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特表2023-545921非対称直鎖状カーボネートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】非対称直鎖状カーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 68/06 20200101AFI20231025BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C07C68/06
C07C69/96 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518220
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 KR2022009253
(87)【国際公開番号】W WO2023038249
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0119070
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク、チュン-ポム
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン-チョル
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB78
4H006AC48
4H006BA51
4H006BC10
4H006KA57
(57)【要約】
本明細書は、非対称直鎖状カーボネートの製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対称直鎖状カーボネートおよび第2対称直鎖状カーボネートを下記化学式1で表される触媒下でエステル交換反応させるステップを含む、非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【化10】
前記化学式1において、
R1~R3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。
【請求項2】
前記非対称直鎖状カーボネートの製造方法は、溶媒を含まない(solvent free)、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記第1対称直鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート(DMC)である、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記第2対称直鎖状カーボネートは、ジエチルカーボネート(DEC)である、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【請求項5】
前記エステル交換反応の温度は80℃~120℃である、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【請求項6】
前記R1は、水素であり、前記R2およびR3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;メチル基;またはイソプロピル基である、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記化学式1で表される触媒は、下記化合物の中から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【化11】
【請求項8】
前記非対称直鎖状カーボネートは、エチルメチルカーボネート(EMC)である、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月7日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0119070号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に含まれる。
【0002】
本明細書は、非対称直鎖状カーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
非対称直鎖状カーボネートは、リチウム二次電池用電解液として主に用いられているが、既存の電解液と比較してエネルギー貯蔵密度、充電容量、充放電回数、安定性などに優れるため、特にリチウム二次電池用電解液として主に用いられている。
【0004】
非対称直鎖状カーボネートを製造するための方法としては、塩基性触媒の存在下で、クロロギ酸アルキル(alkyl chloroformate)およびアルコールのエステル反応を用いる方法があるが、前記方法は、エステル反応が非常に激しく、ホスゲンとビスフェノール-Aなどの猛毒性化合物を出発物質として用いなければならないという問題がある。前記問題を補完するために、金属炭酸塩などの塩基性触媒の存在下で、対称直鎖状カーボネートおよびアルキル基を有するアルコールのエステル交換反応を用いる方法があるが、前記方法は、触媒活性および生産収率が低く、3種の直鎖状カーボネートおよび2種のアルコールを含む総5種の反応生成物から最終目的化合物であるエチルメチルカーボネートなどの非対称直鎖状カーボネートを分離精製しなければならないという問題がある。また、他の方法としては、3族希土類金属の混合酸化物を用いて、水分やアルコールの存在下でも非対称直鎖状カーボネートを製造する方法が開示されているが、200時間以上の長時間行われなければならないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書は、非対称直鎖状カーボネートの製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の一実施態様によれば、第1対称直鎖状カーボネートおよび第2対称直鎖状カーボネートを下記化学式1で表される触媒下でエステル交換反応させるステップを含む、非対称直鎖状カーボネートの製造方法を提供する。
【0007】
【化1】
【0008】
前記化学式1において、
R1~R3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。
【発明の効果】
【0009】
本明細書の一実施態様による非対称直鎖状カーボネートの製造方法は、工程が単純であり、精製が容易であり、経済的に非対称直鎖状カーボネートを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0011】
本明細書の一実施態様によれば、第1対称直鎖状カーボネートおよび第2対称直鎖状カーボネートを下記化学式1で表される触媒下でエステル交換反応させるステップを含む、非対称直鎖状カーボネートの製造方法を提供する。
【0012】
【化2】
【0013】
前記化学式1において、
R1~R3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。
【0014】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1中の置換基が表示されていない部分は、水素が置換されたことを意味し得る。
【0015】
本明細書の一実施態様によれば、前記化学式1の触媒は、イオン性液体触媒である。
【0016】
本明細書の一実施態様によれば、前記化学式1の触媒は、アミジン系イオン性液体触媒である。
【0017】
本明細書の一実施態様によれば、前記非対称直鎖状カーボネートの製造方法は、溶媒を含まない(solvent free)。
【0018】
従来の製造方法によれば、2種の直鎖状カーボネートとアルコール系溶媒が用いられており、製造工程が複雑であり、アルコール系溶媒が用いられることで、最終目的化合物を含めて少なくとも5種の混合物が得られるため、最終目的物である非対称直鎖状カーボネートを得るための精製工程が非常に複雑である。
【0019】
本明細書の一実施態様によれば、前記非対称直鎖状カーボネートの製造方法は、アルコール系溶媒などの溶媒を用いず、エステル交換反応に参加する第1対称直鎖状カーボネート、第2対称直鎖状カーボネート、および前記化学式1の触媒がいずれも液体物質として均一(homogeneous)に混ざって行われるため、別の溶媒が必要なく、工程が単純である。また、反応終結後に、3種の混合物である第1対称直鎖状カーボネート、第2対称直鎖状カーボネート、および最終目的物である非対称直鎖状カーボネートだけが生成されることで分離精製が容易であり、工程にかかる費用が経済的であり、得られた第1対称直鎖状カーボネートおよび第2対称直鎖状カーボネートは、非対称直鎖状カーボネートの製造工程に再度用いることができるため、従来の方法に比べて非常に経済的である。
【0020】
本明細書の一実施態様によれば、前記3種の混合物は、沸点差を用いる分別蒸留により分離精製することができる。
【0021】
本明細書の一実施態様によれば、前記第1対称直鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート(DMC)である。
【0022】
本明細書の一実施態様によれば、前記第2対称直鎖状カーボネートは、ジエチルカーボネート(DEC)である。
【0023】
本明細書の一実施態様によれば、前記エステル交換反応の温度は80℃~120℃であり、好ましくは90℃~100℃であり、より好ましくは95℃~100℃である。
【0024】
前記反応温度で行う場合、前記第1対称直鎖状カーボネートおよび前記第2対称直鎖状カーボネートのエステル交換反応速度が最適化され、非対称直鎖状カーボネートの収率に優れるという特徴がある。
【0025】
本明細書の一実施態様によれば、前記エステル交換反応は、閉鎖系(closed system)反応である。前記閉鎖系(closed system)反応は、外部と物質は交換せず、エネルギーだけを交換する物理的系であり、外部物質の流入なしに、前記第1対称直鎖状カーボネート、前記第2対称直鎖状カーボネート、および前記化学式1で表される触媒だけで前記エステル交換反応が行われる。
【0026】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分岐鎖であり、前記アルキル基の炭素数は1~4である。アルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
【0027】
本明細書の一実施態様によれば、前記R1は、水素であり、前記R2およびR3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;メチル基;またはイソプロピル基である。
【0028】
本明細書の一実施態様によれば、前記化学式1で表される触媒は、下記化合物の中から選択されるいずれか一つである。
【0029】
【化3】
【0030】
本明細書の一実施態様によれば、前記非対称直鎖状カーボネートの製造方法により製造された非対称直鎖状カーボネートは、エチルメチルカーボネート(EMC)である。
【0031】
本明細書の一実施態様によれば、前記非対称直鎖状カーボネートは、エチルメチルカーボネート(EMC)である。
【0032】
本明細書の一実施態様によれば、前記非対称直鎖状カーボネートは、リチウム二次電池用電解液として用いることができる。
【実施例
【0033】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明することにする。ただし、本明細書による実施例は、種々の異なる形態に変形されてもよく、本明細書の範囲が下記の実施例に限定されるものと解釈されてはならない。
【0034】
本明細書の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本明細書をより明確に説明するために提供されるものである。
【0035】
[合成例1.化合物1の製造]
20mlのバイアルにイミダゾール0.6g、1,8-Diazabicyclo(5.4.0)undec-7-ene 1.5gを投入し、室温で5時間撹拌した。反応が完了すると、淡黄色の液体の化合物1を得る。
【0036】
【化4】
【0037】
[合成例2.化合物2の製造]
前記合成例1において、イミダゾールの代わりに2-メチル-1H-イミダゾール0.8gを用いることを除いては同様に合成し、化合物2を得る。
【0038】
【化5】
【0039】
[合成例3.化合物3の製造]
前記合成例1において、イミダゾールの代わりに4-メチル-1H-イミダゾール0.8gを用いることを除いては同様に合成し、化合物3を得る。
【0040】
【化6】
【0041】
[合成例4.化合物4の製造]
前記合成例1において、イミダゾールの代わりに2-イソプロピル-1H-イミダゾール1.1gを用いることを除いては同様に合成し、化合物4を得る。
【0042】
【化7】
【0043】
[合成例5.化合物5の製造]
前記合成例1において、イミダゾールの代わりに4-イソプロピル-1H-イミダゾール1.1gを用いることを除いては同様に合成し、化合物5を得る。
【0044】
【化8】
【0045】
<実験例.エチルメチルカーボネートの製造>
[実施例1]
100mLの圧力反応器に、ジメチルカーボネート(DMC)10g、ジエチルカーボネート(DEC)13.1g(DMC:DEC=1:1、モル比)、および触媒として前記化合物1を1wt%(DMC基準1wt%)投入した。温度を90℃~100℃に昇温し、4時間撹拌しながら反応を行った。反応が完了すると、サンプリングしてGC(gas chromatography)分析を行った。
【0046】
前記反応は、閉鎖系(closed system)で進行し、別の追加圧力を加えることはなかった。
【0047】
前記反応は、下記反応式1のように進行し、3種の物質以外の生成物は生成されない。
【0048】
【化9】
【0049】
[実施例2]
前記実施例1において、前記触媒として化合物1の代わりに前記化合物2を用いたことを除いては同様に反応を行った。
【0050】
[実施例3]
前記実施例1において、前記触媒として化合物1の代わりに前記化合物3を用いたことを除いては同様に反応を行った。
【0051】
[実施例4]
前記実施例1において、前記触媒として化合物1の代わりに前記化合物4を用いたことを除いては同様に反応を行った。
【0052】
[実施例5]
前記実施例1において、前記触媒として化合物1の代わりに前記化合物5を用いたことを除いては同様に反応を行った。
【0053】
[比較例1]
100mLの圧力反応器に、ジメチルカーボネート(DMC)(10g)、エタノール(EtOH)(5.1g)(DMC:EtOH=1:1、モル比)、および触媒としてナトリウムエトキシド(Sodium ethoxide)を1wt%(DMC基準1wt%)投入する。温度を90℃~100℃に昇温し、4時間撹拌しながら反応を行う。反応が完了すると、サンプリングしてGC分析を行う。
【0054】
前記実施例1~5および比較例1の製造方法により製造された物質をGC分析した結果を下記表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
前記表1において、従来の方法であるアルコール系溶媒を用いた比較例1は、最終目的物であるEMCを含む5種の混合物が生成され、分離精製が難しい。
【0057】
これに対し、本明細書の一実施態様による製造方法は、アルコール系溶媒などの溶媒を用いず、エステル交換反応に参加する第1対称直鎖状カーボネート、第2対称直鎖状カーボネート、および前記化学式1の触媒がいずれも液体物質として均一(homogeneous)に混ざって行われるため、別の溶媒が必要なく、工程が単純である。また、反応終結後に、3種の混合物であるDMC、DEC、および最終目的物であるEMCだけが生成されるこどで分離精製が容易であり、工程にかかる費用が経済的であり、DMCおよびDECは、非対称直鎖状カーボネートの製造工程に再度用いることができるため、従来の方法に比べて非常に経済的であることが分かる。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対称直鎖状カーボネートおよび第2対称直鎖状カーボネートを下記化学式1で表される触媒下でエステル交換反応させるステップを含む、非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【化10】
前記化学式1において、
R1~R3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、
R1~R3の少なくとも一つは、炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である
【請求項2】
前記非対称直鎖状カーボネートの製造方法は、溶媒を含まない(solvent free)、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記第1対称直鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート(DMC)である、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記第2対称直鎖状カーボネートは、ジエチルカーボネート(DEC)である、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【請求項5】
前記エステル交換反応の温度は80℃~120℃である、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【請求項6】
前記R1は、水素であり、前記R2およびR3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;メチル基;またはイソプロピル基である、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記化学式1で表される触媒は、下記化合物の中から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【化11】
【請求項8】
前記非対称直鎖状カーボネートは、エチルメチルカーボネート(EMC)である、請求項1に記載の非対称直鎖状カーボネートの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
【表1】
【国際調査報告】