated)の芳香族炭素環を示し、好ましくはフェニル又はナフチルラジカル、より好ましくはフェニルラジカルを示す。
【0046】
「ヘタリール」(ヘタリールオキシなどの組み合わせでも)という用語は、3~8員芳香族炭素環を示し、ここで、1つ以上の炭素原子はO、S、N及びPから選択されるヘテロ原子、又はそれらの組み合わせによって置換されており、それらはまた1つ又は2つの芳香族環で縮環されて得る。フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリミジニル、ピラジニルなど、またそれらのメチル-、エチル-、プロピル-、イソプロピル-及びtert-ブチル-置換誘導体が好ましい。最も好ましくは、ヘタリールはピリジルである。
【0047】
好ましくは、R’はHである。
【0048】
好ましくは、R及びRは同一であり、イソプロピル、シクロヘキシル、tert-ブチル、及びフェニルからなる群から選択される。
【0049】
好ましくは、Rは、H又はC~C-アルキルである。
【0050】
好ましくは、Rは、Hであり;又は-(CH-PR、例えば-(CH-PPh又は-(CH-PPr;又は1ヘタリール置換基、例えば-(CH)-(2-ピリジル)又は-(CH)-(1-メチル-イミダゾール-2-イル)を有するC-アルキルである。
【0051】
好ましくは、Rは、H又はC~C-アルキルである。
【0052】
好ましくは、Rは、Hである。
【0053】
さらに好ましい実施形態では、R及びRは存在せず、R及びRは、Rが結合している窒素原子及びRが結合している炭素原子とともに、6員ヘテロ芳香環を形成している。好ましくは、6員ヘテロ芳香環は、ヘテロ原子が1位にあって、-CR’R’-PRが2位にあると仮定して、好ましくは6位に、1つの置換基を有する。
【0054】
一実施形態において、少なくとも1つの多座配位子は、一般式(II)
【化2】
に適合し、ここで、
Dは、H、C~C12-アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘタリールであり、
このアルキルは、非置換であるか、又は1、2、3、4もしくは5個の同一又は異なる置換基Rを有し、そして
該シクロアルキル、アリール又はヘタリールは、非置換であるか、又は、アルキル置換基を有し、該アルキル置換基は、非置換であるか、又は、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、ヒドロキシル、NE及びPRから選択される置換基、好ましくはNE及びPRを有する。
【0055】
好ましい実施形態において、Dは、NEで置換されたC~C12-アルキル;非置換のヘタリール;又はNE又はPRで置換されたC~C12-アルキルを担うヘタリールである。
【0056】
より好ましい実施形態において、Dは、NEによって置換されたメチル基;非置換の2-ピリジル;又は-CH-NE又は-CH-PRによって6位で置換されている2-ピリジルである。
【0057】
一実施形態において、少なくとも1つの多座配位子は、化合物A~Lから選択され、
ここで、Etはエチル、Prはイソプロピル、Buはtert-ブチル、Cyはシクロヘキシル、Phはフェニルである:
【化3】
【0058】
均質な、例えばルテニウムベースの、水素化触媒錯体は、それ自体知られている。このような触媒錯体は、水素化に有効な環境において、触媒活性ルテニウムを許容する。この目的のために、様々な配位子系が研究されてきた;例えば、BINAP-(Noyori)、P,N,N-(Milstein)又はP,N,P-配位子(Takasago)は、水素化反応に成功裏に用いられた。
【0059】
同様に、マンガンベースの水素化触媒錯体はそれ自体が知られている。
【0060】
好ましい実施形態では、遷移金属はルテニウムであり、多座配位子は化合物A~G又はJのうちの1つに適合する。
【0061】
別の実施形態では、遷移金属はマンガンであり、多座配位子は、化合物A、E、又はH~Lのうちの1つに適合する。
【0062】
水素化触媒は、予め形成された金属錯体の形で使用することができ、該金属錯体は金属化合物と1つ以上の配位子を含む。
【0063】
好ましい実施形態において、水素化触媒は、化合物Ru-1~Ru-10から選択される、予め形成されたルテニウム触媒であり、
ここで、Etはエチル、Prはイソプロピル、Buはtert-ブチル、Cyはシクロヘキシル、Phはフェニルである:
【化4】
【0064】
又は、水素化触媒は、化合物Mn-1~Mn-8から選択される予め形成されたマンガン触媒であり、
ここで、Prはイソプロピル、Cyはシクロヘキシル、Phはフェニルである:
【化5】
【0065】
本発明で使用される触媒を調製するために、特別な技術又は特殊な技術は必要ない。しかし、活性の高い触媒を得るためには、不活性雰囲気下、例えば、窒素、アルゴンなどの雰囲気下で操作を行うことが好ましい。
【0066】
あるいは、水素化触媒は、金属化合物(以下、「プレ触媒」ともいう)と、少なくとも1つの適切な配位子とを組み合わせて、反応媒体中で触媒的に活性な金属錯体を形成することにより、反応混合物中でその場に形成される(「水素化触媒」)。また、水素化触媒は、金属化合物と、少なくとも1つの補助配位子とを組み合わせて、反応媒体中で触媒的に活性な金属錯体を形成することにより、補助配位子の存在下でその場に形成されることも可能である。
【0067】
適切なプレ触媒は、遷移金属の中性金属錯体、酸化物及び塩から選択される。好ましいプレ触媒は、マンガン、レニウム、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金の金属錯体、酸化物及び塩から選択される。
【0068】
本願明細書において、「COD」は1,5-シクロオクタジエンを表し、「Cp」はシクロペンタジエニルを表し、「Cp」はペンタメチルシクロペンタジエニルを表し、「binap」は2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチルを表す。
【0069】
適切なレニウムプレ触媒は、過レニウム酸アンモニウム、クロロトリカルボニル(2,2’-ビピリジン)レニウム(I)、クロロトリカルボニル(4,4’-ジ-t-ブチル-2,2’-ビピリジン)レニウム(I)、シクロペンタジエニルレニウムトリカルボニル、ヨードジオキソビス(トリフェニルホスフィン)レニウム(V)、メチルトリオキソレニウム(VII)、ペンタメチルシクロペンタジエニルレニウムトリカルボニル、レニウムカルボニル、塩化レニウム(V)、臭化レニウムペンタカルボニル、及びトリフルオロメチルスルホナトトリカルボニル(2,2’-ビピリジン)レニウム(I)から選択される。
【0070】
適切なルテニウムプレ触媒は、[Ru(メチルアリル)COD]、[Ru(pシメン)Cl、[Ru(ベンゼン)Cl、[Ru(CO)Cl、[Ru(CO)Cl、[Ru(COD)(アリル)]、[RuCl・HO]、[Ru(アセチルアセトナート)]、[Ru(DMSO)Cl]、[Ru(PPh(CO)(H)Cl]、[Ru(PPh(CO)Cl]、[Ru(PPh(CO)(H)]、[Ru(PPhCl]、[Ru(PPhCl]、[Ru(Cp)(PPhCl]、[Ru(Cp)(CO)Cl]、[Ru(Cp)(CO)H]、[Ru(Cp)(CO)、[Ru(Cp)(CO)Cl]、[Ru(Cp)(CO)H]、[Ru(Cp)(CO)、[Ru(インデニル)(CO)Cl]、[Ru(インデニル)(CO)H]、[Ru(インデニル)(CO)、ルテノセン、[Ru(binap)(Cl)]、[Ru(2,2’ビピリジン)(Cl)・HO]、[Ru(COD)(Cl)H]、[Ru(Cp)(COD)Cl]、[Ru(CO)12]、[Ru(テトラフェニルヒドロキシシクロペンタジエニル)(CO)H]、[Ru(PMe(H)]、[Ru(PEt(H)]、[Ru(Pn-Pr(H)]、[Ru(Pn-Bu(H)]、及び[Ru(Pn-オクチル(H)]、好ましくは[Ru(メチルアリル)COD]、[Ru(COD)Cl、[Ru(Pn-Bu(H)]、[Ru(Pn-オクチル(H)]、[Ru(PPh(CO)(H)Cl]及び[Ru(PPh(CO)(H)]、より好ましくは[Ru(PPh(CO)(H)Cl]から選択される。
【0071】
適切なイリジウムプレ触媒は、[IrCl・HO]、KIrCl、KIrCl、[Ir(COD)Cl]、[Ir(シクロオクテン)Cl]、[Ir(エテン)Cl]、[Ir(Cp)Cl、[Ir(Cp)Cl、[Ir(Cp)(CO)]、[Ir(Cp)(CO)]、[Ir(PPh(CO)Cl]、及び[Ir(PPhCl]、好ましくは[Ir(COD)Cl]、[Ir(シクロオクテン)Cl]、及び[Ir(Cp)Clから選択される。
【0072】
適切なニッケルプレ触媒は、[Ni(COD)]、Ni(CO)、NiCl、NiBr、NiI、Ni(OAc)[Ni(AcAc)]、[Ni(Cl)(TMEDA)]、[Ni(Cl)(DME)]、[Ni(Br)(DME)]、[Ni(Cl)(PPh]、[Ni(CO)(PPh)]、[Ni(Cl)(メタリル)]、[Ni(CO)]、ニッケル(II)ジメチルグリオキシム、ニッケル(II)2エチルヘキサン酸、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ビス(N,N’-ジ-t-ブチルアセトアミジナート)ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、Ni(NO、ステアリン酸ニッケル(II)、Ni(SO)、ニッケル(II)テトラフルオロボレート六水和物、ニッケル(II)トリフルオロアセチルアセトナート二水和物、及びニッケル(II)トリフルオロメタンスルホネートから選択される。
【0073】
適切なパラジウムプレ触媒は、アリル(シクロペンタジエニル)パラジウム(II)、ビス[(トリメチルシリル)メチル](1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、アリルパラジウムクロリド二量体、テトラクロロパラジウム酸アンモニウム(II)、ビス[1,2ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、trans-ビス(ジシクロヘキシルアミン)ビス(アセテート)-パラジウム(II)、ビス(2-メチルアリル)パラジウムクロリド二量体、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)-パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリ-o-トリルホスフィン)-パラジウム(0)、クロロメチル(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジアセテート[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)、ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジアセテート(1,10-フェナントロリン)パラジウム(II)、ジ-μ-ブロモビス(トリ-t-ブチルホスフィノ)二パラジウム(I)、trans-ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジブロモ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ジ-t-ブチル-フェニルホスフィノ)パラジウム(II)、ジ-μ-クロロビス{2-[(ジメチルアミノ)メチル]フェニル}ジ-パラジウム、trans-ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、trans-ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)-パラジウム(II)、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム(II)、cis-ジクロロ(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)パラジウム(II)、cis-ジメチル(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)パラジウム(II)、(1-メチルアリル)パラジウムクロリド二量体、酢酸パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート、安息香酸パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、パラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ヨウ化パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、トリメチル酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、及びトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)から選択される。
【0074】
適切な白金プレ触媒は、テトラクロロ白金酸アンモニウム(II)、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)白金(0)、ビス(エチレンジアミン)白金(II)クロリド、ジブロモ(1,5-シクロオクタジエン)白金(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)白金(II)、cis-ジクロロビス(ジエチルスルフィド)白金(II)、cis-ジクロロビス(ピリジン)白金(II)、cis-ジクロロビス(トリエチルホスフィン)白金(II)、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)白金(II)、cis-ジクロロジアンミン白金(II)、ジ-μ-クロロ-ジクロロビス(エチレン)二白金(II)、ジクロロ(ジシクロペンタジエニル)白金(II)、ジ-μ-ヨードビス(エチレンジアミン)二白金(II)硝酸塩、ジヨード(1,5-シクロオクタジエン)白金(II)、ジメチル(1,5-シクロオクタジエン)白金(II)、白金(II)アセチルアセトナート、白金(II)アセチルアセトナート、臭化白金(II)、塩化白金(II)、ヨウ化白金(II)、ビス(オキサラト)白金酸カリウム(II)二水和物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二白金(0)から選択される。
【0075】
適切なマンガンプレ触媒は、MnCl、MnCl・4HO、MnBr、MnBr・4HO、MnBr・2THF、マンガノセン、[Mn(シクロペンタジエニル)(CO)]、[Mn(メチルシクロペンタジエニル)(CO)]、[Mn(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(CO)]MnOAc、MnOAc・4HO、MnOAc・2HO、Mn(II)アセチルアセトナート、Mn(III)アセチルアセトナート、Mn(CO)10、Mn(NO、[Mn(Br)(CO)]、Mn(ClO・6HOから選択される。
【0076】
一般式(I)に適合する多座配位子を含む上記の水素化触媒は、追加の塩基を必要とせずに、水素化反応に使用されることができる。しかし、通常、水素化触媒に触媒量の塩基を組み合わせることで、より高い活性が得られる。
【0077】
一実施形態では、水素化反応は、塩基、好ましくはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、又はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のアルコラートの存在下で実施される。好ましくは、塩基はカリウムtert-ブトキシドのようなアルカリ金属アルコラートである。
【0078】
一般に、塩基は、使用される水素化触媒の量の範囲内で水素化反応に存在する。適切には、塩基は、水素化触媒の量に基づいて、1~50当量、好ましくは1~10当量、より好ましくは1~4当量の量で存在する。
【0079】
使用済みポリウレタンを水素化するための本発明の方法は、水素化触媒が液相に存在する液-ガス反応の技術分野で当業者に知られている慣用の装置及び/又は反応器を用いて実施されることができる。本発明方法では、原則として、既述の温度及び既述の圧力での気液反応に基本的に適した任意の反応器を使用することが可能である。気液及び液液反応システムに適した標準的な反応器については、例えば:Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,2005,Wiley-VCH Verlag GmbH & Co.KGaA、3.3章の、Reactor Types and their Industrial Applications and Reactors for gas-liquid reactionを参照されたい。適切な例としては、例えば、撹拌槽反応器、管状反応器又は気泡塔反応器などが挙げられる。ポリウレタン、水素化触媒、溶媒及び塩基の供給は、互いに同時又は別々に行われることができる。反応は、バッチモードで不連続に行われてよく、又はリサイクルあり又はリサイクルなしで連続的、半連続的に行われてよい。反応空間における平均滞留時間は、広範囲で、好ましくは15分~100時間の範囲、より好ましくは1~50時間の範囲で変化させることができる。
【0080】
特に、本発明は、出発材料として使用済みポリウレタンを含む。この文脈では、「使用済みポリウレタン」という用語は、製造された目的で既に使用された時点で、ポリウレタンから製造されたアイテムを示す。
【0081】
一般に、ポリウレタンは、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の反応によって製造される。触媒、鎖延長剤又は鎖停止試薬などのさらなる材料をポリマーの製造方法で添加することができる。
【0082】
ポリウレタンの特性は、使用されるポリイソシアネートとポリオール成分の種類によって影響を受ける。例えば、出発材料はポリマーの架橋に影響し、すなわち、ポリマーは3次元のネットワークで構成されることを意味する。ポリオールによって寄与される長くて柔軟なセグメントは、柔軟で弾力性のあるポリマーを生じる。架橋量が多いと硬いポリマーになり、長鎖で架橋量が少ないと非常に伸縮性のあるポリマーが得られる。硬いポリマーは多くの架橋と長鎖を持つ短鎖から得られ、中間架橋はフォームの製造に有用なポリマーとなる。
【0083】
工業的に、したがって大量に、特にトルエンジイソシアネート(TDI)及びメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)又はそのポリマー形態がポリイソシアネート成分として使用される。少量では、1,6-ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフチルジイソシアネートがポリイソシアネート成分として使用される。膨大な量で使用される一般的なポリオールは、例えば、ポリエステルポリオール、又は、エチレングリコール又はプロピレングリコールなどの低分子量ポリオール、又は、グリセロール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコールに基づく高分子量ポリエーテルポリオールである。
【0084】
本方法は、両方の出発材料成分の再利用を可能にする。成分は直接回収されるか(ポリオール)、又はポリイソシアネートに容易に変換できるポリアミンなどの貴重な合成ビルディングブロックとして得られる。
【0085】
一実施形態では、使用済みポリウレタンは、芳香族イソシアネートベースのポリウレタン、例えば、トルエンジイソシアネートベースのポリウレタン、メチレンジフェニルジイソシアネートベースのポリウレタン、及び1,5-ナフチルジイソシアネートベースのポリウレタンから、好ましくはメチレンジフェニルジイソシアネートベースのポリウレタン、及び1,5-ナフチルジイソシアネートベースのポリウレタンから選択される。
【0086】
芳香族イソシアネートは、イソシアネート官能基が芳香族コアに直接結合している化合物である。これに対し、p-キシリレンジイソシアネートなどの化合物は、イソシアネート官能基がメチレンスペーサーに結合しており、したがって芳香族コアに直接結合していないため、芳香族イソシアネートとはみなされない。
【0087】
トルエンジイソシアネート(TDI)ベースのポリウレタンは、テクニカルポリマーであり、大規模に生産されている(参照:ポリウレタン、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,2012,DOI:10.1002/14356007.a21_665.pub2)。一般に、それらは、2,4-トルエンジイソシアネート及び2,6-トルエンジイソシアネートと、ポリオールとの反応によって製造され、以下の一般式に従う:
【化6】
【0088】
この方法では、最初のポリイソシアネートにおいてイソシアネート基が結合していた炭素原子に結合したアミノ基を含むポリアミン、例えばメチレンジフェニルジアミン及びトルエンジアミン(1,2-トルエンジアミンもしくは1,4-トルエンジアミン)又は1,5-ナフチルジアミンを得る。上記のような一般的に使用されるポリオールは、再分離することができる。したがって、本方法では、例えば、ポリエステルポリオール、エチレングリコール又はプロピレングリコールのような低分子量ポリオール、又はグリセロール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコールに基づく高分子量ポリエーテルポリオールがさらに得られる。
【0089】
本発明で使用される使用済みポリウレタンは、製造された目的のために使用された後の時点で、ポリウレタンから製造されたアイテムから得られる。水素化に供する前に、アイテムは機械的な粉砕に供されてよい。すなわち、例えば、密度の割合により、すなわち空気、液体、又は磁気による細断、ふるい分け、又は分離によって、アイテムをさらに選別し、適切なサイズにする。任意に、これらの断片は、その後、不純物、例えば紙のラベルを除去するためのプロセスを受けることができる。
【0090】
一般に、ポリウレタンを膨潤又は部分的に溶解させるのに十分な量の溶媒を使用する。水素化反応が進行すると、ポリウレタンは徐々に反応液に溶解する。適切には、溶媒と使用済みポリウレタンの比率は、ポリウレタン1kgあたり0.1~100L溶媒、好ましくは1kgあたり1~20L溶媒の範囲にある。
【0091】
水素化の後に得られた反応混合物の後処理、特にメチレンジフェニルジアミン、トルエンジアミン(1,2-トルエンジアミンもしくは1,4-トルエンジアミン)又は1,5-ナフチルジアミン及びポリオールの単離は、場合に応じて、例えば濾過、水抽出による後処理又は減圧下での蒸留によって、実現することができる。好ましくは、後処理はいくつかの工程を含む。例えば、アミンのような揮発性化合物は、蒸留によって分離されることができる。ポリオール化合物は、反応溶液を適当な抽出溶媒で抽出することによって回収するのが好ましい。これにより、水素化触媒は蒸留残渣に残り、リサイクルが可能になる。触媒は、生成物から分離されると、再利用のために反応器に戻すことができる。あるいは、触媒溶液を溶媒で希釈して再利用することができる。上述の分離方法は、本明細書に記載された本発明の方法の様々な実施形態のいずれかと組み合わせることができることを理解されたい。
【実施例
【0092】
本発明は、以下の実施例に基づいてさらに説明し、例示することができる。しかしながら、これらの実施例は単に説明のために含まれるものであり、本発明の範囲をいかなる意味でも限定することを意図していないことが理解されよう。
【0093】
すべての化学物質と溶媒は、Sigma-Aldrich又はABCRから購入され、特に指定がない限り、さらに精製せずに使用した。H-、13C-、31P NMRスペクトルはBruker Avance 200又は400MHz分光計で記録し、溶媒の残留プロトン(H)又は炭素(13C)共鳴ピークを参照した。化学シフト(δ)はppmで報告されている。31P NMRスペクトルは、外部標準(DPOのアンプル)を参照した。
【0094】
水素化触媒P及びQを、文献のプロトコルに従って調製した:E.Balaraman,J.Am.Chem.Soc.2010,132,16756~16758頁及びD.Srimani,Adv.Synth.Catal.2013,355,2525~2530頁。
【0095】
参考例1:水素化触媒Hの合成
【0096】
【化7】
【0097】
第一段階:50mLのシュレンク管に、6-メチル-2,2’-ビピリジン(511mg,3.00mmol)を15mLのEtOに溶解し、0℃に冷却し、LDA(3.50mL,THF/ヘキサン中1M)を滴下添加した。0℃で1時間撹拌した後、iPrOH/液体Nによって-80℃まで冷却し、5mLのEtO中のClPCy(815g,3.50mmol)をゆっくりと添加した。冷却浴を1時間後に取り外し、混合物を徐々に室温に戻し、一晩撹拌した。反応混合物を、10mLの脱気水を黄色いスラリーに加えることによってクエンチした。有機相を分離し、水相をエーテル(2×5mL)で抽出した。合わせた有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を除去して、粘着性のある橙色の油として粗配位子(31P NMRに基づく純度は52%)を得た。これをさらに精製することなく、次の段階で直接使用した。
【0098】
第二段階:第一段階で得られた配位子を20mLのTHFに溶解させた。RuHCl(CO)(PPh(952mg,1.00mmol)を加え、混合物を70℃で5時間撹拌し、その後室温に冷却した。溶媒を真空下で約10mLに減らし、20mLのEtOを残りの赤橙色の分散体に添加した。溶液をカニューレで除去し、固体をEtO(2×10mL)で洗浄し、真空下で乾燥させ、465.2mgの橙色の生成物を得た(Ruに基づく収率87%)。
31P {H}NMR(122MHz,CDCl)δ83.68。
H NMR(301MHz,CDCl)δ9.22-9.13(m,1H),8.07-7.97(m,1H),7.93(d,J=8.0Hz,1H),7.86(td,J=8.0,1.6Hz,1H),7.82(td,J=8.0,0.9Hz,1H),7.49(d,J=7.7Hz,1H),7.45-7.39(m,1H),3.82-3.56(m,2H),2.46-2.27(m,2H),2.08-0.99(m,20H),-14.83(d,J=23.6Hz,1H)。
13C{H}NMR(126MHz,CDCl)δ207.71(d,J=14.9Hz),161.70(d,J=5.1Hz),156.38,154.78(d,J=2.7Hz),153.51(d,J=1.7Hz)、137.30、136.51、126.42(d、J=1.9Hz)、123.13(d、J=9.6Hz)、122.76(d、J=1.6Hz)、119.73,40.59(d,J=22.2Hz)、38.59(d,J=23.4Hz),35.76(d,J=28.9Hz),31.01(d,J=2.9Hz),29.60(d,J=4.2Hz),28.61(d,J=4.5Hz),28.20(d,J=13.6Hz)、27.73、27.56(d、J9.2Hz)、26.82(d、J=4.4Hz)、26.74(d、J=3.5Hz)、26.71(d,J=2.0Hz)、26.35(d、J=1.5Hz)。
HRMS(ESI):m/z calcd.for C2432OPRu[M-Cl]:497.1296,found:497.1291。
【0099】
参考材料1の調製:ポリウレタン試料の調製
2,4-トルエンジイソシアネート(3.48g,20.0mmol)を40mのLDMFに溶解させた。エチレングリコール(1.24g,20.0mmol)を撹拌しながら滴下添加した。混合物を室温で2時間撹拌した後、60℃で2時間加熱した。溶液を100mLの水に注ぎ、固体沈殿を得た。溶媒を濾過し、固体をエーテルで洗浄し、60℃のオーブンで一晩乾燥させて、生成物を白色固体(4.11g、MW=4476g/mol)として得た。
【0100】
参考材料2の調製:ポリウレタン試料の調製
2,4-トルエンジイソシアネート(3.48g,20mmol)を20mLのDMFに溶解し、20mLのDMF中の1,6ヘキサンジオール(2.36g,20mmol)をゆっくりと添加した。添加後、システムを室温で2時間撹拌し、60℃に2時間加熱した。得られた溶液を100mLの水に注ぎ、沈殿物を得た。固体残渣を水、EtOで洗浄し、60℃のオーブンで乾燥させて、白色固体(5.21g、MW=2800g/mol)を得た。
【0101】
参考材料3の調製:ポリウレタン試料の調製
メチレンジフェニルイソシアネート(5.00g,20mmol)を20mLのDMFに溶解し、20mLのDMF中の1,6ヘキサンジオール(2.36g,20mmol)をゆっくりと添加した。添加後、システムを室温で2時間撹拌し、60℃に2時間加熱した。得られた溶液を100mLの水に注ぎ、沈殿物を得た。固体残渣を水、EtOで洗浄し、60℃のオーブンで乾燥させて、白色固体(6.80g、MW=3290g/mol)を得た。
【0102】
実施例1:ポリウレタン参考材料2の水素化:
【化8】
【0103】
アルゴン下で、ルテニウム触媒(以下の表1を参照;0.01mmol)、KOBu(0.02mmol、場合により)、ポリウレタン参照材料2(0.12g)及び3mLのTHFを、磁気PTFEスターラーバーを備えた10mLのマイクロ波クリンプキャップバイアルに添加した。バイアルをクリンプキャップセプタムでニードルプラグを通して閉じ、HEL CAT-7オートクレーブ内に入れた。オートクレーブにグローブボックスの外で50barのHを充填し、120℃に加熱して24時間撹拌した。その後、オートクレーブを室温まで冷却して慎重に圧力を解放し、各ガラスバイアルに内部標準としてメシトレンを加え、生成物をGC分析によって決定した。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例2:ポリウレタン参考材料2の水素化:
【化9】
【0106】
アルゴン雰囲気下、テフロン製インサートを備えた60mL Premexオートクレーブに、ポリウレタン参照材料2(0.29g、ポリウレタンの繰り返し単位として計算した1mmol)を投入した。上に示したルテニウム錯体及びKOBuを5mLのTHFとともに添加した。オートクレーブを閉じ、グローブボックス外側でH(50bar)を充填し、予熱したアルミニウムブロック(120℃)に入れた。20時間後、オートクレーブを加熱ブロックから取り出し、水中で室温まで冷却することにより反応を停止させた。慎重に内圧を解放した。その後、各ガラスバイアルに内部標準としてメシチレンを添加し、GC分析により生成物を決定した。ジアミノトルエンの収率によると、ターンオーバー数は72である。
【0107】
実施例3:ポリウレタン参考材料3の水素化:
【化10】
【0108】
アルゴン雰囲気下、テフロン製インサートを備えた60mL Premexオートクレーブに、ポリウレタン参照材料3(0.37g、ポリウレタンの繰り返し単位として計算した1mmol)を投入した。上に示したルテニウム錯体及びKOBuを5mLのTHFとともに添加した。オートクレーブを閉じ、グローブボックス外側でH(50bar)を充填し、予熱したアルミニウムブロック(120℃)に入れた。20時間後、オートクレーブを加熱ブロックから取り出し、水中で室温まで冷却することにより反応を停止させた。慎重に内圧を解放した。その後、各ガラスバイアルに内部標準としてメシチレンを添加し、GC分析により生成物を決定した。ジアミンの収率によると、ターンオーバー数は76である。
【0109】
実施例4:PUフォームの水素化:
【化11】
【0110】
アルゴン雰囲気下、テフロン製インサートを備えた60mL Premexオートクレーブに、トルエンジイソシアネートベースのポリウレタンとポリオール(Lupranol 2074;グリセロールとプロピレンオキシドに基づく三官能性ポリエーテルオール;MW3500g/mol)を投入した。ルテニウム錯体及びKOBuを15mLのTHFとともに添加した。オートクレーブを閉じ、グローブボックス外側で100バールのHを充填し、予熱したアルミニウムブロック(200℃)に入れた。20時間後、オートクレーブを加熱ブロックから取り出し、水中で室温まで冷却することにより反応を停止させた。慎重に内圧を解放した。混合物を50mL丸底フラッシュに移し、溶媒を真空中で除去した。残渣を5mLのCDClに溶解し、内部標準としてメシチレンを加え、ジアミン生成物をH NMR(1.87mmol)を用いて定量し、カラムクロマトグラフィー(200mg,1.64mmol)により、2、4トルエン-ジイソシアネートと2、6-トルエンジイソシアネートの混合物としてさらに分離した。ジアミノトルエンの収率によると、ターンオーバー数は164である。反応混合物のGPC-分析によれば、3500g/molの平均分子量を有するポリオールが得られ、ポリオールを分解することなく得られることが示された。
【0111】
実施例5:大規模なPUフォームの水素化:
【化12】
【0112】
アルゴン雰囲気下、テフロン製インサートを備えた60mL Premexオートクレーブに、トルエンジイソシアネートベースのポリウレタンとポリオール(Lupranol 2074;グリセロールとプロピレンオキシドに基づく三官能性ポリエーテルオール;MW3500g/mol)を投入した。ルテニウム錯体及びKOBuを50mLのTHFとともに添加した。オートクレーブを閉じ、グローブボックス外側で100バールのHを充填し、予熱したアルミニウムブロック(200℃)に入れた。30時間後、オートクレーブを加熱ブロックから取り出し、水中で室温まで冷却することにより反応を停止させた。慎重に内圧を解放した。得られた溶液をシリンジフィルターで濾過し、溶媒をロータバップで除去した。転化率(96%)は、濾過後に残った固体の質量によって推定され、ジアミノトルエン(1.63g)とLupranol(登録商標)2074をカラムクロマトグラフィーで分離した(4.84g)。ジアミノトルエンの収率によると、ターンオーバー数は667である。反応混合物のGPC-分析によれば、3500g/molの平均分子量を有するポリオールが得られ、ポリオールを分解することなく得られることが示された。
【0113】
実施例6:PUベースの市販製品(黄色いキッチンスポンジ)の水素化:
【化13】
【0114】
黄色のキッチンスポンジは、家庭用タワシから切り取り、水素添加前に粉砕した。粉砕したキッチンスポンジの粉末10.0gを水素化に供した。反応は200mLのPremexオートクレーブで行った。反応終了後、溶液をシリンジフィルターで濾過し、溶媒をロータバップで除去した。転化率は、濾過後に残った固体の質量によって推定され、カラムクロマトグラフィーでジアミノトルエンを単離した。ジアミノトルエンの収率によると、ターンオーバー数は970である。
【0115】
比較例:不均一な触媒を使用した実施1及び2
【化14】
【0116】
比較例の実施1及び2は、均一な水素化触媒の代わりに不均一なSiO担持ルテニウム触媒を使用したことを除いて、実施例4(PUフォーム水素化)と同様に実施した。また、溶媒量は上記のように適合させた。
【0117】
比較実験は、本発明の条件下で不均一なルテニウム触媒を使用しても、トルエンジアミンは得られないことを示している。その代わりに、芳香環が水素化され、望ましくない飽和単量体ジアミンが主生成物となる。
【0118】
水素化触媒L、又は別名Mn-8は、以下の文献プロトコルに従って調製された:K.Das,A.Kumar,Y.Ben-David,M.A.Iron,D.Milstein,J.Am.Chem.Soc.2019,141,12962~12966。
【0119】
【化15】
【0120】
マンガン触媒を用いたポリウレタンの水素化の一般的なプロトコル:
Arグローブボックス内で、Premexオートクレーブ(30,60,100又は200mL)にテフロン製インサートと磁気スターラーバーを備え、ポリマー試料、Mn触媒、KOtBu及び溶媒を投入した。密閉したオートクレーブをグローブボックスから取り出し、Hを充填し、予熱したアルミニウムブロックに移した。反応物を指定時間撹拌し、氷浴で室温まで冷却した。その後、慎重に水素圧を解放し、内部標準としてメシチレンを添加し、粗反応混合物をGC分析に付した。スキーム1及び2に示す大規模な水素化の場合、カラムクロマトグラフィーによって生成物を単離及び精製した。
【0121】
実施例7
ポリウレタンとしてポリウレタン参照材料2を使用した。
【0122】
【化16】
【0123】
実施例8
ポリウレタンとしてポリウレタン参照材料2を使用した。
【0124】
【化17】
【0125】
実施例9
ポリウレタンとしてポリウレタン参照材料2を使用した。
【0126】
【化18】
【0127】
実施例10
ポリウレタンとしてポリウレタン参照材料2を使用した。
【0128】
【化19】
【0129】
実施例11
ポリウレタンとしてポリウレタン参照材料2を使用した。
【0130】
【化20】
【0131】
実施例12:溶媒スクリーニング
ポリウレタンとしてポリウレタン参照材料2を使用した。
【0132】
【化21】
【0133】
【表2】
【0134】
実施例13
この例では、無添加のPUフォームを使用した。これは、トルエンジイソシアネートと、3500g/molの分子量を有するグリセロールとプロピレンオキシドに基づく三官能性ポリエーテルオールとに基づく。
【0135】
【化22】
【0136】
実施例14
実施例13のPUフォームを使用した。
【0137】
【化23】
【0138】
実施例15
実施例13のPUフォームを使用した。
【0139】
【化24】
【0140】
実施例16
ポリウレタンとしてポリウレタン参照材料3を使用した。
【0141】
【化25】
【0142】
実施例17
市販のポリウレタン製キッチンスポンジを使用した。材料は、特定されていないポリエーテルオールを含むトルエンジイソシアネートベースのポリウレタンであった。
【0143】
【化26】
【0144】
実施例18
使用済みオフィスチェアのポリウレタン軟質フォームを使用した。材料は、特定されていないポリエーテルオールを含むメチレンジフェニルイソシアネートベースのポリウレタンであった。
【0145】
【化27】
【0146】
実施例19
使用済み黒色ポリウレタン軟質フォーム包装材を使用した。材料は、特定されていないポリエーテルオールを含むトルエンジイソシアネートベースのポリウレタンであった。
【0147】
【化28】
【0148】
実施例20
硬質ポリウレタンフォームを使用した。材料は、特定されていないポリエーテルオールを含むメチレンジフェニルイソシアネートベースのポリウレタンであった。
【0149】
【化29】
【0150】
実施例21
使用済みのマットレス(マットレス1)からのポリウレタン軟質フォームを使用した。材料は、特定されていないポリエーテルオールを含むトルエンジイソシアネートベースのポリウレタンであった。
【0151】
【化30】
【0152】
実施例22
使用済みのマットレス(マットレス2)からのポリウレタン軟質フォームを使用した。材料は、特定されていないポリエーテルオールを含むトルエンジイソシアネートベースのポリウレタンであった。
【0153】
【化31】
【0154】
実施例23
使用済みのマットレス(マットレス3)からのポリウレタン軟質フォームを使用した。材料は、特定されていないポリエーテルオールを含むトルエンジイソシアネートベースのポリウレタンであった。
【0155】
【化32】
【国際調査報告】