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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-07
(54)【発明の名称】ポリエチレンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20231030BHJP
   C08F 10/08 20060101ALI20231030BHJP
   C08F 10/14 20060101ALI20231030BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C08F10/02
C08F10/08
C08F10/14
C08F4/6592
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524816
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 KR2021017790
(87)【国際公開番号】W WO2022114904
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0165107
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0166153
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンチャン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンキュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン・ジソ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ス・オ
(72)【発明者】
【氏名】ジウォン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ヨン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ジュン・オ
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA04Q
4J100AA07Q
4J100AA15Q
4J100CA01
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA22
4J100FA10
4J100FA19
4J100GB01
4J100GC25
4J100JA58
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC01
4J128AC10
4J128AC20
4J128AC28
4J128AD02
4J128AD11
4J128AD13
4J128AD15
4J128AD16
4J128AE03
4J128AE05
4J128BC12B
4J128BC13B
4J128BC14B
4J128BC15B
4J128BC25A
4J128BC25B
4J128CA28A
4J128CB63A
4J128CB65A
4J128EB02
4J128EB03
4J128EB04
4J128EB05
4J128EB07
4J128EB08
4J128EB09
4J128EB10
4J128EC02
4J128FA01
4J128FA02
4J128FA04
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA07
4J128GA08
4J128GA19
4J128GA26
(57)【要約】
本発明は、優れた加工性を有し、射出成形の不良率を減少させることができるポリエチレンおよびこれを製造する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
x軸がlog Mwであり、y軸がdw/dlogMwであるポリエチレンのGPCカーブグラフで、Log Mwが5.5以上である領域の積分値が全体積分値の9%以下であり、
冷却速度40℃/minで測定した結晶化温度(Tc40)に対する冷却速度10℃/minで測定した結晶化温度(Tc10)の比率(Tc10/Tc40)が1.04未満である、
ポリエチレン。
【請求項2】
x軸がlog Mwであり、y軸がdw/dlogMwであるポリエチレンのGPCカーブグラフで、Log Mwが5.5以上である領域の積分値が全体積分値の5%~9%である、
請求項1に記載のポリエチレン。
【請求項3】
x軸がlog Mwであり、y軸がdw/dlogMwであるGPCカーブグラフで、Log Mwが6.5以上である領域の積分値が全体積分値の0.3%以下である、
請求項1または2に記載のポリエチレン。
【請求項4】
x軸がlog Mwであり、y軸がdw/dlogMwであるポリエチレンのGPCカーブグラフで、Log Mwが5.5以上である領域の積分値の比率(H Mw)に対するLog Mwが6.5以上である領域の積分値の比率(UH Mw)の比率(UH/H)が0.02以上である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【請求項5】
分子量分布(Mw/Mn)が10~13である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【請求項6】
重量平均分子量が90000g/mol~120000g/molである、
請求項1から5のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【請求項7】
冷却速度40℃/minで測定した結晶化温度(Tc40)に対する冷却速度10℃/minで測定した結晶化温度(Tc10)の比率(Tc10/Tc40)が1以上~1.04未満である、
請求項1から6のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【請求項8】
冷却速度40℃/minで測定した結晶化温度(Tc40)は113℃以上であり、
冷却速度10℃/minで測定した結晶化温度(Tc10)は115℃~117℃である、
請求項1から7のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【請求項9】
上昇速度40℃/minで測定した溶融温度(Tm40)に対する上昇速度10℃/minで測定した溶融温度(Tm10)の比率(Tm10/Tm40)が1.004~1.012である、
請求項1から8のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【請求項10】
上昇速度40℃/minで測定した溶融温度(Tm40)は117℃~118℃であり、
上昇速度10℃/minで測定した溶融温度(Tm10)は128℃~130℃である、
請求項1から9のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【請求項11】
前記ポリエチレンはC4-20のα-オレフィン単量体とのエチレン共重合体である、
請求項1から10のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【請求項12】
下記化学式1で表されるメタロセン化合物を含む触媒組成物の存在下で、オレフィン単量体を重合させる段階を含む、
請求項1から11のいずれか一項に記載のポリエチレンの製造方法。
【化1】
(前記化学式1で、
Bはホウ素であり、
Mは第4族遷移金属であり、
~Rは、それぞれ独立して、水素、C1-20アルキル、C3-20シクロアルキル、またはC6-20アリールであるか、RとRまたはRとRが互いに結合して置換または非置換のC6-60芳香族環を形成し、
およびRは、それぞれ独立して、C1-20アルキル、C3-20シクロアルキル、またはC6-20アリールであるか、RとRが互いに結合してC3-60脂肪族環、またはC6-60芳香族環を形成し、
およびXは、それぞれ独立して、C1-20アルキルまたは-O(CO)R’であり、ここでR’はC1-20アルキルであり、
QはN、OおよびSからなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む置換または非置換のC2-60ヘテロ環であり、
YとY’はQを構成する元素であり、
YはN、O、またはSであり、
Y’はYと隣接したQの元素であり、NまたはCである。)
【請求項13】
~Rは、それぞれ独立して、水素、またはメチルであるか、RとRまたはRとRが互いに結合してベンゼン環、または1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン環を形成し、
ここで前記ベンゼン環、または1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン環は非置換か、メチル、tert-ブチルおよび4-tert-ブチルフェニルからなる群より選択される1個~4個の置換基で置換された、
請求項12に記載のポリエチレンの製造方法。
【請求項14】
およびRは、それぞれ独立して、メチル、またはフェニルであるか、RとRが互いに結合してシクロオクタン環を形成する、
請求項12または13に記載のポリエチレンの製造方法。
【請求項15】
前記化学式1で表される化合物は、下記構造式で表される化合物のうちのいずれか一つである、
請求項12から14のいずれか一項に記載のポリエチレンの製造方法。
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリエチレンを含む射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2020年11月30日付韓国特許出願第10-2020-0165107号および2021年11月26日付韓国特許出願第10-2021-0166153号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、優れた加工性を有し、射出成形の不良率を減少させることができるポリエチレンおよびこれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリエチレン樹脂の需要はますます増加しており、多様な応用分野で使用されている。比較的に新たなプラスチックのための高性能のポリエチレンが要求されることに伴い、重合工程技術が新たなポリマー材料の生産を支援するために開発された。
【0004】
一般的にオレフィン重合触媒系は、チーグラーナッタおよびメタロセン触媒系に分類することができ、この2種類の高活性触媒系は、それぞれの特徴に合うように発展してきた。チーグラーナッタ触媒は、50年代に発明されて以来、既存の商業プロセスに幅広く適用されてきたが、活性点が多数混在するマルチサイト触媒(multisite catalyst)であるため、重合体の分子量分布が広いことが特徴であり、共単量体の組成分布が均一でないため、所望の物性の確保に限界があるという問題点がある。
【0005】
一方、メタロセン触媒は、遷移金属化合物が主成分である主触媒とアルミニウムが主成分である有機金属化合物である助触媒との組み合わせからなり、このような触媒は、均一系錯体触媒であって、シングルサイト触媒(single site catalyst)であり、シングルサイト特性により分子量分布が狭く、共単量体の組成分布が均一な高分子が得られ、触媒のリガンド構造変形および重合条件の変更により高分子の立体規則度、共重合特性、分子量、結晶化度などを変化させることができる特性を有している。
【0006】
米国特許第5,914,289号には、それぞれの担体に担持されたメタロセン触媒を利用して高分子の分子量および分子量分布を制御する方法が記載されているが、担持触媒の製造時に使用された溶媒の量および製造時間を多く要し、使用されるメタロセン触媒を担体にそれぞれ担持させなければならないという面倒さがあった。
【0007】
韓国特許出願第2003-12308号には、担体に二核メタロセン触媒と単核メタロセン触媒を活性化剤と共に担持して反応器内触媒の組み合わせを変化させながら重合することによって分子量分布を制御する方案を開示している。しかし、このような方法は、それぞれの触媒の特性を同時に実現するには限界があり、また完成された触媒の担体成分でメタロセン触媒部分が遊離されて反応器にファウリング(fouling)を誘発するという短所がある。
【0008】
一方、ポリエチレンをボトルキャップ(bottle cap)などの射出成形品の製造に使用する時には一般的に高い優れた加工性、機械的物性および高い水準の環境応力亀裂抵抗性(environmental stress crack resistance;ESCR)などの優れた化学的物性が要求される。したがって、以前から大きい分子量、より広い分子量分布および好適な共単量体分布などを充足して、容器やボトルキャップなどで好適に使用可能なポリエチレンの製造に関する技術が継続して要求されている。
【0009】
特に、高密度ポリエチレンを利用してボトルキャップ(bottle cap)を製造する時、ヘアー(hair)は、キャップ射出加工時にキャップのゲート(Gate)領域でまだ完全に固まっていない樹脂が伸びながら発生する成形不良のうちの一つである。ヘアー発生影響因子はまだ明確になっておらず、主に加工温度の低下を通じた粘度の上昇で問題を解決してきた。一例として、同一の樹脂で金型(射出時の冷却速度)によりヘアー発生率は変わるようになる。しかし、多様な樹脂と金型の特性により温度低下を通じた粘度の上昇で解決されない場合が存在し、これは今後解決しなければならない課題として残っている。
【0010】
したがって、ヘアー発生率を制御するためにはメカニズムの理解および分子構造的なアプローチが必要である。ヘアー発生メカニズムは、大きく二段階、1)初期ヘアー生成と、2)生成されたヘアーの増加に分けることができ、各段階の影響因子は相異している。初期ヘアー生成関与因子には、固化温度、結晶化温度(Tc)、Tc分布、金型デザインなどがあり、ヘアーが長くなる因子には、粘度、伸張粘度などがある。また、チーグラーナッタ系触媒を使用してポリエチレン樹脂の製作時には相対的に広い分子量分布により初期ヘアー生成を誘発する広い結晶化分布および低い結晶化温度を有する。
【0011】
そこで、前記短所を解決するために、ボトルキャップ(bottle cap)など射出製品の製造時に冷却速度などの加工条件に応じた依存性を低めながら、ヘアー発生率を減少させることができる、ポリエチレンの開発が一層要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、優れた加工性により射出成形不良を改善することができる、特にヘアー発生率を減少させることができる射出成形品製造用ポリエチレンを提供する。
【0013】
また、本発明は、前述した射出成形品製造用ポリエチレンを製造する方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、前述したポリエチレンを含む射出成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の一実施形態によれば、x軸がlog Mwであり、y軸がdw/dlogMwであるポリエチレンのGPCカーブグラフで、Log Mwが5.5以上である領域の積分値が全体積分値の9%以下であり、冷却速度40℃/minで測定した結晶化温度(Tc40)に対する冷却速度10℃/minで測定した結晶化温度(Tc10)の比率(Tc10/Tc40)が1.04未満である、ポリエチレンが提供される。
【0016】
また、本発明は、前述した射出成形品製造用ポリエチレンを製造する方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、前述したポリエチレンを含む射出成形品を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高分子量領域の分子量分布と冷却速度に応じた結晶化温度(Tc10およびTc40)を全て最適化して射出時にヘアー発生率が低く、射出時の冷却速度などの加工条件依存性が低い高密度ポリエチレンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するために使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。
【0020】
また、本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0021】
また、本明細書全体で使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造および物質許容誤差が提示される時、その数値またはその数値に近接した意味で使用され、本願の理解を助けるために正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0022】
また、本明細書で「重量部(part by weight)」とは、ある物質の重量を基準として残りの物質の重量を比で示す相対的な概念を意味する。例えば、A物質の重量が50gであり、B物質の重量が20gであり、C物質の重量が30gで含まれている混合物において、A物質100重量部を基準としてB物質およびC物質の量はそれぞれ40重量部および60重量部である。
【0023】
また、「重量%(% by weight)」とは、全体重量中のある物質の重量の重量を百分率で示す絶対的な概念を意味する。前記例として挙げた混合物において、混合物全体重量100%中のA物質、B物質、およびC物質の含有量は、それぞれ50重量%、20重量%、30重量%である。この時、各成分の含有量の総和は100重量%を超えない。
【0024】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0025】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0026】
発明の一実施形態によれば、射出時の冷却速度などの加工条件に対する依存性を低め、ヘアー不良が改善された射出成形品の製造のために、高い分子量を示す領域の分子量分布と冷却速度に応じた結晶化温度(Tc10およびTc40)を調節することで、優れた加工性でボトルキャップなど射出成形品の製造に適したポリエチレンが提供される。
【0027】
具体的に、本発明のポリエチレンは、x軸がlog Mwであり、y軸がdw/dlogMwであるポリエチレンのGPCカーブグラフで、Log Mwが5.5以上である領域の積分値が全体積分値の9%以下であり、冷却速度40℃/minで測定した結晶化温度(Tc40)に対する冷却速度10℃/minで測定した結晶化温度(Tc10)の比率(Tc10/Tc40)が1.04未満である。
【0028】
特に、前記ポリエチレンは、後述するように特定のメタロセン触媒を使用して高い分子量を示す領域の分子量分布と冷却速度に応じた結晶化温度(Tc10およびTc40)を調節して射出時の冷却速度などの加工条件に対する依存性を低め、射出成形不良、特にヘアー不良を効果的に改善することができる。
【0029】
以下、本発明のポリエチレンについてより詳しく説明する。
【0030】
前記ポリエチレンは、x軸がlog Mwであり、y軸がdw/dlogMwであるGPCカーブグラフで、Log Mwが5.5以上である領域の積分値が全体積分値の9%以下、または5%~9%である。
【0031】
具体的に、前記Log Mwが5.5以上である領域の積分値は、好ましくは8.98%以下、または8.95%以下、または8.91%以下であり得る。ただし、ポリエチレンの実質的な加工性を考慮すると、前記Log Mwが5.5以上である領域の積分値は、5.5%以上、または6%以上、または7%以上、または8%以上、または8.3%以上であり得る。
【0032】
前記のようなLog Mwが5.5以上である領域の積分値を有することによってポリエチレンの高分子量(または分子量)を最適化し、結晶化温度(または加工性)を向上させることができる。
【0033】
また、前記ポリエチレンは、x軸がlog Mwであり、y軸がdw/dlogMwであるGPCカーブグラフで、Log Mwが6.5以上である領域の積分値が全体積分値の0.3%以下、または0.01%~0.3%であり得る。
【0034】
具体的に、前記Log Mwが6.5以上である領域の積分値は、好ましくは0.28%以下、または0.25%以下、または0.23%以下であり得る。ただし、ポリエチレンの実質的な加工性を考慮すると、前記Log Mwが6.5以上である領域の積分値は、0.02%以上、または0.05%以上、または0.08%以上、または0.1%以上、または0.15%以上であり得る。
【0035】
前記のようなLog Mwが6.5以上である領域の積分値を有することによってポリエチレンの超高分子量(または分子量)を最適化し、結晶化温度(または加工性)を向上させることができる。
【0036】
また、前記ポリエチレンは、x軸がlog Mwであり、y軸がdw/dlogMwであるGPCカーブグラフで、Log Mwが5.5以上である領域の積分値の比率(H Mw)に対するLog Mwが6.5以上である領域の積分値(UH Mw)の比率(UH/H)が0.02以上または0.02~0.03であり得る。
【0037】
具体的に、前記Log Mwが5.5以上である領域の積分値の比率(H Mw)に対するLog Mwが6.5以上である領域の積分値(UH Mw)の比率(UH/H)は、好ましくは0.021以上、または0.0215以上、または0.022以上であり得る。ただし、ポリエチレンの実質的な加工性を考慮すると、前記積分値(UH Mw)の比率(UH/H)は、0.028以下、または0.026以下、または0.024以下であり得る。
【0038】
前記のようなLog Mwが5.5以上である領域の積分値の比率(H Mw)に対するLog Mwが6.5以上である領域の積分値の比率(UH Mw)の比率(UH/H)を有することによってポリエチレンの高分子量含有量の比率を最適化し、結晶化温度を向上させることができる。
【0039】
本発明のポリエチレンは、前述のように分子構造内の高分子領域の比率を最適範囲に示すと同時に、分子量分布(MWD、Mw/Mn)が最適化されたものであり得る。
【0040】
具体的に、前記ポリエチレンは、分子量分布(Mw/Mn)が10~13であり得、好ましくは10.5以上、または11以上、または11.2以上であり、12.5以下、または12.1以下、または11.9以下であり得る。
【0041】
前記のような分子量分布(Mw/Mn)を有することによってポリエチレンの分子量および分子量分布を最適化し、結晶化温度(または加工性)を向上させることができる。
【0042】
一例として、前記GPCカーブグラフでLog Mw値が5.5以上および6.5以上である領域の比率と分子量分布(MWD、polydispersity index)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、gel permeation chromatography、Water社製造)を利用して測定する。
【0043】
ここで、分子量分布(MWD、polydispersity index)は、ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、重量平均分子量を数平均分子量で割って計算することができる。
【0044】
具体的に、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置としては、Waters PL-GPC220機器を利用し、Polymer Laboratories PLgel MIX-Bの300mm長さのカラムを使用することができる。この時、測定温度は160℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼン(1,2,4-Trichlorobenzene)を溶媒として使用することができ、流速は1mL/minで適用することができる。前記ポリエチレン試料は、それぞれGPC分析機器(PL-GP220)を利用してブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、butylated hydroxytoluene)が0.0125%含まれているトリクロロベンゼン(1,2,4-Trichlorobenzene)で160℃、10時間溶かして前処理し、10mg/10mLの濃度に調製した後、200マイクロリットル(μL)の量で供給することができる。ポリスチレン標準試片を利用して形成された検定曲線を利用してMwおよびMnの値を誘導することができる。ポリスチレン標準試片の重量平均分子量は、2000g/mol、10000g/mol、30000g/mol、70000g/mol、200000g/mol、700000g/mol、2000000g/mol、4000000g/mol、10000000g/molの9種を使用することができる。
【0045】
また、前記ポリエチレンは、重量平均分子量が90000g/mol~150000g/molであり得、好ましくは95000g/mol以上、または100000g/mol以上、または105000g/mol以上であり、140000g/mol以下、または130000g/mol以下、または125000g/mol以下、または120000g/mol以下であり得る。
【0046】
前記のような重量平均分子量(Mw)を有することによってポリエチレンの分子量分布を最適化し、加工性を向上させることができる。
【0047】
一方、本発明のポリエチレンは、前述のように分子構造内の高分子領域の比率を最適範囲に示すと同時に、冷却速度に応じた結晶化温度(Tc10およびTc40)を最適化することを特徴とする。
【0048】
前記ポリエチレンは、冷却速度40℃/minで測定した結晶化温度(Tc40)に対する冷却速度10℃/minで測定した結晶化温度(Tc10)の比率(Tc10/Tc40)が1.04未満または1以上~1.04未満である。
【0049】
具体的に、冷却速度40℃/minで測定した結晶化温度(Tc40)に対する冷却速度10℃/minで測定した結晶化温度(Tc10)の比率(Tc10/Tc40)は、好ましくは1.038以下、または1.035以下、または1.03以下、または1.028以下、または1.024以下であり得る。ただし、ポリエチレンの実質的な加工性を考慮すると、前記冷却速度40℃/minで測定した結晶化温度(Tc40)に対する冷却速度10℃/minで測定した結晶化温度(Tc10)の比率(Tc10/Tc40)は、1以上、または1.01以上、または1.015以上、または1.017以上であり得る。
【0050】
前記のような冷却速度40℃/minで測定した結晶化温度(Tc40)に対する冷却速度10℃/minで測定した結晶化温度(Tc10)の比率(Tc10/Tc40)を有することによってポリエチレンの結晶化温度を最適化し、加工速度依存度を低めることができる。
【0051】
また、前記ポリエチレンは、冷却速度40℃/minで測定した結晶化温度(Tc40)が113℃~114℃である。
【0052】
具体的に、前記ポリエチレンは、冷却速度40℃/minで測定した結晶化温度(Tc40)が、好ましくは113.2℃以上、または113.5℃以上、または113.7℃以上であり、113.95℃以下、または113.9℃以下、または113.8℃以下であり得る。
【0053】
前記のような冷却速度40℃/minで測定した結晶化温度(Tc40)を有することによってポリエチレンの射出過程での結晶化速度を最適化し、加工性を向上させることができる。
【0054】
また、前記ポリエチレンは、冷却速度10℃/minで測定した結晶化温度(Tc10)が115℃~117℃である。
【0055】
具体的に、前記ポリエチレンは、冷却速度10℃/minで測定した結晶化温度(Tc10)が、好ましくは115.2℃以上、または115.5℃以上、または115.7℃以上であり、116.9℃以下、または116.8℃以下、または116.6℃以下であり得る。
【0056】
前記のような冷却速度10℃/minで測定した結晶化温度(Tc10)を有することによってポリエチレンの結晶化温度を最適化し、加工性を向上させることができる。
【0057】
特に、ヘアー(Hair)生成関与因子には結晶化温度(Tc)などがあり、ヘアーが長くなる因子には粘度などがある。ヘアー発生は、主に加工温度の低下を通じた粘度の上昇で問題を解決してきたが、ヘアー発生率が多様な樹脂と金型の特性(金型温度、冷却速度など)により相異するため、加工温度調節を通じた解決方法には限界がある。したがって、樹脂自体が加工条件(冷却速度など)に応じた依存性を低めることによってヘアー発生率を減らすことができる。
【0058】
また、実際の工程で冷却速度は、1分当たり100℃より速いため、樹脂自体が速い速度で固まらなければ、固まっていない樹脂が長く伸びてヘアーが発生する。例えば、1分当たり100℃以上の速い冷却速度で結晶化が速いほど樹脂の粘度が上昇し、これに伴うヘアー発生依存性が減少することができる。したがって、高速(40℃/min)での結晶化温度と低速(10℃/min)での結晶化温度の比率(Tc10/Tc40)は、結局、良好な工程条件に比べて苛酷(harsh)な工程でのヘアー発生率の増加と関連しているといえる。そこで、前述した特定の高速に対する低速の結晶化温度比率(Tc10/Tc40)を最小化することによって、実際の工程でヘアー発生率を改善し、射出成形の不良率を減少させることができる。
【0059】
本発明のポリエチレンは、前述のように冷却速度に応じた結晶化温度(Tc10およびTc40)を最適範囲に示すと同時に、溶融温度(Tm10およびTm40)が最適化されたものであり得る。
【0060】
前記ポリエチレンは、上昇速度40℃/minで測定した溶融温度(Tm40)に対する上昇速度10℃/minで測定した溶融温度(Tm10)の比率(Tm10/Tm40)が1.004~1.012であり得る。
【0061】
また、前記ポリエチレンは、上昇速度40℃/minで測定した溶融温度(Tm40)が117℃~118℃であり得る。
【0062】
また、前記ポリエチレンは、上昇速度10℃/minで測定した溶融温度(Tm10)が128℃~130℃であり得る。
【0063】
一例として、前記結晶化温度(Tc10、Tc40)および溶融温度(Tm10、Tm40)は、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC)を利用して測定することができる。
【0064】
具体的には、共重合体を200℃まで加熱した後に3分間維持し、再び30℃まで下げた後、再び温度を増加させる。この時、温度の上昇速度は10℃/min、下降速度はそれぞれ10℃/minおよび40℃/minに調節し、2番目の温度が上昇する区間で測定した結果を溶融温度、温度を減少させて現れる区間で測定した結果を結晶化温度とする。
【0065】
一方、本発明のポリエチレンは、前述のように分子構造内の高分子領域の比率と冷却速度に応じた結晶化温度(Tc10およびTc40)を最適化すると同時に、溶融指数、溶融流動指数、密度などが最適化され得る。
【0066】
また、前記ポリエチレンは、溶融指数(ASTM D 1238、190℃、2.16kg)が0.2~2.0g/10minであり得、好ましくは0.3g/10min以上、または0.5g/10min以上、または0.85g/10min以上、または1.0g/10min以上、または1.03g/10min以上であり、1.8g/10min以下、または1.6g/10min以下、または1.5g/10min以下、または1.2g/10min以下、または1.15g/10min以下、または1.05g/10min以下であり得る。
【0067】
前記のような溶融指数を有することによってポリエチレンの分子量を最適化し、結晶化温度を向上させることができる。
【0068】
また、前記ポリエチレンは、溶融流動指数(MFRR、Melt flow rate ratio、MI/MI2.16)が、好ましくは3.5~4.0であり得、好ましくは3.52以上、または3.54以上、または3.56以上、または3.58以上であり、3.98以下、または3.95以下、または3.93以下、または3.91以下であり得る。
【0069】
前記MFRRは、ASTM D1238に基づいて前記ポリエチレンに対して190℃および5kg荷重下で測定された溶融指数(MI)を190℃および2.16kg荷重下で測定された溶融指数(MI2.16)で割った値である。
【0070】
前記のような溶融流動指数を有することによってポリエチレンの分子量分布を最適化し、結晶化温度を向上させることができる。
【0071】
また、前記ポリエチレンは、密度(ASTM D1505、23℃)が0.945g/cm~0.965g/cmを満たす高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)であり得る。
【0072】
より具体的に、前記ポリエチレンの密度は、好ましくは0.946g/cm以上、または0.947g/cm以上、または0.948g/cm以上、または0.950g/cm以上、または0.951g/cm以上であり、0.963g/cm以下、または0.960g/cm以下、または0.958g/cm以下、または0.956g/cm以下であり得る。
【0073】
本発明の一実施形態によるポリエチレンは、C4-20のα-オレフィン単量体とのエチレン共重合体である。
【0074】
一例として、前記α-オレフィンは、炭素数4~20、または炭素数4~15、または炭素数4~12のα-オレフィンが挙げられ、具体的に1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられ、これらの中のいずれか一つまたは二つ以上の混合物が含まれ得る。この中でもより具体的には1-ブテン、または1-ヘキセンであり得、さらに具体的には1-ブテンであり得る。
【0075】
より具体的に、本発明の一実施形態によるポリエチレンは、エチレンと1-ブテンとの共重合体であり得る。
【0076】
また、前記α-オレフィン由来繰り返し単位は、ポリエチレン中の約0.2モル%~約5モル%で含まれ得る。前記含有量範囲内に含まれる場合、ポリエチレンがより優れた加工性を示すことができる。しかし、もし前記α-オレフィン由来繰り返し単位の含有量が0.2モル%未満と低ければ、α-オレフィン由来繰り返し単位を含むことによる加工性改善効果を得にくく、また5モル%を超えれば寿命改善効果が低下することがある。前記α-オレフィン由来繰り返し単位の含有量制御に応じた加工性改善効果の優秀さを考慮すると、より好ましくはα-オレフィン由来繰り返し単位は、前記ポリエチレン総重量に対して、0.5モル%以上、または1モル%以上、または1.2モル%以上、または1.5モル%以上、または1.8モル%以上、または2モル%以上であり、4.8モル%以下、または4.5モル%以下、または4.2モル%以下、または4モル%以下、または3.8モル%以下、または3.5モル%以下で含まれ得る。
【0077】
一方、本発明において「ヘアー」とは、射出成形の過程で発生する加工不良の一種類であって、射出成形時に射出システム中に溶融樹脂または射出成形された樹脂が通過または移送されるか、流入または流出されるゲート(gate)付近で射出成形された樹脂が長く伸びる現象を意味する。本発明では、ポリエチレン1.6g~2.4gを利用して保圧(holding pressure)300bar~1000bar、保圧時間0.5秒~2.0秒、冷却時間0.5秒~3.0秒、射出温度190℃~250℃、射出速度50mm/s~100mm/s、計量(plasticizing)長さ6mm~25mmおよび背圧(back pressure)5bar~100barの条件で射出成形時、伸びたポリエチレンの長さが2.5mm以上である場合をヘアー(hair)またはフロス(floss)で表現し、射出成形不良のうちの一つとすることができる。
【0078】
また本発明において「ヘアー発生率」とは、保圧(holding pressur)300bar~1000bar、保圧時間0.5秒~2.0秒、冷却時間0.5秒~3.0秒、射出温度190℃~250℃、射出速度50mm/s~100mm/s、計量(plasticizing)長さ6mm~25mmおよび背圧(back pressure)5bar~100barの射出成形条件下でポリエチレン樹脂を射出成形する場合、射出成形品の総個数に対してヘアーが発生した射出成形品の個数の比を百分率で示したものである。一例として、前述のような条件下で、20kgのポリエチレン樹脂をPC01881規格のボトルキャップ(Top plateの厚さ1.0mm)で成形時、製造された射出成形品の総個数に対してヘアーが発生した射出成形品の個数の比を百分率で示したものである。
【0079】
具体的に、前記ヘアー発生率は、下記数式1により定義および計算され得る。
【0080】
[数式1]
ヘアー発生率(%)=[B/A]×100
【0081】
前記数式1で、Aは保圧300bar~1000bar、保圧時間0.5秒~2.0秒、冷却時間0.5秒~3.0秒、射出温度190℃~250℃、射出速度50mm/s~100mm/s、計量長さ6mm~25mmおよび背圧5bar~100barの射出成形条件下でポリエチレン樹脂を成形時、具体的には20kgのポリエチレン樹脂をPC01881規格のボトルキャップ(Top plateの厚さ1.0mm)の成形時、製造される射出成形品の総個数を意味し、
Bは前記条件で射出成形して製造した射出成形品においてヘアーが発生した射出成形品の個数を意味する。
【0082】
特に、本発明のポリエチレンは、前記数式1による射出時のヘアー発生率が5%以下、または0.001%~5%以下である。
【0083】
具体的に、前記ポリエチレンは、射出時のヘアー発生率が、好ましくは4.8%以下、または4.5%以下、または4%以下、または3.5%以下、または3%以下、または2.5%以下であり得る。ただし、射出工程で実質的な加工性を考慮すると、前記射出時のヘアー発生率は、0.005%以上、または0.01%以上、または0.015%以上、または0.02%以上、または0.05%以上、または0.1%以上であり得る。
【0084】
前記のような射出時のヘアー発生率を有することによってポリエチレンの射出成形の不良率を最適化し、加工性を向上させることができる。
【0085】
一方、発明の他の一実施形態によれば、前述したポリエチレンを製造する方法を提供する。
【0086】
具体的に、前記ポリエチレンは、下記化学式1で表されるメタロセン化合物を含む触媒組成物の存在下で、オレフィン単量体を重合させる段階を含む方法で製造される。
【0087】
【化1】
【0088】
前記化学式1で、
Bはホウ素であり、
Mは第4族遷移金属であり、
~Rは、それぞれ独立して、水素、C1-20アルキル、C3-20シクロアルキル、またはC6-20アリールであるか、RとRまたはRとRが互いに結合して置換または非置換のC6-60芳香族環を形成し、
およびRは、それぞれ独立して、C1-20アルキル、C3-20シクロアルキル、またはC6-20アリールであるか、RとRが互いに結合してC3-60脂肪族環、またはC6-60芳香族環を形成し、
およびXは、それぞれ独立して、C1-20アルキルまたは-O(CO)R’であり、ここでR’はC1-20アルキルであり、
QはN、OおよびSからなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む置換または非置換のC2-60ヘテロ環であり、
YとY’はQを構成する元素であり、
YはN、O、またはSであり、
Y’はYと隣接したQの元素であり、NまたはCである。
【0089】
前記置換基をより具体的に説明すれば下記のとおりである。
【0090】
本明細書で特別な制限がない限り、次の用語は下記のように定義され得る。
【0091】
前記ハロゲンは、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)またはヨード(I)であり得る。
【0092】
前記アルキルは、直鎖、または分枝鎖アルキルであり得る。具体的に、前記C1-20アルキルは、C1-20の直鎖アルキル;C1-10直鎖アルキル;C1-5直鎖アルキル;C3-20分枝鎖アルキル;C3-15分枝鎖アルキル;またはC3-10分枝鎖アルキルであり得る。より具体的に、C1-20アルキルは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、またはiso-ペンチル基などがあるが、これらに限定されない。一方、本明細書で「iPr」はiso-プロピル基を意味する。
【0093】
前記シクロアルキルは、環状アルキルであり得る。具体的に前記C3-20シクロアルキルは、C3-20環状アルキル;C3-15環状アルキル;またはC3-10環状アルキルであり得る。より具体的に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これに限定されない。一方本明細書で「Cy」は、炭素数3~6のシクロアルキルを意味する。
【0094】
前記アルケニルは、直鎖、分枝鎖または環状アルケニルであり得る。具体的に、前記C2-20アルケニルは、C2-20直鎖アルケニル、C2-10直鎖アルケニル、C2-5直鎖アルケニル、C3-20分枝鎖アルケニル、C3-15分枝鎖アルケニル、C3-10分枝鎖アルケニル、C5-20環状アルケニルまたはC5-10環状アルケニルであり得る。より具体的に、C2-20アルケニルは、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルまたはシクロヘキセニルなどであり得る。
【0095】
前記アルコキシは、直鎖、分枝鎖または環状アルコキシ基であり得る。具体的に、前記C1-20アルコキシは、C1-20直鎖アルコキシ基;C1-10直鎖アルコキシ;C1-5直鎖アルコキシ基;C3-20分枝鎖または環状アルコキシ;C3-15分枝鎖または環状アルコキシ;またはC3-10分枝鎖または環状アルコキシであり得る。より具体的に、C1-20アルコキシは、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、iso-ペントキシ基、neo-ペントキシ基またはシクロヘプトキシ基などがあるが、これらに限定されない。
【0096】
前記アルコキシアルキルは、-Ra-O-Rbを含む構造で、アルキル(-Ra)の一つ以上の水素がアルコキシ(-O-Rb)で置換された置換基であり得る。具体的に、前記C2-20アルコキシアルキルは、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、iso-プロポキシメチル基、iso-プロポキシエチル基、iso-プロポキシヘキシル基、tert-ブトキシメチル基、tert-ブトキシエチル基またはtert-ブトキシヘキシル基などがあるが、これらに限定されない。
【0097】
前記アリールは、単環式、二環式、または三環式芳香族炭化水素を含む。本発明の一実施例によれば、前記アリール基は、炭素数6~60または炭素数6~20であり得、具体的にフェニル、ナフチル、アントラセニル、ジメチルアニリニル、アニソリルなどがあるが、これらに限定されない。
【0098】
前記ヘテロアリールは、ヘテロ元素でO、N、およびS中の1個以上を含むヘテロアリールであって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60または炭素数2~20であり得る。ヘテロアリールの例としては、キサンテン(xanthene)、チオキサンテン(thioxanthen)、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリジニル基、ピリミジル基、トリアジン基、アクリジル基、ピリダジン基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらだけに限定されるのではない。
【0099】
前記ヒドロカルビル基(hydrocarbyl group)は、1価の炭化水素化合物(hydrocarbon compound)を意味し、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルアルキル基、アルアルケニル基、アルアルキニル基、アルキルアリール基、アルケニルアリール基およびアルキニルアリール基などを含む。一例として、ヒドロカルビル基は、直鎖、分枝鎖または環状アルキルであり得る。より具体的に、炭素数1~30のヒドロカルビル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘキシル基などの直鎖、分枝鎖または環状アルキル基;またはフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、またはフルオレニルなどのアリール基であり得る。また、メチルフェニル、エチルフェニル、メチルビフェニル、メチルナフチルなどのアルキルアリールであり得、フェニルメチル、フェニルエチル、ビフェニルメチル、ナフチルメチルなどのアリールアルキルであり得る。また、アリル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルなどのアルケニルであり得る。
【0100】
前記ヘテロ環は、N、OおよびSからなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む脂肪族、環およびN、OおよびSからなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む芳香族環を全て含む。
【0101】
そして、第4族遷移金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、またはラザホージウム(Rf)であり得、具体的にチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)であり得、より具体的にジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)であり得るが、これらに限定されるのではない。
【0102】
前述した置換基は、目的とする効果と同一乃至類似の効果を発揮する範囲内で任意的にヒドロキシ基;ハロゲン;アルキルまたはアルケニル、アリール、アルコキシ;第14族~第16族のヘテロ原子のうちの一つ以上のヘテロ原子を含むアルキルまたはアルケニル、アリール、アルコキシ;アミノ;シリル;アルキルシリルまたはアルコキシシリル;ホスフィン基;ホスフィド基;スルホネート基;およびスルホン基からなる群より選択された1以上の置換基で置換され得る。
【0103】
本発明のエチレン重合を行うメタロセン触媒として、触媒前駆体であって、前記化学式1で表されるメタロセン化合物1種以上を含むものを使用することができる。
【0104】
前記化学式1で表されるメタロセン化合物は、通常使用されてきたCGC(constrained geometry catalyst)タイプ前駆体とは異なり、ホウ素陰イオンを含むブリッジ構造を採用した。従来のCGCタイプ前駆体は、ケイ素を含む中性ブリッジ構造を含んでリガンドユニットが負電荷を帯びる。これによって、構造的限界を有してオレフィン重合体の製造時に多様な物性の発現が難しいという問題がある。
【0105】
反面、本発明による前記化学式1で表されるメタロセン化合物は、ブリッジ構造が負電荷を帯びて、中性のリガンドユニットを有することができる。本発明のリガンドユニットは、前記化学式1のヘテロ環Qであり、Qの元素であるYが金属と配位結合をし、Yと隣接したQの元素Y’がブリッジと連結される。そこで、本発明では前記構造を満たす多様な中性リガンドユニットを採用して既存のCGC前駆体より高い活性と高共重合性を有する触媒を製造することができる。
【0106】
また、前記化学式1で表されるメタロセン化合物の金属置換基としてアルキルまたはカルボキシレートを含むが、これは良い離脱基の役割を果たすことで、MAOなどの助触媒との反応が促進されて活性が増大する効果を有する。
【0107】
したがって、前記メタロセン化合物を利用すれば、ポリエチレンの高い溶融指数を維持し、低分子量成分を減少させ、分子量分布を狭くし、SCB含有量を増加させて分子のもつれ寄与度(Effective Number of PhysicalC ross-link)を増加させることができるため、総揮発性有機化合物(TVOC)発生量が低減されたポリエチレンを製造することができる。
【0108】
具体的に、前記化学式1で、Mはジルコニウム(Zr)であり得る。
【0109】
また、前記化学式1で、R~Rは、それぞれ独立して、水素、C1-10アルキルまたはC6-20アリールであるか、RとRまたはRとRが互いに結合して置換または非置換のC6-20芳香族環を形成することができる。好ましくは、R~Rは、それぞれ独立して、水素、またはメチルであるか、RとRまたはRとRが互いに結合してベンゼン環、または1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン環を形成することができ、ここで前記ベンゼン環、または1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン環は非置換されるか、メチル、tert-ブチルおよび4-tert-ブチルフェニルからなる群より選択される1個~4個の置換基で置換され得る。
【0110】
また、前記化学式1で、RおよびRは、それぞれ独立して、C1-10アルキル、またはC6-20アリールであるか、RとRが互いに結合してC3-20脂肪族環、またはC6-20芳香族環を形成することができる。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル、またはフェニルであるか、RとRが互いに結合してシクロオクタン環を形成することができる。
【0111】
より好ましくは、RおよびRは、それぞれフェニルであり得る。
【0112】
また、前記化学式1で、XおよびXは、それぞれ独立して、メチル、またはアセテートであり得る。
【0113】
また、前記化学式1で、R’はメチルであり得る。
【0114】
また、前記化学式1で、XおよびXは互いに同一であり得る。
【0115】
また、前記化学式1で、QはN、OおよびSからなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む置換または非置換のC2-20ヘテロ環であり得る。
【0116】
好ましくは、Qはピリジン環、キノリン環、4,5-ジヒドロオキサゾール環、ピラゾール環、またはベンゾオキサゾール環であり得、前記Qは非置換されるか、メチル、イソプロピルおよびジフェニルアミノからなる群より選択される1個~4個の置換基で置換され得る。
【0117】
より好ましくは、Qはピリジン環、4,5-ジヒドロオキサゾール環、ピラゾール環、またはベンゾオキサゾール環であり得、前記Qは非置換されるか、メチル、イソプロピルおよびジフェニルアミノからなる群より選択される1個~4個の置換基で置換され得る。
【0118】
また、前記化学式1で、Yは金属Mと配位結合するヘテロ原子であって、好ましくは、YはNであり得る。
【0119】
一方、前記化学式1で表される第2メタロセン化合物の具体的な例として、下記構造式で表される化合物が挙げられるが、本発明がこれに制限されるのではない。
【0120】
【化2】
【化3】
【化4】
【0121】
前記化学式1で表されるメタロセン化合物は、XおよびXが互いに同一な場合、一例として下記反応式1のような製造方法で製造することができるが、これに限定されるのではなく、知られている有機化合物およびメタロセン化合物の製造方法により製造することができる。前記製造方法は、後述する製造例でより具体化され得る。
【0122】
【化5】
【0123】
前記反応式1で、B、M、R~R、X1、X、Q、YおよびY’は、前記化学式1で定義したとおりである。
【0124】
一方、本明細書で当量(eq.)はモル当量を意味する。
【0125】
発明の一実施形態による触媒組成物は、前記化学式1のメタロセン化合物を単一の触媒として含むことができる。
【0126】
この時、前記触媒組成物は、前記メタロセン化合物の単一の成分で含むこともでき、前記メタロセン化合物および担体を含む、担持メタロセン触媒形態であってもよい。担持メタロセン触媒を使用する場合、製造されるポリエチレンのモフォロジーおよび物性に優れ、従来のスラリー重合またはバルク重合、気相重合工程に適宜に使用可能である。
【0127】
具体的に前記担体としては、表面に反応性が高いヒドロキシ基、シラノール基またはシロキサン基を有する担体を使用することができ、このためにか焼(calcination)により表面改質されたり、または乾燥により表面に水分が除去されたものを使用することができる。例えば、シリカゲルをか焼して製造したシリカ、高温で乾燥したシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシアなどを使用することができ、これらは通常NaO、KCO、BaSO、およびMg(NOなどの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩成分を含有することができる。
【0128】
前記担体に対するか焼または乾燥時の温度は、約200℃~約600℃、または、約250℃~約600℃であり得る。前記担体に対するか焼または乾燥温度が低い場合には担体に残留する水分が過度に多くて表面の水分と助触媒が反応する虞があり、また過量で存在するヒドロキシル基により助触媒担持率が相対的に高くなり得るが、これによって多量の助触媒が要求されるようになる。また乾燥またはか焼温度が過度に高い場合には、担体表面の気孔が合わされながら表面積が減少し、表面にヒドロキシ基またはシラノール基が多くなくなり、シロキサン基のみが残るようになって助触媒との反応シートが減少する虞がある。
【0129】
前記担体表面のヒドロキシ基の量は、0.1mmol/g~10mmol/gが好ましく、0.5mmol/g~5mmol/gであることがより好ましい。前記担体表面にあるヒドロキシ基の量は、担体の製造方法および条件または乾燥条件、例えば温度、時間、真空またはスプレー乾燥などにより調節することができる。
【0130】
前記ヒドロキシ基の量が0.1mmol/g未満であれば助触媒との反応シートが少なく、10mmol/gを超えれば担体粒子表面に存在するヒドロキシ基以外に水分に起因したものである可能性があるため好ましくない。
【0131】
一例として、担体表面のヒドロキシ基の量は、0.1mmol/g~10mmol/gまたは0.5mmol/g~5mmol/gであり得る。前記担体表面にあるヒドロキシ基の量は、担体の製造方法および条件または乾燥条件、例えば温度、時間、真空またはスプレー乾燥などにより調節することができる。前記ヒドロキシ基の量が過度に低ければ助触媒との反応シートが少なく、過度に多ければ担体粒子表面に存在するヒドロキシ基以外に水分に起因したものである可能性がある。
【0132】
前記担体の中でもシリカ、特にシリカゲルをか焼して製造したシリカの場合、シリカ担体と前記化学式1の化合物の作用基が化学的に結合して担持されるため、プロピレン重合工程で担体表面から遊離されて出る触媒が殆どなく、その結果、スラリーまたは気相重合でポリエチレンを製造する時に反応器壁面や重合体粒子同士でもつれるファウリングを最小化することができる。
【0133】
また、担体に担持される場合、前記化学式1の化合物は、担体重量当たり、例えば、シリカ約1gを基準として約10μmol以上、または約30μmol以上であり、約100μmol以下、または約80μmol以下の含有量範囲で担持され得る。前記含有量範囲で担持される時、適切な担持触媒活性を示して触媒の活性維持および経済性の側面で有利になり得る。
【0134】
そして、前記触媒組成物は、前述したメタロセン化合物および担体と共に一つ以上の助触媒をさらに含むことができる。
【0135】
前記助触媒は、一般的なメタロセン触媒下でオレフィンを重合する時に使用される助触媒であれば全て使用可能である。前記のような助触媒は、担体にあるヒドロキシ基と第13族遷移金属との間に結合が生成されるようにする。また、助触媒は、担体の表面にのみ存在することによって重合体粒子が反応器壁面や互いにもつれるファウリング現象なしに本発明の特定の混成触媒構成が有する固有特性を確保することに寄与することができる。
【0136】
また、本発明による触媒組成物は、前記メタロセン化合物以外に下記化学式2~化学式4で表される化合物からなる群より選択された1種以上の助触媒化合物を含むことができる。
【0137】
[化学式2]
-[Al(R10)-O]
【0138】
前記化学式2で、
10はハロゲン;またはハロゲンで置換または非置換のC1-20ヒドロカルビルであり;
aは2以上の整数であり、
【0139】
[化学式3]
D(R11
【0140】
前記化学式3で、
Dはアルミニウムまたはホウ素であり;
11はハロゲン;またはハロゲンで置換または非置換のC1-20ヒドロカルビルであり、
【0141】
[化学式4]
[L-H][ZAまたは[L][ZA
【0142】
前記化学式4で、
Lは中性または陽イオン性ルイス塩基であり;
Hは水素原子であり;
Zは第13族元素であり;
Aは、それぞれ独立して、1以上の水素原子がハロゲン、C1-20ヒドロカルビル、C1-20アルコキシ、またはフェノキシで置換されたC6-20アリールまたはC1-20アルキルである。
【0143】
具体的に、前記化学式4で[L-H]はブレンステッド酸である。
【0144】
前記化学式2で表される化合物は、アルキル化剤および活性化剤としての役割を果たすことができ、前記化学式3で表される化合物は、アルキル化剤としての役割を果たすことができ、前記化学式4で表される化合物は、活性化剤の役割を果たすことができる。
【0145】
前記化学式2で表される化合物は、アルキルアルミノキサンであれば特に限定されないが、例えば、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどであり得、好ましくはメチルアルミノキサンであり得る。
【0146】
前記化学式3で表される化合物は、アルキル金属化合物であれば特に限定されないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロンなどであり得、好ましくはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムの中から選択され得る。
【0147】
前記化学式4で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンなどがあり、好ましくはアルモキサンを使用することができ、より好ましくはアルキルアルミノキサンであるメチルアルミノキサン(MAO)を使用することができる。
【0148】
また、前記触媒組成物は、前記助触媒と前記化学式1のメタロセン化合物をそれぞれ約1:1~約1:10000のモル比で含むことができ、好ましくは約1:1~約1:1000のモル比で含むことができ、より好ましくは約1:10~約1:100のモル比で含むことができる。この時、前記モル比が約1未満であれば助触媒の金属含有量が過度に少なくて触媒活性種が良好に作られず、活性が低くなることがあり、前記モル比が約10000を超えれば助触媒の金属がむしろ触媒毒として作用する虞がある。
【0149】
このような助触媒の担持量は、担体1gを基準として約3mmol~約25mmol、または約5mmol~約20mmolであり得る。
【0150】
一方、前記触媒組成物は、担体に助触媒を担持させる段階;前記助触媒が担持された担体にメタロセン化合物を担持させる段階;および前記助触媒および前記メタロセン化合物が担持された担体を含む製造方法により製造され得る。
【0151】
前記方法で、担持条件は特に限定されず、当該分野の当業者によく知られた範囲で行うことができる。例えば、高温担持および低温担持を適切に利用して行うことができ、例えば、担持温度は、約-30℃~約150℃の範囲で可能であり、好ましくは約50℃~約98℃、または約55℃~約95℃になることができる。担持時間は、担持しようとする第1メタロセン化合物の量により適切に調節され得る。反応させた担持触媒は、反応溶媒をろ過したり減圧蒸留させて除去してそのまま使用することができ、必要であればトルエンなどの芳香族炭化水素でソックスレーフィルターして使用することができる。
【0152】
そして、前記担持触媒の製造は、溶媒または無溶媒下で行うことができる。溶媒が使用される場合、使用可能な溶媒としては、ヘキサンまたはペンタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエンまたはベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタンなどの塩素原子で置換された炭化水素溶媒、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)などのエーテル系溶媒、アセトン、酢酸エチルなどの大部分の有機溶媒が挙げられ、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、またはジクロロメタンが好ましい。
【0153】
一方、本発明の一実施形態によるポリエチレンは、前記メタロセン化合物を含む触媒組成物の存在下で、ポリエチレンを重合する段階を含むポリエチレンの製造方法により製造され得る。
【0154】
前記ポリエチレンの製造方法は、前述した触媒組成物の存在下でエチレンおよびα-オレフィンを原料にして通常の装置および接触技術を適用してスラリー重合の方法で行うことができる。
【0155】
前記ポリエチレンの製造方法は、連続式スラリー重合反応器、ループスラリー反応器などを利用してエチレンとα-オレフィンを共重合することができるが、これらに限定されるのではない。
【0156】
また、前記α-オレフィンは、炭素数4~20、または炭素数4~15、または炭素数4~12のα-オレフィンが挙げられ、具体的に1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられ、これらの中のいずれか一つまたは二つ以上の混合物であり得る。
【0157】
具体的に、前記ポリエチレンの製造方法では、例えば、前記α-オレフィンとして1-ブテン、または1-ヘキセンを使用することができ、より具体的には1-ブテンを使用することができる。
【0158】
一例として、前記共重合段階は、エチレン1モルを基準としてα-オレフィンを約0.002モル~約0.05モルで反応させることで行われ得る。前記含有量範囲内に反応させる場合、ポリエチレンがより優れた加工性を示すことができる。しかし、もし前記α-オレフィンを0.002モル未満で反応させればα-オレフィン由来繰り返し単位を含むことによる加工性改善効果を得にくく、また0.05モルを超えれば寿命改善効果が低下することがある。前記α-オレフィン由来繰り返し単位の含有量制御による加工性改善効果の優秀さを考慮すると、より好ましくはα-オレフィンはエチレン1モルを基準として0.005モル以上、または0.01モル以上、または0.012モル以上、または0.015モル以上、または0.018モル以上、または0.02モル以上であり、0.048モル以下、または0.045モル以下、または0.042モル以下、または0.04モル以下、または0.038モル以下、または0.035モル以下で反応させることができる。
【0159】
そして、前記重合温度は、約25℃~約500℃、あるいは約25℃~約300℃、あるいは約30℃~約200℃、あるいは約50℃~約150℃、あるいは約60℃~約120℃であり得る。また、重合圧力は、約1kgf/cm~約100kgf/cm、あるいは約1kgf/cm~約50kgf/cm、あるいは約5kgf/cm~約45kgf/cm、あるいは約10kgf/cm~約40kgf/cm、あるいは約15kgf/cm~約35kgf/cmであり得る。
【0160】
本発明による化学式1のメタロセン化合物を含む触媒組成物は、炭素数5~12の脂肪族炭化水素溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体とトルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどの塩素原子で置換された炭化水素溶媒などに溶解したり希釈して注入することができる。ここで使用される溶媒は、少量のアルキルアルミニウム処理することによって触媒毒として作用する少量の水または空気などを除去して使用することが好ましく、さらに助触媒を使用して実施することも可能である。
【0161】
一例として、前記重合段階は、エチレン含有量を基準として水素気体を約900ppm以下、または約0~約900ppmで投入して行うことができる。具体的に、水素気体は、エチレン含有量を基準として約800ppm以下、または約750ppm以下、または約700ppm以下、または約650ppm以下、または約600ppm以下、または約550ppm以下、または約500ppm以下、または約450ppm以下で投入することができる。ただし、ポリエチレンを射出製品として製造時、より優れた加工性確保の側面で、水素気体は、約15ppm以上、または約30ppm以上、または約50ppm以上、または約100ppm以上、または約150ppm以上、または約180ppm以上、または約200ppm以上、または約220ppm以上、または約250ppm以上、または約270ppm以上、または約285ppm以上、または約300ppm以上、または約320ppm以上、または約330ppm以上、または約340ppm以上で投入することができる。
【0162】
具体的に、前述したポリエチレンを製造する方法は、前記化学式1で表されるメタロセン化合物を含む触媒組成物の存在下で、水素を投入し、エチレンとC4-20のα-オレフィンを共重合する段階を含み、前記水素は、エチレン単量体10kg/hr投入を基準として0.015g/hr~9g/hr、または0.02g/hr~7g/hr、または0.3g/hr~5g/hr、または0.5g/hr~3.4g/hrの量で投入され、前記α-オレフィンは、エチレン単量体10kg/hr投入を基準として0.1~8.0mL/min、または2~7.0mL/min、または3.5~6.5mL/min、または4~6mL/minの量で投入される製造方法により製造され得る。
【0163】
このようなエチレン共重合工程で、本発明のメタロセン化合物を含む触媒組成物は、高い触媒活性を示すことができる。一例として、エチレン共重合時の触媒活性は、単位時間(hr)を基準として使用された触媒組成物質量(g)当たり生成されたポリエチレンの重量(kgPE)の比で計算すると、約4.0kgPE/g・cat・hr以上または約4.0kgPE/g・cat・hr~約50kgPE/g・cat・hrであり得る。具体的に、前記触媒組成物の活性は、約4.2kgPE/g・cat・hr以上、または約4.3kgPE/g・cat・hr以上、または約4.5kgPE/g・cat・hr以上、あるいは約40kgPE/g・cat・hr以下、または約30kgPE/g・cat・hr以下、または約15kgPE/g・cat・hr以下であり得る。
【0164】
このように本発明によれば、前述した化学式1のメタロセン化合物を含む触媒組成物を使用して、エチレンとα-オレフィンを共重合してポリエチレンを製造することができる。
【0165】
この時、製造される前記ポリエチレンは、エチレン1-ブテン共重合体であり得る。
【0166】
前記ポリエチレンの製造方法は、前述した触媒組成物の存在下でスラリー重合で行われることによって、物性に優れたポリエチレンを提供することができる。
【0167】
特に、本発明による化学式1のメタロセン化合物を含む触媒組成物は、エチレンとα-オレフィンの共重合時、前述のような高い活性を示し、共単量体であるα-オレフィンの含有量を過量に増大させることもなく、高い分子量と共に分子内短鎖分枝(SCB、short chain branch)含有量を増大させることができる。
【0168】
前述した一実施形態の方法で製造されたポリエチレンは、高い分子量を示す領域の分子量分布と冷却速度に応じた結晶化温度(Tc10およびTc40)を最適化することで、射出時の冷却速度などの加工条件に対する依存性を低め、射出成形不良、特にヘアー不良を改善して、ボトルキャップなどの射出成形品に適宜に適用され得る。
【0169】
そこで、発明のまた他の実施形態によれば、前述した一実施形態の方法で製造されたポリエチレン樹脂組成物を含む射出成形品が提供される。
【0170】
特に、本発明によれば、前述した方法で製造されたポリエチレン樹脂組成物を使用することによって、1000~1500bar、あるいは1200~1480barの比較的低い射出圧を適用しても優れた物理的、化学的物性を有するボトルキャップなど射出成形品を製造することができる。
【0171】
また、このような射出成形品は、低い射出圧の優れた射出加工性と共に、優れた物理的、化学的特性を示すことができる。
【0172】
より具体的に、前記射出成形品は、前述した一実施形態の方法で製造されたポリエチレン樹脂組成物を射出および連続圧縮成形(CCM)方法でボトルキャップ(bottle cap)形態の射出成形品として製造した時、優れたESCR特性を示すことができる。より具体的に、前記のようなESCR特性は、前記容器蓋形態の射出成形品を42℃温度条件でIGEPAL 5重量%溶液に露出した後、5barで圧力を加えてクラック(crack)が発生する時間を測定する方法で評価することができ、このような評価結果で示される射出成形品に対するESCR特性が18時間以上、あるいは30時間以上、あるいは40時間~145時間、あるいは50時間~130時間になる優れた化学的物性を示すことができる。
【0173】
このような射出成形品は、代表的に、軽量化されたボトルキャップ(bottle cap)であり得、その他にも多様な射出成形品であり得る。
【0174】
一方、前述したまた他の実施形態の射出成形品は、前記一実施形態の方法で製造されたポリエチレン樹脂組成物を適用し、相対的に低い射出圧が適用されるという点を除いては一般的な射出方法により射出成形品が製造され得る。これに関する追加的な説明は省略する。
【0175】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供させるものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるのではない。
【0176】
<実施例>
[触媒前駆体の製造]
合成例1
【0177】
【化6】
【0178】
2-ブロモピリジン(2-Bromopyridine)(1eq.)をテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)(0.1M)に溶かした後、-90℃でn-ブチルリチウム(n-butyllithium)(1eq.)を徐々に滴下した後、同一温度で1時間攪拌した。以降、クロロジフェニルボラン(chlorodiphenylborane)(1eq.)をトルエン(toluene)(0.3M)に溶かした後、-78℃で一番目の反応物に徐々に滴下して1時間攪拌した。以降、常温で12時間攪拌して溶媒を真空乾燥してトルエン(toluene)を投入、フィルター(filter)などを通じて固体を除去した残余液を真空乾燥してジフェニル(ピリジン-2-イル)ボラン(diphenyl(pyridin-2-yl)borane)を得た。
【0179】
前記ジフェニル(ピリジン-2-イル)ボラン(diphenyl(pyridin-2-yl)borane)(1eq.)をテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)(0.1M)に溶かした後、リチウムテトラメチルシクロペンタジエニド(lithium tetramethylcyclopentadienide)(Li(CpMe)、1eq.)をテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)(0.1M)に溶かした溶液を0℃で徐々に滴下した後、常温で一晩攪拌した。溶媒を真空乾燥後、トルエン/ジエチルエーテル(toluene/diethyl ether)(体積比3/1、0.3M)を投入して溶かし、MCl(1eq.)をトルエン(toluene)(0.2M)に混合して-78℃で投入して常温で一晩攪拌した。反応完了後、溶媒を真空乾燥してジクロロメタン(dichloromethane)を投入してフィルター(filter)などを通じて塩を除去し、濾液を真空乾燥後、ジクロロメタン/ヘキサン(dichloromethane/hexane)を添加して再結晶させた。生成された固体をフィルター(filter)、真空乾燥してジクロロ{ジフェニル(ピリジン-2-イル-κN)(η-2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタ-2,4-ジエン-1-イリデン)ボレート}ジルコニウム(IV)(Dichloro{diphenyl(pyridin-2-yl-κN)(η-2,3,4,5-tetramethylcyclopenta-2,4-dien-1-ylidene)borate}zirconium(IV))を得た。
【0180】
ジクロロ{ジフェニル(ピリジン-2-イル-κN)(η-2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタ-2,4-ジエン-1-イリデン)ボレート}ジルコニウム(IV)(Dichloro{diphenyl(pyridin-2-yl-κN)(η-2,3,4,5-tetramethylcyclopenta-2,4-dien-1-ylidene)borate}zirconium(IV))(1eq.)をトルエン/ジエチルエーテル(toluene/diethyl ether)(体積比3/1、0.3M)に溶かした後、メチルリチウム(methyl lithium)(2eq.)をヘキサン(hexane)あるいはジエチルエーテル(diethyl ether)に溶かした溶液を-78℃で徐々に滴下し、常温で12時間攪拌した。反応完了後、溶媒を真空乾燥してジクロロメタン(dichloromethane)を投入してフィルター(filter)などを通じて塩を除去し、濾液を真空乾燥後、ジクロロメタン/ヘキサン(dichloromethane/hexane)を添加して再結晶させた。生成された固体をフィルター(filter)、真空乾燥して前駆体化合物を得た。
【0181】
1H NMR (500 MHz, CDCl3, ppm): δ 8.32(d, 1H), 8.05(d, 4H), 7.70(t, 1H), 7.42(t, 1H), 7.40(t, 4H), 7.23(d, 1H), 7.17(t, 2H), 2.08(s, 6H), 1.93(s, 6H) 0.95(s, 6H)
【0182】
比較合成例1
【0183】
【化7】
【0184】
6-クロロヘキサノールを使用して文献(Tetrahedron Lett. 2951(1988))に記載された方法でt-ブチル-O-(CH-Clを製造し、ここにシクロペンタジエニルナトリウム(NaCp)を反応させてt-ブチル-O-(CH-Cを得た(収率60%、b.p.80℃/0.1mmHg)。
【0185】
また、-78℃でt-ブチル-O-(CH-Cをテトラヒドロフラン(THF)に溶かし、n-ブチルリチウム(n-BuLi)を徐々に加えた後、室温に昇温させた後、8時間反応させた。前記溶液を再び-78℃でZrCl(THF)(170g、4.50mmol)/THF(30mL)のサスペンション溶液に前記合成されたリチウム塩溶液を徐々に加えて室温でさらに6時間反応させた。全ての揮発性物質を真空乾燥して除去し、得られたオイル性液体物質にヘキサンを加えてフィルターした。フィルター溶液を真空乾燥した後、ヘキサンを加えて低温(-20℃)で沈殿物を誘導した。得られた沈殿物を低温でろ過して白色の固体形態の[tert-ブチル-O-(CH-CZrCl]を得た(収率92%)。
【0186】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): 6.28 (t, J=2.6 Hz, 2H), 6.19 (t, J=2.6 Hz, 2H), 3.31 (t, 6.6 Hz, 2H), 2.62 (t, J=8 Hz), 1.7 - 1.3 (m, 8H), 1.17 (s, 9H)
13C-NMR (CDCl3): 135.09, 116.66, 112.28, 72.42, 61.52, 30.66, 30.31, 30.14, 29.18, 27.58, 26.00
【0187】
比較合成例2
【0188】
【化8】
【0189】
THF溶媒下でtert-ブチル-O-(CHCl化合物とMg(0)間の反応からグリニャール(Grignard)試薬であるtert-ブチル-O-(CHMgCl溶液1.0moleを得た。前記製造されたグリニャール化合物を-30℃の状態の(CH)SiCl化合物(176.1mL、1.5mol)とTHF(2.0mL)が入っているフラスコに加え、常温で8時間以上攪拌した後、ろ過した溶液を真空乾燥してtert-ブチル-O-(CHSi(CH)Clの化合物を得た(収率92%)。
【0190】
-20℃で反応器にフルオレン(Flu、fluoren、3.33g、20mmol)とヘキサン(100mL)とMTBE(メチルtert-ブチルエーテル(methyl tert-butyl ether)、1.2mL、10mmol)を入れ、8mLのn-BuLi(2.5M in Hexane)を徐々に加え、常温で6時間攪拌した。攪拌が終結した後、反応器温度を-30℃に冷却させ、-30℃でヘキサン(100mL)に溶けているtert-ブチル-O-(CHSi(CH)Cl(2.7g、10mmol)溶液に前記製造されたフルオレニルリチウム溶液を1時間にわたって徐々に加えた。常温で8時間以上攪拌した後、水を添加して抽出し、乾燥(evaporation)して(tert-ブチル-O-(CH(CH)Si(9-C1310化合物を得た(5.3g、収率100%)。リガンドの構造はH-NMRを通じて確認した。
【0191】
1H NMR(500 MHz, CDCl3) : -0.35 (CH3Si, 3H, s), 0.26 (Si-CH2, 2H, m), 0.58 (CH2, 2H, m), 0.95 (CH2, 4H, m), 1.17(tert-butyl-O, 9H, s), 1.29(CH2, 2H, m), 3.21(tert-butyl-O-CH2, 2H, t), 4.10(Flu-9H, 2H, s), 7.25(Flu-H, 4H, m), 7.35(Flu-H, 4H, m), 7.40(Flu-H, 4H, m), 7.85(Flu-H, 4H, d).
【0192】
-20℃で(tert-ブチル-O-(CH(CH)Si(9-C1310(3.18g、6mmol)/MTBE(20mL)溶液に4.8mLのn-BuLi(2.5M in ヘキサン(Hexane))を徐々に加えて常温に上げながら8時間以上反応させた後、-20℃で前記製造されたジリチウム塩(dilithium salts)スラリー溶液をZrCl(THF)(2.26g、6mmol)/ヘキサン(20mL)のスラリー溶液で徐々に加えて常温で8時間さらに反応させた。沈殿物をろ過して数回ヘキサンで洗い落として赤色の固体形態の(tert-ブチル-O-(CH(CHSi(9-C13ZrCl化合物を得た(4.3g、収率94.5%)。
【0193】
1H NMR(500 MHz, C6D6) : 1.15(tert-butyl-O, 9H, s), 1.26 (CH3Si, 3H, s), 1.58 (Si-CH2, 2H, m), 1.66 (CH2, 4H, m), 1.91(CH2, 4H, m), 3.32(tert-butyl-O-CH2, 2H, t), 6.86 (Flu-H, 2H, t), 6.90 (Flu-H, 2H, t), 7.15 (Flu-H, 4H, m), 7.60 (Flu-H, 4H, dd), 7.64(Flu-H, 2H, d), 7.77(Flu-H, 2H, d).
【0194】
[担持触媒の製造]
製造例1
ピコ(pico)反応器に50mLのトルエンを入れた後、Ar下でシリカゲル(Silica gel、SYLOPOL 952X、calcinated under 250℃)7gを入れ、メチルアルミノキサン(MAO)10mmolを常温で徐々に注入して95℃で24時間攪拌して反応させた。反応終結後、常温に冷まして15分間放置してカニューレ(cannula)を利用して溶媒をデカント(decant)する。トルエン(400mL)を入れて1分間攪拌し、15分間放置してカニューレ(cannula)を利用して溶媒をデカント(decant)した。
【0195】
合成例1のメタロセン化合物60μmolをトルエン30mLに溶かした後、反応器にカニューレ(cannula)を利用して移送(transfer)した。80℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後に沈澱が終わると、常温に冷まして15分間放置してカニューレ(cannula)を利用して溶媒をデカント(decant)した。上層部溶液は除去して残った反応生成物をトルエンで洗浄した。ヘキサンで再び洗浄した後、ヘキサン下で帯電防止剤としてN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ペンタデシルアミン(N,N-Bis(2-hydroxyethyl)pentadecylamine、Atmer163)をシリカ重量(g)を基準として2wt%をヘキサン3mLに溶かして入れた後、常温で10分間攪拌した。反応終結後に沈澱が終わると、上層部は除去してガラスフィルター(glass filter)で移送(transfer)して溶媒を除去した。
【0196】
常温で真空下で5時間1次乾燥し、45℃で4時間真空下で2次乾燥して固体粒子形態のシリカ担持メタロセン触媒を得た。
【0197】
比較製造例1:混成担持触媒の製造
20Lのステンレススチール(sus)高圧反応器にトルエン溶液5.0kgを入れて反応器温度を40℃に維持した。600℃の温度で12時間真空を加えて脱水させたシリカ(Grace Davison社製造、SP948)1000gを反応器に投入してシリカを十分に分散させた後、比較合成例1のメタロセン化合物84gをトルエンに溶かして投入して40℃で200rpmで2時間攪拌して反応させた。以降、攪拌を中止して30分間セトリングして反応溶液をデカンテーションした。
【0198】
反応器にトルエン2.5kgを投入し、10wt%メチルアルミノキサン(MAO)/トルエン溶液9.4kgを投入した後、40℃で200rpmで12時間攪拌した。反応後、攪拌を中止して30分間セトリングして反応溶液をデカンテーションした。トルエン3.0kgを投入して10分間攪拌した後、攪拌を中止して30分間セトリングしてトルエン溶液をデカンテーションした。
【0199】
反応器にトルエン3.0kgを投入し、比較合成例2のメタロセン化合物116gをトルエン溶液1Lに溶かして反応器に投入し、40℃で200rpmで2時間攪拌して反応させた。この時、前記比較合成例1のメタロセン化合物と比較合成例2のメタロセン化合物との比率はモル比を基準として1:1.2になった。反応器温度を常温に下げた後、攪拌を中止して30分間セトリングして反応溶液をデカンテーションした。
【0200】
反応器にトルエン2.0kgを投入して10分間攪拌した後、攪拌を中止して30分間セトリングして反応溶液をデカンテーションした。
【0201】
反応器にヘキサン3.0kgを投入してヘキサンスラリーをフィルタードライに移送してヘキサン溶液をフィルターした。40℃で4時間減圧下で乾燥して1kg-SiO混成担持触媒を製造した。
【0202】
[ポリエチレンの製造]
実施例1
パイロットプラントの220L反応器に前記製造例1で製造されたメタロセン担持触媒を単一のスラリー重合工程に投入して通常の方法により高密度ポリエチレンを製造した。エチレン10kg/hr、水素3.4g/hrを反応器温度80℃でヘキサンスラリー状態で連続反応させた。ここに共単量体としては1-ブテン5mL/minを投入した。反応後、溶媒除去およびドライ工程を経て粉末形態の高密度ポリエチレンを製造した。
【0203】
実施例2
実施例1と同様な方法で重合工程を行うが、水素投入量を0.5g/hrに変更して粉末形態の高密度ポリエチレンを製造した。
【0204】
比較例1
実施例1と同様な方法で製造するが、前記比較製造例1で製造された混成担持メタロセン触媒を使用してエチレンと1-ブテンで共重合工程を行って製造した。エチレン10kg/hr、水素2.0g/hrに変更して高密度ポリエチレンを製造した。
【0205】
比較例2
比較例1と同様な方法で製造するが、エチレン15kg/hr、水素0.5g/hrに変更して高密度ポリエチレンを製造した。
【0206】
比較例3
比較例1と同様な方法で製造するが、エチレン10kg/hr、水素1.0g/hrに変更して高密度ポリエチレンを製造した。
【0207】
<試験例1:ポリエチレンの物性評価>
実施例および比較例で製造したポリエチレンに対して下記のような方法で物性評価を行い、その測定結果を下記表1に示した。
【0208】
(1)溶融指数(melt index)
米国材料試験協会の規格ASTM D 1238(条件E)により190℃下で2.16kgおよび5kgの荷重でそれぞれの溶融指数(MI2.16)および溶融指数(MI)を測定し、10分間溶融されて出た重合体の重量(g)で示した。
【0209】
(2)溶融流動指数(MFRR、MI5/MI2.16)
MI溶融指数(MI、5kg荷重)をMI2.16(MI、2.16kg荷重)で割った比率(MI/MI2.16)である。
【0210】
(3)重量平均分子量および分子量分布(PDI、polydispersity index、Mw/Mn)およびGPC分析によるLog Mw(5.5以上、および6.5以上)の比率
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、gel permeation chromatography、Water社製造)を利用して重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、重量平均分子量を数平均分子量で割って分子量分布(PDI、Mw/Mn)を計算した。
【0211】
具体的に、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置としてはWaters PL-GPC220機器を利用し、Polymer Laboratories PLgel MIX-Bの300mm長さのカラムを使用した。この時、測定温度は160℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼン(1,2,4-Trichlorobenzene)を溶媒として使用し、流速は1mL/minにした。実施例および比較例による重合体のサンプルは、それぞれGPC分析機器(PL-GP220)を利用してブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、butylated hydroxytoluene)0.0125%含まれているトリクロロベンゼン(1,2,4-Trichlorobenzene)で160℃、10時間にわたって溶かして前処理し、10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給した。ポリスチレン標準試片を利用して形成された検定曲線を利用してMwおよびMnの値を誘導した。ポリスチレン標準試片の重量平均分子量は、2000g/mol、10000g/mol、30000g/mol、70000g/mol、200000g/mol、700000g/mol、2000000g/mol、4000000g/mol、10000000g/molの9種を使用した。
【0212】
また、このように測定したポリエチレンの重量平均分子量(Mw)に対するログ(log)グラフ、つまり、x軸がlog Mwであり、y軸がdw/dlogMwであるGPCカーブグラフで、log Mw値が5.5以上である領域の各積分値が全体積分値に対する比率(U Hw、単位:%)および6.5以上である領域の各積分値が全体積分値に対する比率(UH Mw、単位%)を算出して下記表1に示した。
【0213】
(4)結晶化温度(Tc)および溶融温度(Tm)
示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC、装置名:DSC2500、製造会社:TA instrument)を利用してポリエチレンの結晶化温度(Tc10、Tc40、Tc10/Tc40)および溶融温度(Tm10、Tm40)を測定した。
【0214】
具体的に、温度を上昇してポリエチレンを200℃まで加熱した後、5分間その温度で維持し(1st RUN熱履歴除去)、その後30℃まで下げ、再び温度を増加させて示されるDSC(Differential Scanning Calorimeter、TA社製造)曲線の頂点に該当する吸熱ピークの最大地点の温度を溶融温度(Tm)と測定した。この時、温度の上昇と下降の速度をそれぞれ10℃/minおよび40℃/minで測定した。
【0215】
つまり、溶融温度(Tm10、Tm40)は、二番目の温度が上昇する区間(2nd RUN)でそれぞれ温度上昇速度10℃/minおよび40℃/minで吸熱ピークの最大地点を測定し、結晶化温度(Tc10、Tc40)は、二番目の温度が下降する区間(2nd RUN)でそれぞれ温度下降速度10℃/minおよび40℃/minで測定した結果による発熱ピークの最大地点を示したものである。
【0216】
(5)密度(g/cm3)
米国材料試験協会の規格ASTM D 1505規格によりポリエチレンの密度(g/cm)を測定した。
【0217】
【表1】
【0218】
前記表1を参照すれば、本発明の実施例1~2のポリエチレンは、分子量分布(高分子含有量)調節による上昇したTc(結晶化温度)を有するHDPE樹脂で製造され、Tc10/Tc40の比率が1.017~1.024で1に近似値をなすことで、加工条件依存性が低くなり、ヘアー発生率を低減させることができることが分かる。
【国際調査報告】