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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(54)【発明の名称】ケイ酸カルシウム水和物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/08 20060101AFI20231027BHJP
   C04B 28/18 20060101ALI20231027BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20231027BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20231027BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20231027BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20231027BHJP
   C04B 24/10 20060101ALI20231027BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20231027BHJP
   C01B 33/24 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
C04B22/08 A
C04B28/18
C04B28/02
C04B24/06
C04B24/12 Z
C04B24/16
C04B24/10
C04B24/38
C01B33/24 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521676
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2021077358
(87)【国際公開番号】W WO2022073961
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】20200987.4
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ディーチュ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヘッセ
【テーマコード(参考)】
4G073
4G112
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA11
4G073BA63
4G073BB14
4G073BB34
4G073BD13
4G073CC08
4G073FB10
4G073FB11
4G073FC03
4G073FC18
4G073FC25
4G073FC27
4G073FD02
4G073FD04
4G073FD25
4G073GA01
4G073GA11
4G073UB07
4G112MB01
4G112PB06
4G112PC04
(57)【要約】
本発明は、熱水条件下でのケイ酸カルシウム水和物の製造方法であって、工程段階の少なくとも1つにおいて有機化合物を添加し、前記有機化合物は分子量100~600g/モル、および前記有機化合物1グラムあたり0.02~0.035の官能基を有し、前記官能基は-OH、-COOH、-COOMa、-SO3H、または-SO3a、または-C(=O)H[式中、Mは水素、一価、二価、または三価の金属カチオン、アンモニウムイオン、または有機アミン基であり、且つaは1/3、1/2または1である]から選択される、前記方法に関する。さらに、本発明は、本発明の方法によって製造可能なケイ酸カルシウム水和物、および水硬性結合剤のための硬化促進剤としてのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸カルシウム水和物を含む組成物の製造方法であって、以下の段階:
a) 水酸化カルシウム源と二酸化ケイ素源とを、水の存在下、100℃~400℃の範囲の温度で、1時間~30時間の間、熱水条件下で反応させる段階、
b) i) 段階a)からの工程生成物と、ii) 水溶性ポリマー分散剤とを、水性媒体中で運動エネルギーを導入しながら接触させる段階
を含み、
段階a)または段階b)の少なくとも1つにおいて、または段階b)の完了後の工程生成物に、有機化合物が添加され、前記有機化合物は分子量100~600g/mol、および前記有機化合物1グラムあたり0.015~0.035の官能基を有し、前記官能基は-OH、-COOH、-COOMa、-SO3H、-SO3a、または-C(=O)H[式中、Mは水素、一価、二価または三価の金属カチオン、アンモニウムイオンまたは有機アミン基であり、且つaは1/3、1/2または1である]から選択され、前記有機化合物が段階a)において添加される場合、段階a)の温度は使用される有機化合物の融点未満であるように選択され、且つ前記有機化合物が段階b)の完了後の工程生成物に添加される場合であって、且つ前記方法が、段階b)の工程生成物を水硬性結合剤または潜在水硬性結合剤を含む建材混合物に添加する段階c)を含む場合、前記有機化合物が段階b)と段階c)との間で添加されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記有機化合物が、デキストロース、ガラクトース、酒石酸、酒石酸ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、クエン酸およびクエン酸ナトリウムの群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機化合物が、製造される組成物のケイ酸カルシウム水和物の量(乾燥成分として計算)に対して0.5~6質量%の量で添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機化合物が、段階b)の完了後の工程生成物に添加される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
段階a)におけるカルシウムのケイ素に対するモル比が0.5~2.5の範囲である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階b)における運動エネルギーが、混合またはせん断エネルギーの導入によってもたらされる、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
段階b)における運動エネルギーが、ミリングによってもたらされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
段階b)が、段階a)からの工程生成物がISO 13320:2020に準拠して静的光散乱によって特定して800nm以下のd(50)粒子径を有するまで行われる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
段階a)における反応が、発泡剤の存在下で行われる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶性ポリマー分散剤が、ポリエーテル側鎖を有する櫛形ポリマーである、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶性ポリマー分散剤が、ポリアルキレンオキシド側鎖を有する重縮合生成物である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ケイ酸カルシウム水和物組成物であって、前記組成物の乾燥質量に対して、
60~85質量%のケイ酸カルシウム水和物、
10~20質量%の水溶性ポリマー分散剤、
0.4~3.6質量%の有機化合物
を含み、前記有機化合物は分子量100~600g/モル、および前記有機化合物1グラムあたり0.015~0.035の官能基を有し、前記官能基は-OH、-COOH、-COOMa、-SO3H、-SO3aまたは-C(=O)H[式中、Mは水素、一価、二価、または三価の金属カチオン、アンモニウムイオン、または有機アミン基であり、且つaは1/3、1/2または1である]から選択される、前記組成物。
【請求項13】
請求項12に記載のケイ酸カルシウム水和物の、水硬性または潜在水硬性結合剤のための硬化促進剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸カルシウム水和物の製造方法、本発明の方法によって製造可能なケイ酸カルシウム水和物、および水硬性結合剤のための硬化促進剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントの水和において、様々なセメントクリンカー相が水と反応して、主に水和相のケイ酸カルシウム水和物、エトリンガイト、アルミン酸カルシウムフェライト相、一硫酸塩(クゼライト)およびホルトランダイトを形成する。
【0003】
ケイ酸カルシウム水和物の核をセメントに添加することによるセメント水和の促進は国際公開第2010/026155号(WO2010/026155)から公知である。従って、セメントの強度発現はそのようなケイ酸カルシウム水和物の核を添加することにより促進され得る。ケイ酸カルシウム水和物の核は、水溶性カルシウム成分と水溶性ケイ素成分とを水溶液中で、またはカルシウム化合物と二酸化ケイ素とを、各々の場合、水硬性結合剤のための可塑剤として適した水溶性の櫛形ポリマーの存在下で反応させることによって得られる。ここで得られる組成物は優れた促進作用を有するが、比較的高い粘度も有し、そのことは例えば組成物をポンピングまたは噴霧しなければならない場合に使用を困難にする。さらに、水溶性カルシウム成分と水溶性ケイ素成分との反応によって得られる組成物は、使用上の欠点、例えば腐食性と関連する外来イオン、例えば塩化物イオンおよび硝酸イオンを含む。
【0004】
特にポルトランドセメント、粉砕されたポルトランドクリンカーまたは配合されたポルトランドセメント、または上述の出発材料の混合物を90℃未満で水和することによる水和、および引き続くミリングから得られるケイ酸含有の水硬性結合剤のための凝結および硬化促進剤は、国際公開第1995/04007号(WO95/04007)から公知である。
【0005】
国際公開第2013/017391号(WO2013/017391)は、15質量%を上回るケイ酸カルシウム水和物を含む0.1~5質量%の材料を有するセメントクリンカーをミリングすることによる、速硬性の水硬性結合剤の製造方法を記載している。ここでは、ポリオキシアルキレンポリカルボキシレートである減水剤も、共にミリングされ得る。ここでは、市販の結晶性Circolit(登録商標)が、ケイ酸カルシウム水和物を含む材料として使用される。
【0006】
G.LandおよびD.Stephan, Cement&Concrete Composites 57 (2015) 64~67は、セメントの水和を促進するためのトバモライト粒子(630nm)およびゾノトライト粒子(420nm)の使用であって、前記粒子の水性懸濁液をCEM Iホワイトセメントに添加することによる前記使用を記載している。ここで、ゾノトライト粒子の促進作用はトバモライト粒子の促進作用よりも大きいことが判明している。
【0007】
欧州特許出願公開第2243754号明細書(EP2243754 A1)は、ビーライトを含む結合剤の製造方法であって、カルシウム、ケイ素および酸素原子を含む出発材料が水と混合され、温度120℃~250℃で熱水処理され、生じる中間生成物を温度100℃~200℃で5~30分の時間、反応ミリングに供する前記方法を記載している。反応および脱水によって、これは、ポルトランドセメントのように使用され得るビーライトを含む結合剤を形成する。
【0008】
欧州特許第2801557号明細書(EP2801557 B9)は、高反応性結合剤の製造法方法であって、CaO、MgO、SiO2、Al23およびFe23またはそれらの元素の他の化合物を含む1つ以上の原料から出発材料を混合する、前記方法を記載している。MgおよびAlを必ず含む混合物を100~300℃且つ滞留時間0.1~24時間で熱水処理して、生じる中間生成物を350~600℃で熱処理する。得られた生成物は少なくとも1つのケイ酸カルシウムと少なくとも1つのアルミン酸カルシウムとを含む。
【0009】
欧州特許出願公開第2801558号明細書(EP2801558 A1)は、同様の方法であるが、その方法の生成物がポルトランドセメントの剛化/凝結および/または硬化のための促進剤として使用される方法を記載している。
【0010】
欧州特許出願公開第2801559号明細書(EP2801559 A1)は、材料、例えば廃棄物および副生成物の潜在水硬性および/またはポゾラン性の反応性を強化する方法であって、CaO源と、SiO2および/またはAl23源とを含む出発材料を水と混合して、100℃~300℃で、滞留時間0.1~50時間で熱水処理する前記方法を記載している。得られる生成物は水硬性、ポゾラン性または潜在水硬性の反応性を有する。
【0011】
国際公開第2017/032719号(WO2017/032719)は、セメントの硬化のための促進剤として適した組成物の製造方法を記載している。前記方法は、水硬性または潜在水硬性結合剤を、水中の有機粒子に分散させるために適した分散剤と接触させることを含む。
【0012】
従来技術から公知のケイ酸カルシウム水和物に基づく促進剤は不充分な促進作用を有するか、または使用上の欠点(過剰に高い粘度、腐食性)と関連しているので、経済的に実行できる使用の可能性は制限されている。
【0013】
国際公開第2018/154012号(WO2018/154012)は、鉱物成分とポリマーの水溶性分散剤とを含む、水硬性結合剤のための硬化促進剤組成物を記載している。前記鉱物成分は、見かけ上の微結晶サイズ15nm以下を有する半秩序性のケイ酸カルシウム水和物、および前記半秩序性のケイ酸カルシウム水和物以外の結晶相35質量%未満を含む。前記組成物は水硬性結合剤中で優れた促進作用を提供する。この硬化促進剤の欠点は、懸濁液の経時的な粘度上昇であり、それはより高い温度でさらに促進される。室温で数週間の貯蔵後、懸濁液は粘度>2000mPasに達し、そのワーカビリティーを失い、ゲルに変換する。
【0014】
国際公開第2019/058313号(WO2019/058313)は、C-S-Hシードに基づく水硬性組成物のための促進混合物であって、ポルトランドセメントに基づく水硬性結合剤または主にケイ酸塩ベースを有する他の水硬性結合剤の水性懸濁液中で、水/結合剤比(W/B)W/B=1~W/B=6の範囲、10℃~90℃の範囲の温度で、2時間~300時間の間、カルボン酸、そのカルシウム塩、ポリエタノールアミン、またはそれらの混合物の存在下での水和によって得られる、前記促進混合物を記載している。この硬化促進剤の欠点は、多量のアルミン酸塩相であり、それは硬化剤がセメント組成物中で使用される場合、施与におけるレオロジーに関して高い不適合性をもたらす。さらに、国際公開第2019/058313号による硬化剤は、懸濁液の粘度上昇を示し、それは例えば組成物をポンピングまたは噴霧しなければならない場合に試料の取り扱いおよび施与の間の問題をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2010/026155号
【特許文献2】国際公開第1995/04007号
【特許文献3】国際公開第2013/017391号
【特許文献4】欧州特許出願公開第2243754号明細書
【特許文献5】欧州特許第2801557号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第2801558号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第2801559号明細書
【特許文献8】国際公開第2017/032719号
【特許文献9】国際公開第2018/154012号
【特許文献10】国際公開第2019/058313号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】G.LandおよびD.Stephan, Cement&Concrete Composites 57 (2015) 64~67
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の課題は、ケイ酸カルシウム水和物を含む組成物であって、特に水硬性結合剤および潜在水硬性結合剤の硬化における充分な促進作用、および懸濁液として改善された長期貯蔵安定性を有する前記組成物を提供することである。特に、前記組成物は取り扱いが容易であり、特に、室温で長期間且つ高められた温度(例えば40℃)での貯蔵後であっても組成物の容易なポンピングおよび噴霧を可能にする粘度を有し、且つ水硬性または潜在水硬性の凝結結合剤のための硬化促進剤として適しており、ひいては水硬性または潜在水硬性の凝結結合剤、特にポルトランドセメントの早期強度を改善すべきである。さらには、前記組成物は、安価且つ容易に入手可能な原料を使用して経済的に有利に製造され得るべきである。
【0018】
水硬性の凝結結合剤に関する早期強度との用語は、本願の目的では、水硬性結合剤と水とを混合してから6時間後の圧縮強度である。潜在水硬性の凝結結合剤の場合、早期強度は、水硬性の凝結結合剤と水とを混合してから7日後の圧縮強度である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
意外なことに、この課題は、ケイ酸カルシウム水和物を含む組成物の製造方法であって、以下の段階:
a) 水酸化カルシウム源と二酸化ケイ素源とを、水の存在下、100℃~400℃の範囲の温度で、1時間~30時間の間、好ましくは5時間~24時間の間、最も好ましくは10時間~20時間の間、熱水条件下で反応させる段階、
b) i) 段階a)からの工程生成物と、ii) 水溶性ポリマー分散剤とを、水性媒体中で運動エネルギーを導入しながら接触させる段階
を含み、
段階a)または段階b)の少なくとも1つにおいて、または段階b)の完了後の工程生成物に、有機化合物が添加され、ここで前記有機化合物は分子量100~600g/mol、および前記有機化合物1グラムあたり0.015~0.035の官能基を有し、前記官能基は-OH、-COOH、-COOMa、-SO3Hまたは-SO3a、または-C(=O)H[式中、Mは水素、一価、二価または三価の金属カチオン、アンモニウムイオンまたは有機アミン基であり、且つaは1/3、1/2または1である]から選択され、前記有機化合物が段階a)において添加される場合、段階a)の温度は使用される有機化合物の融点未満であるように選択され、且つ
前記有機化合物が段階b)の完了後の工程生成物に添加される場合であって、且つ前記方法が、段階b)の工程生成物を水硬性結合剤または潜在水硬性結合剤を含む建材混合物に添加する段階c)を含む場合、前記有機化合物が段階b)と段階c)との間で添加されることを特徴とする、前記方法によって解決されることが判明した。
【0020】
前記方法は、水硬性結合剤または潜在水硬性結合剤の硬化において優れた促進作用を有する組成物を提供することが判明した。さらには、従来技術の組成物とは対照的に、本発明の組成物は固形分含有率が高くても長期にわたってポンピング可能なままである。
【0021】
本願内で使用される「含む」との表現は、「本質的に~からなる」および「~からなる」の表現も包含するが、これらの表現と同義ではない。
【0022】
好ましい実施態様において、前記有機化合物は段階b)の完了後の工程生成物に添加される。最も好ましくは、前記有機化合物は段階b)の完了直後、好ましくは段階b)の完了後24時間未満、特に1時間未満に添加される。これは、段階b)から生じる懸濁液の粘度上昇が減速し、最良の長期貯蔵安定性を達成できるという利点を有する。
【0023】
好ましい実施態様において、前記有機化合物はデキストロース、ガラクトース、酒石酸、酒石酸ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、クエン酸およびクエン酸ナトリウムの群から選択される。前記有機化合物が、製造される組成物のケイ酸カルシウム水和物の量(乾燥成分として計算)に対して0.5~6質量%の量で、好ましくは0.8~4質量%の量で、特に1~2.5質量%の量で添加されることがさらに好ましい。
【0024】
前記有機化合物は、分子量100~600g/mol、特に150~400g/mol、および好ましくは180~220g/molを有する。
【0025】
前記有機化合物1グラムあたりの官能基の数は、好ましくは0.02~0.035、より好ましくは0.023~0.0345、特に0.025~0.034、および最も好ましくは0.03~0.0335である。好ましくは、前記官能基は-OH、-COOH、-COOMaまたは-C(=O)H[式中、Mは水素、一価、二価または三価の金属カチオン、アンモニウムイオンまたは有機アミン基であり、且つaは1/3、1/2または1である]から選択される。
【0026】
さらに好ましい実施態様において、前記官能基は-OHおよび-C(=O)Hから選択される。他の好ましい実施態様において、前記官能基は-OH、-COOHおよび-COOMa[式中、Mは水素、一価、二価または三価の金属カチオン、アンモニウムイオンまたは有機アミン基であり、且つaは1/3、1/2または1である]からなる群から選択される。代替的な実施態様において、前記官能基は-OH、-SO3H、-SO3aまたは-C(=O)H[式中、Mは水素、一価、二価または三価の金属カチオン、アンモニウムイオンまたは有機アミン基であり、且つaは1/3、1/2または1である]から選択される。
【0027】
「前記有機化合物1グラムあたりの官能基」との表現は、以下の限定的ではない例によってさらに説明される。
【0028】
【化1】
【0029】
式1は分子量180.156g/molを有するデキストロースの式を示す。デキストロースは5つのOH基および1つのC(=O)H基を有し、本発明の意味において合計6つの官能基を有する。従って、デキストロースは前記有機化合物1グラムあたり(6:180.156=)0.0333の官能基を有する。
【0030】
【化2】
【0031】
式2は分子量192.13g/molを有するクエン酸の式を示す。クエン酸は1つのOH基および3つのCOOH基を有し、本発明の意味において合計4つの官能基を有する。従って、クエン酸は前記有機化合物1グラムあたり(4:192.13=)0.0208の官能基を有する。
【0032】
「熱水条件」との用語は、高い蒸気圧で高温の水溶液から物質を結晶化させる様々な技術を含む。
【0033】
段階a)は有利には閉じた容器、例えばオートクレーブ内で、100℃~400℃、特に110℃~300℃、または110℃~230℃、または130℃~200℃、または130℃~180℃、または155℃~180℃、または160℃~180℃の範囲の温度で、且つそこから生じる圧力で行われる。水酸化カルシウム源、特に酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとして、例えば生石灰、消石灰などを使用することが可能である。適した種類の二酸化ケイ素源、特に二酸化ケイ素の例は、ケイ砂または石英粉、マイクロシリカなどである。さらに、ポゾラン結合剤、例えばフライアッシュ、スラグ、例えば高炉スラグ、および/またはメタカオリンを二酸化ケイ素源として使用することもできる。反応を援助し且つ反応時間を短縮するために、出発材料は一般に平均粒子サイズ1mm未満で使用される。二酸化ケイ素源は一般に、1μm~100μm、特に1μm~90μmの範囲の粒子径d(99)を有する。水酸化カルシウム源および二酸化ケイ素源の量は一般に、段階a)における工程生成物中のCa/Siのモル比が0.5~2.5、好ましくは0.8~2.2、特に好ましくは1.0~2.0の範囲内であるように選択される。
【0034】
段階a)において発泡剤、特にアルミニウム粉末、または金属アルミニウムを含むペーストを、鉱物成分の熱水製造において使用することが有利であると判明した。
【0035】
熱水合成後、段階a)からの工程生成物を粉砕することが有利であると判明した。従来の装置、例えば粉砕機およびボールミルがこの目的のために適している。粒子径(d(97))≦5mm、好ましくは≦2mm、および特に粒子径(d(97))0.05mm~5mm、好ましくは0.1mm~2mm、特に0.3mm~1mmの範囲に達するまで粉砕を行う。粉砕を温度≦80℃、特に≦60℃、好ましくは≦50℃で行う。
【0036】
熱水合成後に得られた段階a)からの工程生成物を、好ましくはまず温度≦80℃、特に≦60℃、好ましくは≦50℃で機械的粉砕に供する。
【0037】
機械的粉砕後、段階a)からの工程生成物は粒子径(d(97))≦5mm、好ましくは≦2mm、および特に≦1mmを有する。例えば、機械的粉砕後の段階a)からの工程生成物の粒子径(d(97))は、0.05mm~5mm、好ましくは0.1mm~2mm、特に0.3mm~1mmの範囲である。
【0038】
水溶性ポリマー分散液と接触させられる段階a)からの工程生成物は、好ましくは、DIN ISO 9277:2003-05に準拠して特定して30~150m2/g、好ましくは80~150、特に90~150m2/g、特に好ましくは100~150m2/gの範囲のBET比表面積を有する。
【0039】
本発明の段階a)の工程は、好ましくは、段階a)からの工程生成物の乾燥質量に対して少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも98質量%の酸化カルシウム(CaO)および二酸化ケイ素(SiO2)を含む。段階a)からの工程生成物中のCa/Siのモル比は好ましくは0.5~2.5、より好ましくは0.8~2.2、特に好ましくは1.0~2.0、または1.6~2.0の範囲である。
【0040】
製造に関連する不純物に起因して、段階a)からの工程生成物は少量のアルミニウムイオンを含むことがあり、段階a)からの工程生成物中のケイ素/アルミニウムのモル比は10000:1~2:1、好ましくは1000:1~5:1、および特に好ましくは100:1~10:1である。
【0041】
段階a)からの工程生成物は本質的にセメント、セメントクリンカーおよび/またはエトリンガイト不含である。ここで、「本質的に不含」とは、各々、段階a)からの工程生成物の乾燥質量の合計に対して10質量%未満、または5質量%未満、好ましくは1質量%未満、および特に0質量%を意味する。
【0042】
本発明による組成物中に、鉱物成分を介して外来イオン、例えばアルカリ金属イオン、塩化物イオンまたは硝酸イオンが導入されないか、または非常の少量の外来イオンのみが導入されることが好ましい。1つの実施態様において、本発明の組成物は段階a)からの工程生成物の乾燥質量に対して2質量%以下のアルカリ金属を含む。
【0043】
段階a)からの工程生成物は、特定の条件の条件を順守する熱水方法によって、つまり、水酸化カルシウム源、例えば酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムと、二酸化ケイ素源、例えば二酸化ケイ素とを、水の存在下で且つ100℃~400℃の高められた温度且つ高められた圧力で、有利にはオートクレーブ内で反応させることによって得られる。ここで、段階a)からの工程生成物は物理的に吸収された水を有する固体として得られる。このようにして製造された段階a)からの工程生成物は、好ましくは半秩序性ケイ酸カルシウム水和物、未反応の結晶性の異相を含む結晶異相、または反応において形成した結晶異相、例えば石英、ホルトランダイト、カルサイトなど、およびX線でアモルファスの相も含む。
【0044】
本発明の目的では、「半秩序性」とは、ケイ酸カルシウム水和物が、(1)巨視的な結晶性ケイ酸カルシウム水和物よりも低い度合いの秩序性を有し且つ(2)アモルファスのケイ酸カルシウム水和物より高い度合いの秩序性を有することを意味する。半秩序性ケイ酸カルシウム水和物は、純粋な結晶形態と純粋なアモルファス形態との両方と異なる物理的特性を有する。
【0045】
ケイ酸カルシウム水和物が半秩序性の形態で存在するかどうかを特定するための1つの適した方法はX線回折を用いる。ケイ酸カルシウム水和物の回折パターンを、市販の粉末回折計を使用して記録できる。半秩序性ケイ酸カルシウム水和物のX線回折パターンは、結晶性ケイ酸カルシウム水和物のX線回折パターンとは異なる。半秩序性ケイ酸カルシウム水和物は、反射または回折線または「ピーク」が、結晶形態の回折パターンに比してより広いか、またはあまり明確ではなく、且つ/または部分的に存在しない回折パターンを示す。以下において、「ピーク」は回折角に対するX線回折強度のプロットにおける極大値である。半秩序性ケイ酸カルシウム水和物の主回折ピークは、例えば微結晶サイズ50nm以上を有する結晶形態の主回折ピークに相応する半値幅の少なくとも1.25倍、通常は少なくとも2倍、または少なくとも3倍である半値幅を有する。
【0046】
さらには、半秩序性ケイ酸カルシウム水和物のX線回折パターンは、純粋にX線でアモルファスの形態とも異なる。半秩序性ケイ酸カルシウム水和物のX線回折パターンは、相に特異的ないくつかの広いX線回折極大を示し、それは特定の度合いのケイ酸カルシウム水和物の秩序性を示す一方で、X線でアモルファスの形態は識別可能なX線回折極大を示さない。X線でアモルファスの形態に対して、ケイ酸カルシウム水和物相は明確に割り当てられ得ない。
【0047】
半秩序性ケイ酸カルシウム水和物は、空間内の少なくとも一方向における単位格子100未満の繰り返し単位、通常は20未満の繰り返し単位の長距離秩序性を有する。単位格子の繰り返し単位に相応するコヒーレント散乱領域(微結晶)が試料中で非常に小さい場合、反射面に実際に存在する個々の微結晶は互いに対してわずかに傾いていることが多い。さらに、粒界での構造の乱れが回折挙動における変化をもたらす。反射、ひいては回折信号がまだ発生する角度範囲は、それによって広げられる。「見かけの」微結晶サイズは、X線回折信号の半値幅からシェラーの方法によって計算できる:
β=λ/εcosθ
β=半値幅
λ=波長
ε=見かけの微結晶サイズ
θ=ブラッグ角。
【0048】
実際には、ヒューゴ・リートベルトの「全パターンフィッティング構造精密化(PFSR)」(「リートベルト解析」)が、回折パターンを評価するために有用であることが判明した。このソフトウェアの方法は、格子パラメータ、信号の幅および信号の形状を含むいくつかの測定パラメータを精密化するために役立つ。理論回折パターンをこのようにして計算できる。計算された回折パターンが未知の試料のデータと視覚的に同一であればすぐに、微結晶サイズおよびアモルファス含有率についての正確な定量的情報を特定できる。
【0049】
本発明によれば、半秩序性ケイ酸カルシウム水和物は好ましくは、X線回折解析および引き続くリートベルト解析によって特定して15nm以下、特に10nm以下、好ましくは5nm以下の見かけの微結晶サイズを有する。見かけの微結晶サイズは好ましくは少なくとも1nm、例えば1~15nm、または1~10nm、および特に好ましくは1nm~5nmである。
【0050】
半秩序性ケイ酸カルシウム水和物の秩序領域の単位格子(そのサイズは本特許出願においては見かけの微結晶サイズを用いて記述される)は、結晶性ケイ酸カルシウム水和物相(C-S-H)に由来する。結晶性ケイ酸カルシウム水和物相は特に、フォシャジャイト、ヒレブランダイト、ゾノトライト(ベロバイト)、ゾノトライト(クドハイト(kudohite))、ネコイト、単斜トバモライト、9Å-トバモライト(リバーサイドライト)、10Å-トバモライト、11Å-トバモライト(C/S 0.75および0.66)、14Å-トバモライト(プロンビエライト)、ジェナイト、メタジェナイト、カルシウムコンドロダイト、アフィライト、α-C2SH、デライト、ジャファイト(jaffeite)、ローゼンハーナイト、キララアイト、バルトフォンティナイト、レインハードブラウンサイト(reinhardbraunsite)、キルコアナイト、C85、オーケナイト、ライエライト(reyerite)、ジャイロリス(gyrolith)、トラスコッタイト、K相、Z相、スコータイト、フカライト、ティライト(tylleite)、スパーライトおよび/またはスオルナイト、好ましくはゾノトライト、9Å-トバモライト(リバーサイドライト)、11Å-トバモライト、14Å-トバモライト(プロンビエライト)、ジェナイト、メタジェナイト、アフィライトおよび/またはジャファイトである。
【0051】
秩序領域の単位格子は好ましくは9Å-トバモライト(リバーサイドライト)、10Å-トバモライト、11Å-トバモライト(C/S 0.75および0.66)、14Å-トバモライト(プロンビエライト)、スコータイトおよび/またはゾノトライトまたは混合物に由来する。
【0052】
本願の目的では、見かけの微結晶サイズを特定するために、14Å-トバモライト(プロンビエライト)の単位格子にのみ基づくことが充分な近似であることが判明した。
【0053】
好ましい実施態様において、段階a)からの工程生成物は、見かけの微結晶サイズ15mnm以下を有する半秩序性ケイ酸カルシウム水和物を含む。段階a)からの工程生成物はさらに好ましくは、鉱物成分の乾燥質量に対して35質量%未満の半秩序性ケイ酸カルシウム水和物以外の結晶相、つまりケイ酸カルシウム水和物相(C-S-H)ではない結晶相(以下で「結晶異相」とも称する)を含む。結晶異相はポルトランダイト(Ca(OH)2)、カルサイト(CaCO3)、アラゴナイト(CaCO3)、バテライト(CaCO3)およびα-石英(SiO2)である。結晶異相の含有率は、段階a)からの工程生成物の乾燥質量に対して0.1~35質量%未満、好ましくは1~25質量%の範囲であることができる。乾燥質量は段階a)からの工程生成物を105℃で恒量まで乾燥させることによって特定される。
【0054】
アルミニウムでの汚染の場合、段階a)からの工程生成物はアルミニウムを含む相、例えばギブサイト(Al(OH)3)も含み得る。
【0055】
段階a)からの工程生成物は典型的には、半秩序性ケイ酸カルシウム水和物(および場合により結晶異相)の他にX線でアモルファスの相も含む。1つの実施態様において、段階a)からの工程生成物は、X線回折解析および引き続くリートベルト解析によって特定して、段階a)からの工程生成物の乾燥質量に対して少なくとも≧10質量%、好ましくは≧40質量%、特に好ましくは≧60質量%、および特に10~99.9質量%、または10~80質量%、好ましくは40~80質量%のX線でアモルファスの相を含む。
【0056】
半秩序性ケイ酸カルシウム水和物とX線でアモルファスの相との合計は、X線回折解析および引き続くリートベルト解析によって特定して、段階a)からの工程生成物の乾燥質量に対して、好ましくは少なくとも65質量%、例えば65~99質量%である。
【0057】
本願の目的では、「水溶性ポリマー分散剤」は有機の水溶性ポリマー分散剤であり、つまり、20℃且つ大気圧で1リットルあたり少なくとも1グラム、特に1リットルあたり少なくとも10グラム、および特に好ましくは1リットルあたり少なくとも100グラムの水中での溶解性を有する有機ポリマーである。
【0058】
前記分散剤は特に、ポリエーテル側鎖、好ましくはポリアルキレンオキシド側鎖を有する櫛形ポリマーである。
【0059】
前記ポリマー分散剤は好ましくは酸官能基およびポリエーテル側鎖を主鎖上に有するコポリマーである。
【0060】
1つの実施態様において、前記ポリマー分散剤は一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)および/または(Id)の少なくとも1つの構造単位を有し、ここで構造単位(Ia)、(Ib)、(Ic)および(Id)は単独のポリマー分子内および様々なポリマー分子間で同一または異なり得る:
(Ia)
【化3】
[式中、
1はH、非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基、CH2COOHまたはCH2CO-X-R2、好ましくはHまたはCH3であり、
XはNH-(Cn2n)、O(Cn2n)[式中、n=1、2、3または4である]であって、窒素原子または酸素原子がCO基に結合しているか、または化学結合であり、好ましくはX=化学結合またはO(Cn2n)であり、
2はOM、PO32、O-PO32またはSO3Mであり、ただしR2がOMである場合、Xは化学結合である]
(Ib)
【化4】
[式中、
3はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基、好ましくはHまたはCH3であり、
nは0、1、2、3または4、好ましくは0または1であり、
4はPO32、O-PO32またはSO3Mである]
(Ic)
【化5】
[式中、
5はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基、好ましくはHであり
ZはOまたはNR7、好ましくはOであり、
7はH、(Cn2n)-OH、(Cn2n)-PO32、(Cn2n)-OPO32、(C64)-PO32、(C64)-OPO32、(Cn2n)-SO3Mまたは(C64)-SO3Mであり、且つ
nは1、2、3または4、好ましくは1、2または3である]
(Id)
【化6】
[式中、
6はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基、好ましくはHであり
QはNR7またはO、好ましくはOであり、
7はH、(Cn2n)-OH、(Cn2n)-PO32、(Cn2n)-OPO32、(C64)-PO32、(C64)-OPO32、(Cn2n)-SO3Mまたは(C64)-SO3Mであり、
nは1、2、3または4、好ましくは1、2または3である]、且つ、
上記の式の各々のMは独立してHまたは1つのカチオン等価物である。
【0061】
前記櫛形ポリマーは好ましくは、R1がHまたはCH3である式(Ia)の少なくとも1つの構造単位、および/またはR3がHまたはCH3である式(Ib)の少なくとも1つの構造単位、および/またはR5がHまたはCH3であり且つZがOである式(Ic)の少なくとも1つの構造単位、および/またはR6がHであり且つQがOである式(Id)の少なくとも1つの構造単位を有する。
【0062】
前記櫛形ポリマーは好ましくはR1がHまたはCH3であり且つXR2がOMであるか、またはXがO(Cn2n)[式中、n=1、2、3または4、特に2である]であり、且つR2がO-PO32である式(Ia)の少なくとも1つの構造単位を有する。
【0063】
前記櫛形ポリマーは好ましくはポリエーテル側鎖として一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)および/または(IId)の少なくとも1つの構造単位を有する:
(IIa)
【化7】
[式中、
10、R11およびR12は各々、互いに独立してHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であり、
ZはOまたはSであり、
Eは非分枝または分枝のC1~C6-アルキレン基、シクロヘキシレン基、CH2-C610、1,2-フェニレン、1,3-フェニレンまたは1,4-フェニレンであり、
GはO、NHまたはCO-NHであるか、または
EとGとは共に化学結合であり、
AはCx2x[式中、x=2、3、4または5、好ましくは2または3である]、またはCH2CH(C65)であり、
nは0、1、2、3、4または5、好ましくは0、1または2であり、
aは2~350、好ましくは5~150の整数であり、
13はH、非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基、CO-NH2および/またはCOCH3である]
(IIb)
【化8】
[式中、
16、R17およびR18は各々、互いに独立してHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であり、
Eは非分枝または分枝のC1~C6-アルキレン基、シクロヘキシレン基、CH2-C610、1,2-フェニレン、1,3-フェニレンまたは1,4-フェニレンまたは化学結合であり、
AはCx2x[式中、x=2、3、4または5、好ましくは2または3である]、またはCH2CH(C65)であり、
nは0、1、2、3、4および/または5、好ましくは0、1または2であり、
LはCx2x[式中、x=2、3、4または5、好ましくは2または3である]、またはCH2-CH(C65)であり、
aは2~350、好ましくは5~150の整数であり、
dは1~350、好ましくは5~150の整数であり、
19はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であり、
20はHまたは非分枝のC1~C4-アルキル基である]
(IIc)
【化9】
[式中、
21、R22およびR23は各々、互いに独立してHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であり、
WはO、NR25またはNであり、
Yは、W=OまたはNR25である場合、1であり、且つW=Nである場合、2であり、
AはCx2x[式中、x=2、3、4または5、好ましくは2または3である]、またはCH2CH(C65)であり、
aは2~350、好ましくは5~150の整数であり、
24はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であり、且つ
25はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基である]
(IId)
【化10】
[式中、
6はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であり、
QはNR10、NまたはOであり、
Vは、W=OまたはNR10である場合、1であり、且つW=Nである場合、2であり、
10はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であり、且つ
AはCx2x[式中、x=2、3、4または5、好ましくは2または3である]、またはCH2C(C65)Hであり、
24はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であり、
MはHまたは1つのカチオン等価物であり、且つ
aは2~350、好ましくは5~150の整数である]。
【0064】
式Iaの構造単位がメタクリル酸単位またはアクリル酸単位であり、式Icの構造単位が無水マレイン酸単位であり、および式Idの構造単位がマレイン酸単位またはマレイン酸モノエステル単位であることが特に好ましい。
【0065】
モノエステル(I)がリン酸エステルまたはホスホン酸エステルである場合、それらは相応のジエステルおよびトリエステルも、および二リン酸のモノエステルも含み得る。それらは一般に、モノエステルの他に、様々な割合、例えば5~30モル%のジエステルおよび1~15モル%のトリエステルで、2~20モル%の二リン酸のモノエステルと共に、有機アルコールとリン酸、ポリリン酸、酸化リン、ハロゲン化リンまたはオキシハロゲン化リンまたは相応のホスホン酸化合物とのエステル化において形成される。
【0066】
前記櫛形ポリマーは好ましくは、ポリエーテル側鎖として、
(a) 式(IIa)の少なくとも1つの構造単位であって、R10およびR12は各々、Hであり、R11はHまたはCH3であり、EおよびGは共に化学結合であり、AはCx2x[式中、x=2および/または3である]であり、aは3~150であり、且つR13はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であるもの、および/または
(b) 式(IIb)の少なくとも1つの構造単位であって、R16およびR18は各々、Hであり、R17はHまたはCH3であり、Eは非分枝または分枝のC1~C6-アルキレン基であり、AはCx2x[式中、x=2および/または3である]であり、LはCx2x[式中、x=2および/または3である]であり、aは2~150の整数であり、dは1~150の整数であり、R19はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であり、且つR2はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であるもの、および/または
(c) 式(IIc)の少なくとも1つの構造単位であって、R21およびR23は各々、Hであり、R22はHまたはCH3であり、AはCx2x[式中、x=2および/または3である]であり、aは2~150の整数であり、且つR24はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であるもの、および/または
(d) 式(IId)の少なくとも1つの構造単位であって、R6はHであり、QはOであり、R7は(Cn2n)-O-(AO)a-R9であり、nは2および/または3であり、AはCx2x[式中、x=2および/または3である]であり、aは1~150の整数であり、且つR9はHまたは非分枝または分枝のC1~C4-アルキル基であるもの
を有する。
【0067】
式IIaの構造単位は特に好ましくはアルコキシル化イソプレニル、アルコキシル化ヒドロキシブチルビニルエーテル、アルコキシル化(メタ)アリルアルコールまたはビニル化メチルポリアルキレングリコール単位であり、各々、好ましくは2~350のオキシアルキレン基の算術平均を有する。
【0068】
前記櫛形ポリマーは好ましくは式(IIa)および/または(IIc)の、特に式(IIa)の少なくとも1つの構造単位を含む。
【0069】
式(I)および(II)の構造単位とは別に、前記ポリマー分散剤はフリーラジカル重合性モノマーに由来するさらなる構造単位、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(C1~C4)-アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルアセテート、アクロレイン、N-ビニルホルムアミド、ビニルピロリドン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール、1-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アミノプロピルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、(メタ)アクロレイン、クロトンアルデヒド、ジブチルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジプロピルマレエートなども含み得る。
【0070】
構造単位(I)および(II)を含む櫛形ポリマーの調製は、従来の方法において、例えばフリーラジカル重合によって行われる。それは例えば、欧州特許出願公開第0894811号明細書(EP0894811)、欧州特許第1851256号明細書(EP1851256)、欧州特許出願公開第2463314号明細書(EP2463314)、欧州特許第0753488号明細書(EP0753488)内に記載されている。
【0071】
前記櫛形ポリマーは好ましくは式(I)および(II)の、特に式(Ia)および(IIa)の単位を有する。
【0072】
前記櫛形ポリマーは好ましくは式(Ia)および(IIc)の構造単位を有する。
【0073】
前記櫛形ポリマーは好ましくは式(Ic)および(IIa)の構造単位を有する。
【0074】
前記櫛形ポリマーは好ましくは式(Ia)、(Ic)および(IIa)の構造単位を有する。
【0075】
前記櫛形ポリマーは好ましくは、(i)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ヒドロキシエチルアクリレートホスフェート、および/またはヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート、リン酸のヒドロキシエチルアクリレートジエステルおよび/またはリン酸のヒドロキシエチルメタクリレートジエステルから誘導されるアニオンまたはアニオン性構造単位、および(ii)ポリエーテル側鎖を有する構造単位であって、C1~C4-アルキルポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、C1~C4-アルキルポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、C1~C4-アルキルポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ビニルオキシ-C2~C4-アルキレンポリエチレングリコール、ビニルオキシ-C2~C4-アルキレンポリエチレングリコールC1~C4-アルキルエーテル、アリルオキシポリエチレングリコール、アリルオキシポリエチレングリコールC1~C4-アルキルエーテル、メタリルオキシポリエチレングリコール、メタリルオキシポリエチレングリコールC1~C4-アルキルエーテル、イソプレニルオキシポリエチレングリコールおよび/またはイソプレニルオキシポリエチレングリコールC1~C4-アルキルエーテルから誘導される前記構造単位から構成される。
【0076】
前記櫛形ポリマーは好ましくは、構造単位(i)および(ii)であって
(i)がヒドロキシエチルアクリレートホスフェートおよび/またはヒドロキシエチルメタクリレートホスフェートから誘導され且つ(ii)がC1~C4-アルキルポリエチレングリコールアクリレートおよび/またはC1~C4-アルキルポリエチレングリコールメタクリレートから誘導されるか、または
(i)がアクリル酸および/またはメタクリル酸から誘導され且つ(ii)がC1~C4-アルキルポリエチレングリコールアクリレートおよび/またはC1~C4-アルキルポリエチレングリコールメタクリレートから誘導されるか、または
(i)がアクリル酸、メタクリル酸および/またはマレイン酸から誘導され且つ(ii)がビニルオキシ-C2~C4-アルキレンポリエチレングリコール、アリルオキシポリエチレングリコール、メタリルオキシポリエチレングリコールおよび/またはイソプレニルオキシポリエチレングリコールから誘導される、
前記構造単位(i)および(ii)から構成される。
【0077】
前記櫛形ポリマーは好ましくは、構造単位(i)および(ii)であって
(i)がヒドロキシエチルメタクリレートホスフェートから誘導され且つ(ii)がC1~C4-アルキルポリエチレングリコールメタクリレートまたはポリエチレングリコールメタクリレートから誘導されるか、または
(i)がメタクリル酸から誘導され且つ(ii)がC1~C4-アルキルポリエチレングリコールメタクリレートまたはポリエチレングリコールメタクリレートから誘導されるか、または
(i)がアクリル酸およびマレイン酸から誘導され且つ(ii)がビニルオキシ-C2~C4-アルキレンポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)がアクリル酸およびマレイン酸から誘導され且つ(ii)がイソプレニルオキシポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)がアクリル酸から誘導され且つ(ii)がビニルオキシ-C2~C4-アルキレンポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)がアクリル酸から誘導され且つ(ii)がイソプレニルオキシポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)がアクリル酸から誘導され且つ(ii)がメタリルオキシポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)がマレイン酸から誘導され且つ(ii)がイソプレニルオキシポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)がマレイン酸から誘導され且つ(ii)がアリルオキシポリエチレングリコールから誘導されるか、または
(i)がマレイン酸から誘導され且つ(ii)がメタリルオキシポリエチレングリコールから誘導される、
前記構造単位(i)および(ii)から構成される。
【0078】
構造単位(I):(II)のモル比は好ましくは1:4~15:1、特に1:1~10:1である。
【0079】
前記ポリエーテル側鎖の分子量は、好ましくは>500g/モル、より好ましくは>3000g/モル、且つ<8000g/モル、好ましくは<6000g/モルである。
【0080】
前記ポリエーテル側鎖の分子量は、好ましくは2000~8000g/モル、特に4000~6000g/モルの範囲である。
【0081】
1つの実施態様において、水溶性ポリマー分散剤は、ポリアルキレンオキシド側鎖を有する重縮合生成物である。
【0082】
好ましくは、前記重縮合生成物は構造単位(III)および(IV)を含む:
(III)
【化11】
[式中、
Tは置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のナフチル基、または置換または非置換の複素環式基であって5~10個の環原子を有し、その1または2つの原子がN、OおよびSの中から選択されるヘテロ原子であるものであり、
nは1または2であり、
BはN、NHまたはOであり、ただしBがNである場合、nは2であり、且つただしBがNHまたはOである場合nは1であり、
AはCx2x[式中、x=2、3、4または5である]、またはCH2CH(C65)であり、
aは1~300、好ましくは5~150の整数であり、
25はH、分枝または非分枝のC1~C10-アルキル基、C5~C8-シクロアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基であって5~10個の環原子を有し、その1または2つの原子がN、OおよびSの中から選択されるヘテロ原子であるものである]、
構造単位(IV)は、構造単位(IVa)および(IVb)の中から選択される:
【化12】
[式中、
Dは置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のナフチル基、または置換または非置換の複素環式基であって5~10環原子を有し、その1または2つの原子がN、OおよびSの中から選択されるヘテロ原子であるものであり、
EはN、NHまたはOであり、ただしEがNである場合mは2であり、且つただしEがNHまたはOである場合mは1であり、
AはCx2x[式中、x=2、3、4または5である]、またはCH2CH(C65)であり、
bは1~300、好ましくは1~50の整数であり、
Mは各々独立してH、1つのカチオン等価物である]、および
【化13】
[式中、
Vは置換または非置換のフェニル基または置換または非置換のナフチル基、[ここでVはR8、OH、OR8、(CO)R8、COOM、COOR8、SO38およびNO2の中から独立して選択される1つまたは2つの基、好ましくはOHによって任意に置換されている]、OC1~C4-アルキルおよびC1~C4-アルキルであり、
7はCOOM、OCH2COOM、SO3MまたはOPO32であり、
MはHまたは1つのカチオン等価物であり、
ここで、上述のフェニル基、ナフチル基または複素環式基はR8、OH、OR8、(CO)R8、COOM、COOR8、SO38およびNO2の中から選択される1または2つの基によって任意に置換されており、且つ
8はC1~C4-アルキル、フェニル、ナフチル、フェニル-C1~C4-アルキルまたはC1~C4-アルキルフェニルである]。
【0083】
一般式(III)において、aは好ましくは1~300、および特に5~150の整数であり、且つ一般式(IV)において、bは好ましくは1~300、特に1~50、および特に好ましくは1~10の整数である。さらに、一般式(III)または(IV)の基は互いに独立して各々、同じ鎖長を有することができ、aおよびbは各々、1つの数によって表される。ここで、それぞれ異なる鎖長を有する混合物が存在し、重縮合生成物中の構造単位の基はaについて異なる数値を、bについて独立して有することが一般に有利である。
【0084】
式IIIにおいて、Tが置換または非置換のフェニル基またはナフチル基であり、AがCx2x[式中、x=2および/または3である]であり、aが1~150の整数であり、且つR25がHまたは分枝または非分枝のC1~C10-アルキル基であることが好ましい。
【0085】
式Ivaにおいて、Dが置換または非置換のフェニル基またはナフチル基であり、EがNHまたはOであり、AがCx2x[式中、x=2および/または3である]であり、且つbが1~150の整数であることが好ましい。
【0086】
Tおよび/またはDは好ましくは1または2つのC1~C4-アルキル基、ヒドロキシ基または2つのC1~C4-アルコキシ基によって置換されたフェニルまたはナフチルである。
【0087】
Vが1または2つのC1~C4-アルキル、OH、OCH3またはCOOM基によって置換されたフェニルまたはナフチルであり、且つR7がCOOMまたはOCH2COOMであることが好ましい。
【0088】
前記重縮合生成物の一般式(III)および(IV)の構造単位TおよびDは好ましくはフェニル、2-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、2-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、4-メトキシフェニル、ナフチル、2-ヒドロキシナフチル、4-ヒドロキシナフチル、2-メトキシナフチル、4-メトキシナフチル、フェノキシ酢酸、サリチル酸から、好ましくはフェニルから誘導され、ここでTおよびDは互いに独立して選択されることができ、且つ各々、上述の基の混合物から誘導されることもできる。基BおよびEは互いに独立して、好ましくはOである。全ての構造単位Aは、個々のポリエーテル側鎖内でも様々なポリエーテル側鎖の間でも同一または異なり得る。特に好ましい実施態様においてAはC24である。
【0089】
前記重縮合生成物中の構造単位(IV)の割合が比較的高いことが有利であり、なぜなら、ポリマーの比較的高い負電荷は水性のコロイド調製物の安定性に有利な影響を有するからである。構造単位(IVa):(IVb)のモル比は、両方が存在する場合、典型的には1:10~10:1、および好ましくは1:3~3:1である。
【0090】
特定の実施態様において、前記重縮合生成物は、式:
【化14】
[式中、
5およびR6は同一または異なることができ、且つH、CH3、COOH、または置換または非置換のフェニルまたはナフチル基であるか、または置換または非置換の複素環式基であって5~10個の環原子を有し、その1または2つの原子がN、OおよびSの中から選択されるヘテロ原子であるものであることができる]
のさらなる構造単位(V)を含む。
【0091】
5およびR6は同一または異なることができ、且つ各々H、CH3、COOH、特にHであるか、またはR5およびR6の一方がHであることができ且つ他方がCH3であることができる。典型的には、構造単位(V)中のR5およびR6は同一または異なり、且つ各々、H、COOHおよび/またはメチルである。Hが非常に特に好ましい。
【0092】
前記重縮合生成物は典型的には、構造単位(III)、(IV)および(V)の基づく化合物が互いに反応する方法によって調製される。重縮合物の調製は、例えば国際公開第2006/042709号(WO2006/042709)および国際公開第2010/026155号(WO2010/026155)内に記載されている。
【0093】
ケト基を有するモノマーは好ましくはアルデヒドまたはケトンである。式(V)のモノマーの例はホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、グリオキシル酸および/またはベンズアルデヒドである。ホルムアルデヒドが好ましい。
【0094】
一般に、前記重縮合生成物は質量平均分子量5000g/モル~200000g/モル、好ましくは10000~100000g/モル、特に好ましくは15000~55000g/モルを有する。
【0095】
構造単位(III):(IV)のモル比は好ましくは4:1~1:15、特に2:1~1:10である。
【0096】
構造単位(III+IV):(V)のモル比は好ましくは2:1~1:3、特に1:0.8~1:2である。
【0097】
好ましい実施態様において、前記櫛形ポリマーは、TおよびDが各々フェニルまたはナフチルであり、前記フェニルまたはナフチルが1または2つのC1~C4-アルキル基、ヒドロキシ基、または2つのC1~C4-アルコキシ基によって任意に置換されており、BおよびEがOであり、AがCx2x[式中x=2である]であり、aが3~150、特に10~150であり、且つbが1、2または3である、式(III)および(IV)の構造単位から構成される。
【0098】
特定の実施態様において、スルホ基および/またはスルホネート基を含む単位、またはカルボキシル基および/またはカルボキシレート基を含む単位を含むホモポリマー、またはスルホ基および/またはスルホネート基を含む単位とカルボキシレート基および/またはカルボキシル基を含む単位とを含むコポリマーがポリマー分散剤として使用される。
【0099】
例えば、スルホ基および/またはスルホネート基を含む単位はビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、4-ビニルフェニルスルホン酸単位、または式(VI)の構造単位である:
(VI)
【化15】
[式中、
1はHまたはCH3であり、
2、R3およびR4は各々、互いに独立してHまたは直鎖または分枝のC1~C6-アルキルまたはC6~C14-アリールであり、
MはHまたはカチオン、特に金属カチオン、好ましくは一価または二価の金属カチオン、またはアンモニウムカチオンであり、
aは1または1/カチオンの価数、特に1/2または1である]。
【0100】
スルホ基および/またはスルホネート基を含む単位は好ましくは、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸および/または2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸単位、特に2-アクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸単位である。
【0101】
カルボキシル基および/またはカルボキシレート基を含む単位は好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸および/またはシトラコン酸単位、および特にアクリル酸および/またはメタクリル酸単位である。
【0102】
コポリマーの分子量Mwは好ましくは、水性ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて特定して1000~50000の範囲である。
【0103】
特に有用な実施態様において、前記分散剤は以下の中から選択される:
式(Ia)および(IIa)の構造単位を含むコポリマー、特にアクリル酸および/またはメタクリル酸およびエトキシ化ヒドロキシアルキルビニルエーテル、例えばエトキシ化ヒドロキシブチルビニルエーテルから誘導される構造単位を含むコポリマー、
式(Ia)、(Id)および(IIa)の構造単位を含むコポリマー、特にアクリル酸および/またはメタクリル酸、マレイン酸およびエトキシ化ヒドロキシアルキルビニルエーテル、例えばエトキシ化ヒドロキシブチルビニルエーテルから誘導される構造単位を含むコポリマー、
式(Ia)および(IIc)の構造単位を含むコポリマー、特にアクリル酸および/またはメタクリル酸、およびアクリル酸またはメタクリル酸とポリエチレングリコールとのエステル、またはC1~C12-アルキルによって末端キャップされているポリエチレングリコールから誘導される構造単位を含むコポリマー、
構造単位(III)、(IVa)および(V)を含む重縮合生成物、特にエトキシ化フェノール、フェノキシ-C2~C6-アルカノールホスフェートおよびホルムアルデヒドの縮合生成物、
スルホ基および/またはスルホネート基を含む単位またはカルボキシル基および/またはカルボキシレート基を含む単位を含むホモポリマー、
スルホ基および/またはスルホネート基を含む単位と、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基を含む単位とを含むコポリマー、および/または
ポリアクリル酸、
およびそれらの塩、およびそれらの分散剤の2つ以上の組み合わせ。
【0104】
1つの実施態様において、リグノスルホネート、メラミン-ホルムアルデヒドスルホネート縮合物、β-ナフタレンスルホン酸縮合物、フェノールスルホン酸縮合物およびスルホン化ケトン-ホルムアルデヒド縮合物の中から選択される少なくとも1つのさらなる分散剤が追加的に使用される。
【0105】
構造単位(III):(IV)のモル比は典型的には4:1~1:15、および好ましくは2:1~1:10である。
【0106】
好ましい実施態様において、前記重縮合生成物は以下の式によって表されるさらなる構造単位(V)を含む:
【化16】
[式中、
5はH、CH3、COOH、または置換または非置換のフェニル、または置換または非置換のナフチルであり、
6はH、CH3、COOH、または置換または非置換のフェニル、または置換または非置換のナフチルである]。
【0107】
前記櫛形ポリマーは、その塩形態、例えばナトリウム、カリウム、有機アンモニウム、アンモニウムおよび/またはカルシウム塩、好ましくはナトリウムおよび/またはカルシウム塩として存在することもできる。
【0108】
前記ポリマー分散剤の分子量は、標準としてポリスチレンを使用するゲルクロマトグラフィーによって特定して、一般に5000~100000の範囲である。側鎖の分子量は一般に1000~10000の範囲である。
【0109】
前記ポリマーの電荷密度は一般に、500μeq/g~1500μeq/gの範囲である。
【0110】
好ましいポリマー分散剤は、
式(Ia)および(IIa)の構造単位を含むコポリマー、特にアクリル酸および/またはメタクリル酸およびエトキシ化ヒドロキシアルキルビニルエーテル、例えばエトキシ化ヒドロキシブチルビニルエーテルから誘導される構造単位を含むコポリマー、
式(Ia)、(Id)および(IIa)の構造単位を含むコポリマー、特にアクリル酸および/またはメタクリル酸、マレイン酸およびエトキシ化ヒドロキシアルキルビニルエーテル、例えばエトキシ化ヒドロキシブチルビニルエーテルから誘導される構造単位を含むコポリマー、
式(Ia)および(IIc)の構造単位を含むコポリマー、特にアクリル酸および/またはメタクリル酸、およびアクリル酸またはメタクリル酸とポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールとのエステル、またはC1~C12-アルキルによって末端キャップされているポリエチレングリコールから誘導される構造単位を含むコポリマー、
構造単位(III)、(IVa)および(V)を含む重縮合生成物、特にエトキシ化フェノール、フェノキシ-C2~C6-アルカノールホスフェートおよびホルムアルデヒドの縮合生成物、
スルホ基および/またはスルホネート基を含む単位またはカルボキシル基および/またはカルボキシレート基を含む単位を含むホモポリマー、
スルホ基および/またはスルホネート基を含む単位と、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基を含む単位とを含むコポリマー、および/または
ポリアクリル酸、
およびそれらの塩、およびそれらの分散剤の2つ以上の組み合わせ
である。
【0111】
ケイ酸カルシウム水和物を含む組成物を製造するために、段階a)からの工程生成物を、水性媒体中で少なくとも1つの水溶性ポリマー分散剤と接触させる。
【0112】
前記ポリマー分散剤と接触させるために、段階a)からの工程生成物を懸濁液の形態で、または乾燥粉末として使用できる。次いで、前記ポリマー分散剤を一度に全て、または2以上の部分で、固体として、または水溶液の形態でのいずれかで、段階a)からの工程生成物に添加する。しかしながら、段階a)からの工程生成物を好ましくは一度に全て、または2つ以上の部分で、固体として、または水性懸濁液として前記ポリマー分散剤の水溶液に添加する。
【0113】
1つの実施態様において、段階a)からの工程生成物(乾燥成分として計算)の、ポリマー分散剤(乾燥成分として計算)に対する質量比は、15:1~1:2の範囲、特に10:1~1:1.5の範囲、特に好ましくは5:1~1:1の範囲である。1つの実施態様において、段階a)からの工程生成物(乾燥成分として計算)の、水に対する質量比は、3:1~1:20の範囲、特に1:1~1:10の範囲、特に好ましくは2:3~1:5の範囲である。
【0114】
段階a)からの工程生成物の乾燥質量の特定は、材料をラボ用オーブン内で105℃で恒量まで乾燥させ、乾燥において生じる質量損失を測定することによって行われる。
【0115】
段階a)からの工程生成物とポリマー分散剤との接触における前記懸濁液の含水率(懸濁液を105℃で恒量まで乾燥させることによって特定)は、適切には25質量%~95質量%の範囲、特に50質量%~90質量%の範囲、特に好ましくは60質量%~80質量%の範囲である。
【0116】
望ましい場合、前記方法は、ポルトランドセメント、ポルトランドセメントクリンカーおよび/または潜在水硬性結合剤を、ポルトランドセメント、ポルトランドセメントクリンカーおよび/または潜在水硬性結合剤の質量割合が段階a)からの工程生成物の量の合計に対して0.01~10質量%、好ましくは0.01~5質量%である割合で添加することによって行われ得る。ポリマー分散剤との接触前、または鉱物成分の機械的粉砕後に添加を行うことができる。
【0117】
好ましい実施態様において、前記方法は本質的に他の成分を添加せずに、特にポルトランドセメント、ポルトランドセメントクリンカーおよび/またはエトリンガイトを本質的に添加せずに行われる。
【0118】
段階a)からの工程生成物とポリマー分散剤との段階b)における接触は、例えば混合またはミリングによって、運動エネルギーを導入して行われる。当業者に公知の実質的に全ての装置がこの目的のために適している。
【0119】
本発明の目的では、混合は、混合されるべき成分の接触を強化し、ひいては所望の生成物の均一および/または速やかな形成を可能にするブレンドまたは均質化である。
【0120】
混合を行う方法は、例えば攪拌、振盪、気体または液体の注入、および超音波での照射である。混合をもたらす適した方法および装置は当業者に公知である。適した混合装置は例えば、攪拌容器、ダイナミックおよびスタティックミキサー、一軸攪拌装置、例えばかき取り器具を備えた攪拌装置、特にペースト攪拌装置、多軸攪拌装置、特にPDSMミキサー、固形物ミキサーおよび混合/混練反応器である。
【0121】
好ましい実施態様において、接触はせん断エネルギーを導入して行われ、組成物のメートルトンあたり50kWhを上回る、特に200kWhを上回る、好ましくは400kWhを上回る、特に100~5000kWh、特に200~3000kWh、特に好ましくは300~1000kWhのせん断エネルギーが導入される。
【0122】
せん断エネルギーは有効仕事WWとして定義され、それはミリングのために印加されるせん断電力PWと、ミリング時間tとから、以下の式(1)に従って計算できる:
式(1):WW=PW・t
【0123】
懸濁液に作用するせん断電力は、有効電力PP(懸濁液のミリングの間の装置の消費電力)と、ゼロ電力P0(懸濁液がなく、且つ適宜、例えばビーズミル、ボールミルまたは歯付きコロイドミルの場合におけるミリング媒体がなく、空で運転する装置の消費電力)との間の差から、以下の式(2)を用いて計算できる:
式(2): PW=PP-P0
【0124】
ゼロ電力(式(3a))または有効電力(式(3b))は、有効電圧Uと有効電流Iとから計算でき、それは可動中の装置において電流測定機器を用いて測定される:
式(3a): P0=U0・I0・cosφ; cosφ=1
式(3b): PP=UP・IP・cosφ; cosφ=1
【0125】
装置の有効電力PPの皮相電力PSに対する比は、cosφによって式(4)に従って記述される:
式(4): cosφ=PP/PS
【0126】
皮相電力は非常に装置に特異的であり且つ有効電力は容易に測定できるので(有効電力および有効電流を測定することによって)、簡潔性のためにcosφ=1と仮定する。
【0127】
従って、高いせん断エネルギーを導入する方法が好ましい。従って、本発明の方法は特に好ましくは少なくとも一部の時間、ミル、超音波装置、ローター・ステーターミキサー(例えばIKA Ultra-Turrax)および高速ミキサーからなる群から選択される装置を使用して行われる。特に、せん断エネルギーの導入は、ミリング、例えば歯付きコロイドミル、ビーズミル、ボールミルまたは好ましくは攪拌ボールミルによって行われ得る。攪拌ボールミルは、ミリング媒体が存在するミリングチャンバ、前記ミリングチャンバ内に配置されるステーターおよびローターを含む。さらに攪拌ボールミルは好ましくは、ミリングされる材料をミリングチャンバへ導入し且つミリングチャンバから搬出するために、ミリングされる材料のための入口開口部とミリングされる材料のための出口開口部、およびミリング媒体分離装置も含み、前記ミリング媒体分離装置はミリングチャンバ内で出口開口部の上流に配置され、且つミリングされた材料と共に搬送されるミリング媒体をミリングされた材料から、後者がミリング空間から出口開口部を通じて搬出される前に分離するために役立つ。
【0128】
ミリングチャンバ内でミリングされる材料中に導入される機械的なミリング力を増加するために、好ましくは、ミリング空間内に突き出すピンがローターおよび/またはステーター上に存在する。従って、動作の間、ミリング力への寄与は第1に、ミリングされる材料とピンとの間の衝突によって直接的に生じる。第2に、ミリング力へのさらなる寄与が、ピンとミリングされるべき材料中に同伴するミリング媒体との間の衝突、およびミリングされる材料とミリング媒体との間の引き続く衝突によって間接的に生じる。最後に、ミリングされる材料に作用するせん断力および引張力も、ミリングされる材料の懸濁粒子の粉砕に寄与する。
【0129】
1つの実施態様において、ポリマー分散剤との接触は2段階で行われる。第1の段階において、接触は段階a)からの工程生成物の粒子径d(99)が≦300μm、および特に0.5~300μmの範囲になるまで行われる。これは、ミリング装置、超音波装置、ローター・ステーター混合システム、および高速ミキサーディスクの中から選択される装置を使用して行われ得る。
【0130】
第2の段階において、段階b)は、段階a)からの工程生成物が、ISO 13320:2020に準拠して静的光散乱を用いて特定して≦800nm、好ましくは≦400nm、特に好ましくは≦300nmの粒子径d(50)を有するまで行われる(ミー理論に従って分析、屈折率1.59)。これは特に、ミリング装置を使用して行われる。
【0131】
運動エネルギーの導入前に懸濁液の静止時間0.01時間~48時間、好ましくは4時間~24時間、特に好ましくは6時間~16時間が観察され、その時間の間、高いせん断エネルギー、つまり懸濁液のメータートンあたり50kWhを上回るせん断エネルギーの作用なく、懸濁液が攪拌容器内で静止しているかまたは沈殿を防ぐために攪拌されることが有利であると判明した。ポリマー分散剤との接触を2段階で行う場合、静止時間は第1の段階前、または第2の段階の間に導入され得る。
【0132】
段階a)からの工程生成物を分散剤と接触させる前、その間、またはその後に、好ましくは分子量40~99g/モルを有する酸性化合物を添加することができる。前記酸性化合物の添加は、好ましくは段階a)からの工程生成物と分散剤との接触が起きた後に行われる。前記酸性化合物は例えば、硝酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、硫酸およびそれらの混合物、好ましくはスルファミン酸、メタンスルホン酸、酢酸およびそれらの混合物の中から選択される。前記酸性化合物の量は、酸の添加直後(10~60秒)または均質化の完了後に、懸濁液のpH11.0~13.0、好ましくは11.4~12.5、特に好ましくは11.8~12.4が得られるように適切に選択される。
【0133】
本発明はさらに、ケイ酸カルシウム水和物組成物であって、前記組成物の乾燥質量に対して60~85質量%のケイ酸カルシウム水和物、10~20質量%の水溶性ポリマー分散剤、0.4~3.6質量%の有機化合物を含み、前記有機化合物は分子量100~600g/モル、および前記有機化合物1グラムあたり0.015~0.035の官能基を有し、前記官能基は-OH、-COOH、-COOMa、-SO3H、-SO3aまたは-C(=O)H[式中、Mは水素、一価、二価、または三価の金属カチオン、アンモニウムイオン、または有機アミン基であり、且つaは1/3、1/2または1である]から選択される、前記組成物を提供する。
【0134】
1つの実施態様において、本発明によるケイ酸カルシウム水和物含有組成物は、組成物の乾燥質量で0.5~3.0質量%、好ましくは0.5~2.0質量%、およびより好ましくは0.6~1.2質量%の前記有機化合物を含む。
【0135】
1つの実施態様において、本発明による組成物中でのケイ酸カルシウム水和物の、水溶性ポリマー分散剤に対する質量比は、8:1~3:1、好ましくは6:1~3:1、およびより好ましくは5.5:1~4:1である。
【0136】
本発明はさらに、好ましくは水硬性結合剤として主にセメントを含む建材混合物の、水硬性結合剤または潜在水硬性結合剤のための硬化促進剤としての、特にセメント、スラグ、好ましくは粉砕高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ粉、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、スルホアルミン酸カルシウムセメントおよび/またはアルミン酸カルシウムセメントにおける、本発明によるケイ酸カルシウム水和物組成物の使用を提供する。
【0137】
前記建材混合物は、建築用化学物質の分野において典型的に使用されるさらなる添加剤、例えば他の硬化促進剤、分散剤、可塑剤、減水剤、凝結遅延剤、消泡剤、気孔形成剤、遅延剤、収縮低減剤、再乳化形粉末、凍結保護剤および/または白華防止剤も含み得る。
【0138】
他の適した硬化促進剤は、アルカノールアミン、好ましくはトリイソプロパノールアミンおよび/またはテトラヒドロキシエチルエチレンジアミン(THEED)である。前記アルカノールアミンは好ましくは水硬性結合剤の質量に対して0.01~2.5質量%の添加量で使用される。アミン、特にトリイソプロパノールアミンおよびテトラヒドロキシエチルエチレンジアミンが使用される場合、水硬性結合剤系の、特にセメントのような系における早期強度の発現に関して相乗効果を見出すことができる。
【0139】
さらなる他の適した硬化促進剤は、例えば塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硝酸カルシウム、スルファミン酸カルシウム、酢酸カルシウム、無機炭酸塩(例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、1,3-ジオキソラン-2-オンおよび4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オンである。ギ酸カルシウムおよび硝酸カルシウムを、水硬性結合剤に対して0.1~4質量%の量で使用することが好ましい。
【0140】
適した分散剤、可塑剤、減水剤は例えば、a) スルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、b) リグノスルホネート、c) スルホン化ケトン-ホルムアルデヒド縮合物、d) スルホン化ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物(BNS)、e) ポリカルボキシレートエーテル(PCE)、f) セメントと水とを含むセメントベースの混合物の加工性を延長するための非イオン性コポリマーであって、以下のモノマー成分: 成分A、つまり、セメントベースの混合物中で加水分解され得る単位を有するエチレン性不飽和カルボキシルエステルモノマー、および成分B、つまり、1~350のオキシアルキレン単位を有する少なくとも1つのポリ-C2~C4-オキシアルキレン側鎖を含むエチレン性不飽和カルボキシルエステルモノマーまたはアルケニルエーテルモノマーの少なくとも1つから誘導される単位を含む、前記コポリマー、またはg) ホスホネート基を含み且つ式
R-(OA)n-N-[CH2-PO(OM222
[式中、
RはHまたは飽和または不飽和炭化水素基、好ましくはC1~C15-アルキル基であり、
基Aは同一または異なることができ、且つ2~18個の炭素原子を有するアルキレン、好ましくはエチレンおよび/またはプロピレン、特にエチレンであり、
nは5~500、好ましくは10~200、特に10~100であり、且つ
MはH、アルカリ金属、1/2アルカリ土類金属および/またはアミンである]
を有する分散剤であり、上述の分散剤a)~g)のあらゆる組み合わせが包含される。
【0141】
適した凝結遅延剤は、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、ホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミノテトラ(メチレンホスホン)酸、ジエチレントリアミノペンタ(メチレンホスホン)酸(各々、前記酸のそれぞれの塩を含む)、ピロリン酸塩、五ホウ酸塩、メタホウ酸塩および/または糖(例えばグルコース、糖密)である。凝結遅延剤を添加する利点は、オープンタイムを制御でき、且つ特に延長できることである。凝結遅延剤は好ましくは、水硬性結合剤、好ましくはセメントの質量に対して0.01質量%~0.5質量%の量で使用される。
【0142】
本発明によるケイ酸カルシウム水和物を含む組成物は特に、水硬性結合剤または潜在水硬性結合剤、特にポルトランドセメントの硬化において驚くほど強い促進作用を示す。前記ケイ酸カルシウム水和物を含む組成物の使用は、水硬性または潜在水硬性の凝結結合剤、特にポルトランドセメントの早期強度を改善することを可能にする。さらには、前記組成物は改善された使用特性、例えば、長期の貯蔵時間後であっても、使用に関連する濃度範囲で低い粘度を有する。従って、それは取り扱い易く、且つ容易なポンピングおよび噴霧を可能にする。
【0143】
本発明を以下の実施例によって説明する。
【実施例
【0144】
デキストロース(CAS番号: 50-99-7)(Sigma Aldrich)。化学式C6126を有するデキストロースは分子量180.16g/molおよび本発明による有機化合物1グラムあたり0.033の官能基を有する。
【0145】
グルコン酸Na(CAS番号: 527-07-1)(Sigma Aldrich)。化学式C611NaO7を有するグルコン酸Naは分子量218.137g/molおよび本発明による有機化合物1グラムあたり0.0275の官能基を有する。
【0146】
酒石酸Na(CAS番号: 51307-92-7、ラセミ混合物)(Sigma Aldrich)。化学式C44Na26を有する酒石酸酸Naは分子量194.08g/molおよび本発明による有機化合物1グラムあたり0.0206の官能基を有する。
【0147】
クエン酸Na(CAS番号: 18996-35-5)(Sigma Aldrich)。化学式C65Na37を有するクエン酸Naは分子量258.07g/molおよび本発明による有機化合物1グラムあたり0.0155の官能基を有する。
【0148】
熱水C-S-H(ht-C-S-H)を、国際公開第2018/154012号(WO2018/154012)の33ページ、6~14行目に従って調製し、それは含水率42質量%および粉砕後の粒子径d90<1mm(ISO 13320:2020に準拠してレーザー粒度分析を介して特定)を示した。
【0149】
566kgのh-C-S-H(固形分含有率58質量%)、158kgの国際公開第2018/154012号、32ページ、4~8行目に記載される分散剤P3(固形分含有率45質量%)、1.4kgの脱泡剤(Semifinish 2、BASF、固形分含有率57%)および275kgの水を含有する予備装填物1000kgを調製し、固形分含有率40質量%を有するスラリーをもたらした。
【0150】
前記予備装填物におけるスラリーを連続的に適度な速度でディゾルバーを用いて攪拌し、次いでミリングユニット(MacroMedia、Buhlerグループ製)に回しながら供給して、第1の予備粉砕段階を行った。ミリングチャンバは容積6Lを示し、且つローター・ステーター部品を備え、300mmのサイズのスチール棒および3mmのサイズのY安定化ZrO2ボールが取り付けられた。予備粉砕を75分間、スループット速度18.7m3/h、および攪拌機速度10.2m/秒で実施し、21kWh/懸濁液のtのエネルギー入力をもたらした。レーザー回折(Horiba LA 950 V2機器、RESCH製)によって特定してd50 8.8μm且つd90 14.6μmに達したら、予備粉砕を終了させた。
【0151】
次いで、そのように得られた予備粉砕された懸濁液を固形分含有率28質量%に希釈し、2kgの材料を研究室規模の攪拌ボールミルで微粉砕した。使用された攪拌ボールミル(Labstar、Netzsch製)は容積0.7Lであることによって特徴付けられた。粉砕チャンバはローターシャフトおよびポリウレタン製のディスクおよびスリットサイズ0.4mmで構成された。0.5mmのサイズを有するY安定化ZrO2の粉砕ビーズを約80体積%の充填度まで使用した。懸濁液をバッチ式で、合計2回のパスで粉砕した。ミルを電力1.0kWで、回転速度9m/sを有する攪拌機を用いて稼働した。
【0152】
最終的な懸濁液は190nmのd50の微細な粒子径分布を示した。さらに、前記懸濁液は、粉砕直後に粘度約100mPas(23℃、ブルックフィールドスピンドル 64.12rpm)を示し、従って実用のために完全に適していた(ポンピング、噴霧)。さらに、促進の素質を熱流熱量測定を用いて特定した。実験のプロトコルは国際公開第2018/154012号の36ページ、37行目~37ページ、7行目に記載されている。全ての試料は、セメントの質量に対して懸濁液の6質量%で供与された。次いで、促進の素質を、ケイ酸塩反応の進行についての尺度として、0.5~6時間のセメント反応の間の合計の熱放出を計算することによって定量化した。次いで、前記懸濁液を、さらなる添加剤を含有しない(比較例1および2)、または高度の官能化を有する(固体のht-C-S-Hの質量に対して)3.0および5.4質量%の低分子量添加剤を添加した(本発明の例)、いくつかの試料に分割した。次いで、前記懸濁液を攪拌せずに、研究室用実験台上の封止されたガラスバイアル内で室温または40℃で貯蔵し、レオロジー特性および促進特性を経時的に監視した。室温で貯蔵された、さらなる添加剤を有さない参照用の懸濁液は、経時的に粘度上昇が進みやすく、最終的には数ヶ月後にゲルの形成に至ることが観察され(表1の比較1および比較2)、所定の測定の設定において粘度>50,000mPasを示した。同じ挙動がより高い貯蔵温度によって促進された。意外なことに、高度の官能性を有する低分子量の添加剤を含有する試料は、粘度上昇を非常に遅らせることができる一方で、C-S-H懸濁液の高い促進力は維持されたままであることが判明した。表1に示される促進係数は、所定の貯蔵温度で、添加剤含有懸濁液の存在下での水和熱を参照用の懸濁液を有する混合物に対して正規化したものとして計算されている。従って、その値は、粘度制御添加剤の遅延作用についての定量的な尺度として役立つ。特に、酒石酸ナトリウムおよびグルコースの供与は懸濁液の促進の素質に非常にわずかな影響しか有さなかった一方で、室温で35週間よりも長くゲルの形成を明確に防いだ。
【0153】
表1: 比較用懸濁液および本発明の懸濁液の粘度および促進性能のまとめ(比較=比較例、本発明=本発明による例)
【表1】
【国際調査報告】