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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】オレフィン系重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/00 20060101AFI20231026BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C08F10/00
C08F210/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523278
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 KR2022004063
(87)【国際公開番号】W WO2022203389
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0037280
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ユン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】イン・スン・パク
(72)【発明者】
【氏名】チョン・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】キ・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】レ・クン・カク
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA00P
4J100AA00Q
4J100AA02P
4J100AA03P
4J100AA04Q
4J100AA07P
4J100AA15P
4J100AA16P
4J100AA17P
4J100AA19P
4J100AB02P
4J100AB03P
4J100AB08P
4J100AB16P
4J100AR11P
4J100AS02P
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA13
4J100DA24
4J100DA25
4J100DA39
4J100DA40
4J100DA42
4J100DA43
4J100DA47
4J100DA48
4J100DA49
4J100DA50
4J100FA04
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA30
4J100GC26
4J100JA11
4J100JA28
4J100JA43
4J100JA51
4J100JA58
4J100JA67
(57)【要約】
本発明は、オレフィン系重合体に関する。具体的に、高結晶性領域が導入され、高い機械的剛性を示す、低密度オレフィン系重合体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(4)の要件を満たすオレフィン系重合体:
(1)メルトインデックス(Melt Index、190℃、2.16kgの荷重条件)が0.1~10.0g/10分であり、
(2)密度が0.875~0.895g/ccであり、
(3)クロス分別クロマトグラフィー(Cross-Fractionation Chromatography、CFC)で測定された溶離温度(Te)が30~40℃であり、
(4)CFC測定時に8.0≦P(75)-P(50)≦12.0であり、
ここで、P(75)およびP(50)は、それぞれ、CFCで測定された温度-溶出量グラフにおいて、-20~75℃の温度範囲での溶出量(重量%)および-20~50℃の温度範囲での溶出量(重量%)である。
【請求項2】
下記(5)の要件をさらに満たす、請求項1に記載のオレフィン系重合体:
(5)メルトフローレート比(MFRR、Melt flow rate ratio、MI10/MI2.16)が5~10である。
【請求項3】
下記(6)の要件をさらに満たす、請求項1又は2に記載のオレフィン系重合体:
(6)示差走査熱量計(DSC)で測定された溶融温度(Tm)が55~90℃である。
【請求項4】
下記(7)の要件をさらに満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体:
(7)示差走査熱量計(DSC)で測定されたガラス転移温度(Tg)が-70~-30℃である。
【請求項5】
下記(8)の要件をさらに満たす、請求項1~4のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体:
(8)重量平均分子量が10,000~500,000g/molである。
【請求項6】
下記(9)の要件をさらに満たす、請求項1~5のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体:
(9)分子量分布(MWD、molecular weight density)が0.1~6.0である。
【請求項7】
下記(10)の要件をさらに満たす、請求項1~6のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体:
(10)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)測定時に-20℃での可溶性分画(SF、Soluble Fraction)が2重量%以下である。
【請求項8】
前記オレフィン系重合体は、エチレンと炭素数3~12のα-オレフィン共単量体の共重合体である、請求項1~7のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項9】
前記α-オレフィン共単量体は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、ビニルノルボルネン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、および3-クロロメチルスチレンからなる群から選択された1種以上である、請求項8に記載のオレフィン系重合体。
【請求項10】
前記オレフィン系重合体は、エチレンと1-ブテンの共重合体である、請求項8に記載のオレフィン系重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月23日付けの韓国特許出願10-2021-0037280に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
本発明は、オレフィン系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、成形性、耐熱性、機械的特性、衛生品質、耐水蒸気透過性、および成形品の外観特性に優れ、押出成形品、ブロー成形品、および射出成形品用として広く用いられている。しかし、ポリオレフィン、特に、ポリエチレンは、分子内に極性基が存在しないため、ナイロンなどの極性樹脂との相溶性が低く、極性樹脂および金属との接着性が低いという問題がある。その結果、ポリオレフィンを極性樹脂または金属とブレンドするか、もしくはこれらの材料と積層して用いることが困難であった。また、ポリオレフィンの成形品は、表面親水性および帯電防止性が低いという問題がある。
【0003】
このような問題を解決し、極性材料に対する親和性を高めるために、ラジカル重合によりポリオレフィン上に極性基含有単量体をグラフトする方法が広く用いられた。しかし、この方法は、グラフト反応途中にポリオレフィンの分子内架橋および分子鎖の切断が生じ、グラフト重合体と極性樹脂の粘度バランスが良好でなく、混和性が低いという問題があった。また、分子内架橋により生成されたゲル成分または分子鎖の切断により生成された異物により、成形品の外観特性が低いという問題があった。
【0004】
また、エチレン単独重合体、エチレン/α-オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、またはプロピレン/α-オレフィン共重合体などのオレフィン重合体を製造する方法として、チタン触媒またはバナジウム触媒などの金属触媒下で、極性の単量体を共重合する方法が用いられていた。しかし、上記のような金属触媒を用いて極性単量体を共重合する場合、分子量分布または組成物分布が広く、重合活性が低いという問題がある。
【0005】
また、他の方法として、二塩化ジルコノセン(zircononocene dichloride)などの遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)からなるメタロセン触媒の存在下で重合する方法が知られている。メタロセン触媒を用いる場合、高活性の高分子量のオレフィン重合体が得られ、また、生成されるオレフィン重合体は、分子量分布が狭く、組成分布が狭い。
【0006】
また、非架橋シクロペンタジエニル基、架橋または非架橋ビスインデニル基、またはエチレン架橋非置換インデニル基/フルオレニル基のリガンドを有するメタロセン化合物を触媒として用いて、極性基を含有するポリオレフィンを製造する方法としては、メタロセン触媒を用いる方法も知られている。しかし、これらの方法は、重合活性が非常に低いという短所がある。そのため、保護基により極性基を保護する方法が実施されているが、保護基を導入する場合、反応後に当該保護基をまた除去しなければならないため、工程が複雑になるという問題がある。
【0007】
アンサ-メタロセン(ansa-metallocene)化合物は、架橋基により互いに連結された2つのリガンドを含む有機金属化合物であり、前記架橋基(bridge group)によりリガンドの回転が防止され、中心金属の活性および構造が決定される。
【0008】
このようなアンサ-メタロセン化合物は、オレフィン系ホモポリマーまたはコポリマーの製造に触媒として用いられている。特に、シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)-フルオレニル(fluorenyl)リガンドを含むアンサ-メタロセン化合物は、高分子量のポリエチレンを製造することができ、これにより、ポリプロピレンの微細構造を制御することができると知られている。
【0009】
また、インデニル(indenyl)リガンドを含むアンサ-メタロセン化合物は、活性に優れ、立体規則性が向上したポリオレフィンを製造することができると知られている。
【0010】
このように、さらに高い活性を有し、かつ、オレフィン系高分子の微細構造を制御することができるアンサ-メタロセン化合物に対する多様な研究が行われているが、その程度が未だに不十分な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国公開特許第2007-0003071号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高結晶性領域が導入され、高い機械的剛性を示す、低密度オレフィン系重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記(1)~(4)の要件を満たすオレフィン系重合体を提供する。
(1)メルトインデックス(Melt Index、190℃、2.16kgの荷重条件)が0.1~10.0g/10分であり、
(2)密度が0.875~0.895g/ccであり、
(3)クロス分別クロマトグラフィー(Cross-Fractionation Chromatography、CFC)で測定された溶離温度(Te)が30~40℃であり、
(4)CFC測定時に8.0≦P(75)-P(50)≦12.0であり、
ここで、P(75)およびP(50)は、それぞれ、CFCで測定された温度-溶出量グラフにおいて、-20~75℃の温度範囲での溶出量(重量%)および-20~50℃の温度範囲での溶出量(重量%)である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るオレフィン系重合体は、低密度オレフィン系重合体であって、高結晶性領域が導入され、高い機械的剛性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をより詳細に説明する。
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0016】
本明細書において、用語「重合体」とは、同一または異なる類型の単量体の重合により製造される重合体化合物を意味する。「重合体」という総称は、「単独重合体」、「共重合体」、「三元共重合体」だけでなく、「混成重合体」という用語を含む。また、前記「混成重合体」とは、2つ以上の異なる類型の単量体の重合により製造された重合体を意味する。「混成重合体」という総称は、(2つの異なる単量体から製造された重合体を称する際に通常用いられる)「共重合体」という用語だけでなく、(3つの異なる類型の単量体から製造された重合体を称する際に通常用いられる)「三元共重合体」という用語を含む。これは、4つ以上の類型の単量体の重合により製造された重合体を含む。
【0017】
本発明に係るオレフィン系重合体は、下記(1)~(5)の要件を満たすことを特徴とする。
(1)メルトインデックス(Melt Index、190℃、2.16kgの荷重条件)が0.1~10.0g/10分であり、
(2)密度が0.875~0.895g/ccであり、
(3)クロス分別クロマトグラフィー(Cross-Fractionation Chromatography、CFC)で測定された溶離温度(Te)が30~40℃であり、
(4)CFC測定時に8.0≦P(75)-P(50)≦12.0であり、
ここで、P(75)およびP(50)は、それぞれ、CFCで測定された温度-溶出量グラフにおいて、-20~75℃の温度範囲での溶出量(重量%)および-20~50℃の温度範囲での溶出量(重量%)である。
【0018】
本発明に係るオレフィン系重合体は、低密度であり、かつ、通常の従来のオレフィン系重合体と比べて、高結晶性領域が導入され、同一レベルの密度およびメルトインデックス(Melt Index、190℃、2.16kgの荷重条件)を有する際に、さらに高い引張強度、曲げ弾性率、および硬度を示す。本発明に係るオレフィン系重合体は、オレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素ガスを投入しながらオレフィン系単量体を重合するステップを含む製造方法により製造されたものであり、重合時に水素ガスの投入により高結晶性領域が導入され、優れた機械的剛性を示す。
【0019】
前記オレフィン系重合体は、(1)メルトインデックス(MI、190℃、2.16kgの荷重条件)が0.1~10.0g/10分である要件を満たす。
前記メルトインデックス(MI、Melt Index)は、オレフィン系重合体を重合する過程で用いられる触媒の共単量体に対する使用量を調節することで調節されることができ、オレフィン系重合体の機械的物性および衝撃強度、そして成形性に影響を及ぼす。
【0020】
前記メルトインデックスは、0.875~0.895g/ccの低密度条件で、ASTM D1238に準じて、190℃、2.16kgの荷重条件で測定されたものであり、0.1~10.0g/10分を示し、具体的に、0.3g/10分以上、0.4g/10分以上、9.0g/10分以下、7.0g/10分以下であってもよい。
【0021】
前記オレフィン系重合体は、(2)密度が0.875~0.895g/ccである要件を満たす。具体的に、前記密度は0.876g/cc以上、0.878g/cc以上、0.892g/cc以下、0.891g/cc以下であってもよい。
【0022】
通常、オレフィン系重合体の密度は、重合時に用いられる単量体の種類と含量、および重合度などの影響を受け、共重合体の場合、共単量体の含量による影響が大きい。本発明のオレフィン系重合体は、特徴的構造を有する遷移金属化合物を含む触媒組成物を用いて重合したものであり、多量の共単量体の導入が可能であり、上記のような範囲の低密度を有することができる。
【0023】
前記オレフィン系重合体は、(3)クロス分別クロマトグラフィー(Cross-Fractionation Chromatography、CFC)で測定された溶離温度(Te)が30~40℃である要件を満たす。前記溶離温度は、具体的に、31℃以上、32℃以上、40℃以下、39℃以下であってもよい。
【0024】
前記オレフィン系重合体は、(4)CFC測定時に8.0≦P(75)-P(50)≦12.0である要件を満たす。
ここで、P(75)およびP(50)は、それぞれ、CFCで測定された温度-溶出量グラフにおいて、-20~75℃の温度範囲での溶出量(重量%)および-20~50℃の温度範囲での溶出量(重量%)である。
【0025】
P(75)およびP(50)が前記要件(4)の範囲を満たすとは、オレフィン系重合体が当該温度範囲で高結晶性含量が高いことを意味する。本発明のオレフィン系重合体は、類似の溶離温度(Te)を有する重合体と比べて、高結晶性含量が高いため架橋発泡効率が増加し、これにより、優れた機械的物性を有する発泡体を製造することができる。
【0026】
P(75)およびP(50)が前記要件(4)の範囲から外れる場合、オレフィン系重合体の機械的物性が低下し得る。
P(75)およびP(50)が前記要件(4)の範囲を満たすことは、後述するように、本発明におけるエチレンおよびα-オレフィン系単量体の重合時に、水素を20~100cc/minで投入することで達成することができる。具体的に、前記含量で水素を投入する際に、重合反応が一定に終結することで、分子量分布および結晶性分布が一定に調節され、前記要件(4)に該当する範囲を満たすことができる。
【0027】
また、前記オレフィン系重合体は、メルトインデックス(MI2.16、190℃、2.16kgの荷重条件)に対するメルトインデックス(MI10、190℃、10kgの荷重条件)値(MI10/MI2.16)である(5)メルトフローレート比(MFRR、Melt flow rate ratio、MI10/MI2.16)が5~10である要件を満たすことができ、前記メルトフローレート比は、具体的に、6以上、9以下、8以下であってもよい。
【0028】
前記メルトフローレート比は、オレフィン系重合体の長側鎖(LCB)の個数減少により前記要件(5)のように低い値を示すことができ、重合体の機械的物性が向上することができる。
【0029】
また、前記オレフィン系重合体は、(6)示差走査熱量計(DSC)で測定された溶融温度(Tm)が55~90℃である要件を満たすことができ、具体的に、溶融温度(Tm)は、60℃以上、65℃以上、80℃以下、75℃以下であってもよく、すなわち、60℃≦Tm≦80℃、より具体的に、65℃≦Tm≦75℃の要件を満たすことができる。
【0030】
また、前記オレフィン系重合体は、さらに、(7)示差走査熱量計(DSC)で測定されたガラス転移温度(Tg)が-70~-30℃である要件を満たすことができ、具体的に、前記ガラス転移温度(Tg)は、-60℃以上、-51℃以上、-43℃以下であってもよい。
【0031】
一般的に、示差走査熱量計(DSC)を用いた溶融温度(Tm)の測定は、溶融温度(Tm)よりも約30℃程度高い温度まで一定の速度で加熱した後、ガラス転移温度(Tg)よりも約30℃程度低い温度まで一定の速度で冷却する最初のサイクル後、2回目のサイクルにおいて標準的な溶融温度(Tm)のピークを得る。
【0032】
前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、最初のサイクル後に、溶融温度(Tm)のピーク直前の温度まで加熱し冷却する過程を経て、5℃程度温度を下げた温度まで加熱し冷却する過程を繰り返し行うことで、より精密な結晶情報を得る方法として広く知られている。
【0033】
オレフィン系重合体に高結晶性領域が少量導入される場合、一般的な示差走査熱量計(DSC)を用いた溶融温度の測定時には示されず、前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)により高温溶融ピークを測定することができる。
【0034】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、さらに、(8)重量平均分子量(Mw)が10,000~500,000g/molである要件を満たすことができ、具体的に、前記重量平均分子量(Mw)は30,000g/mol以上、50,000g/mol以上、300,000g/mol以下、200,000g/mol以下であってもよい。
【0035】
前記重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)により分析されるポリスチレン換算分子量である。
【0036】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、さらに、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)である(9)分子量分布(MWD、Molecular Weight Distribution)が0.1~6.0である要件を満たすことができ、前記分子量分布(MWD)は、具体的に、1.0以上、2.0以上、4.0以下、3.0以下であってもよい。
【0037】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、さらに、(10)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)測定時に-20℃での可溶性分画(SF、Soluble Fraction)が2重量%以下である要件を満たすことができる。
具体的に、前記可溶性分画は、2重量%以下、1重量%以下であってもよい。
【0038】
前記クロス分別クロマトグラフィー(CFC、Cross-fractionation Chromatography)測定時に低い温度で溶出する分画であるほど結晶性が低く、前記クロス分別クロマトグラフィー(CFC、Cross-fractionation Chromatography)上で-20℃以下で溶出する可溶性分画(SF、Soluble Fraction)を超低結晶性領域と見ることができる。
【0039】
通常、重合体の密度が低いほど、結晶性が低くなり、超低結晶性領域が増加し、衝撃強度が改善される。しかし、通常のオレフィン系重合体において、超低結晶性領域が一定レベル以上になる場合、機械的物性が悪化する。本発明に係るオレフィン系重合体は、多結晶構造を有し、超低結晶性含量を減らして相対的に高結晶性含量を増加させることで、向上した引張強度、引裂強度、曲げ弾性率などの優れた機械的物性を示すことができる。
【0040】
前記オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体、具体的には、α-オレフィン系単量体、環状オレフィン系単量体、ジエンオレフィン系単量体、トリエンオレフィン系単量体、およびスチレン系単量体の中から選択されるいずれか1つの単独重合体であるか、または2種以上の共重合体であってもよい。より具体的に、前記オレフィン系重合体は、エチレンと、炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体、または炭素数3~10のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。
【0041】
前記α-オレフィン共単量体は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、ビニルノルボルネン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、および3-クロロメチルスチレンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0042】
より具体的に、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、エチレンとプロピレン、エチレンと1-ブテン、エチレンと1-ヘキセン、エチレンと4-メチル-1-ペンテン、またはエチレンと1-オクテンの共重合体であってもよく、より具体的に、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、エチレンと1-ブテンの共重合体であってもよい。
【0043】
前記オレフィン系重合体がエチレンとα-オレフィンの共重合体である場合、前記α-オレフィンの量は、共重合体の全重量に対して90重量%以下、より具体的には70重量%以下、さらに具体的には5重量%~60重量%であってもよく、さらに具体的には10重量%~50重量%であってもよい。前記α-オレフィンが前記範囲で含まれる際に、前述した物性的特性が適切に実現されることができる。
【0044】
上記のような物性および構成的特徴を有する本発明の一実施形態に係るオレフィン系重合体は、単一反応器にて、1種以上の遷移金属化合物を含むメタロセン触媒組成物の存在下で、水素ガスを投入しながらオレフィン系単量体を重合する連続溶液重合反応により製造されることができる。これにより、本発明の一実施形態に係るオレフィン系重合体は、重合体中の重合体を構成する単量体のうちいずれか1つの単量体由来の繰り返し単位が2個以上線状に連結されて構成されたブロックが形成されない。すなわち、本発明に係るオレフィン系重合体は、ブロック共重合体(block copplymer)を含まず、ランダム共重合体(random coplymer)、交互共重合体(alternating copolymer)、およびグラフト共重合体(graft copolymer)からなる群から選択されてもよく、より具体的には、ランダム共重合体であってもよい。
【0045】
具体的に、本発明のオレフィン系共重合体は、下記化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素ガスを20~100cc/minで投入しながらオレフィン系単量体を重合するステップを含む製造方法、例えば、下記化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素を投入し、連続撹拌槽型反応器(Continuous Stirred Tank Reactor)を用いた連続溶液重合反応により製造されることができる。
【0046】
ただし、本発明の一実施形態に係るオレフィン系重合体の製造において、下記化学式1の遷移金属化合物の構造の範囲を特定の開示形態に限定せず、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、等価物ないし代替物を含むものと理解すべきである。
【0047】
【化1】
【0048】
前記化学式1中、
は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、アリール、シリル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヒドロカルビルで置換された4族金属のメタロイド基であり、前記2つのRは、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数6~20のアリール基を含むアルキリジン基により互いに連結されて環を形成してもよく、
は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アリール;アルコキシ;アリールオキシ;アミド基であり、前記Rのうち2つ以上は、互いに連結されて脂肪族環または芳香族環を形成してもよく、
は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;またはアリール基で置換もしくは非置換の、窒素を含む脂肪族または芳香族環であり、前記置換基が複数である場合には、前記置換基のうち2つ以上の置換基が互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成してもよく、
Mは、4族遷移金属であり、
およびQは、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;アリールアミド;または炭素数1~20のアルキリデン基である。
【0049】
また、本発明の他の一例において、前記化学式1中、前記RおよびRは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;アリール;またはシリルであってもよく、
【0050】
は、互いに同一または異なり、炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルコキシ;アリールオキシ;またはアミドであってもよく、前記Rのうち2つ以上のRは、互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成してもよく、
【0051】
前記QおよびQは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;アリールアミドであってもよく、
Mは、4族遷移金属であってもよい。
【0052】
前記化学式1で表される遷移金属化合物は、テトラヒドロキノリンが導入されたシクロペンタジエニルリガンドにより金属サイトが連結されており、構造的にCp-M-N角度は狭く、モノマーが接近するQ-M-Q(Q-M-Q)角度は広く維持するという特徴を有する。また、環状の結合によりCp、テトラヒドロキノリン、窒素、および金属サイトが順に連結され、より安定かつ堅固な五角形のリング構造をなす。したがって、このような化合物をメチルアルミノキサンまたはB(Cなどの助触媒と反応させて活性化してからオレフィン重合に適用する際に、高い重合温度においても、高活性、高分子量、および高共重合性などの特徴を有するオレフィン系重合体を重合することができる。
【0053】
前記オレフィン系単量体を重合するステップにおいて、投入される水素ガスの投入量は20~40sccmであってもよく、具体的には22~38sccmであってもよく、より具体的には22~35sccmであってもよい。前記水素ガスの投入量は、エチレンが0.87kg/hの量で反応系に投入されたときを基準としたときの量である。前記水素ガスの投入量が、化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で前記範囲を満たす場合、本発明の一例によるオレフィン系重合体の物性範囲要件を満たすオレフィン系重合体を製造することができる。
【0054】
本明細書で定義された各置換基について詳細に説明すれば次のとおりである。
本明細書で用いられる用語「ヒドロカルビル基(hydrocarbyl group)」は、特に言及しない限り、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルキルアリール、またはアリールアルキルなど、その構造に関係なく、炭素および水素のみからなる炭素数1~20の1価の炭化水素基を意味する。
【0055】
本明細書で用いられる用語「ハロゲン」は、特に言及しない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、特に言及しない限り、直鎖または分岐鎖の炭化水素残基を意味する。
【0056】
本明細書で用いられる用語「シクロアルキル」は、特に言及しない限り、シクロプロピルなどを含む環状アルキルを示す。
本明細書で用いられる用語「アルケニル」は、特に言及しない限り、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を意味する。
【0057】
前記分岐鎖は、炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであってもよい。
【0058】
本明細書で用いられる用語「アリール」は、特に言及しない限り、炭素数6~20の芳香族基を示し、具体的に、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、アントラセニル、ピリジル、ジメチルアニリニル、アニソリルなどが挙げられるが、これらの例のみに限定されるものではない。
【0059】
前記アルキルアリール基は、前記アルキル基により置換されたアリール基を意味する。
前記アリールアルキル基は、前記アリール基により置換されたアルキル基を意味する。
【0060】
前記環(または、ヘテロ環基)は、炭素数5~20の環原子を有し、1つ以上のヘテロ原子を含む1価の脂肪族または芳香族の炭化水素基を意味し、単環または2以上の環の縮合環であってもよい。また、前記ヘテロ環基は、アルキル基で置換されていても置換されていなくてもよい。これらの例としてはインドリン、テトラヒドロキノリンなどが挙げられるが、本発明がこれらのみに限定されるものではない。
【0061】
前記アルキルアミノ基は、前記アルキル基により置換されたアミノ基を意味し、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられるが、これらの例のみに限定されるものではない。
【0062】
本発明の一実施形態によると、前記アリール基は、炭素数6~20であることが好ましく、具体的に、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピリジル、ジメチルアニリニル、アニソリルなどが挙げられるが、これらの例のみに限定されるものではない。
【0063】
本明細書において、シリルは、炭素数1~20のアルキルで置換もしくは非置換のシリルであってもよく、例えば、シリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリブチルシリル、トリヘキシルシリル、トリイソプロピルシリル、トリイソブチルシリル、トリエトキシシリル、トリフェニルシリル、トリス(トリメチルシリル)シリルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
前記化学式1の遷移金属化合物は、下記化学式1-1であってもよく、これに限定されない。
【0065】
【化2】
この他にも、前記化学式1に定義された範囲で多様な構造を有する化合物であってもよい。
【0066】
前記化学式1の遷移金属化合物は、触媒の構造的特徴上、低密度ポリエチレンだけでなく、多量のα-オレフィンが導入可能であるため、0.850g/cc~0.890g/ccレベルの低密度オレフィン系重合体の製造が可能である。
【0067】
前記化学式1の遷移金属化合物は、一例として、以下のような方法により製造されることができる。
【0068】
【化3】
【0069】
前記反応式1中、R~R、M、Q、およびQは、前記化学式1における定義と同様である。
【0070】
前記化学式1は、韓国特許公開第2007-0003071号に記載された方法により製造可能であり、前記特許文献の内容は、その全てが本明細書に含まれる。
【0071】
前記化学式1の遷移金属化合物は、この他に、下記化学式2、化学式3、および化学式4で表される助触媒化合物のうち1種以上をさらに含む組成物の形態で、重合反応の触媒として用いられてもよい。
【0072】
[化学式2]
-[Al(R)-O]
【0073】
[化学式3]
A(R
【0074】
[化学式4]
[L-H][W(D)または[L][W(D)
【0075】
前記化学式2~3中、
は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~20のヒドロカルビル、およびハロゲンで置換された炭素数1~20のヒドロカルビルからなる群から選択され、
Aは、アルミニウムまたはボロンであり、
Dは、それぞれ独立して、1つ以上の水素原子が置換基で置換可能な炭素数6~20のアリールまたは炭素数1~20のアルキルであり、この際、前記置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のヒドロカルビル、炭素数1~20のアルコキシ、および炭素数6~20のアリールオキシからなる群から選択される少なくともいずれか1つであり、
Hは、水素原子であり、
Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、
Wは、13族元素であり、
aは、2以上の整数である。
【0076】
前記化学式2で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサンが挙げられ、また、前記アルキルアルミノキサンが2種以上混合された修飾アルキルアルミノキサンが挙げられ、具体的に、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)であってもよい。
【0077】
前記化学式3で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロンなどが挙げられ、具体的に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムの中から選択されてもよい。
【0078】
前記化学式4で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、またはトリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンなどが挙げられる。
【0079】
前記触媒組成物は、第1方法として、1)前記化学式1で表される遷移金属化合物に前記化学式2または化学式3で表される化合物を接触させて混合物を得るステップと、2)前記混合物に前記化学式4で表される化合物を添加するステップと、を含む方法で製造されることができる。
【0080】
また、前記触媒組成物は、第2方法として、前記化学式1で表される遷移金属化合物に前記化学式4で表される化合物を接触させる方法で製造されることができる。
【0081】
前記触媒組成物の製造方法のうち第1方法の場合、前記化学式1で表される遷移金属化合物および前記化学式2で表される化合物/前記化学式2または化学式3で表される化合物のモル比は1/5,000~1/2であってもよく、具体的には1/1,000~1/10であってもよく、より具体的には1/500~1/20であってもよい。前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式2または化学式3で表される化合物のモル比が1/2を超過する場合には、アルキル化剤の量が非常に小さいため、金属化合物のアルキル化が完全に行われないという問題があり、モル比が1/5,000未満である場合には、金属化合物のアルキル化は行われるものの、残っている過量のアルキル化剤と前記化学式4の化合物である活性化剤との副反応により、アルキル化した金属化合物の活性化が完全に行われないという問題がある。また、前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式4で表される化合物のモル比は1/25~1であってもよく、具体的には1/10~1であってもよく、より具体的には1/5~1であってもよい。前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式4で表される化合物のモル比が1を超過する場合には、活性化剤の量が相対的に少ないため、金属化合物の活性化が完全に行われることができず、生成される触媒組成物の活性度が低下し得、モル比が1/25未満である場合には、金属化合物の活性化が完全に行われるものの、残っている過量の活性化剤により、触媒組成物の単価が経済的でないか、または生成される高分子の純度が低下し得る。
【0082】
前記触媒組成物の製造方法のうち第2方法の場合、前記化学式1で表される遷移金属化合物/化学式4で表される化合物のモル比は1/10,000~1/10であってもよく、具体的には1/5,000~1/100であってもよく、より具体的には1/3,000~1/500であってもよい。前記モル比が1/10を超過する場合には、活性化剤の量が相対的に少ないため、金属化合物の活性化が完全に行われることができず、生成される触媒組成物の活性度が低下し得、1/10,000未満である場合には、金属化合物の活性化が完全に行われるものの、残っている過量の活性化剤により、触媒組成物の単価が経済的でないか、または生成される高分子の純度が低下し得る。
【0083】
前記触媒組成物の製造時に、反応溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、またはベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒が用いられてもよい。
【0084】
また、前記触媒組成物は、前記遷移金属化合物と助触媒化合物を担体に担持した形態で含んでもよい。
前記担体は、メタロセン系触媒における担体として用いられるものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的に、前記担体は、シリカ、シリカ-アルミナ、またはシリカ-マグネシアなどであってもよく、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0085】
中でも、前記担体がシリカである場合、シリカ担体と前記化学式1のメタロセン化合物の官能基が化学的に結合を形成するため、オレフィン重合過程で表面から遊離する触媒がほぼ存在しない。その結果、オレフィン系重合体の製造工程中に、反応器の壁面や重合体粒子同士が絡み合うファウリングの発生を防止することができる。また、前記シリカ担体を含む触媒の存在下で製造されるオレフィン系重合体は、重合体の粒子形態および見掛け密度に優れる。
【0086】
より具体的に、前記担体は、高温乾燥などの方法により表面に反応性の大きいシロキサン基を含む、高温乾燥したシリカまたはシリカ-アルミナなどであってもよい。
前記担体は、NaO、KCO、BaSO、またはMg(NOなどの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、または硝酸塩成分をさらに含んでもよい。
【0087】
前記オレフィン系単量体を重合する重合反応は、連続式溶液重合、バルク重合、懸濁重合、スラリー重合、または乳化重合など、オレフィン系単量体の重合に適用される通常の工程により行われることができる。
【0088】
前記オレフィン系単量体の重合反応は、不活性溶媒下で行われてもよく、前記不活性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、n-ヘキサン、1-ヘキセン、1-オクテンが挙げられ、これに制限されない。
【0089】
前記オレフィン系重合体の重合は、約25℃~約500℃の温度で行われてもよく、具体的には80℃~250℃、より好ましくは100℃~200℃の温度で行われてもよい。また、重合時の反応圧力は1kgf/cm~150kgf/cm、好ましくは1kgf/cm~120kgf/cm、より好ましくは5kgf/cm~100kgf/cmであってもよい。
【0090】
本発明のオレフィン系重合体は、向上した物性を有するため、自動車用、電線用、玩具用、繊維用、医療用などの材料のような各種包装用、建築用、生活用品などの多様な分野および用途での中空成形用、押出成形用、または射出成形用として有用であり、特に、優れた衝撃強度が求められる自動車用として有用に用いることができる。
【0091】
また、本発明のオレフィン系重合体は、成形体の製造に有用に用いることができる。
前記成形体は、具体的に、ブローモルディング成形体、インフレーション成形体、キャスト成形体、押出ラミネート成形体、押出成形体、発泡成形体、射出成形体、シート(sheet)、フィルム(film)、繊維、モノフィラメント、または不織布などであってもよい。
【0092】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施例について詳しく説明する。ただし、本発明は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0093】
触媒製造例:遷移金属化合物の製造
【化4】
【0094】
(1)2-メチル-7-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)インドリンの製造
(i)リチウムカルバメートの製造
2-メチルインドリン(98.24mmol)とジエチルエーテル(150mL)をシュレンク(shlenk)フラスコに入れた。ドライアイスとアセトンにより作製された-78℃の低温槽に前記シュレンクフラスコを浸漬して30分間撹拌した。次いで、n-BuLi(98.24mmol)を窒素雰囲気下で注射器で投入し、淡い黄色のスラリーが形成された。次いで、フラスコを2時間撹拌した後、生成されたブタンガスを除去しながら、フラスコの温度を常温に上げた。フラスコを再び-78℃の低温槽に浸漬して温度を下げた後、COガスを投入した。二酸化炭素ガスを投入することでスラリーがなくなり、透明な溶液となった。フラスコをバブラ(bubbler)に連結して二酸化炭素ガスを除去しながら、温度を常温に上げた。その後、真空下で、余剰のCOガスと溶媒を除去した。ドライボックスにフラスコを移した後にペンタンを加え、激しく撹拌した後に濾過し、白色の固体化合物であるリチウムカルバメートを得た。前記白色の固体化合物は、ジエチルエーテルが配位結合している。
【0095】
(ii)2-メチル-7-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)インドリンの製造
前記ステップ(i)で製造されたリチウムカルバメート化合物(2.60mmol)をシュレンクフラスコに入れた。次いで、テトラヒドロフラン(63.9mmol)とジエチルエーテル45mLを順に入れた。アセトンと少量のドライアイスにより作製された-20℃の低温槽に前記シュレンクフラスコを浸漬して30分間撹拌した後、t-BuLi(42.60mmol)を入れた。この際、反応混合物の色が赤色に変化した。-20℃を維持し続けながら6時間撹拌した。テトラヒドロフランに溶解しているCeCl・2LiCl溶液(42.60mmol)とテトラメチルシクロペンタノン(42.60mmol)を注射器内で混合した後、窒素雰囲気下でフラスコに投入した。フラスコの温度を常温に徐々に上げ、1時間後に恒温槽を除去し、温度を常温に維持した。次いで、前記フラスコに水(15mL)を添加した後、エチルアセテートを入れ、濾過して濾液を得た。その濾液を分別漏斗に移した後、塩酸(2N、80mL)を入れて12分間振った。そして、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(160mL)を入れて中和後に有機層を抽出した。この有機層に無水硫酸マグネシウムを入れて水分を除去し濾過した後、その濾液を取り、溶媒を除去した。得られた濾液をヘキサンとエチルアセテート(v/v、10:1)溶媒を用いてカラムクロマトグラフィー方法で精製して黄色オイルを得た。収率は19%であった。
【0096】
H NMR(C):δ6.97(d、J=7.2Hz、1H、CH)、δ6.78(d、J=8Hz、1H、CH)、δ6.67(t、J=7.4Hz、1H、CH)、δ3.94(m、1H、quinoline-CH)、δ3.51(br s、1H、NH)、δ3.24-3.08(m、2H、quinoline-CH、Cp-CH)、δ2.65(m、1H、quinoline-CH)、δ1.89(s、3H、Cp-CH)、δ1.84(s、3H、Cp-CH)、δ1.82(s、3H、Cp-CH)、δ1.13(d、J=6Hz、3H、quinoline-CH)、δ0.93(3H、Cp-CH)ppm。
【0097】
(2)[(2-メチルインドリン-7-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η 、κ-N]チタンジメチル([(2-Methylindolin-7-yl)tetramethylcyclopentadienyl-eta5、kapa-N]titanium dimethyl)の製造
(i)2-メチル-7-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-インドリン(2.25g、8.88mmol)とジエチルエーテル140mLを丸底フラスコに入れた後、-30℃に温度を下げ、n-BuLi(17.6mmol)を撹拌しながら徐々に入れた。温度を常温に上げながら6時間反応させた。その後、ジエチルエーテルで数回洗浄し、濾過して固体を得た。真空をかけて残っている溶媒を除去し、ジエチルエーテルが配位したジリチウム塩化合物(化合物4g)を得た(1.37g、50%)。
【0098】
H NMR(Pyridine-d8):δ7.22(br s、1H、CH)、δ7.18(d、J=6Hz、1H、CH)、δ6.32(t、1H、CH)、δ4.61(brs、1H、CH)、δ3.54(m、1H、CH)、δ3.00(m、1H、CH)、δ2.35-2.12(m、13H、CH、Cp-CH3)、δ1.39(d、indoline-CH3)ppm。
【0099】
(ii)ドライボックス内で、TiCl・DME(4.44mmol)とジエチルエーテル(150mL)を丸底フラスコに入れ、-30℃で撹拌しながら、MeLi(8.88mmol)を徐々に入れた。15分間の撹拌後、前記ステップ(i)で製造されたジリチウム塩化合物(1.37g、4.44mmol)をフラスコに入れた。温度を常温に上げながら3時間撹拌した。反応が終わった後、真空をかけて溶媒を除去し、ペンタンに溶かした後、濾過して濾液を取った。真空をかけてペンタンを除去し、チタン化合物を製造した。
【0100】
H NMR(C):δ7.01-6.96(m、2H、CH)、δ6.82(t、J=7.4Hz、1H、CH)、δ4.96(m、1H、CH)、δ2.88(m、1H、CH)、δ2.40(m、1H、CH)、δ2.02(s、3H、Cp-CH)、δ2.01(s、3H、Cp-CH)、δ1.70(s、3H、Cp-CH)、δ1.69(s、3H、Cp-CH)、δ1.65(d、J=6.4Hz、3H、indoline-CH)、δ0.71(d、J=10Hz、6H、TiMe-CH)ppm。
【0101】
実施例および比較例:オレフィン系重合体の製造
実施例1
1.5Lの連続工程反応器にヘキサン溶媒(7kg/h)と1-ブテン(0.29kg/h)を満たした後、反応器上端の温度を139.2℃に予熱した。トリイソブチルアルミニウム化合物(TiBAl、0.03mmol/min)、前記製造例で得られた遷移金属化合物(0.28μmol/min)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート助触媒(0.87μmol/min)を同時に反応器に投入した。次いで、前記反応器内に水素ガス(33cc/min)およびエチレン(0.87kg/h)を投入し、89barの圧力で、連続工程で139.2℃に30分以上維持させて共重合反応を行い、共重合体を得た。その後、真空オーブンで12時間以上乾燥した後に物性を測定した。
【0102】
実施例2~5
製造条件を下記表1のようにそれぞれ変更したことを除いては、実施例1と同様に共重合反応を行って共重合体を得た。
【0103】
比較例1
三井化学社製のDF840を購入して用いた。
【0104】
比較例2
三井化学社製のDF810を購入して用いた。
【0105】
比較例3
製造条件を下記表1のようにそれぞれ変更したことを除いては、実施例1と同様に共重合反応を行って共重合体を得た。
【0106】
【表1】
【0107】
実験例1:オレフィン系重合体の分析
前記実施例および比較例の共重合体に対して下記方法により物性を評価し、下記表2に示した。
【0108】
(1)密度(Density)
ASTM D-792に準じて測定した。
(2)メルトインデックス(Melt Index、MI)
ASTM D-1238(条件E、190℃、2.16Kgの荷重)に準じて測定した。
【0109】
(3)メルトフローレート比(MFRR、Melt flow rate ratio、MI10/MI2.16
ASTM D-1238[条件E、MI10(190℃、10kgの荷重)、MI2.16(190℃、2.16kgの荷重)]に準じてMI10およびMI2.16を測定した後、MI10をMI2.16で割ってメルトフローレート比を計算した。
(4)重量平均分子量(Mw、g/mol)および分子量分布(MWD)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)をそれぞれ測定し、また、重量平均分子量を数平均分子量で割って分子量分布を計算した。
【0110】
-カラム:PL Olexis
-溶媒:TCB(トリクロロベンゼン)
-流速:1.0ml/min
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器:Agilent High Temperature RI detector
-標準:ポリスチレン(三次関数で補正)
【0111】
(5)溶融温度(Tm)およびガラス転移温度(Tg)
TA instrument社製の示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter 250)を用いて得た。すなわち、温度を150℃まで増加させた後、その温度を1分間維持し、その次に-100℃まで下げ,、再び温度を増加させてDSC曲線を観察した。
【0112】
(6)P(50)、P(70)、溶離温度(Te)
測定装置としては、PolymerChar社製のCFCを用いた。先ず、o-ジクロロベンゼンを溶媒とし、前記重合体溶液をCFC分析装置内のオーブンで130℃で60分間完全に溶解した後、135℃に調整されたTREFカラムに導入し、95℃に冷却して45分間安定化させた。次いで、TREFカラムの温度を0.5℃/分の速度で-20℃まで冷却させた後、-20℃を10分間維持させた。その後、溶離量(質量%)を赤外線分光光度計を用いて測定した。次いで、予め設定された温度までTREFカラムの温度上昇率20℃/minの速度で上昇させ、予め設定された時間(すなわち、約27分)の間に到達した温度で前記温度を維持させる作業をTREFの温度が130℃に達するまで繰り返し、それぞれの温度範囲の間に溶離した分画の量(質量%)を測定した。また、各温度で溶離した分画をGPCカラムに送り、o-ジクロロベンゼンを溶媒として用いたことを除いては、GPC測定原理と同様に重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0113】
温度-溶出量グラフを描いた後に積分して全溶出量を100%に標準化した際に、-20~50℃で溶出した溶出量(重量%)をP(50)、-20~75℃で溶出した溶出量(重量%)をP(75)と定義した。
また、溶離温度(Te)は、前記グラフにおいて、-20℃以後に存在するピークにおける最高点に該当する温度を意味する。
【0114】
(7)可溶性分画(Soluble Fraction)
可溶性分画(SF)の含量は、-20℃以下で溶出する分画の含量を意味し、CFCを用いて測定した。
【0115】
【表2】
【0116】
前記表2に示したように、実施例によるオレフィン系共重合体は、本発明において定義した(1)~(4)の要件を満たすのに対し、比較例は、前記要件を満たさず、特にP(75)-P(50)値が非常に小さく8.0未満であることを確認した。
【0117】
実験例2:オレフィン系重合体の評価
前記実施例および比較例のオレフィン系重合体を対象とし、下記方法により物性を測定した。
【0118】
(1)引張強度、伸び
共重合体をそれぞれ押出してペレット状に製造した後、ASTM D638(500mm/min)に準じて破断時の引張強度および伸びを測定した。
【0119】
(2)引裂強度
共重合体をそれぞれ押出してペレット状に製造した後、D624(Type C)に準じて破断時の引裂強度を測定した。
【0120】
(3)曲げ弾性率
INSTRON 3365装置を用いてASTM D790に準じて測定した。
【0121】
(4)硬度(shore A)
TECLOCK社製のGC610 STAND for DurometerとMitutoyo社製のショア硬度計Type Aを用いて、ASTM D2240基準に準じて硬度を測定した。
【0122】
【表3】
【0123】
上記結果のように、実施例のオレフィン系重合体は、比較例と比べて機械的剛性が増加し、引張強度、引裂強度、曲げ弾性率、硬度などが増加したことを確認した。
【国際調査報告】