(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】噴霧乾燥ヒト血漿を利用した血漿分画プロセス
(51)【国際特許分類】
A61K 35/16 20150101AFI20231025BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20231025BHJP
A61K 38/36 20060101ALI20231025BHJP
A61K 38/38 20060101ALI20231025BHJP
A61K 38/55 20060101ALI20231025BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
A61K35/16
A61P7/00
A61K38/36
A61K38/38
A61K38/55
A61K39/395 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519301
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 IB2021000680
(87)【国際公開番号】W WO2022069945
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】パタタンヤン ジョージュ
(72)【発明者】
【氏名】ムルティー ロイット
(72)【発明者】
【氏名】バッドゥール ヤセル
(72)【発明者】
【氏名】ゼイデンバーグ アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA23
4C084CA18
4C084CA36
4C084DA36
4C084DC10
4C084DC32
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA05
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZC021
4C084ZC022
4C085AA33
4C085BB36
4C085EE01
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA04
4C087BB35
4C087CA16
4C087CA21
4C087DA02
4C087DA10
4C087DA23
4C087MA16
4C087MA66
4C087NA03
4C087NA05
4C087ZA51
4C087ZC02
(57)【要約】
本発明は、ヒト血漿を分画する、いくつかの実施形態ではCohn分画手順を用いて分画する方法を提供する。当該改善は、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿を分画手順のための出発材料として使用することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cohn分画手順を用いてヒト血漿を分画する方法であって、改善が、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿を、前記分画手順のための出発材料として使用することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿からクリオペーストが単離され、かつ第VIII因子、第IX因子、及びこれらの組合せから選択されるタンパク質が、新鮮凍結血漿からこのタンパク質が単離される収量の80%以上の収量で前記クリオペーストから単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質の活性が、新鮮凍結血漿から単離される前記タンパク質の活性の80%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿から単離されるIgGが、新鮮凍結血漿からこのタンパク質が単離される収量の80%以上の収量で単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記IgGの活性が、新鮮凍結血漿から単離されるIgGの活性の80%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
A1PI、AT-III、及びこれらの組合せから選択される、前記分画された生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿の画分IV-1から単離されるタンパク質が、新鮮凍結血漿からこのタンパク質が単離される収量の80%以上の収量で単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿から単離されるIgGが、新鮮凍結血漿からこのタンパク質が単離される収量の80%以上の収量で単離される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿の画分Vから単離されるアルブミンが、新鮮凍結血漿からこのタンパク質が単離される収量の80%以上の収量で単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法によって調製されたクリオペースト及び乏クリオ血漿から選択されるメンバーを含む、組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の方法によって調製された画分Iペースト及び画分1上清から選択されるメンバーを含む、組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の方法によって調製された画分II+IIIペースト及び画分II+III上清から選択されるメンバーを含む、組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の方法によって調製された画分IV-1ペースト及び画分IV-1上清から選択されるメンバーを含む、組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の方法によって調製された画分IV-4ペースト及び画分IV-4上清から選択されるメンバーを含む、組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって調製された画分Vペースト及び画分V上清から選択されるメンバーを含む、組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によって生成された凝固因子の調製物。
【請求項16】
請求項1に記載の方法によって生成されたIgGの調製物。
【請求項17】
請求項1に記載の方法によって生成されたA1PI、AT-III、及びこれらの組合せから選択されるメンバーの調製物。
【請求項18】
請求項1に記載の方法によって生成されたアルブミンの調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第63/086,335号(2020年10月1日出願、表題「PLASMA FRACTIONATION UTILIZING SPRAY-DRIED HUMAN PLASMA」)の優先権を主張し、その全体を参照により本出願に援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、血漿から治療的に活性なタンパク質を分離するための血漿分画の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
血漿の分画までの保存及び輸送を容易にするため、血漿は、典型的には、ドナーから採取後すぐに凍結することにより保存される。新鮮凍結血漿(FFP)は、全血を遠心分離して血漿を分離し、次いで採取した血漿を全血採取後8時間未満以内に凍結することを含む一連のステップを通じて得られる。代替手段としては、プラズマフェレーシス装置を用いて血漿を採取するというものがあり、血球はこの装置内で血漿から分離されドナーに戻される。米国において、FFP保存についてのAmerican Association of Blood Banks(AABB)基準は、-18℃以下で保存した場合、採取後最大12か月となっている。また、FFPは、-65℃以下で保存した場合、採取から最大7年まで保存することもできる。欧州の基準では、FFPの貯蔵寿命は、-18℃~-25℃の温度で保存した場合は3か月、-25℃未満で保存した場合は最大36か月と規定している。欧州の基準下では、解凍した血漿は直ちに輸血するか、または1℃~6℃で保存し24時間以内に輸血しなければならない。血漿を24時間を超えて保存する場合、他の用途向けにラベルを付け直すか、または廃棄しなければならない。
【0004】
したがって、FFPは、ある特定の血漿タンパク質の分解を防ぐために、保存期間全体において温度制御された環境で維持されなければならず、難しさならびに保存及び輸送のコスト及び難しさを高めている。さらに、FFPは使用前に解凍しなければならず、その結果、低温保存から取り出してから使用できるまでの30~80分の遅延が生じる。血漿分画前に低温保存チェーンを必要とせずに済ませる方法が、毎年2300万~2800万リットル行われる血漿分画において重要な進歩となることは明らかである。Burnouf,Transfus.Med.Rev.(2007);21(2):101-117(非特許文献1)。
【0005】
血漿を凍結状態で維持する必要性をなくすための考えられる解決策は、これまでは凍結乾燥血漿に依存するものであった。乾燥血液製剤は当技術分野で知られており、この乾燥製剤を達成するための主要な技法が凍結乾燥(フリーズドライ)である。例えば、Brinkhousらに対する米国特許第4,287,087号(特許文献1)及び同第4,145,185号(特許文献2)は、ホルムアルデヒドなどの架橋試薬で固定した乾燥血小板について開示している。米国特許第5,656,498号(特許文献3)、同第5,651,966号(特許文献4)、同第5,891,393号(特許文献5)、同第5,902,608号(特許文献6)、及び同第5,993,804号(特許文献7)は、さらなる乾燥血液製剤について開示している。このような製剤は、安定し貯蔵寿命が長く、場合によっては粉末形態で使用して、重篤な外傷を受けた患者の出血を止めることができるため、治療目的に有用である。ただし、これらの文献では、再構成された凍結乾燥血漿の分画を提案していない。
【0006】
噴霧乾燥血漿を分画プロセスに導入することで、分画前のコールドチェーンの必要性がなくなる可能性がある。噴霧乾燥は、溶媒を迅速に蒸発させる(例えば、脱水する)ためにガス流の中で溶液を霧化する技術である。その結果、残留溶質から構成された微粒子が秒未満の時間スケールで形成される。噴霧乾燥は、材料、食品、及び医薬品産業における工業プロセスとして数十年にわたり使用されている。より最近では、噴霧乾燥によって、タンパク質治療薬を吸入用の微粒子として調製することが容易になっている(Maltesen,et al.,Eur J Pharm Biopharm 70,828-838(2008)(非特許文献2))。
【0007】
再構成可能な噴霧乾燥全血漿は、外傷の現場及び戦地で使用されている。このような血漿は、理想的ではないものの、冷凍庫または冷蔵庫のない幅広い環境での保存が可能であること、第一対応者が初期のケアに使用できること、そして凍結血漿の解凍に伴う30~45分の遅延なしに数分で輸血できることにおいて有用性が見出される。
【0008】
噴霧乾燥は、潜在的に魅力的な手段ではあるものの、ある特定の条件及びパラメーターの下では血漿タンパク質を損傷することがある。噴霧乾燥は、エアロゾル化プロセス中、血漿タンパク質を高い応力にさらす。これは、血漿が、狭いオリフィスから追い出されて、乾燥に適したサイズの液滴を作出するのに必要な高速の空気流に曝露されるためである。第二に、噴霧乾燥プロセスでは、血漿タンパク質を高温に曝露する。これは、エアロゾル化した液滴から水を追い出すために必要である。第三に、噴霧乾燥プロセスでは、乾燥中にCO2が急速に放出される結果として、血漿タンパク質を劇的で急速なpH上昇に供する。
【0009】
噴霧乾燥プロセスは、パラメーターに応じて、ある特定の大型の多量体タンパク質(例えば、フォンウィルブランド因子(vWF))の量を低減し、大型のタンパク質を小さなタンパク質断片に分解し、及び/またはタンパク質の活性/機能性に影響を及ぼし得る。血漿分画の目標は、生理的に機能する血漿タンパク質を様々な画分に単離(または濃縮)することであるため、当業者であれば、血漿分画の出発材料として噴霧乾燥血漿を組み込んでインタクトで生理的に活性なタンパク質薬理学的薬剤を調製することに関しては、噴霧乾燥または凍結乾燥分野に提案または動機を検討することも見出すこともないであろう。
【0010】
したがって、本明細書に記載の発明以前は、再構成された噴霧乾燥血漿を分画することにより、様々な画分(例えば、低温エタノール画分)中のタンパク質を、再構成された生理的に活性な血漿を分画する労力を価値あるものとするのに十分な量で回収できることは明らかではなかった。さらに、再構成された生理的に活性な噴霧乾燥血漿が、Cohn分画(またはその既知の変更形態)において新鮮凍結血漿と同様に作用するかどうかは不明であった。本発明者らは、この分画経路が実際に実現可能であることを発見し、再構成された噴霧乾燥血漿を用いて開始する経済的に有力なCohn分画もしくはKistler-Nitschman分画、または他の方法(例えば、Gerlough法、Hink法、及びMulford法)を考案した。例えば、Kistler et al.,Vox.Sang.(1962);7(4),pp.414-424(非特許文献3);Graham,et al.Subcellular Fractionation, a Practical Approach.Oxford University Press.1997(非特許文献4)を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,287,087号
【特許文献2】米国特許第4,145,185号
【特許文献3】米国特許第5,656,498号
【特許文献4】米国特許第5,651,966号
【特許文献5】米国特許第5,891,393号
【特許文献6】米国特許第5,902,608号
【特許文献7】米国特許第5,993,804号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Burnouf,Transfus.Med.Rev.(2007);21(2):101-117
【非特許文献2】Maltesen,et al.,Eur J Pharm Biopharm 70,828-838(2008)
【非特許文献3】Kistler et al.,Vox.Sang.(1962);7(4),pp.414-424
【非特許文献4】Graham,et al.Subcellular Fractionation, a Practical Approach.Oxford University Press.1997
【発明の概要】
【0013】
発明の簡単な概要
治療用の血漿由来血液タンパク質組成物(例えば、免疫グロブリン組成物、アルブミン、プロテアーゼインヒビター、血液凝固因子、凝固因子インヒビター、及び補体系のタンパク質)の用途が幅広いことを考慮すれば、有効で安全な血漿由来血液タンパク質組成物に対する十分な、経済的な、環境に優しい、そして持続的なアクセスの確保は、最も重要なことである。
【0014】
2019年において、血漿製剤市場の予測は、6.8%のCAGRで成長し、2018年の205億ドルから2023年には285億ドルに達するというものであった。世界全体での年間分画能力は、2016年には約7070万リットルであった。凍結血漿はドナーセンターから分画センターへ輸送される。血漿分画産業が属するセクターのバイオ医薬におけるコールドチェーン費用は、2019年の157億ドルに対し、2020年には約172億ドルに増加すると推定された。“2020 Biopharma Cold Chain Sourcebook forecasts a $17.2-billion logistics market”(Pharmaceutical Commerce,April 27,2020).明らかなことは、冷凍下で維持された何百万リットルもの凍結血漿を保存及び輸送することの経済的及び環境的影響が、引き続き血漿産業における重要な検討事項となっていることである。例えば、Robert P,Hotchko M.Worldwide 2016 Plasma Protein Sales - Marketing Research Bureau, Inc.(2017年12月1日発行)を参照。
【0015】
本発明は、生理的に活性な噴霧乾燥血漿を起源とする血漿分画プロセスを提供することにより、これら及び他の問題を改善する。本発明は、有効で安全な組成物を提供することに加えて、コールドチェーンの構成要素へのアクセスの集約度が低く、ドナーセンターから分画施設までの輸送が液体血漿よりも単純で経済的である血漿源を用いて、重要な血漿タンパク質を単離するためのプロセスも提供する。
【0016】
本発明により、極めて驚くべきことに、生理的に活性な噴霧乾燥再構成血漿が、生理的に活性な再構成された血漿を分画することによってタンパク質治療薬剤を調製するための、有効な出発材料であることが発見された。様々な実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿の下流にある様々なCohn画分に典型的に見られるタンパク質は、凍結血漿を用いて開始するプロセスでの対応する画分に見られるものと同等の収量及び純度でこれらの画分中に見出される。
【0017】
本発明の例示的な方法は、生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末を再構成液中で再構成することによって調製された、生理的に活性な再構成された血漿溶液を準備することと、当該生理的に活性な再構成された血漿を、1つ以上の血漿分画プロセス(例えば、低温エタノール分画)に供することとを含む。
【0018】
生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、室温または標準的な冷蔵状態での保存期間が長いこと;重量及び体積が低減されているため保存及び出荷が容易であること;汎用性、耐久性、及び簡便性;ならびに分画施設で容易かつ迅速に再構成し使用できること、といった利点を有する。生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、実質的に任意の温度(例えば、-180℃~40℃)で少なくとも約2~3年間保存できることが好ましい。米国公開第2019/0298765号。生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、凍結血漿に比べて軽量で許容温度の範囲が広いため、保存及び出荷に関連するコストが液体血漿よりも著しく低い。
【0019】
本発明で使用する生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、バッチ(単一単位)または連続(例えば、プール単位)プロセスモードのいずれかで生成することができる。
【0020】
また本発明は、特に、再構成された噴霧乾燥された生理的に活性な血漿粉末溶液によって分画プロセスに導入された血漿を分画するために使用される、血漿処理システム、好ましくはcGMP準拠システムも提供する。出発に用いる生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、血漿から直接最終的な付属無菌容器内で乾燥することができ、その後再構成タンクに移され、乾燥血漿は、迅速かつ容易に再構成されて、分画に適した状態及び濃度となる。分画施設では、生理的に活性な噴霧乾燥血漿を迅速に再構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】例示的なCohn分画手順の全般的なフローチャートである。
【
図2】本発明を実施する際に使用する例示的な噴霧乾燥デバイスの図である。
【
図3】FFP由来の解凍血漿におけるいくつかの凝固因子についての凝固因子活性を示す表である。本明細書に記載のタイプの生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末は、列挙されている因子のうちの1つ以上または全てに対し実質的に同様の凝固活性を示すことができる(2019/0298765)。
図3は、モデル噴霧乾燥実行における例示的なステップと、本発明の組成物の再構成及び分析から得られたデータを示している。
【
図4】血漿試料に対する例示的な噴霧乾燥実行のためのパラメーターの表である。
【
図5A】実施例2に記載のような再構成後の分析からの結果の表である。
【
図5B】実施例2に記載のような再構成後の分析からの結果の表である。
【
図6】実施例3及び
図7A~7Dで詳述している、噴霧乾燥血漿出発材料を用いて開始する2つの異なる分画プロセスである、試験1及び試験2における、例示的なフローチャートである。
【
図7A】試験1、試験2、及び試験3(画分Vで開始)の結果の表である。
【
図7B】試験1、試験2、及び試験3(画分Vで開始)の結果の表である。
【
図7C】試験1、試験2、及び試験3(画分Vで開始)の結果の表である。
【
図7D】試験1、試験2、及び試験3(画分Vで開始)の結果の表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
I.序論
全血の総体積の約55%を占める血漿は、血球及び他の構成物質が浮遊する、全血の構成要素である。血漿はさらに、700種超のタンパク質及び追加の物質を含み、これらは、とりわけ凝固、タンパク質貯蔵、及び電解質平衡を含めた身体の健康に必要な機能を果たしている。血漿は、全血から抽出した場合、体液、抗体、及び凝固因子を補充するために用いられ得る。したがって、血漿は医療に広く使用されている。
【0023】
現在、毎年数百万リットルもの血漿が、血漿採取センターから分画施設に至るまで、血漿にコールドチェーンが必要とされるプロセスで分画されており、凍結血漿は冷凍庫で保存され、分画の直前に解凍される。血漿を採取施設から分画施設へ輸送する際のコールドチェーンの維持は、血漿分画プロセス及びビジネスにおいて物流管理上複雑で資源集約的で費用がかかる要因であり、この要因は、持続可能性に着目したイノベーションによって改善できると考えられる。コールドチェーンまたはコールドチェーンの構成要素を排除すれば、結果として技術的及び経済的な効率が向上し、「より環境に配慮した」、より持続可能なプロセスが得られる。
【0024】
以下のセクションに記載するように、本発明は、再構成された生理的に活性な噴霧乾燥血漿を用いて分画を開始することにより、分画プロセスに多数の効率性及び他の利点を付与するものである。
【0025】
次に、添付の図面に示すような本開示の例示的な実施形態の実践について詳細に言及する。同じ参照指標は、図面及び以下の詳細な説明の全体において、同じまたは同様の部分を指すために使用される。当業者であれば、以下の詳細な説明は例示に過ぎず、いかなる形でも限定することは意図されていないことを理解するであろう。本開示の他の実施形態は、本開示の利益を有するこのような当業者にそれら自体を容易に示唆するであろう。
【0026】
明快性のため、本明細書に記載の実装形態の通例的な特徴の全てが示され説明されるわけではない。任意のこのような実際の実装形態の開発においては、血漿製剤製造業者の特定の目標(例えば、応用先及びビジネスに関連する制約への準拠)を達成するために多数の実装特有の決定が行われること、そしてこれらの特定の目標が、ある実装から別の実装に、及び血漿製剤製造業者から別のものに変化することが理解されよう。さらに、このような開発努力は複雑で時間がかかることがあるが、それでもなお、本開示の利益を有する当業者にとっては日常的な工学の仕事であろうことが理解されよう。
【0027】
本開示に記載された例示的な実施形態の多くの変更形態及び変形形態が、当業者には明らかであるように、例示的な実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載の特定の例示的な実施形態は、単に例として提供され、本開示は、添付の特許請求の範囲の表現によってのみ、このような特許請求の範囲が権利を有する完全な等価物の範囲とともに限定されるものとする。
【0028】
II.略語及び定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術的用語及び科学的用語は、概して、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。概して、本明細書で使用する命名法、ならびに有機化学、医薬製剤、及び医用画像処理における実験手順は、当技術分野で周知され、一般的に用いられているものである。
【0029】
a.略語
本明細書で使用する場合、「aPTT」とは、活性化部分トロンボプラスチン時間を指し、これは、「内因性」経路(接触活性化経路と称されることもある)及び共通凝固経路の両方の有効性を測定する、当技術分野で知られている性能指標である。
【0030】
本明細書で使用する場合、「PT」とはプロトロンビン時間を指し、これは凝固の外因性経路の技術分野で知られている性能指標である。
【0031】
本明細書で使用する場合、「FGN」とはフィブリノーゲン(当技術分野では第I因子とも呼ばれる)を指し、これは、肝臓によって合成される不溶性の血漿糖タンパク質であり、凝固中にトロンビンによってフィブリンに変換される。
【0032】
本明細書で使用する場合、「PC」とはプロテインCを指し、これはオートプロトロンビンHA及び血液凝固第XIV因子の別名でも知られている。
【0033】
本明細書で使用する場合、「PS」とはプロテインSを指し、これは内皮で合成されるビタミンK依存性血漿糖タンパク質である。プロテインSは、血液循環中で2つの形態、すなわち遊離形態及び補体タンパク質C4bに結合した複合形態で存在する。ヒトの場合、プロテインSはPROS1遺伝子によってコードされる。
【0034】
本明細書で使用する場合、ローマ数字が後に続く「因子」とは、ペプチドを生成するための大きなタンパク質の連続した切断を伴う酵素触媒反応の複雑なカスケードを通じて関係する一連の血漿タンパク質を指し、各々が不活性チモーゲン前駆体を活性酵素に変換してフィブリン塊の形成をもたらす。このような因子としては、第I因子(フィブリノーゲン)、第II因子(プロトロンビン)、第III因子(組織トロンボプラスチン)、第IV因子(カルシウム)、第V因子(プロアクセレリン)、第VI因子(止血において活性とはみなされず)、第VII因子(プロコンバーチン)、第VIII因子(抗血友病因子)、第IX因子(血漿トロンボプラスチン構成要素;クリスマス因子)、第X因子(スチュアート因子)、第XI因子(血漿トロンボプラスチン前駆物質)、第XII因子(ハーゲマン因子)、及び第XIII因子(フィブリン安定化因子)が挙げられる。
【0035】
「FP24」とは、全血採取から調製された凍結血漿を指し、全血採取から24時間以内に分離し-18℃以下で配置しなければならない。使用されている抗凝固剤溶液及び構成要素の体積がラベルに表示されている。平均すると、ユニットには200~250mLが含まれる。この血漿構成要素は、安定した血漿タンパク質の供給源である。FFPに比べると、第VIII因子のレベルは著しく低下し、第V因子及び他の不安定な血漿タンパク質のレベルは可変である。この血漿構成要素は、血漿タンパク質が欠乏または欠損している患者向けの血漿タンパク質の供給源の役割を果たしている。凝固因子レベルはFFPよりも低く、特に不安定な凝固因子である第V及び第VIII因子が低い可能性がある。
【0036】
b.定義
本明細書では、冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「1つのタンパク質(a protein)」とは、1つのタンパク質または複数のタンパク質を意味する。
【0037】
「Cohnプロセス」及び「Cohn分画」は、本明細書で互換的に使用されており、一般的に理解されているように、異なる濃度でのエタノール沈殿、pHの変化、温度の変化、イオン強度の変化を含む一連のステップを通じてヒト血漿を分離する方法を指し、これにより、ある特定の血漿タンパク質に富む画分がもたらされる。例えば、米国特許第2,390,074号を参照。
図1は、Cohnプロセスの例示的なフローチャートである。本明細書で使用する場合、「Cohnプロセス」及び「Cohn分画」という用語は、この先駆的プロセスに対する多くの変形形態及び改善(例えば、Kistler-Nitschmannプロセス(Kistler et al.(1952),Vox Sang,7,414-424))も指す。本発明の方法で使用する他のプロセスとしては、米国特許第8,940,877号に記載のIgGの単離方法が挙げられる。
【0038】
「血漿」とは、血液が遠心分離されて、(例えば、)細胞材料(例えば、赤血球、白血球、及び血小板)を除去した後に残る流体である。血漿は概して黄色であり、透明~不透明である。献血され、血漿を他のある特定の血液構成要素から分離するように処理され、凍結されていない血液は、「非凍結血漿」と称される。本明細書に記載の温度に8時間以内で凍結された血漿は、本明細書では「新鮮凍結血漿」(「FFP」)と称される。新鮮凍結血漿は、血液の溶解構成成分、例えば、タンパク質(6~8%;例えば、血清アルブミン、グロブリン、フィブリノーゲンなど)、グルコース、凝固因子(凝固タンパク質)、電解質(Na+、Ca2+、Mg2+、HCO3
-、Cl-など)、ホルモンなどを含む。全血(WB)血漿は、全血から単離された、抗凝固剤(複数可)以外の添加剤を含まない血漿である。クエン酸リン酸ブドウ糖(CPD)血漿は、その名が示すように、抗凝固剤として加えられているクエン酸、リン酸ナトリウム、及び糖(通常はブドウ糖)を含む。
【0039】
「液体血漿」とは、噴霧乾燥血漿以外の血漿を指す。
【0040】
「回収血漿」とは、全血の有効期限から5日以内に分離され、1~6℃で保存された血漿を指す。液体血漿中の血漿タンパク質のプロファイルは、特性評価が不十分である。液体血漿中の凝固タンパク質のレベル及び活性化状態は、細胞との接触時間、ならびに保存の条件及び期間に依存し、それに伴って変化する。この構成要素は、血漿タンパク質の供給源として働く。凝固タンパク質のレベル及び活性化状態は可変であり、経時的に変化する。
【0041】
「解凍血漿」とは、FFPまたはFP24に由来する血漿であって、無菌的手法(閉鎖系)を用いて調製され、30~37℃で解凍され、最初の24時間の解凍後期間が経過した後、1~6℃で最大4日間維持された血漿を指す。解凍血漿には、第II因子及びフィブリノーゲンなどの安定した凝固因子がFFPと同様の濃度で含まれ、ただし他の因子は様々に低減された量で含まれる。
【0042】
「新鮮凍結血漿」(「FFP」)とは、全血またはアフェレーシス採取から調製された血漿であって、関連する血液採取、処理、及び保存システムの使用説明書で指定された時間枠内に-18℃以下で凍結した(例えば、採取から8時間以内に凍結した)血漿を指す。平均すると、ユニットは200~250mLを含むが、アフェレーシス由来ユニットは400~600mLも含むことがある。FFPは、全ての凝固因子を含む血漿タンパク質を含む。FFPは、不安定な凝固因子である第V及び第VIII因子を高レベルで含む。
【0043】
本明細書で使用する場合、「噴霧乾燥血漿」という用語は、再構成されたときに、その生理的活性の実質的に全てを失う程度までには損傷されていないタンパク質を含む生理的に活性の血漿粉末を指す。血漿粉末の生理的活性は、その再構成された形態において、当技術分野で知られている複数のパラメーター(限定されるものではないが、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、フィブリノーゲンレベル、プロテインCレベル、及びプロテインSレベルを含む)によって示すことができる。血漿粉末の生理的活性は、その再構成形態において、凝固因子レベルまたは当技術分野で知られている他のタンパク質活性(限定されるものではないが、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、及び第X因子;フィブリノーゲン活性;IgG抗原結合活性;A1PI活性;アンチトロンビンIII活性;アルファ2-アンチプラスミン活性;ならびにアルファ1-アンチトリプシン活性を含む)によって示され得る。これらのパラメーターは、当技術分野で知られている技法を用いて、例えば、市販の装置を用いて測定することができる。例示的な噴霧乾燥血漿は、米国特許第8,601,712号、同第8,595,950号、同第8,533,972号、同第8,533,971号、同第8,434,242号、及び同第8,407,912号に記載の方法によって乾燥される。
【0044】
本明細書で使用する場合、「生理的に活性な再構成された血漿」という用語、及びこの用語の変形形態は、再構成された生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末を指し、これには、このような治療を必要とする対象における疾患を治療するためにタンパク質(複数可)が投与される治療レジメンにおいて、その生理的有効性の実質的に全てを失う程度までには噴霧乾燥及び/または再構成によって損傷されていないタンパク質が含まれる。例示的な実施形態において、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥血漿は、噴霧乾燥及び再構成前の血漿の凝固因子活性の少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%を保持する。いくつかの実施形態において、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥血漿は、噴霧乾燥及び再構成前の血漿の凝固因子活性の約30%~約70%、約40%~約60%を保持する。様々な実施形態において、生理的に活性な再構成された血漿のIgG活性は、噴霧乾燥前の血漿のIgG活性の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上である。
【0045】
噴霧乾燥血漿粉末の1つ以上の構成要素の生理的活性は、その再構成された形態において、標準的な試験によって定量され、当技術分野で知られている複数のパラメーター(限定されるものではないが、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、フィブリノーゲンレベル、プロテインCレベル、及びプロテインSレベルを含む)によって示される。血漿粉末の生理的活性は、その再構成形態において、凝固因子レベルまたは当技術分野で知られている他のタンパク質活性(限定されるものではないが、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、及び第X因子;フィブリノーゲン活性;IgG抗原結合活性;A1PI活性;アンチトロンビンIII活性;アルファ2-アンチプラスミン活性;ならびにアルファ1-アンチトリプシン活性を含む)によって示され得る。
【0046】
「再構成液」とは、生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末を接触させて粉末を溶液/懸濁液にして、「再構成された血漿」(すなわち、生理的に活性な再構成された血漿)を形成するための水性液体である。再構成溶液は、1つ以上の塩、1つ以上の緩衝剤、1つ以上のアミノ酸、1つ以上の懸濁化剤などを、任意の有用な組合せで含むことができる。再構成液中の例示的な添加物は、液体中のタンパク質を安定化し、再構成プロセス中のタンパク質への損傷及び/またはタンパク質活性の消失を防止、減少、または遅延させることができるように選択される。例示的な再構成液としては、注射用水、リン酸ナトリウム緩衝液、酢酸緩衝液、1つ以上の生理的に許容される界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)を含む水溶液、ならびに米国公開第2017/0370952号;同第2017/0370952号;及び同第2010/0273141号に記載のものが挙げられる。
【0047】
「疾患」とは、動物が恒常性を維持できず、その疾患が改善しなければ、その動物の健康状態が悪化し続ける動物の健康状態である。様々な実施形態において、分画され再構成された生理的に活性な噴霧乾燥血漿からの1つ以上のタンパク質が、1つ以上の疾患を治療するために使用される。
【0048】
III.実施形態
A.組成物及びデバイス
本開示の実施形態は、噴霧乾燥血漿から再構成された生理的に活性な血漿を分画する方法と、この分画によって調製されるタンパク質調製物とを対象とする。
【0049】
例示的な実施形態において、本発明は、再構成された生理的に活性な噴霧乾燥血漿を用いて開始する血漿分画プロセスの生成物である、1つ以上の血漿画分を提供する。例示的な実施形態において、画分はCohn画分であり、この用語が当技術分野で理解されている通りのものである。別の実施形態において、本発明は、再構成された血漿のその後の分画を可能にする、容易にする、または促進するように選択された再構成液を用いて噴霧乾燥血漿から再構成された、生理的に活性な血漿の溶液を提供する。様々な実施形態において、生理的に活性な再構成された血漿溶液は、血漿分画に使用される1つ以上の追加の構成要素に適合している再構成タンクに配置される。例示的な実施形態において、再構成タンク内の再構成された生理的に活性な血漿は、分画システムの構成要素である。例示的な実施形態において、分画システムは、Cohn分画システムであるか、またはこのシステムの既知の変更形態である。
【0050】
様々な実施形態において、本発明は、生理的に活性な再構成された乾燥血漿出発材料から下流にある1、2、3、4、5、またはそれ以上のユニークな血漿画分組成物(複数可)を提供する。例示的な実施形態において、組成物はクリオペースト及び/または乏クリオ血漿である。様々な実施形態において、組成物は画分Iペーストであり、フィブリノーゲン、または画分I上清を含む。様々な実施形態において、組成物は画分II+IIIペーストであり、IgG、または画分II+III上清を含む。いくつかの実施形態において、組成物は画分IV-1ペーストであり、A1PI及び/またはAT-III、あるいは画分IV-1上清を含む。例示的な実施形態において、組成物は、画分IV-4ペースト及び/または画分IV-4上清である。様々な実施形態において、組成物は画分Vペーストであり、アルブミンまたは画分V上清を含む。様々な実施形態において、本発明の画分は、主にFVIII及び/またはフォンウィルブランド因子を含む。いくつかの実施形態において、本発明の画分は、主にプロトロンビン及び/または第VII因子、及び/または、FIX及び/またはFXを含む。いくつかの実施形態において、本発明の画分は、主にIgGを含む。例示的な実施形態において、本発明の画分は、主にA1PI及び/またはAT-IIIを含む。いくつかの実施形態において、本発明の画分は、主にアルブミンを含む。例示的な実施形態において、分画は、1つ以上のCohn分画である。
【0051】
例示的な実施形態において、本発明は、本発明の方法によって生成される凝固因子の調製物を提供する。様々な実施形態において、凝固因子の調製物は、第VIII因子、第IX因子、プロトロンビン複合体、フォンウィルブランド因子、フィブリノーゲン、及びこれらの任意の2つ以上の組合せから選択される。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の方法によって調製された多価及び/または高度免疫の免疫グロブリン(IgG)の調製物を提供する。様々な実施形態において、IgGは、抗RhO高度免疫免疫グロブリン、抗B型肝炎高度免疫免疫グロブリン、抗狂犬病高度免疫免疫グロブリン、抗破傷風IgG高度免疫免疫グロブリン、及びこれらの任意の2つ以上の組合せから選択される。
【0053】
例示的な実施形態において、本発明は、本発明の方法によって調製されたプロテアーゼインヒビターの調製物を提供する。様々な実施形態において、プロテアーゼインヒビターは、アルファ1-アンチトリプシン、C1-インヒビターなど、及びこれらの組合せから選択される。
【0054】
例示的な実施形態において、本発明は、本発明の方法によって調製される1つ以上の抗凝固剤の調製物を提供する。様々な実施形態において、調製物はアンチトロンビン(例えば、AT-III)を含む。
【0055】
例示的な実施形態において、本発明は、本発明の方法によって調製されたアルブミンの調製物を提供する。
【0056】
例示的な実施形態において、本発明に従って単離される画分の特性は、当技術分野で認められている方法を用いて凍結血漿から同じように単離される同じ画分の特性と実質的に同一である。様々な実施形態において、当該画分の特性は、当技術分野で認められている方法を用いて凍結血漿から同じように単離される同じ画分の特性と異なる。好ましい実施形態において、この異なる特性は、規制に関連する1つ以上のパラメーターに対応し、この特性は、このような1つ以上のパラメーターの範囲内で、その画分に対する関連する規制上の要件にとってわずかとみなされる量だけ変化し、すなわち、画分を組み込む医薬製剤または画分から単離されるタンパク質は、新たな規制上の検討も販売承認も必要としない。
【0057】
例示的な実施形態において、本方法は、少なくとも5体積%または少なくとも25体積%のアルブミンを含み静脈内注射に適したアルブミン水溶液を提供し、当該溶液は、45℃の温度に1か月の期間の間曝露した後も、アルブミンが沈殿することなく安定性を保つ。この溶液は、分画により、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿の溶液から単離される。
【0058】
例示的な実施形態において、本発明は、第VIII因子、第IX因子、及びこれらの組合せから選択される生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿から単離されるクリオペーストのタンパク質の調製物を提供する。当該調製物は、タンパク質を、新鮮凍結血漿からこのタンパク質が単離される収量の80%以上の収量で含む。様々な実施形態において、当該タンパク質の活性は、新鮮凍結血漿から単離されるタンパク質の活性の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上である。
【0059】
例示的な実施形態において、本発明は、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿から単離されるIgGの調製物を提供する。当該調製物は、IgGが新鮮凍結血漿から単離される同一の調製物中に見出される量の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上の量のIgGを含む。様々な実施形態において、当該IgGの活性は、新鮮凍結血漿から単離されるIgGの活性の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上である。
【0060】
例示的な実施形態において、本発明は、A1PI、AT-III、及びこれらの組合せから選択される、分画された生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿の画分IV-1から単離されるタンパク質であって、新鮮凍結血漿からこのタンパク質が単離される収量の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上の収量で単離される、タンパク質を提供する。様々な実施形態において、画分IV-1における生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿から単離されるタンパク質は、新鮮凍結血漿から単離されるタンパク質の活性の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上の活性を有する。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明は、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿の画分Vから単離されるアルブミンが、新鮮凍結血漿からこのタンパク質が単離される収量の80%以上の収量で単離される、方法を提供する。様々な実施形態において、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿から単離されるアルブミンは、新鮮凍結血漿から単離されるアルブミンの活性の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上の活性を有する。
【0062】
様々な実施形態において、本発明は、本発明の画分のうちの1つ、またはこのような画分からさらに精製された1つ以上のこのような画分のタンパク質構成要素を含む、医薬製剤を提供する。様々な医薬製剤は、画分(またはさらに精製された下流)中のタンパク質が製剤化される、医薬的に許容されるビヒクルも含む。
【0063】
様々な実施形態において、本発明は、本発明の医薬製剤であって、医薬製剤の投与を、このような投与を必要とする対象において行うためのデバイス(例えば、シリンジ、点滴バッグなど)にパッケージングされている、医薬製剤を提供する。様々な実施形態において、デバイスは、このような投与を必要とする対象に投与するための活性タンパク質の単位投与量製剤を含む。例示的な実施形態において、単位投与量は、対象のための当技術分野で認められている単位投与量である。
【0064】
B.方法
本発明は、出発材料としての生理的に活性な再構成された噴霧乾燥血漿を用いて開始する、新規の血漿分画方法を提供する。本発明の例示的な方法は、生理的に活性な血漿粉末を再構成液中で再構成することによって調製された、生理的に活性な血漿溶液を準備することと、このように再構成された生理的に活性な血漿を1つ以上の分画プロセスに供することとを含む。例示的な分画プロセスとしては、Cohn分画、Kistler-Nitchman分画、及びこれらの変形形態がある。
図1。
【0065】
本発明の方法で使用する噴霧乾燥血漿は、プール後に、またはユニットごとに乾燥することができる。複数の血漿ユニットをプールすることにはいくつかの利点がある。例えば、等体積基準での因子回収率の任意の不足は、プールから最終製剤に体積を加えることによって補うことができる。マイナスの特徴も存在する。因子の回収率を改善するためにプールから体積を補うのは費用がかかる。重要なことには、プールされた血漿は常に病原体の検査を行わなければならない。というのも、(例えば、一例のドナーからの)プールに侵入するいかなる病原体も、検出されなければ、何百、何千もの患者を害するリスクをもたらすためである。
【0066】
様々な実施形態において、噴霧乾燥血漿は、任意の好都合な形態で、さらなる処理(例えば、分画)のためにプラントに進む。例示的な実施形態において、噴霧乾燥血漿は、密閉容器(例えば、密閉されたビニール袋)に入れられてプラントに進む。容器の内容物は再構成タンクに移される。例示的な実施形態において、移動は、クリーンルーム内、または他の無菌条件下で実施される。いくつかの実施形態において、容器は、再構成タンクのポートに取り付けられるように構成され、噴霧乾燥血漿は、プラントの周囲雰囲気に曝露されることなく再構成タンクに直接移される。この構成では、移動はクリーンルーム内でもこの環境外でも実施することができる。移動は、様々な粉末移動手段(機械的手段(例えば、スクリュー、バイブレーター)、空気手段、及び真空手段を含む)によって促進することができる。
【0067】
例示的な実施形態において、血漿は、噴霧乾燥の前に、1つ以上の抗凝固剤に接触される。例示的な抗凝固剤としては、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)がある。
【0068】
生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末は、再構成タンク内で、粉末を再構成液に接触させることによって再構成される。接触は、任意の有用な形式(すなわち、添加の順序、温度、希釈、アジテーションなど)で実施することができる。
【0069】
タンパク質は、複数の機構(例えば、クリッピング、酸化、アンフォールディング、凝集、不溶性微粒子形成)によって物理的な分解を経る可能性がある。多くのタンパク質は、溶液中では構造的に不安定であり、精製、加工、及び保存中に遭遇する様々なストレスのために立体構造的変化を受けやすい。このようなストレスとしては、温度シフト、pH変化及び極端なpHへの曝露、せん断応力、表面吸着/界面応力などが挙げられる。例示的な再構成液は、噴霧乾燥血漿中の1つ以上のタンパク質に保護効果を発揮し、再構成中の分解、凝集、または他のマイナスの結果を防止または低減し、それにより生理的活性を保持する。
【0070】
1つの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末の少なくとも一部は、先に再構成液体の少なくとも一部が投入された再構成タンクに加えられる。いくつかの実施形態において、再構成液の少なくとも一部は、再構成タンクに装填された生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末の少なくとも一部に加えられる。これらの形式のいずれにおいても、粉末及び再構成液を接触させる前、その間、またはその後のいずれの時点でも、好都合な方法でタンク内の内容物をアジテートすることができる。例示的な実施形態において、再構成タンクの内容物は、撹拌(stirring)によってアジテートされる。
【0071】
再構成混合物のうちの一方の構成要素(噴霧乾燥血漿または再構成液)は、再構成に有用な結果をもたらすと判断される速度及び体積で、他方の構成要素に加えられる。したがって、一方の構成要素は、再構成タンク内にある他方の構成要素に、ゆっくりでも、迅速でも、バルクボーラスでも加えられ得る。
【0072】
様々な実施形態において、血漿は、タンク内の撹拌された再構成液を生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末に接触させることにより、タンク内で再構成される。再構成液は、撹拌または他の方法でアジテートすることができる。生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末は、迅速でも、ゆっくりでも、バルクボーラスでも液体に加えられ得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、再構成タンクには、再構成を行う生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末の少なくとも一部が投入され、この粉末は撹拌または他の方法でアジテートされる。代替手段として、生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末は、撹拌または他の方法でアジテートされない。再構成液は、タンク内の粉末に加えられる。多数の添加様式が有用であり、例えば、液体を粉末に直接加えたり、液体を、タンクの側壁に注ぐことによって生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末に加えたりといった様式がある。液体は、迅速でも、ゆっくりでも、1回以上のボーラスでも加えられ得る。
【0074】
様々な実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末の少なくとも一部及び再構成液体の少なくとも一部が、再構成タンクに本質的に同時に加えられ、この再構成タンクは、空の場合もあれば、生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末、再構成液体、またはこれらの組合せが既に入っている場合もある。
【0075】
当業者には理解されるように、これらの接触様式はいずれも、単独でも、任意の組合せまたは順序でも実施することができる。
【0076】
例示的な再構成液としては、生理的に適合性の液体がある。
【0077】
再構成液は、噴霧乾燥血漿を再構成し、血漿のタンパク質構成要素に対する損傷(例えば、変性、凝集、活性の消失)と、主要な血漿の特性及び活性(複数可)の消失または低減とを最小限に抑えることが可能な水性流体である。
【0078】
例示的な再構成液としては、注射用水(WFI)または食塩水がある。様々な実施形態において、再構成液のpHが調整される。当業者には理解されるように、再構成液のpHは、酸及び塩基(例えば、HCl、重炭酸ナトリウムなど)を加えることによって容易に調整される。様々な実施形態において、再構成液は、これらの液体のうちの1つであり、pH調整なしで使用される。
【0079】
いくつかの実施形態において、再構成液は、少なくとも1つの緩衝剤を含む。例示的な緩衝剤としては、限定されるものではないが、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、及び血漿タンパク質と適合性があると一般的に認識されている他のこのような緩衝剤がある。
【0080】
様々な実施形態において、再構成液は、少なくとも1つのアミノ酸を含む。例示的なアミノ酸としては、グリシンがある。
【0081】
例示的な実施形態において、再構成液は、1つ以上の抗凝固剤を含む。例示的な抗凝固剤としては、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)がある。
【0082】
本発明の方法がもたらすさらなる利点は、ネイティブ血漿に見出されるタンパク質濃度よりも高い濃度で血漿を再構成することにより、処理する液体の量を低減できることである。例示的な実施形態において、噴霧乾燥血漿は、再構成液を用いて、その元の体積の約100%に再構成される。いくつかの実施形態において、噴霧乾燥血漿は、再構成液を用いて、その元の体積の約75%に再構成される。いくつかの実施形態において、噴霧乾燥血漿は、再構成液を用いて、その元の体積の約50%に再構成される。いくつかの実施形態において、噴霧乾燥血漿は、再構成液を用いて、その元の体積の約25%に再構成される。いくつかの実施形態において、噴霧乾燥血漿は、再構成液を用いて、その元の体積の約25%~約50%、例えば、約30%~約40%に再構成される。いくつかの実施形態において、噴霧乾燥血漿は、再構成液を用いて、その元の体積の約50%~約75%、例えば、約60%~約70%に再構成される。様々な実施形態において、噴霧乾燥血漿は、再構成液を用いて、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%に再構成される。
【0083】
様々な実施形態において、生理的に活性な再構成された血漿は、少なくとも約2%、5%、7%、10%、12%、14%、16%、18%、または20%から構成されている。いくつかの実施形態において、0.09グラムの粉末:1mLの再構成液の比で再構成した場合、再構成された生理的血漿は、約48mg/mL、例えば、45~55mg/mLの範囲のタンパク質濃度を有する。
【0084】
凍結/解凍した血漿の使用を必要としないという本発明の方法によって提供される利便性を考慮すれば、再構成プロセスは、任意の有用な温度で行うことができる。例示的な再構成は、室温(例えば、約22℃~約25℃)で、冷蔵下(約10℃~約20℃)で行われる。例示的な実施形態において、再構成プロセスは、約2℃~約28℃の温度で実施される。
【0085】
例示的な実施形態において、再構成の後に、再構成された血漿の温度がクリオプレシピテーションを促進するように低下され、クリオプレシピテート及び上清が分離される。様々な実施形態において、再構成された血漿の温度は、クリオプレシピテーションを達成するために約6℃未満に低下される。例示的な実施形態において、再構成された血漿溶液は、約1℃~約6℃に冷却される。
図6。
【0086】
様々な実施形態において、クリオプレシピテーションの後、血漿はクリオプレシピテート及びクリオ上清に分離される。クリオ上清は、任意選択でさらなる分画ステップに供される。分離は、任意の有用な様式(例えば、限定されるものではないが、遠心分離、濾過、またはこれらの組合せ)で達成することができる。
【0087】
生理的に活性な再構成された血漿の冷却が所望されるこれらの実施形態において、任意の有用な冷却手段を利用することができる。様々な実施形態において、再構成された血漿を含む容器またはラインは、冷却デバイスを用いてジャケット被覆される。例示的な実施形態において、冷却及び/または血漿溶液は、容器(例えば、ジャケット付き容器)内で保持され、いくつかの実施形態において、血漿溶液は、インラインフロー中に冷却される(「ラジエーター法」)。
【0088】
様々な実施形態において、生理的に活性な再構成された血漿を上記で論じたように冷却すると、結果としてフィブリノーゲンが沈殿する。沈殿したフィブリノーゲンは、上清から分離することができる。いくつかの実施形態において、フィブロネクチンは、再構成された血漿を冷却すると沈殿し、上清から分離することができる。いくつかの実施形態において、FVIIIは、生理的に活性な再構成された血漿を冷却すると沈殿し、上清から分離することができる。様々な実施形態において、フォンウィルブランド因子は、生理的に活性な再構成された血漿を冷却すると沈殿し、上清から分離することができる。
【0089】
例示的な実施形態において、生理的に活性な再構成された血漿は、分画される前に、1つ以上の活性を確認するための1つ以上の試験手順に供される。生理的に活性な再構成された血漿中で照会される凝固促進タンパク質及び抗凝固タンパク質の活性は、限定されるものではないが、以下の検査項目を含む:i.プロトロンビン時間(PT)または国際標準化比(INR);ii.活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT);iii.熱不安定性タンパク質(例えば、第V因子、第VIII因子)の活性;iv.抗凝固タンパク質(例えば、プロテインS、プロテインC)の活性;v.凝集及び分解しやすい大型の凝固タンパク質(例えば、フィブリノーゲン、フォンウィルブラント因子)の抗原及び活性;vi.凝固活性化マーカー(例えば、トロンビン-アンチトロンビン複合体、フィブリン分解生成物)。
【0090】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿粉末は、再構成されると、解凍血漿、液体血漿、FP24、またはFFPと実質的に同等の生理的活性を示す。様々な実施形態において、血漿粉末は、出発用のネイティブ血漿と生理的に活性な再構成された血漿との間の血漿タンパク質において、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%などの回収率を示す。いくつかの実施形態において、生理的に活性な再構成された血漿は、FFPまたはFP24と同等またはそれより良好なタンパク質レベルを有する。
【0091】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、約65秒以下のaPTT、約31秒以下のPT、及び少なくとも約100mg/dLのフィブリノーゲンレベルによって特徴付けられる。
【0092】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、約35秒以下のaPTT、約15秒以下のPT、及び少なくとも約223mg/dLのフィブリノーゲンレベルによって特徴付けられる。
【0093】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、28~66秒の範囲のaPTT、14~31秒の範囲のPT、及び100~300mg/dLの範囲のフィブリノーゲンレベルによって特徴付けられる。
【0094】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、30~35秒の範囲のaPTT、10~15秒の範囲のPT、及び223~500mg/dLの範囲のフィブリノーゲンレベルによって特徴付けられる。
【0095】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、少なくとも約10IU/dLの第VII因子レベル、少なくとも約10IU/dLの第IX因子レベル、少なくとも約10IU/dLのプロテインCレベル、及び少なくとも約10IU/dLのプロテインSレベルのうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0096】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、少なくとも約30IU/dLの第VII因子レベル、少なくとも約25IU/dLの第IX因子レベル、少なくとも約55IU/dLのプロテインCレベル、及び少なくとも約54IU/dLのプロテインSレベルのうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0097】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、少なくとも約54IU/dLの第VII因子レベル、少なくとも約70IU/dLの第IX因子レベル、少なくとも約74IU/dLのプロテインCレベル、及び少なくとも約61IU/dLのプロテインSのうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0098】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、30~110IU/dLの範囲の第VII因子レベル、25~135IU/dLの範囲の第IX因子レベル、55~130IU/dLの範囲のプロテインCレベル、及び55~110IU/dLの範囲のプロテインSのうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0099】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、34~172IU/dLの範囲の第VII因子レベル、70~141IU/dLの範囲の第IX因子レベル、74~154IU/dLの範囲のプロテインCレベル、及び61~138IU/dLの範囲のプロテインSのうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0100】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、少なくとも約10IU/dLの第V因子レベル、及び少なくとも約10IU/dLの第VIII因子レベルのうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0101】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、少なくとも約30IU/dLの第V因子レベル、及び少なくとも約25IU/dLの第VIII因子レベルのうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0102】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、少なくとも約63IU/dLの第V因子レベル、及び少なくとも約47IU/dLの第VIII因子レベルのうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0103】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、再構成されたとき、63~135IU/dLの範囲の第V因子レベル、47~195IU/dLの範囲の第VIII因子レベルのうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0104】
【0105】
vWFは概して回収が困難であり、全因子の保存における1つの指標となっている。本発明は、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥血漿において、分画の前に、ネイティブ血漿中の活性/未変性vWFの量と比較したときに少なくとも約60%、約70%、少なくとも約80%、約90%、またはそれ以上である量で、活性/未変性vWFの量を回収することを含む。vWF活性は典型的には、当業者に知られているように、フォンウィルブランド因子:リストセチンコファクター[vWF:RCo]アッセイと呼ばれるアッセイで測定される。vWF:RCoアッセイは、抗生物質リストセチンの存在下で、患者の血漿が血小板を凝集させる能力を測定する。リストセチン誘導性凝集の速度は、血漿中のフォンウィルブランド因子の濃度及び機能活性と関係がある。別のアッセイであるvWF抗原アッセイは、試料中に存在するvWFタンパク質の量を測定する。
【0106】
いくつかの実施形態において、生理的な再構成された噴霧乾燥血漿は、約3.5~約5.5g/dLの量のアルブミンを含む。様々な実施形態において、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥血漿のアルブミン濃度は、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥血漿の総血漿タンパク質含量の約40%~約70%、例えば約50%~約60%である。
【0107】
様々な実施形態において、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥血漿中のアルブミンは、血漿中のアルブミンの単位ベースで少なくとも約80%、85%、90%、または少なくとも約95%の活性を保持する。
【0108】
いくつかの実施形態において、生理的な再構成された噴霧乾燥血漿は、約50~300mg/dL、例えば約100~約200mg/dLの量のA1PIを含む。
【0109】
様々な実施形態において、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥血漿中のA1PIは、血漿中のA1PIの単位ベースで少なくとも約80%、85%、90%、または少なくとも約95%の活性を保持する。
【0110】
様々な実施形態において、生理的な再構成された噴霧乾燥血漿は、約500~約1600mg/dL、例えば約700~約1500mg/dLの量のIgGを含む。
【0111】
様々な実施形態において、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥血漿中のIgGは、血漿中のIgGの単位ベースで少なくとも約80%、85%、90%、または少なくとも約95%の活性を保持する。
【0112】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、約30ミクロン以下の平均粒度を有する。いくつかの実施形態において、生理的に活性な噴霧乾燥血漿は、約100ミクロン以下の最大粒度を有する。
【0113】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な再構成された血漿は、少なくとも30重量%の血漿タンパク質を含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、0.09グラムの粉末あたり1mLの流体で再構成したとき、生理的に活性な再構成された血漿は、35mg/mL~60mg/mLの範囲のタンパク質濃度を有する。
【0115】
いくつかの実施形態において、生理的に活性な再構成された血漿は無菌である。
【0116】
生理的に活性な噴霧乾燥血漿を再構成した後、得られた溶液は分画に供される。例示的な分画の様式は、Cohn分画及びその変形形態である。
【0117】
例示的な実施形態において、本発明は、Cohn分画手順(例えば、米国特許第2,390,074号に記載の手順)を用いて、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿を分画する方法を提供し、ここで、本発明の改善は、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿を、分画手順のための出発材料として使用することを含む。
図1は、Cohn分画の方法についての例示的なプロセス図を示したものである。
【0118】
したがって、例えば、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥血漿は、複数のタンパク質画分を含む溶液であって、沈殿が所望される画分の等電点を上回るpHを有する溶液から、沈殿によってタンパク質を分画する方法に供され、当該方法は、溶液のpHを低下させて、沈殿させる所望の画分の等電点と同じまたはその付近にすることと、溶液のイオン強度を0.1~0.2にすることと、溶液の温度をおよそ0℃~溶液の凝固点に低下させることと、タンパク質溶液に、このタンパク質用の有機沈殿剤を加えることであって、加えられる沈殿剤の量が、当該温度のタンパク質溶液から所望の画分のみの沈殿を引き起こすような量である、加えることと、沈殿物を溶液から分離することとを含む。
【0119】
様々な実施形態において、複数のタンパク質画分を含む生理的に活性な再構成されたヒト血漿の溶液から沈殿によってタンパク質を分画する方法であって、溶液のpHを、沈殿させる所望のタンパク質画分の等電点付近にすることと、溶液のイオン強度を0.01~0.2にすることと、溶液の温度を約0℃~溶液の凝固点に低下させることと、タンパク質溶液に、このタンパク質用の有機沈殿剤を加えることであって、加えられる沈殿剤の量、pH、イオン強度、及び温度が、タンパク質溶液から所望の画分のみの沈殿を引き起こすようなものである、加えることと、沈殿物を溶液から分離することとを含む、方法が提供される。
【0120】
様々な実施形態において、再構成された生理的に活性なヒト血漿の溶液からタンパク質を分画する方法において、ステップは、タンパク質の溶液とともにタンパク質用の有機沈殿剤を混合することと、温度を0~-15℃に、沈殿剤の量を10%~40%に、pHを4.4~7に、及びイオン強度を0.05~0.2に調整することと、得られた液体系からそれに不溶である沈殿したタンパク質を分離することとを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、再構成された生理的に活性なヒト血漿の溶液からタンパク質を分画する方法において、ステップは、タンパク質の溶液とともにタンパク質用の有機沈殿剤を混合することと、温度をその凝固点を上回りただし0℃を上回らないように、沈殿剤の量を10%~40%に、pHを4.4~7に、及びイオン強度を0.05~0.2に調整及び維持することと、得られた液体系からそれに不溶である沈殿したタンパク質を分離することとを含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、再構成されたヒト血漿の溶液からタンパク質を分画するための方法において、ステップは、タンパク質の混合物を含む溶液に、電解質とタンパク質用の有機沈殿剤の両方を加えることであって、電解質が、イオン強度を0.01~0.2にするのに十分な量で加えられ、沈殿剤が、所望のタンパク質画分のみの沈殿を引き起こすような量で加えられる、加えることと、溶液のpHを4.4~7に、及び溶液の温度を0~-15℃に調整及び維持して、得られた系からタンパク質を沈殿させることとを含む。
【0123】
例示的な実施形態において、本発明は、再構成されたヒト血漿の溶液からアルブミンを精製及び結晶化する方法であって、不純なアルブミンを、15~40%のアルコールを含むアルコール溶液に、およそ5.5~6.0のpH、0.05~0.5のイオン強度、及び0℃~-5℃の温度で溶解することと、精製アルブミンが晶出するまで当該溶液を当該温度範囲内で維持することとを含む、方法を提供する。
【0124】
例示的な実施形態において、再構成されたヒト血漿の溶液から、制御された温度及び水素イオン濃度で、異なる溶解度を有する物質を分画する方法において、このように形成された沈殿物を除去し、1つ以上の因子の変動により、当該物質の複数の連続した画分を沈殿させる。
【0125】
タンパク質の変性を、通常は変性をもたらす試薬を修飾することによって防止する方法は、半透性の膜を通じた拡散により、再構成されたヒト血漿のタンパク質溶液に試薬を加えることを含む。
【0126】
1つの実施形態において、生理的に活性な再構成されたヒト血漿の溶液からタンパク質を分画するための方法であって、生理的に活性な再構成されたヒト血漿を有機沈殿剤に接触させることを含む、方法が提供される。例示的な実施形態は、溶液中の沈殿剤の量、温度、水素イオン濃度、及びイオン強度のうちの1つ以上を制御することと、得られた沈殿物をタンパク質溶液から分離することと、その溶解度に影響を及ぼす複数の当該因子を変化させることにより、連続したタンパク質画分を分離することとを含む。
【0127】
例示的な実施形態において、有機沈殿剤は、0℃または0℃未満の温度で加えられる。
【0128】
例示的な実施形態において、有機沈殿剤はアルコールである。様々な実施形態において、それは0℃または0℃未満の温度で加えられる。
【0129】
例示的な実施形態において、生理的に活性な再構成されたヒト血漿の溶液からタンパク質を分画する方法であって、ステップとして、有機沈殿剤を含む血漿により、及び当該血漿の温度を変化させることにより、血漿から、複数の異なるタンパク質画分を沈殿させることを含み、温度は徐々に低下され、血漿のアルコール濃度は、連続したタンパク質画分の沈殿とともに増加し、温度及びアルコールのパーセンテージは、任意の所与のタンパク質画分の沈殿に用いられる温度が、溶液に存在するアルコールのパーセンテージにおいて血漿の凝固点に近いがそれを上回るように、相互に関連付けられる、方法が提供される。
【0130】
例示的な有機沈殿剤としては、エタノール、アセトン、ジオキサン、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0131】
例示的な実施形態において、第VIII因子、第IX因子、及びこれらの組合せから選択される、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿から単離されるクリオペースト中のタンパク質は、新鮮凍結血漿からこのタンパク質が単離される収量の80%以上の収量で単離される。様々な実施形態において、当該タンパク質の活性は、新鮮凍結血漿から単離されるタンパク質の活性の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上である。
【0132】
例示的な実施形態において、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿から単離されるIgGは、新鮮凍結血漿からこのタンパク質が単離される収量の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上の収量で単離される。様々な実施形態において、当該IgGの活性は、新鮮凍結血漿から単離されるIgGの活性の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上である。
【0133】
例示的な実施形態において、A1PI、AT-III、及びこれらの組合せから選択される、分画された生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿の画分IV-1から単離されるタンパク質は、新鮮凍結血漿からこのタンパク質が単離される収量の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上の収量で単離される。様々な実施形態において、画分IV-1における生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿から単離されるタンパク質は、新鮮凍結血漿から単離されるタンパク質の活性の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上の活性を有する。
【0134】
いくつかの実施形態において、本発明は、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿の画分Vから単離されるアルブミンが、新鮮凍結血漿からこのタンパク質が単離される収量の80%以上の収量で単離される、方法を提供する。様々な実施形態において、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥ヒト血漿から単離されるアルブミンは、新鮮凍結血漿から単離されるアルブミンの活性の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上の活性を有する。
【0135】
本明細書で提供される方法は、非常に高いレベルの純度を有するA1PI組成物の調製を可能にする。例えば、1つの実施形態において、本明細書で提供されるA1PI組成物中の総タンパク質の少なくとも約95%がA1PIである。他の実施形態において、この組成物中のタンパク質の少なくとも約96%がA1PIであり、または組成物の総タンパク質の少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上がA1PIである。
【0136】
同様に、本明細書で提供される方法は、極めて低いレベルの混入剤を含むA1PI組成物の調製を可能にする。例えば、ある特定の実施形態において、約10mg/L未満の混入物を含むA1PI組成物が提供される。他の実施形態において、A1PI組成物は、約5mg/L未満の混入物、好ましくは約3mg/L未満の混入物、最も好ましくは約2mg/L未満の混入物を含むことになる。
【0137】
様々な実施形態において、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥血漿中のA1PIは、血漿中のA1PIの単位ベースで少なくとも約80%、85%、90%、または少なくとも約95%の活性を保持する。
【0138】
1つの実施形態において、本発明は、約150g/L~約250g/Lのタンパク質濃度を含む水性IgG組成物を提供する。ある特定の実施形態において、IgG組成物のタンパク質濃度は、約175g/L~約225g/L、または約200g/L~約225g/L、またはこれらの範囲内の任意の好適な濃度、例えば、150g/L、155g/L、160g/L、165g/L、170g/L、175g/L、180g/L、185g/L、190g/L、195g/L、200g/L、205g/L、210g/L、215g/L、220g/L、225g/L、230g/L、235g/L、240g/L、245g/L、250g/L、もしくはそれ以上、または約150g/L、155g/L、160g/L、165g/L、170g/L、175g/L、180g/L、185g/L、190g/L、195g/L、200g/L、205g/L、210g/L、215g/L、220g/L、225g/L、230g/L、235g/L、240g/L、245g/L、250g/L、もしくはそれ以上である。好ましい実施形態において、水性IgG組成物は、200g/Lまたは約200g/Lのタンパク質濃度を含む。特に好ましい実施形態において、水性IgG組成物は、204g/Lまたは約204g/Lのタンパク質濃度を含む。
【0139】
本明細書で提供される方法は、非常に高いレベルの純度を有するIgG組成物の調製を可能にする。例えば、1つの実施形態において、本明細書で提供されるIgG組成物中の総タンパク質の少なくとも約95%がIgGとなる。他の実施形態において、タンパク質の少なくとも約96%がIgGであり、または組成物の総タンパク質の少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上がIgGとなる。
【0140】
同様に、本明細書で提供される方法は、極めて低いレベルの混入物を含むIgG組成物の調製を可能にする。例えば、ある特定の実施形態において、約100mg/L未満のIgAを含むIgG組成物が提供される。他の実施形態において、IgG組成物は、約50mg/L未満のIgA、好ましくは約35mg/L未満のIgA、最も好ましくは約20mg/L未満のIgAを含むことになる。
【0141】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の方法によって調製された多価及び/または高度免疫の免疫グロブリン(IgG)の調製物を提供する。様々な実施形態において、IgGは、抗RhO高度免疫免疫グロブリン、抗B型肝炎高度免疫免疫グロブリン、抗狂犬病高度免疫免疫グロブリン、抗破傷風IgG高度免疫免疫グロブリン、及びこれらの任意の2つ以上の組合せから選択される。
【0142】
様々な実施形態において、生理的に活性な再構成された噴霧乾燥血漿中のIgGは、血漿中のIgGの単位ベースで少なくとも約80%、85%、90%、または少なくとも約95%の活性を保持する。
【0143】
噴霧乾燥器及び噴霧乾燥プロセス
再構成され、続いて分画される生理的に活性な乾燥血漿は、噴霧乾燥器システムで噴霧乾燥によって乾燥される。概して、噴霧乾燥器システム(噴霧乾燥器デバイス)が、液体試料(例えば、血漿)を噴霧乾燥するために提供される。1つの実施形態において、本開示の溶液によって再構成するために血漿を噴霧乾燥するために使用される噴霧乾燥器システムは、噴霧乾燥器デバイス及び噴霧乾燥器アセンブリを含む。噴霧乾燥器デバイスは、1つの態様において、エアロゾル化ガス、乾燥ガス、及び血漿液体の流れをそれぞれの供給源から受け取るように適合され、噴霧乾燥器アセンブリと連結している。噴霧乾燥器デバイスはさらに、受け取ったエアロゾル化ガス、乾燥ガス、及び血漿を噴霧乾燥器アセンブリに送ることができる。血漿の噴霧乾燥は、噴霧乾燥器デバイスの制御下、噴霧乾燥器アセンブリで実施される。任意の好適な噴霧乾燥システムを、本発明で使用する血漿の乾燥に使用することができる。例示として、好適な噴霧乾燥器を以下に説明する。
【0144】
本発明で使用する例示的な噴霧乾燥装置を
図2に示す。例示的な噴霧乾燥プロセスパラメーターを
図4に示す。
【0145】
ある特定の実施形態において、噴霧乾燥器アセンブリは、無菌の密閉封止された筐体本体と、筐体本体が取り付けられるフレームとを含む。フレームは、アセンブリの第1、第2、第3の部分を規定し、それぞれの移行ゾーンによって区切られている。乾燥ガス入口は、筐体本体の第1の端部に隣接するアセンブリの第1の部分内に提供される。
【0146】
噴霧乾燥ヘッドがさらに、アセンブリの第1の部分と第2の部分との間の移行ゾーン内でフレームに取り付けられている。この位置は、アセンブリ内の乾燥ガスの初期流路内でもある。噴霧乾燥中、噴霧乾燥ヘッドは、エアロゾル化ガス及び血漿の流れを受け取り、血漿をエアロゾル化ガスでエアロゾル化してエアロゾル化血漿を形成する。乾燥ガスはさらに、噴霧乾燥ヘッドを通過して、アセンブリの第2の部分内で乾燥のためにエアロゾル化血漿と混合する。乾燥チャンバーとして機能するアセンブリの第2の部分では、エアロゾル化血漿及び乾燥ガスの接触によってエアロゾル化血漿から乾燥ガスに水分が移動し、乾燥血漿及び湿った乾燥ガスが得られる。
【0147】
代替的な実施形態において、エアロゾル化ガスが省略されてもよく、噴霧乾燥器アセンブリヘッドは、血漿の流れを受け取り霧化するエアロゾル発生器を含むことができる。エアロゾル発生器の例としては、限定されるものではないが、超音波霧化トランスデューサー、超音波加湿トランスデューサー、及びピエゾ超音波噴霧器を挙げることができる。有益なことに、このような構成により、エアロゾル化ガスの必要性がなくなり、噴霧乾燥器デバイス及びアセンブリの設計が簡素化され、噴霧乾燥器システムのコストが低下する。
【0148】
1つの実施形態における噴霧乾燥ヘッドは、乾燥チャンバー内の乾燥ガスの流れを誘導するように適合されている。例えば、噴霧乾燥ヘッドは、乾燥ガス入口から乾燥ガスの流れを受け取るフィンによって区切られた開口部を含む。フィンの向きによって乾燥ガスを選択された流路(例えば、らせん状)に誘導することができる。有益なことには、乾燥ガスの流路を制御することにより、乾燥ガス及びエアロゾル化血漿が乾燥チャンバー内で接触する経路長が増加し、血漿を乾燥する時間が低減される。
【0149】
生理的に活性な乾燥血漿及び湿った乾燥ガスは、次に収集チャンバーを収容するアセンブリの第3の部分に流入する。収集チャンバー内では、乾燥血漿が、フィルターを用いて湿った乾燥ガスから単離され、収集される。例えば、1つの実施形態におけるフィルターは、1つの側面は湿った空気及び乾燥血漿の流れを受け取るために開放され、残りの側面は閉鎖されている。湿った乾燥ガスはフィルターを通り、噴霧乾燥器アセンブリから排気される。
【0150】
代替的な実施形態において、フィルターは、収集チャンバーを2つの部分に区切るように適合されている。収集チャンバーの第1の部分は、乾燥チャンバーに隣接しており、湿った乾燥ガス及び乾燥血漿の流れを受け取る。乾燥血漿はこの収集チャンバーの第1の部分で収集され、一方、湿った空気はフィルターを通り、噴霧乾燥器アセンブリの第2の部分と流体的に連絡する排気口を介し、噴霧乾燥器アセンブリから排気される。
【0151】
生理的に活性な乾燥血漿を収集した後、収集チャンバーは噴霧乾燥器アセンブリから切り離され、密閉封止される。このようにして、密閉された収集チャンバーは、乾燥血漿の使用時までの保存に使用される。収集チャンバーは、血漿を再構成するために収集室に本発明の再構成溶液を加え、使用するために再構成された血漿を除去することを可能にする、複数のポートを含む。収集チャンバーはさらに、再構成のための再構成溶液を含む密閉容器に取り付けることができる。
【0152】
血漿などの輸血製剤を取り扱う際には、輸血製剤は、採取、保管、及び輸血中にいかなる混入物にも曝露してはならない。したがって、噴霧乾燥器アセンブリは、1つの実施形態において、噴霧乾燥器デバイスと可逆的に連結するように適合される。例えば、噴霧乾燥器アセンブリは、乾燥ガス入口付近で噴霧乾燥器装置と連結される。有益なことには、このように構成することで、噴霧乾燥器アセンブリは反復使用にも単回使用にも適応する。例えば、1つの実施形態において、噴霧乾燥器アセンブリ及び噴霧乾燥ヘッドは、各噴霧乾燥操作の前に滅菌されるオートクレーブ可能な材料(例えば、抗細菌鋼、抗細菌合金など)から形成される。代替的な実施形態において、噴霧乾燥器ヘッド及び噴霧乾燥チャンバーは、各噴霧乾燥操作の前にオートクレーブされ、各噴霧乾燥操作の後に廃棄される使い捨て材料(例えば、ポリマー)から形成される。
【0153】
噴霧乾燥のための装置及び方法は、当技術分野で知られている。噴霧乾燥の方法及び装置はさらに、米国特許第8,469,202号、同第8,533,971号、同第8,407,912号、同第8,595,950号、同第8,601,712号、同第8,533,972号、同第8,434,242号、米国特許公開第2016/0082044号、同第20160084572号、同第2010/0108183号、同第2011/0142885号、同第2013/0000774号、同第2013/0126101号、同第2014/0083627号、同第2014/0083628号、及び同第2014/0088768号に記載されており、これらの教示内容の全体を、あらゆる目的において参照により本明細書に援用する。
【0154】
以下の実施例は、本発明の例示的な実施形態を説明するために提供するものであり、その範囲を定義または限定するものではない。
【実施例】
【0155】
実施例1
噴霧乾燥の完全なプロセスは、一連の4つのプロセスを伴う。分散は、圧力ノズル、二流体ノズル、回転ディスクアトマイザー、または超音波ノズルを用いて達成される。アトマイザータイプの選択は、フィードの性質及び量、ならびに乾燥製剤の所望される特性に依存する。分散のためのエネルギーが高いほど、生成される液滴は小さくなる。噴霧が乾燥空気に接触する方式は、乾燥中の液滴の挙動に影響を及ぼすことによって乾燥製剤の特性に大きく関係するため、噴霧乾燥における重要な因子である。一例では、材料は、装置を通る熱風の流れと同じ方向に噴霧される。液滴は、最も湿っているときに高温乾燥ガスに接触する。別の例では、材料は、高温ガスの流れと反対の方向に噴霧される。高温ガスは上方に流れ、製剤はますます熱風を通って回収トレイに落下する。残留水分がなくなり、製剤は非常に高温になる。この方法は、熱的に安定な製剤にのみ適している。また別の実施形態において、両方の噴霧方法の利点が組み合わされる。製剤は上向きに噴霧され、短時間のみ高温ゾーンにとどまって残留水分が除去される。次いで、重力によって製剤が低温ゾーンに引き込まれる。この実施形態は、製剤が高温ゾーンに存在するのが短時間にとどまり、熱による影響を受けにくいため、特に有利である。
【0156】
噴霧乾燥法では、乾燥媒体として主に空気が使用されるが、窒素などの他のガスも使用することができる。ガス流を電気またはバーナーで加熱し、このプロセスの後は大気中に排気する。加熱媒体をリサイクルし再利用する場合、典型的には、空気の代わりに窒素などの不活性ガスを使用する。可燃性溶媒、毒性製品、または酸素感受性の製品を処理するときは、窒素の使用が有利である。
【0157】
噴霧乾燥プロセス中、噴霧の液滴が乾燥ガスに接触するとすぐに、液滴表面に迅速に確立される飽和蒸気膜から蒸発が起こる。高い比表面積ならびに既存の温度及び水分の勾配により、熱及び物質が移動した結果、効率的な乾燥が得られる。蒸発によって液滴が冷却され、そのため熱負荷が小さくなる。乾燥チャンバーの設計及び空気流速度が、乾燥チャンバー内での液滴の滞留時間をもたらし、製剤の温度が出口乾燥空気温度まで上昇する前に、所望の液滴水分除去が完了し、製剤が乾燥器から取り出されるようにする。したがって、製剤に熱損傷を与える可能性はわずかである。
【0158】
2つのシステムを使用して、乾燥媒体から製剤を分離する。最初に、乾燥チャンバーの底部で乾燥製剤の一次分離を行い、次に分離装置内の乾燥製剤の全回収を行う。1つの実施形態において、サイクロンが材料の収集に使用される。慣性力に基づき、粒子は、下降する歪みとしてサイクロン壁に分離され、除去される。また、電気集塵器、繊維(バッグ)フィルター、またはスクラバーのような湿式集塵機などの他のシステムを使用して乾燥製剤を収集することもできる。
【0159】
本発明で使用されるように、噴霧乾燥は、凍結乾燥(フリーズドライ)などの他の乾燥法にまさる利点を提供する。噴霧乾燥を使用することで、凍結乾燥法よりも安定し、凝集が少なく、分散性が良好な製剤が得られる。噴霧乾燥によって生成された高度に分散した粒子は、迅速な再水和速度を可能にし、これは利用可能な表面積が大きくなった結果であり得る。これに対し、凍結乾燥製剤の凝集しやすい性質は、本発明の方法で乾燥される血液製剤における再水和時間を実質的に長くする結果をもたらす。血液製剤の多くの輸血及び他の用途は時間的制約が大きいため、この高い再水和速度は、戦地及び応急処置の状況で重要な利点となり得る。以下でより詳細に説明するように、本発明の噴霧乾燥固定血小板は、再水和して、再水和された固定血小板組成物を形成することができ、当該組成物は、固定血小板の同等の再水和された凍結乾燥組成物の濁度(A.sub.500)値より小さい値を有する。
【0160】
実施例2
1.使用する噴霧乾燥装置
4M8-Trix噴霧乾燥器(ProCepT,Zelzate,Belgium)
● 乾燥チャンバーの寸法:
○ ストレート乾燥チャンバー:高さ60cm、直径18.4cm
・ 1段または2段のストレート乾燥チャンバー
○ 円錐形乾燥チャンバー:高さ75cm、直径18.4cm
○ 乾燥チャンバーの全長:±135cm~195cm
● 二流体ノズル
○ 流体は噴霧乾燥器の上部から12ローラー蠕動ポンプ及びTygon(登録商標)MHLLチューブ(内径:1.14mmまたは2.79mm)(Isamprene外側コーティング)によって進入
● 並流空気流
● サイクロンに付属するリザーバーでの粉末収集
● 水蒸発能力:最大3L/時
● プロセスパラメーター
● 空気流:0.2m3/分~1m3/分
● 温度(℃):最大200℃
● 二流体ノズル先端(mm):0.2-0.4-0.6-0.8-1.0-1.2mm
● 空気/液体比:
○ ノズルエアー速度(L/分):最大25L/分
○ 噴霧速度(g/分):0.1~15g/分
【0161】
2.実験
60Lの凍結血漿を-20℃で保存する。
【0162】
a.噴霧乾燥前の血漿前処理
噴霧乾燥を行う血漿を入れた血漿バッグを冷凍庫(-20℃)から取り出した後、水浴を用いて血漿バッグを急速解凍して28~30℃にする。次に、解凍した血漿をプールする。プールした血漿を連続的に撹拌しながら8℃で保存する。必要とされるプール血漿は、5~8℃で3日間維持することができる。噴霧乾燥実行のインフィードに必要な量のプールからの血漿を、ウォーターバスを用いて28℃にし、噴霧乾燥中は穏やかに撹拌し、発泡がないことを確実にする。血漿は新鮮血漿と同等の粘度を有する。
【0163】
Haake Mars III rheometer(Thermo Scientific,MA,USA)を用いて血漿プールの粘度を定量する。また、血漿プールの濁度も測定する。血漿プールの粘度及び濁度は、28℃で測定する。
【0164】
b.噴霧乾燥
フェーズ1の噴霧乾燥は、表1に示すように、いくつかの連続したプロトコルに分けられる。(60L中)30Lをプロトコル1及び1.5に使用する。
【0165】
【0166】
この実施例では、噴霧乾燥に必要とされる量の血漿を(上記で概説のように)プールによって構築し、プロトコル全体に均質な血漿が確実に使用されるようにした。噴霧乾燥プロセスパラメーター及び2水準の一部実施要因アプローチ(すなわち、24-1+3の中心点実験=11の実験)を用いて変化させるそれらの範囲を以下の表2に列挙する。
【0167】
【0168】
このプロトコルは3つの反復実験を含む。反復実験の1つは実験の開始時、1つは中間時、1つは終了時に実行した。これにより、プール血漿の時間効果を評価することができた。
【0169】
これらのプロセスパラメーター範囲は、文献情報1、2に基づき選択した。この文献では、Buchi噴霧乾燥システムを用いて、ある特定のプロセス設定下で血漿を噴霧乾燥させていた。これらの設定を、この試験で使用した4M8-Trix噴霧乾燥器(ProCepT;Zelzate,Belgium)上で適用可能なプロセスパラメーター範囲に変換した。
【0170】
評価した応答は以下の通りであった:加工性、収量、残留水分量、溶解性/再懸濁性、及び試験パネル。これらの応答を測定するために、実験を実行するごとに5.25gの噴霧乾燥粉末を使用した(すなわち、試験パネルに3.75g、2回の残留水分測定に1.50g)。
【0171】
潜在的な最大噴霧乾燥収量損失25%を考慮し、また1Lの血漿が50gのタンパク質を含むことを考慮すると、これは、実験を実行するごとに140mLの血漿を噴霧乾燥して、少なくとも5.25gの噴霧乾燥粉末が得られることを意味する(75%(140ml(50g/1000ml))=5.25g)。11回の実験実行で、およそ1600mLの血漿プールを噴霧乾燥実験に利用する。さらに、参照分析用に、噴霧乾燥前に1日当たり140mLのプール血漿(すなわち、参照分析用に合計でおよそ280mLのプール血漿)を分離する。およそ1900mLの血漿プールを準備する(すなわち血漿バッグ3個)。11回の噴霧乾燥実行(実行ごとに140mlのプール血漿)で2日(すなわち、約1時間/実行)かかる。
【0172】
図3は、例示的な噴霧乾燥実行の詳細と、再構成に関するデータと、噴霧乾燥血漿及び再構成された血漿の特性とを示したものである。
【0173】
c.参考文献
1https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3891503/
2http://patft.uspto.gov/netacgi/nph-Parser?Sect1=PTO2&Sect2=HITOFF&p=1&u=%2Fnetahtml%2FPTO%2Fsearch-adv.htm&r=4&f=G&l=50&d=PTXT&S1=%22dried+human+plasma%22&OS=%22dried+human+plasma%22&RS=%22dried+human+plasma%22
【0174】
d.噴霧乾燥粉末の評価
各噴霧乾燥実験について、噴霧乾燥粉末の加工性、収量、及び残留水分量を分析する。噴霧乾燥粉末の残りは、当技術分野で一般的に認められている方法によって再構成及び特性評価に供する。
図3。当技術分野で認められている様々な基準に従って噴霧乾燥血漿を特性評価することにより、
図4A及び
図4Bに示す結果が得られた。
【0175】
注目すべきことには、噴霧乾燥血漿(PptG)ペーストの色及び質感は、対照からのPptGペーストと同等である。このプロセスでは、II+III抽出物と対照との間で同等のIgG回収率が示された。噴霧乾燥血漿は、28℃または1℃で懸濁したときに妥当な沈殿比率を示した。対照試料及び噴霧乾燥懸濁液は、遠心分離の前後で同様のフィブリノーゲン結果を示した。噴霧乾燥懸濁液は、対照よりも有意に低い濁度値を示した。全ての条件で、遠心分離の前後で同様のIgGの結果が示された。
【0176】
実施例3
この実施例は、本発明の例示的なプロセス(例えば、
図6に記載のプロセス)の条件を提供する。
【0177】
【0178】
3.2 結果
この試験の結果は、
図7A~7Dでまとめられている。
【0179】
例示的な実験実行では、噴霧乾燥血漿における画分Iペースト回収率は、対照における回収率よりも高かった。これは、クリオプレシピテーションのより低い回収率に起因した(クリオは画分I沈殿に持ち越された)。噴霧乾燥血漿を濃縮(およそ25%)し、クリオ及びFr Iの沈殿及び分離を1ステップで行った(CRPは直接Fr1ステップへ)。この試験から得られたPpt Gは、対照の凍結供給源血漿と同等であった。これは、このプロセスが、クリオ及び画分Iの除去を一緒に組み合わせる能力を有することを示すものである。
【0180】
様々な例示的な実施形態及び実施例を参照しながら本発明を説明してきた。当業者には明らかであろうように、本発明の他の実施形態及び変形形態は、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって考案され得るものである。添付の特許請求の範囲は、このような全ての実施形態及び同等の変形形態を含むように解釈するものとする。
【0181】
本明細書で引用した各特許、特許出願、及び刊行物の開示内容は、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【国際調査報告】