(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】リサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、並びにそれを用いたリサイクルプラスチック、および成形品
(51)【国際特許分類】
C08G 64/42 20060101AFI20231025BHJP
C07C 39/16 20060101ALI20231025BHJP
C07C 37/72 20060101ALI20231025BHJP
C08J 11/16 20060101ALI20231025BHJP
C08G 64/04 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C08G64/42
C07C39/16
C07C37/72
C08J11/16 ZAB
C08G64/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519399
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 KR2022010315
(87)【国際公開番号】W WO2023038270
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122001
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122002
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122003
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122004
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0128892
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0136153
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ウンチュ
(72)【発明者】
【氏名】イ、キ-チェ
(72)【発明者】
【氏名】ペ、チュンムン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チョンピン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ムホ
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
4J029
【Fターム(参考)】
4F401AA23
4F401BA06
4F401BB12
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4F401CA68
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4H006AA02
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4H006FE13
4J029AA10
4J029AB05
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4J029AD10
4J029AE01
4J029BB12A
4J029BB13A
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4J029HA01
4J029HC01
4J029HC03
4J029HC04A
4J029KG01
4J029KG02
(57)【要約】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより回収された高純度の芳香族ジオール化合物を含有するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、並びにそれを用いたリサイクルプラスチック、および成形品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジオール化合物を含み、
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、下記式1による不純物比率が1.2%以下であり、
下記式2による芳香族ジオール化合物の収率が65%超であり、
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物:
[式1]
不純物比率=[(液体クロマトグラフィー上の全体のピーク面積-液体クロマトグラフィー上のビスフェノールAのピーク面積)/液体クロマトグラフィー上の全体のピーク面積]×100
[式2]
収率(%)=W
1/W
0
上記式2中、W
0は、ポリカーボネート系樹脂の100%分解時に得られる芳香族ジオール化合物の質量であり、W
1は、実際得られた芳香族ジオール化合物の質量である。
【請求項2】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、色座標L*が94以上である、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項3】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、色座標a*が0.5以下である、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項4】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、色座標b*が0~4.2である、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項5】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、芳香族ジオール化合物の純度が99%以上である、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項6】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ジエチルカーボネートが副産物として得られ、前記ジエチルカーボネートは、ポリカーボネート系樹脂から回収されることを特徴とする、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項7】
ポリカーボネート系樹脂を解重合反応させる段階と、
前記解重合反応生成物のpHが12以上となるように塩基を添加する段階と、
前記塩基の添加後に水を添加して解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階と、
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物のpHが4以下となるように酸を添加する段階と、を含む、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項8】
前記解重合反応生成物のpHが12以上となるように塩基を添加する段階で、
前記解重合反応生成物に含有された芳香族ジオール化合物が芳香族ジオール化合物の塩に転換される、請求項7に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項9】
前記塩基の添加後に水を添加して解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階で、
芳香族ジオール化合物の塩が含まれている水層、およびジエチルカーボネートが含まれている有機溶媒層を分離させる、請求項7に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項10】
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物のpHが4以下となるように酸を添加する段階で、
前記解重合反応生成物に含有された芳香族ジオール化合物の塩が芳香族ジオール化合物に転換される、請求項7に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項11】
前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応は、
エタノールを含む溶媒下で行うことを特徴とする、請求項7に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項12】
前記エタノールの含有量は、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して10モル~15モルである、請求項11に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項13】
前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応は、
ポリカーボネート系樹脂1モルに対して0.5モル以下の含有量で塩基を反応させて行うことを特徴とする、請求項7に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項14】
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物のpHが4以下となるように酸を添加する段階後に、
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階をさらに含む、請求項7に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項15】
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階は、
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の再結晶段階を含む、請求項14に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項16】
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階は、
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に吸着精製段階を含む、請求項14に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項17】
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階は、
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の洗浄段階を含む、請求項14に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含む、リサイクルプラスチック。
【請求項19】
請求項18に記載のリサイクルプラスチックを含む、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年9月13日付の韓国特許出願第10-2021-0122001号、2021年9月13日付の韓国特許出願第10-2021-0122002号、2021年9月13日付の韓国特許出願第10-2021-0122003号、2021年9月13日付の韓国特許出願第10-2021-0122004号、2021年9月29日付の韓国特許出願第10-2021-0128892号、および2021年10月13日付の韓国特許出願第10-2021-0136153号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより回収された高純度の芳香族ジオール化合物を含有するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、並びにそれを用いたリサイクルプラスチック、および成形品に関する。
【0003】
また、本発明は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより回収された高付加価値の副産物を含有するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、並びにそれを用いたリサイクルプラスチック、および成形品に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリカーボネート(Polycarbonate)は熱可塑性高分子であって、優れた透明性、軟性および相対的に低い生産費など優れた特性を有するプラスチックである。
【0005】
多様な用途に幅広く使用されるポリカーボネートであるが、廃処理時の環境と健康に関する懸念は持続的に提起されてきた。
【0006】
現在、物理的なリサイクル方法が行われているが、この場合、品質低下を伴う問題があるので、ポリカーボネートのケミカルリサイクルに対する研究が進められている。
【0007】
ポリカーボネートの化学的分解とは、ポリカーボネートの分解によりモノマーである芳香族ジオール化合物(例えば、ビスフェノールA(Bisphenol A;BPA))を得た後、これを再び重合に活用して高純度のポリカーボネートを得ることをいう。
【0008】
このような化学的分解としては、代表的に熱分解、加水分解およびアルコール分解が知られている。この中で、最も普遍的な方法が塩基触媒を活用したアルコール分解であるが、メタノール分解の場合、人体に有害なメタノールを使用するという問題があり、エタノールの場合は高温高圧の条件を必要とし、収得率が高くない問題がある。
【0009】
また、有機触媒を利用したアルコール分解方法が知られているが、経済的な部分において短所があるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより回収された高純度の芳香族ジオール化合物を確保できるリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法、並びにリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を用いたリサイクルプラスチック、および成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、芳香族ジオール化合物を含み、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、下記式1による不純物比率が1.2%以下であり、下記式2による芳香族ジオール化合物の収率が65%超であり、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物を提供する。
【0013】
[式1]
不純物比率=[(液体クロマトグラフィー上の全体のピーク面積-液体クロマトグラフィー上のビスフェノールAのピーク面積)/液体クロマトグラフィー上の全体のピーク面積]×100
【0014】
[式2]
収率(%)=W1/W0
上記式2中、W0は、ポリカーボネート系樹脂の100%分解時に得られる芳香族ジオール化合物の質量であり、W1は、実際得られた芳香族ジオール化合物の質量である。
【0015】
また、本発明は、ポリカーボネート系樹脂を解重合反応させる段階と、前記解重合反応生成物のpHが12以上になるように塩基を添加する段階と、前記塩基の添加後に水を添加して解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階と、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物のpHが4以下となるように酸を添加する段階と、を含む、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含むリサイクルプラスチックを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記リサイクルプラスチックを含む成形品を提供する。
【0018】
以下、発明の具体的な実施形態によるリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、並びにそれを用いたリサイクルプラスチック、および成形品についてより詳細に説明する。
【0019】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0020】
本明細書で使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。
【0021】
本明細書で使用される「pH」の意味は、物質の酸性とアルカリ性の程度を示す数値である水素イオン濃度(pH)である。水素イオンの解離濃度はログの逆数を取って示した値から求めることができ、物質の酸と塩基の強度を表す尺度として用いられる。
【0022】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0023】
そして、本明細書で「第1」および「第2」のように序数を含む用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と名付けられてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と名付けられてもよい。
【0024】
1.リサイクルプラスチック合成用単量体組成物
発明の一実施形態によれば、芳香族ジオール化合物を含み、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、下記式1による不純物比率が1.2%以下であり、下記式2による芳香族ジオール化合物の収率が65%超であり、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物を提供することができる。
【0025】
[式1]
不純物比率=[(液体クロマトグラフィー上の全体のピーク面積-液体クロマトグラフィー上のビスフェノールAのピーク面積)/液体クロマトグラフィー上の全体のピーク面積]×100
【0026】
[式2]
収率(%)=W1/W0
上記式2中、W0は、ポリカーボネート系樹脂の100%分解時に得られる芳香族ジオール化合物の質量であり、W1は、実際得られた芳香族ジオール化合物の質量である。
【0027】
本発明者らは、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより回収されたにもかかわらず、主な回収対象である芳香族ジオール化合物が高純度かつ高収率で確保されることによって、これを用いてポリカーボネート系樹脂の合成時に優れた物性の実現が可能であることを実験により確認して発明を完成した。
【0028】
特に、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)とともにジエチルカーボネートを含み、前記ジエチルカーボネートはポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第2組成物)は、後述するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法で同時にそれぞれ得られる。
【0029】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより芳香族ジオール化合物を含む高純度の第1組成物を得ると同時に、高付加価値の副産物であるジエチルカーボネートを含む第2組成物を得ることもできる技術的な特長点を有する。
【0030】
具体的には、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする。すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を得るためにポリカーボネート系樹脂から回収を行った結果、芳香族ジオール化合物が含有されたリサイクルプラスチック合成用単量体組成物が共に得られることを意味する。
【0031】
前記ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート繰り返し単位を含有する単独重合体または共重合体をすべて含む意味であり、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体を含む単量体の重合反応または共重合反応により得られる反応生成物を総称する。芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種のみを使用して得られた1種のカーボネート繰り返し単位を含有する場合、単独重合体が合成され得る。また、前記単量体として芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体2種以上を使用するか、芳香族ジオール化合物2種以上およびカーボネート前駆体1種を使用するか、芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種以外にその他のジオール1種以上を使用して2種以上のカーボネートが含有される場合、共重合体が合成され得る。前記単独重合体または共重合体は分子量範囲による低分子化合物、オリゴマー、高分子をすべて含むことができる。
【0032】
また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)は、芳香族ジオール化合物を含むことができる。前記芳香族ジオール化合物の具体的な例として、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4―ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、またはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。好ましくは、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物(第1組成物)の芳香族ジオール化合物は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)であり得る。
【0033】
前記芳香族ジオール化合物は、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の回収に使用されたポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする。すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を得るためにポリカーボネート系樹脂から回収を行った結果、芳香族ジオール化合物も共に得られることを意味する。したがって、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を製造するためにポリカーボネート系樹脂からの回収とは別に外部で新規の芳香族ジオール化合物を添加させる場合、本発明の芳香族ジオール化合物の範疇に含まれない。
【0034】
具体的には、前記ポリカーボネート系樹脂から回収されたとは、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応により得られたことを意味する。前記解重合反応は酸性、中性、塩基性下で行われることができ、特に、塩基性(アルカリ)条件下で解重合反応を行うことができる。特に、前記解重合反応は、後述のようにエタノール溶媒下で行うことが好ましい。
【0035】
一方、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、色座標b*値が0~4.2、または1~4、または1~3、または1.5~2.5、または1.5~2.4、または1.57~2.24であり得る。また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、色座標L*が94以上、95以上、または100以下、または94~100、または94~98、または95~100、または95~98、または95.9~97.1であり得る。また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、色座標a*が0.5以下、または0.3以下、または0以上、または0.01以上、または0~0.5、または0~0.3、または0.01~0.5、または0.01~0.3、または0.01~0.25であり得る。
【0036】
本発明において、「色座標」とは、CIE(国際照明委員会、Commossion International de l’Eclairage)で規定した色相値であるCIE Lab色空間での座標を意味し、CIE色空間での任意の位置はL*、a*、b*の三つの座標値で表現される。
【0037】
ここで、L*値は明るさを示すものであり、L*=0であると黒色(black)を示し、L*=100であると白色(white)を示す。また、a*値は、該当色座標を有する色が純マゼンタ(pure magenta)と純緑色(pure green)のどちらに偏っているかを示し、b*値は、該当色座標を有する色が純黄色(pure yellow)と純青色(pure blue)のどちらに偏っているかを示す。
【0038】
具体的には、前記a*値は-a~+aの範囲を有する。a*の最大値(a*max)は純赤色(pure red)を示し、a*の最小値(a*min)は純緑色(pure green)を示す。また、前記b*値は-b~+bの範囲を有する。b*の最大値(b*max)は純黄色(pure yellow)を示し、b*の最小値(b*min)は純青色(pure blue)を示す。例えば、b*値が負数の場合は純青色に偏った色相であり、正数の場合は純黄色に偏った色相を意味する。b*=50とb*=80を比較したとき、b*=80がb*=50より純黄色に近く位置することを意味する。
【0039】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色座標a*値が0.5超と過度に増加するか、色座標L*値が94未満と過度に減少すると、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物のカラー特性が不良になる。
【0040】
一方、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色座標b*値が4.2超と過度に増加すると、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色相が黄色に偏り過ぎてカラー特性が不良になる。
【0041】
また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色座標b*値が-0未満と過度に減少すると、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色相が青色に偏り過ぎてカラー特性が不良になる。
【0042】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色座標L*、a*、b*の値を測定する方法の例は特に限定されず、プラスチック分野の多様なカラー特性の測定方法を制限なく適用することができる。
【0043】
ただし、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の色座標L*、a*、b*の値を測定する方法の一例を挙げると、HunterLab UltraScan PRO Spectrophotometer装置を用いて反射モードで測定することができる。
【0044】
一方、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、芳香族ジオール化合物の純度が99%以上、または100%以下、または99%~100%、または99%~99.9%、または99%~99.8%、または99%~99.7%であり得る。
【0045】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の芳香族ジオール化合物の純度を測定する方法の例は特に限定されるものではなく、例えば、1H NMR、ICP-MS分析、HPLC分析、UPLC分析などを制限なく用いることができる。前記NMR、ICP-MS、HPLC、UPLCの具体的な方法、条件、装置などは従来より知られている多様な内容を制限なく適用することができる。
【0046】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の芳香族ジオール化合物の純度を測定する方法の一例を挙げると、常圧、20~30℃の条件で前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を1w%でアセトニトリル(Acetonitrile)(ACN)溶媒に溶解させた後、ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 1.7μm(2.1*50mm カラム(column))を使用してWaters HPLCシステムでUPLC(ultra performance liquid chromatography)を用いてビスフェノールA(BPA)の純度を分析した。
【0047】
このように、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物で、主な回収目標物質である芳香族ジオール化合物の純度が99%以上と極めて増加して、その他の不純物を最少化することによって、これを用いてポリカーボネート系樹脂を合成すると優れた物性の実現が可能である。
【0048】
一方、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、芳香族ジオール化合物以外の不純物をさらに含むことができる。前記不純物は、本発明の主な回収目標物質である芳香族ジオール化合物を除いたすべての物質を意味し、その具体的な種類は特に限定されないが、例えば、p-tert-ブチルフェノール(p-tert-butylphenol)が挙げられる。
【0049】
また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、上記式1による不純物比率が1.2%以下、または0.9%以下、または0.8%以下、または0.7%以下、または0.5%以下、または0.1%以上、または0.1%~1.2%、または0.1%~0.9%、または0.1%~0.8%、または0.1%~0.7%、または0.1%~0.5%であり得る。
【0050】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の不純物比率を測定する方法の例は特に限定されるものではなく、例えば、LC分析を用いることができる。前記LCの具体的な方法、条件、装置などは従来より知られている多様な内容を制限なく適用することができる。
【0051】
このように、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物で、主な回収目標物質である芳香族ジオール化合物以外の不純物の比率が1.2%以下と極めて減少して、これを用いてポリカーボネート系樹脂を合成すると優れた物性の実現が可能である。
【0052】
一方、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、芳香族ジオール化合物の収率が65%超、または67%以上、または68%以上、または100%以下、または65%超100%以下、または67%~100%、または68%~100%であり得る。前記芳香族ジオール化合物の収率が65%超と高くなることは、後述するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法によるとみなされる。
【0053】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の芳香族ジオール化合物の収率を測定する方法の例は特に限定されず、例えば、下記式2により計算することができる。
【0054】
[式2]
収率(%)=W1/W0
上記式2中、W0は、ポリカーボネート系樹脂の100%分解時に得られる芳香族ジオール化合物の質量であり、W1は、実際得られた芳香族ジオール化合物の質量である。
【0055】
上記式2中の芳香族ジオール化合物の質量は、一般に知られている多様な質量測定方法を制限なく使用することができ、一例を挙げると、てんびんを使用することができる。
【0056】
このように、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物で主な回収目標物質である芳香族ジオール化合物の収率が65%超と極めて増加して、ポリカーボネート系樹脂に対するリサイクル工程の効率性を向上させることができる。
【0057】
一方、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ジエチルカーボネートが副産物として得られる。前記ジエチルカーボネートは、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の回収に使用されたポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする。
【0058】
すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を得るためにポリカーボネート系樹脂から回収を行った結果、ジエチルカーボネートも共に得られることを意味する。したがって、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を製造するためにポリカーボネート系樹脂からの回収とは別に外部で新規のジエチルカーボネートを添加させる場合、前記一実施形態のジエチルカーボネートの範疇に含まれない。
【0059】
具体的には、前記ポリカーボネート系樹脂から回収されたとは、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応により得られたことを意味する。前記解重合反応は酸性、中性、塩基性下で行われることができ、特に、塩基性(アルカリ)条件下で解重合反応行うことができる。特に、前記解重合反応は、後述のようにエタノール溶媒下で行うことが好ましい。
【0060】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物における主な回収目標物質は芳香族ジオール化合物であるので、前記ジエチルカーボネートは、副産物として前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物から別途分離されて回収することができる。
【0061】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、後述する多様なリサイクルプラスチック(例えば、ポリカーボネート(PC))の製造原料として使用することができる。
【0062】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、一部の少量のその他の添加剤、溶媒をさらに含み得、具体的な添加剤や溶媒の種類は特に限定されず、ポリカーボネート系樹脂の解重合による芳香族ジオール化合物の回収工程で広く使用される多様な物質を制限なく適用することができる。
【0063】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、後述するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法によって得られたものであり得る。すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応後に、主な回収目標物質である芳香族ジオール化合物のみを高純度で確保するために多様な濾過、精製、洗浄、乾燥工程を経て得られた結果物に該当する。
【0064】
2.リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法
発明の他の実施形態によれば、ポリカーボネート系樹脂を解重合反応させる段階と、前記解重合反応生成物のpHが12以上となるように塩基を添加する段階と、前記塩基の添加後に水を添加して解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階と、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物のpHが4以下となるように酸を添加する段階と、を含む、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法を提供することができる。
【0065】
本発明者らは、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法のように、ポリカーボネート系樹脂を化学的分解によってリサイクルする過程で、解重合されたポリカーボネート系樹脂のpHを段階的に調節して、本発明において主な合成目標物質である芳香族ジオール化合物を高純度かつ高収率で速い工程時間内に確保できることを実験により確認して発明を完成した。
【0066】
特に、従来の解重合されたポリカーボネート系樹脂からカーボネート単量体を除去するために蒸留を使用したが、本発明においては蒸留の代わりにpHの段階的な調整により、蒸留時より速い工程時間の間高い収率で芳香族ジオール化合物を確保できるという長所がある。
【0067】
具体的には、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、ポリカーボネート系樹脂を解重合反応させる段階を含むことができる。
【0068】
前記ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート繰り返し単位を含有する単独重合体または共重合体を両方含む意味であり、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体を含む単量体の重合反応または共重合反応により得られる反応生成物を総称する。芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種のみを使用して得られた1種のカーボネート繰り返し単位を含有する場合単独重合体が合成され得る。また、前記単量体として芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体2種以上を使用するか、芳香族ジオール化合物2種以上およびカーボネート前駆体1種を使用するか、芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種以外にその他のジオール1種以上を使用して2種以上のカーボネートを含有する場合共重合体が合成され得る。前記単独重合体または共重合体は、分子量範囲による低分子化合物、オリゴマー、高分子をすべて含むことができる。
【0069】
前記ポリカーボネート系樹脂は、合成により生産された新規のポリカーボネート系樹脂、再生工程により生産された再生ポリカーボネート系樹脂、またはポリカーボネート系樹脂廃棄物など多様な形態、種類に関係なく適用することができる。
【0070】
ただし、必要に応じて、ポリカーボネート系樹脂の解重合反応を行う前に、ポリカーボネート系樹脂の前処理工程を行い、ポリカーボネート系樹脂から芳香族ジオール化合物、およびカーボネート前駆体を回収する工程の効率を高めることができる。前記前処理工程の例としては、洗浄、乾燥、粉砕、グリコール分解などが挙げられ、それぞれの前処理工程の具体的な方法は限定されず、ポリカーボネート系樹脂の解重合による芳香族ジオール化合物、およびカーボネート前駆体の回収工程で広く使用される多様な方法を制限なく適用することができる。
【0071】
前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応時、前記解重合反応は酸性、中性、塩基性下で行われることができ、特に、塩基性(アルカリ)条件下で解重合反応を行うことができる。前記塩基の種類は特に限定されず、一例として、水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)が挙げられる。前記塩基は触媒として作用する塩基触媒であって、温和な条件下で主に利用される有機触媒に比べて経済性がある利点がある。より具体的には、前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応時、前記解重合反応はpHが8超12未満の範囲内で行われる。
【0072】
前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応時、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して0.5モル以下、または0.4モル以下、または0.3モル以下、または0.1モル以上、または0.2モル以上、または0.1モル~0.5モル、または0.1モル~0.4モル、または0.1モル~0.3モル、または0.2モル~0.5モル、または0.2モル~0.4モル、または0.2モル~0.3モルの含有量で塩基を反応させて行うことができる。前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応時、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して0.5モル超と塩基を反応させると、アルカリ塩の発生量の増加の影響により不純物が増加して目標回収物質の純度が減少し、触媒反応の経済性が減少する限界がある。
【0073】
また、前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応は、エタノールを含む溶媒下で行うことができる。本発明は、ポリカーボネート系樹脂をエタノールを含む溶媒に分解させて高純度モノマーであるビスフェノールAを安定的に得ることができ、また、反応副産物として高付加価値のあるジエチルカーボネートをさらに得られる利点がある。
【0074】
前記エタノールの含有量は、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して5モル~15モル、または8モル~13モルであり得る。前記エタノールはビスフェノールAに対する溶解性が良いので、上記の範囲内のエタノールを必ず含まなければならない。前記エタノールの含有量がポリカーボネート系樹脂1モルに対して5モル未満と過度に減少すると、ポリカーボネート系樹脂のアルコール分解が十分に進行し難い。これに対して、前記エタノールの含有量がポリカーボネート系樹脂1モルに対して15モル超と過度に増加すると、アルコールの過剰使用により工程の経済性が低下する。
【0075】
前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応が行われる溶媒は、エタノールの他に、テトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートからなる群より選択される1種以上の有機溶媒をさらに含むことができる。
【0076】
前記有機溶媒はテトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、またはこれらの2種以上の混合物を含むことができる。
【0077】
より好ましくは、前記有機溶媒としてメチレンクロライドを使用することができる。前記エタノールと混合する有機溶媒としてメチレンクロライドを用いる場合、ポリカーボネートに対する溶解特性が改善され、反応性を向上させる利点がある。
【0078】
前記有機溶媒の含有量は、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して16モル~20モル、または16モル~18モルであり得る。また、前記有機溶媒の含有量は、エタノールの1モルに対して1.5モル~2モルであり得る。上記の範囲内でポリカーボネート系樹脂、およびエタノールと有機溶媒を混合することによって必要な水準の重合体の単位体化(Depolymerization)反応を行うことができる利点がある。
【0079】
また、前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応を行う温度は特に限定されるものではないが、例えば20℃~100℃、または50℃~70℃で行うことができる。また、前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応を行う時間は1時間~30時間、または4時間~6時間の間行うことができる。
【0080】
具体的には、前記条件は、従来の加圧/高温工程に比べて穏和な(Mild)工程条件であり、前記条件下で攪拌を行うことによって加圧/高温工程に比べて穏和な(Mild)条件で工程を行うことができ、特に、50℃~70℃で4時間~6時間の間攪拌するとき、再現性および安定性の側面から最も効率的な結果を得ることができる利点がある。
【0081】
すなわち、本発明は、有機触媒を使用せずとも、混合溶媒の種類および混合量、並びに塩基触媒の種類および含有量を調節することによって加圧/高温工程を使用せずとも穏和な条件下で高純度の芳香族ジオール化合物(例えば、ビスフェノールA)が得られ、エタノール溶媒を使用するため、副産物としてジエチルカーボネートが得られる利点がある。
【0082】
より具体的には、前記ポリカーボネート系樹脂を解重合反応させる段階は、カーボネート系樹脂を有機溶媒に溶解する第1段階と、エタノールと塩基を含む触媒液を添加して攪拌する第2段階と、を含むことができる。前記第1、第2段階で、エタノール、有機溶媒、塩基、ポリカーボネート系樹脂に関する内容は上述した通りである。
【0083】
一方、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、前記解重合反応生成物のpHが12以上、または12~14となるように塩基を添加する段階を含むことができる。前記塩基は、強塩基を使用することができ、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)が挙げられる。
【0084】
前記解重合反応生成物のpHが12以上となるように塩基を添加する段階で、前記解重合反応生成物に含有された芳香族ジオール化合物が芳香族ジオール化合物の塩に転換される。
【0085】
したがって、後述する前記塩基の添加後に水を添加して解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階で、前記解重合反応生成物は、芳香族ジオール化合物の塩が含まれている水層、およびジエチルカーボネートが含まれている有機溶媒層に区分された層を形成することができる。前記芳香族ジオール化合物の塩は親水性を有するので水と有機溶媒のうち水層に含まれ、前記ジエチルカーボネートは疎水性を有するので水と有機溶媒のうち有機溶媒層に含まれる。したがって、pHを変化させる単純な工程だけでも主産物である芳香族ジオール化合物と副産物であるジエチルカーボネートを容易に分離することができる。
【0086】
一方、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、前記塩基の添加後に水を添加して解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階を含むことができる。したがって、前記分離されたカーボネート前駆体はジエチルカーボネートを含むことができる。
【0087】
上述のように、前記解重合反応生成物のpHが12以上となるように塩基を添加する段階後、前記塩基の添加後に水を添加して解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階を行うことによって、前記解重合反応生成物は、芳香族ジオール化合物の塩が含まれている水層、およびジエチルカーボネートが含まれている有機溶媒層に区分された層を形成し、これからジエチルカーボネートが含まれている有機溶媒層に区分された層を分離させることができる。
【0088】
前記塩基の添加後に水を添加して解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階では水層から有機層を分離させ、分離された有機層からカーボネート前駆体を回収することができる。前記水層から有機層を分離する具体的な分離条件は特に限定されず、具体的な分離装置、方法については公知の多様な精製技術を制限なく適用可能である。ただし、一例を挙げると、分別漏斗を使用することができる。
【0089】
前記分離されたカーボネート前駆体は別途の分離精製過程なしにリサイクルするか、必要に応じて通常の抽出、吸着、乾燥などの分離精製を経てリサイクルすることができる。具体的な精製条件は特に限定されず、具体的な精製装置、方法については公知の多様な精製技術を制限なく適用することができる。
【0090】
一方、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物のpHが4以下、または2以下、または1~4、または1~2となるように酸を添加する段階を含むことができる。これにより、主な回収物質である芳香族ジオール化合物が得られ、これは前記一実施形態でリサイクルプラスチック合成用単量体組成物に該当する。
【0091】
上述のように、前記解重合反応生成物のpHが12以上となるように塩基を添加する段階後、前記塩基の添加後に水を添加して解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階を行うことによって、前記解重合反応生成物は、芳香族ジオール化合物の塩が含まれている水層、およびジエチルカーボネートが含まれている有機溶媒層に区分された層を形成することができ、水層から有機層を分離させることによって、前記解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階後の解重合反応生成物には芳香族ジオール化合物の塩が含まれている水層が残留する。
【0092】
本発明の主な回収目標物質は芳香族ジオール化合物であるので、前記水層に含まれている芳香族ジオール化合物の塩の場合、追加的な酸による中和工程により芳香族ジオール化合物に転換させることができる。すなわち、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物のpHが4以下となるように酸を添加する段階で、前記解重合反応生成物に含まれている芳香族ジオール化合物の塩が芳香族ジオール化合物に転換される。
【0093】
前記酸は強酸を使用することができ、例えば、塩酸(HCl)が挙げられる。
【0094】
一方、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物のpHが4以下となるように酸を添加する段階後に、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階をさらに含むことができる。
【0095】
具体的には、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階は、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の洗浄段階を含むことができる。また、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階は、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の吸着精製段階を含むことができる。また、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階は、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の再結晶段階を含むことができる。
【0096】
前記洗浄段階、前記吸着精製段階、または前記再結晶段階それぞれの順序は特に限定されず、任意の順に行ってもよいが、一例を挙げると、前記洗浄段階、前記吸着精製段階、および前記再結晶段階の順に行うことができる。前記洗浄段階、前記吸着精製段階、および前記再結晶段階は、それぞれ少なくとも1回以上繰り返し行うことができる。具体的な洗浄、吸着、再結晶の装置、方法については公知の多様な精製技術を制限なく適用することができる。
【0097】
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の洗浄段階で、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物には芳香族ジオール化合物を含有することができる。ただし、芳香族ジオール化合物を得る回収工程中に多様な不純物が残留しているので、これを十分に除去して高純度の芳香族ジオール化合物を確保するために洗浄を行うことができる。
【0098】
具体的には、前記洗浄段階は、10℃以上30℃以下、または20℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階と、40℃以上80℃以下、または40℃以上60℃以下、または45℃以上55℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階と、を含むことができる。前記温度条件は、溶媒による洗浄が行われる洗浄容器の内部の温度を意味し、常温を外れる高温を維持するために多様な加熱機構を制限なく適用することができる。
【0099】
前記洗浄段階は、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を先に行い、40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を後に行うことができる。また、前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を先に行い、10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を後に行うことができる。
【0100】
より好ましくは、前記洗浄段階は、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を先に行い、40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を後に行うことができる。そのため、中和段階後の強酸による反応器の腐食を最小化することができる。
【0101】
前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階、および40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階は、それぞれ少なくとも1回以上繰り返し行うことができる。
【0102】
また、必要に応じて、10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階、および40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階を行った後に、濾過により残留する溶媒を除去する工程をさらに経ることができる。
【0103】
より具体的には、前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度と、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度との差異値が20℃以上50℃以下であり得る。
【0104】
前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度と、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度との差異値とは、前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度から、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度を引いた値を意味する。
【0105】
前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度と、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度との差異値が20℃未満と過度に減少すると、不純物を十分に除去し難い。
【0106】
前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度と、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階での温度との差異値が50℃超と過度に増加すると、極限の温度条件を維持するために過酷な条件が形成され、工程の効率性が低下する。
【0107】
前記洗浄段階で使用される溶媒は水、アルコール、有機溶媒のうち一つの溶媒を含むことができる。前記有機溶媒としてはテトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、またはこれらの2種以上の混合物を使用することができる。
【0108】
前記洗浄段階で使用される溶媒は、解重合反応に使用されたポリカーボネート系樹脂1モルを基準として1重量部以上~30重量部以下、または1重量部以上~10重量部以下の比率で使用することができる。
【0109】
より具体的には、前記10℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の溶媒は有機溶媒であり得る。前記有機溶媒としては、好ましくはメチレンクロライドを使用することができる。そして、この時、前記有機溶媒は、ポリカーボネート系樹脂1重量部に対して1重量部以上~10重量部以下で使用することができる。
【0110】
また、前記40℃以上80℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の溶媒は水であり得る。前記水を使用する場合、残留する塩形態の不純物を効果的に除去することができる。そして、この時、前記溶媒は、ポリカーボネート系樹脂1重量部に対して1重量部以上~10重量部以下で使用することができる。
【0111】
また、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の吸着精製段階は、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に吸着剤を投入して吸着精製させた後、吸着剤を除去する段階を含むことができる。前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に吸着剤を投入して吸着精製させた後に吸着剤を除去する段階で、前記解重合反応生成物に吸着剤を接触させることができる。
【0112】
前記吸着剤の例としては活性炭、木炭(charcoal)、またはこれらの混合物を使用することができる。前記活性炭は原料を約500℃の炭化過程(carbonization)と約900℃の活性化(activated carbon)過程を経て製造された微細細孔を有する黒色炭素素材であって、その例は特に限定されるものではないが、例えば、原料種類によって植物系、石炭系、石油系、廃棄物質活性炭など多様な活性炭を制限なく適用することができる。
【0113】
より具体的な一例を挙げると、植物系活性炭としては、ヤシガラ活性炭、木材活性炭、ノコギリくず活性炭が挙げられる。また、石炭系活性炭としては、褐炭活性炭、有煙炭活性炭、無煙炭活性炭が挙げられる。また、石油系活性炭としては、石油コークス活性炭、オイルカーボン活性炭が挙げられる。また、廃棄物質活性炭としては、合成樹脂活性炭、パルプ活性炭が挙げられる。
【0114】
前記吸着剤は植物系活性炭、石炭系活性炭、石油系活性炭、および廃棄物質活性炭からなる群より選択される1種以上の活性炭を含むことができる。すなわち、前記吸着剤は植物系活性炭、石炭系活性炭、石油系活性炭、廃棄物質活性炭、またはこれらの2種以上の混合物を含むことができる。
【0115】
より具体的には、前記吸着剤はヤシガラ活性炭、褐炭活性炭、無煙炭活性炭、および有煙炭活性炭からなる群より選択される1種以上の活性炭を含むことができる。すなわち、前記吸着剤はヤシガラ活性炭、褐炭活性炭、無煙炭活性炭、有煙炭活性炭、またはこれらの2種以上の混合物を含むことができる。
【0116】
前記吸着剤による吸着精製条件は特に限定されず、従来より知られている多様な吸着精製条件を制限なく用いることができる。ただし、一例を挙げると、吸着剤の投入量は、ポリカーボネート系樹脂に対して40重量%~60重量%であり、吸着時間は1時間~5時間であり、吸着方式は攪拌吸着、またはLab用吸着塔を用いることができる。
【0117】
必要に応じて、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に吸着剤を投入して吸着精製させた後、吸着剤を除去する段階前にカーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に溶媒を添加する段階をさらに含むことができる。前記溶媒の例としてはエタノールが挙げられ、前記エタノールはポリカーボネート系樹脂1モルに対して1モル~20モル、または10モル~20モル、または15モル~20モルの比率で添加することができる。前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に溶媒を添加する段階により前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に含まれた芳香族ジオール化合物の結晶が溶媒に再溶解される。
【0118】
一方、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の再結晶段階で、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に含有された多様な不純物を十分に除去して高純度の芳香族ジオール化合物を確保することができる。
【0119】
具体的には、前記再結晶段階において前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に水を添加して再結晶させる段階を含むことができる。前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に水を添加して再結晶させる工程により、解重合反応生成物に含有された芳香族ジオール化合物、またはその塩の溶解度の増加により結晶、または結晶間に付いている不純物を最大限溶媒に溶解させることができ、溶解した芳香族ジオール化合物が不純物に比べて溶解度が悪いので、その後、温度を下げたとき、溶解度の差異によって芳香族ジオール化合物の結晶として容易に析出される。
【0120】
より具体的には、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に水を添加して再結晶させる段階で、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して200モル~400モル、または250モル~350モルの水を使用することができる。前記水が過度に少なく使用されると、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に含有された芳香族ジオール化合物を溶解するための温度が過度に高くなって工程効率が悪くなり、再結晶による不純物の除去が容易ではない。反面、水が過度に過量使用されると、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に含有された芳香族ジオール化合物の溶解度が過度に高くなり、再結晶後に回収される芳香族ジオール化合物の収率が減少し、多量の溶媒使用による工程効率性が低下する。
【0121】
必要に応じて、前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の再結晶段階を行った後に濾過、または吸着により残留する不純物を除去する工程をさらに経ることができる。
【0122】
また、必要に応じて、前記再結晶段階後に、乾燥段階をさらに含むことができる。前記乾燥により残留する溶媒を除去することができ、具体的な乾燥条件は特に限定されるものではないが、例えば10℃~100℃、または10℃~50℃の温度で乾燥を行うことができる。前記乾燥時に使用される具体的な乾燥装置、方法については公知の多様な乾燥技術を制限なく適用可能である。
【0123】
3.リサイクルプラスチック
発明のさらに他の実施形態によれば、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含むリサイクルプラスチックを提供することができる。
【0124】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物に関する内容は前記実施形態で上述した内容をすべて含む。
【0125】
前記リサイクルプラスチックに該当する例は特に限定されず、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール化合物とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、またはエチルメチルカーボネートなどのカーボネート前駆体を単量体として合成される多様なプラスチックを制限なく適用することができ、より具体的な例としてはポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
【0126】
前記ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート繰り返し単位を含有する単独重合体または共重合体をすべて含む意味であり、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体を含む単量体の重合反応または共重合反応により得られる反応生成物を総称する。芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種のみを使用して得られた1種のカーボネート繰り返し単位を含有する場合単独重合体が合成される。また、前記単量体として芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体2種以上を使用するか、芳香族ジオール化合物2種以上およびカーボネート前駆体1種を使用するか、芳香族ジオール化合物1種およびカーボネート前駆体1種以外にその他のジオール1種以上を使用して2種以上のカーボネートが含有される場合共重合体が合成される。前記単独重合体または共重合体は、分子量範囲による低分子化合物、オリゴマー、高分子をすべて含むことができる。
【0127】
より具体的には、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含むリサイクルプラスチックで、共単量体としてはカーボネート前駆体を使用することができる。前記カーボネート前駆体の具体的な例としては、ホスゲン、トリホスゲン、ジホスゲン、ブロモホスゲン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネートまたはビスハロホルメートが挙げられる。
【0128】
前記ポリカーボネート系樹脂を合成するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応工程の例は特に限定されるものではなく、従来より知られている多様なポリカーボネートの製造方法を制限なく適用可能である。
【0129】
ただし、前記ポリカーボネートの製造方法の一例を挙げると、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体を含む組成物を重合する段階を含むポリカーボネートの製造方法を使用することができる。この時、前記重合は界面重合で行うことができ、界面重合時に常圧と低い温度で重合反応が可能であり、分子量調節が容易である。
【0130】
前記重合温度は0℃~40℃、反応時間は10分~5時間であり得る。また、反応中のpHは9以上または11以上を維持することができる。
【0131】
前記重合に使用できる溶媒としては、当業界でポリカーボネートの重合に使用される溶媒であれば特に限定されず、一例としてメチレンクロライド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0132】
また、前記重合は酸結合剤の存在下で行うことができ、前記酸結合剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0133】
また、前記重合時のポリカーボネートの分子量調節のために、分子量調節剤の存在下で重合を行うことができる。前記分子量調節剤としては炭素数1~20のアルキルフェノールを使用することができ、その具体的な例としては、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールまたはトリアコンチルフェノールが挙げられる。前記分子量調節剤は、重合開始前、重合開示中または重合開示後に投入することができる。前記分子量調節剤は、前記芳香族ジオール化合物100重量部に対して0.01~10重量部、または0.1~6重量部を使用することができ、上記の範囲内で所望の分子量を得ることができる。
【0134】
また、前記重合反応の促進のために、トリエチルアミン、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロミドなどの3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物などの反応促進剤をさらに使用することができる。
【0135】
4.成形品
発明のさらに他の実施形態によれば、前記他の実施形態のリサイクルプラスチックを含む成形品を提供することができる。前記リサイクルプラスチックに関する内容は前記他の実施形態で上述した内容をすべて含む。
【0136】
前記成形品は、前記リサイクルプラスチックを公知の多様なプラスチック成形方法を制限なく適用して得られたものであり得、前記成形方法の一例を挙げると、射出成形、発泡射出成形、ブロー成形、または押出成形が挙げられる。
【0137】
前記成形品の例は特に限定されるものではなく、プラスチックを使用する多様な成形品に制限なく適用可能である。前記成形品の一例を挙げると、自動車部品、電機電子製品、通信製品、生活用品、建築素材、光学部品、外装材などが挙げられる。
【0138】
前記成形品は、前記他の実施形態のリサイクルプラスチックの他に、必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤、滑剤、衝撃補強剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、顔料および染料からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0139】
前記成形品の製造方法の一例として、前記他の実施形態のリサイクルプラスチックと添加剤をミキサーを用いてうまく混合した後、押出機で押出成形してペレットに製造し、前記ペレットを乾燥させた後に射出成形機で射出する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0140】
本発明によれば、ポリカーボネート系樹脂の化学的分解によるリサイクルにより回収された高純度かつ高収率の芳香族ジオール化合物を含有するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、並びにそれを用いたリサイクルプラスチック、および成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0141】
以下、本発明を実施例により詳しく説明する。しかし、下記の実施例は本発明を例示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0142】
<実施例および比較例:リサイクルビスフェノールA単量体組成物の製造>
実施例1
(1.分解段階)前処理された廃ポリカーボネート(PC)1molをメチレンクロライド(MC)17molに溶解した後、3L高圧反応器にエタノール(EtOH)11molおよび水酸化ナトリウム(NaOH)0.25molと共に投入し、60℃で6時間攪拌してPC解重合反応を行った。
【0143】
(2.塩基化段階)前記解重合反応の生成物を30℃以下に冷却した後、前記ビスフェノールAが含有された生成物に対して40%水酸化ナトリウム(NaOH)2molを用いてpH14となるまで塩基化させた。
【0144】
(3.層分離段階)その後、水をさらに添加して、水層とメチレンクロライド(MC)層を形成した。下側に位置したメチレンクロライド(MC)層は分別漏斗を用いて除去し、上側に位置した水層は回収した。
【0145】
(4.酸性化段階)回収した水層は10%HClと水を添加してpH1~2となるまで酸性化させた。その後、真空濾過によってろ過してビスフェノールAを回収した。
【0146】
(5-1.追加精製段階-再溶解段階)その後、ビスフェノールAをエタノール16.6molに入れて再溶解させた。
【0147】
(5-2.追加精製段階-吸着段階)その後、吸着剤として褐炭活性炭を廃ポリカーボネートに対して50重量%の比率で投入して3時間吸着によって精製した後、ろ過して褐炭活性炭を除去した。
【0148】
(5-3.追加精製段階-再結晶段階)その後、水300molを投入し、ビスフェノールAを再結晶化した後、得られたスラリーを20~30℃で真空濾過によってビスフェノールA(BPA)の結晶を回収した。
【0149】
(6.乾燥段階)その後、40℃のコンベクションオーブンで真空乾燥してリサイクルされたビスフェノールA(BPA)が回収されたリサイクルビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0150】
実施例2
前記実施例1の(4.酸性化段階)と(5-1.追加精製段階-再溶解段階)との間に、以下の(洗浄段階)をさらに行ったことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリサイクルビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0151】
(洗浄段階)使用されたPC質量に対して1倍のメチレンクロライド(MC)を用いて20~30℃で1次洗浄し、真空濾過した。前記濾過物を、使用されたPC質量に対して3倍の水を用いて50℃の温度で2次洗浄した。
【0152】
実施例3
前記実施例1の(5-2.追加精製段階-吸着段階)を行わないことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリサイクルビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0153】
比較例1
前記実施例1の(3.層分離段階)および(4.酸性化段階)の代わりに、以下の(蒸留段階)を行ったことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリサイクルビスフェノールA単量体組成物を製造した。
【0154】
(蒸留段階)その後、pH2未満に低くなった生成物を250mbar、20~30℃で30mbar、30℃で減圧する低温蒸留によって副産物であるジエチルカーボネート(DEC)を回収した。
【0155】
<実験例>
前記実施例および比較例で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物、または副産物について、以下の方法で物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0156】
1.純度
常圧、20~30℃の条件でリサイクルビスフェノールA単量体組成物を1w%でアセトニトリル(Acetonitrile)(ACN)溶媒に溶解させた後、ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 1.7μm(2.1*50mm カラム(column))を使用してWaters HPLCシステムでUPLC(ultra performance liquid chromatography)を用いてビスフェノールA(BPA)の純度を分析した。
【0157】
2.色座標(L*、a*、b*)
前記リサイクルビスフェノールA単量体組成物に対してHunterLab UltraScan PRO Spectrophotometer装置を用いて反射モードで分析した。
【0158】
3.収率
反応に使用されたポリカーボネートが100%分解されたとき、生成されるBPAの重量を測定し、得られたBPAの重量を測定して、下記式2のようにBPAの収率を算出した。
【0159】
[式2]
収率(%)=W1/W0
上記式2中、W0は、100%分解時に得られるBPAの質量であり、W1は、実際得られたBPAの質量である。具体的には、約100gのポリカーボネートが分解される場合、理論上100%分解時に得られるBPAの質量は89gである。実際得られたBPAの質量が80gであると、収率は80/89*100=90%である。
【0160】
4.不純物比率
前記リサイクルビスフェノールA単量体組成物1mlを試料として採取して以下の条件で液体クロマトグラフィー(LC)分析を行い、下記式1により不純物比率を求めた。液体クロマトグラフィーを用いて測定した結果、ビスフェノールAを除いたすべての物質は不純物とみなされた。
【0161】
<液体クロマトグラフィー(LC)の条件>
a)Column:HP-1(L:30m、ID:0.32mm、film:1.05m)
b)Injection volume:1μl
c)Inlet
Temp.:260℃、Pressure:6.92psi、Total flow:64.2ml/min、Split flow:60ml/min、
spilt ratio:50:1
d)Column flow:1.2ml/min
e)Oven temp.:70℃/3min-10℃/min-280℃/41min(Total 65min)
f)Detector
Temp.:280℃、H2:35ml/min、Air:300ml/min、He:20ml/min
g)GC Model:Agilent 7890
【0162】
[式1]
不純物比率=[(液体クロマトグラフィー上の全体のピーク面積-液体クロマトグラフィー上のビスフェノールAのピーク面積)/液体クロマトグラフィー上の全体のピーク面積]×100
【0163】
【0164】
上記表1に示すように、実施例1~実施例3で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物は99.1%~99.7%の高純度を示した。また、実施例1~実施例3で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物は、色座標L*が95.9~97.1、a*が0.01~0.25、b*が1.57~2.24を示し、優れた光学物性を示した。さらに、実施例1~実施例3で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物は、BPAの収率が68%~73%と高く測定された。また、実施例1~実施例3で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物は、不純物比率が0.3%~0.9%と低く測定された。反面、比較例1で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物は、色座標L*が96.0、a*が0.34、b*が2.49を示し、実施例に比べて不良な光学物性を示した。さらに、比較例1で得られたリサイクルビスフェノールA単量体組成物は、BPAの収率が65%と実施例より低く測定された。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジオール化合物を含み、
リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、下記式1による不純物比率が1.2%以下であり、
下記式2による芳香族ジオール化合物の収率が65%超であり、
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ポリカーボネート系樹脂から回収されたことを特徴とする、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物:
[式1]
不純物比率=[(液体クロマトグラフィー上の全体のピーク面積-液体クロマトグラフィー上のビスフェノールAのピーク面積)/液体クロマトグラフィー上の全体のピーク面積]×100
[式2]
収率(%)=W
1/W
0
×100
上記式2中、W
0は、ポリカーボネート系樹脂の100%分解時に得られる芳香族ジオール化合物の質量であり、W
1は、実際得られた芳香族ジオール化合物の質量である。
【請求項2】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、色座標L*が94以上である、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項3】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、色座標a*が0.5以下である、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項4】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、色座標b*が0~4.2である、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項5】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、芳香族ジオール化合物の純度が99%以上である、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項6】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、ジエチルカーボネートが副産物として得られ、前記ジエチルカーボネートは、ポリカーボネート系樹脂から回収されることを特徴とする、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項7】
ポリカーボネート系樹脂を解重合反応させる段階と、
前記解重合反応生成物のpHが12以上となるように塩基を添加する段階と、
前記塩基の添加後に水を添加して解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階と、
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物のpHが4以下となるように酸を添加する段階と、を含む、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項8】
前記解重合反応生成物のpHが12以上となるように塩基を添加する段階で、
前記解重合反応生成物に含有された芳香族ジオール化合物が芳香族ジオール化合物の塩に転換される、請求項7に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項9】
前記塩基の添加後に水を添加して解重合反応生成物からカーボネート前駆体を分離させる段階で、
芳香族ジオール化合物の塩が含まれている水層、およびジエチルカーボネートが含まれている有機溶媒層を分離させる、請求項7に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項10】
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物のpHが4以下となるように酸を添加する段階で、
前記
カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物に含有された芳香族ジオール化合物の塩が芳香族ジオール化合物に転換される、請求項7に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項11】
前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応は、
エタノールを含む溶媒下で行うことを特徴とする、請求項7に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項12】
前記エタノールの
量は、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して10モル~15モルである、請求項11に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項13】
前記ポリカーボネート系樹脂の解重合反応は、
ポリカーボネート系樹脂1モルに対して0.5モル以下の
量で塩基を反応させて行うことを特徴とする、請求項7に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項14】
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物のpHが4以下となるように酸を添加する段階後に、
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階をさらに含む、請求項7に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項15】
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階は、
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の再結晶段階を含む、請求項14に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項16】
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階は、
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物
の吸着精製段階を含む、請求項14に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項17】
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の精製段階は、
前記カーボネート前駆体が分離された解重合反応生成物の洗浄段階を含む、請求項14に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項1
~6のいずれかに記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含む、リサイクルプラスチック。
【請求項19】
請求項18に記載のリサイクルプラスチックを含む、成形品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
前記エタノールの量は、ポリカーボネート系樹脂1モルに対して5モル~15モル、10モル~15モル、または8モル~13モルであり得る。前記エタノールはビスフェノールAに対する溶解性が良いので、上記の範囲内のエタノールを必ず含まなければならない。前記エタノールの量がポリカーボネート系樹脂1モルに対して5モル未満と過度に減少すると、ポリカーボネート系樹脂のアルコール分解が十分に進行し難い。これに対して、前記エタノールの量がポリカーボネート系樹脂1モルに対して15モル超と過度に増加すると、アルコールの過剰使用により工程の経済性が低下する。
【国際調査報告】