(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】電子デバイスコンポーネント洗浄剤
(51)【国際特許分類】
C11D 1/83 20060101AFI20231026BHJP
C11D 1/02 20060101ALI20231026BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20231026BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20231026BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20231026BHJP
C11D 3/30 20060101ALI20231026BHJP
C11D 3/06 20060101ALI20231026BHJP
C11D 3/08 20060101ALI20231026BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20231026BHJP
C11D 3/36 20060101ALI20231026BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20231026BHJP
C11D 1/14 20060101ALI20231026BHJP
C11D 1/12 20060101ALI20231026BHJP
C11D 1/34 20060101ALI20231026BHJP
C11D 1/28 20060101ALI20231026BHJP
C11D 3/34 20060101ALI20231026BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C11D1/83
C11D1/02
C11D3/37
C11D3/43
C11D3/04
C11D3/30
C11D3/06
C11D3/08
C11D3/20
C11D3/36
C11D1/72
C11D1/14
C11D1/12
C11D1/34
C11D1/28
C11D3/34
B08B3/08 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521672
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 CN2020119915
(87)【国際公開番号】W WO2022073178
(87)【国際公開日】2022-04-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】コザック、 ウィリアム グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ、 ヨン
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB03
3B201BB02
3B201BB82
3B201BB83
3B201BB87
3B201BB94
3B201BB95
3B201BC05
3B201CB11
3B201CC01
3B201CC11
4H003AB22
4H003AB27
4H003AC08
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4H003DB03
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4H003EB04
4H003EB06
4H003EB14
4H003EB22
4H003EB24
4H003EB30
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA07
4H003FA16
4H003FA19
4H003FA28
4H003FA36
4H003FA39
(57)【要約】
電子コンポーネントの小さなボアホール内に付着した望ましくないポリマー材料の堆積物を除去するのに有用な洗浄剤、ならびにそのようなコンポーネントの洗浄を実行するための装置および方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)水、好ましくは脱イオン水;
B)少なくとも1つのアルカリ源;
C)前述の成分のいずれとも異なる、少なくとも1つの洗剤ビルダー;
D)前述の成分のいずれとも異なる少なくとも1つのキレート剤;
E)以下の1つ以上の非イオン性界面活性剤、望ましくは少なくとも2つの非イオン性界面活性剤の組み合わせ:
E1)洗浄剤;
E2)消泡剤;および
E3)湿潤剤;
F)前述の成分のいずれとも異なる、少なくとも1つのアニオン性界面活性剤;
G)前述の成分のいずれとも異なる少なくとも1つの分散剤、好ましくはアニオン性ポリマー分散剤;
H)少なくとも1つのヒドロトロープ、好ましくは前述の成分のいずれとも異なる芳香族ヒドロトロープ;
I)前述の成分のいずれとも異なる少なくとも1つの有機溶媒、好ましくは水溶性
を含む、本質的にからなる、またはから構成される電子デバイスコンポーネント用の洗浄剤組成物。
【請求項2】
B)少なくとも1つのアルカリ源が、アルカリ金属水酸化物、アルカノールアミン、またはそれらの組み合わせを含み、C)少なくとも1種の洗剤ビルダーは、リン酸塩ビルダー、ケイ酸塩ビルダーおよびそれらの混合物から選択される水溶性洗剤ビルダーを含む、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
D)少なくとも1種のキレート剤が、ポリカルボン酸キレート剤およびホスホン酸キレート剤を含む少なくとも2種のキレート剤を含む、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
ポリカルボン酸キレート剤、ホスホン酸キレート剤の一方または両方がヒドロキシ置換されている、請求項3に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
成分E)1以上の非イオン性界面活性剤が、
E1)前述の成分のいずれとも異なる、アルコキシル化モノアルコールから選択される少なくとも1種の洗浄剤(アルコキシ基はエトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびそれらの組み合わせから選択される);
E2)前述の成分のいずれとも異なる、エーテル、アルコールおよびグリコールから選択される、少なくとも1つの消泡剤、好ましくはジオールであるアルコール;および
E3)2つ以上のC8~C14エトキシル化アルコールを含む、前述の成分のいずれとも異なる少なくとも1つの湿潤剤
を含む、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
1つ以上の非イオン性界面活性剤が、前述の成分のいずれとも異なる、少なくとも3つの非イオン性界面活性剤、
E1)洗浄剤は、エトキシル化第二級アルコールおよび芳香族エトキシル化アルコールを含む複数の非イオン性界面活性剤を含み、
E2)消泡剤は、C8~C18の飽和または不飽和分岐ジオールを含み、
E3)湿潤剤は、2~20モルのエトキシル化を有する複数の飽和C8~C14アルコール、望ましくは、一般式:
R3-(OCH
2CH
2)
nOH (E3)
(式中、R3は、C6~C18のアルキルであり、望ましくはC8~C14アルキルであり、
nは、1~30、望ましくは2~24、好ましくは1~12の範囲である)
に相当する1以上のエトキシル化アルコールを含む、請求項5に記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
F)少なくとも1種のアニオン性界面活性剤が、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルホスホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、およびそれらのエトキシル化類似体から選択される、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項8】
G)少なくとも1つの分散剤が、約5,000~約10,000グラム/モルの範囲のMWを有し、ヒドロキシル(-OH)、カルボキシル(-COOH)、スルホネート、スルフェート、アミノ(-NH
2)、イミノ(-NH-)、およびポリオキシエチレン(-CH
2CH
2O-)基を含む、アニオン性有機ポリマー分散剤を含む、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項9】
アニオン性有機ポリマー分散剤が、縮合ナフタレンスルホン酸、縮合1-ナフトール6-スルホン酸、脂肪アルコールエチレンオキシド縮合物、アルキルアリールスルホネート、リグニンスルホン酸塩、スルホン酸ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)およびその塩から選択される、請求項8に記載の洗浄剤組成物。
【請求項10】
H)少なくとも1つのヒドロトロープが、ブチルベンゼンスルホン酸塩、安息香酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンジスルホン酸ナトリウム、m-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ブチルモノグリコール硫酸ナトリウム、桂皮酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項11】
I)少なくとも1種の有機溶媒が、グリコールエーテル、グリコールエーテルエステル、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項12】
I)少なくとも1種の有機溶媒が、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペートおよびそれらの組み合わせのうちの1種以上を含む、請求項11に記載の洗浄剤組成物。
【請求項13】
電子デバイスコンポーネントを洗浄する方法であって、以下の工程、
1)製品、コンポーネント、またはそれらのアセンブリ(部品)の表面を、請求項1~12のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物と接触させ、
2)任意に、部品の表面に対する洗浄剤組成物の移動を誘発し、
3)部品の表面、特に部品の穴およびボアからポリマー材料残留物を除去するのに十分な時間、洗浄剤組成物と部品の表面との間の接触を維持し、
4)洗浄剤組成物から部品を除去し、
5)残留洗浄剤組成物およびポリマー材料残留物を部品の表面から洗い流し、
6)任意に部品を乾燥する、
を含む方法。
【請求項14】
電子デバイスコンポーネントは、約2グラム~50グラムの範囲の低質量および/または複雑な形状を有し、および接触工程は、90℃未満、望ましくは約15℃~約75℃、最も好ましくは、約20℃~約40℃の温度で行われる、請求項13に記載の電子デバイスコンポーネントを洗浄する方法。
【請求項15】
接触工程が、約0.5~15分間、好ましくは約1~10分間、最も好ましくは約2~7分間の範囲の時間である、請求項13に記載の電子デバイスコンポーネントを洗浄する方法。
【請求項16】
電子デバイスコンポーネントが、裸の、セラミック化または陽極酸化された金属表面を含み、金属表面が、アルミニウム、チタン、マグネシウム、またはステンレス鋼のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の電子デバイスコンポーネントを洗浄する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造プロセスにおいて特に有用な電子デバイスコンポーネント用の工業用洗浄剤組成物に関する。洗浄されるコンポーネントは、酸化物層を含む金属表面を含む電子デバイスコンポーネントを含む、裸の、セラミック化された、または陽極酸化された金属表面を有する任意の材料を含み得る。より具体的には、本発明は、低レベルの揮発性有機化合物(VOC)を有するように配合することができ、電子コンポーネントの小さなボアホール内に付着したポリマー材料を除去するのに効果的な洗浄剤組成物、並びにこのようなコンポーネントの洗浄を行う装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスおよびその製造された金属コンポーネントは、その製造中に、これらに限定されない、接着剤やシーラントを含む不要な物質が表面に付着する可能性がある。電子デバイス、例えば、携帯電話には、湿気による損傷を受けやすいさまざまな繊細な電子コンポーネントが含まれているため、メーカーはポリマーシーラントを含むさまざまな手段でデバイスを防水(以下、「シール」ともいう)する必要があり、場合によっては真空含浸プロセスを採用している。電子デバイスをシールするために使用される粘着性ポリマー材料の蓄積は、特に後の組み立てステップでネジを収容するための小さなボアに対して有害となる可能性がある。したがって、そのような不要なポリマー材料を本体および部品から、特に電子デバイスの後の組み立てのために作られた小さなねじ穴から除去することが望ましい。従来の洗浄材料および洗浄方法は、シールまたはコンポーネントを損傷することなくボアおよび他の小さな隙間から付着したポリマー材料を除去するには不十分であることが多いことを考慮すると、当技術分野では、要するに、揮発性有機化合物(VOC)レベルが低い、電子デバイスの表面を腐食せず、洗浄剤が後の処理を妨げないように、洗浄された表面から容易に除去することができる、サイクル時間が短い、小さな孔の効果的な洗浄性能を有する代替組成物を提供する必要がある。本発明は、この必要性に対処するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
真空含浸(VI)を使用した携帯電話の防水処理では、携帯電話の外部表面を構成する個々の部品(コンポーネントやアセンブリなど)間の隙間にポリマー分散液が導入され、乾燥後、硬化または架橋の有無にかかわらず、携帯電話を密閉し、水の侵入を防ぐ。VIプロセス中、ポリマー分散液は、後の組み立てでネジを受け入れるための小さな穴(ネジ穴など)にも望ましくないことに浸透する。ポリマー材料はボアの中に残り、凝集して固体のポリマー材料の堆積物が穴の表面に付着し、その後の組み立て中のネジの挿入を妨げる。ポリマー材料の堆積物が蓄積する別の領域は、異種金属が接触している場所で発見される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、電子コンポーネントの表面からポリマー堆積物を効果的に洗浄し、手の届きにくい場所、例えばネジ用の小さな穴に浸透し、固体ポリマーの堆積物を分解し、ポリマー材料の残留物をボアから除去しやすくし、コンポーネントの表面への再付着を防ぐ、洗浄剤および洗浄方法を提供する。水性洗浄剤は、ポリマーの凝集に寄与する多価カチオンなどの無機汚染物質に結合する少なくとも1つのキレート剤、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、少なくとも1つのアニオン性界面活性剤、および1つ以上の溶媒を含み、これらの成分は相乗的に作用してポリマーから無機汚染物質を抽出し、固体ポリマーの堆積物を分解してボアからの除去を促進する。洗浄剤内の分散剤は除去されたポリマー材料を安定化させ、洗浄されたコンポーネントの表面へのポリマー材料の再付着を防ぐ。
【0005】
(発明の概要)
本発明の目的は、本明細書では総称的に「ポリマー材料堆積物」または「ポリマー堆積物」とも呼ばれる、典型的には真空含浸プロセスからの複数の異なるタイプのポリマー堆積物、例えば会合カチオンを含むガム状固体および硬質付着固体および異なる金属接触点におけるポリマー材料堆積物など、を除去するのに有用な、液体洗浄剤濃縮組成物および液体作業洗浄剤浴を提供することである。別の目的は、物品の他の表面に損傷を与えることなく、望ましくは短い処理時間で、物品上のボア、穴、端、隅、隙間からポリマー堆積物を除去する方法を提供することである。
【0006】
本発明の一態様(「態様1」)によれば、
A)水、好ましくは脱イオン水;
B)少なくとも1つのアルカリ源;
C)前述の成分のいずれとも異なる、少なくとも1つの洗剤ビルダー;
D)前述の成分のいずれとも異なる少なくとも1つのキレート剤;
E)前述の成分のいずれとも異なる1つ以上の非イオン性界面活性剤、望ましくは少なくとも2つの非イオン性界面活性剤の組み合わせ:
E1)洗浄剤;
E2)消泡剤;および
E3)湿潤剤;
F)前述の成分のいずれとも異なる、少なくとも1つのアニオン性界面活性剤;
G)前述の成分のいずれとも異なる、少なくとも1つの分散剤、好ましくはアニオン性ポリマー分散剤;
H)前述の成分のいずれとも異なる、少なくとも1つのヒドロトロープ、;
I)前述の成分のいずれとも異なる、少なくとも1つの有機溶媒、好ましくは水溶性
を含む、本質的にからなる、またはから構成される電子デバイスコンポーネント用の洗浄剤組成物が提供される。
【0007】
本発明のさらなる例示的な態様は、それぞれ独立して1以上の他の態様と組み合わせることができ、以下のように要約することができる。
【0008】
態様2:D)少なくとも1種のキレート剤が、ポリカルボン酸キレート剤およびホスホン酸キレート剤、を含む少なくとも2種のキレート剤を含み、望ましくは、ポリカルボン酸キレート剤、ホスホン酸キレート剤はヒドロキシ置換されている、態様1の洗浄剤組成物。
【0009】
態様3:成分E)1以上の非イオン性界面活性剤が、
E1)前述の成分のいずれとも異なる、アルコキシル化モノアルコールから選択される少なくとも1種の洗浄剤(アルコキシ基はエトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびそれらの組み合わせから選択される);
E2)エーテル、アルコールおよびグリコールから選択される、前述の成分のいずれとも異なる少なくとも1つの消泡剤、好ましくはジオールであるアルコール;および
E3)2つ以上のC8~C14エトキシル化アルコールを含む、前述の成分のいずれとも異なる少なくとも1つの湿潤剤
を含む、態様1または2の洗浄剤組成物。
【0010】
態様4:1つ以上の非イオン性界面活性剤が、前述の成分のいずれとも異なる、少なくとも3つの非イオン性界面活性剤、
E1)洗浄剤は、エトキシル化第二級アルコールおよび芳香族エトキシル化アルコールを含む複数の非イオン性界面活性剤を含み、
E2)消泡剤は、C8~C18の飽和または不飽和分岐ジオールを含み、
E3)湿潤剤は、2~20モルのエトキシル化を有する複数の飽和C8~C14アルコール、望ましくは、一般式:
R3-(OCH2CH2)nOH (E3)
式中、R3は、C6~C18のアルキルであり、望ましくはC8~C14アルキルであり、
nは、1~30、望ましくは2~24、さらに好ましくは1~12の範囲である)
に相当する1以上のエトキシル化アルコールを含む、
態様1から3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【0011】
態様5:F)少なくとも1種のアニオン性界面活性剤が、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルホスホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、およびそれらのエトキシル化類似体から選択される、態様1~4のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【0012】
態様6:G)少なくとも1つの分散剤が、約5,000~約10,000グラム/モルの範囲のMWを有し、ヒドロキシル(-OH)、カルボキシル(-COOH)、スルホネート、スルフェート、アミノ(-NH2)、イミノ(-NH-)、およびポリオキシエチレン(-CH2CH2O-)基から選択される1つ以上の極性または解離性官能基を含む、アニオン性有機ポリマー分散剤を含む、態様1~5のいずれかに記載の洗浄剤組成物。望ましくは、アニオン性有機ポリマー分散剤は、縮合ナフタレンスルホン酸、縮合1-ナフトール6-スルホン酸、脂肪アルコールエチレンオキシド縮合物、アルキルアリールスルホネート;リグニンスルホン酸塩;スルホン酸ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA);及びその塩から選択される。
【0013】
態様7:H)少なくとも1つのヒドロトロープが、ブチルベンゼンスルホン酸塩、安息香酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンジスルホン酸ナトリウム、m-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ブチルモノグリコール硫酸ナトリウム、桂皮酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、態様1~6のいずれかの洗浄剤組成物。
【0014】
態様8:I)少なくとも1種の有機溶媒が、グリコールエーテル、グリコールエーテルエステル、またはそれらの組み合わせを含む、態様1~7のいずれかに記載の洗浄剤組成物。グリコールエーテルという総称には、モノグリコールエーテルとポリグリコールエーテルが含まれ、また、グリコールエーテルエステルという総称には、モノグリコールエーテルエステルおよびポリグリコールエーテルエステルが含まれる。望ましくは、少なくとも1つの有機溶媒は、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート;ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル;ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペート;およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。
【0015】
態様9:電子デバイスコンポーネントを洗浄する方法であって、以下の工程、
・製品、コンポーネント、またはそれらのアセンブリ(部品)の表面を、前述の態様のいずれか1つの洗浄剤組成物と接触させ、
・任意に、部品の表面に対する洗浄剤組成物の移動を誘発し、
・部品の表面、特に部品の穴およびボアからポリマー材料残留物を除去するのに十分な時間、洗浄剤組成物と部品の表面との間の接触を維持し、
・洗浄剤組成物から部品を除去し、
・残留洗浄剤組成物およびポリマー材料残留物を部品の表面から洗い流し、
・任意に部品を乾燥する、
を含む、本質的にからなる、またはから構成される方法。
【0016】
態様10:電子デバイスコンポーネントは、約2グラム~約50グラムの範囲の低質量および/または複雑な形状を有し、および接触工程は、90℃未満、望ましくは約15℃~約75℃、最も好ましくは、約20℃~約40℃の温度で行われる、態様9に記載の方法。
【0017】
態様11:接触工程が、約0.5~15分間、好ましくは約1~10分間、最も好ましくは約2~7分間の範囲の時間である、態様9または10に記載の方法。
【0018】
態様12:電子デバイスコンポーネントが、裸の、セラミック化または陽極酸化された金属表面を含み、金属表面が、アルミニウム、チタン、マグネシウム、またはステンレス鋼のうちの少なくとも1つを含む、態様9または10または11に記載の方法。
【0019】
望ましくは、液体洗浄剤組成物は環境に優しいものであり、フェノール環に結合した炭素原子のC8~C9鎖を有するアルキルフェノールエトキシレート(APE)、たとえば、ノニルフェノールエトキシレートを含まない;ホルムアルデヒドを含まない、および、芳香族溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの非置換芳香族溶媒を含まない、および低含量の揮発性有機化合物である。本明細書で使用する「揮発性有機化合物」(VOC)という用語は、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、炭酸、金属炭化物または金属炭酸塩、炭酸アンモニウム、および連邦規則第40(CFR)§51.100(s)-標準室温で少なくとも0.01kPaの蒸気圧を有するもの(EC指令1999/13/EC)に基づくその他の除外化合物を除く炭素含有化合物として定義される。本発明の組成物のVOC放出量の測定は、ASTM標準試験法D2369-90に従って実施されるべきである。
【0020】
使いやすさおよび安全性のために、洗浄剤濃縮物組成物は、高い引火点、好ましくは順に90、91、92、94、96、98、99℃より高い引火点を有することが望ましい。
【0021】
「溶媒」という用語は、溶質、例えば、本開示による洗浄剤組成物または洗浄剤濃縮物の成分、例えば非イオン性界面活性剤、および/または少なくとも部分的に溶解または分散した汚染物質、例えば、凝集したポリマー材料を少なくとも部分的に溶解する媒体として機能する、水以外の液体を意味する。本明細書で使用される溶媒には、説明で別途定義されない限り、有機分子、無機分子、およびそれらの混合物が含まれ得る。
【0022】
任意の成分に関する「可溶性」という用語は、その成分が水、溶媒または溶媒系または組成物に溶解する「溶質」として作用し、それによって液体か固体、たとえば、沈殿物かにかかわらず、別個の相を形成しない溶液を形成することを意味する。
【0023】
様々な理由により、本明細書に開示される組成物および濃縮物は、従来技術において同様の目的で組成物に使用され得る多くの成分を実質的に含まないことが好ましい。具体的には、本発明によるコーティング組成物または濃縮物の少なくともいくつかの実施形態が、以下に挙げる好ましくは最小化される成分のそれぞれについて独立して、与えられた順序で、1.0、0.5、0.35、0.10、0.08、0.04、0.02、0.01、0.001、または0.0002パーセント、より好ましくはグラム/リットル、より好ましくはppmでの前記数値以下の各成分:非限定的な例として、任意のシリコン原子またはフッ素原子を含む有機材料、フッ素化された界面活性剤、オルガノシランおよび同様の分子;カチオン性界面活性剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒;d-リモネン、アセトン、エタノール、2-プロパノール、ヘキサノールなどの他の揮発性有機化合物も同様;イミダゾール;充填剤、研磨剤などの不溶性固体、例えば炭酸カルシウム、シリカ、過酸化物および過酸などの酸化剤、過マンガン酸塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過ホウ酸塩、六価クロム、硫酸、硝酸および硝酸イオン;同様に、ホルムアルデヒド、ホルムアミド、シアン化物、シアン酸塩;希土類金属;ホウ素、例えばホウ砂、ホウ酸塩;ストロンチウム;および/または遊離ハロゲンイオン、例えばフッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物を含む。また、本発明に従って洗浄される表面の少なくともいくつかの実施形態は、上に列挙した好ましくは最小化された各成分とは独立して、与えられた順序で、1.0、0.5、0.35、0.10、0.08、0.04、0.02、0.01、0.001、または0.0002パーセント、より好ましくは、1000分の1(ppt)での前記数値以下の各成分を含有することがますます好ましい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、上に挙げた最小限の成分の1つ以上を含まない。
【0024】
単純な用語「金属」または「金属の」は、物品であろうと表面であろうと、金属元素の原子、例えば、アルミニウムまたは鉄から構成される材料を意味すると当業者には理解され、金属元素は、与えられた順序でより好ましく、少なくとも55、65、75、85、または95原子パーセントの量で存在する。裸の金属表面は、空気および/または水中でのエージングにより金属表面に由来する自然発生酸化物を除き、コーティング層のない金属表面を意味すると理解されるであろう。陽極酸化金属基板は、電解質の存在下で回路内のアノードとして金属物品に電気を流すことによって金属基板の裸金属表面上に生成される金属酸化物の層を有する金属基板を意味すると理解され、酸化物コーティングは、金属基板からの金属に加えて、電解質からの金属も含まれる。セラミック化金属基板とは、酸化物、炭化物、ホウ化物、窒化物、またはケイ化物を含むコーティングを有する金属表面を意味し、これらのコーティングは、プラズマスプレー、HVOF、化学蒸着などの当技術分野で知られている様々な手段によって堆積され得る。
【0025】
操作例以外、または別段の指示がある場合を除き、本明細書で使用される成分の量、反応条件、または成分パラメーターを定義するすべての数値は、すべての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。記載全体を通じて、特に反対の記載がない限り、パーセント、「部」、および比の値は重量または質量によるものであり、本発明に関連する所与の目的に適しているまたは好ましい材料のグループまたはクラスの記載は、以下のことを意味する。グループまたはクラスのメンバーの任意の2つ以上の混合物が同等に適切または好ましいこと;化学用語での構成成分の記載は、新たに追加された1以上の構成要素と、他の構成要素が追加されたときに組成物中にすでに存在する1以上の構成要素との間の化学反応による組成物内の記載で指定された任意の組み合わせへの添加時、またはその場での添加時の構成成分を意味し、イオン型の構成要素の仕様は、組成物全体および組成物に添加される任意の物質について、電気的中性を生み出すのに十分な対イオンの存在をさらに意味する;このように暗黙的に指定される対イオンは、可能な限り、イオン形態で明示的に指定される他の成分の中から選択されることが好ましい;そうでない場合、そのような対イオンは、本発明の目的に悪影響を及ぼす対イオンを避けることを除いて、自由に選択することができる;分子量(MW)は、特に指定しない限り、重量平均分子量である;「モル」という言葉は「グラムモル」を意味し、その言葉自体とその文法上の変形はすべて、その種がイオン、中性、不安定、仮説上、または実際には明確に定義された分子を含む安定した中性物質であるかどうかに関係なく、その中に存在する原子のすべての種類と数によって定義されるあらゆる化学種に使用できる。
【0026】
このセクションは開示の一般的な概要を提供するものであり、その全範囲、すべての特徴、側面、目的を包括的に開示するものではない。本開示のこれらおよび他の特徴および利点は、好ましい実施形態の詳細な記載から当業者にはより明らかになるであろう。以下、詳細な記載に付随する図面について記載する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明の第1の実施形態では、電子デバイスの金属コンポーネント上の届きにくい場所から付着したポリマー堆積物を除去するのに有用な洗浄剤が提供される。特定の実施形態では、洗浄剤は小さな直径(例えば、0.5~2mmまたは平均1mm直径の陽極酸化アルミニウム製携帯電話アセンブリの行き止まりのネジ穴)に浸透し、ネジ穴のボアの表面に付着したポリマーの堆積物/凝集したラテックス粒子を除去する。
【0028】
洗浄剤は、本明細書に記載されるように、穏やかな洗浄条件で動作するが、非限定的な動作条件の例としては、周囲温度20~38℃、短い浸漬時間、低い洗浄剤濃度が挙げられ、超音波または電解エネルギーを必要としない。洗浄剤とそれを使用するプロセスのもう1つの利点は、穏やかな洗浄条件が金属部品アセンブリの他の部分に悪影響を及ぼさないことであり、例えば、陽極酸化またはセラミック化された金属、特にアルミニウムの表面は、洗浄プロセスの影響を受けない。穏やかな処理条件により、真空含浸(VI)によって防水された携帯電話のポリマー堆積物を、VIで生成された電話機のポリマーシールに損傷を与えることなく洗浄することもできる。
【0029】
この洗浄剤は、ポリマー組成物の真空含浸(VI)を使用して携帯電話を防水するプロセスに役立つ。一実施形態では、粘稠な高固形分ラテックスポリマー組成物が、携帯電話の外部表面を構成する個々の部品間の隙間に押し込まれる。本明細書で使用されるラテックスとは、水中の微細なポリマー粒子の分散物を意味し、粒子は、イオン安定性または立体安定性のために分離または凝集しないことが望ましい。イオンの安定性は粒子上のイオン電荷の結果であり、凝集を防ぐ反発力が生じる。立体安定性は、ポリマー粒子の表面が溶液中に広がり、粒子が物理的に離れた状態に保たれるときに生じる。乾燥後、このポリマーは柔軟なシールとなり、水の侵入を防ぐ。ただし、VIプロセス中、ポリマー溶液は、さらに組み立てる前に密閉されない、届きにくい場所(ネジ穴など) にも浸透する。ラテックスポリマー組成物が穴、ボア、およびその他の届きにくい場所に押し込まれると、側面に付着して目詰まりを形成する傾向があり、従来の洗浄剤では取り除くことができない。
【0030】
別の問題は、より前のプロセスで前処理された物品で発生する。物質移動の制限により、VI含浸物品では、これらの同じ手の届きにくい場所から、前のプロセス(アルミニウムの陽極酸化処理やシールなど)による化学物質が完全に除去されていないことが多く、その結果、これらの手の届きにくい場所で多価カチオン、例えば、陽極酸化によるAl+3および/または陽極酸化シールによるNi+2の残留汚染を有する可能性がある。不活性ポリマーラテックスがこれらの届きにくい場所に押し込まれると、残留多価カチオンが隣接するラテックス粒子のアニオン官能基の間を架橋し、ラテックス粒子間の静電反発力が減少する。静電反発力が不十分だと、ラテックス粒子が凝集して固体のポリマー堆積物になる可能性がある。これらのポリマー堆積物は、堆積物の化学的安定性(すなわち、平衡)および/または洗浄剤の化学物質が到達しにくい場所に到達する際の物質移動の制限(すなわち、動力学)のため、通常の洗浄剤および/または洗浄プロセスを使用して除去することはほとんど不可能である。これらの届きにくい場所にポリマーが堆積すると、携帯電話のさらなる組み立てが妨げられ、例えば、詰まったネジ穴にネジを簡単に通すことができないためである。
【0031】
本発明による洗浄剤は、これらの届きにくい場所に効果的に浸透し、単一の理論に束縛されるものではないが、配合物中のキレート剤がポリマー堆積物のアニオン官能基よりも強く多価イオンと結合し、それによって多価カチオンが堆積物から液体洗浄剤相のキレート剤-イオン複合体に抽出され、固体堆積物が分解され、届きにくい場所からポリマー材料を除去できるようになると考えられる。洗浄剤中の分散剤は、除去されたポリマー材料の残留物を安定化させ、洗浄された物品に再付着しないようにする傾向がある。
これらの利点は、製造速度の関係で個々の携帯電話を検査することができないため、携帯電話の大量生産において特に重要である。さらに、洗浄剤は非常に効果的であるため、洗浄剤タンク内で極端なプロセス条件(高温、長い浸漬時間、超音波エネルギーなど)を必要としない。このような極端なプロセス条件がないため、水密性を維持するために密閉する必要がある場所からのポリマーの除去が最小限に抑えられる。
【0032】
この洗浄剤は、アルカリ源、洗剤ビルダー、キレート剤、分散剤、洗浄剤、湿潤剤、消泡剤を含む非イオン性界面活性剤、ヒドロトロープ、溶剤などを含むことができる複数の機能性成分の特に効果的な組み合わせである。液体洗浄剤組成物は、以下により詳細に記載され、添付の特許請求の範囲で定義されるように、洗浄剤濃縮組成物または作業用洗浄剤浴組成物であり得る。
【0033】
液体洗浄剤浴組成物は、
A)水;
B)少なくとも1つのアルカリ源;
C)前述の成分のいずれとも異なる、少なくとも1つの洗剤ビルダー;
D)前述の成分のいずれとも異なる少なくとも1つのキレート剤;
E)前述の成分のいずれとも異なる、1つ以上の非イオン性界面活性剤、望ましくは少なくとも2つの非イオン性界面活性剤の組み合わせ:
E1)洗浄剤;
E2)消泡剤;および
E3)湿潤剤;
F)前述の成分のいずれとも異なる、少なくとも1つのアニオン性界面活性剤;
G)前述の成分のいずれとも異なる少なくとも1つの分散剤、たとえば、アニオン性ポリマー分散剤;
H)前述の成分のいずれとも異なる少なくとも1つのヒドロトロープ;
I)前述の成分のいずれとも異なる少なくとも1つの有機溶媒
を含む、本質的にからなる、またはから構成される。
【0034】
組成物は、酸化剤、乳化剤、酸性pH調整剤、腐食防止剤、殺生物剤、防腐剤などを含むがこれらに限定されない添加剤をさらに含んでもよい。
【0035】
洗浄剤組成物では、下流の処理および/またはその後の処理の接着を妨げる傾向があるSiまたはFを含む成分が最小限に抑えられる。好ましい実施形態では、洗浄剤組成物は、非限定的な例として、フッ素化界面活性剤、オルガノシランおよび同様の分子などのシリコンまたはフッ素原子を含む有機材料を含まない。
【0036】
水の成分A)は、ミネラル含有量または他の汚染物質が本発明の目的を妨げない限り、水道水であってもよく、望ましくは濾過水、脱イオン水、または蒸留水であってもよい。成分A)は、水溶性成分を溶解し安定な分散を維持するのに十分な水が存在する状態で、洗浄剤濃縮物組成物中で最小限に抑えることが望ましい。望ましくは、洗浄剤濃縮物組成物中の水は、洗浄剤濃縮組成物の重量に基づいて、約50~75重量%、場合により、水は、少なくとも好ましい順に30、35、40、50、55、60、65、または70重量%の量での範囲で存在してもよい。いくつかの実施形態では、洗浄剤濃縮物は、約75~80重量%以上含んでもよい。洗浄剤作業浴中に1%~10重量%で適切な洗浄性能および安定性が達成されるという条件で、洗浄剤濃縮組成物中に80重量%を超える水の量が含まれてもよい。一実施形態では、水は、好ましい順に、洗浄剤濃縮組成物の重量に基づいて、少なくとも50、51、52、53、または54重量%の量で存在し、好ましい順に、最大68、66、64、62、60、または58重量%で存在する。より清浄な作業槽では、水は約99、97、95、または90重量%以下の量で存在してもよい。
【0037】
成分B)少なくとも1つのアルカリ源は、本発明の目的を妨げない、洗浄剤濃縮物に可溶な無機または有機アルカリ成分であり得る。アルカリ源となり得る適切な材料としては、NaOH、KOH、NH4OH、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンおよび同様のアルカリ成分が挙げられる。一実施形態では、アルカリ源は無機化合物および有機化合物を含む。望ましくは、成分B)は、約4~約10の範囲のより清浄な濃縮物のpHを達成するのに十分な量で存在し、望ましくは、濃縮物は約6~約9のpH範囲を有し得る。濃縮洗浄剤に含まれるアルカリ成分の総量は、濃縮洗浄剤に使用される酸性成分の種類と量によって異なり、望ましくは、成分B)の量は、約1重量%~10重量%未満;好ましくは約1重量%~約5%の範囲である。一実施形態では、少なくとも1つのアルカリ源は、濃縮洗浄剤のpHを約8.0~8.5の範囲内に調整するのに十分な量で存在する。いくつかの実施形態では、成分B)に加えて酸性pH調整剤を使用することができ、あるいは、酸性pH調整剤が存在しなくてもよい。
【0038】
成分C)例えば硬度イオン(例えばCa++およびMg++)の有害な活性を低減するための1つ以上の機能を有する少なくとも1つの水溶性洗剤ビルダーは、ポリマー材料堆積物の非極性成分の除去(任意にその乳化)を補助し、粒子状ポリマー材料残留物を解膠し、望ましいpH範囲で緩衝し、洗浄剤中の分散したポリマー材料の安定化によってポリマー材料残留物の再堆積を減少させる。ビルダーの選択は、水中および濃縮物中のビルダーの溶解度、ならびに除去されるポリマー材料の堆積物に基づいて行うことができる。適切な洗浄剤ビルダーは水溶性であり、無機リン酸塩、無機ケイ酸塩、無機炭酸塩、ゼオライト等を含み得る。Na、K、Li、および第4級アンモニウム対イオンを有する水溶性のケイ酸塩およびリン酸塩が好ましい。無機ケイ酸塩の非限定的な例としては、ケイ酸ナトリウムおよびケイ酸カリウムなどが挙げられる。無機リン酸塩の非限定的な例としては、リン酸三ナトリウム(TSP)、メタリン酸ナトリウム(SMP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、ピロリン酸四カリウム(TKPP)などの一リン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩およびピロリン酸塩などが挙げられる。成分C)は、洗浄剤濃縮組成物の重量に基づいて少なくとも好ましい順に0.1~5.0重量%、好ましくは約0.2~4.5重量%、好ましくは約0.5~3重量%の量で存在する。一実施形態では、成分C)は、好ましい順に、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6または0.7重量%の量で存在し、好ましい順に、少なくとも経済的には7.0、6.0、5.0、4.7、4.0、3.5または2.5重量%以下である。
【0039】
成分D)少なくとも1つのキレート剤は、前述の成分のいずれとも異なり、金属および/または金属イオンをキレート化できる極性官能基を含む水溶性化合物である。成分D)キレート剤は、様々な種類のものであってもよく、カルボン酸などの有機材料またはポリリン酸塩などの無機材料が挙げられる。キレート剤は、金属イオン、特に多価金属(非限定的な例として、アルミニウム、マグネシウム、またはニッケル)と水溶性多座錯体を形成する傾向があり、それによってボア、穴および洗浄剤と表面の接触が制限されている他の領域での固体高分子材料からの金属イオンの除去が促進される。約25種類の異なるキレート剤の固体ポリマー材料に影響を与える能力についてテストした。テスト結果は、以下にさらに記載するように、本発明に有用なキレート剤が、洗浄される物品の表面に付着するポリマー材料に関連する金属イオンの脱離を誘発することを示した。金属イオンがキレート化されている間、洗浄剤組成物の他の成分がキレート剤と相乗的に作用して固体ポリマー材料を除去する。一実施形態では、複数の異なるキレート剤、好ましくは少なくとも2つのキレート剤が成分D)を含む。
【0040】
適切なキレート剤としては、アミノアルカン酸およびその塩、例えば、アルキレンポリ第三級アミンポリカルボン酸及びその塩;より具体的には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸三ナトリウム塩などの酸官能基を有するアミン主鎖分子が挙げられる。他のアルキレンポリアミンアルカン酸としては、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン二酢酸、ジエチレントリアミン三酢酸、ジエチレントリアミン四酢酸、トリエチレンテトラアミン二酢酸、トリエチレンテトラアミン三酢酸、トリエチレンテトラアミン四酢酸、トリエチレンテトラアミン五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、テトラエチレンペンタアミン二酢酸、テトラエチレンペンタアミン三酢酸、テトラエチレンペンタアミン四酢酸、テトラエチレンペンタアミン五酢酸、テトラエチレンペンタアミン六酢酸、テトラエチレンペンタアミン七酢酸酸、N-ヒドロキシメチルエチレンジアミン二酢酸、N-ヒドロキシメチルエチレンジアミン三酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、N-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン二酢酸、N-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン三酢酸、N-ヒドロキシプロピルプロピレンジアミン二酢酸、N-ヒドロキシプロピルプロピレンジアミン三酢酸、N-ヒドロキシブチルエチレンジアミン二酢酸、N-ヒドロキシブチルエチレンジアミン三酢酸酸、N-ヒドロキシプロピルプロピレンジアミン二酢酸、N-ヒドロキシプロピルプロピレンジアミン三酢酸を含むN-ヒドロキシアルキルアルキレンポリアミン;同様に、対応するプロピオン酸誘導体、酪酸誘導体、および上記化合物のナトリウム塩も含まれる。
【0041】
本発明で使用することができるキレート剤の他の非限定的な例としては、その性能を過度に妨げないという条件で、ホスホン酸を含むリン含有キレート剤、例えばEDTA様ホスホン酸およびその塩、ホスホン酸官能基がカルボン酸官能基に置き換わったもの、たとえば、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、非置換または置換のビスホスホン酸およびその塩、例えば、メチレンホスホン酸;メチレンジホスホン酸;1-ヒドロキシエチリジンビスホスホン酸;3-アミノ-1-ヒドロキシプロピリデン-ジホスホン酸;4-アミノ-1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ビスホスホン酸;6-アミノ-1-ヒドロキシヘキシリデン)ジホスホン酸等;同様に、フィチン酸およびその塩などのリン酸化アルコールも含まれる。他の適切なキレート剤としては、アルキルカルボン酸およびその塩、ヒドロキシ置換カルボン酸およびその塩など;ヒドロキシ置換を有していてもよいポリカルボン酸およびその塩が挙げられる。一実施形態では、アルキルカルボン酸は、C4~C8、好ましくはC4~C6の酸を含み、少なくとも1つの炭素がカルボン酸官能基(-COOH)を有し、好ましくは少なくとも1つのヒドロキシ(-OH)官能基をさらに含む。その非限定的な例としては、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸が挙げられる。一実施形態では、アスコルビン酸((2R)-2-[(1S)-1,2-ジヒドロキシエチル]-3,4-ジヒドロキシ-2H-フラン-5-オン)がキレート剤として作用する。
【0042】
成分D)は、洗浄剤濃縮組成物の重量に基づいて、約0.2~25重量%、望ましくは約0.5~10重量%、好ましくは約1.0~4.0重量%の量で存在し得る。一実施形態では、成分D)は、好ましい順に、少なくとも0.5、0.75、0.8、1.0、1.4、1.8、または2.0重量%の量で存在し、好ましい順に、25.0、23.0、21.0、19.0、17.0、16.0、12.0、10.0、8.0、6.0、または4.0重量%以下である。
【0043】
1つ以上の非イオン性界面活性剤の成分E)は、前述の成分のいずれとも異なり、望ましくは、以下の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの以下の成分を含む。
E1)疎水性および親水性の非荷電領域の両方を有することを意味する、両親媒性非イオン性界面活性剤で構成される洗浄剤。非イオン性界面活性剤としては、グリコシド(糖アルコール);ソルビトール脂肪酸エステル;ポリエーテルアルコール、ヒマシ油エトキシレート、獣脂アミンエトキシレートなどのポリオキシエチレン;リン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル等のエステル類が考えられる。一般に、ポリエーテルアルコールは、アルコキシル化されたC6~C14芳香族またはアルカン、第一級または第二級アルコールを含み得る。望ましくは、E1)は、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびそれらの組み合わせから選択されるアルコキシ基を含むアルコキシル化アルコールを含む非イオン性洗浄剤を含むことができる。アルコキシル化は、PO-EOブロック、ランダムアルコキシル化、親水性EOエンドキャップを有するアルコキシ基ブロックなど、好ましくはエトキシル化アルコールであり得る。第一級アルコールエトキシレート、第二級アルコールエトキシレートおよびベンジルアルコールエトキシレートが好ましい。好ましい実施形態では、洗浄剤は複数の非イオン性界面活性剤を含み、前記複数の界面活性剤のうちの1つは芳香族エトキシル化非APEアルコールである。
【0044】
E2)本明細書の他の成分とは異なる非イオン性界面活性剤を含む消泡剤。消泡剤は、洗浄剤配合物中の泡の発生を防止または阻止するために添加される。一般に、これらの薬剤は洗浄剤に溶けにくい、または部分的に溶け、泡状の表面に容易に広がり、気液表面に対して親和性があり、そこで薬剤が泡のラメラを不安定にし、気泡を破裂させて表面の泡を破壊する。取り込まれた気泡は凝集し、大きな気泡はより早くバルク液体の表面に上昇する。洗浄剤に含まれる一般的に使用される消泡剤、非イオン性界面活性剤などは、性能を過度に妨げたり、部品表面に残留物を残したり、後の加工に悪影響を与えたりしない限り、ステアリン酸塩、疎水性不溶性粒子、エーテル、アルコールおよびグリコールが含まれる。望ましくは、E2)はシリコン含有およびフッ素含有消泡剤を含まない。一実施形態では、消泡剤は、C8~C18の飽和または不飽和の分岐ジオールを含んでもよい。好ましい消泡剤は、両親媒性非イオン性界面活性剤、例えば飽和多価アルコール、例えばプロパン1,2,3-トリオール;不飽和多価アルコール、例えばいわゆるジェミニ界面活性剤、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオールなどのアセチレンジオール;飽和直鎖状ポリアルコールおよび不飽和直鎖状ポリアルコール、例えばジオール、トリオールなどを含む。
【0045】
E3)本明細書の他の成分のいずれとも異なる、1モル以上のエトキシル化を有する分子から選択される1以上の非イオン性界面活性剤からなる湿潤剤。適切な湿潤剤としては、ポリエーテルアルコール、典型的には少なくとも1モルのエトキシル化を有するエトキシル化アルキルアルコール、例えば2~25モルのエトキシル化を有するC8~C18アルコールが挙げられる。湿潤剤は、8、9、および10個の炭素原子を有する脂肪酸のジエチレングリコールモノエステル、および9および10個の炭素原子を有する脂肪酸のトリエチレングリコールモノエステルを含んでもよい。成分E3は、適切な湿潤剤の混合物を含んでもよい。望ましくは、成分E3は、2~20モルのエトキシル化を有するC8~C14アルコールの混合物を含む。
【0046】
一実施形態では、湿潤剤は、一般式E3に対応する1つ以上のエトキシル化アルコールを含む:
R3-(OCH2CH2)nOH (E3)
式中、R3は、C6~C18のアルキルであり、望ましくはC8~C14アルキルであり、
nは、1~30、望ましくは2~24、さらに好ましくは1~12の範囲である。
【0047】
湿潤剤は、約34、33、32、31、または30未満で約22、23、24、25、26、または27以下の静的表面張力と、75、72、70、60、50、40、30、20、または10秒以下のドレーブス湿潤時間を有することが望ましい。好ましくは、ドレーブス湿潤時間は、1~30秒の範囲、最も好ましくは3~10秒の範囲に最小化される。
【0048】
1つ以上の非イオン性界面活性剤の成分E)は、洗浄剤濃縮組成物の重量に基づいて総量で約1.0~30.0重量%、望ましくは約2.0~25.0重量%、好ましくは約2.5~21.0重量%、より好ましくは5.0~15.0重量%の範囲で存在する。一実施形態では、成分E)は、好ましい順に、少なくとも1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0または7.0重量%および好ましい順に、28.0、26.0、25.0、23.0、20.0、19.0、17.0、16.0、13.0、11.0または10.0重量%以下の量で存在する。成分E)の前述の量は、洗浄剤、消泡剤、湿潤剤、またはE1)、E2)およびE3)の2つ以上の組み合わせとして存在する非イオン性界面活性剤の量の合計である。一実施形態では、濃縮組成物中に存在する成分E)の少なくとも0.01~5.0重量%、好ましくは0.1~2.0重量%は消泡剤E2)である。また、成分Eの非イオン性界面活性剤は、明確にするために、それぞれが単一の個別の機能を有するかのように記載されているが、単一の非イオン性界面活性剤の化学的性質がいくつかの機能、たとえば、洗浄力、分散性、湿潤性などを同時に、しかし多かれ少なかれ果たし得ることは当業者には理解されよう。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤化合物は、消泡効果、湿潤効果、および洗浄効果のうちの2つ以上の組み合わせを提供し得る。
【0049】
少なくとも1つのアニオン性界面活性剤の成分F)は、前述の成分のいずれとも異なり、部品表面から除去されたポリマー材料および/または金属イオンを分散させ、これらのポリマー材料の残留物が洗浄された部品表面で再付着しないようにすることができる官能基を含む水溶性化合物である。成分F)のアニオン性界面活性剤は、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルホスホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩など、およびそれらのエトキシル化類似体などの様々な種類のものでよく、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、およびビス(2-エチルヘキシル)ナトリウムスルホコハク酸塩が挙げられる。成分F)は、洗浄剤濃縮組成物の重量に基づいて、少なくとも好ましい順に1.0~10.0重量%、望ましくは約2.0~8.0重量%の量で存在し得る。一実施形態では、成分F)は、好ましい順に、少なくとも1.0、2.0、3.0、4.0、または5.0重量%の量で存在し、好ましい順に、13.0、12.0、11.0、10.0、9.0、8.0、7.0、または6.0重量%以下である。
【0050】
成分G)少なくとも1つの分散剤は、前述の成分のいずれとも異なり、ヒドロキシル(-OH)、カルボキシル(-COOH)、スルホネート、スルフェート、アミノ(-NH2)、イミノ(-NH-)、およびポリオキシエチレン(-CH2CH2O-)基などの1以上の極性官能基または解離性官能基を有するアニオン性有機ポリマー分散剤を含んでもよい。ポリマー分散剤は、約5,000~約10,000グラム/モルの範囲のMWを有し得る。汚染粒子、たとえば、洗浄剤によって除去され、水性作業洗浄剤浴中に存在するポリマー材料が、ポリマーファンデルワールス引力が静電反発力よりも大きい場合、凝集する傾向がある可能性がある。適切な分散剤は、ポリマー材料残留粒子間の立体障害と静電安定化を引き起こし、粒子の凝集を防ぐ。適切なアニオン性ポリマー分散剤としては、ナフタレンスルホン酸、クレゾール、1-ナフトール6-スルホン酸、脂肪アルコールエチレンオキシド縮合物、アルキルアリールスルホネートまたはリグニンスルホネートのいずれかのホルムアルデヒド縮合物が挙げられ、縮合ナフタレンスルホン酸およびその塩が好ましい。アニオン性ポリマー分散剤のさらなる例には、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、および他の適切なポリアクリレートおよびポリメタクリレートが含まれる。成分G)は、洗浄剤濃縮組成物の重量に基づいて、少なくとも好ましい順に1.0~10.0重量%、望ましくは約2.0~8.0重量%の量で存在する。一実施形態では、成分G)は、好ましい順に、少なくとも1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、5.5または6.0重量%の量で存在し、好ましい順に、15.0、14.0、13.0、12.0、11.0、10.0、9.0、8.0、7.0重量%以下である。
【0051】
成分H)少なくとも1つの有機ヒドロトロープであり、前述の成分のいずれとも異なり、その機能の1つは、難溶性有機分子を溶解する水の能力を増加させ、それによって洗浄剤濃縮物および洗浄剤浴の安定性を高めることである。本明細書で使用されるヒドロトロープとは、小さい、典型的にはC6~C10、望ましくはC6~C9分子を含む水溶性アニオン性化合物を指す。これらの非ポリマー分子は、水相における有機材料の溶解度を高める疎水性部分と親水性部分を持っている。本明細書で使用されるヒドロトロープは、サイズの違いによって成分F)のアニオン性界面活性剤とは区別される。界面活性剤は長い炭化水素鎖を有するが、ヒドロトロープは本質的に疎水性の短くてコンパクトな部分(多くの場合、必ずしも芳香環であるわけではない)によって特徴付けられる。ヒドロトロープの重量平均分子量は、約100g/molから約250g/mol以下の範囲にあり、これは、成分F)および成分G)の分子の両方よりも小さい。
【0052】
いくつかの実施形態では、ヒドロトロープは、水中での有機溶媒の溶解度を20倍以上増加させることができ、これは、溶液を安定化し、粘度を変更し、曇点を上昇させ、低温相分離を制限し、および/または泡を低減するのに役立ち得る。適切なヒドロトロープは、硫酸基、スルホン酸基、ニトロ基、またはカルボン酸基などの1以上の親水性基によって置換された、アルキル、芳香族またはアルコキシ疎水性部分、好ましくは芳香族で構成され得、芳香族スルホネートが好ましい。ヒドロトロープの非限定的な例としては、ブチルベンゼンスルホン酸塩、安息香酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンジスルホン酸ナトリウム、m-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ブチルモノグリコール硫酸ナトリウム、桂皮酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウムおよびそれらの組み合わせが挙げられる。成分H)は、洗浄剤濃縮物組成物を安定化させるのに十分な量で存在する。一般に、ヒドロトロープは、洗浄剤濃縮組成物の重量に基づいて、少なくとも好ましい順に2~20重量%、望ましくは約4~約18重量%、好ましくは約5.0~15重量%の量で存在することができる。一実施形態では、成分H)は、好ましい順に、少なくとも1、2、3、4、5、7、9、11、または13重量%の量で存在し、好ましい順に、少なくとも経済的には、19、18、17、16、15、または14重量%以下である。
【0053】
成分I)前述の成分のいずれとも異なる少なくとも1つの有機溶媒は、グリコールエーテル、モノグリコールまたはポリグリコールエーテルなどのグリコールエーテルエステル、モノグリコールまたはポリグリコールエーテルエステル、およびそれらの組み合わせから選択され得る。適切な有機溶媒としては、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル;ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート;ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル;ビスジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペート、非HAP、ASTM D6886による典型的なVOC含有量が0.5%未満のグリコールエーテルエステル;(2-メチルグルタル酸ジメチル)などの短分岐アルキル鎖ジカルボン酸の二塩基性エステル誘導体などが挙げられる。成分I)は、洗浄剤濃縮組成物の重量に基づいて少なくとも好ましい順に1.0~20.0重量%、望ましくは2.0~10.0重量%または2.5~9.5重量%の量で存在し得る。一実施形態では、成分I)は、好ましい順に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8または9重量%の量で存在し、および好ましい順に、最大20.0、19.0、17.0、16.0、15.0、14.0、13.0、12.0、11.0または10.0重量%である。
【0054】
組成物は、乳化剤、pH調整剤、腐食防止剤、殺生剤、防腐剤などを含むがこれらに限定されない添加剤をさらに含んでもよい。pH調整剤は、本発明の目的を妨げない限り、Si、Cl、Fを含まない有機酸または無機酸であればよい。好ましくは、増粘剤または研磨剤は組成物中に含まれない。
【0055】
上記の濃度は、洗浄剤濃縮物組成物中の成分の量を表す。濃縮物は希釈せずに使用することもできるが、少なくとも経済性を考慮すると、濃縮物を希釈することによって洗浄剤の使用濃度を達成することが望ましい。好ましくは、洗浄剤組成物の作業浴は、濃縮液の10.0重量%希釈または洗浄性能が十分である場合に限り、1.0重量%希釈まで下げてよい。本発明の目的を妨げない、例えば洗い流しが不完全であったり、使用中に沈殿したりしない濃縮物の任意の希釈を使用することができるが、一般に不必要で非経済的である。
【0056】
本発明の洗浄剤濃縮組成物は、その成分を成分A)の水に混合することによって調製することができる。望ましくは、水への溶解度が低い成分をヒドロトロープと同時に、またはヒドロトロープの後に添加することができる。必要に応じて、最後に溶媒を加え、均一な溶液または分散液が得られるまで組成物を混合する。追加の成分B)少なくとも1つのアルカリ源を、pHを補正するための酸性pH調整剤の有無にかかわらず添加することができる。
【0057】
除去すべき付着性ポリマー材料(以下、汚染物質またはポリマー材料堆積物)を有する表面を有する製品、コンポーネントまたはそのアセンブリ(以下、部品)、特に電子デバイスコンポーネントを洗浄する方法も提供される。望ましくは、本明細書に開示される液体洗浄剤濃縮組成物の約1重量%~約10重量%の範囲の濃度の液体作業用洗浄剤浴がこのプロセスで使用される。洗浄される表面は、任意の材料を含むことができるが、典型的には、金属、陽極酸化金属、セラミック化金属、または類似の金属被覆表面のうちの少なくとも1つを含む。一般に、金属は、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ステンレス鋼、および携帯電話などのハンドヘルド電子機器の外側部分に使用するのに望ましい他の金属から選択することができる。この部品は、場合によってはネジが切られた穴やボア、あるいはポリマー材料の堆積物を内部に有する他のオリフィスを有する場合があり、これらは除去するのが特に困難である。さらに、軽量のハンドヘルド電子機器に対する消費者の要望により、洗浄される基板は、低質量(約2~50グラム)および/または複雑な形状を有する場合があり、そのために洗浄剤が必要となり、望ましくは過酷な条件および/または長時間の浸漬を回避するプロセスが必要となる。
【0058】
本発明による方法は、本明細書に記載の洗浄剤組成物を利用し、この方法は以下の工程を含む:
1)製品、コンポーネント、またはそれらのアセンブリ(部品)の表面を、本明細書に記載の洗浄剤組成物と接触させ、
2)任意に、部品の表面に対する洗浄剤組成物の移動を誘発し、望ましくは、これは、洗浄剤内に空気を泡立てるか、部品が固定されているラックを振動させることによって達成され得、
3)部品の表面、特に部品の穴およびボアからポリマー材料残留物を除去するのに十分な時間、洗浄剤組成物と部品の表面との間の接触を維持し、
4)洗浄剤組成物から部品を除去し、
5)残留洗浄剤組成物およびポリマー材料残留物を部品の表面から洗い流し、
6)任意に部品を乾燥する。
【0059】
一般的な洗浄剤ラインには3~10個のタンクが含まれ、最初のいくつかには、作業用洗浄剤浴を形成する洗浄剤濃縮物のさまざまな希釈液が含まれ、最後のいくつかには、部品から残留洗浄剤とポリマー材料の残留物を洗い流す機能を持つ水が含まれている。温度、浸漬時間、撹拌の種類はタンクごとに異なるが、一般にラインの先頭では条件がより厳しくなり(温度が高く、撹拌の種類など)、ラインの終わりに向けて条件が緩やかになる。通常、洗浄されるアセンブリは、処理ラインでの輸送のためにラックに取り外し可能に取り付けられる。望ましくは、取り外し可能に取り付けられたアセンブリを備えたラックは、上記の作業用洗浄浴の少なくとも1つを含むタンクに浸漬される。部品表面に対する洗浄剤浴の移動を誘発するために、さまざまな手段が提供される。典型的な手段としては、作動中の洗浄装置に空気または不活性ガスを通すバブリング装置、洗浄対象の部品に悪影響を及ぼさない限り、洗浄プロセス中に適用できる超音波エネルギーが挙げられる。接触工程中にタンク内で移動可能なラックも有用であり、回転、振動、振り子型、波状などの運動であり、これには、ラックの長手方向軸に対するx、y、またはz方向のいずれかの運動が含まれる場合がある。経済的には好ましくないが、洗浄剤浴を含むタンクやラックに収納された部品が動いたり振動したりする可能性がある。洗浄器内での滞留時間中、接触時間の少なくとも部品の間、部品表面に対する洗浄液浴の移動を誘発する装置を作動させることができる。
【0060】
このプロセスは、経済的および環境保護の目的から、周囲温度(約20~40℃)で実行することが望ましいが、温度が本発明の目的を妨げない、たとえば、洗浄されるアセンブリ内の防水材または他の基材に悪影響を及ぼしたり、洗浄剤の相分離や過度の固体の沈殿を誘発したりするなどしないのであれば、約5℃までの低温、または最大90℃までの高温で実行することもできる。例えば、洗浄温度は、好ましい順に少なくとも約4.5、7、10、13、15、18、21、24、27、30、32、35または38℃からであり、好ましい順に、約90、80、70、65、60、55、50、45、または42℃までである。温度とは、洗浄の接触工程中の平均作業洗浄剤浴温度を指す。一実施形態では、温度は約15℃~約75℃の範囲であってよい。電子機器製造における処理時間は短いため、部品と作業用洗浄剤浴との接触時間は、約1~10分間、好ましくは2~4分間の範囲であることが望ましい。製造ラインの要件を満たす場合には、より短い洗浄時間を使用することもできる。
【0061】
一実施形態では、接触工程は、部品を洗浄剤組成物に浸漬する工程を含む。いくつかの実施形態では、洗浄プロセスは、超音波および/または電解エネルギーを適用しない場合がある。別の実施形態では、部品を構成する個々の部品間の隙間に意図的に導入され、乾燥後にシールアセンブリを乾燥させるポリマーシールに悪影響を及ぼさないという条件で、洗浄プロセス中に超音波エネルギーを加えてもよい。
【0062】
表面に対する洗浄剤組成物の移動を誘発することは、洗浄剤組成物および洗浄される部品を含む洗浄タンク内に空気をバブリングすること、超音波など、洗浄剤組成物中で部品を移動させること、および/または洗浄剤組成物を撹拌することを含んでもよい。
【0063】
特定の実施形態では、洗浄される「ポリマー材料堆積物」は、固体または半固体の有機ポリマー材料であってもよく、有機ポリマーおよび遷移金属元素を含む固体ポリマー材料を含んでもよい。
【0064】
本明細書内では、明瞭で簡潔な明細を記載できるように実施形態が記載されているが、本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分離したりできることが意図されており、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載されるすべての好ましい特徴は、本明細書に記載される本発明のすべての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明は、組成物、物品、またはプロセスの基本的および新規な特性に実質的に影響を及ぼさない要素またはプロセスステップを除外するものとして解釈することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に存在するものとして特定されていない任意の要素またはプロセスステップを除外するものとして解釈することができる。
【0066】
本明細書では、特定の実施形態を参照して本発明を図示し記載したが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図したものではない。むしろ、本発明から逸脱することなく、特許請求の範囲および均等物の範囲内で詳細に様々な修正を行うことができる。
【実施例】
【0067】
例1
各実施例について、テスト用の洗浄剤濃縮組成物は、表1に列挙されている成分を混合することによって調製した。特に明記しない限り、実施例中の原料は希釈されていない。表に特定の重量パーセントで存在するものとして示されている原材料については(例えば、NaOH50重量%)、原料は水で希釈したものであると理解される。
【0068】
洗浄剤濃縮物のpHを表1に示す。洗浄剤濃縮物は相分離や沈殿を示さなかった。
【表1】
【0069】
洗浄剤配合物は、ACT Corpから購入した陽極酸化アルミニウムのパネルから切り取った1×3インチのクーポンからポリマー材料およびアルミニウムカチオンを含むポリマー材料の堆積物を除去する性能についてテストした。テストクーポン上のポリマー材料の堆積は次のように作成した。少量の1%Al(NO3)3を水平の陽極酸化アルミニウムクーポン上にピペットで移し、直径1cmまでの3つの液滴を形成した。次いでクーポンを70℃のオーブンで30分間乾燥させた。次に、固体のAl(NO3)3円形堆積物の薄膜を有するクーポンを、Henkel Corporationから市販されているラテックスポリマー含有水性接着剤に5分間浸漬した。パネルの浸漬中に、ラテックスポリマーが不安定になり、Al(NO3)3円形堆積物が塗布されていた場所にポリマー材料堆積物の付着リングが形成した。クーポンを接着剤から取り外し、水で1分間洗い流して、不安定化されていない未接着接着剤を除去した。洗浄した各クーポンを、それぞれの作業用洗浄剤浴を形成する洗浄剤濃縮物のその10重量%溶液を入れたビーカーに浸漬した。円形の堆積物がクーポンから剥がれるまで、または60分間の滞留時間のいずれか早い方まで、クーポンを洗浄剤浴に浸漬した。次いで、クーポンを洗浄剤溶液から取り出し、脱イオン水で洗い流し、送風乾燥し、清浄度を評価した。円形の堆積物がフィルムなしで完全に除去されたパネルは10として採点され、パネル上に残った円形のポリマーリングのパーセントに応じて、クーポンには1まで減点されたスコアを与えた。
【0070】
以下の表2は、7つの配合物の有効性を比較する。全体的に清浄度が向上し、スポットが落ちるまでの時間が短縮され、ビーカーから取り出すまでの時間が短縮されていることに注意すべきである。
【0071】
【0072】
洗浄剤の評価は、ポリマースポット除去の平均時間と相対的な全体的な清浄度に基づいて行った(10が良好、1が不良)。
【0073】
例2
上記のテスト結果は、溶媒が洗浄剤の有効性に大きな影響を与えることを示した。洗浄剤システムに対する溶媒の影響は、さまざまな溶媒を使用して一連の洗浄剤濃縮物を作成することによって調査した。テスト用の溶媒は、水溶性や引火点などの基準に基づいて選択した。
【0074】
表3の各実施例について、テスト用の洗浄剤濃縮組成物は、列挙された成分を混合することによって調製した。配合物13A、B、C、D、EおよびFは、溶媒が変化し、GおよびHの溶媒および界面活性剤の量が変化したことを除いて、実質的に同じであった。洗浄剤濃縮物を相分離または沈殿について評価し、pHについてテストした。結果を以下の表4に示す。中性付近の範囲で同様のpHを有するにもかかわらず、洗浄剤濃縮物のうち3つは沈殿を示した。
【0075】
配合物13A、B、C、D、E、F、GおよびHを、10重量%脱イオン水で希釈した作業用洗浄剤浴に希釈した。洗浄剤配合物を以下のようにテストした。ACT陽極酸化アルミニウムパネルからのテストクーポンを例1に従ってテスト用に調製した。クーポンを洗浄剤濃縮物の10重量%希釈を含む洗浄剤作業浴のビーカーに浸漬した。配合物13A、B、C、D、E、F、GおよびHを使用することによってもたらされる洗浄速度のおかげで、テスト時間は60分から15分に短縮された。洗浄剤内のクーポンを3分ごとに20秒間振盪した。15分後、クーポンを洗浄液から取り出し、脱イオン水で洗い流し、送風乾燥して、清浄度を評価した。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
ポリマースポット除去までの平均時間および相対的な清浄度に基づいて、作業洗浄剤浴を評価した。円形の堆積物が完全に除去されたパネルは10として採点され、クーポンには、パネル上に残った円形ポリマーリングのパーセントに応じて1まで減点したスコアが与えられた。一部の洗浄剤はより速いスポット除去を示したが、全体的な清浄度(表面のヘーズなど)は一部の遅い洗浄剤よりも劣っていた。一部の界面活性剤の濃度が高くても、必ずしも性能が向上するわけではない。13Gおよび13Hを参照。
【0080】
上記の開示は、関連する法的基準に従って記載されており、したがって、この記載は本質的に限定的なものではなく、例示的なものである。開示された実施形態に対する変形および修正は当業者には明らかであり、本開示の範囲内に含まれる。したがって、この開示に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定することができる。
【国際調査報告】