(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】乳酸気化方法、乳酸気化装置、およびアクリル酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/43 20060101AFI20231026BHJP
C07C 57/04 20060101ALI20231026BHJP
C07C 51/347 20060101ALI20231026BHJP
C07C 59/08 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C07C51/43
C07C57/04
C07C51/347
C07C59/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523170
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 KR2021014268
(87)【国際公開番号】W WO2022080905
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134655
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134656
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0148082
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0183552
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・オ・イム
(72)【発明者】
【氏名】ヒイン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】インホ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】デホ・ホン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC13
4H006AD10
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC35
4H006BD33
4H006BD51
4H006BD84
4H006BS10
(57)【要約】
本明細書は乳酸気化装置に関するものである。本発明の乳酸気化方法および装置によれば、短時間で乳酸オリゴマーの含有量を減らし、乳酸単分子の含有量を高めることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1-1濃度の乳酸水溶液を加熱および加圧する段階;
加熱および加圧された前記第1-1濃度の乳酸水溶液を含む液相(Liquid phase)の第1-1ストリームを噴霧する段階;
噴霧により前記第1-1ストリームに含まれた乳酸を気化させる段階;および
乳酸分子を含む気相の第1-3ストリームを収得する段階を含む、乳酸気化方法。
【請求項2】
前記加熱および加圧する段階は、前記第1-1濃度の乳酸水溶液を150℃~250℃の温度および1bar~40barの圧力条件で加熱および加圧する、請求項1に記載の乳酸気化方法。
【請求項3】
前記第1-1濃度は20~99wt%である、請求項1に記載の乳酸気化方法。
【請求項4】
前記第1-1ストリームの温度は10℃~300℃である、請求項1に記載の乳酸気化方法。
【請求項5】
前記第1-1ストリームは、0.1g/分~1.0g/分の流量で噴霧される、請求項1に記載の乳酸気化方法。
【請求項6】
前記第1-1ストリームの噴霧時、前記第1-1ストリームおよび水蒸気を含む気相(gas phase)の第1-2ストリームを混合噴霧する、請求項1に記載の乳酸気化方法。
【請求項7】
前記第1-2ストリームの温度は200~600℃である、請求項6に記載の乳酸気化方法。
【請求項8】
前記第1-2ストリームは、0.1g/分~3.0g/分の流量で噴霧される、請求項6に記載の乳酸気化方法。
【請求項9】
前記混合噴霧段階で第1-1ストリーム流量:第1-2ストリーム流量=1:1.5~1:5である、請求項6に記載の乳酸気化方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法により乳酸を気化して乳酸分子を収得する段階;
前記乳酸分子を脱水反応させてアクリル酸を製造する段階;および
前記アクリル酸を収得する段階を含む、アクリル酸の製造方法。
【請求項11】
第1-1濃度の乳酸水溶液を加熱および加圧する前処理部;
前記前処理部から乳酸水溶液の供給を受けて乳酸水溶液を含む第1-1ストリームを供給するフィード供給部;
前記フィード供給部から移送された第1-1ストリームを気化反応器の内部に噴霧する噴霧部;
噴霧された乳酸水溶液が気化する気化反応器;および気化された乳酸分子を含む第1-3ストリームを収得する収得部を含む、乳酸気化装置。
【請求項12】
前記前処理部は、第1-1濃度の乳酸水溶液を150℃~250℃の温度および1bar~40barの圧力条件で加熱および加圧する温度調節部および圧力調節部をさらに含む、請求項11に記載の乳酸気化装置。
【請求項13】
前記第1-1濃度は20~99wt%である、請求項11ないし12に記載の乳酸気化装置。
【請求項14】
前記フィード供給部は前記第1-1ストリームの温度を150~300℃に調節するフィード温度調節部をさらに含む、請求項11に記載の乳酸気化装置。
【請求項15】
前記噴霧部は、前記第1-1ストリームが0.1g/分~1.0g/分の流量で噴霧されるように調節する第1-1ストリームノズルを含む、請求項11に記載の乳酸気化装置。
【請求項16】
前記乳酸気化装置は水蒸気を供給する水蒸気供給部をさらに含み、
前記噴霧部は前記水蒸気発生装置から水蒸気の供給を受けて水蒸気を含む気相(gas phase)の第1-2ストリームを気化反応器の内部に噴霧する第1-2ストリームノズルをさらに含む、請求項11に記載の乳酸気化装置。
【請求項17】
前記水蒸気供給部は前記第1-2ストリームの温度を200~600℃に調節する水蒸気温度調節部をさらに含む、請求項16に記載の乳酸気化装置。
【請求項18】
前記噴霧部で前記第1-2ストリームは、0.1g/分~3.0g/分の流量で噴霧されるように調節される、請求項16に記載の乳酸気化装置。
【請求項19】
前記噴霧部で前記第1-1ストリーム流量:前記第1-2ストリーム流量=1:1.5~1:5になるように調節される、請求項16に記載の乳酸気化装置。
【請求項20】
乳酸水溶液を含む液相(Liquid phase)の第3-1ストリームおよび水蒸気を含む気相(gas phase)の第3-2ストリームを混合噴霧する段階;
前記第3-1ストリームおよび第3-2ストリームの間の熱交換により乳酸水溶液を気化する段階;および
乳酸単分子を含む気相の第3-3ストリームを収得する段階を含む、乳酸気化方法。
【請求項21】
前記第3-1ストリームに含まれた前記乳酸水溶液は乳酸濃度が40~99wt%である、請求項20に記載の乳酸気化方法。
【請求項22】
前記第3-1ストリームに含まれた前記乳酸水溶液中の多量体の濃度が2~55wt%である、請求項20に記載の乳酸気化方法。
【請求項23】
前記第3-1ストリームの温度は10~300℃である、請求項20に記載の乳酸気化方法。
【請求項24】
前記第3-2ストリームの温度は200~600℃である、請求項20に記載の乳酸気化方法。
【請求項25】
前記第3-2ストリームと前記第3-1ストリームの温度差は200℃~500℃である、請求項20に記載の乳酸気化方法。
【請求項26】
前記第3-1ストリームは、0.05g/分~1.5g/分の流量で噴霧される、請求項20に記載の乳酸気化方法。
【請求項27】
前記第3-2ストリームは、0.1g/分~4.0g/分の流量で噴霧される、請求項20に記載の乳酸気化方法。
【請求項28】
前記混合噴霧段階で第3-1ストリーム流量:第3-2ストリーム流量=1:1.5~1:5である、請求項20に記載の乳酸気化方法。
【請求項29】
請求項20ないし28のいずれか一項に記載の方法により乳酸を気化して乳酸分子を収得する段階;
前記乳酸分子を脱水反応させてアクリル酸を製造する段階;および
前記アクリル酸を収得する段階を含む、アクリル酸の製造方法。
【請求項30】
乳酸水溶液を含む第3-1ストリームを供給するフィード供給部;
水蒸気を含む第3-2ストリームを供給する水蒸気供給部;
前記フィード供給部から第3-1ストリームの供給を受けて、前記水蒸気供給部から第3-2ストリームの供給を受けて乳酸水溶液の気化反応を行う気化反応部;および
気化された乳酸分子を含む第3-3ストリームを収得する収得部を含む、乳酸気化装置。
【請求項31】
前記気化反応部は、その下端に前記フィード供給部から供給を受けた第3-1ストリームおよび前記水蒸気供給部から供給を受けた第3-2ストリームを気化反応部の内部に噴霧する噴霧部を含む、請求項30に記載の乳酸気化装置。
【請求項32】
前記フィード供給部は、乳酸水溶液を供給する乳酸水溶液フィード;および
前記第3-1ストリームの温度および圧力を調節するためのフィード前処理部を含む、請求項30に記載の乳酸気化装置。
【請求項33】
前記フィード前処理部は、前記第3-1ストリームを10~300℃の温度で排出する、請求項32に記載の乳酸気化装置。
【請求項34】
前記水蒸気供給部は、水を供給する水供給部;および
前記第3-2ストリームの温度および圧力を調節するための水前処理部を含む、請求項30に記載の乳酸気化装置。
【請求項35】
前記水前処理部は、前記第3-2ストリームを200~600℃の温度で排出する、請求項34に記載の乳酸気化装置。
【請求項36】
前記噴霧部は、前記第3-1ストリームおよび前記2ストリームを混合して噴霧する混合噴霧ノズルを含む、請求項31に記載の乳酸気化装置。
【請求項37】
前記噴霧部は、前記第3-1ストリームを噴霧する第3-1ノズルおよび前記2ストリームを噴霧する第3-2ノズルを含む、請求項31に記載の乳酸気化装置。
【請求項38】
前記噴霧部では前記第3-2ストリーム噴霧流量に対する前記第3-1ストリーム噴霧流量の比が1:1.5~1:5になるように調節される、請求項31に記載の乳酸気化装置。
【請求項39】
前記収得部は前記気化反応部の上部に位置する、請求項30に記載の乳酸気化装置。
【請求項40】
前記収得部は、気化された乳酸分子と液化された水溶液成分を分離排出する気-液分離器を含む、請求項30に記載の乳酸気化装置。
【請求項41】
前記気-液分離器から排出された水溶液成分は、乳酸水溶液フィードに回収されて再使用される、請求項40に記載の乳酸気化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年10月16日付韓国特許出願第10-2020-0134656号、2020年10月16日付韓国特許出願第10-2020-0134655号、2020年11月6日付韓国特許出願第10-2020-0148082号、および2020年12月24日付韓国特許出願第10-2020-0183552号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本明細書は乳酸気化方法、乳酸気化装置、および乳酸からアクリル酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
乳酸はLactic acid(ラクチドアシッド)とも表記され、分子内にヒドロキシ基とカルボキシル基をすべて含む比較的簡単な構造の有機酸である。
【0004】
乳酸は伝統的には主にラクトースやグルコースなどの発酵過程で自然に生成され、発酵食品の風味を向上させる役割をし、人体に毒性がないため香味剤、保存剤、pH調節剤などの食品分野、保湿剤、皮膚美白剤などの美容分野、または静脈注射液、透析液、カルシウム剤などの医療分野で多様に使用されてきた。
【0005】
最近、乳酸高分子、ポリラクチドは生分解性があり、石油から製造されるポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステルなど、自然に分解しないプラスチックの代わりとなる環境に優しい代替高分子として関心が高まっており、また、工業的に非常に重要とされているアクリル酸の前駆物質としても高い関心を集めている。
【0006】
乳酸は主に微生物の発酵や化学合成方法によって製造できるが、最近では、トウモロコシなどの澱粉系バイオマス、サトウキビなどの糖系バイオマス、または木本や草本性植物から得られるセルロース系バイオマスなど、バイオマス資源を原料として乳酸を製造する方法が研究されている。
【0007】
このように得られた乳酸は、生産以後の保管や流通過程で通常は高い濃度に濃縮して保管されるが、分子内にヒドロキシ基とカルボキシル基をすべて含む乳酸分子特有の構造的特徴によって2量体(dimer)構造を形成するか、水分子が除去されて脱水縮合された形態のオリゴマーを形成する場合が多い。
【0008】
このような2量体化あるいはオリゴマー化によって多量の乳酸が失われるが、オリゴマー化された乳酸は乳酸を利用した化学反応で副産物の発生量を増やし、反応過程でコーキングを形成して反応の効率を大きく低下させる問題がある。
【0009】
したがって、濃縮して保管された乳酸は、乳酸それ自体を用いるかまたは他の化学反応に投入する時には乳酸オリゴマーの含有量を減らす必要がある。乳酸と乳酸オリゴマーの間の化学平衡は乳酸の濃度および温度のみ関与すると知られており、その平衡移動速度が非常に遅いので、濃縮された乳酸を使用するための前処理方法、すなわち、フィード内の乳酸オリゴマーの含有量を減らし、乳酸単分子の含有量を高める方法に対する関心が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書は、短時間で乳酸オリゴマーの含有量を減らし、気化された乳酸単分子を得ることができる、乳酸気化方法、および乳酸気化装置を提供する。
【0011】
また、本明細書は、気化された乳酸からアクリル酸を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書は、第1-1濃度の乳酸水溶液を加熱および加圧する段階;加熱および加圧された第1-1濃度の乳酸水溶液を含む液相(Liquid phase)の第1-1ストリームを気化反応器内に噴霧する段階;噴霧により前記第1-1ストリームに含まれた乳酸を気化させる段階;および乳酸分子を含む気相の第1-3ストリームを収得する段階を含む、乳酸気化方法を提供する。
【0013】
発明の一実施例によれば、加熱および加圧する段階では、第1-1濃度の乳酸水溶液を約150℃~約250℃の温度、好ましくは約150℃以上、または約160℃以上、約250℃以下、または約200℃以下の温度;および約1bar~約40bar、好ましくは約1bar超過、または約5bar以上、約40bar以下、または約30bar以下、または約15bar以下の圧力条件で加熱および加圧し得る。
【0014】
発明の一実施例によれば、第1-1濃度が約20~約99wt%、約20wt%以上、または約30wt%以上、または約40wt%以上、または約50wt%以上、または約60wt%以上、または約70wt%以上、または約75wt%以上であり得、約99wt%以下、約95wt%以下、または約90wt%以下、または約85wt%以下であり得る。すなわち、乳酸水溶液は高濃度に濃縮されたものであり得る。
【0015】
発明の他の一実施例によれば、第1-1ストリームの温度、すなわち、噴霧される第1-1ストリームの温度は、約10~約300℃、好ましくは約10℃以上、または約50℃以上、または約150℃以上であり得、約300℃以下、または約250℃以下、または約200℃以下であり得る。
【0016】
発明の他の一実施例によれば、前記第1-1ストリームは、約0.1g/分~1.0g/分の流量、好ましくは約0.1g/分以上、または約0.15g/分以上、約1.0g/分以下、または約0.5g/分以下、または約0.3g/分以下の流量で噴霧されることが好ましく、この時、反応器内部の温度は約300~約400℃であり得る。
【0017】
すなわち、第1-1ストリームは、150℃~250℃の温度および1~40の圧力条件で加熱および加圧され、移送された後、約10℃~約300℃の温度条件で常圧の反応器内部にエアロゾル形態で噴霧され得る。
【0018】
発明の一実施例によれば、第1-1ストリームの噴霧時、水蒸気を含む気相(gas phase)の第1-2ストリームを混合噴霧し得る。
【0019】
そして、第1-2ストリームの温度は、約200~約600℃、好ましくは約250℃以上、または約300℃以上、または約350℃以上、または約400℃以上であり得、約600℃以下、または約550℃以下、または約530℃以下であり得る。
【0020】
この時、第1-2ストリームと第1-1ストリームの温度差は約200℃以上、または約250℃以上であり、約500℃以下、または約450℃以下であることが好ましい。
【0021】
そして、第1-2ストリームは、0.1g/分~3.0g/分の流量、好ましくは約0.1g/分以上、または約0.2g/分以上、または約0.3g/分以上、約3.0g/分以下、または約2.0g/分以下、または約1.0g/分以下の流量で噴霧されることが好ましい。
【0022】
この時、混合噴霧段階で第1-1ストリーム流量:第1-2ストリーム流量は約1:1.5~約1:5であることが好ましい。
【0023】
一方、本明細書は、上述したいずれか一つの方法により乳酸を気化して乳酸分子を収得する段階;前記乳酸分子を脱水反応させてアクリル酸を製造する段階;および前記アクリル酸を収得する段階を含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0024】
一方、本明細書は、第1-1濃度の乳酸水溶液を加熱および加圧する前処理部;前記前処理部から乳酸水溶液の供給を受けて乳酸水溶液を含む第1-1ストリームを供給するフィード供給部;前記フィード供給部から移送された第1-1ストリームを気化反応器の内部に噴霧する噴霧部;噴霧された乳酸水溶液が気化する気化反応器;および気化された乳酸分子を含む第1-3ストリームを収得する収得部を含む、乳酸気化装置を提供する。
【0025】
発明の一実施例によれば、前処理部は、第1-1濃度の乳酸水溶液を約150℃~約250℃の温度、好ましくは約150℃以上、または約160℃以上、約250℃以下、または約200℃以下の温度;および約1bar~約40bar、好ましくは約1bar超過、または約5bar以上、約40bar以下、または約30bar以下、または約15bar以下の圧力条件で加熱および加圧する温度調節部および圧力調節部をさらに含み得る。
【0026】
発明の一実施例によれば、前記第1-1濃度が約20~約99wt%、約20wt%以上、または約30wt%以上、または約40wt%以上、または約50wt%以上、または約60wt%以上、または約70wt%以上、または約75wt%以上であり得、約99wt%以下、約95wt%以下、または約90wt%以下、または約85wt%以下であり得る。すなわち、乳酸水溶液は高濃度に濃縮されたものであり得る。
【0027】
発明の他の一実施例によれば、フィード供給部での第1-1ストリームの温度は、約150~約300℃、好ましくは約150℃以上、または約160℃以上であり得、約300℃以下、または約250℃以下、または約200℃以下であり得、前記フィード供給部は前記第1-1ストリームの温度を調節するフィード温度調節部をさらに含み得る。
【0028】
発明の他の一実施例によれば、噴霧部は、前記第1-1ストリームが約0.1g/分~1.0g/分の流量、好ましくは約0.1g/分以上、または約0.15g/分以上、約1.0g/分以下、または約0.5g/分以下、または約0.3g/分以下の流量で噴霧されるように調節される第1-1ストリームノズルを含み得る。
【0029】
発明の一実施例によれば、乳酸気化装置は、水蒸気を供給する水蒸気供給部をさらに含み、噴霧部は水蒸気発生装置から水蒸気の供給を受けて水蒸気を含む気相(gas phase)の第1-2ストリームを気化反応器の内部に噴霧する第1-2ストリームノズルをさらに含み得る。
【0030】
そして、第1-2ストリームの温度は、約200~約600℃、好ましくは約250℃以上、または約300℃以上、または約350℃以上、または約400℃以上であり得、約600℃以下、または約550℃以下、または約530℃以下であり得る。
【0031】
このために、水蒸気供給部は第1-2ストリームの温度を調節する水蒸気温度調節部をさらに含み得る。
【0032】
この時、第1-2ストリームと第1-1ストリームの温度差は、約200℃以上、または約250℃以上であり、約500℃以下、または約450℃以下であることが好ましい。
【0033】
そして、噴霧部で前記第1-2ストリームは、0.1g/分~3.0g/分の流量、好ましくは約0.1g/分以上、または約0.2g/分以上、または約0.3g/分以上、約3.0g/分以下、または約2.0g/分以下、または約1.0g/分以下の流量で噴霧されるように調節されることが好ましい。
【0034】
この時、前記噴霧部で前記第1-1ストリーム流量:前記第1-2ストリーム流量=1:1.5~1:5になるように調節されることが好ましい。
【0035】
一方、本明細書は、乳酸水溶液を含む液相(Liquid phase)の第3-1ストリームおよび水蒸気を含む気相(gas phase)の第3-2ストリームを混合噴霧する段階;前記第3-1ストリームおよび第3-2ストリームの間の熱交換により乳酸水溶液を気化する段階;および乳酸単分子を含む気相の第3-3ストリームを収得する段階を含む、乳酸気化方法を提供する。
【0036】
発明の一実施例によれば、第3-1ストリームに含まれた乳酸水溶液は、乳酸濃度が約40~約99wt%、約45wt%以上、または約50wt%以上、または約60wt%以上、または約70wt%以上、または約75wt%以上であり得、約99wt%以下、約95wt%以下、または約90wt%以下、または約85wt%以下である、高濃度に濃縮されたものであり得る。
【0037】
そして、第3-1ストリームに含まれた乳酸水溶液中の多量体の濃度、すなわち、乳酸2量体または3量体以上の乳酸オリゴマーの濃度は、約2~約55wt%、または約2wt%以上、または約5%以上、または約7wt%以上、または約8wt%以上であり得、約55wt%以下、または約40wt%以下、または約20wt%以下である、多量体の含有量が相対的に高いものであり得る。
【0038】
発明の他の一実施例によれば、第3-1ストリームの温度は、約10~約300℃、好ましくは約10℃以上、または約15℃以上、または約50℃以上であり得、約300℃以下、または約250℃以下、または約200℃以下であり得る。
【0039】
そして、第3-2ストリームの温度は、約200~約600℃、好ましくは約250℃以上、または約300℃以上、または約350℃以上、または約400℃以上であり得、約600℃以下、または約550℃以下、または約530℃以下であり得る。
【0040】
この時、第3-2ストリームと第3-1ストリームの温度差は、約200℃以上、または約250℃以上であり、約500℃以下、または約450℃以下であることが好ましい。
【0041】
発明の他の一実施例によれば、第3-1ストリームは、0.05g/分~1.5g/分の流量で噴霧され得、その下限値は約0.05g/分以上、または約0.1g/分以上、または約0.15g/分以上、または約0.18g/分以上であることが好ましく、その上限値は約1.5g/分以下、または約1.0g/分以下、または約0.8g/分以下であることが好ましい。
【0042】
そして、第3-2ストリームは、0.1g/分~4.0g/分の流量で噴霧され得、その下限値は約0.1g/分以上、または約0.2g/分以上、または約0.3g/分以上であることが好ましく、その上限値は約4.0g/分以下、または約3.0g/分以下、または約2.0g/分以下であることが好ましい。
【0043】
この時、混合噴霧段階で第3-1ストリーム流量:第3-2ストリーム流量は約1:1.5~約1:5であることが好ましい。
【0044】
一方、本明細書は、前記いずれか一つの方法により乳酸を気化して乳酸分子を収得する段階;乳酸分子を脱水反応させてアクリル酸を製造する段階;およびアクリル酸を収得する段階を含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0045】
一方、本明細書は、乳酸水溶液を含む第3-1ストリームを供給するフィード供給部100;水蒸気を含む第3-2ストリームを供給する水蒸気供給部200;フィード供給部から第3-1ストリームの供給を受けて、水蒸気供給部から第3-2ストリームの供給を受けて乳酸水溶液の気化反応を行う気化反応部300;および気化された乳酸分子を含む第3-3ストリームを収得する収得部400を含む、乳酸気化装置を提供する。
【0046】
気化反応部300は、その下端にフィード供給部から供給を受けた第3-1ストリームおよび水蒸気供給部から供給を受けた第3-2ストリームを気化反応部の内部に噴霧する噴霧部310を含み得る。
【0047】
フィード供給部は、乳酸水溶液を供給する乳酸水溶液フィード110;および第3-1ストリームの温度および圧力を調節するためのフィード前処理部120を含み得る。
【0048】
この時、フィード前処理部120は、第3-1ストリームを約10~約300℃の温度に調節して排出し得る。
【0049】
そして、水蒸気供給部は、水を供給する水供給部210;および第3-2ストリームの温度および圧力を調節するための水前処理部220を含み得る。
【0050】
この時、水前処理部220は、第3-2ストリームを約200~約600℃の温度に調節して排出し得る。
【0051】
そして、噴霧部は、第3-1ストリームおよび2ストリームを混合して噴霧する混合噴霧ノズルを含み得る。
【0052】
他の一例によれば、噴霧部は、前記第3-1ストリームを噴霧する第3-1ノズルおよび前記2ストリームを噴霧する第3-2ノズルを含み得る。
【0053】
噴霧部では第3-2ストリーム噴霧流量に対する第3-1ストリーム噴霧流量の比が約1:1.5~約1:5になるように調節され得る。
【0054】
収得部は気化反応部の上部に位置し得る。
【0055】
そして、収得部は、気化された乳酸分子と液化された水溶液成分を分離排出する気-液分離器410を含み得る。
【0056】
この時、気-液分離器から排出された水溶液成分は、乳酸水溶液フィード110に回収されて再使用され得る。
【0057】
本発明で、第1-1、第1-2などの用語は多様な構成要素を説明するために使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素と区別するための目的にのみ使用される。
【0058】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。
【0059】
単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。
【0060】
本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらの組み合わせを説明するためのものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、これらの組み合わせまたは付加の可能性を排除するものではない。
【0061】
また、本明細書において、各層または要素が各層または要素の「上に」または「の上に」形成されるものと言及される場合は、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、または他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成され得ることを意味する。
【0062】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して以下に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定するものでなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0063】
本明細書で、乳酸とは、次の化学式で表される化合物であり、本明細書で別に言及しない限り、乳酸異性体、自然に発生し得る乳酸二量体および乳酸オリゴマーをすべて包括する概念として使用される。
【化1】
【0064】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0065】
本発明の一側面によれば、第1-1濃度の乳酸水溶液を加熱および加圧する段階;加熱および加圧された前記第1-1濃度の乳酸水溶液を含む液相(Liquid phase)の第1-1ストリームを噴霧する段階;噴霧により前記第1-1ストリームに含まれた乳酸を気化させる段階;および乳酸分子を含む気相の第1-3ストリームを収得する段階を含む、乳酸気化方法が提供される。
【0066】
そして、前記乳酸気化方法は、次のような装置により実現することができる。
【0067】
本発明の他の一側面によれば、第1-1濃度の乳酸水溶液を加熱および加圧する前処理部;前記前処理部から乳酸水溶液の供給を受けて乳酸水溶液を含む第1-1ストリームを供給するフィード供給部;前記フィード供給部から移送された第1-1ストリームを気化反応器の内部に噴霧する噴霧部;噴霧された乳酸水溶液が気化する気化反応器;および気化された乳酸分子を含む第1-3ストリームを収得する収得部を含む、乳酸気化装置が提供される。
【0068】
本発明の発明者らは、高濃度に濃縮された乳酸水溶液を加熱および加圧して高温高圧状態にし、これを常圧条件の気化反応器に噴霧して瞬時に気化させると、乳酸のオリゴマー濃度を非常に短時間で効率的に下げることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0069】
乳酸はアクリル酸の製造に多く使用されるが、乳酸を脱水してアクリル酸を製造する場合、気相反応によって行われるので、乳酸を乳酸分子に気化する必要がある。
【0070】
しかし、前述した通り、乳酸は生産以後の保管や流通過程で通常高い濃度に濃縮して保管されるが、分子内にヒドロキシ基とカルボキシル基をすべて含む乳酸分子特有の構造的特徴によって2量体(dimer)構造を形成するか、水分子が除去されて脱水縮合された形態のオリゴマーを形成する場合が多い。
【0071】
このような乳酸オリゴマー分子は、気化段階あるいは反応段階で炭化してコーキングを形成し、反応触媒の活性面積を減少させることができ、最終的な生成物にも副産物として含まれ得、何より乳酸オリゴマーの存在によって、反応に参加できる単分子形態の乳酸の含有量が大きく減るので、濃縮された乳酸水溶液内で乳酸オリゴマーを単分子形態に転換して、オリゴマーの含有量を低くし、乳酸単分子の含有量を増加させる必要がある。
【0072】
しかし、高い含有量の乳酸オリゴマーを含む濃縮された乳酸水溶液に単に水を添加して濃度を薄める場合、平衡移動速度が非常に遅いので、乳酸オリゴマーの含有量を低くするのに非常に長い時間がかかる。
【0073】
一般的にはこの時間を短縮させるために、高濃度の乳酸水溶液を加熱して気化させるが、乳酸の気化効率が水の気化効率より低いので、水が先に気化し、気化する乳酸の比率は約20wt%を下回る。この場合、水が先に気化し、残っていた乳酸水溶液の濃度がさらに高くなるが、そのため、残っている乳酸水溶液でオリゴマーの濃度もさらに上昇する問題がある。
【0074】
そのため、本発明の一例による乳酸気化方法では、第1-1濃度の乳酸水溶液を先に加熱および加圧して高温高圧状態にし、これを気化反応器内に噴霧して、噴霧により前記第1-1ストリームに含まれた乳酸を瞬時に気化させて、気化された乳酸分子を含む気相の第1-3ストリームを収得することができる。
【0075】
すなわち、本発明の一実施形態によれば、高濃度の乳酸水溶液を直接加熱して気化させるのではなく、
i)高濃度の乳酸水溶液を再び高温および高圧条件で加熱、加圧して、噴霧できる条件に至るようにするが、乳酸水溶液内で水が先に気化する現象を防止し、
ii)高温、高圧状態の乳酸水溶液を供給して気化反応器内に一種のエーロゾルまたは液滴形態で噴霧して、
iii)気化反応器内にエアロゾル形態で噴霧された高濃度の乳酸が瞬時に気化することにより、気化された乳酸単分子を得ることができるようになる。
一方、上記のような乳酸気化方法は後述する装置によって実現されることができる。
【0076】
このような装置は、第1-1濃度の乳酸水溶液を加熱および加圧する前処理部;前記前処理部から乳酸水溶液の供給を受けて乳酸水溶液を含む第1-1ストリームを供給するフィード供給部;前記フィード供給部から移送された第1-1ストリームを気化反応器の内部に噴霧する噴霧部;噴霧された乳酸水溶液が気化する気化反応器;および気化された乳酸分子を含む第1-3ストリームを収得する収得部を含むことができる。
【0077】
第1-3ストリーム内の乳酸の濃度は、約30wt%以下、または約25wt%以下、または約20wt%以下であり得、その下限は工程条件によっては大きな意味がない場合もあるが、約0.1wt%以上、あるいは約5wt%以上であり得る。
【0078】
ここで乳酸単分子を含む第1-3ストリームは、より具体的には、例えば、上述した乳酸オリゴマーを約1wt%未満で含み得、好ましくは約0.5wt%未満、あるいは約0.1wt%未満で含み得、より好ましくは、実質的に乳酸オリゴマーを含まないことが好ましい。
【0079】
実質的に乳酸オリゴマーを含まないことは、該当工程で検出可能な限度内で乳酸オリゴマーの含有量が0wt%であることを意味する。
【0080】
発明の一実施例によれば、前記第1-1濃度が約20~約99wt%、約20wt%以上、または約30wt%以上、または約40wt%以上、または約50wt%以上、または約60wt%以上、または約70wt%以上、または約75wt%以上であり得、約99wt%以下、約95wt%以下、または約90wt%以下、または約85wt%以下であり得る。すなわち、乳酸水溶液は高濃度に濃縮されたものであり得る。
【0081】
これは一般に乳酸の製造、保管、流通、および販売など、商用の乳酸原料の一般的な濃度に該当する。
【0082】
ここで第1-1ストリーム、すなわち、工程上乳酸フィードに含まれた乳酸水溶液は、乳酸が水に溶解している状態で、前述した通り、温度および濃度条件によって当然乳酸単分子、乳酸2量体、および乳酸オリゴマーをすべて含む状態を意味する。
【0083】
また、ここで説明した乳酸濃度も、乳酸単分子だけでなく、乳酸単分子、乳酸2量体、および乳酸オリゴマーをすべて含む乳酸系化合物の濃度を意味する。
【0084】
より具体的には、例えば、コンピューターモデリングによって計算したとき、全乳酸系化合物の濃度別のオリゴマーの含有量は、次の表1のとおりである。
【0085】
ただし、これは、実際の計算モデルによって若干の計算誤差があり得、実際の測定値も、測定条件や測定方法(滴定法、あるいはHPLC)によって若干の測定誤差があり得る。
【表1】
【0086】
発明の一実施例によれば、加熱および加圧する段階では、第1-1濃度の乳酸水溶液を約150℃~約250℃の温度、好ましくは約150℃以上、または約160℃以上、約250℃以下、または約200℃以下の温度;および約1bar~約40bar、好ましくは約1bar超過、または約5bar以上、約40bar以下、または約30bar以下、または約15bar以下の圧力条件で加熱および加圧することができる。
【0087】
加熱および加圧段階で温度および圧力範囲を外れて過度に低い温度および圧力で行われる場合、混合物の温度が低くて噴霧時に乳酸が十分に気化しない問題があり得、過度に高い温度および圧力で行われる場合、温度維持のために圧力が過度に高くなるか気化された乳酸の温度が過度に高くて乳酸分子が他の物質に転換される問題が発生し得る。
【0088】
このような観点から、前処理部は第1-1濃度の乳酸水溶液を150℃~250℃の温度および1bar~40barの圧力条件で加熱および加圧する温度調節部および圧力調節部をさらに含むことができる。
【0089】
発明の他の一実施例によれば、前記第1-1ストリームの温度、すなわち、噴霧される第1-1ストリームの温度は、約10~約300℃、好ましくは約10℃以上、または約50℃以上、または約150℃以上であり得、約300℃以下、または約250℃以下、または約200℃以下であり得る。
【0090】
第1-1ストリームが前記温度範囲を外れて過度に低い温度である場合、気化された乳酸の一部が凝縮する問題があり得、過度に高い温度である場合、乳酸分子が他の物質に転換される問題が発生し得る。
【0091】
このような観点から、フィード供給部は前記第1-1ストリームの温度を調節するフィード温度調節部をさらに含むことができる。
【0092】
フィードから供給された乳酸水溶液は加熱した後、移送ラインおよびノズルを介して気化反応器内に液滴形態で噴霧される。
【0093】
すなわち、発明の他の一実施例によれば、前記噴霧部は、前記第1-1ストリームを気化反応器の内部に噴霧する第1-1ストリームノズルを含むことができる。
【0094】
発明の他の一実施例によれば、第1-1ストリームは、約0.1g/分~1.0g/分の流量、好ましくは約0.1g/分以上、または約0.15g/分以上、約1.0g/分以下、または約0.5g/分以下、または約0.3g/分以下の流量で噴霧されることが好ましい。
【0095】
第1-1ストリームの噴霧量および噴霧速度が前記範囲を外れて過度に低い場合、供給される乳酸の流量が過度に低くなり、次の段階として行われる脱水反応で過反応が行われる問題が発生し得、過度に高い場合、気化に必要な熱が多くなり不完全な気化になる問題が発生し得る。
【0096】
そして、この時、前記第1-1ストリームとは別に、高温の水蒸気を含む第1-2ストリームを第1-1ストリームとは別の移送ラインおよびノズルを介して気化反応器内に噴霧することができる。すなわち、第1-1ストリームと第1-2ストリームは気化反応器内に共に混合噴霧されることが好ましい。
【0097】
このような観点から、発明の他の一実施例によれば、乳酸気化装置は、水蒸気を供給する水蒸気供給部をさらに含み、噴霧部は水蒸気発生装置から水蒸気の供給を受けて水蒸気を含む気相(gas phase)の第1-2ストリームを噴霧する第1-2ストリームノズルをさらに含むことができる。
【0098】
この場合、第1-2ストリームに供給された高温の水蒸気が第1-1ストリームに供給された乳酸と混合され、瞬時に乳酸をより低い濃度に薄めることができ、追加で、乳酸分子に熱エネルギを伝達して、乳酸内のオリゴマー含有量を迅速に低くし、乳酸分子の気化を助けることができる。
【0099】
混合噴霧時には、前記第1-1ストリームおよび第1-2ストリームの移送ラインが噴霧前に先に合わさった後、同じノズルを介して混合噴霧されることもできるが、これよりは前記第1-1ストリームおよび第1-2ストリームがそれぞれ別のノズルを介して気化反応器の内部に混合噴霧されることがより好ましい。
【0100】
このような観点から、第1-2ストリームの温度は約200~約600℃、好ましくは約250℃以上、または約300℃以上、または約350℃以上、または約400℃以上であり得、約600℃以下、または約550℃以下、または約530℃以下であり得る。
【0101】
この時、前記第1-2ストリームと前記第1-1ストリームの温度差は、約200℃以上、または約250℃以上であり、約500℃以下、または約450℃以下であることが好ましい。
【0102】
第1-2ストリームの温度が前記範囲を外れて過度に低い場合、混合物の温度が過度に低くて乳酸が十分に気化しない問題が発生し得、第1-2ストリームの温度が前記範囲を外れて過度に高い場合、温度維持のために圧力が過度に高くなる問題が発生し得る。
【0103】
このような観点から、水蒸気供給部は前記第1-2ストリームの温度を調節する水蒸気温度調節部をさらに含むことができる。
【0104】
そして、前記第1-2ストリームは、0.1g/分~3.0g/分の流量、好ましくは約0.1g/分以上、または約0.2g/分以上、または約0.3g/分以上、約3.0g/分以下、または約2.0g/分以下、または約1.0g/分以下の流量で噴霧されることが好ましい。
【0105】
第1-2ストリームの噴霧量および噴霧速度が前記範囲を外れて過度に低い場合、気化に供給される熱が少なくなり、不完全な気化が発生する問題が発生し得、過度に高い場合、乳酸の濃度が薄くなり、後の生成物の分離過程で問題が発生し得る。
【0106】
この時、混合噴霧段階で第1-1ストリーム流量:第1-2ストリーム流量は約1:1.5~約1:5であることが好ましい。
【0107】
発明の他の一実施例によれば、第1-1ストリームと第1-2ストリームがそれぞれ移送ラインおよびノズルを介して気化反応器内に液滴形態で混合噴霧される前に、気化反応器の内部は、あらかじめ水蒸気で飽和させておくことが好ましい。
【0108】
このような方法により、第1-1ストリームが高温条件で反応器の内部に噴霧される時、高温条件で瞬時に噴霧された第1-1ストリームの液滴内に水が蒸発して乳酸が濃縮されることを防止することができる。
【0109】
そして、この時の気化反応器は約300~約400℃の温度条件を維持する状態で反応を行うことが好ましい。
【0110】
一方、本明細書は、上述した方法により乳酸を気化して乳酸分子を収得する段階;乳酸分子を脱水反応させてアクリル酸を製造する段階;およびアクリル酸を収得する段階を含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0111】
乳酸の分子内の脱水によるアクリル酸の生成反応は、次のような化学式で表され、触媒存在下で、1段階で行われることが知られている。
【化2】
【0112】
ただし、本発明の一側面によるアクリル酸の製造方法の場合、前述した乳酸気化と関連する内容を除いて、気化された乳酸からアクリル酸を生成する方法については、本発明が属する技術分野で一般に知られている触媒、反応器、あるいは反応条件などを流用することができる。
【0113】
例えば、乳酸脱水反応に使用される触媒は、CaSO4/Na2SO4;Na4P2O7/CaSO4;Na4P2O7/Ca3(PO4)2;NaH2PO4-NaHCO3/SiO2;AlPO4-NH3;Ca3(PO4)2/CaSO4などが挙げられる。
【0114】
固体触媒を利用した脱水反応は固定式反応器を用いる連続式反応、または配置式反応などにより行われることができる。固定式反応器を用いる場合、反応器に固体触媒を充填して反応物を連続して反応器に供給して反応させることで生成物を連続して製造することができる。
【0115】
脱水反応の温度は約300~約500℃、または約350~約450℃であり得る。反応圧力は約1気圧~約5気圧、または約1気圧~約2気圧であり得る。
【0116】
反応物の供給速度は反応器の形態や種類、異なる反応条件などによって変わるが、具体的には、例えば、気体相の乳酸供給速度(Weight Hourly Space Velocity,WHSV)が約0.05~約1.0/hr、または約0.10~約0.50/hrになるように行われることができる。
【0117】
前記条件を外れる場合、水素化による分解反応が行われ、反応効率が低下するか、または転換率が低くなる問題が発生し得る。
【0118】
一方、本発明の他の一側面によれば、乳酸水溶液を含む液相(Liquid phase)の第3-1ストリームおよび水蒸気を含む気相(gas phase)の第3-2ストリームを混合噴霧する段階;前記第3-1ストリームおよび第3-2ストリームの間の熱交換により乳酸水溶液を気化する段階;および乳酸単分子を含む気相の第3-3ストリームを収得する段階を含む、乳酸気化方法が提供される。
【0119】
本発明の他の一側面によれば、乳酸水溶液を含む第3-1ストリームを供給するフィード供給部100;水蒸気を含む第3-2ストリームを供給する水蒸気供給部200;前記フィード供給部から第3-1ストリームの供給を受けて、前記水蒸気供給部から第3-2ストリームの供給を受けて乳酸水溶液の気化反応を行う気化反応部300;および気化された乳酸分子を含む第3-3ストリームを収得する収得部400を含む、乳酸気化装置が提供される。
【0120】
上記装置を用いる場合、乳酸水溶液を含む液相(Liquid phase)の第3-1ストリームおよび水蒸気を含む気相(gas phase)の第3-2ストリームを混合噴霧する段階;前記第3-1ストリームおよび第3-2ストリームの間の熱交換により乳酸水溶液を気化する段階;および乳酸単分子を含む気相の第3-3ストリームを収得する段階を含む、乳酸気化方法を実現することができる。
【0121】
本発明の発明者らは、高濃度に濃縮された乳酸水溶液を水蒸気とともに混合噴霧して、直接熱交換により気化させる場合、乳酸のオリゴマー濃度を非常に短時間で効率的に下げることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0122】
乳酸はアクリル酸の製造に多く使用されるが、乳酸を脱水してアクリル酸を製造する場合、気相反応によって行われるので、乳酸を乳酸分子に気化する必要がある。
【0123】
しかし、前述した通り、乳酸は、生産以後の保管や流通過程で通常高い濃度に濃縮して保管されるが、分子内にヒドロキシ基とカルボキシル基をすべて含む乳酸分子特有の構造的特徴によって2量体(dimer)構造を形成するか、または水分子が除去されて脱水縮合された形態のオリゴマーを形成する場合が多い。
【0124】
このような乳酸オリゴマー分子は、気化段階あるいは反応段階で炭化してコーキングを形成し、反応触媒の活性面積を減少させることができ、最終的な生成物にも副産物として含まれ得、何より乳酸オリゴマーの存在によって、反応に参加できる単分子形態の乳酸の含有量が大きく減るので、濃縮された乳酸水溶液内で乳酸オリゴマーを単分子形態に転換して、オリゴマーの含有量を低くし、乳酸単分子の含有量を増加させる必要がある。
【0125】
しかし、高い含有量の乳酸オリゴマーを含む濃縮された乳酸水溶液に単に水を添加して濃度を薄める場合、平衡移動速度が非常に遅いので、乳酸オリゴマーの含有量を低くするのに非常に長い時間がかかる。
【0126】
一般的にはこの時間を短縮させるために、約80wt%以上の高濃度の乳酸水溶液を加熱して気化させるが、乳酸の気化効率が水の気化効率より低いので、水が先に気化して気相での乳酸の比率は約20wt%を下回る。この場合、水が先に気化して残っていた乳酸水溶液の濃度がさらに高くなるが、そのため、残っている乳酸水溶液でオリゴマーの濃度もさらに上昇するが、このための追加の処理過程が求められる問題がある。
【0127】
したがって、本発明の側面による乳酸気化方法では、乳酸水溶液を含む液相(Liquid phase)の第3-1ストリームおよび水蒸気を含む気相(gas phase)の第3-2ストリームを混合噴霧する段階;前記第3-1ストリームおよび第3-2ストリームの間の熱交換により乳酸水溶液を気化する段階;および乳酸単分子を含む気相の第3-3ストリームを収得する段階を含む。
【0128】
そして、本発明の一側面による乳酸の気化装置では、乳酸水溶液を含む第3-1ストリームを供給するフィード供給部100;水蒸気を含む第3-2ストリームを供給する水蒸気供給部200;前記フィード供給部から第3-1ストリームの供給を受けて、前記水蒸気供給部から第3-2ストリームの供給を受けて乳酸水溶液の気化反応を行う気化反応部300;および気化された乳酸分子を含む第3-3ストリームを収得する収得部400を含む。
【0129】
図1は、本発明の一実施例による乳酸気化装置を示す模式図である。
【0130】
図1を参照すると、乳酸水溶液を含む第3-1ストリームを供給するフィード供給部100;水蒸気を含む第3-2ストリームを供給する水蒸気供給部200;前記フィード供給部から第3-1ストリームの供給を受け、前記水蒸気供給部から第3-2ストリームの供給を受けて乳酸水溶液の気化反応を行う気化反応部300;および気化された乳酸分子を含む第3-3ストリームを収得する収得部400を含む乳酸気化装置の一実施形態を確認することができる。
【0131】
すなわち、本発明の一実施形態によれば、高濃度の乳酸水溶液を直接加熱して気化させるのではなく、高濃度の乳酸水溶液を一種のエアロゾル形態で噴霧し、ここに高温の水蒸気を共に混合噴霧して乳酸の濃度を低くすると同時に、エアロゾル形態で噴霧された高濃度の乳酸と水蒸気の間に迅速な熱交換により乳酸を気化させて、気化された乳酸単分子を得ることができる。
【0132】
そして、第3-3ストリーム内の乳酸の濃度は、約30wt%以下、または約25wt%以下、または約20wt%以下であり得、その下限は工程条件によっては大きな意味がない場合もあるが、約0.1wt%以上、あるいは約5wt%以上であり得る。
【0133】
ここで乳酸単分子を含む第3-3ストリームは、より具体的には、例えば、上述した乳酸オリゴマーを約1wt%未満で含み得、好ましくは約0.5wt%未満、あるいは約0.1wt%未満で含み得、より好ましくは、実質的に乳酸オリゴマーを含まないことが好ましい。
【0134】
実質的に乳酸オリゴマーを含まないことは、該当工程で検出可能な限度内で乳酸オリゴマーの含有量が0wt%であることを意味する。
【0135】
発明の一実施例によれば、第3-1ストリームに含まれた前記乳酸水溶液は、乳酸濃度が約40~約99wt%、約45wt%以上、または約50wt%以上、または約60wt%以上、または約70wt%以上、または約75wt%以上であり得、約99wt%以下、約95wt%以下、または約90wt%以下、または約85wt%以下である、高濃度に濃縮されたものであり得る。
【0136】
そして、第3-1ストリームに含まれた乳酸水溶液中の多量体の濃度、すなわち、乳酸2量体または3量体以上の乳酸オリゴマーの濃度は、約2~約55wt%、または約2wt%以上、または約5%以上、または約7wt%以上、または約8wt%以上であり得、約55wt%以下、または約40wt%以下、または約20wt%以下で、多量体の含有量が相対的に高いものであり得る。
【0137】
ここで第3-1ストリーム、すなわち、工程上乳酸フィードに含まれた乳酸水溶液は、乳酸が水に溶解している状態であり、前述した通り、温度および濃度条件によって当然乳酸単分子、乳酸2量体、および乳酸オリゴマーをすべて含む状態を意味し、ここで説明した乳酸濃度も、乳酸単分子だけでなく、乳酸単分子、乳酸2量体、および乳酸オリゴマーをすべて含む乳酸系化合物の濃度を意味する。
【0138】
より具体的には、例えば、知られている乳酸のオリゴマー化平衡定数値に基づいてコンピューターモデリングによって計算した時、全乳酸系化合物の濃度別のオリゴマーの含有量は、次の表2のとおりである。
【0139】
ただし、これは、実際の計算モデルによって若干の計算誤差があり得、実際の測定値も、測定条件や測定方法(滴定法、あるいはHPLC)によって若干の測定誤差があり得る。
【表2】
【0140】
そして、フィードから供給された乳酸水溶液(第3-1ストリーム)は加熱過程を経る。
【0141】
このため、フィード供給部は、乳酸水溶液を供給する乳酸水溶液フィード110;および第3-1ストリームの温度および圧力を調節するためのフィード前処理部120を含むことができる。
【0142】
この時、フィード前処理部120は、第3-1ストリームを約10~約300℃の温度および1~50気圧の圧力範囲に調節して排出することができる。
【0143】
より具体的には、フィード前処理部で排出される第3-1ストリームの温度は、約10~約300℃、好ましくは約10℃以上、または約15℃以上、または約50℃以上であり得、約300℃以下、または約250℃以下、または約200℃以下であり得る。
【0144】
第3-1ストリームが温度範囲を外れて過度に低い温度である場合、混合物の温度が低くて乳酸が十分に気化しない問題があり得、過度に高い温度である場合、温度維持のために圧力が過度に高くなる問題が発生し得る。
【0145】
フィードから供給された乳酸水溶液は加熱した後、移送ラインおよびノズルを介して気化反応器内に液滴形態で噴霧される。乳酸水溶液の温度が高く維持されて圧力が高いほど小さい大きさの液滴を得るのに有利である。
【0146】
そして、この時、第3-1ストリームとは別に、水蒸気を含む第3-2ストリームも移送ラインおよびノズルを介して気化反応器内に液滴形態で第3-1ストリームと共に混合噴霧される。
【0147】
混合噴霧時には、前記第3-1ストリームおよび第3-2ストリームの移送ラインが噴霧前に先に合わさった後、同じノズルを介して混合噴霧されることもできるが、これよりは第3-1ストリームおよび第3-2ストリームがそれぞれ別のノズルを介して気化反応器の内部に混合噴霧されることがさらに好ましい。
【0148】
このために、気化反応部300は、その下端に前記フィード供給部から供給を受けた第3-1ストリームおよび水蒸気供給部から供給を受けた第3-2ストリームを気化反応部の内部に噴霧する噴霧部310を含むことができる。
【0149】
噴霧部で、第3-1ストリームおよび第3-2ストリームは、i)噴霧前の段階で合わさって、気化反応部の内部に混合噴霧されるか、ii)噴霧段階で単一ノズルに合わさって、気化反応部の内部に混合噴霧されるか、iii)別途のノズルを介して気化反応部の内部に混合噴霧されることができる。
【0150】
すなわち、噴霧部は、第3-1ストリームおよび第3-2ストリームを混合して噴霧する混合噴霧ノズルを含むことができる。
【0151】
他の一例によれば、噴霧部は、第3-1ストリームを噴霧する第3-1ノズルおよび第3-2ストリームを噴霧する第3-2ノズルを含むことができる。
【0152】
しかし、移送過程で乳酸水溶液の濃度が低くなることを防止するために、第3-1ストリームおよび第3-2ストリームがそれぞれ別のノズルを介して気化反応器の内部に混合噴霧されることがより好ましい。
【0153】
第3-2ストリームは、高濃度に濃縮された乳酸を含む第3-1ストリームで乳酸の濃度を瞬時に下げると同時に第3-1ストリームに熱エネルギを伝達して、乳酸分子の気化を促進させてオリゴマーの比率を低くすることができる。
【0154】
このような観点から、第3-2ストリームの温度は約200~約600℃、好ましくは約250℃以上、または約300℃以上、または約350℃以上、または約400℃以上であり得、約600℃以下、または約550℃以下、または約530℃以下であり得る。
【0155】
このために、水蒸気供給部は、水を供給する水供給部210;および第3-2ストリームの温度および圧力を調節するための水前処理部220を含むことができる。
【0156】
そして、水前処理部220は、第3-2ストリームを上述した温度および約1~10気圧の圧力範囲に調節して排出することができる。
【0157】
第3-2ストリームと第3-1ストリームの温度差は、約200℃以上、または約250℃以上であり、約500℃以下、または約450℃以下であることが好ましい。
【0158】
第3-2ストリームの温度が前記範囲を外れて過度に低い場合、混合物の温度が低くて乳酸が十分に気化しない問題が発生し得、第3-2ストリームの温度が前記範囲を外れて過度に高い場合、温度維持のために圧力が過度に高くなる問題が発生し得る。
【0159】
発明の他の一実施形態によれば、第3-1ストリームは、0.05g/分~1.5g/分の流量で噴霧されることができ、その下限値は約0.05g/分以上、または約0.1g/分以上、または約0.15g/分以上、または約0.18g/分以上であることが好ましく、その上限値は約1.5g/分以下、または約1.0g/分以下、または約0.8g/分以下であることが好ましい。
【0160】
第3-1ストリームの噴霧量および噴霧速度が前記範囲を外れて過度に低い場合、供給される乳酸の流量が過度に低くなり次の段階として行われる脱水反応で過反応が行われる問題が発生し得、過度に高い場合、気化に必要な熱が多くなり不完全な気化が発生し得る。
【0161】
そして、第3-2ストリームは、0.1g/分~4.0g/分の流量で噴霧されることができ、その下限値は約0.1g/分以上、または約0.2g/分以上、または約0.3g/分以上であることが好ましく、その上限値は約4.0g/分以下、または約3.0g/分以下、または約2.0g/分以下であることが好ましい。
【0162】
第3-2ストリームの噴霧量および噴霧速度が前記範囲を外れて過度に低い場合、気化に供給される熱が少なくなり不完全な気化が発生し得、過度に高い場合、乳酸の濃度が薄くなり後の生成物の分離過程で問題が発生し得る。
【0163】
混合噴霧段階で第3-1ストリーム流量:第3-2ストリーム流量は約1:1.5~約1:5であることが好ましい。
【0164】
前記範囲を外れて第3-1ストリームの流量比率が過度に小さい場合、供給される乳酸の流量が少なくて効率が低くなり、生成物分離過程で負荷が大きくなる問題が発生し得、第3-2ストリームの流量比率が過度に小さい場合、気化に供給される熱が少なくなり不完全な気化が発生し得る。
【0165】
発明の他の一実施例によれば、前記第3-1ストリームと前記第3-2ストリームがそれぞれ移送ラインおよびノズルを介して気化反応器内に液滴形態で混合噴霧される前に、前記気化反応器の内部は、あらかじめ水蒸気で飽和させておくことが好ましい。
【0166】
このような方法により第3-1ストリームが高温条件で反応器の内部に噴霧される時、高温条件で瞬時に噴霧された第3-1ストリームの液滴内に水が蒸発して乳酸が濃縮されることを防止することができる。
【0167】
そして、この時の気化反応器は約150~約250℃の温度条件を維持する状態で反応を行うことが好ましい。
【0168】
前記収得部は前記気化反応部の上部に位置することができる。
【0169】
気化反応部の下部に供給された第3-1ストリームおよび第3-2ストリームが混合噴霧された後、第3-1ストリームに含まれていた乳酸水溶液が瞬時に気化することにより生成された乳酸単分子は気化反応部の上部の収得部に移動する。
【0170】
そして、収得部は、気化された乳酸分子と液化された水溶液成分を分離排出する気-液分離器410を含むことができる。
【0171】
この時、気-液分離器から排出された水溶液成分は、乳酸水溶液フィード110に回収されて再使用されることができる。
【0172】
一方、本明細書は、前記いずれか一つの方法により乳酸を気化して乳酸分子を収得する段階;乳酸分子を脱水反応させてアクリル酸を製造する段階;およびアクリル酸を収得する段階を含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0173】
乳酸の分子内の脱水によるアクリル酸の生成反応は、次のような化学式で表されることができ、触媒存在下に1段階で行われると知られている。
【化3】
【0174】
ただし、本発明の一側面によるアクリル酸の製造方法の場合、前述した乳酸気化と関連する内容を除いて、気化された乳酸からアクリル酸を生成する方法については、本発明が属する技術分野で一般に知られている触媒、反応器、あるいは反応条件などを流用することができる。
【0175】
例えば、乳酸脱水反応に使用される触媒は、CaSO4/Na2SO4;Na4P2O7/CaSO4;Na4P2O7/Ca3(PO4)2;NaH2PO4-NaHCO3/SiO2;AlPO4-NH3;Ca3(PO4)2/CaSO4などが挙げられる。
【0176】
固体触媒を利用した脱水反応は固定式反応器を用いる連続式反応、または配置式反応などにより行われることができる。固定式反応器を用いる場合、反応器に固体触媒を充填して反応物を連続して反応器に供給して反応させることにより生成物を連続して製造することができる。
【0177】
脱水反応の温度は約300~約500℃、または約300~約400℃であり得る。反応圧力は約1気圧~約5気圧、または約1気圧~約2気圧であり得る。
【0178】
反応物の供給速度は反応器の形態や種類、異なる反応条件などによって変わるが、具体的には例えば、気体相の乳酸供給速度(Weight Hourly Space Velocity,WHSV)が約0.05~約1.0/hr、または約0.10~約0.50/hrになるように行われることができる。
【0179】
前記条件を外れる場合、オリゴマー化または水素化による分解反応が行われ、反応効率が低下するか、または転換率が低くなる問題が発生し得る。
【発明の効果】
【0180】
本発明の一側面による乳酸気化方法および装置によれば、高い濃度に濃縮されていた乳酸水溶液で、短時間で乳酸オリゴマーの含有量を減らし、乳酸単分子の含有量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【
図1】本発明の一実施例による乳酸気化装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0182】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎなく、これによって発明の権利範囲が定まるものではない。
【0183】
<第1実施例>
約80wt%濃度の乳酸水溶液を準備した。
前処理部で180℃および10atmの条件で乳酸水溶液を加熱および加圧してフィードに供給する準備をした。
【表3】
【0184】
乳酸水溶液、すなわち、乳酸、乳酸2量体、および乳酸オリゴマーをすべて含むフィードの乳酸水溶液濃度は、各試料を採取して元素分析により炭素含有量を測定し、これを乳酸内の炭素の含有量比で割って決定した。
【0185】
乳酸水溶液内の乳酸オリゴマー(2量体含む)の比率は、各試料を採取し、これをHPLCにより乳酸単分子の含有量を分析した後、前記乳酸水溶液の濃度と単分子の含有量から、オリゴマー量を全体乳酸系化合物の量で割って計算した。
【0186】
そして、前記乳酸水溶液を含む第1-1ストリームを供給するフィード供給部;水蒸気を含む第1-2ストリームを供給する水蒸気供給部;前記フィード供給部から移送された乳酸水溶液および前記水蒸気供給部から移送された水蒸気がそれぞれのノズルを介して混合噴霧される噴霧部;混合噴霧後に乳酸水溶液が気化する気化反応部;および気化された乳酸分子を含む第1-3ストリームを収得する収得部を含む形態の乳酸気化装置を準備した。
【0187】
フィード供給部と水蒸気供給部には温度計および温度調節装置が備えられ、供給されるフィード(第1-1ストリーム)と水蒸気(第1-2ストリーム)の温度を調節できるようにし、収得部には第1-3ストリームの温度を測定できるように温度計が備えられた。
【0188】
先に、水蒸気を気化反応器の内部に投入して、気化反応器の内部が水蒸気で飽和するようにした。
【0189】
その後、実施例1~7による乳酸水溶液をフィード供給部により第1-1ストリームに供給し、水蒸気を水蒸気供給部により供給して、それぞれのノズルを介して気化反応部の内部に連続して混合噴霧されるようにしながら、収得部により気化された乳酸分子を含む第1-3ストリームを収得した。
【0190】
噴霧条件は次の表4にまとめたとおりである。
【表4】
【0191】
収得される第1-3ストリームを分析して、第1-3ストリーム内の全乳酸系化合物の濃度とその中のオリゴマーの比率を測定および計算して、下記表5にまとめた。
【表5】
【0192】
前記表5を参照すると、本発明の実施例による場合、連続して乳酸を気化させて、乳酸オリゴマーの含有量を非常に短時間で減らすことができることを明確に確認することができる。
【0193】
<第2実施例>
これとは別に、乳酸水溶液の濃度を次の表6にまとめたとおりに準備した。
【表6】
【0194】
乳酸水溶液、すなわち、乳酸、乳酸2量体、および乳酸オリゴマーをすべて含むフィードの乳酸水溶液濃度は、各試料を採取して元素分析により炭素含有量を測定し、これを乳酸内の炭素の含有量比で割って決定した。
【0195】
乳酸水溶液内の乳酸オリゴマー(2量体含む)の比率は、各試料を採取し、これをHPLCにより乳酸単分子の含有量を分析した後、前記乳酸水溶液の濃度と単分子の含有量から、オリゴマー量を全体乳酸系化合物の量で割って計算した。
【0196】
そして、前記乳酸水溶液を含む第3-1ストリームを供給するフィード供給部;水蒸気を含む第3-2ストリームを供給する水蒸気供給部;前記フィード供給部から移送された乳酸水溶液および前記水蒸気供給部から移送された水蒸気がそれぞれのノズルを介して混合噴霧される噴霧部;混合噴霧後に乳酸水溶液が気化する気化反応部;および気化された乳酸分子を含む第3-3ストリームを収得する収得部を含む、
図1に例示した形態の乳酸気化装置を準備した。
【0197】
フィード供給部と水蒸気供給部には温度計および温度調節装置が備えられ、供給されるフィード(第3-1ストリーム)と水蒸気(第3-2ストリーム)の温度を調節できるようにし、収得部には第3-3ストリームの温度を測定できるように温度計が備えられた。
【0198】
先に、水蒸気を気化反応器の内部に投入して、気化反応器の内部が水蒸気で飽和するようにした。
【0199】
その後、実施例1~7による乳酸水溶液をフィード供給部により第3-1ストリームに供給し、水蒸気を水蒸気供給部により供給して、それぞれのノズルを介して気化反応部の内部に連続して混合噴霧されるようにしながら、収得部により気化された乳酸分子を含む第3-3ストリームを収得した。
【0200】
噴霧条件は、次の表7にまとめたとおりである。
【表7】
【0201】
収得される第3-3ストリームを分析し、第3-3ストリーム内の全乳酸系化合物の濃度とその中のオリゴマーの比率を測定および計算し、下記表8にまとめた。
【表8】
【0202】
前記表8を参照すると、本発明の実施例による場合、連続して乳酸を気化させて、乳酸オリゴマーの含有量を非常に短時間で減らすことができることを明確に確認することができる。
【符号の説明】
【0203】
1 第3-1ストリーム
2 第3-2ストリーム
3 第3-3ストリーム
100 フィード供給部
110 乳酸水溶液フィード
120 フィード前処理部
200 水蒸気供給部
210 水供給部
220 水前処理部
300 気化反応部
310 噴霧部
400 収得部
410 気-液分離器
111,121,211,221 流量調節計(弁)
【国際調査報告】